【解説・配点付き】2011年九州大学物理の解答・解説
2011年の九州大学・物理の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2011年九州大学物理
第1問 解答・解説
この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は力学の問題です。
テーマは「曲面をすべり下りた物体1が、あらい面で減速しながら静止した物体2に衝突して一体になる。一体になったあと、ばねにつながれてあらい面で振動し、折り返すたびに振れ幅が一定の量ずつ小さくなる」。
問題


問題文をテキストで読む
以下の問いに答えよ。
図1(a)に示すように曲面と水平面がなめらかにつながっている。大きさが無視できる質量 $m$ の物体1を水平面から $H$ の高さの曲面上の位置に置き、静かに手を離す。空気の抵抗は無視できる。速度および加速度は図1(a)における水平方向右向きを正とする。また、重力加速度の大きさを $g$ とする。
問1. 物体1は曲面に沿って落下し、水平面上を進み、点Pまで到達したときの速度が $v_0$ であった。曲面および水平面上の点Pまでは摩擦はないものとする。
水平面からの高さ $H$ を $v_0$ と $g$ を用いて表せ。
問2. 水平面上の点Pから固定壁までの区間では物体に摩擦力が作用する。ただし動摩擦係数は $\mu$ とする。質量 $m$ の物体1が点Pから距離 $L$ だけ進んで、大きさが無視できる質量 $m$ の静止している物体2に衝突し、衝突後は物体1と物体2は質量 $2m$ の一体の物体となって運動を始めた。特に指定がない限り、以下の問いに $m$、 $\mu$、 $v_0$、 $L$、 $g$ の中から必要なものを用いて答えよ。
(1) 摩擦力を考慮することにより、物体1が点Pから距離 $L$ だけ進む間の加速度を求めよ。
(2) 物体1が点Pを通過してから物体2に衝突するまでの時間 $T$ を求めよ。
(3) 衝突直前の物体1の速度 $v_1$ を $T$、 $\mu$、 $v_0$、 $g$ を用いて表せ。
(4) 一体となった物体の衝突直後の速度 $v_2$ を速度 $v_1$ を用いて表せ。
問3. 衝突前の物体2は固定壁に質量の無視できるばねでつながれており、ばねの長さは自然長になっている。ばね定数を $k$ とする。物体1と物体2が衝突した点を原点にとり、ばねが圧縮される方向を $x$ 座標の正の向きにとる。衝突後に一体となり速度 $v_2$ で運動を始めた物体は、ばねの復元力の影響で振動する。物体は離れることなく常に一体となって運動し、その運動は点Pと固定壁の範囲内に収まるとする。振動する過程で進行方向と逆向きに摩擦力が発生するので力学的エネルギーが失われることになる。一体となった物体は、図1(b)に示すように原点Oから変位 $x$ の正側の極大点Aに到達した後、逆方向に運動して負側の極小点Bに達し、同様の運動を繰り返して、物体の振れ幅は時間とともに小さくなった。特に指定がない限り、以下の問いに $m$、 $\mu$、 $v_2$、 $g$、 $k$、および点A、点Bにおける原点Oからの距離 $a$、 $b$ の中から必要なものを用いて答えよ。
(1) 衝突直後の一体となった物体の運動エネルギーを求めよ。
(2) 変位の極大点Aに達するまでに、ばねは $a$ だけ押し縮められた。そのときばねに蓄えられている弾性エネルギーを表せ。
(3) 衝突してから変位の正側の極大点Aに達する間に摩擦によって失われる力学的エネルギーを求めよ。
(4) ばねに蓄えられる弾性エネルギーと摩擦によって失われる力学的エネルギーに着目して、原点Oから点Aまでの距離 $a$ を $m$、 $\mu$、 $v_2$、 $g$、 $k$ を用いて表せ。
(5) 図1(b)に示すように一体となった物体が点Aから点Bまで動く間の、ばねの弾性エネルギーと摩擦によって失われる力学的エネルギーに着目して、距離の差 $a-b$ を $m$、 $\mu$、 $g$、 $k$ を用いて表せ。
解答の方針
【問1の方針】
曲面と P までは摩擦がないので、力学的エネルギーが保存する。
- 最初の位置と P で力学的エネルギー保存を立て、 $H$ を求める(問1)。
【問2の方針】
まず運動を想像する。P を過ぎると動摩擦力で一定の割合で減速し、止まった物体は動かない(下の図)。一体になる衝突は運動量保存。


- P から物体2までの間で、物体1にはたらく力を「重力 → 垂直抗力 → 動摩擦力」の順にすべて書く。鉛直方向のつり合いから垂直抗力を求め、水平方向の運動方程式から加速度を求める(問2 (1))。
- 等加速度運動の位置の式に $x=L$ を入れ、 $T$ の2次方程式にする。2つの解のうち、止まる時刻 $\dfrac{v_0}{\mu g}$ より前の方を選ぶ(止まった物体は動かないので、実際の運動は止まる前まで。問2 (2))。
- 速度の式に $T$ を入れて、衝突直前の速度 $v_1$ を求める(問2 (3))。
- 一体になる衝突は物体どうしの力(内力)だけで決まるので、衝突の前後で運動量保存を立て、一体の速度 $v_2$ を求める(問2 (4))。
【問3の方針】
まず運動を想像する。折り返すたびに振れ幅が小さくなる(下の図)。摩擦がした仕事の分だけ力学的エネルギーが減るので、速さが決まっている点(衝突直後・A・B)で収支を書く。


- 一体の運動エネルギーを求める((1))。縮み $a$ のばねの弾性エネルギーを求める((2))。
- 一体にはたらく力を「重力 → 垂直抗力 → 動摩擦力 → ばねの力」の順に書き、鉛直方向のつり合いから垂直抗力を求める。動摩擦力に O から A までの距離をかけて、失われるエネルギーを求める((3))。
- O と A で $W=\Delta E$ を立て、 $a$ の2次方程式にして、 $a>0$ の解を選ぶ((4))。
- A と B で $W=\Delta E$ を立てる(A も B も速さ0で運動エネルギーは0。距離は $a+b$)。 $a^2-b^2$ を $(a+b)(a-b)$ に直し、 $a+b>0$ で割って $a-b$ を求める((5))。
解答




解答をテキストで読む
