【解説・採点基準付き】2011年九州大学理系数学の解答・解説
2011年の九州大学・理系数学の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの採点基準付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2011年九州大学理系数学
第1問 解答・解説
この記事の配点・採点基準は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は積分(数学Ⅲ)の問題です。
テーマは「$y=\sqrt x$ と $y=x$ と垂線PHで囲まれた図形の面積」。
問題


問題文をテキストで読む
曲線 $y=\sqrt x$ 上の点 $\mathrm{P}(t,\ \sqrt t)$ から直線 $y=x$ へ垂線を引き、交点をHとする。ただし、 $t>1$ とする。このとき、以下の問いに答えよ。
(1) Hの座標を $t$ を用いて表せ。
(2) $x\geqq1$ の範囲において、曲線 $y=\sqrt x$ と直線 $y=x$ および線分PHとで囲まれた図形の面積を $S_1$ とするとき、 $S_1$ を $t$ を用いて表せ。
(3) 曲線 $y=\sqrt x$ と直線 $y=x$ で囲まれた図形の面積を $S_2$ とする。 $S_1=S_2$ であるとき、 $t$ の値を求めよ。
解答の方針
【(1)の方針】
Hは直線 $y=x$ 上の点なので $\mathrm{H}(s,\ s)$ と1文字で置け、「PHが直線 $y=x$ と垂直」は、PHの向きと $(1,\ 1)$ の内積が0という1本の式にできる。
- $\mathrm{H}(s,\ s)$ とおく。
- $\overrightarrow{\mathrm{PH}}=(s-t,\ s-\sqrt t)$ と直線 $y=x$ の向き $(1,\ 1)$ の内積を0とし、 $s$ を $t$ で表して答える。
【(2)の方針】
面積の問題は「グラフをかく(上下)→ 数式におとす」。 $S_1$ の図形は斜めの線分PHで区切られているので、点 $\mathrm{Q}(t,\ t)$ をとると、三角形PQHは斜辺PQの直角二等辺三角形になる(下の図の濃い部分)。


よって、縦に切った「直線と曲線の間の部分」から三角形PQHを引けば $S_1$ になる(下の図)


- $x-\sqrt x=\sqrt x(\sqrt x-1)$ から、 $x>1$ で直線 $y=x$ が曲線 $y=\sqrt x$ の上にあることを確かめ、グラフを書く。
- $\mathrm{Q}(t,\ t)$ をとり、 $S_1=\displaystyle\int_1^t(x-\sqrt x)\,dx-\triangle\mathrm{PQH}$ と立式する。
- 積分は $\displaystyle\int_1^tx\,dx$ と $\displaystyle\int_1^t\sqrt x\,dx$ に分けて計算する。
- 三角形PQHを斜辺 $\mathrm{PQ}=t-\sqrt t$ の直角二等辺三角形として、面積 $\dfrac{(t-\sqrt t)^2}{4}$ を求める。
- 積分の値から三角形の面積を引いて整理し、 $S_1$ を答える。
【(3)の方針】
$S_1=S_2$ を整理すると $t$ と $t\sqrt t$ が混ざった式になるが、$\sqrt t$ を1文字とみれば2次方程式になる。
- $0\leqq x\leqq1$ で $\sqrt x\geqq x$ を確かめ、 $S_2=\displaystyle\int_0^1(\sqrt x-x)\,dx$ を計算する。
- $S_1=S_2$ の両辺から $\dfrac16$ を消し、 $t>0$ で割って $\sqrt t$ についての2次方程式 $3(\sqrt t)^2-2\sqrt t-3=0$ にする。
- $\sqrt t>0$ から解を1つに決め、2乗して $t$ を求め、 $t>1$ をみたすことを確かめる。
解答


解答をテキストで読む
(1) 配点 10点
Hは直線 $y=x$ 上の点なので、 $\mathrm{H}(s,\ s)$ とおける。 $\overrightarrow{\mathrm{PH}}=(s-t,\ s-\sqrt t)$ は直線 $y=x$ の向き $(1,\ 1)$ と垂直なので
$$(s-t)\cdot1+(s-\sqrt t)\cdot1=0$$
よって $s=\dfrac{t+\sqrt t}{2}$。
答 $\mathrm{H}\left(\dfrac{t+\sqrt t}{2},\ \dfrac{t+\sqrt t}{2}\right)$
(2) 配点 25点
$x-\sqrt x=\sqrt x(\sqrt x-1)$ で、 $\sqrt x>0$ なので、符号は $\sqrt x-1$ で決まる。よって $x>1$ では $x>\sqrt x$ となり、直線 $y=x$ が曲線 $y=\sqrt x$ の上にある。また $t>1$ より $\sqrt t>1$ なので、Hの $x$ 座標は $1<\dfrac{t+\sqrt t}{2}<t$ をみたす。
$\mathrm{Q}(t,\ t)$ とする。PQは $y$ 軸に平行で、直線 $y=x$ は $x$ 軸と $45^\circ$ の角をなすので、 $\angle\mathrm{PQH}=45^\circ$。 $\angle\mathrm{PHQ}=90^\circ$ なので、三角形PQHは斜辺PQの直角二等辺三角形である(下の図)。
$S_1$ の図形は、 $1\leqq x\leqq t$ で直線 $y=x$ と曲線 $y=\sqrt x$ の間にある部分から、三角形PQHを除いたものである(下の図)。よって、図をそのまま式にして
$$S_1=\int_1^t(x-\sqrt x)\,dx-\triangle\mathrm{PQH}$$
積分は項ごとに分けて計算する。
$$\int_1^tx\,dx=\left[\frac{x^2}{2}\right]_1^t=\frac{t^2-1}{2},\qquad\int_1^t\sqrt x\,dx=\left[\frac23x\sqrt x\right]_1^t=\frac23\left(t\sqrt t-1\right)$$
三角形PQHは斜辺 $\mathrm{PQ}=t-\sqrt t$ の直角二等辺三角形なので、等しい2辺の長さは $\dfrac{t-\sqrt t}{\sqrt2}$。よって
$$\triangle\mathrm{PQH}=\frac12\left(\frac{t-\sqrt t}{\sqrt2}\right)^2=\frac{(t-\sqrt t)^2}{4}=\frac{t^2-2t\sqrt t+t}{4}$$
したがって
$$S_1=\frac{t^2-1}{2}-\frac23\left(t\sqrt t-1\right)-\frac{t^2-2t\sqrt t+t}{4}=\frac{t^2}{4}-\frac{t\sqrt t}{6}-\frac t4+\frac16$$
答 $S_1=\dfrac{t^2}{4}-\dfrac{t\sqrt t}{6}-\dfrac t4+\dfrac16$
答えに $t=1$ を代入すると $\dfrac14-\dfrac16-\dfrac14+\dfrac16=0$ となり、Pが点 $(1,\ 1)$ に重なるとき面積が0になることと合う。検算に使える。
別解(区間を分けて台形で求める) Hの $x$ 座標を $h=\dfrac{t+\sqrt t}{2}$ とする。 $1\leqq x\leqq h$ では上が直線 $y=x$、 $h\leqq x\leqq t$ では上が線分PHなので、上の線の下にある2つの台形の面積の和から $\displaystyle\int_1^t\sqrt x\,dx$ を引けばよい。 $t-h=h-\sqrt t=\dfrac{t-\sqrt t}{2}$ に注意すると
$$\frac{(1+h)(h-1)}{2}+\frac{(h+\sqrt t)(t-h)}{2}=\frac{h^2-1}{2}+\frac{(h+\sqrt t)(h-\sqrt t)}{2}=h^2-\frac{t+1}{2}=\frac{t^2}{4}+\frac{t\sqrt t}{2}-\frac t4-\frac12$$
よって
$$S_1=\frac{t^2}{4}+\frac{t\sqrt t}{2}-\frac t4-\frac12-\frac23\left(t\sqrt t-1\right)=\frac{t^2}{4}-\frac{t\sqrt t}{6}-\frac t4+\frac16$$
(3) 配点 15点
$0\leqq x\leqq1$ では $\sqrt x-x=\sqrt x(1-\sqrt x)\geqq0$ なので、曲線 $y=\sqrt x$ が直線 $y=x$ の上にある(上の1枚目の図の $S_2$ )。よって
$$S_2=\int_0^1(\sqrt x-x)\,dx=\frac23-\frac12=\frac16$$
$S_1=S_2$ より
$$\frac{t^2}{4}-\frac{t\sqrt t}{6}-\frac t4=0$$
両辺に $\dfrac{12}{t}$ をかける( $t>0$ )と $3t-2\sqrt t-3=0$。 $t=(\sqrt t)^2$ なので、これは $\sqrt t$ についての2次方程式
$$3(\sqrt t)^2-2\sqrt t-3=0$$
である。
これを解くと $\sqrt t=\dfrac{1\pm\sqrt{10}}{3}$。 $\sqrt t>0$ より $\sqrt t=\dfrac{1+\sqrt{10}}{3}$ である。このとき $\sqrt t>\dfrac{1+3}{3}>1$ なので、 $t>1$ をみたす。よって
$$t=\left(\frac{1+\sqrt{10}}{3}\right)^2=\frac{11+2\sqrt{10}}{9}$$
答 $t=\dfrac{11+2\sqrt{10}}{9}$
出題意図
- グラフを書いて上下関係を確かめ、求める部分をそのまま積分の式に落とし込めるか。
- 斜めの線分PHで区切られた図形を、縦に切った面積から直角二等辺三角形を引く形で捉えることができるか。
- (3) の方程式を $\sqrt t$ についての2次方程式と見て、正しく解を選べるか。
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 簡単 | |
| 目標得点 | 50点 | 50点 |
| 目標時間 | 15分 | 20分 |
座標平面で三角形の面積を求めるときは、縦と横の長さをいちいち求めなくてよい。
斜めの線分の長さが「 $x$ 座標の差」と傾きから求まるのと同じ要領で、この問題も三角形PQHが直角二等辺三角形であることを使えば、斜辺PQの長さ( $y$ 座標の差)だけで面積が求まる。
QHやQPを求める必要はない。
差がつく所・失点しやすい所
- 差がつくとすれば (2):縦に切った面積から直角二等辺三角形PQHを引くという発想に行き着けるか。行き着けば計算はすぐ終わる。区間を分けて台形で求めても解ける。
- (3) の解の選び方: $\sqrt t>0$ で解を1つに決め、 $t>1$ をみたすことまで確かめる。
2011年九州大学理系数学
第2問 解答・解説
第2問は微分法・極限(数学Ⅲ)の問題です。
テーマは「$(x^2+2x+2-a^2)e^{-x}$ の極値と、2曲線が異なる3点で交わる条件」。
問題


