【解説・配点付き】2012年九州大学化学の解答・解説
2012年の九州大学・化学の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2012年九州大学化学
第1問 解答・解説
この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は理論化学(化学結合と結晶)の問題です。
テーマは『14族と炭素の単体』『酸化数と分子の極性』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問8に答えよ。
周期表の第14族には、炭素C、ケイ素Si、ゲルマニウムGe、スズSn、鉛Pbが並ぶ。このうち、炭素は非金属、スズと鉛は金属とみなされる。ケイ素とゲルマニウムは、非金属と金属の中間的な性質を示し、 $\boxed{\text{ ア }}$ とよばれる。
炭素の単体には、 $\boxed{\text{ イ }}$ 、 $\boxed{\text{ ウ }}$ 、無定形炭素の3種類の $\boxed{\text{ エ }}$ が存在することが古くから知られている。 $\boxed{\text{ イ }}$ は電気を通さないが、 $\boxed{\text{ ウ }}$ は電気を通す。上記の3種類のほかに、フラーレンやカーボンナノチューブも $\boxed{\text{ エ }}$ に加えられる。
炭素の酸化物には、一酸化炭素と二酸化炭素がある。また、水素との化合物であるメタンは最も簡単な構造を有する有機化合物の1つである。これらの化合物に含まれる炭素の酸化数はすべて異なる。
水素、炭素、酸素の各原子が互いに結合する際に電子を引き寄せる力(a)の強さは、酸素原子が最も大きく水素原子が最も小さい。元素によりその強さに差があるために、電気的なかたよりが生じる。分子全体としてかたよりがあるものを極性分子という。
二酸化ケイ素は非常に安定な物質であり、その結晶の代表的なものに石英がある。一方、二酸化炭素分子が規則正しく配列してできた結晶は $\boxed{\text{ オ }}$ である。 $\boxed{\text{ オ }}$ を常温常圧で放置すると、液体状態を経由せずに直接気体になる。(b)
問1. 文中の $\boxed{\text{ ア }}$ 〜 $\boxed{\text{ オ }}$ に適切な語句を記せ。
問2. 自然界に存在する炭素原子はおもに $\ce{^{12}C}$ と $\ce{^{13}C}$ である。 $\ce{^{13}C}$ について、(1)陽子の数、(2)中性子の数を記せ。
問3. ケイ素原子の各電子殻に入っている電子の数を例にならって示せ。
〔例〕 Li: $\mathrm{K}^2\mathrm{L}^1$
問4. $\boxed{\text{ イ }}$ の融点は3550 ℃と非常に高い。その理由を20字以内で説明せよ。
問5. (1)一酸化炭素、(2)二酸化炭素、(3)メタンについて、それぞれの分子に含まれる炭素の酸化数を記せ。
問6. 下線部(a)について、その大きさを数値で表したものを何とよぶか答えよ。
問7. 一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、メタノールの中から、極性分子に分類されるものをすべて選び、その化学式を記せ。
問8. 下線部(b)について、その状態変化を何とよぶか答えよ。また、常温常圧で同じ状態変化を示す化合物名を1つあげよ。
解答の方針
【問1の方針】
14族は下の元素ほど金属の性質が強くなり、その途中のケイ素とゲルマニウムが非金属と金属の中間(下の図)。炭素の単体は、電気を通すか通さないかで黒鉛とダイヤモンドを区別する(2つ目の図)。




- (ア) 非金属と金属の中間の性質を示す元素の呼び名を答える。
- (イ)(ウ) 電気を通さない炭素の単体をダイヤモンド、通す単体を黒鉛と決める。
- (エ) 同じ元素からなる性質の異なる単体の呼び名を答える。
- (オ) 二酸化炭素の分子結晶の名前を答える。
【問2の方針】
元素記号の左上の数は質量数(陽子の数+中性子の数)、左下の数は原子番号(陽子の数)。炭素の原子番号は6(下の図)。


- 炭素の原子番号から陽子の数を決める。
- 質量数13から陽子の数を引いて、中性子の数を求める。
【問3の方針】
電子は内側の電子殻から順に入り、K殻は2個、L殻は8個で満員になる。ケイ素は原子番号14(下の図)。


- ケイ素の電子の数を原子番号から14個と決める。
- K殻に2個、L殻に8個入れ、残りを M殻に入れて、例の形で書く。
【問4の方針】
融点の高さは、融かすときに切る結合の強さで決まる。ダイヤモンドは共有結合の結晶で、融かすには分子間力ではなく共有結合そのものを切らなければならない。
- ダイヤモンドを共有結合の結晶と決める。
- 融かすには強い共有結合を切る必要があることを、「立体網目状」の構造とあわせて20字以内にまとめる。
【問5の方針】
酸化数は「H は+1、O は−2、分子全体は0」の決まりで、炭素の酸化数を $x$ とおいて求める。H が多いほど小さく、O が多いほど大きくなる(下の図)。


- 一酸化炭素・二酸化炭素は、O の−2 と全体0 から $x$ を求める。
- メタンは、H の+1 と全体0 から $x$ を求める。
【問6の方針】
結合している原子が共有電子対を引き寄せる強さを数値にしたものの名前を聞いている。
- 下線部(a)の強さを表す数値の名前を答える。
【問7の方針】
結合に極性があっても、分子の形で打ち消し合えば無極性分子になる。電子式から形を決め、δ+ と δ− の重心が一致するかで判定する(下の図)。


- 4つの分子の形を決める($\ce{CO}$・ $\ce{CO2}$ は直線形、 $\ce{CH4}$ は正四面体形、 $\ce{CH3OH}$ は O のところで折れ曲がる)。
- δ+ と δ− の重心が一致しないものを極性分子として選ぶ。
【問8の方針】
固体から液体を経ずに直接気体になる変化が昇華。昇華しやすいのは分子間力の弱い分子結晶。問いは「化合物名」なので、単体は答えにならない(下の図はドライアイスが常圧で昇華する理由)。


