【解説・配点付き】2023年九州大学化学の解答・解説

九州大学に合格する方法

2023年の九州大学・化学の、
解答・解説【完全版】です。

方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。

このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。

※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。

⬆︎タップして画面が切り替わったら『LINEアプリを開く』を押して友達追加にお進みください!


中原 遼太郎

九大受験に特化した学習塾
『竜文会』代表

『竜文会』開校後、初年度には国立大学医学部や九州大学に合格者を輩出。

2年目には旧帝大医学部にも合格!

九州大学の過去問を20年分以上分析して指導カリキュラムを作成。

九州大学医学部に現役合格した経験を生かして、『学習計画の作成』や『LINEでのいつでも相談』による1人1人のサポート・九州大学に特化したハイレベルな演習で「九大受験生」をサポート。

経歴

もっと知りたい方は中原先生の紹介へ!

※ 当ブログでは、九大受験生や親御様の悩みをリサーチした上で、表面的な悩みだけでなく根本的な悩みを解決できるようなコンテンツ制作を心がけています。コンテンツ制作は、中原遼太郎(九州大学医学部卒・竜文会代表)が担当。制作の流れや想いに関しては、コンテンツ制作ポリシーページを参考にしてください。

目次

2023年九州大学化学
第1問 解答・解説

この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。

第1問は理論化学(物質の三態・気体の法則)の問題です。
テーマは『実在気体』『気体の燃焼と飽和蒸気圧』。

問題

2023年九州大学化学 第1問 問題
2023年九州大学化学 第1問 問題
問題文をテキストで読む

次の文章を読み、問1〜問6に答えよ。

理想気体では、一定温度 $T$〔K〕における、物質量 $n$〔mol〕の気体が占める体積 $V$〔L〕と圧力 $p$〔Pa〕の間には、次に示す気体の状態方程式が成り立つ。

$pV=nRT$

ここで、 $R$ は気体定数である。

一方、 $1.013\times10^5$ Pa、273 K で1.00 mol の気体の体積を実際に測定すると、理想気体の体積である22.4 L と比べて $\ce{NH3}$ では $\boxed{\text{ア}}$ なり、 $\ce{H2}$ では $\boxed{\text{イ}}$ なる。これは、分子自身に体積(排除体積)があるためと、分子間力がはたらくためである。このように、理想気体の状態方程式に従わない気体を実在気体という。実在気体においても、 $\boxed{\text{ウ}}$ では、分子自身の体積や分子間力の影響を無視できるようになり、理想気体としてふるまう。

実在気体を取り扱う状態方程式として、次に示すファンデルワールスの状態方程式がある。1.00 mol の実在気体の場合、

$\left(p+\dfrac{a}{V^2}\right)(V-b)=RT$

で表される。ここで、 $a$、 $b$ はそれぞれファンデルワールス定数とよばれ、下に示す表のような値となる。

表.各種気体のファンデルワールス定数

気体$a$〔Pa·L²/mol²〕$b$〔L/mol〕
$\ce{H2}$247000.0266
$\ce{CH4}$2280000.0428
$\ce{CO2}$3640000.0427

問1. 文中の $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{ウ}}$ に入る最も適切な語句を、次の(A)〜(G)の中から1つずつ選び記号で答えよ。

(A) 大きく (B) 小さく (C) 等しく (D) 高温・高圧

(E) 高温・低圧 (F) 低温・高圧 (G) 低温・低圧

問2. 実在気体では、 $\boxed{\text{ウ}}$ で選んだ圧力条件で分子間力の影響が無視できる理由を20字程度で説明せよ。

問3. 下図は、表に示した気体のある温度における $pV/nRT$ の圧力依存性を示している。図中の A〜C の曲線は、それぞれ表中のどの気体に対応するか分子式で答えよ。

問4. $\ce{CH4}$、 $\ce{H2O}$、 $\ce{NH3}$ の3つの気体を、ファンデルワールス定数 $a$ が大きい順に並べよ。ただし、分子式で記入すること。なお、ここでは分子自身の体積の影響は無視できるものとする。

問5. 実在気体では、分子自身の体積の効果で、理想気体に比べて分子が自由に動ける体積が減少する。この体積の減少分は、 $\ce{CH4}$ 分子1個あたり何 L か、有効数字3桁で答えよ。

問6. 8.31 L の密閉容器に、 $\ce{H2}$ を0.100 mol、 $\ce{O2}$ を $x$〔mol〕入れ、着火装置を用いて $\ce{H2}$ を完全燃焼させた。300 K において反応後の容器の圧力は $3.84\times10^4$ Pa であった。完全燃焼前の $\ce{O2}$ の物質量 $x$ を有効数字3桁で答えよ。ただし、気体は理想気体として扱えるものとし、300 K における水の飽和蒸気圧は、 $3.60\times10^3$ Pa とする。また、生成した水(液体)の体積および気体の水への溶解は無視できるものとする。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

理想気体は、分子間力と分子自身の大きさを無視した気体。実在気体のずれは「分子間力で引き合って体積が小さくなる」か「分子自身の体積があって思うほど縮まない」かのどちらの影響が大きいかで決まる(下の図)。

2023年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
  1. (ア)(イ) $\ce{NH3}$ と $\ce{H2}$ について、分子間力と分子自身の体積のどちらの影響が大きいかを考え、22.4 L より小さくなるか大きくなるかを決める。
  2. (ウ) 分子間力の影響を小さくする温度の条件と、分子自身の体積の影響を小さくする圧力の条件を合わせて選ぶ。

【問2の方針】

着眼点

問われているのは「圧力の条件」の理由。低圧では気体の体積が大きく、分子どうしが遠く離れている。分子間力は分子どうしが近いときにはたらく力なので、離れていればほとんどはたらかない。

  1. 低圧 → 体積が大きい → 分子間の距離が大きい → 分子間力が弱い、の順に20字程度でまとめる。

【問3の方針】

着眼点

低圧側で1より下がるのは分子間力の影響なので、深く下がるほど分子間力が大きい。分子間力の大きさを表すのはファンデルワールス定数 $a$(下の図)。

2023年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
  1. 表の $a$ を比べる。
  2. 下がらずに最初から1より上がる曲線を $a$ がいちばん小さい気体、いちばん深く下がる曲線を $a$ がいちばん大きい気体とし、残りを当てはめる。

【問4の方針】

着眼点

分子自身の体積を無視するので、 $a$ の大小は分子間力の大小そのもの。3つとも分子量は16〜18でほぼ同じなので、水素結合があるか、あるなら1分子あたり何本かで比べる。

  1. 水素結合をつくらない $\ce{CH4}$ をいちばん小さいとする。
  2. $\ce{H2O}$ と $\ce{NH3}$ は1分子あたりの水素結合の数で比べる。

【問5の方針】

着眼点

ファンデルワールスの状態方程式の $(V-b)$ は、分子自身の体積のぶんを引いた「分子が自由に動ける体積」。式は1.00 mol の気体の式なので、 $b$ は1 mol あたりの減少分(下の図)。

2023年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
  1. $\ce{CH4}$ の $b$ を1 mol あたりの体積の減少分と読む。
  2. アボガドロ定数で割って、分子1個あたりにする。

【問6の方針】

着眼点

体積と温度が反応の前後で同じなので、圧力は物質量に比例する。モル計算を圧力でする。生成した水は、全て気体と仮定した圧力 $P_{\mathrm{if}}$ を飽和蒸気圧と比べてから、気体ぶんの圧力を決める(下の図)。

2023年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
  1. 物質量を 300 K・8.31 L での分圧に直す( $\dfrac{RT}{V}$ をかける)。
  2. 反応式の下に反応前・変化量・反応後を分圧で書く。
  3. 生成した水の $P_{\mathrm{if}}$ を飽和蒸気圧と比べて、水蒸気の分圧を決める。
  4. 全圧から水蒸気の分圧を引いて残った $\ce{O2}$ の分圧を求め、反応した分を足して反応前の $\ce{O2}$ の分圧にし、 $x$ に直す。

解答

2023年九州大学化学 第1問 解答・解説
2023年九州大学化学 第1問 解答・解説
2023年九州大学化学 第1問 解答・解説(続き)
2023年九州大学化学 第1問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

問1

理想気体は、分子間力と分子自身の大きさを無視した気体。実在気体では、分子間力で分子どうしが引き合うと体積は理想気体より小さくなり、分子自身の体積があると思うほど縮まないので大きくなる(下の図)。

・$\ce{NH3}$ は極性分子で、分子間で水素結合もつくる。分子間力の影響が大きく、引き合って体積は22.4 L より小さくなる

・$\ce{H2}$ は無極性で分子量も小さく、分子間力がとても小さい。分子自身の体積の影響の方が大きく、体積は22.4 L より大きくなる

高温では分子の熱運動が激しく、分子間力の影響が小さくなる。低圧では体積が大きく、分子自身の体積の影響が小さくなる(分子どうしが離れるので、分子間力もはたらきにくい)。この2つがそろうと理想気体としてふるまう。

答(ア) (B) 小さく(2点)

答(イ) (A) 大きく(2点)

答(ウ) (E) 高温・低圧(2点)

問2

低圧では気体の体積が大きく、分子どうしの距離が大きい。分子間力は分子どうしが近いときに強くはたらく力なので、離れていればほとんどはたらかない。問われているのは圧力の条件なので、温度(熱運動)ではなく分子間の距離で答える。

答 分子間の距離が大きく、分子間力が弱くなるから。(3点)

問3

低圧側で $\dfrac{pV}{nRT}$ が1より下がるのは、分子間力で引き合って体積が小さくなるから。下がり方が深いほど分子間力が大きい。分子間力の大きさを表すのは $a$ で、 $\ce{H2}$ 24700 ≪ $\ce{CH4}$ 228000 < $\ce{CO2}$ 364000。 $b$ は $\ce{CH4}$ と $\ce{CO2}$ でほぼ同じなので、区別は $a$ だけで決まる(下の図)。

・A:下がらずに最初から1より上がる。分子間力がとても小さく、分子自身の体積の影響がはじめから勝つ $\ce{H2}$(問1(イ)で22.4 L より大きくなるのと同じ理由)

・B:浅く下がってから上がる。 $a$ が中くらいの $\ce{CH4}$

・C:いちばん深く下がる。 $a$ がいちばん大きい $\ce{CO2}$

答 $\mathbf{A}=\ce{H2}$(1点)