問題文をテキストで読む
$a$ を正の定数とする。以下の問いに答えよ。
(1) 関数 $f(x)=(x^2+2x+2-a^2)e^{-x}$ の極大値および極小値を求めよ。
(2) $x\geqq3$ のとき、不等式 $x^3e^{-x}\leqq27e^{-3}$ が成り立つことを示せ。さらに、極限値 $\displaystyle\lim_{x\to\infty}x^2e^{-x}$ を求めよ。
(3) $k$ を定数とする。 $y=x^2+2x+2$ のグラフと $y=ke^x+a^2$ のグラフが異なる3点で交わるための必要十分条件を、 $a$ と $k$ を用いて表せ。
解答の方針
【(1)の方針】
$f'(x)$ の符号は、常に正の $e^{-x}$ を外した $a^2-x^2$ のグラフだけで読める。
- 積の微分で $f'(x)=(a^2-x^2)e^{-x}$ を求める。
- $e^{-x}>0$ を外し、符号が決まる部分 $a^2-x^2$ のグラフから $f'(x)$ の符号を読む。
- 増減表を書き、極小値 $f(-a)$ と極大値 $f(a)$ を求める。
【(2)の方針】
前半の不等式は、右辺が定数なので「 $g(x)=x^3e^{-x}$ の $x\geqq3$ での最大値が $27e^{-3}$ 以下」と言いかえる。
後半の極限は $\infty\times0$ の不定形で、どの手でも解消できないので、前半の不等式を使ったはさみうちの原理で示す( $x^2e^{-x}=\dfrac{x^3e^{-x}}{x}$ と見る)
- $g(x)=x^3e^{-x}$ とおき、不等式を「 $x\geqq3$ での $g(x)$ の最大値が $27e^{-3}$ 以下」と言いかえる。
- $g'(x)=x^2(3-x)e^{-x}$ を求め、正の因子 $x^2e^{-x}$ を外して $x\geqq3$ で $g(x)$ が減少することを示し、 $g(x)\leqq g(3)=27e^{-3}$ とする。
- 極限が $\infty\times0$ の不定形であることを確かめる。
- 1〜2 の不等式を $x$ で割って $0<x^2e^{-x}\leqq\dfrac{27e^{-3}}{x}$ とし、はさみうちの原理で極限を求める。
【(3)の方針】
両辺に $e^{-x}$ をかけて $k$ を分離し(定数分離)、「 $y=f(x)$ のグラフと横線 $y=k$ が異なる3点で交わる条件」に言いかえる(下の1枚目の図)。
グラフの概形には、(1) の増減に加えて両端の極限が要る。
さらに、右側ではグラフは0に近づくが0にはならないので、3点で交わる $k$ の下の端は「極小値と0の大きい方」になる(下の2枚目の図。色の帯が3点で交わる $k$ の範囲)




- 方程式の両辺に $e^{-x}$ をかけて $f(x)=k$ と定数分離し、「方程式の実数解は $y=f(x)$ と $y=k$ の交点の $x$ 座標」と記述する。
- $x\to-\infty$ の極限は不定形でないことから $\infty$、 $x\to\infty$ の極限は $x^2$ でくくって (2) から0と求める。
- $x>a$ で $f(x)>0$ を示し、(1) の増減とあわせて $y=f(x)$ のグラフを書く。
- 横線 $y=k$ を動かし、3点で交わる条件を「極小値と0の大きい方 $<k<$ 極大値」とする。
- 極小値 $2(1-a)e^a$ の符号で $0<a<1$ と $a\geqq1$ に分けて答える。
解答




