【解説・配点付き】2006年九州大学物理の解答・解説
2006年の九州大学・物理の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2006年九州大学物理
第1問 解答・解説
この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は力学の問題です。
テーマは「ばねで支えた台の上を物体が水平に通り抜けるとき、台は物体が乗ると中心のずれた単振動、降りると質量 $M$ だけの単振動になる。物体は円弧状斜面で単振り子として往復し、その時間と台の一往復をそろえる。最後は摩擦のある斜面で止まる高さと静止条件」。
問題


問題文をテキストで読む
図1(a)に示すように、質量 $m\ [\mathrm{kg}]$ の小物体、斜面AB、水平面BC、水平な上面DEをもつ質量 $M\ [\mathrm{kg}]$ の台、点Oを中心とする半径 $R\ [\mathrm{m}]$ の円弧状斜面FLがある。点Oは点Fの鉛直線上にある。斜面ABと水平面BCの接続は滑らかで、接続部は十分短く斜面ABは平面と考えられる。斜面ABの傾斜角は $\theta\ [\mathrm{rad}]$ であり、点Aは点Bより $h\ [\mathrm{m}]$ 高い。台は、ばね定数が $k\ [\mathrm{N/m}]$ で質量が無視できるばねにより支えられている。最初、台は静止しており、面DEと水平面BCは同じ高さにある。台は面DEを常に水平に保ち上下方向にのみ運動可能である。重力加速度の大きさを $g\ [\mathrm{m/s^2}]$ とする。また断りのない限り、空気抵抗、小物体の大きさ、小物体と面との間の摩擦、台とそれが接している面との間の摩擦は無視できるものとする。以下の問いに答えよ。
問1. 次の文章中の $\boxed{\text{ア}}$ から $\boxed{\text{オ}}$ の空欄を適当な数式で埋めよ。
小物体を点Aに置き、静かに離した。斜面ABを滑り、点Bに達した小物体の速さは $\boxed{\text{ア}}$ となった。その後小物体は水平面BC上を移動し、滑らかに面DEに進入した。すると台は移動する小物体を乗せたまま下降しはじめた。小物体を乗せた台の運動は、ばねによる上下方向の単振動と同じと考えると、単振動の振幅は $\boxed{\text{イ}}$、周期は $\boxed{\text{ウ}}$ である。半周期後、台が下降から上昇に転じる瞬間、図1(b)のように面DEの高さは点Fと同じになり、また、小物体はちょうど点Eに達した。このときDE間の距離は $\boxed{\text{エ}}$ である。その後、小物体は滑らかに円弧状斜面FLに乗り移り、台は振幅 $\boxed{\text{オ}}$ で単振動した。
問2. その後の小物体と台の運動について以下の問いに答えよ。
(1) 小物体は円弧状斜面を登り、FL上の点Gまで達したあと、逆方向に下りはじめた。点Gは点Fよりどれだけ高いか。
(2) 円弧FGの長さが半径 $R$ にくらべてかなり小さく、小物体の運動は振幅の小さい単振り子と同じとみなせるとする。このとき、小物体が円弧状斜面FGを往復する時間を求めよ。
(3) 小物体が点Fに戻ってきたとき、ちょうど台は上下に一往復したところであった。したがって面DEの高さは点Fと同じになり、再び小物体は台に乗り移った。この場合の半径 $R$ を他の記号を用いて表せ。
問3. その後、小物体は再び台から水平面BCに乗り移り、最初に点Aでもっていた力学的エネルギーを保ったまま点Bに到達し、斜面ABを登りはじめた。ところが小物体が点Bに戻るまでの間に斜面ABの表面の状態が変化して、斜面ABと小物体の間に、静止摩擦係数 $\mu$、動摩擦係数 $\mu’$ の摩擦が生じるようになった。以下の問いに答えよ。
(1) 小物体は斜面ABの途中で停止した。停止点はB点よりどれだけ高いか。
(2) 小物体が停止したあと、再び滑り落ちないための $\mu$ の条件を求めよ。
解答の方針
【問1の方針】
物体が乗ると台の振動の中心は物体の重さの分だけ下にずれ、乗った瞬間(速度0)が端になる。降りたら質量 $M$ の単振動として定義し直す(下の図)。


- 点 A から点 B まで、なめらかな斜面なので力学的エネルギーが保存する。B での速さを求める(ア)。
- 物体が乗った台は「質量 $M+m$ のおもりをつけた鉛直ばね」なので、質量 $M+m$ ・単振動定数 $k$(鉛直でも $k$ のまま)の単振動。つり合いの位置のずれを求め、乗った瞬間が静止(速度0)であることから、中心と端の距離(振幅)を求める(イ)。周期を求める(ウ)。
- 台が下降から上昇に転じるのは半周期後。台はなめらかで水平なので、物体は台が上下に動いても水平の速さが変わらない。その間、物体は水平方向に等速で進むので、(水平の速さ)×(半周期)で DE を求める(エ)。
- 半周期後の台は最も下がった位置で、上下の速度が0(図1(b) の、面 DE が点 F と同じ高さになった瞬間)。そこで物体が降りるので、質量 $M$ の単振動の中心と端を求め直し、振幅を求める(オ)。
【問2の方針】
台が最も下がった瞬間は上下の速度が0なので、物体は水平の速さ $\sqrt{2gh}$ のまま円弧に入る。時間は、振り子の半周期と台の1周期をそろえる(下の2つの図)。




- 台の上下の速度が0であることから、F での物体の速さを B と同じと決める。「点 A と同じ高さまで上がる」と思い込まない(F は BC の高さより低いので、上がる高さは F から数える)。F から G まで、力学的エネルギーが保存する。G の高さを求める((1))。
- 円弧が小さいと、小物体は単振り子と同じ動きをする。F が振動の中心(最下点)、G が端なので、F→G→F は中心→端→中心で、振り子の半周期。周期の公式から、この時間を求める((2))。
- 物体が降りたあとの台は、質量 $M$ だけの単振動。「上下に一往復」は台の1周期なので、質量 $M$ とばね定数 $k$ で周期を求める。一往復=1周期が (2) の時間に等しいとおいて、 $R$ を求める((3))。
【問3の方針】
上りで仕事をする非保存力は摩擦だけなので、最初と最後で $W=\Delta E$。止まったあとは、静止摩擦力が最大摩擦力以下のときに滑り落ちない(下の図)。


- 物体は最初に A でもっていた力学的エネルギーを保って B に戻るので、B での速さは ア と同じ。運動エネルギーを求める。
- 止まる高さを $H$ とおき、斜面に沿った距離を $H$ と $\sin\theta$ で表す(垂直抗力は仕事をしない)。動摩擦力は、斜面に垂直な方向のつり合いから求めた垂直抗力を使う。最初(B)と最後(停止点)で $W=\Delta E$ を立て、 $H$ を求める((1))。