- 下線部(b)の状態変化の名前を答える。
- 常温常圧で昇華する分子結晶のうち、化合物であるものを1つ答える。
解答




解答をテキストで読む
問1
14族は、上から炭素が非金属、ケイ素とゲルマニウムが非金属と金属の中間、スズと鉛が金属で、周期表の下の元素ほど金属の性質が強くなる(下の図)。ケイ素とゲルマニウムのように、非金属と金属の中間の性質を示す元素は半金属とよばれる。この2つは電気を少しだけ通す半導体の材料なので、「半導体」と答えても意味は通る。
答(ア) 半金属(半導体でもよい)(2点)
ダイヤモンドは、炭素原子が正四面体の向きに4本ずつ共有結合した立体網目の結晶で、価電子をすべて結合に使うので電気を通さない。黒鉛は、炭素原子が3本ずつ共有結合した正六角形の平面の網目が、弱い分子間力で層に重なったもの。結合に使われずに残った1個の価電子が層の中を動けるので、電気を通す(下の図)。
答(イ) ダイヤモンド(2点)
答(ウ) 黒鉛(2点)
同じ元素からなる性質の異なる単体どうしを同素体という。同素体をもつ代表的な元素は、硫黄・炭素・酸素・リン(S・C・O・P)。フラーレン $\ce{C60}$ やカーボンナノチューブも炭素の同素体。
答(エ) 同素体(2点)
二酸化炭素の分子が分子間力で規則正しく並んだ分子結晶は、ドライアイス。
答(オ) ドライアイス(2点)
問2
元素記号の左下の数は原子番号で、陽子の数と等しい(下の図)。炭素の原子番号は6なので、陽子の数は6。左上の数は質量数で、陽子の数と中性子の数の和。
$$13-6=7\quad\text{(中性子の数)}$$
答(陽子の数) 6(1点)
答(中性子の数) 7(1点)
問3
ケイ素は原子番号14なので、電子は14個。電子は内側の殻から入り、K殻に2個、L殻に8個入ると満員になる。残りの4個が M殻に入る(下の図)。この最外殻の4個が価電子で、14族の元素はどれも価電子を4個もつ。
答 Si:$\mathrm{K}^2\mathrm{L}^8\mathrm{M}^4$(1点)
問4
ダイヤモンドは共有結合の結晶。すべての炭素原子が隣の4個の炭素原子と共有結合し、その結合が立体網目状に結晶全体へ広がっている(問1 の2つ目の図)。融かすには、分子間力ではなく強い共有結合を切る必要があるので、融点が非常に高い。答えの文は20字。
答 原子が共有結合で立体網目状につながるから(2点)
問5
H は+1、O は−2 とし、分子全体の酸化数の和を0 として、炭素の酸化数を $x$ とおく。
一酸化炭素: $x+(-2)=0$ より $x=+2$
二酸化炭素: $x+(-2)\times2=0$ より $x=+4$
メタン: $x+(+1)\times4=0$ より $x=-4$
炭素の酸化数は、電気陰性度の小さい H と結びつくほど小さく、電気陰性度の大きい O と結びつくほど大きくなる(下の図)。
答(一酸化炭素) $+2$(1点)
答(二酸化炭素) $+4$(1点)
答(メタン) $-4$(1点)
問6
原子が結合するときに共有電子対を引き寄せる強さを数値で表したものが電気陰性度。希ガスを除いて周期表の右上の元素ほど大きく、フッ素が最大。並びは F > O > N(≒ Cl)> C(≒ S)> H で、問題文のとおり3つの中では O が最も大きく、H が最も小さい。
答 電気陰性度(1点)
問7
電子式を書いて分子の形を決め、δ+ と δ− の重心が一致するかを見る(下の図)。
・一酸化炭素:C と O の2原子だけの直線形の分子。電気陰性度の違う2つの原子なので、結合の極性がそのまま分子の極性になる。極性分子
・二酸化炭素:O=C=O の直線形。2本の C=O の極性が逆向きで打ち消し合い、δ+ と δ− の重心が C の位置で一致する。無極性分子
・メタン:C を中心とする正四面体形。4本の C−H の極性が打ち消し合う。無極性分子
・メタノール:$\ce{CH3-O-H}$ は、O のまわりの結合が水と同じように折れ曲がり、O−H の大きな極性が打ち消されない。極性分子
答 $\ce{CO}$・$\ce{CH3OH}$(1点)
問8
固体が液体を経ずに直接気体になる変化が昇華。ドライアイスは、三重点の圧力が大気圧より高いので、大気圧のもとで温度を上げても液体の領域を通らず、固体から直接気体になる(下の図)。
答(状態変化) 昇華(1点)
常温常圧で昇華する物質は、ドライアイス・ヨウ素・ナフタレンのように、分子間力の弱い分子結晶。このうちヨウ素 $\ce{I2}$ は単体なので、問いの「化合物名」にはならない。防虫剤のナフタレン $\ce{C10H8}$ や p-ジクロロベンゼンが答えになる。
答(化合物名) ナフタレン(p-ジクロロベンゼンなどもよい)(1点)
出題意図
問1 14族の元素の分類と炭素の同素体、ドライアイスを、文の流れから正しく言葉で答えられるか
問2・問3 質量数・原子番号の意味と、電子殻に入る電子の数を理解できているか
問4 ダイヤモンドが共有結合の結晶であることから、融点が高い理由を20字以内でまとめられるか
問5〜問7 酸化数の決まり・電気陰性度の名前・分子の形からの極性の判定を、炭素の化合物に当てはめられるか
問8 昇華という状態変化と、常温常圧で昇華する化合物を答えられるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 22点 | 22点 |
| 目標時間 | 8分 | 10分 |
14族と炭素を題材に、同素体・電子配置・酸化数・極性・昇華と、理論化学の最初の単元の基本を広く聞く大問で、どの学部も満点を取りたい。
重要問題集の物質の構成粒子と化学結合を白紙に再現できるまで仕上げていれば、すべて知っている内容。
失点するとすれば、一酸化炭素の極性の判定の甘さと「化合物名」の指定の読み落とし。
分子は形まで書いてから判定し、知識で埋められる所は時間をかけずに書いて、浮いた時間を計算の重い大問に回そう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問7・問8:差がつくとしたら、一酸化炭素を極性分子に選べるか(異なる2原子だけの分子は必ず極性分子)と、問8 で単体のヨウ素ではなく化合物のナフタレンを答えられるか。どちらも問題文の「すべて選び」「化合物名」を最後まで読めば防げる失点。
2012年九州大学化学
第2問 解答・解説
第2問は無機化学・理論化学の問題です。
テーマは『錯イオンと銅(Ⅱ)の化合物』『金属イオンの推定』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問5に答えよ。
金属イオンに $\boxed{\text{ ア }}$ をもつ分子や陰イオンが $\boxed{\text{ イ }}$ して生じたイオンを $\boxed{\text{ ウ }}$ とよぶ。アンモニア分子の窒素も $\boxed{\text{ ア }}$ をもっているため、金属イオンと $\boxed{\text{ イ }}$ を形成できる。 $\boxed{\text{ ウ }}$ は様々な立体構造をもち、その水溶液は特徴的な色を示すものもある。
ある銅(Ⅱ)の化合物1.20 gを溶かした水溶液に少量のアンモニア水を加えると淡い青色を示す $\boxed{\text{ エ }}$ の沈殿が生じた。そこにアンモニア水を加えていくと、次第に沈殿が溶けて $\boxed{\text{ オ }}$ が生じて、深い青色の溶液となった。また、化合物 $\boxed{\text{ エ }}$ の沈殿をすべて集めて、空気中で穏やかに加熱すると黒色の化合物 $\boxed{\text{ カ }}$ が0.59 g得られた。
問1. $\boxed{\text{ ア }}$ 〜 $\boxed{\text{ ウ }}$ に適切な語句を、下の語群から選んで答えよ。
語群
イオン結合、共有結合、配位結合、金属結合、酸化、還元、不対電子、非共有電子対、共有電子対、自由電子、錯イオン、ヒドロキソイオン、錯塩
問2. アンモニア分子は水素イオンと結合してアンモニウムイオンとなる。この反応を、電子式を用いて示せ。
問3. $\boxed{\text{ エ }}$ 〜 $\boxed{\text{ カ }}$ の化合物またはイオンの化学式を記せ。
問4. ある銅(Ⅱ)の化合物とはどれか、もっとも適切なものを下から選んで、化学式で答えよ。ただし、化合物はすべて無水物とする。また、ある銅(Ⅱ)の化合物1.20 gを溶かした水溶液中の銅(Ⅱ)イオンの98.5 %が $\boxed{\text{ エ }}$ の沈殿となり、 $\boxed{\text{ エ }}$ はすべて $\boxed{\text{ カ }}$ に変化したとする。
塩化銅、硝酸銅、硫酸銅、酢酸銅、炭酸銅
問5. ある3種類の金属イオンA、B、Cが溶解した無色透明の混合水溶液がある。この溶液に、次の操作を個別に行った場合の変化を以下に示す。
1.酸性条件下で硫化水素を通じると黒色の沈殿が生じた。
2.希塩酸を加えると白色の沈殿が生じた。
3.希硫酸を加えた場合は、沈殿は生じなかった。
4.アンモニア水を少量加えると褐色および白色の沈殿が生じ、さらに過剰量加えると、褐色の沈殿は消えて、白色の沈殿が残った。
このとき、金属イオンA〜Cは何か、化学式で答えよ。ただし、A〜Cはすべて酸化数が異なり、それぞれの元素は、周期表において第5周期までの異なる周期と族に含まれる。また、イオン半径はC<B<Aの順である。
解答の方針
【問1の方針】
錯イオンは、金属イオンに配位子が非共有電子対を一方的に差し出してできる。共有結合のように両方が電子を出し合うのではなく、片方だけが電子対を出す結合を配位結合という(下の図)。


- アンモニアの窒素がもつ電子対の種類から、アの非共有電子対を選ぶ。
- 非共有電子対を相手に提供してできる結合として、イの配位結合を選ぶ。
- 金属イオンに分子や陰イオンが配位結合してできたイオンの名前として、ウの錯イオンを選ぶ。
【問2の方針】
電子式は「電子の総数は変わらない」「各原子は希ガスの電子配置」の2つのルールで書く。窒素はアンモニアの時点で8個がそろっているので、電子をもたない水素イオンが窒素の非共有電子対に入りこむ(下の図)。


- アンモニアの電子式を書き、窒素に非共有電子対が1組あることを確かめる。
- 水素イオンは電子をもたないので、窒素の非共有電子対を2つの原子で共有させる。
- 電子の数が中性の原子の合計より1個少ないので、全体を角かっこでくくって $+$ を付ける。
【問3の方針】
アンモニア水は、少量なら $\ce{OH-}$ を出す塩基として、過剰なら銅(Ⅱ)イオンに配位する配位子として働く。水酸化物を加熱すると水がとれて酸化物になる(下の図)。


- 少量のアンモニア水で生じる $\ce{OH-}$ と銅(Ⅱ)イオンから、エの淡い青色の沈殿を決める。
- 過剰のアンモニアが配位して溶けたときにできる、オの深い青色の錯イオンを決める。
- 水酸化銅(Ⅱ)を穏やかに加熱して水がとれた、カの黒色の酸化物を決める。
【問4の方針】
銅(Ⅱ)の化合物 → 水酸化銅(Ⅱ) → 酸化銅(Ⅱ)と形は変わっても、銅の数は変わらない。選択肢はどれも銅を1つだけ含むので、酸化銅(Ⅱ)の物質量から元の化合物の式量が決まる(下の図)。


- 酸化銅(Ⅱ) 0.59 g を物質量に直す。
- それが元の銅(Ⅱ)イオンの98.5 % にあたるので、0.985 で割って元の銅(Ⅱ)イオンの物質量を求める。
- 元の化合物 1.20 g をその物質量で割って式量を求め、無水物の式量が最も近いものを選ぶ。
【問5の方針】
まず4つの操作の結果だけで、銀イオンとアルミニウムイオンが決まる(下の図)。残りの1つは、操作の結果と矛盾しない無色のイオンを、酸化数・周期と族・イオン半径の条件で絞り込む。


- 操作1・2 の黒色と白色の沈殿、操作4 の褐色の沈殿から、銀イオンが入っていると決める。
- 操作4 で過剰のアンモニア水を加えても残る白色の沈殿から、アルミニウムイオンが入っていると決める。
- 酸化数がすべて異なることから、残りのイオンを2価と決める。
- 無色で、操作1〜3 で沈殿せず、操作4 では溶けるか白色の沈殿として残り、銀・アルミニウムと周期も族も違う2価のイオンを、第5周期までから探す。
- 電子殻の数でイオン半径を比べ、C<B<A の順に当てはめる。
解答




