【解説・採点基準付き】2007年九州大学理系数学の解答・解説
2007年の九州大学・理系数学の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの採点基準付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2007年九州大学理系数学
第1問 解答・解説
この記事の配点・採点基準は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は微分法・積分(数学Ⅲ)の問題です。
テーマは「$xe^x$ と接線の上下関係、接線と曲線で囲む面積を最小にする接点」。
問題


問題文をテキストで読む
$f(x)=xe^x$ とおく。また $p$ を $p\geqq0$ を満たす数とし、曲線 $y=f(x)$ 上の点 $\mathrm{P}(p,\ f(p))$ における接線の方程式を $y=g(x)$ とおく。ただし、 $e$ は自然対数の底である。このとき、次の問いに答えよ。
(1) $x\geqq0$ において $f(x)\geqq g(x)$ が成り立つことを示せ。
(2) $L$ を正の数とする。曲線 $y=f(x)$、接線 $y=g(x)$、および2直線 $x=0$、 $x=L$ で囲まれた部分の面積を $S(p)$ とするとき、 $p\geqq0$ における $S(p)$ の最小値を与える $p$ の値を求めよ。
解答の方針
【(1)の方針】
1変数の不等式なので、差 $h(x)=f(x)-g(x)$ をとって微分する。 $h'(x)=f'(x)-f'(p)$ は「(式)−(定数)」の形なので、 $y=f'(x)$ と水平な直線 $y=f'(p)$ の上下で符号を読む。グラフで見れば「下に凸な曲線は接線より上」ということ。


- 接線の式 $g(x)=f'(p)(x-p)+f(p)$ を書き、 $h(x)=f(x)-g(x)$ とおく( $h(p)=0$)。
- $h'(x)=(x+1)e^x-(p+1)e^p$ を求める。
- $x\geqq0$ で $y=(x+1)e^x$ が増加することから、水平な直線 $y=(p+1)e^p$ との上下で $h'(x)$ の符号を読み、 $x<p$ で負、 $x>p$ で正と判定する( $p=0$ のときは $x>0$ で正だけ)。
- $h(x)$ は $x=p$ で最小値 $h(p)=0$ をとるので、 $x\geqq0$ で $h(x)\geqq0$ と結論する。
【(2)の方針】
(1) から曲線が接線より上にあるので、面積は絶対値なしで立式できる。あとは面積を $p$ の関数として表し、 $p$ で微分するだけ。曲線の下の部分の積分は $p$ によらない定数になる。


- $p$ によらない値 $\displaystyle\int_0^Lf(x)\,dx=(L-1)e^L+1$ を先に求めておく。
- $g(x)=(p+1)e^px-p^2e^p$ と整理して $\displaystyle\int_0^Lg(x)\,dx$ を求め、 $S(p)$ を $p$ の式で表す。
- $S'(p)=L(p+2)e^p\left(p-\dfrac L2\right)$ を求め、正の因子 $L(p+2)e^p$ を外して $p-\dfrac L2$ の符号から増減を調べる。
- $S(p)$ は $p=\dfrac L2$ で最小になると答える。
解答


解答をテキストで読む
(1) 配点 20点
$f'(x)=(x+1)e^x$ なので、点Pにおける接線は
$$g(x)=f'(p)(x-p)+f(p)=(p+1)e^p(x-p)+pe^p$$
$h(x)=f(x)-g(x)$ とおくと、 $h(p)=0$ であり
$$h'(x)=f'(x)-f'(p)=(x+1)e^x-(p+1)e^p$$
$x\geqq0$ では $x+1$ と $e^x$ はともに正で増加するので、その積 $y=(x+1)e^x$ も増加する。よって、水平な直線 $y=(p+1)e^p$ との上下から(下の図)、 $p>0$ のときは $0\leqq x<p$ で $h'(x)<0$、 $x>p$ で $h'(x)>0$ である。 $p=0$ のときは $x>0$ で $h'(x)>0$ だけである。
したがって、 $h(x)$ は $0\leqq x\leqq p$ で減少し( $p=0$ のときこの区間はない)、 $x\geqq p$ で増加するので、 $x\geqq0$ において最小値 $h(p)=0$ をとる(等号が成り立つのは $x=p$ のときだけ)。
よって、 $x\geqq0$ において $h(x)\geqq0$、すなわち $f(x)\geqq g(x)$ が成り立つ。
別解(下に凸で評価する) $f”(x)=(x+2)e^x>0$( $x\geqq0$ )なので、曲線 $y=f(x)$ は下に凸である。下に凸な曲線は接線より上にあるので、 $f(x)\geqq g(x)$ が成り立つ。接点を求めて差の符号を比べても、下に凸で評価してもよい。
(2) 配点 30点
$p\geqq0$、 $0\leqq x\leqq L$ なので、(1) より $f(x)\geqq g(x)$ である。よって、曲線が接線より上にあり(下の図)
$$S(p)=\int_0^L\{f(x)-g(x)\}\,dx=\int_0^Lf(x)\,dx-\int_0^Lg(x)\,dx$$
$p$ によらない値を先に求めておく。部分積分により
$$\int_0^Lf(x)\,dx=\Big[(x-1)e^x\Big]_0^L=(L-1)e^L+1$$
また、 $g(x)=(p+1)e^px-p^2e^p$ なので
$$\int_0^Lg(x)\,dx=\frac{L^2}{2}(p+1)e^p-Lp^2e^p$$
よって
$$S(p)=(L-1)e^L+1-\frac{L^2}{2}(p+1)e^p+Lp^2e^p$$
$p$ で微分すると
$$S'(p)=-\frac{L^2}{2}(p+2)e^p+L(p^2+2p)e^p=L(p+2)e^p\left(p-\frac L2\right)$$
$p\geqq0$ で $L(p+2)e^p>0$ なので、 $S'(p)$ の符号は $p-\dfrac L2$ の符号と一致する。よって、 $S(p)$ は $0\leqq p\leqq\dfrac L2$ で減少し、 $p\geqq\dfrac L2$ で増加するので、 $p=\dfrac L2$ で最小になる。
答 $p=\dfrac L2$
別解((1) を使って中点の高さで比べる) $g(x)$ は1次関数なので、 $\displaystyle\int_0^Lg(x)\,dx=L\cdot g\left(\dfrac L2\right)$(台形の面積=幅×中点の高さ)。(1) を $x=\dfrac L2$ に使うと $g\left(\dfrac L2\right)\leqq f\left(\dfrac L2\right)$ で、等号は $p=\dfrac L2$ のときだけ成り立つ(下の図。点線が点Pでの接線、実線が $x=\dfrac L2$ で接する接線)。よって $\displaystyle\int_0^Lg(x)\,dx$ は $p=\dfrac L2$ で最大、すなわち $S(p)$ は $p=\dfrac L2$ で最小になる。この解き方では $xe^x$ の具体的な形を使わず、曲線が下に凸であることだけで答えが決まる。
出題意図
(1) 不等式の証明を「差をとって微分」で処理し、導関数の符号を正しく判定できるか
(2) 面積を接点の $x$ 座標 $p$ の関数として表し、 $p$ で微分して最小値を求められるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 簡単 | |
| 目標得点 | 50点 | 50点 |
| 目標時間 | 15分 | 20分 |
(1) は差をとって微分するだけ、(2) は面積を $p$ の関数で表して微分するだけで、発想で悩む所はない。
注意点は計算ミスで、部分積分や積の微分を1か所誤った瞬間に答えがずれる。
差がつく所・失点しやすい所
- 唯一差がつくとすれば (2):面積を $p$ の関数として表し、 $p$ で微分するという発想に行き着けるか。 $\displaystyle\int_0^Lf(x)\,dx$ は $p$ によらない定数なので、計算は接線の積分だけで済む。
2007年九州大学理系数学
第3問 解答・解説
第3問は空間ベクトルの問題です。
テーマは「対称な3点を通る平面と球面・四面体の体積の最大」。
問題


