【解説・配点付き】2004年九州大学物理の解答・解説
2004年の九州大学・物理の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2004年九州大学物理
第1問 解答・解説
この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は力学の問題です。
テーマは「ばねで発射した小物体が、なめらかな斜面PQと円弧QRSを進み、摩擦のある斜面STを下って壁ではね返り、点Sで止まるまで。頂点Rを越えて点Sまで円弧から離れずに進むためのばねの縮みの範囲を求め、その範囲を使って最後に動摩擦係数の範囲を求める。問2 (1) は言葉で力を答える」。
問題


問題文をテキストで読む
図1に示すように、水平面PTと角度 $30^\circ$ をなす斜面PQ、半径 $r\ [\mathrm{m}]$ の円弧状の曲面QRS、および水平面と角度 $45^\circ$ をなす斜面STが継ぎ目なく連続した面PQRST上での、質量が $m\ [\mathrm{kg}]$ の小物体の運動を考える。斜面PQおよび円弧状の曲面QRSの部分は摩擦がなく滑らかであるが、右側の斜線で示した斜面STは動摩擦係数が $\mu'$ である摩擦のある面とする。円弧状の曲面は図のように水平面PTに接する円筒の一部であり、円弧の頂点Rから水平面PTに下ろした垂線と水平面の交点を $\mathrm{R'}$ とするとき、水平方向の距離 $\overline{\mathrm{PR'}}$、 $\overline{\mathrm{R'T}}$ はいずれも $r$ を用いて表され、それぞれ、 $\overline{\mathrm{PR'}}=(2+\sqrt3)r$、 $\overline{\mathrm{R'T}}=(1+\sqrt2)r$ である。小物体は十分小さいため、大きさを考える必要はなく、つねに面に接触して運動すると見なすことができる。重力加速度の大きさを $g\ [\mathrm{m/s^2}]$ とする。ただし、バネを縮める際の小物体の重力による位置エネルギーの変化は無視する。また空気の抵抗は無視できるものとする。
問1. 質量 $m$ の小物体を、バネ定数が $k\ [\mathrm{N/m}]$ で質量の無視できるバネに接触させ、バネが自然長のとき小物体がちょうどP点に位置するような支持台を設ける。バネを自然長から長さ $x_0\ [\mathrm{m}]$ だけ縮めたのちに、小物体を斜面PQに沿って発射させた。P点を通過するときの斜面に沿った方向の速度の大きさ $v_0\ [\mathrm{m/s}]$ を求めよ。
問2. 小物体が斜面PQに沿って上向きに運動を開始した後の運動について以下の問いに答えよ。解答はそれぞれ $\mu'$、 $m$、 $r$、 $g$、 $k$ の中から必要なものを用いて表せ。
(1) 斜面PQを上昇中に小物体に作用する力をすべて述べ、それらの大きさを示せ。
(2) 小物体が円弧の頂点Rを越えて運動するためには、バネを自然長よりある長さ縮めなければならない。その最小値を求めよ。
問3. 小物体が頂点Rを越えて点Sまで円弧の表面から離れることなく運動するためには、バネを自然長から縮める長さ $x_0$ について最大値が存在する。この最大値を求め、問2(2)の結果から得られる最小値とあわせて、 $x_0$ の満たすべき範囲を求めよ。解答は $x_0$、 $\mu'$、 $m$、 $r$、 $g$、 $k$ の中から必要なものを用いて表せ。
問4. 小物体が面から離れることなく円弧の頂点を越えて運動を続け、点Sに達した後の運動について、以下の問いに答えよ。ただし、斜面の下端T点では反発係数(はねかえり係数) $e$ の壁が、斜面に垂直に立っているものとする。解答は $x_0$、 $\mu'$、 $m$、 $r$、 $g$、 $k$、 $e$ の中から必要なものを用いて表せ。
(1) 小物体が点Sに達したときの小物体の速度の大きさ $v_{\mathrm{S}}\ [\mathrm{m/s}]$ を、 $x_0$ を含む式で表せ。
(2) 小物体が斜面STに沿って運動しT点で壁に衝突した。衝突直前の速度の大きさ $v_{\mathrm{T}}\ [\mathrm{m/s}]$ を、 $v_{\mathrm{S}}$ を含む式で表せ.さらに衝突直後の小物体の速度の大きさ、および壁が小物体に加えた力積の大きさを、それぞれ $v_{\mathrm{T}}$ を用いて表せ。
(3) 衝突後、斜面に沿って上向きに運動していた小物体が、ちょうどS点まで上昇して静止したとすれば、最初のバネの縮み $x_0$ はいくらであったか求めよ。また、特に $e=1$ である場合に、この運動が実現できるためには、斜面STの動摩擦係数 $\mu'$ はどのような範囲の値でなければならないか。
解答の方針
【問1の方針】
小物体はP点でばねから離れる。縮めたばねの弾性エネルギーが、そのままP点での運動エネルギーになる。
- ばねの力は保存力で、縮める間の重力による位置エネルギーの変化は無視してよい。力学的エネルギーを $E=K+U_k$ と書く(ばねの弾性エネルギー $U_k=\dfrac12kx^2$ )。
- 縮めたとき(速さ0)とP点(自然長)の力学的エネルギーを書き、等しいとおいて $v_0$ を求める。
【問2の方針】
(1) 「すべて述べ」なので、物体が何に触れているかから数える。垂直抗力は $mg$ と決めつけない。(2) 「越える」は、頂点で速さが残っていること。頂点Rの高さは図から読める(下の図)。


- 小物体にはたらく力を、重力 → 触れているもの(斜面)の順に書く。触れているのは斜面だけで、斜面はなめらか、ばねとはP点ですでに離れている。
- 斜面に垂直な方向は動かないことから、垂直抗力を求める((1))。
- 円弧は水平面に接する円の一部なので、頂点Rの高さは $2r$ 。ばねを縮めたときと頂点Rで力学的エネルギー保存を立て、Rでの速さの2乗を $x_0$ で表す。
- Rでの速さの2乗が正になる条件から $x_0$ の範囲を求め、その境目の値が最小値((2))。
【問3の方針】
外側(上に凸)の円弧では、傾きの急な所ほど垂直抗力 $N$ が小さく、最も離れやすい。範囲は「頂点を越える」と「S まで離れない」で両側から挟む。


- 離れるかどうかは垂直抗力 $N$ で決まる。傾きが急な所ほど重力の中心方向の成分 $mg\cos\varphi$ が小さく、しかも低くて速いので $N$ が小さい。傾きは Q が30°、S が45°。円弧の上の、鉛直から角 $\varphi$ の位置で、力学的エネルギー保存と中心方向の運動方程式 $N=mg\cos\varphi-m\dfrac{v^2}{r}$ を立てる。
- $mv^2$ を丸ごと代入して、垂直抗力 $N$ を $\varphi$ の式で求める。
- $N$ が最小になるのは S( $\varphi=45^\circ$ )と確かめ、S で $N\geqq0$ として $x_0$ の最大値を求める。
- 問2 (2) の最小値とあわせて、 $x_0$ の範囲を書く。
【問4の方針】
摩擦のある斜面は、最初と最後を比べる $W=\Delta E$ で解く。(3) の「実現できる」は、前の小問の範囲に入れるだけ。


