【解説・配点付き】2001年九州大学物理の解答・解説

九州大学に合格する方法

2001年の九州大学・物理の、
解答・解説【完全版】です。

方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。

このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。

※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。

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中原 遼太郎

九大受験に特化した学習塾
『竜文会』代表

『竜文会』開校後、初年度には国立大学医学部や九州大学に合格者を輩出。

2年目には旧帝大医学部にも合格!

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九州大学医学部に現役合格した経験を生かして、『学習計画の作成』や『LINEでのいつでも相談』による1人1人のサポート・九州大学に特化したハイレベルな演習で「九大受験生」をサポート。

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目次

2001年九州大学物理
第1問 解答・解説

この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。

第1問は力学の問題です。
テーマは「ばねでつるした物体の床の上の等速円運動/ばねから離れたあとの直線運動と摩擦/水平投射とくり返しのはね返り」。

問題

2001年九州大学物理 第1問 問題
2001年九州大学物理 第1問 問題
問題文をテキストで読む

ばね定数 $k\ [\mathrm{N/m}]$、自然長 $l_0\ [\mathrm{m}]$ の質量が無視できるばねの上端が、水平な床面より $l_0$ の高さにある支点Oに固定されている。ばねの下端には大きさが無視できる物体が取り付けられており、水平な面上で等速円運動をする。空気の抵抗は無視するものとし、ばねと鉛直線のなす角を $\theta\ [\mathrm{rad}]$、重力加速度を $g\ [\mathrm{m/s^2}]$ として、以下の問いに答えよ。

問1. 図1のように、質量 $m\ [\mathrm{kg}]$ の物体が滑らかな床面上を回転する。

(1) 物体がばねを引く力 $T\ [\mathrm{N}]$ を $k$、 $l_0$、 $\theta$ で表せ。

(2) 物体の速さ $v\ [\mathrm{m/s}]$ を $T$、 $l_0$、 $m$、 $\theta$ で表せ。

(3) $\theta\leqq\dfrac{\pi}{3}$ で、物体が床面から浮き上がらずに回転し続けるためには、ばね定数 $k$ にどのような条件が必要か。 $g$、 $l_0$、 $m$ を用いて表せ。

問2. この物体が、床面上を浮き上がらずに半径 $r\ [\mathrm{m}]$、速さ $v\ [\mathrm{m/s}]$ で回転していたところ、時刻 $t_0\ [\mathrm{s}]$ で突然ばねから離れ、床面上を滑り始めた。図1のように、半径 $R\ [\mathrm{m}]$ の円より内側は滑らかな面であり、外側は粗い面である。ただし $R>r$ であり、物体と粗い面との間の動摩擦係数は $\mu'$ で一定とする。

(1) ばねから離れて静止するまでの物体の軌跡、および速さの変化を解答用紙に模式的に図示せよ。なお、物体の軌跡は実線で示し、静止した地点を×印で示せ。

(2) ばねから離れて静止するまでに物体が動いた距離 $L_1\ [\mathrm{m}]$ を $R$、 $g$、 $l_0$、 $v$、 $\mu'$、 $\theta$ で表せ。

問3. 次に、質量 $m\ [\mathrm{kg}]$ の新たな物体をばねに取り付け、図2のように床面から $h\ [\mathrm{m}]$ の高さを速さ $V\ [\mathrm{m/s}]$ で回転させた。しばらくすると、物体が突然ばねから離れ、この床面上をはねながら移動した後、滑り始めた。物体は滑り始めるまで滑らかな床面上をはね続けるものとし、物体と床面との間の反発係数(はね返り係数)を $e\,(0<e<1)$ とする。

なお、必要であれば、公式 $1+x+x^2+x^3+\cdots+x^{n-1}+x^n=\dfrac{1-x^{n+1}}{1-x}$ を使ってよい。

(1) ばねから離れた物体が、床面との $n$ 回目の衝突から $n+1$ 回目の衝突までに要する時間 $\Delta t_n\ [\mathrm{s}]$ を $e$、 $g$、 $h$、 $n$ で表せ。

(2) ばねを離れてから $n$ 回目の衝突までに要する時間 $t_n\ [\mathrm{s}]$ を $e$、 $g$、 $h$、 $n$ で表せ。

(3) ばねを離れてから滑り始めるまでに動いた水平距離 $L_2\ [\mathrm{m}]$ を $V$、 $e$、 $g$、 $h$ で表せ。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

ばねの長さと円運動の半径は、図の直角三角形から決める。円運動は、物体に乗って遠心力を入れた力のつり合いで扱う(下の図)。

2001年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
2001年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
  1. 支点Oの高さが自然長 $l_0$ と同じなので、床の上ではばねは必ず自然長より伸びている。ばねの今の長さは直角三角形から $\dfrac{l_0}{\cos\theta}$ 、円運動の半径はOの真下から物体までの水平距離の $r=l_0\tan\theta$ (ばねの長さではない)。図に書く。
  2. ばねの力 $T$ は、フックの法則で $k\times$(今の長さ−自然長)((1))。
  3. 物体に乗って、力を「重力 → 触れているもの(垂直抗力・ばねの力)→ 遠心力」の順に書く。水平方向のつり合いから $v$ を求める((2))。
  4. 浮き上がらない条件は垂直抗力 $N\geqq0$ 。鉛直方向のつり合いから $N$ を $\theta$ の式で表す。 $N$ が最小になる $\theta$ を決め、そこで $N\geqq0$ とおく((3))。

【問2の方針】

着眼点

ばねから離れた瞬間から水平方向の力ははたらかないので、円の接線の向きに等速直線運動をする(下の図)。

2001年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
2001年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
  1. 離れた瞬間から、物体に水平方向の力ははたらかない(床は滑らかで、ばねも無い)。粗い面に入ると動摩擦力がはたらくが、向きは速度と逆向きなので運動の向きは変わらない。離れた地点で円の接線を書く。回転は時計回りで、離れた地点は左下なので、左上へ向かう直線になる。
  2. 速さのグラフは、滑らかな面の区間は一定の $v$、粗い面では傾き $-\mu'g$ の直線で0まで下がる((1))。
  3. 円の中心・離れた地点・半径 $R$ の円との交点を結ぶ直角三角形で、滑らかな区間の長さを三平方の定理から求める。粗い区間の長さは $W=\Delta E$ で求める。指定の文字に $r$ が無いので、 $r=l_0\tan\theta$ を入れて答える((2))。

