【解説・採点基準付き】2023年九州大学文系数学の解答・解説
2023年の九州大学・文系数学の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの採点基準付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2023年九州大学文系数学
第1問 解答・解説
この記事の配点・採点基準は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は積分法(数学Ⅱ)の問題です。
テーマは「絶対値つきの曲線 $y=|(x-3)(x+3)|$ と直線 $y=a$ で囲まれる部分の面積が、直線の上と下で等しくなる条件」。
問題


問題文をテキストで読む
$a$ を $0<a<9$ を満たす実数とする。 $xy$ 平面上の曲線 $C$ と直線 $l$ を、次のように定める。
$$C:y=\left|(x-3)(x+3)\right|,\quad l:y=a$$
曲線 $C$ と直線 $l$ で囲まれる図形のうち、 $y\geqq a$ の領域にある部分の面積を $S_1$、 $y\leqq a$ の領域にある部分の面積を $S_2$ とする。 $S_1=S_2$ となる $a$ の値を求めよ。
解答の方針
$C$ は $y$ 軸に関して対称なので、 $x\geqq0$ だけ考えればよい。 $S_1=S_2$ を「差が0」と言いかえると、積分は $0\leqq x\leqq\beta$ ( $\beta$ は右端の交点)の1つにまとまり、途中の交点 $\alpha$ は要らなくなる。


- 絶対値の中身 $y=x^2-9$ のグラフを書き、 $x$ 軸より下の部分を折り返して $C$ を書く。 $C$ は $y$ 軸に関して対称になる。
- $|x^2-9|=a$ を解いて、交点の $x$ 座標 $\pm\alpha$、 $\pm\beta$ ( $\alpha=\sqrt{9-a}$、 $\beta=\sqrt{9+a}$ )を求める。図から、 $S_1$ は中央の1つの部分、 $S_2$ は左右2つの部分の合計であることを確かめる。
- 対称性から $x\geqq0$ で考える。 $0\leqq x\leqq\alpha$ は $S_1$ の半分、 $\alpha\leqq x\leqq\beta$ は $S_2$ の半分なので、 $S_1=S_2$ を $\displaystyle\int_0^{\beta}\{|x^2-9|-a\}\,dx=0$ と言いかえる。
- 原始関数 $F(x)=\dfrac{x^3}{3}-9x$ を置き、 $\displaystyle\int_0^{\beta}|x^2-9|\,dx$ を $F(0)+F(\beta)-2F(3)$ で計算する。
- $\beta^2=9+a$ から $a=\beta^2-9$ として $a$ を消し、 $\beta$ の方程式を解く。 $\beta$ を $a$ に戻し、 $0<a<9$ を満たすことを確かめる。
解答


解答をテキストで読む
$C:y=|x^2-9|$ は、 $x\leqq-3,\ 3\leqq x$ のとき $y=x^2-9$、 $-3<x<3$ のとき $y=-x^2+9$ である。放物線 $y=x^2-9$ の $x$ 軸より下の部分を折り返したグラフで、 $y$ 軸に関して対称である。
$C$ と $l$ の交点は、 $|x^2-9|=a$ より $x^2-9=\pm a$、すなわち $x^2=9+a,\ 9-a$。 $0<a<9$ より $0<9-a<9<9+a$ なので
$$\alpha=\sqrt{9-a},\qquad \beta=\sqrt{9+a}\qquad(0<\alpha<3<\beta)$$
とおくと、交点の $x$ 座標は $\pm\alpha$、 $\pm\beta$ である。
図より、 $S_1$ は $-\alpha\leqq x\leqq\alpha$ で $C$ が $l$ の上にある1つの部分、 $S_2$ は $\alpha\leqq x\leqq\beta$ と $-\beta\leqq x\leqq-\alpha$ で $C$ が $l$ の下にある2つの部分の面積の合計である。 $C$ も $l$ も $y$ 軸に関して対称なので、 $x\geqq0$ の部分には $S_1$、 $S_2$ のちょうど半分ずつがある。
$x\geqq0$ で考える。
・$0\leqq x\leqq\alpha$ では $x^2\leqq9-a$ なので $|x^2-9|=9-x^2\geqq a$ ( $C$ が上)
・$\alpha\leqq x\leqq3$ では $|x^2-9|=9-x^2\leqq a$、 $3\leqq x\leqq\beta$ では $|x^2-9|=x^2-9\leqq a$ ( $l$ が上)
よって
$$\int_0^{\beta}\{|x^2-9|-a\}\,dx=\int_0^{\alpha}\{|x^2-9|-a\}\,dx-\int_{\alpha}^{\beta}\{a-|x^2-9|\}\,dx=\frac{S_1}{2}-\frac{S_2}{2}$$
したがって
$$S_1=S_2\iff\int_0^{\beta}\{|x^2-9|-a\}\,dx=0\iff\int_0^{\beta}|x^2-9|\,dx=a\beta\quad\cdots①$$
①は、「 $0\leqq x\leqq\beta$ で $C$ と $x$ 軸の間にある部分の面積」が「横 $\beta$ ・縦 $a$ の長方形の面積」に等しいということである。
$F(x)=\dfrac{x^3}{3}-9x$ とおくと( $F(0)=0$、 $F(3)=-18$、 $F(\beta)=\dfrac{\beta^3}{3}-9\beta$ )
$$\int_0^{\beta}|x^2-9|\,dx=\int_0^{3}\{-(x^2-9)\}\,dx+\int_3^{\beta}(x^2-9)\,dx=\Bigl[-F(x)\Bigr]_0^3+\Bigl[F(x)\Bigr]_3^{\beta}=F(0)+F(\beta)-2F(3)=\frac{\beta^3}{3}-9\beta+36$$
$\beta^2=9+a$ より $a=\beta^2-9$。次数の低い $a$ を消すと、 $a\beta=\beta^3-9\beta$ なので、①は
$$\frac{\beta^3}{3}-9\beta+36=\beta^3-9\beta$$
両辺の $-9\beta$ が消えて $\dfrac23\beta^3=36$、すなわち
$$\beta^3=54$$
$\beta$ は正の実数なので $\beta=\sqrt[3]{54}=3\sqrt[3]{2}$。よって
$$a=\beta^2-9=9\sqrt[3]{4}-9$$
$0<a<9$ は $9<\beta^2<18$、すなわち $3<\beta<3\sqrt2$ と同じである。 $1^3<2<(\sqrt2)^3=2\sqrt2$ より $1<\sqrt[3]{2}<\sqrt2$ なので、 $\beta=3\sqrt[3]{2}$ はこの範囲に入り、条件を満たす。 $\beta^3=54$ をみたす正の実数 $\beta$ は1つだけなので、 $S_1=S_2$ となる $a$ もこの1つだけである。
答 $a=9\sqrt[3]{4}-9$
検算 $a=9\sqrt[3]{4}-9\fallingdotseq5.287$ のとき、数値積分で $S_1\fallingdotseq9.541$、 $S_2\fallingdotseq9.541$ となり一致する。また、上の計算から $\dfrac{S_1-S_2}{2}=36-\dfrac23\beta^3$ で、 $a$ が増えると $\beta$ も増えるので $S_1-S_2$ は減り続ける。 $S_1=S_2$ となる $a$ が1つだけであることとも合う。
別解( $S_1$、 $S_2$ を別々に求める) $\alpha^2=9-a$、 $\beta^2=9+a$ より $\alpha^2+\beta^2=18$ である。
$S_1$ は $-\alpha\leqq x\leqq\alpha$ で $C:y=9-x^2$ と $l$ の間の部分で、 $(9-x^2)-a=\alpha^2-x^2$ なので
$$S_1=\int_{-\alpha}^{\alpha}\{(9-x^2)-a\}\,dx=\int_{-\alpha}^{\alpha}(-1)(x+\alpha)(x-\alpha)\,dx=\frac16(2\alpha)^3=\frac43\alpha^3$$
$S_2$ は、左右の部分が等しいので右の部分の2倍。 $a-(9-x^2)=x^2-\alpha^2$、 $a-(x^2-9)=\beta^2-x^2$ より
$$\frac{S_2}{2}=\int_{\alpha}^{3}(x^2-\alpha^2)\,dx+\int_3^{\beta}(\beta^2-x^2)\,dx=\left(9-3\alpha^2+\frac23\alpha^3\right)+\left(\frac23\beta^3-3\beta^2+9\right)=-36+\frac23(\alpha^3+\beta^3)$$
( $\alpha^2+\beta^2=18$ を使った)。 $S_1=S_2$ は $\dfrac43\alpha^3=-72+\dfrac43(\alpha^3+\beta^3)$ となり、 $\alpha^3$ が消えて $\beta^3=54$。あとは本解と同じ。途中の交点 $\alpha$ は最後に消えるので、最初から区間をまとめる本解の方が計算が少ない。
出題意図
- 絶対値のついた2次関数のグラフを折り返して書き、直線 $y=a$ との交点と、囲まれる部分( $y\geqq a$ は中央の1つ、 $y\leqq a$ は左右の2つ)を正しく捉えることができるか。
- 「2つの面積が等しい」という条件を「差の積分が0」と言いかえ、文字を1つ消して方程式を解くことができるか(積分法の面積の典型問題の組み合わせ。チャートの章末問題まで取り組んでいれば解けるレベル)。
講評
| 難易度 | 標準 |
| 目標得点 | 30点 |
| 目標時間 | 25分 |
標準レベルの問題。
基本の流れは、図をしっかり書いて、放物線と直線で囲まれる面積の $\dfrac16$ 公式を活用すること(模範解答は差の積分で区間をまとめる解き方、別解が $S_1$ に $\dfrac16$ 公式を使う解き方)。
九大文系で合否を分けるのは、参考書の標準的な問題(『1対1対応の演習』『プラチカ』)に少し手を加えた程度の問題を、確実に正解できるかどうか。
この年は第1問か第2問を解けないと厳しいので、少なくとも片方は完答したい。
差がつく所・失点しやすい所
- 差がつく所:手順が多いので、下の失点しやすい所を落とさずに計算し切れるかで差がつく。 $S_1=S_2$ を「差の積分が0」と言いかえ、区間を $0\leqq x\leqq\beta$ にまとめる発想に行き着けば、途中の交点 $\alpha$ は要らず計算が大きく減る。
- 失点しやすい所: $S_2$ を片側の1つの部分だけで立式する所と、 $x=3$ で絶対値の外し方が変わるのを見落として $\displaystyle\int_0^{\beta}(9-x^2)\,dx$ のまま計算する所。
2023年九州大学文系数学
第2問 解答・解説
第2問は微分法・図形と方程式・図形と計量の問題です。
テーマは「3次曲線 $y=x^3-x$ の接線と直線 $y=-x$ の交点Bをとり、三角形OABの角 $\angle\mathrm{OBA}$ の $\sin^2\theta$ と、外接円の中心Pについて $\dfrac{\mathrm{OP}}{\mathrm{OA}}$ の最小値を求める」。
問題