- ばねを縮めたときと点Sで力学的エネルギー保存を立て、 $v_{\mathrm S}$ を求める((1))。
- 点Sから点Tまでの $W=\Delta E$ から $v_{\mathrm T}$ を求める((2))。
- 壁は斜面に垂直なので、衝突で変わるのは斜面にそった速度だけ(面に垂直な成分だけ $e$ 倍になって逆向き)。衝突の直後の速さを $e$ 倍で求め、力積を運動量の変化から求める((2))。
- 上りの点Tから点Sまでの $W=\Delta E$ に、(1)(2) の結果を入れて $x_0$ を求める((3))。
- 「この運動が実現できる」とは、最初に頂点Rを越えて点Sまで離れずに進めること、つまり問3 の範囲に入っていること。新しい条件は作らず、 $e=1$ の $x_0$ を問3 の範囲に入れて、 $\mu'$ の範囲を求める((3))。
解答




解答をテキストで読む
問1
力学的エネルギーを $E=K+U_k$ とおく。ばねの力は保存力で、縮める間の重力による位置エネルギーの変化は無視してよい。縮めたとき(速さ0)とP点(自然長)を比べる。
$$\frac12kx_0^2=\frac12mv_0^2$$
答 $v_0=x_0\sqrt{\dfrac km}$(4点)
問2 (1)
力は「重力 → 触れているもの」の順に書く。小物体が触れているのは斜面だけで、斜面はなめらかなので摩擦はない。ばねとは、P点で離れている。はたらく力は、重力と垂直抗力の2つ。
垂直抗力 $N$ は、斜面に垂直な方向が動かないことから、重力の斜面に垂直な成分とつり合う。
$$N-mg\cos30^\circ=0$$
答(重力) $mg$(鉛直下向き)(2点)
答(垂直抗力) $\dfrac{\sqrt3}{2}mg$(斜面に垂直で、斜面から離れる向き)(2点)
(斜面に平行な方向には、重力の成分 $mg\sin30^\circ=\dfrac12mg$ だけがはたらき、上昇する小物体を減速させるが、これは重力を分けた成分で、別の力ではない)
問2 (2)
頂点Rの高さは、円の最上点なので $2r$ 。ばねを縮めたときと頂点Rを比べる。斜面PQと円弧は摩擦がなく、垂直抗力は運動の向きと垂直で仕事をしないので、力学的エネルギーは保存する。Rでの速さを $v_{\mathrm R}$ として
$$\frac12kx_0^2=\frac12mv_{\mathrm R}^2+mg\cdot2r\qquad\therefore\ v_{\mathrm R}^2=\frac kmx_0^2-4gr$$
頂点Rを「越えて」運動するには、Rで速さが残っていること。ちょうど0ならRで止まって越えないので、 $v_{\mathrm R}^2>0$ 。
$$\frac kmx_0^2-4gr>0\qquad\therefore\ x_0>2\sqrt{\frac{mgr}{k}}$$
答 $2\sqrt{\dfrac{mgr}{k}}$(5点)
(ちょうどこの値では R で止まるので、越えるのは $x_0$ がこの値より大きいとき、聞かれているのは最小値なので、境目の値を答える)
問3
円弧の上の、鉛直から角 $\varphi$ の位置で立式する。円の中心Oの高さは $r$ なので、この位置の高さは $r(1+\cos\varphi)$ 。基準はP点の高さとする。力学的エネルギー保存は
$$\frac12kx_0^2=\frac12mv^2+mgr(1+\cos\varphi)\qquad\cdots①$$
中心方向の運動方程式は、中心向きを正として、外側をすべるので重力の中心方向の成分 $mg\cos\varphi$ が中心向き、垂直抗力 $N$ が中心から遠ざかる向き。
$$m\frac{v^2}{r}=mg\cos\varphi-N\qquad\cdots②$$
② から $mv^2=r(mg\cos\varphi-N)$ 。これを ① に丸ごと代入して
$$\frac12kx_0^2=\frac12r(mg\cos\varphi-N)+mgr(1+\cos\varphi)$$
$$\therefore\ N=mg(2+3\cos\varphi)-\frac{kx_0^2}{r}$$
円弧は Q( $\varphi=-30^\circ$ )から S( $\varphi=45^\circ$ )まで。 $N$ は $\cos\varphi$ が小さいほど小さい。 $\cos\varphi$ は $\varphi=0$ で最大で、傾きが急な所ほど小さいので、Q( $\cos30^\circ$ )より S( $\cos45^\circ$ )の方が小さい。最も離れやすいのは S(下の図)。
S まで離れない条件は、S で $N\geqq0$ ( $N=0$ は離れる直前で、まだ接している)。
$$mg\left(2+\frac{3}{\sqrt2}\right)-\frac{kx_0^2}{r}\geqq0\qquad\therefore\ x_0^2\leqq\left(2+\frac{3\sqrt2}{2}\right)\frac{mgr}{k}=\frac{(4+3\sqrt2)mgr}{2k}$$
答(最大値) $\sqrt{\dfrac{(4+3\sqrt2)mgr}{2k}}$(6点)
問2 (2) の最小値とあわせて、頂点を越える(下から)と S まで離れない(上から)で挟む。
答(範囲) $2\sqrt{\dfrac{mgr}{k}}<x_0\leqq\sqrt{\dfrac{(4+3\sqrt2)mgr}{2k}}$(4点)
(左端は「越える」ので等号なし、右端は「離れることなく」なので等号あり、 $\mu'$ は答えに入らず、この範囲は、摩擦のないPQRSの部分だけで決まる)
問4 (1)
点Sの高さを求める。斜面STは円弧に接しているので、点Sで半径OSは斜面STに垂直。斜面STは水平面と $45^\circ$ なので、OSは鉛直と $45^\circ$ をなす。点Sの高さは
$$r(1+\cos45^\circ)=\frac{2+\sqrt2}{2}r$$
ばねを縮めたときと点Sで力学的エネルギー保存を立てる。
$$\frac12kx_0^2=\frac12mv_{\mathrm S}^2+mg\cdot\frac{2+\sqrt2}{2}r\qquad\therefore\ v_{\mathrm S}^2=\frac kmx_0^2-(2+\sqrt2)gr$$
答 $v_{\mathrm S}=\sqrt{\dfrac kmx_0^2-(2+\sqrt2)gr}$(4点)
問4 (2)
斜面STの長さは、点Tから円に引いた接線の長さが等しいので $\overline{\mathrm{ST}}=\overline{\mathrm{R'T}}=(1+\sqrt2)r$ 。点Tは水平面の上なので、点Sとの高さの差は点Sの高さ $\dfrac{2+\sqrt2}{2}r$ ( $=(1+\sqrt2)r\sin45^\circ$ )。
斜面に垂直な方向のつり合いから、垂直抗力は $N=mg\cos45^\circ=\dfrac{mg}{\sqrt2}$ 、動摩擦力は $\mu'N=\dfrac{\mu'mg}{\sqrt2}$ 。摩擦の仕事は、進行方向と逆なので負で
$$-\frac{\mu'mg}{\sqrt2}(1+\sqrt2)r=-\mu'mg\cdot\frac{2+\sqrt2}{2}r$$
摩擦が仕事をするので $W=\Delta E$ ( $W=E_後-E_前$ )。点Tの高さを基準にして、点Sと点Tを比べる。
