【解説・配点付き】2013年九州大学化学の解答・解説
2013年の九州大学・化学の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2013年九州大学化学
第1問 解答・解説
この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は理論化学(物質の構成粒子)の問題です。
テーマは『電気陰性度』『酸化物の分類』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問4に答えよ。
2つの原子A、Bが反応して化合物ABを生成する時、原子同士の結合の強さや生成した化合物の性質は、原子の価電子と原子核が互いにおよぼす力の強さに大きく影響される。これに関連する元素固有の値として、 $\boxed{\text{ ア }}$ と $\boxed{\text{ イ }}$ が挙げられる。 $\boxed{\text{ ア }}$ は、原子から電子を1つ取り去るのに必要なエネルギーであり、 $\boxed{\text{ イ }}$ は原子に電子を1つ付加した時に放出されるエネルギーである。また、化合物ABの結合において、原子Aと原子Bのそれぞれが電子を引き寄せる力の相対的な強さを $\boxed{\text{ ウ }}$ と呼ぶ。 $\boxed{\text{ ウ }}$ は2原子間の結合がイオン結合か共有結合かを判断する基準となる。例えば、 $\boxed{\text{ エ }}$ における異なる2原子は、イオン結合で結ばれている。また、 $\boxed{\text{ オ }}$ における異なる2原子は、共有結合で結ばれている。
一般的に $\boxed{\text{ ウ }}$ の大きな元素は $\boxed{\text{ カ }}$ 的な性質を示し、 $\boxed{\text{ ウ }}$ の小さな元素は $\boxed{\text{ キ }}$ 的な性質を示す。元素の周期表の同周期の元素では、原子番号が大きくなるに従って、 $\boxed{\text{ ク }}$ 的な性質を有するようになる。同族元素では、元素の周期表の下へ行くに従って、 $\boxed{\text{ ケ }}$ 性が増す。
問1. 文中の $\boxed{\text{ ア }}$ 〜 $\boxed{\text{ ウ }}$ に適切な語句を記せ。
問2. 第3周期元素の酸化物として、以下の化合物が知られている。
$\ce{P4O10}$、 $\ce{Na2O}$、 $\ce{SiO2}$、 $\ce{SO3}$、 $\ce{MgO}$
(1) これらの中から、 $\boxed{\text{ エ }}$ に当てはまる化合物をすべて選べ。
(2) これらの中から、 $\boxed{\text{ オ }}$ に当てはまる化合物をすべて選べ。
(3) これらの中から、酸性酸化物をすべて選べ。
問3. 文中 $\boxed{\text{ カ }}$ 〜 $\boxed{\text{ ケ }}$ には、「金属」か「非金属」のどちらかの語句が入る。「金属」の入る箇所を $\boxed{\text{ カ }}$ 〜 $\boxed{\text{ ケ }}$ からすべて選べ。
問4. 以下の元素から金属的な性質が最も大きな元素を選べ。また、金属元素の性質として当てはまるものを以下のA〜Eからすべて選べ。
$\ce{O}$、 $\ce{S}$、 $\ce{Ca}$、 $\ce{As}$、 $\ce{Se}$
A.イオン電荷・酸化数がともに負の値になる。
B.還元剤よりも酸化剤となる元素が多い。
C.延性および展性を示す。
D.塩基性を示す酸化物が酸性を示す酸化物よりも多い。
E.熱および電気の伝導性が高い。
解答の方針
【問1の方針】
ア・イは向きが逆の2つのエネルギー。電子を取り去るのに「必要な」のがイオン化エネルギー、受け取るときに「放出される」のが電子親和力(下の図)。ウは結合の中で電子を引きつける強さ。


- アは「電子を取り去る」「必要な」から、陽イオンになるときのエネルギーの名前を答える。
- イは「電子を付加」「放出される」から、陰イオンになるときのエネルギーの名前を答える。
- ウは「結合において電子を引き寄せる力の相対的な強さ」から、共有電子対を引きつける強さの名前を答える。
【問2の方針】
電気陰性度は周期表の右上ほど大きい。O との差が大きい金属元素の酸化物はイオン結合、差が小さい非金属元素の酸化物は共有結合で、これが塩基性酸化物と酸性酸化物の違いになる(下の図)。


- 5つの酸化物の O 以外の元素を、金属元素(Na・Mg)と非金属元素(Si・P・S)に分ける。
- (1) は金属元素の酸化物、(2) は非金属元素の酸化物を選ぶ。
- (3) は、非金属元素の酸化物が塩基と反応する酸性酸化物であることから選ぶ。
【問3の方針】
電気陰性度が大きい元素は陰イオンになりやすく(非金属的)、小さい元素は陽イオンになりやすい(金属的)。周期表を長方形に略して「右上ほど電気陰性度が大きい」の矢印を書けば読める(下の図)。


- カ・キは、電気陰性度の大小を非金属・金属に結びつける。
- クは、同じ周期で原子番号が大きくなる(右へ行く)と電気陰性度が大きくなることから決める。
- ケは、同じ族で下へ行くと電気陰性度が小さくなることから決める。
- 「金属」が入る記号を選ぶ。
【問4の方針】
金属的な性質は周期表の左下ほど大きい。5つの元素を周期表に置くと、1つだけ2族にある(下の図)。性質の正誤は、金属元素は電子を放して陽イオンになるという1点と、単体・酸化物の性質で判定する。


- 5つの元素の族と周期を確かめ、最も左下にある元素を選ぶ。
- A・B は、金属元素が電子を放して陽イオンになる(還元剤としてはたらく)ことから判定する。
- C・E は金属の単体(金属結晶)の性質、D は金属元素の酸化物の分類から判定する。
解答


