【解説・配点付き】2024年九州大学化学の解答・解説

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2024年の九州大学・化学の、
解答・解説【完全版】です。

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※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。

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中原 遼太郎

九大受験に特化した学習塾
『竜文会』代表

『竜文会』開校後、初年度には国立大学医学部や九州大学に合格者を輩出。

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目次

2024年九州大学化学
第1問 解答・解説

この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。

第1問は理論化学(溶液)の問題です。
テーマは『沸点上昇の導出』『凝固点降下の計算』。

問題

2024年九州大学化学 第1問 問題
2024年九州大学化学 第1問 問題
問題文をテキストで読む

次の文章(1)と(2)を読み、問1〜問7に答えよ。

(1) 不揮発性の物質 A、物質 B をそれぞれ水に溶解させた2種類の水溶液がある。これを水溶液A、水溶液Bとする。これら2種類の水溶液を、それぞれ体積一定の密閉容器に入れ、温度を変化させながら蒸気圧を測定した。ただし、水溶液Aと水溶液Bは希薄溶液である。また、物質 A と物質 B はともに電解質であり、水中で完全に電離しているものとする。物質 A は電離して1価の陽イオンと1価の陰イオンを生じ、物質 B は2価の陽イオンと1価の陰イオンを生じる。

図1に示したグラフは、水および水溶液Aの100℃付近の蒸気圧を表したものである。図1に示すように、100℃における水溶液Aの蒸気圧は、水の蒸気圧 $1.013\times10^5$ Pa より低くなった。この現象を $\boxed{\text{ア}}$ という。

$\boxed{\text{ア}}$ のため、1気圧の下では水溶液Aや水溶液Bは100℃では沸騰しない。これらの溶液を沸騰させるには、より高い温度が必要であり、この現象を $\boxed{\text{イ}}$ と呼ぶ。一般に、 $\boxed{\text{イ}}$ の大きさは溶質の種類には無関係で、溶液の $\boxed{\text{ウ}}$ 濃度に比例する。その時の比例定数を $\boxed{\text{エ}}$ と呼ぶ。

問1. 文章(1)の $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{エ}}$ に入る語句を答えよ。

問2. $\boxed{\text{ア}}$ や $\boxed{\text{イ}}$ は、ラウールの法則によって説明できる。次の枠内の説明文の空欄 A〜I に入る記号あるいは式を、下の①〜⑩から選んで数字で答えよ。なお、同じ数字を複数回選択しても良い。

ラウールの法則は、希薄溶液の蒸気圧 $p$ 、溶媒のモル分率 $x$ 、純溶媒の蒸気圧 $p_0$ の関係を表したものであり、式1で表される。前述の文章(1)では電解質を扱っているが、ここでは溶質が不揮発性かつ非電解質である場合を考える。

$p=xp_0$ …(式1)

溶質の物質量を $n_{\mathrm{A}}$ 、溶媒の物質量を $n_{\mathrm{S}}$ とすると、 $x$ は次のように表される。

$x=\dfrac{\boxed{\text{A}}}{\boxed{\text{B}}}$

溶液では、溶媒のモル分率 $x$ が1から $\dfrac{\boxed{\text{A}}}{\boxed{\text{B}}}$ に減少する。このため蒸発する溶媒分子の割合が減り、 $\boxed{\text{ア}}$ が起こると言える。また、溶液の蒸気圧 $p$ と純溶媒の蒸気圧 $p_0$ の差 $\Delta p$ は、式1を使って次のように表すことができる。

$\Delta p=\dfrac{\boxed{\text{C}}}{\boxed{\text{D}}}p_0$ …(式2)

希薄溶液では、 $n_{\mathrm{A}}\ll n_{\mathrm{S}}$ となることから、式2は次のように近似することができる。

$\Delta p=\dfrac{\boxed{\text{E}}}{\boxed{\text{F}}}p_0$ …(式3)

ここで溶媒の質量を $W_{\mathrm{S}}$〔kg〕、溶媒のモル質量を $M_{\mathrm{S}}$〔g/mol〕とおくと、式3は次のように変形することができる。

$\Delta p=\dfrac{\boxed{\text{G}}\,p_0}{1000}\times\dfrac{\boxed{\text{H}}}{\boxed{\text{I}}}$ …(式4)

$\dfrac{\boxed{\text{G}}\,p_0}{1000}$ は溶質には無関係の値となり、式4から $\Delta p$ は溶液の $\boxed{\text{ウ}}$ 濃度に比例することが分かる。また、図1に示されるように、狭い温度範囲では、溶媒と溶液の蒸気圧曲線は平行な直線としてみなすことができる。すなわち、 $\Delta p$ と $\boxed{\text{イ}}$ の大きさは比例関係にあると考えることができ、 $\boxed{\text{イ}}$ の大きさも溶液の $\boxed{\text{ウ}}$ 濃度に比例することが分かる。

① $x$ ② $1-n_{\mathrm{S}}$ ③ $n_{\mathrm{A}}+n_{\mathrm{S}}$ ④ $n_{\mathrm{A}}$ ⑤ $p$⑥ $M_{\mathrm{S}}$ ⑦ $M_{\mathrm{S}}/W_{\mathrm{S}}$ ⑧ $W_{\mathrm{S}}$ ⑨ $n_{\mathrm{S}}-n_{\mathrm{A}}$ ⑩ $n_{\mathrm{S}}$

問3. 水溶液Aは2.8 g の物質 A を1000 g の水に溶解させて作ったものである。図1のグラフから、水溶液Aの沸点 $t_{\mathrm{A}}$〔℃〕を小数第2位まで読み取り、物質 A の式量を有効数字2桁で答えよ。ただし、 $1.013\times10^5$ Pa における水の $\boxed{\text{エ}}$ の大きさは0.52 K·kg/mol とする。

問4. 水溶液Aと水溶液Bは、それぞれ同じ物質量の物質 A、物質 B を同じ容量の水に溶解させて作られた。水の沸点との差である $\Delta t_{\mathrm{A}}$〔K〕と $\Delta t_{\mathrm{B}}$〔K〕について、 $\Delta t_{\mathrm{B}}/\Delta t_{\mathrm{A}}$ の値を有効数字2桁で答えよ。

(2) 蒸気圧測定に用いた物質 B を17 g 量りとり、500 g の水に溶解させた。この溶液を撹拌しながら徐々に冷却していくと、図2に示したような溶液の温度変化が見られた。これを見ると、水の凝固点である0℃よりも低い温度で溶液の凝固が始まることが分かる。一般に、溶液は純溶媒より低い温度で凝固する。これを $\boxed{\text{オ}}$ と呼び、水1.0 kg に非電解質の溶質1.0 mol を溶解させた水溶液の $\boxed{\text{オ}}$ の大きさは、1.85 K である。なお、冷却の過程で物質 B の析出は見られなかった。

問5. 文章(2)の $\boxed{\text{オ}}$ に入る語句を答えよ。

問6. この溶液の凝固点は図2に示す4つの温度A〜Dのうち、どれに最も近いか答えよ。

問7. この溶液の凝固点〔℃〕を有効数字2桁で答えよ。ただし、この溶液は希薄溶液として扱い、物質 B の式量は95として計算せよ。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

ベースは蒸気圧降下。溶質の粒子は蒸発しないので、蒸気圧をつくる溶媒分子の割合が減って蒸気圧が下がる。その結果、蒸気圧が大気圧に届く温度(沸点)が上がる(下の図)。

2024年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
  1. (ア) 溶液の蒸気圧が純溶媒より低くなる現象の名前を答える。
  2. (イ) その結果、沸点が高くなる現象の名前を答える。
  3. (ウ)(エ) 沸点上昇度を表す公式「定数×質量モル濃度×個数」から、濃度の種類と比例定数の名前を答える。

【問2の方針】

着眼点

問1 の図の左のビーカーを式で表したもの。溶媒のモル分率だけ蒸気圧が残り、下がった分は溶質のモル分率に比例する。希薄なら「溶質÷溶媒」に近似でき、溶媒の物質量を質量で書きかえると質量モル濃度が現れる。

  1. (A)(B) 溶媒のモル分率 $x$ を、溶質と溶媒の物質量で表す。
  2. (C)(D) $\Delta p=p_0-p=(1-x)p_0$ に入れて、溶質のモル分率で表す。
  3. (E)(F) $n_{\mathrm A}\ll n_{\mathrm S}$ なので、分母の $n_{\mathrm A}+n_{\mathrm S}$ を $n_{\mathrm S}$ にする。
  4. (G)〜(I) 溶媒の物質量を $n_{\mathrm S}=\dfrac{1000W_{\mathrm S}}{M_{\mathrm S}}$ と書きかえ、溶質に無関係な部分と質量モル濃度 $\dfrac{n_{\mathrm A}}{W_{\mathrm S}}$ に分ける。

【問3の方針】

着眼点

沸点は、蒸気圧の線が大気圧 $1.013\times10^5$ Pa の横線と交わる温度。図1の縦線は0.05℃刻みなので、水溶液Aの交点は目盛りの線の上で読める(下の図)。物質Aは電離するので、個数の補正を忘れない。

2024年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
  1. 図1で、水溶液Aの線が $1.013\times10^5$ Pa の横線と交わる温度 $t_{\mathrm A}$ を読み、沸点上昇度 $\Delta t$ を求める。
  2. 物質Aは1価の陽イオンと1価の陰イオンに電離するので、個数は2。
  3. 式量を $M$ と置き、公式「定数×質量モル濃度×個数」に入れて $M$ を求める。

【問4の方針】

着眼点

同じ物質量を同じ量の水に溶かしているので、質量モル濃度は等しい。変わるのは電離してできる粒子の数(個数)だけ。2価の陽イオン1個とつりあう1価の陰イオンは2個(下の図)。

2024年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
  1. 物質Aの個数は2、物質Bの個数は3(陽イオン1個+陰イオン2個)と決める。
  2. 2つの水溶液について公式を2本並べ、比をとって定数と質量モル濃度を消す。

【問5・問6の方針】

着眼点

溶液を冷やすと、過冷却のあと凝固が始まる。その後は水だけが凍って溶液が濃くなり、凝固点が下がり続ける(右肩下がり)。凝固点は、右肩下がりの線を左へ延ばして読む(下の図)。

2024年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
  1. (オ) 溶液が純溶媒より低い温度で凝固する現象の名前を答える。
  2. 凝固が始まったあとの右肩下がりの線を左へ延ばし、はじめの冷却の線と交わる点の温度を凝固点として選ぶ。

【問7の方針】

着眼点

問4 で決めたとおり、物質Bの個数は3。公式で求まるのは凝固点が下がった幅なので、最後に0℃から引いて凝固点に直す。

  1. 本文の「水1.0 kg に非電解質1.0 mol で1.85 K」から、モル凝固点降下は1.85 K·kg/mol。
  2. 物質Bの物質量と質量モル濃度を求め、個数3を入れて凝固点降下度を求める。
  3. 0℃から凝固点降下度を引いて、凝固点にする。

解答

2024年九州大学化学 第1問 解答・解説
2024年九州大学化学 第1問 解答・解説
解答をテキストで読む

問1

不揮発性の物質を溶かすと、溶質の粒子は蒸発しないので、蒸気圧をつくる溶媒分子の割合が減り、蒸気圧が下がる(蒸気圧降下)。沸点は蒸気圧が大気圧と等しくなる温度なので、蒸気圧が下がった分だけ、より高い温度まで上げないと沸騰しない(沸点上昇)。蒸気圧が下がった分と沸点が上がった分は比例する(下の図)。

沸点上昇度は「モル沸点上昇×質量モル濃度×個数」で表され、溶質の種類には無関係。

答(ア) 蒸気圧降下(1点)

答(イ) 沸点上昇(1点)

答(ウ) 質量モル(1点)

答(エ) モル沸点上昇(1点)

問2

溶媒のモル分率は、全体の物質量のうち、蒸気圧をつくる溶媒の物質量の割合なので

$$x=\dfrac{n_{\mathrm S}}{n_{\mathrm A}+n_{\mathrm S}}$$

蒸気圧が下がった分は、式1より

$$\Delta p=p_0-p=(1-x)p_0=\dfrac{n_{\mathrm A}}{n_{\mathrm A}+n_{\mathrm S}}p_0\quad\cdots(\text{式}2)$$