$$-\mu'mg\cdot\frac{2+\sqrt2}{2}r=\frac12mv_{\mathrm T}^2-\left(\frac12mv_{\mathrm S}^2+mg\cdot\frac{2+\sqrt2}{2}r\right)$$
$$\therefore\ v_{\mathrm T}^2=v_{\mathrm S}^2+(2+\sqrt2)(1-\mu')gr$$
答 $v_{\mathrm T}=\sqrt{v_{\mathrm S}^2+(2+\sqrt2)(1-\mu')gr}$(4点)
壁は斜面に垂直に立っているので、衝突で変わるのは斜面にそった速度だけ。反発係数 $e$ から、速さは $e$ 倍になって向きが逆になる。
答(直後の速さ) $ev_{\mathrm T}$(2点)
力積は運動量の変化。壁が小物体に加える力は斜面上向きなので、上向きを正とする。衝突の直前の速度は $-v_{\mathrm T}$ 、直後は $+ev_{\mathrm T}$ 。
$$I=m(ev_{\mathrm T})-m(-v_{\mathrm T})=m(1+e)v_{\mathrm T}$$
答(力積の大きさ) $m(1+e)v_{\mathrm T}$(2点)
問4 (3)
先に見通しを言う。「この運動が実現できる」とは、最初に頂点Rを越えて点Sまで離れずに進めること、つまり問3 の範囲に $x_0$ が入っていること。新しい条件は作らない。まず $x_0$ を求め、 $e=1$ のときの値を問3 の範囲に入れる。
衝突のあと、速さ $ev_{\mathrm T}$ で斜面を上り、ちょうど点Sで速さ0になる。上りも $W=\Delta E$ 。上りは重力も摩擦も運動と逆向きで、どちらも減速させる。摩擦の仕事は下りと同じ $-\mu'mg\cdot\dfrac{2+\sqrt2}{2}r$ 。点Tの高さを基準にして、衝突直後と点Sを比べる。
$$-\mu'mg\cdot\frac{2+\sqrt2}{2}r=mg\cdot\frac{2+\sqrt2}{2}r-\frac12m(ev_{\mathrm T})^2\qquad\therefore\ e^2v_{\mathrm T}^2=(2+\sqrt2)(1+\mu')gr$$
(1)(2) の結果から $v_{\mathrm T}^2=\dfrac kmx_0^2-(2+\sqrt2)gr+(2+\sqrt2)(1-\mu')gr=\dfrac kmx_0^2-(2+\sqrt2)\mu'gr$ 。これを入れて
$$e^2\left\{\frac kmx_0^2-(2+\sqrt2)\mu'gr\right\}=(2+\sqrt2)(1+\mu')gr$$
$$\therefore\ x_0^2=\frac{(2+\sqrt2)(1+\mu'+\mu'e^2)mgr}{ke^2}$$
答(縮み) $x_0=\sqrt{\dfrac{(2+\sqrt2)(1+\mu'+\mu'e^2)mgr}{ke^2}}$(5点)
$e=1$ のとき $kx_0^2=(2+\sqrt2)(1+2\mu')mgr$ 。これを問3 の範囲 $\dfrac{4mgr}{k}<x_0^2\leqq\dfrac{(4+3\sqrt2)mgr}{2k}$ に入れる。
$$4<(2+\sqrt2)(1+2\mu')\leqq\frac{4+3\sqrt2}{2}$$
左側: $1+2\mu'>\dfrac{4}{2+\sqrt2}=\dfrac{4(2-\sqrt2)}{2}=4-2\sqrt2$ より $\mu'>\dfrac{3-2\sqrt2}{2}$ 。
右側: $1+2\mu'\leqq\dfrac{4+3\sqrt2}{2(2+\sqrt2)}=\dfrac{(4+3\sqrt2)(2-\sqrt2)}{4}=\dfrac{1+\sqrt2}{2}$ より $\mu'\leqq\dfrac{\sqrt2-1}{4}$ 。
答(動摩擦係数の範囲) $\dfrac{3-2\sqrt2}{2}<\mu'\leqq\dfrac{\sqrt2-1}{4}$(5点)
(左端は「越える」ので等号なし、右端は「離れない」ので等号あり)
別解
問3 (遠心力を入れて) 小物体に乗って見ると、重力の中心方向の成分 $mg\cos\varphi$ 、垂直抗力 $N$ 、遠心力 $m\dfrac{v^2}{r}$ がつり合う。
$$N+m\frac{v^2}{r}=mg\cos\varphi$$
式 ② を移項しただけで、同じ式。遠心力を図に書き込む教え方もあるが、本解は書き込まなくてよい運動方程式の形にした。
問3 (S での速さで) S で離れない条件 $N\geqq0$ は、中心方向の運動方程式から $m\dfrac{v_{\mathrm S}^2}{r}\leqq mg\cos45^\circ$ 、つまり $v_{\mathrm S}^2\leqq\dfrac{gr}{\sqrt2}$ 。 $v_{\mathrm S}^2=\dfrac kmx_0^2-(2+\sqrt2)gr$ (問4 (1))を入れると
$$\frac kmx_0^2-(2+\sqrt2)gr\leqq\frac{gr}{\sqrt2}\qquad\therefore\ x_0^2\leqq\frac{(4+3\sqrt2)mgr}{2k}$$
同じ答え。一般の角 $\varphi$ で $N$ を求める本解は、どの位置が最も離れやすいかも同時に見える形にした。
出題意図
問1 ばねの弾性エネルギーが運動エネルギーに変わることを捉えて、P点での速さを求めることができるか
問2 (1)(2) 斜面の上の物体にはたらく力を過不足なく挙げ、頂点を越える条件を速さの2乗で捉えることができるか
問3 外側の円弧をすべる物体が、どこで最も離れやすいかを見抜き、「越える」条件と「離れない」条件で縮みの範囲を挟むことができるか
問4 (1)〜(3) 摩擦のある斜面と壁との衝突を $W=\Delta E$ と反発係数で追い、最後に前の小問の範囲を使って動摩擦係数の範囲を求めることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 40点 | 35点 |
| 目標時間 | 25分 | 25分 |
円運動は力学的エネルギー保存と中心方向の運動方程式の2本を立てる、という決まった流れで解ける大問。
この年の合否を分けた大問。
決め手は問3で、外側をすべる物体は速くなるほど面から離れ、傾きの急な S から離れる、と運動を想像できるかどうか。
問4 (3) は新しい条件を作らず、問3 の範囲に $x_0$ を入れて両側から挟むだけ。
名問の森の円運動が白紙から再現できれば解けるので、医学科は満点−5点を目標に、$\sqrt2$ の入った計算を取り切りたい。
差がつく所・失点しやすい所
- 問3:外側をすべる物体は、上に凸の傾きの急な所、つまり S から離れると見抜き、S で $N\geqq0$ と立てられるか。ここを越えないと、問4 (3) の $\mu'$ の範囲まで続かない。
- 問4 (3):「この運動が実現できる」を「問3 の範囲に入っている」と読みかえ、前の答えを入れるだけだと気づけるか。 $\sqrt2$ の入った計算が長いので、有理化まで確実に進める。
コラム 外側をすべる物体が離れる場所の見つけ方
問3 は、「外側(上に凸)の面をすべる物体が、どこで離れるか」という型でできている。