- 止まった物体にはたらく力を「重力 → 垂直抗力 → 静止摩擦力」の順に書き、斜面に沿った方向と垂直な方向のつり合いから静止摩擦力と垂直抗力を求める。 $f\leqq\mu N$ に代入して $\mu$ の条件を求める((2))。
解答




解答をテキストで読む
空欄ア〜オ
物体は点 A から点 B まで、なめらかな斜面を滑る。仕事をするのは重力(保存力)だけなので、力学的エネルギーが保存する。B を高さの基準にする。
$$mgh=\frac12m{v_\mathrm B}^2\qquad\therefore\ v_\mathrm B=\sqrt{2gh}$$
答(ア) $\sqrt{2gh}$(3点)
物体が台に乗る前、台は質量 $M$ のつり合いの位置で静止している。乗ったあとは質量 $M+m$ になるので、つり合いの位置が下にずれる。もとのつり合いの位置から下向きに距離 $y$ をとり、台と物体の運動方程式を立てる(ばねの縮みは $\dfrac{Mg}{k}+y$ )。
$$(M+m)a=(M+m)g-k\left(\frac{Mg}{k}+y\right)=mg-ky=-k\left(y-\frac{mg}{k}\right)$$
質量は $M+m$、単振動定数は $k$(鉛直でも $k$ のまま)、中心は $y=\dfrac{mg}{k}$ とわかる(下の図の左)。
台は、物体が乗った瞬間は静止している。 $y=0$ で速度0なので、ここが端で、中心との距離が振幅になる。
答(イ) $\dfrac{mg}{k}$(4点)
周期は、質量 $M+m$ と単振動定数 $k$ から
答(ウ) $2\pi\sqrt{\dfrac{M+m}{k}}$(4点)
台が下降から上昇に転じるのは、半周期後(端→中心→反対の端)。物体は水平方向に力を受けない(台は水平でなめらか)ので、台が上下に動いても水平の速さ $\sqrt{2gh}$ は変わらない。この間に D から E まで進むので
$$\mathrm{DE}=\sqrt{2gh}\times\frac12\cdot2\pi\sqrt{\frac{M+m}{k}}$$
答(エ) $\pi\sqrt{\dfrac{2gh(M+m)}{k}}$(5点)
半周期後、台は反対の端にいる。もとの位置 $y=0$ から、中心 $y=\dfrac{mg}{k}$ をはさんで反対側なので、最も下がった位置は $y=\dfrac{2mg}{k}$。ここで台の上下の速度は0。この瞬間に物体は台を離れる。台は質量 $M$ だけの振動に定義し直す。運動方程式は
$$Ma=Mg-k\left(\frac{Mg}{k}+y\right)=-ky$$
中心は $y=0$(質量 $M$ のつり合いの位置、もとの位置)にもどる。速度0の今の位置 $y=\dfrac{2mg}{k}$ が端なので、中心との距離が振幅になる(上の図の右)。
答(オ) $\dfrac{2mg}{k}$(5点)
問2 (1)
図1(b) の瞬間、台は最も下がっていて、上下の速度は0。面 DE は点 F と同じ高さにあるので、物体は水平の速さ $\sqrt{2gh}$ のまま、なめらかに円弧状斜面に乗り移る(下の図)。F での速さは B と同じ。
円弧状斜面もなめらかなので、F から G まで力学的エネルギーが保存する。F を高さの基準にする。
$$\frac12m\left(\sqrt{2gh}\right)^2=mgH_\mathrm G\qquad\therefore\ H_\mathrm G=h$$
答 $h$(5点)
(点 A と同じ高さではない。F は BC の高さより $\dfrac{2mg}{k}$ 低いので、G は A より $\dfrac{2mg}{k}$ 低い所にある)
問2 (2)
円弧が半径 $R$ にくらべて小さいので、小物体は単振り子と同じ運動をする。最下点 F の近くで、水平方向に $x$ 軸をとる。小物体にはたらく力の接線方向の成分は $-mg\sin\phi\fallingdotseq-\dfrac{mg}{R}x$。単振動定数は $\dfrac{mg}{R}$、質量は $m$ なので、周期は
$$T_\mathrm p=2\pi\sqrt{\frac{m}{\,mg/R\,}}=2\pi\sqrt{\frac Rg}$$
F が振動の中心、G が端。F→G→F は、中心→端→中心なので半周期(下の図)。
答 $\pi\sqrt{\dfrac Rg}$(4点)
問2 (3)
物体が降りたあとの台は、質量 $M$ ・単振動定数 $k$ の単振動。「上下に一往復」は1周期で、その時間は $2\pi\sqrt{\dfrac Mk}$。これが (2) の時間に等しい(上の図)。
$$\pi\sqrt{\frac Rg}=2\pi\sqrt{\frac Mk}\qquad\therefore\ \frac Rg=\frac{4M}{k}$$
答 $R=\dfrac{4Mg}{k}$(5点)
問3 (1)
物体は F から台に乗り移り、台の上を逆向きに進んで、再び水平面 BC に乗り移る。物体が F に戻った瞬間、台はちょうど最も下がった位置で、上下の速度は0。つまり行きの運動を逆回しにしたのと同じなので、点 B に戻ったときの速さは ア と同じ $\sqrt{2gh}$(問題文の「最初に点Aでもっていた力学的エネルギーを保ったまま」)。
斜面を上る間、斜面には上り始めから摩擦がはたらくと読む。止まる高さを $H$ とする。斜面に沿った距離は $\dfrac{H}{\sin\theta}$。斜面に垂直な方向の力はつり合うので、垂直抗力は $N=mg\cos\theta$。動摩擦力は $\mu’N=\mu’mg\cos\theta$ で、運動と逆向きなので仕事は負。B を高さの基準にして、最初(B)と最後(停止点)で $W=\Delta E$(後−前)。
$$-\mu’mg\cos\theta\cdot\frac{H}{\sin\theta}=mgH-\frac12m(\sqrt{2gh})^2=mgH-mgh$$
$$H\left(1+\frac{\mu’}{\tan\theta}\right)=h\qquad\therefore\ H=\frac{h\tan\theta}{\tan\theta+\mu’}$$
答 $\dfrac{h\tan\theta}{\tan\theta+\mu’}$(6点)
(同じ答えを、 $\dfrac{h\sin\theta}{\sin\theta+\mu’\cos\theta}$ と書いてもよい)
問3 (2)
止まった物体にはたらく力を「重力 → 垂直抗力 → 静止摩擦力」の順に書く。静止していて、滑り落ちようとする向きの逆(斜面に沿って上向き)に静止摩擦力 $f$ がはたらく(下の図)。
斜面に沿った方向と垂直な方向で、力がつり合う。
$$f=mg\sin\theta,\qquad N=mg\cos\theta$$
再び滑り落ちないのは、静止摩擦力が最大摩擦力以下のとき。
$$f\leqq\mu N\qquad\therefore\ mg\sin\theta\leqq\mu mg\cos\theta\qquad\therefore\ \mu\geqq\tan\theta$$