解答をテキストで読む
問1
錯イオンでは、金属イオンのまわりに、非共有電子対をもつ分子や陰イオン(配位子)が配位結合している(下の図)。配位結合は、結合に使う電子対を片方の原子だけが提供する結合で、できてしまえばふつうの共有結合と区別できない。
・ア:アンモニアの窒素の価電子5個のうち、3個は水素との共有電子対に使われ、残りの2個が非共有電子対(1組)になっている。配位子に必要なのはこの非共有電子対
・イ:非共有電子対を金属イオンに提供してできる結合は配位結合
・ウ:配位結合してできたイオンは錯イオン。語群の「錯塩」は、錯イオンを含む塩($\ce{[Cu(NH3)4]SO4}$ など)のことで、イオンではない
・配位子の例は $\ce{NH3}$・$\ce{H2O}$(中性の分子)と $\ce{OH-}$・$\ce{CN-}$・$\ce{Cl-}$(陰イオン)。どれも非共有電子対をもつ
答(ア) 非共有電子対(1点)
答(イ) 配位結合(1点)
答(ウ) 錯イオン(1点)
問2
電子の総数を変えずに、各原子が希ガスの電子配置になるように書く。アンモニアは窒素の価電子5個と水素3個の電子で合計8個。窒素のまわりには共有電子対3組と非共有電子対1組で8個がそろっている。水素イオン $\ce{H+}$ は電子を1個ももたないので、窒素の非共有電子対を水素イオンと共有する形で結合する(下の図)。
・できたアンモニウムイオンの電子は8個のまま。中性の窒素1個と水素4個の価電子の合計9個より1個少ないので、全体の電荷は $+1$
・窒素のまわりは共有電子対が4組になり、形は正四面体形。4本の N−H 結合のうち、どれが配位結合だったかは区別できない(4本とも同じ結合になる)。水と水素イオンからオキソニウムイオン $\ce{H3O+}$ ができるのも同じしくみ
答 上の図の反応式(電子式)(3点)
問3
銅(Ⅱ)イオンを含む水溶液(青色)に、アンモニア水を加えていく(下の図)。
アンモニアは水と反応して $\ce{OH-}$ を生じる。少量なら、これが銅(Ⅱ)イオンと結びついて淡い青色(青白色)の水酸化銅(Ⅱ)が沈殿する。
$$\ce{NH3 + H2O <=> NH4+ + OH-}$$
$$\ce{Cu^2+ + 2OH- -> Cu(OH)2}$$
アンモニア水を過剰に加えると、アンモニアが配位子として銅(Ⅱ)イオンに4個配位結合し、テトラアンミン銅(Ⅱ)イオンになって溶ける。この錯イオンは正方形で、深い青色(深青色)。
$$\ce{Cu(OH)2 + 4NH3 -> [Cu(NH3)4]^2+ + 2OH-}$$
水酸化銅(Ⅱ)を空気中で穏やかに加熱すると、水がとれて黒色の酸化銅(Ⅱ)になる。
$$\ce{Cu(OH)2 -> CuO + H2O}$$
・銅の酸化物は2つ。酸化銅(Ⅱ) $\ce{CuO}$ は黒色、酸化銅(Ⅰ) $\ce{Cu2O}$ は赤色(さらに強く加熱すると $\ce{CuO}$ から $\ce{Cu2O}$ になる)。問題文の「黒色」で $\ce{CuO}$ と決まる
・過剰のアンモニア水で錯イオンになって溶ける水酸化物(酸化物)は、 $\ce{Cu^2+}$(深青色)・$\ce{Zn^2+}$(無色)・$\ce{Ag+}$(無色)・$\ce{Ni^2+}$ の4つ。問5 でもこの知識を使う
答(エ) $\ce{Cu(OH)2}$(水酸化銅(Ⅱ))(2点)
答(オ) $\ce{[Cu(NH3)4]^2+}$(テトラアンミン銅(Ⅱ)イオン)(2点)
答(カ) $\ce{CuO}$(酸化銅(Ⅱ))(2点)
問4
問3 の反応式の係数を追うと、銅(Ⅱ)イオン1個から水酸化銅(Ⅱ)1個、そこから酸化銅(Ⅱ)1個ができる。係数の比=モルの比なので、銅を含む物質の物質量は変わらない(下の図)。
酸化銅(Ⅱ)の式量は $63.5+16.0=79.5$。まず 0.59 g を物質量に直す(1 mol あたりの g で割る)。
$$\dfrac{0.59}{79.5}=7.42\times10^{-3}\ \mathrm{mol}\quad\text{(酸化銅(Ⅱ)=沈殿した銅(Ⅱ)イオンの物質量)}$$
これが元の銅(Ⅱ)イオンの98.5 % にあたるので、0.985 で割ると元の銅(Ⅱ)イオンの物質量になる。
$$\dfrac{7.42\times10^{-3}}{0.985}=7.53\times10^{-3}\ \mathrm{mol}\quad\text{(元の銅(Ⅱ)の化合物の物質量)}$$
選択肢はどれも銅を1つ含むので、元の化合物も $7.53\times10^{-3}$ mol。1.20 g をこれで割ると、1 mol あたりの g(式量)になる。
$$\dfrac{1.20}{7.53\times10^{-3}}=159$$
選択肢の無水物の式量は、塩化銅(Ⅱ) $\ce{CuCl2}$ 134.5、硝酸銅(Ⅱ) $\ce{Cu(NO3)2}$ 187.5、硫酸銅(Ⅱ) $\ce{CuSO4}$ 159.5、酢酸銅(Ⅱ) $\ce{Cu(CH3COO)2}$ 181.5、炭酸銅(Ⅱ) $\ce{CuCO3}$ 123.5。最も近いのは硫酸銅(Ⅱ)。
答 $\ce{CuSO4}$(5点)
問5
まず操作1〜4 の結果を1つずつ読む(下の図)。
・操作2:希塩酸で白色の沈殿をつくる陽イオンは $\ce{Ag+}$($\ce{AgCl}$)と $\ce{Pb^2+}$($\ce{PbCl2}$)。操作3 で希硫酸を加えても沈殿しないので、 $\ce{PbSO4}$ をつくる $\ce{Pb^2+}$ は入っていない。よって $\ce{Ag+}$ が入っている
・操作1:酸性で硫化水素を通じて黒色の硫化物になるのは、イオン化傾向の小さい $\ce{Ag+}$・$\ce{Cu^2+}$・$\ce{Pb^2+}$ などだけ。 $\ce{Ag2S}$ の黒色沈殿で、操作2 と合う($\ce{Cu^2+}$ は青色なので、無色透明の溶液には入っていない)
・操作4:少量のアンモニア水で出る褐色の沈殿は酸化銀 $\ce{Ag2O}$($\ce{AgOH}$ は常温で分解して $\ce{Ag2O}$ になる)。過剰に加えると $\ce{[Ag(NH3)2]+}$ になって溶ける。過剰に加えても残る白色の沈殿は、アンモニアと錯イオンをつくらない金属の水酸化物。無色のイオンで、水酸化物が白色で残る3価のイオンは $\ce{Al^3+}$($\ce{Al(OH)3}$)
・操作3:希硫酸で沈殿しないので、 $\ce{Ca^2+}$・$\ce{Ba^2+}$・$\ce{Sr^2+}$・$\ce{Pb^2+}$ は入っていない
ここまでで $\ce{Ag+}$(酸化数 $+1$)と $\ce{Al^3+}$(酸化数 $+3$)が決まった。「A〜C はすべて酸化数が異なる」ので、残りの1つは酸化数 $+2$ のイオン。次の条件をすべて満たすものを探す(下の図)。
・無色透明の溶液なので、色のあるイオン($\ce{Cu^2+}$・$\ce{Fe^2+}$・$\ce{Ni^2+}$ など)ではない
・操作1〜3 で沈殿せず、操作4 では溶けるか、残るなら白色($\ce{Al(OH)3}$ といっしょに残る)
・$\ce{Ag}$(第5周期・11族)・$\ce{Al}$(第3周期・13族)と周期も族も違い、第5周期まで
・$\ce{Mg^2+}$ は $\ce{Al}$ と同じ第3周期、 $\ce{Cd^2+}$ は $\ce{Ag}$ と同じ第5周期、 $\ce{Ca^2+}$ は希硫酸で $\ce{CaSO4}$ が沈殿するので外れる
・$\ce{Zn^2+}$(第4周期・12族)は、酸性では硫化物にならず、塩化物・硫酸塩も水に溶ける。アンモニア水を少量加えると白色の $\ce{Zn(OH)2}$ が出るが、過剰に加えると $\ce{[Zn(NH3)4]^2+}$ になって溶けるので、残る白色の沈殿は $\ce{Al(OH)3}$ だけになり、操作4 と合う
・$\ce{Be^2+}$(第2周期・2族)も、硫化物・塩化物・硫酸塩はどれも沈殿せず、水酸化物 $\ce{Be(OH)2}$ はアンモニア水に溶けない白色の沈殿で、 $\ce{Al(OH)3}$ といっしょに白色の沈殿として残るので、操作4 と合う
最後にイオン半径で A〜C を決める。イオン半径は、まず電子殻の数が多いほど大きい。 $\ce{Ag+}$ は K・L・M・N殻の4つ、 $\ce{Zn^2+}$ は K・L・M殻の3つ、 $\ce{Al^3+}$ は K・L殻の2つ(Ne と同じ電子配置)、 $\ce{Be^2+}$ は K殻の1つ(He と同じ電子配置)なので、半径は $\ce{Ag+}$ > $\ce{Zn^2+}$ > $\ce{Al^3+}$ > $\ce{Be^2+}$。C<B<A に当てはめると、3つ目が $\ce{Zn^2+}$ なら A が $\ce{Ag+}$・B が $\ce{Zn^2+}$・C が $\ce{Al^3+}$、3つ目が $\ce{Be^2+}$ なら A が $\ce{Ag+}$・B が $\ce{Al^3+}$・C が $\ce{Be^2+}$ になる。
問題文の条件をすべて使っても、この2組が残り、1つには決まらない。高校の系統分析でふつう扱うのは $\ce{Zn^2+}$ の組なので、答えはこちらを先に書き、もう1組を併記しておく。
(B・C は次の2組のどちらも条件を満たす)
答 $\mathbf{A}=\ce{Ag+}$(3点)
答 $\mathbf{B}=\mathrm{Zn}^{2+}$、$\mathbf{C}=\mathrm{Al}^{3+}$(B が $\ce{Al^3+}$、C が $\ce{Be^2+}$ の組も条件を満たす)(5点)
出題意図
問1 非共有電子対・配位結合・錯イオンという錯イオンの基本の言葉を、正しく使い分けられるか
問2 アンモニアの窒素の非共有電子対が水素イオンに配位結合してアンモニウムイオンになることを、電子式で表せるか
問3 銅(Ⅱ)イオンにアンモニア水を少量・過剰に加えたときの変化と、水酸化銅(Ⅱ)を加熱してできる物質を、色とあわせて答えられるか
問4 銅の数が最後まで変わらないことから、酸化銅(Ⅱ)の質量を元の化合物の式量に結びつけられるか
問5 4つの操作の結果から2つのイオンを決め、酸化数・周期と族・イオン半径の条件で残りのイオンを絞り込めるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 22点 | 18点 |
| 目標時間 | 12分 | 15分 |
前半は錯イオンと銅のアンモニア錯体の定番の知識で、ここは必ず解き切りたい。
差がつくのは問5 で、アンモニア水で溶ける水酸化物と溶けない水酸化物、酸性で硫化物になるイオンを表で覚えていれば、操作の結果から2つのイオンはすぐ決まる。
残りの1つは「操作の結果と矛盾しない無色の2価のイオン」を周期表の上で探すだけ。
知識を条件と組み合わせて絞り込む練習を積んでおくこと。
差がつく所・失点しやすい所
- 問5:操作4 の「過剰のアンモニア水でも残る白色の沈殿」から、溶ける $\ce{Zn(OH)2}$ と溶けない $\ce{Al(OH)3}$ を区別し、そのうえで酸化数・周期と族の条件から3つ目の2価のイオンを探すという発想に行き着けるか。アンモニア水との反応を表で覚えていないと最初の判断で崩れ、8点がまとめて落ちる。
- 問4:酸化銅(Ⅱ)の物質量を0.985 で割り戻して元の式量を求められるか。銅の数が変わらないことに気づけば、計算はすぐ終わる。
2012年九州大学化学
第3問 解答・解説
第3問は理論化学(酸化・還元と電池・電気分解)の問題です。
テーマは『硫酸水溶液の電気分解』『硫酸の2段階目の電離』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問3に答えよ。
表1の①〜③に示す電極A、電極Bの組み合わせがある。この電極Aと電極Bを10 mLの0.1 mol/L硫酸水溶液中に電極間距離が1 cmとなるように浸した。次に、電極Aを陽極、電極Bを陰極として電極間に直流電源を用いて電圧をかけた。
表1.電極の組み合わせ.
| ① | ② | ③ | |
|---|---|---|---|
| 電極A | Pt | Cu | Zn |
| 電極B | Pt | Pt | Pt |
問1. ①の電極の組み合わせで電極間に2.0 Vの電圧を1時間かけると、18.0 Cの電気量が流れた。このとき、電極Aと電極Bから発生した気体の物質量の合計を有効数字2桁で答えよ。
問2. ②の電極の組み合わせで電極間に1.0 Vの電圧を1時間かけると、27.02 Cの電気量が流れた。反応後、電極の重量は、電極Aが8.89 mg減少し、電極Bが2.54 mg増加した。電極Aと電極Bで起こった反応のイオン反応式をすべて書け。このとき、電極Aと電極Bから気体が発生する場合はその気体の物質量を有効数字2桁で答えよ。ただし、気体が発生しない場合は「無し」と答えよ。また、反応後の溶液中の金属イオン濃度と水素イオン濃度を有効数字2桁で答えよ。なお、水素イオン濃度を求める場合、硫酸の1段階目の電離は完全に進行し、2段階目の電離定数は0.01 mol/Lとして計算せよ。
問3. ①と③の電極の組み合わせで電極間に0.1 Vの電圧をそれぞれ1時間かけた。このとき、電極Aで起こる反応のイオン反応式を書け。ただし、反応が起こらない場合は「無し」と答えよ。
解答の方針
【問1の方針】
電気分解の量計算は、まず電子の物質量を求める。白金どうしの硫酸水溶液では水の電気分解になり、陽極の酸素は電子の4分の1、陰極の水素は電子の2分の1だけできる(下の図)。


