【解説・配点付き】2010年九州大学化学の解答・解説
2010年の九州大学・化学の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2010年九州大学化学
第1問 解答・解説
この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は無機化学・理論化学の問題です。
テーマは『気体の製法と性質』『結合エネルギーの計算』。
問題


問題文をテキストで読む
実験1〜実験9について述べた次の文章を読み、問1〜問6に答えよ。
実験1:三角フラスコに二酸化マンガンを取り、過酸化水素水溶液を加えると、常温で気体の物質(a)が発生した。
実験2:亜鉛を三角フラスコに取り、希硫酸を加えると、常温で気体の物質(b)が発生した。
実験3:気体の物質(a)と(b)を反応させると、常温で液体の物質(c)が生成した。
実験4:カルシウムカーバイドを三角フラスコに取り、水を加えると、常温で気体の物質(d)が発生した。
実験5:硝酸銀水溶液にアンモニア水を加えると物質(e)が沈殿した。さらにアンモニア水を加えると沈殿が溶解した。
実験6:気体の物質(d)を加熱した石英管に通すと、芳香性のある常温で液体の物質(f)が生成した。
実験7:石灰石を三角フラスコに取り、希塩酸を加えると、常温で気体の物質(g)が発生した。
実験8:水酸化カルシウム水溶液に気体の物質(g)を吹き込むと物質(h)が沈殿した①。さらに物質(g)を吹き込むと沈殿は溶解した②。
実験9:三角フラスコに銅粉を取り、濃硫酸を加えて加熱すると、気体の物質(i)が発生した③。
問1. 三重結合を含む化合物を物質(a)〜(i)の中から選び、その記号と化学式を記せ。
問2. 物質(a)〜(i)の中で直線分子でない化合物の化学式をすべて記せ。
問3. 下線部分①〜③の反応式を記せ。
問4. 下記のうち間違っている記述をすべて選び、番号で答えよ。
(1) 実験5で生成する沈殿は褐色である。
(2) 気体の物質(b)および(i)を捕集するには、それぞれ上方置換法、水上置換法が最適である。
(3) 気体の物質(i)の発生後、三角フラスコ中の液は青色になった。
(4) 実験8の化学反応によりカルスト台地特有の地形が形成される。
(5) 物質(f)は置換反応よりも付加反応を起こしやすい。
(6) 気体の物質(i)は赤褐色で酸性雨を引き起こす環境汚染物質である。
問5. 物質(a)、(b)および気体状態の(c)をそれぞれ構成している原子から生成するときに発生するエネルギー(熱量)は、それぞれ496、436、926 kJ/molである。実験3において常温で1 molの物質(b)を物質(a)と反応させたときに発生するエネルギー(熱量)を有効数字3桁で求めよ。ただし、物質(c)の凝縮熱は44 kJ/molである。
問6. 次の文章を読み、 $\boxed{\text{ ア }}$ の中に入る式を必要な記号を用いて表し、 $\boxed{\text{ イ }}$ の中に最も適当な用語を入れよ。
分子量 $M$ のある物質が液体状態のとき、その密度を $\rho$ [g/cm³]とする。アボガドロ数を $N_\mathrm{A}$ とすると、1分子あたり分子が占める体積 $V$ は $\boxed{\text{ ア }}$ cm³と表される。1つの分子が立方体の体積を占めていると仮定すると、 $\boxed{\text{ ア }}$ の3乗根をとれば、液体中の分子どうしの距離を計算できる。この方法で、物質(a)〜(c)の液体状態における分子どうしの距離を見積もると、物質(c)では、物質(a)および(b)よりかなり短い。また、物質(c)の沸点は物質(a)および(b)の沸点よりずっと高い。これは物質(c)では、分子間に $\boxed{\text{ イ }}$ による強い引力が働いているためである。
解答の方針
【問1の方針】
問1〜問4 は、物質(a)〜(i)を決めればすべて答えられる。製法から9つの物質を化学式で書き出し、形・色・捕集法をまとめて見る(下の表)。三重結合は構造式で確かめる。


- 実験1〜9 の製法から、物質(a)〜(i)を化学式で書き出す。
- 構造式を思い浮かべ、三重結合をもつ化合物を選ぶ。
【問2の方針】
分子の形は、電子式を書いて中心の原子のまわりの電子対の方向の数で決める(二重結合も1方向)。「直線分子でない化合物」なので、単体の $\ce{O2}$・$\ce{H2}$ と、分子をつくらないイオン結晶は数えない(問1 の表)。
- 物質(a)〜(i)のうち、単体( $\ce{O2}$・$\ce{H2}$ )と、分子でないイオン結晶( $\ce{Ag2O}$・$\ce{CaCO3}$ )を除く。
- 残った $\ce{H2O}$・$\ce{C2H2}$・$\ce{C6H6}$・$\ce{CO2}$・$\ce{SO2}$ の形を、電子対の方向の数から決める。
- 直線形でないものを選ぶ。
【問3の方針】
石灰水に二酸化炭素を吹き込むと白濁し、吹き込み続けると水に溶ける炭酸水素カルシウムになって白濁が消える(下の図)。銅と熱濃硫酸は酸化還元反応なので、半反応式を2本書いて足す。


- ① は水酸化カルシウムと二酸化炭素から炭酸カルシウムの沈殿ができる反応式を書く。
- ② は炭酸カルシウムに二酸化炭素と水が加わって炭酸水素カルシウムになる反応式を書く。
- ③ は銅と熱濃硫酸の半反応式を書き、電子を消してイオン反応式にし、水素イオンが何由来かを考えて化学反応式にする。
【問4の方針】
どれも気体・沈殿の性質の暗記で判定できる。捕集法は「水に溶けにくければ水上置換、溶ければ空気の平均分子量28.8と比べる」、有色の気体は4つだけ、という系列ごと覚えておけば迷わない(問1 の表)。
- (1) は酸化銀の色、(6) は二酸化硫黄の色を確かめる。
- (2) は水素と二酸化硫黄の水への溶けやすさと分子量から捕集法を決める。
- (3) は銅と熱濃硫酸でできる物質、(4) は実験8 の②の反応と石灰岩、(5) はベンゼンの反応性を確かめる。
- 間違っている記述をすべて選ぶ。
【問5の方針】
原子から生成するときのエネルギーが与えられているので、エンタルピー図の一番上は原子。水素と酸素から液体の水までは、原子を通る道でつながる。気体の水から液体の水へは凝縮で下がる(下の図)。


- 実験3 の反応 $\ce{H2 + 1/2O2 -> H2O}$ (液) をベースとなる式にし、反応エンタルピーを $X$ とおく。
- 一番上に原子 $\ce{2H + O}$ (気) を置き、水素と酸素 $\dfrac12$ mol から原子へ、気体の水から原子へ、気体の水から液体の水へ、の矢印を書く。
- 水素と酸素から液体の水へ行く2通りの道の和が等しいとして $X$ を求め、発生する熱量に直す。
【問6の方針】
1 mol の液体の体積は質量÷密度で、その中に $N_\mathrm{A}$ 個の分子がある。分子どうしが近く沸点が高いのは、分子間力の中で最も強い水素結合が働くから(下の図)。


- 1 mol の質量 $M$ g を密度 $\rho$ で割って 1 mol の体積を求め、 $N_\mathrm{A}$ で割って1分子の体積にする(ア)。
- 物質(c)が水であることから、分子間に働く引力の名前を答える(イ)。
解答