問題文をテキストで読む
$a,b$ を正の数とし、空間内の3点 $\mathrm{A}(a,-a,b)$、 $\mathrm{B}(-a,a,b)$、 $\mathrm{C}(a,a,-b)$ を考える。A、B、Cを通る平面を $\alpha$、原点Oを中心としA、B、Cを通る球面を $S$ とおく。このとき、次の問いに答えよ。
(1) 線分ABの中点をDとするとき、 $\overrightarrow{\mathrm{DC}}\perp\overrightarrow{\mathrm{AB}}$ および $\overrightarrow{\mathrm{DO}}\perp\overrightarrow{\mathrm{AB}}$ であることを示せ。また $\triangle\mathrm{ABC}$ の面積を求めよ。
(2) ベクトル $\overrightarrow{\mathrm{DC}}$ と $\overrightarrow{\mathrm{DO}}$ のなす角を $\theta$ とするとき $\sin\theta$ を求めよ。また、平面 $\alpha$ に垂直で原点Oを通る直線と平面 $\alpha$ との交点をHとするとき、線分OHの長さを求めよ。
(3) 点Pが球面 $S$ 上を動くとき、四面体ABCPの体積の最大値を求めよ。ただし、Pは平面 $\alpha$ 上にはないものとする。
解答の方針
【(1)の方針】
DはABの中点なので、 $\mathrm{DC}\perp\mathrm{AB}$ が示せれば、DCがそのまま $\triangle\mathrm{ABC}$ の高さになる。垂直は内積0に翻訳する。


- Dの座標を求め、 $\overrightarrow{\mathrm{AB}}$、 $\overrightarrow{\mathrm{DC}}$、 $\overrightarrow{\mathrm{DO}}$ を成分で表す。
- $\overrightarrow{\mathrm{DC}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AB}}=0$、 $\overrightarrow{\mathrm{DO}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AB}}=0$ を計算で示す。
- 底辺AB、高さDCの長さを求め、 $\triangle\mathrm{ABC}=\dfrac12\cdot\mathrm{AB}\cdot\mathrm{DC}$ を計算する。
【(2)の方針】
$\sin\theta$ は内積から $\cos\theta$ を経由する。OHは、平面 $\alpha$ に垂直なベクトルを1本求め、Oから下ろした垂線を「その実数倍」と置けば、誰でも同じ手順で求まる。


- $\cos\theta=\dfrac{\overrightarrow{\mathrm{DC}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{DO}}}{|\overrightarrow{\mathrm{DC}}||\overrightarrow{\mathrm{DO}}|}$ を求め、 $\sin\theta=\sqrt{1-\cos^2\theta}$ を求める。
- $\vec n=(p,q,r)$ とおき、 $\vec n\cdot\overrightarrow{\mathrm{AB}}=0$、 $\vec n\cdot\overrightarrow{\mathrm{DC}}=0$ から、平面 $\alpha$ に垂直なベクトル $\vec n=(b,b,a)$ を求める。
- $\overrightarrow{\mathrm{OH}}=k\vec n$ とおく。Dは平面 $\alpha$ 上の点なので $\overrightarrow{\mathrm{DH}}\cdot\vec n=0$ で、 $k$ を求める。
- $\mathrm{OH}=k|\vec n|$ を計算して答える。
【(3)の方針】
底面 $\triangle\mathrm{ABC}$ は固定なので、高さ(Pと平面 $\alpha$ の距離)を最大にすればよい。球は中心と半径に注目する。中心Oから平面までの距離はOHなので、高さの最大は「半径+OH」。


- 球面 $S$ の半径 $R=\mathrm{OA}$ を求める。
- Pから平面 $\alpha$ に下ろした垂線の足をQとし、 $\mathrm{PQ}\leqq\mathrm{PH}\leqq\mathrm{PO}+\mathrm{OH}=R+\mathrm{OH}$ を示す。
- 等号が成り立つPの位置(直線HOをOの側へ延ばして球面 $S$ と交わる点)を確かめる。
- $\dfrac13\cdot\triangle\mathrm{ABC}\cdot(R+\mathrm{OH})$ に (1)(2) の値を代入して、最大値を求める。
解答