問題文をテキストで読む
$xy$ 平面上の曲線 $C:y=x^3-x$ を考える。実数 $t>0$ に対して、曲線 $C$ 上の点 $\mathrm{A}(t,\ t^3-t)$ における接線を $l$ とする。直線 $l$ と直線 $y=-x$ の交点をB、三角形OABの外接円の中心をPとする。以下の問いに答えよ。
(1) 点Bの座標を $t$ を用いて表せ。
(2) $\theta=\angle\mathrm{OBA}$ とする。 $\sin^2\theta$ を $t$ を用いて表せ。
(3) $f(t)=\dfrac{\mathrm{OP}}{\mathrm{OA}}$ とする。 $t>0$ のとき、 $f(t)$ を最小にする $t$ の値と、 $f(t)$ の最小値を求めよ。
解答の方針
【(1)の方針】
接線は $y=f'(t)(x-t)+f(t)$ の形ですぐに書ける。あとは直線 $y=-x$ と連立するだけ。


- $y’=3x^2-1$ から、Aでの接線 $l$ を $y=(3t^2-1)x-2t^3$ と求める。
- $l$ と $y=-x$ を連立して $x$ 座標を求め、Bの座標を求める。
【(2)の方針】
$xy$ 平面の角なので、tan・ベクトルの内積・複素数平面から選ぶ。 $\theta$ は傾きの分かった2直線のなす角なので、tan の加法定理が最も早い。補角でも $\sin^2$ は同じなので、鋭角か鈍角かは気にしなくてよい。


- $l$、 $y=-x$ が $x$ 軸の正の向きとなす角を $\alpha$、 $\beta$ とし、 $\tan\alpha=3t^2-1$、 $\tan\beta=-1$ とおく。
- $3t^2\neq2$ のとき、tan の加法定理で $\tan(\beta-\alpha)=\dfrac{3t^2}{3t^2-2}$ を求める。 $\theta$ は $|\beta-\alpha|$ かその補角なので、 $\sin^2\theta$ は鋭角 $\varphi$( $\tan\varphi=\dfrac{3t^2}{|3t^2-2|}$)の $\sin^2\varphi$ に等しい。
- 直角三角形の図で $\sin^2\varphi$ を求める。
- $3t^2=2$ のとき( $l\perp(y=-x)$、 $\theta=90^\circ$)も同じ式で表せることを確かめる。
【(3)の方針】
OPは外接円の半径なので、正弦定理で表せる。辺OAの向かいの角が $\theta$ なので、 $f(t)=\dfrac{1}{2\sin\theta}$ となり (2) が使える。 $\theta=90^\circ$(OAが直径)のとき最小と見当がつく。