- 考え方:速さは、下るほど増える。一方、面に押しつける重力の成分 $mg\cos\varphi$ は、傾きが急になるほど減る。だから垂直抗力 $N=mg\cos\varphi-m\dfrac{v^2}{r}$ は、傾きが急な所ほど小さい。
- 見当のつけ方:上に凸の面では、速く傾きの急な所から離れる。図の Q と S なら傾きの急な S。見当をつけたら、その点で $N\geqq0$ を立てる。
- 範囲の作り方:頂点を越える(下から)と、S まで離れない(上から)の2つの不等式で、ばねの縮みを両側から挟む。2004年は、縮み $x_0$ が $2.00\sqrt{\dfrac{mgr}{k}}$ から $2.03\sqrt{\dfrac{mgr}{k}}$ の間のごく狭い範囲。
外側をすべる物体は、傾きの急な所を見当にして、その点で $N\geqq0$ と立てる。
2004年九州大学物理
第2問 解答・解説
第2問は電磁気の問題です。
テーマは「鉛直に立てたレールを落ちる導体棒。コンデンサーにつなぐと加速度が一定(等加速度運動)になり、抵抗につなぐと一定の速さになる。さらに磁場がレールの面から傾いているので、棒がレールに押しつけられ、動摩擦力が電流に比例する。終端速度での電力の収支(位置エネルギーの減少=ジュール熱+摩擦の熱)まで確かめる」。
問題


問題文をテキストで読む
図2に示すように、長さ $2h\ [\mathrm{m}]$ の2本の導体のレールを間隔 $d\ [\mathrm{m}]$ で平行に並べ垂直に立てる。レールの上端(点ア、イ)を原点として、鉛直下向きに $x$ 軸をとる(単位 $[\mathrm{m}]$)。このレールに、質量 $m\ [\mathrm{kg}]$ の導体棒を両端が点ウ、エでレールに接して水平を保ちながら動けるように取り付けた。レールの上半分 $(0\leqq x\leqq h)$ は滑らかで摩擦はないが、下半分 $(h\leqq x\leqq2h)$ ではレールと導体棒の間の動摩擦係数は $\mu'$ である。レールには、スイッチSを介して電気容量 $C\ [\mathrm{F}]$ のコンデンサーまたは抵抗値 $R\ [\Omega]$ の抵抗が接続できるようになっており、磁束密度の大きさが $B\ [\mathrm{T}]$ の一様な磁界が図のように加えられている。ただし磁界の向きは、2本のレールを含む鉛直平面に直交する方向から角度 $\theta\ [\mathrm{rad}]$ だけ上向きに傾いている。最初にスイッチSを初期電気量0のコンデンサーに接続した状態で導体棒をレールの上部 $(x=0)$ から初速度0で落下させた。導体棒がレールの中間点 $(x=h)$ に達した瞬間にスイッチSをコンデンサーから切り離し、抵抗 $R$ に接続した。
重力加速度の大きさを $g\ [\mathrm{m/s^2}]$ とし、導体棒に作用する空気抵抗や回路に流れる電流による磁界は無視できるものとして、以下の問いに答えよ。
問1. レールがコンデンサーCに接続されている区間 $(0\leqq x\leqq h)$ について
(1) 導体棒の落下速度を $v\ [\mathrm{m/s}]$、加速度を $a\ [\mathrm{m/s^2}]$、導体棒に流れる電流を $I\ [\mathrm{A}]$ とするとき、 $x$ 方向(鉛直方向)の運動方程式を $I$ を含む式で表せ。
(2) 四角形アイウエを垂直に貫く磁束の大きさ $\Phi\ [\mathrm{Wb}]$ を $x$ を含む式で表せ。
(3) コンデンサーに蓄えられる電気量 $Q\ [\mathrm{C}]$ を導体棒の落下速度 $v$ を含む式で表せ。
(4) 導体棒を流れる電流 $I$ を $C$、 $a$ を含む式で表せ。
(5) (1)、(4)の結果を用いると、加速度 $a$ が重力加速度の大きさ $g$ に比例することを示すことができる。その比例定数を求めよ。
問2. レールが電気抵抗 $R$ に接続されている区間 $(h\leqq x\leqq2h)$ について
(1) 導体棒の落下速度を $v$、加速度を $a$ とするとき、 $x$ 方向(鉛直方向)の運動方程式を $R$、 $v$、 $B$ を含む式で表せ。
(2) ある時間が経過した後、導体棒の落下速度 $v$ は $v_0$ で一定になった。 $v_0$ を求めよ。
(3) 導体棒の落下速度が $v_0$ で一定になった後に、電気抵抗 $R$ で消費される電力 $P_1$ と導体棒を摩擦力に抗して動かすのに必要な仕事率 $P_2$ を $v_0$ を含む式で表せ。
(4) 導体棒の位置エネルギーの単位時間あたりの変化は、(3)で求めた $P_1$ と $P_2$ の和に等しくなることを、導体棒の落下速度が $v_0$ で一定になった場合について示せ。
解答の方針
【問1の方針】
起電力に効くのは、磁場のうちレールの面に垂直な成分 $B\cos\theta$ だけ。鉛直な成分 $B\sin\theta$ は棒を横切らない(下の図)。


- 電流が磁場から受ける力のうち、鉛直な成分を求める。鉛直下向きに運動方程式を立てる((1))。
- 磁束を「面に垂直な磁場の成分×面積」で表す((2))。
- 棒が落ちると棒を貫く磁束が増えて起電力が生じる。抵抗がないので、棒の起電力(磁束の変化の割合)がそのままコンデンサーの電圧になる。電気量を求める((3))。
- 電流は電気量の時間変化 $I=\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}$ に戻って求める。電気量が速度に比例するので、変わるのは $v$ だけ。加速度 $a$ で表す((4))。
- (1) と (4) から $I$ を消し、 $a$ を $g$ で表して比例定数を読む。比例定数が一定なので等加速度になる((5))。
【問2の方針】
レールは鉛直なので、重力は垂直抗力を生まない。棒がレールを押す原因は、磁場の力の水平成分 $IBd\sin\theta$ だけ(下の図)。


- 起電力を抵抗 $R$ にかけて、電流 $I$ を $v$ で表す。
- 水平方向のつり合いから垂直抗力 $N$ を $I$ で表し、動摩擦力 $\mu'N$ を求める。動摩擦力は $\mu'mg$ ではなく、電流に比例する。
- 鉛直下向きに運動方程式を立て、 $I$ を入れる((1))。
- 一定の速さは $a=0$ 、つまり力のつり合いなので、(1) から $v_0$ を求める((2))。
- 電力 $P_1=RI^2$、仕事率 $P_2=$(摩擦力)×(速さ)を $v_0$ で表す((3))。
- 運動エネルギーが一定のとき、失った位置エネルギーが熱に変わる。 $P_1+P_2$ を $v_0$ で表し、(2) の関係で $mg$ に置きかえて、位置エネルギーの減少の割合 $mgv_0$ と比べる((4))。
解答