解答をテキストで読む
(1) 配点 15点
Dは線分ABの中点なので $\mathrm{D}(0,0,b)$。
$$\overrightarrow{\mathrm{AB}}=(-2a,\ 2a,\ 0),\qquad\overrightarrow{\mathrm{DC}}=(a,\ a,\ -2b),\qquad\overrightarrow{\mathrm{DO}}=(0,\ 0,\ -b)$$
$$\overrightarrow{\mathrm{DC}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AB}}=-2a^2+2a^2+0=0,\qquad\overrightarrow{\mathrm{DO}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AB}}=0+0+0=0$$
$\overrightarrow{\mathrm{AB}}\neq\vec0$、 $\overrightarrow{\mathrm{DC}}\neq\vec0$、 $\overrightarrow{\mathrm{DO}}\neq\vec0$ なので、 $\overrightarrow{\mathrm{DC}}\perp\overrightarrow{\mathrm{AB}}$、 $\overrightarrow{\mathrm{DO}}\perp\overrightarrow{\mathrm{AB}}$ である。
DはAB上にあり $\mathrm{DC}\perp\mathrm{AB}$ なので、ABを底辺とみると高さはDCである。 $|\overrightarrow{\mathrm{AB}}|=2\sqrt2\,a$、 $|\overrightarrow{\mathrm{DC}}|=\sqrt{2a^2+4b^2}=\sqrt2\sqrt{a^2+2b^2}$ より
$$\triangle\mathrm{ABC}=\frac12\cdot2\sqrt2\,a\cdot\sqrt2\sqrt{a^2+2b^2}=2a\sqrt{a^2+2b^2}$$
答 $\triangle\mathrm{ABC}=2a\sqrt{a^2+2b^2}$
(2) 配点 15点
$\overrightarrow{\mathrm{DC}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{DO}}=2b^2$、 $|\overrightarrow{\mathrm{DO}}|=b$ より
$$\cos\theta=\frac{2b^2}{\sqrt2\sqrt{a^2+2b^2}\cdot b}=\frac{\sqrt2\,b}{\sqrt{a^2+2b^2}}$$
$0<\theta<\pi$ より $\sin\theta>0$ なので
$$\sin\theta=\sqrt{1-\frac{2b^2}{a^2+2b^2}}=\frac{a}{\sqrt{a^2+2b^2}}$$
平面 $\alpha$ に垂直なベクトルを $\vec n=(p,q,r)$ とおく。 $\vec n$ は平面 $\alpha$ 上の2つのベクトル $\overrightarrow{\mathrm{AB}}$、 $\overrightarrow{\mathrm{DC}}$ に垂直なので
$$\vec n\cdot\overrightarrow{\mathrm{AB}}=-2ap+2aq=0,\qquad\vec n\cdot\overrightarrow{\mathrm{DC}}=ap+aq-2br=0$$
よって $q=p$、 $r=\dfrac{a}{b}p$ で、 $\vec n=\dfrac pb(b,\ b,\ a)$。大きさは何でもよいので、 $\vec n=(b,\ b,\ a)$ をとる( $|\vec n|=\sqrt{a^2+2b^2}$)。
Hは原点Oを通り平面 $\alpha$ に垂直な直線上にあるので、 $\overrightarrow{\mathrm{OH}}=k\vec n=(kb,\ kb,\ ka)$ とおける。Dも平面 $\alpha$ 上の点なので $\overrightarrow{\mathrm{DH}}\perp\vec n$、すなわち $\overrightarrow{\mathrm{DH}}\cdot\vec n=0$ である。 $\overrightarrow{\mathrm{DH}}=\overrightarrow{\mathrm{OH}}-\overrightarrow{\mathrm{OD}}=(kb,\ kb,\ ka-b)$ より
$$kb^2+kb^2+(ka-b)a=0\iff k=\frac{ab}{a^2+2b^2}$$
$k>0$ なので
$$\mathrm{OH}=k|\vec n|=\frac{ab}{a^2+2b^2}\cdot\sqrt{a^2+2b^2}=\frac{ab}{\sqrt{a^2+2b^2}}$$
答 $\sin\theta=\dfrac{a}{\sqrt{a^2+2b^2}}$、 $\mathrm{OH}=\dfrac{ab}{\sqrt{a^2+2b^2}}$
図は平面ODC(平面 $x=y$)での切り口で、横軸は原点から $(1,1,0)$ の向きにとった $u$ 軸である。ABはDでこの面に垂直に交わり、平面 $\alpha$ はこの面と直線DCで交わる。
別解(誘導どおり $\theta$ を使う) (1) より、ABは平面ODC上の平行でない2つのベクトル $\overrightarrow{\mathrm{DC}}$、 $\overrightarrow{\mathrm{DO}}$ に垂直なので、平面ODCに垂直である。平面 $\alpha$ はABを含むので平面ODCに垂直で、2つの平面の交線は直線DCである。よって、Oから平面 $\alpha$ に下ろした垂線は平面ODCの中にあり、Hは平面ODC内でOから直線DCに下ろした垂線の足である。直角三角形ODHで $\angle\mathrm{ODH}=\theta$ なので
$$\mathrm{OH}=\mathrm{DO}\sin\theta=b\cdot\frac{a}{\sqrt{a^2+2b^2}}=\frac{ab}{\sqrt{a^2+2b^2}}$$
別解(四面体OABCの体積を2通りに表す) O、A、Bはどれも $x+y=0$ をみたすので、平面OABは $x+y=0$ である。 $\mathrm{OD}\perp\mathrm{AB}$ より $\triangle\mathrm{OAB}=\dfrac12\cdot2\sqrt2\,a\cdot b=\sqrt2\,ab$。Cと平面OABの距離は $\dfrac{|a+a|}{\sqrt{1^2+1^2}}=\sqrt2\,a$ なので、四面体OABCの体積は $\dfrac13\cdot\sqrt2\,ab\cdot\sqrt2\,a=\dfrac23a^2b$。これを底面 $\triangle\mathrm{ABC}$、高さOHとみると
$$\frac13\cdot2a\sqrt{a^2+2b^2}\cdot\mathrm{OH}=\frac23a^2b\iff\mathrm{OH}=\frac{ab}{\sqrt{a^2+2b^2}}$$
(3) 配点 20点
球面 $S$ の半径を $R$ とすると
$$R=\mathrm{OA}=\sqrt{a^2+a^2+b^2}=\sqrt{2a^2+b^2}$$
Pから平面 $\alpha$ に下ろした垂線の足をQとし、四面体ABCPの高さを $h=\mathrm{PQ}$ とする。Hは平面 $\alpha$ 上の点なので、平面 $\alpha$ 上の点の中でPにいちばん近い点がQであることから $\mathrm{PQ}\leqq\mathrm{PH}$。さらに三角形の辺の関係(P、O、Hが一直線上のときも含めて)から
$$h=\mathrm{PQ}\leqq\mathrm{PH}\leqq\mathrm{PO}+\mathrm{OH}=R+\mathrm{OH}$$
等号が成り立つのは、 $\mathrm{PQ}=\mathrm{PH}$(QがHに一致し、直線PHが平面 $\alpha$ に垂直)かつOが線分PH上にあるとき、すなわちPが、直線HOをOの側へ延ばして球面 $S$ と交わる点(平面 $\alpha$ に関してOと同じ側の点)のときである。このPは $\overrightarrow{\mathrm{OP}}=-\dfrac{R}{|\vec n|}\vec n$ で、 $h=R+\mathrm{OH}>0$ なので平面 $\alpha$ 上にはない。
図の点Pが、平面 $\alpha$ からいちばん遠い点である。球面 $S$ の切り口は、中心O・半径 $R$ の円になる。
よって、四面体ABCPの体積を $V$ とすると
$$V=\frac13\cdot\triangle\mathrm{ABC}\cdot h\leqq\frac13\cdot2a\sqrt{a^2+2b^2}\left(\sqrt{2a^2+b^2}+\frac{ab}{\sqrt{a^2+2b^2}}\right)=\frac{2a}{3}\left(\sqrt{(a^2+2b^2)(2a^2+b^2)}+ab\right)$$
答 $\dfrac{2a}{3}\left(\sqrt{(a^2+2b^2)(2a^2+b^2)}+ab\right)$
出題意図
(1)(2) 垂直を内積0に翻訳し、平面に垂直なベクトルから垂線の足を求めるという空間ベクトルの基本が理解できているか
(3) 球面上の点と平面の距離の最大を、球の中心と半径から捉えることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 50点 | 50点 |
| 目標時間 | 20分 | 30分 |
空間ベクトルのオーソドックスな問題。
(1) は内積0で示すだけ、(2) は $\sin\theta$ を計算するだけ。
OH は、平面に垂直なベクトルを求めて「 $\overrightarrow{\mathrm{OH}}$ がそのベクトルと平行」と置く、いつもの解き方で求まる。
(3) は球の半径を求めれば、Pが平面に関して中心Oと同じ側の一番遠い点に来るときが最大と分かる。
どれも典型問題なので、全学部で50点を取りたい。
差がつく所・失点しやすい所
- 差がつくのは (3):「球面上の点と平面の距離の最大は、中心と平面の距離に半径を足したもの」という発想に行き着けるか。そのときのPの位置まで書けるかで部分点も変わる。
- (2) のOH:誘導の $\theta$ から垂線の足の位置を見抜けなくても、平面に垂直なベクトルを自分で作れれば必ず求まる。ここで止まると (3) の最大値まで失点する。
2007年九州大学理系数学
第4問 解答・解説
第4問は確率・2次方程式・有理数と無理数の問題です。
テーマは「さいころの目を係数とする2次方程式が異なる2つの有理数の解をもつ確率」。
問題


