【解説・配点付き】2011年九州大学化学の解答・解説
2011年の九州大学・化学の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2011年九州大学化学
第1問 解答・解説
この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は理論化学(化学結合と結晶)の問題です。
テーマは『電子式と配位結合』『電子不足のジボラン』。
問題


問題文をテキストで読む
以下は、高校生A君と九大生B君の会話である。文中の $\boxed{\text{ ア }}$ 〜 $\boxed{\text{ コ }}$ に適切な数字、語句を記せ。
A君:先輩の大学の化学の教科書に、ジボランと呼ばれるホウ素の水素化合物は電子不足化合物と書かれています。電子不足の意味がわからないので教えてください。
B君:文字通り電子が足りない化合物だ。これは高校で学ぶ化学の知識があれば説明できるよ。まず、高校で習った元素の周期表におけるホウ素の位置と、ホウ素原子の価電子数と原子価を答えてごらん。
A君:ホウ素は第 $\boxed{\text{ ア }}$ 周期の $\boxed{\text{ イ }}$ 族の元素です。価電子の数は $\boxed{\text{ ウ }}$ 個。原子価は $\boxed{\text{ エ }}$ 価で窒素と同じですね。
B君:ホウ素の原子価が窒素と同じ理由を説明できるかな。
A君:原子価は原子が持っている $\boxed{\text{ オ }}$ の数に相当するので窒素と同じです。
B君:ホウ素の最も単純な水素化合物はモノボランと呼ばれる分子だ。分子式は $\ce{BH3}$ で気体なんだ。モノボラン分子とアンモニア分子の共有結合を電子式を書いて比べてごらん。どこが異なっているのかな。
A君:アンモニアの窒素原子には1組の $\boxed{\text{ カ }}$ がありますが、モノボランのホウ素にはありません。
B君:モノボランは不安定な分子だから、2つの分子が互いに結合して分子式が $\ce{B2H6}$ のジボランになる。この図(右図)がジボランの構造式だ。 $\ce{BH3}$ の1個の水素がもう1つの $\ce{BH3}$ のホウ素に結合して $\ce{B2H6}$ ができている。それでは実際のジボランの電子数を、ジボランの共有結合がすべて単結合と仮定した場合と比べてごらん。
A君:そうか。実際のジボラン分子は電子が $\boxed{\text{ キ }}$ 個少ないんだ。だから電子不足化合物と呼ばれるのか。すると2つのホウ素の間にある水素とホウ素の結合は、1つの結合あたりに電子が $\boxed{\text{ ク }}$ 個共有されることになるのですね。もう1つ質問があります。 $\ce{BH4-}$ は $\ce{BH3}$ と比べて安定な化合物で、立体構造はアンモニウムイオンと同じ $\boxed{\text{ ケ }}$ 形です。これは不安定なモノボランに1個の水素原子が結合した化合物と考えられますが、なぜ陰イオンで、なぜ安定なのですか。
B君: $\ce{BH3}$ の中心のホウ素原子は1組の $\boxed{\text{ カ }}$ を受け入れることができるんだ。 $\ce{BH4-}$ は $\ce{BH3}$ のホウ素に水素化物イオンと呼ばれる水素の陰イオン( $\ce{H-}$ )1個が $\boxed{\text{ コ }}$ 結合した化合物で、 $\ce{BH4-}$ のホウ素にはもうこれ以上原子が結合する部分が無いから安定だと考えれば良いんだよ。
解答の方針
【空欄ア〜オの方針】
ホウ素は原子番号5。電子配置が分かれば、周期・族・価電子がすべて決まる。原子価は、電子式で対になっていない電子(不対電子)の数で、共有結合の手の数にあたる(下の図)。


- B の電子配置を K殻2個・L殻3個と書く。
- 最外殻が L殻なので第2周期、価電子が3個なので13族と決める。
- B の電子式を書き、3個の価電子がすべて不対電子であることから原子価を決める。N も電子式で不対電子を数え、同じ数になることを確かめる。
【空欄カの方針】
B は価電子が3個しかないので、H 3つと結合しても B のまわりは電子6個で止まり、N のような非共有電子対が残らない。2つの電子式を並べて書けば違いが見える(下の図)。


