【解説・配点付き】2007年九州大学物理の解答・解説

2007年の九州大学・物理の、
解答・解説【完全版】です。

方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。

このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。

※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。

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中原 遼太郎

九大受験に特化した学習塾
『竜文会』代表

『竜文会』開校後、初年度には国立大学医学部や九州大学に合格者を輩出。

2年目には旧帝大医学部にも合格!

九州大学の過去問を20年分以上分析して指導カリキュラムを作成。

九州大学医学部に現役合格した経験を生かして、『学習計画の作成』や『LINEでのいつでも相談』による1人1人のサポート・九州大学に特化したハイレベルな演習で「九大受験生」をサポート。

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目次

2007年九州大学物理
第1問 解答・解説

この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。

第1問は力学の問題です。
テーマは「ばねで押された2物体が自然長で離れ、Bは台車の上をすべって速さをそろえる。台車がばねに当たって往復する間、Bがすべらない条件。そのあと台車が段差ではね返り、Bと台車が同時に静止する反発係数。4つの典型問題を1本の運動でつなぐ」。

問題

2007年九州大学物理 第1問 問題
2007年九州大学物理 第1問 問題
問題文をテキストで読む

図1に示すように、なめらかな水平面PQ上に置かれた質量 $m$〔kg〕の物体Aおよび物体Bと、水平面Q′R′上をなめらかに運動する質量 $M$〔kg〕の台車がある。物体Aは、ばね定数 $k$〔N/m〕のばねによって点Pの壁と連結されている。台車は水平面PQと同じ高さの水平な上面を持ち、上面が水平面PQとなめらかに接続した状態で静止している。重力加速度の大きさを $g$〔m/s²〕とする。空気抵抗、物体Aおよび物体Bの大きさは無視できるものとし、物体A、物体Bおよび台車の速度は右向きを正とする。

問1. 物体Aに物体Bを押しつけて、ばねが自然長から $L$〔m〕だけ縮んだ位置で静かに手を離したところ、物体Aと物体Bは一緒に右向きに動き始めた。以下の問いに答えよ。なお、解答は $m$、 $M$、 $g$、 $k$、 $L$ の中から必要なものを用いて表すこと。

(1) 物体Bは、ある速度に達した瞬間に物体Aと離れ、水平面PQ上を等速で運動し始めた。手を静かに離してから物体Aと物体Bとが離れるまでの時間 $T$〔s〕と、そのときの物体Bの速度 $v_0$〔m/s〕を求めよ。

(2) 物体Aは、物体Bと離れた後、水平面PQ上で単振動した。物体Aの単振動の振幅 $D$〔m〕と角振動数 $\omega$〔rad/s〕を求めよ。

問2. やがて物体Bは、点Qにおいて台車の上面に乗り移り、台車の上面を滑り始めた。物体Bが台車の上面に乗り移ってからの時間を $t$〔s〕、物体Bと台車の上面との間の静止摩擦係数を $\mu$、動摩擦係数を $\mu’$ とし、物体Bが台車の上面から落ちることはないものとする。以下の問いに答えよ。なお、解答は $m$、 $M$、 $g$、 $\mu$、 $\mu’$、 $v_0$、 $t$ の中から必要なものを用いて表すこと。

(1) 物体Bが台車の上面を滑っているとき、時刻 $t$〔s〕における物体Bの速度 $v$〔m/s〕および台車の速度 $V$〔m/s〕を求めよ。

(2) 時刻 $t$〔s〕までに物体Bが台車の上面を滑った距離 $d$〔m〕を求めよ。

(3) 物体Bと台車の相対速度はやがて0となり、物体Bと台車は一体となって運動し始めた。このときの時刻 $t_1$〔s〕、物体Bと台車の速度 $V_1$〔m/s〕を求めよ。

問3. 物体Bと台車が一体となって運動し始めた後、台車は点R′の壁に取り付けてあるばね定数 $K$〔N/m〕のばねに衝突して運動の向きを変えた。このとき、物体Bが台車の上面を再び滑り始めることはなかった。このことから、ばね定数 $K$〔N/m〕の範囲を示せ。なお、解答は $m$、 $M$、 $g$、 $\mu$、 $\mu’$、 $V_1$、 $K$ の中から必要なものを用いて表すこと。

問4. その後、台車はQQ′の段差に衝突してはねかえり、物体Bは再び台車の上面を滑り始めた。 $M>m$ であり、台車と段差の反発係数(はねかえり係数)を $e$ とする。以下の問いに答えよ。なお、解答は $m$、 $M$、 $g$、 $\mu$、 $\mu’$、 $V_1$、 $e$ の中から必要なものを用いて表すこと。

(1) 衝突直後の物体Bの速度 $v_1’$〔m/s〕と台車の速度 $V_1’$〔m/s〕を求めよ。

(2) さらにしばらくすると、物体Bと台車は同時に静止した。このことから、反発係数 $e$ を求めよ。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

ばねにつながれた A と接した B は、押し合う力 $N$ が 0 になる自然長で離れる。離れるまでは2つ合わせて質量 $2m$ の単振動で、離れたあとは A だけの単振動に定義し直す(下の図)。

2007年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
2007年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
  1. A と B にはたらく水平方向の力をすべて書く。
  2. 一緒の間は同じ加速度なので、全体(質量 $2m$ )の運動方程式を立てる。B だけの運動方程式から $N$ を求めて、 $N=0$ になる位置を調べる(自然長を過ぎるとばねは A を引きもどして遅くするが、B は同じ速さで進み続けるので離れる)。
  3. 手を離した位置から自然長までは周期の $\dfrac14$ で、周期は質量 $2m$ とばね定数 $k$ で決まる((1)の $T$ )。
  4. 手を離した位置から自然長まで、ばねの弾性エネルギーが2つの運動エネルギーになる。エネルギー保存を立てる((1)の $v_0$ )。
  5. 離れたあとの A は、中心が自然長、質量が $m$ の単振動。自然長での速さ $v_0$ とエネルギー保存から振幅を求め、運動方程式から角振動数を求める((2))。

【問2の方針】

着眼点

B と台車の間の動摩擦力は、B には進む向きと逆に、台車には進む向きにはたらく。2つの加速度は別々で、速さがそろうとすべりが止まる(下の図)。

2007年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
2007年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
  1. B と台車にはたらく水平方向の力を書き、物体ごとに運動方程式を立てて加速度を求める。
  2. 速度の式を、B は初速度 $v_0$ を忘れずに立てる((1))。
  3. すべった距離は、台車に乗って見て、相対初速度と相対加速度で等加速度運動の式を立てる。 $v$-$t$ グラフで2本の直線にはさまれた面積としても見える((2))。
  4. 速さが等しくなる時刻を求め、その時刻の速さを求める((3))。

【問3の方針】

着眼点

台車に乗って見ると、B には進む向きに慣性力がはたらく。慣性力は台車の加速度に比例し、加速度は縮みに比例するので、最も縮んだ瞬間がいちばんすべりやすい(下の図)。

2007年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
2007年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
  1. 一体の運動(質量 $M+m$ )で、最も縮んだときの縮みをエネルギー保存から求める。
  2. そのときの台車の加速度の大きさを、運動方程式から求める。
  3. 台車に乗って見て、B の力(重力・垂直抗力・静止摩擦力・慣性力)を書き、つり合いを立てる。
  4. 最も縮んだ瞬間にすべらなければ、ほかの瞬間にもすべらない。静止摩擦力が最大摩擦力以下、という条件に代入して $K$ の範囲を求める。

【問4の方針】

着眼点

衝突で力を受けるのは台車と段差の間だけなので、B の速度は変わらず、台車の速度だけが変わる。そのあとは2つ合わせた運動量が保存し、「同時に静止」は全運動量 0(下の図)。