希薄溶液では $n_{\mathrm A}\ll n_{\mathrm S}$ なので、分母の $n_{\mathrm A}+n_{\mathrm S}$ を $n_{\mathrm S}$ とみなせる。蒸気圧が下がる割合は「溶質÷溶媒」になる。

$$\Delta p\fallingdotseq\dfrac{n_{\mathrm A}}{n_{\mathrm S}}p_0\quad\cdots(\text{式}3)$$

溶媒の質量 $W_{\mathrm S}$〔kg〕は $1000W_{\mathrm S}$〔g〕なので、溶媒の物質量は $n_{\mathrm S}=\dfrac{1000W_{\mathrm S}}{M_{\mathrm S}}$。これを式3に入れると

$$\Delta p=\dfrac{n_{\mathrm A}M_{\mathrm S}}{1000W_{\mathrm S}}p_0=\dfrac{M_{\mathrm S}\,p_0}{1000}\times\dfrac{n_{\mathrm A}}{W_{\mathrm S}}\quad\cdots(\text{式}4)$$

$\dfrac{M_{\mathrm S}\,p_0}{1000}$ は溶媒だけで決まる値(G は溶質に無関係なので $n_{\mathrm A}$ ではなく $M_{\mathrm S}$)。 $\dfrac{n_{\mathrm A}}{W_{\mathrm S}}$ は溶質の物質量÷溶媒の質量〔kg〕=質量モル濃度なので、蒸気圧降下の大きさは質量モル濃度に比例する。

答(A) ⑩(1点)

答(B) ③(1点)

答(C) ④(1点)

答(D) ③(1点)

答(E) ④(1点)

答(F) ⑩(1点)

答(G) ⑥(1点)

答(H) ④(1点)

答(I) ⑧(1点)

問3

図1で、水の線は $1.013\times10^5$ Pa の横線と100.00℃で交わり、水溶液Aの線は100.05℃で交わる(下の図)。

$$\Delta t=100.05-100.00=0.05\ \mathrm{K}$$

物質Aは1価の陽イオンと1価の陰イオンに電離するので、個数は2。式量を $M$ と置くと、物質Aは $\dfrac{2.8}{M}$ mol、水は1000 g=1.000 kg。沸点上昇度=モル沸点上昇×質量モル濃度×個数より

$$0.05=0.52\times\dfrac{2.8}{M}\times\dfrac{1000}{1000}\times2\qquad\therefore\ M=\dfrac{0.52\times2.8\times2}{0.05}=58.2$$

答 58(3点)

問4

物質Aと物質Bは同じ物質量を同じ量の水に溶かしているので、質量モル濃度は等しい。これを $m$ と置く。物質Aは陽イオン1個と陰イオン1個に電離するので個数2。物質Bは2価の陽イオン1個に対して、電荷がつりあうように1価の陰イオンが2個できるので個数3(下の図)。

沸点上昇の公式を2本並べると

$$\Delta t_{\mathrm A}=K_{\mathrm b}\times m\times2,\qquad \Delta t_{\mathrm B}=K_{\mathrm b}\times m\times3$$

比をとると、モル沸点上昇 $K_{\mathrm b}$ と $m$ が消えて

$$\dfrac{\Delta t_{\mathrm B}}{\Delta t_{\mathrm A}}=\dfrac{K_{\mathrm b}\times m\times3}{K_{\mathrm b}\times m\times2}=\dfrac32=1.5$$

答 1.5(3点)

問5

溶液が純溶媒より低い温度で凝固する現象は凝固点降下。

答(オ) 凝固点降下(1点)

問6

冷却曲線は次のように動く(下の図)。

・凝固点より下がっても、凝固はすぐには起こらず、一気に冷える(過冷却)。いちばん低い所が D

・凝固が始まると、凝固で放出される熱が冷却を上回り、温度が B まで上がる

・その後は、凝固で放出される熱と冷却がつりあうが、凍るのは水だけで物質Bは溶液に残る(本文の「析出は見られなかった」)。溶液はどんどん濃くなり、凝固点が下がり続けるので右肩下がりになる。C は凝固がほぼ終わる所

過冷却が起こらなければ、冷やしていった溶液は凝固点で凝固を始めていたはず。その温度は、凝固が始まったあとの右肩下がりの線を左へ延ばし、はじめの冷却の線と交わる点で読む。図2の点線がつながっている A がこの点。B は過冷却が解けたあとの温度で、すでに溶液が濃くなっているので、凝固点より低い。

答 A(2点)

問7

物質Bの物質量は $\dfrac{17}{95}=0.1789$ mol、水は500 g=0.500 kg。本文より、モル凝固点降下は1.85 K·kg/mol。物質Bは2価の陽イオン1個と1価の陰イオン2個に電離するので個数3(問4 の図)。凝固点降下度=モル凝固点降下×質量モル濃度×個数より

$$\Delta t_{\mathrm f}=1.85\times\dfrac{17}{95}\times\dfrac{1000}{500}\times3=1.99\ \mathrm{K}$$

これは凝固点が下がった幅なので、水の凝固点0℃から引いて

$$0-1.99=-1.99\ {}^\circ\mathrm{C}$$

答 $-2.0$ ℃(3点)

出題意図

問1・問2 蒸気圧降下・沸点上昇の用語と、ラウールの法則から「沸点上昇度は質量モル濃度に比例する」ことを式で導く流れを理解できているか

問3・問4 グラフから沸点上昇度を読み取り、電離で増える粒子の数まで入れて、公式「定数×質量モル濃度×個数」で計算できるか

問5・問6 溶液の冷却曲線で、過冷却と右肩下がりの意味を理解し、凝固点を正しく読み取れるか

問7 2価の陽イオンと1価の陰イオンからなる電解質の個数を電荷のつりあいから決め、凝固点まで求められるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度標準
目標得点25点20点
目標時間15分15分

溶液の典型問題でできた大問だが、前半のラウールの法則から沸点上昇を導く穴埋め(問2)だけがやや解きにくい。
導出は問題文がていねいに誘導しているので、蒸気圧降下がベースで、その結果として沸点上昇が起きる、という流れを式でたどれれば迷わない。

後半は重要問題集の沸点上昇・凝固点降下の典型問題そのもの。
沸点上昇・凝固点降下は「定数×質量モル濃度×個数」まで1つの公式として覚え、個数は電荷のつりあいから決めること。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問2:前半の導出がこの大問でいちばん解きにくい。近似した式3から、溶媒の物質量を $\dfrac{1000W_{\mathrm S}}{M_{\mathrm S}}$ と書きかえて質量モル濃度を作る、という発想に行き着けるか。G〜I の3つはここでまとめて決まる。
  • 問4・問7:「2価の陽イオンと1価の陰イオンを生じる」を、電荷のつりあいから陰イオン2個、個数3と読めるか。個数を2にすると、問4 は1.0、問7 は $-1.3$ ℃になり、2問合わせて6点を落とす。
  • 問6:溶液の凝固点は、凝固が始まったあとの右肩下がりの線を左へ延ばして読む、という知識があるか。温度が戻った最高点 B を選びやすい。

コラム 雪道にまく塩 ― 凝固点降下で道路を凍らせない

冬の道路や駐車場にまかれる白い粒(凍結防止剤・融雪剤)は、この大問の凝固点降下そのもの。よく使われるのは塩化ナトリウムと塩化カルシウムで、塩化カルシウムは物質Bと同じ「2価の陽イオン1個と1価の陰イオン2個」に電離する(下の図)。

2024年九州大学化学 第1問 コラムの図
2024年九州大学化学 第1問 コラムの図
  • なぜ凍りにくくなるのか:路面の水に塩が溶けると、水溶液の凝固点は0℃より低くなる。0℃を下回っても、凝固点より上なら路面の水は凍らない。濃いほど凝固点は下がるが、溶かせる量には上限があり、塩化ナトリウムは約23%、塩化カルシウムは約32%の濃さまでしか作れない。
  • 同じ質量なら、粒子が多いのはどちらか:1 mol あたりの個数は塩化ナトリウムが2、塩化カルシウムが3。ところが式量は58.5と111なので、1 g あたりの粒子の数は塩化ナトリウムの方が多い( $\dfrac{2}{58.5}$ と $\dfrac{3}{111}$ )。「個数が多い方が必ず効く」とは言えず、比べるときは物質量と個数の両方を見る必要がある。
  • 塩化カルシウムがすぐ効くわけ:塩化カルシウムは水に溶けるときに多くの熱を出すので、まわりの雪や氷を融かしながら溶けていく。塩化ナトリウムは雨や雪で薄まると効かなくなるので、ひと冬に何度もまく。

凍るのは水だけで、塩は溶液に残るので、路面の水が凍るほど残りの溶液は濃くなり、凝固点はさらに下がる。問6 の冷却曲線が右肩下がりになるのと同じしくみが、雪道でも起きている。

2024年九州大学化学
第2問 解答・解説

第2問は理論化学(反応の速さと化学平衡)の問題です。
テーマは『気体の混合』『圧平衡定数の計算』。

問題

2024年九州大学化学 第2問 問題
2024年九州大学化学 第2問 問題
問題文をテキストで読む

次の文章を読み、問1〜問6に答えよ。

下図のように体積 $V_1$ の容器1と体積 $V_2$ の容器2がコックで連結された装置を考える。連結部の体積は無視できるものとする。

コックを閉じた状態で気体物質 A を容器1に、気体物質 B を容器2に入れた。このとき、どちらの気体も圧力は $p_0$ であった。次に、コックを開けて A と B を混合した。A と B は以下の式により反応し、気体物質 C が生じた。

$\ce{A + 3B <=> 2C}$

気体の圧力が一定の値になるまでしばらく放置したところ、圧力は $p$ になった。気体物質 A、B、C は理想気体とみなすことができ、容器の体積は変化しないものとする。また、容器内の温度は混合の前後で変化しないように保たれているとする。このとき、混合後の各成分の分圧は、容器の体積、混合前の気体の圧力、混合後の気体の全圧によって表すことができる。

問1. 混合前の A と B の物質量の比 $\left(\dfrac{\text{混合前の}\,\mathbf{A}\,\text{の物質量}}{\text{混合前の}\,\mathbf{B}\,\text{の物質量}}\right)$ を、 $V_1$ と $V_2$ を用いて表せ。

問2. 混合後と混合前の全物質量の比 $\left(\dfrac{\text{混合後の全物質量}}{\text{混合前の全物質量}}\right)$ を、 $p_0$ と $p$ を用いて表せ。

問3. 混合後に反応した A の比率 $\left(\dfrac{\text{混合後に反応した}\,\mathbf{A}\,\text{の物質量}}{\text{混合前の}\,\mathbf{A}\,\text{の物質量}}\right)$ を $r$ とするとき、 $r$ は以下の式で表される。式中の $i$、 $j$、 $k$ の値を、整数または分数で答えよ。

$r=i\left\{1+j\left(\dfrac{V_2}{V_1}\right)\right\}\left\{1+k\left(\dfrac{p}{p_0}\right)\right\}$

問4. $V_1/V_2=1$ の場合には、混合後の A、B、C の分圧(それぞれ $p_{\mathrm{A}}$、 $p_{\mathrm{B}}$、 $p_{\mathrm{C}}$ )は、それぞれ以下の式で表される。式中の $s$、 $t$、 $u$、 $v$、 $w$、 $x$ の値を、整数または分数で答えよ。

$p_{\mathrm{A}}=s\,p_0+t\,p$$p_{\mathrm{B}}=u\,p_0+v\,p$$p_{\mathrm{C}}=w\,p_0+x\,p$

問5. $V_1/V_2=1$ の場合には、 $p$ の値のとりうる範囲は、以下の式で表される。式中の $y$、 $z$ の値を、整数または分数で答えよ。

$y\,p_0<p<z\,p_0$

問6. $V_1/V_2=1$ で、 $p_0=1.2\times10^6$ Pa であるとき、 $p=1.0\times10^6$ Pa となった。このとき、反応の圧平衡定数 $K_{\mathrm{p}}$〔Pa⁻²〕を有効数字2桁で求めよ。

