【解説・配点付き】2008年九州大学物理の解答・解説

2008年の九州大学・物理の、
解答・解説【完全版】です。

方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。

このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。

※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。

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中原 遼太郎

九大受験に特化した学習塾
『竜文会』代表

『竜文会』開校後、初年度には国立大学医学部や九州大学に合格者を輩出。

2年目には旧帝大医学部にも合格!

九州大学の過去問を20年分以上分析して指導カリキュラムを作成。

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目次

2008年九州大学物理
第1問 解答・解説

この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。

第1問は力学の問題です。
テーマは「回転する円板の上の物体が、角速度を上げるとすべり出す。円板から離れた物体は接線方向に飛び出し、摩擦のある水平面をすべって壁の点Pに届く。なめらかな壁と非弾性衝突したあと、はね返って摩擦で止まる」。

問題

2008年九州大学物理 第1問 問題
2008年九州大学物理 第1問 問題
問題文をテキストで読む

図1に示すように、静止している水平面( $xy$ 平面)の上に厚さが無視できる半径 $a$ の円板を置く。円板の中心は原点Oと一致している。円板上に大きさが無視できる質量 $m$ または $2m$ の物体を置き、円板を点Oを中心として反時計回りに回転させる。回転の角速度 $\omega$ を徐々に大きくしていくと、角速度が小さいとき物体は円板とともに回転するが、ある角速度で物体は円板に対して動き始める。

円板の角速度変化はゆっくりであり、円板とともに回転する物体の運動は常に等速円運動と見なせるとする。物体と回転円板および静止水平面との間の静止摩擦係数を $\mu$、動摩擦係数を $\mu’$ とする。重力加速度の大きさを $g$ とし、空気抵抗は無視する。また、角度および角速度の単位は、それぞれ rad および rad/s とする。

問1. 以下の問いに答えよ。

(1) 質量 $m$ の物体を円板の円周上に置いたとき、物体が円板に対して動き始める角速度 $\omega_{\mathrm{A}}$ を、 $a$、 $g$、 $m$、 $\mu$、 $\mu’$ のうち必要なものを用いて求めよ。

(2) 質量 $2m$ の物体を円板の円周上に置いたとき、物体が円板に対して動き始める角速度 $\omega_1$ は $\omega_{\mathrm{A}}$ の何倍になるか。

(3) 質量 $m$ の物体を、点Oからの距離が $\dfrac{a}{2}$ となるように円板上に置いたとき、物体が円板に対して動き始める角速度 $\omega_2$ は $\omega_{\mathrm{A}}$ の何倍になるか。

問2. 次に、図2に示すように、点Oからの距離が $\sqrt{2}\,a$ で $y$ 軸に垂直である壁を置き、問1の(1)と同じく、円板の円周上に質量 $m$ の物体を置いて円板を回転させた。円板の角速度が $\omega_{\mathrm{A}}$ に達したとき物体は円板から離れ、静止水平面上を運動して壁面上の点 $\mathrm{P}(0,\ \sqrt{2}\,a)$ で壁と衝突した。以下の問い(2)、(3)、(4)では、 $\omega_{\mathrm{A}}$ および $a$、 $g$、 $m$、 $\mu’$ のうち必要なものを用いて解答せよ。

(1) 物体が円板から離れる瞬間に、物体と点Oを結ぶ線分が $x$ 軸となす角の大きさ $\theta$ はいくらか。

(2) 物体が点Pに到達するために必要な $\omega_{\mathrm{A}}$ に関する条件を求めよ。

(3) 物体が円板から離れた後、点Pで壁と衝突するまでの時間 $t$ を求めよ。

(4) 点Pで衝突する直前の物体の速さ $v_1$ を求めよ。

問3. 物体は、壁面上の点Pで非弾性衝突をした後、静止水平面上を距離 $\ell$ だけ運動して静止した。壁の表面は滑らかであり、物体と壁とのはねかえり係数(反発係数)を $e$ とする。以下の問いでは、衝突直前の物体の速さ $v_1$ および $e$、 $g$、 $\mu’$ のうち必要なものを用いて解答せよ。

(1) 物体が壁に衝突した直後の速度ベクトルを $\vec{v_2}$ とするとき、その $x$ 方向成分 $v_{2x}$ および $y$ 方向成分 $v_{2y}$ をそれぞれ求めよ。

(2) 物体が点Pで衝突した後、静止するまでに運動した距離 $\ell$ を求めよ。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

円板に乗って見ると、外向きの遠心力を静止摩擦力が支えてつり合う。動き始めるのは静止摩擦力が最大摩擦力に達したときで、質量は式から消える(下の図)。

2008年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
2008年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
  1. 物体にはたらく力を「重力 → 触れているもの(垂直抗力・静止摩擦力)→ 遠心力」の順にすべて書く。
  2. 鉛直方向のつり合いで $N$ を求め、円板の半径方向のつり合いで $f$ を求める。
  3. 動き始める直前は $f$ が最大摩擦力 $\mu N$ に達するときなので、その角速度を求める。遠心力も最大摩擦力も質量に比例するので、質量は式から消える((1))。
  4. 質量を $2m$ に、距離を $\dfrac a2$ に変えて同じ式を立て、$\omega_{\mathrm A}$ との比を求める。半径が変わると角速度がどう変わるかは、式の形から読み取れる((2)(3))。

【問2の方針】

着眼点

離れた物体は、離れた瞬間の速度の向き(半径に垂直な接線)のまま直進する。その接線がPを通るので、OQ$=a$、OP$=\sqrt2\,a$ の直角三角形でQが決まる(下の図)。

2008年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
2008年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
  1. 円板から離れた物体は、円板から受ける力がなく、動摩擦力は速度と逆向きにはたらくだけなので、離れた瞬間の速度の向き(接線)のまま直線上を進む。速さ $a\omega_{\mathrm A}$ と向きを決め、Pを通る接線の図を書いて、直角三角形OQPから $\theta$ と距離QPを求める((1))。
  2. 摩擦の大きさが一定で、速さと距離だけを聞かれているので、仕事とエネルギーの関係を使う。Pでの速さを $v_1$ とおいて、 $W=\Delta E$ を立てる。Pに届くには $v_1$ の2乗が0以上になっていればよく、この条件が(2)の答え((2))。
  3. (4) は(2)で立てた式から $v_1$ を求める。
  4. 時間を聞かれているので、運動方程式で加速度を求め、等加速度運動の位置の式で時間の2次方程式をつくり、止まる前の解を選ぶ((3))。

【問3の方針】

着眼点

壁はなめらかなので、変わるのは壁に垂直な速度成分だけ。平行な成分はそのままで、垂直な成分は大きさが $e$ 倍になり向きが逆になる(下の図)。

2008年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
2008年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
  1. 衝突直前の速度は接線の向き(壁に対して $45^\circ$)なので、2つの成分の大きさは等しい。 $x$ 成分と $y$ 成分に分け、符号まで書く。
  2. 壁に平行な $x$ 成分はそのまま、垂直な $y$ 成分は $e$ 倍で逆向きにして、 $\vec{v_2}$ の成分を求める((1))。
  3. 衝突直後の速さ $v_2$ を成分から求める。
  4. 衝突のあとは、また摩擦のある面を直線上にすべって止まる。衝突直後から静止までで $W=\Delta E$ を立て、 $\ell$ を求める((2))。

解答

2008年九州大学物理 第1問 解答・解説
2008年九州大学物理 第1問 解答・解説
2008年九州大学物理 第1問 解答・解説(続き)
2008年九州大学物理 第1問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