問題文をテキストで読む
さいころを3回続けて投げて出た目を順に $a,b,c$ とする。これらの数 $a,b,c$ に対して2次方程式
$$(*)\qquad ax^2+bx+c=0$$
を考える。ただし、さいころはどの目も同様に確からしく出るものとする。このとき、次の問いに答えよ。
(1) 2次方程式 $(*)$ が異なる二つの実数の解をもつとき、積 $ac$ の取りうる値を求め、積 $ac$ の各値ごとに可能な $a$ と $c$ の組 $(a,c)$ がそれぞれ何通りあるかを求めよ。
(2) 2次方程式 $(*)$ が異なる二つの有理数の解をもつ確率を求めよ。ただし、一般に自然数 $n$ が自然数の2乗でなければ $\sqrt n$ は無理数であることを用いてよい。
解答の方針
【(1)の方針】
異なる2つの実数解の条件は判別式が正。 $b$ は最大でも6なので、 $b=6$ のときに条件をみたす $ac$ がすべてであり、 $ac$ は小さい値に絞られる。
- $a\neq0$ なので $(*)$ は2次方程式であることを確かめ、異なる2つの実数解をもつ条件 $b^2-4ac>0$ を立てる。
- $b\leqq6$ より $4ac<b^2\leqq36$、つまり $ac\leqq8$ を導く。
- 逆に $ac\leqq8$ なら $b=6$ のとき条件をみたすので、 $ac$ の取りうる値は「目の積として現れる8以下の数」であることを確かめる。
- $a$ と $c$ の積の表を書き、8以下の値と、値ごとの組 $(a,c)$ の数を数える。
【(2)の方針】
解の公式で実際に解くと、解が有理数になるのはルートの中 $b^2-4ac$ が自然数の2乗のとき(ただし書きはここで使う)。 $b$ は6通りしかないので、 $b$ ごとに $b^2-4ac$ を書き並べて実験すれば数え漏れがない。
- 全体は $(a,b,c)$ の順も区別して $6^3=216$ 通りと宣言する。
- 解の公式から、異なる2つの有理数の解をもつ条件を「 $b^2-4ac$ が自然数の2乗」に言いかえる(自然数の2乗でなければ、ただし書きより解は無理数になることも示す)。
- $b=1,2,\dots,6$ ごとに、(1) の $ac$ の値で $b^2-4ac$ を書き並べ、自然数の2乗になる $ac$ を探す(0は重解なので除く)。
- 見つけた $ac$ ごとに (1) の組 $(a,c)$ の数を足し合わせ、216で割って確率を求める。
解答