問1
曲面と P までは摩擦がない。物体1にはたらく力は、重力と垂直抗力だけ。垂直抗力は進む向きと垂直なので仕事をしない。よって力学的エネルギーが保存する。水平面を位置エネルギーの基準にして、最初(高さ $H$、速さ0)と P(高さ0、速さ $v_0$)で書く。
$$mgH+0=0+\frac12m{v_0}^2$$
質量 $m$ は約分で消える。
答 $H=\dfrac{{v_0}^2}{2g}$(5点)
問2 (1)
P から物体2までの間で、物体1にはたらく力は、重力 $mg$(下向き)、垂直抗力 $N$(上向き)、動摩擦力 $\mu N$(進む向きと逆の左向き)(下の図)。
鉛直方向は動かないのでつり合っていて $N=mg$。右向きが正なので、水平方向の運動方程式は
$$ma=-\mu N=-\mu mg$$
答 $a=-\mu g$(4点)
(負は左向き=減速。大きさ $\mu g$ は質量 $m$ によらない)
問2 (2)
加速度が一定なので等加速度運動。P を通過した時刻を0として、時間 $T$ で P から距離 $L$ 進む。速度 $v_0$、加速度 $-\mu g$ の位置の式に $x=L$ を入れる。
$$L=v_0T-\frac12\mu gT^2\qquad\therefore\ \mu gT^2-2v_0T+2L=0$$
$$T=\frac{v_0\pm\sqrt{{v_0}^2-2\mu gL}}{\mu g}$$
2つの解のうち、どちらが答えか。物体1が止まる時刻は、速度の式 $0=v_0-\mu gt$ から $t=\dfrac{v_0}{\mu g}$。物体1はこの時刻より前に物体2に衝突するので、 $T<\dfrac{v_0}{\mu g}$。2つの解は $\dfrac{v_0}{\mu g}$ をはさんで両側に出るので、 $T$ は小さい方の解(下の図)。大きい方の解は、止まったあとも同じ加速度が続くと仮定した式を延ばしただけの時刻。実際には、止まった物体は押しもどされない(動摩擦力は動いているときに進む向きと逆にはたらくだけで、止まった物体を逆向きに動かす力はない)ので、起こらない。
答 $T=\dfrac{v_0-\sqrt{{v_0}^2-2\mu gL}}{\mu g}$(6点)
(根号の中が正になることは、物体1が O まで届くという設定が保証している)
問2 (3)
等加速度運動の速度の式 $v=v_0+at$ に $a=-\mu g$、 $t=T$ を入れる。
答 $v_1=v_0-\mu gT$(4点)
($T$ に (2) を入れると $v_1=\sqrt{{v_0}^2-2\mu gL}$。時間を使わない公式 $v^2-{v_0}^2=2aL$ からも同じ)
問2 (4)
衝突のとき、物体1と物体2の間にはたらく力は作用・反作用(内力)。衝突は一瞬で終わるので、摩擦やばねの力の力積は無視できる。よって、衝突の前後で運動量が保存する(右向きが正)。
$$mv_1+0=(m+m)v_2$$
答 $v_2=\dfrac{v_1}{2}$(5点)
(一体になる衝突では力学的エネルギーは保存しない。運動エネルギーは $\dfrac12m{v_1}^2$ から $\dfrac14m{v_1}^2$ に半分へ減る)
問3 (1)
一体の質量は $2m$、速さは $v_2$。
答 $\dfrac12(2m){v_2}^2=m{v_2}^2$(3点)
問3 (2)
ばねは自然長から $a$ だけ縮んでいる。
答 $\dfrac12ka^2$(3点)
問3 (3)
一体にはたらく力は、重力 $2mg$、垂直抗力 $N’$、ばねの力、動摩擦力 $\mu N’$(下の図)。鉛直方向のつり合いから $N’=2mg$ なので、動摩擦力は質量 $2m$ の一体全体にはたらいて $\mu N’=2\mu mg$。摩擦力は進む向きと逆に一定なので、O から A まで距離 $a$ 進む間に、この力が逆向きに仕事をして、その分だけ力学的エネルギーが失われる。
$$\text{失われるエネルギー}=\text{摩擦力}\times\text{距離}=2\mu mg\times a$$
答 $2\mu mga$(5点)
問3 (4)
$E=K+U_k$(運動エネルギー+ばねの弾性エネルギー)。O(速さ $v_2$、ばねは自然長)と A(速さ0、縮み $a$)で、 $W=\Delta E$(摩擦の仕事=後のエネルギー−前のエネルギー)を書く。摩擦の仕事は $-2\mu mga$ なので
$$-2\mu mga=\frac12ka^2-m{v_2}^2$$
$$ka^2+4\mu mga-2m{v_2}^2=0$$
2次方程式の解の公式より
$$a=\frac{-2\mu mg\pm\sqrt{(2\mu mg)^2+2km{v_2}^2}}{k}$$
$a>0$ なので、根号の前が $+$ の解($-$ の解は負になる)。
答 $a=\dfrac{-2\mu mg+\sqrt{(2\mu mg)^2+2km{v_2}^2}}{k}$(5点)
問3 (5)
A(速さ0、縮み $a$)から B(速さ0、伸び $b$)まで動く間は、進む距離が $a+b$。運動エネルギーはどちらも0なので、弾性エネルギーの差が摩擦の仕事に等しい。
$$-2\mu mg(a+b)=\frac12kb^2-\frac12ka^2$$
$$\frac12k(a^2-b^2)=2\mu mg(a+b)$$
$a^2-b^2=(a+b)(a-b)$ で、 $a+b>0$ なので両辺を $a+b$ で割る。
$$\frac12k(a-b)=2\mu mg$$
答 $a-b=\dfrac{4\mu mg}{k}$(5点)
(折り返すたびに、振れ幅が片道ごとに $\dfrac{4\mu mg}{k}$ ずつ、一定の量だけ小さくなる。 $v_2$ も $a$ も $b$ も答えに残らない)
別解
問2 (2) (時間を介さない公式で) 2次方程式を解かずに、先に衝突直前の速さを求める。 $v^2-{v_0}^2=2aL$ に $a=-\mu g$ を入れて、 $v_1=\sqrt{{v_0}^2-2\mu gL}$(物体1はまだ右へ動いているので正)。これを $v_1=v_0-\mu gT$ に入れて $T=\dfrac{v_0-v_1}{\mu g}=\dfrac{v_0-\sqrt{{v_0}^2-2\mu gL}}{\mu g}$。2つの解から選ぶ必要がなく、同じ答え。本解は、(2)→(3) の誘導($T$ を求めてから $v_1$ を $T$ で表す)の順にそのまま従う形にした。