問1 (1)

円板に乗って見る。物体にはたらく力は、重力 $mg$(下向き)、垂直抗力 $N$(上向き)、静止摩擦力 $f$(円板の中心向き)、遠心力 $ma\omega^2$(外向き)(下の図)。

鉛直方向と半径方向のつり合いは

$$N=mg,\qquad f=ma\omega^2$$

角速度を上げると遠心力が大きくなり、それを支える $f$ も大きくなる。動き始める直前は、 $f$ が最大摩擦力 $\mu N$ に達したとき。その角速度が $\omega_{\mathrm A}$ なので

$$ma{\omega_{\mathrm A}}^2=\mu mg$$

質量 $m$ は約分で消える。

答 $\omega_{\mathrm A}=\sqrt{\dfrac{\mu g}{a}}$(5点)

問1 (2)

質量 $2m$ でも、遠心力は $2ma\omega^2$、最大摩擦力は $\mu\cdot2mg$ で、どちらも2倍になる。つり合いの式から $2m$ が約分で消えるので、動き始める角速度は $\omega_{\mathrm A}$ のまま。 $\omega_1=\omega_{\mathrm A}$ 。

答 1倍(5点)

問1 (3)

半径が $\dfrac a2$ になるので、遠心力は $m\cdot\dfrac a2\cdot\omega^2$ 。動き始める直前の式は

$$m\cdot\frac a2\,{\omega_2}^2=\mu mg\qquad\therefore\ \omega_2=\sqrt{\dfrac{2\mu g}{a}}=\sqrt2\,\omega_{\mathrm A}$$

答 $\sqrt2$倍(5点)

(半径が小さいほど遠心力が小さいので、もっと速く回さないと動き始めない、と式の形からも分かる)

問2 (1)

動き始めた物体は、円板から離れた瞬間の速度の向きのまま直線上を進む。その向きは半径OQに垂直(接線)。この接線が点Pを通るので、三角形OQPはQで直角になる。

OQ$=a$、OP$=\sqrt2\,a$ なので、 $\cos\angle\mathrm{QOP}=\dfrac{a}{\sqrt2\,a}=\dfrac1{\sqrt2}$ より $\angle\mathrm{QOP}=\dfrac\pi4$ 。Pは $y$ 軸上なので、OQが $y$ 軸となす角が $\dfrac\pi4$ 。よって $x$ 軸となす角は $\theta=\dfrac\pi2-\dfrac\pi4$ 。直角二等辺三角形なので、QP$=a$ にもなる。

答 $\dfrac{\pi}{4}$ rad(5点)

(円板は反時計回りなので、Qでの速度は左上向き。第1象限のQから出た接線だけがPに届く)

問2 (2)

離れてからPまでの距離は、(1)より $a$ 。静止水平面の上で物体にはたらく力は、重力 $mg$、垂直抗力 $N$、動摩擦力 $\mu’N$(すべる向きと逆)(下の図)。 $N=mg$ なので動摩擦力は $\mu’mg$ 。

Pでの速さを $v_1$ とおく。離れた瞬間の速さは $a\omega_{\mathrm A}$ 。摩擦がした仕事( $-\mu’mg\cdot a$ )だけ運動エネルギーが変わるので、 $W=\Delta E$ より

$$\frac12m{v_1}^2-\frac12m(a\omega_{\mathrm A})^2=-\mu’mg\cdot a$$

$$\therefore\ {v_1}^2=(a\omega_{\mathrm A})^2-2\mu’ga$$

Pに届くのは、この右辺が0以上のとき(届く条件は、速さの2乗が0以上)。

答 $\omega_{\mathrm A}\geqq\sqrt{\dfrac{2\mu’ g}{a}}$(5点)

(等号のときは、ちょうどPで止まる。「Pで壁と衝突する」ところまで考えるなら、Pでの速さが正でなければならないので等号は外れる)

問2 (3)

すべる向きを正にして運動方程式を立てる。鉛直方向は $N=mg$ 。

$$m\alpha=-\mu’mg\qquad\therefore\ \alpha=-\mu’g$$

加速度が一定なので等加速度運動。離れた時刻を0として、時間 $t$ で距離 $a$ 進む。

$$a=a\omega_{\mathrm A}t-\frac12\mu’gt^2\qquad\therefore\ \mu’gt^2-2a\omega_{\mathrm A}t+2a=0$$

$$t=\frac{a\omega_{\mathrm A}\pm\sqrt{(a\omega_{\mathrm A})^2-2\mu’ga}}{\mu’g}$$

2つの解のうち、どちらが答えか。物体は止まれば動かない。止まる時刻は、 $0=a\omega_{\mathrm A}-\mu’gt$ から $t=\dfrac{a\omega_{\mathrm A}}{\mu’g}$ 。根号の前が $+$ の解はこれより後なので、実際の運動ではありえない。止まる前の、根号の前が $-$ の解を選ぶ。

答 $t=\dfrac{a\omega_{\mathrm A}-\sqrt{(a\omega_{\mathrm A})^2-2\mu’ga}}{\mu’g}$(5点)

問2 (4)

(2) で立てた $W=\Delta E$ から、 $v_1$ は正の値なので

答 $v_1=\sqrt{(a\omega_{\mathrm A})^2-2\mu’ga}$(5点)

(確かめ: $v_1=a\omega_{\mathrm A}-\mu’gt$ に(3)の $t$ を入れても同じ式になる)

問3 (1)

Qでの速度は、半径OQに垂直で左上向き( $x$ 軸の負の向きと $y$ 軸の正の向きに $45^\circ$ )。直線上を進むので、Pに衝突する直前の速度も同じ向きで、大きさが $v_1$ 。成分は

$$\left(-\frac{v_1}{\sqrt2},\ +\frac{v_1}{\sqrt2}\right)$$

壁はなめらかなので、壁に平行な $x$ 成分は変わらない。壁に垂直な $y$ 成分は、大きさが $e$ 倍になり、向きが逆(負)になる。

答 $v_{2x}=-\dfrac{v_1}{\sqrt2}$ 、 $v_{2y}=-\dfrac{ev_1}{\sqrt2}$(5点)

問3 (2)

衝突直後の速さ $v_2$ は、成分から

$${v_2}^2={v_{2x}}^2+{v_{2y}}^2=\frac{(1+e^2){v_1}^2}{2}$$

衝突後は、動摩擦力が速度と逆向きにはたらくだけなので、向きを変えずに直線上をすべって止まる。摩擦がした仕事 $-\mu’mg\ell$ だけ運動エネルギーが変わるので、 $W=\Delta E$ より

$$0-\frac12m{v_2}^2=-\mu’mg\ell\qquad\therefore\ \ell=\frac{{v_2}^2}{2\mu’g}$$

答 $\ell=\dfrac{(1+e^2){v_1}^2}{4\mu’g}$(5点)

別解

問1 (1) (外から見る) 円板の外から見ると、物体は半径 $a$ 、角速度 $\omega$ の等速円運動をしている。向心力は静止摩擦力だけなので、運動方程式は $ma\omega^2=f$ 。動き始める直前は $f=\mu mg$ で、同じ式になる。遠心力を入れたつり合いは、この式の左右を入れかえて見ているだけ。本解は、円板に乗って力のつり合いで立式する形にした。