解答をテキストで読む
(1) 配点 15点
$$f'(x)=(2x+2)e^{-x}-(x^2+2x+2-a^2)e^{-x}=(a^2-x^2)e^{-x}$$
$e^{-x}>0$ なので、 $f'(x)$ の符号は $a^2-x^2$ の符号と一致する。 $y=a^2-x^2$ は上に凸の放物線で $x=\pm a$ で $x$ 軸と交わるので、 $a^2-x^2$ は $x<-a$ で負、 $-a<x<a$ で正、 $x>a$ で負である。よって、増減は次のようになる。
| $x$ | $\cdots$ | $-a$ | $\cdots$ | $a$ | $\cdots$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $f'(x)$ | $-$ | $0$ | $+$ | $0$ | $-$ |
| $f(x)$ | $\searrow$ | 極小 | $\nearrow$ | 極大 | $\searrow$ |
$$f(a)=(a^2+2a+2-a^2)e^{-a}=2(a+1)e^{-a},\qquad f(-a)=(a^2-2a+2-a^2)e^{a}=2(1-a)e^{a}$$
答 極大値 $2(a+1)e^{-a}$( $x=a$ のとき)、極小値 $2(1-a)e^{a}$( $x=-a$ のとき)
(2) 配点 15点
$g(x)=x^3e^{-x}$ とおく。示すことは、 $x\geqq3$ での $g(x)$ の最大値が $27e^{-3}$ 以下であること。
$$g'(x)=3x^2e^{-x}-x^3e^{-x}=x^2(3-x)e^{-x}$$
$x\geqq3$ では $x^2e^{-x}>0$ なので、 $g'(x)$ の符号は $3-x$ の符号と一致し、 $x>3$ で $g'(x)<0$ である。
よって $g(x)$ は $x\geqq3$ で減少するので、最大値は $g(3)=27e^{-3}$ であり
$$x^3e^{-x}\leqq27e^{-3}\quad(x\geqq3)$$
(証明終わり)
$x\to\infty$ のとき $x^2\to\infty$、 $e^{-x}\to0$ なので、 $x^2e^{-x}$ は $\infty\times0$ の不定形である。 $x\geqq3$ のとき、前半の不等式の両辺を $x$( $>0$)で割ると
$$0<x^2e^{-x}\leqq\frac{27e^{-3}}{x}$$
$\displaystyle\lim_{x\to\infty}\dfrac{27e^{-3}}{x}=0$ なので、はさみうちの原理より
答 $\displaystyle\lim_{x\to\infty}x^2e^{-x}=0$
(3) 配点 20点
$$x^2+2x+2=ke^x+a^2\iff x^2+2x+2-a^2=ke^x\iff(x^2+2x+2-a^2)e^{-x}=k$$
( $e^x>0$ なので、両辺に $e^{-x}$ をかけても同値)。よって、2つのグラフの交点の $x$ 座標は方程式 $f(x)=k$ の実数解であり、これは $y=f(x)$ のグラフと直線 $y=k$ の交点の $x$ 座標である。したがって、 $y=f(x)$ と $y=k$ が異なる3点で交わる条件を求めればよい。
両端の極限を調べる。
・$x\to-\infty$ のとき $x^2+2x+2-a^2\to\infty$、 $e^{-x}\to\infty$ なので(不定形ではない)、 $f(x)\to\infty$
・$x\to\infty$ のとき $\infty\times0$ の不定形なので、最高次の $x^2$ でくくる。
$$f(x)=\left(1+\frac2x+\frac{2-a^2}{x^2}\right)x^2e^{-x}\longrightarrow(1+0+0)\cdot0=0\quad(x\to\infty)$$
( $x^2e^{-x}\to0$ は (2) の結果)
また、 $x>a$ のとき $(x+1)^2>(a+1)^2$ なので
$$x^2+2x+2-a^2=(x+1)^2+1-a^2>(a+1)^2+1-a^2=2a+2>0$$
となり、 $x>a$ で $f(x)>0$ である。
以上と (1) より、 $y=f(x)$ のグラフは、 $x<-a$ で $\infty$ から極小値 $2(1-a)e^a$ まで減少し、 $-a<x<a$ で極大値 $2(1+a)e^{-a}$ まで増加し、 $x>a$ で正の値をとりながら0に近づいて減少する(0にはならない)。
横線 $y=k$ を動かすと、3つの区間 $x<-a$、 $-a<x<a$、 $x>a$ の各区間で $f(x)$ は単調なので、各区間で交点は多くても1つ。また、 $k$ が極小値・極大値に等しいときは、交点は2つ以下である。よって3点で交わるのは、3つの区間すべてで交わるときで、その条件は
・$x<-a$ で交わる: $k>2(1-a)e^a$
・$-a<x<a$ で交わる: $2(1-a)e^a<k<2(1+a)e^{-a}$
・$x>a$ で交わる: $0<k<2(1+a)e^{-a}$
これらをすべてみたすことなので、求める条件は「 $2(1-a)e^a$ と0の大きい方 $<k<2(1+a)e^{-a}$」である。
極小値 $2(1-a)e^a$ は、 $0<a<1$ のとき正、 $a=1$ のとき0、 $a>1$ のとき負である(下の図)。
よって、下の端は $0<a<1$ のとき $2(1-a)e^a$、 $a\geqq1$ のとき0となり
答 $0<a<1$ のとき $2(1-a)e^a<k<2(1+a)e^{-a}$、 $a\geqq1$ のとき $0<k<2(1+a)e^{-a}$
( $a=1$ のときは $2(1-a)e^a=0$ なので、どちらの式でも $0<k<\dfrac4e$ となり同じ)
出題意図
(1) 積の微分をして、正の因子 $e^{-x}$ を外し、符号が決まる部分から増減を正しく読めるか
(2) 不等式を「最大値が右辺以下」と言いかえて微分で示し、その不等式を使って $\infty\times0$ の不定形の極限をはさみうちの原理で求められるか
(3) 定数 $k$ を分離して「 $y=f(x)$ のグラフと横線 $y=k$ の交点が3つ」と言いかえ、両端の極限まで含めた正確なグラフから $k$ の範囲を求められるか。とくに、右端で $f(x)$ が0に近づくが0にはならないことを捉えることができるか。
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 簡単 | |
| 目標得点 | 50点 | 50点 |
| 目標時間 | 15分 | 20分 |
(1) は微分して極大値・極小値を求めるだけ。
(2) は $g(x)=x^3e^{-x}$ とおけば、右辺の $27e^{-3}$ が $g(3)$ だと気づけばよい。
(3) は (1) があるので、定数 $k$ だけを分離すれば楽に解ける(そもそもヒントがなくてもやるべき処理)。
差がつく所・失点しやすい所
- 差がつくのは (3):右側で $f(x)$ は0に近づくが0にはならない( $x>a$ で正)ので、 $k$ の下の端が「極小値と0の大きい方」になる、という発想に行き着けるか。ここを見落とすと $a\geqq1$ の場合を誤る。
- (3) の $x\to\infty$ の極限:最高次の $x^2$ でくくって (2) の $x^2e^{-x}$ に持ちこむ一手を書かず、「(2) より」だけで済ませると減点されやすい。
- (2) の極限:不定形が解消できない形なので、前半の不等式をはさみうちの原理の誘導と見て使えるか。
2011年九州大学理系数学
第3問 解答・解説
第3問は数列・三角関数の問題です。
テーマは「$\tan$ の2倍角の公式と同じ形の漸化式を、角度の数列に直し、角を書き並べて周期を求める」。
問題