- 三角形OABで正弦定理を使い、 $\dfrac{\mathrm{OA}}{\sin\theta}=2\mathrm{OP}$ から $f(t)=\dfrac{1}{2\sin\theta}$ とする。
- $0<\sin\theta\leqq1$ より $f(t)\geqq\dfrac12$。
- 等号が成り立つ $\sin^2\theta=1$ を (2) の式で $t$ の方程式にし、 $(3t^2-2)^2=0$ から $t=\dfrac{\sqrt6}{3}$ を求める。
- そのとき $\angle\mathrm{OBA}=90^\circ$ で、OAが外接円の直径になることを図で確かめる。
解答




解答をテキストで読む
(1) 配点 10点
$y=x^3-x$ より $y’=3x^2-1$。点 $\mathrm{A}(t,\ t^3-t)$ における接線 $l$ は
$$y=(3t^2-1)(x-t)+t^3-t\iff y=(3t^2-1)x-2t^3$$
$l$ と $y=-x$ を連立すると
$$-x=(3t^2-1)x-2t^3\iff3t^2x=2t^3$$
$t>0$ より $x=\dfrac23t$、 $y=-\dfrac23t$。
答 $\mathrm{B}\left(\dfrac23t,\ -\dfrac23t\right)$
なお、Aが直線 $y=-x$ 上にあるのは $t^3-t=-t$、すなわち $t=0$ のときだけなので、 $t>0$ ではO、A、Bは一直線上になく、三角形OABはつねにできる。
(2) 配点 20点
直線 $l$、 $y=-x$ が $x$ 軸の正の向きとなす角( $x$ 軸に平行な直線から正の向きに測った角)をそれぞれ $\alpha$、 $\beta$ とすると
$$\tan\alpha=3t^2-1,\qquad\tan\beta=-1$$
$\theta=\angle\mathrm{OBA}$ は、Bで交わる2直線 $l$、 $y=-x$ のなす角なので、 $|\beta-\alpha|$ かその補角 $180^\circ-|\beta-\alpha|$ である。
(i) $3t^2\neq2$ のとき tan の加法定理より
$$\tan(\beta-\alpha)=\frac{\tan\beta-\tan\alpha}{1+\tan\beta\tan\alpha}=\frac{-1-(3t^2-1)}{1-(3t^2-1)}=\frac{-3t^2}{2-3t^2}=\frac{3t^2}{3t^2-2}$$
2直線のなす角のうち鋭角の方を $\varphi$ とすると $\tan\varphi=\dfrac{3t^2}{|3t^2-2|}$ で、 $\theta$ は $\varphi$ か $180^\circ-\varphi$ なので $\sin^2\theta=\sin^2\varphi$。下の直角三角形で考えると、斜辺の長さは $\sqrt{(3t^2)^2+(3t^2-2)^2}$ なので
$$\sin^2\theta=\sin^2\varphi=\frac{(3t^2)^2}{(3t^2)^2+(3t^2-2)^2}=\frac{9t^4}{18t^4-12t^2+4}=\frac{9t^4}{2(9t^4-6t^2+2)}$$
(ii) $3t^2=2$ のとき $l$ の傾きは $3t^2-1=1$ で、 $y=-x$(傾き $-1$)と垂直に交わる。よって $\theta=90^\circ$、 $\sin^2\theta=1$。一方、(i) の式に $t^2=\dfrac23$( $9t^4=4$、 $6t^2=4$)を代入すると $\dfrac{4}{2(4-4+2)}=1$ となり、(i) の式はこの場合も成り立つ。
答 $\sin^2\theta=\dfrac{9t^4}{2(9t^4-6t^2+2)}$
別解(ベクトルの内積) (1) より $\overrightarrow{\mathrm{BO}}=\left(-\dfrac23t,\ \dfrac23t\right)=\dfrac23t(-1,\ 1)$、 $\overrightarrow{\mathrm{BA}}=\left(\dfrac t3,\ t^3-\dfrac t3\right)=\dfrac t3(1,\ 3t^2-1)$。 $t>0$ なので、 $\theta$ は $(-1,\ 1)$ と $(1,\ 3t^2-1)$ のなす角に等しい。 $1+(3t^2-1)^2=9t^4-6t^2+2$ より
$$\cos\theta=\frac{-1+(3t^2-1)}{\sqrt2\sqrt{9t^4-6t^2+2}}=\frac{3t^2-2}{\sqrt{2(9t^4-6t^2+2)}}$$
$$\sin^2\theta=1-\cos^2\theta=\frac{2(9t^4-6t^2+2)-(3t^2-2)^2}{2(9t^4-6t^2+2)}=\frac{9t^4}{2(9t^4-6t^2+2)}$$
$\cos\theta$ の符号まで含めて実際の $\theta$ が求まるので、場合分けがいらない。 $3t^2<2$ のとき $\theta$ は鈍角、 $3t^2>2$ のとき鋭角である。
(3) 配点 20点
Pは三角形OABの外接円の中心なので、外接円の半径を $R$ とすると $\mathrm{OP}=R$。辺OAの向かいの角は $\theta=\angle\mathrm{OBA}$ なので、三角形OABで正弦定理より
$$\frac{\mathrm{OA}}{\sin\theta}=2R=2\mathrm{OP}$$
$0^\circ<\theta<180^\circ$ より $\sin\theta>0$ なので
$$f(t)=\frac{\mathrm{OP}}{\mathrm{OA}}=\frac{1}{2\sin\theta}$$
$0<\sin\theta\leqq1$ より
$$f(t)\geqq\frac12$$
等号が成り立つのは $\sin\theta=1$、すなわち $\sin^2\theta=1$ のときである。
(2) より
$$\frac{9t^4}{2(9t^4-6t^2+2)}=1\iff9t^4=18t^4-12t^2+4\iff9t^4-12t^2+4=0\iff(3t^2-2)^2=0$$
$t>0$ より $t^2=\dfrac23$、すなわち $t=\dfrac{\sqrt6}{3}$。このとき等号が成り立つので、 $f(t)$ の最小値は $\dfrac12$。
答 $t=\dfrac{\sqrt6}{3}$ のとき、最小値 $\dfrac12$