【問3の方針】

着眼点

離れた瞬間は水平投射と同じ。衝突で変わるのは鉛直成分だけで $e$ 倍。時間も $e$ 倍になるので等比数列。ただし最初の落下だけ片道(下の図)。

2001年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
2001年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
  1. 離れた瞬間、物体は高さ $h$ のまま速さ $V$ で水平に動く。床は滑らかなので、衝突で変わるのは鉛直成分だけで、直後の速さは $e$ 倍。最初に床に着くまでの時間 $\tau=\sqrt{\dfrac{2h}{g}}$ と、その直前の鉛直方向の速さを求める。
  2. $n$ 回目の衝突の直後の鉛直方向の速さから、 $n$ 回目から $n+1$ 回目までの時間 $\Delta t_n$ を求める((1))。
  3. 最初の片道を「往復の時間から片道分を引いたもの」と分け、すべての区間を同じ形にそろえてから、問題文の公式で和を求める((2))。
  4. はね返りが無限回くり返されて終わる時刻を求め、水平方向の速さ $V$ を掛ける((3))。

解答

2001年九州大学物理 第1問 解答・解説
2001年九州大学物理 第1問 解答・解説
2001年九州大学物理 第1問 解答・解説(続き)
2001年九州大学物理 第1問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

問1 (1)

図から、ばねの今の長さは $\dfrac{l_0}{\cos\theta}$ 。自然長 $l_0$ より、 $l_0\left(\dfrac{1}{\cos\theta}-1\right)$ だけ伸びている。ばねの力と物体がばねを引く力は同じ大きさなので、フックの法則(力= $k\times$ 伸び)より

$$T=kl_0\left(\frac{1}{\cos\theta}-1\right)$$

答 $T=kl_0\left(\dfrac{1}{\cos\theta}-1\right)$(4点)

問1 (2)

物体に乗って見る。力は「重力 → 触れているもの → 遠心力」の順に書く。重力 $mg$ 、垂直抗力 $N$ 、ばねの力 $T$ (Oへ向かう向き)、遠心力 $m\dfrac{v^2}{r}$ (外向き)の4つ(床は滑らかなので摩擦は無い)。半径は図から $r=l_0\tan\theta$ (下の図)。

水平方向(半径方向)のつり合いは、遠心力と $T$ の水平成分 $T\sin\theta$ で

$$m\frac{v^2}{l_0\tan\theta}=T\sin\theta\qquad\therefore\ v^2=\frac{Tl_0\sin\theta\tan\theta}{m}$$

答 $v=\sqrt{\dfrac{Tl_0\sin\theta\tan\theta}{m}}$(5点)

問1 (3)

鉛直方向のつり合いは、 $N$ と $T$ の鉛直成分 $T\cos\theta$ が上向き、重力 $mg$ が下向きで

$$N+T\cos\theta=mg$$

(1) の $T$ を入れると、 $T\cos\theta=kl_0\left(1-\cos\theta\right)$ なので

$$N=mg-kl_0\left(1-\cos\theta\right)$$

浮き上がらない条件は $N\geqq0$ 。 $0<\theta\leqq\dfrac\pi3$ では、 $\theta$ が大きいほど $1-\cos\theta$ は大きく、 $N$ は小さい。だから $N$ がいちばん小さいのは $\theta=\dfrac\pi3$ ( $\cos\theta=\dfrac12$ )のとき(下の図)。ここで $N\geqq0$ なら、 $\theta$ がどの値でも浮き上がらない。

$$mg-kl_0\cdot\frac12\geqq0$$

答 $k\leqq\dfrac{2mg}{l_0}$(6点)

問2 (1)

軌跡 ばねから離れた瞬間、物体には水平方向の力がはたらかない。だから、離れた地点 P での速度の向き、つまり円の接線の向きに、まっすぐ進む。回転は時計回りで P は左下なので、左上へ向かう直線になる。半径 $R$ の円(交点 Q)を越えて粗い面に入っても、動摩擦力は速度と逆向きなので、運動の向きは変わらない。同じ直線の上で減速し、止まった所に×を書く(下の図の上の段)。

速さ 時刻 $t_0$ で離れてから Q に着くまでは、水平方向の力が無いので一定の $v$ 。Q に着く時刻を $t_1$ とすると

$$t_1=t_0+\frac{\sqrt{R^2-r^2}}{v}$$

粗い面では動摩擦力 $\mu'mg$ が逆向きにはたらく。加速度は $-\mu'g$ なので、傾き $-\mu'g$ の直線で0まで下がる。止まる時刻 $t_2$ は、 $0=v-\mu'g(t_2-t_1)$ より

$$t_2=t_1+\frac{v}{\mu'g}$$

止まったあとは0のまま(下の図の下の段)。

答(軌跡) 上の図の上の段のとおり(4点)

答(速さ) 上の図の下の段のとおり(4点)

問2 (2)

動いた距離は、滑らかな面の区間 PQ と、粗い面の区間 Q から×までの和。

PQ は、円の中心・P・Q を結ぶ直角三角形から、 $s^2+r^2=R^2$ (下の図)。

$$s=\sqrt{R^2-r^2}$$

Q から先は、動摩擦力だけが仕事をする。止まるまでの距離を $x$ とすると、摩擦の仕事は負で $W=\Delta E$ より

$$-\mu'mg\,x=0-\frac12mv^2\qquad\therefore\ x=\frac{v^2}{2\mu'g}$$

指定の文字に $r$ が無いので、図1から $r=l_0\tan\theta$ を入れる。

答 $L_1=\sqrt{R^2-l_0^2\tan^2\theta}+\dfrac{v^2}{2\mu' g}$(7点)

問3 (1)

離れた瞬間、速度は水平で大きさ $V$ 、鉛直方向は0。高さ $h$ から自由落下するので、最初に床に着くまでの時間を $\tau$ とすると

$$h=\frac12g\tau^2\qquad\therefore\ \tau=\sqrt{\frac{2h}{g}}$$

最初の衝突の直前の鉛直方向の速さは $g\tau=\sqrt{2gh}$ 。床は滑らかなので、衝突で変わるのは鉛直成分だけで、直後は向きが逆になって $e$ 倍。水平成分は $V$ のまま。衝突のたびに鉛直成分が $e$ 倍になるので、 $n$ 回目の衝突の直後の鉛直上向きの速さは $e^n\sqrt{2gh}$ (下の図)。

$n$ 回目の衝突から $n+1$ 回目の衝突までは、はね上がって降りてくる往復。上がるのも降りるのも同じ時間なので

$$\Delta t_n=\frac{2e^n\sqrt{2gh}}{g}$$

答 $\Delta t_n=2e^n\sqrt{\dfrac{2h}{g}}$(5点)

問3 (2)