問題文をテキストで読む
数列 $a_1,a_2,\cdots,a_n,\cdots$ は
$$a_{n+1}=\frac{2a_n}{1-a_n^2},\qquad n=1,2,3,\cdots$$
をみたしているとする。このとき、以下の問いに答えよ。
(1) $a_1=\dfrac{1}{\sqrt3}$ とするとき、一般項 $a_n$ を求めよ。
(2) $\tan\dfrac{\pi}{12}$ の値を求めよ。
(3) $a_1=\tan\dfrac{\pi}{20}$ とするとき、
$$a_{n+k}=a_n,\qquad n=3,4,5,\cdots$$
をみたす最小の自然数 $k$ を求めよ。
解答の方針
【(1)の方針】
どの型にも当てはまらない漸化式は、具体的に $a_2,a_3,a_4$ を計算して一般項を予想し、数学的帰納法で示す。
また、具体的な計算で現れる $\dfrac{1}{\sqrt3}$、 $\sqrt3$ は $\tan\dfrac{\pi}{6}$、 $\tan\dfrac{\pi}{3}$ の値。この漸化式は $\tan$ の2倍角の公式 $\tan2\theta=\dfrac{2\tan\theta}{1-\tan^2\theta}$ と同じ形をしていて、(3) ではこの見方を使う。
- 漸化式に $n=1,2,3$ を代入して $a_2,a_3,a_4$ を求める。
- $n\geqq2$ で $a_n=(-1)^n\sqrt3$ と予想する。
- $n=2$ で正しいこと、 $n=k$ で正しければ $n=k+1$ でも正しいことを示す(数学的帰納法)。
- $a_1=\dfrac{1}{\sqrt3}$ は予想の形に入らないので、 $n=1$ と $n\geqq2$ に分けて答える。
【(2)の方針】
$\dfrac{\pi}{12}$( $15^\circ$)は、有名角の差 $45^\circ-30^\circ$ に分けて加法定理で求める。 $\sin15^\circ$、 $\cos15^\circ$ を覚えていれば、 $\tan15^\circ=\dfrac{\sin15^\circ}{\cos15^\circ}$ からも求まる(別解1)。
- $\dfrac{\pi}{12}$( $15^\circ$)を $\dfrac{\pi}{4}-\dfrac{\pi}{6}$( $45^\circ-30^\circ$)と有名角の差に分ける。
- $\tan$ の加法定理に $\tan\dfrac{\pi}{4}=1$、 $\tan\dfrac{\pi}{6}=\dfrac{1}{\sqrt3}$ を代入する。
- 分母を有理化して答える。
【(3)の方針】
漸化式 $a_{n+1}=\dfrac{2a_n}{1-a_n^2}$ は、 $\tan$ の2倍角の公式 $\tan2\theta=\dfrac{2\tan\theta}{1-\tan^2\theta}$ と同じ形をしている。 $a_n=\tan\theta$ なら $a_{n+1}=\tan2\theta$ なので、項が1つ進むごとに角が2倍になる。こう見抜ければ、漸化式は角度の数列に直せて、難しい所はない。
角を2倍ずつ書き並べれば、4回で元に戻ることが分かる(下の図)。
ただし、$k=1,2,3$ では成り立たないことと、漸化式の分母が0にならないことも示す。


- $\tan$ の2倍角の公式から、「 $a_n=\tan\theta$( $\tan^2\theta\neq1$)なら $a_{n+1}=\tan2\theta$」とする。
- $a_1=\tan\dfrac{\pi}{20}$ から $a_7$ まで、角を2倍し、 $\pi$ を超えたら $\pi$ を引いて書き並べる。どの角も $\dfrac{\pi}{4}$、 $\dfrac{3\pi}{4}$ ではないので、漸化式の分母が0にならないことも確かめる。
- $a_7=a_3$ と、「 $a_{n+1}$ は $a_n$ だけで決まる」ことから、すべての $n\geqq3$ で $a_{n+4}=a_n$ を示す。
- $\tan$ の増減と符号から $a_3$、 $a_4$、 $a_5$、 $a_6$ がすべて異なることを示し、 $k=1,2,3$ では成り立たないことを確かめて、最小の $k$ を求める。
解答