答 $\mathbf{B}=\ce{CH4}$(1点)

答 $\mathbf{C}=\ce{CO2}$(1点)

問4

分子自身の体積は無視するので、 $a$ の大小は分子間力の大小で決まる。分子量は $\ce{CH4}$ 16、 $\ce{NH3}$ 17、 $\ce{H2O}$ 18 でほぼ同じなので、ファンデルワールス力は同じくらい。差をつけるのは水素結合。

・$\ce{CH4}$ は無極性分子で、F・O・N と結合した H をもたないので水素結合をつくらない。いちばん小さい

・$\ce{H2O}$ は O の非共有電子対が2組、H が2個あるので、1分子あたりの水素結合は2本

・$\ce{NH3}$ は H が3個あるが、N の非共有電子対が1組しかないので、1分子あたりの水素結合は1本

水素結合の数が多い $\ce{H2O}$ の方が、 $\ce{NH3}$ より分子間力が大きい。

答 $\ce{H2O}$ > $\ce{NH3}$ > $\ce{CH4}$(3点)

問5

ファンデルワールスの状態方程式の $(V-b)$ は、容器の体積 $V$ から、分子自身の体積のぶんを引いた「分子が自由に動ける体積」(下の図)。式は1.00 mol の気体について書かれているので、 $b$ は1 mol あたりの減少分。

1 mol は $6.02\times10^{23}$ 個なので、分子1個あたりは

$$\dfrac{b}{N_{\mathrm A}}=\dfrac{0.0428}{6.02\times10^{23}}=7.109\times10^{-26}\ \mathrm{L}$$

答 $7.11\times10^{-26}$ L(5点)

問6

燃焼の前後で体積 8.31 L・温度 300 K が同じなので、 $PV=nRT$ より圧力は物質量に比例する。モル計算を圧力でする(下の図)。

300 K・8.31 L では、1 mol あたりの圧力は

$$\dfrac{RT}{V}=\dfrac{8.31\times10^3\times300}{8.31}=3.00\times10^5\ \mathrm{Pa/mol}$$

$\ce{H2}$ 0.100 mol は $3.00\times10^4$ Pa、 $\ce{O2}$ $x$ mol は $3.00\times10^5x$ Pa にあたる。反応式の下に分圧で書くと

$$\begin{array}{c|ccc} & \ce{2H2} & \ce{O2} & \ce{2H2O}\\ \hline \text{反応前} & 3.00\times10^4 & 3.00\times10^5x & 0\\ \text{変化量} & -3.00\times10^4 & -1.50\times10^4 & +3.00\times10^4\\ \hline \text{反応後} & 0 & 3.00\times10^5x-1.50\times10^4 & (3.00\times10^4) \end{array}\quad(\mathrm{Pa})$$

生成した水を全て気体と仮定した圧力は $P_{\mathrm{if}}=3.00\times10^4$ Pa で、飽和蒸気圧 $3.60\times10^3$ Pa より大きい。よって水の一部は液体になり、水蒸気の分圧は飽和蒸気圧の $3.60\times10^3$ Pa。

全圧は $\ce{O2}$ と水蒸気の分圧の和なので

$$(3.00\times10^5x-1.50\times10^4)+3.60\times10^3=3.84\times10^4$$

$$3.00\times10^5x=3.48\times10^4+1.50\times10^4=4.98\times10^4\qquad\therefore\ x=0.166$$

答 0.166 mol(5点)

別解

問6

物質量のまま計算する。 $\ce{2H2 + O2 -> 2H2O}$ より、 $\ce{H2}$ 0.100 mol と $\ce{O2}$ 0.0500 mol が反応し、 $\ce{H2O}$ が 0.100 mol できる。全て気体と仮定した水の圧力は

$$P_{\mathrm{if}}=\dfrac{0.100\times8.31\times10^3\times300}{8.31}=3.00\times10^4\ \mathrm{Pa}>3.60\times10^3\ \mathrm{Pa}$$

なので、水蒸気の分圧は $3.60\times10^3$ Pa。残った $\ce{O2}$ の分圧は $3.84\times10^4-3.60\times10^3=3.48\times10^4$ Pa で、その物質量は

$$n=\dfrac{3.48\times10^4\times8.31}{8.31\times10^3\times300}=0.116\ \mathrm{mol}$$

反応した 0.0500 mol を足して $x=0.116+0.0500=0.166$ mol。

出題意図

問1・問2 実在気体が理想気体からずれる2つの原因(分子間力・分子自身の体積)と、理想気体に近づく条件とその理由を説明できるか

問3 $\dfrac{pV}{nRT}$ のグラフで、低圧側で1より下がる深さが分子間力の大きさで決まることを読み取れるか

問4 分子間力の大小を、水素結合の有無と1分子あたりの水素結合の数で判断できるか

問5 ファンデルワールスの状態方程式の $b$ が「1 mol あたりの自由に動ける体積の減少分」であることを読み取れるか

問6 燃焼で生じた水を全て気体と仮定した圧力を飽和蒸気圧と比べ、水蒸気の分圧を除いて酸素の物質量を求められるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度標準
目標得点25点20点
目標時間12分15分

実在気体は「分子間力」と「分子自身の体積」の2つがどう効くかを自分の言葉で説明できれば、問1〜問4 の知識はすべて取れる。
問6 は重要問題集の気体の燃焼と飽和蒸気圧の典型問題そのもので、「全て気体と仮定した圧力を飽和蒸気圧と比べる」を徹底していれば迷わない。

演習量がそのまま点になる大問なので、時間をかけずに満点を取り切ること。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問6:生成した水を全て気体と仮定した圧力( $3.00\times10^4$ Pa)を飽和蒸気圧と比べ、水蒸気の分圧 $3.60\times10^3$ Pa を全圧から引けるか。第1問でいちばん差がつく小問で、水蒸気を引き忘れると0.178、水を全部気体とすると0.0780 になり、5点を落とす。
  • 問5:見慣れないファンデルワールスの状態方程式で、 $b$ を「1 mol あたりの自由に動ける体積の減少分」と読めるか。読めれば割り算1回で終わる。

2023年九州大学化学
第2問 解答・解説

第2問は理論化学(化学反応とエネルギー)の問題です。
テーマは『解離エネルギー』『生成エンタルピーの計算』。

問題

2023年九州大学化学 第2問 問題
2023年九州大学化学 第2問 問題
問題文をテキストで読む

※ 旧課程の問題なので、燃焼熱・生成熱の表記をエンタルピーに直して載せています。

次の文章を読み、問1〜問3に答えよ。

1 mol の気体分子内のすべての共有結合を切断するのに必要なエネルギーを解離エネルギーといい、そこから燃焼エンタルピーや生成エンタルピーを求めることができる。必要に応じて、表に示された各種気体分子の解離エネルギーを用いよ。なお、状態は化学式に続けて(固)、(液)、(気)のように表記する。例えば、気体の一酸化炭素は、 $\ce{CO}$(気)と表記する。

表.各種気体分子の解離エネルギー

気体分子解離エネルギー〔kJ/mol〕
$\ce{H2}$436
$\ce{O2}$494
$\ce{H2O}$926
$\ce{CO}$1073
$\ce{CO2}$1602

問1. 1 mol の $\ce{H2O}$(液)の生成や蒸発に関するエンタルピー図は、下図のように描かれる。 $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{エ}}$ にあてはまる化学式および状態を答えよ。また、 $\boxed{\text{オ}}$ 〜 $\boxed{\text{キ}}$ にあてはまる数値(エンタルピー変化 $\Delta H$ の値)を整数で答えよ。

問2. 気体の一酸化炭素の生成エンタルピーが $-111$ kJ/mol であるとき、黒鉛の完全燃焼を表す化学反応式と燃焼エンタルピー〔kJ/mol〕を答えよ。ただし、数値は整数で示せ。

問3. グルコース( $\ce{C6H12O6}$ )は人の細胞内の主要なエネルギー源であり、代謝の過程で酸化される。この代謝を $\ce{C6H12O6}$(固)の完全燃焼であると仮定すると、 $\ce{C6H12O6}$(固)の燃焼エンタルピーは $-2803$ kJ/mol である。 $\ce{C6H12O6}$(固)の生成エンタルピー〔kJ/mol〕と、その完全燃焼を表す化学反応式を答えよ。ただし、数値は整数で示せ。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

解離エネルギーが与えられたら、エンタルピー図の一番上は原子。原子から液体の水までは、気体の水を通る道と、水素と酸素を通る道の2通りがあり、その和は等しい(下の図)。

2023年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
  1. 図の段の名前から、ア〜エ の化学式と状態を決める。
  2. 解離エネルギーの定義から、オは $\ce{H2O}$ の解離エネルギー、カは $\ce{H2}$ 1 mol と $\ce{O2}$ $\dfrac12$ mol の解離エネルギーの和として求める。
  3. 液体の水の生成を $X$ とおき、原子から液体の水への2通りの矢印の和が等しいとして $X$ を求め、キに直す。

【問2の方針】

着眼点

黒鉛を原子にする値は無いので、原子が一番上の図で届くのは一酸化炭素の燃焼まで(下の図)。その値を、単体が一番上の図で一酸化炭素の生成エンタルピーとつなぐ。

2023年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
  1. 一酸化炭素の燃焼 $\ce{CO} + \dfrac12\ce{O2} \ce{->} \ce{CO2}$ をベースとなる式にし、反応エンタルピーを $Y$ とおく。解離エネルギーが与えられているので一番上は原子。2通りの矢印の和が等しいとして $Y$ を求める。
  2. 黒鉛の燃焼エンタルピーの式は二酸化炭素の生成エンタルピーの式でもあるので、ベースにはできない。上で求めた一酸化炭素の燃焼をベースとなる式にし、一番上に単体を置く。
  3. 単体から $\ce{CO}$ へは一酸化炭素の生成エンタルピー、単体から $\ce{CO2}$ へは黒鉛の燃焼 $Z$ 。2通りの矢印の和が等しいとして $Z$ を求め、化学反応式とあわせて答える。

【問3の方針】

着眼点

燃焼エンタルピーの式をベースの式にする。単体を一番上に置けば、二酸化炭素と液体の水の生成エンタルピーは問2・問1 の値がそのまま使える(下の図)。

2023年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
  1. 完全燃焼の化学反応式を書き、これをベースとなる式にする(反応エンタルピー $-2803$ kJ)。
  2. 一番上に単体 $\ce{6C + 6H2 + 9O2}$ を置く。単体からグルコースへの矢印を $W$ 、単体から $\ce{6CO2}$ + $\ce{6H2O}$(液) への矢印を問2・問1 の値の6倍の和とする。
  3. 2通りの矢印の和が等しいとして $W$ を求め、生成熱に直して答える。