このとき接線 $l$ の傾きは $3t^2-1=1$ で、 $y=-x$ と垂直になる。 $\angle\mathrm{OBA}=90^\circ$ なので、OAが外接円の直径で、Pは線分OAの中点になる(上の図)。 $\mathrm{OP}=\dfrac12\mathrm{OA}$ で、答えと一致する。
別解1((2) の $\cos^2\theta$ の形から等号の条件を見る) (2) の別解より
$$\sin^2\theta=1-\cos^2\theta=1-\frac{(3t^2-2)^2}{2(9t^4-6t^2+2)}\leqq1$$
( $9t^4-6t^2+2=(3t^2-1)^2+1>0$)。等号は $3t^2-2=0$ のときだけ成り立つ。よって $f(t)=\dfrac{1}{2\sin\theta}\geqq\dfrac12$ で、等号は $t=\dfrac{\sqrt6}{3}$ のとき。最小値は $\dfrac12$。 $\sin^2\theta=1$ の方程式を解かずに、等号の条件がすぐ見える。
補足((2) を使わずに等号の条件を求める) $\sin\theta=1$ は $\theta=90^\circ$、すなわち $l$ と $y=-x$ が垂直ということなので、傾きの積が $-1$ となり、 $(3t^2-1)\cdot(-1)=-1$ より $t^2=\dfrac23$。正弦定理で $f(t)\geqq\dfrac12$ まで導ければ、(2) の計算が合っていなくても (3) は解き切れる。
別解2( $\dfrac{1}{t^2}$ の2次関数とみる) $f(t)>0$ なので、 $f(t)$ の最小と $\{f(t)\}^2$ の最小は同じ $t$ で起こる。(2) より
$$\{f(t)\}^2=\frac{1}{4\sin^2\theta}=\frac{9t^4-6t^2+2}{18t^4}=\frac12-\frac{1}{3t^2}+\frac{1}{9t^4}$$
$u=\dfrac{1}{t^2}$( $u>0$)とおくと
$$\{f(t)\}^2=\frac19u^2-\frac13u+\frac12=\frac19\left(u-\frac32\right)^2+\frac14$$
$u=\dfrac32$ は $u>0$ の範囲にあるので、最小値は $\dfrac14$。 $t^2=\dfrac23$ より $t=\dfrac{\sqrt6}{3}$ のとき、 $f(t)$ の最小値は $\dfrac12$。
別解3(外心の座標を直接求める) Oは原点で、Bは直線 $y=-x$ 上にあるので、線分OBの垂直二等分線はOBの中点 $\left(\dfrac t3,\ -\dfrac t3\right)$ を通る傾き1の直線 $y=x-\dfrac23t$ である。Pはこの上にあるので $\mathrm{P}\left(p,\ p-\dfrac23t\right)$ とおける。外接円の半径は等しいので $\mathrm{OP}^2=\mathrm{AP}^2$、すなわち $2\overrightarrow{\mathrm{OP}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OA}}=\mathrm{OA}^2$ より
$$2\left\{pt+\left(p-\frac23t\right)(t^3-t)\right\}=t^2+(t^3-t)^2\iff p=\frac{3t^4-2t^2+2}{6t}$$
よって $\mathrm{P}\left(\dfrac{3t^4-2t^2+2}{6t},\ \dfrac{3t^4-6t^2+2}{6t}\right)$。 $\mathrm{OA}^2=t^2(t^4-2t^2+2)$ と合わせて
$$\{f(t)\}^2=\frac{\mathrm{OP}^2}{\mathrm{OA}^2}=\frac{18t^8-48t^6+64t^4-32t^2+8}{36t^4(t^4-2t^2+2)}=\frac{2(9t^4-6t^2+2)(t^4-2t^2+2)}{36t^4(t^4-2t^2+2)}=\frac{9t^4-6t^2+2}{18t^4}$$
となり、別解2と同じ式になる。正弦定理を使う本解に比べて、分子の因数分解まで含めて計算がかなり重い。(2) の $\sin^2\theta$ は、この重い計算を避けて正弦定理を使うための誘導である。
出題意図
(1) 3次関数の接線の式を正確に立て、直線との交点を求めることができるか(教科書レベル)
(2) 傾きが分かっている2直線のなす角を、tan の加法定理やベクトルの内積で処理できるか
(3) 外接円の半径は正弦定理で表せるという基本に気づき、(2) の誘導に乗れるか
全体:微分・図形と方程式・図形と計量と、複数の単元の知識を総動員する問題。単元ごとに学んだ知識が、実際に使える形になっているかを確かめることができる。
講評
| 難易度 | 標準〜やや難 |
| 目標得点 | 30点 |
| 目標時間 | 35分 |
標準の中ではやや難寄りの問題。
(2) は2直線の傾きから tan を求め、最後に sin に変換する流れで、(3) は「外接円の半径は正弦定理」に気づけるかがすべて。
(2) で $\angle\mathrm{OBA}$ の $\sin$ を求めさせているのが、その最大のヒントになっている。
目標は (1)(2) の30点で、完答できれば50点。
差がつく所・失点しやすい所
- 大きく差がつくのは (3):「外接円の半径は正弦定理」という基本から、 $f(t)=\dfrac{1}{2\sin\theta}$ にする発想に行き着けるか。行き着けないと外心の座標を求めることになり、計算が一気に重くなって時間内に終わらない。
- (2) は解き方の選択:角を tan の加法定理で求めるか、ベクトルの内積で求めるかを選べるか。tan では $\theta=90^\circ$( $3t^2=2$)の場合分けが要り、そこを落とすと減点される。
- 失点しやすい所:(3) で等号が成り立つ $t$ を確かめずに最小値を答える所。
2023年九州大学文系数学
第3問 解答・解説
第3問は平面ベクトル・集合と命題の問題です。
テーマは「0でない2つのベクトル $\vec m=(a,\ c)$、 $\vec n=(b,\ d)$ が平行になる必要十分条件 $D=ad-bc=0$ と、内積の条件をみたす $\vec v$、 $\vec w$ を使って $\vec q=r\vec m+s\vec n$ の係数 $r$、 $s$ を取り出す」。
問題