解答をテキストで読む
(1) 配点 20点
$a\geqq1$ より $a\neq0$ なので、 $(*)$ は2次方程式である。 $(*)$ が異なる2つの実数の解をもつ条件は
$$b^2-4ac>0$$
$b$ はさいころの目なので $b\leqq6$ であり、 $4ac<b^2\leqq36$ より $ac<9$。 $ac$ は整数なので $ac\leqq8$ である。
逆に、 $ac\leqq8$ ならば $b=6$ のとき $b^2-4ac=36-4ac\geqq36-32>0$ となり、条件をみたす。よって、 $ac$ の取りうる値は「さいころの目 $a$、 $c$ の積として現れる8以下の数」すべてである。
$a$ と $c$ の積の表は次のとおりで、色のマスが $ac\leqq8$ である。7は素数で6より大きいので、目の積には現れない。
表から、組 $(a,c)$ は
・$ac=1$: $(1,1)$
・$ac=2$: $(1,2),(2,1)$
・$ac=3$: $(1,3),(3,1)$
・$ac=4$: $(1,4),(2,2),(4,1)$
・$ac=5$: $(1,5),(5,1)$
・$ac=6$: $(1,6),(2,3),(3,2),(6,1)$
・$ac=8$: $(2,4),(4,2)$
答 $ac$ の取りうる値は $1,2,3,4,5,6,8$。組 $(a,c)$ の数は、 $ac=1$:1通り、 $ac=2$:2通り、 $ac=3$:2通り、 $ac=4$:3通り、 $ac=5$:2通り、 $ac=6$:4通り、 $ac=8$:2通り
(2) 配点 30点
目の出方は、 $(a,b,c)$ の順も区別して全部で $6^3=216$ 通りあり、どれも同様に確からしい。
$D=b^2-4ac$ とおくと、 $(*)$ の解は
$$x=\dfrac{-b\pm\sqrt{D}}{2a}$$
である。異なる2つの実数の解をもつのは $D>0$ のときで、このとき
・$D$ が自然数の2乗 $k^2$( $k$ は自然数)ならば、解 $x=\dfrac{-b\pm k}{2a}$ はどちらも有理数である。
・$D$ が自然数の2乗でなければ、ただし書きより $\sqrt D$ は無理数である。もし解 $x$ が有理数なら、 $\sqrt D=\pm(2ax+b)$ の右辺は有理数になり矛盾する。よって解は無理数である。
したがって、異なる2つの有理数の解をもつ $\iff$ $D=b^2-4ac$ が自然数の2乗。
$b$ ごとに、(1) の $ac$ の値で $D=b^2-4ac$ を調べる。
・$b=1,2$ のとき $D\leqq4-4=0$ なので、 $D>0$ となる $ac$ はない
・$b=3$ のとき $D=9-4ac>0$ より $ac=1,2$ で、 $D=5,1$。自然数の2乗は $ac=2$( $D=1$ )で、組 $(a,c)$ は2通り
・$b=4$ のとき $D=16-4ac>0$ より $ac=1,2,3$ で、 $D=12,8,4$。自然数の2乗は $ac=3$( $D=4$ )で、2通り( $ac=4$ は $D=0$ の重解なので除く)
・$b=5$ のとき $D=25-4ac>0$ より $ac=1,\dots,6$ で、 $D=21,17,13,9,5,1$。自然数の2乗は $ac=4$( $D=9$ )と $ac=6$( $D=1$ )で、 $3+4=7$ 通り
・$b=6$ のとき $D=36-4ac$ で、 $ac=1,2,3,4,5,6,8$ に対して $D=32,28,24,20,16,12,4$。自然数の2乗は $ac=5$( $D=16$ )と $ac=8$( $D=4$ )で、 $2+2=4$ 通り
条件をみたす $(a,b,c)$ は $2+2+7+4=15$ 通りなので、求める確率は
$$\dfrac{15}{216}=\dfrac{5}{72}$$
答 $\dfrac{5}{72}$
補足(調べる値を減らす) $D=b^2-4ac$ と $b^2$ は4で割った余りが等しいので、 $D=k^2$ のとき $k$ と $b$ の偶奇は一致する。たとえば $b=5$ なら $k=1,3$、 $b=6$ なら $k=2,4$ だけを調べればよい。また、見つけた組は因数分解で確かめられる(例: $(a,b,c)=(2,5,3)$ なら $2x^2+5x+3=(x+1)(2x+3)$ で、解は $-1$、 $-\dfrac32$ )。
別解( $X=ax$ とおいて整数解に直す) $(*)$ の両辺に $a$ をかけて $X=ax$ とおくと
$$X^2+bX+ac=0$$
$x$ が有理数 $\iff$ $X$ が有理数である。 $X=\dfrac pq$( $p,q$ は互いに素な整数、 $q\geqq1$ )が解なら、 $p^2=-q(bp+acq)$ より $p^2$ は $q$ の倍数で、 $p$ と $q$ は互いに素なので $q=1$。よって有理数の解は整数の解に限られる。 $b>0$、 $ac>0$ より整数の解はどちらも負なので、異なる2つの解を $-u$、 $-v$( $u,v$ は自然数、 $u<v$ )とおくと、解と係数の関係から
$$b=u+v,\qquad ac=uv$$
$b\leqq6$ より $u+v\leqq6$ をみたす $(u,v)$ は $(1,2),(1,3),(1,4),(1,5),(2,3),(2,4)$ の6組で、それぞれ $ac=2,3,4,5,6,8$( $b$ は $u+v$ で1つに決まる)。(1) の組 $(a,c)$ の数を足して $2+2+3+2+4+2=15$ 通りとなり、同じ答え $\dfrac{5}{72}$ が求まる。判別式が自然数の2乗かを1つずつ調べなくてよい。
出題意図
- さいころの目が最大6であることから、判別式の条件で $ac$ の値を大きく絞り込んで数えられるか。
- 「有理数の解をもつ」を「解の公式のルートの中が自然数の2乗」と言いかえ、 $b$ ごとに漏れなく数えられるか。
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 簡単 | |
| 目標得点 | 50点 | 50点 |
| 目標時間 | 25分 | 30分 |
異なる2つの実数解なので判別式が正、つまり $ac<\dfrac{b^2}{4}\leqq9$ で $ac\leqq8$。
(2) は有理数の解なので、ルートが外れるように $b^2-4ac$ が自然数の2乗になればよく、これに気づけば (1) の結果を使って数えるだけ。
平方数に気づき、数え漏れなく数えるだけの問題なので、時間をかけて丁寧に数え、全学部で50点を取りたい。
差がつく所・失点しやすい所
- 特になし(差がつくとすれば (2) の数え間違いだけ):判別式が0の重解( $b=4$、 $ac=4$ )を「異なる二つ」に入れたり、 $ac$ の値を組 $(a,c)$ の数に直し忘れたりしないこと。このレベルで差をつけられるようでは九大合格はかなり危ない。
2007年九州大学理系数学
第5問 解答・解説
第5問は三角関数・整数・証明の問題です。
テーマは「$|\sin mx|\sin nx$ の基本周期」。
問題