問2 (1) (座標で) Qの座標を $(a\cos\theta,\ a\sin\theta)$ とすると、Qでの接線は $x\cos\theta+y\sin\theta=a$ 。これがP $(0,\ \sqrt2\,a)$ を通るので、 $\sqrt2\,a\sin\theta=a$ より $\sin\theta=\dfrac1{\sqrt2}$ 、Qが第1象限なので $\theta=\dfrac\pi4$ 。同じ答え。本解は、図から直角二等辺三角形を読み取る形にした(距離QP$=a$ も同時に分かる)。

問2 (3) (先に $v_1$ を求める) 2次方程式を解かずに、 (4) の $v_1$ を先に求める。 $v_1=a\omega_{\mathrm A}-\mu’gt$ から $t=\dfrac{a\omega_{\mathrm A}-v_1}{\mu’g}$ 。2つの解から選ぶ必要がなく、同じ答え。本解は、(3)→(4) の順にそのまま従う形にした。

出題意図

問1 回転円板の上で物体が円板に対して静止する条件を、遠心力とのつり合いで立てることができるか

問2 (1) 円板から離れた物体が接線方向へ直進する運動を想像し、図から角と距離を捉えることができるか

問2 (2)〜(4) 摩擦のある面での減速を、仕事とエネルギーの関係と等加速度運動で扱うことができるか

問3 なめらかな壁との斜めの衝突を、壁に平行な成分と垂直な成分に分けて扱い、衝突後に摩擦で止まるまでの距離を求めることができるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや簡単
目標得点40点35点
目標時間20分25分

典型の流れが決まっている大問。
円板の上は乗って遠心力でつり合い、離れたら接線方向に直進し、摩擦のある面は $W=\Delta E$ 、なめらかな壁は垂直な成分だけ $e$ 倍。
決め手は「物体がどう動くかを想像できるか」で、離れた物体は接線方向へ真っすぐ進むと想像できれば、Pを通る接線の図は直角二等辺三角形になって迷わない。
良問の風が再現できていれば解けるので、全受験生が満点を取りに来る大問として確実に取りたい。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問2 (1):離れた物体は接線方向に直進する、と運動を想像し、Pを通る接線の図から直角二等辺三角形を読み取れるか。ここを越えないと、(2)(3)(4) に必要な距離QP$=a$ が決まらない。
  • 問2 (2)(3):(2) は「届く」=Pでの速さの2乗が0以上、という条件に直せるか。(3) は2次方程式の2つの解のうち、止まる前の解を選べるか(止まった物体は動かない、と想像できれば迷わない)。
  • 問3 (1):なめらかな壁では壁に平行な成分は変わらず、垂直な成分だけ $e$ 倍で逆向きになる、と成分に分けて符号まで書けるか。

2008年九州大学物理
第2問 解答・解説

第2問は電磁気の問題です。
テーマは「磁場の中で軸のまわりを回る導線の誘導起電力(交流発電機のしくみ)と、その起電力に抵抗とコンデンサーを並列につないだときの交流。磁束の変化を $\Delta t$ の近似で求めて $V(t)=\omega Bd^2\sin\omega t$ を作り、同じ近似で $Q=CV$ から $I_C$ を求めて、コンデンサーの電流が $\dfrac\pi2$ 進むことまで確かめる」。

問題

2008年九州大学物理 第2問 問題
2008年九州大学物理 第2問 問題
問題文をテキストで読む

図3に示すように、紙面と垂直に裏から表へ向かう磁束密度 $B$ の一様な磁界(磁場)中で、太さの無視できる導線aWXYZbが、abを回転軸として、aからbを見て時計まわりに一定の角速度 $\omega$ で回転している。このとき、ab間には時間とともに変化する誘導起電力が発生する。導線の折れ曲がり部はすべて直角で、WX、XY、YZの長さはすべて $d$ である。この導線には抵抗値 $R$ の抵抗および電気容量 $C$ のコンデンサーが図のように接続されている。時刻 $t=0$ で、導線aWXYZbは紙面内の図に示す位置にあったとする。抵抗値 $R$ 以外の電気抵抗は無視でき、誘導起電力は接続する回路に影響されないとする。

以下の各問いで特に指示のない場合は、 $B$、 $C$、 $d$、 $R$、 $t$、 $\omega$ のうち必要なものを用いて解答せよ。また、角速度の単位を rad/s とする。必要ならば下記の三角関数の公式を用いてよい。

$$\sin(\alpha\pm\beta)=\sin\alpha\cos\beta\pm\cos\alpha\sin\beta$$

$$\cos(\alpha\pm\beta)=\cos\alpha\cos\beta\mp\sin\alpha\sin\beta$$

問1. 時刻 $t=0$ から $t=\dfrac{\pi}{\omega}$ の間で、電位が高いのはa、bのうちどちらか。

問2. 正方形の領域WXYZを貫く磁束を $\Phi$ とする。時刻 $t$ における $\Phi(t)$ を求めよ。ただし、 $\Phi(t)$ は $t=0$ から $t=\dfrac{\pi}{2\omega}$ の間で正の値をとるとする。

問3. 時刻 $t$ から $t+\Delta t$ の間に正方形の領域WXYZを貫く磁束が変化する量 $\Delta\Phi=\Phi(t+\Delta t)-\Phi(t)$ は、 $\omega\Delta t$ の大きさが十分小さいときには $\Delta\Phi=k_1\Delta t$ と近似できる。 $k_1$ を求めよ。ただし、 $\theta$ の大きさが十分小さいときに成り立つ三角関数の近似式 $\sin\theta\fallingdotseq\theta$、 $\cos\theta\fallingdotseq1$ を用いてよい。

問4. 時刻 $t$ において ab間に発生する誘導起電力 $V(t)$ を求めよ。ただし、 $V(t)$ はbに対してaの電位が高いときを正とする。

問5. 時刻 $t$ において抵抗に流れる電流 $I_R(t)$ を求めよ。ただし、 $I_R(t)$ は図の矢印の向きを正とする。

問6. 時刻 $t$ においてコンデンサーに蓄えられている電気量を $Q(t)$ とするとき、時刻 $t$ から $t+\Delta t$ の間に $Q(t)$ が変化する量 $\Delta Q=Q(t+\Delta t)-Q(t)$ は、 $\omega\Delta t$ の大きさが十分小さいときには $\Delta Q=k_2\Delta t$ と近似できる。 $k_2$ を求めよ。ただし、 $\theta$ の大きさが十分小さいときに成り立つ三角関数の近似式 $\sin\theta\fallingdotseq\theta$、 $\cos\theta\fallingdotseq1$ を用いてよい。

問7. 時刻 $t$ においてコンデンサーに流れる電流 $I_C(t)$ を求めよ。ただし、 $I_C(t)$ は図の矢印の向きを正とする。

問8. 横軸に時間をとり $t=0$ から $t=\dfrac{2\pi}{\omega}$ までの $I_C(t)$ の変化を解答用紙の問8に示した図中に描け。なお、電流の最大値および最小値を同図の $\boxed{\phantom{\text{ア}}}$ に記入せよ。

問9. $I_R(t)$ に対して $I_C(t)$ の位相はどうなるか。下の解答群から適切なものを選び、その番号を解答欄に記入せよ。

① $\dfrac{\pi}{2}$ 遅れている ② 同位相である ③ $\dfrac{\pi}{2}$ 進んでいる ④ $\pi$ 進んでいる

解答の方針

【問1〜問4の方針】

着眼点

変わるのは正方形WXYZの向きだけ。面を貫く磁束が変わるので、ファラデーの法則で起電力が生じる(交流発電機のしくみ)。向きは磁束の増減から、大きさは磁束の変化の割合から決める(下の図)。