問題文をテキストで読む
点Oを原点とする座標平面上の $\vec0$ でない2つのベクトル $\vec m=(a,\ c)$、 $\vec n=(b,\ d)$ に対して、 $D=ad-bc$ とおく。以下の問いに答えよ。
(1) $\vec m$ と $\vec n$ が平行であるための必要十分条件は $D=0$ であることを示せ。
以下、 $D\neq0$ であるとする。
(2) 座標平面上のベクトル $\vec v,\vec w$ で、 $\vec m\cdot\vec v=\vec n\cdot\vec w=1$、 $\vec m\cdot\vec w=\vec n\cdot\vec v=0$ を満たすものを求めよ。
(3) 座標平面上のベクトル $\vec q$ に対して、 $r\vec m+s\vec n=\vec q$ を満たす実数 $r$ と $s$ を $\vec q$、 $\vec v$、 $\vec w$ を用いて表せ。
解答の方針
【(1)の方針】
「平行」は実数倍で $\vec n=k\vec m$ と式にできる。必要十分は「平行 ⇒ $D=0$」「 $D=0$ ⇒ 平行」を1方向ずつ示す。逆向きは、前提の $\vec m\neq\vec0$ から $a$、 $c$ の少なくとも一方が0でないことを使う。


- 前提( $\vec m\neq\vec0$、 $\vec n\neq\vec0$)と、示す2つの条件「 $\vec m$ と $\vec n$ が平行」「 $D=0$」を分けて書く。
- (平行 ⇒ $D=0$ について) $\vec n=k\vec m$ とおき、成分を $D$ に代入して $D=0$ を示す。
- ( $D=0$ ⇒ 平行 について) $a\neq0$ のときは $k=b/a$、 $a=0$ のときは $c\neq0$ なので $k=d/c$ とおき、どちらも $\vec n=k\vec m$ となることを示す。
- $\vec n\neq\vec0$ より $k\neq0$ なので、平行と結論する。
【(2)の方針】
$\vec n\cdot\vec v=0$ は、 $\vec v$ と $\vec n=(b,\ d)$ が直交しているという条件。 $\vec n$ と直交する向きの代表は $(d,\ -b)$ なので、 $\vec v$ はその実数倍として未知数1つで表せる。 $\vec w$ も、 $\vec m$ と直交する向きを使って同じように表す。
- $\vec n\cdot\vec v=0$ から $\vec v$ を $k(d,\ -b)$ の形に置き、 $\vec m\cdot\vec v=1$ に代入して $k$ を決める。
- $\vec m\cdot\vec w=0$ から $\vec w$ を $l(-c,\ a)$ の形に置き、 $\vec n\cdot\vec w=1$ に代入して $l$ を決める。
【(3)の方針】
$\vec v$ は、(2) で「 $\vec m$ とは内積1、 $\vec n$ とは内積0」になるように決めたベクトルである。したがって、 $r\vec m+s\vec n=\vec q$ に $\vec v$ を内積すれば $\vec n$ の項が0になり、 $r$ だけを取り出せる( $\vec w$ を使えば $s$ だけを取り出せる)。


- $D\neq0$ と (1) から $\vec m$ と $\vec n$ は平行でないので、どんな $\vec q$ に対しても $r\vec m+s\vec n=\vec q$ となる $r$、 $s$ がただ1組存在することを書く。
- 等式 $r\vec m+s\vec n=\vec q$ に $\vec v$ を内積し、(2) の条件( $\vec m\cdot\vec v=1$、 $\vec n\cdot\vec v=0$)から $r=\vec q\cdot\vec v$ を得る。
- 同じ等式に $\vec w$ を内積し、(2) の条件( $\vec m\cdot\vec w=0$、 $\vec n\cdot\vec w=1$)から $s=\vec q\cdot\vec w$ を得る。
解答


解答をテキストで読む
(1) 配点 20点
(前提) $\vec m=(a,\ c)\neq\vec0$、 $\vec n=(b,\ d)\neq\vec0$
示すことは「 $\vec m$ と $\vec n$ が平行 ⟺ $D=ad-bc=0$」である。 $\vec0$ でない2つのベクトル $\vec m$、 $\vec n$ が平行であるとは、ある実数 $k$ を用いて $\vec n=k\vec m$ と表せることである(このとき $\vec n\neq\vec0$ より $k\neq0$)。
(平行 ⇒ $D=0$ について) $\vec n=k\vec m$ とおくと $(b,\ d)=(ka,\ kc)$ なので $b=ka$、 $d=kc$。よって
$$D=ad-bc=a\cdot kc-ka\cdot c=0$$
( $D=0$ ⇒ 平行 について) $ad=bc$ とする。前提の $\vec m\neq\vec0$ より、 $a\neq0$ または $c\neq0$ である。
(i) $a\neq0$ のとき $k=\dfrac ba$ とおくと $b=ka$。 $ad=bc$ の両辺を $a$ で割って $d=\dfrac{bc}{a}=kc$。よって $\vec n=(ka,\ kc)=k\vec m$。
(ii) $a=0$ のとき 前提より $c\neq0$。 $ad=bc$ より $bc=0$ なので $b=0$。 $k=\dfrac dc$ とおくと $d=kc$、 $b=0=ka$。よって $\vec n=(ka,\ kc)=k\vec m$。
(i)(ii) のどちらでも $\vec n=k\vec m$ と表せて、 $\vec n\neq\vec0$ より $k\neq0$。よって $\vec m$ と $\vec n$ は平行である。
以上より、 $\vec m$ と $\vec n$ が平行であるための必要十分条件は $D=0$ である。(証明終)
補足(図で見る) $a>0$、 $b>0$ の場合を図にすると、平行な $\vec m$、 $\vec n$ は原点を通る同じ直線上にあり、成分でできる2つの直角三角形は相似になる。だから $a:c=b:d$、すなわち $ad=bc$ で、これが $D=0$ である。
別解(垂直を使って同値変形1本で示す) $\vec p=(d,\ -b)$ とおく。前提の $\vec n\neq\vec0$ より $\vec p\neq\vec0$ で、 $\vec n\cdot\vec p=bd-db=0$ なので $\vec n\perp\vec p$。0でなく垂直な $\vec n$、 $\vec p$ は平行でないので、平面上のどんなベクトル $\vec x$ も $\vec x=\alpha\vec n+\beta\vec p$ と表せて、 $\vec x\cdot\vec p=\beta|\vec p|^2$。よって「 $\vec x\perp\vec p$ ⟺ $\beta=0$ ⟺ $\vec x$ は $\vec n$ の実数倍」。 $\vec m\neq\vec0$ なので、
「 $\vec m$ と $\vec n$ が平行」⟺「 $\vec m\perp\vec p$」⟺ $\vec m\cdot\vec p=ad-bc=0$ ⟺ $D=0$
同値変形だけでつないだので、必要十分条件が示せた。 $\vec n$ に垂直なベクトルを $(d,\ -b)$ と置く見方は、(2) で $\vec v$ を1文字で置くときと同じである。
(2) 配点 15点
$\vec n\cdot\vec v=0$ は $\vec v$ が $\vec n=(b,\ d)$ と直交するという意味なので、実数 $k$ を用いて $\vec v=k(d,\ -b)$ と書ける( $(d,\ -b)$ と $\vec n$ の内積は $bd-db=0$ である)。これを $\vec m\cdot\vec v=1$ に代入すると
$$k(ad-bc)=1,\quad\text{すなわち}\quad kD=1$$
$D\neq0$ なので $k=\dfrac1D$。
$\vec w$ も同じように、 $\vec m\cdot\vec w=0$ から $\vec w=l(-c,\ a)$ と書ける。 $\vec n\cdot\vec w=1$ に代入して $l(ad-bc)=1$、すなわち $lD=1$ なので $l=\dfrac1D$。
答 $\vec v=\dfrac1D(d,\ -b)$、 $\vec w=\dfrac1D(-c,\ a)$( $D=ad-bc$)
(3) 配点 15点
$D\neq0$ なので、(1) より $\vec m$ と $\vec n$ は平行でない。 $\vec0$ でなく平行でない2つのベクトルを使うと、平面上のどんなベクトル $\vec q$ も $\vec q=r\vec m+s\vec n$ とただ1通りに表せる。つまり、このような実数 $r$、 $s$ はただ1組存在する。
$r\vec m+s\vec n=\vec q$ について、両辺と $\vec v$ との内積を計算すると
$$r\,\vec m\cdot\vec v+s\,\vec n\cdot\vec v=\vec q\cdot\vec v$$
(2) より $\vec m\cdot\vec v=1$、 $\vec n\cdot\vec v=0$ なので、 $r=\vec q\cdot\vec v$。
図のように、 $\vec q$ を $r\vec m$ と $s\vec n$ に分けると、 $s\vec n$ の部分は $\vec v$ と垂直なので、内積をとると消える。
$\vec w$ との内積についても同じ計算をすると
$$r\,\vec m\cdot\vec w+s\,\vec n\cdot\vec w=\vec q\cdot\vec w$$
(2) より $\vec m\cdot\vec w=0$、 $\vec n\cdot\vec w=1$ なので、 $s=\vec q\cdot\vec w$。
答 $r=\vec q\cdot\vec v$、 $s=\vec q\cdot\vec w$
(確かめ: $\vec q=(x,\ y)$ とすると $r=\vec q\cdot\vec v=\dfrac{dx-by}{D}$、 $s=\vec q\cdot\vec w=\dfrac{-cx+ay}{D}$ で、 $r\vec m+s\vec n$ の $x$ 成分は $\dfrac{a(dx-by)+b(-cx+ay)}{D}=\dfrac{(ad-bc)x}{D}=x$、 $y$ 成分は $\dfrac{c(dx-by)+d(-cx+ay)}{D}=\dfrac{(ad-bc)y}{D}=y$。確かに $r\vec m+s\vec n=\vec q$ となる)
出題意図
(1) 「平行」を実数倍の式に翻訳し、必要十分条件を両方向から示せるか(教科書にある成分による平行条件の証明)
(2)(3) 内積の条件を垂直と読みかえて $\vec v$、 $\vec w$ を求め、それを使って係数 $r$、 $s$ を内積で取り出せるか
講評
| 難易度 | やや簡単 |
| 目標得点 | 50点 |
| 目標時間 | 20分 |
理系の第3問は非常に難しかったが、文系は別物で、(1)(3) が易しく作り直されている。
文字だけで書かれているので、見た瞬間は何をしている問題か分からないが、中身は基本的な成分計算。
見たことがない問題は難しい問題、とは限らない。
九大の文系で極端に難しい問題は出ないので、見た目に惑わされず、具体的なベクトルで実験して、丁寧に手を動かそう。
差がつく所・失点しやすい所
- (1) で「平行=実数倍」と式にして、必要十分を1方向ずつ示すという発想に行き着けるか:「 $D=0$ ⇒ 平行」で $a$ で割るとき、 $a=0$ の場合を書き落としやすい。前提の $\vec m\neq\vec0$ から $a$、 $c$ の一方は0でないことを使う。
- (3) で両辺と $\vec v$、 $\vec w$ の内積をとるという発想に行き着けるか:(2) の条件「 $\vec m\cdot\vec v=1$、 $\vec n\cdot\vec v=0$」が $r$ だけを残すための形だと気づけば、すぐに解ける。
2023年九州大学文系数学
第4問 解答・解説
第4問は確率・漸化式・複素数と方程式の問題です。
テーマは「さいころの目で $0,\ 1,\ \omega,\ \omega^2$ の間を移る複素数の列の確率漸化式」。
問題