解答をテキストで読む
(1) 配点 15点
漸化式に $n=1,2,3$ を代入すると
$$a_2=\frac{\dfrac{2}{\sqrt3}}{1-\dfrac13}=\sqrt3,\qquad a_3=\frac{2\sqrt3}{1-3}=-\sqrt3,\qquad a_4=\frac{-2\sqrt3}{1-3}=\sqrt3$$
よって、 $n\geqq2$ のとき
$$a_n=(-1)^n\sqrt3\qquad\cdots\text{①}$$
と予想できる。これを数学的帰納法で示す。
(i) $n=2$ のとき、 $a_2=\sqrt3$ より①は正しい。
(ii) $n=k$( $k\geqq2$)のとき①が正しい、すなわち $a_k=(-1)^k\sqrt3$ と仮定すると、 $a_k^2=3$ なので
$$a_{k+1}=\frac{2\cdot(-1)^k\sqrt3}{1-3}=(-1)^{k+1}\sqrt3$$
となり、 $n=k+1$ のときも①は正しい。
(i)(ii) より、 $n\geqq2$ のすべての自然数 $n$ で①は正しい。
$a_1=\dfrac{1}{\sqrt3}$ は①の形ではないので、 $n=1$ は別に書く。
答 $a_1=\dfrac{1}{\sqrt3}$、 $n\geqq2$ のとき $a_n=(-1)^n\sqrt3$
別解( $\tan$ で見る) $a_1=\tan\dfrac{\pi}{6}$ で、(3) の解答の冒頭と同じく、項が進むごとに角が2倍になる。 $a_2=\tan\dfrac{\pi}{3}$、 $a_3=\tan\dfrac{2\pi}{3}$、 $a_4=\tan\dfrac{4\pi}{3}=\tan\dfrac{\pi}{3}$ となり、 $n\geqq2$ では $\tan\dfrac{\pi}{3}=\sqrt3$ と $\tan\dfrac{2\pi}{3}=-\sqrt3$ を交互にとる。
(2) 配点 10点
$\dfrac{\pi}{12}=\dfrac{\pi}{4}-\dfrac{\pi}{6}$ と有名角の差に分けて、加法定理より
$$\tan\frac{\pi}{12}=\frac{\tan\dfrac{\pi}{4}-\tan\dfrac{\pi}{6}}{1+\tan\dfrac{\pi}{4}\tan\dfrac{\pi}{6}}=\frac{1-\dfrac{1}{\sqrt3}}{1+\dfrac{1}{\sqrt3}}=\frac{\sqrt3-1}{\sqrt3+1}=\frac{(\sqrt3-1)^2}{2}=2-\sqrt3$$
答 $2-\sqrt3$
別解1(暗記している $\sin15^\circ$、 $\cos15^\circ$ を使う) $\tan$ を $\sin$ と $\cos$ に置きかえると
$$\tan\frac{\pi}{12}=\frac{\sin15^\circ}{\cos15^\circ}=\frac{\sqrt6-\sqrt2}{\sqrt6+\sqrt2}=\frac{(\sqrt6-\sqrt2)^2}{4}=2-\sqrt3$$
別解2(2倍角の公式) $x=\tan\dfrac{\pi}{12}$( $x>0$)とおくと、 $\tan$ の2倍角の公式より
$$\frac{2x}{1-x^2}=\tan\frac{\pi}{6}=\frac{1}{\sqrt3}$$
整理すると $x^2+2\sqrt3x-1=0$ で、 $x>0$ より $x=-\sqrt3+2$。この式は「 $a_1=\tan\dfrac{\pi}{12}$ なら $a_2=\tan\dfrac{\pi}{6}$」ということで、(1) の $a_1=\dfrac{1}{\sqrt3}$ につながる。(2) は、漸化式を $\tan$ の2倍角で見るための (3) へのヒントになっている。
(3) 配点 25点
$\tan$ の2倍角の公式
$$\tan2\theta=\frac{2\tan\theta}{1-\tan^2\theta}$$
より、 $a_n=\tan\theta$ で $\tan^2\theta\neq1$ ならば、 $a_{n+1}=\tan2\theta$ である。また、 $\tan$ は周期 $\pi$ の関数なので、角から $\pi$ を引いてもよい。
$a_1=\tan\dfrac{\pi}{20}$ から順に角を2倍していくと
$$a_1=\tan\frac{\pi}{20},\quad a_2=\tan\frac{\pi}{10},\quad a_3=\tan\frac{\pi}{5},\quad a_4=\tan\frac{2\pi}{5},\quad a_5=\tan\frac{4\pi}{5}$$
$$a_6=\tan\frac{8\pi}{5}=\tan\frac{3\pi}{5},\qquad a_7=\tan\frac{6\pi}{5}=\tan\frac{\pi}{5}$$
となる。ここで、角 $\dfrac{\pi}{20}$、 $\dfrac{\pi}{10}$、 $\dfrac{\pi}{5}$、 $\dfrac{2\pi}{5}$、 $\dfrac{4\pi}{5}$、 $\dfrac{3\pi}{5}$ はどれも $\tan^2\theta=1$ となる $\dfrac{\pi}{4}$、 $\dfrac{3\pi}{4}$ ではないので、 $1-a_n^2\neq0$ であり、漸化式の分母は0にならない。
よって $a_7=a_3$ である。 $n\geqq3$ で $a_{n+4}=a_n$ であることを数学的帰納法で示す。
(i) $n=3$ のとき、 $a_7=a_3$ より正しい。
(ii) $n=m$( $m\geqq3$)のとき $a_{m+4}=a_m$ と仮定する。 $a_{m+1}$ は $a_m$ だけで決まるので
$$a_{m+5}=\frac{2a_{m+4}}{1-a_{m+4}^2}=\frac{2a_m}{1-a_m^2}=a_{m+1}$$
となり、 $n=m+1$ のときも正しい。
(i)(ii) より、すべての $n\geqq3$ で $a_{n+4}=a_n$ である。このとき $n\geqq3$ の $a_n$ は $a_3$、 $a_4$、 $a_5$、 $a_6$ のどれかなので、漸化式の分母はいつまでも0にならない。
次に、最小であることを示す。 $0<\dfrac{\pi}{5}<\dfrac{2\pi}{5}<\dfrac{\pi}{2}$ で $\tan$ は増加するので $0<a_3<a_4$、同じく $\dfrac{\pi}{2}<\dfrac{3\pi}{5}<\dfrac{4\pi}{5}<\pi$ で $a_6<a_5<0$ である。よって $a_3$、 $a_4$、 $a_5$、 $a_6$ はすべて異なり、 $n=3$ のとき $a_4\neq a_3$、 $a_5\neq a_3$、 $a_6\neq a_3$ なので、 $k=1,2,3$ では $a_{n+k}=a_n$ は成り立たない。
したがって、求める最小の自然数 $k$ は4である(下の図。 $a_3$ から角は $\dfrac{\pi}{5}\to\dfrac{2\pi}{5}\to\dfrac{4\pi}{5}\to\dfrac{3\pi}{5}$ と回り、 $a_7$ で $\dfrac{\pi}{5}$ に戻る)。
答 $k=4$
別解(角度の差が $\pi$ の整数倍) 数学的帰納法で、すべての自然数 $n$ で $a_n=\tan\dfrac{2^{n-1}\pi}{20}$ を示す。 $n=m$ で正しいと仮定すると、 $\tan^2\dfrac{2^{m-1}\pi}{20}=1$ となるのは角が $\dfrac{\pi}{4}$ の奇数倍、すなわち $2^{m-1}$ が5の奇数倍のときだけで、 $2^{m-1}$ は5の倍数ではないから分母は0にならず、 $a_{m+1}=\tan\dfrac{2^m\pi}{20}$ となる。
この2点を $\tan$ にあてはめると、同じ値をとる角は $\pi$ ずれた角なので、「 $\tan$ の値が等しい $\iff$ 角度の差が $\pi$ の整数倍」となる。 $a_{n+k}$ と $a_n$ の角度の差は
$$\frac{2^{n+k-1}\pi}{20}-\frac{2^{n-1}\pi}{20}=\frac{2^{n-1}(2^k-1)}{20}\pi$$
なので、 $a_{n+k}=a_n$ となる条件は、 $2^{n-1}(2^k-1)$ が20の倍数であることである。 $n\geqq3$ のとき $2^{n-1}$ は4の倍数で、5の倍数ではないので、条件は「 $2^k-1$ が5の倍数」であり、 $n$ によらない。 $2^1$、 $2^2$、 $2^3$、 $2^4$ を5で割った余りは順に $2$、 $4$、 $3$、 $1$ なので、最小の $k$ は4。この解き方では、すべての $n\geqq3$ で成り立つことと、 $k=1,2,3$ では成り立たないことが同時に示せる
出題意図
(1) どの型にも当てはまらない漸化式を、具体的に計算して一般項を予想し、数学的帰納法で示せるか
(2) $\dfrac{\pi}{12}$ を有名角の差に分けて、加法定理で $\tan$ の値を求められるか
(3) 漸化式が $\tan$ の2倍角の公式と同じ形であることを見抜き、 $a_n=\tan\theta_n$ とおいて角度の数列に直せるか。さらに角を書き並べて、何回で元に戻るかを捉えることができるか。
同じ年の文系第2問にも同じ漸化式が出題されている(文系は (3) が $a_1=\tan\dfrac{\pi}{7}$ のとき $a_k=a_1$ となる最小の $k$)。文系・理系とも、 $\tan$ の2倍角の公式に気づけるかを見ている。
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 50点 | 50点 |
| 目標時間 | 20分 | 30分 |
漸化式 $a_{n+1}=\dfrac{2a_n}{1-a_n^2}$ が $\tan$ の2倍角の公式の形だと見抜ければ、難しい所はない問題。
(1) は具体的に計算して予想し、数学的帰納法で示すだけ。
(2) は加法定理で求めるだけで、 $\dfrac{\pi}{12}$ になじみがなければ $15^\circ$ に直して $45^\circ-30^\circ$ と見ればよい。
(3) は角を書き並べれば、4回で元に戻ることがすぐ分かる。
差がつく所・失点しやすい所
- 差がつくのは (3):漸化式が $\tan$ の2倍角の公式と同じ形だと見抜き、 $a_n=\tan\theta_n$ とおいて角を書き並べる発想に行き着けるか。(1)(2) で現れる $\tan$ の値がそのヒント。
- (3) で $k=4$ と答えるだけでなく、 $k=1,2,3$ では成り立たないこと( $a_3$〜 $a_6$ がすべて異なること)と、漸化式の分母が0にならないことまで書けるか。ここを書かないと減点される。
2011年九州大学理系数学
第4問 解答・解説
第4問は空間ベクトルの問題です。
テーマは「4点を通る球面の中心、点から平面に下ろした垂線の長さ、四面体の体積」。
問題


問題文をテキストで読む
空間内の4点
$$\mathrm{O}(0,0,0),\ \mathrm{A}(0,2,3),\ \mathrm{B}(1,0,3),\ \mathrm{C}(1,2,0)$$
を考える。このとき、以下の問いに答えよ。
(1) 4点O、A、B、Cを通る球面の中心Dの座標を求めよ。
(2) 3点A、B、Cを通る平面に点Dから垂線を引き、交点をFとする。線分DFの長さを求めよ。
(3) 四面体ABCDの体積を求めよ。
解答の方針
【(1)の方針】
球は中心と半径に注目し、中心を $\mathrm{D}(p,q,r)$ とおいて、Dから4点までの距離がすべて等しいとする。
実際に4点を座標空間に書いてみると、O、A、B、Cは縦1・横2・高さ3の直方体の、互いに隣り合わない4つの頂点に並んでいる(下の図)。中心Dは直方体の中心になるので、答えの検算に使える(別解)。