解答

2023年九州大学化学 第2問 解答・解説
2023年九州大学化学 第2問 解答・解説
2023年九州大学化学 第2問 解答・解説(続き)
2023年九州大学化学 第2問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

問1

解離エネルギーが与えられているので、エンタルピー図の一番上は原子 $\ce{2H + O}$(気)。分子を原子にばらすには結合を切るエネルギーが要るので、分子の段から原子への矢印はどれも上向き(吸熱)。

ア〜エ は段の名前。一番下の段から「蒸発」で上がった左の段は気体の水、その始点の一番下の段は液体の水。右の段は、「生成」の下向きの矢印で液体の水になる水素と酸素の単体( $\ce{O2}$ は $\dfrac12$ mol)。

答(ア) $\ce{H2O}$(気)(1点)

答(イ) $\ce{H2O}$(液)(1点)

答(ウ) $\ce{H2}$(気)(1点)

答(エ) $\ce{O2}$(気)(1点)

解離エネルギーは気体分子1 mol の結合をすべて切るエネルギー。 $\ce{H2O}$(気) 1 mol を原子にばらすのは $\ce{H2O}$ の解離エネルギーそのもので、 $+926$ kJ( $\ce{O-H}$ 結合2本分)。

答(オ) 926( $\Delta H=+926$ kJ)(2点)

$\ce{H2}$ 1 mol と $\ce{O2}$ $\dfrac12$ mol を原子にばらすので

$$436+494\times\dfrac12=436+247=683$$

答(カ) 683( $\Delta H=+683$ kJ)(2点)

液体の水の生成(右の下向きの矢印)を $X$〔kJ〕とおく。原子から $\ce{H2O}$(液) へ行く2通りの矢印の和は等しい。原子から下へ読む矢印は、向きが逆なので符号を入れ替える(下の図)。

・水素と酸素を通る道: $-683+X$

・気体の水を通る道: $-926+(-44)=-970$

$$-683+X=-970\qquad\therefore\ X=-287$$

負なので液体の水は単体より287 kJ 下にあり、液体の水の生成は発熱。液体の水の生成エンタルピーは $-287$ kJ/mol で、よく知られた値 $-286$ kJ/mol とほぼ一致する。原文の図は下向きの矢印に「生成〔キ〕kJ」と書いているので、キは下がった大きさ287。

答(キ) 287( $\Delta H=-287$ kJ)(3点)

問2

黒鉛を原子にする値(昇華エンタルピー)は与えられていない。そこで、解離エネルギーで求められる一酸化炭素の燃焼を先に求め、一酸化炭素の生成エンタルピーとつなぐ。

一酸化炭素の燃焼 $\ce{CO}$(気) + $\dfrac12\ce{O2}$(気) $\ce{->}$ $\ce{CO2}$(気) をベースとなる式にし、反応エンタルピーを $Y$〔kJ〕とおく。解離エネルギーが与えられているので一番上は原子 $\ce{C + 2O}$(気)。

・$\ce{CO} + \dfrac12\ce{O2}$ → 原子: $1073+494\times\dfrac12=1320$ kJ(上向き)

・$\ce{CO2}$ → 原子: $1602$ kJ(上向き)

$\ce{CO} + \dfrac12\ce{O2}$ から原子へ行く2通りの矢印の和は等しいので

$$1320=Y+1602\qquad\therefore\ Y=-282$$

次に、黒鉛の燃焼エンタルピーを求める。黒鉛の燃焼エンタルピーの式 $\ce{C}$(黒鉛) + $\ce{O2}$(気) $\ce{->}$ $\ce{CO2}$(気) は、二酸化炭素の生成エンタルピーの式でもあるので、ベースとなる式にはできない。そこで一酸化炭素の燃焼( $Y=-282$ kJ)をベースとなる式にする。生成エンタルピーが与えられているので、一番上は単体 $\ce{C}$(黒鉛) + $\ce{O2}$(気)。

・単体 → $\ce{CO} + \dfrac12\ce{O2}$ :一酸化炭素の生成エンタルピー $-111$ kJ(下向き)

・単体 → $\ce{CO2}$ :黒鉛の燃焼を $Z$〔kJ〕とおく

単体から $\ce{CO2}$ へ行く2通りの矢印の和は等しいので

$$Z=-111+(-282)=-393$$

黒鉛の燃焼エンタルピーは $-393$ kJ/mol(よく知られた値 $-394$ kJ/mol とほぼ一致)。燃焼熱は発熱の量なので393 kJ/mol。完全燃焼の化学反応式は次のとおり(エンタルピー変化を付けると $\Delta H=-393$ kJ)。

答(化学反応式) $\ce{C}$(黒鉛) + $\ce{O2}$(気) $\ce{->}$ $\ce{CO2}$(気)(2点)

答 燃焼熱 393 kJ/mol( $\Delta H=-393$ kJ/mol)(5点)

問3

完全燃焼では炭素は二酸化炭素、水素は水になる。燃焼エンタルピーの基準では、できる水は液体。グルコース1 mol に対して係数を合わせると

$\ce{C6H12O6}$(固) + $6\ce{O2}$(気) $\ce{->}$ $6\ce{CO2}$(気) + $6\ce{H2O}$(液)

求めたいのは生成エンタルピーなので、生成エンタルピーの式はベースにできない。この燃焼エンタルピーの式(反応エンタルピー $-2803$ kJ)をベースとなる式にする。

生成エンタルピーでつなぐので、一番上は単体 $\ce{6C + 6H2 + 9O2}$(グルコースの単体 $\ce{6C + 6H2 + 3O2}$ に、燃焼に使う $\ce{6O2}$ を足す)。水は液体と気体の区別が要るので、水にだけ状態を書く。

・単体 → $\ce{C6H12O6 + 6O2}$ :グルコースの生成エンタルピーを $W$〔kJ〕とおく

・単体 → $\ce{6CO2 + 6H2O}$(液):問2 の二酸化炭素 $-393$ kJ/mol と問1 の液体の水 $-287$ kJ/mol を、それぞれ6倍する

単体から $\ce{6CO2 + 6H2O}$(液) へ行く2通りの矢印の和は等しいので

$$W+(-2803)=(-393)\times6+(-287)\times6=-4080\qquad\therefore\ W=-1277$$

グルコース(固)の生成エンタルピーは $-1277$ kJ/mol。生成熱は発熱の量なので1277 kJ/mol。

答 生成熱 1277 kJ/mol( $\Delta H=-1277$ kJ/mol)(5点)

答(化学反応式) $\ce{C6H12O6}$(固) + $6\ce{O2}$(気) $\ce{->}$ $6\ce{CO2}$(気) + $6\ce{H2O}$(液)(2点)

別解

問1 (式の足し引き)  $\ce{H2}$(気) + $\dfrac12\ce{O2}$(気) $\ce{->}$ $\ce{2H + O}$(気) $\Delta H=+683$ kJ、 $\ce{2H + O}$(気) $\ce{->}$ $\ce{H2O}$(気) $\Delta H=-926$ kJ、 $\ce{H2O}$(気) $\ce{->}$ $\ce{H2O}$(液) $\Delta H=-44$ kJ。3本を足すと原子と気体の水が消えて $\ce{H2}$(気) + $\dfrac12\ce{O2}$(気) $\ce{->}$ $\ce{H2O}$(液)、 $\Delta H=683-926-44=-287$ kJ。

問2 (公式) 反応エンタルピー=(反応物の結合エネルギーの和)−(生成物の結合エネルギーの和)より、一酸化炭素の燃焼は $(1073+247)-1602=-282$ kJ。黒鉛の燃焼は「黒鉛 → $\ce{CO}$ → $\ce{CO2}$」の2段の和なので $-111+(-282)=-393$ kJ。

問3 (公式) 反応エンタルピー=(生成物の生成エンタルピーの和)−(反応物の生成エンタルピーの和)。単体の $\ce{O2}$ は0なので $-2803=\{6\times(-393)+6\times(-287)\}-W$ 、 $W=-4080+2803=-1277$ kJ/mol。

出題意図

問1 解離エネルギーが与えられたら原子を一番上に置き、蒸発の段も入れたエンタルピー図で、液体の水の生成エンタルピーを求めることができるか

問2 解離エネルギーで求めた一酸化炭素の燃焼エンタルピーを、一酸化炭素の生成エンタルピーとつないで、黒鉛の燃焼エンタルピーを求めることができるか

問3 燃焼エンタルピーの式をベースとなる式にし、問1・問2 で求めた値を生成エンタルピーとして使って、グルコースの生成エンタルピーを求めることができるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや簡単
目標得点25点25点
目標時間10分12分

典型的な熱化学の大問で、重要問題集の結合エネルギーとヘスの法則の問題が完璧なら満点が取れる。
解離エネルギー(結合エネルギー)が与えられたら一番上は原子、生成エンタルピーが与えられたら一番上は単体。
この判断さえできれば、あとはエンタルピー図を書いて矢印をつなぐだけで、前の小問の値が次の小問に自然と受け渡される。

数式で消していく解き方だけでなく、エンタルピー図で解く練習を積み、よく出る値( $\ce{CO}$ の $-111$ ・ $\ce{CO2}$ の $-394$ ・液体の水の $-286$ )は覚えておこう。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問2:黒鉛を原子にする値が与えられていないので、原子が一番上の図だけでは解けない。解離エネルギーで一酸化炭素の燃焼を求め、それを一酸化炭素の生成エンタルピーとつなぐ、という2段の発想に行き着けるか。ここで止まると問3 も二酸化炭素の値が無く解けず、10点を落とす。
  • 問3:問1・問2 で自分が求めた値(液体の水 $-287$ ・二酸化炭素 $-393$ )を生成エンタルピーとして使い、燃焼エンタルピーの式をベースにできるか。水を液体で使うことと、前の小問の値を受け渡す流れに気づけば、あとはエンタルピー図を1枚書くだけ。
九州大学に合格する方法