- 陽極は白金で溶けず、ハロゲン化物イオンも無いので水が反応して酸素、陰極は水素イオンが反応して水素と決める。
- 電気量をファラデー定数で割って、流れた電子の物質量を求める。
- 電子1 mol あたり酸素 $\dfrac14$ mol・水素 $\dfrac12$ mol、合わせて $\dfrac34$ mol の気体ができるので、電子の物質量に $\dfrac34$ をかける。
【問2 前半の方針】
陽極が銅なら板が溶ける。陰極は本来なら銅(Ⅱ)イオンが先に反応するが、最初の液には銅(Ⅱ)イオンが無い。両極の質量の変化から電子の物質量を逆算して、陰極で何が起きたかを決める(下の図)。


- 流れた電子の物質量を電気量から求める。
- 陽極の銅の減少量を物質量に直し、その2倍が流れた電子と一致することから、陽極では銅が溶けるだけで気体は出ないと決める。
- 陰極の増加量を析出した銅の物質量に直し、銅の析出に使われた電子を求める。残りの電子は水素イオンの還元に使われたとして、水素の物質量を求める。
- 溶け出した銅(Ⅱ)イオンから析出した分を引き、液の体積で割って金属イオン濃度を求める。
【問2 後半の方針】
水素が1個できると、水素イオンは2個減る。まず電気分解で減った水素イオンを引き、そのあとで硫酸の2段階目の電離を考える。2段階目の電離定数は0.01と大きく、近似できないので2次方程式を解く(下の図)。


- 硫酸の1段階目は完全に電離するので、水素イオンと硫酸水素イオンが0.10 mol/L ずつあるとする。
- 水素の発生で減った水素イオン(水素の2倍)を濃度に直して引き、2段階目の電離の前の水素イオン濃度を求める。
- 2段階目で電離する硫酸水素イオンを $x$ mol/L として反応前・変化量・平衡時を書き、電離定数の式に入れる。
- 2次方程式を解いて $x$ を求め、水素イオン濃度を求める。
【問3の方針】
白金どうしで水を電気分解するには、燃料電池の起電力より大きな電圧が要る。亜鉛と白金を希硫酸に浸すと亜鉛が負極の電池になり、亜鉛を電源の+につなぐ向きはその電池と同じ(下の図)。


- ① 0.1 V が水の分解に必要な電圧に足りるかを考え、反応の有無を決める。
- ③ 亜鉛と白金でできる電池の負極を決め、電源のつなぎ方がその電池の電子の流れと同じ向きかを確かめて、電極Aの反応を書く。
解答