答 $\mu\geqq\tan\theta$(4点)
(斜面で滑らない条件 $\mu\geqq\tan\theta$ は、覚えておく。等号は「滑り落ちない」=その状態にとどまる側なので入れる)
別解
問3 (1) (運動方程式で) 斜面を上る間の加速度の大きさ $\alpha$ は、斜面に沿った方向の運動方程式から
$$m\alpha=mg\sin\theta+\mu’mg\cos\theta\qquad\therefore\ \alpha=g(\sin\theta+\mu’\cos\theta)$$
B での速さ $\sqrt{2gh}$ から止まるまでに進む距離を $s$ として、時間を含まない等加速度運動の式 $0-2gh=-2\alpha s$ から $s=\dfrac{gh}{\alpha}$。 $H=s\sin\theta$ に入れる。
$$H=\frac{h\sin\theta}{\sin\theta+\mu’\cos\theta}$$
同じ答え。本解は、時間を聞かれていない斜面と摩擦の問題なので、 $W=\Delta E$ で求める形にした(運動方程式は時間を聞かれたときに使う)。
出題意図
問1 物体が乗ると鉛直ばねの単振動の中心がずれることを捉え、物体が降りたあとの単振動を定義し直すことができるか
問2 (1)〜(3) 台が最も下がった瞬間の物体の動きを想像し、単振り子の半周期と台の一往復の時間をそろえることができるか
問3 (1)(2) 摩擦のある斜面で止まる高さを $W=\Delta E$ で求め、止まったままでいる条件を静止摩擦力から導くことができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 40点 | 35点 |
| 目標時間 | 25分 | 25分 |
標準の大問で、難しくはないが、運動をきちんと想像できるかが問われる。
単振動を中心に、エネルギー保存・単振り子・摩擦のある斜面と、力学の典型を1本の運動でつないだ、この年の合否を分けた大問。
決め手は、物体が乗ると中心がずれ、降りると中心がもとにもどる、台が最も下がった瞬間は上下の速度が0だから物体は水平の速さのまま円弧に入る、という流れを想像できるか。
白紙から再現できれば解けるので、医学科は満点−5点を目標に、できれば満点を取りたい。
差がつく所・失点しやすい所
- 問1 イ・オ:物体が乗ると中心が物体の重さの分だけずれ、乗った瞬間(速度0)が端、降りたあとは中心がもとにもどり、最も下がった位置(速度0)が新しい端になる、と台の振動の範囲を図に書けるか。ここが見えないと、オ も 問2 以降の運動も想像できない。
- 問2 (1):台が最も下がった瞬間は上下の速度が0なので、物体は水平の速さのまま円弧に入り、F での速さは B と同じ、と言えるか。「点 A と同じ高さまで上がる」と思い込んで、高さを取り違える。
- 問2 (3):振り子の往復は半周期、台の一往復は1周期、と時間をそろえて立式できるか。取り違えると、答えが $\dfrac14$ 倍にずれる。
コラム 台の上を通った物体は、エネルギーを台の振動にあずける
問2 (1) で、G は点 A と同じ高さにならない。理由は、エネルギーの流れで見ると分かる。


- 物体が失うエネルギー:台が最も下がった瞬間、F は BC の高さより $\dfrac{2mg}{k}$ 低い。物体の速さは B と同じなので、運動エネルギーは変わらず、位置エネルギーだけが $mg\cdot\dfrac{2mg}{k}=\dfrac{2m^2g^2}{k}$ 減る。
- 台がもらうエネルギー:台は振幅 $\dfrac{2mg}{k}$ で振動していて、その振動のエネルギーは $\dfrac12k\left(\dfrac{2mg}{k}\right)^2=\dfrac{2m^2g^2}{k}$。物体の失った分と同じ。
- あらわれ方:物体が台に乗って降りるまでに、物体のエネルギーの一部が台の振動のエネルギーに移る。だから G は A より低くなる。物体が台をふたたび通って B に戻るときは、行きの逆回しでエネルギーが物体にもどる(問3 で「最初に A でもっていた力学的エネルギーを保ったまま」となる理由)。
エネルギーが行って戻るのは、台がなめらかで、物体が台の上で摩擦を受けないから。台を使う問題では、「物体と台のあいだでエネルギーがやりとりされる」と見る。
2006年九州大学物理
第2問 解答・解説
第2問は電磁気の問題です。
テーマは「磁場の中で回る直交した2つのコイルの磁束・起電力(交流の発生)と、周期を変えたときの力の最大値。電池につないだ平行板コンデンサーに金属板を入れたときの容量・電気量・電界のグラフ、極板を近づけたときの静電エネルギーの増え方」。
問題


問題文をテキストで読む
以下の問いに答えよ。
問1. 図2に示すように、2つの磁極N、Sの間に、長さ $L\ [\mathrm{m}]$、幅 $2r\ [\mathrm{m}]$ の長方形のコイルを2つ直交して配置し、一体となった回転体を構成する。この回転体は図中の矢印の方向に一定の角速度で回転しており、その周期は $T\ [\mathrm{s}]$ である。各コイルには電気抵抗 $R\ [\Omega]$ が接続され、コイル1の端子a、bはそれぞれ抵抗の端子a′、b′に、コイル2の端子c、dはそれぞれ抵抗の端子c′、d′につながっている。磁極間の磁束密度は一様で、その大きさは $B\ [\mathrm{T}]$ とする。ただし、コイルはどちらも一巻きで、コイルの電気抵抗は無視できるものとする。
(1) 各コイルを貫く磁束の最大値を求めよ。
(2) 次の文章で $\boxed{\text{ア}}$ から $\boxed{\text{ウ}}$ に入る正しい時間変化を、図4の(a)〜(h)から選んで、それぞれ答えよ。
図3は、ある時刻において、回転軸に垂直に回転体を切った断面である。電磁誘導の法則によれば、コイルを貫く磁束の変化を妨げる方向に誘導電流を流そうとする誘導起電力が発生する。いま、コイル1を貫く磁束 $\phi_1$ は時間とともに減少しており、その時間変化は図4の(a)となる。このとき、コイル2を貫く磁束 $\phi_2$ の時間変化は $\boxed{\text{ア}}$ となる。ただし、 $\phi_1$、 $\phi_2$ の符号は図中のコイル1、2の面に垂直な矢印 $\mathrm{g_1}$、 $\mathrm{g_2}$ によって定義される。 $\mathrm{g_1}$、 $\mathrm{g_2}$ が磁束密度の向きと同じになるとき、 $\phi_1$、 $\phi_2$ は正の最大値をとるものとする。次に、この $\phi_1$、 $\phi_2$ の時間変化によりコイル1、コイル2に生じる起電力 $V_1$、 $V_2$ の時間変化を電磁誘導の法則から考えると、それぞれ $\boxed{\text{イ}}$、 $\boxed{\text{ウ}}$ となる。ただし、起電力は $R$ に電流 $I_1$、 $I_2$ を図2の矢印の向きに流そうとする向きを正とする。