解答をテキストで読む
問1 (1)
棒には電流 $I$ が流れ、磁場から力を受ける。力の大きさは $IBd$ で、向きは磁場と棒の両方に垂直。磁場を2つの成分に分けて考えると、 $B\cos\theta$ の成分からは鉛直上向きに $IBd\cos\theta$(落下を妨げる向き)、 $B\sin\theta$ の成分からは水平に $IBd\sin\theta$ の力を受ける(90°違う力は sin と cos が入れかわる)。上半分はレールがなめらかなので、水平の力はレールからの垂直抗力 $N$ とつり合うだけで、運動には関係しない(下の図)。
鉛直下向き($x$ の正の向き)の力は、重力 $mg$ と上向きの $IBd\cos\theta$ だけ。運動方程式の理由:鉛直方向に動くので、鉛直方向の力で $ma$ を立てる。
$$ma=mg-IBd\cos\theta$$
答 $ma=mg-IBd\cos\theta$(4点)
問1 (2)
四角形アイウエの面積は $dx$。磁束は「面に垂直な磁場の成分×面積」なので、 $B\cos\theta$ を使う(鉛直な成分 $B\sin\theta$ は面を貫かない)。
答 $\varPhi=Bdx\cos\theta$(4点)
問1 (3)
棒が $\Delta t$ の間に $\Delta x$ だけ落ちると、磁束の変化は $\Delta\varPhi=Bd\cos\theta\,\Delta x$。起電力は $\left|\dfrac{\Delta\varPhi}{\Delta t}\right|=Bd\cos\theta\cdot\dfrac{\Delta x}{\Delta t}=vBd\cos\theta$。回路に抵抗がないので、この起電力がそのままコンデンサーの電圧になる(棒を起電力 $vBd\cos\theta$ の電池と見る、下の図)。
$Q=CV$ より
答 $Q=CvBd\cos\theta$(4点)
問1 (4)
電流は電気量の時間変化なので、定義に戻る。 $C$、 $B$、 $d$、 $\theta$ は一定で、時間とともに変わるのは $v$ だけ。
$$I=\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}=CBd\cos\theta\cdot\dfrac{\Delta v}{\Delta t}=CBd\cos\theta\cdot a$$
答 $I=CBda\cos\theta$(4点)
問1 (5)
(4) を (1) に入れる。
$$ma=mg-CB^2d^2a\cos^2\theta\qquad\therefore\ \left(m+CB^2d^2\cos^2\theta\right)a=mg$$
$$a=\dfrac{m}{m+CB^2d^2\cos^2\theta}\,g$$
答 $\dfrac{m}{m+CB^2d^2\cos^2\theta}$(5点)
比例定数は $m$、 $C$、 $B$、 $d$、 $\theta$ だけで決まる一定の値。加速度が一定なので、棒は等加速度運動で落ちる(自由落下の $g$ より小さい加速度で、下の図)。電流 $I$ も一定になる。
問2 (1)
$x=h$ で抵抗につなぎかえたあと、速さ $v$ で落ちる棒の起電力は $vBd\cos\theta$(問1 (3) と同じ)。抵抗 $R$ に流れる電流は
$$I=\dfrac{vBd\cos\theta}{R}$$
棒が受ける力を、重力から順に整理する(下の図)。磁場の力は問1 (1) と同じで、鉛直上向きに $IBd\cos\theta$、水平に $IBd\sin\theta$。レールは鉛直なので、重力はレールの面に平行で、レールを押す成分を持たない。したがって水平方向のつり合いから、垂直抗力は
$$N=IBd\sin\theta$$
下半分では動摩擦力がはたらく。棒は下向きに動くので、向きは上向きで、大きさは $\mu'N=\mu'IBd\sin\theta$($\mu'mg$ ではない)。
鉛直下向きに運動方程式を立てる。
$$ma=mg-IBd\cos\theta-\mu'IBd\sin\theta=mg-IBd\left(\cos\theta+\mu'\sin\theta\right)$$
$I$ を入れると
答 $ma=mg-\dfrac{vB^2d^2\cos\theta}{R}\left(\cos\theta+\mu'\sin\theta\right)$(7点)
問2 (2)
一定の速さ $v_0$ は加速度 $0$ なので、力がつり合う。(1) で $a=0$、 $v=v_0$ とする。
$$mg=\dfrac{v_0B^2d^2\cos\theta}{R}\left(\cos\theta+\mu'\sin\theta\right)$$
答 $v_0=\dfrac{mgR}{B^2d^2\cos\theta\left(\cos\theta+\mu'\sin\theta\right)}$(4点)
($v<v_0$ なら $a>0$ で速くなり、 $v>v_0$ なら $a<0$ で遅くなるので、速さは $v_0$ に近づいていく。)
問2 (3)
$v_0$ のときの電流を $I_0=\dfrac{v_0Bd\cos\theta}{R}$ とする。抵抗で消費される電力は $RI_0^2$。まず $P_1$ から。
答 $P_1=\dfrac{\left(v_0Bd\cos\theta\right)^2}{R}$(3点)
摩擦力に抗して動かすのに必要な仕事率は、(摩擦力の大きさ)×(速さ)。摩擦力の大きさは $\mu'N=\mu'I_0Bd\sin\theta$ で、速さは $v_0$。
$$P_2=\mu'I_0Bd\sin\theta\cdot v_0$$
$I_0$ を入れて
答 $P_2=\dfrac{\mu'v_0^2B^2d^2\sin\theta\cos\theta}{R}$(5点)
問2 (4)
運動エネルギーは一定なので、失った位置エネルギーが、ジュール熱と摩擦の熱になる(下の図)。位置エネルギーの単位時間あたりの変化は、1秒間に $v_0$ だけ落ちるので $mgv_0$ 。これが $P_1+P_2$ に等しいことを示す。
(3) の2つを足す。
$$P_1+P_2=\dfrac{v_0^2B^2d^2\cos\theta\left(\cos\theta+\mu'\sin\theta\right)}{R}=v_0\times\dfrac{v_0B^2d^2\cos\theta\left(\cos\theta+\mu'\sin\theta\right)}{R}$$
(2) の関係より、右辺の分数は $mg$ に等しい。したがって
$$P_1+P_2=mgv_0$$
これは位置エネルギーの単位時間あたりの変化 $mgv_0$ に等しい。($v_0$ に (2) を入れて $v_0$ を消そうとすると計算が重くなるので、 $mg$ の方に置きかえる向きで進める。)
答 $P_1+P_2=mgv_0$(位置エネルギーの単位時間あたりの変化に等しい)(5点)
別解
問2 (4) 力のつり合いの式に $v_0$ をかける
(2) の力のつり合いは、 $mg=I_0Bd\cos\theta+\mu'I_0Bd\sin\theta$。両辺に $v_0$ をかける。
$$mgv_0=I_0Bd\cos\theta\cdot v_0+\mu'I_0Bd\sin\theta\cdot v_0$$
第1項は $I_0\cdot\left(v_0Bd\cos\theta\right)=I_0\cdot RI_0=RI_0^2=P_1$。第2項は $P_2$。したがって $mgv_0=P_1+P_2$。力×速さ=仕事率の見方で、各項がそのままエネルギーの行き先に対応する。
出題意図
問1 (1)〜(5) 傾いた磁場のうち、棒の運動に効く成分を見分けて、コンデンサーにつながる棒が等加速度になることを導けるか
問2 (1)〜(4) 鉛直なレールでは摩擦の原因が磁場の力の水平成分だけであることに気づき、一定の速さと電力の収支まで求められるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 40点 | 35点 |
| 目標時間 | 25分 | 25分 |
電磁誘導の導体棒は、コンデンサーがつけば等加速度、抵抗がつけば一定の速さ、という決まった流れがある大問。
この年はそこに、磁場が傾いているので棒がレールに押しつけられ、摩擦が電流に比例するという一ひねりが入った。
レールは鉛直なので重力は垂直抗力を生まず、押しつける力は磁場の力の水平成分だけ、と断面の図に力を全部書き込んで想像できれば難しくない。
問2 (1) で摩擦を $\mu'mg$ としてしまうと (2)〜(4) まで続けて落とすので、医学科は満点−5点を目標に。
公式の $vBd$ に頼るのは、ファラデーの法則から導けるようになってからにして、まず磁場を分ける癖をつけたい。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2 (1):レールが鉛直なので重力は垂直抗力を生まない、棒がレールに押しつけられる原因は磁場の力の水平成分 $IBd\sin\theta$ だけ、という発想に行き着けるか。ここを越えないと (2)(3)(4) が続かない。
- 問1 (1)(2):傾いた磁場を面に垂直な成分と鉛直な成分に分けて、起電力には $B\cos\theta$、鉛直な力には $IBd\cos\theta$ を使う、と見分けられるか。sin と cos を取り違えると問1 全体が崩れる。
2004年九州大学物理
第3問 解答・解説
第3問は波動・原子の問題です。
テーマは「屈折率が周期的に変わる透明媒質での光のブラッグ反射の条件を求め、音波でその縞を作るときの周波数を求めたあと、光子が音の粒子を吸収する衝突をエネルギー保存と成分ごとの運動量保存で表し、波の見方と同じ式 $2d\sin\theta=\lambda_{\mathrm i}$ になることを導く」。
問題