2007年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
2007年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
  1. 衝突の直前の速度を、右向きを正として符号つきで書く。
  2. B と台車の間の摩擦力は有限の大きさなので、一瞬の衝突の間に B の速度は変わらない。B の速度はそのまま、台車の速度は反発係数の式から求める((1))。
  3. 衝突のあとは、B と台車の間の摩擦力が内力で、水平面はなめらかなので、2つ合わせた運動量が保存する。衝突の直後の全運動量を書き、最後の全運動量 0 と等しいとおいて $e$ を求める((2))。

解答

2007年九州大学物理 第1問 解答・解説
2007年九州大学物理 第1問 解答・解説
2007年九州大学物理 第1問 解答・解説(続き)
2007年九州大学物理 第1問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

問1 (1)

A と B にはたらく水平方向の力を、右向きを正として書く。自然長を原点として A の位置を $x$ (手を離した位置は $x=-L$ )とする。A にはばねの力 $-kx$ と、B から押される力 $N$ (左向き)、B には A から押される力 $N$ (作用・反作用、右向き)。重力と垂直抗力は鉛直方向でつり合っている(下の図)。

接触している間は同じ加速度 $a$ で動くので、全体(質量 $2m$ )と、B だけで運動方程式を立てる。

$$2ma=-kx,\qquad ma=N$$

$$\therefore\ N=-\frac12kx$$

$x<0$ の間は $N>0$ で、A が B を押し続ける。 $N=0$ になるのは $x=0$(自然長)。自然長を過ぎると、ばねは A を引きもどして遅くするが、B は同じ速さで進み続けるので、ここで離れる。

離れるまでの運動は、質量 $2m$ ・ばね定数 $k$ の単振動で、手を離した位置は端、自然長は中心。端から中心までは周期の $\dfrac14$ 。

$$\text{周期}=2\pi\sqrt{\frac{2m}{k}}\qquad\therefore\ T=\frac14\cdot2\pi\sqrt{\frac{2m}{k}}$$

答 $T=\dfrac\pi2\sqrt{\dfrac{2m}{k}}$(3点)

自然長までは、なめらかな水平面で仕事をするのはばねの力(保存力)だけ。弾性エネルギーが、一緒に動く2つの運動エネルギーに変わる。

$$\frac12kL^2=\frac12(2m){v_0}^2$$

答 $v_0=L\sqrt{\dfrac{k}{2m}}$(3点)

問1 (2)

離れたあとの A は、ばねだけから力を受ける。単振動を定義し直す。中心は自然長のまま、質量は $m$ になる。運動方程式 $ma=-kx$ から、角振動数は

答 $\omega=\sqrt{\dfrac km}$(3点)

A は自然長(中心)を速さ $v_0$ で通る。中心で速さが最大なので、単振動のエネルギー保存から

$$\frac12m{v_0}^2=\frac12kD^2\qquad\therefore\ D=v_0\sqrt{\frac mk}=\frac{L}{\sqrt2}$$

答 $D=\dfrac{L}{\sqrt2}$(3点)

(質量が $2m$ から $m$ に減ったので、周期は短くなり、振幅は $L$ から $\dfrac{L}{\sqrt2}$ に小さくなる)

問2 (1)

B が台車の上をすべっている間、B と台車の間には動摩擦力 $\mu’N$ がはたらく。鉛直方向はつり合っているので、B の垂直抗力は $N=mg$ 。B の動摩擦力 $\mu’mg$ は左向き、台車にはその反作用 $\mu’mg$ が右向き(下の図)。

B の加速度を $a_1$ 、台車の加速度を $a_2$ として、運動方程式を物体ごとに立てる(右向きが正)。

$$ma_1=-\mu’mg,\qquad Ma_2=\mu’mg$$

$$\therefore\ a_1=-\mu’g,\qquad a_2=\frac{m\mu’g}{M}$$

どちらも一定なので、等加速度運動。B は初速度 $v_0$ で乗り移っているので、この $v_0$ を落とさない。

答 $v=v_0-\mu’gt$(3点)

答 $V=\dfrac{m\mu’g}{M}t$(3点)

問2 (2)

すべった距離は、台車に乗って見た B の移動距離。台車に乗ると、B の相対初速度は $v_0$(台車は初め静止)、相対加速度は

$$a_1-a_2=-\mu’g-\frac{m\mu’g}{M}=-\frac{(M+m)\mu’g}{M}$$

時刻 $t$ までの移動距離は、等加速度運動の式で

$$d=v_0t+\frac12(a_1-a_2)t^2$$

答 $d=v_0t-\dfrac{(M+m)\mu’g}{2M}t^2$(5点)

問2 (3)

B と台車の相対速度が 0 になるのは、2つの速度が等しくなるとき。(1) の $v$ と $V$ を等しいとおく。

$$v_0-\mu’gt_1=\frac{m\mu’g}{M}t_1\qquad\therefore\ \left(1+\frac mM\right)\mu’gt_1=v_0$$

答 $t_1=\dfrac{Mv_0}{(M+m)\mu’g}$(3点)

このときの速さは、 $V$ に $t_1$ を入れて

答 $V_1=\dfrac{m}{M+m}v_0$(3点)

(確かめ:B と台車の間の摩擦力は内力で、水平面はなめらかなので、運動量が保存する。 $mv_0=(m+M)V_1$ から同じ $V_1$ が得られる)

問3

台車と B は一体で、質量 $M+m$ 、速さ $V_1$ のまま、自然長のばね $K$ に当たる。ばねが最も縮んだ瞬間は速さ 0 で、この瞬間にいちばんすべりやすい(着眼点の図)。

最も縮んだときの縮みを $x_{\max}$ とする。ばねの力だけが仕事をするので、一体の運動エネルギーがばねの弾性エネルギーに変わる。

$$\frac12(M+m){V_1}^2=\frac12Kx_{\max}^2\qquad\therefore\ x_{\max}=V_1\sqrt{\frac{M+m}{K}}$$

そのときの台車(と B)の加速度の大きさ $\alpha$ (向きは左)は、一体の運動方程式から

$$(M+m)\alpha=Kx_{\max}\qquad\therefore\ \alpha=\frac{Kx_{\max}}{M+m}=V_1\sqrt{\frac{K}{M+m}}$$

台車に乗って B を見る。B にはたらく力は、重力 $mg$ 、垂直抗力 $N$ 、静止摩擦力 $f$ 、そして台車の加速度と逆向きの慣性力 $m\alpha$ (右向き)(下の図)。B は台車に対して静止して見えるので、力はつり合っている。

$$N=mg,\qquad f=m\alpha$$

B が再びすべり始めなかったので、静止摩擦力は最大摩擦力以下。

$$f\leqq\mu N\qquad\therefore\ mV_1\sqrt{\frac{K}{M+m}}\leqq\mu mg$$

$m$ は約分で消え、 $K>0$ に注意して整理する。

$$\sqrt{\frac{K}{M+m}}\leqq\frac{\mu g}{V_1}\qquad\therefore\ K\leqq\frac{(M+m)\mu^2g^2}{{V_1}^2}$$

答 $0<K\leqq\dfrac{(M+m)\mu^2g^2}{{V_1}^2}$(5点)

(等号は、ちょうどすべり出す直前=静止摩擦力が最大摩擦力に達する場合。「すべり始めることはなかった」なので、等号を入れる。ばねが硬い( $K$ が大きい)ほど、折り返しの加速度が大きくなってすべりやすい)

問4 (1)

右向きを正とする。台車はばねから離れるとき自然長で、エネルギー保存から速さは $V_1$ のまま向きだけ逆になる。段差に衝突する直前の B と台車の速度は、どちらも $-V_1$ 。

衝突で撃力を受けるのは台車だけ(台車と段差の間)。B と台車の間の摩擦力は有限の大きさなので、一瞬の衝突の間に B の速度は変わらない。

答 $v_1’=-V_1$(3点)

台車は動かない段差との衝突なので、反発係数の式は

$$e=-\frac{V_1′-0}{(-V_1)-0}\qquad\therefore\ V_1’=eV_1$$

答 $V_1’=eV_1$(3点)

問4 (2)