2023年九州大学化学
第3問 解答・解説

第3問は無機化学・理論化学の問題です。
テーマは『錯イオン』『酸化還元滴定』。

問題

2023年九州大学化学 第3問 問題
2023年九州大学化学 第3問 問題
問題文をテキストで読む

次の文章を読み、問1〜問4に答えよ。

周期表で、3〜11族に属する元素を $\boxed{\text{ア}}$ といい、鉄をはじめ、銅、銀、マンガンなど、日常生活で重要なものが多く含まれる。 $\boxed{\text{ア}}$ のイオンや化合物は有色のものが多く、錯イオンをつくりやすい。錯イオンにおいて、金属イオンに結合した分子やイオンは $\boxed{\text{イ}}$ とよばれる。錯イオンの立体構造は中心金属イオンの種類や $\boxed{\text{イ}}$ の数により決まる傾向があり、ジアンミン銀(Ⅰ)イオンでは $\boxed{\text{ウ}}$ 形、ヘキサシアニド鉄(Ⅲ)酸イオンでは $\boxed{\text{エ}}$ 形の構造をとっている。金属イオンは、それぞれ特定の試薬と反応して特有の色の沈殿を生じるものが多い。例えば、鉄(Ⅱ)イオン $\ce{Fe^2+}$ を含む水溶液にヘキサシアニド鉄(Ⅲ)酸カリウム水溶液を加えると、 $\boxed{\text{オ}}$ 色の沈殿を生じる。このような性質を利用して、各種金属イオンの混合水溶液から、それぞれの金属イオンを分離することができる。また、酸化数の高いマンガンやクロムを含む化合物は、酸化力が強く酸化剤として用いられる。

問1. 文章中の $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{オ}}$ にあてはまる最も適切な語句を、次の(A)〜(W)の中から1つずつ選び記号で答えよ。

(A) 淡黄 (B) 赤褐 (C) 黒 (D) 濃青

(E) 原子 (F) 配位子 (G) 官能基 (H) 水和水

(I) コロイド (J) 錯塩 (K) 中間子 (L) 折れ線

(M) 直線 (N) 正四面体 (O) 正方四辺 (P) 正八面体

(Q) 正六面体 (R) 典型元素 (S) 遷移元素 (T) 非金属元素

(U) ハロゲン元素 (V) 希土類元素 (W) アルカリ金属元素

問2. 第4周期元素は、K殻からN殻まで電子が収容されている。原子番号26の鉄 $\ce{Fe}$ の各殻に収容されているそれぞれの電子数を答えよ。

問3. $\ce{Cu^2+}$、 $\ce{Fe^3+}$、 $\ce{Al^3+}$ を含む混合水溶液に、過剰のアンモニア水を加えたときに生じる沈殿に含まれる2種類の金属イオンを化学式で答えよ。また、溶液中に含まれる錯イオンの化学式と名称を答えよ。

問4. 硫酸で酸性にした過マンガン酸カリウム水溶液100 mL に、0.100 mol/L の硫酸鉄(Ⅱ)水溶液を少しずつ加えたとき、50.0 mL 加えたところで溶液の赤紫色が消えた。この反応に用いた過マンガン酸カリウム水溶液の濃度〔mol/L〕を、有効数字3桁で答えよ。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

錯イオンの形は中心の金属イオンと配位数で決まり、特別に覚えるのは $\ce{Ag+}$ の直線形、 $\ce{Zn^2+}$ の正四面体形、 $\ce{Cu^2+}$ の正方形の3つ(下の図)。オは、鉄イオンと試薬の酸化数がたすき掛けのときだけ濃青色沈殿。

2023年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
  1. リード文の「3〜11族」から、アの遷移元素を選ぶ。
  2. 金属イオンに配位結合した分子やイオンの呼び名から、イの配位子を選ぶ。
  3. ジアンミン銀(Ⅰ)イオンは配位数2、ヘキサシアニド鉄(Ⅲ)酸イオンは配位数6なので、ウ・エの形を選ぶ。
  4. 鉄(Ⅱ)イオンとヘキサシアニド鉄(Ⅲ)酸カリウムの組み合わせから、オの沈殿の色を選ぶ。

【問2の方針】

着眼点

電子配置は、カルシウムまでは N殻に入り、スカンジウムからは内側の M殻に入っていく(下の図)。理由をこじつけず、36番のクリプトンまで書けるようにしておく。

2023年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
  1. K殻・L殻は2個・8個で埋まり、カルシウム(20番)までで M殻8個・N殻2個になることを確かめる。
  2. スカンジウム(21番)から鉄(26番)までの6個は M殻に入るので、M殻の電子の数を求める。
  3. 合計が26になることを確かめて、各殻の電子の数を答える。

【問3の方針】

着眼点

アンモニア水はまず $\ce{OH-}$ を生じる塩基として働き、3つとも水酸化物の沈殿にする。過剰に加えたときに溶けるのは、アンモニアと錯イオンをつくる組み合わせ($\ce{Cu^2+}$・$\ce{Zn^2+}$・$\ce{Ag+}$・$\ce{Ni^2+}$)だけ(下の図)。

2023年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
  1. 少量のアンモニア水で、3つのイオンがそれぞれ水酸化物の沈殿になることを確かめる。
  2. 過剰のアンモニア水で錯イオンになって溶けるのは水酸化銅(Ⅱ)だけだと判断する。
  3. 沈殿に残る2つの金属イオンを答える。
  4. 溶液中の錯イオンの化学式を書き、命名法の順(配位数→配位子→中心金属と酸化数→イオン)で名称を答える。

【問4の方針】

着眼点

量的関係は「酸化剤の受け取る $\ce{e-}$ =還元剤の与える $\ce{e-}$」の1本で決まる。過マンガン酸カリウムの側に硫酸鉄(Ⅱ)を加えていく向きなので、赤紫色が消えたときが終点(下の図)。

2023年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
  1. 状況図を書き、ビーカーの中が過マンガン酸カリウム、加えていくのが硫酸鉄(Ⅱ)であることを確かめる。
  2. 過マンガン酸イオン(酸化剤)と鉄(Ⅱ)イオン(還元剤)の半反応式を書き、受け取る・与える電子の数を読む。
  3. 過マンガン酸カリウムの濃度を $x$ mol/L とおき、「酸化剤の受け取る $\ce{e-}$ =還元剤の与える $\ce{e-}$」の式を立てる。
  4. $x$ を求め、有効数字3桁で答える。

解答

2023年九州大学化学 第3問 解答・解説
2023年九州大学化学 第3問 解答・解説
2023年九州大学化学 第3問 解答・解説(続き)
2023年九州大学化学 第3問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

問1

ア 周期表の3〜11族の元素は遷移元素。リード文の「有色のものが多く、錯イオンをつくりやすい」も遷移元素の特徴(ほかに、融点が高く密度が大きい・いろいろな酸化数をとる・横に並んだ元素どうしが似る)。遷移元素は最外殻の電子の数が1か2で、原子番号が増えると内側の殻に電子が入っていくため、こうした性質が生まれる(問2 の電子配置とつながる)。

イ 錯イオンで、金属イオンに非共有電子対を提供して配位結合している分子やイオンが配位子、その数が配位数。

ウ・エ 錯イオンの形は配位数で決まる。配位数4だけは2通りあり、 $\ce{Zn^2+}$ なら正四面体形、 $\ce{Cu^2+}$ なら正方形になる(下の図)。

・ジアンミン銀(Ⅰ)イオン $\ce{[Ag(NH3)2]+}$ は、 $\ce{Ag+}$ に $\ce{NH3}$ が2個配位した配位数2の直線形

・ヘキサシアニド鉄(Ⅲ)酸イオン $\ce{[Fe(CN)6]^3-}$ は、 $\ce{Fe^3+}$ に $\ce{CN-}$ が6個配位した配位数6の正八面体形

・選択肢の (O) 正方四辺(正方形)はテトラアンミン銅(Ⅱ)イオン $\ce{[Cu(NH3)4]^2+}$、(N) 正四面体はテトラアンミン亜鉛(Ⅱ)イオン $\ce{[Zn(NH3)4]^2+}$ の形。(L) 折れ線は水分子の形で、錯イオンの形ではない

オ 鉄イオンの検出は、加える試薬との組み合わせで結果が決まる(下の図)。

・$\ce{Fe^2+}$ にヘキサシアニド鉄(Ⅲ)酸カリウム $\ce{K3[Fe(CN)6]}$ を加えると濃青色沈殿

・$\ce{Fe^3+}$ にヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸カリウム $\ce{K4[Fe(CN)6]}$ を加えても濃青色沈殿

・鉄イオンが (Ⅱ) なら試薬は (Ⅲ)、鉄イオンが (Ⅲ) なら試薬は (Ⅱ) と、数字がたすき掛けになったときだけ濃青色沈殿になる。昔は前者をターンブルブルー、後者をベルリンブルーと呼び分けていたが、今は同じ物質(紺青、プルシアンブルー)とされている

・$\ce{Fe^3+}$ にチオシアン酸カリウム $\ce{KSCN}$ を加えると血赤色の溶液(沈殿ではない)。 $\ce{Fe^2+}$ では変化しない

・選択肢の (B) 赤褐は $\ce{Fe^3+}$ に塩基を加えたときの水酸化鉄(Ⅲ) $\ce{Fe(OH)3}$ の色。(A) 淡黄は臭化銀 $\ce{AgBr}$ などの色、(C) 黒は硫化物($\ce{CuS}$・$\ce{FeS}$ など)に多い色

答(ア) (S) 遷移元素(2点)

答(イ) (F) 配位子(2点)

答(ウ) (M) 直線(2点)

答(エ) (P) 正八面体(2点)

答(オ) (D) 濃青(2点)

問2

電子は内側の殻から入り、K殻・L殻・M殻・N殻には最大で2個・8個・18個・32個まで入る。ただし第4周期では、カルシウムまでは外側の N殻に入り、スカンジウムからは内側の M殻に入っていく。これは理由をこじつけずに覚えるところ(下の図)。

・カルシウム(20番):K殻2・L殻8・M殻8・N殻2

・スカンジウム(21番)から鉄(26番)までの6個の電子は M殻に入るので、鉄の M殻は $8+6=14$ 個

・確かめ: $2+8+14+2=26$ で、鉄の原子番号と一致する

第4周期のスカンジウムから亜鉛まで(遷移元素と亜鉛)で、N殻が1個になるのはクロムと銅の2つだけ(クロムは M殻13・N殻1、銅は M殻18・N殻1)。なお、鉄がイオンになるときは外側の N殻から電子を失う。 $\ce{Fe^2+}$ は K殻2・L殻8・M殻14、 $\ce{Fe^3+}$ はさらに M殻から1個を失って K殻2・L殻8・M殻13 になる。