解答の方針

【問1・問2の方針】

着眼点

状態方程式から、物質量は $\dfrac{PV}{T}$ に比例する。温度は混合の前後で同じなので、比べる2つの状態で何が同じかを見れば、物質量の比は圧力と体積の比に読みかえられる(下の図)。

2024年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
  1. (問1) 混合前の A と B は温度も圧力 $p_0$ も同じなので、物質量の比は体積の比になる。
  2. (問2) 混合前は、2つの容器を合わせて体積 $V_1+V_2$ ・圧力 $p_0$ の1つの容器と見てよい。混合後も体積 $V_1+V_2$ で温度が同じなので、全物質量の比は全圧の比になる。

【問3の方針】

着眼点

コックを開けた後は、体積も温度も変わらないので、分圧は物質量に比例し、反応の量を分圧のまま追える。混ぜた直後の分圧は、全体に広がる分だけ $p_0$ より小さくなる(下の図)。

2024年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
  1. コックを開けた直後(反応する前)の A・B の分圧を、体積が何倍になったかから比で求める。
  2. 反応した A の分圧を $q$ とおき、反応前・変化量・反応後の分圧の表を書く。合計は $p_0-2q$ 。
  3. 反応後の合計が全圧 $p$ に等しいことから $q$ を $p_0$ と $p$ で表す。
  4. 反応した A の比率は、同じ容器の中なので分圧の比(反応した分 $q$ ÷反応する前の分圧)で求め、与えられた式の形に整える。

【問4の方針】

着眼点

$V_1=V_2$ なら、A も B も2倍の体積に広がるので、最初の分圧はどちらも $\dfrac{p_0}{2}$ 。問3と同じ分圧の表に、この値を入れるだけ(下の図)。

2024年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
  1. 反応前の分圧を A・B とも $\dfrac{p_0}{2}$ 、 C を0として表を書く。
  2. 全圧の条件 $p_0-2q=p$ から $q=\dfrac{p_0-p}{2}$ 。
  3. 反応後の各分圧に $q$ を代入し、 $p_0$ と $p$ の式に整理して $s$ 〜 $x$ を読む。

【問5の方針】

着眼点

平衡ではどの分圧も0にならない。反応が進まない状態と、反応物の一方がなくなる状態が全圧の両端になる。係数3の B は A より先になくなる(下の図)。

2024年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
  1. 問4の分圧の式が3つとも正になる条件を書く。
  2. $p_{\mathrm{C}}=p_0-p>0$ から上限、 $p_{\mathrm{B}}=-p_0+\dfrac32p>0$ から下限を求める( $p_{\mathrm{A}}=\dfrac12p$ はいつも正)。

【問6の方針】

着眼点

問4で各分圧が $p_0$ と $p$ の式になっているので、数値を入れれば分圧がすべて求まる。あとは圧平衡定数の定義どおりに代入するだけ(下の図)。

2024年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
  1. 問4の式に $p_0=1.2\times10^6$ Pa、 $p=1.0\times10^6$ Pa を入れて $p_{\mathrm{A}}$ ・ $p_{\mathrm{B}}$ ・ $p_{\mathrm{C}}$ を求める。
  2. $K_{\mathrm p}=\dfrac{p_{\mathrm{C}}^{\,2}}{p_{\mathrm{A}}\,p_{\mathrm{B}}^{\,3}}$ に代入し、有効数字2桁にする。

解答

2024年九州大学化学 第2問 解答・解説
2024年九州大学化学 第2問 解答・解説
2024年九州大学化学 第2問 解答・解説(続き)
2024年九州大学化学 第2問 解答・解説(続き)
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問1

状態方程式 $PV=nRT$ より、物質量 $n$ は $\dfrac{PV}{T}$ に比例する。混合前の A と B は温度が同じで、圧力もどちらも $p_0$ なので、物質量は体積に比例する(下の図の上の段)。

$$\dfrac{\text{混合前の}\ \mathbf{A}\ \text{の物質量}}{\text{混合前の}\ \mathbf{B}\ \text{の物質量}}=\dfrac{p_0V_1}{p_0V_2}=\dfrac{V_1}{V_2}$$

答 $\dfrac{V_1}{V_2}$(2点)

問2

混合前の2つの容器は、温度も圧力 $p_0$ も同じなので、合わせて体積 $V_1+V_2$ ・圧力 $p_0$ の1つの容器と見てよい。混合後も体積は $V_1+V_2$ 、温度も同じなので、全物質量は全圧に比例する。

$$\dfrac{\text{混合後の全物質量}}{\text{混合前の全物質量}}=\dfrac{p\,(V_1+V_2)}{p_0\,(V_1+V_2)}=\dfrac{p}{p_0}$$

答 $\dfrac{p}{p_0}$(2点)

問3

コックを開けると、 A は体積 $V_1$ から $V_1+V_2$ に広がる。物質量と温度は変わらず、体積が $\dfrac{V_1+V_2}{V_1}$ 倍になるので、圧力は $\dfrac{V_1}{V_1+V_2}$ 倍になる。 B も同じように考える。

$$p_{\mathrm{A}}=\dfrac{V_1}{V_1+V_2}\,p_0,\qquad p_{\mathrm{B}}=\dfrac{V_2}{V_1+V_2}\,p_0\qquad(\text{反応する前})$$

この後は体積 $V_1+V_2$ も温度も一定なので、分圧は物質量に比例する。そこで、反応の量の計算を分圧のまま行う。反応した A の分圧を $q$ とおくと、 B は $3q$ 減り、 C は $2q$ 増える(下の図)。

反応前の合計は $\dfrac{V_1}{V_1+V_2}\,p_0+\dfrac{V_2}{V_1+V_2}\,p_0=p_0$ 、反応後の合計は $p_0-q-3q+2q=p_0-2q$ 。これが全圧 $p$ なので

$$p_0-2q=p\qquad\therefore\ q=\dfrac{p_0-p}{2}$$

A の物質量と分圧は比例するので、反応した A の比率は分圧の比で求まる。

$$r=q\div\dfrac{V_1}{V_1+V_2}\,p_0=\dfrac{(V_1+V_2)(p_0-p)}{2p_0V_1}=\dfrac12\left(1+\dfrac{V_2}{V_1}\right)\left(1-\dfrac{p}{p_0}\right)$$

与えられた式 $r=i\left\{1+j\left(\dfrac{V_2}{V_1}\right)\right\}\left\{1+k\left(\dfrac{p}{p_0}\right)\right\}$ と比べる。

答 $i=\dfrac12$(2点)

答 $j=1$(1点)

答 $k=-1$(2点)

問4

$V_1=V_2$ なので、 A も B も2倍の体積に広がり、反応する前の分圧はどちらも $\dfrac{p_0}{2}$ になる。問3と同じく、反応した A の分圧を $q$ とおいて表を書く(下の図)。

反応後の合計 $p_0-2q$ が全圧 $p$ なので $q=\dfrac{p_0-p}{2}$ 。これを反応後の分圧に代入する。

$$p_{\mathrm{A}}=\dfrac{p_0}{2}-\dfrac{p_0-p}{2}=\dfrac12\,p$$

$$p_{\mathrm{B}}=\dfrac{p_0}{2}-\dfrac32(p_0-p)=-p_0+\dfrac32\,p$$

$$p_{\mathrm{C}}=2\times\dfrac{p_0-p}{2}=p_0-p$$

3つを足すと $p$ になり、全圧と合う。

答 $s=0$(1点)

答 $t=\dfrac12$(1点)

答 $u=-1$(1点)

答 $v=\dfrac32$(1点)

答 $w=1$(1点)

答 $x=-1$(1点)

問5

平衡では反応物も生成物も残っているので、 A・B・C の分圧はどれも0より大きい。問4の式で

・$p_{\mathrm{A}}=\dfrac12\,p>0$ :全圧は正なので、いつも成り立つ

・$p_{\mathrm{C}}=p_0-p>0$ より $p<p_0$ :反応が少しも進まなければ $p=p_0$ だが、平衡では C が必ずできている

・$p_{\mathrm{B}}=-p_0+\dfrac32\,p>0$ より $p>\dfrac23\,p_0$ : A と B は同じ分圧 $\dfrac{p_0}{2}$ から始まり、 B は A の3倍ずつ減るので、先になくなるのは B 。 B がなくなる $q=\dfrac{p_0}{6}$ のとき $p=p_0-2\times\dfrac{p_0}{6}=\dfrac23\,p_0$

よって $\dfrac23\,p_0<p<p_0$ 。

答 $y=\dfrac23$(3点)

答 $z=1$(2点)

問6

問4の式に $p_0=1.2\times10^6$ Pa、 $p=1.0\times10^6$ Pa を入れる( $q=1.0\times10^5$ Pa)。

$$p_{\mathrm{A}}=\dfrac12\times1.0\times10^6=5.0\times10^5\ \mathrm{Pa}$$

$$p_{\mathrm{B}}=-1.2\times10^6+\dfrac32\times1.0\times10^6=3.0\times10^5\ \mathrm{Pa}$$

$$p_{\mathrm{C}}=1.2\times10^6-1.0\times10^6=2.0\times10^5\ \mathrm{Pa}$$

どれも正で、問5の範囲 $8.0\times10^5<p<1.2\times10^6$ にも入っている(下の図)。

圧平衡定数の定義どおり、分圧を代入する。

$$K_{\mathrm p}=\dfrac{p_{\mathrm{C}}^{\,2}}{p_{\mathrm{A}}\,p_{\mathrm{B}}^{\,3}}=\dfrac{(2.0\times10^5)^2}{5.0\times10^5\times(3.0\times10^5)^3}=\dfrac{4.0\times10^{10}}{1.35\times10^{22}}=2.96\times10^{-12}\ \mathrm{Pa^{-2}}$$

答 $3.0\times10^{-12}\ \mathrm{Pa^{-2}}$(5点)

別解

問3 (物質量で表を書く) 混合前の物質量は $n_{\mathrm A}=\dfrac{p_0V_1}{RT}$ 、 $n_{\mathrm B}=\dfrac{p_0V_2}{RT}$ 。反応した A を $m$ mol とすると、反応後の全物質量は $n_{\mathrm A}+n_{\mathrm B}-m-3m+2m=n_{\mathrm A}+n_{\mathrm B}-2m$ 。混合後の全物質量は $\dfrac{p\,(V_1+V_2)}{RT}$ なので

$$2m=\dfrac{p_0(V_1+V_2)}{RT}-\dfrac{p\,(V_1+V_2)}{RT}=\dfrac{(p_0-p)(V_1+V_2)}{RT},\qquad r=\dfrac{m}{n_{\mathrm A}}=\dfrac{(V_1+V_2)(p_0-p)}{2p_0V_1}$$

$R$ と $T$ は最後に約分で消える。分圧の表なら最初から書かずに済む。

問6 (全圧とモル分率で書く) 反応後の分圧の比は $5.0:3.0:2.0$ なので、モル分率は A 0.50、 B 0.30、 C 0.20。

$$K_{\mathrm p}=\dfrac{(0.20p)^2}{0.50p\times(0.30p)^3}=\dfrac{0.040}{0.50\times0.027}\times\dfrac{1}{p^2}=\dfrac{2.96}{(1.0\times10^6)^2}=2.96\times10^{-12}\ \mathrm{Pa^{-2}}$$

出題意図

問1・問2 同じ温度で、物質量が圧力と体積の積に比例することを使って、物質量の比を圧力と体積の比に読みかえられるか

問3・問4 体積と温度が一定なら分圧が物質量に比例することに気づき、混ぜた直後の分圧から反応の量を文字で追えるか

問5 平衡ではどの気体も0にならないことから、全圧のとりうる範囲を決めることができるか

問6 求めた分圧を圧平衡定数の定義に入れて、値を求めることができるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや難
目標得点20点15点
目標時間15分15分

2024年の化学の合否を分けた大問で、5題の中でいちばん難しい。
中身は「体積と温度が一定なら、反応の量は分圧の表で追う」という重要問題集の典型問題だが、文字ばかりの後半が面倒で、コックを開けた直後の分圧を誤ると問4 と問6 がまとめて落ちる。