衝突のあと、B と台車の間の摩擦力は2つの間の内力で、水平面はなめらか。2つ合わせた運動量は、衝突の直後から最後まで保存する。

B と台車が同時に静止した最後の運動量は 0。衝突直後の運動量は、(1) の速度から $m(-V_1)+M(eV_1)$ 。

$$m(-V_1)+M\cdot eV_1=0$$

答 $e=\dfrac mM$(5点)

( $M>m$ なので $e<1$ となり、反発係数として意味が通る。 $e$ が $\dfrac mM$ より小さければ最後は B の向き(左)、大きければ台車の向き(右)に2つは一体で動く)

別解

問2 (2) (静止系で) 床から見て、B と台車の移動距離の差を求める。B は $v_0t-\dfrac12\mu’gt^2$ 、台車は $\dfrac12\cdot\dfrac{m\mu’g}{M}t^2$ 進むので、差は

$$d=v_0t-\frac12\mu’gt^2-\frac{m\mu’g}{2M}t^2=v_0t-\frac{(M+m)\mu’g}{2M}t^2$$

同じ答え。本解は、台車に乗って相対加速度で求める形にした。

問2 (2) ( $v$-$t$ グラフで) 時刻 $t$ までの B と台車の $v$-$t$ グラフにはさまれた面積が、すべった距離。台形の面積として、時刻 $t$ での B と台車の速度の差 $v-V$ を使って

$$d=\frac12t\{v_0+(v-V)\}$$

同じ答え。 $t=t_1$ のときは三角形の面積 $\dfrac12v_0t_1$ になる。

問2 (3) (運動量保存で) B と台車の間の摩擦力は内力なので、2つ合わせた運動量が保存する。 $mv_0=(m+M)V_1$ から $V_1$ を求め、(1) の $V=V_1$ から $t_1$ を求める。同じ答え。本解は、(1) の式で「速さが等しい」とおく形にした。

問3 (外から見る) 地面から見ると、B を左向きに減速させる力は静止摩擦力 $f$ だけ。B の加速度の大きさは台車と同じ $\alpha$ なので、運動方程式は $m\alpha=f$ 。 $f\leqq\mu mg$ に入れて、同じ式になる。慣性力を入れたつり合いは、この式の左右を入れかえて見ているだけ。本解は、台車に乗って慣性力とつり合わせる形にした。

出題意図

問1 ばねにつながれた物体と接した物体が自然長で離れることを捉え、離れるまでの時間と速さ、離れたあとの単振動を求めることができるか

問2 台車の上をすべる物体を、物体ごとの運動方程式で扱い、すべった距離と速さがそろう時刻を求めることができるか

問3 台車がばねで往復する間、物体が台車に対して静止し続ける条件を、運動を想像して慣性力と静止摩擦力のつり合いで捉えることができるか

問4 衝突の瞬間に変わる速度と変わらない速度を見分け、運動量保存から反発係数を求めることができるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度標準
目標得点40点35点
目標時間25分25分

よくある力学の問題で、自然長で離れる単振動→台車の上をすべる→ばねに当たる間すべらない条件→段差との衝突という4つの典型を、1本の運動でつないだ大問。
この年の合否を分けた大問。
決め手は問3で、台車に乗って慣性力を入れ、ばねが最も縮んだ瞬間(加速度が最大)がいちばんすべりやすいと運動を想像できるかどうか。
良問の風の離れる2物体・板の上をすべる2物体・電車の中の慣性力が白紙から再現できれば解けるので、医学科は満点−5点を目標に、できれば満点を取りたい。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問3:台車に乗ると B に進む向きの慣性力がはたらき、それが最大になるのは最も縮んだ瞬間(加速度が最大)だ、と運動を想像して、静止摩擦力の条件 $f\leqq\mu N$ に結べるか。ここが第1問でいちばん差がつく。
  • 問1 (1):ばねにつながれた A と接した B は自然長で離れる、と言い切れるか。ここを間違えると、 $T$ と $v_0$ だけでなく、 $v_0$ を使う問2 の答えも合わなくなる。
  • 問4 (2):「同時に静止」を「最後の全運動量が 0」に読みかえ、衝突の直後の B の速度が変わらないことを使えるか。

コラム ばねで往復する台の上の物体は、最も縮んだ瞬間にすべりやすい

問3 は、「ばねで往復する台の上の物体が、すべらない条件」という型でできている。

2007年九州大学物理 第1問 コラムの図
2007年九州大学物理 第1問 コラムの図
  • 考え方:台に乗って見ると、物体には台の加速度と逆向きに慣性力 $m\alpha$ がはたらき、静止摩擦力 $f$ がそれを支える。 $f=m\alpha$ なので、加速度の大きさ $\alpha$ が最大のときがいちばんすべりやすい。
  • どこで最大か:ばねの力は縮みに比例するので、加速度も縮みに比例する。最も縮んだ瞬間(速さ 0)が最大。つまり「折り返しの瞬間」が決め手で、そこで $f\leqq\mu N$ を満たせば、往復の間ずっとすべらない。
  • あらわれ方:ばねにつながれた台の上の物体がすべらない振幅の上限(単振動の端が最も加速度が大きい)も、同じ考え方。九大は2020年にも、ばねにつながれた台の上の物体がすべらない条件を問うている。

台車の上の物体の問題では、「折り返しの瞬間」を想像して、そこで条件を立てる。

2007年九州大学物理
第2問 解答・解説

第2問は電磁気の問題です。
テーマは「平行板コンデンサーの電気容量・電気量・静電エネルギーと、極板の間を通る電子のずれ(スクリーンの輝点)。電位差を上げていくと電子が極板に当たり、スイッチを開くと当たった電子の分だけ極板の電気量が減って輝点がもどる」。

問題

2007年九州大学物理 第2問 問題
2007年九州大学物理 第2問 問題
問題文をテキストで読む

図2に示すように、一辺 $a$〔m〕の2枚の正方形金属板を間隔 $d$〔m〕で紙面に垂直に配置して平行板コンデンサーとし、出力電圧を変えることができる直流電源とスイッチをこれに接続した。ただし、図2に示された全ての装置は真空中にあり、真空の誘電率を $\varepsilon_0$〔F/m〕とする。また、重力の影響は無視でき、電場(電界)は金属板間の空間のみに一様に存在するものとする。

問1. 平行板コンデンサーの電気容量 $C$〔F〕を求めよ。

問2. スイッチを閉じた状態で直流電源の出力を $U_1$〔V〕に設定し、充分時間が経過した後に、平行板コンデンサーに蓄えられている電気量 $Q$〔C〕と静電エネルギー $W_1$〔J〕を求めよ。答えは、 $a$、 $d$、 $\varepsilon_0$、 $U_1$ から必要な記号を用いて表せ。

さらに図2のように、金属板面に平行に $x$ 軸をとり、 $x$ 軸と垂直に $y$ 軸をとる。 $x$ 軸上を左から原点Oに向かって、電気量が $-e$〔C〕、質量が $m$〔kg〕の電子を速さ $v$〔m/s〕で毎秒 $N$ 個入射する。また、平行板コンデンサーの右端から $L$〔m〕 $(L>0)$ の位置に、充分広い面積を有するスクリーンを $x$ 軸に垂直に置いた。このスクリーンには蛍光物質が塗られており、電子が当たると輝点を生じる。この場合に以下の問いに答えよ。答えは、 $a$、 $d$、 $\varepsilon_0$、 $U_2$、 $U_4$、 $U_5$、 $e$、 $m$、 $v$、 $N$、 $L$ から必要な記号を用いて表せ。

問3. 平行板コンデンサーの2枚の金属板間に与える電位差を0〔V〕からゆっくりと大きくしていく。この電位差が $U_2$〔V〕の場合に、平行板コンデンサー内を通過している電子が電場(電界)から受ける力の大きさ $F$〔N〕を求めよ。さらに電位差を $U_3$〔V〕まで大きくしたところで、平行板コンデンサーの金属板に電子が当たるようになり、スクリーンの輝点が消えた。このときの電位差 $U_3$〔V〕を求めよ。ただし、電極に当たった電子は、全てこの電極に捕えられて反射しないものとする。