問3 (5) (振動の中心で) 一体が左へ動く間(A→B)は、動摩擦力は右向きに一定で $2\mu mg$。運動方程式は $2ma=-kx+2\mu mg=-k\left(x-x_{\mathrm c}\right)$、 $x_{\mathrm c}=\dfrac{2\mu mg}{k}$。単振動定数は $k$ のまま、中心だけが $x_{\mathrm c}$ にずれる(右へ動くときは $-x_{\mathrm c}$。動く向きで中心が入れかわる)。A も B も速さ0の折り返し点=振動の端なので、中心について対称(下の図)。
$$a-x_{\mathrm c}=b+x_{\mathrm c}\qquad\therefore\ a-b=2x_{\mathrm c}=\frac{4\mu mg}{k}$$
同じ答え。本解は、(3)(4) と同じエネルギーの収支をそのまま A→B に使う形にした。中心の入れかわりに気づけば一瞬で求まる。
出題意図
問1 なめらかな面での力学的エネルギー保存から、はじめの高さを求めることができるか
問2 (1)〜(3) 摩擦のある面での減速を運動方程式と等加速度運動で捉え、止まる前の時刻を選んで衝突直前の速度を求めることができるか
問2 (4) 一体になる衝突を、運動量保存で扱うことができるか
問3 (1)〜(4) 摩擦のあるばね振動を、運動エネルギー・弾性エネルギー・摩擦で失う分の収支で扱い、最初の折り返し点を求めることができるか
問3 (5) 2つの折り返し点の収支から、振れ幅が片道ごとに一定の量だけ小さくなることを導くことができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 45点 | 40点 |
| 目標時間 | 20分 | 25分 |
力学的エネルギーに注目すれば難しくない、よくある型。
摩擦のある面を行ったり来たりする運動は、摩擦で失われたエネルギーが最初と最後の力学的エネルギーの差になる( $W=\Delta E$ )。
決め手は運動を想像できるかどうかで、物体1は摩擦で一定の割合で減速し、止まれば動かない。
これが見えれば (2) の解は迷わず選べるので、医学科は満点を取りたい大問。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2 (2):2次方程式の2つの解から、止まる時刻より前の解を選べるか。運動を想像して「止まった物体は押しもどされない」と言い切れれば迷わない。ここを間違えると (3)(4) の答えも崩れる。
- 問3 (3)(4):摩擦がはたらくのは質量 $2m$ の一体全体で、動摩擦力は $2\mu mg$ という点に気づけるか。動摩擦力を $\mu mg$(質量 $m$ だけ)と書くと、(4)(5) まで崩れる。
- 問3 (5):$a^2-b^2$ を $(a+b)(a-b)$ に分けて、 $a+b$ で割る発想に行き着けるか(振動の中心の入れかわりに気づけば別解で一瞬)。
コラム 摩擦のある面の振動は「直線的に」小さくなって、ぴたりと止まる
問3 (5) の $a-b=\dfrac{4\mu mg}{k}$ は、折り返すたびに振れ幅が同じ量ずつ減ることを表している(問3 (5) の図)。
- 直線的に減る:A→B と同じ収支は B→C でも成り立つので、折り返し点の位置は $a,\ -(a-d),\ a-2d,\ \cdots$($d=\dfrac{4\mu mg}{k}$)と、片道ごとに $d$ ずつ、一定の量で小さくなる。振れ幅が一定の割合で小さくなるのではない。
- ぴたりと止まる:折り返し点で、ばねの力の大きさが最大摩擦力以下になると、物体は動き出せずにそこで止まる。最大摩擦力を動摩擦力と同じとすると、折り返し点が2つの中心 $\pm x_{\mathrm c}$(別解)のあいだに入ったときに止まる。振れ幅が $0$ に近づき続けるのではなく、有限の回数で止まる。
摩擦のあるばね振動は、エネルギーの収支(本解)で見ても、中心の入れかわり(別解)で見ても、同じ $a-b=\dfrac{4\mu mg}{k}$ に行き着く。一定の力が加わると中心だけがずれる、という単振動の型は、ほかの問題でも使える。
2011年九州大学物理
第2問 解答・解説
第2問は電磁気の問題です。
テーマは「磁場の中のレールの上の導体棒に、電源をつないで電圧を時間変化させる。電流が棒を加速する力になり、棒の速度が電圧になる。この関係から、棒は『電気容量 $\dfrac{m}{B^2L^2}$ のコンデンサー』と見なせる。台形状の電圧に対して、電流のグラフは階段、電力のグラフは負の部分(減速する棒から電源へ電力がもどる)を含む形になる」。
問題


問題文をテキストで読む
以下の問いに答えよ。
図2(a)に示すように、水平面上に十分長い2本の導体レールを間隔 $L$ で平行に置き、磁束密度 $B$ の一定で一様な磁場を鉛直下向きに加えた。導体レールの上に乗せた質量 $m$ の導体棒は、導体レールと直角を保ちながら移動し、移動の際の摩擦は無視できるものとする。
導体レールに端子J、Kをつけ、端子Jの電位を $V_{\mathrm{J}}$、端子Kの電位を $V_{\mathrm{K}}$ とし、端子間の電圧 $V$ を $V=V_{\mathrm{J}}-V_{\mathrm{K}}$ とする。導体棒に流れる電流を $I$、導体棒にはたらく力を $F$、導体棒の速度を $v$ とし、それぞれ図中の矢印の向きを正とする。導体棒に作用する空気抵抗、回路に流れる電流による磁界、回路の電気抵抗は無視できるものとする。
問1. 以下の文章の空欄にあてはまる数式または語句を答えよ。ただし、 $\boxed{\text{イ}}$ には語句が入り、 $\boxed{\text{ア}}$ および $\boxed{\text{ウ}}$ 〜 $\boxed{\text{キ}}$ には数式が入る。数式は $m$、 $B$、 $L$、 $I$ の中から必要なものを用いて表せ。また、同じ記号の欄には同じものが入る。