問題文をテキストで読む
関数 $f(x)$ が0でない定数 $p$ に対して、つねに $f(x+p)=f(x)$ を満たすとき $f(x)$ は周期関数であるといい、 $p$ を周期という。正の周期のうちで最小のものを特に基本周期という。たとえば、関数 $\sin x$ の基本周期は $2\pi$ である。このとき、次の問いに答えよ。
(1) $y=|\sin x|$ のグラフをかき、関数 $|\sin x|$ の基本周期を求めよ。
(2) 自然数 $m,n$ に対して関数 $f(x)$ を $f(x)=|\sin mx|\sin nx$ とおく。 $p$ が関数 $f(x)$ の周期ならば $f\left(\dfrac p2\right)=f\left(-\dfrac p2\right)=0$ が成り立つことを示せ。また、このとき $mp$ は $\pi$ の整数倍であり、 $np$ は $2\pi$ の整数倍であることを示せ。
(3) $m,n$ は1以外の公約数をもたない自然数とする。(2) の結果を用いて関数 $|\sin mx|\sin nx$ の基本周期を求めよ。
解答の方針
【(1)の方針】
$y=|\sin x|$ は $y=\sin x$ の負の部分を $x$ 軸で折り返したもので、山が $\pi$ ごとに並ぶ。グラフで見当をつけるだけでなく、基本周期は「 $\pi$ が周期」と「 $\pi$ より小さい正の数は周期でない」の両方を式で示して決まる。
- $y=\sin x$ の $x$ 軸より下の部分を $x$ 軸について折り返して、グラフを書く。
- $|\sin(x+\pi)|=|-\sin x|=|\sin x|$ から、 $\pi$ が周期であることを示す。
- $0<p<\pi$ のとき、 $x=0$ で $|\sin(0+p)|\neq|\sin0|$ となることから $p$ は周期でないことを示し、基本周期を $\pi$ と答える。
【(2)の方針】
「 $p$ が周期」とは「すべての $x$ で $f(x+p)=f(x)$」のこと。すべての $x$ で成り立つ式には、都合のいい値を代入して必要な情報を取り出す。前半は $f$ が奇関数であることに注目して $x=-\dfrac p2$、後半は0になる因数で場合分けし、0に近い $x$ を使う。


- $f(-x)=-f(x)$(奇関数)を確かめる。
- $f(x+p)=f(x)$ に $x=-\dfrac p2$ を代入し、 $f\left(\dfrac p2\right)=f\left(-\dfrac p2\right)=-f\left(\dfrac p2\right)$ から $f\left(\dfrac p2\right)=f\left(-\dfrac p2\right)=0$ を示す。
- $f\left(\dfrac p2\right)=\left|\sin\dfrac{mp}{2}\right|\sin\dfrac{np}{2}=0$ より、 $\sin\dfrac{np}{2}=0$ の場合と $\sin\dfrac{mp}{2}=0$ の場合に分ける。示すことは「 $\sin mp=0$( $mp$ が $\pi$ の整数倍)」と「 $np$ が $2\pi$ の整数倍」である。
- $\sin\dfrac{np}{2}=0$ のとき: $np$ は $2\pi$ の整数倍。 $\sin(nx+np)=\sin nx$ なので、 $f(x+p)=f(x)$ は $|\sin(mx+mp)|\sin nx=|\sin mx|\sin nx$ となる。 $x=0$ を代入すると両辺が0で何も分からないので、 $\sin nx>0$ となる $0<x<\dfrac{\pi}{n}$ で $\sin nx$ を割り、 $|\sin(mx+mp)|=|\sin mx|$ として $x\to+0$ とし、 $\sin mp=0$ を導く。
- $\sin\dfrac{mp}{2}=0$ のとき: $mp$ は $2\pi$ の整数倍なので $\pi$ の整数倍。 $|\sin(mx+mp)|=|\sin mx|$ なので、4と同じく $0<x<\dfrac{\pi}{m}$ で $|\sin mx|$ を割って $\sin(nx+np)=\sin nx$ とし、 $x\to+0$ で $np=l\pi$( $l$ は整数)を導く。さらに $\sin(nx+l\pi)=(-1)^l\sin nx$ と、 $\sin nx>0$ となる小さい $x$ から $l$ が偶数、すなわち $np$ が $2\pi$ の整数倍であることを示す。
【(3)の方針】
(2) は必要条件なので、逆(十分性)を確かめれば「 $p$ が周期 $\iff$ $mp$ が $\pi$ の整数倍かつ $np$ が $2\pi$ の整数倍」と言いかえられ、あとは整数の問題。 $m$ と $n$ が互いに素なので、倍数と言い切れる。