(3) コイルに流れる誘導電流は磁束密度 $B$ の磁界から力を受ける。このとき、長さ $L$ の辺が受ける時間的に変化する力の最大値を $F\ [\mathrm{N}]$ とする。いま、回転体の周期を $n$ 倍に変化させて $nT\ [\mathrm{s}]$ とすると、力の最大値は $F’\ [\mathrm{N}]$ となった。 $F’$ を $F$ と $n$ を用いて書き表せ。
問2. 図5のように、平行板コンデンサーと起電力 $V\ [\mathrm{V}]$ の電池から構成される回路がある。コンデンサーの極板間には厚さ $d\ [\mathrm{m}]$ の金属板Mが上下の極板を完全にさえぎるように挿入されており、金属板と上下の極板との間隔はそれぞれ $2d\ [\mathrm{m}]$ と $d\ [\mathrm{m}]$ であった。これらのすき間は真空で、真空の誘電率を $\varepsilon_0\ [\mathrm{F/m}]$ とする。ただし、コンデンサーに挿入する前の金属板Mには、電荷が蓄えられていなかったものとする。また、極板の面積 $S\ [\mathrm{m^2}]$ はじゅうぶん広く、 $d$ はじゅうぶん小さいとする。
(1) 平行板コンデンサーの下側の極板と金属板Mとの間の静電容量 $C_1\ [\mathrm{F}]$ を $d$、 $S$、 $\varepsilon_0$ を用いて書き表せ。
(2) 平行板コンデンサーの静電容量 $C\ [\mathrm{F}]$ を $d$、 $S$、 $\varepsilon_0$ を用いて書き表せ。
(3) 金属板Mの上面に帯電している電気量 $Q_{\mathrm{M}}\ [\mathrm{C}]$ を $C_1$、 $V$ を用いて書き表せ。
(4) 平行板コンデンサーの極板に垂直な直線A—A′に沿った極板間の電界の強さを解答用紙のグラフに示せ。
(5) 上側の極板を金属板Mに近づけるように動かし、間隔を $2d\ [\mathrm{m}]$ から $d\ [\mathrm{m}]$ に減らした。この操作によって、平行板コンデンサーが蓄えている静電エネルギーが移動前に比べてどれだけ増えたかを、 $C_1$、 $V$ を用いて書き表せ。ただし、極板の移動後、じゅうぶん時間が経過しているとする。
解答の方針
【問1の方針】
磁束は面の法線 $\mathrm{g}$ と磁場のなす角で決まる。$\mathrm{g_2}$ は $\mathrm{g_1}$ より $\dfrac T4$ 遅れ、起電力は磁束のグラフの傾きに対応する(下の図)。


- (1):磁束が最大になるのは、面が磁場に垂直( $\mathrm{g}$ が磁場の向き)のとき。面積 $L\times2r$ から求める。
- ア: $\phi_1$ は (a)。2つのコイルは直交しているので $\mathrm{g_1}$ ・ $\mathrm{g_2}$ のなす角は $90^\circ$ で、図3 では $\mathrm{g_2}$ は $\mathrm{g_1}$ から回転と逆向きに $90^\circ$ の向き。つまり $\mathrm{g_2}$ は $\mathrm{g_1}$ より $\dfrac T4$ 遅れて磁場の向きを向くので、 $\phi_2$ は (a) を $\dfrac T4$ だけ右へずらしたグラフ。図4 の (a)〜(d) から選ぶ((e)〜(h) は周期が $T$ でない)。
- イ・ウ:起電力の正の向きは問題の指定(図2 の電流の矢印の向き)なので、図2 の端子のつながりから、正の向きが $\mathrm{g}$ に対して右ねじの向きと確かめる。そのうえで $V=-\dfrac{\Delta\phi}{\Delta t}$ より、磁束のグラフの傾きの符号を逆にしたグラフを $\phi_1$ ・ $\phi_2$ それぞれについて選ぶ。
- (3):磁束 → 起電力 → 電流 → 力の順にたどる。回転が遅くなると磁束の変化がゆるやかになり、起電力の最大値は $\omega$ に比例する。電流の最大値、力の最大値の順に周期との関係を求め、 $F’$ を $F$ と $n$ で表す。
【問2の方針】
金属板の中は電場が0なので、すき間の電場だけを考え、区間ごとの「電場×幅」の和が電位差 $V$ になる(下の図)。(5) は電池につないだままなので $V$ 一定。


- (1):下側のすき間だけを平行板コンデンサーと見て、間隔 $d$ ・面積 $S$ の容量の式を書く。
- (2):上の極板に $+Q$ があると、金属板の上面に $-Q$ 、下面に $+Q$ 、下の極板に $-Q$ が現れる(向かい合う面は同じ大きさで逆符号)ので、2つのすき間の電場は同じ大きさ $E=\dfrac{Q}{\varepsilon_0S}$ 。「電場×幅」の和 $=V$ から $E$ を求め、 $Q=\varepsilon_0SE$ より $C=\dfrac QV$ 。
- (3):上の極板の電気量 $CV$ と、向かい合う金属板の上面の電気量は同じ大きさで逆符号。上の極板の符号は電池の記号から決める。
- (4):上の極板から測った距離を横軸にして、電界の強さを区間ごとに書く(金属板の中は0)。
- (5):動かしたあとの容量を求める。電池につないだままなので $V$ 一定で、静電エネルギーは $V$ が分かっているので $\dfrac12CV^2$ の形で差を求める。
解答




解答をテキストで読む
問1 (1)
コイルの面積は $L\times2r$ 。磁束は面を垂直に貫く磁場の成分で決まるので、面が磁場に垂直( $\mathrm{g}$ が磁場の向き)のとき最大で、その値は $B\times(L\cdot2r)$ 。
答 $2BLr\ [\mathrm{Wb}]$(3点)
空欄ア〜ウ
角速度は $\omega=\dfrac{2\pi}{T}$ 。図3 で $\mathrm{g_1}$ の磁場の向きとのなす角を $\omega t$ とすると( $\phi_1$ が (a) になる時刻を $t=0$ とする)、 $\phi_1=2BLr\cos\omega t$ 。
ア: $\mathrm{g_2}$ は $\mathrm{g_1}$ から回転と逆向きに $90^\circ$ なので、磁場とのなす角は $\omega t-\dfrac\pi2$ 。 $\phi_2=2BLr\cos\left(\omega t-\dfrac\pi2\right)=2BLr\sin\omega t$ 。 $t=0$ で0、そこから増え、 $\dfrac T4$ で最大になるのは (b)。 $\phi_2$ は $\phi_1$ のグラフを $\dfrac T4$ だけ右へずらしたもの(下の図の上から2つ。(e)〜(h) は周期が $\dfrac T2$ なので除く)。