問題文をテキストで読む
現代生活を支える情報処理技術において、光を用いた情報処理が広く利用されるようになっている。以下では光の制御法の一つとして、音波を用いて透明媒質を通る光の進行方向を変える方法について考えてみよう。
なお真空中の光速を $c\ [\mathrm{m/s}]$、プランク定数を $h\ [\mathrm{J\cdot s}]$ とする。また、透明媒質の平均屈折率を $n$、音速を $v\ [\mathrm{m/s}]$ とする。
問1. 図3(a)に示すように $y$ 軸方向に間隔 $d\ [\mathrm{m}]$ で周期的に屈折率が変化する透明媒質を考える。この透明媒質では $y$ 軸に垂直な平面($xz$ 面)上で屈折率は一様であるとする。この透明媒質に光やX線などの電磁波を入射しよう。入射電磁波の進行方向と $y$ 軸とを含む平面を、 $xy$ 面とする。このとき透明媒質を伝わる電磁波は図3(a)のような反射を受ける。
(1) 電磁波の周波数(振動数)を $\nu_{\mathrm{i}}\ [\mathrm{Hz}]$ とするとき、透明媒質中での電磁波の波長 $\lambda_{\mathrm{i}}\ [\mathrm{m}]$ はどのように表されるか。
(2) 図3(a)のように $xz$ 面と入射電磁波の進行方向のなす角を $\theta\ [\mathrm{rad}]$ とする。角度 $\theta$ を変えると、ある $\theta$ で強い反射波が観測された。このときの条件は、最も屈折率の高い各平面だけからの反射を考えれば、結晶中でのX線のブラッグ反射の条件と同様に導くことができる。その条件を $d$、 $\lambda_{\mathrm{i}}$、 $\theta$ を使い書け。
問2. 一般に密度変化は屈折率変化を引き起こすので、屈折率が一様な透明媒質に対しても音波を通すことによって、問1で述べたような屈折率が周期的に変化する状態を作り出すことができる。この現象を利用すれば、図3(b)に示すように音波のあるなしで光の進行方向を制御できる。
屈折率変化の間隔を $d=1.0\times10^{-6}\ \mathrm{m}$ とするのに、必要な音波の周波数を求めよ。ただし音速を $v=3.0\times10^{3}\ \mathrm{m/s}$ とする。
問3. 光は波動性と粒子性を持っている。入射光の光子のエネルギー $E_{\mathrm{i}}\ [\mathrm{J}]$ と反射光の光子のエネルギー $E_{\mathrm{r}}\ [\mathrm{J}]$ を、入射光の周波数 $\nu_{\mathrm{i}}\ [\mathrm{Hz}]$、反射光の周波数 $\nu_{\mathrm{r}}\ [\mathrm{Hz}]$ を含む式で表せ。
問4. 光と同様、音も波動性と粒子性を持っている。以下では問2での現象を粒子性の立場から考えてみよう。図3(b)で透明媒質に音波を通した場合は、透明媒質中を進行する音の粒子1個と入射光子1個が衝突した結果、入射光子が音の粒子を吸収して反射光子1個になる現象と考えられる。
ここで、音の粒子のエネルギー $E\ [\mathrm{J}]$ および運動量の大きさ $p\ [\mathrm{kg\cdot m/s}]$ は、周波数 $f\ [\mathrm{Hz}]$ と波長 $d\ [\mathrm{m}]$ によって
$$E=hf$$
$$p=\frac{h}{d}$$
と表され、運動量 $\vec{p}$ の向きは音の進行する向きと一致する。
図3(b)でも図3(a)と同様に $x$ 軸、 $y$ 軸および角度 $\theta_{\mathrm{i}}\ [\mathrm{rad}]$、 $\theta_{\mathrm{r}}\ [\mathrm{rad}]$ をとり、音波が $y$ 軸正方向に伝わるものとして以下の問題に答えよ。
(1) 光子と音の粒子の衝突前後のエネルギー保存の法則を $h$、 $f$、 $\nu_{\mathrm{i}}$、 $\nu_{\mathrm{r}}$ を使い表せ。
(2) 同様に、光子と音の粒子の衝突前後の運動量保存の法則を $x$ 軸、 $y$ 軸方向について $h$、 $\lambda_{\mathrm{i}}$、 $\lambda_{\mathrm{r}}$、 $d$、 $\theta_{\mathrm{i}}$、 $\theta_{\mathrm{r}}$ を使い表せ。ただし、 $\lambda_{\mathrm{i}}\ [\mathrm{m}]$、 $\lambda_{\mathrm{r}}\ [\mathrm{m}]$ はそれぞれ入射光、反射光の波長である。
(3) $\dfrac{f}{\nu_{\mathrm{i}}}$ が十分小さい場合には、 $\dfrac{\nu_{\mathrm{r}}}{\nu_{\mathrm{i}}}=\dfrac{\lambda_{\mathrm{i}}}{\lambda_{\mathrm{r}}}=1$ とすることができる。このとき、 $\theta_{\mathrm{r}}=\theta_{\mathrm{i}}$ となることを示せ。
(4) 同じく(3)の条件が満たされるとき、 $\theta_{\mathrm{r}}=\theta_{\mathrm{i}}=\theta$ とおいて、運動量保存則からブラッグ反射と同様の関係式を導け。
解答の方針
【問1の方針】
強い反射は、隣り合う面で反射した波が強め合うとき。経路差で決まり、X線のブラッグ反射と同じ形。波長は媒質中の $\lambda_{\mathrm i}$ を使う。


- (1) 媒質に入っても変わらないのは振動数 $\nu_{\mathrm i}$ 。媒質中の光の速さは $\dfrac cn$ なので、 $v=f\lambda$ で $\lambda_{\mathrm i}$ を求める。
- (2) 屈折率の高い面は1枚ずつ同じように波を反射するので、反射による位相のずれは2本とも同じ。隣り合う2つの面で反射する波を図に書き、一方の反射点から、もう一方の入射波と反射波にそれぞれ垂線を下ろして、経路差を $d$ と $\theta$ で表す。
- 経路差が媒質中の波長 $\lambda_{\mathrm i}$ の整数倍になる条件を書く(整数は屈折率の $n$ と区別して $m$ にする)。
【問2の方針】
屈折率の縞は音波の密な所に対応する。密な所は1波長ごとに1か所ずつ並ぶので、縞の間隔 $d$ は音波の波長にあたる。