気体の反応は、まず何が一定かを確かめ、分圧の状態遷移図を白紙から書けるまで練習しておこう。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問3〜問6(この年の合否を分けた所):体積と温度が一定なので分圧は物質量に比例し、反応の量を分圧のまま追える、という発想に行き着けるか。コックを開けた直後の分圧が $p_0$ ではなく体積の比の分だけ小さくなる( $V_1=V_2$ なら $\dfrac{p_0}{2}$ )ことが決め手。ここを誤ると問4の6つと問6がまとめて落ち、11点を失う。
  • 問5:係数3の B が A より先になくなるので、全圧の下限は B の分圧が0になる所、という発想に行き着けるか。問4の式が正になる条件として書ければ機械的に求まる。
九州大学に合格する方法

2024年九州大学化学
第3問 解答・解説

第3問は無機化学・理論化学の問題です。
テーマは『金属の製錬と精錬』『鉛蓄電池の計算』。

問題

2024年九州大学化学 第3問 問題
2024年九州大学化学 第3問 問題
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次の文章を読み、問1〜問6に答えよ。

天然に産出される鉱石から製錬された金属の多くは不純物を含むが、電気化学反応によって純度の高い金属に精錬される。このような高純度金属は多様な工業製品に利用され、私たちの生活に役立っている。

純銅を製造するには、まず主に黄銅鉱 $\ce{CuFeS2}$ からなる原料鉱石から純度約99 %の粗銅を得る。陽極に粗銅板、陰極に純銅板、電解液に硫酸銅(Ⅱ) $\ce{CuSO4}$ の硫酸酸性水溶液を用いて低電圧で電気分解すると、陰極板に純銅が析出(1)する。

粗銅を得る際に高濃度の $\ce{SO2}$ ガスが生成(2)する。 $\ce{SO2}$ は酸化バナジウム(Ⅴ) $\ce{V2O5}$ 触媒の作用により $\ce{SO3}$ に酸化(3)され、これを水に吸収させると硫酸が得られる。

純亜鉛を製造するには、まず主に閃亜鉛鉱 $\ce{ZnS}$ からなる原料鉱石から酸化亜鉛を主成分とする生成物を得て、これを希硫酸に溶解させ水溶液を得る。この水溶液を電解槽で電気分解すると、陰極に純亜鉛(4)が析出する。

純鉛を製造するには、まず主に方鉛鉱 $\ce{PbS}$ からなる原料鉱石から粗鉛を得る。陽極に粗鉛板、陰極に純鉛板を用い、電気分解を行うと陰極板に純鉛が析出する。

鉛蓄電池は負極活物質に鉛、正極活物質に酸化鉛(Ⅳ)、電解質水溶液に希硫酸を用いた構造をしている(5)。

黄銅鉱 $\ce{CuFeS2}$ は、閃亜鉛鉱( $\ce{ZnS}$ )型構造に類似した結晶構造を有する。一方、方鉛鉱 $\ce{PbS}$ は閃亜鉛鉱 $\ce{ZnS}$ とは異なる結晶構造を有している(6)。この理由は、 $\ce{Pb^2+}$ のイオン半径が $\ce{Zn^2+}$ のイオン半径に比べて大きく、 $\ce{Pb^2+}$ が $\ce{Zn^2+}$ より大きな配位数をとるためである。

問1. 下線部(1)に関して、粗銅の陽極板に $\ce{Pb}$ が不純物として含まれている場合、電気分解により $\ce{Pb}$ 成分はどのようになるか。以下の(A)〜(D)の中から最も適切なものを1つ選んで記号で答えよ。

(A) 陽極板の表面に酸化被膜を形成する。

(B) 単体として陽極泥を形成する。

(C) 溶液中に溶け出し、白色沈殿を生じる。

(D) 陰極板に銅と共に析出する。

問2. 下線部(2)に関して、 $\ce{SO2}$ に関する記述として正しいものを、以下の(A)〜(D)の中からすべて選んで記号で答えよ。

(A) $\ce{Cu}$ を熱濃硫酸に溶解させると発生する主な気体成分である。

(B) 硫化水素 $\ce{H2S}$ と反応させると $\ce{S}$ の単体が生成する。

(C) 硫化鉄 $\ce{FeS}$ を希硫酸に溶解させると発生する主な気体成分である。

(D) 亜硫酸水素ナトリウム $\ce{NaHSO3}$ を希硫酸に溶解させると発生する主な気体成分である。

問3. 下線部(3)に関して、 $\ce{V2O5}$ 触媒の作用について正しいものを、以下の(A)〜(D)の中からすべて選んで記号で答えよ。

(A) 活性化エネルギーの低下に相当する反応熱を増加させる。

(B) 表面に反応物を吸着して、反応を起こしやすい状態にする。

(C) 反応物と混合した状態で作用する均一触媒である。

(D) 平衡状態における生成物の濃度を増加させる。

問4. 下線部(4)に関して、亜鉛の用途として正しいものを、以下の(A)〜(D)の中からすべて選んで記号で答えよ。

(A) ステンレス鋼の主要成分の1つである。

(B) 黄銅(真ちゅう)の主要成分の1つである。

(C) ブリキの被覆膜(メッキ)の材料である。

(D) アルカリマンガン乾電池の負極である。

問5. 下線部(5)の鉛蓄電池について、9.65 A の電流で $1.00\times10^3$ 秒間、放電させた。この際の、電解質水溶液の質量の減少量〔g〕を有効数字2桁で答えよ。

問6. 下線部(6)に関して、閃亜鉛鉱 $\ce{ZnS}$ 結晶と方鉛鉱 $\ce{PbS}$ 結晶の単位格子として適切なものを、以下の(A)〜(E)の図の中から1つずつ選んで記号で答えよ。これらの図では、小さな球が陽イオンを、大きな球が陰イオンを表すものとする。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

不純物のゆくえは、銅よりイオン化傾向が大きいか小さいかで決まる。大きい金属は溶け出し、小さい金属は陽極泥になる。鉛だけは、溶け出したあと硫酸イオンと出会う(下の図)。

2024年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
  1. 鉛と銅のイオン化傾向を比べ、陽極で鉛が溶け出すかどうかを決める。
  2. 溶け出した $\ce{Pb^2+}$ が、硫酸酸性の電解液の中でどうなるかを考える。
  3. (A)〜(D) を1つずつ判定し、最も適切なものを選ぶ。

【問2の方針】

着眼点

何が出るかは、硫黄の酸化数が変わる酸化還元か、変わらない弱酸の遊離かで決まる。硫黄の酸化ラダーの上に4つの記述を置いて判定する(下の図)。

2024年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
  1. 硫黄の酸化ラダー(硫酸 +6・二酸化硫黄 +4・硫黄 0・硫化水素 −2)を書く。
  2. (A)(B) は酸化数が変わる反応として反応式を書き、生じる物質を確かめる。
  3. (C)(D) は酸化数が変わらない弱酸の遊離として、もとの物質と同じ酸化数の気体を選ぶ。
  4. 正しいものをすべて選ぶ。

【問3の方針】

着眼点

触媒は活性化エネルギーの小さい別の経路をつくるだけで、反応エンタルピーも平衡の位置も変えない(下の図)。触媒と反応物の状態が同じなら均一触媒、違えば不均一触媒。

2024年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
  1. 触媒が変えるもの(活性化エネルギー・反応の速さ)と、変えないもの(反応エンタルピー・平衡での濃度)に分けて、(A)(D) を判定する。
  2. $\ce{V2O5}$ (固体)と $\ce{SO2}$ ・ $\ce{O2}$ (気体)の状態を比べて、(B)(C) を判定する。
  3. 正しいものをすべて選ぶ。

【問4の方針】

着眼点

亜鉛の用途は、合金(黄銅)、めっき(トタン)、電池の負極の3つの系列で押さえる。誤りの選択肢は、同じ系列の別の金属とのすり替え(ステンレス鋼のクロム・ニッケル、ブリキのスズ)になっている(下の図)。

2024年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
  1. 合金の成分を思い出して、(A)(B) を判定する。
  2. めっきのトタン(亜鉛)とブリキ(スズ)を区別して、(C) を判定する。
  3. 乾電池の負極の物質から、(D) を判定する。
  4. 正しいものをすべて選ぶ。

【問5の方針】

着眼点

まず流れた電子の物質量を求める。電子2個が流れるたびに硫酸2個が両極の硫酸鉛(Ⅱ)になり、水2個ができる。硫酸が減る分と水が増える分を両方数える(下の図)。

2024年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
  1. 電流と時間から電気量を求め、ファラデー定数で割って電子の物質量を求める。
  2. 負極と正極の反応式を足して全体の式を書き、電子と硫酸・水の係数の比を確かめる。
  3. 溶液から減った硫酸の質量と、溶液に増えた水の質量を求める。
  4. 差をとって、電解質水溶液の質量の減少量を求める。

【問6の方針】

着眼点

$\ce{ZnS}$ も $\ce{PbS}$ も陽イオンと陰イオンが1:1なので、まず球の数が1:1の図に絞り、配位数で見分ける。「 $\ce{Pb^2+}$ の方が配位数が大きい」がヒント(下の図)。

2024年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
  1. (A)〜(E) の小さな球と大きな球を、位置ごとに「何個分×数」で数える。
  2. 個数の比が1:1になる図を選ぶ。
  3. 残った図の配位数を数え、配位数の小さい方を $\ce{ZnS}$ 、大きい方を $\ce{PbS}$ に当てる。

解答

2024年九州大学化学 第3問 解答・解説
2024年九州大学化学 第3問 解答・解説
2024年九州大学化学 第3問 解答・解説(続き)
2024年九州大学化学 第3問 解答・解説(続き)
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問1

陽極の粗銅では、銅と、銅よりイオン化傾向の大きい金属が酸化されて溶け出す。イオン化傾向は $\ce{Zn}>\ce{Fe}>\ce{Ni}>\ce{Pb}>\ce{Cu}>\ce{Ag}>\ce{Au}$ なので、鉛は銅より先に溶け出す。

$$\ce{Pb -> Pb^2+ + 2e-}$$

電解液は硫酸酸性なので、溶け出した $\ce{Pb^2+}$ はすぐに硫酸イオンと結びつき、水に溶けない硫酸鉛(Ⅱ)の白色沈殿になって、陽極の下にたまる。

$$\ce{Pb^2+ + SO4^2- -> PbSO4}$$

・(A) 誤り。表面の酸化被膜で反応が止まるのは、アルミニウム・鉄・ニッケルを濃硝酸に入れたときの不動態の話。陽極の鉛は溶け出す

・(B) 誤り。単体のまま落ちて陽極泥になるのは、銅よりイオン化傾向の小さい銀・金。鉛は銅よりイオン化傾向が大きいので、単体のままでは残らない(沈殿した $\ce{PbSO4}$ は陽極泥に混じってたまるが、単体ではない)

・(C) 正しい。溶け出して、硫酸鉛(Ⅱ)の白色沈殿になる

・(D) 誤り。低い電圧で電気分解しているので、陰極で還元されるのは $\ce{Cu^2+}$ だけ。銅よりイオン化傾向の大きい $\ce{Zn^2+}$ ・ $\ce{Fe^2+}$ ・ $\ce{Ni^2+}$ はイオンのまま液に残り、 $\ce{Pb^2+}$ は沈殿になるので、陰極には析出しない

電圧を低くするのは、銀・金を酸化させずに単体のまま落とし、陰極に銅だけを析出させるため。陽極泥からは金・銀などの貴金属が回収される。

答 (C)(3点)

問2

硫黄の酸化ラダーは、上から硫酸(+6)、二酸化硫黄(+4)、硫黄(0)、硫化水素(−2)。酸化数が変わる反応は酸化還元、変わらない反応は弱酸の遊離(下の図)。

・(A) 正しい。熱濃硫酸は酸化剤として働き、硫黄が +6 から +4 に下がって二酸化硫黄になる。 $\ce{Cu + 2H2SO4 -> CuSO4 + SO2 + 2H2O}$ 。銅は水素よりイオン化傾向が小さいので、希硫酸には溶けない