答(ア) (b)(3点)
イ・ウ:起電力の正の向きは「 $R$ に $I$ を図2 の矢印の向きに流そうとする向き」。コイル1 では $\mathrm{a’}$ から $R$ を通って $\mathrm{b’}$ へ流れるので、コイルの中は b から a へ流れる。これは b → 前の下の角 → 下の辺を奥へ → 奥の辺を上へ → 上の辺を手前へ → a と回る向きで、右ねじをあてると $\mathrm{g_1}$ の向き(下の図)。コイル2 も同じつなぎ方で $\mathrm{g_2}$ に対して右ねじの向き。つまり正の向きの起電力は $\mathrm{g}$ に対して右ねじの向きに電流を流そうとする向きで、ファラデーの法則の符号がそのまま使える。
$$V=-\dfrac{\Delta\phi}{\Delta t}$$
(磁束のグラフの傾きの符号を逆にしたもの)
・コイル1 : $\phi_1$ の傾きは $t=0$ で0、そこから負になり $\dfrac T4$ で最も負。 $V_1$ は0から増えて $\dfrac T4$ で正の最大。 $t=0$ で0から立ち上がる山なので (b)。
・コイル2 : $\phi_2$ の傾きは $t=0$ で正の最大。 $V_2$ は $t=0$ で負の最大から始まり、 $\dfrac T4$ で0。 $t=0$ で $-1$ から始まる (c)。
(a) の傾きの符号を逆にすると (b) 、(b) の傾きの符号を逆にすると (c) になる。起電力は磁束より $\dfrac T4$ 遅れるので、ア(磁束 $\phi_2$ )と イ(起電力 $V_1$ )が同じ (b) になっても不安にならない(別の量が、たまたま同じ形になっている)。
答(イ) (b)(4点)
答(ウ) (c)(4点)
問1 (3)
磁束 → 起電力 → 電流 → 力の順にたどる。起電力の最大値は、磁束の最大値と $\omega$ の積で
$$V_{\max}=\omega\cdot2BLr=\dfrac{4\pi BLr}{T}$$
電流の最大値は $I_{\max}=\dfrac{V_{\max}}{R}$ 。長さ $L$ の辺は磁場に垂直なので、受ける力の最大値は
$$F=I_{\max}BL=\dfrac{4\pi B^2L^2r}{RT}$$
$F$ は周期 $T$ に反比例する(回転が速いほど磁束の変化が速く、起電力・電流・力がどれも大きい)。周期が $nT$ になると
$$F’=\dfrac{4\pi B^2L^2r}{R\cdot nT}=\dfrac Fn$$
答 $F’=\dfrac Fn$(4点)
問2 (1)
下側のすき間(間隔 $d$ 、面積 $S$ )だけで平行板コンデンサーと見て
答 $C_1=\dfrac{\varepsilon_0S}{d}$(3点)
問2 (2)
金属板の中は電場が0。上の極板の電気量を $Q$ とすると、2つのすき間の電場は同じ大きさ $E=\dfrac{Q}{\varepsilon_0S}$ 。「電場×幅」の和が電池の電圧 $V$ に等しいので
$$E\cdot2d+E\cdot d=V\qquad\therefore\ E=\dfrac{V}{3d}$$
$Q=\varepsilon_0SE=\dfrac{\varepsilon_0S}{3d}V$ より、 $C=\dfrac QV$ 。
答 $C=\dfrac{\varepsilon_0S}{3d}$(4点)
問2 (3)
上の極板は電池の記号の長い線につながっているので正に帯電し、電気量は $Q=CV=\dfrac{C_1V}{3}$ ( $C=\dfrac{C_1}{3}$ )。向かい合う金属板の上面は同じ大きさで逆符号なので負。「電気量」を聞かれているので、負号まで書く。
答 $Q_{\mathrm M}=-\dfrac13C_1V$(5点)
問2 (4)
上の極板から測った距離を $x$ とする。電界の向きは上の極板から下の極板(下向き)で、向きを正とすると、強さは
・$0<x<2d$ :(2) の $E=\dfrac{V}{3d}$
・$2d<x<3d$ (金属板の中):0
・$3d<x<4d$ :同じ大きさの $\dfrac{V}{3d}$ (下のすき間は、金属板の下面の $+Q$ と下の極板の $-Q$ の間なので、上のすき間と同じ $E=\dfrac{Q}{\varepsilon_0S}$ )
確かめ:電位のグラフは、傾きの大きさが電界の強さ。上の極板の $V$ から $2d$ で $\dfrac V3$ まで下がり、金属板の中は $\dfrac V3$ で一定、下の極板の0へ下がる(下の図の下段)。 $\dfrac V{3d}\cdot2d=\dfrac{2V}{3}$ 、残り $\dfrac V3$ が下のすき間( $\dfrac V{3d}\cdot d$ )で合う。
答 上の図の中段( $0\sim2d$ と $3d\sim4d$ で高さ $\dfrac V{3d}$ 、金属板の中の $2d\sim3d$ で0。横軸は上の極板からの距離、縦軸は電界の強さ)(5点)
問2 (5)
電池につながったままなので、極板を動かしても両極板の電位差は $V$ のまま。動かしたあとはすき間が $d$ と $d$ で、金属板の中は電場が0なので、直列の2つのコンデンサー(それぞれ $C_1$ )と同じ。
$$C’=\dfrac{C_1}{2}$$
$V$ 一定なので、静電エネルギーは $\dfrac12CV^2$ 。動かす前は $C=\dfrac{C_1}{3}$ なので
$$\Delta U=\dfrac12\cdot\dfrac{C_1}{2}V^2-\dfrac12\cdot\dfrac{C_1}{3}V^2=\left(\dfrac14-\dfrac16\right)C_1V^2$$
答 $\dfrac1{12}C_1V^2$(5点)
別解
問1 (2) 式で確かめ
$\phi_1=\Phi_0\cos\omega t$ 、 $\phi_2=\Phi_0\sin\omega t$ ( $\Phi_0=2BLr$ )として $V=-\dfrac{\Delta\phi}{\Delta t}$ を作ると、 $V_1=\omega\Phi_0\sin\omega t$ 、 $V_2=-\omega\Phi_0\cos\omega t$ 。グラフで読んだ (b)(c) と一致する。式の形( $\sin$ か $\cos$ か、符号)でグラフを選べるので、傾きを読むのが苦手なときはこちらで確かめる。ただし「磁束のグラフの傾き=起電力」と結びつける癖は、磁束密度が時間で変わる問題(グラフが三角波のとき)でも使うので、グラフで読めるようにしておく。
問2 (2) 合成容量で
金属板で分けた2つのコンデンサー(間隔 $2d$ と $d$ )の直列と見て
$$\dfrac1C=\dfrac{2d}{\varepsilon_0S}+\dfrac{d}{\varepsilon_0S}=\dfrac{3d}{\varepsilon_0S}$$