問4. 次に $U_3$〔V〕より大きな電位差 $U_4$〔V〕を平行板コンデンサーの2枚の金属板間に与えた。その後スイッチを開いてしばらくすると再び輝点がスクリーンに現れた。電極に当たった電子は全てこの電極に捕えられるとして、スイッチを開いてから、再び輝点がスクリーンに現れるまでに要する時間 $T$〔s〕を求めよ。また、再びスクリーンに現れた輝点の $y$ 座標 $y_1$〔m〕を求めよ。ただし、接地されている下の金属板には、上の金属板と等量で異符号の電荷がつねに誘起されるとする。さらに、再び輝点がスクリーンに現れる金属板間の電位差は $U_3$〔V〕よりわずかに小さいが、ここでは近似的に $U_3$〔V〕と等しいとする。

問5. スイッチを閉じて、 $U_3$〔V〕より小さな電位差 $U_5$〔V〕を平行板コンデンサーの2枚の金属板間に与えた。電子が平行板コンデンサー内を通過する間に電場(電界)から得るエネルギー $W_2$〔J〕を求めよ。

解答の方針

【問1・問2の方針】

着眼点

どちらも公式。問2 は電源につながったままなので、電圧は $U_1$ のまま。電気量も静電エネルギーも、電圧の文字で書ける。

  1. 問1:極板の電気量を $Q$ として電場・電位差を書き、 $Q=CV$ の形にそろえて導ける。極板の面積 $a^2$・間隔 $d$ から $C$ を書く。
  2. 問2:電圧は $U_1$ のまま。 $Q=CU_1$ を求め、静電エネルギーは電圧が分かっている形で求める。

【問3の方針】

着眼点

電場の中は等加速度、もう一方の方向は等速。電子は負の電荷なので電場と逆の上向きに力を受け、水平投射と同じ運動になる。右端にちょうど当たる境目が $U_3$(下の図)。

2007年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2007年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
  1. 問3 前半:上の極板が電源の+側なので電場は上から下向き。大きさ $\dfrac{U_2}{d}$ に電荷の大きさ $e$ をかけて力 $F$ を求める。
  2. 問3 後半:右向きには力がはたらかないので速さ $v$ のまま。極板を通り抜ける時間を、等速の右向きから求める。
  3. 上向きの加速度から、極板を出るまでのずれを求める。
  4. ずれが $\dfrac d2$ になる(右端にちょうど当たる)とおいて $U_3$ を求める。

【問4の方針】

着眼点

スイッチを開くと電気量が一定になる、と決めつけない。電子が上の極板に当たり続け、正の電気が1秒に $Ne$ ずつ減る。電位差が $U_3$ まで下がると輝点がもどる(下の図)。

2007年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2007年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
  1. 問4 $T$:下の極板には上と等量で異符号の電荷がつねに誘起されるので、 $Q=CU$ が使える。開いた直後の電気量 $CU_4$ が、電位差 $U_3$ の電気量 $CU_3$ まで減る時間を、1秒に減る電気量 $Ne$ から求める。
  2. $U_3$ は答えに使えない記号なので、問3 の結果を代入して消す。電子が飛ぶ時間は電気量が減る時間に比べてずっと短いので無視する、と一言添える。
  3. 問4 $y_1$:輝点がもどった瞬間の電子は、問3 の境目と同じ運動で、極板の右端すれすれを出る。出口の上向きの速さを求める。
  4. 極板を出たあとは電場がないので、スクリーンまで等速直線運動。上がる高さを足して $y_1$ を求める。

【問5の方針】

着眼点

電子は極板に当たらず通り抜ける。電場から得るエネルギーは電場がした仕事で、運動エネルギーの増加に等しい。増えるのは上向きの分だけ(下の図)。

2007年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2007年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
  1. 右向きの速さは変わらない。極板を出るときの上向きの速さを、問3 と同じ運動から求める。
  2. 運動エネルギーの増加 $\dfrac12mv_y{}^2$ を求める( $v_y$ は上向きの速さ)。

解答

2007年九州大学物理 第2問 解答・解説
2007年九州大学物理 第2問 解答・解説
2007年九州大学物理 第2問 解答・解説(続き)
2007年九州大学物理 第2問 解答・解説(続き)
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問1

極板の面積は $a\times a=a^2$、間隔は $d$ なので、平行板コンデンサーの電気容量は『 $C=\varepsilon_0\dfrac Sd$ 』の $S$ に $a^2$ を入れて

$$C=\frac{\varepsilon_0a^2}{d}$$

(導き方:極板の電気量を $Q$ とすると電場は $E=\dfrac{Q}{\varepsilon_0S}$。電位差は $V=Ed=\dfrac{Qd}{\varepsilon_0S}$ で、『 $Q=CV$ 』と比べて $C=\varepsilon_0\dfrac Sd$ 。)

答 $C=\dfrac{\varepsilon_0a^2}{d}$(4点)

問2

スイッチを閉じて十分に時間がたつと、コンデンサーの電圧は電源の電圧 $U_1$ になる。電気量は『 $Q=CV$ 』に問1 の $C$ を入れて

$$Q=CU_1=\frac{\varepsilon_0a^2U_1}{d}$$

答 $Q=\dfrac{\varepsilon_0a^2U_1}{d}$(4点)

静電エネルギーは、電圧 $U_1$ と容量 $C$ が分かっているので $\dfrac12CV^2$ の形で

$$W_1=\frac12CU_1{}^2=\frac{\varepsilon_0a^2U_1{}^2}{2d}$$

答 $W_1=\dfrac{\varepsilon_0a^2U_1{}^2}{2d}$(4点)

問3

上の極板が電源の+側なので電位が高く、極板間の電場は上から下向き。大きさは $E=\dfrac{U_2}{d}$ 。電子は負の電荷なので、電場と逆の上向きに力を受ける(下の図)。

力の大きさは電荷の大きさ $e$ に電場をかけて

$$F=eE=\frac{eU_2}{d}$$

答 $F=\dfrac{eU_2}{d}$(5点)

電位差が $U$ のとき、電子の上向きの加速度は運動方程式 $ma_y=\dfrac{eU}{d}$ より $a_y=\dfrac{eU}{md}$ (一定)。右向きは力が働かないので、速さ $v$ の等速直線運動。時間は等速の方向から求める。極板の長さ $a$ を通り抜ける時間は

$$t=\frac av$$

このあいだに上へずれる距離は

$$y=\frac12a_yt^2=\frac12\cdot\frac{eU}{md}\left(\frac av\right)^2=\frac{eUa^2}{2mdv^2}$$

電子は $x$ 軸上(極板のちょうど真ん中)から入るので、上の極板までの距離は $\dfrac d2$ 。電位差を大きくしていって、極板の右端にちょうど当たるのが境目なので、 $U=U_3$ のとき $y=\dfrac d2$ 。

$$\frac{eU_3a^2}{2mdv^2}=\frac d2\qquad\therefore\ U_3=\frac{md^2v^2}{ea^2}$$

(図は着眼点の図と同じ。 $U_3$ より小さければ極板を出られ、大きければ途中で当たる。)

答 $U_3=\dfrac{md^2v^2}{ea^2}$(6点)

問4

$T$ を求める。 $U_4>U_3$ なので、電子は上の極板に当たり続けている。スイッチを開くと電源から電気が来なくなるので、上の極板の正の電気は、当たった電子(1秒に $N$ 個、1個の電気量の大きさ $e$ )の分だけ、1秒あたり $Ne$ ずつ減っていく。下の極板には等量で異符号の電荷がつねに誘起されるので、電気量 $Q$ と電位差の関係は『 $Q=CU$ 』のまま(下の図)。