$n$ 回目の衝突の時刻は、最初の落下の時間 $\tau$ に、 $\Delta t_1$ から $\Delta t_{n-1}$ までを足したもの。最初の落下だけは往復ではなく片道なので、 $\tau=-\tau+2\tau$ と分けて、すべての区間を $2e^k\tau$ の形にそろえる( $k=0$ から $n-1$ まで)。

$$t_n=-\tau+2\tau\left(1+e+e^2+\cdots+e^{n-1}\right)$$

問題文の公式( $x=e$ 、最後の項を $e^{n-1}$ にして)より

$$t_n=-\tau+2\tau\cdot\frac{1-e^n}{1-e}=\frac{1+e-2e^n}{1-e}\tau$$

答 $t_n=\dfrac{1+e-2e^n}{1-e}\sqrt{\dfrac{2h}{g}}$(5点)

問3 (3)

滑り始めるのは、はね返りが無限回くり返されて終わるとき。 $0<e<1$ なので $n\to\infty$ で $e^n\to0$ となり、その時刻は

$$t_\infty=\frac{1+e}{1-e}\tau$$

無限回のはね返りでも、時間の和は有限(等比数列の和が収まる)。この間、床は滑らかで水平方向は速さ $V$ の等速。

$$L_2=Vt_\infty$$

答 $L_2=\dfrac{1+e}{1-e}V\sqrt{\dfrac{2h}{g}}$(5点)

別解

問1 (2) (外から見る) 物体に乗らず、地面から見て、中心向きの運動方程式にする。

$$m\frac{v^2}{r}=T\sin\theta$$

同じ式。本解は、水平面内の等速円運動なので、遠心力を入れた力のつり合いで解く形にした(水平と鉛直を別々に立てて、向きを機械的にそろえる型)。

問2 (2) (v-t グラフの面積で) (1) の速さのグラフの面積が動いた距離。滑らかな区間は長方形で $v\cdot\dfrac{s}{v}=s$ 、粗い区間は三角形で $\dfrac12v\cdot\dfrac{v}{\mu'g}=\dfrac{v^2}{2\mu'g}$ 。同じ答え。本解は、摩擦で止まる運動なので、運動方程式を立てずに $W=\Delta E$ で求める形にした。

問3 (2) (片道を分けずに) 最初の片道 $\tau$ に、往復の時間 $2e\tau$ 、 $2e^2\tau$ 、…を足す。

$$t_n=\tau+2\tau\left(e+e^2+\cdots+e^{n-1}\right)=\tau+2\tau e\cdot\frac{1-e^{n-1}}{1-e}$$

同じ答え。本解は、全区間を同じ形にそろえてから公式にのせる型にした(最初の区間だけ半端なときの決まった手順)。

出題意図

問1 ばねの長さと円運動の半径を図から決め、遠心力を入れたつり合いで等速円運動を扱えるか

問2 (1)(2) ばねから離れたあとの運動を、力がはたらくかどうかから想像できるか

問3 水平投射とくり返しのはね返りを、等比数列で表せるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度標準
目標得点40点30点
目標時間20分25分

円運動、ばねから離れたあとの直線運動と摩擦、水平投射とくり返しのはね返りの3つの型が並ぶ大問。
流れは、円運動は半径を図で決めて乗って遠心力を入れた水平・鉛直のつり合い、離れたら接線の向きにまっすぐ進み摩擦で止まるまでは $W=\Delta E$ 、はね返りは鉛直成分だけ $e$ 倍で等比数列。
運動を想像できれば難しくなく、名問の森の円運動と無限回の衝突が白紙から再現できれば解ける。
力学でこのレベルなら全受験生が取りに来るので、医学科は満点−5点を目標に、作図まで確実に取りたい。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問1 (1)(2):ばねの長さ $\dfrac{l_0}{\cos\theta}$ と円運動の半径 $l_0\tan\theta$ を、図から決められるか。ここを越えないと、問1 (3) も、問2 (2) の $r$ も続かない。
  • 問1 (3): $N$ は $\theta$ が大きいほど小さいと見抜き、いちばん厳しい $\theta=\dfrac\pi3$ で $N\geqq0$ と立てられるか。
  • 問3 (2):最初の落下だけ片道、と気づいて等比数列にのせられるか。

2001年九州大学物理
第2問 解答・解説

第2問は電磁気の問題です。
テーマは「傾いたレールの上の導体棒と鉛直な磁場。電源の電圧が時間に比例して増える設定のコンデンサーと、抵抗につないだ棒の一定の速さ」。

問題

2001年九州大学物理 第2問 問題
2001年九州大学物理 第2問 問題
問題文をテキストで読む

図のように、磁束密度の大きさが $B\ [\mathrm{T}]$ の鉛直下向きの一様な磁界中に、間隔 $L\ [\mathrm{m}]$ で平行に配置した導線 $\mathrm{L_1}$、 $\mathrm{L_2}$ が水平から $\theta\ [\mathrm{rad}]$ の角度で固定してある。 $\mathrm{L_1}$、 $\mathrm{L_2}$ の一端は同一水平面上にあり、それらに電源、電気容量 $C\ [\mathrm{F}]$ のコンデンサー、抵抗値 $R\ [\Omega]$ の抵抗が、スイッチ $\mathrm{S_1}$、 $\mathrm{S_2}$ を介して接続されている。電源の起電力 $V\ [\mathrm{V}]$ は、スイッチ $\mathrm{S_1}$ を閉じると $V=kt$ のように変化する。ここで、 $k\ [\mathrm{V/s}]$ は正の比例定数で、電源の正負を図のようにとる。 $t\ [\mathrm{s}]$ はスイッチ $\mathrm{S_1}$ を閉じてからの時間である。導線 $\mathrm{L_1}$、 $\mathrm{L_2}$ に垂直に質量 $M\ [\mathrm{kg}]$ の導体棒を置く。以下の問いに答えよ。

ただし、電源の内部抵抗はないものとし、導線 $\mathrm{L_1}$、 $\mathrm{L_2}$ と導体棒の電気抵抗は無視できるものとする。コンデンサーの電気量を $Q\ [\mathrm{C}]$ とし、 $\mathrm{S_1}$ を閉じる前は $Q=0$ とする。導体棒は導線 $\mathrm{L_1}$、 $\mathrm{L_2}$ に常に垂直であるとし、導体棒と導線の間の摩擦は無視できる。しかし、導体棒が動いている時には、その速さに比例した抵抗力が導体棒に働くものとし、その比例定数を $h\ [\mathrm{kg/s}]$ とする。重力加速度は $g\ [\mathrm{m/s^2}]$ とする。

問1. $k=E$ とし、 $\mathrm{S_2}$ を開いた状態で、導体棒を置くと同時に $\mathrm{S_1}$ を閉じたところ、導体棒は静止したままであった。このとき、