解答をテキストで読む
問1
アは、原子から電子を1個取り去って1価の陽イオンにするのに必要なエネルギーで、イオン化エネルギー。外からエネルギーを加える必要があるので、エンタルピー図では原子より陽イオンの方が上にある( $\Delta H>0$ )。1個目の電子を取り去るエネルギーなので、第一イオン化エネルギーと書いてもよい。
イは、原子が電子を1個受け取って1価の陰イオンになるときに放出されるエネルギーで、電子親和力。陰イオンの方が原子より下にある( $\Delta H<0$ )(下の図)。
ウは、共有結合している原子が共有電子対を引きつける強さで、電気陰性度。結合する2つの原子の電気陰性度の差が大きいほど、電子が片方に偏り、イオン結合に近づく。
答(ア) イオン化エネルギー(第一イオン化エネルギー)(2点)
答(イ) 電子親和力(2点)
答(ウ) 電気陰性度(2点)
問2 (1)
電気陰性度は希ガスを除いて周期表の右上ほど大きく(F > O > N(≒Cl)> C(≒S)> H)、金属元素は小さい。O は F の次に大きいので、O との電気陰性度の差は、結合する相手が金属元素のときに大きく、非金属元素のときに小さい。
差が大きい結合では、電子が O に移りきって $\ce{O^2-}$ と陽イオンになり、イオン結合になる。第3周期で金属元素は Na・Mg(・Al)なので、その酸化物の $\ce{Na2O}$( $\ce{Na+}$ と $\ce{O^2-}$ )と $\ce{MgO}$( $\ce{Mg^2+}$ と $\ce{O^2-}$ )がイオン結合でできている(下の図)。
答 $\ce{Na2O}$、 $\ce{MgO}$(2点)
問2 (2)
Si・P・S は非金属元素で、O との電気陰性度の差が小さいので、O と電子対を共有する共有結合になる。 $\ce{P4O10}$ と $\ce{SO3}$ は分子からなる物質、 $\ce{SiO2}$ は Si と O が共有結合で次々とつながった共有結合の結晶(巨大分子)。どちらも原子どうしは共有結合で結ばれている。
答 $\ce{P4O10}$、 $\ce{SiO2}$、 $\ce{SO3}$(2点)
問2 (3)
酸化物は、塩基と反応する酸性酸化物(非金属元素の酸化物)、酸と反応する塩基性酸化物(金属元素の酸化物)、どちらとも反応する両性酸化物(Al・Zn・Sn・Pb の酸化物)の3つに分かれる。非金属元素を X とすると、その酸化物は大きく偏った $\ce{X^{\delta+}-O^{\delta-}}$ の結合をもち、 $\ce{X^{\delta+}}$ が $\ce{OH-}$ に攻撃されやすいので、塩基と反応する。
$$\ce{P4O10 + 6H2O -> 4H3PO4}\qquad\ce{SO3 + H2O -> H2SO4}$$
$\ce{SiO2}$ は水に溶けないが、水酸化ナトリウムと高温で反応してケイ酸ナトリウムになるので、酸性酸化物。
$$\ce{SiO2 + 2NaOH -> Na2SiO3 + H2O}$$
一方、 $\ce{Na2O}$・ $\ce{MgO}$ の $\ce{O^2-}$ は $\ce{H+}$ を受け取りやすいので、塩基性酸化物( $\ce{Na2O + H2O -> 2NaOH}$ )。第3周期では、左から塩基性酸化物→両性酸化物( $\ce{Al2O3}$ )→酸性酸化物と並ぶ(問2 (1) の図)。
答 $\ce{P4O10}$、 $\ce{SiO2}$、 $\ce{SO3}$(2点)
問3
電気陰性度の大きな元素は電子を引きつけて陰イオンになりやすく、非金属的な性質を示す(カ=非金属)。小さな元素は電子を放して陽イオンになりやすく、金属的な性質を示す(キ=金属)。
周期表を長方形に略して、希ガスの列を除き、右上ほど電気陰性度が大きいという矢印を書く(下の図)。同じ周期では、右へ行くほど(原子番号が大きくなるほど)最外殻は同じで正電荷が大きくなるので、電気陰性度が大きくなり、非金属的になる(ク=非金属)。同じ族では、下へ行くほど最外殻が中心から遠くなり、電子を引きつける力が弱くなるので、電気陰性度が小さくなり、金属性が増す(ケ=金属)。
よって、「金属」が入るのはキとケ。
答 キ・ケ(2点)
問4
5つの元素を周期表に置くと、O・S・Se は16族(第2〜第4周期)、As は15族(第4周期)、Ca は2族(第4周期)。O・S・Se・As は非金属元素で、金属元素は Ca だけ。金属的な性質は左下ほど大きいので、最も左下にある Ca が最も大きい(下の図)。
金属元素は電気陰性度が小さく、価電子を放して陽イオンになりやすい(陽性)。この1点から A・B を判定し、C〜E は金属の単体と酸化物の性質で判定する。
・A.誤り。金属元素は電子を放して陽イオンになるので、イオンの電荷も化合物の中の酸化数も正の値になる。負の値になるのは、電子を受け取る非金属元素の方
・B.誤り。金属の単体は電子を放して相手を還元するので、一般に還元剤としてはたらく。酸化剤になりやすいのは、ハロゲンや酸素のように電気陰性度の大きい非金属元素の単体
・C.正しい。金属結晶は自由電子が金属の陽イオンをつなぎとめているので、力を加えて原子の位置がずれても結合が切れず、延ばしたり(延性)広げたり(展性)できる
・D.正しい。金属元素の酸化物は $\ce{O^2-}$ を含み、酸と反応する塩基性酸化物になる( $\ce{CaO + 2HCl -> CaCl2 + H2O}$ )。両性酸化物の $\ce{Al2O3}$・ $\ce{ZnO}$ のような例外があるので、「多い」という書き方になっている
・E.正しい。自由電子が金属の中を動き回るので、熱と電気をよく伝える
答(元素) $\ce{Ca}$(1点)
答(金属元素の性質) C・D・E(3点)
出題意図
問1 イオン化エネルギー・電子親和力・電気陰性度を、定義の文から正しく言い当てられるか
問2 電気陰性度の差から、第3周期の酸化物の結合をイオン結合と共有結合に分け、酸性酸化物を選べるか
問3 電気陰性度の大小と金属的・非金属的な性質を結びつけ、周期表の横と縦の傾向を判断できるか
問4 周期表の位置から金属的な性質の最も大きい元素を選び、金属元素の性質を正誤で判定できるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 18点 | 18点 |
| 目標時間 | 8分 | 8分 |
イオン化エネルギー・電子親和力・電気陰性度の定義と、周期表の「右上ほど非金属的、左下ほど金属的」の傾向だけで満点が取れる大問で、どの学部も満点を取りたい。
周期表の傾向は、最外殻と正電荷の2つで理由まで説明できるようにしておけば、どの性質を聞かれても迷わない。
酸化物は「金属元素は塩基性、非金属元素は酸性、Al・Zn・Sn・Pb は両性」の3つで言い切れるようにしておくこと。
知識で埋められる大問は時間をかけずに書き、浮いた時間を計算の重い大問に回そう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問4:差がつくとしたら、金属元素の性質の正誤。D の「塩基性を示す酸化物が多い」を、金属元素の酸化物は塩基性酸化物という知識に結びつけられるか。「すべて」選ぶ形なので、1つでも判定を誤ると点にならない。
2013年九州大学化学
第2問 解答・解説
第2問は理論化学(酸化・還元と電池・電気分解)・無機化学の問題です。
テーマは『銅と酸化力のある酸』『平衡の移動』『電気分解の量計算』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問5に答えよ。
元素の周期表の11族に属する $\boxed{\text{ ア }}$ は、赤味のある金属である。
$\boxed{\text{ ア }}$ と濃硝酸を反応させると、 $\boxed{\text{ A }}$ (気体)が発生した。赤褐色の $\boxed{\text{ A }}$ は、水に溶けやすく空気より重いので、 $\boxed{\text{ イ }}$ 置換で捕集した。
$\boxed{\text{ ア }}$ と希硝酸を反応させると、 $\boxed{\text{ B }}$ (気体)が発生した(a)。この酸化還元反応では、 $\boxed{\text{ ア }}$ が $\boxed{\text{ ウ }}$ 剤、希硝酸が $\boxed{\text{ エ }}$ 剤である。
$\boxed{\text{ ア }}$ と熱濃硫酸を反応させると、 $\boxed{\text{ C }}$ (気体)が発生した。 $\boxed{\text{ C }}$ が酸素と反応して、 $\boxed{\text{ D }}$ (気体)を生じる反応は、発熱反応である(b)。
$\boxed{\text{ ア }}$ の2価の陽イオンと硫酸イオンからできた物質の水溶液は、 $\boxed{\text{ オ }}$ 色である。この水溶液を2本の白金電極を用いて電気分解すると、陽極から標準状態で $4.48\times10^2$ mLの $\boxed{\text{ E }}$ (気体)が発生した(c)。
問1. 文中の $\boxed{\text{ ア }}$ 〜 $\boxed{\text{ オ }}$ に適切な語句を記せ。
問2. 文中の $\boxed{\text{ A }}$ 〜 $\boxed{\text{ E }}$ に適切な化合物の化学式を記せ。
問3. 下線部(a)の化学反応式を記せ。
問4. 下線部(b)の可逆反応が平衡状態にあるとき、次の(1)〜(5)の各条件変化に対して平衡はどちらの方向に移動するか。次の①〜③の中から選び、数字で記せ。ただし、気体はすべて理想気体とし、触媒の体積は無視できるとする。
(1) 温度・圧力を一定に保ちながら触媒を加える。
(2) 圧力を一定に保ちながら温度を上げる。
(3) 温度を一定に保ちながら圧縮により加圧する。
(4) 温度・体積を一定に保ちながら酸素(気体)を加える。
(5) 温度・体積を一定に保ちながらアルゴン(気体)を加える。
① $\boxed{\text{ D }}$ が増える方向
② $\boxed{\text{ D }}$ が減る方向
③ どちらにも移動しない
問5. 下線部(c)の電気分解によって、陰極の質量は何g増加するか。有効数字3桁で答えよ。
解答の方針
【問1の方針】
銅は水素よりイオン化傾向が小さいので、酸化力のある硝酸や熱濃硫酸とだけ反応し、電子を与える側になる。気体の捕集法は、水への溶けやすさと空気の平均分子量28.8との大小で決める(下の図)。


- 11族で赤味のある金属を答える(ア)。
- 赤褐色の気体が水に溶けやすく空気より重いことから、捕集法を決める(イ)。
- 銅と希硝酸の反応で、電子を与える側と受け取る側を決める(ウ・エ)。
- 銅(Ⅱ)イオンを含む水溶液の色を答える(オ)。
【問2の方針】
酸化剤が何に変わるかは酸化ラダーで決まる。硝酸は濃いと1段、薄いと2段落ち、熱濃硫酸は+6から+4に落ちる。電気分解の陽極は「板 → ハロゲン → 水」の順に見る(問1 の図)。
- 濃硝酸・希硝酸・熱濃硫酸が還元されてできる気体を、酸化ラダーから決める(A・B・C)。
- 二酸化硫黄が酸素で酸化されてできる物質を決める(D)。
- 白金電極の陽極で、板もハロゲン化物イオンも反応しないことから、水が酸化されて発生する気体を決める(E)。
【問3の方針】
化学反応式は、還元剤と酸化剤の半反応式を別々に書き、与える電子と受け取る電子の数をそろえて足す。最後に、酸化剤として働かずに硝酸イオンのまま残る分を両辺に足す(下の図)。


- 銅と希硝酸の半反応式を書く。
- 電子の数がそろうように銅の式を3倍、硝酸の式を2倍して足し、イオン反応式にする。
- 両辺に硝酸イオンを6個ずつ足して、化学反応式にする。
【問4の方針】
ルシャトリエの原理は、濃度 $C$ と温度 $T$ の2つだけを見る。圧力や体積が変わったときは、状態方程式で濃度の変化に直してから考える。触媒は反応を速くするだけで、平衡は動かさない(下の図)。


- 下線部(b) の反応式を書き、右向きが発熱で、気体の分子数が減る向きだと確かめる。
- (1)〜(5) のそれぞれで、温度と各物質の濃度がどう変わるかを書く。
- 温度が上がれば吸熱の向き、全体の濃度が上がれば分子数が減る向き、ある物質の濃度が上がればその物質を減らす向きとして、移動の向きを決める。
【問5の方針】
電気分解の量計算は、まず流れた電子の物質量を求める。陽極の酸素は電子4個で1個、陰極の銅は電子2個で1個できるので、電子を仲立ちにして両極の量をつなぐ(下の図)。