2008年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2008年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
  1. 問1:面の「表」を $t=0$ で手前を向いている側と決め、 $t=0\sim\dfrac\pi\omega$ の間の磁束の増減を区間に分けて調べる。レンツの法則と右ねじの法則で起電力の向きを決め、電源として a と b のどちらが高電位かを答える。
  2. 問2:磁束は面を垂直に貫く磁場の成分で決まる。上から見て面の角度を想像し、面の法線と磁場のなす角が $\omega t$ であることから、磁束 $\Phi$ を求める。
  3. 問3:時間で変わるのは $t$ だけなので、 $\Delta t$ の間の変化は近似で書ける(問題が $\sin\theta\fallingdotseq\theta$ 、 $\cos\theta\fallingdotseq1$ を使ってよいとしているのがヒント)。 $\Phi(t+\Delta t)$ を加法定理で開き、 $\cos\omega\Delta t\fallingdotseq1$ 、 $\sin\omega\Delta t\fallingdotseq\omega\Delta t$ を入れて $\Delta\Phi=\Phi(t+\Delta t)-\Phi(t)$ を $\Delta t$ に比例する形にする。
  4. 問4:ファラデーの法則 $V=-\dfrac{\Delta\Phi}{\Delta t}$ に問3 の結果を入れる。符号は、問1 で決めた向き(a が高いとき正)と合うか確かめる。

【問5〜問9の方針】

着眼点

起電力は回路に影響されないので、並列の抵抗とコンデンサーには同じ $V(t)$ がかかる(下の図の等価回路)。コンデンサーの電流は $Q=CV$ から、問3 と同じ近似で求まる。

2008年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2008年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
  1. 問5:抵抗の両端の電圧が $V(t)$ であることから、オームの法則で $I_R$ を求める(この回路は、交流電源 $V(t)$ に $R$ と $C$ をつないだ回路と同じ)。
  2. 問6:上の極板(a 側)の電気量を $Q=CV(t)$ と表し、時間で変わる $t$ だけを $\Delta$ にして、加法定理と近似で $\Delta Q=k_2\Delta t$ の形にする。
  3. 問7:$I_C=\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}$ に問6 の結果を入れる。図の矢印の向きと $Q$ が増える向きが同じことを確かめる。
  4. 問8:電流の式ができれば、グラフは式から読み取れる。$I_C(t)$ が $\cos$ の形であることから、 $t=0$ ・ $\dfrac\pi{2\omega}$ ・ $\dfrac\pi\omega$ ・ $\dfrac{3\pi}{2\omega}$ ・ $\dfrac{2\pi}\omega$ での値を決め、解答欄の実線の縦線に合わせてグラフを書く。最大値と最小値を四角に記入する。
  5. 問9:$I_R$ の式( $\sin$ )と $I_C$ の式( $\cos$ )を比べ、どちらの山が先に来るかで選ぶ。

解答

2008年九州大学物理 第2問 解答・解説
2008年九州大学物理 第2問 解答・解説
2008年九州大学物理 第2問 解答・解説(続き)
2008年九州大学物理 第2問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

問1

面の「表」を、 $t=0$ で手前(磁場が向かってくる側)を向いている側と決める。磁束 $\Phi$ は、磁場が面を表から裏へ貫くとき(表向き)を正とする(問2 もこの向き)。向きは、大きさとは別に、レンツの法則(増える→打ち消す向き・減る→補う向き)と右ねじの法則で決める。磁束が $0$ をまたぐので、2つの区間に分ける(下の図)。

・$t=0\sim\dfrac{\pi}{2\omega}$:面が磁場と平行に近づくように回り、表向きの磁束が減る。減るのを補う向き、つまり表向きの磁場をつくる向きに電流が流れようとする。表から見て反時計回りなので、起電力の向きは b→Z→Y→X→W→a 。

・$t=\dfrac{\pi}{2\omega}\sim\dfrac{\pi}{\omega}$:面は磁場と平行を通りすぎて裏向きになり、裏向きの磁束が増える。増えるのを打ち消す向き、つまりこの区間でも表向きの磁場をつくる向きなので、起電力の向きは前の区間と同じ b→Z→Y→X→W→a 。

どちらの区間も b→Z→Y→X→W→a の向きに電流を流そうとするので、この導線は a 側へ電流を押し出す電源になる。電源の中は、電流が押し出される先が高電位。

答 a(5点)

問2

面の法線と磁場のなす角が $\omega t$ ( $t=0$ で面は磁場に垂直なので角は0)。面積は $d^2$ なので、磁場に垂直な成分を取って

$$\Phi(t)=B\,d^2\cos\omega t$$

$0<t<\dfrac{\pi}{2\omega}$ で $\cos\omega t>0$ となり、「正の値をとる」という問題の指定と合う。

答 $\Phi(t)=Bd^2\cos\omega t$(4点)

問3

時間で変わるのは $t$ だけなので、 $t$ を $t+\Delta t$ に変えた磁束との差をとる。

$$\Delta\Phi=Bd^2\{\cos(\omega t+\omega\Delta t)-\cos\omega t\}$$

加法定理で $\cos(\omega t+\omega\Delta t)=\cos\omega t\cos\omega\Delta t-\sin\omega t\sin\omega\Delta t$ 。 $\omega\Delta t$ は小さいので $\cos\omega\Delta t\fallingdotseq1$ 、 $\sin\omega\Delta t\fallingdotseq\omega\Delta t$ とすると

$$\Delta\Phi\fallingdotseq Bd^2(\cos\omega t-\omega\Delta t\sin\omega t-\cos\omega t)=-\omega Bd^2\sin\omega t\cdot\Delta t$$

答 $k_1=-\omega Bd^2\sin\omega t$(5点)

問4

ファラデーの電磁誘導の法則より

$$V(t)=-\dfrac{\Delta\Phi}{\Delta t}=-k_1$$

表向きの磁束 $\Phi$ が減るとき、補う向きの起電力が生じる。この向きが問1 の b→Z→Y→X→W→a 、つまり a が高い向きで、問題は a が高いときを正としている。 $0<t<\dfrac\pi\omega$ で $\sin\omega t>0$ なので $V>0$ となり、問1 の「a が高い」と合う。

答 $V(t)=\omega Bd^2\sin\omega t$(4点)

問5

誘導起電力は接続する回路に影響されないので、抵抗の両端の電圧は、いつでも $V(t)$ 。a が高いとき電流は a から抵抗を通って b へ流れ、これが図の矢印(下向き)の向き。オームの法則より

$$I_R(t)=\dfrac{V(t)}{R}$$

答 $I_R(t)=\dfrac{\omega Bd^2}{R}\sin\omega t$(4点)

問6

コンデンサーも並列なので、両端の電圧は $V(t)$ 。上の極板(a 側)の電気量を $Q(t)$ とすると

$$Q(t)=CV(t)=\omega CBd^2\sin\omega t$$

問3 と同じように、時間で変わる $t$ だけを $\Delta$ にする。

$$\Delta Q=\omega CBd^2\{\sin(\omega t+\omega\Delta t)-\sin\omega t\}$$

加法定理で $\sin(\omega t+\omega\Delta t)=\sin\omega t\cos\omega\Delta t+\cos\omega t\sin\omega\Delta t$ 。 $\cos\omega\Delta t\fallingdotseq1$ 、 $\sin\omega\Delta t\fallingdotseq\omega\Delta t$ より

$$\Delta Q\fallingdotseq\omega CBd^2\cdot\omega\Delta t\cos\omega t=\omega^2CBd^2\cos\omega t\cdot\Delta t$$