(1) 回路に流れる電流はいくらか。 $B$、 $L$、 $M$、 $g$、 $\theta$ で表せ。

(2) $E$ の値を、 $B$、 $C$、 $L$、 $M$、 $g$、 $\theta$ で表せ。

問2. $k=U$(ただし、 $U>E$)とし、 $\mathrm{S_2}$ を開いた状態で、導体棒を置くと同時に $\mathrm{S_1}$ を閉じたところ、導体棒は導線 $\mathrm{L_1}$、 $\mathrm{L_2}$ に沿って上方に向かって滑り始め、しばらくすると一定の速さ $v_{\mathrm{a}}$ になった。導体棒が一定の速さで運動している時、

(1) コンデンサーの電気量 $Q\ [\mathrm{C}]$ を時間の関数として表せ。なお、解答中に $v_{\mathrm{a}}$ を用いてもよい。

(2) 速さ $v_{\mathrm{a}}$ はいくらか。 $B$、 $C$、 $L$、 $M$、 $U$、 $g$、 $h$、 $\theta$ で表せ。

問3. $\mathrm{S_1}$ を開いた状態で、導体棒を置くと同時に $\mathrm{S_2}$ を閉じたところ、導体棒は導線 $\mathrm{L_1}$、 $\mathrm{L_2}$ に沿って下方に向かって滑り始め、しばらくすると一定の速さ $v_{\mathrm{b}}$ になった。導体棒が一定の速さで運動している時、

(1) 抵抗で消費される電力はいくらか。 $B$、 $L$、 $M$、 $R$、 $g$、 $h$、 $\theta$ で表せ。

(2) 抵抗力に抗して導体棒を動かすのに必要な仕事率はいくらか。なお、解答中に $v_{\mathrm{b}}$ を用いてもよい。

(3) 上で求めた電力と仕事率および導体棒の運動との間にはどのような関係があるか。エネルギー保存則の観点から50字程度で述べよ。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

磁場は鉛直、棒は水平なので、電流が受ける力は水平(下の図)。棒が静止なら起電力は0で、電源の電圧が増えるのでコンデンサーの電流は一定。

2001年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2001年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
  1. 磁場は鉛直、棒は水平なので、電流が磁場から受ける力は水平。斜面方向で重力とつり合うのは、この水平な力の斜面方向の成分だけ。前から見た断面の図に、重力・垂直抗力・磁場から受ける力(水平)を書き込む。
  2. 斜面方向の力のつり合いを立てて、電流を求める((1))。
  3. 動かなければ磁束は変わらず、棒の誘導起電力は0。抵抗がないので、コンデンサーの電圧は電源の電圧と等しい。電気量を時間 $t$ で表す((2))。
  4. 電源の電圧が時間に比例して増えるので、電気量も時間に比例して増え、電流は一定になる。電流を $I=\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}$ に戻って求め、(1) の電流と等しいとおいて $E$ を求める((2))。

【問2の方針】

着眼点

起電力に効くのは、磁場に垂直な速度の成分、つまり水平成分 $v\cos\theta$ だけ。鉛直成分は磁場と平行で効かない(下の図)。

2001年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2001年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
  1. 棒が斜面を上ると磁場を横切るので誘導起電力が生じる。速度を水平成分と鉛直成分に分けて、棒の起電力を求める。向きは、電源の電流を減らす向き(電源と逆向き)。
  2. 電源の電圧・棒の起電力・コンデンサーの電圧の関係から、電気量 $Q$ を時間の関数で表す((1))。
  3. 一定の速さなら起電力は一定で、変わるのは $t$ だけ。電流を $I=\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}$ に戻って求める。
  4. 斜面方向の力のつり合いを立てる。磁場の力は水平なので斜面方向は $\cos\theta$ 倍、抵抗力は運動と逆向き(斜面の下向き)。これを解いて $v_{\mathrm a}$ を求める((2))。

【問3の方針】

着眼点

$\mathrm{S_1}$ を開くと、残るのは起電力をもつ棒と抵抗 $R$ だけの回路。下る棒には、磁場の力も抵抗力も斜面の上向きにはたらく(下の図)。

2001年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2001年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
  1. 棒の起電力と抵抗 $R$ から、電流 $I$ を $v_{\mathrm b}$ で表す。
  2. 棒は下るので、磁場の力も抵抗力も運動を妨げる斜面の上向き。一定の速さなので、この2つの力と重力が斜面方向でつり合う。つり合いに $I$ を入れて、 $v_{\mathrm b}$ を求める。
  3. 指定の文字に $v_{\mathrm b}$ が無いので、 $v_{\mathrm b}$ を $I$ に戻して消し、消費電力 $RI^2$ を $v_{\mathrm b}$ を含まない形で求める((1))。
  4. 抵抗力 $\times$ 速さで仕事率を求める((2))。
  5. 一定の速さなので運動エネルギーは変わらず、失った位置エネルギーが別のものに変わっている、という見方でつなぐ。重力の位置エネルギーの減少の割合と、(1)(2) の和を比べて、関係を文にする((3))。

解答

2001年九州大学物理 第2問 解答・解説
2001年九州大学物理 第2問 解答・解説
2001年九州大学物理 第2問 解答・解説(続き)
2001年九州大学物理 第2問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

問1 (1)

棒は静止している。棒が受ける力を、場から受ける力→触れているものの順に書く。重力 $Mg$、磁場から受ける力 $IBL$(水平)、垂直抗力 $N$ の3つ。磁場の力が水平なので、斜面方向は $\cos\theta$ 倍になる。90°ちがう力は、斜面方向に分解すると sin と cos が入れかわる(下の図)。静止なので、斜面方向の力がつり合う。

$$Mg\sin\theta=IBL\cos\theta$$

答 $I=\dfrac{Mg\tan\theta}{BL}$(5点)

問1 (2)

棒は静止したままなので、磁束は変わらず、棒の誘導起電力は0。回路に抵抗がないので、コンデンサーの電圧は電源の電圧 $Et$ に等しい(下の図)。

$$Q=CEt$$

電流は電気量の時間変化なので、定義に戻る。変わるのは $t$ だけ。

$$I=\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}=CE$$

電源の電圧が時間に比例して増えるので、棒が止まったままでも、コンデンサーには一定の電流 $CE$ が流れ続ける。これが (1) の電流と等しい。

$$CE=\dfrac{Mg\tan\theta}{BL}$$

答 $E=\dfrac{Mg\tan\theta}{BCL}$(5点)

問2 (1)