開いた直後の電気量は $CU_4$ 。輝点がもどるのは電位差が $U_3$ (電気量が $CU_3$ )まで下がったとき。時間 $T$ のあいだに減った電気量が $C(U_4-U_3)$ 、電子が運んだ電気量が $NeT$ なので

$$C(U_4-U_3)=NeT\qquad\therefore\ T=\frac{C(U_4-U_3)}{Ne}=\frac{\varepsilon_0a^2(U_4-U_3)}{Ned}$$

答えに使える記号に $U_3$ は無いので、問3 の結果を代入して消す。

$$T=\frac{\varepsilon_0a^2}{Ned}\left(U_4-\frac{md^2v^2}{ea^2}\right)=\frac{\varepsilon_0\left(ea^2U_4-md^2v^2\right)}{Ne^2d}$$

電子が極板の間やスクリーンまで飛ぶ時間は、電気量が減る時間 $T$ に比べてずっと短いので、無視する(問題文も、輝点がもどる電位差を「近似的に $U_3$ 」としている)。

答 $T=\dfrac{\varepsilon_0\left(ea^2U_4-md^2v^2\right)}{Ne^2d}$(5点)

$y_1$ を求める。 電位差が $U_3$ にもどった瞬間の電子は、問3 の境目の運動で、極板の右端 $(x,\ y)=\left(a,\ \dfrac d2\right)$ をすれすれに出る。出口での上向きの速さ $v_y$ は、加速度と通り抜ける時間から

$$v_y=a_yt=\frac{eU_3}{md}\cdot\frac av=\frac{e}{md}\cdot\frac{md^2v^2}{ea^2}\cdot\frac av=\frac{dv}{a}$$

極板を出たあとは電場がないので、速度 $\left(v,\ v_y\right)$ のまま等速直線運動(下の図)。スクリーンまでの距離 $L$ を進む時間は $\dfrac Lv$ なので、このあいだに上がる高さは $v_y\cdot\dfrac Lv=\dfrac{dL}{a}$ 。出口の高さ $\dfrac d2$ に足して

$$y_1=\frac d2+\frac{dL}{a}$$

答 $y_1=\dfrac d2+\dfrac{dL}{a}=d\left(\dfrac12+\dfrac La\right)$(6点)

問5

$U_5<U_3$ なので電子は極板に当たらず通り抜ける。電位差 $U_5$ のときの上向きの加速度は $a_y=\dfrac{eU_5}{md}$ 、通り抜ける時間は $t=\dfrac av$ 。出口での上向きの速さは

$$v_y=a_yt=\frac{eU_5a}{mdv}$$

極板の間で電子に仕事をするのは電場の力だけで、右向きの速さ $v$ は変わらない。電場から得るエネルギーは、運動エネルギーの増加(増えるのは上向きの分だけ)に等しい。

$$W_2=\frac12mv_y{}^2=\frac12m\left(\frac{eU_5a}{mdv}\right)^2=\frac{e^2a^2U_5{}^2}{2md^2v^2}$$

答 $W_2=\dfrac{e^2a^2U_5{}^2}{2md^2v^2}$(6点)

別解

問4 $y_1$ (出口の速度の向きを逆に延ばす)

放物線の出口の接線を逆に延ばすと、極板の長さの真ん中 $x=\dfrac a2$ で $x$ 軸を横切る(水平投射の性質)。この点から出口までが $\dfrac a2$ で高さ $\dfrac d2$ 、同じ直線が点からスクリーンまで $\dfrac a2+L$ 進むので、相似から

$$y_1=\frac{d}{2}\times\frac{\frac a2+L}{\frac a2}=\frac d2+\frac{dL}{a}$$

本解と同じ。解答の定番の書き方。ただし、「出口の速さ+等速直線運動」の本解は、相似の図を書かなくても式だけで求められる。

問5 (力×距離で)

電場の力は一定で上向き。出口までに上へ動く距離は $h=\dfrac12a_yt^2=\dfrac{eU_5a^2}{2mdv^2}$ 。電場がした仕事は

$$W_2=F\cdot h=\frac{eU_5}{d}\cdot\frac{eU_5a^2}{2mdv^2}=\frac{e^2a^2U_5{}^2}{2md^2v^2}$$

本解と同じ。2通りで求めて確かめてよい。

出題意図

問1・問2 平行板コンデンサーの電気容量・電気量・静電エネルギーの公式を、スイッチが閉じていれば電圧一定として使えるか

問3 極板の間の電子を「電場の向きは等加速度、もう一方は等速」と分けて、極板の右端にちょうど当たる境目の電位差を求めることができるか

問4 スイッチを開いたあと、電子が上の極板にたまって電気量が減り続けることを捉え、輝点がもどる時間とその位置を求めることができるか

問5 極板の間で電場が電子にした仕事が運動エネルギーの増加になることを理解しているか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや簡単
目標得点40点35点
目標時間15分20分

とても簡単な大問で、どの学部も満点を取りたい。
前半はコンデンサーの公式、中盤は「電場の向きは等加速度、もう一方は等速、時間は等速の方向から」と言い切れる極板の間の電子の典型(良問の風139)。
唯一のひねりは問4で、スイッチを開くと電気量が一定になるという思い込みを外し、電子がたまって電気量が減る設定を読み取れるか。
取り切って、時間を第1問に回したい。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問3 $U_3$:「極板の右端にちょうど当たるのが境目」と読み、等加速度のずれが $\dfrac d2$ になる条件を立てられるか。ここを越えないと、 $U_3$ を使う問4 の $T$ と $y_1$ が続けて落ちる。
  • 問4 $T$:スイッチを開くと「電気量が一定」と決めつけず、上の極板に電子がたまって電気量が減り続ける設定だと読めるか。電気量が $CU_4$ から $CU_3$ まで減る時間を、1秒に $Ne$ で割って求める。
  • 問4 $y_1$:輝点がもどった瞬間は「極板の右端すれすれを出る電子」だと気づき、出口の傾き $\dfrac{v_y}{v}=\dfrac da$ から等速直線運動で押せるか。

2007年九州大学物理
第3問 解答・解説

第3問は熱力学の問題です。
テーマは「1 mol の単原子分子理想気体を、定積で加熱(A→B)→ 直線の経路で膨張(行程Ⅰ、B→C。両端は同じ温度)→ 定圧で冷却(C→A)のサイクルⅠにする。仕事・熱・熱効率を順に求めたあと、B→C を等温の行程Ⅱに変えたサイクルⅡと熱効率を比べる(指定された記号だけで $e_{\text{Ⅱ}}$ を表し、大小を選ぶ)」。

問題

2007年九州大学物理 第3問 問題
2007年九州大学物理 第3問 問題
問題文をテキストで読む

図3のように、1モルの単原子分子理想気体が、気密性を保ちながらなめらかに動くピストンでシリンダー内に閉じ込められている。ピストンには固定用ねじが取り付けてあり、可動範囲の任意の位置でこれをシリンダーに固定できる。また、シリンダー内部には加熱・冷却器があって、内部の気体に対する加熱・冷却を自在に行える。加熱・冷却器によらないシリンダー内外の熱の出入り、加熱・冷却器の体積と熱容量はいずれも無視する。気体定数を $R$〔J/(mol・K)〕とする。

固定用ねじをゆるめた状態で、シリンダー内の気体の圧力を大気圧 $P_0$〔Pa〕に等しくすると、気体の体積と温度はそれぞれ、 $V_0$〔m³〕、 $T_0$〔K〕であった。この状態を状態Aとし、気体の体積 $V$〔m³〕と圧力 $P$〔Pa〕を表す図4のグラフにAで示す。この状態でピストンを固定し、加熱・冷却器でゆっくりと気体を加熱したところ、圧力が $\dfrac32P_0$〔Pa〕となった。この状態を状態Bとし、温度を $T_{\mathrm{B}}$〔K〕とする。状態A→状態Bの変化の間に、気体が外に対してする仕事を $W_{\mathrm{AB}}$〔J〕、気体に加えられる熱量を $Q_{\mathrm{AB}}$〔J〕とする。