本解の電場の解き方と同じ答えになる。ただし電場で解けるようにしておくと、(3)(4) のグラフと電気量がそのままつながる。
出題意図
問1 (1)〜(2) 回るコイルを貫く磁束を捉え、磁束のグラフの傾きから起電力のグラフを読み取ることができるか
問1 (3) 起電力 → 電流 → 力の流れをたどり、周期を変えたときの変化を捉えることができるか
問2 (1)〜(4) 金属板の入ったコンデンサーを、電場で解くことができるか
問2 (5) 電池につないだままの変化を捉え、静電エネルギーの変化を求めることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 40点 | 35点 |
| 目標時間 | 20分 | 25分 |
昔の九大に多いタイプの、電磁誘導(回るコイル)とコンデンサー(金属板)という電磁気の典型を組み合わせた大問。
電磁誘導は「磁束を式にする→ファラデーの法則で起電力(向きと大きさは別々)→電流→力」で、磁束のグラフの傾き=起電力と結びつけて読めるかが分かれ目。
コンデンサーは、金属板の中の電場を0として、電場×幅の和で電位差を出す。
医学科は満点、他学部も問2 (5) 以外は取って、時間を第1問に回したい。
差がつく所・失点しやすい所
- 問1 (2):まず ア で $\mathrm{g_2}$ が $\mathrm{g_1}$ より $\dfrac T4$ 遅れると読めるか。ここを越えれば、イ・ウ は「傾きの符号を逆にすると $\dfrac T4$ 遅れる」で選べる。 ア を $\phi_1$ と同じ向きにずらして (d) と読むと、 ウ まで続けて落ちる。
- 問2 (3):金属板の上面の電気量の符号を、上の極板が正(電池の長い線)であることから決められるか。大きさ $\dfrac13C_1V$ だけで答えると誤りになるおそれがある。
- 問2 (5):電池につないだままなので $V$ 一定。電気量一定( $Q$ 一定)と取り違えると $\dfrac1{12}C_1V^2$ にならない。
2006年九州大学物理
第3問 解答・解説
第3問は熱力学の問題です。
テーマは「単原子分子理想気体を、V-T グラフで与えられたサイクル(定圧圧縮 A→B → 定積加熱 B→C → 等温膨張 C→A)で変化させる。状態方程式と熱力学第一法則で各状態・各過程の量を求めたあと、C→A の代わりに断熱膨張させた状態Dの体積・温度を、断熱は等温より急という性質で比べる」。
問題


問題文をテキストで読む
$n\ [\mathrm{mol}]$ の単原子分子からなる理想気体がある。図6はこの気体の状態の変化を表しており、縦軸は体積 $V\ [\mathrm{m^3}]$、横軸は温度 $T\ [\mathrm{K}]$ で、原点Oは $T=0\ [\mathrm{K}]$、 $V=0\ [\mathrm{m^3}]$ である。状態Aの気体の温度は $T_0\ [\mathrm{K}]$、体積は $V_0\ [\mathrm{m^3}]$ である。過程A→Bでは直線AOにそって体積を $\dfrac35V_0\ [\mathrm{m^3}]$ まで変化させる。次に過程B→Cでは体積を一定に保って、温度を $T_0\ [\mathrm{K}]$ まで変化させる。最後に過程C→Aでは温度を一定にして状態Aに戻る。気体定数を $R\ [\mathrm{J/(mol\cdot K)}]$ として次の問いに答えよ。数式の解答は $n$、 $T_0$、 $V_0$、 $R$ を用いて表せ。過程の解答はA→Bのように答えよ。なお、気体の定積モル比熱は $\dfrac32R\ [\mathrm{J/(mol\cdot K)}]$ で与えられる。
問1. 状態Aにおける気体の圧力 $p_{\mathrm{A}}\ [\mathrm{N/m^2}]$ を求めよ。
問2. 状態Bにおける気体の温度 $T_{\mathrm{B}}\ [\mathrm{K}]$ を求めよ。
問3. 状態Cにおける気体の圧力 $p_{\mathrm{C}}\ [\mathrm{N/m^2}]$ を求めよ。
問4. 気体の内部エネルギー変化が正であるのはどの過程か。また、その変化量 $\Delta U\ [\mathrm{J}]$ を求めよ。
問5. 気体の内部エネルギー変化が0であるのはどの過程か。
問6. 気体が外部から仕事をされるのはどの過程か。また、その仕事の量 $W\ [\mathrm{J}]$ を求めよ。
問7. 気体が外部に熱を放出するのはどの過程か。また、その熱量 $Q\ [\mathrm{J}]$ を求めよ。
問8. C→Aの過程の代わりに、状態Cから気体を断熱的に変化させて、状態Aと同じ圧力になるようにした。この新しい状態をDとする。状態Dにおける気体の体積 $V_{\mathrm{D}}\ [\mathrm{m^3}]$ について次の中から正しい関係を選び、番号で答えよ。
① $V_{\mathrm{D}}<\dfrac35V_0$ ② $V_{\mathrm{D}}=\dfrac35V_0$ $\text{③}\ \dfrac35V_0<V_{\mathrm{D}}<V_0$ ④ $V_{\mathrm{D}}=V_0$ ⑤ $V_{\mathrm{D}}>V_0$
問9. 状態Dにおける気体の温度 $T_{\mathrm{D}}\ [\mathrm{K}]$ について次の中から正しい関係を選び、番号で答えよ。
① $T_{\mathrm{D}}<T_{\mathrm{B}}$ ② $T_{\mathrm{D}}=T_{\mathrm{B}}$ ③ $T_{\mathrm{B}}<T_{\mathrm{D}}<T_0$ ④ $T_{\mathrm{D}}=T_0$ ⑤ $T_{\mathrm{D}}>T_0$
解答の方針
【問1〜問7の方針】
「何が一定か」を読む。V-T グラフで原点を通る直線は定圧、水平は定積、縦は等温。仕事が面積で見える p-V 図に書き直して考える(下の図)。


- $pV=nRT$ を $V=\dfrac{nR}{p}T$ と見ると、圧力が一定なら V-T グラフは原点を通る直線になる。グラフから、A→B は定圧、B→C は定積、C→A は等温と読む。
- A に状態方程式を立てて $p_{\mathrm A}$ を求める(問1)。
- A→B は定圧なので、状態方程式から $V\propto T$。体積の比から $T_{\mathrm B}$ を求める(問2)。
- C に状態方程式を立てて $p_{\mathrm C}$ を求める(問3)。A・B・C の $(p,V,T)$ を p-V 図に書き込む。
- 過程ごとに、 $\Delta U$(温度の変化だけで決まる)・気体がした仕事 $W$(体積の増減)・吸収した熱 $Q=\Delta U+W$ の符号を表にまとめ、 $\Delta U$ が正の過程・0 の過程・された仕事・放出した熱の過程を読み取る(問4〜問7)。
- 問題が聞く量(された仕事・放出した熱量)は、最後に符号を直して求める。