答 $k_2=\omega^2CBd^2\cos\omega t$(5点)

問7

コンデンサーを流れる電流は、電気量の変化の割合。

$$I_C(t)=\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}=k_2$$

図の矢印(下向き)は上の極板へ流れこむ向きで、上の極板の電気量 $Q$ が増える向きと同じ。だから符号はそのまま。

答 $I_C(t)=\omega^2CBd^2\cos\omega t$(4点)

問8

問7 の式は $\cos$ の形。 $t=0$ で最大 $\omega^2CBd^2$ 、 $t=\dfrac{\pi}{2\omega}$ で0、 $t=\dfrac{\pi}{\omega}$ で最小 $-\omega^2CBd^2$ 、 $t=\dfrac{3\pi}{2\omega}$ で0、 $t=\dfrac{2\pi}{\omega}$ で最大に戻る。解答欄の横軸は12マスで、実線の縦線が $\dfrac{\pi}{2\omega}$ ごと。0 を通る点と山・谷が、ちょうど実線の上に来る(縦軸は0の上下に4マスずつ。山と谷が上端と下端)。最大値 $\omega^2CBd^2$ を上の四角、最小値 $-\omega^2CBd^2$ を下の四角に書く。

解答用紙の図の縦軸の上の端と下の端に四角( $\boxed{\quad}$ )があり、そこに最大値と最小値を書く(下の図の枠)。

答 上の図のグラフ(最大値 $\omega^2CBd^2$ 、最小値 $-\omega^2CBd^2$ )(5点)

問9

$I_R=\dfrac{\omega Bd^2}{R}\sin\omega t$ 、 $I_C=\omega^2CBd^2\cos\omega t=\omega^2CBd^2\sin\left(\omega t+\dfrac\pi2\right)$ 。 $I_C$ の山は $I_R$ の山より $\dfrac\pi2$ だけ先に来るので、 $I_C$ は $I_R$ より $\dfrac\pi2$ 進んでいる(下の図。山の高さは見やすいようにそろえてある)。コンデンサーの電流は電圧より $\dfrac\pi2$ 進み、抵抗の電流は電圧と同位相なので、 $I_C$ が $I_R$ より進むのは当然の結果。

答 ③(4点)

別解

問1・問4 辺 XY の $vBl$ から

誘導起電力は辺 XY だけで生じると見る。辺 XY は軸から $d$ の円周上を速さ $\omega d$ で動く。磁場は手前向きなので、速度のうち磁場に垂直な成分(軸に近づく向き)は $\omega d\sin\omega t$ 。正の電荷が受ける力は鉛直上向き(Y→X)なので、X 側が高電位となり、X→W→a と続いて a が高い。辺 WX・YZ は水平で、受ける力は鉛直なので辺に垂直。起電力は生じない。

$$V=(\omega d\sin\omega t)\cdot B\cdot d=\omega Bd^2\sin\omega t$$

$0<t<\dfrac\pi\omega$ で $\sin\omega t>0$ なので向きは変わらず、本解と同じ。ただし、回るコイルは、基本のファラデーの法則で導けるようにしておく。

問3 微分で

$\dfrac{\Delta\Phi}{\Delta t}$ は $\Phi$ の時間微分と同じ。 $\dfrac{d\Phi}{dt}=-\omega Bd^2\sin\omega t$ で、 $k_1$ は本解と同じ。

問7 最大値と位相を別々に

電圧の最大値は $V_0=\omega Bd^2$ 、コンデンサーのリアクタンスは $\dfrac1{\omega C}$ 。電流の最大値は $\dfrac{V_0}{1/\omega C}=\omega^2CBd^2$ 。電流は電圧より $\dfrac\pi2$ 進むので、 $V=V_0\sin\omega t$ から $I_C=\omega^2CBd^2\sin\left(\omega t+\dfrac\pi2\right)=\omega^2CBd^2\cos\omega t$ 。本解と同じ。公式を覚えていれば問6 の計算を飛ばせるが、この大問は近似で導かせる誘導なので、導き方も押さえておく。

出題意図

問1 3次元で回る導線の誘導起電力の向きを、磁束の増減から決めることができるか

問2〜問4 回るコイルを貫く磁束を式にし、時間で変わる文字だけを $\Delta$ にして近似することで、起電力(交流電源のしくみ)を求めることができるか

問5〜問7 起電力が回路に影響されないことから抵抗の電流を求め、 $Q=CV$ に同じ近似を使ってコンデンサーの電流を求めることができるか

問8・問9 求めた $I_C$ の式から、グラフの形と位相のずれを読み取ることができるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや簡単
目標得点40点40点
目標時間20分25分

よくある型の大問で、基本的なファラデーの電磁誘導の法則から交流へと、電磁気の決まった流れをそのまま追う。
電磁誘導は「磁束を式にする→ファラデーの法則で起電力(向きと大きさは別々)→電流」で、コンデンサーが入れば電流は $\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}$ 。
問3 と問6 は同じ近似を2回使うだけなので、公式を覚えていなくても誘導に乗れば解ける。
良問の風・名問の森の電磁誘導と交流が仕上がっていれば、どの学部も満点を取りたい大問で、第3問が合否を分ける年なので、取り切って時間を回したい。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問3〜問4:回るコイルの磁束 $Bd^2\cos\omega t$ から、時間で変わる文字だけを $\Delta$ にして加法定理と近似で $V=\omega Bd^2\sin\omega t$ を作れるか。ここを落とすと、 $V(t)$ を使う問5〜問9 が続けて落ちる。
  • 問1:3次元で回る導線を上から見た図で想像し、磁束が正から負へ減り続けても向きが変わらない(2つの区間で同じ向き)と気づけるか。区間を分けずに「半周回ったから逆向き」と考えると向きを誤る。
  • 問8:解答欄の実線に合わせて、 $0$ を通る点と山・谷が実線の上に来る $\cos$ のグラフを書き、最大値・最小値を記入できるか。

コラム 回るコイルは交流電源になる

第2問の問2〜問4 は、交流発電機のしくみそのもの。磁場の中でコイルを回すと、磁束 $\Phi=BS\cos\omega t$ が時間とともに変わり、ファラデーの法則から起電力 $V=\omega BS\sin\omega t$ が生じる( $S=d^2$ )。コイルが磁場に垂直な瞬間は磁束が最大で起電力は0、磁場と平行になる瞬間は磁束が0で起電力が最大になる(下の図)。起電力の最大値 $\omega BS$ は、回転が速い( $\omega$ が大きい)ほど大きい。

2008年九州大学物理 第2問 コラムの図
2008年九州大学物理 第2問 コラムの図
  • 実際の発電所の発電機も、磁場の中でコイルを回す(または、コイルの中で磁石を回す)ことで電磁誘導を起こし、交流をつくっている。火力発電では、ボイラの蒸気でタービンを回し、その回転で発電機を回す。交流の周波数 $f$ は回転の速さで決まり、 $\omega=2\pi f$ 、1回転で1周期の2極の発電機なら、周波数が60Hz(西日本)のとき毎分3600回転、50Hz(東日本)のとき毎分3000回転になる。

第2問では、この起電力に抵抗とコンデンサーをつないだ。公式 $V=\omega BS\sin\omega t$ を知っていると問4 まで一気に進めるが、九大は問3 のように近似で導かせる。公式は基本の法則から導けるようになってから使う。