問1. $W_{\mathrm{AB}}$〔J〕を求めよ。

問2. $Q_{\mathrm{AB}}$〔J〕を $R$、 $T_0$ を用いて表せ。

次に、図5のように外から力を加えて、ピストンが動かないように支えながら固定用ねじをゆるめた。それから、ピストンを支える力と加熱・冷却器の両方を制御して、体積が $\dfrac32V_0$〔m³〕になるまで気体を膨張させた。その間の体積 $V$〔m³〕と圧力 $P$〔Pa〕の関係は、図4に示すような直線の関係となり、膨張後の温度は $T_{\mathrm{B}}$〔K〕に等しかった。この状態を状態Cとし、状態B→状態Cの変化を行程Ⅰとする。ただし、行程Ⅰの間、加熱・冷却器は常に加熱の状態にあった。行程Ⅰで気体が外にする仕事を $W_{\mathrm{BC}}$〔J〕、気体に加えられる熱量を $Q_{\mathrm{BC}}$〔J〕とする。

問3. $W_{\mathrm{BC}}$〔J〕、 $Q_{\mathrm{BC}}$〔J〕を $R$、 $T_0$ を用いて表せ。

次に、気体をゆっくりと冷却して、状態Cから始めの状態Aに戻した。この変化で、ピストンに外部からかかる力は、大気圧によるもののみであった。状態A→状態B→(行程Ⅰ)→状態C→状態Aの変化をサイクルⅠとする。

問4. 状態C→状態Aの変化の間に、気体がされる仕事 $W_{\mathrm{CA}}$〔J〕、気体から奪われる熱量 $Q_{\mathrm{CA}}$〔J〕を $R$、 $T_0$ を用いて表せ。

問5. サイクルⅠにおける熱効率 $e_{\text{Ⅰ}}$ を求めよ。

次に、行程Ⅰとは別の行程Ⅱを考える。行程Ⅱでは、状態B→状態Cの間、気体の温度が一定値 $T_{\mathrm{B}}$〔K〕に保たれる。状態A→状態B→(行程Ⅱ)→状態C→状態Aの変化をサイクルⅡとする。ただし、状態A→状態B、状態C→状態Aの変化は、サイクルⅠ、サイクルⅡで同じである。サイクルⅠ、サイクルⅡにおいて気体が外にする正味の仕事をそれぞれ $W_{\text{Ⅰ}}$〔J〕、 $W_{\text{Ⅱ}}$〔J〕とする。

問6. サイクルⅡにおける熱効率 $e_{\text{Ⅱ}}$ を $W_{\text{Ⅰ}}$、 $W_{\text{Ⅱ}}$、 $Q_{\mathrm{AB}}$、 $Q_{\mathrm{BC}}$ を用いて表せ。

問7. 熱効率 $e_{\text{Ⅰ}}$ と熱効率 $e_{\text{Ⅱ}}$ の大小関係について、次の中から正しいものを選び、番号で答えよ。

① $e_{\text{Ⅰ}}>e_{\text{Ⅱ}}$ ② $e_{\text{Ⅰ}}=e_{\text{Ⅱ}}$ ③ $e_{\text{Ⅰ}}<e_{\text{Ⅱ}}$

解答の方針

【問1〜問5の方針】

着眼点

状態A・B・C を p-V 図の3点として考え、温度は $T\propto pV$ で決める。B と C は同じ温度なので $\Delta U=0$ だが、直線の経路は等温変化ではない(下の図)。

2007年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
2007年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
  1. 状態A・B・C の圧力・体積・温度を p-V 図に書き入れる。温度は A を基準にした比で決める。A→B は縦の線(定積)、C→A は横の線(定圧)で、どちらも決まった型。仕事はすべて p-V 図の面積で見る(問2・問3)。
  2. A→B は定積なので $W=0$、 $Q=\Delta U$(問1・問2)。
  3. B→C の仕事は直線の下の台形の面積。内部エネルギーは温度だけで決まり、B と C は同じ温度なので $\Delta U=0$、 $Q=W$(問3)。
  4. C→A は定圧。仕事は長方形の面積(された仕事なので符号に注意)。熱は 5:3:2 の比で求める(問4)。
  5. 吸熱の区間(A→B と B→C)の和が $Q_{in}$。正味の仕事は三角形の面積。熱効率 $e=\dfrac{W}{Q_{in}}$(問5)。

【問6・問7の方針】

着眼点

サイクルⅠとⅡは B→C だけが違うので、共通の部分を外して B→C だけを見る。吸熱=仕事=「下の面積」と表せば、C→A の下の長方形(共通)を介してつながる(下の図)。

2007年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
2007年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
  1. 行程Ⅱは等温なので $\Delta U=0$ で、吸熱=仕事=曲線の下の面積。これを $W_{\text{Ⅱ}}$ と $W_{\mathrm{CA}}$ で表す。行程Ⅰの吸熱 $Q_{\mathrm{BC}}$ も $W_{\text{Ⅰ}}$ と $W_{\mathrm{CA}}$ で表す。2つの式から $W_{\mathrm{CA}}$ を消し、行程Ⅱの吸熱を指定の記号だけで表す。使える記号が限られているのは、等温の仕事を対数で計算させないための指定(問6)。
  2. サイクルⅡの吸熱区間(A→B と行程Ⅱ)の和を分母にして $e_{\text{Ⅱ}}$ を表す(問6)。
  3. 放熱が共通なので $e=1-\dfrac{Q_{out}}{Q_{in}}$ で、 $Q_{in}$ の大小を比べる。等温の曲線は直線より下にあることから $W_{\text{Ⅱ}}<W_{\text{Ⅰ}}$ とし、問6 の関係から $Q_{in}$ の大小を決める(問7)。

解答

2007年九州大学物理 第3問 解答・解説
2007年九州大学物理 第3問 解答・解説
2007年九州大学物理 第3問 解答・解説(続き)
2007年九州大学物理 第3問 解答・解説(続き)
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問1

A→B はピストンを固定して加熱するので、体積が変わらない(定積変化)。体積が変わらなければ気体は外に仕事をしない(p-V 図では縦の線で、下の面積が0)。

答 $W_{\mathrm{AB}}=0$(3点)

問2

状態Aは $P_0V_0=RT_0$(1 mol)。状態Bは体積が $V_0$ のままで、圧力が $\dfrac32$ 倍。体積が同じなら状態方程式 $pV=RT$ より $p\propto T$ なので、温度も $\dfrac32$ 倍で $T_{\mathrm B}=\dfrac32T_0$。

第一法則 $Q=\Delta U+W$ に、問1 の $W_{\mathrm{AB}}=0$ を入れる(定積では $Q=\Delta U$)。単原子分子 1 mol の定積モル比熱は $\dfrac32R$ なので

$$Q_{\mathrm{AB}}=\Delta U=\frac32R\left(T_{\mathrm B}-T_0\right)=\frac32R\cdot\frac{T_0}{2}=\frac34RT_0$$

答 $Q_{\mathrm{AB}}=\dfrac34RT_0$(5点)

問3

状態Cは体積 $\dfrac32V_0$・圧力 $P_0$ なので、 $P_0\cdot\dfrac32V_0=RT_{\mathrm C}$。 $P_0V_0=RT_0$ を使うと $T_{\mathrm C}=\dfrac32T_0$ で、 $T_{\mathrm B}$ と同じ(問題文の「膨張後の温度は $T_{\mathrm B}$ に等しい」と合う)。

仕事は、B→C の直線の下の台形の面積。

$$W_{\mathrm{BC}}=\frac12\left(\frac32P_0+P_0\right)\left(\frac32V_0-V_0\right)=\frac12\cdot\frac52P_0\cdot\frac12V_0=\frac58P_0V_0=\frac58RT_0$$

内部エネルギーは温度だけで決まるので、B と C が同じ温度なら $\Delta U_{\mathrm{BC}}=0$。第一法則から

$$Q_{\mathrm{BC}}=\Delta U_{\mathrm{BC}}+W_{\mathrm{BC}}=W_{\mathrm{BC}}=\frac58RT_0$$