問題文をテキストで読む
$\omega$ を $x^3=1$ の虚数解のうち虚部が正であるものとする。さいころを繰り返し投げて、次の規則で4つの複素数 $0,\ 1,\ \omega,\ \omega^2$ を並べていくことにより、複素数の列 $z_1,\ z_2,\ z_3,\ \cdots$ を定める。
・ $z_1=0$ とする。
・ $z_k$ まで定まったとき、さいころを投げて、出た目を $t$ とする。このとき $z_{k+1}$ を以下のように定める。
◦ $z_k=0$ のとき、 $z_{k+1}=\omega^t$ とする。
◦ $z_k\neq0$、 $t=1,\ 2$ のとき、 $z_{k+1}=0$ とする。
◦ $z_k\neq0$、 $t=3$ のとき、 $z_{k+1}=\omega z_k$ とする。
◦ $z_k\neq0$、 $t=4$ のとき、 $z_{k+1}=\overline{\omega z_k}$ とする。
◦ $z_k\neq0$、 $t=5$ のとき、 $z_{k+1}=z_k$ とする。
◦ $z_k\neq0$、 $t=6$ のとき、 $z_{k+1}=\overline{z_k}$ とする。
ここで複素数 $z$ に対し、 $\overline{z}$ は $z$ と共役な複素数を表す。以下の問いに答えよ。
(1) $\omega^2=\overline{\omega}$ となることを示せ。
(2) $z_n=0$ となる確率を $n$ の式で表せ。
(3) $z_3=1$、 $z_3=\omega$、 $z_3=\omega^2$ となる確率をそれぞれ求めよ。
(4) $z_n=1$ となる確率を $n$ の式で表せ。
解答の方針
規則は長いが、 $z_k$ がとる値は $0,\ 1,\ \omega,\ \omega^2$ の4つだけ。 $\omega$ をかけると120°回転、共役をとると実軸に関して対称に移るので、 $1,\ \omega,\ \omega^2$ の外には出ない。まず状態遷移図を書いて状況を整理する。




【(1)の方針】
$\omega$ は $x^3=1$ の虚数解なので、 $\omega^3=1$ と $\omega^2+\omega+1=0$ の2式を書く。 $x^2+x+1=0$ は実数係数なので、共役な $\overline{\omega}$ も解になる。
- $x^3=1$ を $(x-1)(x^2+x+1)=0$ と因数分解し、 $\omega\neq1$ より $\omega^2+\omega+1=0$ を書く。
- $x^2+x+1=0$ は実数係数なので $\overline{\omega}$ も解であり、 $\omega$ は虚数なので $\overline{\omega}\neq\omega$ 。よって2つの解は $\omega$ と $\overline{\omega}$ であることを確かめる。
- 解と係数の関係 $\omega+\overline{\omega}=-1$ と $\omega^2+\omega+1=0$ から、 $\overline{\omega}=-1-\omega=\omega^2$ を示す。
【(2)の方針】
$z_n=0$ かどうかだけを見れば、「0にいるか、いないか」の2つの状態で1文字の確率漸化式が立つ。0の次は必ず0以外で、0以外の次は1、2の目のとき(確率 $\dfrac13$ )だけ0になる。