答 K殻 2個、L殻 8個、M殻 14個、N殻 2個(4点)

問3

アンモニアは水と反応して $\ce{OH-}$ を生じる。まず少量のアンモニア水で、3つのイオンはどれも水酸化物の沈殿になる。

$$\ce{Cu^2+ + 2OH- -> Cu(OH)2}\quad\text{(青白色)}$$

$$\ce{Fe^3+ + 3OH- -> Fe(OH)3}\quad\text{(赤褐色)}$$

$$\ce{Al^3+ + 3OH- -> Al(OH)3}\quad\text{(白色)}$$

過剰に加えると、アンモニアと錯イオンをつくる水酸化銅(Ⅱ)だけが溶けて、深青色の溶液になる。

$$\ce{Cu(OH)2 + 4NH3 -> [Cu(NH3)4]^2+ + 2OH-}$$

・水酸化鉄(Ⅲ)は、アンモニアとも $\ce{OH-}$ とも錯イオンをつくらないので、溶けずに残る

・水酸化アルミニウムは両性水酸化物で、水酸化ナトリウム水溶液を過剰に加えれば $\ce{Al(OH)3 + OH- -> [Al(OH)4]-}$ と溶ける。しかしアンモニアは弱塩基で、いくら加えても $\ce{OH-}$ の濃度が大きくならないので、 $\ce{[Al(OH)4]-}$ はできず、沈殿のまま残る

・過剰のアンモニア水で錯イオンになって溶けるのは、 $\ce{Cu^2+}$($\ce{[Cu(NH3)4]^2+}$ 深青色)・$\ce{Zn^2+}$($\ce{[Zn(NH3)4]^2+}$ 無色)・$\ce{Ag+}$($\ce{[Ag(NH3)2]+}$ 無色)・$\ce{Ni^2+}$($\ce{[Ni(NH3)6]^2+}$)の4つ

錯イオンの名称は「配位数(テトラ=4)→配位子(アンミン=$\ce{NH3}$)→中心金属と酸化数(銅(Ⅱ))→イオン」の順に読む。全体が陽イオンなので、語尾は「酸イオン」ではなく「イオン」。形は問1 で見た正方形。

(2つの金属イオンは順不同)

答(沈殿に含まれる金属イオン) $\ce{Fe^3+}$、 $\ce{Al^3+}$(2点)

答(錯イオンの化学式) $\ce{[Cu(NH3)4]^2+}$(2点)

答(錯イオンの名称) テトラアンミン銅(Ⅱ)イオン(2点)

問4

ビーカーの中は硫酸酸性の過マンガン酸カリウム水溶液で、そこに硫酸鉄(Ⅱ)水溶液を加えていく。加えた $\ce{Fe^2+}$ は、すぐに $\ce{MnO4-}$ に酸化されて $\ce{Fe^3+}$ になる。 $\ce{MnO4-}$ が残っている間は赤紫色で、ちょうど使い切ったときに赤紫色が消える(下の図)。

酸化剤の過マンガン酸イオンは、硫酸酸性では $\ce{Mn^2+}$ まで還元され(酸化数 +7 → +2)、1個で電子を5個受け取る。還元剤の鉄(Ⅱ)イオンは $\ce{Fe^3+}$ になり、1個で電子を1個与える。

$$\ce{MnO4- + 8H+ + 5e- -> Mn^2+ + 4H2O}$$

$$\ce{Fe^2+ -> Fe^3+ + e-}$$

過マンガン酸カリウムの濃度を $x$ mol/L とおく。酸化剤の受け取る $\ce{e-}$ =還元剤の与える $\ce{e-}$ より

$$x\times\dfrac{100}{1000}\times5=0.100\times\dfrac{50.0}{1000}\times1$$

$$x=1.00\times10^{-2}\ \mathrm{mol/L}$$

(物質量で見ると、加えた $\ce{Fe^2+}$ は $5.00\times10^{-3}$ mol、それと反応した $\ce{MnO4-}$ はその $\dfrac15$ の $1.00\times10^{-3}$ mol。これが100 mL に入っていた。)

ふつうの過マンガン酸カリウムの滴定は、ビュレットから過マンガン酸カリウムを加えていき、赤紫色が消えずに残り始めたところが終点。この問題は向きが逆なので、赤紫色が消えたところが終点になる。どちらの向きでも、終点では $\ce{MnO4-}$ と $\ce{Fe^2+}$ が過不足なく反応している。酸性にするのに硫酸を使うのは、塩酸の $\ce{Cl-}$ は還元剤として $\ce{MnO4-}$ と反応し、硝酸は酸化剤として $\ce{Fe^2+}$ と反応して、どちらも結果が狂うから。酸性にしないと、 $\ce{MnO4-}$ は $\ce{Mn^2+}$ まで行かずに酸化マンガン(Ⅳ) $\ce{MnO2}$ の黒色沈殿で止まり、受け取る電子が3個になる。

答 $1.00\times10^{-2}$ mol/L(5点)

別解

問4 (化学反応式の係数を使う)2つの半反応式の電子をそろえて足すと $\ce{MnO4- + 5Fe^2+ + 8H+ -> Mn^2+ + 5Fe^3+ + 4H2O}$ 。係数の比から $\ce{MnO4-}$ と $\ce{Fe^2+}$ は $1:5$ で反応するので、 $\ce{MnO4-}$ は $0.100\times\dfrac{50.0}{1000}\times\dfrac15=1.00\times10^{-3}$ mol。100 mL に入っていたので $1.00\times10^{-2}$ mol/L で本解と同じ。ただし反応式の係数を書き間違えると答えがずれるので、ふだんは本解の電子の式で解く。

出題意図

問1 遷移元素と錯イオンの基本の言葉を押さえ、錯イオンの形を配位数から、鉄(Ⅱ)イオンの検出の色を試薬との組み合わせから答えられるか

問2 第4周期の元素の電子配置で、カルシウムのあとは内側の M殻に電子が入っていくことを知っていて、鉄の各殻の電子の数を答えられるか

問3 3種類の金属イオンのうち、過剰のアンモニア水で錯イオンになって溶けるものと、水酸化物の沈殿のまま残るものを見分けられるか

問4 過マンガン酸イオンと鉄(Ⅱ)イオンのやりとりする電子の数から、過マンガン酸カリウムの濃度を求められるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや簡単
目標得点25点25点
目標時間8分10分

知識だけで解ける大問で、暗記だけで満点が取れる。
九大の大問のうち、理論化学の計算がなく暗記だけで解けるものは、基本的に全部解けなければいけない。
1問でも落とすなら、無機の暗記を一からやり直すつもりで見直すこと。

錯イオンは形・色・作る組み合わせ、鉄イオンの検出はたすき掛けの表、電子配置は36番のクリプトンまでと、系列ごと白紙に書けるようにしておけば、細かい所を聞かれても迷わない。
ここで浮かせた時間を、合否を分けた第4問に回すこと。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問1・問3:差がつくとしたら、錯イオンの形・色・作る組み合わせと、鉄イオンの検出のたすき掛けを、表で覚えていたかどうか。どれも暗記だけで答えられるが、ヘキサシアニド鉄(Ⅲ)酸イオンの形や濃青色沈殿の組み合わせのような細かい所まで聞かれているので、あいまいな暗記では取りこぼす。

2023年九州大学化学
第4問 解答・解説

第4問は有機化学・高分子化合物・理論化学の問題です。
テーマは『構造決定』『フェノールとノボラック』。

問題

2023年九州大学化学 第4問 問題
2023年九州大学化学 第4問 問題
問題文をテキストで読む

次の文章を読み、問1〜問4に答えよ。なお、反応はすべて完全に進行し、副反応は起こらないものとする。構造式を答える際には、表紙にある記入例にならって答えよ。ただし、鏡像異性体は区別しないものとする。

有機化合物 A および B に触媒を用いて水素を付加させるa)と、ともに化合物 C を生じた。化合物 A および B の水素原子1個がメチル基で置換された化合物をそれぞれ化合物 D および E とすると、これらの化合物においても下線部a)と同様の反応が進行し、化合物 D および E のいずれからも化合物 F を生じた。化合物 E を96.0 mg 完全燃焼させると、二酸化炭素および水をそれぞれ308 mg および108 mg 生じた。化合物 A の水素原子1個がヒドロキシ基で置換された化合物を化合物 G とすると、この化合物においても下線部a)と同様の反応が進行し、化合物 H を生じた。化合物 G の水素原子1個がメチル基で置換された化合物を化合物 I とし、化合物 I と構造異性体の関係にある化合物を化合物 J とする。化合物 G、H、I、J はいずれもヒドロキシ基をもつが、化合物 G および I の水溶液が弱酸性であるのに対し、化合物 H および J の水溶液は中性を示した。化合物 A、B、C、D、F、G をそれぞれ水と混合し、これらに臭素水を加えると外観の変化が観察された化合物は2つあったb)。化合物 D を過マンガン酸カリウム水溶液と反応させると化合物 K を生成するが、この化合物は化合物 J を酸化することでも生成した。

ただし、化合物 E は環状化合物であり、化合物 L とエチレンの反応によって生じる。なお、この反応によって生成する化合物は化合物 E のみであるとする。化合物 L の重合体は天然ゴムの主成分である。

エチレンに水を付加させると化合物 M が生じた。化合物 M と化合物 K は、縮合反応により化合物 N を生じた。また、化合物 M を酸化すると化合物 O が生じた。化合物 O に脱水剤を加えて加熱すると化合物 P を生じた。化合物 P を化合物 G と反応させると化合物 Q を生じた。化合物 G は酸触媒下でホルムアルデヒドと反応してやわらかい固体物質 R を生じた。物質 R 1.00 g を溶媒に完全に溶解させ、この溶液100 mL の浸透圧を300 K で測定したところ、浸透圧は $2.50\times10^4$ Pa であった。

問1. 下線部b)について、臭素水を加えると次の(ⅰ)または(ⅱ)の変化が観察された。

(ⅰ) 臭素水(赤褐色)が脱色された。

(ⅱ) 白色沈殿を生じた。

(ⅰ)または(ⅱ)の変化が観察された化合物として最も適切なものを、化合物 A、B、C、D、F、G の中から1つずつ選び記号で答えよ。また、選んだ化合物が臭素水と反応して生じる化合物の構造式をそれぞれ答えよ。