解答をテキストで読む
問1
陽極は白金なので板は溶けず、ハロゲン化物イオンも無く、硫酸イオンも酸化されないので、水が酸化されて酸素が発生する。陰極では、溶液中の陽イオンは水素イオンだけなので、水素イオンが還元されて水素が発生する(下の図)。
$$\text{陽極}\quad\ce{2H2O -> O2 + 4H+ + 4e-}\qquad\text{陰極}\quad\ce{2H+ + 2e- -> H2}$$
まず、流れた電子の物質量を求める。電気量をファラデー定数で割って
$$\dfrac{18.0}{9.65\times10^4}=1.865\times10^{-4}\ \mathrm{mol}\quad\text{(流れた電子の物質量)}$$
電子1 mol が流れると、陽極で酸素 $\dfrac14$ mol、陰極で水素 $\dfrac12$ mol ができるので、気体は合わせて $\dfrac14+\dfrac12=\dfrac34$ mol。
$$1.865\times10^{-4}\times\dfrac34=1.399\times10^{-4}\fallingdotseq1.4\times10^{-4}\ \mathrm{mol}$$
答 $1.4\times10^{-4}$ mol(3点)
問2
まず、流れた電子の物質量を求める。
$$\dfrac{27.02}{9.65\times10^4}=2.80\times10^{-4}\ \mathrm{mol}\quad\text{(流れた電子の物質量)}$$
陽極は銅で、C・Pt・Au 以外の板なので、板が溶ける反応で決まる。
$$\ce{Cu -> Cu^2+ + 2e-}$$
電極Aの減少8.89 mg は溶けた銅の質量なので
$$\dfrac{8.89\times10^{-3}}{63.5}=1.40\times10^{-4}\ \mathrm{mol}\quad\text{(溶けた銅の物質量)}$$
銅1 mol が溶けると電子2 mol を放出するので、放出された電子は $2\times1.40\times10^{-4}=2.80\times10^{-4}$ mol。流れた電子と一致するので、陽極では銅が溶けるだけで、水は反応せず気体は出ない。
陰極では、イオン化傾向の小さい銅(Ⅱ)イオンが先に反応するはずだが、最初の液は硫酸水溶液で、銅(Ⅱ)イオンは陽極から溶け出した分しか無い(下の図)。そこで、電極Bの増加量から析出した銅の物質量を求めて確かめる。
$$\dfrac{2.54\times10^{-3}}{63.5}=4.0\times10^{-5}\ \mathrm{mol}\quad\text{(析出した銅の物質量)}$$
銅の析出に使われた電子は $2\times4.0\times10^{-5}=0.80\times10^{-4}$ mol で、流れた電子 $2.80\times10^{-4}$ mol より少ない。陽極から届いた電子は陰極ですべて受け取られるので、残りの $2.00\times10^{-4}$ mol は水素イオンの還元に使われ、水素が発生している(下の図)。
$$\ce{Cu^2+ + 2e- -> Cu}\qquad\ce{2H+ + 2e- -> H2}$$
水素は電子2 mol で1 mol できるので
$$\dfrac{2.00\times10^{-4}}{2}=1.0\times10^{-4}\ \mathrm{mol}\quad\text{(発生した水素の物質量)}$$
反応後の液に残る金属イオンは銅(Ⅱ)イオンだけで、溶け出した分から析出した分を引いた $1.40\times10^{-4}-0.40\times10^{-4}=1.00\times10^{-4}\ \mathrm{mol}$ 。液は10 mL=0.010 L なので
$$\dfrac{1.00\times10^{-4}}{0.010}=1.0\times10^{-2}\ \mathrm{mol/L}\quad\text{(銅(Ⅱ)イオン濃度)}$$
答(電極Aの反応) $\ce{Cu -> Cu^2+ + 2e-}$(2点)
答(電極Bの反応) $\ce{Cu^2+ + 2e- -> Cu}$ 、 $\ce{2H+ + 2e- -> H2}$(3点)
答(電極Aの気体) 無し(1点)
答(電極Bの気体) 水素 $1.0\times10^{-4}$ mol(3点)
答(金属イオン濃度) $\ce{Cu^2+}$ $1.0\times10^{-2}$ mol/L(2点)
次に、水素イオン濃度を求める。硫酸の1段階目は完全に電離するので、0.10 mol/L の硫酸から、水素イオンと硫酸水素イオンが0.10 mol/L ずつできる。
$$\ce{H2SO4 -> H+ + HSO4-}$$
陰極で水素が $1.0\times10^{-4}$ mol 発生したので、減った水素イオンはその2倍の $2.0\times10^{-4}$ mol。濃度にすると
$$\dfrac{2.0\times10^{-4}}{0.010}=0.020\ \mathrm{mol/L}\quad\text{(減った水素イオン)}$$
2段階目の電離の前の水素イオンは $0.10-0.020=0.080$ mol/L。硫酸水素イオンは0.10 mol/L のまま(水の量の変化は小さいので、液は10 mL のままとする)。
2段階目で電離する硫酸水素イオンを $x$ mol/L とする。水素イオンは最初から0.080 mol/L あるので、平衡時は $0.080+x$ になる(下の図)。
電離定数は0.01 mol/L と大きく、近似はできないので、そのまま式に入れる。
$$\dfrac{(0.080+x)\,x}{0.10-x}=0.01$$
$$x^2+0.090x-1.0\times10^{-3}=0\qquad(x-0.010)(x+0.10)=0$$
$x>0$ より $x=0.010$。よって水素イオン濃度は
$$0.080+0.010=0.090=9.0\times10^{-2}\ \mathrm{mol/L}$$
答(水素イオン濃度) $9.0\times10^{-2}$ mol/L(2点)
問3
① 白金どうしの硫酸水溶液で水を電気分解すると、陽極で酸素、陰極で水素が発生する。これは、水素と酸素の燃料電池の反応をちょうど逆向きに進めることなので、燃料電池の起電力(約1.2 V)より大きな電圧をかけないと進まない。問1 の2.0 V では水が分解したが、0.1 V ではまったく足りないので、反応は起こらない(下の図)。
③ 亜鉛と白金を希硫酸に浸すと、イオン化傾向の大きい亜鉛が負極、白金が正極の電池になり、電子は亜鉛から導線を通って白金へ流れる。亜鉛を電源の+(陽極)につなぐと、電源が電子を押す向きはこの電池の電子の流れと同じ向きなので、0.1 V でも反応が進み、陽極の亜鉛が溶ける。陰極の白金では水素イオンが還元されて水素が発生する。
答(①) 無し(3点)
答(③) $\ce{Zn -> Zn^2+ + 2e-}$(3点)
別解
問1 (電子を1 mol と置いて係数をたどる)電子が1 mol 流れると、酸素は $\dfrac14$ mol、水素は $\dfrac12$ mol で、気体は合わせて0.75 mol。流れた電子は $\dfrac{18.0}{9.65\times10^4}$ mol なので、気体は $\dfrac{18.0}{9.65\times10^4}\times0.75\fallingdotseq1.4\times10^{-4}$ mol。本解と同じ。
出題意図
問1 白金電極での硫酸水溶液の電気分解の電極反応を決め、流れた電子の物質量から両極の気体の物質量を求めることができるか
問2 前半 陽極が銅のときは板が溶けることを判断し、両極の質量の変化から電子の物質量を逆算して、陰極で銅の析出と水素の発生が両方起きたことを読み取れるか
問2 後半 電気分解で減った水素イオンを差し引いたうえで、硫酸の2段階目の電離平衡を近似せずに解くことができるか
問3 電極と電圧の組み合わせから、反応が起こるかどうかを判断できるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや難 | |
| 目標得点 | 18点 | 15点 |
| 目標時間 | 15分 | 15分 |
2012年の化学の合否を分けた、やや難の大問。
酸化還元・電気分解が大問まるごとで出た、九大では珍しい年で、前半は「陽極は板 → ハロゲン → 水、陰極は銀 → 銅 → 水素イオン」で反応を決め、まず電子の物質量を求める流れで必ず取り切ること。
差がつくのは問2 の後半で、水素1個で水素イオンが2個減ること、硫酸の2段階目は電離定数が大きいので近似せずに2次方程式を解くこと、の2点を押さえていれば解ける。
前半を確実に取ったうえで、後半は時間を見て取りに行こう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2 後半(反応後の金属イオン濃度と水素イオン濃度):この大問で大きく差がつく所。水素1個で水素イオンが2個減ることを押さえたうえで、残った水素イオンが最初からある状態から硫酸の2段階目の電離を近似せずに解く、という発想に行き着けるか。硫酸を「2価の強酸」として扱う受験生や、2段階目を無視する受験生が多い。析出した銅を引き忘れる金属イオン濃度と合わせて、4点で差がつく。
- 問2 前半(陰極の反応):陰極では銅の析出だけと決めつけず、両極の質量の変化から電子の物質量を比べて、水素も発生したと読み取れるか。銅だけと書くと、電極Bの反応・気体・金属イオン濃度が続けて崩れる。
- 問3:0.1 V という低い電圧で、白金どうしでは水が分解せず、亜鉛は電池の負極と同じ向きなので溶ける、と判断できるか。高校の教科書にはほとんど書かれていない見方で、ここは落としても合否には響きにくい。
2012年九州大学化学
第4問 解答・解説
第4問は理論化学(物質の三態・気体の法則)の問題です。
テーマは『実在気体』『ファンデルワールスの式』。
問題


問題文をテキストで読む
文中の $\boxed{\text{ ア }}$ 〜 $\boxed{\text{ オ }}$ に適切な数字および記号を記せ。なお、 $\boxed{\text{ ウ }}$ 〜 $\boxed{\text{ オ }}$ は有効数字3桁で答えよ。
実在気体1.00 molが占める体積 $V$ の、同じ圧力・温度における理想気体1.00 molが占める体積 $V_i$ に対する比を $Z$ とすると、
$Z=\dfrac{V}{V_i}$
と表される。また、 $V_i$ を気体定数 $R$ 、温度 $T$ 、圧力 $P$ で表すと $\boxed{\text{ ア }}$ となるので、上式は
$Z=\boxed{\text{ イ }}$
と書き換えることができる。したがって、1.00 molの理想気体とみなせる気体であれば気体の種類に関わらず $Z$ の値は1.00になる。
クリプトンおよびプロパンの標準状態における体積を測定すると、それぞれ22.4 Lおよび21.8 Lであった。これらより、それぞれの $Z$ の値はクリプトンが $\boxed{\text{ ウ }}$ 、プロパンが $\boxed{\text{ エ }}$ と計算できる。
実在気体の状態方程式の1つとして次の式で表されるファンデルワールスの式がある。
$\left(P+\dfrac{n^2a}{V^2}\right)(V-nb)=nRT$
ここで、 $n$ は物質量、 $a$ および $b$ はファンデルワールス定数である。実在気体は理想気体と異なり、気体分子同士の引力の原因となる分子間力が存在する。また、実在気体では気体分子自身の体積が無視できないため、その分だけ気体分子が自由に動ける体積が減少する。したがってプロパンのファンデルワールス定数を $a=8.78\ \mathrm{m^6\cdot Pa/mol^2}$ および $b=8.45\times10^{-2}\ \mathrm{L/mol}$ とすると、1分子のプロパンが占める体積は $\boxed{\text{ オ }}$ $\mathrm{nm^3}$ と計算できる。
解答の方針
【ア〜エの方針】
理想気体は、分子間力と分子自身の大きさを無視した気体。 $Z$ は理想気体と比べた体積の比なので、理想気体の体積は状態方程式で表す。プロパンが小さいのは、分子間力で引き合って縮んだから(下の図)。


- (ア)1.00 mol の理想気体の状態方程式 $PV_i=RT$ を $V_i$ について解く。
- (イ) $Z=\dfrac{V}{V_i}$ に(ア)を代入する。
- (ウ・エ)(イ)の式に標準状態の 0 ℃(273 K)・ $1.013\times10^5$ Pa と、測定した体積を入れる。
【オの方針】
ファンデルワールスの式の $(V-nb)$ は、容器の体積から分子自身の体積を引いた「分子が自由に動ける体積」。 $n$ mol で $nb$ なので、 $b$ は 1 mol の分子が占める体積(下の図)。


- $b$ を 1 mol の分子自身の体積と読み、アボガドロ定数で割って1分子の体積にする。
- L を nm³ に直す( $1\ \mathrm{L}=10^{-3}\ \mathrm{m^3}$ 、 $1\ \mathrm{m}=10^9\ \mathrm{nm}$ )。
解答