導体棒にはたらく力 $F$ と導体棒に流れる電流 $I$ には $F=\boxed{\text{ア}}\times I$ の関係があり、このような力を $\boxed{\text{イ}}$ とよぶ。微小な時間 $\Delta t$ の間に導体棒の速度が $\Delta v$ だけ変化したとすると、時間 $\Delta t$ の間の導体棒の平均の加速度は $\dfrac{\Delta v}{\Delta t}$ と書ける。時間 $\Delta t$ の間に導体棒にはたらく力 $F$ が一定であるとすると、時間 $\Delta t$ の間の平均加速度 $\dfrac{\Delta v}{\Delta t}$ と力 $F$ の関係式は、 $\dfrac{\Delta v}{\Delta t}=\boxed{\text{ウ}}\times F$ と書くことができる。
一方、導体棒が速度 $v$ で動くことにより誘導起電力が生じるが、この誘導起電力は図2(a)の回路では端子間の電圧 $V$ と等しくなる。このため、電圧 $V$ と速度 $v$ の関係式は、 $V=\boxed{\text{エ}}\times v$ と書くことができる。これより、微小な時間 $\Delta t$ の間の端子間電圧の変化を $\Delta V$、時間 $\Delta t$ の間の導体棒の速度の変化を $\Delta v$ とすると、 $\dfrac{\Delta V}{\Delta t}=\boxed{\text{エ}}\times\dfrac{\Delta v}{\Delta t}$ の関係式が成り立つ。以上のことから、電流 $I$ と $\dfrac{\Delta V}{\Delta t}$ との間には、 $I=\boxed{\text{オ}}\times\dfrac{\Delta V}{\Delta t}$ の関係式が成り立つ。
さらに、導体棒を流れる電流 $I$ は、導体棒を単位時間に通過する電気量であるため、微小な時間 $\Delta t$ の間に導体棒を通過する電気量 $\Delta Q$ は、 $\Delta Q=\boxed{\text{カ}}\times\Delta t$ と書くことができる。以上の結果は、端子J、Kから導体レール側を見たとき、端子間にコンデンサーがつながっていると見なしてよいことを示している。そのコンデンサーの電気容量 $C$ は、 $C=\boxed{\text{キ}}$ となる。
問2. 端子間の電圧 $V$ を図2(b)のように時間 $t$ とともに変化させた。それに伴って下記の(1)、(2)に示す量も変化した。問1の数式 $\boxed{\text{オ}}$ を記号 $A$ とおく。
$0<t<T$、 $T<t<2T$、 $2T<t<4T$ のそれぞれの期間において、(1)、(2)に示す量を $A$、 $V_{\mathrm{S}}$、 $T$ および時間 $t$ の中から必要なものを用いて表せ。かつ、 $0<t<T$、 $T<t<2T$、 $2T<t<4T$ のそれぞれの期間における各量の時間変化をグラフに描け。
(1) 電流 $I$
(2) 電源から供給される向きを正とする電力 $P$
解答の方針
【問1の方針】
棒は、電流が流れれば力を受けて加速し、速度が出れば起電力を生む。抵抗がないので、棒の起電力がそのまま端子間の電圧になる(下の図)。電流は電気量の時間変化なので、コンデンサーに読みかえられる。


- 電流が磁場から受ける力 $F$ を $I$ で表し、その力の呼び名を答える(ア・イ)。
- 棒の運動方程式を、微小な時間 $\Delta t$ の間の速度の変化 $\Delta v$ で書く(ウ)。
- 棒を電池と見て、端子間の電圧 $V$ を速度 $v$ で表す。 $v$ が $\Delta v$ だけ変わるときの $\Delta V$ を求める(エ)。
- 1〜3 を合わせて、 $I$ を $\dfrac{\Delta V}{\Delta t}$ で表す(オ)。
- 電流は単位時間に通過する電気量なので、 $\Delta t$ の間に通過する電気量 $\Delta Q$ を $I$ で表す(カ)。
- オを使って $\Delta Q$ を $\Delta V$ で表し、コンデンサーの $\Delta Q=C\Delta V$ と見比べて電気容量を読む(キ)。
【問2の方針】
電流は電圧のグラフの傾きに比例する( $I=A\dfrac{\Delta V}{\Delta t}$ )。棒の運動は加速 → 等速 → 減速で、電流が負の間は電力も負になる(下の図)。


- 3つの期間それぞれで、 $V$ を $t$ の式で表し、傾き $\dfrac{\Delta V}{\Delta t}$ を読んで、電流 $I=A\dfrac{\Delta V}{\Delta t}$ を求める((1))。
- 電力 $P=VI$ に、同じ期間の $V$ と $I$ を入れて $P$ を求める。電流が負の期間は電力も負で、電源にエネルギーがもどる((2))。
- 電流は期間ごとに一定の階段、電力は期間ごとの直線として、縦軸の値と $0$・$T$・$2T$・$4T$ を書き込んでグラフにする。
解答




解答をテキストで読む
空欄ア〜キ
棒に流れる電流は図の向き(J 側から K 側)。上から見ると、棒の電流は下向き、磁場は鉛直下向きで紙面の奥向き。電流が磁場から受ける力は、電流・磁場・長さが垂直なので大きさ $BLI$。向きはフレミングの左手で右向き、つまり $F$ の正の向き(下の図)。
$$F=BL\times I$$
答(ア) $BL$(2点)
電流が磁場から受ける力の名前を答える。教科書では、電流が磁場から受ける力を電磁力(アンペールの力ともいう)とよぶ。
答(イ) 電磁力(2点)
(ローレンツ力は荷電粒子1個が磁場から受ける力の名前で、電流が受ける力はその和。「ローレンツ力」と書く場合は、かっこでアンペール力を添える。)
棒には水平方向に電磁力 $F$ だけがはたらく(重力と垂直抗力は鉛直方向でつり合い、摩擦は無視できる)。微小な時間 $\Delta t$ の間は $F$ が一定なので、加速度 $\dfrac{\Delta v}{\Delta t}$ について運動方程式を立てる。