問2. 化合物 I はヒドロキシ基の置換位置によって3種類の異性体がある。このうち、最も融点が高い化合物の構造式を答えよ。

問3. 化合物 N、P、Q の構造式をそれぞれ答えよ。

問4. 物質 R の名称を答えよ。また、その分子量はいくらか、有効数字3桁で答えよ。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

臭素水で変化するのは、二重結合をもつ化合物(付加で脱色)とフェノール類(置換で白色沈殿)。まず A・B を、B は E から、A は G から逆にたどって決める(下の図)。

2023年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
  1. E を燃焼させてできた二酸化炭素と水の質量から C と H の質量を求め、合計が E の質量と一致することから、E が炭化水素であると決めて組成式を求める。
  2. L は天然ゴムの単量体のイソプレン。イソプレンとエチレンが結合してできる環状の化合物が E(メチルシクロヘキセン)。E のメチル基を H にもどしたものが B(シクロヘキセン)。
  3. G はヒドロキシ基をもち水溶液が弱酸性なのでフェノール類。G の OH を H にもどしたものが A で、水素を付けると B と同じ C になるので A はベンゼン。C・D・F・G も決める。
  4. A・B・C・D・F・G のうち、臭素水と反応するのは B と G。B は付加で脱色、G は置換で白色沈殿と分けて、それぞれの生成物の構造式を書く。

【問2の方針】

着眼点

I は G(フェノール)の環にメチル基が付いたクレゾール。o・m・p のうち、形の対称性がよいものほど結晶に詰まりやすく、融点が高い(下の図)。

2023年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
  1. I をクレゾールと決める。
  2. 3つの異性体のうち、メチル基とヒドロキシ基が向かい合う位置にある p-クレゾールの融点が最も高いと判断し、構造式を書く。

【問3の方針】

着眼点

後半はエチレンから始まる流れで、前半の化合物とは K と G でつながる。N・Q はどちらもエステルで、酸(カルボン酸か酸無水物)とアルコール・フェノールから水や酢酸が取れた形(下の図)。

2023年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
  1. J は I と構造異性体でヒドロキシ基をもち中性なので、ヒドロキシ基が環に直接付いていないベンジルアルコール。D(トルエン)・J の酸化で K(安息香酸)。
  2. エチレンに水を付加して M(エタノール)、酸化して O(酢酸)、脱水剤で2分子から水を取って P(無水酢酸)。
  3. K と M の縮合で N(安息香酸エチル)、P と G で Q(酢酸フェニル)。N・P・Q の構造式を書く。

【問4の方針】

着眼点

フェノールとホルムアルデヒドから、酸触媒ではノボラック、塩基触媒ではレゾールができる。分子量は浸透圧から求める典型問題で、前半の構造決定とは関係なく解ける(下の図)。

2023年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
  1. 酸触媒でできるやわらかい固体をノボラックと答える。
  2. 浸透圧の式を気体の状態方程式の形( $\Pi V=nRT$ )で立てる。V は溶液の体積 0.100 L、n は $\dfrac{1.00}{M}$(高分子は電離しないので個数1)。
  3. 分子量 M を求め、有効数字3桁で答える。

解答

2023年九州大学化学 第4問 解答・解説
2023年九州大学化学 第4問 解答・解説
2023年九州大学化学 第4問 解答・解説(続き)
2023年九州大学化学 第4問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

問1

まず E の分子式を求める。燃焼で生じた二酸化炭素と水から、

・C の質量: $308\times\dfrac{12.0}{44.0}=84.0$ mg

・H の質量: $108\times\dfrac{2.00}{18.0}=12.0$ mg

合計 $84.0+12.0=96.0$ mg が E の質量と一致するので、E は C と H だけからなる炭化水素。

$$\mathrm{C}:\mathrm{H}=\dfrac{84.0}{12.0}:\dfrac{12.0}{1.00}=7.00:12.0=7:12$$

E は L とエチレン( $\ce{C2H4}$ )の反応で生じる。L の重合体は天然ゴムの主成分なので、L はイソプレン $\ce{CH2=C(CH3)-CH=CH2}$( $\ce{C5H8}$ )。 $\ce{C5H8}+\ce{C2H4}$ で $\ce{C7H12}$ となり、組成式と合う。 $\ce{C7H12}$ の不飽和度は $\dfrac{2\times7+2-12}{2}=2$ で、E は環状なので、環1つと二重結合1つ。

イソプレンの両端の炭素がエチレンの2つの炭素と1本ずつ結合すると六員環ができ、二重結合はイソプレンの中央(メチル基の付いた炭素とその隣の炭素の間)に移る。これが E(1-メチルシクロヘキセン)。この反応はディールス・アルダー反応とよばれ高校の範囲を超えるが、「 $\ce{C7H12}$ ・環状・B の H 1個をメチル基にしたもの」だけでメチルシクロヘキセンまで決まる。E のメチル基を H にもどした B はシクロヘキセン(下の図)。

B に水素を付けた C はシクロヘキサン、E に水素を付けた F はメチルシクロヘキサン。

次に A を決める。G は A の H をヒドロキシ基にしたもので、ヒドロキシ基をもち水溶液が弱酸性なのでフェノール類。また A に水素を付けると C(シクロヘキサン)になるので、A は炭素6個の環。よって A はベンゼン、G はフェノール。D はトルエンで、水素を付けると F(メチルシクロヘキサン)になり、問題文と合う。G に水素を付けた H はシクロヘキサノール。ベンゼン環がなくなってふつうのアルコールになるので、水溶液は中性。これも問題文と合う(下の図)。

A・B・C・D・F・G のうち、臭素水と反応するのは次の2つ。

・B(シクロヘキセン):二重結合に臭素が付加し、臭素水の赤褐色が消える((ⅰ))

・G(フェノール):ヒドロキシ基がベンゼン環を反応しやすくし、o 位・p 位の3か所の H が Br に置換されて、水に溶けにくい2,4,6-トリブロモフェノールの白色沈殿ができる((ⅱ))

A(ベンゼン)とD(トルエン)は、鉄などの触媒がなければ臭素水とは反応しない。C・F は二重結合をもたない。フェノールも臭素水の色を消すが、白色沈殿ができるのは G だけなので、(ⅱ) に当てる。

$$\ce{C6H10 + Br2 -> C6H10Br2}$$

答((ⅰ) の化合物) B(1点)

答((ⅰ) の生成物) 1,2-ジブロモシクロヘキサン(構造式は上の図)(2点)

$$\ce{C6H5OH + 3Br2 -> C6H2Br3OH + 3HBr}$$

答((ⅱ) の化合物) G(1点)

答((ⅱ) の生成物) 2,4,6-トリブロモフェノール(構造式は上の図)(2点)

問2

I は G(フェノール)の H 1個をメチル基にしたもの。ヒドロキシ基をもち水溶液が弱酸性なので、ヒドロキシ基はベンゼン環に付いたまま、メチル基も環に付いている。I はクレゾール $\ce{CH3-C6H4-OH}$ で、ヒドロキシ基の位置で o・m・p の3つの異性体がある。

融点は o-クレゾールが約30℃、m-クレゾールが約12℃、p-クレゾールが約35℃。メチル基とヒドロキシ基が向かい合う p 体は、分子の形の対称性がよく、結晶の中ですき間なく並ぶので、融点が最も高い。

答 p-クレゾール(構造式は上の図)(3点)

問3

まず K を決める。J は I(クレゾール $\ce{C7H8O}$ )と構造異性体で、ヒドロキシ基をもつのに水溶液は中性。ヒドロキシ基がベンゼン環に直接付いていないアルコールなので、J はベンジルアルコール $\ce{C6H5-CH2-OH}$。D(トルエン)を過マンガン酸カリウムで酸化しても、J を酸化しても、側鎖が $\ce{-COOH}$ になって K(安息香酸 $\ce{C6H5-COOH}$ )ができる。

次にエチレンから始まる流れ(下の図)。

・エチレンに水を付加すると M(エタノール $\ce{CH3-CH2-OH}$ )

・M を酸化すると O(酢酸 $\ce{CH3-COOH}$ )。次に脱水剤で P になるので、アルデヒドで止まらず酢酸まで酸化されている

・O に脱水剤を加えて加熱すると、2分子から水が取れて P(無水酢酸)

N は K(安息香酸)と M(エタノール)の縮合(エステル化)でできる安息香酸エチル。

$$\ce{C6H5COOH + C2H5OH -> C6H5COOC2H5 + H2O}$$

答(化合物 N) $\ce{C6H5-CO-O-CH2-CH3}$(構造式は上の図)(3点)

$$\ce{2CH3COOH -> (CH3CO)2O + H2O}$$

答(化合物 P) $\ce{CH3-CO-O-CO-CH3}$(構造式は上の図)(3点)

フェノールのヒドロキシ基は、カルボン酸とはほとんどエステルをつくらないので、無水酢酸を使ってアセチル化する。Q は酢酸フェニル。

$$\ce{(CH3CO)2O + C6H5OH -> CH3COOC6H5 + CH3COOH}$$

答(化合物 Q) $\ce{CH3-CO-O-C6H5}$(構造式は上の図)(3点)

問4

フェノールとホルムアルデヒドを酸触媒で反応させると、フェノールの o 位・p 位がメチレン基 $\ce{-CH2-}$ でつながった、分子量の小さいやわらかい固体ができる。これがノボラック(塩基触媒ではレゾールができる)。ノボラックは硬化剤を加えて加熱すると、立体網目状のフェノール樹脂になる。

答(名称) ノボラック(2点)

分子量を $M$ とおくと、R 1.00 g の物質量は $\dfrac{1.00}{M}$ mol。高分子は電離しないので、溶けて動く粒子の数は1個のまま。浸透圧の式を気体の状態方程式の形で立てる。 $V$ は溶液の体積 100 mL=0.100 L。

$$\Pi V=nRT\qquad2.50\times10^4\times0.100=\dfrac{1.00}{M}\times8.31\times10^3\times300$$

$$M=\dfrac{1.00\times8.31\times10^3\times300}{2.50\times10^4\times0.100}=997.2\fallingdotseq997$$

フェノールが $\ce{-CH2-}$ で1つつながるごとに式量は約106ずつ増えるので、997はフェノール9〜10個分の鎖。ノボラックが小さな分子の集まりであることと合う。

答(分子量) 997(5点)