2008年九州大学物理
第3問 解答・解説

第3問は波動の問題です。
テーマは「細い溝を格子状に刻んだガラス板にレーザー光をあて、スクリーンの明点の並びから升目の間隔を求める→凸レンズを置くと格子の拡大像ができ、回折光は焦点面の1点に集まる→焦点面の2点(0次光と1次光)だけを通すと、スクリーンに格子の拡大像と同じ間隔の干渉縞ができる」。

問題

2008年九州大学物理 第3問 問題
2008年九州大学物理 第3問 問題
問題文をテキストで読む

細い溝を格子状に刻んだガラス板がある。図4に示すように、波長 $\lambda$ の平行なレーザー光線をこのガラス板の格子面に垂直にあて、格子面から十分に遠い距離 $L$ にあるスクリーンに映す。スクリーンは格子面と平行である。

以下の空欄 $\boxed{\text{ア}}$ から $\boxed{\text{サ}}$ に適切な語句、記号、数式あるいは数値を入れよ。ただし、語句(ア)については「上下」、「左右」のどちらかを、記号(キ)については、 $>$、 $=$、 $<$ のいずれかを選べ。数値は有効数字2桁で求めよ。また、角度の単位は rad とし、数値ならびに数式を求める際に、大きさが 0.1 rad 以下の小さい角度 $\alpha$ については、 $\cos\alpha\fallingdotseq1.0$、 $\sin\alpha\fallingdotseq\tan\alpha\fallingdotseq\alpha$ と近似せよ。

1. 格子面では細い溝で囲まれた同じ大きさの升目(ますめ)が、上下方向および左右方向に規則正しく並んでいる。これらの升目を通過して回折した光線は互いに干渉してスクリーン上に図5に示すパターンをつくる。図5の黒塗りの部分が明るいところであり、中央のOは入射光と同じ方向に進んできた光線である。その左右に光線Aのような明るいところがほぼ等間隔に生じるのは、升目が $\text{語句}\,\boxed{\text{ア}}$ 方向に間隔 $d_{\mathrm{A}}$ で規則正しく並んでいるためである。光線Aが入射光となす角度を $\theta_{\mathrm{A}}$ とする。間隔 $d_{\mathrm{A}}$ で隣りあう升目を通過して光線Aの方向に回折した光の道のりの差は $\text{数式}\,\boxed{\text{イ}}$ であり、それが波長 $\lambda$ の $\text{数値}\,\boxed{\text{ウ}}$ 倍になっている。

$\lambda=0.53\ \mu\mathrm{m}$ の緑色レーザー光線を格子面の一部(直径約 2 mm の領域)にあて、スクリーンの位置を $L=2000\ \mathrm{mm}$ とした。 $1\ \mu\mathrm{m}$ は $10^{-3}\ \mathrm{mm}$ である。光線Oと光線Aの中心間の距離 $\Delta x$ をスクリーン上で測ったところ、 $\Delta x=32\ \mathrm{mm}$ であった。したがって、光線Aが入射光となす角は $\theta_{\mathrm{A}}=\text{数値}\,\boxed{\text{エ}}\ \mathrm{rad}$ である。このとき、格子の間隔 $d_{\mathrm{A}}$ は、 $\Delta x$、 $L$、 $\lambda$ を用いて $d_{\mathrm{A}}=\text{数式}\,\boxed{\text{オ}}$ で表され、その値は $d_{\mathrm{A}}=\text{数値}\,\boxed{\text{カ}}\ \mu\mathrm{m}$ と求められる。一方、光線Oとその真上にある光線Bの中心間距離 $\Delta y$ は、スクリーン上で 36 mm であった。これより、 $\text{語句}\,\boxed{\text{ア}}$ の方向に垂直な方向の格子の間隔 $d_{\mathrm{B}}$ は、 $d_{\mathrm{A}}$ と比較すると、 $d_{\mathrm{B}}\ \text{記号}\,\boxed{\text{キ}}\ d_{\mathrm{A}}$ である。

2. 次に、図6に示すように、薄い凸レンズを格子面から $a=50\ \mathrm{mm}$ の距離に格子面と平行に置いたところ、今度はスクリーン上に、レーザー光線があたっている領域の格子の拡大像が鮮明に現れた。このことから、このレンズの焦点距離 $f$ が $\text{数値}\,\boxed{\text{ク}}\ \mathrm{mm}$ であることがわかる。また、倍率 $M$ は $\text{数値}\,\boxed{\text{ケ}}$ である。

格子面で回折した光線は、凸レンズを通った後に、焦点面(焦点距離 $f$ の位置にあるレンズと平行な平面)上の異なる点に集まる。光線Oが集まる点 $\mathrm{F_O}$ と光線Aが集まる点 $\mathrm{F_A}$ の間隔 $D$ は、 $d_{\mathrm{A}}$、 $f$、 $\lambda$ を使って $D=\text{数式}\,\boxed{\text{コ}}$ と表される。

3. 凸レンズを通って点 $\mathrm{F_O}$ や点 $\mathrm{F_A}$ に集まる光線は、レンズの働きによってそれぞれ位相がそろっている。以下では、焦点面での光線Oと光線Aは同じ位相であるとする。小さな穴があいた板を焦点面に置いて、点 $\mathrm{F_O}$ の光線Oと点 $\mathrm{F_A}$ の光線Aのみを通したところ、今までスクリーン上で拡大像が現れていた円形の領域に、直線状の明暗の干渉縞が等間隔に現れた。焦点面からスクリーンまでの距離を $\ell$ とすると、 $\ell$ が $D$ や干渉縞が現れている領域の半径と比べて十分に長いので、縞の隣りあう明線(または隣りあう暗線)の間隔 $\Delta X$ は、 $D$、 $\ell$、 $\lambda$ を使って $\Delta X=\text{数式}\,\boxed{\text{サ}}$ と表される。この式と数式(コ)から、間隔 $\Delta X$ と格子の間隔 $d_{\mathrm{A}}$ の関係式が求められる。

解答の方針

【1.(ア〜キ)の方針】

着眼点

回折格子は、隣り合うすき間を通った光の道のりの差が波長の整数倍になる向きに明点ができる。升目が左右にも上下にも並ぶので、左右と上下を別々の回折格子とみる(下の図)。

2008年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
2008年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
  1. 明点が並ぶ向きから、升目の並ぶ向きを決める(ア)。
  2. 隣り合う升目から光線Aの向きに出る光に垂線をおろし、道のりの差を $d_{\mathrm A}$ と $\theta_{\mathrm A}$ で表す(イ)。光線Oの隣なので波長何個ぶんかを決める(ウ)。
  3. 明点の位置 $\Delta x$ は、角 $\theta_{\mathrm A}$ とスクリーンまでの距離 $L$ で決まる。角が小さいので $\theta_{\mathrm A}\fallingdotseq\tan\theta_{\mathrm A}=\dfrac{\Delta x}{L}$ とする(エ)。
  4. 道のりの差 $=\lambda$ の式を $d_{\mathrm A}$ について解き、数値を入れる(オ・カ)。
  5. 上下方向にも同じ式を立てる。格子の間隔が小さいほど光は大きく曲がり、明点の間隔は広くなる(反比例)ので、 $\Delta y$ と $\Delta x$ の大小から $d_{\mathrm B}$ と $d_{\mathrm A}$ を比べる(キ)。