解答をテキストで読む
ア〜エ
1.00 mol の理想気体の状態方程式は $PV_i=RT$ なので
$$V_i=\dfrac{RT}{P}$$
答(ア) $\dfrac{RT}{P}$(2点)
これを $Z=\dfrac{V}{V_i}$ に代入すると
$$Z=\dfrac{V}{\ \dfrac{RT}{P}\ }=\dfrac{PV}{RT}$$
答(イ) $\dfrac{PV}{RT}$(2点)
標準状態は 0 ℃(273 K)・ $1.013\times10^5$ Pa。(イ)の式に入れる(下の図)。
$$Z_{\mathrm{Kr}}=\dfrac{1.013\times10^5\times22.4}{8.31\times10^3\times273}=1.0002$$
$$Z_{\mathrm{C_3H_8}}=\dfrac{1.013\times10^5\times21.8}{8.31\times10^3\times273}=0.9734$$
クリプトンは単原子分子で分子間力が小さく、理想気体とほぼ同じ体積になる。プロパンは分子量が大きく分子間力が強いので、引き合って体積が理想気体より小さくなり、 $Z$ は1より小さい。
答(ウ) 1.00(2点)
答(エ) 0.973(2点)
オ
ファンデルワールスの式では、容器の体積 $V$ から $nb$ を引いた $(V-nb)$ が「分子が自由に動ける体積」。引いている $nb$ が分子自身の体積で、 $n$ mol で $nb$ なので、 $b$ は 1 mol の分子自身の体積(下の図)。
1 mol は $6.02\times10^{23}$ 個なので、プロパン1分子の体積は
$$\dfrac{b}{N_{\mathrm A}}=\dfrac{8.45\times10^{-2}}{6.02\times10^{23}}=1.404\times10^{-25}\ \mathrm{L}$$
$1\ \mathrm{L}=10^{-3}\ \mathrm{m^3}$ 、 $1\ \mathrm{m^3}=(10^9)^3\ \mathrm{nm^3}=10^{27}\ \mathrm{nm^3}$ より、 $1\ \mathrm{L}=10^{24}\ \mathrm{nm^3}$ 。よって
$$1.404\times10^{-25}\times10^{24}=1.404\times10^{-1}\ \mathrm{nm^3}$$
答(オ) $1.40\times10^{-1}$ nm³(2点)
別解
ウ・エ
標準状態の理想気体 1 mol の体積は22.4 L( $V_i=\dfrac{8.31\times10^3\times273}{1.013\times10^5}=22.4$ L)なので、 $Z=\dfrac{V}{V_i}$ のまま割ってもよい。クリプトンは $\dfrac{22.4}{22.4}=1.00$ 、プロパンは $\dfrac{21.8}{22.4}=0.9732$ で、どちらも答えは同じ(1.00・0.973)。
出題意図
- ア・イ:1.00 mol の理想気体の状態方程式から $V_i$ を表し、 $Z$ を圧力・体積・温度の式に書き換えられるか。
- ウ・エ:標準状態の値を入れて $Z$ を求め、 $Z$ が1より小さいことを分子間力の影響と結びつけられるか。
- オ:ファンデルワールスの式の $nb$ を分子自身の体積と読み、1分子の体積に直して単位を nm³ に換算できるか。
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 8点 | 8点 |
| 目標時間 | 5分 | 5分 |
実在気体は「分子間力」と「分子自身の体積」の2つがどう効くかを説明できれば、Z もファンデルワールスの式も怖くない。
重要問題集の「理想気体と実在気体」が完璧なら解ける大問。
10点の小さな大問なので、ア〜エを短い時間で取り切り、オは知っていれば書く、と割り切って時間をほかの大問に回すこと。
差がつく所・失点しやすい所
- オ:差がつくとしたらここ。ファンデルワールスの式の $nb$ を分子自身の体積と読み、 $b$ を 1 mol の分子の体積としてアボガドロ定数で割れるか。そのうえで L を nm³ に直す換算( $1\ \mathrm{L}=10^{24}\ \mathrm{nm^3}$ )で桁を誤ると、2点を落とす。
2012年九州大学化学
第5問 解答・解説
第5問は有機化学の問題です。
テーマは『エステルの構造決定』『核磁気共鳴』。
問題


問題文をテキストで読む
化合物Aの構造決定に関する次の(1)〜(9)の文章を読み、問1〜問5に答えよ。なお、構造式は右の例にならって記せ。光学異性体は区別しなくてよい。
(1) 炭素と水素と酸素からなる分子量354の化合物Aに水酸化ナトリウム水溶液を加えて加水分解したのち、希塩酸を加えて酸性にしたところ、化合物B、化合物Cおよび化合物Dが1:1:1のモル比で得られた。
(2) 化合物Bの元素分析を行ったところ、炭素と水素の質量%はそれぞれ78.7 %、8.2 %であった。
(3) 化合物Cは化合物Bと同じ分子式を持つ化合物であり、化合物Bおよび化合物Cはともにベンゼン環を有することが分かった。
(4) 化合物Bおよび化合物Cを金属ナトリウムと反応させると、どちらも水素を発生した。
(5) 化合物Bおよび化合物Cに塩化鉄(Ⅲ)水溶液を加えると、化合物Cのみが呈色した。
(6) 化合物Bを過マンガン酸カリウム水溶液で十分に酸化すると化合物Eが生じた。この化合物Eを加熱すると分子内で反応が進行し化合物Fが得られた。
(7) 核磁気共鳴分光装置により有機化合物の測定を行うと、有機化合物中の物理的・化学的性質の異なる水素原子がそれぞれ何種類存在するかを観測することができる。例えば右に示すクロロベンゼンの測定を行うと、 $\mathrm{H_a}$ 、 $\mathrm{H_b}$ および $\mathrm{H_c}$ という3種類の水素原子が存在し、その存在比率は2:2:1であることが分かる。化合物Cの核磁気共鳴分光測定を行い、化合物Cのベンゼン環に直接結合した水素原子を分析したところ、異なる性質を持つ水素原子が2種類観測され、2種類の水素原子の存在比率は1:1であった。
(8) 化合物Dは2つのカルボキシル基を有しており、ヘキサメチレンジアミンと縮合重合するとナイロン66を生じた。
(9) 化合物Dは分子式 $\ce{C6H10}$ の化合物Gを過マンガン酸カリウム水溶液と反応させることによっても得られた。
問1. 化合物Bの分子式を記せ。
問2. (3)〜(5)において化合物Bおよび化合物Cが示したのと同じ性質をもつ構造異性体は、化合物Bおよび化合物Cも含めてそれぞれ何種類存在するか答えよ。
問3. 化合物Eから化合物Fを生じる反応を化学反応式で表せ。なお、化合物Eと化合物Fは構造式で示せ。
問4. 化合物Gの構造式を記せ。
問5. 化合物Aの構造式を記せ。
解答の方針
【問1の方針】
質量%を原子量で割れば原子の数の比になる。B と C は同じ分子式で、D は (8) からアジピン酸と決まるので、A の分子量354と合うかで分子式を確かめられる。
- 酸素の質量%を100から引いて求め、C・H・O の質量%をそれぞれの原子量で割って組成式を求める。
- B・C・D の分子量の和から水2分子分を引いた値が A の分子量354になることを確かめ、分子式を組成式と同じと決める。
【問2の方針】
ナトリウムで水素が出るのでヒドロキシ基をもつ。塩化鉄(Ⅲ)で呈色するのは OH がベンゼン環に直接付いたフェノール類だけなので、C はフェノール類、B は側鎖に OH が付いたアルコール(下の図)。


- B と同じ性質のもの(芳香族アルコール)を、側鎖が1つ(炭素2個)と、側鎖が2つ($\ce{-CH2OH}$ と $\ce{-CH3}$ のオルト・メタ・パラ)に分けて数える。
- C と同じ性質のもの(フェノール類)を、エチル基が1つ(オルト・メタ・パラ)と、メチル基が2つに分けて数える。
- メチル基が2つのときは、OH の位置を1番として残りの2つの位置の組み合わせを重ならないように数える。
【問3の方針】
過マンガン酸カリウムで十分に酸化すると、ベンゼン環に付いた側鎖は炭素の数によらずカルボキシ基になる。加熱だけで分子内で水が取れるのは、2つのカルボキシ基がオルトの位置にあるときだけ(下の図)。


- 加熱で分子内の反応が進むことから、E をオルトの位置に2つのカルボキシ基をもつフタル酸と決める。
- B は側鎖を2つオルトの位置にもつ芳香族アルコールなので、o-メチルベンジルアルコールと決める。
- E の2つのカルボキシ基から水が1分子取れて五員環の無水フタル酸 F ができる反応式を、構造式で書く。
【問4の方針】
ヘキサメチレンジアミンとナイロン66 になるのはアジピン酸。過マンガン酸カリウムで二重結合が切れて両端が COOH になるので、G は環の中に二重結合をもつシクロヘキセン(下の図)。


- (8) から D をアジピン酸 $\ce{HOOC-(CH2)4-COOH}$ と決める。
- $\ce{C6H10}$ の不飽和度2を「環1つと二重結合1つ」と読み、アジピン酸の両端の炭素を二重結合でつないで環に戻した G を書く。
【問5の方針】
ベンゼン環に直接付いた H が2種類で1:1になるのは、2つの置換基がパラの位置にあるときだけ。2,6-ジメチルフェノールや3,5-ジメチルフェノールも2種類だが、比は2:1になる(下の図)。


- C のフェノール類9種類のうち、ベンゼン環の H が2種類・1:1になるものを選び、C を p-エチルフェノールと決める。
- D(アジピン酸)の2つのカルボキシ基を、B と C のヒドロキシ基とそれぞれエステル結合でつなぎ、A を書く。
解答