- 中心を $\mathrm{D}(p,q,r)$ とおき、 $\mathrm{DO}^2=\mathrm{DA}^2$、 $\mathrm{DO}^2=\mathrm{DB}^2$、 $\mathrm{DO}^2=\mathrm{DC}^2$ の3式を立てる。
- 3式はどれも $p^2+q^2+r^2$ が消えて1次方程式になるので、連立して $p,q,r$ を求める。
- Dから4点までの距離の2乗がすべて等しいことを確かめて、Dの座標を答える。
【(2)の方針】
DFは平面に垂直なベクトルを求めて、垂線の足Fを求める流れで処理する。垂線DFはそのベクトルの実数倍で、Fは平面ABC上にある。


- 平面ABCに垂直なベクトルを $\vec{n’}=(a,b,c)$ とおき、 $\vec{n’}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AB}}=0$、 $\vec{n’}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AC}}=0$ から $a,b,c$ の比を求め、くくった最小単位 $\vec n=(6,3,2)$ をとる。
- 平面ABC上の点を $\mathrm{P}(x,y,z)$ とし、 $\vec n\cdot\overrightarrow{\mathrm{AP}}=0$ から平面ABCの方程式 $6x+3y+2z=12$ を求める。
- $\overrightarrow{\mathrm{DF}}=k\vec n$ とおき、 $\overrightarrow{\mathrm{OF}}=\overrightarrow{\mathrm{OD}}+k\vec n$ でFの座標を $k$ で表す。
- Fの座標を平面ABCの方程式に代入して $k=\dfrac{3}{49}$ を求め、 $\mathrm{DF}=|k||\vec n|$ を求める。
【(3)の方針】
底面を $\triangle\mathrm{ABC}$ にすれば、高さは (2) で求めたDFそのもの。 $\triangle\mathrm{ABC}$ の面積は、2つのベクトルの大きさと内積で表す公式で求める。
- $|\overrightarrow{\mathrm{AB}}|^2$、 $|\overrightarrow{\mathrm{AC}}|^2$、 $\overrightarrow{\mathrm{AB}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AC}}$ を求め、面積の公式で $\triangle\mathrm{ABC}=\dfrac72$ を求める。
- 高さを (2) の $\mathrm{DF}=\dfrac37$ として、 $\dfrac13\times\triangle\mathrm{ABC}\times\mathrm{DF}$ を計算する。
解答


解答をテキストで読む
(1) 配点 15点
球面の中心を $\mathrm{D}(p,q,r)$ とする。4点O、A、B、Cは球面上にあるので、 $\mathrm{DO}=\mathrm{DA}=\mathrm{DB}=\mathrm{DC}$ (半径)。2乗して比べる。
$\mathrm{DO}^2=\mathrm{DA}^2$ より
$$p^2+q^2+r^2=p^2+(q-2)^2+(r-3)^2\iff4q+6r=13$$
$\mathrm{DO}^2=\mathrm{DB}^2$ より
$$p^2+q^2+r^2=(p-1)^2+q^2+(r-3)^2\iff2p+6r=10$$
$\mathrm{DO}^2=\mathrm{DC}^2$ より
$$p^2+q^2+r^2=(p-1)^2+(q-2)^2+r^2\iff2p+4q=5$$
2つ目の式から3つ目の式を辺々引くと $6r-4q=5$。これと1つ目の式を辺々足して $12r=18$、すなわち $r=\dfrac32$。戻して $q=1$、 $p=\dfrac12$。
このとき $\mathrm{DO}^2=\dfrac14+1+\dfrac94=\dfrac72$ で、 $\mathrm{DA}^2$、 $\mathrm{DB}^2$、 $\mathrm{DC}^2$ もすべて $\dfrac72$ になる。
答 $\mathrm{D}\left(\dfrac12,\ 1,\ \dfrac32\right)$
別解(球面の方程式) 球面は原点を通るので、定数項のない形 $x^2+y^2+z^2+\alpha x+\beta y+\gamma z=0$ とおける。A、B、Cを通るので
$$13+2\beta+3\gamma=0,\qquad10+\alpha+3\gamma=0,\qquad5+\alpha+2\beta=0$$
これを解いて $\alpha=-1$、 $\beta=-2$、 $\gamma=-3$。平方完成すると $\left(x-\dfrac12\right)^2+(y-1)^2+\left(z-\dfrac32\right)^2=\dfrac72$ となり、同じ中心が求まる。
(2) 配点 20点
$\overrightarrow{\mathrm{AB}}=(1,-2,0)$、 $\overrightarrow{\mathrm{AC}}=(1,0,-3)$。平面ABCに垂直なベクトルを $\vec{n’}=(a,b,c)$ とおく。 $\vec{n’}$ は平面ABC上の2つのベクトル $\overrightarrow{\mathrm{AB}}$、 $\overrightarrow{\mathrm{AC}}$ と垂直なので
$$\vec{n’}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AB}}=a-2b=0,\qquad\vec{n’}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AC}}=a-3c=0$$
よって $a=3c$、 $b=\dfrac32c$ で、 $\vec{n’}=\dfrac c2(6,3,2)$。平面ABCに垂直なベクトルとして $\vec n=(6,3,2)$ がとれる( $|\vec n|=\sqrt{36+9+4}=7$ )。
平面ABC上の点を $\mathrm{P}(x,y,z)$ とすると、 $\vec n\perp\overrightarrow{\mathrm{AP}}$ より $\vec n\cdot\overrightarrow{\mathrm{AP}}=0$。
$$6x+3(y-2)+2(z-3)=0\iff6x+3y+2z=12$$
(B、Cの座標も満たすことが確かめられる。)
DFは平面ABCに垂直なので、実数 $k$ を用いて $\overrightarrow{\mathrm{DF}}=k\vec n$ とおける。Dまで行ってからFへ進むと
$$\overrightarrow{\mathrm{OF}}=\overrightarrow{\mathrm{OD}}+k\vec n=\left(\frac12+6k,\ 1+3k,\ \frac32+2k\right)$$
Fは平面ABC上にあるので、方程式に代入して
$$6\left(\frac12+6k\right)+3(1+3k)+2\left(\frac32+2k\right)=12\iff9+49k=12\iff k=\frac{3}{49}$$
$$\mathrm{DF}=|k||\vec n|=\frac{3}{49}\times7=\frac37$$
答 $\dfrac37$
(このとき $\mathrm{F}\left(\dfrac{85}{98},\ \dfrac{58}{49},\ \dfrac{159}{98}\right)$。)
別解(点と平面の距離の公式) 平面ABCは $6x+3y+2z-12=0$ なので、Dとの距離は
$$\mathrm{DF}=\frac{\left|6\cdot\dfrac12+3\cdot1+2\cdot\dfrac32-12\right|}{\sqrt{6^2+3^2+2^2}}=\frac37$$
(3) 配点 15点
$|\overrightarrow{\mathrm{AB}}|^2=1+4+0=5$、 $|\overrightarrow{\mathrm{AC}}|^2=1+0+9=10$、 $\overrightarrow{\mathrm{AB}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AC}}=1+0+0=1$ より
$$\triangle\mathrm{ABC}=\frac12\sqrt{|\overrightarrow{\mathrm{AB}}|^2|\overrightarrow{\mathrm{AC}}|^2-(\overrightarrow{\mathrm{AB}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AC}})^2}=\frac12\sqrt{5\cdot10-1^2}=\frac72$$
DFは平面ABCに垂直なので、四面体ABCDの底面を $\triangle\mathrm{ABC}$ とすると、高さは (2) の $\mathrm{DF}=\dfrac37$。よって体積は
$$\frac13\times\frac72\times\frac37=\frac12$$
答 $\dfrac12$
別解(直方体に埋め込む・(1)〜(3) の検算) O、A、B、Cは、 $0\leqq x\leqq1$、 $0\leqq y\leqq2$、 $0\leqq z\leqq3$ の直方体の8つの頂点のうち、互いに隣り合わない4つ(どの2点も直方体の面の対角線で結ばれる)。
・(1):直方体の8つの頂点は、直方体の中心から等しい距離にある。同じ平面上にない4点を通る球面はただ1つなので、求める球面は直方体の8つの頂点を通る球面で、中心Dは直方体の中心 $\left(\dfrac12,\ 1,\ \dfrac32\right)$。
・(3):四面体OABCは、直方体から、O、A、B、C以外の4つの頂点のまわりの三角すい(直角をはさむ3辺が1、2、3)を4つ除いたもの。体積は $1\cdot2\cdot3-4\times\dfrac16\cdot1\cdot2\cdot3=2$。また $\overrightarrow{\mathrm{OD}}=\dfrac14\left(\overrightarrow{\mathrm{OA}}+\overrightarrow{\mathrm{OB}}+\overrightarrow{\mathrm{OC}}\right)$ (Dは4点O、A、B、Cの重心)なので、 $\overrightarrow{\mathrm{AD}}=\dfrac14\overrightarrow{\mathrm{AO}}+\dfrac14\overrightarrow{\mathrm{AB}}+\dfrac14\overrightarrow{\mathrm{AC}}$。 $\overrightarrow{\mathrm{AB}}$、 $\overrightarrow{\mathrm{AC}}$ は平面ABCに沿う向きなので、Dと平面ABCの距離はOと平面ABCの距離の $\dfrac14$。よって四面体ABCDの体積は $2\times\dfrac14=\dfrac12$。
・(2):体積と底面積から逆算して $\mathrm{DF}=\dfrac{3\times\dfrac12}{\ \dfrac72\ }=\dfrac37$。
出題意図
- 球の中心・平面に垂直なベクトル・垂線の長さ・四面体の体積という、空間ベクトルの基本の手順を順に正確に処理できるか。
- 前の小問の答え(中心D、垂線DF)を次の小問でそのまま使う流れを捉えることができるか。
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 簡単 | |
| 目標得点 | 50点 | 50点 |
| 目標時間 | 15分 | 25分 |
座標を設定して、ゴリゴリ計算しにいく問題。
(1) は中心を $(p,\ q,\ r)$ とおいて4点までの距離が等しいとするだけ。
(2) は平面ABCに垂直なベクトルを求める、よくあるベクトルの問題。
(3) は三角形ABCの面積を求めて体積へつなぐだけ。
差がつく所・失点しやすい所
- 特になし:発想で差がつく所はない。差がつくとすれば (1) の連立方程式・(2) の平面に垂直なベクトルの計算を間違えないかどうかだけ。このレベルの問題で差をつけられるようでは、九大合格はかなり危ない。
2011年九州大学理系数学
第5問 解答・解説
第5問は確率・期待値の問題です。
テーマは「カードの入れかえ操作と左端のカードの確率・期待値」。
問題