- 陽極と陰極で起こる反応を書く。
- 陽極で発生した酸素の物質量から、流れた電子の物質量を求める。
- 陰極に析出した銅の物質量を求め、質量に直す。
解答




解答をテキストで読む
問1
周期表の11族は銅・銀・金で、どれもイオン化傾向が小さい。そのうち赤味のある金属は銅。銅は水素よりイオン化傾向が小さいので、塩酸や希硫酸の $\ce{H+}$ を還元できず、溶けない。酸化力のある硝酸や熱濃硫酸とだけ反応し、このとき水素は発生しない。
銅と濃硝酸で発生する赤褐色の気体は二酸化窒素。有色の気体はフッ素(淡黄色)・塩素(黄緑色)・二酸化窒素(赤褐色)・オゾン(淡青色)の4つだけで、ほかはほとんど無色。二酸化窒素は水に溶けやすいので水上置換は使えず、分子量46が空気の平均分子量28.8より大きいので、下方置換で集める(下の図)。
銅と希硝酸の反応では、銅の酸化数は0から+2に上がる。電子を与えて相手を還元しているので、銅は還元剤。希硝酸は電子を受け取って、窒素の酸化数が+5から+2に下がるので、酸化剤。
銅(Ⅱ)イオンと硫酸イオンからできた物質は硫酸銅(Ⅱ)。水溶液の中では、銅(Ⅱ)イオンが水分子と結びついたテトラアクア銅(Ⅱ)イオン $\ce{[Cu(H2O)4]^2+}$ になっていて、これが青色に見える。
答(ア) 銅(1点)
答(イ) 下方(1点)
答(ウ) 還元(1点)
答(エ) 酸化(1点)
答(オ) 青(1点)
問2
酸化剤が何に変わるかは、酸化ラダーより決まる。窒素は硝酸の+5から、濃硝酸では1段落ちて+4の二酸化窒素、希硝酸では2段落ちて+2の一酸化窒素になる。硫黄は熱濃硫酸の+6から、+4の二酸化硫黄になる(問1 の図)。一酸化窒素は水に溶けにくいので水上置換、二酸化硫黄は水に溶けやすく空気より重いので下方置換で集める。
二酸化硫黄は、酸素によってさらに酸化されて+6の三酸化硫黄になる。これは硫酸の工業的製法(接触法)で、酸化バナジウム(Ⅴ) $\ce{V2O5}$ を触媒にして行う反応。下線部(b) のとおり発熱反応なので、エンタルピー変化は負。
$$\ce{2SO2 + O2 <=> 2SO3}\qquad\Delta H<0$$
E は電気分解の陽極で発生する気体。陽極は白金なので板は溶けない。ハロゲン化物イオンも無く、硫酸イオンは酸化されないので、水が酸化されて酸素が発生する。
答 $\mathbf{A}=\ce{NO2}$(二酸化窒素)(1点)
答 $\mathbf{B}=\ce{NO}$(一酸化窒素)(1点)
答 $\mathbf{C}=\ce{SO2}$(二酸化硫黄)(1点)
答 $\mathbf{D}=\ce{SO3}$(三酸化硫黄)(1点)
答 $\mathbf{E}=\ce{O2}$(酸素)(1点)
問3
化学反応式は、還元剤と酸化剤の半反応式を別々に書いてから足す。還元剤の銅は、電子を2個与えて銅(Ⅱ)イオンになる。
$$\ce{Cu -> Cu^2+ + 2e-}$$
酸化剤の希硝酸は、酸化ラダーより一酸化窒素になる。窒素の酸化数の差を電子3個、電荷を水素イオン3個、原子を水2個で調整して
$$\ce{HNO3 + 3H+ + 3e- -> NO + 2H2O}$$
酸化剤の受け取る電子=還元剤の与える電子なので、電子の数が6個でそろうように、銅の式を3倍、硝酸の式を2倍して足す(下の図)。
$$\ce{3Cu + 2HNO3 + 6H+ -> 3Cu^2+ + 2NO + 4H2O}$$
左辺の $\ce{H+}$ は硝酸由来なので、両辺に $\ce{NO3-}$ を6個ずつ足す。左辺は $\ce{HNO3}$ が合計8個、右辺は硝酸銅(Ⅱ)になる。
答 $\ce{3Cu + 8HNO3 -> 3Cu(NO3)2 + 2NO + 4H2O}$(2点)
問4
下線部(b) の反応は、右向きが発熱で、気体の分子数が3個から2個に減る向き。①( $\ce{SO3}$ が増える向き)は右、②は左。
$$\ce{2SO2 + O2 <=> 2SO3}\qquad\Delta H<0$$
ルシャトリエの原理は、温度 $T$ と濃度 $C$ の2つの変化だけを見る(下の図)。
・(1) 触媒は、活性化エネルギーの小さい別の経路をつくって、正反応も逆反応も同じように速くするだけ。触媒の体積は無視できるので、温度も各物質の濃度も変わらない。平衡に達するのが早くなるだけで、平衡は移動しない
・(2) 温度:温度が上がるので、吸熱の向き(左)へ移動する。濃度:圧力一定で温度が上がると、 $P=CRT$ より全体の濃度 $C$ が下がるので、気体の分子数が増える向き(左)へ移動する。どちらも左なので、平衡は左へ移動して $\ce{SO3}$ が減る
・(3) 温度は一定。圧縮すると体積が小さくなり、全体の濃度が上がるので、気体の分子数が減る向き(右)へ移動する
・(4) 温度・体積が一定で酸素を加えると、酸素の濃度だけが上がる。酸素を減らす向き(右)へ移動する
・(5) 温度・体積が一定でアルゴンを加えても、各物質の物質量も体積も変わらないので、濃度 $C=\dfrac{n}{V}$ は変わらない。全圧は上がるが、各物質の分圧も変わらない。温度も濃度も変わらないので、平衡は移動しない
なお、全圧を一定に保ってアルゴンを加えた場合は、体積が増えて各物質の濃度が下がるので、気体の分子数が増える左へ移動する(この場合は②)。体積一定か全圧一定かで答えが変わる。
答(1) ③(1点)
答(2) ②(1点)
答(3) ①(1点)
答(4) ①(1点)
答(5) ③(1点)
問5
陽極は白金なので板は溶けず、ハロゲン化物イオンも無いので、水が酸化されて酸素が発生する。陰極では、溶液中の陽イオンのうち銅(Ⅱ)イオンが電子を受け取って銅が析出する(下の図)。
$$\text{陽極}\quad\ce{2H2O -> O2 + 4H+ + 4e-}$$
$$\text{陰極}\quad\ce{Cu^2+ + 2e- -> Cu}$$
まず、流れた電子の物質量を求める。陽極の酸素は、標準状態(0 ℃、 $1.013\times10^5$ Pa)で $4.48\times10^2$ mL=0.448 L なので
$$\dfrac{0.448}{22.4}=2.00\times10^{-2}\ \mathrm{mol}\quad\text{(発生した酸素の物質量)}$$
酸素1 mol ができるとき電子は4 mol 流れるので
$$2.00\times10^{-2}\times4=8.00\times10^{-2}\ \mathrm{mol}\quad\text{(流れた電子の物質量)}$$
銅は電子2 mol で1 mol 析出するので
$$\dfrac{8.00\times10^{-2}}{2}=4.00\times10^{-2}\ \mathrm{mol}\quad\text{(析出した銅の物質量)}$$
陰極の質量の増加は、析出した銅の質量なので、表紙の原子量 $\ce{Cu}=63.6$ を使って
$$4.00\times10^{-2}\times63.6=2.544\ \mathrm{g}$$
表紙にモル体積は与えられていないが、気体定数 $R=8.31\times10^3$ Pa·L/(mol·K) で状態方程式から酸素の物質量を求めても
$$n=\dfrac{1.013\times10^5\times0.448}{8.31\times10^3\times273}\fallingdotseq2.00\times10^{-2}\ \mathrm{mol}$$
で同じになる。
答 2.54 g(3点)
別解
問3 (半反応式を4行で組み立てる)酸化ラダーより $\ce{HNO3}$ が $\ce{NO}$ になり、窒素の酸化数は+5から+2に下がる。①酸化数の差の3を電子で調整して $\ce{HNO3 + 3e- -> NO}$ 、②左辺の電荷 $-3$ を水素イオンで調整して $\ce{HNO3 + 3H+ + 3e- -> NO}$ 、③酸素と水素の原子を水で調整して $\ce{HNO3 + 3H+ + 3e- -> NO + 2H2O}$ 。あとは本解と同じく、電子をそろえて足す。
問5 (全体の反応式の係数比を使う)陽極と陰極の反応式を、電子が4個でそろうように足し、両辺に硫酸イオンを足すと
$$\ce{2CuSO4 + 2H2O -> 2Cu + O2 + 2H2SO4}$$
銅と酸素の物質量の比は2:1なので、銅は酸素の2倍の $4.00\times10^{-2}$ mol で、質量は本解と同じ2.54 g。
出題意図
問1 銅が11族の金属で、酸化力のある酸とだけ反応して電子を与えることと、発生する気体の性質から捕集法を決められるか
問2 濃硝酸・希硝酸・熱濃硫酸が何に変わるかを酸化ラダーで決め、白金電極の陽極で何が発生するかを判断できるか
問3 半反応式を2本書き、電子の数をそろえて銅と希硝酸の化学反応式を作れるか
問4 条件の変化を温度と濃度の変化に直して、ルシャトリエの原理で平衡の移動の向きを判定できるか
問5 陽極の酸素と陰極の銅を、流れた電子の物質量でつなげられるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 20点 | 20点 |
| 目標時間 | 10分 | 12分 |
酸化還元・電気分解が大問まるごとで出た、九大では珍しい大問。
中身は銅と酸化剤の組み合わせ、ルシャトリエの原理、電気分解の量計算という定番だけで、重要問題集のA問題が解ければ満点が取れる。
酸化ラダーで何が何になるかを決め、平衡は $C$ と $T$ だけを追い、電気分解はまず電子の物質量、と型を言い切れるかがすべて。
大問が6題で1題にかけられる時間が短い年なので、ここは10分で満点を取って計算の大問に時間を回したい。
差がつく所・失点しやすい所
- 問4 (5):差がつくとしたら、アルゴンを加えたときに全圧ではなく各物質の濃度を見るという発想に行き着けるか。体積一定なので濃度は変わらず移動しないが、全圧が上がることにつられて①にしやすい。全圧一定でアルゴンを加える場合(体積が増えて左へ移動)と区別できていないと、ここで落とす。
- 問5:酸素の物質量をいったん電子の物質量に直してから、銅の物質量に移れるか。酸素の物質量をそのまま銅にすると1.27 g、電子の物質量を銅にすると5.09 g になる。
2013年九州大学化学
第3問 解答・解説
第3問は理論化学(酸化・還元と電池・電気分解)の問題です。
テーマは『弱酸の電離定数』『逆滴定』『酸化還元滴定』。
問題


問題文をテキストで読む
以下の問いに答えよ。なお、問1、問2および問4は有効数字2桁で答えよ。
問1. 弱酸HAの0.10 mol/L水溶液の25 ℃におけるpHが3.00であった。弱酸HAの電離定数 $K_\mathrm{a}$ (mol/L)を求めよ。ただし、水分子の電離によるpHへの影響は無視できるとする。
問2. 濃度が未知の弱酸HAの水溶液と0.20 mol/L水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ100 mLずつ混合し、そのうちの20 mLを0.10 mol/L塩酸で滴定すると、塩酸を15 mL加えたところで中和点になった。混合前のHA水溶液中のHAの濃度(mol/L)を求めよ。
問3. 過マンガン酸イオン( $\ce{MnO4-}$ )とシュウ酸( $\ce{(COOH)2}$ )の電子を含むイオン反応式はそれぞれ(1)、(2)式で表わされ、過マンガン酸イオンとシュウ酸のイオン反応式は(3)式で表される。空欄 $\boxed{\text{ ア }}$ 〜 $\boxed{\text{ コ }}$ に適切な数値を入れよ。
(1) $\ce{MnO4-} + \boxed{\text{ ア }}\,\ce{H+} + \boxed{\text{ イ }}\,\ce{e-}$
$\qquad\ce{-> Mn^2+} + \boxed{\text{ ウ }}\,\ce{H2O}$
(2) $\ce{(COOH)2}$
$\qquad\ce{->} \boxed{\text{ エ }}\,\ce{CO2} + \boxed{\text{ オ }}\,\ce{H+} + \boxed{\text{ カ }}\,\ce{e-}$
(3) $2\,\ce{MnO4-} + \boxed{\text{ キ }}\,\ce{H+} + \boxed{\text{ ク }}\,\ce{(COOH)2}$
$\qquad\ce{-> 2Mn^2+} + \boxed{\text{ ケ }}\,\ce{H2O} + \boxed{\text{ コ }}\,\ce{CO2}$
問4. 100 mLの過酸化水素水を0.050 mol/Lの過マンガン酸カリウム水溶液で滴定すると、過マンガン酸カリウム水溶液を25 mL加えたところで、過酸化水素がすべて消費されて終点に達した。滴定前の過酸化水素水中の過酸化水素の濃度(mol/L)を求めよ。
解答の方針
【問1の方針】
弱酸は一部しか電離しないので、pH から分かる $[\ce{H+}]$ は最初の濃度 $C$ ではなく $C\alpha$ にあたる。電離の前後を $C$ と $\alpha$ で書けば、電離定数の式にそのまま入れられる(下の図)。