棒は速さ $v_{\mathrm a}$ で斜面を上る。磁場を垂直に横切る速度の成分は水平成分 $v_{\mathrm a}\cos\theta$ なので、棒の起電力は $v_{\mathrm a}BL\cos\theta$(棒を電池に置きかえる、下の図)。向きは、電源の電流を減らす向き(電源と逆向き)。1周で電圧を足し合わせる。

$$Ut-\dfrac{Q}{C}-v_{\mathrm a}BL\cos\theta=0$$

答 $Q=C\left(Ut-v_{\mathrm a}BL\cos\theta\right)$(5点)

( $t$ は $\mathrm{S_1}$ を閉じてからの時間で、一定の速さになったあとで成り立つ式)

問2 (2)

$v_{\mathrm a}$ は一定なので、(1) で時間とともに変わるのは $t$ だけ。

$$I=\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}=CU$$

電流は一定の $CU$。棒が受ける力を書く(下の図)。磁場の力 $IBL$ は水平で、斜面方向は $IBL\cos\theta$(上向き)。重力の斜面方向 $Mg\sin\theta$ と、運動と逆向きの抵抗力 $hv_{\mathrm a}$ は、どちらも斜面の下向き。一定の速さなので、斜面方向でつり合う。

$$CU\cdot BL\cos\theta=Mg\sin\theta+hv_{\mathrm a}$$

答 $v_{\mathrm a}=\dfrac{CUBL\cos\theta-Mg\sin\theta}{h}$(5点)

問3 (1)

$\mathrm{S_1}$ は開いているので、電源とコンデンサーは回路から外れる。棒の起電力 $v_{\mathrm b}BL\cos\theta$ と抵抗 $R$ だけの回路になる(下の図)。

$$I=\dfrac{v_{\mathrm b}BL\cos\theta}{R}$$

棒は下っているので、磁場の力 $IBL\cos\theta$(斜面の上向き)と抵抗力 $hv_{\mathrm b}$(斜面の上向き)が、重力の斜面方向 $Mg\sin\theta$ とつり合う(問3 の着眼点の図)。

$$Mg\sin\theta=IBL\cos\theta+hv_{\mathrm b}$$

$I$ を入れると

$$Mg\sin\theta=\dfrac{\left(BL\cos\theta\right)^2}{R}v_{\mathrm b}+hv_{\mathrm b}\qquad\therefore\ v_{\mathrm b}=\dfrac{MgR\sin\theta}{hR+\left(BL\cos\theta\right)^2}$$

これを $I$ に戻す。この小問は $v_{\mathrm b}$ を答えに使えないので、 $v_{\mathrm b}$ を残さない。

$$I=\dfrac{BL\cos\theta}{R}\cdot\dfrac{MgR\sin\theta}{hR+\left(BL\cos\theta\right)^2}=\dfrac{BLMg\sin\theta\cos\theta}{hR+\left(BL\cos\theta\right)^2}$$

消費電力は $RI^2$ なので

答 $R\left\{\dfrac{BLMg\sin\theta\cos\theta}{hR+\left(BL\cos\theta\right)^2}\right\}^2$(10点)

問3 (2)

抵抗力 $hv_{\mathrm b}$ に逆らって、速さ $v_{\mathrm b}$ で動かすので、仕事率は(力)×(速さ)。

答 $hv_{\mathrm b}^2$(5点)

問3 (3)

一定の速さなので、運動エネルギーは変わらない。失われるのは重力の位置エネルギーだけで、その減少の割合(1秒あたり)は、1秒間に斜面を $v_{\mathrm b}$ 進むので $Mg\sin\theta\cdot v_{\mathrm b}$。これが、抵抗の消費電力 $RI^2$ と、抵抗力に抗する仕事率 $hv_{\mathrm b}^2$ の和に等しい(下の図)。

(1) のつり合いの式に $v_{\mathrm b}$ をかけると確かめられる。 $IBL\cos\theta\cdot v_{\mathrm b}=I\cdot\left(v_{\mathrm b}BL\cos\theta\right)=I\cdot RI=RI^2$ なので

$$Mg\sin\theta\cdot v_{\mathrm b}=RI^2+hv_{\mathrm b}^2$$

答 運動エネルギーは一定なので、位置エネルギーの減少の割合が、消費電力と抵抗力に抗する仕事率の和に等しい。(5点)

別解

問3 (1) エネルギーの収支から $v_{\mathrm b}$ を求める

本解の (3) の関係を先に使う。 $Mg\sin\theta\cdot v_{\mathrm b}=RI^2+hv_{\mathrm b}^2$ に $I=\dfrac{v_{\mathrm b}BL\cos\theta}{R}$ を入れると、両辺が $v_{\mathrm b}$ を含み、 $v_{\mathrm b}$ で割れて本解と同じ $v_{\mathrm b}$ が出る。一般形から無い項を消す見方(電池もコンデンサーも外力も無いので、位置エネルギーの減少=ジュール熱+抵抗力の仕事)だが、力のつり合いの方が見通しがよいので本解にした。

出題意図

問1 (1)(2) 磁場が鉛直なので棒が受ける力が水平だと見抜き、電源の電圧が時間に比例して増えると、棒が止まっていてもコンデンサーに一定の電流が流れる、と気づけるか

問2 (1)(2) 棒が上るとき、起電力に効くのは速度の水平成分 $v\cos\theta$ だけだと分け、コンデンサーの電圧が「電源の電圧−棒の起電力」になることから、力のつり合いまで持ちこめるか

問3 (1)〜(3) 抵抗につないだ棒が一定の速さになる条件から消費電力を求め、エネルギーの収支を言葉で説明できるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度標準
目標得点35点30点
目標時間25分25分

電磁誘導の導体棒は、抵抗がつけば一定の速さ、コンデンサーがつけば電流一定という決まった流れがある大問。
この年の合否を分けた大問。
そこに、電源の電圧が時間に比例して増えるので棒が止まっていても電流が流れる設定と、磁場が鉛直で力は水平・起電力は $v\cos\theta$ という斜めの分解が重なる。
断面の図に力を全部書き込み、棒がどう動くかを想像できれば難しくない。
公式の $vBL$ に頼るのは、ファラデーの法則から導けるようになってからにしたい。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問2 (1):電源の電圧から棒の起電力 $v_{\mathrm a}BL\cos\theta$ を引いた分がコンデンサーの電圧になる、という立式に行き着けるか。ここを越えないと (2) が続かない。
  • 問1 (2):電源の電圧が時間に比例して増えるので、棒が止まったままでも一定の電流 $CE$ が流れる、という発想に行き着けるか。
  • 問3 (1):$v_{\mathrm b}$ を答えに使えないので、つり合いの式から $v_{\mathrm b}$ を求めて電流に戻し、 $I$ の式にまとめられるか。計算が重いので最後まで確実に。
九州大学に合格する方法