・(B) 正しい。二酸化硫黄はふつう還元剤だが、硫化水素が相手のときだけ酸化剤として働く。 +4 と −2 から、間の 0 の硫黄ができる。 $\ce{SO2 + 2H2S -> 3S + 2H2O}$ 。水溶液の中では細かい硫黄の粒が散らばり、白く濁る

・(C) 誤り。硫化鉄(Ⅱ)の硫黄は −2 で、希硫酸(強い酸)を加えると弱い酸の硫化水素が追い出される(弱酸の遊離)。 $\ce{FeS + H2SO4 -> FeSO4 + H2S}$ 。酸化数は変わらないので、 +4 の二酸化硫黄にはならない

・(D) 正しい。亜硫酸水素ナトリウムの硫黄は +4 で、希硫酸を加えると弱い酸の亜硫酸が追い出され、二酸化硫黄と水に分かれる。 $\ce{2NaHSO3 + H2SO4 -> Na2SO4 + 2SO2 + 2H2O}$ 。亜硫酸ナトリウムでも同じ( $\ce{Na2SO3 + H2SO4 -> Na2SO4 + SO2 + H2O}$ )

酸を加えて出る気体は、硫化物(−2)なら硫化水素、亜硫酸塩(+4)なら二酸化硫黄と、もとの硫黄の酸化数で決まる。

答 (A)・(B)・(D)(4点)

問3

接触法では、二酸化硫黄を固体の $\ce{V2O5}$ の表面で酸素と反応させ、三酸化硫黄にする。

$$\ce{2SO2 + O2 -> 2SO3}$$

触媒は、活性化エネルギーの小さい別の経路で反応を進める。反応前と反応後の高さは変わらない(下の図)。

・(A) 誤り。選択肢の「反応熱」は、今の教科書の言葉では反応エンタルピー。触媒は活性化エネルギーを下げるが、反応前と反応後の高さは変えないので、反応エンタルピー(発生する熱の量)は変わらない

・(B) 正しい。気体の $\ce{SO2}$ と $\ce{O2}$ が固体の $\ce{V2O5}$ の表面に吸着し、反応しやすい状態になる

・(C) 誤り。 $\ce{V2O5}$ は固体、反応物は気体で状態が違うので、不均一触媒。均一触媒は、反応物と同じ溶液に溶けて働くもの(過酸化水素の分解に加える $\ce{Fe^3+}$ など)

・(D) 誤り。触媒は正反応も逆反応も速くするので、平衡に達するまでの時間が短くなるだけで、平衡での $\ce{SO3}$ の濃度は変わらない。平衡を動かすのは、濃度・圧力・温度の変化(ルシャトリエの原理)

「すべて」選ぶ形式だが、正しいのは (B) の1つだけ。

答 (B)(4点)

問4

亜鉛の用途を、合金・めっき・電池の3つの系列で並べると下の図になる。

・(A) 誤り。ステンレス鋼は、鉄にクロム(とニッケル)を加えた合金。亜鉛は含まない

・(B) 正しい。黄銅(真ちゅう)は銅と亜鉛の合金(五円硬貨・金管楽器)。銅の合金は、黄銅(亜鉛)・青銅(スズ)・白銅(ニッケル)の3つで押さえる

・(C) 誤り。ブリキは鋼板にスズをめっきしたもの(缶詰の缶)。亜鉛をめっきしたものはトタン(屋根など)

・(D) 正しい。アルカリマンガン乾電池は、負極に亜鉛、正極に酸化マンガン(Ⅳ)、電解液に水酸化カリウム水溶液を使う。マンガン乾電池も負極は亜鉛

答 (B)・(D)(4点)

問5

まず、流れた電子の物質量を求める。電気量は電流×時間で、ファラデー定数で割ると電子の物質量になる。

$$\frac{9.65\times1.00\times10^3}{9.65\times10^4}=0.100\ \mathrm{mol}\quad(\text{流れた電子の物質量})$$

負極の鉛も正極の酸化鉛(Ⅳ)も、いったん $\ce{Pb^2+}$ になり、すぐに硫酸イオンと結びついて、水に溶けない $\ce{PbSO4}$ として極板に付く。2つの段階を足すと、それぞれの極の反応式になる。

$$\text{負極}\quad\ce{Pb + SO4^2- -> PbSO4 + 2e-}$$

$$\text{正極}\quad\ce{PbO2 + 4H+ + SO4^2- + 2e- -> PbSO4 + 2H2O}$$

2つを足し、 $\ce{4H+}$ と $\ce{2SO4^2-}$ を $\ce{2H2SO4}$ にまとめると全体の式になる(電子2 mol が流れる)。

$$\ce{Pb + PbO2 + 2H2SO4 -> 2PbSO4 + 2H2O}$$

電子と硫酸の係数はどちらも2で同じなので、電子0.100 mol が流れると、溶液から硫酸が0.100 mol 減り、水が0.100 mol 増える。電解質水溶液は硫酸と水でできているので、両方を足し引きする。 $\ce{H2SO4}$ の分子量は $1.00\times2+32.1+16.0\times4=98.1$ 、 $\ce{H2O}$ は18.0なので

$$98.1\times0.100-18.0\times0.100=9.81-1.80=8.01\ \mathrm{g}\quad(\text{電解質水溶液の質量の減少量})$$

放電すると硫酸が減って水が増えるので、電解液の濃度(密度)は小さくなる。一方、極板は両方とも $\ce{PbSO4}$ が付いて重くなる(この放電では負極が $\ce{SO4}$ 分の4.8 g、正極が $\ce{SO2}$ 分の3.2 g 増える)。

答 8.0 g(5点)

問6

(A)〜(E) の小さな球(陽イオン)と大きな球(陰イオン)を、位置ごとに数える(頂点 $\dfrac18$ ・辺 $\dfrac14$ ・面 $\dfrac12$ ・内部1)。

・(A) 小さな球は頂点と面の中心で $\dfrac18\times8+\dfrac12\times6=4$ 個、大きな球は内部に8個。陽イオン:陰イオン=1:2

・(B) 大きな球は頂点と面の中心で4個、小さな球は内部に8個。陽イオン:陰イオン=2:1

・(C) 小さな球は頂点と中心で $\dfrac18\times8+1=2$ 個、大きな球は面の中心で $\dfrac12\times6=3$ 個。陽イオン:陰イオン=2:3

・(D) 小さな球は頂点と面の中心で4個、大きな球は辺の中点と中心で $\dfrac14\times12+1=4$ 個。1:1

・(E) 大きな球は頂点と面の中心で4個、小さな球は内部に4個。1:1

$\ce{ZnS}$ ・ $\ce{PbS}$ はどちらも1:1なので、(D) と (E) に絞られる。

・(E) は、小さな球1個が4個の大きな球に囲まれ、その正四面体の中心にある。配位数4で $\ce{ZnS}$ 型

・(D) は、陽イオンと陰イオンが交互に並び、陽イオン1個を上下・左右・前後の6個の陰イオンが囲む。配位数6で $\ce{NaCl}$ 型

問題文のとおり、 $\ce{Pb^2+}$ は $\ce{Zn^2+}$ より大きいので、まわりにより多くの陰イオンを置ける。陽イオンが小さいと、多くの陰イオンで囲もうとしても陰イオンどうしがぶつかって安定にならない。陽イオンと陰イオンの半径比が大きくなるほど、配位数は $\ce{ZnS}$ 型の4→ $\ce{NaCl}$ 型の6→ $\ce{CsCl}$ 型の8と増える(限界半径比)。よって配位数4の (E) が閃亜鉛鉱、配位数6の (D) が方鉛鉱。リード文の黄銅鉱 $\ce{CuFeS2}$ は、 $\ce{ZnS}$ 型の $\ce{Zn}$ の位置に $\ce{Cu}$ と $\ce{Fe}$ が規則正しく交互に入った構造。

答(閃亜鉛鉱 $\ce{ZnS}$) (E)(3点)

答(方鉛鉱 $\ce{PbS}$) (D)(2点)

別解

問5 (三酸化硫黄の分が抜けると見る)溶液からは $\ce{H2SO4}$ が出ていき、 $\ce{H2O}$ が入ってくるので、差し引きで $\ce{H2SO4}-\ce{H2O}=\ce{SO3}$ の分が溶液から抜ける。電子1 mol あたり $\ce{SO3}$ 1 mol( $32.1+16.0\times3=80.1$ g)なので、 $0.100\times80.1=8.01$ g で本解と同じ8.0 g。慣れてきたら、こちらの方が速い。

問6 (型で配位数を覚えている場合)「 $\ce{ZnS}$ 型・ $\ce{NaCl}$ 型・ $\ce{CsCl}$ 型の配位数は4・6・8」と型の図を覚えていれば、(E) が $\ce{ZnS}$ 型、(D) が $\ce{NaCl}$ 型の図だとすぐに分かる。ただし見慣れない向きの図で取り違えないように、本解のとおり個数の比で1:1を確かめてから当てはめる。

出題意図

問1 銅の電解精錬で、粗銅に含まれる鉛がどうなるかを、イオン化傾向と電解液(硫酸酸性)の両方から判断できるか

問2 硫黄の化合物と酸の反応を、酸化数が変わる酸化還元か、変わらない弱酸の遊離かで見分け、二酸化硫黄が生じる反応をすべて選べるか

問3 触媒が変えるもの(活性化エネルギー)と変えないもの(反応エンタルピー・平衡)を区別し、固体の触媒が気体の反応物に働く不均一触媒であることを判断できるか

問4 亜鉛の用途を、合金・めっき・電池の系列の中で、ほかの金属とのすり替えに惑わされずに判定できるか

問5 鉛蓄電池の放電で、電解液から硫酸が減り水が増えることを、電子の物質量から求められるか

問6 単位格子の中の陽イオンと陰イオンの数と配位数から、 $\ce{ZnS}$ 型と $\ce{NaCl}$ 型の単位格子を見分けられるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや簡単
目標得点25点25点
目標時間10分10分

製錬と精錬を題材にした、計算と知識だけの大問。
問われているのは「無機化学の暗記ができているか」で、「すべて」選ぶ正誤が3つあっても中身は易しいので、10分で満点を取りたい。

無機の正誤は○×で覚えず、イオン化傾向の並び・硫黄の酸化ラダー・合金とめっきの表のように系列で押さえておけば、どの角度で聞かれても迷わない。
単位格子は $\ce{ZnS}$ 型・ $\ce{NaCl}$ 型・ $\ce{CsCl}$ 型の3つを白紙に書けるまで練習しておくこと。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問6:(A)〜(E) の単位格子を数えて1:1の (D)(E) に絞り、配位数4の $\ce{ZnS}$ 型と配位数6の $\ce{NaCl}$ 型を見分けられるか。 $\ce{ZnS}$ 型は $\ce{NaCl}$ 型・ $\ce{CsCl}$ 型ほど練習していない受験生が多く、図の数え方にも時間がかかる。ここで差がつく( $\ce{ZnS}$ と $\ce{PbS}$ で5点)。
  • 問2〜問4:「すべて」選ぶ正誤で、4つすべてを判定しきれるか。問2 (C)(硫化鉄(Ⅱ)から出るのは硫化水素)と問4 (C)(ブリキはスズ)は、覚え違えやすい定番のすり替え。
  • 問5:電解質水溶液が「硫酸+水」であることを言葉にして、水が増える分まで数えられるか。

2024年九州大学化学
第4問 解答・解説

第4問は有機化学の問題です。
テーマは『アルケンの異性体』『立体異性体』。

問題

2024年九州大学化学 第4問 問題
2024年九州大学化学 第4問 問題
問題文をテキストで読む

次の文章を読み、問1〜問8に答えよ。構造式を記入するときは、記入例にならって記せ。

構造式の記入例

炭素原子間に二重結合を1個もつ鎖式不飽和炭化水素をアルケンと呼び、炭素の数を $n$ 個としたとき一般式 $\boxed{\text{ア}}$ で表すことができる。炭素数4個の鎖式アルケンには3つの構造異性体 A、B、C があり、化合物 A には、2つの幾何異性体が存在する。