【問8・問9の方針】
断熱は等温より急。C から圧力を $p_{\mathrm A}$ まで下げるとき、断熱は等温より小さな体積で済む。D は圧力 $p_{\mathrm A}$ の線上なので $V\propto T$(下の図)。


- p-V 図に、C を通る等温曲線(C→A)を書く。同じ C から断熱曲線(C→D)を書き足す。
- 等温では温度が一定なので圧力は体積に反比例して下がるが、断熱膨張では気体が仕事をした分だけ内部エネルギーが減って温度も下がり、圧力がさらに余計に下がる。断熱曲線は等温曲線より急なので、圧力 $p_{\mathrm A}$ に着く体積 $V_{\mathrm D}$ は $V_0$ より小さい。断熱膨張なので $V_{\mathrm D}$ は C の体積 $\dfrac35V_0$ より大きい(問8)。
- D は圧力 $p_{\mathrm A}$ の線の上で B と A の間にある。この線の上では $T\propto V$ なので、 $T_{\mathrm B}$ と $T_0$ の間に入る(問9)。
解答




解答をテキストで読む
問1
V-T グラフの A→B は原点を通る直線なので定圧、B→C は定積、C→A は等温。まず A に状態方程式を立てる(圧力 $p_{\mathrm A}$、体積 $V_0$、温度 $T_0$)。
$$p_{\mathrm A}V_0=nRT_0\qquad\therefore\ p_{\mathrm A}=\frac{nRT_0}{V_0}$$
答 $\dfrac{nRT_0}{V_0}$(4点)
問2
A→B は定圧で、圧力 $p_{\mathrm A}$ は一定。状態方程式 $p_{\mathrm A}V=nRT$ で $p_{\mathrm A}$・$n$・$R$ が一定なので、 $V\propto T$(V-T グラフで原点を通る直線にのっている)。A と B で体積と温度の比が等しいので
$$\frac{V_0}{T_0}=\frac{\frac35V_0}{T_{\mathrm B}}\qquad\therefore\ T_{\mathrm B}=\frac35T_0$$
答 $\dfrac35T_0$(4点)
問3
C の体積は $\dfrac35V_0$、温度は $T_0$。C に状態方程式を立てて、圧力を $p_{\mathrm C}$ とする。
$$p_{\mathrm C}\cdot\frac35V_0=nRT_0\qquad\therefore\ p_{\mathrm C}=\frac{5nRT_0}{3V_0}$$
答 $\dfrac{5nRT_0}{3V_0}$(4点)
(確かめ:C と A は同じ温度なので $pV$ が一定。 $p_{\mathrm C}\cdot\dfrac35V_0=p_{\mathrm A}V_0$ より $p_{\mathrm C}=\dfrac53p_{\mathrm A}$ で、上の答えと合う。p-V 図に書き直すと下の図になる)
問4
第一法則 $Q=\Delta U+W$($Q$ は吸収した熱、 $W$ は気体がした仕事)で、単原子分子の内部エネルギーの変化は温度の変化だけで決まる。 $\Delta U=\dfrac32nR\Delta T$ の $\Delta T$ は「後−前」。
・A→B:温度が $T_0$ から $\dfrac35T_0$ に下がるので $\Delta U<0$
・B→C:温度が $\dfrac35T_0$ から $T_0$ に上がるので $\Delta U>0$
・C→A:温度が変わらないので $\Delta U=0$
正になるのは B→C。
$$\Delta U=\frac32nR\left(T_0-\frac35T_0\right)=\frac35nRT_0$$
答 B→C、 $\Delta U=\dfrac35nRT_0$(5点)
問5
温度が変わらない過程(等温)が $\Delta U=0$ になる。問4 の表のとおり、C→A。
答 C→A(3点)
問6
気体が仕事をされるのは、体積が小さくなる(圧縮される)過程。A→B は $V_0$ から $\dfrac35V_0$ に減る。B→C は体積が変わらず仕事 0、C→A は体積が増えるので気体が仕事をする。されるのは A→B だけ。A→B は定圧なので、気体がした仕事は
$$W=p_{\mathrm A}\left(\frac35V_0-V_0\right)=-\frac25p_{\mathrm A}V_0=-\frac25nRT_0$$
問われているのは「された仕事」なので、符号を変えて正の値にする。p-V 図では、A→B の下の面積(下の図の色をつけた長方形)がされた仕事。
答 A→B、 $W=\dfrac25nRT_0$(5点)
問7
吸収した熱 $Q=\Delta U+W$ の符号を過程ごとに見る。
| 過程 | $\Delta U$ | 気体がした仕事 | 吸収した熱 $Q$ |
|---|---|---|---|
| A→B | 負 | 負 | 負(放熱) |
| B→C | 正 | 0 | 正(吸熱) |
| C→A | 0 | 正 | 正(吸熱) |
放出するのは $Q$ が負の A→B だけ。C→A は等温膨張で $\Delta U=0$ のまま気体が仕事をするので、その分を熱として吸収している($Q=W>0$)。
A→B は単原子分子の定圧変化なので、 $Q:\Delta U:W=5:3:2$。気体がした仕事は $-\dfrac25nRT_0$(問6)で、これが「2」にあたるので
$$Q_{\mathrm{AB}}=\frac52\times\left(-\frac25nRT_0\right)=-nRT_0$$
「放出する熱量」を聞かれているので、符号を変えて正の値にする。
答 A→B、 $Q=nRT_0$(5点)
各過程の熱の出入りと、A→B でされる仕事を図に表すと次のとおり。
問8
C から断熱膨張させて圧力を $p_{\mathrm A}$ まで下げた点が D。C を通る等温曲線を書くと、これが C→A で、圧力 $p_{\mathrm A}$ になるのは体積 $V_0$ のとき。断熱曲線は等温曲線より急なので、同じ圧力 $p_{\mathrm A}$ まで下がるのに、体積はそこまで増えない。したがって $V_{\mathrm D}<V_0$。一方、C から膨張しているので $V_{\mathrm D}>\dfrac35V_0$。
$$\frac35V_0<V_{\mathrm D}<V_0$$
答 ③(5点)
(確かめ:断熱変化は $pV^{5/3}$ が一定なので $p_{\mathrm C}\left(\dfrac35V_0\right)^{5/3}=p_{\mathrm A}V_{\mathrm D}^{5/3}$。 $p_{\mathrm C}=\dfrac53p_{\mathrm A}$ を入れると $V_{\mathrm D}=\dfrac35\left(\dfrac53\right)^{3/5}V_0\fallingdotseq0.82V_0$ で、たしかに $\dfrac35V_0$ と $V_0$ の間に入る)