- 電離の式の下に、反応前・変化量・平衡時を $C$ と $\alpha$ で書く。
- pH 3.00 から $[\ce{H+}]=C\alpha$ を求め、電離度 $\alpha$ を求めて近似が使えるかを確かめる。
- 電離定数の式に $C$ と $\alpha$ を入れて $K_\mathrm{a}$ を求める。
【問2の方針】
余った水酸化ナトリウムを塩酸で中和する逆滴定。酸の出す $\ce{H+}$(HA と塩酸)を塩基の出す $\ce{OH-}$ がまとめて中和したと見て1本の式にする。中和点は余った水酸化ナトリウムが中和された点(下の図)。


- 混ぜる → 20 mL を取り出す → 塩酸で滴定、の流れを状況図に書き、取り出した溶液には HA も水酸化ナトリウムも混ぜた量の $\dfrac{1}{10}$ ずつ入っていることを確かめる。
- $\ce{A-}$ まで反応しきる点なら塩酸が何 mL 要るかを求め、問題の中和点が余った水酸化ナトリウムの中和点であることを確かめる。
- HA の濃度を $x$ mol/L とおき、取り出した 20 mL について「酸の出す $\ce{H+}$ の物質量=塩基の出す $\ce{OH-}$ の物質量」を1本の式で立てて $x$ を求める。
【問3の方針】
半反応式は、何が何に変わるかと酸化数の変化を決め、$\ce{e-}$ で酸化数、$\ce{H+}$ で電荷、$\ce{H2O}$ で原子の数をそろえて作る。2本を足すときは、酸化剤の受け取る $\ce{e-}$ と還元剤の与える $\ce{e-}$ の数をそろえて消す(下の図)。


- (1) 式は Mn の酸化数の変化から $\ce{e-}$ の数(イ)を決め、電荷を $\ce{H+}$(ア)、原子の数を $\ce{H2O}$(ウ)でそろえる。
- (2) 式は C の数から $\ce{CO2}$ の数(エ)を、C の酸化数の変化から $\ce{e-}$ の数(カ)を決め、電荷を $\ce{H+}$(オ)でそろえる。
- (1) 式を2倍、(2) 式を5倍して足し、$\ce{e-}$ を消す。両辺にある $\ce{H+}$ を差し引いて、(3) 式の係数(キ〜コ)を決める。
【問4の方針】
酸化還元滴定の量的関係は、「酸化剤の受け取る $\ce{e-}$ =還元剤の与える $\ce{e-}$」の1本で決まる。過マンガン酸イオンは1個で電子を5個受け取り、過酸化水素は還元剤として1個で電子を2個与える(下の図)。


- 状況図を書き、ビーカーの過酸化水素水にビュレットから過マンガン酸カリウム水溶液を加えていく状況を確かめる。
- 過マンガン酸イオン(酸化剤)と過酸化水素(還元剤)の半反応式を書き、受け取る・与える電子の数を読む。
- 過酸化水素の濃度を $x$ mol/L とおき、「酸化剤の受け取る $\ce{e-}$ =還元剤の与える $\ce{e-}$」の式を立てて $x$ を求め、有効数字2桁で答える。
解答




解答をテキストで読む
問1
HA は弱酸なので、水溶液中では一部だけが電離する。最初の濃度を $C=0.10$ mol/L、電離度を $\alpha$ とおいて、電離の前後を書く(下の図)。水の電離は無視できるので、$\ce{H+}$ はすべて HA の電離から来たものと考えてよい。
pH が 3.00 なので
$$[\ce{H+}]=C\alpha=1.0\times10^{-3}\ \mathrm{mol/L}$$
$$\alpha=\dfrac{1.0\times10^{-3}}{0.10}=1.0\times10^{-2}$$
$\alpha$ は1に比べて十分小さいので、$1-\alpha\fallingdotseq1$ と近似できる。電離定数の式に入れると
$$K_\mathrm{a}=\dfrac{[\ce{H+}][\ce{A-}]}{[\ce{HA}]}=\dfrac{C\alpha\times C\alpha}{C(1-\alpha)}=\dfrac{C\alpha^2}{1-\alpha}$$
$$K_\mathrm{a}\fallingdotseq C\alpha^2=0.10\times(1.0\times10^{-2})^2=1.0\times10^{-5}\ \mathrm{mol/L}$$
近似せずに $1-\alpha=0.99$ で割っても $1.01\times10^{-5}$ mol/L で、有効数字2桁では同じ値になる。
答 $1.0\times10^{-5}$ mol/L(2点)
問2
まず状況を整理する(下の図)。塩酸で滴定して中和点があるので、混ぜた溶液は塩基性で、水酸化ナトリウムが余っている。HA 水溶液 100 mL と 0.20 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液 100 mL を混ぜると、HA はすべて水酸化ナトリウムに中和されて $\ce{A-}$ になる。この混合液 200 mL から 20 mL を取り出したので、取り出した溶液には、HA から生じた $\ce{A-}$ も水酸化ナトリウムも、混ぜた量の $\dfrac{20}{200}=\dfrac{1}{10}$ ずつ入っている。
取り出した 20 mL に入っている水酸化ナトリウムは、HA と反応した分も含めて
$$0.20\times\dfrac{100}{1000}\times\dfrac{1}{10}=2.0\times10^{-3}\ \mathrm{mol}$$
塩酸を加えると、強い塩基の $\ce{OH-}$ から先に中和され、そのあと $\ce{A-}$ が $\ce{H+}$ を受け取って HA に戻る。もし $\ce{A-}$ まで反応しきる点を中和点とすると、必要な塩酸は水酸化ナトリウムの全量と同じ $2.0\times10^{-3}$ mol、つまり 20 mL で、HA の濃度によらず決まってしまう。問題の 15 mL とは合わないので、この中和点は、余った水酸化ナトリウムがちょうど中和された点(1つ目の中和点)である。滴定曲線で見ても、15 mL で pH が大きく下がるのに対し、20 mL 付近の変化はゆるやかで見分けにくい(下の図)。
HA の濃度を $x$ mol/L とおく。取り出した 20 mL では、HA の出した $\ce{H+}$ と塩酸の $\ce{H+}$ を、水酸化ナトリウムの $\ce{OH-}$ がまとめて中和したと見ることができる(下の図)。
酸の出す $\ce{H+}$ の物質量=塩基の出す $\ce{OH-}$ の物質量 より
$$x\times\dfrac{100}{1000}\times\dfrac{1}{10}\times1+0.10\times\dfrac{15}{1000}\times1=0.20\times\dfrac{100}{1000}\times\dfrac{1}{10}\times1$$
$$1.0\times10^{-2}\,x+1.5\times10^{-3}=2.0\times10^{-3}$$
$$x=5.0\times10^{-2}\ \mathrm{mol/L}$$
答 $5.0\times10^{-2}$ mol/L(7点)
問3
過マンガン酸イオンは $\ce{Mn^2+}$ に変わる。Mn の酸化数は +7 から +2 へ5減るので、$\ce{e-}$ を5個受け取る。左辺の電荷は $\ce{MnO4-}$ と $\ce{e-}$ 5個で $-6$、右辺は $+2$ なので、$\ce{H+}$ を8個足して電荷をそろえる。最後に、H と O の数を $\ce{H2O}$ 4個でそろえる。
$$\ce{MnO4- + 8H+ + 5e- -> Mn^2+ + 4H2O}$$
答(ア) 8(1点)
答(イ) 5(1点)
答(ウ) 4(1点)
シュウ酸は $\ce{CO2}$ に変わる。C の原子は2個なので、$\ce{CO2}$ も2個。C の酸化数は +3 から +4 へ1増え、C が2個あるので $\ce{e-}$ を2個与える。左辺の電荷は0、右辺は $\ce{e-}$ 2個で $-2$ なので、$\ce{H+}$ を2個足してそろえる。H と O の数はこれでそろっているので、$\ce{H2O}$ はいらない。
$$\ce{(COOH)2 -> 2CO2 + 2H+ + 2e-}$$
答(エ) 2(1点)
答(オ) 2(1点)
答(カ) 2(1点)
過マンガン酸イオンは1個で $\ce{e-}$ を5個受け取り、シュウ酸は1個で2個与える。(3) 式の $\ce{MnO4-}$ の係数は2なので、受け取る $\ce{e-}$ は10個。これをシュウ酸が与えるには5個要る(下の図)。(1) 式を2倍、(2) 式を5倍して足すと、$\ce{e-}$ が消える。
$$\ce{2MnO4- + 16H+ + 5(COOH)2 -> 2Mn^2+ + 8H2O + 10CO2 + 10H+}$$
$\ce{H+}$ が両辺にあるので、左辺の16個から右辺の10個を差し引いて6個にする。
$$\ce{2MnO4- + 6H+ + 5(COOH)2 -> 2Mn^2+ + 8H2O + 10CO2}$$
答(キ) 6(1点)
答(ク) 5(1点)
答(ケ) 8(1点)
答(コ) 10(1点)
問4
ビーカーの過酸化水素水に、ビュレットから過マンガン酸カリウム水溶液を加えていく(下の図)。加えた $\ce{MnO4-}$ は過酸化水素と反応してすぐに $\ce{Mn^2+}$ になるので、赤紫色が消える。過酸化水素がなくなると $\ce{MnO4-}$ が反応せずに残り、赤紫色が消えなくなったところが終点。過マンガン酸カリウムの滴定は硫酸で酸性にして行う(塩酸の $\ce{Cl-}$ は還元剤、硝酸は酸化剤としてはたらき、結果が狂う)。
過酸化水素はふつう酸化剤だが、過マンガン酸カリウムのような強い酸化剤が相手のときは還元剤としてはたらき、酸素になる。O の酸化数は $-1$ から 0 へ1増え、O が2個あるので $\ce{e-}$ を2個与える。
$$\ce{MnO4- + 8H+ + 5e- -> Mn^2+ + 4H2O}$$
$$\ce{H2O2 -> O2 + 2H+ + 2e-}$$
過酸化水素の濃度を $x$ mol/L とおく。酸化剤の受け取る $\ce{e-}$ =還元剤の与える $\ce{e-}$ より
$$0.050\times\dfrac{25}{1000}\times5=x\times\dfrac{100}{1000}\times2$$
$$x=3.125\times10^{-2}\fallingdotseq3.1\times10^{-2}\ \mathrm{mol/L}$$
答 $3.1\times10^{-2}$ mol/L(3点)
別解
問1 ( $[\ce{H+}]=\sqrt{CK_\mathrm{a}}$ の関係から逆に求める)弱酸の $[\ce{H+}]=\sqrt{CK_\mathrm{a}}$ を2乗すると $K_\mathrm{a}=\dfrac{[\ce{H+}]^2}{C}=\dfrac{(1.0\times10^{-3})^2}{0.10}=1.0\times10^{-5}$ mol/L で、本解と同じ。この関係は $\alpha$ が十分小さいときの近似の式なので、$\alpha=\dfrac{[\ce{H+}]}{C}=1.0\times10^{-2}$ で近似が使えることを必ず確かめる。
問2 (物質量を順に追う)取り出した 20 mL の水酸化ナトリウム $2.0\times10^{-3}$ mol のうち、塩酸で中和されたのは $0.10\times\dfrac{15}{1000}=1.5\times10^{-3}$ mol。残りの $5.0\times10^{-4}$ mol が HA と反応していた。これは混ぜた HA の $\dfrac{1}{10}$ なので、HA 水溶液 100 mL に入っていた HA は $5.0\times10^{-3}$ mol で、濃度は $\dfrac{5.0\times10^{-3}}{0.100}=5.0\times10^{-2}$ mol/L。式が2段になるので、ふだんは本解の1本の式で解く。
問4 (化学反応式の係数を使う)2つの半反応式の $\ce{e-}$ をそろえて足すと $\ce{2MnO4- + 6H+ + 5H2O2 -> 2Mn^2+ + 8H2O + 5O2}$ 。$\ce{MnO4-}$ と $\ce{H2O2}$ は $2:5$ で反応するので、$\ce{H2O2}$ は $0.050\times\dfrac{25}{1000}\times\dfrac52=3.125\times10^{-3}$ mol。100 mL に入っていたので $3.1\times10^{-2}$ mol/L で本解と同じ。ただし反応式の係数を書き間違えると答えがずれるので、ふだんは本解の電子の式で解く。
出題意図
問1 pH から分かる水素イオン濃度が $C\alpha$ にあたることから、弱酸の電離定数を逆にたどって求められるか
問2 弱酸と過剰の水酸化ナトリウムを混ぜた溶液を塩酸で滴定する逆滴定で、中和点で何が中和されたのかを読み取れるか
問3 過マンガン酸イオンとシュウ酸の半反応式を作り、電子の数をそろえてイオン反応式にまとめられるか
問4 過マンガン酸イオンと過酸化水素がやりとりする電子の数から、過酸化水素水の濃度を求められるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 22点 | 18点 |
| 目標時間 | 12分 | 15分 |
弱酸の電離・逆滴定・酸化還元滴定を1題にまとめた、理論化学の計算の大問。
重要問題集の典型問題が完璧なら解ける。
差がつくのは問2 だけで、状況図で「中和点で何が中和されたか」を決めてから、酸の出す $\ce{H+}$ と塩基の出す $\ce{OH-}$ を1本の式にまとめれば迷わない。
酸化還元は「酸化剤の受け取る $\ce{e-}$ =還元剤の与える $\ce{e-}$」の1本で必ず解き切ること。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2:中和点が「余った水酸化ナトリウムが中和された点」だと読み取り、HA と塩酸の $\ce{H+}$ を水酸化ナトリウムの $\ce{OH-}$ がまとめて中和したという発想に行き着けるか。逆滴定は苦手な受験生が多く、取り出した 20 mL が全体の $\dfrac{1}{10}$ であることを戻し忘れたり、塩酸の量を HA の量と取り違えたりすると答えが合わない。
- 問3 (3):(1) 式を2倍、(2) 式を5倍して $\ce{e-}$ を消したあと、両辺の $\ce{H+}$ を差し引けるか。キを16のまま書くと、係数が1つ合わなくなる。
2013年九州大学化学
第4問 解答・解説
第4問は理論化学(物質の三態・気体の法則)の問題です。
テーマは『混合気体の燃焼』『水蒸気の凝縮』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問4に答えよ。解答中の数値は有効数字2桁で記せ。
図に示すように、ピストンにより容積が変わるシリンダーAがコックのついた管で容器Bとつながった装置があり、装置全体の温度を一定に制御できる恒温槽に入っている。シリンダーAには質量 $a$ [g]のメタン(気体)が、容器Bには質量 $5\,a$ [g]の酸素(気体)が入っている。ピストンが初期位置にあるときコックは閉じており、シリンダーAと容器Bの容積は共に $V_0$ [L]で等しく、温度も共に絶対温度で $T_0$ [K]である。この時のシリンダーA内の圧力を $P_\mathrm{A}$ [Pa]とする。気体はすべて理想気体とし、管の容積は無視できるとする。
問1. ピストンが初期位置にあるとき、容器B内の圧力[Pa]をシリンダーA内の圧力 $P_\mathrm{A}$ を用いて表せ。
問2. ゆっくりとピストンを押し込みシリンダーAの容積を $\dfrac{1}{4}V_0$ とした後に、コックを開けてしばらく放置したところ、メタンと酸素は反応せず互いに速やかに混合し、その後装置内部の温度は $T_0$ で一様となった。この時の装置内の全圧[Pa]と、メタンの分圧[Pa]を、 $P_\mathrm{A}$ を用いて表せ。
問3. 問2の操作の後、ピストンを固定して適切な方法で装置内のメタンを完全に燃焼させた。この時の化学反応式を記せ。また、しばらく放置した後に装置内の温度が再び $T_0$ となったとき、生成した水はすべて水蒸気であった。この時の装置内の全圧[Pa]を $P_\mathrm{A}$ を用いて表せ。
問4. 問3の操作の後、ピストンを固定したまま、温度を $T_1=\dfrac{5}{6}T_0$ まで下げると装置内の水蒸気が一部凝縮して水(液体)が生じた。この時の装置内の全圧[Pa]を $P_\mathrm{A}$ を用いて表せ。ただし、温度 $T_1$ での水の蒸気圧は $0.11\,P_\mathrm{A}$ とする。また、水蒸気の凝縮を除いて装置内の気体は水(液体)へ溶解しないとし、温度変化によるシリンダーAと容器Bの容積変化、および水(液体)の体積は無視できるとする。
解答の方針
【問1の方針】
シリンダーAと容器Bは、体積も温度も同じ。状態方程式で体積と温度が同じなら、圧力は物質量に比例する。メタンと酸素の物質量の比が分かれば、圧力の比がそのまま決まる(下の図)。