解答をテキストで読む
問1
実験1〜9 の物質は次のとおり(下の表)。
・実験1:酸化マンガン(Ⅳ)は触媒として働き、過酸化水素が分解して酸素が発生する。 $\ce{2H2O2 -> 2H2O + O2}$ 。(a)= $\ce{O2}$
・実験2:亜鉛は水素よりイオン化傾向が大きいので、希硫酸の $\ce{H+}$ を還元して水素が発生する。(b)= $\ce{H2}$
・実験3:水素と酸素が反応して、常温で液体の水ができる。(c)= $\ce{H2O}$
・実験4:カルシウムカーバイド(炭化カルシウム)に水を加えるとアセチレンが発生する。 $\ce{CaC2 + 2H2O -> C2H2 + Ca(OH)2}$ 。(d)= $\ce{C2H2}$
・実験5:銀イオンに少量のアンモニア水を加えると、水酸化物イオンと反応する。 $\ce{AgOH}$ は不安定ですぐに水がとれるので、沈殿は褐色の酸化銀。さらにアンモニア水を加えるとジアンミン銀(Ⅰ)イオン $\ce{[Ag(NH3)2]+}$ になって溶ける。(e)= $\ce{Ag2O}$
・実験6:加熱した石英管にアセチレンを通すと、3分子が重合して芳香をもつ液体のベンゼンができる。 $\ce{3C2H2 -> C6H6}$ 。(f)= $\ce{C6H6}$
・実験7:石灰石(炭酸カルシウム)に希塩酸を加えると、弱酸の遊離で二酸化炭素が発生する。(g)= $\ce{CO2}$
・実験8:石灰水に二酸化炭素を吹き込むと、炭酸カルシウムが沈殿して白濁する。(h)= $\ce{CaCO3}$
・実験9:銅は熱濃硫酸の酸化作用で溶け、二酸化硫黄が発生する。(i)= $\ce{SO2}$
三重結合をもつのは、構造式が $\ce{H-C#C-H}$ のアセチレンだけ。
答 物質(d)= $\ce{C2H2}$(アセチレン)(2点)
問2
化合物でない単体の $\ce{O2}$・$\ce{H2}$ は、形を見る前に除く。 $\ce{Ag2O}$・$\ce{CaCO3}$ は陽イオンと陰イオンが交互に並んだイオン結晶で、分子という単位をもたないので、直線分子かどうかを問う対象にならない。
残りの5つは、電子式を書いて中心の原子のまわりの電子対を最も遠くなるように置き、形を決める。二重結合・三重結合は1方向と数える(問1 の表)。
・$\ce{H2O}$:O のまわりの電子対は4方向(共有電子対2・非共有電子対2)。正四面体の頂点のうち2つに H がつくので、折れ線形
・$\ce{SO2}$:S のまわりの電子対は3方向(O との結合2・非共有電子対1)。正三角形の頂点のうち2つに O がつくので、折れ線形
・$\ce{C6H6}$:6つの C が正六角形をつくる平面分子で、直線ではない
・$\ce{CO2}$:C のまわりは2方向(2つの二重結合)なので、180°反対を向いて直線形
・$\ce{C2H2}$:どちらの C のまわりも2方向(三重結合と C−H 結合)なので、4つの原子が一直線に並ぶ直線形
なお、イオン結晶の $\ce{Ag2O}$・$\ce{CaCO3}$ も「直線でない物質」として入れて5つとする読み方もありうるが、問いは「直線分子でない化合物」なので、分子をつくる化合物だけを答える。
答 $\ce{H2O}$、$\ce{C6H6}$、$\ce{SO2}$(4点)
問3
① 石灰水(水酸化カルシウム水溶液)に二酸化炭素を吹き込むと、水に溶けにくい炭酸カルシウムが沈殿して白濁する。
答(①) $\ce{Ca(OH)2 + CO2 -> CaCO3 + H2O}$(2点)
② さらに吹き込み続けると、炭酸カルシウムが二酸化炭素と水と反応して、水に溶けやすい炭酸水素カルシウムになり、白濁が消える(下の図)。
答(②) $\ce{CaCO3 + CO2 + H2O -> Ca(HCO3)2}$(2点)
③ 熱濃硫酸は酸化剤として働き、硫黄の酸化数が+6から+4に下がって二酸化硫黄になる。還元剤の銅と酸化剤の熱濃硫酸の半反応式を書く。
$$\ce{Cu -> Cu^2+ + 2e-}$$
$$\ce{H2SO4 + 2H+ + 2e- -> SO2 + 2H2O}$$
電子の数はどちらも2個でそろっているので、そのまま足してイオン反応式にする。
$$\ce{Cu + H2SO4 + 2H+ -> Cu^2+ + SO2 + 2H2O}$$
左辺の $\ce{H+}$ は硫酸由来なので、両辺に $\ce{SO4^2-}$ を1個ずつ足す。左辺は $\ce{H2SO4}$ が合計2個、右辺は硫酸銅(Ⅱ)になる。
答(③) $\ce{Cu + 2H2SO4 -> CuSO4 + SO2 + 2H2O}$(2点)
問4
・(1) 正しい。 $\ce{Ag+}$ と $\ce{OH-}$ からは $\ce{AgOH}$ ではなく、褐色の $\ce{Ag2O}$ が沈殿する。 $\ce{OH-}$ を加えて酸化物ができるのは $\ce{Ag+}$(褐色の $\ce{Ag2O}$ )と $\ce{Hg^2+}$(黄色の $\ce{HgO}$ )の2つ
・(2) 誤り。捕集法は、水に溶けにくい気体( $\ce{H2}$・$\ce{O2}$・$\ce{N2}$・$\ce{NO}$・$\ce{CO}$ )は水上置換、水に溶ける気体は空気の平均分子量28.8と比べて、小さければ上方置換、大きければ下方置換。水素は水に溶けにくいので水上置換、二酸化硫黄は水に溶けやすく分子量64が28.8より大きいので下方置換。上方置換で集めるのは、実質アンモニアだけ
・(3) 正しい。銅は熱濃硫酸に溶けて硫酸銅(Ⅱ)になる。 $\ce{Cu^2+}$ は水と結びつくと青色に見える。熱濃硫酸の中は水が少ないので、実際には白色の無水硫酸銅(Ⅱ)が出たり黒色の物質が混じったりして、はっきり青く見えないこともある。ただし水で薄めれば青色の水溶液で、入試では「 $\ce{Cu^2+}$ を含む液は青色」の知識を問う記述として正しいと判定する
・(4) 正しい。② の反応は、石灰岩(炭酸カルシウム)が二酸化炭素を含む地下水に溶ける反応。これが長い時間をかけて石灰岩を溶かし、鍾乳洞やカルスト台地の地形をつくる。逆に、炭酸水素カルシウムを含む水から水が蒸発すると炭酸カルシウムが戻り、鍾乳石や石筍ができる
・(5) 誤り。ベンゼンの環は安定なので、付加反応より置換反応を起こしやすい(ハロゲン化・ニトロ化・スルホン化)。付加反応は、光を当てて塩素を付けたり、触媒を使って高温・高圧で水素を付けたりするときだけ起こる
・(6) 誤り。有色の気体は $\ce{F2}$(淡黄色)・$\ce{Cl2}$(黄緑色)・$\ce{NO2}$(赤褐色)・$\ce{O3}$(淡青色)の4つだけで、二酸化硫黄は無色(刺激臭)。赤褐色は二酸化窒素の色。二酸化硫黄が酸性雨の原因になること自体は正しい
答 (2)、(5)、(6)(6点)
問5
原子から生成するときに発生するエネルギーが与えられているので、エンタルピー図の一番上は原子 $\ce{2H + O}$ (気)。分子を原子にばらすには、その分のエネルギーが要るので、分子から原子への矢印はどれも上向き(吸熱)。実験3 の反応 $\ce{H2 + 1/2O2 -> H2O}$ (液) をベースとなる式にし、反応エンタルピーを $X$〔kJ〕とおく。
・水素と酸素 → 原子: $\ce{H2}$ 1 mol と $\ce{O2}$ $\dfrac12$ mol をばらすので $+436+496\times\dfrac12=+684$ kJ(上向き)
・気体の水 → 原子: $+926$ kJ(上向き)
・気体の水 → 液体の水:凝縮熱 44 kJ は発熱なので、凝縮エンタルピーは $-44$ kJ(下向き)
水素と酸素から液体の水へ行く2通りの道の和は等しい。原子から気体の水へは、矢印の向きが逆なので符号を入れ替える(下の図)。
$$X=\left(+436+496\times\dfrac12\right)+(-926)+(-44)=-286$$
$X$ は負なので、水素と酸素から液体の水ができる反応は発熱で、1 mol の水素で 286 kJ のエネルギーが発生する。
答 286 kJ( $\Delta H=-286$ kJ)(4点)
問6
分子量 $M$ の物質 1 mol の質量は $M$ g なので、密度 $\rho$〔g/cm³〕で割ると 1 mol の体積は $\dfrac{M}{\rho}$ cm³。この中に $N_\mathrm{A}$ 個の分子があるので、1分子あたりの体積は
$$V=\dfrac{M}{\rho}\times\dfrac{1}{N_\mathrm{A}}=\dfrac{M}{\rho N_\mathrm{A}}$$
1つの分子が1辺 $d$ の立方体を1つずつ占めると考えると、 $d^3=V$ なので、となりの分子との距離は $V$ の3乗根になる(下の図)。
答(ア) $\dfrac{M}{\rho N_\mathrm{A}}$(2点)
物質(c)は水。分子結晶どうしの沸点は、まず水素結合があるかを見る。水の分子は電気陰性度の大きい O に H が結合しているので、となりの分子の O との間に水素結合ができる。酸素・水素の分子どうしにはファンデルワールス力しか働かないので、水は分子どうしが強く引き合って距離が短く、沸点がずっと高い。
答(イ) 水素結合(2点)
別解
問5 (結合エネルギーの公式を使う)反応エンタルピー=(反応物を原子にばらすエネルギーの和)−(生成物を原子にばらすエネルギーの和)。まず気体の水ができるときは $(436+248)-926=-242$ kJ。液体の水にするには凝縮の $-44$ kJ を加えて $-242+(-44)=-286$ kJ。発生する熱量は本解と同じ 286 kJ。
出題意図
問1 9つの実験で発生・生成する物質を製法から特定し、三重結合をもつアセチレンを選べるか
問2 電子式から電子対の方向の数を数えて分子の形を決め、単体やイオン結晶を区別できるか
問3 石灰水と二酸化炭素の反応と、銅と熱濃硫酸の反応を化学反応式で書けるか
問4 気体と沈殿の色・捕集法・身近な現象・ベンゼンの反応性の知識を、6つとも正確に判定できるか
問5 原子から生成するときのエネルギーと凝縮熱を、原子を一番上に置いたエンタルピー図でつなげられるか
問6 液体の1分子が占める体積を密度とアボガドロ数で表し、水の分子どうしが近く沸点が高い理由を水素結合と結びつけられるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 26点 | 20点 |
| 目標時間 | 15分 | 15分 |
9つの実験でできる物質を化学式で全部書き出せれば、あとは気体の製法・性質の暗記と、原子を一番上に置いたエンタルピー図の定番の計算だけでできた大問。
無機の知識と重要問題集のA問題がそろっていれば満点が取れる。
無機は覚えていれば必ず解けるので、知識で埋められる所はすぐに書き、浮いた時間を第3問の電気分解の後半に回そう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問4:差がつくとしたら、6つの記述を1つも取り違えずに判定しきれるか。「すべて選ぶ」形式なので、1つでも誤ると点にならない。とくに (2) は2つの捕集法がどちらも誤り、(6) は「酸性雨を引き起こす」は正しく色だけが誤り、と記述の一部だけが誤りになっている所で落としやすい。
- 問5:原子を一番上に置いて、酸素の 496 を $\dfrac12$ にし、凝縮の 44 を正しい向きで入れられるか。酸素を $\dfrac12$ にし忘れると 38 kJ、凝縮を入れ忘れると 242 kJ、凝縮を逆向きに入れると 198 kJ になる。
- 問2:「直線分子でない化合物」を、分子をつくる化合物の中から選べるか。単体の $\ce{O2}$・$\ce{H2}$ を入れたり、 $\ce{SO2}$ を $\ce{CO2}$ と同じ直線形と思い込んだりすると落とす。
2010年九州大学化学
第2問 解答・解説
第2問は無機化学・理論化学の問題です。
テーマは『鉄の製錬とイオン』『同位体と原子量の計算』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問5に答えよ。
原子番号26の鉄には $\ce{^{54}Fe}$、 $\ce{^{56}Fe}$、 $\ce{^{57}Fe}$、 $\ce{^{58}Fe}$ (a)という四種類の安定な $\boxed{\text{ ア }}$ が存在する。鉄の単体の製造は、主に赤鉄鉱(酸化鉄(Ⅲ))と磁鉄鉱(四酸化三鉄)を含む天然の鉱石を溶鉱炉内で生じる一酸化炭素によって高温で還元し、 $\boxed{\text{ イ }}$ を得る(b)ことから始まる。さらに酸素を吹き込み、炭素含有量を減少させるとともに、不純物を取り除くと $\boxed{\text{ ウ }}$ が得られる。
鉄に濃硝酸を作用させても $\boxed{\text{ エ }}$ を形成し、ほとんど反応しないが、希硫酸を作用させると気体が発生する(c)。また、鉄を希塩酸に溶かして塩素を通じたのち、過剰のアンモニア水を加えると沈殿が生じる(d)。
鉄は湿った空気の下では酸化が進み、 $\ce{Fe2O3}\cdot n\ce{H2O}$ で表されるさびを生じる。この物質の粒子サイズは $10^{-9}$ m程度で非常に小さい。一方、単位質量当たりの $\boxed{\text{ オ }}$ が非常に大きい。
問1. 文中の $\boxed{\text{ ア }}$ 〜 $\boxed{\text{ オ }}$ に適切な語句を記せ。
問2. 下線部(a)において、鉄の原子量が $M$、 $\ce{^{54}Fe}$ と $\ce{^{58}Fe}$ の存在割合がそれぞれ $a$ %、 $b$ %のとき、 $\ce{^{56}Fe}$ の存在割合(%)を $M$、 $a$、 $b$ で表せ。ただし、相対質量を $\ce{^{54}Fe}=54$、 $\ce{^{56}Fe}=56$、 $\ce{^{57}Fe}=57$、 $\ce{^{58}Fe}=58$ とする。
問3. 下線部(b)において、赤鉄鉱と磁鉄鉱が一酸化炭素によって還元される反応式をそれぞれ記せ。
問4. 下線部(c)の反応式を記せ。また、鉄がすべて溶けて気体の発生が止まったのち、しばらくの間大気にさらした。すると溶液の色が淡緑色から黄褐色に変わった。溶液の色が変化した理由を述べよ。
問5. 下線部(d)において、鉄を希塩酸に溶解させると $\ce{FeCl2}$ の水溶液になる。これに塩素を通じたときの反応式を記せ。また、アンモニア水を加えたときに生じる沈殿の化学式を記せ。
解答の方針
【問1の方針】
ア〜ウは鉄の製錬の流れ(鉄鉱石 → 銑鉄 → 鋼)に沿って言葉を当てはめる(下の図)。エは濃硝酸で鉄が溶けない理由、オは「粒子が非常に小さい」の言いかえを考える。