$$m\dfrac{\Delta v}{\Delta t}=F\qquad\therefore\ \dfrac{\Delta v}{\Delta t}=\dfrac1m\times F$$
答(ウ) $\dfrac1m$(2点)
棒は速度 $v$ で動くので、起電力 $vBL$ の電池になる。棒の中の正の電荷は、右向きの速度と磁場から、J 側へ向かう力を受けるので、J 側が高電位(上の図の+)。レールや導線に抵抗が無いので、この起電力がそのまま端子間の電圧 $V=V_{\mathrm J}-V_{\mathrm K}$ になる。
$$V=BL\times v$$
答(エ) $BL$(2点)
$v$ が $\Delta v$ だけ変わると $V$ は $\Delta V=BL\,\Delta v$ だけ変わる。両辺を $\Delta t$ で割ると、 $\dfrac{\Delta V}{\Delta t}=BL\times\dfrac{\Delta v}{\Delta t}$。
ア・ウ・エを合わせる。 $I=\dfrac{F}{BL}$、 $F=m\dfrac{\Delta v}{\Delta t}$、 $\dfrac{\Delta v}{\Delta t}=\dfrac{1}{BL}\dfrac{\Delta V}{\Delta t}$ なので
$$I=\dfrac{m}{BL}\cdot\dfrac{1}{BL}\dfrac{\Delta V}{\Delta t}$$
答(オ) $\dfrac{m}{B^2L^2}$(2点)
電流は、導体棒を単位時間に通過する電気量。 $\Delta t$ の間に通過する電気量は電流×時間。
答(カ) $I$(2点)
$\Delta Q=I\Delta t$ に、オの $I=\dfrac{m}{B^2L^2}\dfrac{\Delta V}{\Delta t}$ を入れると
$$\Delta Q=\dfrac{m}{B^2L^2}\Delta V$$
コンデンサーでは、電気容量 $C$ が一定のとき $\Delta Q=C\Delta V$。この2つを見比べると、端子J、Kから導体レール側を見たとき、電気容量 $\dfrac{m}{B^2L^2}$ のコンデンサーがつながっているのと同じ。棒の質量 $m$ が、電気容量に見える。
答(キ) $\dfrac{m}{B^2L^2}$(2点)
(確かめ:コンデンサーのエネルギー $\dfrac12CV^2$ に $V=BLv$ を入れると $\dfrac12mv^2$ で、棒の運動エネルギーそのもの。)
問2 (1)
問2 では $A=\dfrac{m}{B^2L^2}$(オ)。電流は $I=A\dfrac{\Delta V}{\Delta t}$ で、 $V$–$t$ グラフの傾きに $A$ をかけたもの。3つの期間で $V$ を式で書き、傾きを読む(下の図)。
$0<t<T$:$V=\dfrac{V_{\mathrm S}}{T}t$ で傾きは $\dfrac{V_{\mathrm S}}{T}$。
答($0<t<T$) $I=\dfrac{AV_{\mathrm S}}{T}$(2点)
$T<t<2T$:$V=V_{\mathrm S}$ で一定。傾きは0。
答($T<t<2T$) $I=0$(2点)
$2T<t<4T$:$V=\dfrac{V_{\mathrm S}}{2T}(4T-t)$ で、傾きは $-\dfrac{V_{\mathrm S}}{2T}$。電圧は正のまま下がるので、電流は負。
答($2T<t<4T$) $I=-\dfrac{AV_{\mathrm S}}{2T}$(2点)
各期間で一定の値なので、グラフは階段の形。 $t=T$、 $2T$ で値がとぶ。 $t<0$ と $t>4T$ では電圧が変わらないので $I=0$(下の図。縦軸は $I$、横軸は $t$)。
答(グラフ) 上の図(7点)
問2 (2)
電源から供給される向きを正とする電力は、電源の電圧 $V$ と、電源から流れ出る電流 $I$ の積。問題文の $I$ は J から電源の外へ流れ出る向きが正、 $V=V_{\mathrm J}-V_{\mathrm K}$ なので、 $P=VI$ がそのまま「電源が供給する電力」になる。各期間で、 $V$ と (1) の $I$ をかける。
$0<t<T$:
$$P=\dfrac{V_{\mathrm S}}{T}t\times\dfrac{AV_{\mathrm S}}{T}$$
答($0<t<T$) $P=\dfrac{A{V_{\mathrm S}}^2}{T^2}t$(3点)
$T<t<2T$:電流が0なので、電源は仕事をしない(棒は一定の速さで動き続ける)。
答($T<t<2T$) $P=0$(2点)
$2T<t<4T$:
$$P=\dfrac{V_{\mathrm S}}{2T}(4T-t)\times\left(-\dfrac{AV_{\mathrm S}}{2T}\right)$$
電圧は正のまま、電流が負なので、電力は負。減速する棒の運動エネルギーが、電源にもどっている。
答($2T<t<4T$) $P=-\dfrac{A{V_{\mathrm S}}^2}{4T^2}(4T-t)$(3点)
$t=T$ で $P=\dfrac{A{V_{\mathrm S}}^2}{T}$、 $t=2T$ で $P=-\dfrac{A{V_{\mathrm S}}^2}{2T}$、 $t=4T$ で $P=0$。期間ごとの直線をつなぐ(下の図。縦軸は $P$、横軸は $t$)。
答(グラフ) 上の図(5点)
(確かめ:正の三角形の面積は $\dfrac12\cdot T\cdot\dfrac{A{V_{\mathrm S}}^2}{T}=\dfrac12A{V_{\mathrm S}}^2$、負の三角形の面積は $\dfrac12\cdot2T\cdot\dfrac{A{V_{\mathrm S}}^2}{2T}=\dfrac12A{V_{\mathrm S}}^2$ で等しい。グラフの面積は電力×時間=エネルギー。はじめに棒に与えたエネルギーを全部返して、 $t=4T$ で棒は止まる。)
別解
問2 (2) 棒の運動エネルギーの変化から