- メタンと酸素の物質量を、分子量(16.0・32.0)で質量を割って求める。
- 酸素の物質量がメタンの何倍かを求める。
- 体積と温度が同じなので、容器Bの圧力は $P_\mathrm{A}$ の同じ倍率になる。
【問2の方針】
コックを開けた後は温度も圧力も装置全体で同じなので、全体を1つの容器と見る。途中で押し込んだときの圧力は関係なく、最後の物質量・体積・温度だけで圧力が決まる(下の図)。


- コックを開けた後の体積( $\dfrac14V_0+V_0$ )、物質量(メタンと酸素の合計)、温度( $T_0$ )を確かめる。
- シリンダーAの初めの状態(メタンだけ・ $V_0$ ・ $T_0$ ・ $P_\mathrm{A}$ )を起点に、物質量と体積の倍率から全圧を比で求める。
- メタンの分圧も、同じ起点から体積の倍率だけで求める。
【問3の方針】
燃焼の前後で体積も温度も同じなので、圧力は物質量に比例する。モル計算を圧力でする。メタンに対して酸素は2倍より多く入っているので、酸素が余る(下の図)。


- メタンの燃焼の化学反応式を書く。
- 反応式の下に、問2の分圧で反応前・変化量・反応後を書く。
- 反応後の分圧(余った酸素・二酸化炭素・水蒸気)を足して全圧にする。
【問4の方針】
冷やしたとき、凝縮しない気体(酸素・二酸化炭素)はずっと状態方程式に従うが、水は液体が出てきたら飽和蒸気圧になる。2つを分けて考え、水は全て気体と仮定した圧力 $P_{\mathrm{if}}$ を飽和蒸気圧と比べる(下の図)。


- 体積は一定なので、凝縮しない気体の分圧は温度に比例する。酸素と二酸化炭素の分圧の和を $\dfrac56$ 倍する。
- 水が全て気体と仮定した圧力 $P_{\mathrm{if}}$ も $\dfrac56$ 倍で求め、飽和蒸気圧 $0.11P_\mathrm{A}$ と比べる。
- $P_{\mathrm{if}}$ の方が大きいので、水蒸気の分圧は $0.11P_\mathrm{A}$ 。凝縮しない気体の分圧と足して全圧にする。
解答