- 原子番号が同じで質量数が違う原子の呼び名として、アの同位体を答える。
- 溶鉱炉で鉄鉱石を還元して得られる、炭素を多く含む鉄としてイの銑鉄を答える。
- 銑鉄に酸素を吹き込んで炭素を減らした鉄としてウの鋼を答える。
- 濃硝酸で表面に緻密な酸化被膜ができて溶けない状態として、エの不動態を答える。
- 粒子が小さいほど、同じ質量あたりで外に出ている面が広くなることから、オの表面積を答える。
【問2の方針】
原子量は「相対質量×存在割合」の和。存在割合から原子量を求めるのではなく、原子量から割合を逆に求めるので、いちばん多い ⁵⁶Fe の 56 を基準にして、そこからの差だけで式を立てる(下の図)。


- ⁵⁶Fe の存在割合を $x$ %とおき、4つの割合の和が100 %になることから ⁵⁷Fe の割合を $100-a-b-x$ %と表す。
- 「相対質量×存在割合」の和が原子量 $M$ になる式を1本立てる。
- 両辺から基準の 56 を引き、差の式にする。
- 差の式を $x$ について解く。
【問3の方針】
一酸化炭素は鉄の酸化物から酸素原子を1個ずつ奪って二酸化炭素になる。酸化物に含まれる酸素原子の数だけ一酸化炭素が要る(下の図)。


- 赤鉄鉱は酸化鉄(Ⅲ) $\ce{Fe2O3}$、磁鉄鉱は四酸化三鉄 $\ce{Fe3O4}$ と化学式に直す。
- 酸化物1個に含まれる酸素原子の数だけ一酸化炭素を左辺に置き、同じ数の二酸化炭素を右辺に置く。
- 鉄原子の数を右辺の $\ce{Fe}$ の係数でそろえる。
【問4の方針】
鉄は水素よりイオン化傾向が大きいので、希硫酸の水素イオンを還元して水素を発生し、鉄(Ⅱ)イオンになる。鉄(Ⅱ)イオンはさらに電子を出しやすく、空気中の酸素に酸化される(下の図)。


- 鉄と希硫酸から、硫酸鉄(Ⅱ)と水素ができる反応式を書く。
- 淡緑色は鉄(Ⅱ)イオン、黄褐色は鉄(Ⅲ)イオンの色だと結びつける。
- 大気にさらしたことから、空気中の酸素が鉄(Ⅱ)イオンを鉄(Ⅲ)イオンに酸化したと理由を書く。
【問5の方針】
塩素は酸化剤として鉄(Ⅱ)イオンを鉄(Ⅲ)イオンに酸化する。アンモニア水で沈殿するのは、酸化されたあとの鉄(Ⅲ)イオンの水酸化物(下の図)。


- 鉄(Ⅱ)イオンが電子を1個出す半反応式と、塩素が電子を2個受け取る半反応式を書く。
- 電子の数をそろえて足し、イオン反応式にする。
- 両辺に塩化物イオンを足して、塩化鉄(Ⅱ)と塩素の化学反応式にする。
- 鉄(Ⅲ)イオンとアンモニア水から生じる水酸化物を沈殿として答える。
解答