- 屈折率は密度とともに変わる。音波は縦波なので、縞の間隔 $d$ =音波の波長、と読む。
- 音波について $v=f\lambda$ を使い、振動数 $f$ を $v$ と $d$ で表して数値を入れる。
【問3の方針】
光子1個のエネルギーは、その光の振動数に比例する。教科書の基本そのまま。
- 入射光・反射光それぞれの振動数にプランク定数 $h$ を掛ける。
【問4の方針】
光子が音の粒子を吸収する現象は、粒子どうしの衝突と同じ型で、エネルギーと運動量が保存する。運動量は成分ごとに考える。


- 図に入射光子・音の粒子・反射光子の運動量の向きを書き、 $x$ 軸・$y$ 軸の正の向きを確かめる。光子の運動量の大きさは $\dfrac h\lambda$、音の粒子は $\dfrac hd$($y$ 軸の正の向き)。
- (1) 衝突前の光子と音の粒子のエネルギーの和を、衝突後の反射光子のエネルギーに等しいとおく。
- (2) 運動量を $x$ 成分と $y$ 成分に分け、それぞれ「衝突前の和=衝突後」とおく。入射光子の $y$ 成分は負になる。
- (3) 音の粒子の振動数 $f$ が $\nu_{\mathrm i}$ に比べて十分小さいとき、光の波長は衝突の前後でほとんど変わらない。 $\dfrac{\lambda_{\mathrm i}}{\lambda_{\mathrm r}}=1$ を $x$ 成分の式に入れて $\cos\theta_{\mathrm r}=\cos\theta_{\mathrm i}$ を導き、角の範囲から $\theta_{\mathrm r}=\theta_{\mathrm i}$ を示す。
- (4) 運動量の三角形は二等辺三角形になる。 $\lambda_{\mathrm r}=\lambda_{\mathrm i}$ 、 $\theta_{\mathrm r}=\theta_{\mathrm i}=\theta$ を $y$ 成分の式に入れ、 $\dfrac hd$ について整理して、問1 (2) の式と比べる。波の見方(問1)と粒子の見方が同じ式になることを確かめる。
解答


解答をテキストで読む
問1 (1)
光は媒質の中では速さが $\dfrac cn$ になるが、振動数は媒質に入っても変わらない(媒質の境界で波の山が次々に通り抜けていくため、1秒間に通り抜ける山の数は変わらない)。 $v=f\lambda$ より、
$$\lambda_{\mathrm i}=\dfrac{c/n}{\nu_{\mathrm i}}=\dfrac{c}{n\nu_{\mathrm i}}$$
答 $\lambda_{\mathrm i}=\dfrac{c}{n\nu_{\mathrm i}}$(4点)
問1 (2)
問題の指定どおり、屈折率の高い面で反射する波だけを考える。どの面でも同じ向きの反射なので、反射による位相のずれは2本とも同じで、比べるときは考えなくてよい。隣り合う面で反射する2本の波を比べる。上の面の P で反射する波と、その真下の面の Q で反射する波について、P から2本目の入射波に垂線 PM、反射波に垂線 PN を下ろす。PM は入射波の波面なので、P と M では波の位相が同じ。PN は反射波の波面なので、P と N でも位相が同じ。したがって、2本目の波が1本目の波より余計に進む道のりは MQ と QN の和になる。
角 $\theta$ は面から測っているので、直角三角形 PMQ で $\mathrm{MQ}=d\sin\theta$。同じく $\mathrm{QN}=d\sin\theta$。経路差は
$$\mathrm{MQ}+\mathrm{QN}=2d\sin\theta$$
これが媒質中の波長 $\lambda_{\mathrm i}$ の整数倍のとき強め合う。
答 $2d\sin\theta=m\lambda_{\mathrm i}$($m=1,2,3,\cdots$)(5点)
問2
屈折率の高い面は、音波の密な所に対応する。音波は縦波で、密な所は1波長ごとに1か所ずつ並ぶので、隣り合う面の間隔 $d$ が音波の波長にあたる。音波について $v=f\lambda$ より、
$$f=\dfrac vd=\dfrac{3.0\times10^{3}}{1.0\times10^{-6}}=3.0\times10^{9}$$
屈折率の縞と音波の対応は下の図。
答 $3.0\times10^{9}\ \mathrm{Hz}$(4点)
問3
光子1個のエネルギーは、振動数にプランク定数 $h$ を掛けたもの。
答 $E_{\mathrm i}=h\nu_{\mathrm i}$、 $E_{\mathrm r}=h\nu_{\mathrm r}$(4点)
問4 (1)
衝突前のエネルギーは、入射光子の $h\nu_{\mathrm i}$ と音の粒子の $hf$ の和。衝突後は、音の粒子が吸収されて消え、反射光子の $h\nu_{\mathrm r}$ だけが残る。エネルギー保存より、
答 $h\nu_{\mathrm i}+hf=h\nu_{\mathrm r}$(4点)
問4 (2)
運動量の大きさは、入射光子が $\dfrac h{\lambda_{\mathrm i}}$、反射光子が $\dfrac h{\lambda_{\mathrm r}}$、音の粒子が $\dfrac hd$。向きは、入射光子が右下($x$ 成分は正、 $y$ 成分は負)、反射光子が右上、音の粒子が $y$ 軸の正の向きで $x$ 成分は 0。成分ごとに「衝突前の和=衝突後」とおく。
$x$ 成分は、音の粒子が 0 なので光子どうしの等式になる。
答( $x$ 軸方向) $\dfrac h{\lambda_{\mathrm i}}\cos\theta_{\mathrm i}=\dfrac h{\lambda_{\mathrm r}}\cos\theta_{\mathrm r}$(2点)
$y$ 成分は、入射光子が下向きなので負の符号が付く。
答( $y$ 軸方向) $-\dfrac h{\lambda_{\mathrm i}}\sin\theta_{\mathrm i}+\dfrac hd=\dfrac h{\lambda_{\mathrm r}}\sin\theta_{\mathrm r}$(2点)
問4 (3)
問題の条件より $\dfrac{\lambda_{\mathrm i}}{\lambda_{\mathrm r}}=1$、つまり $\dfrac h{\lambda_{\mathrm i}}=\dfrac h{\lambda_{\mathrm r}}$。これを (2) の $x$ 成分の式に入れると、両辺の $\dfrac h\lambda$ が消えて
$$\cos\theta_{\mathrm i}=\cos\theta_{\mathrm r}$$
$\theta_{\mathrm i}$、 $\theta_{\mathrm r}$ はどちらも $0$ から $\dfrac\pi2$ の間の角で、この範囲では $\cos$ は増減が一方向(単調に減少)なので、 $\cos$ が等しければ角も等しい。
答 $\theta_{\mathrm r}=\theta_{\mathrm i}$(5点)
問4 (4)
(3) の条件より $\lambda_{\mathrm r}=\lambda_{\mathrm i}$。 $\theta_{\mathrm r}=\theta_{\mathrm i}=\theta$ とおいて、(2) の $y$ 成分の式に入れる。
$$-\dfrac h{\lambda_{\mathrm i}}\sin\theta+\dfrac hd=\dfrac h{\lambda_{\mathrm i}}\sin\theta\qquad\therefore\ \dfrac hd=\dfrac{2h}{\lambda_{\mathrm i}}\sin\theta$$
両辺に $\dfrac{d\lambda_{\mathrm i}}{h}$ を掛けると
答 $2d\sin\theta=\lambda_{\mathrm i}$(5点)
これは問1 (2) の $m=1$ の場合と同じ式。光を波として見て経路差で求めた条件と、粒子として見て運動量保存で求めた条件が、同じ式になる。運動量の三角形で見ると、入射光子と反射光子の運動量は大きさが等しく、音の粒子の運動量 $\dfrac hd$ を底辺とする二等辺三角形になる。底辺の半分が $\dfrac h{2d}$ で、これが $\dfrac h{\lambda_{\mathrm i}}\sin\theta$ に等しい。
別解
問1 (2)(光路差で書く)
光路差で比べるなら、媒質中を進む道のりに屈折率 $n$ を掛ける。真空中の波長 $\lambda_0=\dfrac{c}{\nu_{\mathrm i}}$ で書くと、 $2nd\sin\theta=m\lambda_0$($m=1,2,3,\cdots$)。 $\lambda_{\mathrm i}=\dfrac{\lambda_0}{n}$ なので、本解の式と同じ。波長を媒質中のものに置きかえる本解の方が、式が単純。
問4 (4)(運動量の三角形の辺の比で)
運動量の三角形は、入射光子と反射光子の運動量が等しい二等辺三角形(図は上のとおり)。頂点から底辺に垂線を下ろすと、底辺の半分が $\dfrac h{2d}$、斜辺が $\dfrac h{\lambda_{\mathrm i}}$ で、底辺の半分は斜辺の $\sin\theta$ 倍。 $\dfrac h{2d}=\dfrac h{\lambda_{\mathrm i}}\sin\theta$ より $2d\sin\theta=\lambda_{\mathrm i}$。成分ごとに式を立てる本解でも同じ式になるので、どちらで解いてもよい。
出題意図
問1 媒質中の波長を求め、隣り合う面で反射した波の経路差から強め合いの条件を作ることができるか
問2 屈折率の縞の間隔が音波の波長にあたることを捉えることができるか
問3 光子のエネルギーは振動数に比例するという基本が理解できているか
問4 光子が音の粒子を吸収する衝突を、エネルギー保存と成分ごとの運動量保存で表し、波の見方と同じ式になることを導くことができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 30点 | 25点 |
| 目標時間 | 20分 | 25分 |
ブラッグ反射は光の干渉の経路差で、光子と音の粒子の衝突は力学の衝突と同じ成分ごとの運動量保存で解ける大問で、最後に波の見方と粒子の見方が同じ式 $2d\sin\theta=\lambda_{\mathrm i}$ になる所まで誘導してくれる。
屈折率の縞や音の粒子と見慣れない設定が並ぶが、原子は $E=h\nu$ と $p=\dfrac h\lambda$ の教科書レベルの知識しか問われない。
ただし名問の森レベルまでは対策しておき、「原子は出ない」と高をくくらないこと。
差がつくのは問4 (2) で、入射光子が下向きなので $y$ 成分が負になると図から読めるか。
どの小問も基本の組み合わせなので、できれば満点を取りたい。
差がつく所・失点しやすい所
- 問4 (2):光子が音の粒子を吸収する、という見慣れない設定を、成分ごとの運動量保存に落とせるか。とくに、入射光子が下向きなので $y$ 成分に負の符号が付くことを図から読めるか。ここを越えないと (3)(4) が続かない。
- 問1 (2):角 $\theta$ が面から測られていると確かめ、経路差 $2d\sin\theta$ を作図で求められるか。
コラム 音で光の向きを変える装置
第3問の「音波で光の進行方向を変える」は、実際に使われている装置の原理そのもの。音響光学素子(音響光学偏向器・音響光学変調器)と呼ばれる。