問9
D は圧力が $p_{\mathrm A}$ の水平線の上にあり、この線の上には B(体積 $\dfrac35V_0$、温度 $T_{\mathrm B}$)と A(体積 $V_0$、温度 $T_0$)がある。圧力が同じなら $V\propto T$ なので、体積が B と A の間にある D は、温度も B と A の間。
$$T_{\mathrm B}<T_{\mathrm D}<T_0$$
答 ③(5点)
(確かめ:C から断熱膨張すると温度は下がるので $T_{\mathrm D}<T_0$。圧力は B と同じで体積は B より大きいので $T_{\mathrm D}>T_{\mathrm B}$。このどちらからも同じ結論になる。ポアソンの式で数値を求めると $T_{\mathrm D}\fallingdotseq0.82T_0$。 $T_{\mathrm B}=0.6T_0$ より高く、 $T_0$ より低い)
別解
問7(定圧の熱を $Q=\Delta U+W$ で1つずつ求める)
A→B の $\Delta U=\dfrac32nR\left(\dfrac35T_0-T_0\right)=-\dfrac35nRT_0$。気体がした仕事は $W=-\dfrac25nRT_0$(問6)。
$$Q_{\mathrm{AB}}=\Delta U+W=-\frac35nRT_0-\frac25nRT_0=-nRT_0$$
5:3:2 の比で求めた結果と一致する。単原子分子の定圧変化では、比を使えば簡単に済む。
問8・問9(ポアソンの式で数値を求める)
$V_{\mathrm D}=\dfrac35\left(\dfrac53\right)^{3/5}V_0\fallingdotseq0.82V_0$ を直接求めて、 $\dfrac35V_0=0.6V_0$ と $V_0$ の間に入ることを確かめる。温度は定圧の比例関係から $T_{\mathrm D}=\dfrac{V_{\mathrm D}}{V_0}T_0\fallingdotseq0.82T_0$。ただし $\left(\dfrac53\right)^{3/5}$ の値の見当が必要で、等温曲線と断熱曲線の図で大小を判断する方が速い。
出題意図
問1〜問3 V-T グラフを p-V 図に読み替え、状態方程式から各状態の温度・圧力を求めることができるか
問4〜問7 各過程の $\Delta U$・仕事・熱の符号を第一法則で押さえ、どの過程が何に当たるかを判定できるか
問8・問9 断熱は等温より急という性質を使って、断熱膨張後の体積・温度の大小を捉えることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 40点 | 35点 |
| 目標時間 | 15分 | 20分 |
九大の熱力学で最も点を取りやすい熱サイクル。
V-T グラフが出たら指示がなくても p-V 図に書き直し、状態方程式と第一法則を機械的に立てるだけで、問1〜問7 は終わる。
最後の断熱と等温の比べも、等温曲線を書き足して「断熱は等温より急」と読めば、計算はいらない。
V-T と p-V の書き換えは九大の熱力学で繰り返し出る型なので、白紙で再現できるまで練習して、満点を取りに行きたい。
差がつく所・失点しやすい所
- 問1〜問3:V-T グラフで「原点を通る直線=定圧」と読み、p-V 図に書き直せるか。ここで過程の種類を取り違えると、問4〜問7 がすべて崩れる。
- 問7:C→A(等温膨張)も熱を吸収していると気づき、放出する過程は A→B だけだと判定できるか。「温度が下がる A→B は放熱」とは言えても、等温の C→A を「熱の出入りなし」と思い込む受験生が出やすい。
- 問8:「C を通る等温曲線を書き足し、断熱は等温より急」という発想に行き着けるか。式で計算しにいくと、 $\left(\dfrac53\right)^{3/5}$ の見当がつかず手が進まない。
2006年九州大学・物理の
講評とまとめ
3問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 標準 | 40点 | 35点 |
| 第2問 | やや簡単 | 40点 | 35点 |
| 第3問 | やや簡単 | 40点 | 35点 |
| 全体 | やや簡単 | 115点 | 100点 |
大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で115点、その他の学部で100点)にはなりません。
全体としてはやや簡単な年で、第2問・第3問は典型の組み合わせ、第1問だけ運動を想像する力が問われました。
この年の合否を分けたのは第1問で、台に物体が乗ると振動の中心がずれ、速度が0の所が新しい端になる、という単振動の型と、振り子の半周期・台の1周期を時間軸で並べられるかが決め手でした。
第2問は、回るコイルの磁束をグラフにして傾きで起電力を読む電磁誘導の基本と、金属板を入れたコンデンサーを電場×幅の和で解く典型です。
第3問は、V-T グラフを p-V 図に書き直し、断熱は等温より急という見方で比べるだけの熱サイクルで、どの学部も満点を取りたい大問です。
解く流れ
第1問 → 第2問 → 第3問。
2006年九州大学・物理に
関するよくある質問
2006年の九州大学・物理について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2006年の九州大学・物理は難しかった?
-
やや簡単な年でした。
第1問は標準、第2問と第3問はやや簡単です。
第1問は台の上の物体の動きを想像できるかが問われ、この年の合否を分けた大問でした。
第2問は昔の九大に多い典型、第3問は熱サイクルの典型です。 - 2006年の九州大学・物理は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で115点、その他の学部で100点です(125点満点)。
- 2006年の九州大学・物理はどこで差がつく?
-
この年の合否を分けたのは第1問で、差がついたのは次の3つでした。
- 第1問 問1 イ・オ:物体が乗ると台の振動の中心が $\dfrac{mg}{k}$ ずれ、降りたあとは中心がもとにもどる、と台の振動の範囲を図に書けたか。
- 第1問 問2 (1):台が最も下がった瞬間は上下の速度が0なので、F での物体の速さは B と同じと気づき、「点 A と同じ高さまで上がる」と取り違えなかったか。
- 第1問 問2 (3):振り子の往復は半周期、台の一往復は1周期と、時間をそろえて立式できたか。
- 2006年の九州大学・物理は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:力学
- 第2問:電磁気
- 第3問:熱力学