抵抗が無く、損失が無いので、電源が供給する電力は、棒の運動エネルギー $K=\dfrac12mv^2$ が増える割合に等しい。 $v=\dfrac{V}{BL}$ なので $K=\dfrac12AV^2$。 $V$ の変化から $K$ の変化の割合を調べると
$$P=\dfrac{\Delta K}{\Delta t}=AV\dfrac{\Delta V}{\Delta t}=VI$$
で、本解の $P=VI$ と同じ。電圧が下がる間は $K$ が減る、つまり $P$ が負、と図からすぐに読める。
出題意図
問1 電流が受ける力と、動く棒の起電力から、棒を「電気容量 $\dfrac{m}{B^2L^2}$ のコンデンサー」と見なせることを導くことができるか
問2 (1)(2) 見かけのコンデンサーの電流を $V$–$t$ グラフの傾きから求め、電力 $P=VI$ の符号まで含めてグラフに表すことができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 35点 | 30点 |
| 目標時間 | 20分 | 25分 |
この年の合否を分けた大問。
よくある型で、グラフ以外は難しくない。
決め手は問2 (2) の $2T<t<4T$ で、電圧は正のまま電流が負になり、電力が負になる。
減速する棒が発電機になって電源にエネルギーを返している、と運動を想像できれば符号は迷わない。
1つの符号のミスが式とグラフの4か所に響くので、どの学部も満点近くを取りたい。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2 (2) の $2T<t<4T$:電圧は正のままでも傾きが負なので電流が負になり、電力 $P=VI$ も負(電源にもどる)と、棒の運動(減速)を想像して符号を決められるか。ここを正にすると、(1) の電流の符号とあわせて、式2つとグラフ2つに響く。
- 問1 オ:$\dfrac{\Delta v}{\Delta t}$ を経由して、電流を $\dfrac{\Delta V}{\Delta t}$ で表せるか。ここが「棒はコンデンサーに見える」の土台。
コラム 回生ブレーキ
問2 (2) の $2T<t<4T$(減速する棒から電源へ電力がもどる)と同じ考え方が、電車や電気自動車のブレーキに使われている。


- しくみ:ブレーキをかけるとき、モーターに電力を送るのをやめ、車輪の回転でモーターを回して発電機として働かせる。電車の運動エネルギーが電気エネルギーに変わり、電車は減速する。第2問の棒が、減速しながら電源に電力を返すのと同じ。
- 電力の行き先:電車では、発電した電力を架線にもどし、近くを走る別の電車がそれを使う。電気自動車では、バッテリーに蓄える。
- 使う電車がいない場合:電力が使われずに無駄になるので、沿線に蓄電装置を置いて、ためておく取り組みもある。
- 第2問との違い:第2問は抵抗も摩擦も無い理想の場合なので、与えたエネルギーを全部返して、棒が止まる(正と負の面積が等しい)。実際の車両は損失があるので、全部は戻らない。
電気を使って動かす装置は、ブレーキのときに発電機として働かせれば、エネルギーを回収できる。九大の物理は、こうした身近な装置を題材にすることがある。物理を身近な現象に紐づける癖を持つことも、九大合格には大事。
2011年九州大学物理
第3問 解答・解説
第3問は熱力学の問題です。
テーマは「真空の容器Aと気体の入った容器Bをコックでつなぐ(真空への拡散)→定積で冷却→ばね付きピストンを自由にしてAだけを加熱→ピストンを固定してコックを開き混合、と状態を順に追う」。
問題


問題文をテキストで読む
以下の問いに答えよ。
図3(a)に示すように大気中に、鉛直方向になめらかに動くピストンとシリンダーからなる容器Aと、容器Bが、細い管でつながれていて、コックは閉じられている。ピストンの断面積は $S$ であり、質量は無視できるものとする。シリンダーの底面とピストンは質量の無視できるばねでつながれており、ばねの自然長は $L$ である。はじめピストンは、ばねの長さが自然長 $L$ になる位置にストッパーで固定されており、容器A内は真空である。容器A内には温度調節器があり、内部の気体を加熱したり冷却したりできる。容器Bの容積は $2SL$ である。容器A、Bと細い管、およびコックは断熱材でできており、それらを通した熱の出入りは考えなくてよい。また、細い管の体積は無視できるものとし、ばねおよび温度調節器の体積と熱容量も無視できるものとする。さらに、大気の圧力は高さによらないものとする。気体定数を $R$ とする。
問1. はじめ容器B内には、絶対温度 $2T$ の単原子分子の理想気体が $3n$ モル入っていた。容器B内の気体の圧力を求めよ。
問2. 次にコックを開くと、容器B内の気体が容器A内に拡散した。しばらくして熱平衡の状態に達したが、容器A、B内の気体の絶対温度は $2T$ のままであった。この拡散の際に、容器A、B内の気体がした仕事を求めよ。
問3. さらに温度調節器を用いて、容器A、B内の気体の絶対温度を $2T$ から $T$ に変化させた。この変化で気体が放出した熱量を求めよ。
問4. 続いてピストンのストッパーを外して自由に動けるようにしたが、ピストンは動かなかった。その後、コックを閉じて容器A内の $n$ モルの気体を温度調節器で絶対温度 $T$ から $4T$ までゆっくりと加熱したところ、図3(b)に示すようにばねの長さは $\dfrac43L$ になり、容器A内の気体の圧力は3倍になった。
(1) 大気の圧力を求めよ。
(2) この加熱による、容器A内の気体の内部エネルギーの増加を求めよ。
(3) この加熱の際に、容器A内の気体がした仕事を求めよ。
問5. 最後に、ばねの長さが $\dfrac43L$ の状態でピストンを固定した後、コックを開いた。しばらくして熱平衡の状態に達した。
(1) 熱平衡の状態に達した後の、容器A、B内の気体の温度を求めよ。
(2) 熱平衡の状態に達した後の、容器A、B内の気体の圧力を求めよ。
解答の方針
【問1〜問3の方針】
熱力学は「何が一定か」を最初に決める。ピストンは固定で容器は断熱なので、拡散も冷却も体積は変わらず、気体は仕事をしない(下の図)。


- 容器Bに状態方程式を立てて、圧力を求める(問1)。