解答をテキストで読む
問1
O の質量%は $100-78.7-8.2=13.1$ %。原子の数の比は、質量%をそれぞれの原子量で割って
$$\mathrm{C}:\mathrm{H}:\mathrm{O}=\dfrac{78.7}{12.0}:\dfrac{8.2}{1.00}:\dfrac{13.1}{16.0}$$
$$=6.56:8.2:0.819=8.0:10.0:1$$
組成式は $\ce{C8H10O}$(式量122)。
D は (8) から2価のカルボン酸のアジピン酸 $\ce{HOOC-(CH2)4-COOH}$(分子量146、問4)。A は B・C・D が1つずつエステル結合2つでつながったもので、加水分解には水が2分子入るので、分子式が $\ce{C8H10O}$ なら
$$122+122+146-2\times18.0=354$$
となり、A の分子量と一致する。よって B の分子式は組成式と同じ。
答 $\ce{C8H10O}$(2点)
問2
B と C はベンゼン環をもち、ナトリウムと反応して水素が発生するのでヒドロキシ基をもつ( $\ce{C8H10O}$ のエーテルはナトリウムと反応しない)。塩化鉄(Ⅲ)水溶液で呈色するのは OH がベンゼン環に直接付いたフェノール類なので、C はフェノール類、呈色しない B は OH が側鎖に付いたアルコール(下の図)。
ベンゼン環 $\ce{C6H5-{}}$ または $\ce{-C6H4-{}}$ を除くと、残りは炭素2個と OH。
B と同じ性質(芳香族アルコール)は、側鎖1つなら2-フェニルエタノールと1-フェニルエタノールの2つ、側鎖2つ( $\ce{-CH2OH}$ と $\ce{-CH3}$ )ならオルト・メタ・パラの3つで、合わせて5種類。1-フェニルエタノールは不斉炭素をもつが、光学異性体は区別しないので1つと数える(下の図)。
答(化合物 B) 5種類(2点)
C と同じ性質(フェノール類)は、OH 以外がエチル基1つならオルト・メタ・パラの3つ。メチル基2つなら、OH の付いた炭素を1番として、メチル基の位置の組み合わせが2,3・2,4・2,5・2,6・3,4・3,5の6つ。合わせて $3+6=9$ 種類(下の図)。
答(化合物 C) 9種類(2点)
問3
B(芳香族アルコール5種類のどれか)を過マンガン酸カリウムで十分に酸化すると、ベンゼン環に付いた側鎖はどれもカルボキシ基になる。側鎖が1つの2-フェニルエタノールと1-フェニルエタノールは安息香酸に、メタ・パラのメチルベンジルアルコールはイソフタル酸・テレフタル酸になり、どれも加熱だけでは分子内で水が取れない。2つのカルボキシ基が隣り合うオルトの位置にあるフタル酸だけが、加熱で分子内で水が取れて五員環の無水フタル酸になる。よって E はフタル酸、F は無水フタル酸で、B は o-メチルベンジルアルコール(下の図)。
E の2つのカルボキシ基から水が1分子取れて F ができる(下の図)。
答 $\ce{C6H4(COOH)2 -> C6H4(CO)2O + H2O}$(E・F の構造式は上の図)(5点)
問4
(8) で D はヘキサメチレンジアミンと縮合重合してナイロン66 になるので、D はアジピン酸 $\ce{HOOC-(CH2)4-COOH}$。G( $\ce{C6H10}$ )の不飽和度は $\dfrac{2\times6+2-10}{2}=2$。過マンガン酸カリウムで二重結合が切れると、その両側の炭素がカルボキシ基になる。切れたあとも炭素6個が1本の鎖につながったまま両端だけが COOH になるのは、二重結合が環の中にあるときなので、G は環1つと二重結合1つをもつシクロヘキセン(下の図)。
答 $\mathbf{G}=$ シクロヘキセン(構造式は上の図)(3点)
問5
(7) から、C のベンゼン環に直接付いた H は2種類で、比は1:1。C の候補(問2 の9種類)のうち、2つの置換基がパラの位置にある p-エチルフェノールは、OH の両隣の H(2個)とエチル基の両隣の H(2個)の2種類で2:2=1:1になる。2,6-ジメチルフェノールと3,5-ジメチルフェノールも2種類だが、比は2:1。ほかの6つは3種類以上。よって C は p-エチルフェノール(下の図)。
A は、D(アジピン酸)の一方のカルボキシ基が B(o-メチルベンジルアルコール)と、もう一方が C(p-エチルフェノール)とエステル結合をつくったもの(下の図、破線がエステル結合のうち加水分解で切れる所)。左のベンゼン環はオルトの位置、右のベンゼン環はパラの位置に置換基をもつ。
答 $\mathbf{A}=\ce{CH3-C6H4-CH2-O-CO-(CH2)4-CO-O-C6H4-CH2-CH3}$(構造式は上の図)(8点)
出題意図
問1 元素分析の質量%から分子式を求め、A の分子量354と合うか確かめられるか
問2 ナトリウムと塩化鉄(Ⅲ)の結果からアルコールとフェノール類を見分け、同じ分子式の異性体を漏れなく数えられるか
問3 側鎖の酸化と分子内の脱水から、オルトの位置のジカルボン酸(フタル酸)を決められるか
問4 ナイロン66 の原料からアジピン酸を決め、それを酸化でつくる環状のアルケンを書けるか
問5 核磁気共鳴の説明を読んで置換基の位置を決め、3つの化合物をエステル結合でつなげるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 20点 | 18点 |
| 目標時間 | 12分 | 12分 |
元素分析・ナイロン66・無水フタル酸と、教科書の知識で半分以上が埋まる、九大の有機としてオーソドックスな構造決定だ。
核磁気共鳴という見慣れない言葉が出てくるが、問題文の説明どおりにベンゼン環の H の種類と比を数えるだけで、パラの位置と決まる。
初めて見る説明は「何を数えればよいか」だけを読み取り、知っている知識に置きかえればよい。
異性体の数え上げは置換基の位置を番号で固定する手順を決めておこう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2(化合物 C):OH の位置を1番に固定して、ジメチルフェノールの6つを重ならないように数えられるか。エチルフェノールの3つだけで止めたり、同じものを2回数えたりしやすい。
- 問5:核磁気共鳴の「2種類・1:1」を、2つの置換基がパラの位置にあると読みかえる発想に行き着けるか。見慣れない説明でも、種類と比を数えるだけと気づけば p-エチルフェノールに決まる(8点)。
2012年九州大学化学
第6問 解答・解説
第6問は高分子化合物(アミノ酸・タンパク質)・有機化学の問題です。
テーマは『消化酵素と油脂』『アミノ酸の電気泳動』。
問題


問題文をテキストで読む
我々の生命活動に欠かすことのできない食品には、五つの栄養素、すなわち、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、無機塩類が含まれている。これらのうち、特に三大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質)は、摂食後、消化器官において分解を受け、分解物は種々の生命活動に利用される。
主に穀物から供給される炭水化物の一種であるデンプンは、唾液ならびにすい液に含まれる酵素 $\boxed{\text{ ア }}$ の作用によりデキストリンを経て、二糖であるマルトースとなり、最終的には、酵素 $\boxed{\text{ イ }}$ の作用によって単糖のグルコースまで分解される。その後、腸管で吸収され、エネルギー源として利用される(a)ほか、主に肝臓中でグリコーゲンへと変換され、貯蔵される。
脂質の分解酵素である $\boxed{\text{ ウ }}$ は食事成分として摂取された脂質を胃や小腸において、その基本骨格であるグリセリンと脂肪酸に加水分解する。これらの分解生成物は吸収後、エネルギー源として利用される(b)ほか、生体膜の構成要素などになる。
タンパク質は、胃で分泌される酵素 $\boxed{\text{ エ }}$ 、すい液に含まれる酵素 $\boxed{\text{ オ }}$ 、その他のペプチダーゼにより、ペプチドやアミノ酸にまで分解を受け、腸管で吸収される。
問1. 文中の $\boxed{\text{ ア }}$ 〜 $\boxed{\text{ オ }}$ に適切な酵素名を記せ。
問2. 文中の下線(a)で示したように、グルコースは、体内においてエネルギー源として利用され、1個の分子の酸化過程で高エネルギーリン酸化合物であるATP(アデノシン三リン酸)38個の生成へとつながる。また、下線(b)の様に脂肪酸の一種であるパルミチン酸( $\ce{C15H31COOH}$ )については、1分子の酸化によって、130個のATPが生成する。また、ステアリン酸( $\ce{C17H35COOH}$ )については、1分子あたり146個のATPの生成へとつながる。ATPがADP(アデノシン二リン酸)に分解を受ける際に放出され、生命活動に利用できるエネルギーを30.5 kJ/molとした場合、ステアリン酸とパルミチン酸(モル比2:1)から構成されるトリグリセリド(脂質)1.00 gを酸化したときに生成するエネルギーを算出し、有効数字3桁で答えよ。ただし、脂質に関しては完全に分解されるものとし、分解に用いられるエネルギーとグリセリンから生じるエネルギーは考慮しないものとする。
問3. 下記の(1)〜(4)のトリペプチドに関して以下の問いに答えよ。
(1) グリシン―セリン―リシン
(2) バリン―システイン―グルタミン酸
(3) アラニン―イソロイシン―チロシン
(4) メチオニン―プロリン―ロイシン
① これらのトリペプチド溶液をpH 6.0付近の溶液中で下図のような電気泳動によって分離を試みた場合、泳動終了後、最も陽極側、陰極側、それぞれに移動するトリペプチドの番号を答えよ。ただし、塩基性アミノ酸、酸性アミノ酸以外のアミノ酸はほぼ同じ等電点を有するものとする。
② 最も陰極側に移動するトリペプチドを構成するアミノ酸のうち、その位置に移動する主要な因子となっているアミノ酸名を答えよ。さらに、そのアミノ酸がpH 6.0の溶液中に存在するときの荷電状態を示す構造式を例にならって記せ。
例:
③ (1)〜(4)のトリペプチド溶液のうち、キサントプロテイン反応(黄色の呈色反応)を示す溶液の番号を答えよ。また、そのトリペプチドを構成するアミノ酸のなかで、キサントプロテイン反応に関与しているのはどれか、アミノ酸の名称を答えよ。さらに、そのアミノ酸がpH 4.0の溶液中で存在するときの荷電状態を示す構造式を②の例にならって記せ。
解答の方針
【問1の方針】
炭水化物・脂質・タンパク質を「何が何に分解されるか」の順に並べている。「デキストリンを経てマルトース」「胃で分泌」「すい液に含まれる」が、酵素を1つに決める手がかり(下の図)。


- ア・イ デンプンをマルトースまで分解する酵素と、マルトースをグルコースにする酵素を書く。
- ウ 脂質(エステル)をグリセリンと脂肪酸に加水分解する酵素を書く。
- エ・オ タンパク質を分解する酵素のうち、胃液に含まれるものと、すい液に含まれるものを書く。
【問2の方針】
エネルギーは脂肪酸からだけ生じるので、1分子に脂肪酸が何個付いているかで ATP の数が決まる。トリグリセリドにはステアリン酸2つ・パルミチン酸1つがエステル結合している(下の図)。


- グリセリン・ステアリン酸2つ・パルミチン酸1つの分子量の和から、エステル結合3つ分の水3分子を引いて、トリグリセリドの分子量を求める。
- 1.00 g を分子量で割って物質量を求める。
- 1分子から生じる ATP の数を、ステアリン酸2つとパルミチン酸1つの分の和で求める。
- 物質量×ATP の数×30.5 kJ/mol でエネルギーを求め、有効数字3桁にする。
【問3①②の方針】
トリペプチドで電荷をもちうるのは、両端のアミノ基・カルボキシ基と側鎖だけ。両端の正と負は打ち消し合うので、全体の電荷は側鎖で決まる(下の図)。