解答をテキストで読む
問1
鉄の製錬は、鉄鉱石を溶鉱炉で還元して銑鉄をつくり、銑鉄を転炉で処理して鋼にする2段階で進む(下の図)。
また、鉄は酸の種類によって反応が変わる(下の図)。
・ア:⁵⁴Fe・⁵⁶Fe・⁵⁷Fe・⁵⁸Fe はどれも原子番号26(陽子26個)で、中性子の数だけが違う(質量数=陽子の数+中性子の数)。このような原子どうしを同位体という
・イ:溶鉱炉では、コークスの燃焼でできた一酸化炭素が鉄鉱石を還元する。溶鉱炉から取り出した鉄は炭素を約4 %含み、硬いがもろい。これが銑鉄
・ウ:銑鉄を転炉に移して酸素を吹き込むと、炭素が二酸化炭素などになって抜け、炭素の少ない硬くて粘り強い鋼になる。建築材料などに使われる
・エ:鉄は希塩酸・希硫酸には溶けるが、濃硝酸では表面に緻密な酸化被膜ができ、内部が守られてほとんど溶けない(上の図)。この状態を不動態という。不動態になるのは鉄・ニッケル・アルミニウムの3つで、熱濃硫酸でも同じことが起こる
・オ:さびの粒子は $10^{-9}$ m 程度ととても小さい。同じ質量の物質を細かく分けるほど、外に出ている面の合計は大きくなる(1辺を $\dfrac1{10}$ にすると、個数は1000倍、表面積の合計は10倍)。単位質量あたりで大きいのは表面積
答(ア) 同位体(1点)
答(イ) 銑鉄(1点)
答(ウ) 鋼(1点)
答(エ) 不動態(1点)
答(オ) 表面積(1点)
問2
⁵⁶Fe の存在割合を $x$ %とおく。4つの同位体の割合の和は100 %なので、⁵⁷Fe の割合は $100-a-b-x$ %(下の図)。
原子量は「相対質量×存在割合」の和なので、割合を100で割って次の式が立つ。
$$M=54\times\dfrac{a}{100}+56\times\dfrac{x}{100}+57\times\dfrac{100-a-b-x}{100}+58\times\dfrac{b}{100}$$
割合の和は1なので、両辺から基準の 56 を引くと、各項の相対質量を「56 との差」に置きかえた式になる。
$$M-56=(-2)\times\dfrac{a}{100}+0\times\dfrac{x}{100}+1\times\dfrac{100-a-b-x}{100}+2\times\dfrac{b}{100}$$
両辺を100倍して整理する。
$$100M-5600=-2a+(100-a-b-x)+2b=100-3a+b-x$$
$$x=5700-100M-3a+b$$
答 $5700-100M-3a+b$(%)(4点)
問3
溶鉱炉では、一酸化炭素が鉄の酸化物から酸素原子を奪って二酸化炭素になり、酸化物は鉄の単体まで還元される。一酸化炭素1分子が奪う酸素原子は1個なので、酸化物1個あたりに要る一酸化炭素の数は、その酸化物の酸素原子の数と同じ(下の図)。
・赤鉄鉱 $\ce{Fe2O3}$ は酸素原子が3個なので一酸化炭素3分子。鉄原子2個が単体になる
・磁鉄鉱 $\ce{Fe3O4}$ は酸素原子が4個なので一酸化炭素4分子。鉄原子3個が単体になる
・鉄の酸化物は3つ。酸化鉄(Ⅱ) $\ce{FeO}$(黒色)、四酸化三鉄 $\ce{Fe3O4}$(黒色、鉄(Ⅱ)と鉄(Ⅲ)を1:2で含む、磁鉄鉱・黒さび)、酸化鉄(Ⅲ) $\ce{Fe2O3}$(赤褐色、赤鉄鉱・赤さび)。溶鉱炉の中では $\ce{Fe2O3}$ → $\ce{Fe3O4}$ → $\ce{FeO}$ → $\ce{Fe}$ と段階的に還元される
・還元しているのはコークスの炭素そのものではなく、コークスの燃焼でできた一酸化炭素
答(赤鉄鉱) ${\small \ce{Fe2O3 + 3CO -> 2Fe + 3CO2}}$(2点)
答(磁鉄鉱) ${\small \ce{Fe3O4 + 4CO -> 3Fe + 4CO2}}$(2点)
問4
鉄は水素よりイオン化傾向が大きいので、希硫酸の水素イオンに電子を渡して水素を発生させ、自分は鉄(Ⅱ)イオンになる(下の図)。水素イオンの酸化力は弱いので、鉄(Ⅲ)イオンまでは酸化されない。
$$\ce{Fe + H2SO4 -> FeSO4 + H2}$$
できた溶液の淡緑色は鉄(Ⅱ)イオンの色。鉄(Ⅱ)イオンはさらに電子を1個出して鉄(Ⅲ)イオンになりやすいので、大気にさらすと溶けこんだ酸素に酸化され、黄褐色の鉄(Ⅲ)イオンに変わる(下の図)。
希硫酸の中(酸性)なので、酸素の半反応式は $\ce{O2 + 4H+ + 4e- -> 2H2O}$。鉄(Ⅱ)イオンの半反応式 $\ce{Fe^2+ -> Fe^3+ + e-}$ を4倍して足すと、次のイオン反応式になる。
$$\ce{4Fe^2+ + O2 + 4H+ -> 4Fe^3+ + 2H2O}$$
・鉄のイオンの色は、鉄(Ⅱ)イオンが淡緑色、鉄(Ⅲ)イオンが黄褐色。水酸化物も同じく、水酸化鉄(Ⅱ)の緑白色の沈殿は空気中で赤褐色の水酸化鉄(Ⅲ)に変わる
・鉄(Ⅲ)イオンだけに起こる反応は、チオシアン酸カリウムで血赤色の溶液になること
答(反応式) $\ce{Fe + H2SO4 -> FeSO4 + H2}$(2点)
答(理由) 淡緑色の鉄(Ⅱ)イオンが、空気中の酸素によって酸化され、黄褐色の鉄(Ⅲ)イオンになったから。(3点)
問5
鉄を希塩酸に溶かすと、問4 と同じく鉄(Ⅱ)イオンになり、塩化鉄(Ⅱ) $\ce{FeCl2}$ の水溶液になる。塩素は酸化剤として鉄(Ⅱ)イオンから電子を奪う。2本の半反応式を書く。
$$\ce{Fe^2+ -> Fe^3+ + e-}\quad\text{(還元剤)}$$
$$\ce{Cl2 + 2e- -> 2Cl-}\quad\text{(酸化剤)}$$
電子の数をそろえるため、鉄(Ⅱ)イオンの半反応式を2倍して足すとイオン反応式になる。
$$\ce{2Fe^2+ + Cl2 -> 2Fe^3+ + 2Cl-}$$
$\ce{Fe^2+}$ は $\ce{FeCl2}$ 由来なので、両辺に $\ce{Cl-}$ を4個ずつ足すと化学反応式になる。
$$\ce{2FeCl2 + Cl2 -> 2FeCl3}$$
アンモニア水を加えると、生じた $\ce{OH-}$ が鉄(Ⅲ)イオンと結びつき、赤褐色の水酸化鉄(Ⅲ)が沈殿する(下の図)。
$$\ce{Fe^3+ + 3OH- -> Fe(OH)3}$$
・塩素を通じたので、沈殿するのは鉄(Ⅱ)の水酸化物(緑白色)ではなく鉄(Ⅲ)の水酸化物(赤褐色)
・過剰のアンモニア水で錯イオンになって溶けるのは、銅・亜鉛・銀・ニッケルの水酸化物(酸化物)だけ。鉄の水酸化物は溶けずに残る
答(反応式) $\ce{2FeCl2 + Cl2 -> 2FeCl3}$(3点)
答(沈殿) $\ce{Fe(OH)3}$(水酸化鉄(Ⅲ))(2点)
別解
問2
差を取らずに、最初の式をそのまま100倍して展開してもよい。
$$100M=54a+56x+57(100-a-b-x)+58b=5700-3a+b-x$$
$$x=5700-100M-3a+b$$
出題意図
問1 同位体・銑鉄と鋼・不動態という鉄の基本の言葉と、粒子が小さいほど質量あたりの表面積が大きいことを答えられるか
問2 同位体の存在割合と相対質量から原子量の式を立て、残りの同位体の割合を文字で表せるか
問3 溶鉱炉で鉄の酸化物が一酸化炭素で還元される反応式を、酸化物ごとに正しく書けるか
問4 鉄が希硫酸と反応して鉄(Ⅱ)イオンになることと、鉄(Ⅱ)イオンが空気中の酸素で鉄(Ⅲ)イオンに酸化されることを、色の変化と結びつけて説明できるか
問5 塩素が鉄(Ⅱ)イオンを鉄(Ⅲ)イオンに酸化することを反応式で表し、アンモニア水で生じる沈殿を決められるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 23点 | 19点 |
| 目標時間 | 12分 | 15分 |
赤鉄鉱や磁鉄鉱を一酸化炭素で還元する反応式は、覚えていれば必ず書ける典型問題。
鉄の製錬・不動態・鉄のイオンの色と沈殿という鉄の定番の知識だけでできた大問で、医学科は満点が前提。
無機は鉄なら鉄で、製錬・酸化物・イオンの色・沈殿まで系列ごと覚えておけば、計算問題よりはるかに確実に点になる。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2:⁵⁶Fe の割合を $x$ とおき、⁵⁷Fe の割合を $100-a-b-x$ と表して式を1本にするという発想に行き着けるか。差がつくとしたら第2問で唯一の計算のここで、56 を基準にした差の式で解けば計算は2行で終わる。
- 問5:アンモニア水で沈殿するのは、塩素で酸化されたあとの鉄(Ⅲ)イオンだと気づけるか。 $\ce{Fe(OH)2}$ と書くと沈殿の2点を落とす。
2010年九州大学化学
第3問 解答・解説
第3問は理論化学(酸化・還元と電池・電気分解)の問題です。
テーマは『イオン化傾向と溶解度積』『電気分解の計算』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問3に答えよ。
$\ce{Al2(SO4)3}$ が $5.0\times10^{-2}$ mol/L、 $\ce{CuSO4}$ が $1.0\times10^{-1}$ mol/L、 $\ce{H2SO4}$ が $5.0\times10^{-2}$ mol/Lとなるように混合して調製した水溶液Aを用いて以下の実験1〜3を行った。
実験1:25 ℃、500 mLの水溶液Aに $5.0\times10^{-3}$ molの $\ce{ZnO}$ 粉末を添加して溶液を撹拌したところ反応 $\boxed{\text{ ア }}$ が進行し、反応終了後の溶液中の $\ce{H2SO4}$ 濃度は $\boxed{\text{ イ }}$ mol/Lになった。
実験2:25 ℃、500 mLの水溶液Aに $1.0\times10^{-1}$ molの $\ce{Zn}$ 粉末を添加して溶液を撹拌したところ最初は主に反応 $\boxed{\text{ ウ }}$ が進み、続いて反応 $\boxed{\text{ エ }}$ が優勢となった。さらに、溶液中のpHが $\boxed{\text{ オ }}$ を超えたところで、反応 $\boxed{\text{ カ }}$ が起こり始め、$\ce{Al}$ を含む白色の沈殿が生じた。
実験3:25 ℃、500 mLの水溶液Aにおいて陽極および陰極に白金を用いて、1.00 Aの電流を96500秒間流して電気分解(電解)を行った。この電解により溶液中の $\ce{Cu^2+}$ は完全に消費された。電解が終了するまでに陰極では標準状態で $\boxed{\text{ キ }}$ Lの気体 $\boxed{\text{ ク }}$ が発生し、電解終了後の溶液中の $\ce{H2SO4}$ 濃度は $\boxed{\text{ ケ }}$ mol/Lとなった。電解終了後、さらに $1.0\times10^{-2}$ molの $\ce{Zn}$ 粉末と $1.0\times10^{-2}$ molの $\ce{Cu}$ 粉末を添加し、溶液を撹拌したところ、標準状態で $\boxed{\text{ コ }}$ Lの気体 $\boxed{\text{ ク }}$ が発生した。
問1. $\boxed{\text{ ア }}$ 、 $\boxed{\text{ ウ }}$ 、 $\boxed{\text{ エ }}$ 、 $\boxed{\text{ カ }}$ のイオン反応式を記せ。
問2. $\boxed{\text{ ク }}$ の分子式を記せ。
問3. $\boxed{\text{ イ }}$ 、 $\boxed{\text{ オ }}$ 、 $\boxed{\text{ キ }}$ 、 $\boxed{\text{ ケ }}$ 、 $\boxed{\text{ コ }}$ に適切な数字を有効数字2桁で答えよ。ただし、本実験において、水溶液の体積は変化しないとする。また、25 ℃における水のイオン積 $[\ce{H+}][\ce{OH-}]$ は、 $1.0\times10^{-14}$ $[\mathrm{mol^2/L^2}]$ であり、 $\ce{Al(OH)3}$ の溶解度積 $[\mathrm{Al^{3+}}][\ce{OH-}]^3$ は、 $1.0\times10^{-32}$ $[\mathrm{mol^4/L^4}]$ とする。ファラデー定数は $9.65\times10^4$ C/molである。
解答の方針
【問1の方針】
水溶液に金属を入れると、イオン化傾向の小さい方のイオンから先に還元される。水溶液Aでは $\ce{Cu^2+}$ → $\ce{H+}$ の順で、水素イオンが減って酸性が弱まると、最後に水酸化アルミニウムの沈殿が始まる(下の図)。


- 実験1 酸化亜鉛は酸性の水溶液では塩基として働くので、水素イオンと中和する式を書く。
- 実験2 亜鉛より還元されやすいイオンを、イオン化傾向の小さい順に $\ce{Cu^2+}$ → $\ce{H+}$ と並べ、先に進む反応をウ、次に進む反応をエとして書く。 $\ce{Al^3+}$ は亜鉛よりイオン化傾向の大きい金属のイオンなので還元されない。
- 水素イオンが減って pH が上がると、アルミニウムイオンと水酸化物イオンが結びついて白色の沈殿ができる。これをカとして書く。
【問2の方針】
電気分解の陰極は、板が何であっても溶液のイオンだけを見て、 $\ce{Ag+}$ → $\ce{Cu^2+}$ → $\ce{H+}$ の順に還元される。
- 銅(Ⅱ)イオンが完全に消費されたあとは、水素イオンが還元されて水素が発生すると決める。
【問3 イ・オの方針】
イは、酸化亜鉛が中和した分だけ硫酸が減る。オは、沈殿し始める瞬間に「イオンの積=溶解度積」となる。アルミニウムイオンはまだ減っていないので、最初の濃度のまま入れる(下の図)。


- イ 酸化亜鉛と同じ物質量の硫酸が中和で使われるので、残った硫酸の物質量を液の体積で割る。
- オ アルミニウムイオンの濃度を硫酸アルミニウムの濃度の2倍とし、溶解度積の式から沈殿し始めるときの水酸化物イオンの濃度を求める。
- 水酸化物イオンの濃度から pOH を求め、水のイオン積から pH にする。
【問3 キ・ケ・コの方針】
電気分解は、まず電子の物質量を求める。陰極の電子は銅の析出と水素の発生に分かれる。硫酸の濃度は、陽極で増える水素イオンと陰極で減る水素イオンの差し引きで決まる(下の図)。


- 陽極は白金で溶けず、ハロゲン化物イオンも無いので水が酸化されて酸素、陰極は銅(Ⅱ)イオンのあとに水素イオンが還元されて水素と決める。
- 電流と時間から電気量を求め、ファラデー定数で割って電子の物質量を求める。
- キ 銅の析出に使った電子を引き、残りの電子で発生した水素の物質量から体積を求める。
- ケ 陽極で増えた水素イオンと陰極で減った水素イオンを差し引き、電解後の水素イオンの物質量を求めて硫酸の濃度に直す。
- コ 加えた金属のうち、希硫酸と反応するのはイオン化傾向が水素より大きい亜鉛だけなので、亜鉛の物質量から水素の体積を求める。
解答