- 真空への拡散では体積変化がなく、真空に向かって広がるので押し返す力がなく、気体がした仕事は0(問2)。
- 冷却は定積。A・Bの気体を合わせた物質量 $3n$ の内部エネルギーの減少を、放出した熱として求める(問3)。
【問4の方針】
「ピストンが動かない」は、ばねが自然長のヒント。ゆっくり動かすので各瞬間でつり合い、ばねの力は伸びに比例するから、圧力は体積の1次関数になる(下の図)。


- 冷却後の圧力を求める。ストッパーを外してもピストンが動かないので、ばねは自然長のままで力は0。質量のないピストンにはたらく大気の力と気体の力がつり合うので、この圧力が大気圧に等しい(問4 (1))。
- 内部エネルギーは温度だけで決まるので、加熱前後の温度差から $\Delta U$ を求める。加熱するのはAの $n$ モルだけ(問4 (2))。
- p-V 図に加熱前後の2点(体積・圧力)を打ち、直線で結ぶ。台形の面積から仕事を求める(問4 (3))。
【問5の方針】
A・B を合わせて見れば、外と熱も仕事もやりとりしないので、混ぜる前後で内部エネルギーの和が一定。A の体積はピストンを固定した位置のまま(下の図)。


- 全体で $Q=0$、$W=0$ なので $\Delta U=0$。混合前のAとBの内部エネルギーの和が、混合後の全体の内部エネルギーに等しいとして温度を求める(問5 (1))。
- Aの体積(ピストンを固定した位置)とBの体積を足して全体の体積を求める。全体の物質量・温度を使って、全体に状態方程式を立てる(問5 (2))。
解答




解答をテキストで読む
問1
容器Bは体積 $2SL$、物質量 $3n$、温度 $2T$。圧力を $p_1$ として状態方程式を立てると
$$p_1\cdot2SL=3nR\cdot2T\qquad\therefore\ p_1=\frac{3nRT}{SL}$$
答 $\dfrac{3nRT}{SL}$(4点)
問2
コックを開いても、ピストンは固定されているので A・B を合わせた体積 $3SL$ は変わらない。気体が広がる先の容器Aは真空なので、気体を押し返す力がなく、気体は仕事をしない。
答 0(4点)
(理由を第一法則で言うと、断熱なので $Q=0$、仕事 $W=0$ より $\Delta U=0$。内部エネルギーは変わらず、温度は $2T$ のまま。拡散のあと、A・B は同じ温度・同じ圧力なので、物質量は体積に比例する。全体の物質量 $3n$ を体積 $SL:2SL=1:2$ に分けて、Aに $n$、Bに $2n$。この値は図3(b) に書いてある $n$ モル・$2n$ モルと合う。拡散のあとの圧力は、全体の状態方程式 $p_2\cdot3SL=3nR\cdot2T$ より $p_2=\dfrac{2nRT}{SL}$)
問3
冷却のあいだもピストンは固定のままなので、体積が変わらない(定積)。仕事は $W=0$ で、第一法則 $Q_{in}=\Delta U+W$ は $Q_{in}=\Delta U$。放出した熱量 $Q_{out}$ は、内部エネルギーの減少に等しい。A・Bの気体を合わせた物質量は $3n$、単原子分子の内部エネルギーは $U=\dfrac32nRT$ なので
$$Q_{out}=-\Delta U=\frac32\cdot3nR\,(2T-T)=\frac92nRT$$
答 $\dfrac92nRT$(7点)
問1〜問3 の結果を状況図にまとめると、下の図になる。冷却のあとの圧力は、全体の状態方程式 $p_3\cdot3SL=3nR\cdot T$ より $p_3=\dfrac{nRT}{SL}$(問4 (1) で使う)。
問4 (1)
大気の圧力を $p_0$ とする。ストッパーを外してもピストンは動かなかったので、ピストンは力がつり合っている。ピストンの長さはそのまま $L$(ばねは自然長)なので、ばねの力は0。質量のないピストンにはたらく力は、大気の力 $p_0S$(下向き)と気体の力 $pS$(上向き)だけなので
$$pS=p_0S\qquad\therefore\ p_0=p$$
ここで $p$ は冷却のあとの気体の圧力で、問3 の $p_3=\dfrac{nRT}{SL}$ に等しい。
答 $\dfrac{nRT}{SL}$(5点)
問4 (2)
内部エネルギーは温度だけで決まる。コックを閉じたあと、加熱するのは容器Aの $n$ モルで、温度は $T$ から $4T$。
$$\Delta U=\frac32nR\,(4T-T)=\frac92nRT$$
答 $\dfrac92nRT$(5点)
問4 (3)
加熱前は体積 $SL$・圧力 $p_0$。加熱後は体積 $\dfrac43SL$(図3(b))、圧力は3倍の $3p_0$。ばねの力は伸びに比例するので、ピストンのつり合いから $p$ は $V$ の1次関数。つまり p-V 図では2点を結ぶ直線になり、気体がした仕事は台形の面積になる。
$$W=\frac12\left(p_0+3p_0\right)\left(\frac43SL-SL\right)=\frac12\cdot4p_0\cdot\frac13SL=\frac23p_0SL=\frac23nRT$$
最後は、問4 (1) の $p_0SL=nRT$ を使った。
答 $\dfrac23nRT$(5点)
(確かめ:加熱後の状態方程式 $3p_0\cdot\dfrac43SL=nR\cdot4T$ が成り立つ。左辺は $4nRT$ で右辺と一致)
問4 の状況図と、加熱の p-V 図を下に示す。
問5 (1)
ピストンは固定で、容器はどれも断熱材。コックを開くと、A・Bを合わせて外と熱も仕事もやりとりしないので、$Q=0$、$W=0$ より $\Delta U=0$。混合の前後で内部エネルギーの和が同じ。
| 容器A | 容器B | 混合後(全体) | |
|---|---|---|---|
| 物質量 | $n$ | $2n$ | $3n$ |
| 温度 | $4T$ | $T$ | $T’$ |
$$\frac32nR\cdot4T+\frac32\cdot2nR\cdot T=\frac32\cdot3nR\,T’$$
共通の $\dfrac32nR$ を消して $4T+2T=3T’$ より $T’=2T$。
答 $2T$(5点)