二重結合 $\ce{C=C}$ は化学反応性に富み、その性質を利用して、アルケンは様々な化合物の合成原料として用いられる。化合物 B に塩化水素を付加させると、2種類の反応生成物が予想されるが、実際の反応では不斉炭素原子を持つ化合物 D が主生成物として得られ、化合物 E が副生成物として少量得られる。

シクロヘキセンに臭素を付加させると主生成物として化合物 F が得られる。化合物 F は、1組の鏡像異性体からなるラセミ体である。一方、化合物 F のジアステレオ異性体である化合物 G は、シクロヘキセンへの臭素の付加反応では、ほとんど生じない。化合物 G は、不斉炭素原子を持つが鏡像異性体の区別はできない光学不活性な化合物である。

二重結合 $\ce{C=C}$ を1つ有する炭素原子、水素原子、酸素原子のみからなる化合物 H について調べた。17.4 mg の化合物 H を十分に乾燥させた酸素ガスを流しながら完全燃焼させ、発生したガスを塩化カルシウム管、ソーダ石灰管の順で連結した装置に通したところ、塩化カルシウム管の質量は5.4 mg 増加し、ソーダ石灰管の質量は26.4 mg 増加した。また、化合物 H を水に溶解させ、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えると二酸化炭素が発生した。

問1. $\boxed{\text{ア}}$ にあてはまる一般式を答えよ。

問2. 化合物 A の2つの幾何異性体(A1 および A2)の名称と構造式を、それぞれの異性体を区別して答えよ。記入にあたって、両異性体の解答順は問わない。

問3. 化合物 D の構造式を答えよ。記入にあたって、鏡像異性体は区別しなくてよい。

問4. 化合物 B と塩化水素の反応に関して、以下の(1)〜(7)の中から正しい記述を2つ選び、番号で答えよ。

(1) 塩化水素の付加反応は、ザイツェフの法則に従うため、化合物 D が主生成物として得られる。

(2) 塩化水素の付加反応では、化合物 B の持つ二重結合中の2本の結合のうち、シグマ結合が切断される。

(3) 塩化水素の付加反応では、反応中間体として炭素陰イオンが生じる。

(4) 化合物 E は、化合物 C に対する塩化水素の付加反応によっても一部生じる。

(5) 化合物 B の二重結合を形成していた炭素間の結合距離は、塩化水素の付加により長くなる。

(6) 化合物 D と E の物理的・化学的性質は、ほぼ同等であるため、核磁気共鳴法(NMR)で両化合物を区別することはできない。

(7) 化合物 D の鏡像異性体の生成比率は、特殊な触媒等を用いなければ、ほぼ1:1となる。

問5. 生成物 F のどちらか一方の鏡像異性体の立体構造式を、 $\boxed{\text{イ}}$ 〜 $\boxed{\text{オ}}$ に置換基を記入して答えよ。なお、太線で示す結合は紙面の手前側にあり、破線で示す結合は紙面の向こう側にあることを意味する。

問6. 化合物 G のように、複数の不斉炭素原子を持つが光学活性とならない化合物の一般名称を答えよ。

問7. 化合物 H の分子量は116である。化合物 H の分子式を答えよ。

問8. 化合物 H は、同じ官能基が2つ結合した二重結合 $\ce{C=C}$ を有し、幾何異性体が存在しない鎖式化合物である。化合物 H の構造式を答えよ。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

鎖式で二重結合が1つなら、同じ炭素数のアルカン $\mathrm{C}_n\mathrm{H}_{2n+2}$ より H が2個少ない。

  1. アルカンの一般式から H を2個減らして答える。

【問2の方針】

着眼点

$\ce{C4H8}$ の鎖式アルケンは3つしかない。幾何異性体ができるのは、二重結合のどちらの炭素にも違う基が2つ付くときだけで、それを満たすのは2-ブテン(下の図)。

2024年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
  1. 炭素数4の鎖式アルケン(1-ブテン・2-ブテン・2-メチルプロペン)を書き出す。
  2. 二重結合の両方の炭素に違う基が付く2-ブテンを A とする。
  3. 2つの $\ce{CH3}$ が二重結合の同じ側にあるものをシス、反対側にあるものをトランスとして、名称と構造式を書く。

【問3の方針】

着眼点

B と C は1-ブテンと2-メチルプロペンのどちらか。塩化水素を付けたときにできる2つの生成物のうち、不斉炭素をもつものができるのは1-ブテンだけ(下の図)。

2024年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
  1. 1-ブテンと2-メチルプロペンのそれぞれに、H と Cl を2通りの向きで付けた生成物を書く。
  2. 不斉炭素をもつ生成物ができる1-ブテンを B、残る2-メチルプロペンを C とする。
  3. 1-ブテンの主生成物(H の多い端の炭素に H が付いたもの)を D として構造式を書く。

【問4の方針】

着眼点

範囲を少し超える言葉が入っているが、教科書の知識で正しいと言い切れる記述が2つある。付加の進み方( $\ce{H+}$ が付いて炭素陽イオン→ $\ce{Cl-}$ が付く)を図にして確かめる(下の図)。

2024年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
  1. 付加の向きの法則の名前、切れる結合、中間体のイオンの符号を確かめる((1)〜(3))。
  2. C から E ができるかを、炭素骨格の形で確かめる((4))。
  3. 二重結合が単結合になると炭素間の距離がどう変わるか、D と E が構造異性体であること、鏡像異性体のでき方を確かめる((5)〜(7))。

【問5の方針】

着眼点

問題文に「G はメソ体」とある。対称面をもつのは2つの Br が同じ側のシスなので、G はシス、F はトランス。太線(ウ・エ)が手前、破線(イ・オ)が奥(下の図)。

2024年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
  1. G(メソ体)はシス、F はトランスと決める。
  2. 左右の炭素で、Br の一方を手前(太線)、もう一方を奥(破線)に置く。
  3. 残りの2つに H を入れる。

【問6の方針】

着眼点

不斉炭素をもつのに、分子の中に対称面があって鏡像と重なる化合物の名前。

  1. 名称を答える。

【問7の方針】

着眼点

塩化カルシウム管の増加は水、ソーダ石灰管の増加は二酸化炭素。ここから C と H の質量が決まり、残りが O(下の図)。

2024年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
  1. 二酸化炭素と水の質量から、C と H の質量を求め、O の質量は全体から引いて求める。
  2. 物質量の比から組成式を求める。
  3. 分子量116から分子式を求める。

【問8の方針】

着眼点

不飽和度は3で、酸素4つはカルボキシ基2つ分。 $\ce{C=C}$ の2つの炭素に1つずつ付けると幾何異性体ができるので、1つの炭素に2つ付ける(下の図)。

2024年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
  1. 分子式から不飽和度を求め、 $\ce{C=C}$ 1つとカルボキシ基2つの $\ce{C=O}$ で合うことを確かめる。
  2. 炭素4個のうち2個がカルボキシ基、2個が $\ce{C=C}$ の炭素と決める。
  3. 幾何異性体がないように、カルボキシ基2つを同じ炭素に付けて構造式を書く。

解答

2024年九州大学化学 第4問 解答・解説
2024年九州大学化学 第4問 解答・解説
2024年九州大学化学 第4問 解答・解説(続き)
2024年九州大学化学 第4問 解答・解説(続き)
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問1

鎖式の飽和炭化水素(アルカン)は $\mathrm{C}_n\mathrm{H}_{2n+2}$。二重結合が1つできると、その2つの炭素から H が1個ずつ減るので、H は2個少ない。

答 $\mathrm{C}_n\mathrm{H}_{2n}$(2点)

問2

$\ce{C4H8}$ の鎖式アルケンは、1-ブテン $\ce{CH2=CH-CH2-CH3}$・2-ブテン $\ce{CH3-CH=CH-CH3}$・2-メチルプロペン $\ce{CH2=C(CH3)-CH3}$ の3つ。

・1-ブテンは左の炭素に H が2つ、2-メチルプロペンはどちらの炭素にも同じ基が2つ付くので、幾何異性体はない

・2-ブテンは、二重結合のどちらの炭素にも $\ce{CH3}$ と H という違う基が付くので、幾何異性体がある

よって A は2-ブテン。2つの $\ce{CH3}$ が二重結合の同じ側にあるものがシス形、反対側にあるものがトランス形。

(A1・A2 は順不同)

答(A1 の名称) シス-2-ブテン(1点)

答(A1 の構造式) 2つの $\ce{CH3}$ が二重結合の同じ側(構造式は上の図)(1点)

答(A2 の名称) トランス-2-ブテン(1点)

答(A2 の構造式) 2つの $\ce{CH3}$ が二重結合の反対側(構造式は上の図)(1点)

問3

B と C は、1-ブテンと2-メチルプロペンのどちらか。それぞれに塩化水素を付けると、H と Cl の付く向きで2つずつ生成物ができる。

・1-ブテン:2-クロロブタン $\ce{CH3-CHCl-CH2-CH3}$(Cl の付いた炭素に H・ $\ce{CH3}$・ $\ce{CH2CH3}$・Cl の4つの違う基=不斉炭素)と、1-クロロブタン $\ce{CH2Cl-CH2-CH2-CH3}$

・2-メチルプロペン:2-クロロ-2-メチルプロパン $\ce{(CH3)3CCl}$ と、1-クロロ-2-メチルプロパン $\ce{(CH3)2CH-CH2Cl}$。どちらも不斉炭素はない

不斉炭素をもつ D ができるのは1-ブテンだけなので、B は1-ブテン、C は2-メチルプロペン。二重結合にハロゲン化水素が付くとき、H は H の多い方の炭素に付く(マルコフニコフ則)ので、1-ブテンでは端の $\ce{CH2}$ に H、隣の $\ce{CH}$ に Cl が付いた2-クロロブタンが主生成物 D、1-クロロブタンが副生成物 E になる。

答 $\ce{CH3-CHCl-CH2-CH3}$(構造式は上の図)(3点)

問4

1-ブテンへの塩化水素の付加は、まず二重結合のうち1本が切れて $\ce{H+}$ が端の炭素に付き、隣の炭素が陽イオンになる。そこに $\ce{Cl-}$ が付いて D になる(下の図)。

・(1) 誤り。付加の向きを決めるのはマルコフニコフ則。ザイツェフ則はアルコールの脱水などで、どの H が抜けるかを決める法則

・(2) 誤り。二重結合は、強いシグマ( $\sigma$ )結合1本と弱いパイ( $\pi$ )結合1本でできている。付加で切れるのは $\pi$ 結合で、 $\sigma$ 結合は残る

・(3) 誤り。 $\ce{H+}$ が付いてできる中間体は炭素陽イオン

・(4) 誤り。付加では炭素骨格は変わらない。C(2-メチルプロペン)は枝分かれした骨格なので、直鎖の1-クロロブタン E はできない

・(5) 正しい。炭素間の距離は、二重結合で約0.134 nm、単結合で約0.154 nm。付加で二重結合が単結合になるので長くなる

・(6) 誤り。D と E は構造異性体で、沸点などの性質が違う。NMR は分子の中の H のつながり方の違いを見分ける方法で、D と E は区別できる

・(7) 正しい。陽イオンになった炭素は平面の形で、 $\ce{Cl-}$ は表と裏から同じ割合で付く。2つの鏡像異性体が 1:1 でできる(ラセミ体)

答 (5)、(7)(5点)

問5

問題文より、G は不斉炭素をもつのに光学不活性なメソ体。2つの Br が環の同じ側にある(シス)と分子の中に対称面ができるので、G はシス-1,2-ジブロモシクロヘキサン。そのジアステレオ異性体の F は、2つの Br が環の反対側にあるトランス-1,2-ジブロモシクロヘキサン。シクロヘキセンに臭素が付くときは、2つの Br が環の上と下から1つずつ付く(トランス付加)ので、F が主生成物になることとも合う。

図では、ウ・エ(太線)が手前、イ・オ(破線)が奥。左の炭素の Br を奥(イ)に置けば、右の炭素の Br は手前(エ)。逆に、左を手前(ウ)・右を奥(オ)にしたものは、もう一方の鏡像異性体で、どちらを答えてもよい。ウ・エ(両方手前)やイ・オ(両方奥)に Br を置くとシスの G になる。