問題文をテキストで読む
1から4までの数字が1つずつ書かれた4枚のカードがある。その4枚のカードを横一列に並べ、以下の操作を考える。
操作:1から4までの数字が1つずつ書かれた4個の球が入っている袋から同時に2個の球を取り出す。球に書かれた数字が $i$ と $j$ ならば、 $i$ のカードと $j$ のカードを入れかえる。その後、2個の球は袋に戻す。
初めにカードを左から順に1、2、3、4と並べ、上の操作を $n$ 回繰り返した後のカードについて、以下の問いに答えよ。
(1) $n=2$ のとき、カードが左から順に1、2、3、4と並ぶ確率を求めよ。
(2) $n=2$ のとき、カードが左から順に4、3、2、1と並ぶ確率を求めよ。
(3) $n=2$ のとき、左端のカードの数字が1になる確率を求めよ。
(4) $n=3$ のとき、左端のカードの数字の期待値を求めよ。
解答の方針
1回の操作で取り出す2個の組は ${}_4\mathrm{C}_2=6$ 通りで、どれも確率 $\dfrac16$ 。2回なら $6^2=36$ 通り、3回なら $6^3$ 通りが同様に確からしい(全体の数え方を先に決め、分子も同じ数え方で数える)。
カードの並びを実際に書いて何回か操作を実験すれば、どういう状況になれば条件を満たすかはすぐに見える。
【(1)の方針】
1、2、3、4 に戻るのは、1回目はどの組を引いてもよく、2回目に1回目と同じ組を引くとき。入れかえは同じ組をもう1回引けば元に戻り、1回目で入れかわった2枚を戻せるのは、その2枚の組だけだから。
- 1回目の操作の後は、入れかえた2枚だけが元の位置からずれていることを確かめる。
- 元に戻るのは「1回目はどの組でもよく、2回目に1回目と同じ組を引くとき」だけだと言いかえ、6通りと数える。
- 36通りで割って答える。
【(2)の方針】
(1) と同じ要領で実験すると、4、3、2、1 は1と4、2と3を入れかえた並び。2回で4枚とも動かすには、1と4の組と2と3の組を1回ずつ引くしかない。
- 4枚すべてが動いているので、2回の操作で引く2組は重ならないことを確かめる。
- 4、3、2、1 にするには、1と4の組、2と3の組を1回ずつ引けばよく、引く順番で2通りあると数える。
- 36通りで割って答える。
【(3)の方針】
問われているのは左端のカードだけなので、並び全体( $4!=24$ 通り)ではなく左端の1が動くか動かないかで場合分けする。
- 1回目に1が動かない(1を含まない組を引く)とき:残り3枚の中で入れかわるだけで、左端は1のまま。2回目も1を含まない組を引けば、左端は1のまま。
- 1回目に1が動く(1を含む組を引く)とき:左端は2、3、4のどれかになる。2回目に1を左端に戻すには、1と、そのとき左端にあるカードの組を引くしかない(1通り)。


- 1回目に1が動くか動かないかで場合分けする。
- 動かない場合:1回目も2回目も1を含まない組(各3通り)を引く確率を求める。
- 動く場合:1回目に1を含む組(3通り)、2回目に1と左端のカードの組(1通り)を引く確率を求める。
- 2つの場合の確率を足して答える。
【(4)の方針】
期待値は、左端の数字が1、2、3、4になる確率を全部求めて「値×確率」を足す。
- 左端が1である確率:状態を「左端が1」「左端が1でない」の2つにまとめ、(3) の結果に推移図(下の図)の矢印をかけて足す。


- 2、3、4:左端が $x$ のとき、次に左端が $y\ (\neq x)$ になるのは $x$ と $y$ の組を引いたときだけで、確率は $y$ によらず $\dfrac16$ 。左端の数字の動きは2、3、4について区別がないので、対称性より、2、3、4が左端になる確率は等しい。だから3つを1つずつ計算せず、「全部で1」から左端が1の確率を引いて3等分する。
- 2回後に左端が1である確率は (3) の $\dfrac13$ 、1でない確率は $\dfrac23$ と確かめる。
- 左端の「1」「1でない」の推移図を書き、3回目に「左端が1」に入る2本の矢印をかけて足して、3回後に左端が1である確率を求める。
- 対称性より、3回後に左端が2、3、4である確率は等しいので、1から手順2の確率を引いて3等分する。
- 「値×確率」を足して期待値を求める。
解答