解答をテキストで読む
問1
水溶液A 500 mL の中のイオンの物質量を先に求めておく。アルミニウムイオンは硫酸アルミニウム1つから2個できる。
$$\mathrm{Al^{3+}}\ \ 2\times5.0\times10^{-2}\times0.500=5.0\times10^{-2}\ \mathrm{mol}\qquad\mathrm{Cu^{2+}}\ \ 1.0\times10^{-1}\times0.500=5.0\times10^{-2}\ \mathrm{mol}$$
$$\ce{H+}\ \ 2\times5.0\times10^{-2}\times0.500=5.0\times10^{-2}\ \mathrm{mol}$$
実験1 酸化亜鉛は両性酸化物だが、酸性の水溶液の中では塩基として水素イオンと中和する。
答(ア) $\ce{ZnO + 2H+ -> Zn^2+ + H2O}$(2点)
実験2 亜鉛を入れると、亜鉛より還元されやすいイオンが還元される。イオン化傾向は $\ce{Al}>\ce{Zn}>\ce{H2}>\ce{Cu}$ なので、還元されやすいのは $\ce{Cu^2+}$ がいちばんで、次が $\ce{H+}$ 。 $\ce{Al^3+}$ は亜鉛よりイオン化傾向の大きい金属のイオンなので還元されない(下の図)。
はじめに銅(Ⅱ)イオンが還元されて銅が析出する(亜鉛 $5.0\times10^{-2}$ mol を使う)。
答(ウ) $\ce{Zn + Cu^2+ -> Zn^2+ + Cu}$(2点)
銅(Ⅱ)イオンが減ると、水素イオンが還元されて水素が発生する反応が優勢になる(亜鉛 $\dfrac{5.0\times10^{-2}}{2}=2.5\times10^{-2}$ mol を使う)。
答(エ) $\ce{Zn + 2H+ -> Zn^2+ + H2}$(2点)
亜鉛は $0.10-0.050-0.025=0.025$ mol 残るので、水素イオンはさらに減って pH が上がる。水酸化物イオンが増え、イオンの積が溶解度積を超えると白色の水酸化アルミニウムが沈殿し始める。
答(カ) $\ce{Al^3+ + 3OH- -> Al(OH)3}$(2点)
問2
電気分解の陰極では、 $\ce{Ag+}$ → $\ce{Cu^2+}$ → $\ce{H+}$ の順に還元される。水溶液Aに銀イオンは無いので、はじめは銅(Ⅱ)イオンが還元されて銅が析出し、銅(Ⅱ)イオンが完全に消費されたあとは水素イオンが還元されて水素が発生する。電解後に加えた亜鉛から発生する気体も、水素イオンが還元された水素である。
$$\ce{2H+ + 2e- -> H2}$$
答(ク) $\ce{H2}$(2点)
問3(イ・オ)
イ 実験1 で、酸化亜鉛 $5.0\times10^{-3}$ mol は水素イオン $1.0\times10^{-2}$ mol と中和する。これは硫酸 $5.0\times10^{-3}$ mol 分にあたる。はじめの硫酸は $5.0\times10^{-2}\times0.500=2.5\times10^{-2}$ mol なので、残りの硫酸は
$$2.5\times10^{-2}-5.0\times10^{-3}=2.0\times10^{-2}\ \mathrm{mol}$$
体積は変化しないので
$$\dfrac{2.0\times10^{-2}}{0.500}=4.0\times10^{-2}\ \mathrm{mol/L}\quad\text{(反応後の硫酸の濃度)}$$
答(イ) $4.0\times10^{-2}$ mol/L(2点)
オ 沈殿はイオンの積が溶解度積を超えると起こるので、沈殿し始めるのはイオンの積がちょうど溶解度積に等しくなったとき。沈殿が始まるまでアルミニウムイオンは減らないので、 $[\mathrm{Al^{3+}}]=2\times5.0\times10^{-2}=0.10$ mol/L のまま(下の図)。
$$[\mathrm{Al^{3+}}][\ce{OH-}]^3=1.0\times10^{-32}\qquad0.10\times[\ce{OH-}]^3=1.0\times10^{-32}$$
$$[\ce{OH-}]^3=1.0\times10^{-31}\qquad[\ce{OH-}]=10^{-\frac{31}{3}}\ \mathrm{mol/L}$$
$\mathrm{pOH}=\dfrac{31}{3}$ で、水のイオン積が $1.0\times10^{-14}$ なので $\mathrm{pH}+\mathrm{pOH}=14$ 。
$$\mathrm{pH}=14-\dfrac{31}{3}=\dfrac{11}{3}=3.67\fallingdotseq3.7$$
答(オ) 3.7(5点)
問3(キ・ケ・コ)
冊子に標準状態のモル体積の指定が無いので、標準状態の気体 1 mol を 22.4 L とする。
陽極は白金なので板は溶けず、ハロゲン化物イオンも無いので、水が酸化されて酸素が発生する。陰極では、はじめに銅(Ⅱ)イオンが還元され、銅(Ⅱ)イオンが完全に消費されたあとは水素イオンが還元される(下の図)。
$$\text{陽極}\quad\ce{2H2O -> O2 + 4H+ + 4e-}$$
$$\text{陰極}\quad\ce{Cu^2+ + 2e- -> Cu}\qquad\ce{2H+ + 2e- -> H2}$$
まず、流れた電子の物質量を求める。
$$\dfrac{1.00\times96500}{9.65\times10^4}=1.00\ \mathrm{mol}\quad\text{(流れた電子の物質量)}$$
キ 銅(Ⅱ)イオン $5.0\times10^{-2}$ mol の析出に、電子は2倍の $0.10$ mol 使われる。残りの $1.00-0.10=0.90$ mol の電子で水素イオンが還元され、水素は電子の $\dfrac12$ の $0.45$ mol 発生する(下の図)。
$$0.45\times22.4=10.08\fallingdotseq1.0\times10\ \mathrm{L}$$
答(キ) $1.0\times10$ L(3点)
ケ 陽極では、電子 1 mol あたり水素イオンが 1 mol できるので、水素イオンは $1.00$ mol 増える。陰極では、水素の発生に使われた電子 $0.90$ mol と同じ $0.90$ mol の水素イオンが減る。差し引きで水素イオンは
$$1.00-0.90=0.10\ \mathrm{mol}\quad\text{(増えた水素イオン)}$$
増えた分は、析出した銅 $5.0\times10^{-2}$ mol の2倍で、銅(Ⅱ)イオンが水素イオンに置きかわった量になっている。電解前の水素イオン $5.0\times10^{-2}$ mol と合わせて、電解後の水素イオンは $0.15$ mol。硫酸1つから水素イオンは2個できるので、硫酸はその半分の $7.5\times10^{-2}$ mol で
$$\dfrac{7.5\times10^{-2}}{0.500}=0.15=1.5\times10^{-1}\ \mathrm{mol/L}\quad\text{(電解後の硫酸の濃度)}$$
答(ケ) $1.5\times10^{-1}$ mol/L(3点)
コ 銅はイオン化傾向が水素より小さいので、希硫酸には溶けず気体を出さない。溶液に銅(Ⅱ)イオンはもう無いので、亜鉛は水素イオンとだけ反応する。
$$\ce{Zn + 2H+ -> Zn^2+ + H2}$$
水素イオンは $0.15$ mol あり、亜鉛 $1.0\times10^{-2}$ mol と反応するのに必要な $2.0\times10^{-2}$ mol より十分多いので、亜鉛はすべて溶けて水素が $1.0\times10^{-2}$ mol 発生する。
$$1.0\times10^{-2}\times22.4=0.224\fallingdotseq2.2\times10^{-1}\ \mathrm{L}$$
答(コ) $2.2\times10^{-1}$ L(2点)
別解
問3(ケ) (全体の反応式で見る)銅(Ⅱ)イオンが残っている間は、陽極と陰極の式を電子をそろえて足すと $\ce{2CuSO4 + 2H2O -> 2Cu + O2 + 2H2SO4}$ となり、硫酸銅(Ⅱ)がそのまま同じ物質量の硫酸に変わる。銅(Ⅱ)イオンがなくなったあとは $\ce{2H2O -> 2H2 + O2}$ の水の電気分解で、硫酸の量は変わらない。よって電解後の硫酸は、はじめの硫酸 $2.5\times10^{-2}$ mol と硫酸銅(Ⅱ)から変わった $5.0\times10^{-2}$ mol を合わせた $7.5\times10^{-2}$ mol で、 $\dfrac{7.5\times10^{-2}}{0.500}=1.5\times10^{-1}$ mol/L。本解と同じ。
出題意図
問1 混合水溶液に酸化亜鉛・亜鉛を入れたとき、イオン化傾向にもとづいてどの反応がどの順に進むかを判断できるか
問2 電気分解の陰極で、銅(Ⅱ)イオンがなくなったあとに何が還元されるかを判断できるか
問3(イ・オ) 中和で減る硫酸の量と、溶解度積から沈殿し始める pH を求めることができるか
問3(キ・ケ・コ) 電子の物質量から両極の反応の量を求め、水素イオンの増減を追って硫酸の濃度を求めることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 22点 | 18点 |
| 目標時間 | 15分 | 15分 |
前半は「イオン化傾向の小さいイオンから還元される」「陰極は銀 → 銅 → 水素イオン」という決まった流れで、必ず取り切りたい。
差がつくのは後半の溶解度積と電気分解の濃度。
溶解度積は「イオンの積 > 溶解度積 で沈殿」、電気分解は「まず電子の物質量、次に水素イオンの増減を状況図で追う」と決めておけば迷わない。
重要問題集の電気分解と pH の問題を、状況図まで白紙に再現できるようにしておくこと。
差がつく所・失点しやすい所
- 問3(ケ・コ):第3問で大きく差がつく所。電気分解のあとの硫酸の量は、陽極で増える水素イオンと陰極で減る水素イオンの差し引きで決まる、という発想に行き着けるか。陰極で水素が発生したことだけを見て「水素イオンが減る」と考えると、ケで硫酸が減る向きに計算してしまう。コは、入れた銅が希硫酸に溶けないことに気づけるか。ケ・コの5点は、状況図を書いて水素イオンの増減を追えるかで決まる。
- 問3(オ):沈殿し始める瞬間はイオンの積=溶解度積とおき、アルミニウムイオンの濃度を硫酸アルミニウムの2倍の 0.10 mol/L にできるか。溶解度積から pH を求める問題は演習が手薄になりやすく、配点も5点と大きい。
2010年九州大学化学
第4問 解答・解説
第4問は理論化学(反応の速さと化学平衡)の問題です。
テーマは『触媒と活性化エネルギー』『酵素反応の速さ』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章(1)〜(3)を読み、問1〜問5に答えよ。
(1) 一般に触媒が存在すると化学反応は速くなる。この理由は、触媒が作用すると反応の仕組みが変わって $\boxed{\text{ ア }}$ のより小さい経路で反応が進むためである。触媒を用いた場合、反応熱は $\boxed{\text{ イ }}$ 。触媒はその作用の仕方で $\boxed{\text{ ウ }}$ と $\boxed{\text{ エ }}$ に大別できる。例えば、過酸化水素の水溶液中における分解反応の触媒として $\ce{FeCl3}$ 水溶液や $\ce{MnO2}$ 粉末を利用できるが、 $\ce{FeCl3}$ は $\boxed{\text{ ウ }}$ 、 $\ce{MnO2}$ は $\boxed{\text{ エ }}$ として働いている。
細胞内の化学反応の多くは触媒として酵素(Eと表記する)が関わっている。酵素が触媒として作用する物質を $\boxed{\text{ オ }}$ (Sと表記する)という。Sは酵素と結合して「酵素― $\boxed{\text{ オ }}$ 複合体」(E・Sと表記する)をつくる。
問1. $\boxed{\text{ ア }}$ 〜 $\boxed{\text{ オ }}$ に最も適切な語句を記せ。
(2) Sの加水分解により生成物Pを生じる反応を、酵素Eが触媒として進める場合を考えてみよう。
図1のように、酵素Eの作用する反応ではE・Sがつくられるため、反応は式①、式②で表される2つの段階にわけることができる。
$\mathrm{E} + \mathrm{S} \rightleftarrows \mathrm{E\cdot S}$ ……①
$\mathrm{E\cdot S} + \ce{H2O} \longrightarrow \mathrm{E} + \mathrm{P}$ ……②
E・Sに対して水が作用しPが生じるので、Pの生成する速度 $v$ は速度定数を $k$ として式③で与えられる。
$v = k[\ce{H2O}][\mathrm{E\cdot S}]$ ……③
最初に加えた酵素Eの濃度(初期濃度)を $c$ [mmol/L]とすると、反応の進行中、酵素Eの濃度 $[\mathrm{E}]$ [mmol/L]、E・Sの濃度 $[\mathrm{E\cdot S}]$ [mmol/L]の間には、式④の関係が常に成立する。ただし、mmol/L $=10^{-3}$ mol/Lとする。
$[\mathrm{E}] + [\mathrm{E\cdot S}] = c$ ……④
多くの酵素反応では、式①の正反応およびその逆反応はいずれも式②の反応と比べはるかに速い。したがって、式②の反応が進行中でも式①の平衡関係が成立しているとみなすことができる。
問2. 式①の平衡定数を $K$ $[(\mathrm{mmol/L})^{-1}]$ とする。 $K$ を $[\mathrm{E\cdot S}]$、 $c$、Sの濃度 $[\mathrm{S}]$ [mmol/L]を用いて表せ。
問3. $[\mathrm{E\cdot S}]$ を $K$、 $c$、 $[\mathrm{S}]$ を用いて表せ。
(3) 酵素による反応を水溶液中で行う場合、大過剰に存在する水の濃度 $[\ce{H2O}]$ [mmol/L]は定数とみなしてよい。文章(2)で説明した酵素反応において、式③の速度定数 $k$ $[(\mathrm{mmol/L})^{-1}(\text{秒})^{-1}]$ と $[\ce{H2O}]$ の積は $5.0\,(\text{秒})^{-1}$ であり、式①の平衡定数 $K$ は $0.10\,[(\mathrm{mmol/L})^{-1}]$ であった。
問4. 反応溶液内のSの濃度を高めると式①の平衡が移動するため、式②の反応速度 $v$ は増大する。しかしSの濃度をいくら高めても、最大速度 $v_\mathrm{max}$ とよばれる値を超えることはない。酵素Eの初期濃度 $c$ が0.30 mmol/Lである水溶液中で、酵素EによるSの加水分解反応を行なう場合の $v_\mathrm{max}$ を有効数字2桁で答えよ。
問5. 酵素の触媒能力の目安として、 $v$ が $v_\mathrm{max}$ の半分となるSの濃度が用いられる。酵素Eの初期濃度 $c$ が0.10 mmol/Lである水溶液では、酵素EによるSの加水分解反応の $v_\mathrm{max}$ は $0.50\,[(\mathrm{mmol/L})(\text{秒})^{-1}]$ である。 $v$ が $v_\mathrm{max}$ の半分となるSの濃度を有効数字2桁で答えよ。
解答の方針
【問1の方針】
触媒は反応の山を低くした別の道をつくるだけで、出発点(反応物)と到着点(生成物)の高さは変えない(下の図)。ウ・エは、触媒が反応物と同じ水溶液に溶けているか、固体のままかで分ける。