答 $W_{\mathrm{BC}}=\dfrac58RT_0$(5点)

答 $Q_{\mathrm{BC}}=\dfrac58RT_0$(5点)

(B と C が同じ温度でも、B→C は直線なので等温変化ではない。途中の温度は一度上がってから下がり、 $V=\dfrac54V_0$ で最高の $\dfrac{25}{16}T_0$ になる。問題文は、行程Ⅰの間は加熱の状態にあったと教えてくれているので、 $Q_{\mathrm{BC}}$ は全部が吸熱で、問5 で $Q_{in}$ にそのまま入れられる)

問4

C→A は、ピストンにかかる外部の力が大気圧だけなので圧力 $P_0$ のまま(定圧変化)。体積が $\dfrac32V_0$ から $V_0$ に縮むので、気体はされる側。された仕事は、C→A の下の長方形の面積。

$$W_{\mathrm{CA}}=P_0\left(\frac32V_0-V_0\right)=\frac12P_0V_0=\frac12RT_0$$

単原子分子の定圧変化では、熱・内部エネルギーの変化・仕事の大きさが $5:3:2$。仕事の大きさ $\dfrac12RT_0$ が「2」にあたるので、熱の大きさは $\dfrac52$ 倍。冷却なので、これが気体から奪われる熱量(正の値で答える)。

$$Q_{\mathrm{CA}}=\frac52\cdot\frac12RT_0=\frac54RT_0$$

(確かめ:温度は $\dfrac32T_0\to T_0$ で、内部エネルギーは $\dfrac32R\cdot\dfrac{T_0}{2}=\dfrac34RT_0$ だけ減る。 $\dfrac34:\dfrac12=3:2$ で、比と合う)

答 $W_{\mathrm{CA}}=\dfrac12RT_0$(4点)

答 $Q_{\mathrm{CA}}=\dfrac54RT_0$(4点)

問1〜問4 の結果を状況図にまとめると、下の図になる。

問5

各区間の吸熱・放熱を決める。A→B は温度が上がり($\Delta U>0$)仕事は0なので吸熱。B→C は問題文のとおり加熱で吸熱。C→A は温度が下がり左向きなので放熱。吸収した熱量は吸熱の区間だけの和。

$$Q_{in}=Q_{\mathrm{AB}}+Q_{\mathrm{BC}}=\frac34RT_0+\frac58RT_0=\frac{11}{8}RT_0$$

正味の仕事 $W_{\text{Ⅰ}}$ は、三角形ABCの面積。

$$W_{\text{Ⅰ}}=\frac12\cdot\frac12P_0\cdot\frac12V_0=\frac18P_0V_0=\frac18RT_0$$

($W_{\mathrm{BC}}-W_{\mathrm{CA}}=\dfrac58RT_0-\dfrac12RT_0$ とも一致)

$$e_{\text{Ⅰ}}=\frac{W_{\text{Ⅰ}}}{Q_{in}}=\frac{\frac18RT_0}{\frac{11}{8}RT_0}=\frac1{11}$$

答 $e_{\text{Ⅰ}}=\dfrac1{11}$(5点)

問6

行程Ⅱは温度が一定なので $\Delta U=0$。第一法則から、行程Ⅱで加えられる熱($Q_{\mathrm{BC}}’$ とおく)は、気体がする仕事 $W_{\mathrm{BC}}’$ に等しい。この仕事は、B→C の曲線の下の面積で、C→A の下の長方形($W_{\mathrm{CA}}$)と、サイクルⅡが囲む部分($W_{\text{Ⅱ}}$)に分けられる。

$$Q_{\mathrm{BC}}’=W_{\mathrm{BC}}’=W_{\text{Ⅱ}}+W_{\mathrm{CA}}$$

行程Ⅰでも、問3 のとおり吸熱=直線の下の面積で、同じように分けられる。

$$Q_{\mathrm{BC}}=W_{\text{Ⅰ}}+W_{\mathrm{CA}}$$

2式から $W_{\mathrm{CA}}$ を消すと

$$Q_{\mathrm{BC}}’=Q_{\mathrm{BC}}-W_{\text{Ⅰ}}+W_{\text{Ⅱ}}$$

サイクルⅡの吸熱の区間は A→B と行程Ⅱ(等温膨張は圧力が下がりながら広がり、 $Q=W>0$ でずっと吸熱)。放熱は C→A。A→B はサイクルⅠと同じ $Q_{\mathrm{AB}}$ なので

$$e_{\text{Ⅱ}}=\frac{W_{\text{Ⅱ}}}{Q_{\mathrm{AB}}+Q_{\mathrm{BC}}’}=\frac{W_{\text{Ⅱ}}}{Q_{\mathrm{AB}}+Q_{\mathrm{BC}}-W_{\text{Ⅰ}}+W_{\text{Ⅱ}}}$$

答 $e_{\text{Ⅱ}}=\dfrac{W_{\text{Ⅱ}}}{Q_{\mathrm{AB}}+Q_{\mathrm{BC}}-W_{\text{Ⅰ}}+W_{\text{Ⅱ}}}$(5点)

(数値で確かめると、等温の仕事は結果だけ使って $W_{\mathrm{BC}}’=RT_{\mathrm B}\log\dfrac32=\dfrac32RT_0\log\dfrac32\fallingdotseq0.608RT_0$。 $W_{\text{Ⅱ}}=W_{\mathrm{BC}}’-W_{\mathrm{CA}}\fallingdotseq0.108RT_0$ なので、 $e_{\text{Ⅱ}}\fallingdotseq\dfrac{0.108}{0.750+0.608}\fallingdotseq0.080$。問6 の式に $W_{\text{Ⅰ}}=\dfrac18RT_0$・$Q_{\mathrm{AB}}=\dfrac34RT_0$・$Q_{\mathrm{BC}}=\dfrac58RT_0$ を入れても同じ。問題の指定の記号は、 $\log$ を使わずに済ませるためのもの)

問7

サイクルⅠとⅡは、A→B と C→A が同じで、違うのは B→C だけ。放熱は C→A だけなので共通で、 $e=1-\dfrac{Q_{out}}{Q_{in}}$ の $Q_{out}$ が同じ。$Q_{in}$ が大きい方が熱効率が大きい。

問6 の関係から、サイクルⅡの吸熱は、サイクルⅠより $W_{\text{Ⅰ}}-W_{\text{Ⅱ}}$ だけ小さい。

$$Q_{in(\text{Ⅱ})}=Q_{\mathrm{AB}}+Q_{\mathrm{BC}}’=Q_{in(\text{Ⅰ})}-\left(W_{\text{Ⅰ}}-W_{\text{Ⅱ}}\right)$$

等温の曲線は直線より下にある(例:$V=\dfrac54V_0$ で、等温 $\dfrac{3P_0V_0}{2V}=\dfrac65P_0$ は、直線の $\dfrac54P_0$ より小さい)。曲線の下の面積は直線より小さいので $W_{\text{Ⅱ}}<W_{\text{Ⅰ}}$。よって $Q_{in(\text{Ⅱ})}<Q_{in(\text{Ⅰ})}$ で、 $e_{\text{Ⅱ}}<e_{\text{Ⅰ}}$。

答 ①(4点)

(「等温変化の方が効率がよさそう」と思い込んで③にしないこと。問6 の数値でも $e_{\text{Ⅰ}}=\dfrac1{11}\fallingdotseq0.091>e_{\text{Ⅱ}}\fallingdotseq0.080$)

(下の図は吸熱の長さの比べ。差は小さいので、図では大きく書いている)

別解

問4(熱を温度から求める)

温度が分かっているときは、定圧変化の熱を $Q=nC_p\Delta T$ で一度に求められる。単原子分子の定圧モル比熱は $\dfrac52R$ で、 $T_{\mathrm C}=\dfrac32T_0$ から $T_0$ なので

$$Q_{\mathrm{CA}}=\frac52R\left(\frac32T_0-T_0\right)=\frac54RT_0$$

問5(1サイクルの第一法則)