- 逆に、 $mp$ が $\pi$ の整数倍かつ $np$ が $2\pi$ の整数倍なら、 $|\sin(mx+mp)|=|\sin mx|$、 $\sin(nx+np)=\sin nx$ となり $p$ が周期であることを確かめる。
- 正の周期 $p$ を $mp=k\pi$、 $np=2l\pi$( $k,l$ は自然数)とおき、 $p$ を消して $nk=2lm$ とする。
- $m$ と $n$ は互いに素なので $k$ は $m$ の倍数。 $k=mj$( $j$ は自然数)とおくと $p=j\pi$ で、残る条件は「 $nj$ が偶数」。
- $n$ が偶数なら $j=1$、 $n$ が奇数なら $j$ は偶数で $j=2$ が最小なので、基本周期は $n$ が偶数のとき $\pi$、 $n$ が奇数のとき $2\pi$ と答える。
解答


解答をテキストで読む
(1) 配点 10点
グラフは $y=\sin x$ の $x$ 軸より下の部分を $x$ 軸について折り返したもので、山が $\pi$ ごとに同じ形でくり返す(下の図)。
すべての $x$ で $|\sin(x+\pi)|=|-\sin x|=|\sin x|$ なので、 $\pi$ は周期である。
$0<p<\pi$ のとき、 $x=0$ で $|\sin(0+p)|=\sin p>0=|\sin0|$ なので、 $p$ は周期でない。よって $\pi$ より小さい正の周期はない。
答 基本周期は $\pi$
(2) 配点 25点
$f(-x)=|\sin(-mx)|\sin(-nx)=-|\sin mx|\sin nx=-f(x)$ なので、 $f(x)$ は奇関数である。
$p$ は周期なので、すべての $x$ で $f(x+p)=f(x)$。左辺を $f\left(\dfrac p2\right)$ にするために $x=-\dfrac p2$ を代入すると、奇関数であることとあわせて
$$f\left(\frac p2\right)=f\left(-\frac p2\right)=-f\left(\frac p2\right)$$
よって $2f\left(\dfrac p2\right)=0$ で、 $f\left(\dfrac p2\right)=f\left(-\dfrac p2\right)=0$ である(下の図)。
$f\left(\dfrac p2\right)=\left|\sin\dfrac{mp}{2}\right|\sin\dfrac{np}{2}=0$ より、 $\sin\dfrac{np}{2}=0$ または $\sin\dfrac{mp}{2}=0$ である。
(i) $\sin\dfrac{np}{2}=0$ のとき $\dfrac{np}{2}$ は $\pi$ の整数倍なので、 $np$ は $2\pi$ の整数倍である。よって $\sin(nx+np)=\sin nx$ で、 $f(x+p)=f(x)$ は、すべての $x$ で
$$|\sin(mx+mp)|\sin nx=|\sin mx|\sin nx$$
となる。 $0<x<\dfrac{\pi}{n}$ では $\sin nx>0$ なので、両辺を $\sin nx$ で割って
$$|\sin(mx+mp)|=|\sin mx|\qquad\left(0<x<\frac{\pi}{n}\right)$$
両辺は $x$ の連続関数なので、 $x\to+0$ とすると $|\sin mp|=|\sin0|=0$。よって $\sin mp=0$ で、 $mp$ は $\pi$ の整数倍である。
(ii) $\sin\dfrac{mp}{2}=0$ のとき $\dfrac{mp}{2}$ は $\pi$ の整数倍なので、 $mp$ は $2\pi$ の整数倍で、特に $\pi$ の整数倍である。よって $|\sin(mx+mp)|=|\sin mx|$ で、 $f(x+p)=f(x)$ は、すべての $x$ で
$$|\sin mx|\sin(nx+np)=|\sin mx|\sin nx$$
となる。 $0<x<\dfrac{\pi}{m}$ では $|\sin mx|>0$ なので、両辺を $|\sin mx|$ で割って
$$\sin(nx+np)=\sin nx\qquad\left(0<x<\frac{\pi}{m}\right)\quad\cdots①$$
$x\to+0$ とすると $\sin np=0$ なので、 $np=l\pi$( $l$ は整数)とおける。このとき $\sin(nx+l\pi)=(-1)^l\sin nx$ なので、①は $(-1)^l\sin nx=\sin nx$ となる。 $0<x<\dfrac{\pi}{m}$ かつ $0<x<\dfrac{\pi}{n}$ をみたす $x$ をとると $\sin nx>0$ なので $(-1)^l=1$、すなわち $l$ は偶数で、 $np$ は $2\pi$ の整数倍である。
(i)(ii) のどちらでも、 $mp$ は $\pi$ の整数倍であり、 $np$ は $2\pi$ の整数倍である。
補足 (i) で $x=0$ をそのまま代入すると、 $\sin nx=0$ となって両辺とも0になり、何も分からない。0でない因数で割れる範囲( $0<x<\dfrac{\pi}{n}$)で式を作ってから $x\to+0$ とするのは、「都合のいい値」を $x=0$ のすぐ近くの値にしたものである。
(3) 配点 15点
逆に、 $mp$ が $\pi$ の整数倍かつ $np$ が $2\pi$ の整数倍ならば、すべての $x$ で $|\sin(mx+mp)|=|\sin mx|$、 $\sin(nx+np)=\sin nx$ なので $f(x+p)=f(x)$ となり、 $p$ は周期である。(2) とあわせて、正の数 $p$ について
$$p\text{ が周期}\iff mp=k\pi,\ np=2l\pi\quad(k,l\text{ は自然数})$$