- 速くなる理由は、山の高さ(活性化エネルギー)が小さい経路で進むから。反応物と生成物の差(反応熱)は変わらない(ア・イ)。
- 水に溶けて働く $\ce{FeCl3}$ を均一触媒、固体の表面で働く $\ce{MnO2}$ を不均一触媒と答える(ウ・エ)。
- 酵素が作用する物質の名前(基質)を答える(オ)。
【問2の方針】
欲しいのは P の生成速度 $v=k[\ce{H2O}][\mathrm{E\cdot S}]$ なので、 $[\mathrm{E\cdot S}]$ を表しに行く。酵素は E か E・S のどちらかにある(下の図)ので、式④で $[\mathrm{E}]$ を消す。


- 式①の平衡定数の式を書く。式①に $\ce{H2O}$ は無いので入れない。
- 式④から $[\mathrm{E}]=c-[\mathrm{E\cdot S}]$ として平衡定数の式に入れ、 $[\mathrm{E}]$ を消す。
【問3の方針】
問2 の式は分母を払うと $[\mathrm{E\cdot S}]$ の1次式になるので、そのまま $[\mathrm{E\cdot S}]$ について解ける。
- 問2 の式の分母を払う。
- $[\mathrm{E\cdot S}]$ を含む項を1つの辺にまとめ、 $1+K[\mathrm{S}]$ で割る。
【問4の方針】
基質をいくら増やしても酵素の量 $c$ は決まっているので、酵素がほぼ全部 E・S になったときが最大の速さになる(下の図)。


- 問3 の式を式③に入れて、 $v$ を $[\mathrm{S}]$ の式で表す。
- $[\mathrm{S}]$ を大きくすると $[\mathrm{E\cdot S}]\to c$ になることから $v_\mathrm{max}=k[\ce{H2O}]c$ とし、数値を入れる。
【問5の方針】
速さが最大の半分になるのは、酵素のちょうど半分が E・S になるとき。与えられた $c$ と $v_\mathrm{max}$ の値には引っぱられず、式の形から決める。
- $v=v_\mathrm{max}\times\dfrac{K[\mathrm{S}]}{1+K[\mathrm{S}]}$ に $v=\dfrac{v_\mathrm{max}}{2}$ を入れて $K[\mathrm{S}]=1$ を出す。
- $[\mathrm{S}]=\dfrac{1}{K}$ に $K=0.10$ を入れる。
解答