解答をテキストで読む
問1
メタン(分子量16.0)と酸素(分子量32.0)の物質量は
$$\ce{CH4}:\ \dfrac{a}{16.0}\ \mathrm{mol},\qquad \ce{O2}:\ \dfrac{5a}{32.0}=2.5\times\dfrac{a}{16.0}\ \mathrm{mol}$$
メタンの物質量を $n=\dfrac{a}{16.0}$ mol と置くと、酸素は $2.5n$ mol。シリンダーAのメタンについて状態方程式を立てると
$$P_\mathrm{A}V_0=nRT_0$$
容器Bも体積 $V_0$ ・温度 $T_0$ で同じなので、 $PV=nRT$ より圧力は物質量に比例する(下の図)。物質量が2.5倍なので、圧力も2.5倍。
答 $2.5P_\mathrm{A}$ Pa(4点)
問2
コックを開けて混合した後は、温度 $T_0$ も圧力も装置全体で同じなので、全体を1つの容器と見てよい。途中で押し込んだときのシリンダーAの圧力は、最後の状態には関係しない(下の図)。
最後の状態は
・体積: $\dfrac14V_0+V_0=\dfrac54V_0$
・物質量:メタン $n$ +酸素 $2.5n$ = $3.5n$
・温度: $T_0$
シリンダーAの初めの状態(メタン $n$ ・ $V_0$ ・ $T_0$ ・ $P_\mathrm{A}$ )を起点にする。温度は同じなので、 $PV=nRT$ より圧力は $\dfrac{n}{V}$ に比例する。物質量が3.5倍、体積が $\dfrac54$ 倍なので
$$\text{全圧}=P_\mathrm{A}\times3.5\times\dfrac45=2.8P_\mathrm{A}$$
メタンだけに注目すると、物質量は $n$ のままで体積が $\dfrac54$ 倍なので
$$\text{メタンの分圧}=P_\mathrm{A}\times\dfrac45=0.80P_\mathrm{A}$$
答(全圧) $2.8P_\mathrm{A}$ Pa(3点)
答(メタンの分圧) $0.80P_\mathrm{A}$ Pa(3点)
問3
燃焼の前後で体積 $\dfrac54V_0$ と温度 $T_0$ が同じなので、 $PV=nRT$ より圧力は物質量に比例する。モル計算を圧力でする(下の図)。
問2の分圧を使って、反応式の下に分圧で書くと
$$\begin{array}{c|cccc} & \ce{CH4} & \ce{2O2} & \ce{CO2} & \ce{2H2O}\\ \hline \text{反応前} & 0.80 & 2.0 & 0 & 0\\ \text{変化量} & -0.80 & -1.6 & +0.80 & +1.6\\ \hline \text{反応後} & 0 & 0.40 & 0.80 & 1.6 \end{array}\quad(\times P_\mathrm{A}\ \mathrm{Pa})$$
生成した水はすべて水蒸気なので、全圧は反応後の分圧の和。
$$0.40P_\mathrm{A}+0.80P_\mathrm{A}+1.6P_\mathrm{A}=2.8P_\mathrm{A}$$
反応式の左辺の気体の分子は3個、右辺も3個(すべて気体)なので、全圧は燃焼の前と変わらない。
答(式) $\ce{CH4 + 2O2 -> CO2 + 2H2O}$(2点)
答(全圧) $2.8P_\mathrm{A}$ Pa(3点)
問4
凝縮しない気体(酸素・二酸化炭素)と、凝縮する水を分けて考える(下の図)。
凝縮しない気体は、ずっと状態方程式に従う。体積は一定なので、 $PV=nRT$ より圧力は温度に比例する。酸素と二酸化炭素の分圧の和は $0.40P_\mathrm{A}+0.80P_\mathrm{A}=1.2P_\mathrm{A}$ で、温度が $\dfrac56$ 倍なので、これも $\dfrac56$ 倍になる。
$$1.2P_\mathrm{A}\times\dfrac56=1.00P_\mathrm{A}$$
水は、全て気体と仮定した圧力 $P_{\mathrm{if}}$ を求める。 $P_{\mathrm{if}}$ も温度に比例するので
$$P_{\mathrm{if}}=1.6P_\mathrm{A}\times\dfrac56=1.33P_\mathrm{A}$$
これは $T_1$ での水の蒸気圧 $0.11P_\mathrm{A}$ より大きい。よって水の一部は液体になり、液体があるので水蒸気の分圧は飽和蒸気圧の $0.11P_\mathrm{A}$ になる。
全圧は2つの和なので
$$1.00P_\mathrm{A}+0.11P_\mathrm{A}=1.11P_\mathrm{A}$$
有効数字2桁で $1.1P_\mathrm{A}$ 。
答 $1.1P_\mathrm{A}$ Pa(5点)
別解
問2
(状態方程式を2本並べて辺々割る) シリンダーAの初めの状態と、コックを開けた後の全体について状態方程式を立てる。全圧を $P$ とすると
$$P_\mathrm{A}V_0=nRT_0$$
$$P\times\dfrac54V_0=3.5nRT_0$$
2本目を1本目で割ると
$$\dfrac{P}{P_\mathrm{A}}\times\dfrac54=3.5\qquad\therefore\ P=2.8P_\mathrm{A}$$
メタンの分圧 $p$ は、 $p\times\dfrac54V_0=nRT_0$ を1本目で割って $p=0.80P_\mathrm{A}$ 。分圧は全圧×モル分率でもよく、 $2.8P_\mathrm{A}\times\dfrac{n}{3.5n}=0.80P_\mathrm{A}$ 。
出題意図
問1 体積と温度が同じ2つの容器で、圧力の比が物質量の比になることを使えるか
問2 コックを開けた後の状態を、全体を1つの容器と見て、物質量と全体の体積だけで捉えることができるか
問3 体積・温度一定の燃焼を圧力でモル計算し、余った酸素も含めて全圧を求められるか
問4 冷却で水蒸気の一部が凝縮したとき、凝縮しない気体と水を分けて扱い、水蒸気の分圧を飽和蒸気圧にできるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 20点 | 15点 |
| 目標時間 | 12分 | 15分 |
気体の問題は、状態遷移図を書いて P・V・T・n の4つを追い、比で解けば必ず解ける。
この大問は「ピストン・コックの容器」「燃焼のモル計算を圧力で」「冷却で凝縮」という重要問題集の気体の典型問題を3つつないだだけで、重要問題集の気体が完璧なら医学科は満点を取りたい。
2013年の化学の合否を分けた大問で、差がつくのは問4 だけ。
凝縮しない気体は温度に比例し、液体がある水は飽和蒸気圧、と2つを分けて考える流れを言い切れるようにしておこう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問4:冷やしたとき、凝縮しない気体だけを $\dfrac56$ 倍し、水蒸気は飽和蒸気圧 $0.11P_\mathrm{A}$ にする、という発想に行き着けるか。この大問でいちばん差がつく小問。水蒸気も $\dfrac56$ 倍して足すと $2.3P_\mathrm{A}$ 、酸素と二酸化炭素を冷やし忘れると $1.3P_\mathrm{A}$ になり、5点を落とす。
- 問2:コックを開けた後を全体で1つの容器と見て、物質量と全体の体積だけで考えられるか。押し込んだ直後のシリンダーAの圧力( $4P_\mathrm{A}$ )から考え始めると、計算が長くなって迷いやすい。
2013年九州大学化学
第5問 解答・解説
第5問は有機化学の問題です。
テーマは『芳香族エステルの構造決定』『フェノール類の分離』。
問題


問題文をテキストで読む
※ 試験当日に問題の訂正がありました。「なお、化合物Dには同じ官能基を持つ構造異性体が存在する。」の1文の追加と、問3の問い方の訂正です。ここでは訂正後の文で載せています。
次の文章を読み、問1〜問6に答えよ。
化合物A、B、Cは炭素、水素、酸素からなる化合物でベンゼン環を持つ。また、これらは同じ分子式で表され、分子量はいずれも150である。これらの化合物11.25 mgを完全燃焼させると二酸化炭素29.69 mg、水6.74 mgが得られた。
化合物Aに水酸化ナトリウム水溶液を加えたところ加水分解が進行し、化合物Dのナトリウム塩と化合物Eのナトリウム塩が生成した。この加水分解後の反応液にジエチルエーテルを加えたが、生成した化合物はジエチルエーテル層に移らなかった。一方、加水分解後の反応液に十分量の炭酸ガスを吹き込んだ後にジエチルエーテルを加えると、生成した化合物のうち化合物Dはジエチルエーテル層に移った。化合物Eは還元性を示さなかった。なお、化合物Dには同じ官能基を持つ構造異性体が存在する。
化合物Bに水酸化ナトリウム水溶液を加えたところ加水分解が進行し、化合物Fのナトリウム塩と化合物Gが生成した。化合物Fは室温では固体であり、水に溶けにくい。化合物Gは水によく溶け、塩基性水溶液中でヨウ素と反応させると黄色の沈澱が生じた。
化合物Cは化合物Hと化合物Iの縮合反応によって生成する。化合物Hはアンモニア性硝酸銀水溶液と反応して銀を析出する。化合物Iには不斉炭素原子が存在する。
問1. 化合物A、B、Cの分子式を記せ。
問2. 化合物E、Hを示性式で記せ。
問3. 化合物Dの分子式で示される構造異性体のうち、ベンゼン環を持つものの数を記せ。
問4. 下線部でおこる反応を例にならって化学反応式で示せ。
問5. 化合物Cの構造を問4の例の構造にならって記せ。
問6. 水酸化ナトリウム水溶液中で、塩化ベンゼンジアゾニウムと反応する化合物を化合物D〜Iの中から選び、記号で記せ。
解答の方針
【問1の方針】
二酸化炭素の中の C と水の中の H がそのまま化合物の C と H。残りの質量が O。
- 二酸化炭素と水の質量から C と H の質量を求め、O の質量は全体から引いて求める。
- 物質量の比から組成式を求める。
- 分子量150から分子式を求める。
【問2の方針】
炭酸ガスを吹き込むと、炭酸より弱い酸(フェノール類)だけが塩からもとの形に戻ってエーテル層に移る。だから D はフェノール類、E はカルボン酸。H は銀鏡反応を示すカルボン酸なのでギ酸(下の図)。


- A はエステルで、加水分解で D と E がどちらもナトリウム塩になることから、D はフェノール類、E はカルボン酸と決める。
- A の炭素9個を D と E に分ける組み合わせを挙げ、「E は還元性を示さない」「D には同じ官能基を持つ構造異性体が存在する」で消して、D をクレゾール、E を酢酸とする。
- C は H と I のエステルで、H は銀鏡反応を示すカルボン酸なのでギ酸とする。
- E と H を示性式で書く。
【問3の方針】
ベンゼン環に付く残りの部分は C 1個・H 3個・O 1個。ベンゼン環に OH と $\ce{CH3}$ を別々に付けるか、1つのかたまりで付けるかで分けて数える(下の図)。


- D の分子式 $\ce{C7H8O}$ を確かめる。
- 置換基が2つ(OH と $\ce{CH3}$ )のときは、オルト・メタ・パラの3つ。
- 置換基が1つのときは、O の位置で $\ce{-CH2-OH}$ と $\ce{-O-CH3}$ の2つ。
- 合わせて数える。
【問4の方針】
B は加水分解で F のナトリウム塩と G になる。G はヨードホルム反応を示し水によく溶けるのでエタノール、F は室温で固体で水に溶けにくいので安息香酸。
- G をエタノール(炭素2個)、F をベンゼン環をもつカルボン酸の安息香酸(炭素7個)と決める。
- B を安息香酸エチルとする。
- 水酸化ナトリウムでけん化すると、安息香酸ナトリウムとエタノールができる反応式を、例にならってベンゼン環とエステル結合を構造式で書く。
【問5の方針】
C はギ酸 H と I のエステルなので、I は $\ce{C9H10O2}$ + $\ce{H2O}$ - $\ce{CH2O2}$ = $\ce{C8H10O}$ のアルコール。ベンゼン環をもつこのアルコールのうち、不斉炭素をもつものは1つだけ(下の図)。


- 分子式の引き算で I を $\ce{C8H10O}$ と決める。
- ベンゼン環をもち OH が環に直接付かないアルコールのうち、不斉炭素をもつ1-フェニルエタノールを I とする。
- ギ酸と1-フェニルエタノールをエステル結合でつなぎ、例にならって C の構造を書く。
【問6の方針】
塩化ベンゼンジアゾニウムとカップリングするのは、水酸化ナトリウム水溶液中でフェノキシドイオンになるフェノール類。D〜I を官能基で分ければ1つに決まる(下の図)。