出題意図

問1 元素分析と反応のつながりから A〜L を決め、臭素水との反応(付加と置換)を構造式で書き分けられるか

問2 クレゾールの3つの異性体の融点を、分子の形から判断できるか

問3 アルコール・カルボン酸・フェノールの反応の流れを追い、エステルと酸無水物の構造式を書けるか

問4 フェノール樹脂の種類を触媒で区別し、浸透圧から高分子の分子量を求められるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや難
目標得点20点15点
目標時間20分20分

2023年の化学の合否を分けた大問。
九大の有機としては珍しい、見慣れない構造決定で、A と B が決まらないと大半の小問がつながらない。
入口は E の元素分析と「天然ゴム=イソプレン」で、B がシクロヘキセンと決まれば、残りは芳香族の典型の流れだ。

重要問題集の構造決定に加え、他大学の過去問や難しめの模試で初見の構造決定に慣れておき、本番では飛ばす判断も持っておこう。

差がつく所・失点しやすい所

  • A・B の特定(問1〜問3 の入口):E の元素分析から $\ce{C7H12}$ を求め、「天然ゴム=イソプレン」「イソプレンとエチレンから環ができる」から E をメチルシクロヘキセン、B をシクロヘキセンと決める発想に行き着けるか。ここを越えないと C・F や臭素水の(ⅰ) がつながらず、満点か0点かに分かれやすい。教科書に無い反応で初見性が高く、白紙の受験生が多かった。
  • 問2:クレゾールの3つの異性体の融点を、形の対称性がよい p 体が最も高い、と判断できるか。値を覚えていなくても、分子の形から決められる。
  • 問1:フェノールも臭素水の色を消すが、白色沈殿の(ⅱ) に当て、(ⅰ) は付加で脱色するシクロヘキセンに当てられるか。ベンゼン・トルエンは臭素水と反応しないと言い切れるか。
九州大学に合格する方法

2023年九州大学化学
第5問 解答・解説

第5問は高分子化合物(糖類)の問題です。
テーマは『二糖の構造』『ビニロンの合成』。

問題

2023年九州大学化学 第5問 問題
2023年九州大学化学 第5問 問題
問題文をテキストで読む

次の文章を読み、問1〜問7に答えよ。構造式を答える際には表紙にある記入例にならって、また、部分構造を記入するときは下の記入例にならって答えよ。

部分構造の記入例$-\ce{CH2-O-CH3}$、 $-\ce{NH2}$、 $-\ce{Cl}$

糖は炭水化物ともよばれ、複数のヒドロキシ基をもつ。加水分解によってそれ以上簡単な糖を生じないものを単糖という。単糖の中で $\ce{C3(H2O)3}$ の式で表される化合物 A はアルドースで不斉炭素をもつ。二糖は2つの単糖が結合したもので、単糖や二糖は甘みを示すものが多い。ショ糖はグルコースとフルクトースが脱水縮合している。またマルトース、セロビオース、トレハロースは2分子のグルコースが脱水縮合している。多糖は多数の単糖が脱水縮合した構造をもつ。セルロースは衣料品や紙製品などに広く利用される。

セルロースと同様に多数のヒドロキシ基をもつポリビニルアルコールは、ヒドロキシ基による水素結合を形成する合成繊維の原料として用いられている。ポリビニルアルコールを合成するとき、原料として化合物 B が用いられ、ビニルアルコールは用いられない。これは、ビニルアルコールは不安定で化合物 C に変化するためである。化合物 B を $\boxed{\text{ア}}$ 重合させると化合物 D が生成し、これに水酸化ナトリウム水溶液を加えて $\boxed{\text{イ}}$ するとポリビニルアルコールが得られる。さらに、ポリビニルアルコールの水溶液を細孔から飽和硫酸ナトリウム水溶液中に押し出し紡糸したのち、ホルムアルデヒド水溶液で処理することで、水に不溶な合成繊維 E が得られる。このとき、ポリビニルアルコールのヒドロキシ基の一部がエーテル結合を形成するが、この反応のことを $\boxed{\text{ウ}}$ 化という。

問1. 化合物 A の不斉炭素に結合する部分構造をすべて答えよ。

問2. フルクトースは、 $\ce{C6H12O6}$ の分子式で表されるグルコースの構造異性体である。図1に示すフルクトースの鎖状構造の X として適切な部分構造を答えよ。

問3. 図2に示す化合物 F、G、H、I の中からマルトース、セロビオース、トレハロースにあてはまるものを記号で答えよ。ただし、トレハロースは $\alpha$-グルコース構造をもつ。また、それぞれの化合物の①と③として適切な部分構造を答えよ。

問4. 多糖に関する記述で正しいものを、次の(A)〜(G)の中からすべて選び記号で答えよ。

(A) デンプンはアミラーゼで加水分解されグルコースとなる。

(B) アミロペクチンは枝分かれ構造を含み、らせん構造をとらない。

(C) セルロースは還元性を示す。

(D) デキストリンはデンプンより水に溶けやすい。

(E) グリコーゲンはヨウ素デンプン反応を示さない。

(F) アミロースは $\alpha$-グルコースが脱水縮合し、鎖状に結合した構造をもつ。

(G) トリアセチルセルロースは、ジアセチルセルロースよりアセトンに溶けやすい。

問5. 文章中の $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{ウ}}$ にあてはまる適切な語句をそれぞれ答えよ。

問6. 化合物 B、D および合成繊維 E の名称を答えよ。また、化合物 B と C の構造式を答えよ。

問7. 合成繊維 E に含まれる炭素と水素の質量比は33:5であった。ポリビニルアルコールに存在するヒドロキシ基のうち、ホルムアルデヒドが反応した割合〔%〕を有効数字2桁で答えよ。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

$\ce{C3(H2O)3}$ は炭素3個の単糖(三炭糖)で、アルドースなのでホルミル基をもつ。不斉炭素は真ん中の炭素1つだけで、そこに付く4つは全部ちがう部分構造になる(下の図)。

2023年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
  1. 分子式 $\ce{C3H6O3}$ のアルドースから、A をグリセルアルデヒド $\ce{CHO-CH(OH)-CH2OH}$ と決める。
  2. 不斉炭素に付く4つ(ホルミル基・ヒドロキシ基・ヒドロキシメチル基・水素)を、部分構造の記入例の形で全部書く。

【問2の方針】

着眼点

フルクトースはグルコースと同じ $\ce{C6H12O6}$ だが、鎖状構造で $\ce{C=O}$ が2位にあるケトース。図1 は3位〜6位なので、X は残りの2位と1位にあたる(下の図)。

2023年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
  1. 図1 に書かれている炭素を数え、3位〜6位であることを確かめる。
  2. X に、2位のカルボニル基と1位の $\ce{CH2OH}$ をつないだヒドロキシケトン基を書く。

【問3の方針】

着眼点

左のグルコースの1位の結合が環の下か上かで α か β かが読める。右の環は、環の O の位置から、そのまま・上下を裏返した・半回転したのどの向きかを見抜く(下の図)。

2023年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
  1. 左のグルコースの1位の結合が環の下なら α(H・I)、上なら β(F・G)。
  2. 右の環で、橋の O が付いた炭素が環の O の隣なら1位(F・I=1,1 結合)、隣でなければ4位(G・H=1,4 結合)。
  3. 2つを組み合わせ、α-1,4=マルトース、β-1,4=セロビオース、α-グルコースどうしの1,1=トレハロースを選ぶ。F は β どうしの1,1 結合で、どれにも当たらない。
  4. 右の環が、そのままの向き(H)・上下を裏返した向き(G)・縦の軸で半回転した向き(I)のどれかを決め、①と③の位置が何位の上か下かを読む。裏返した環だけは置換基の上下を入れかえて、①・③の部分構造を書く。

【問4の方針】

着眼点

多糖は「何がどの結合でつながり、枝分かれやらせんがあるか」で性質が決まる。デンプン(アミロース・アミロペクチン)・デキストリン・グリコーゲン・セルロースとその誘導体を、系列で並べて1つずつ判定する。

  1. (A)〜(G) を、加水分解・らせん構造・還元性・溶けやすさ・ヨウ素デンプン反応・結合の種類の知識で1つずつ判定する。
  2. 正しいものを「すべて」選ぶ。

【問5の方針】

着眼点

ビニルアルコールはすぐにアセトアルデヒドに変わるので、ポリビニルアルコールは酢酸ビニルを重合してからけん化してつくる。そのあとホルムアルデヒドで OH の一部をつなげてビニロンにする(下の図)。

2023年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
  1. B(酢酸ビニル)→付加重合→D(ポリ酢酸ビニル)→けん化→ポリビニルアルコール→アセタール化→E(ビニロン)の流れに、ア〜ウ を当てはめる。

【問6の方針】

着眼点

問5 の流れのとおり、B は酢酸ビニル、D はポリ酢酸ビニル、E はビニロン。C は、不安定なビニルアルコールが変わってできるアセトアルデヒド。

  1. B・D・E の名称を、問5 の流れから答える。
  2. B と C の構造式を、記入例の形( $\ce{C=O}$ の O を上に書く)で書く。

【問7の方針】

着眼点

アセタール化は、となり合う OH 2個とホルムアルデヒド1分子から水1分子が取れる反応。2単位で炭素は1個増えるが、水素の数は変わらない(下の図)。

2023年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
2023年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
  1. ポリビニルアルコールの単位 $\ce{C2H4O}$ を $n$ 個とし、OH のうち割合 $x$ がアセタール化されたとする。
  2. アセタール化された OH は $xn$ 個で、2個で1組なので組の数は $\dfrac{xn}{2}$。1組につき炭素が1個増え、水素の数は $4n$ 個のまま。
  3. 炭素と水素の質量比を $\dfrac{33}{5}$ とおいて $x$ を求める。

解答

2023年九州大学化学 第5問 解答・解説
2023年九州大学化学 第5問 解答・解説
2023年九州大学化学 第5問 解答・解説(続き)
2023年九州大学化学 第5問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

問1

$\ce{C3(H2O)3}$ は $\ce{C3H6O3}$ で、炭素3個の単糖。アルドースなのでホルミル基 $-\ce{CHO}$ をもち、残りの2つの炭素にヒドロキシ基が1つずつ付く。不斉炭素をもつので、A は2位の炭素が不斉炭素のグリセルアルデヒド $\ce{CHO-CH(OH)-CH2OH}$ (同じ分子式のジヒドロキシアセトンはケトースで不斉炭素がない)。