【2.(ク〜コ)の方針】

着眼点

鮮明な像ができたのでレンズの公式が使える。格子面から出た平行光(光線A)は焦点面の1点に集まり、その点は、レンズの中心を通る光(直進)が焦点面と交わる点(下の図)。

2008年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
2008年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
  1. 格子面からレンズまで $a$、レンズからスクリーンまで $b=L-a$ としてレンズの公式を立て、$f$ を求める(ク)。倍率は $\dfrac ba$(ケ)。
  2. 光線Aと平行でレンズの中心を通る光を考え、焦点面で光軸から離れる距離 $D$ を $f$ と $\theta_{\mathrm A}$ で表す。$\theta_{\mathrm A}$ は、空欄イ・ウの道のりの差の式から $\lambda$ と $d_{\mathrm A}$ で表す(コ)。

【3.(サ)以降の方針】

着眼点

点 $\mathrm{F_O}$・$\mathrm{F_A}$ は同位相の2つの光源で、スリット間隔 $D$ のヤングの実験と同じ。最後の一文は、サの結果にコの $D$ を代入する誘導(下の図)。

2008年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
2008年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
  1. 点 $\mathrm{F_O}$・$\mathrm{F_A}$ からスクリーン上の点 $\mathrm P$ までの道のりの差を求め、明線の条件から縞の間隔を求める(サ)。
  2. サの式に、コの $D$ を代入して $\Delta X$ を $d_{\mathrm A}$ で表す。
  3. $\ell=b-f$ とレンズの公式から、$\dfrac{\ell}{f}$ が倍率と等しいことを示す。

解答

2008年九州大学物理 第3問 解答・解説
2008年九州大学物理 第3問 解答・解説
2008年九州大学物理 第3問 解答・解説(続き)
2008年九州大学物理 第3問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

空欄ア

明点は、回折格子ではすき間が並ぶ向きに並ぶ。光線Oの左右に明点が等間隔に並んでいるので、升目は左右に間隔 $d_{\mathrm A}$ で並んでいる。上下にも明点が並ぶので、上下にも別の間隔 $d_{\mathrm B}$ で並んでいる2次元の格子だと分かる。

答(ア) 左右(3点)

空欄イ・ウ

隣り合う升目を通って光線Aの向きに進む2つの光を図に書く。上の升目から、下の升目を出た光線に垂線をおろす。垂線より先は2つの光の道のりが同じなので、垂線までの差が道のりの差になる。直角三角形の辺の比から

$$\Delta=d_{\mathrm A}\sin\theta_{\mathrm A}$$

光線Oの隣の明点なので、道のりの差は波長1個ぶん(1次の明線)。$\Delta=1\times\lambda$ なので、波長の1倍。

答(イ) $d_{\mathrm A}\sin\theta_{\mathrm A}$(4点)

答(ウ) 1(2点)

空欄エ〜カ

上から見た図を書く。光線Aの方向と入射光のなす角が $\theta_{\mathrm A}$。スクリーンまでの距離が $L$、OA間の距離が $\Delta x$ なので $\tan\theta_{\mathrm A}=\dfrac{\Delta x}{L}$。$\theta_{\mathrm A}$ は 0.1 rad 以下の小さい角なので、$\theta_{\mathrm A}\fallingdotseq\tan\theta_{\mathrm A}$( $\sin\theta_{\mathrm A}\fallingdotseq\tan\theta_{\mathrm A}$ )と近似する。

$$\theta_{\mathrm A}=\frac{\Delta x}{L}=\frac{32}{2000}=1.6\times10^{-2}\ \mathrm{rad}$$

答(エ) $1.6\times10^{-2}$(3点)

道のりの差が1波長なので $d_{\mathrm A}\sin\theta_{\mathrm A}=\lambda$。$\sin\theta_{\mathrm A}\fallingdotseq\dfrac{\Delta x}{L}$ を代入して

$$d_{\mathrm A}\cdot\frac{\Delta x}{L}=\lambda\qquad\therefore\ d_{\mathrm A}=\frac{\lambda L}{\Delta x}$$

答(オ) $\dfrac{\lambda L}{\Delta x}$(4点)

$\dfrac{L}{\Delta x}$ は比なので、$L$ と $\Delta x$ の単位を mm のままにして、$\lambda$ を $\mu\mathrm{m}$ のまま入れれば、答えも $\mu\mathrm{m}$ で出る。

$$d_{\mathrm A}=0.53\times\frac{2000}{32}=33.1\cdots\ \mu\mathrm{m}$$

有効数字2桁で

答(カ) 33(4点)

空欄キ

上下方向も同じ。光線Oの上の明点Bについて、隣り合う升目の道のりの差が1波長になるので $d_{\mathrm B}\sin\theta_{\mathrm B}=\lambda$。$\sin\theta_{\mathrm B}\fallingdotseq\dfrac{\Delta y}{L}$ より

$$d_{\mathrm B}=\frac{\lambda L}{\Delta y}=0.53\times\frac{2000}{36}\fallingdotseq29\ \mu\mathrm{m}$$

$d_{\mathrm A}$ と $d_{\mathrm B}$ は、$\Delta x$ と $\Delta y$ に反比例する。$\Delta y=36\ \mathrm{mm}$ は $\Delta x=32\ \mathrm{mm}$ より大きいので、$d_{\mathrm B}$ は $d_{\mathrm A}$ より小さい。

答(キ) $<$(3点)

空欄ク・ケ

スクリーンに格子の鮮明な像ができたので、格子面を物体と見て、レンズの公式を使う。格子面からレンズまでが $a=50\ \mathrm{mm}$、レンズからスクリーンまでが $b=2000-50=1950\ \mathrm{mm}$(図6に書いてある)。

$$\frac1a+\frac1b=\frac1f\qquad\therefore\ \frac1f=\frac{1}{50}+\frac{1}{1950}=\frac{40}{1950}\qquad f=\frac{1950}{40}=48.75\ \mathrm{mm}$$

有効数字2桁で

答(ク) 49(4点)

倍率は、物体と像のレンズからの距離の比。

$$M=\frac ba=\frac{1950}{50}=39$$

答(ケ) 39(3点)

空欄コ

光線Aは、格子面の各点から角 $\theta_{\mathrm A}$ で出る平行光で、レンズで焦点面の1点 $\mathrm{F_A}$ に集まる。この点は、同じ向きの光のうちレンズの中心を通る光(レンズの中心では曲がらずに直進する)が焦点面と交わる点と同じ。光線Oは光軸と平行なので、焦点面で光軸上の点 $\mathrm{F_O}$ に集まる。直角三角形(辺 $f$・$D$、角 $\theta_{\mathrm A}$)より

$$D=f\tan\theta_{\mathrm A}\fallingdotseq f\theta_{\mathrm A}$$

空欄イ・ウの $d_{\mathrm A}\sin\theta_{\mathrm A}=\lambda$ で $\sin\theta_{\mathrm A}\fallingdotseq\theta_{\mathrm A}$ とすると $\theta_{\mathrm A}=\dfrac{\lambda}{d_{\mathrm A}}$。

$$D=f\cdot\frac{\lambda}{d_{\mathrm A}}=\frac{f\lambda}{d_{\mathrm A}}$$

答(コ) $\dfrac{f\lambda}{d_{\mathrm A}}$(5点)

(数値で確かめると $D=\dfrac{48.75\times0.53\times10^{-3}}{33.1\times10^{-3}}\fallingdotseq0.78\ \mathrm{mm}$。焦点面での間隔は1 mm にも満たない)