- D〜I の官能基を確かめる。
- フェノール類の D を選ぶ。
解答




解答をテキストで読む
問1
・C の質量: $29.69\times\dfrac{12.0}{44.0}=8.097$ mg
・H の質量: $6.74\times\dfrac{2.00}{18.0}=0.749$ mg
・O の質量: $11.25-8.097-0.749=2.404$ mg
$$\mathrm{C}:\mathrm{H}:\mathrm{O}=\dfrac{8.097}{12.0}:\dfrac{0.749}{1.00}:\dfrac{2.404}{16.0}=0.6748:0.749:0.1503=9:10:2$$
組成式は $\ce{C9H10O2}$(式量150)。分子量も150なので、分子式は組成式と同じ。A・B・C は同じ分子式なので、3つとも同じ。
答 $\ce{C9H10O2}$(3点)
問2
A に水酸化ナトリウム水溶液を加えると加水分解が進むので、A はエステル。D と E がどちらもナトリウム塩になるので、どちらも酸。エーテルを加えても移らないのは、どちらも塩(イオン)のまま水層にあるから。
ここに炭酸ガスを十分に吹き込むと、炭酸より弱い酸の塩だけが、弱い酸の遊離で塩からもとの形に戻る。フェノール類は炭酸より弱い酸なので、フェノキシドイオンが炭酸から $\ce{H+}$ を受け取ってフェノール類に戻り、エーテル層に移る。カルボン酸は炭酸より強い酸なので、塩のまま水層に残る。よって D はフェノール類、E はカルボン酸(下の図)。
A の炭素は9個なので、D と E の炭素の数の組み合わせは次の3通り(下の図)。
・D がフェノール(炭素6個)、E がプロピオン酸(炭素3個):フェノールには同じ官能基(ベンゼン環に直接付いた OH)をもつ構造異性体がない。訂正で足された1文に合わないので×
・D がクレゾール(炭素7個)、E が酢酸(炭素2個):条件に合う
・D が炭素8個のフェノール類、E がギ酸(炭素1個):ギ酸はホルミル基をもち還元性を示す。「E は還元性を示さなかった」に合わないので×
よって D はクレゾール、E は酢酸で、A は酢酸クレジル $\ce{CH3COOC6H4CH3}$。クレゾールには o-・m-・p- の3つの構造異性体があるので、訂正の1文とも合う(A がどの位置のものかは問題文からは決まらない)。
C は H と I の縮合反応でできるエステルなので、H と I はカルボン酸とアルコールの組。H はアンモニア性硝酸銀水溶液と反応して銀を析出する(銀鏡反応)ので、ホルミル基をもつ。ホルミル基をもつカルボン酸はギ酸だけ。酢酸はホルミル基をもたないので還元性を示さない(下の図)。
答 $\mathbf{E}=\ce{CH3COOH}$(酢酸)(2点)
答 $\mathbf{H}=\ce{HCOOH}$(ギ酸)(2点)
問3
D はクレゾールで、分子式は $\ce{C7H8O}$。ベンゼン環に付く残りの部分は、C 1個・H 3個・O 1個。
・置換基が2つ(OH と $\ce{CH3}$ ):o-クレゾール・m-クレゾール・p-クレゾールの3つ(D と同じフェノール類)
・置換基が1つ:$\ce{-CH2-OH}$ が付いたベンジルアルコールと、 $\ce{-O-CH3}$ が付いたメチルフェニルエーテルの2つ
合わせて $3+2=5$。
答 5(3点)
問4
B を水酸化ナトリウム水溶液で加水分解すると、F のナトリウム塩と G ができる。G は水によく溶け、塩基性の水溶液中でヨウ素と反応して黄色のヨードホルムの沈殿をつくる。ヨードホルム反応を示す水によく溶けるアルコールは、エタノール(炭素2個)か2-プロパノール(炭素3個)。F はカルボン酸で、ベンゼン環をもつカルボン酸は炭素が7個以上いるので、炭素9個の B では G がエタノール $\ce{CH3-CH2-OH}$ 、F が炭素7個の安息香酸に決まる。安息香酸は室温で固体で、水に溶けにくいことも合う。よって B は安息香酸エチル $\ce{C6H5COOC2H5}$。
B を水酸化ナトリウム水溶液で加水分解(けん化)すると、安息香酸ナトリウムとエタノールができる(下の図、例にならい、ベンゼン環とエステル結合を構造式で書いた)。
答 $\ce{C6H5COOC2H5 + NaOH -> C6H5COONa + C2H5OH}$(5点)
問5
C はギ酸 H と I のエステル。エステル結合ができるときに水が1分子とれるので、I の分子式は
$$\ce{C9H10O2}+\ce{H2O}-\ce{CH2O2}=\ce{C8H10O}$$
C はベンゼン環をもち、ギ酸にはベンゼン環がないので、I がベンゼン環をもつ。I はギ酸とエステルをつくるアルコールなので、OH はベンゼン環に直接付いていない。ベンゼン環をもつ $\ce{C8H10O}$ のアルコールは、1-フェニルエタノール・2-フェニルエタノール・メチルベンジルアルコール(o-・m-・p-)の5つ。このうち不斉炭素をもつのは、OH の付いた炭素に H・ $\ce{CH3}$・OH・ベンゼン環の4つの違う基が付いた1-フェニルエタノールだけ(下の図)。
よって I は1-フェニルエタノール $\ce{C6H5-CH(OH)-CH3}$ で、C はギ酸1-フェニルエチル(下の図、例にならい、ベンゼン環とエステル結合を構造式で書いた)。
答 $\mathbf{C}=\ce{HCOOCH(CH3)C6H5}$(ギ酸1-フェニルエチル)(5点)
問6
塩化ベンゼンジアゾニウムは、水酸化ナトリウム水溶液中でフェノール類(フェノキシドイオン)とカップリングして、アゾ化合物(橙色〜赤色の色素)をつくる。D〜I のうちフェノール類はクレゾールの D だけ。E(酢酸)・F(安息香酸)・H(ギ酸)はカルボン酸、G(エタノール)・I(1-フェニルエタノール)はアルコールで、どれもカップリングしない(下の図)。
答 D(3点)
出題意図
問1 燃焼で生じた二酸化炭素と水の質量から、分子式を求められるか
問2 加水分解の生成物の性質(炭酸との酸の強さ・還元性)と訂正で足された1文から、E と H を決められるか
問3 $\ce{C7H8O}$ でベンゼン環をもつ構造異性体を、官能基ごとに漏れなく数えられるか
問4 エステルのけん化を、例にならって構造式の反応式で書けるか
問5 銀鏡反応と不斉炭素の条件から、C の構造を1つに決められるか
問6 ジアゾカップリングするのはフェノール類だと判断できるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 20点 | 20点 |
| 目標時間 | 12分 | 12分 |
同じ分子式のエステル3つを加水分解の生成物で決める、九大の有機としてオーソドックスな構造決定だ。
B と C は「ヨードホルム反応」「銀鏡反応」「不斉炭素」で1つに決まり、差がつくのは A の D を炭酸ガスでフェノール類と読み、訂正の1文でクレゾールに決めきれるかだけ。
エステルの加水分解と分離の流れ(炭酸より強いか弱いか)は、問題を見たら反射で書けるまで練習しておき、この大問は確実に取り切ろう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2:炭酸ガスでエーテル層に移る D をフェノール類と読み、訂正で足された「同じ官能基を持つ構造異性体が存在する」からフェノールを消してクレゾールに決める、という発想に行き着けるか。ここで D をフェノールにすると E がプロピオン酸になり、問3 の数も崩れる(問2・問3 で7点)。
- 問5:H をギ酸と決めたあと、分子式の引き算で I を $\ce{C8H10O}$ とし、不斉炭素から1-フェニルエタノールに決められるか。2-フェニルエタノールのエステルを書きやすい。
2013年九州大学化学
第6問 解答・解説
第6問は高分子化合物(合成高分子)の問題です。
テーマは『合成高分子の分子量計算』『結合による高分子の分類』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問6に答えよ。なお、問2〜問5は有効数字2桁で答えよ。
日常生活において、様々な高分子化合物が使用されている。天然物由来のものとしては、カイコの吐き出したまゆ糸から作られる絹、羊の体毛から作られる羊毛、植物のワタから作られる木綿(a)などがある。一方、人工的に合成される高分子化合物の例としては、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によって合成されるナイロン66(6,6-ナイロン)(b)、テレフタル酸とエチレングリコールの縮重合によって合成される $\boxed{\text{ ア }}$ などがある。また、特別な機能を持った機能性高分子も数多く合成されている。例えば、スチレンと少量の $p$-ジビニルベンゼンの共重合で得られた樹脂をスルホン化することで合成される高分子化合物は、 $\boxed{\text{ イ }}$ 樹脂とよばれて、様々な物質の分離などに利用されている。
問1. 文中の $\boxed{\text{ ア }}$ と $\boxed{\text{ イ }}$ に適切な語句を記せ。
問2. 下線部(a)の主成分であるセルロース $9.9\times10^2$ gを加水分解してすべてグルコースにすると、何gのグルコースが生じるか。
問3. 下線部(a)の主成分であるセルロースは、酢酸と無水酢酸および少量の濃硫酸の混合溶液を作用させると、アセチル化される。この反応によって、セルロース $9.6\times10^5$ gを完全にアセチル化すると、何gになるか。
問4. 下線部(b)の平均分子量を $4.8\times10^5$ とすると、1分子に含まれるアミド結合の数は平均何個になるか。
問5. $\boxed{\text{ ア }}$ の平均重合度を $9.4\times10^2$ とすると、平均分子量はいくらになるか。
問6. 以下の高分子化合物の中で、アミド結合を含むものをすべて丸で囲め。
アミロース、ポリイソプレン、ポリ乳酸、アミロペクチン、グリコーゲン、絹、羊毛、木綿、マルターゼ、生ゴム
解答の方針
【問1の方針】
ア・イは原料と製法がそのまま名前を決める。アはテレフタル酸とエチレングリコールがエステル結合でつながる高分子、イはベンゼン環にスルホ基が付いた樹脂(下の図)で、スルホ基の $\ce{H+}$ が陽イオンと入れかわる。


- ア:テレフタル酸(2価カルボン酸)とエチレングリコール(2価アルコール)の縮合重合でできるポリエステルの名前を書く。
- イ:スチレンと $p$-ジビニルベンゼンの共重合体をスルホン化した樹脂が、何のイオンを交換するかを決めて書く。
【問2・問3の方針】
セルロースは単位 $\ce{C6H10O5}$ がつながったものとみる。単位1個から、加水分解でグルコース1分子、アセチル化でトリアセチルセルロースの単位1個ができる(下の図)。物質量が変わらないので、式量の比で質量が決まる。


- 問2 セルロースの単位 $\ce{C6H10O5}$ の式量(162)とグルコース $\ce{C6H12O6}$ の分子量(180)を求める。
- セルロースの質量を単位の物質量にし、同じ物質量のグルコースの質量を求める。
- 問3 完全にアセチル化すると単位の3つの OH がすべて $\ce{OCOCH3}$ になるので、トリアセチルセルロースの単位の式量(288)を求める。
- セルロースの質量を単位の物質量にし、同じ物質量のトリアセチルセルロースの単位の質量を求める。
【問4の方針】
1分子のアミド結合の数は「繰り返し単位がいくつあるか」と「1単位にアミド結合がいくつあるか」のかけ算で決まる。ナイロン66 の繰り返し単位にはアミド結合が2つある(下の図)。