- ① 4つのトリペプチドから、酸性アミノ酸(グルタミン酸)と塩基性アミノ酸(リシン)を探す。
- pH 6.0 での側鎖の電荷を決め、全体が負なら陽極側、正なら陰極側に動くと判断する。
- ② 陰極側に動くトリペプチドの決め手のアミノ酸の名前を書き、pH 6.0 でのアミノ基・カルボキシ基・側鎖の形を決めて、例の形で構造式を書く。
【問3③の方針】
キサントプロテイン反応はベンゼン環のニトロ化。pH 4.0 は等電点より酸性側だが、カルボキシ基が電離する pH(2 付近)より大きいので、主な形は双性イオンのまま(下の図)。


- 4つのトリペプチドから、ベンゼン環をもつアミノ酸(チロシン・フェニルアラニン)を含むものを探す。
- pH 4.0 で $\ce{-COOH}$ ・ $\ce{-NH2}$ ・フェノールの OH がそれぞれどの形かを決める。
- 例の形で構造式を書く。
解答


解答をテキストで読む
問1
デンプンは、だ液やすい液のアミラーゼでデキストリンを経てマルトースまで分解される。マルトースはマルターゼでグルコース2分子になる。脂質(油脂)はエステルなので、リパーゼでグリセリンと脂肪酸に加水分解される。タンパク質は、胃液のペプシン、すい液のトリプシンでペプチドに分解され、ペプチダーゼでアミノ酸まで分解される。
消化酵素は、分解するものと分泌される場所の組で押さえておく。
・アミラーゼ:デンプン→マルトース(だ液・すい液)
・マルターゼ:マルトース→グルコース(腸液)
・スクラーゼ(インベルターゼ):スクロース→グルコース+フルクトース(腸液)
・リパーゼ:脂肪→脂肪酸+グリセリン(すい液)
・ペプシン:タンパク質→ペプチド(胃液。最適 pH は約2)
・トリプシン:タンパク質→ペプチド(すい液。最適 pH は約8)
答(ア) アミラーゼ(1点)
答(イ) マルターゼ(1点)
答(ウ) リパーゼ(1点)
答(エ) ペプシン(1点)
答(オ) トリプシン(キモトリプシンも可)(1点)
問2
トリグリセリドは、グリセリン $\ce{C3H5(OH)3}$(分子量92.0)の3つの OH に、ステアリン酸 $\ce{C17H35COOH}$(284.0)2つとパルミチン酸 $\ce{C15H31COOH}$(256.0)1つがエステル結合したもの(下の図)。エステル結合1つで水が1分子取れるので、分子量は
$$92.0+284.0\times2+256.0-18.0\times3=862.0$$
1.00 g の物質量は
$$\dfrac{1.00}{862.0}=1.160\times10^{-3}\ \mathrm{mol}$$
エネルギーは脂肪酸からだけ生じる(グリセリンの分は考えない)ので、トリグリセリド1分子から生じる ATP は
$$146\times2+130=422\ \text{個}$$
ATP 1 mol あたり30.5 kJ なので、生じるエネルギーは
$$1.160\times10^{-3}\times422\times30.5=14.93\ \mathrm{kJ}$$
答 14.9 kJ(6点)
問3
① トリペプチドでは、となり合うアミノ酸のアミノ基とカルボキシ基がペプチド結合になっている。電荷をもちうるのは、左端のアミノ基(pH 6.0 で $\ce{-NH3+}$ )、右端のカルボキシ基( $\ce{-COO^-}$ )、側鎖だけ。両端の正と負は打ち消し合うので、全体の電荷は側鎖で決まる。
・(1) リシンは塩基性アミノ酸で、側鎖 $\ce{-(CH2)4-NH2}$ が pH 6.0 では $\ce{-NH3+}$ になる。全体として正の電荷をもち、陰極側へ動く
・(2) グルタミン酸は酸性アミノ酸で、側鎖 $\ce{-(CH2)2-COOH}$ が pH 6.0 では $\ce{-COO^-}$ になる。全体として負の電荷をもち、陽極側へ動く
・(3)(4) 側鎖が電離しないアミノ酸だけでできている(チロシンの OH はフェノール性で pH 6.0 では電離しない)。全体の電荷はほぼ0で、ほとんど動かない
答(最も陽極側) (2)(1点)
答(最も陰極側) (1)(1点)
② (1) を陰極側へ動かしているのは、側鎖にアミノ基をもつリシン。リシンそのものが pH 6.0 の溶液中にあるとき、酸として強い $\ce{-COOH}$ は電離して $\ce{-COO^-}$ 、α位のアミノ基と側鎖のアミノ基はどちらも $\ce{H+}$ を受け取って $\ce{-NH3+}$ になっている。リシンの等電点は約9.7 で、pH 6.0 はそれより酸性側なので、全体として正の電荷をもつ陽イオンが主になる(下の図)。
答(アミノ酸名) リシン(1点)
答(構造式) 上の図(4点)
③ キサントプロテイン反応は、濃硝酸を加えて加熱するとベンゼン環がニトロ化されて黄色になる反応(さらにアンモニア水で塩基性にすると橙黄色)。(1)〜(4) のアミノ酸でベンゼン環をもつのは、(3) のチロシン $\ce{HO-C6H4-CH2-CH(NH2)-COOH}$ だけ。
チロシンの等電点は約5.7 なので、pH 4.0 は等電点より酸性側にある。ただし、α位の $\ce{-COOH}$ が電離して $\ce{-COO^-}$ になるのは pH 2 付近で、pH 4.0 ではほとんどが $\ce{-COO^-}$ になっている。アミノ基は $\ce{-NH3+}$ のまま、フェノールの OH は pH 10 付近まで電離しない。したがって、pH 4.0 での主な形は双性イオン(陽イオンはわずかに含まれ、そのぶん全体としては正の側に寄る)。
答(番号) (3)(1点)
答(アミノ酸名) チロシン(1点)
答(構造式) 上の図(4点)
出題意図
問1 三大栄養素がどの酵素で何まで分解されるかを、消化液の場所と合わせて正確に覚えているか
問2 トリグリセリドの分子量をエステル結合の数から求め、物質量→ ATP の数→エネルギーと量的関係をたどることができるか
問3 トリペプチドの電荷が側鎖で決まると捉え、酸性・塩基性アミノ酸と芳香族アミノ酸の知識から、指定された pH での荷電状態を構造式で書くことができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 20点 | 20点 |
| 目標時間 | 10分 | 12分 |
消化酵素・油脂・アミノ酸の教科書の知識と、定番の量的計算だけでできた大問。
差がつくのは、指定された pH での荷電状態を構造式で書く所で、「どの基が、どの pH で電離するか」まで言えれば迷わない。
アミノ酸は等電点との大小だけで終わらせず、カルボキシ基は pH 2 付近・アミノ基は pH 9 付近で電離すると押さえておくこと。
差がつく所・失点しやすい所
- 問3②・③:指定された pH で、アミノ基・カルボキシ基・側鎖がそれぞれどの形かを1つずつ決めて構造式にできるか。リシンの側鎖が $\ce{-(CH2)4-NH2}$ であることを覚えていないと②は書けない。③は「等電点より酸性側だから陽イオン」と考えて $\ce{-COOH}$ のまま書きやすいが、pH 4.0 ではカルボキシ基はほとんど電離している。構造式2つの8点で大きく差がつく。
- 問2:トリグリセリドの分子量を、エステル結合3つ分の水を引いて862 と求められるか。水を引き忘れると916 で14.1 kJ、ステアリン酸とパルミチン酸の数を逆にすると834 で14.8 kJ になり、有効数字3桁の答えがずれる。
2012年九州大学・化学の
講評とまとめ
6問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | やや簡単 | 22点 | 22点 |
| 第2問 | 標準 | 22点 | 18点 |
| 第3問 | やや難 | 18点 | 15点 |
| 第4問 | 標準 | 8点 | 8点 |
| 第5問 | 標準 | 20点 | 18点 |
| 第6問 | やや簡単 | 20点 | 20点 |
| 全体 | 標準 | 105点 | 85点 |
大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で105点、その他の学部で85点)にはなりません。
全体的に難易度は標準な年。
大問が6題あるので、1題にかけられる時間が短い年でした。
第1問・第4問・第6問は教科書の知識と定番の計算、第5問もオーソドックスな構造決定で、ここは短い時間で取り切りたいところです。
この年の合否を分けたのは、第3問の電気分解でした。
「まず電子の物質量」「水素1個で水素イオンが2個減る」「硫酸の2段階目は近似しない」を言い切れるかが決め手です。
第2問の問5 は条件を組み合わせて絞る問題なので、2つに決まった時点で次へ進んで構いません。
1つの大問に15分以上かけないことが大事です。
解く流れ
第1問 → 第2問 → 第3問 → 第4問 → 第5問 → 第6問。
2012年九州大学・化学に
関するよくある質問
2012年の九州大学・化学について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2012年の九州大学・化学は難しかった?
-
全体的に難易度は標準な年でした。
第3問はやや難、第2問・第4問・第5問は標準、第1問・第6問はやや簡単です。
大問が6題あり、1題にかけられる時間が短い年でした。 - 2012年の九州大学・化学は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で105点、その他の学部で85点です(125点満点)。
- 2012年の九州大学・化学はどこで差がつく?
-
この年の合否を分けたのは第3問の電気分解で、差がついたのは次の3つでした。
- 第3問 問2 後半:水素1個で水素イオンが2個減ることを押さえ、硫酸の2段階目の電離を近似せずに解けたか。
- 第2問 問5:操作の結果と周期・族・イオン半径の条件を組み合わせて、金属イオンを絞り込めたか。
- 第6問 問3②③:指定された pH で、アミノ基・カルボキシ基・側鎖の形を決めて構造式を書けたか。
- 2012年の九州大学・化学は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:理論化学(化学結合と結晶)
- 第2問:無機化学・理論化学
- 第3問:理論化学(酸化・還元と電池・電気分解)
- 第4問:理論化学(物質の三態・気体の法則)
- 第5問:有機化学
- 第6問:高分子化合物(アミノ酸・タンパク質)・有機化学