不斉炭素に付く4つは、ホルミル基・ヒドロキシ基・ヒドロキシメチル基・水素(下の図)。

答 $-\ce{CHO}$、 $-\ce{OH}$、 $-\ce{CH2-OH}$、 $-\ce{H}$(2点)

問2

フルクトースの鎖状構造は、1位が $\ce{CH2OH}$、2位が $\ce{C=O}$ (ケトン基)、3位〜6位はグルコースと同じ並び(3位の OH だけが図の上、4位・5位の OH が下)。図1 には3位〜6位が書かれているので、X は2位と1位をつないだヒドロキシケトン基。フルクトースが還元性を示すのは、この $-\ce{CO-CH2-OH}$ の部分による。

答 $-\ce{CO-CH2-OH}$(2点)

問3

左のグルコースは4つとも同じ向きで、6位の $\ce{CH2OH}$ が環の上にある。1位から出る結合が環の下なら α、上なら β。

・H:左の1位の結合は下(α)。右の環は環の O が右上で、そのままの向き。橋の O が付いた左端の炭素は環の O の隣ではないので4位(α-1,4 結合)。① は5位の上で $\ce{CH2OH}$、③ は3位の上で OH

・G:左の1位の結合は上(β)。右の環は環の O が右下で、上下を裏返した向き。橋の O が付いた炭素は4位(β-1,4 結合)。裏返した環では置換基の上下が入れかわるので、① は3位の上で H、③ は2位の上で OH(6位の $\ce{CH2OH}$ は⑧で下に出る)

・I:左の1位の結合は下(α)。右の環は環の O が左下で、縦の軸のまわりに半回転した向き。橋の O が付いた左端の炭素は環の O の隣なので1位で、その結合も下(α)。α-グルコースどうしの1,1 結合。半回転では上下は変わらないので、① は2位の上で H、③ は3位の上で OH

・F:I と同じ形だが、両方の1位の結合が上(β どうしの1,1 結合)で、3つのどれにも当たらない。問題文の「トレハロースは α-グルコース構造をもつ」は、F と I を区別させるための条件

マルトース・セロビオースの右のグルコースの1位(H の⑦⑧、G の⑤⑥)は、OH が上でも下でもよい(水溶液中で α 型と β 型が入れかわる。ここが還元性のもとになる)。

答(マルトース) H(① $-\ce{CH2-OH}$、③ $-\ce{OH}$)(2点)

答(セロビオース) G(① $-\ce{H}$、③ $-\ce{OH}$)(2点)

答(トレハロース) I(① $-\ce{H}$、③ $-\ce{OH}$)(2点)

問4

多糖は次の系列で押さえておく。

・アミロース:α-グルコースの α-1,4 結合だけの直鎖で、らせん構造。ヨウ素デンプン反応で青紫色

・アミロペクチン:α-1,4 結合に α-1,6 結合の枝分かれが入る。枝の部分もらせん構造をとり、ヨウ素で赤紫色

・グリコーゲン:アミロペクチンよりさらに枝分かれが多い。ヨウ素で赤褐色

・デキストリン:デンプンを途中まで加水分解した小さめの多糖。デンプンより水に溶けやすい

・セルロース:β-グルコースの β-1,4 結合の直鎖。らせんをつくらずヨウ素デンプン反応を示さない。無水酢酸でトリアセチルセルロースにし、一部を加水分解したジアセチルセルロースはアセトンに溶ける

(A) 誤り。アミラーゼではマルトースまでで、グルコースまで分解するには希酸と加熱(またはマルターゼ)が要る。(B) 誤り。アミロペクチンも枝の部分はらせん構造をとり、ヨウ素デンプン反応で赤紫色になる。(C) 誤り。多糖は末端の還元性の部分がごくわずかで、還元性を示さない。(D) 正しい。(E) 誤り。グリコーゲンもヨウ素デンプン反応で赤褐色になる。(F) 正しい。(G) 誤り。アセトンに溶けるのはジアセチルセルロースで、トリアセチルセルロースは溶けない。

答 (D)、(F)(3点)

問5

ビニルアルコールは不安定なので、酢酸ビニル(B)を付加重合してポリ酢酸ビニル(D)をつくり、水酸化ナトリウム水溶液でけん化して $-\ce{OCOCH3}$ を $-\ce{OH}$ に変え、ポリビニルアルコールにする。紡糸したあと、ホルムアルデヒドでとなり合う OH 2個を $-\ce{O-CH2-O}-$ でつなぐ反応がアセタール化で、水に溶けない繊維のビニロン(E)になる(下の図)。

答(ア) 付加(1点)

答(イ) けん化(1点)

答(ウ) アセタール(1点)

問6

B は酢酸ビニル $\ce{CH2=CH-OCOCH3}$。C は、ビニルアルコール $\ce{CH2=CH-OH}$ が変わってできるアセトアルデヒド $\ce{CH3-CHO}$ (下の図)。

答(B の名称) 酢酸ビニル(1点)

答(D の名称) ポリ酢酸ビニル(1点)

答(E の名称) ビニロン(1点)

答(B の構造式) $\ce{CH2=CH-O-CO-CH3}$(上の図)(1点)

答(C の構造式) $\ce{CH3-CHO}$(上の図)(1点)

問7

ポリビニルアルコールの単位 $\ce{C2H4O}$ を $n$ 個とし、OH のうち割合 $x$ がアセタール化されたとする。アセタール化では、2単位( $\ce{C4H8O2}$ )の OH 2個とホルムアルデヒド $\ce{HCHO}$ が反応して水が取れ、 $\ce{C5H8O2}$ になる。

$$\ce{C4H8O2 + HCHO -> C5H8O2 + H2O}$$

炭素は1個増えるが、水素は8個のまま変わらない(下の図)。

アセタール化された OH は $xn$ 個で、2個で1組なので組の数は $\dfrac{xn}{2}$。ビニロンの中の炭素は $2n+\dfrac{xn}{2}$ 個、水素は $4n$ 個。炭素と水素の質量比が 33:5 なので

$$\dfrac{12.0\times\left(2n+\dfrac{xn}{2}\right)}{1.00\times4n}=\dfrac{33}{5}$$

$$2+\dfrac{x}{2}=\dfrac{33\times4.00}{5\times12.0}=2.20\qquad\therefore\ x=0.40$$

答 40 %(4点)

出題意図

問1・問2 分子式と「アルドース」から三炭糖を決め、単糖の鎖状構造を部分構造で正確に書けるか

問3 ハース式で書かれた二糖を、1位の結合の向き(α・β)と結合する炭素の位置から見分け、向きを変えて書かれた環の置換基まで読み取ることができるか

問4 デンプン・セルロースとその仲間の多糖の性質を、「すべて」選ぶ正誤で判定できるか

問5〜問7 ビニロンの合成の流れを理解し、アセタール化で原子の数がどう変わるかを捉えることができるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度標準
目標得点20点20点
目標時間12分15分

例年どおり得点源にしたい高分子の大問で、どの学部も20点は取りたい。
ただし二糖は名前と結合の種類だけでなく、ハース式の環の置換基の上下まで書けるレベルの精度が求められた。

グルコースの環を白紙に書けて、裏返したり回したりしても何位の OH が上か下かを言えるまで練習しておくこと。
ビニロンの計算は、2単位で原子の数がどう変わるかを書き出せば一瞬で終わる。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問3:右の環が上下を裏返した向き(G)や縦の軸で半回転した向き(I)で書かれていても、環の O の位置から何位で結合しているかを決め、置換基の上下を正しく読むという発想に行き着けるか。二糖の名前と結合の種類を覚えているだけでは①・③まで答えられず、ここで6点の差がつく。とくに G は、裏返しに気づかずにそのままの向きで読むと、①・③を逆にしてしまう。
  • 問7:アセタール化で炭素は増えるが水素の数は変わらない、と捉えられるか。反応した OH 1個あたり炭素が1個増えるとして式を立てると 20 % になる。

2023年九州大学・化学の
講評とまとめ

5問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。

大問難易度医学部医学科その他の学部
第1問標準25点20点
第2問やや簡単25点25点
第3問やや簡単25点25点
第4問やや難20点15点
第5問標準20点20点
全体標準110点90点

大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で110点、その他の学部で90点)にはなりません。

全体的に難易度は標準的な年。

ただし高い点は取りにくいセットでした。

合否を分けたのは第4問で、イソプレンとエチレンから環ができるという見慣れない入口の構造決定でした。

A と B が決まらないと大半の小問がつながらず、時間をかけたから解ける大問ではないので、飛ばす判断も要ります。

ほかの4題は典型問題と知識だけの大問で、第2問・第3問は満点を取りたいところです。

第5問は二糖の環の置換基まで読ませる細かい精度が求められましたが、例年どおり得点源にしたい大問です。

第4問は20分かけてもよいですが、ほかの大問は15分以内で終えることが大事です。

解く流れ

第1問 → 第2問 → 第3問 → 第4問 → 第5問。

九州大学に合格する方法

2023年九州大学・化学に
関するよくある質問

2023年の九州大学・化学について、よく聞かれる質問にお答えします。

2023年の九州大学・化学は難しかった?

全体的に難易度は標準的な年でした。
第1問・第5問は標準、第2問・第3問はやや簡単、第4問はやや難です。
第4問以外は典型問題と知識だけの大問でした。

2023年の九州大学・化学は何点取れば合格できる?

目標点は、医学部医学科で110点、その他の学部で90点です(125点満点)。

2023年の九州大学・化学はどこで差がつく?

この年の合否を分けたのは第4問で、差がついたのは次の3つでした。

  • 第4問:E の元素分析と「天然ゴム=イソプレン」から、B をシクロヘキセンと決められたか。
  • 第5問 問3:向きを変えて書かれたハース式の環から、何位で結合しているかと置換基の上下を読めたか。
  • 第1問 問6:水を全て気体と仮定した圧力を飽和蒸気圧と比べ、水蒸気の分圧を全圧から引けたか。
2023年の九州大学・化学は何が出題された?

大問ごとの単元は、次のとおりです。

  • 第1問:理論化学(物質の三態・気体の法則)
  • 第2問:理論化学(化学反応とエネルギー)
  • 第3問:無機化学・理論化学
  • 第4問:有機化学・高分子化合物・理論化学
  • 第5問:高分子化合物(糖類)

⬆︎タップして画面が切り替わったら『LINEアプリを開く』を押して友達追加にお進みください!

目次