- ナイロン66 の繰り返し単位の式量を求める。
- 平均分子量を繰り返し単位の式量で割って、繰り返し単位の数 $n$ を求める。
- 1単位にアミド結合が2つあるので、アミド結合の数は $2n$。有効数字2桁で答える。
【問5の方針】
平均分子量は「繰り返し単位の式量×重合度」。ポリエチレンテレフタラートの繰り返し単位は、テレフタル酸とエチレングリコールが1つずつ、水2分子がとれてつながったもの(下の図)。


- ポリエチレンテレフタラートの繰り返し単位 $\ce{C10H8O4}$ の式量を求める。
- 式量に平均重合度をかけて、平均分子量を求める。
【問6の方針】
アミド結合 $-\ce{CO-NH}-$ をもつのは、タンパク質(ペプチド結合)とナイロンなどのポリアミド。10個を「中にある結合」で分け、名前から見えにくいもの(酵素の名前・天然繊維)が何でできているかを確かめる(下の図)。


- 10個を、タンパク質・ポリエステル・多糖・炭化水素に分ける。
- タンパク質に分けたもの(絹・羊毛・酵素のマルターゼ)を、アミド結合を含むものとしてすべて選ぶ。
解答


解答をテキストで読む
問1
テレフタル酸 $\ce{HOOC-C6H4-COOH}$ とエチレングリコール $\ce{HO-CH2-CH2-OH}$ が、水がとれながらエステル結合でつながる縮合重合でできるポリエステル(下の図)。
答(ア) ポリエチレンテレフタラート(2点)
スチレンと少量の $p$-ジビニルベンゼンを共重合させると、ポリスチレンの鎖どうしが $p$-ジビニルベンゼンの部分で橋かけされた立体網目の樹脂ができる。これを濃硫酸でスルホン化すると、ベンゼン環にスルホ基 $-\ce{SO3H}$ が付く(下の図)。スルホ基の $\ce{H+}$ が水溶液中の $\ce{Na+}$ などの陽イオンと入れかわるので、陽イオン交換樹脂という。たとえば塩化ナトリウム水溶液を通すと、次の反応で塩酸が得られる(R は樹脂の部分)。
$$\ce{R-SO3H + NaCl -> R-SO3Na + HCl}$$
答(イ) 陽イオン交換(2点)
問2
分子量がとても大きいので、両端を無視してセルロースを単位 $\ce{C6H10O5}$(式量162)が $n$ 個つながったものとみる。加水分解の式は
$$(\ce{C6H10O5})_n+n\,\ce{H2O}\ \ce{->}\ n\,\ce{C6H12O6}$$
係数の比から、単位1 mol がグルコース(分子量180)1 mol になる(下の図)。
セルロースの単位の物質量は $\dfrac{9.9\times10^2}{162}$ mol なので、グルコースの質量は
$$\dfrac{9.9\times10^2}{162}\times180=1.10\times10^3\ \mathrm{g}$$
答 $1.1\times10^3$ g(3点)
問3
セルロースの単位は示性式で $\ce{C6H7O2(OH)3}$ と書け、OH を3個もつ。無水酢酸で完全にアセチル化すると、3個の OH がすべて $\ce{OCOCH3}$ になり、トリアセチルセルロースになる。
$$[\ce{C6H7O2(OH)3}]_n+3n\,\ce{(CH3CO)2O}\ \ce{->}\ [\ce{C6H7O2(OCOCH3)3}]_n+3n\,\ce{CH3COOH}$$
OH 1個がアセチル化されると、H が $\ce{COCH3}$ に置きかわるので式量は $43.0-1.0=42.0$ 増える。3個ともなので、トリアセチルセルロースの単位の式量は
$$162+42.0\times3=288$$
アセチル化しても単位の数は変わらないので、単位1 mol がトリアセチルセルロースの単位1 mol になる(上の図)。セルロースの単位の物質量は $\dfrac{9.6\times10^5}{162}$ mol なので、アセチル化後の質量は
$$\dfrac{9.6\times10^5}{162}\times288=1.71\times10^6\ \mathrm{g}$$
答 $1.7\times10^6$ g(4点)
問4
ナイロン66 は、ヘキサメチレンジアミン $\ce{H2N-(CH2)6-NH2}$ とアジピン酸 $\ce{HOOC-(CH2)4-COOH}$ が、水がとれながらアミド結合でつながったもの。繰り返し単位は $\ce{C12H22N2O2}$ で、式量は
$$12.0\times12+1.00\times22+14.0\times2+16.0\times2=226$$
繰り返し単位の数を $n$ とすると
$$n=\dfrac{4.8\times10^5}{226}\fallingdotseq2.12\times10^3$$
繰り返し単位1つにアミド結合は2つ(下の図)あるので、1分子のアミド結合の数は
$$2n=2\times\dfrac{4.8\times10^5}{226}\fallingdotseq4.25\times10^3$$
両端の分を考えると $2n-1$ だが、$n$ がとても大きいので有効数字2桁では同じ。
答 $4.2\times10^3$ 個(4点)
問5
ポリエチレンテレフタラートの繰り返し単位は、テレフタル酸 $\ce{C8H6O4}$ とエチレングリコール $\ce{C2H6O2}$ から水2分子がとれた $\ce{C10H8O4}$ で、式量は
$$12.0\times10+1.00\times8+16.0\times4=192$$
重合度は繰り返し単位の数なので、平均分子量は
$$192\times9.4\times10^2\fallingdotseq1.80\times10^5$$
答 $1.8\times10^5$(3点)
問6
10個の高分子を、中にある結合で分ける(下の図)。
・絹(主成分フィブロイン)・羊毛(主成分ケラチン)はタンパク質。マルターゼはマルトースをグルコースに加水分解する酵素で、酵素の本体はタンパク質。タンパク質のアミノ酸どうしはペプチド結合でつながっていて、ペプチド結合はアミド結合 $-\ce{CO-NH}-$ の一種
・ポリ乳酸は、乳酸のヒドロキシ基とカルボキシ基が縮合重合したポリエステルで、エステル結合だけをもつ
・アミロース・アミロペクチン・グリコーゲンはデンプンの仲間、木綿の主成分はセルロースで、どれもグルコースがグリコシド結合でつながった多糖
・生ゴム(天然ゴム)はポリイソプレンで、炭素と水素だけでできている
答 絹、羊毛、マルターゼ(4点)
出題意図
問1 代表的な合成高分子の名前を、原料と製法から答えられるか
問2・問3 セルロースの単位1個からグルコース1分子・トリアセチルセルロースの単位1個ができることを捉え、式量の比で質量を求めることができるか
問4・問5 繰り返し単位の式量と、1単位に含まれるアミド結合の数から、結合の数や平均分子量を求めることができるか
問6 高分子の中にある結合の種類を、タンパク質・ポリエステル・多糖・炭化水素の系列で正しく分けられるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 22点 | 22点 |
| 目標時間 | 8分 | 10分 |
高分子の基本の知識と定番の量的計算だけでできた大問で、どの学部も満点を取りたい。
計算はすべて「繰り返し単位の式量を求め、1単位から何がいくつできるか」で立てれば1本の式で終わる。
差がつくとしたら問6 のマルターゼで、酵素はタンパク質という知識をここで結びつけられるかどうか。
高分子は短い時間で取り切れる分野なので、代表的な高分子の単位の式量は手で何度も求めて、迷わず書けるようにしておくこと。
差がつく所・失点しやすい所
- 問6:マルターゼを「酵素=タンパク質」と見抜けるか。名前が糖のマルトースに似ているので、多糖の仲間と思って外しやすい。「すべて」選ぶ形なので、絹・羊毛と合わせて3つそろわないと点にならない。
- 問3:完全なアセチル化で OH が3個とも変わり、単位の式量が162から288になると捉えられるか。OH を1個や2個で数えると答えがずれる。
2013年九州大学・化学の
講評とまとめ
6問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | やや簡単 | 18点 | 18点 |
| 第2問 | やや簡単 | 20点 | 20点 |
| 第3問 | 標準 | 22点 | 18点 |
| 第4問 | 標準 | 20点 | 15点 |
| 第5問 | やや簡単 | 20点 | 20点 |
| 第6問 | やや簡単 | 22点 | 22点 |
| 全体 | やや簡単 | 110点 | 90点 |
大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で110点、その他の学部で90点)にはなりません。
全体的に難易度はやや簡単な年。
大問が6題あるので、1題にかけられる時間が短い年でした。
第1問・第2問・第6問は知識と定番の計算だけ、第5問もオーソドックスな構造決定で、重要問題集が完璧なら短い時間で取り切れます。
合否を分けたのは第4問で、冷やしたときに凝縮しない気体と水蒸気を分けて考えられるかが決め手でした。
第3問は問2 の逆滴定で、中和点で何が中和されたかを読めるかで差がつきます。
知識の大問で時間を浮かせ、計算の大問に回すことが大事です。
解く流れ
第1問 → 第2問 → 第3問 → 第4問 → 第5問 → 第6問。
2013年九州大学・化学に
関するよくある質問
2013年の九州大学・化学について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2013年の九州大学・化学は難しかった?
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全体的に難易度はやや簡単な年でした。
第1問・第2問・第5問・第6問はやや簡単、第3問・第4問は標準です。
大問は6題で、配点は18〜23点と大問ごとに違います。 - 2013年の九州大学・化学は何点取れば合格できる?
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目標点は、医学部医学科で110点、その他の学部で90点です(125点満点)。
- 2013年の九州大学・化学はどこで差がつく?
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この年の合否を分けたのは第4問で、差がついたのは次の3つでした。
- 第4問 問4:冷やしたとき、凝縮しない気体だけを温度に比例させ、水蒸気は飽和蒸気圧にする、と分けて考えられたか。
- 第3問 問2:逆滴定で、問題の中和点が余った水酸化ナトリウムの中和点だと読めたか。
- 第5問 問2:訂正で足された1文から、D をフェノールでなくクレゾールに決められたか。
- 2013年の九州大学・化学は何が出題された?
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大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:理論化学(物質の構成粒子)
- 第2問:理論化学(酸化・還元と電池・電気分解)・無機化学
- 第3問:理論化学(酸化・還元と電池・電気分解)
- 第4問:理論化学(物質の三態・気体の法則)
- 第5問:有機化学
- 第6問:高分子化合物(合成高分子)