1サイクルでもとの状態にもどるので $\Delta U=0$。正味の仕事は、吸収した熱量と放出した熱量の差に等しい。

$$W_{\text{Ⅰ}}=Q_{in}-Q_{out}=\frac{11}{8}RT_0-\frac54RT_0=\frac18RT_0$$

熱効率は $e_{\text{Ⅰ}}=1-\dfrac{Q_{out}}{Q_{in}}=1-\dfrac{\frac54}{\frac{11}{8}}=1-\dfrac{10}{11}=\dfrac1{11}$。

問7(分子と分母から同じ量を引く)

$\varDelta=W_{\text{Ⅰ}}-W_{\text{Ⅱ}}>0$ とおくと、問6 から $e_{\text{Ⅱ}}=\dfrac{W_{\text{Ⅰ}}-\varDelta}{Q_{in(\text{Ⅰ})}-\varDelta}$。 $e_{\text{Ⅰ}}=\dfrac{W_{\text{Ⅰ}}}{Q_{in(\text{Ⅰ})}}$ は1より小さい分数なので、分子と分母から同じ量を引くと値が小さくなり、 $e_{\text{Ⅱ}}<e_{\text{Ⅰ}}$(下のコラム)。

出題意図

問1・問2 定積変化では仕事が0で、加えた熱が内部エネルギーの増加になることを捉え、状態方程式から温度を求めることができるか

問3 直線の経路の仕事を面積で求め、両端が同じ温度なら $\Delta U=0$ になる(等温変化ではない)ことに気づけるか

問4 定圧変化の仕事を面積で求め、熱を 5:3:2 の比で求めることができるか

問5 吸熱の区間だけを足して $Q_{in}$ とし、囲まれた面積から熱効率を求めることができるか

問6・問7 等温の行程の吸熱を面積で捉え、指定された記号だけで熱効率を表し、共通の部分を外して大小を比べられるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや簡単
目標得点40点40点
目標時間15分20分

熱サイクルの典型で、どの学部も満点を取りたい大問。
決まった流れは「p-V 図に点を打つ→温度を $pV$ の比で決める→区間ごとに何変化かを決めて第一法則→吸熱の区間だけ足して熱効率」。
熱効率の比べでは、共通の部分を外して違う所だけを見る。
差がつくとしたら問6・問7 だけで、記号の指定を守ることと、等温の方が効率がよいという思い込みを持たないことの2点。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問3:「B と C が同じ温度なので $\Delta U=0$、 $Q=W$(等温変化ではないが、両端の温度だけで決まる)」という発想に行き着けるか。ここを越えないと、 $Q_{in}$ が決まらず、問5 以降が続かない。
  • 問6:「等温の吸熱は曲線の下の面積 $=W_{\text{Ⅱ}}+W_{\mathrm{CA}}$」と見て、 $W_{\mathrm{CA}}$ を消し、指定の記号だけで書けるか。対数で計算に進むと、指定の形にならない。
  • 問7:「共通の部分(A→B・C→A)を外し、違いは B→C だけ。等温の曲線は直線より下なので吸熱が減る」と見通せるか。「等温の方が効率がよさそう」という思い込みで③を選ぶと落とす。

コラム 共通の部分を外して熱効率を比べる

問7 のように2つのサイクルの熱効率を比べるとき、 $\dfrac{W}{Q_{in}}$ を2つとも計算してから比べる必要はない。計算の前に、次の3つを順に見る。

  • 共通の部分を探す:サイクルⅠとⅡは A→B と C→A が同じ。違うのは B→C だけなので、違う所だけを見る。
  • 放熱が共通なら、吸熱だけ比べる:$e=1-\dfrac{Q_{out}}{Q_{in}}$ で $Q_{out}$ が同じなら、 $Q_{in}$ が大きいほど熱効率が大きい。問7 は、サイクルⅡの吸熱の方が小さいので、 $e_{\text{Ⅱ}}$ の方が小さい。
  • 分子と分母から同じ量を引く:$\varDelta=W_{\text{Ⅰ}}-W_{\text{Ⅱ}}$ とすると、 $W_{\text{Ⅱ}}=W_{\text{Ⅰ}}-\varDelta$、 $Q_{in(\text{Ⅱ})}=Q_{in(\text{Ⅰ})}-\varDelta$。熱効率は1より小さい分数 $\dfrac{W}{Q_{in}}$ なので、分子と分母から同じ量を引くと値は小さくなる(例:$\dfrac23$ の分子と分母から1を引くと $\dfrac12$)。確かめは、 $\dfrac{W-\varDelta}{Q-\varDelta}<\dfrac WQ$ の両辺に $Q(Q-\varDelta)$ をかけると $-Q\varDelta<-W\varDelta$、つまり $Q>W$ が成り立つこと。
2007年九州大学物理 第3問 コラムの図
2007年九州大学物理 第3問 コラムの図

この問題の数値では $e_{\text{Ⅰ}}=\dfrac1{11}\fallingdotseq0.091$、 $e_{\text{Ⅱ}}\fallingdotseq0.080$。差 $\varDelta\fallingdotseq0.017RT_0$ は $Q_{in}=\dfrac{11}{8}RT_0$ に比べてごく小さく、図では分かりやすいように大きく書いている。等温の行程の方が効率がよさそうに見えても、同じ温度の範囲で比べると、直線の行程の方が吸熱も仕事も多く、効率が高い。計算の前に「何が共通で、何が違うか」を見る癖をつけておこう。

2007年九州大学・物理の
講評とまとめ

3問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。

大問難易度医学部医学科その他の学部
第1問標準40点35点
第2問やや簡単40点35点
第3問やや簡単40点40点
全体やや簡単110点95点

大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で110点、その他の学部で95点)にはなりません。

第2問・第3問は基本の典型で、第1問だけ段階が多い、やや簡単な年でした。

この年の合否を分けたのは第1問で、4つの典型が1本の運動でつながり、配点も45点と最も大きい大問でした。

決め手は問3で、ばねが最も縮んだ瞬間に台車の加速度が最大になり、Bがいちばんすべりやすいと運動を想像できるかどうかです。

第2問はコンデンサーと電場の中の電子の基本で、スイッチを開いたあとも電子が極板に当たり続けて電気量が減る、と読み取れるかが分かれ目です。

第3問は熱サイクルの典型で、記号の指定を守って書けるかと、共通の部分を外して熱効率を比べられるかで差がつきますが、どの学部も満点を取りたい大問です。

解く流れ

第1問 → 第2問 → 第3問。

2007年九州大学・物理に
関するよくある質問

2007年の九州大学・物理について、よく聞かれる質問にお答えします。

2007年の九州大学・物理は難しかった?

やや簡単な年でした。
第1問は標準、第2問と第3問はやや簡単です。
第1問は自然長で離れる単振動、台車の上をすべる2物体、慣性力、段差との衝突の4つの典型が連鎖して段階が多く、この年の合否を分けた大問でした。

2007年の九州大学・物理は何点取れば合格できる?

目標点は、医学部医学科で110点、その他の学部で95点です(125点満点)。

2007年の九州大学・物理はどこで差がつく?

この年の合否を分けたのは第1問で、差がついたのは次の3つでした。

  • 第1問 問3:台車に乗ると B に進む向きの慣性力がはたらき、ばねが最も縮んだ瞬間(加速度が最大)がいちばんすべりやすい、と想像して、静止摩擦力の条件 $f\leqq\mu N$ に結べたか。
  • 第2問 問4 $T$:スイッチを開いても電気量は一定にならず、電子がたまって減り続けると読み、$C(U_4-U_3)=NeT$ を立てて $U_3$ を代入して消せたか。
  • 第3問 問6・問7:共通の部分を外し、違いは B→C だけで、等温の曲線は直線より下なので吸熱が減る、と見通して ① を選べたか。
2007年の九州大学・物理は何が出題された?

大問ごとの単元は、次のとおりです。

  • 第1問:力学
  • 第2問:電磁気
  • 第3問:熱力学

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