答 イ Br、ウ H、エ Br、オ H(イ H、ウ Br、エ H、オ Br でもよい)(5点)

問6

G は不斉炭素を2つもつが、分子の中に対称面があり、鏡像と重なる。このような化合物をメソ体という。

答 メソ体(2点)

問7

塩化カルシウム管は水だけを、ソーダ石灰管は二酸化炭素を吸収する。ソーダ石灰は水も吸うので、先に塩化カルシウム管で水を取る(下の図)。

・C の質量: $26.4\times\dfrac{12.0}{44.0}=7.20$ mg

・H の質量: $5.4\times\dfrac{2.00}{18.0}=0.600$ mg

・O の質量: $17.4-7.20-0.600=9.60$ mg

$$\mathrm{C}:\mathrm{H}:\mathrm{O}=\dfrac{7.20}{12.0}:\dfrac{0.600}{1.00}:\dfrac{9.60}{16.0}=0.600:0.600:0.600=1:1:1$$

組成式は $\ce{CHO}$(式量29)。分子量116なので、 $116\div29=4$ より分子式は組成式の4倍。

答 $\ce{C4H4O4}$(2点)

問8

$\ce{C4H4O4}$ の不飽和度は $\dfrac{2\times4+2-4}{2}=3$。炭酸水素ナトリウムで二酸化炭素が出るので、炭酸より強い酸のカルボキシ基をもつ。酸素4つでカルボキシ基2つになり、その $\ce{C=O}$ 2つと $\ce{C=C}$ 1つで不飽和度3と合う。

炭素4個のうち2個がカルボキシ基、残りの2個が $\ce{C=C}$ の炭素。カルボキシ基を付ける場所は2通り。

・二重結合の2つの炭素に1つずつ: $\ce{HOOC-CH=CH-COOH}$。シス形のマレイン酸とトランス形のフマル酸の幾何異性体があるので外れる

・二重結合の1つの炭素に2つ: $\ce{CH2=C(COOH)2}$。もう一方の炭素には H が2つ付くので、幾何異性体はない

「同じ官能基が2つ結合した二重結合」とも合う。

答 $\ce{CH2=C(COOH)2}$(構造式は上の図)(2点)

出題意図

問1・問2 炭素数4の鎖式アルケンを書き出し、幾何異性体ができる条件で2-ブテンを選び、シスとトランスを書き分けられるか

問3・問4 不斉炭素をもつ主生成物から B を決め、塩化水素の付加の進み方(マルコフニコフ則・炭素陽イオン・ラセミ体)を正しく判断できるか

問5・問6 メソ体とラセミ体の違いを捉え、臭素の付加の生成物を立体構造式に置くことができるか

問7・問8 元素分析で分子式を求め、不飽和度と酸の性質から構造を1つに決められるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度標準
目標得点20点15点
目標時間15分15分

アルケンの異性体・付加・立体異性体・元素分析を一通り問う、九大の有機としてオーソドックスな大問。
差がつくのは立体構造式の問5 で、「メソ体=シス」と問題文から決められれば知識がなくても解ける。

シス・トランス、メソ体とラセミ体を構造式で説明できるまで練習しておけば、医学科は満点を狙える。
知識で答えが決まる小問は迷わず書き、立体の図に時間を残そう。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問5:問題文の「G はメソ体」から G がシス・F がトランスと決め、太線(手前)と破線(奥)に Br を1つずつ置く、という発想に行き着けるか。立体の図に慣れていない受験生が多く、両方手前に置いてシスにしてしまうと5点を落とす。
  • 問4:シグマ結合・炭素陰イオン・NMR など見慣れない言葉に惑わされず、教科書の知識で正しいと言い切れる (5)・(7) を選び切れるか。
九州大学に合格する方法

2024年九州大学化学
第5問 解答・解説

第5問は高分子化合物(合成高分子)・理論化学の問題です。
テーマは『イオン交換樹脂』『アミノ酸の等電点』。

問題

2024年九州大学化学 第5問 問題
2024年九州大学化学 第5問 問題
問題文をテキストで読む

次の文章(1)〜(3)を読み、問1〜問5に答えよ。

(1) ビニル基を有する単量体は容易に重合反応を起こすことから、多くの有用な合成高分子の原料となる。その1つであるスチレンを重合させると、硬くて加工しやすい合成高分子が得られる。

問1. スチレンおよびその重合体に関する記述として正しいものを、以下の(A)〜(F)の中からすべて選んで記号で答えよ。

(A) スチレンは芳香族炭化水素で、水に溶けにくく、ベンゼンよりも沸点が高い。

(B) スチレンを付加重合すると、鎖状構造を持つポリスチレンとなる。ポリスチレンは耐薬品性や難燃性を有し、食品用ラップなどとして利用される。

(C) ポリスチレンには不斉炭素原子は存在しない。

(D) 気泡を含ませたポリスチレンは発泡スチロールと呼ばれ、断熱材や緩衝材として利用される。

(E) スチレンに $p$-ジビニルベンゼンを加えて共重合させた合成高分子は、立体網目構造を持つ。

(F) 自動車のタイヤなどに利用されるスチレン-ブタジエンゴムは、単量体であるスチレンとブタジエンが1分子ずつ交互に共重合した合成高分子である。

(2) スチレンと $p$-ジビニルベンゼンを物質量比10:1で共重合させると、合成樹脂が得られた。この合成樹脂に濃硫酸を作用させると、樹脂中にスルホ基が導入され、陽イオン交換樹脂が得られた。生成した陽イオン交換樹脂の質量は、原料の合成樹脂の1.41倍に増加した。

問2. 文章(2)で生成した陽イオン交換樹脂において、スチレンに由来する単位構造の何%がスルホン化されているか、最も近い整数値で答えよ。ただし、スチレン由来の単位構造あたりスルホ基は1つまでしか導入されないとする。

(3) 陽イオン交換樹脂を利用すると、アミノ酸の分離ができる。グルタミン酸をある条件下でメチルエステル化すると、図に示したアミノ酸 A と、原料のグルタミン酸の混合物が得られた。

この混合物を陽イオン交換樹脂で分離できるかどうかを予想するために、グルタミン酸とアミノ酸 A の等電点を求める。グルタミン酸の電離平衡は、次の3つの式で表される。ただし、グルタミン酸の陽イオンを $\ce{Glu+}$ 、中性の双性イオンを $\ce{Glu^0}$ 、1価陰イオンを $\ce{Glu-}$ 、2価陰イオンを $\ce{Glu^2-}$ とする。

第1段階 $\ce{Glu+ <=> Glu^0 + H+}$  電離定数 $K_1=8.0\times10^{-3}$ mol/L第2段階 $\ce{Glu^0 <=> Glu- + H+}$  電離定数 $K_2=9.0\times10^{-5}$ mol/L第3段階 $\ce{Glu- <=> Glu^2- + H+}$  電離定数 $K_3=3.0\times10^{-10}$ mol/L

ここで、グルタミン酸の等電点は酸性側であることから、 $\ce{Glu^2-}$ の存在は無視できる。したがって、グルタミン酸の等電点は $\boxed{\text{ア}}$ と求められる。

次にアミノ酸 A の等電点を考える。ここで、 $\alpha$ 位の炭素に結合したアミノ基とカルボキシ基の電離定数は、アミノ酸 A とグルタミン酸で変わらないとすると、アミノ酸 A の等電点は $\boxed{\text{イ}}$ と求められる。

問3. グルタミン酸の2つのカルボキシ基を比べると、側鎖にあるカルボキシ基の方がより弱い酸である。 $\ce{Glu^0}$ の構造式を図にならって答えよ。

問4. 文章(3)に示したグルタミン酸の電離定数を用いて $\boxed{\text{ア}}$ および $\boxed{\text{イ}}$ の値を計算し、それぞれ有効数字2桁で答えよ。

問5. グルタミン酸とアミノ酸 A の混合水溶液を強酸性にして陽イオン交換樹脂を詰めた円筒(カラム)に通し、両方のアミノ酸を樹脂に吸着させる。このカラムに pH 4.0 もしくは pH 7.0 の緩衝液を流したときに、起こりうる最も適切な現象を、以下の(A)〜(D)の中から選び、記号で答えよ。ただし、いずれの pH でも十分な量の緩衝液を流すものとする。

(A) どちらのアミノ酸もカラムに残り、緩衝液のみが流出する。

(B) 主にグルタミン酸がカラムに残り、アミノ酸 A が溶出する。

(C) 主にアミノ酸 A がカラムに残り、グルタミン酸が溶出する。

(D) どちらのアミノ酸も溶出する。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

(C) は、ベンゼン環が付いた炭素に付いている4つを確かめる。左右の鎖は長さが違うので、4つとも違う(下の図)。

2024年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
  1. (A) スチレンは芳香族炭化水素で、分子量がベンゼンより大きい。水に溶けにくいことと沸点を確かめる。
  2. (B)(D) ポリスチレンの燃えやすさと用途(発泡ポリスチレン・食品トレー)を思い出し、食品用ラップの材料と比べる。
  3. (C) ベンゼン環が付いた炭素の4つ(水素原子・ベンゼン環・左の鎖・右の鎖)がすべて違うかを判定する。
  4. (E)(F) p-ジビニルベンゼンが鎖と鎖を橋かけすること、スチレン-ブタジエンゴムの単量体の並び方を判定する。

【問2の方針】

着眼点

スチレン10個と p-ジビニルベンゼン1個を1組とみる。スルホン化は $-\ce{H}$ が $-\ce{SO3H}$ に置きかわる反応なので、1か所ごとに $\ce{SO3}$ の分だけ式量が増える(下の図)。

2024年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
  1. スチレン $\ce{C8H8}$(104.0)10個と p-ジビニルベンゼン $\ce{C10H10}$(130.0)1個で、1組の式量1170 を求める。
  2. スルホン化1か所で増える式量( $\ce{SO3}$ の80.1)を求める。
  3. 1組のうち $k$ 個がスルホン化されたとして、質量が1.41倍になる式を立てて $k$ を求め、10個に対する割合に直す。

【問3・問4の方針】

着眼点

グルタミン酸の3つの電離は、 $K_1$ が $\alpha$位のカルボキシ基、 $K_2$ が側鎖のカルボキシ基、 $K_3$ がアミノ基。アミノ酸 A は側鎖が電離しないので、 $K_1$ と $K_3$ だけ(下の図)。

2024年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
  1. 問3 $\ce{Glu+}$ から $K_1$ の段階で $\alpha$位のカルボキシ基だけが $-\ce{COO-}$ になったものが $\ce{Glu^0}$ 。側鎖の $-\ce{COOH}$ とアミノ基の $-\ce{NH3+}$ はそのまま、問題の図の形で書く。
  2. ア 等電点では全体の電荷が0なので、 $\ce{Glu^2-}$ を無視すると $[\ce{Glu+}]=[\ce{Glu-}]$ 。 $K_1$ と $K_2$ をかけて $\ce{Glu^0}$ を消し、 $[\ce{H+}]^2=K_1K_2$ から pH を求める。
  3. イ アミノ酸 A は $\ce{A+}\to\ce{A^0}\to\ce{A-}$ の2段階で、電離定数は $\alpha$位のカルボキシ基の $K_1$ とアミノ基の $K_3$ 。等電点では $[\ce{A+}]=[\ce{A-}]$ なので、 $[\ce{H+}]^2=K_1K_3$ から pH を求める。

【問5の方針】

着眼点

陽イオン交換樹脂に残るのは、全体として正の電荷をもつアミノ酸だけである。流す液の pH が等電点より小さければ陽イオンが多く残り、等電点より大きければ陽イオンでなくなって流れ出る(下の図)。

2024年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
2024年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
  1. 問4 の等電点(グルタミン酸 3.1・アミノ酸 A 5.8)と、流す液の pH(4.0・7.0)を比べる。
  2. pH 4.0 では、等電点を上回るグルタミン酸だけが流れ出て、A は残る。pH 7.0 では両方とも等電点を上回るので、両方流れ出る。

解答

2024年九州大学化学 第5問 解答・解説
2024年九州大学化学 第5問 解答・解説
2024年九州大学化学 第5問 解答・解説(続き)
2024年九州大学化学 第5問 解答・解説(続き)
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問1