空欄サ

焦点面の穴を通った2つの光は、点 $\mathrm{F_O}$・$\mathrm{F_A}$ を同位相の光源とするヤングの実験になる。スクリーン上の点 $\mathrm P$ へ向かう2つの光は、$\ell$ が $D$ より十分長いので平行とみなせる。$\mathrm{F_A}$ から出る光に、$\mathrm{F_O}$ から垂線をおろすと、道のりの差は

$$\Delta=D\sin\varphi\fallingdotseq D\tan\varphi=D\cdot\frac{X}{\ell}$$

( $X$ は、2点の中点から焦点面に垂直にのびる線(中央の明線)から点 $\mathrm P$ までの距離、$\varphi$ は小さい角)。明線は $\Delta=m\lambda$( $m$ は整数)の位置にできるので、$X_m=\dfrac{m\ell\lambda}{D}$。隣りあう明線の間隔は $X_{m+1}-X_m$ で

$$\Delta X=\frac{\ell\lambda}{D}$$

答(サ) $\dfrac{\ell\lambda}{D}$(5点)

最後の一文(間隔 $\Delta X$ と格子の間隔 $d_{\mathrm A}$ の関係式)

サの式に、コの $D=\dfrac{f\lambda}{d_{\mathrm A}}$ を代入する。$\lambda$ が消えて

$$\Delta X=\frac{\ell\lambda}{D}=\frac{\ell\lambda\,d_{\mathrm A}}{f\lambda}=\frac{\ell}{f}\,d_{\mathrm A}$$

$\ell$ は焦点面からスクリーンまでなので $\ell=b-f$。レンズの公式 $\dfrac1f=\dfrac1a+\dfrac1b$ の両辺に $b$ をかけると $\dfrac bf=\dfrac ba+1$ だから

$$\frac{\ell}{f}=\frac bf-1=\frac ba=M$$

$$\boxed{\Delta X=Md_{\mathrm A}}$$

干渉縞の間隔は、格子の間隔の $M$ 倍、つまり格子の拡大像と同じ間隔になる(数値では $39\times33\ \mu\mathrm{m}\fallingdotseq1.3\ \mathrm{mm}$)。0次光(光線O)と1次光(光線A)の2本だけを通しても、格子の周期が像としてそのまま現れる。

別解

最後の一文(倍率から見通す)

レンズは格子面の像を $M$ 倍の大きさでスクリーンに作る。もとの格子の周期が $d_{\mathrm A}$ なら、像の周期は $M$ 倍の $Md_{\mathrm A}$。0次光と1次光の干渉縞の間隔は、この像の周期と同じはずなので $\Delta X=Md_{\mathrm A}$。計算せずに答えの形を予想でき、上の計算の確かめになる。

出題意図

  • 1.(ア〜キ):2次元の格子による回折を、左右と上下に分けて回折格子の条件 $d\sin\theta=m\lambda$ で処理し、小さい角の近似で格子の間隔を求めることができるか。
  • 2.(ク〜コ):レンズの公式で焦点距離と倍率を求め、平行な光が焦点面の1点に集まることから焦点面での間隔 $D$ を求めることができるか。
  • 3.(サ)と最後の一文:焦点面の2点を2つの光源とみなしてヤングの実験を使い、縞の間隔が格子の拡大像の間隔になる( $\Delta X=Md_{\mathrm A}$ )ところまで見通せるか。

講評

医学部医学科その他の学部
難易度標準
目標得点35点30点
目標時間20分25分

この年の合否を分けた大問。
問題の意味が理解できないと厳しく、2次元の格子と焦点面の2点の干渉は珍しい設定だが、問われているのは回折格子・レンズ・ヤングの実験という光の典型3つで、ク→コ→サの結果がつながって $\Delta X=Md_{\mathrm A}$ という1つの式にまとまる。
回折格子は「隣り合う光の道のりの差」、レンズは「公式と、中心を通る光は直進」、ヤングは「光源の間隔と距離」を、作図つきで白紙に再現できるまで練習しておけば、初見の設定でも1つずつ処理できる。
光の干渉は、どれが抜けても崩れるので、全範囲を標準レベルで仕上げておきたい。

差がつく所・失点しやすい所

  • 空欄コ:「光線Aは平行光なので焦点面の1点に集まる → その点は、同じ向きでレンズの中心を通る光で決まる」という発想に行き着けるか。ここを越えないと、$D$ を使うサと最後の関係式が続かない。
  • 空欄キ:格子の間隔と明点の間隔が反比例だと分かっているか。「$\Delta y$ の方が大きいから $d_{\mathrm B}$ も大きい」と大小を逆にしやすい。
  • 空欄サと最後の一文:焦点面の2点を2つの光源と見て、ヤングの実験の式をそのまま使えるか。$\ell$ は焦点面からスクリーンまでで $b-f$($b$ ではない)。ここに気づくと $\dfrac{\ell}{f}=M$ になる。

2008年九州大学・物理の
講評とまとめ

3問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。

大問難易度医学部医学科その他の学部
第1問やや簡単40点35点
第2問やや簡単40点40点
第3問標準35点30点
全体やや簡単105点90点

大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で105点、その他の学部で90点)にはなりません。

全体としてはやや簡単な年で、第1問・第2問は典型の組み合わせ、第3問だけ設定が珍しい構成でした。

この年の合否を分けたのは第3問で、2次元の格子と焦点面の2点からの干渉という組み合わせは問題集に少なく、問題の意味が理解できないと厳しい大問でした。

第1問は、円板に乗った立場で遠心力と摩擦力のつり合いを立て、離れたあとは接線方向に直進することを図にできるかが決め手です。

第2問は、回るコイルの磁束を時間で追えば起電力が出て、あとはコンデンサーの電流が電圧より $\dfrac{\pi}{2}$ 進むという交流の基本で、どの学部も満点を取りたい大問です。

第3問は、回折格子・レンズ・ヤングの実験のそれぞれは基本ですが、平行光は焦点面の1点に集まり、その位置はレンズの中心を通る光で決まる、と見られるかで差がつきました。

解く流れ

第1問 → 第2問 → 第3問。

2008年九州大学・物理に
関するよくある質問

2008年の九州大学・物理について、よく聞かれる質問にお答えします。

2008年の九州大学・物理は難しかった?

やや簡単な年でした。
第1問・第2問はやや簡単、第3問は標準です。
第1問は遠心力と円運動の典型、第2問は基本的なファラデーの法則で、第3問は設定が珍しく、この年の合否を分けた大問でした。

2008年の九州大学・物理は何点取れば合格できる?

目標点は、医学部医学科で105点、その他の学部で90点です(125点満点)。

2008年の九州大学・物理はどこで差がつく?

この年の合否を分けたのは第3問で、差がついたのは次の3つでした。

  • 第3問 コ:格子面から出た平行光は焦点面の1点に集まり、その点はレンズの中心を通る光で決まる、と気づけたか。
  • 第3問 サと最後の一文:焦点面の2点を同位相の2つの光源とみてヤングの実験の式を使い、 $\ell=b-f$ から $\Delta X=Md_{\mathrm A}$ まで見通せたか。
  • 第1問 問2 (1):離れた物体が接線方向に直進すると想像し、Pを通る接線の図から直角二等辺三角形を読み取れたか。
2008年の九州大学・物理は何が出題された?

大問ごとの単元は、次のとおりです。

  • 第1問:力学
  • 第2問:電磁気
  • 第3問:波動

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