- (1) を使って、 $z_k$ のとる値が $0,\ 1,\ \omega,\ \omega^2$ だけであることを確かめる。
- $z_{n+1}=0$ となるのは「 $z_n\neq0$ で1、2の目が出る」ときだけと言いかえ、 $p_{n+1}=\dfrac13(1-p_n)$ 、 $p_1=1$ を立てる。
- $p_{n+1}-\alpha=-\dfrac13(p_n-\alpha)$ の形に変形し、係数比較で $\alpha=\dfrac14$ を求め、等比数列として解く。
【(3)の方針】
$z_2$ は $1,\ \omega,\ \omega^2$ が $\dfrac13$ ずつ。0以外の3つの状態から、さいころの目ごとにどこへ移るかを表にまとめれば、あとは目の数を数えるだけ。
- $z_1=0$ から、 $z_2=1,\ \omega,\ \omega^2$ となる確率がそれぞれ $\dfrac13$ であることを求める。
- $z_k=1,\ \omega,\ \omega^2$ のときの、3〜6の目による移り先を表にまとめる(1、2の目では0)。
- 表から $z_3=1,\ \omega,\ \omega^2$ となる場合を拾い、確率を求める。
【(4)の方針】
(3) の結果から、 $z_n=1,\ \omega,\ \omega^2$ となる確率はいつも等しいと予想できる。理由は、3〜6の目の操作がどれも $1,\ \omega,\ \omega^2$ を並べかえるだけだから。等しければ、それぞれ $\dfrac{1-p_n}{3}$ になる。


- $z_n=1,\ \omega,\ \omega^2$ となる確率を $a_n,\ b_n,\ c_n$ とおき、すべての自然数 $n$ で $a_n=b_n=c_n$ であることを示す(自然数の全称命題なので帰納法)。
- $n=1$ では3つとも0であることを確かめる。
- $a_n=b_n=c_n$ と仮定し、(3) の表から $a_{n+1},\ b_{n+1},\ c_{n+1}$ を $p_n,\ a_n,\ b_n,\ c_n$ で表して、どれも $\dfrac13p_n+\dfrac23a_n$ になることを示す。
- $a_n+b_n+c_n=1-p_n$ から $a_n=\dfrac{1-p_n}{3}$ とし、(2) の結果を代入する。
解答