・(A) 正しい。スチレン $\ce{C6H5-CH=CH2}$ は芳香族炭化水素で、水に溶けにくい。分子量がベンゼンより大きく、沸点は約145℃でベンゼン(約80℃)より高い

・(B) 誤り。前半の鎖状構造は正しいが、ポリスチレンは酸・塩基には強い一方で燃えやすく、難燃性はない。食品用ラップはポリ塩化ビニリデンやポリエチレンなどで、ポリスチレンは透明な容器や食品トレーに使われる

・(C) 誤り。ポリスチレンのベンゼン環が付いた炭素には、水素原子・ベンゼン環・左の鎖・右の鎖が付いている。高分子の鎖は左右で長さが違うので4つとも違い、不斉炭素原子になる(下の図)

・(D) 正しい。発泡ポリスチレン(発泡スチロール)は軽く、熱を伝えにくいので、断熱材や緩衝材に使われる

・(E) 正しい。p-ジビニルベンゼンは $\ce{C=C}$ を2つもつので、2本の鎖を橋かけして立体網目構造をつくる。これが陽イオン交換樹脂の母体になる

・(F) 誤り。スチレン-ブタジエンゴムは、スチレンとブタジエンが決まった順に並ばずに共重合した合成ゴムで、1分子ずつ交互ではない

ビニル基 $\ce{CH2=CH-}$ をもつ単量体の付加重合でできる高分子は、次の組で押さえておく。

・ポリエチレン:レジ袋・容器

・ポリ塩化ビニル:水道管・電線の被覆材

・ポリスチレン:透明な容器・食品トレー、発泡させると断熱材・緩衝材

・ポリ酢酸ビニル:接着剤・ビニロンの原料

答 (A)、(D)、(E)(4点)

問2

スチレン $\ce{C8H8}$ の分子量は104.0、p-ジビニルベンゼン $\ce{C10H10}$ の分子量は130.0。物質量比10:1 なので、スチレン由来の単位10個と p-ジビニルベンゼン由来の単位1個を1組とみると、1組の式量は

$$104.0\times10+130.0=1170$$

スルホン化では、スチレン由来の単位のベンゼン環の $-\ce{H}$ が $-\ce{SO3H}$ に置きかわる。1か所あたり $\ce{SO3}$ の分だけ式量が増え、その値は $32.1+16.0\times3=80.1$ 。

1組のうち $k$ 個のスチレン由来の単位がスルホン化されたとすると、質量は組の数に比例するので

$$\frac{1170+80.1k}{1170}=1.41\qquad\therefore\ k=\frac{0.41\times1170}{80.1}\fallingdotseq5.99$$

スチレン由来の単位10個のうち5.99個がスルホン化されているので、割合は $\dfrac{5.99}{10}\times100\fallingdotseq59.9$ %。

答 60 %(4点)

問3

$\ce{Glu+}$ は、2つのカルボキシ基が $-\ce{COOH}$ 、アミノ基が $-\ce{NH3+}$ の形。 $\ce{H+}$ は酸として強い基から先に放されるので、第1段階で $\ce{H+}$ を放すのは $\alpha$位のカルボキシ基。側鎖のカルボキシ基は弱い酸なので、第1段階では $-\ce{COOH}$ のまま残る。したがって $\ce{Glu^0}$ は、 $\alpha$位が $-\ce{COO-}$ 、アミノ基が $-\ce{NH3+}$ 、側鎖が $-\ce{COOH}$ の双性イオン。

答 $\ce{HOOC-CH2-CH2-CH(NH3+)-COO-}$(上の図)(4点)

問4

3つの電離定数は、問3 から次の基の電離に当たる(下の図)。 $K_1$ = $\alpha$位のカルボキシ基、 $K_2$ =側鎖のカルボキシ基、 $K_3$ =アミノ基。

ア 等電点は全体の電荷が0になる pH。 $\ce{Glu^2-}$ を無視すると、陽イオンと陰イオンの濃度が等しく $[\ce{Glu+}]=[\ce{Glu-}]$ 。第1段階と第2段階の電離定数をかけると、間の $\ce{Glu^0}$ が消える。

$$K_1K_2=\frac{[\ce{Glu^0}][\ce{H+}]}{[\ce{Glu+}]}\times\frac{[\ce{Glu-}][\ce{H+}]}{[\ce{Glu^0}]}=\frac{[\ce{Glu-}]}{[\ce{Glu+}]}[\ce{H+}]^2$$

等電点では $\dfrac{[\ce{Glu-}]}{[\ce{Glu+}]}=1$ なので

$$[\ce{H+}]^2=K_1K_2=8.0\times10^{-3}\times9.0\times10^{-5}=72\times10^{-8}$$

$$\mathrm{pH}=4-\frac12\log_{10}72=4-\frac12(3\times0.30+2\times0.48)=4-0.93=3.07$$

答(ア) 3.1(3点)

イ アミノ酸 A は側鎖が $-\ce{COOCH3}$ で電離しないので、電離するのは $\alpha$位のカルボキシ基とアミノ基の2つだけ。 $\alpha$位の2つの基の電離定数はグルタミン酸と同じなので、 $\ce{A+ <=> A^0 + H+}$ が $K_1$ 、 $\ce{A^0 <=> A- + H+}$ がアミノ基の電離でグルタミン酸の $K_3$ に当たる。2つをかけると間の $\ce{A^0}$ が消える。

$$K_1K_3=\frac{[\ce{A-}]}{[\ce{A+}]}[\ce{H+}]^2$$

等電点では $[\ce{A+}]=[\ce{A-}]$ なので

$$[\ce{H+}]^2=K_1K_3=8.0\times10^{-3}\times3.0\times10^{-10}=24\times10^{-13}$$

$$\mathrm{pH}=6.5-\frac12\log_{10}24=6.5-\frac12(3\times0.30+0.48)=6.5-0.69=5.81$$

答(イ) 5.8(5点)

問5

強酸性ではどちらのアミノ酸も陽イオンになり、樹脂の $-\ce{SO3-}$ に引きつけられて吸着する。緩衝液を流すと、pH が等電点より大きいアミノ酸は陽イオンでなくなり、樹脂から離れて流れ出る。pH が等電点より小さいアミノ酸は陽イオンが多く、全体として正の電荷が残るので樹脂にとどまる。

pH 4.0 では、グルタミン酸(等電点 3.1)は等電点より大きいので流れ出る。アミノ酸 A(等電点 5.8)は等電点より小さいので残る。このとき A の大部分は双性イオンで、 $\dfrac{[\ce{A^0}]}{[\ce{A+}]}=\dfrac{K_1}{[\ce{H+}]}=\dfrac{8.0\times10^{-3}}{1.0\times10^{-4}}=80$ より陽イオンは1%ほどだが、陰イオンはそれよりはるかに少ない( $\dfrac{[\ce{A-}]}{[\ce{A^0}]}=\dfrac{K_3}{[\ce{H+}]}=3.0\times10^{-6}$ )。全体として正の電荷が残るので、選択肢は「主に A がカラムに残る」となっている。

答(pH 4.0) (C)(3点)

pH 7.0 では、どちらも等電点より大きいので、両方とも陽イオンでなくなって流れ出る。

答(pH 7.0) (D)(2点)

出題意図

問1 スチレンとポリスチレンの性質・用途、共重合体の構造を、正誤の判断に使えるほど正確に覚えているか

問2 物質量比10:1 を1組の単位として扱い、スルホン化による質量の増加を、式量の増え方から割合に直すことができるか。

問3・問4 3つの電離定数がそれぞれどの基の電離に当たるかを見極め、等電点の条件(陽イオンと陰イオンの濃度が等しい)から pH を求めることができるか

問5 等電点と流す液の pH の大小から、どちらのアミノ酸が陽イオンとして樹脂に残るかを判断できるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや難
目標得点15点15点
目標時間15分15分

高分子の知識と等電点の問題でできた大問だが、電離平衡を絡めた問3・問4 が解きにくく、限りなく標準寄りのやや難。
等電点は「陽イオンと陰イオンの濃度が等しい」と言い切り、電離定数をかけて間のイオンを消す、という流れを白紙から書けるようにしておくこと。

アミノ酸 A で「どの基が電離し、どの基が電離しないか」を見極められれば、カラムでの分離も等電点と pH の大小を比べるだけで決まる。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問3〜問5:等電点と電離平衡を絡めた所が解きにくい。とくに問4 イ・問5 は、アミノ酸 A では側鎖がエステルになって電離しないので、使う電離定数は $K_1$ と $K_3$ だという発想に行き着けるか。等電点の計算そのものは典型問題だが、3つの電離定数がどの基の電離かを見極めないと、グルタミン酸と同じ $K_2$ を使って $K_2K_3$ (6.8)としやすい。問5 は、その等電点と流す液の pH の大小から陽イオン交換樹脂に残るかを決める問題で、問4 イ と問5 を合わせた10点ほどで差がつく。
  • 問2:物質量比10:1 を1組とみて、スルホン化1か所で $\ce{SO3}$ の80.1 だけ増えると捉えられるか。 $-\ce{SO3H}$ の81.1 を足すと $k=5.91$ で59 % になり、整数で答える問いでは答えがずれる。

2024年九州大学・化学の
講評とまとめ

5問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。

大問難易度医学部医学科その他の学部
第1問標準25点20点
第2問やや難20点15点
第3問やや簡単25点25点
第4問標準20点15点
第5問やや難15点15点
全体標準100点80点

大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で100点、その他の学部で80点)にはなりません。

全体的に難易度は標準的な年。

旧課程の最後の年ですが、熱化学方程式の計算は出ていません。

この年の合否を分けたのは第2問で、コックでつないだ2つの容器の気体を混ぜて平衡にする、重要問題集の典型問題の組み合わせでした。

体積と温度が一定なら反応の量は分圧の表で追える、と気づけば機械的に解けますが、混ぜた直後の分圧を誤ると後半がまとめて落ちます。

第1問は溶液の典型問題で、前半のラウールの法則からの導出だけがやや解きにくい大問です。

第3問は無機の暗記ができているかを問う計算と知識の大問なので、10分で満点を取りたいところです。

第4問は九大の有機としてオーソドックスな、異性体と立体異性体の問題です。

第5問は電離平衡を絡めた等電点の問3・問4が解きにくく、アミノ酸の等電点を「どの基が電離するか」から組み立てられるかが決め手でした。

九大の化学は大問5題を75分で解くので、1つの大問に15分以上かけないことが大事です。

解く流れ

第3問 → 第1問 → 第4問 → 第5問 → 第2問。

九州大学に合格する方法

2024年九州大学・化学に
関するよくある質問

2024年の九州大学・化学について、よく聞かれる質問にお答えします。

2024年の九州大学・化学は難しかった?

全体的に難易度は標準的な年でした。
第1問・第4問は標準、第3問はやや簡単、第2問・第5問はやや難です。
第2問がいちばん難しく、第5問は限りなく標準寄りのやや難でした。

2024年の九州大学・化学は何点取れば合格できる?

目標点は、医学部医学科で100点、その他の学部で80点です(125点満点)。

2024年の九州大学・化学はどこで差がつく?

この年の合否を分けたのは第2問で、差がついたのは次の3つでした。

  • 第2問 問3〜問6:体積と温度が一定なので分圧は物質量に比例し、コックを開けた直後の分圧が体積の比の分だけ小さくなると捉えられたか。
  • 第5問 問4 イ・問5:アミノ酸 A では側鎖がエステルで電離しないので、使う電離定数は $K_1$ と $K_3$ だと見極められたか。
  • 第3問 問6:単位格子の球の数を数えて1:1に絞り、配位数4の $\ce{ZnS}$ 型と配位数6の $\ce{NaCl}$ 型を見分けられたか。
2024年の九州大学・化学は何が出題された?

大問ごとの単元は、次のとおりです。

  • 第1問:理論化学(溶液)
  • 第2問:理論化学(反応の速さと化学平衡)
  • 第3問:無機化学・理論化学
  • 第4問:有機化学
  • 第5問:高分子化合物(合成高分子)・理論化学

九州大学化学の過去問を年度別に見る ›

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