2001年九州大学物理
第3問 解答・解説

第3問は熱力学の問題です。
テーマは「ヒーターつきシリンダー内の気体の定圧・定積・等温の過程と p-V 図の作図、真空への拡散」。

問題

2001年九州大学物理 第3問 問題
2001年九州大学物理 第3問 問題
問題文をテキストで読む

以下の文章で、 $\text{関係式}\,\boxed{\text{ア}}$ から $\text{数式}\,\boxed{\text{コ}}$ までに入るべき語または式を解答用紙の所定の欄に記入し、問いに答えよ。

$n\ [\mathrm{mol}]$ の理想気体の絶対温度 $T\ [\mathrm{K}]$、圧力 $P\ [\mathrm{N/m^2}]$、および体積 $V\ [\mathrm{m^3}]$ の間には、 $\text{関係式}\,\boxed{\text{ア}}$ の関係があり、これを理想気体の状態方程式という。ただし、 $R\ [\mathrm{J/mol\cdot K}]$ は気体定数と呼ばれる定数である。理想気体の内部エネルギー $U\ [\mathrm{J}]$ は、温度 $T$ に比例するが体積 $V$ には依存せず、単原子分子の理想気体の場合には $U=\dfrac32nRT$ となることが知られている。

今、 $n\ [\mathrm{mol}]$ の単原子分子理想気体がヒーターのついた断面積 $S\ [\mathrm{m^2}]$ のシリンダー内に、滑らかに動くピストンで閉じ込められているとする。最初、ピストンには図1のようにおもりが載せられていて、気体の温度、体積、および圧力はそれぞれ $T_0\ [\mathrm{K}]$、 $V_0\ [\mathrm{m^3}]$、および $P_0\ [\mathrm{N/m^2}]$ であったとする。この状態をAと呼ぶ。この時、気体がおもりとピストンを支えている力 $F\ [\mathrm{N}]$ は $\text{数式}\,\boxed{\text{イ}}$ である。

〔Ⅰ〕 状態Aから、ヒーターで気体を加熱し体積が $2V_0$ になるまで膨張させたとする(過程Ⅰ)。この結果得られた状態をBと呼ぶ。この状態Bの気体の温度 $T_{\mathrm{B}}\ [\mathrm{K}]$ は $\text{数式}\,\boxed{\text{ウ}}$ である。この過程Ⅰの間に、ピストンが動いた距離 $X\ [\mathrm{m}]$ は $\text{数式}\,\boxed{\text{エ}}$ なので、気体が外部にした仕事 $W_1\ [\mathrm{J}]$ は $\text{数式}\,\boxed{\text{オ}}$ となる。一方、気体の内部エネルギーの増加 $\Delta U_1\ [\mathrm{J}]$ は $\text{数式}\,\boxed{\text{カ}}$ だから、気体が吸収した熱量 $Q_1\ [\mathrm{J}]$ は $T_0$ と $R$ および $n$ を用いて表すと $\text{数式}\,\boxed{\text{キ}}$ となる。

〔Ⅱ〕 同じく最初の状態Aからヒーターで気体を加熱するが、今度はピストンを固定して気体の体積を $V_0$ に保ったまま温度を $T_{\mathrm{B}}$ まで上げたとする(過程Ⅱ)。この結果得られた状態をCと呼ぶ。この過程Ⅱで、気体の内部エネルギーの増加 $\Delta U_2\ [\mathrm{J}]$ は $\text{数式}\,\boxed{\text{ク}}$ で、気体が外部にする仕事 $W_2\ [\mathrm{J}]$ は $\text{数式}\,\boxed{\text{ケ}}$ なので、気体が吸収する熱量 $Q_2\ [\mathrm{J}]$ は $\text{数式}\,\boxed{\text{コ}}$ となる。

〔Ⅲ〕 上の状態Cから、温度を $T_{\mathrm{B}}$ に保ったまま体積を $V_0$ から $2V_0$ まで膨張させたとする(過程Ⅲ)。その結果得られた状態は過程Ⅰで得られた状態Bに等しい。この過程Ⅲで気体が吸収する熱量を $Q_3\ [\mathrm{J}]$ とする。

問1. 解答用紙のグラフに、縦軸を $P$、横軸を $V$ として状態Aの位置が黒丸で示してある。このグラフに、状態BおよびCの位置を黒丸で示し、その横にそれぞれB、Cと明示せよ。さらに、過程Ⅰ、Ⅱ、およびⅢについて、状態の変化の軌跡と方向を矢印つきの実線で示し、それぞれにⅠ、Ⅱ、およびⅢと明示せよ。

問2. 問1と同じ解答用紙のグラフに、過程Ⅲで気体が吸収した熱量 $Q_3$ の大きさに相当する領域を、斜線をほどこして示せ。

問3. 状態C(温度 $T_{\mathrm{B}}$、体積 $V_0$)にある時、図2のようにシリンダーに体積 $V_0$ の真空の容器をコックを通して接続し、ピストンを固定し熱の出入りを断ったままコックを開いてシリンダー内の気体を噴出させた。気体が容器全体に行き渡った後の気体の温度は、どうなるか。理由とともに40字程度で述べよ。ただし、シリンダーと容器をつなぐ管の体積は無視できるものとする。

解答の方針

【空欄ア〜コの方針】

着眼点

まず「どの量が一定か」を決める。過程Ⅰはピストンが重さとつり合い続けるので定圧、過程Ⅱは固定なので定積。終わりの温度が同じなので、熱量の差は仕事の有無だけ。

2001年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
2001年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
  1. ア:理想気体の状態方程式を書く。
  2. イ:ピストンとおもりが静止していることから、気体がピストンを押す力を、気体の圧力と面積で表す。
  3. 過程Ⅰは、ピストンがなめらかでおもりの重さが変わらないので、上がっていく間も気体がピストンを押す力は重さとつり合ったまま( $F=P_0S$ )、圧力は $P_0$ のまま。つまり定圧なので、圧力と物質量が一定の状態方程式から体積と温度の比を作り、状態Bの温度を求める(ウ)。
  4. 体積の増加が断面積×ピストンの動いた距離であることから、距離を求める(エ)。
  5. 定圧の仕事 $P\Delta V$(オ)、内部エネルギーの増加(カ)を求め、第一法則で吸収する熱量を求める(キ)。
  6. 過程Ⅱはピストンを固定するので定積。過程ⅠとⅡは終わりの温度が同じで、内部エネルギーの増加は等しい。内部エネルギーの増加(ク)・仕事(ケ)を求め、第一法則で吸収する熱量を求める(コ)。