解答をテキストで読む
問1
触媒が作用すると、反応物が活性化状態を通るときの山が低い別の経路で反応が進む。山の高さ、つまり活性化エネルギー以上のエネルギーをもつ粒子の割合が増えるので、反応が速くなる(下の図)。
答(ア) 活性化エネルギー(1点)
触媒は経路を変えるだけで、反応物と生成物のエンタルピーの差は変えない。問題文の「反応熱」は、今の教科書の言葉では反応エンタルピー $\Delta H$ である。
答(イ) 変わらない(1点)
$\ce{FeCl3}$ は水に溶けて、反応物の過酸化水素と同じ水溶液の中で働く。このように反応物と均一に混じり合って働く触媒が均一触媒である。一方、 $\ce{MnO2}$ は水に溶けない固体で、その表面で過酸化水素が分解する。このように反応物と混じり合わず、表面で働く触媒が不均一触媒である。
答(ウ) 均一触媒(1点)
答(エ) 不均一触媒(1点)
酵素が触媒として作用する相手の物質を基質という。E・S は酵素-基質複合体である。
答(オ) 基質(1点)
問2
式①の平衡定数は、生成物の濃度を反応物の濃度の積で割ったものである。式①に $\ce{H2O}$ は出てこないので、平衡定数の式にも入らない。
$$K=\dfrac{[\mathrm{E\cdot S}]}{[\mathrm{E}][\mathrm{S}]}$$
問題は $[\mathrm{E\cdot S}]$ 、 $c$ 、 $[\mathrm{S}]$ で表すよう求めているので、 $[\mathrm{E}]$ を消す。酵素は E か E・S のどちらかにあるので、式④から
$$[\mathrm{E}]=c-[\mathrm{E\cdot S}]$$
これを平衡定数の式に入れる。
答 $K=\dfrac{[\mathrm{E\cdot S}]}{\left(c-[\mathrm{E\cdot S}]\right)[\mathrm{S}]}$(4点)
問3
問2 の式の分母を払う。
$$K\left(c-[\mathrm{E\cdot S}]\right)[\mathrm{S}]=[\mathrm{E\cdot S}]$$
$[\mathrm{E\cdot S}]$ を含む項を右辺にまとめる。
$$cK[\mathrm{S}]=[\mathrm{E\cdot S}]\left(1+K[\mathrm{S}]\right)$$
両辺を $1+K[\mathrm{S}]$ で割る。
答 $[\mathrm{E\cdot S}]=\dfrac{cK[\mathrm{S}]}{1+K[\mathrm{S}]}$(6点)
問4
問3 の式を式③に入れると、P の生成速度は
$$v=k[\ce{H2O}][\mathrm{E\cdot S}]=k[\ce{H2O}]\,c\times\dfrac{K[\mathrm{S}]}{1+K[\mathrm{S}]}$$
$[\mathrm{S}]$ を大きくしていくと、分母の1は $K[\mathrm{S}]$ に比べて無視できるようになり、 $\dfrac{K[\mathrm{S}]}{1+K[\mathrm{S}]}$ は1に近づく。これは $[\mathrm{E\cdot S}]$ が $c$ に近づく、つまり酵素がほぼ全部 E・S になることを表している。酵素の量は $c$ と決まっているので、これより速くはならない(下の図)。
$$v_\mathrm{max}=k[\ce{H2O}]\,c$$
$k[\ce{H2O}]=5.0\,(\text{秒})^{-1}$ 、 $c=0.30$ mmol/L を入れる。
$$v_\mathrm{max}=5.0\times0.30=1.5$$
答 $1.5\ (\mathrm{mmol/L})(\text{秒})^{-1}$(5点)
問5
問4 より $v_\mathrm{max}=k[\ce{H2O}]\,c$ なので、どの $c$ でも
$$v=v_\mathrm{max}\times\dfrac{K[\mathrm{S}]}{1+K[\mathrm{S}]}$$
$v=\dfrac{v_\mathrm{max}}{2}$ と置くと
$$\dfrac{K[\mathrm{S}]}{1+K[\mathrm{S}]}=\dfrac{1}{2}$$
$$2K[\mathrm{S}]=1+K[\mathrm{S}]\qquad K[\mathrm{S}]=1$$
よって $[\mathrm{S}]=\dfrac{1}{K}$ で、 $K$ だけで決まる。 $K=0.10\,(\mathrm{mmol/L})^{-1}$ を入れる。
$$[\mathrm{S}]=\dfrac{1}{0.10}=10$$
問題文の $c=0.10$ mmol/L と $v_\mathrm{max}=0.50$ は、答えには使わない。
答 $1.0\times10$ mmol/L(3点)
別解
問5 (ミカエリス定数を知っている場合) 問5 の $v$ の式の分母と分子を $K$ で割ると
$$v=\dfrac{v_\mathrm{max}[\mathrm{S}]}{\dfrac{1}{K}+[\mathrm{S}]}$$
となり、ミカエリス・メンテンの式 $v=\dfrac{v_\mathrm{max}[\mathrm{S}]}{K_\mathrm{m}+[\mathrm{S}]}$ と同じ形になる(ミカエリス定数 $K_\mathrm{m}=\dfrac{1}{K}$ )。 $v=\dfrac{v_\mathrm{max}}{2}$ になる基質の濃度はミカエリス定数そのものなので、 $[\mathrm{S}]=K_\mathrm{m}=\dfrac{1}{0.10}=10$ mmol/L。ただし、式①の平衡定数 $K$ は E と S が結合する向きの定数なので、ミカエリス定数はその逆数になることに注意する。
出題意図
問1 触媒が活性化エネルギーの小さい経路をつくり、反応エンタルピーは変えないことと、均一触媒・不均一触媒・基質の言葉を答えられるか
問2・問3 式①の平衡定数の式と、酵素が E か E・S のどちらかにあるという式④から、 $[\mathrm{E\cdot S}]$ を指定の文字で表すことができるか
問4・問5 基質を増やすと酵素がほぼ全部 E・S になることから最大速度を求め、速さが最大速度の半分になる基質の濃度を、式の意味から求めることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや難 | |
| 目標得点 | 20点 | 16点 |
| 目標時間 | 15分 | 15分 |
2010年の化学の合否を分けた大問。
酵素反応の速さを表すミカエリス・メンテンの式の導入で、知っていれば標準、知らなければやや難の大問だ。
流れは「欲しい速さから E・S を表しに行く」「酵素は E か E・S のどちらかで1文字消す」「基質を増やせば酵素が全部 E・S になる」の3つで決まっている。
重要問題集にもこの大問の改題が入っているので、白紙から最大速度まで再現できるまで仕上げておこう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問4・問5:基質を増やすと酵素がほぼ全部 E・S になる( $[\mathrm{E\cdot S}]\to c$ )、という発想に行き着けるか。問3 の式までは書けても、 $v_\mathrm{max}$ をどう出すかで手が止まりやすい。問4 が分かれば、問5 は $v=\dfrac{v_\mathrm{max}}{2}$ と置くだけで解けるので、ここで8点が分かれる。
- 問2・問3:酵素は E か E・S のどちらかにある(式④)で $[\mathrm{E}]$ を消す、という発想に行き着けるか。ここを落とすと問4・問5 まで続かない。
2010年九州大学化学
第5問 解答・解説
第5問は有機化学の問題です。
テーマは『アルコールの構造決定』『異性体の数え上げ』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問6に答えよ。
炭素と水素からなり常温・常圧で気体である化合物Aは、臭素水に通じると臭素水の赤褐色を脱色した。化合物Aを水と反応させると、常温・常圧において液体で、沸点が異なる異性体の化合物Bおよび化合物Cを生じた。化合物B 11.1 mgを完全燃焼させたところ、二酸化炭素が26.4 mg、水が13.5 mg生じた。化合物BおよびCに二クロム酸カリウムの硫酸酸性水溶液を加えて加熱すると、化合物Bからは化合物Dが、化合物Cからは化合物Eが得られた。化合物Dにヨウ素と水酸化ナトリウム水溶液を加えて温めた(a)結果、黄色沈殿が生じた。また、化合物Dにアンモニア性硝酸銀水溶液を加えて温めた(b)が、とくに変化は見られなかった。一方、化合物Eについて同様の操作を行ったところ、下線(a)の操作では変化が見られず、下線(b)の操作では試験管壁面への金属析出が確認された。また、化合物DおよびEをそれぞれ過マンガン酸カリウムの硫酸酸性水溶液で処理すると、片方の化合物 $\boxed{\text{ ア }}$ でのみ水溶液に色の変化が生じた。色の変化が生じた水溶液中には化合物 $\boxed{\text{ ア }}$ から化合物Fが生成していた。
問1. 化合物Bの分子式を記せ。
問2. 化合物BとCの構造式を記せ。また、化合物BおよびCの構造異性体の構造式を全て記せ(ただし、化合物BおよびCは含めない)。なお、構造式中に不斉炭素原子が存在する場合は当該炭素原子に*を付すこと。
問3. 化合物Aの構造式を記せ。また、化合物Aの構造異性体の構造式を全て記せ(ただし、化合物Aは含めない)。
問4. 下線(a)の操作で沈殿を生じる反応、および下線(b)の操作で金属が析出する反応の名称を答え、化合物DおよびEの構造式を記せ。
問5. 文章中の下記の化学反応のうち、もっとも起こりにくいと考えられる反応を一つ選び、番号で答えよ。
(1) 化合物A → 化合物B
(2) 化合物A → 化合物C
(3) 化合物B → 化合物D
(4) 化合物C → 化合物E
問6. $\boxed{\text{ ア }}$ に当てはまる化合物を記号で答え、化合物Fの構造式を記せ。
解答の方針
【問1の方針】
二酸化炭素の中の C と水の中の H がそのまま B の C と H。残りの質量が O。
- 二酸化炭素と水の質量から C と H の質量を求め、O の質量は全体から引いて求める。
- 物質量の比から組成式を求める。
- H の数が上限( $2n+2$ )に達していることから、分子式を組成式と同じと決める。
【問2の方針】
酸化してできたものがケトンなら第二級、アルデヒドなら第一級のアルコール。D と E の性質から B と C の級が決まり、水の付加で炭素骨格が変わらないことから C の形も決まる(下の図)。


- D はヨードホルム反応を示し銀鏡反応を示さないので、 $\ce{CH3CO-{}}$ をもつケトンと決め、B を第二級アルコールの2-ブタノールとする。
- E は銀鏡反応を示すのでアルデヒドと決め、C を第一級アルコールとする。B と C は同じ A からできるので炭素骨格が同じ(枝分かれなし)として、C を1-ブタノールとする。
- $\ce{C4H10O}$ の構造異性体を、アルコール(OH の位置と骨格)とエーテル(O の位置)に分けて書き出し、B・C を除く。
- 炭素1つずつに4つの違う基が付いているかを確かめ、不斉炭素に*を付ける。
【問3の方針】
水が付加するので A は $\ce{C4H8}$ のアルケン。鎖式のアルケン3つに OH を2通りに付け、2-ブタノールと1-ブタノールの両方ができるものを選ぶ(下の図)。


- A を、B の分子式から $\ce{H2O}$ を引いた $\ce{C4H8}$ とする。
- 鎖式のアルケン(1-ブテン・2-ブテン・2-メチルプロペン)に水を付加したときのアルコールを書き、B と C の両方ができる1-ブテンを A とする。
- $\ce{C4H8}$ の構造異性体を、鎖式(二重結合の位置と骨格)と環式(四員環・三員環)に分けて書き出し、A を除く。
【問4の方針】
ヨードホルム反応は $\ce{CH3-CO-{}}$ の形、銀鏡反応は $\ce{-CHO}$ の形を見分ける反応。D・E の構造式でその部分を確かめる(下の図)。


- (a) をヨードホルム反応、(b) を銀鏡反応と答える。
- B(2-ブタノール)の OH の付いた $\ce{CH}$ を $\ce{C=O}$ にして D(2-ブタノン)を書く。
- C(1-ブタノール)の端の $\ce{CH2-OH}$ を $\ce{CHO}$ にして E(ブタナール)を書く。
【問5の方針】
1-ブテンに水が付くとき、H は二重結合の炭素のうち H の多い方に付き、OH は H の少ない方に付く。OH が端に付いた1-ブタノールはほとんどできない(下の図)。


- (3)・(4) の酸化はどちらも定番の反応で、ふつうに進むと確かめる。
- 1-ブテンへの水の付加で、主にできるのは2-ブタノール(B)、ほとんどできないのは1-ブタノール(C)と決める。
- 起こりにくい反応として (2) を選ぶ。
【問6の方針】
過マンガン酸カリウムで酸化されるのはアルデヒドで、ケトンは酸化されない。赤紫色が消えるのはアルデヒドの E の方(下の図)。


- ケトンの D は酸化されないので色は変わらず、アルデヒドの E だけが酸化されて色が変わると決める。
- E の $\ce{-CHO}$ を $\ce{-COOH}$ にして F(ブタン酸)を書く。
解答