$p=\dfrac{k\pi}{m}$ を $np=2l\pi$ に代入して $nk=2lm$。 $m$ と $n$ は互いに素より、 $k$ は $m$ の倍数である。 $k=mj$( $j$ は自然数)とおくと $p=j\pi$ で、条件 $np=2l\pi$ は $nj=2l$、すなわち「 $nj$ が偶数」となる。
・$n$ が偶数のとき $j=1$ で $nj$ は偶数なので、最小の正の周期は $p=\pi$
・$n$ が奇数のとき $nj$ が偶数 $\iff$ $j$ が偶数なので、 $j=2$ が最小で $p=2\pi$
答 $n$ が偶数のとき $\pi$、 $n$ が奇数のとき $2\pi$
たとえば $m=1$、 $n=2$ の $|\sin x|\sin2x$ は $\pi$ ごとに同じ形をくり返すが、 $m=2$、 $n=1$ の $|\sin2x|\sin x$ は $\pi$ ずらすと符号が逆になり、基本周期は $2\pi$ になる(下の図)。答えを決めるのは $m$ ではなく $n$ の偶奇である。
実際、 $f(x+\pi)=|\sin(mx+m\pi)|\sin(nx+n\pi)=|\sin mx|\cdot(-1)^n\sin nx=(-1)^nf(x)$ なので、 $n$ が偶数なら $\pi$ ずらすと重なり、 $n$ が奇数なら $\pi$ ずらすと上下が逆になる。
出題意図
(1) 基本周期は「その数が周期である」と「それより小さい正の数は周期でない」の2つを示して初めて決まる、という定義どおりの確かめ方ができるか
(2) 周期の定義「すべての $x$ で $f(x+p)=f(x)$」を、都合のいい $x$ を代入して条件を導く式として使えるか
(3) (2) の必要条件に十分性を足して周期をすべて求め、互いに素の整数の論証で最小のものを決められるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 難 | |
| 目標得点 | 20点 | 20点 |
| 目標時間 | 30分 | 30分 |
(1) は、グラフを描くだけでなく、基本周期が $\pi$ であることをちゃんと式で示しに行けるかがポイント。
(2) の前半は奇関数に気づけばすぐに示せるので、(1) とあわせて全学部で20点は取りたい。
(2) の後半と (3) は、何を示せばよいかがかなり抽象的で、おそらく手が出ない受験生がかなり多い。
この年は第5問でほとんど差がつかないので、ここで粘るより、行列を除く第1・3・4問を丁寧に完答することが大事。
差がつく所・失点しやすい所
- 差がつくのは (2) の後半と (3):何を示せばよいかがかなり抽象的で、手が出ない受験生が多い。 $f\left(\dfrac p2\right)=0$ から分かるのは「どちらかの因数が0」だけ。示すことを「 $\sin mp=0$」「 $np$ が $2\pi$ の整数倍」と言いかえ、場合分けして残った因数に都合のいい $x$(0に近い $x$)を代入するという発想に行き着けるか。
- (3) で十分性を書かない:(2) は必要条件なので、逆に周期になることの確認がないと答えの根拠が足りない。
- (2) の (ii) で $np$ が $\pi$ の整数倍で止まる: $\sin np=0$ だけでは $2\pi$ の整数倍とは言えず、符号まで確かめる必要がある。
2007年九州大学・理系数学の
講評とまとめ
5問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 簡単 | 50点 | 50点 |
| 第2問 | やや簡単 | 50点 | 40点 |
| 第3問 | やや簡単 | 50点 | 50点 |
| 第4問 | 簡単 | 50点 | 50点 |
| 第5問 | 難 | 20点 | 20点 |
| 全体 | 標準 | 220点 | 210点 |
第2問は行列の問題です。
行列は現在の高校数学の範囲外なので、この記事では解答・解説を載せていません。
総合の目標点(医学部医学科220点、その他の学部210点)は、第2問も含めた当時の目安です。
第5問が難しく、おそらくほとんどの受験生が (2) の後半と (3) に手を出せない年でした。
この年は、行列を除く第1問・第3問・第4問を丁寧に完答できるかで決まります。
このレベルの問題は完答しないといけません。
過去問演習でも、易しい問題は完答を目指しましょう。
解く流れ
問題の順でよい(第2問の行列は今の受験生は解かなくてよい)。
2007年九州大学・理系数学に
関するよくある質問
2007年の九州大学・理系数学について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2007年の九州大学・理系数学は難しかった?
-
標準の年でした。
第1問・第4問は簡単、第3問はやや簡単、第5問は難です。
第2問は行列で、現行課程の範囲外です。 - 2007年の九州大学・理系数学は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で220点、その他の学部で210点です(250点満点)。
- 2007年の九州大学・理系数学はどこで差がつく?
-
第1問・第3問・第4問は完答したい問題です。そのうえで、差がつくとしたら次の3つです。
- 第5問(2)の後半・(3):何を示せばよいかが抽象的な問題で、周期の条件を式に言いかえ、必要条件と十分条件の両方を書けたか。
- 第3問(3):球面上の点と平面の距離の最大は、中心と平面の距離に半径を足したものだと気づけたか。
- 第1問(2):面積を $p$ の関数として表し、$p$ で微分する発想に行き着けたか。
- 2007年の九州大学・理系数学は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:微分法・積分(数学Ⅲ)
- 第2問:行列・数列・極限
- 第3問:空間ベクトル
- 第4問:確率・2次方程式・有理数と無理数
- 第5問:三角関数・整数・証明