【問1・問2の方針】

着眼点

BとCは同じ温度なので同じ等温線の上にあり、等温線は反比例の曲線(直線にしない)。等温の $Q_3$ は気体がした仕事に等しく、曲線の下の面積(下の図)。

2001年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
2001年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
  1. 過程ごとの形は、定圧が水平・定積が縦・等温が反比例の曲線( $PV$ が一定)。Bの位置を、過程Ⅰ(定圧)の終わりの体積から決める。
  2. Cの圧力を、状態Aとの比から求め、Cの位置を決める。
  3. 過程Ⅰは水平、過程Ⅱは縦、過程Ⅲは反比例の曲線で、進む向きの矢印をつけて書く。曲線は、方眼で $V=\dfrac32V_0$ のときの圧力を求めて、通る目安にする(問1)。
  4. 等温では内部エネルギーが変わらないので、過程Ⅲの第一法則から $Q_3$ と仕事の関係を決め、p-V 図で仕事を表す領域に斜線を引く(問2)。

【問3の方針】

着眼点

$Q$ と $W$ を装置の条件から読む。断熱で、ピストンは固定、広がる先は真空なので、気体は仕事をしない。理想気体の $U$ は温度だけで決まる(下の図)。

2001年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
2001年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
  1. 熱の出入りを断っていることから $Q$ を決める。
  2. 真空へ広がるだけであることから、気体のした仕事 $W$ を決める。
  3. 第一法則から $\Delta U$ を求め、温度の変化を答える。
  4. 理由(1〜3)を入れて、40字程度の文にまとめる。

解答

2001年九州大学物理 第3問 解答・解説
2001年九州大学物理 第3問 解答・解説
2001年九州大学物理 第3問 解答・解説(続き)
2001年九州大学物理 第3問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

空欄ア・イ

ア:理想気体の状態方程式は、圧力・体積・物質量・温度を結ぶ式。

答(ア) $PV=nRT$(2点)

イ:ピストンとおもりは静止しているので、気体がピストンを押し上げる力 $F$ は、おもりとピストンの重さとつり合っている。この力は、気体の圧力 $P_0$ に面積 $S$ をかけたもの。

答(イ) $P_0S$(2点)

空欄ウ〜キ(過程Ⅰ)

先に、何が一定かを決める。ピストンはなめらかで、おもりの重さは変わらない。だから、ピストンが上がっていく間も、気体がピストンを押す力は重さとつり合ったまま( $F=P_0S$ のまま)で、気体の圧力は $P_0$ のまま。過程Ⅰは定圧変化。

ウ:圧力 $P_0$ と物質量 $n$ が一定なので、状態方程式 $P_0V=nRT$ より $\dfrac VT$ が一定( $V\propto T$ )。体積が $V_0$ から $2V_0$ の2倍になるので、温度も2倍になる。

$$\dfrac{V_0}{T_0}=\dfrac{2V_0}{T_{\mathrm B}}$$

答(ウ) $2T_0$(2点)

エ:気体の体積の増加は、断面積×ピストンの動いた距離。

$$SX=2V_0-V_0\quad\therefore\ X=\dfrac{V_0}{S}$$

答(エ) $\dfrac{V_0}{S}$(2点)

オ:気体は一定の力 $F=P_0S$ でピストンを距離 $X$ だけ押し上げる。気体がした仕事は、力×距離。

$$W_1=P_0S\cdot X=P_0V_0$$

状態Aの状態方程式 $P_0V_0=nRT_0$ より、 $nRT_0$ と書いてもよい。

答(オ) $P_0V_0$( $nRT_0$ でもよい)(2点)

カ:内部エネルギーは温度だけで決まり、 $U=\dfrac32nRT$。温度が $T_0$ から $T_{\mathrm B}=2T_0$ に上がったので

$$\Delta U_1=\dfrac32nR(T_{\mathrm B}-T_0)=\dfrac32nRT_0$$

答(カ) $\dfrac32nRT_0$(2点)

キ:第一法則は「吸収した熱量=内部エネルギーの増加+気体がした仕事」。 $T_0$、 $R$、 $n$ で表す指定なので、オ は $W_1=nRT_0$ を使う。

$$Q_1=\Delta U_1+W_1=\dfrac32nRT_0+nRT_0$$

答(キ) $\dfrac52nRT_0$(3点)

空欄ク〜コ(過程Ⅱ)

過程Ⅱはピストンを固定するので、体積は $V_0$ のまま(定積変化)。気体の体積が変わらないので、気体は外部に仕事をしない。

ク:始めの温度 $T_0$ と終わりの温度 $T_{\mathrm B}$ は過程Ⅰと同じ。内部エネルギーは温度だけで決まるので、増加も過程Ⅰと同じ。

$$\Delta U_2=\dfrac32nR(T_{\mathrm B}-T_0)=\dfrac32nRT_0$$

答(ク) $\dfrac32nRT_0$(2点)

ケ:体積が変わらないので、仕事はしない。

答(ケ) $0$(2点)

コ:第一法則より

$$Q_2=\Delta U_2+W_2=\dfrac32nRT_0+0$$

答(コ) $\dfrac32nRT_0$(3点)

過程ⅠとⅡは、終わりの温度が同じなので内部エネルギーの増加 $\Delta U$ は等しい。吸収した熱量の差 $Q_1-Q_2=nRT_0$ は、過程Ⅰで気体がした仕事 $W_1$ に等しい。下の図は、長さが熱量・エネルギーの量を表す。

問1

Bは過程Ⅰの終わりの状態で、圧力 $P_0$、体積 $2V_0$。Cの圧力は、体積 $V_0$ のまま温度が $T_0$ から $T_{\mathrm B}=2T_0$ に上がっているので、圧力と温度の比が等しい。状態方程式から $\dfrac PT$ が一定。

$$\dfrac{P_0}{T_0}=\dfrac{P_{\mathrm C}}{2T_0}\quad\therefore\ P_{\mathrm C}=2P_0$$

Cは $(V_0,\ 2P_0)$、Bは $(2V_0,\ P_0)$。過程Ⅰ(A→B)は水平に右向き、過程Ⅱ(A→C)は縦に上向き。過程Ⅲ(C→B)は、同じ温度 $T_{\mathrm B}$ の等温線の上を動く。等温線は $PV=2P_0V_0$(一定)の反比例の曲線で、CとBを直線で結ばない。方眼で $V=\dfrac32V_0$ のとき $P=\dfrac{2P_0V_0}{\frac32V_0}=\dfrac43P_0$ を通る( $P_0$ と $\dfrac32P_0$ の間で、下から $\dfrac23$ の高さ)。