解答をテキストで読む
問1
冊子に原子量の指定が無いので、H=1.0、C=12、O=16 を使う。B を完全燃焼させると、B の C はすべて $\ce{CO2}$ に、H はすべて $\ce{H2O}$ になる。
・C の質量: $26.4\times\dfrac{12}{44}=7.2$ mg
・H の質量: $13.5\times\dfrac{2.0}{18}=1.5$ mg
・O の質量: $11.1-7.2-1.5=2.4$ mg
$$\mathrm{C}:\mathrm{H}:\mathrm{O}=\dfrac{7.2}{12}:\dfrac{1.5}{1.0}:\dfrac{2.4}{16}=0.60:1.5:0.15=4:10:1$$
組成式は $\ce{C4H10O}$。C が4個のとき H は最大で $2\times4+2=10$ 個なので、H はもう上限に達している。分子式を2倍の $\ce{C8H20O2}$ にすると H が上限の18個を超えるので、分子式は組成式と同じ。
答 $\ce{C4H10O}$(2点)
問2
D はヨードホルム反応で黄色沈殿を生じ、銀鏡反応は示さないので、 $\ce{CH3-CO-{}}$ をもつケトン。アルコールを酸化してケトンができるのは第二級アルコールなので、B は第二級アルコール。 $\ce{C4H10O}$ の第二級アルコールは2-ブタノール $\ce{CH3-CH(OH)-CH2-CH3}$ だけで、酸化すると $\ce{CH3-CO-{}}$ をもつ2-ブタノンになり、D の性質と合う。
E は銀鏡反応を示すのでアルデヒド。酸化してアルデヒドができるのは第一級アルコールなので、C は第一級アルコール。 $\ce{C4H10O}$ の第一級アルコールは1-ブタノールと2-メチル-1-プロパノールの2つ。B と C は同じ A に水が付加してできたもので、水の付加では炭素骨格は変わらない。B は枝分かれのない骨格なので、C も枝分かれのない1-ブタノール(下の図)。
B の OH の付いた炭素には、H・OH・ $\ce{CH3}$・ $\ce{CH2CH3}$ の4つの違う基が付くので不斉炭素(*)。
答 $\mathbf{B}=\ce{CH3-CH(OH)-CH2-CH3}$(2-ブタノール、*を付けた構造式は上の図)(2点)
答 $\mathbf{C}=\ce{CH3-CH2-CH2-CH2-OH}$(1-ブタノール、構造式は上の図)(2点)
$\ce{C4H10O}$ の構造異性体は、アルコールとエーテルに分けて数える。
・アルコール:枝分かれのない骨格に OH を端か内側に付けた1-ブタノール・2-ブタノールと、枝分かれのある骨格に OH を端か枝の根元に付けた2-メチル-1-プロパノール・2-メチル-2-プロパノールの4つ
・エーテル:O の両側の炭素の数を (2, 2)・(1, 3) に分け、(1, 3) は3個の側が枝分かれするかどうかで2つ。ジエチルエーテル・メチルプロピルエーテル・イソプロピルメチルエーテルの3つ
合わせて7つで、B・C を除いた5つが答え。不斉炭素をもつのは2-ブタノールだけで、2-メチル-2-プロパノールの中心の炭素やイソプロピルメチルエーテルの CH は $\ce{CH3}$ が2つ以上付くので不斉炭素ではない(下の図)。
答 2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、ジエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、イソプロピルメチルエーテル(構造式は上の図、どれも不斉炭素原子はない)(5点)
問3
A は C と H だけからなり、臭素水を脱色するので二重結合をもつ。A に水が付加して B( $\ce{C4H10O}$ )ができるので、A の分子式は $\ce{C4H10O}-\ce{H2O}=\ce{C4H8}$。
鎖式の $\ce{C4H8}$ のアルケンに水を付加すると、次のようになる(下の図)。
・1-ブテン:OH が内側の炭素に付くと2-ブタノール(第二級)、端の炭素に付くと1-ブタノール(第一級)。B と C の両方ができる
・2-ブテン:二重結合の左右が同じ形なので、どちらに OH が付いても2-ブタノールの1種類だけ
・2-メチルプロペン:2-メチル-2-プロパノール(第三級)と2-メチル-1-プロパノール(第一級)で、第二級ができない
よって A は1-ブテン。
$\ce{C4H8}$ の構造異性体は、鎖式のアルケン3つ(1-ブテン・2-ブテン・2-メチルプロペン)と、二重結合の代わりに環をもつシクロアルカン2つ(シクロブタン・メチルシクロプロパン)の5つ。A を除いた4つが答え。2-ブテンのシス形とトランス形は立体異性体なので、構造異性体としては1つと数える(下の図)。
答 $\mathbf{A}=\ce{CH2=CH-CH2-CH3}$(1-ブテン、構造式は上の図)(1点)
答 2-ブテン、2-メチルプロペン、シクロブタン、メチルシクロプロパン(構造式は上の図)(4点)
問4
ヨウ素と水酸化ナトリウム水溶液を加えて温めると、ヨードホルム $\ce{CHI3}$ の黄色沈殿ができる。これはヨードホルム反応で、 $\ce{CH3-CO-{}}$ または $\ce{CH3-CH(OH)-{}}$ の形をもつ化合物が示す。
答(a) ヨードホルム反応(1点)
アンモニア性硝酸銀水溶液を加えて温めると、銀イオンが還元されて試験管の壁に銀が析出する。これは銀鏡反応で、還元性をもつホルミル基 $\ce{-CHO}$ をもつ化合物が示す。
答(b) 銀鏡反応(1点)
D は2-ブタノールの OH の付いた $\ce{CH}$ が $\ce{C=O}$ になった2-ブタノンで、 $\ce{CH3-CO-{}}$ をもつのでヨードホルム反応を示し、 $\ce{-CHO}$ をもたないので銀鏡反応は示さない。E は1-ブタノールの端の $\ce{CH2-OH}$ が $\ce{CHO}$ になったブタナールで、 $\ce{-CHO}$ をもつので銀鏡反応を示し、 $\ce{CH3-CO-{}}$ をもたないのでヨードホルム反応は示さない(下の図、色を付けた所が反応する部分)。
答 $\mathbf{D}=\ce{CH3-CO-CH2-CH3}$(2-ブタノン、構造式は上の図)(2点)
答 $\mathbf{E}=\ce{CH3-CH2-CH2-CHO}$(ブタナール、構造式は上の図)(2点)
問5
(3) は第二級アルコールからケトン、(4) は第一級アルコールからアルデヒドができる定番の酸化で、どちらもふつうに進む。
(1)・(2) はどちらも1-ブテンへの水の付加。アルケンに水が付くとき、H は二重結合の炭素のうち H の多い方に付き、OH は H の少ない方に付いたものが主生成物になる(マルコフニコフ則)。1-ブテンでは、H が端の $\ce{CH2}$ に付いて OH が内側の $\ce{CH}$ に付いた2-ブタノール(B)が主にでき、逆向きの1-ブタノール(C)はほとんどできない(下の図)。
よって、もっとも起こりにくいのは A → C。
答 (2)(3点)
問6
過マンガン酸カリウムの硫酸酸性水溶液は強い酸化剤で、アルデヒドはさらに酸化されてカルボン酸になる。このとき $\ce{MnO4-}$(赤紫色)が $\ce{Mn^2+}$(ほぼ無色)になるので、水溶液の色が変わる。ケトンはそれ以上酸化されないので、色は変わらない。よって色が変わるのはアルデヒドの E。
答(ア) E(1点)
E(ブタナール)の $\ce{-CHO}$ が酸化されて $\ce{-COOH}$ になり、F はブタン酸(酪酸)(下の図)。
答 $\mathbf{F}=\ce{CH3-CH2-CH2-COOH}$(ブタン酸、構造式は上の図)(2点)
出題意図
問1 燃焼で生じた二酸化炭素と水の質量から、分子式を求められるか
問2 酸化生成物のヨードホルム反応と銀鏡反応からアルコールの級を決め、 $\ce{C4H10O}$ の構造異性体を漏れなく書けるか
問3 水の付加で B と C の両方ができるアルケンを決め、 $\ce{C4H8}$ の構造異性体を環式まで漏れなく書けるか
問4 ヨードホルム反応と銀鏡反応の名前と、それぞれを示す構造を結びつけられるか
問5 アルケンへの水の付加の向き(マルコフニコフ則)から、できにくい生成物を判断できるか
問6 過マンガン酸カリウムで酸化されるのはアルデヒドで、ケトンは酸化されないと判断できるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 28点 | 28点 |
| 目標時間 | 12分 | 15分 |
ヨードホルム反応と銀鏡反応でアルコールの級を決める、九大の有機としてオーソドックスな構造決定だ。
差がつくのは異性体を「すべて」書く2問で、エーテルや環式の化合物を落とすと点にならない。
異性体は骨格と官能基の位置で順に書き出す型を身につけ、炭素4個までの異性体は数まで即答できるようにしておこう。
この大問は時間をかけずに満点を取り切りたい。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2・問3:異性体を「すべて」書く2問。アルコールだけでなくエーテル3つ、鎖式のアルケンだけでなく環式2つまで思い至れるか。どれか1つ落とすと点にならないので、骨格と官能基の位置で順に書き出す習慣があるかで差がつく(合わせて9点)。
- 問5:B と C の両方ができると書かれている中で、水の付加の向きに偏りがあることに気づけるか。(3)・(4) の酸化を疑って迷いやすい。
2010年九州大学・化学の
講評とまとめ
5問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | やや簡単 | 26点 | 20点 |
| 第2問 | やや簡単 | 23点 | 19点 |
| 第3問 | 標準 | 22点 | 18点 |
| 第4問 | やや難 | 20点 | 16点 |
| 第5問 | やや簡単 | 28点 | 28点 |
| 全体 | やや簡単 | 105点 | 90点 |
大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で105点、その他の学部で90点)にはなりません。
全体的に難易度はやや簡単な年。
大問が5題で、1題にかけられる時間は15分ほどありました。
第1問・第2問は気体の製法と鉄の知識、第5問はヨードホルム反応と銀鏡反応でアルコールの級を決める定番の構造決定で、ここは満点を取りたいところです。
第3問は計算が中心ですが難しくはなく、後半の溶解度積と電気分解で差がつきます。
この年の合否を分けたのは第4問の酵素反応の速さで、ミカエリス・メンテンの式の導入を知っているかどうかで決まりました。
そこそこの高得点は簡単に取れますが、第4問があるので、とても高い点を取るのは難しいセットです。
解く流れ
第1問 → 第2問 → 第3問 → 第4問 → 第5問。
2010年九州大学・化学に
関するよくある質問
2010年の九州大学・化学について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2010年の九州大学・化学は難しかった?
-
全体的に難易度はやや簡単な年でした。
第4問はやや難、第3問は標準、第1問・第2問・第5問はやや簡単です。
大問は5題で、配点は23〜28点と大問ごとに違います。 - 2010年の九州大学・化学は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で105点、その他の学部で90点です(125点満点)。
- 2010年の九州大学・化学はどこで差がつく?
-
この年の合否を分けたのは第4問の酵素反応の速さで、差がついたのは次の3つでした。
- 第4問 問4・問5:基質を増やすと酵素がほぼ全部 E・S になることから最大速度を求め、速さが最大速度の半分になる基質の濃度を式の意味から出せたか。
- 第3問 オ・ケ:溶解度積から沈殿し始める pH を求め、電気分解のあとの硫酸の量を水素イオンの増減の差し引きで追えたか。
- 第5問 問2・問3:アルコールとエーテル、鎖式と環式まで、異性体を「すべて」漏れなく書けたか。
- 2010年の九州大学・化学は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:無機化学・理論化学
- 第2問:無機化学・理論化学
- 第3問:理論化学(酸化・還元と電池・電気分解)
- 第4問:理論化学(反応の速さと化学平衡)
- 第5問:有機化学