- どんな装置か:透明な結晶に圧電素子を取り付け、高周波の電気信号で振動させると、結晶の中を音波(超音波)が伝わる。音波の密な所は屈折率が高いので、結晶の中に屈折率の縞ができる。ここに光を入れると、問1 (2) の強め合う条件を満たす向きにだけ、反射された光(回折光)が出てくる。光から見ると、結晶に縞状の回折格子ができたようなもの。
- 向きを変える仕組み:電気信号の周波数を変えると、音波の波長、つまり縞の間隔 $d$ が変わる。 $2d\sin\theta=\lambda_{\mathrm i}$ より、強め合う向きも変わる。周波数を変えるだけで、機械を動かさずに光の向きを切りかえられる。この性質は、光の向きを切りかえる偏向器に使われる。
- 光の振動数もずれる:問4 (1) の $h\nu_{\mathrm r}=h\nu_{\mathrm i}+hf$ のとおり、光子が音の粒子(フォノン)を吸収するので、回折光の振動数は音波の振動数 $f$ だけずれる。実際の素子でも、回折光の振動数が音波の周波数だけずれることが知られている。
- ほかの使い道:音波の強さを変えると回折光の強さが変わるので、光の強さを高速で切りかえる変調器や、レーザーのパルスを作る装置(Qスイッチ)にも使われている。
波の見方と粒子の見方の両方で同じ結論が出る、という問題の流れも、装置が働く理由そのもの。物理を身近な現象に紐づける癖を持つことも、九大合格には大事。
2004年九州大学・物理の
講評とまとめ
3問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 標準 | 40点 | 35点 |
| 第2問 | 標準 | 40点 | 35点 |
| 第3問 | 標準 | 30点 | 25点 |
| 全体 | 標準 | 105点 | 85点 |
大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で105点、その他の学部で85点)にはなりません。
全体としては標準の年で、3題とも典型の型で解けるものの、それぞれに山が1か所ずつある問題でした。
この年の合否を分けたのは第1問で、答えが問3から問4 (3) まで連鎖し、この年でいちばん計算が長い大問でした。
決め手は問3で、外側をすべる物体は傾きの急な S から離れる、と運動を想像できるかどうかです。
第2問は、コンデンサーにつながれた棒は等加速度、抵抗なら一定の速さという決まった型に、磁場が傾いているので摩擦が電流に比例するという一ひねりが入った問題です。
問2 (1) で摩擦を $\mu'mg$ としないことが分かれ目でした。
第3問は、ブラッグ反射の経路差と、光子と音の粒子の衝突の運動量保存が同じ式になることを確かめる、誘導のていねいな問題で、式は教科書レベルです。
解く流れ
第1問 → 第2問 → 第3問。
2004年九州大学・物理に
関するよくある質問
2004年の九州大学・物理について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2004年の九州大学・物理は難しかった?
-
標準の年でした。
第1問・第2問・第3問のどれも標準です。
第1問はばねの発射・外側の円運動・摩擦のある斜面と壁との衝突、第2問は傾いた磁場の電磁誘導、第3問はブラッグ反射と光子の衝突です。
第1問は答えが連鎖して計算が最も長く、この年の合否を分けた大問でした。 - 2004年の九州大学・物理は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で105点、その他の学部で85点です(125点満点)。
- 2004年の九州大学・物理はどこで差がつく?
-
この年の合否を分けたのは第1問で、差がついたのは次の3つでした。
- 第1問 問3・問4 (3):外側をすべる物体は傾きの急な S から離れると見抜いて $N\geqq0$ と立て、問4 (3) では新しい条件を作らず問3 の範囲に入れて挟めたか。
- 第2問 問2 (1):レールが鉛直なので重力は垂直抗力を生まず、棒がレールに押しつけられる原因は磁場の力の水平成分 $IBd\sin\theta$ だけ、と気づけたか。
- 第3問 問4 (2):光子が音の粒子を吸収する設定を成分ごとの運動量保存に落とし、入射光子が下向きなので $y$ 成分が負になると図から読めたか。
- 2004年の九州大学・物理は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:力学
- 第2問:電磁気
- 第3問:波動・原子