解答をテキストで読む
(1) 配点 6点
$\omega$ は $x^3=1$ 、すなわち $(x-1)(x^2+x+1)=0$ の虚数解で、 $\omega\neq1$ なので
$$\omega^3=1,\qquad \omega^2+\omega+1=0$$
$x^2+x+1=0$ は実数係数の2次方程式なので、虚数解 $\omega$ と共役な $\overline{\omega}$ も解である。 $\omega$ は虚数なので $\overline{\omega}\neq\omega$ であり、この2次方程式の2つの解は $\omega$ と $\overline{\omega}$ である。
解と係数の関係より $\omega+\overline{\omega}=-1$ 。よって、 $\omega^2+\omega+1=0$ を使うと
$$\overline{\omega}=-1-\omega=\omega^2$$
となり、 $\omega^2=\overline{\omega}$ が示された。
状況の整理 (1) と $\omega^3=1$ より
$$\overline{1}=1,\qquad \overline{\omega}=\omega^2,\qquad \overline{\omega^2}=\overline{\overline{\omega}}=\omega,\qquad \omega\cdot1=\omega,\quad \omega\cdot\omega=\omega^2,\quad \omega\cdot\omega^2=1$$
なので、 $1,\ \omega,\ \omega^2$ は $\omega$ をかけても共役をとっても $1,\ \omega,\ \omega^2$ のどれかに移る。また、 $z_k=0$ のとき $z_{k+1}=\omega^t$ は、 $t=3,6$ で $1$ 、 $t=1,4$ で $\omega$ 、 $t=2,5$ で $\omega^2$ である。よって、 $z_k$ は常に $0,\ 1,\ \omega,\ \omega^2$ のどれかで、移り方は次の表と図のようになる。
| $z_k$ \ 目 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| $0$ | $\omega$ | $\omega^2$ | $1$ | $\omega$ | $\omega^2$ | $1$ |
| $1$ | $0$ | $0$ | $\omega$ | $\omega^2$ | $1$ | $1$ |
| $\omega$ | $0$ | $0$ | $\omega^2$ | $\omega$ | $\omega$ | $\omega^2$ |
| $\omega^2$ | $0$ | $0$ | $1$ | $1$ | $\omega^2$ | $\omega$ |
(2) 配点 14点
$z_n=0$ となる確率を $p_n$ とする。 $z_1=0$ なので $p_1=1$ 。
状況の整理から、 $z_n=0$ のとき $z_{n+1}$ は必ず0以外で、 $z_n\neq0$ のとき $z_{n+1}=0$ となるのは1、2の目が出るときだけ(確率 $\dfrac13$ )である。
よって
$$p_{n+1}=0\cdot p_n+\dfrac13(1-p_n)=-\dfrac13p_n+\dfrac13$$
これを $p_{n+1}-\alpha=-\dfrac13(p_n-\alpha)$ と変形したい。右辺を展開すると $p_{n+1}=-\dfrac13p_n+\dfrac43\alpha$ なので、係数を比べて $\dfrac43\alpha=\dfrac13$ 、すなわち $\alpha=\dfrac14$ 。
$$p_{n+1}-\dfrac14=-\dfrac13\left(p_n-\dfrac14\right)$$
数列 $\left\{p_n-\dfrac14\right\}$ は初項 $p_1-\dfrac14=\dfrac34$ 、公比 $-\dfrac13$ の等比数列なので
$$p_n-\dfrac14=\dfrac34\left(-\dfrac13\right)^{n-1}$$
答 $\dfrac14+\dfrac34\left(-\dfrac13\right)^{n-1}$
(確かめ: $n=2$ で $\dfrac14-\dfrac14=0$ 、 $n=3$ で $\dfrac14+\dfrac1{12}=\dfrac13$ 。 $z_2$ は必ず0以外、 $z_3=0$ は $z_2\neq0$ で1、2の目のときで $\dfrac13$ となり一致)
(3) 配点 10点
$z_1=0$ なので、 $z_2=\omega^t$ は $t=3,6$ で $1$ 、 $t=1,4$ で $\omega$ 、 $t=2,5$ で $\omega^2$ 。よって $z_2=1,\ \omega,\ \omega^2$ となる確率はそれぞれ $\dfrac13$ である。
状況の整理の表から、 $z_2$ から $z_3$ への移り方を拾う。
・$z_3=1$ : $z_2=1$ で5、6の目、 $z_2=\omega^2$ で3、4の目( $z_2=\omega$ からは移らない)
・$z_3=\omega$ : $z_2=1$ で3の目、 $z_2=\omega$ で4、5の目、 $z_2=\omega^2$ で6の目
・$z_3=\omega^2$ : $z_2=1$ で4の目、 $z_2=\omega$ で3、6の目、 $z_2=\omega^2$ で5の目
よって
$$P(z_3=1)=\dfrac13\cdot\dfrac26+\dfrac13\cdot\dfrac26=\dfrac29,\qquad P(z_3=\omega)=P(z_3=\omega^2)=\dfrac13\cdot\dfrac16+\dfrac13\cdot\dfrac26+\dfrac13\cdot\dfrac16=\dfrac29$$
答 $z_3=1$、 $z_3=\omega$、 $z_3=\omega^2$ となる確率はいずれも $\dfrac29$
(確かめ:(2) より $z_3=0$ となる確率は $\dfrac13$ で、 $\dfrac13+3\cdot\dfrac29=1$ )
(4) 配点 20点
$z_n=1,\ \omega,\ \omega^2$ となる確率を、それぞれ $a_n,\ b_n,\ c_n$ とする。(3) から、3つの確率はいつも等しいと予想できる。
「すべての自然数 $n$ で $a_n=b_n=c_n$ 」は自然数の全称命題なので、数学的帰納法で示す。
[1] $n=1$ のとき、 $z_1=0$ なので $a_1=b_1=c_1=0$ で成り立つ。
[2] $n$ で $a_n=b_n=c_n$ が成り立つと仮定する。状況の整理の表から、 $z_{n+1}=1,\ \omega,\ \omega^2$ となる確率は
$$a_{n+1}=\dfrac13p_n+\dfrac26a_n+0\cdot b_n+\dfrac26c_n$$
$$b_{n+1}=\dfrac13p_n+\dfrac16a_n+\dfrac26b_n+\dfrac16c_n$$
$$c_{n+1}=\dfrac13p_n+\dfrac16a_n+\dfrac26b_n+\dfrac16c_n$$
仮定 $a_n=b_n=c_n$ より、3つとも $\dfrac13p_n+\dfrac23a_n$ に等しく、 $a_{n+1}=b_{n+1}=c_{n+1}$ が成り立つ。
(3〜6の目の操作「 $\omega$ をかける」「 $\omega$ をかけて共役をとる」「そのまま」「共役をとる」は、どれも $1,\ \omega,\ \omega^2$ を並べかえるだけなので、どの値にも4つの目から1回ずつ入ってくる。だから0以外から入る確率はどれも $\dfrac46a_n$ になる)
[1][2]より、すべての自然数 $n$ で $a_n=b_n=c_n$ である。
$z_n$ は $0,\ 1,\ \omega,\ \omega^2$ のどれかなので、確率は全部で1で、 $a_n+b_n+c_n=1-p_n$ 。よって、(2) の結果を使うと
$$a_n=\dfrac{1-p_n}{3}=\dfrac13\left\{\dfrac34-\dfrac34\left(-\dfrac13\right)^{n-1}\right\}=\dfrac14-\dfrac14\left(-\dfrac13\right)^{n-1}$$
答 $\dfrac14-\dfrac14\left(-\dfrac13\right)^{n-1}$
(確かめ: $n=3$ で $\dfrac14-\dfrac1{36}=\dfrac29$ となり、(3) と一致。また $a_n=\dfrac{1-p_n}{3}$ は (2) の漸化式の右辺と同じなので、 $a_n=p_{n+1}$ にもなっている)
出題意図
(1) $\omega^3=1$ から $\omega^2+\omega+1=0$ を作り、実数係数の方程式の共役な解の性質を使えるか(教科書レベル)
(2) 長い規則を「0にいるか、いないか」の2つの状態に整理し、1文字の確率漸化式を立てて解けるか
(3)(4) 0以外の3つの状態の移り方を整理し、(3) の計算から3つの確率がいつも等しいことに気づき、それを示せるか
講評
| 難易度 | 難 |
| 目標得点 | 10点 |
| 目標時間 | 30分 |
複素数平面の知識があれば解きやすいが、文系の学習範囲では厳しい問題で、0点でもよい。
取れる小問(まず (1) の $\omega^2=\overline{\omega}$ を示す小問)だけ、状態遷移図を書いて確率の移り先を整理すれば拾える。
ただし、九大の文系でも、この2023年に確率漸化式が出て、2026年にも理系と同じ確率漸化式の問題が出ている。
確率漸化式はチャートの基本例題でしっかり鍛えておこう。
差がつく所・失点しやすい所
- 状況を言葉にして整理できたか: $z_k$ がとる値は $0,\ 1,\ \omega,\ \omega^2$ だけで、「0の次は必ず0以外、0以外からは $\dfrac13$ で0」と整理できるか。状況を理解できていないと大幅に減点される。
- 差がつくのは (4):(3) の結果から $1,\ \omega,\ \omega^2$ の確率がいつも等しいという発想に行き着けるか。3〜6の目の操作が並べかえだと見抜けば、帰納法ですぐに示せる。
- (2) の初項: $z_1=0$ なので $p_1=1$ 。初項や指数を取り違えると答えがずれる。 $n=2,3$ を代入して確かめる。
2023年九州大学・文系数学の
講評とまとめ
4問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 目標点 |
|---|---|---|
| 第1問 | 標準 | 30点 |
| 第2問 | 標準〜やや難 | 30点 |
| 第3問 | やや簡単 | 50点 |
| 第4問 | 難 | 10点 |
| 全体 | やや難 | 125点 |
大問ごとの目標点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。足すと120点になりますが、全体の目標点は125点です。
第1問か第2問を確実に取れるかが分かれ目になる年でした。
第1問は絶対値つきの放物線と直線で囲まれる面積、第2問は3次曲線の接線と外接円の図形問題で、どちらも標準的な問題です。
少なくとも片方は完答したいところです。
第3問は理系では非常に難しかった問題の姉妹問題ですが、文系は易しく作り直されていて、満点が狙えます。
見たことがない問題だからといって、難しいとは限りません。
第4問は確率漸化式と複素数の問題で、文系の範囲では厳しく、基本的に捨ててよい問題です。
目標点は125点です。
解く流れ
- 第1問 → 第3問 → 第2問 → 第4問(第1問・第3問を先に確実に取り、第4問は最後に回して取れる小問だけ拾う)
- 目標時間の合計は110分(第1問25分・第2問35分・第3問20分・第4問30分)。残りの10分は見直しと予備。
2023年九州大学・文系数学に
関するよくある質問
2023年の九州大学・文系数学について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2023年の九州大学・文系数学は難しかった?
-
やや難しい年でした。
第1問は標準、第2問は標準〜やや難、第3問はやや簡単、第4問は難です。
第3問は満点を狙えますが、第4問は文系の範囲では厳しく、捨ててよい問題です。 - 2023年の九州大学・文系数学は何点取れば合格できる?
-
目標点は125点です(200点満点)。
- 2023年の九州大学・文系数学はどこで差がつく?
-
第3問は満点を狙いたいところです。そのうえで、第1問か第2問は少なくとも片方を完答したい年で、差がつくのは次の2つです。
- 第1問:「面積が等しい」を「差の積分が0」と言いかえて区間をまとめ、絶対値の外し方を落とさずに計算し切れたか。
- 第2問 (3):「外接円の半径は正弦定理」から、外心を求めずに半径を表す発想に行き着けたか。
第4問は難しく、(1) の小問以外は落としてよい問題です。
- 2023年の九州大学・文系数学は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:積分法(数学Ⅱ)
- 第2問:微分法・図形と方程式・図形と計量
- 第3問:平面ベクトル・集合と命題
- 第4問:確率・漸化式・複素数と方程式