解答をテキストで読む
1回の操作で取り出す2個の組は ${}_4\mathrm{C}_2=6$ 通りあり、どれも確率 $\dfrac16$ で起こる。 $n$ 回の操作の取り出し方は $6^n$ 通りで、これらは同様に確からしい。
(1) 配点 10点
1回目の操作の後は、取り出した組の2枚だけが入れかわり、残りの2枚は元の位置にある。2回目で1、2、3、4に戻るのは、ずれている2枚をもう一度入れかえるとき、つまり1回目はどの組でもよく、2回目に1回目と同じ組を取り出すときだけである。
1回目の組は6通りで、2回目はそれと同じ1通りなので
$$\dfrac{6\cdot1}{36}=\dfrac16$$
答 $\dfrac16$
(2) 配点 10点
4、3、2、1 では4枚すべてが元の位置からずれている。1回の操作で位置が変わるのは2枚だけなので、2回の操作で取り出す2組は重ならない。4、3、2、1 は、1、2、3、4 から1と4、2と3を入れかえた並びなので、1と4の組と2と3の組を1回ずつ取り出す場合に限られる。
この2組をどちらの順に取り出しても4、3、2、1 になるので、順番で2通りある。
$$\dfrac{2}{36}=\dfrac{1}{18}$$
答 $\dfrac{1}{18}$
(3) 配点 15点
左端のカードに注目し、1回目に1が動くか動かないかで場合分けする。
(i) 1回目に1を含まない組(3通り)を取り出すとき
1は動かず、残り3枚の中で入れかわるだけなので、左端は1のままである。2回後に左端が1であるのは、2回目も1を含まない組(3通り)を取り出すときだけである。
(ii) 1回目に1を含む組(3通り)を取り出すとき
1が左端から動き、左端は2、3、4のどれかになる。2回目に左端を1に戻すには、1とそのとき左端にあるカードの組(1通り)を取り出すしかない。
(i)(ii) は同時には起こらないので、求める確率は
$$\dfrac{3\cdot3}{36}+\dfrac{3\cdot1}{36}=\dfrac{9}{36}+\dfrac{3}{36}=\dfrac13$$
答 $\dfrac13$
(4) 配点 15点
1回の操作で、左端が1のときは1を含む組(3通り)を取り出すと左端が1でなくなり、それ以外(3通り)では1のまま。左端が1以外の $j$ のときは1と $j$ の組(1通り)を取り出したときだけ左端が1になり、それ以外(5通り)では1でないままである。左端の状態を「1」「1でない」の2つに分けると、推移は次の図のようになる。
(3) より、2回後に左端が1である確率は $\dfrac13$ 、1でない確率は $1-\dfrac13=\dfrac23$ である。3回後に左端が1になるのは、2回後に左端が1で3回目に1を含まない組を取り出すときと、2回後に左端が1でなく3回目に1と左端のカードの組を取り出すときなので、その確率は
$$\dfrac13\cdot\dfrac12+\dfrac23\cdot\dfrac16=\dfrac16+\dfrac19=\dfrac{5}{18}$$
左端のカードが $x$ のとき、次に左端が $y\ (y\neq x)$ になるのは $x$ と $y$ の組を取り出すときだけで、その確率は $y$ によらず $\dfrac16$ である。よって、左端の数字の動きは2、3、4について区別がなく、対称性より、3回後に左端が2、3、4である確率は等しい。それぞれ
$$\dfrac13\left(1-\dfrac{5}{18}\right)=\dfrac13\cdot\dfrac{13}{18}=\dfrac{13}{54}$$
したがって、求める期待値は
$$1\cdot\dfrac{5}{18}+(2+3+4)\cdot\dfrac{13}{54}=\dfrac{15}{54}+\dfrac{117}{54}=\dfrac{132}{54}=\dfrac{22}{9}$$
答 $\dfrac{22}{9}$
3回までの推移をまとめると、次の図のようになる。
別解(漸化式) $n$ 回後に左端が1である確率を $r_n$ とすると、推移図から $r_{n+1}=\dfrac12r_n+\dfrac16(1-r_n)=\dfrac13r_n+\dfrac16$ と1文字の漸化式が立つ。 $r_0=1$ から $r_1=\dfrac12$、 $r_2=\dfrac13$、 $r_3=\dfrac{5}{18}$ と順に求まる。この問題は $n=3$ までなので、上のように推移図の矢印をかけて足すだけで十分である。
出題意図
入れかえ操作でどういう状況になるかを、計算の前に言葉にできるか。(1)(2) は並び全体を見て、どの組をどの順に引けばよいかを捉えることができるか。
(3) 左端のカードだけに注目し、1が動くか動かないかで場合分けして整理できるか
(4) 2、3、4 が左端になる確率が等しいことを対称性で見抜き、期待値を求めることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 50点 | 50点 |
| 目標時間 | 20分 | 25分(実験する時間込み) |
シンプルな問題。
確率の問題で求められているのは、いきなり計算することではなく、「どういう状況になればよいか」を言葉にできるかどうか。
(3) は左端の1が動くか動かないかで場合分けし、(4) は2、3、4 が左端になる確率が等しいという対称性さえ意識すれば難しくない。
差がつく所・失点しやすい所
- 差がつくのは (3)(4):並び全体ではなく左端だけに注目し、1が動くか動かないかで場合分けする発想に行き着けるか。気づけばかけて足すだけで終わる。
- (4) の2、3、4:対称性で等しいとおき、「全部で1」から引いて3等分できるか。これで計算は最小限で済む。
- (2) の順番:1と4の組、2と3の組をどちらから取り出してもよいので2通り。1通りと数えて $\dfrac{1}{36}$ としやすい。
2011年九州大学・理系数学の
講評とまとめ
5問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 簡単 | 50点 | 50点 |
| 第2問 | 簡単 | 50点 | 50点 |
| 第3問 | やや簡単 | 50点 | 50点 |
| 第4問 | 簡単 | 50点 | 50点 |
| 第5問 | やや簡単 | 50点 | 50点 |
| 全体 | 簡単 | 250点 | 250点 |
全体として簡単で、かなり解きやすいセットです。
医学部医学科・その他の学部とも250点(満点)が目標です。
第3問は $\tan$ の2倍角、第5問は状況を言葉にして実験すれば解けます。
公式の形を見抜く・状況を言語化する演習を積んでおきましょう。
解く流れ
第1問 → 第2問 → 第3問 → 第4問 → 第5問(問題の順でよい。
どれもそれほど難しくない)。
2011年九州大学・理系数学に
関するよくある質問
2011年の九州大学・理系数学について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2011年の九州大学・理系数学は難しかった?
-
簡単な年でした。
第1問・第2問・第4問は簡単、第3問・第5問はやや簡単です。
行列の出題はなく、5問とも現行課程の範囲で解けます。 - 2011年の九州大学・理系数学は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で250点、その他の学部で250点です(250点満点)。
- 2011年の九州大学・理系数学はどこで差がつく?
-
全学部で満点を狙うセットです。そのうえで、差がつくとしたら次の3つです。
- 第3問(3):漸化式が $\tan$ の2倍角の公式と同じ形だと見抜き、 $a_n=\tan\theta_n$ とおいて角を書き並べられたか。
- 第5問(3)(4):並び全体ではなく左端だけに注目し、1が動くか動かないかで場合分けできたか。
- 第2問(3):右側で $f(x)$ が0に近づくが0にならないことから、 $k$ の範囲の端を正しく決められたか。
- 2011年の九州大学・理系数学は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:積分(数学Ⅲ)
- 第2問:微分法・極限(数学Ⅲ)
- 第3問:数列・三角関数
- 第4問:空間ベクトル
- 第5問:確率・期待値