問5 (2)
ピストンは、Aの体積が $\dfrac43SL$ のときに固定している。コックを開いても動かないので、全体の体積は $\dfrac43SL+2SL=\dfrac{10}{3}SL$。全体(物質量 $3n$、温度 $2T$)に状態方程式を立てて、圧力を $p’$ とする。
$$p’\cdot\frac{10}{3}SL=3nR\cdot2T\qquad\therefore\ p’=\frac{9nRT}{5SL}$$
答 $\dfrac{9nRT}{5SL}$(5点)
別解
問4 (3)(大気にした仕事とばねにした仕事に分ける)
気体がした仕事は、ピストンを押し上げて、大気を押しのけた仕事とばねを伸ばした仕事の和になる。加熱後のつり合い $3p_0S=p_0S+k\cdot\dfrac L3$ より、ばね定数は $k=\dfrac{6p_0S}{L}=\dfrac{6nRT}{L^2}$。
$$W=p_0\cdot S\cdot\frac L3+\frac12k\left(\frac L3\right)^2=\frac13nRT+\frac13nRT=\frac23nRT$$
仕事の行き先(大気とばねに半分ずつ)が見える。ただし $k$ を求める手間がかかるので、台形の面積の方が速い。
問5 (1)(数直線)
AとBは同種の単原子分子で、1 mol あたりの内部エネルギーは温度だけで決まる。共通の温度は、温度 $T$ の気体 $2n$ に、温度 $4T$ の気体 $n$ を混ぜたときの、物質量による重みつき平均。$T$ から $4T$ へ、物質量の割合 $\dfrac{n}{3n}=\dfrac13$ だけ近づくので
$$T’=T+\frac13\cdot3T=2T$$
出題意図
問1〜問3 状態方程式と、真空への拡散(仕事0)・定積変化の第一法則から、圧力・仕事・放出した熱量を求めることができるか
問4 (1)〜(3) ピストンが動かないという条件からばねの力を考え、ばね付きピストンの加熱を p-V 図の台形で処理できるか
問5 断熱した2つの気体を混ぜるとき、内部エネルギーの和が一定であることを捉え、温度・圧力を求めることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 40点 | 30点 |
| 目標時間 | 15分 | 20分 |
状態を追うのが少し面倒なだけで、難しくはない。
気体の状態変化は「何が一定か」を最初に決めて、状態方程式と第一法則を立てるだけの典型問題。
真空への拡散(仕事0)・ばね付きピストン(p-V 図は直線)・混合(内部エネルギーの和が一定)の3つは、白紙で再現できるまで練習して、満点を取りに行こう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問4 (1):「ストッパーを外してもピストンが動かない → ばねは自然長のままで力0 → 大気圧と気体の圧力がつり合う」という発想に行き着けるか。ここを越えないと、問4 (3) の2点が決まらず、後が続かない。
- 問4 (3):ばね付きピストンは、圧力が体積の1次関数になる(p-V 図は直線)という型を知っているか。台形の面積にすぐ持ちこめれば、ばね定数を求めに行かずに済む。
- 問5 (2):全体の体積を、Aがふくらんだ $\dfrac43SL$ とBの $2SL$ の和にできるか。Aの体積を $SL$ のままにして全体を $3SL$ としてしまうと、最後の1問を落とす。
2011年九州大学・物理の
講評とまとめ
3問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | やや簡単 | 45点 | 40点 |
| 第2問 | やや簡単 | 35点 | 30点 |
| 第3問 | やや簡単 | 40点 | 30点 |
| 全体 | やや簡単 | 110点 | 95点 |
大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で110点、その他の学部で95点)にはなりません。
3題とも典型の組み合わせで、取りこぼしの少なさで決まる、やや簡単な年でした。
この年の合否を分けたのは第2問で、導体棒を見かけのコンデンサーと見て電圧の傾きから電流を読み、電力が負になる区間(電源にエネルギーが戻る)まで正しくグラフにできるかで差がつきました。
第1問は力学的エネルギーに注目すれば難しくなく、摩擦のある面ではばね振動の中心がずれることを押さえれば取り切れます。
第3問は、真空への拡散は仕事0、ばねが自然長なら圧力は大気圧、混合は内部エネルギーの和が一定と決めれば、決まった流れで解けます。
解く流れ
第1問 → 第2問 → 第3問。
2011年九州大学・物理に
関するよくある質問
2011年の九州大学・物理について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2011年の九州大学・物理は難しかった?
-
やや簡単な年でした。
第1問・第2問・第3問のすべてがやや簡単で、3題とも典型の組み合わせです。
そのなかで、第2問はグラフと電力の符号があるぶん少し難しく、この年の合否を分けた大問でした。 - 2011年の九州大学・物理は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で110点、その他の学部で95点です(125点満点)。
- 2011年の九州大学・物理はどこで差がつく?
-
取りこぼしの少なさで決まる年で、差がついたのは次の3つでした。
- 第2問 問2 (2):$2T<t<4T$ で電圧は正のまま電流が負になり、電力も負(電源にエネルギーが戻る)と符号まで決めて、式とグラフに書けたか。
- 第1問 問2 (2):2次方程式の2つの解から、止まる時刻より前の解を選べたか(止まった物体は押しもどされない)。
- 第3問 問4 (1):「ストッパーを外してもピストンが動かない」から、ばねは自然長のままで気体の圧力が大気圧に等しいと読めたか。
- 2011年の九州大学・物理は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:力学
- 第2問:電磁気
- 第3問:熱力学