答 上の図(BとCに黒丸を打って横にB・Cと書く。Ⅰは水平に右向き、Ⅱは縦に上向き、Ⅲは $\dfrac32V_0$ で $\dfrac43P_0$ を通る反比例の曲線を右下向きに矢印でたどり、それぞれⅠ・Ⅱ・Ⅲと書く)(8点)

問2

過程Ⅲは温度 $T_{\mathrm B}$ のまま膨張する等温の過程。内部エネルギーは温度だけで決まるので $\Delta U_3=0$。第一法則 $Q_3=\Delta U_3+W_3$ より、吸収した熱量は気体がした仕事に等しい。

$$Q_3=W_3$$

気体がした仕事は p-V 図の曲線の下の面積。範囲は $V_0$ から $2V_0$ まで、曲線と横軸( $P=0$ )の間。過程Ⅰの下の長方形( $W_1$ )とは違うので注意。

答 上の図(過程Ⅲの曲線の下、 $V=V_0$ から $2V_0$ までを、横軸まで斜線で塗る)(4点)

(大きさは問われていないが、等温の仕事の公式を使えば $Q_3=2nRT_0\log_e2$ で、 $W_1=nRT_0$ より大きい。)

問3

熱の出入りを断っているので $Q=0$。ピストンは固定で、広がる先は真空なので、気体を押し返すものがなく、気体は仕事をしない。 $W=0$。第一法則より

$$0=\Delta U+0\quad\therefore\ \Delta U=0$$

理想気体の内部エネルギーは温度だけで決まるので、温度は変わらない( $T_{\mathrm B}$ のまま)。

答 断熱で真空へ広がるだけで仕事をしないので、内部エネルギーは変わらず、温度は変わらない。(6点)

終わりの状態は温度 $T_{\mathrm B}$、体積 $2V_0$、圧力 $P_0$ で、Bと同じ状態になる(圧力は $\dfrac12$ 倍)。ただし、真空への拡散は温度が変わらなくても、ゆっくりした等温変化ではない。途中の状態は p-V 図の曲線の上にない。

別解

空欄ウ(状態方程式を2本並べる)

状態Aは $P_0V_0=nRT_0$、状態Bは $P_0\cdot2V_0=nRT_{\mathrm B}$。辺々を割って $T_{\mathrm B}=2T_0$。本解は圧力と物質量が一定であることから比を作るので、式が1本ですむ。

空欄キ(5:3:2 で一気に求める)

定圧変化の単原子分子は $Q:\Delta U:W=5:3:2$。オ の $W_1=nRT_0$ を「2」とみて、 $Q_1=\dfrac52W_1=\dfrac52nRT_0$ と求められる。速いが、5:3:2 は単原子分子の定圧変化だけで使える。

出題意図

空欄ア〜エ:ピストンの力のつり合いから定圧と読み、状態方程式で温度・体積の変化・ピストンの動いた距離を求めることができるか。

空欄オ〜コ:定圧と定積のそれぞれで、仕事と内部エネルギーの増加から吸収する熱量を第一法則で求めることができるか。

問1・問2 定圧・定積・等温の3つの過程を p-V 図に書き分け、等温の過程の熱量を面積で捉えることができるか

問3 真空への拡散で温度が変わらない理由を、第一法則に結びつけて言葉にできるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや簡単
目標得点40点40点
目標時間15分20分

状態方程式と第一法則を、過程ごとに順に立てるだけで終わる、確実に満点を取りたい大問。
流れは「何が一定かを決める(定圧・定積・等温)→状態方程式→第一法則」の1本で、作図は定圧は水平・定積は縦・等温は反比例の曲線、真空への拡散は $Q=0$ ・ $W=0$ より $\Delta U=0$ で温度一定。
3つの過程を比べる問題も白紙で再現できるまで練習したい。
定圧の 5:3:2 は、基本の法則から導けるようになってから使う。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問1:過程Ⅲを、直線でなく等温線(反比例の曲線)で書けるか。B・Cの位置と曲線の形が決まらないと、問2 の斜線の場所も決まらない。
  • 問2:「等温なので $\Delta U=0$、したがって $Q_3=W_3$ で、仕事は面積」と結びつけ、曲線の下に斜線を引けるか。
  • 問3:「熱の出入りがない」「仕事をしない」「内部エネルギーが変わらない」の流れを入れて、40字程度で言い切れるか。
九州大学に合格する方法

2001年九州大学・物理の
講評とまとめ

3問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。

大問難易度医学部医学科その他の学部
第1問標準40点30点
第2問標準35点30点
第3問やや簡単40点40点
全体標準105点90点

大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で105点、その他の学部で90点)にはなりません。

全体としては標準の年で、3題とも典型の型で解ける問題でした。

この年の合否を分けたのは第2問で、傾いたレールに鉛直な磁場という斜めの電磁誘導です。

起電力は $v\cos\theta$ 、力は水平と、斜めの分解を1か所でも取り違えると全部の式に響き、電源の電圧が時間に比例して増える設定も問題集に少なく、(1) から (2) が連鎖します。

第1問は、円運動・ばねから離れたあとの直線運動と摩擦・水平投射とくり返しのはね返りの3つの型が並ぶ大問で、運動を想像できれば難しくありません。

第3問は、状態を順に追うだけの典型で、作図と40字程度の記述まで落とさず、どの学部も満点を取りたい大問です。

解く流れ

第1問 → 第2問 → 第3問。

九州大学に合格する方法

2001年九州大学・物理に
関するよくある質問

2001年の九州大学・物理について、よく聞かれる質問にお答えします。

2001年の九州大学・物理は難しかった?

標準の年でした。
第1問・第2問は標準、第3問はやや簡単です。
第1問は円運動・摩擦・はね返り、第2問は傾いたレールの電磁誘導、第3問は熱力学の3つの過程です。
第2問は斜めの分解と電源の電圧が増える設定で差がつき、この年の合否を分けた大問でした。

2001年の九州大学・物理は何点取れば合格できる?

目標点は、医学部医学科で105点、その他の学部で90点です(125点満点)。

2001年の九州大学・物理はどこで差がつく?

この年の合否を分けたのは第2問で、年全体で差がついたのは次の3つでした。

  • 第1問 問3 (2):最初の落下だけ片道と気づき、全区間を同じ形にそろえて等比数列にのせられたか。
  • 第2問 問2 (1):電源の電圧から棒の起電力 $v_{\mathrm a}BL\cos\theta$ を引いた分がコンデンサーの電圧になる、と立式できたか。
  • 第3問 問1:過程Ⅲを直線でなく等温線(反比例の曲線)で書けたか。
2001年の九州大学・物理は何が出題された?

大問ごとの単元は、次のとおりです。

  • 第1問:力学
  • 第2問:電磁気
  • 第3問:熱力学

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