- $\ce{NH3}$ と $\ce{BH3}$ の電子式を書く。
- 中心の原子のまわりの電子対を、共有電子対と非共有電子対に分けて比べる。
【空欄キ・クの方針】
ジボランは初見でも、やることは電子を数えるだけ。結合をすべて単結合(電子2個)とした数と実際の価電子の合計を比べ、足りない分は2つの B の間の結合にしわ寄せが来ていると読む(下の図)。


- 図の B−H 結合を数え、すべて単結合と仮定したときの電子の数を求める。
- 実際の価電子の合計を B 2個と H 6個から求め、手順1の数との差をとる(キ)。
- 端の B−H 4本に単結合の電子を割り当て、残りの電子を2つの B の間の B−H 4本で分ける(ク)。
【空欄ケ・コの方針】
$\ce{BH3}$ の B には電子対1組分の空きがある。ここに $\ce{H-}$ の非共有電子対を受け取れば、B のまわりは電子対4組になる。 $\ce{NH4+}$ の配位結合とは、電子対を出す側と受け取る側が逆(下の図)。


- $\ce{BH4-}$ の電子式を書き、電荷が −1 になることを電子の数で確かめる。
- B のまわりの電子対が4組で、すべてに H がつくことから形を決める(ケ)。
- 新しくできた B−H 結合の電子対を、どちらが出したかで結合の名前を決める(コ)。
解答


解答をテキストで読む
空欄ア〜オ
B は原子番号5で、電子配置は K殻2個・L殻3個。最外殻が内側から2番目の L殻なので第2周期。最外殻電子の3個がそのまま価電子で、第2周期で価電子3個の元素は13族(下の図)。
電子式では、B の価電子3個はどれも対をつくらず、不対電子が3個。共有結合は不対電子どうしが対をつくってできるので、不対電子の数が結合の手の数(原子価)になる。N は価電子5個のうち2個が非共有電子対になり、不対電子は3個。価電子の数は B と N で違うが、不対電子の数が同じなので、原子価はどちらも3。
答(ア) 2(2点)
答(イ) 13(2点)
答(ウ) 3(2点)
答(エ) 3(2点)
答(オ) 不対電子(2点)
空欄カ
$\ce{NH3}$ では、N の不対電子3個が H 3つと共有電子対をつくり、N のまわりは電子8個(Ne と同じ電子配置)。残りの2個は非共有電子対になる。 $\ce{BH3}$ でも、B の不対電子3個が H 3つと共有電子対をつくるが、B のまわりは電子6個で、非共有電子対は無い(下の図)。B は希ガスの電子配置にならず、電子対1組分が空いたまま。この空きが、モノボランが不安定な理由で、キ〜コの話につながる。
答(カ) 非共有電子対(2点)
空欄キ・ク
図のジボランには B−H 結合が8本ある。すべて単結合(共有電子対1組=電子2個)と仮定すると、電子は $2\times8=16$ 個いる。実際の価電子の合計は、B(価電子3個)2個と H(価電子1個)6個で、 $3\times2+1\times6=12$ 個。単結合と仮定した数より4個少ない(下の図)。
端の B−H 4本はふつうの単結合で、電子を2個ずつ、合わせて8個使う。残りの電子は $12-8=4$ 個で、これを2つの B の間にある B−H 4本で分けるので、1本あたり $4\div4=1$ 個。B−H−B の3つの原子で電子2個を共有している形で、大学の化学では3中心2電子結合と呼ばれる。
答(キ) 4(4点)
答(ク) 1(2点)
空欄ケ・コ
$\ce{BH4-}$ の電子式は、電子の数の帳尻で考える。 $\ce{BH3}$ に H 原子を1個つけると、B のまわりは電子7個で、希ガスの電子配置にあと1個足りない。そこに電子を1個補うと、B のまわりは電子8個(電子対4組)になる。もとの原子より電子が1個多いので、全体として −1 の陰イオン。これは、電子を1個余分にもつ $\ce{H-}$ が、非共有電子対ごと B に結合したのと同じ(下の図)。
B のまわりの電子対4組はたがいに反発し、できるだけ遠ざかるように正四面体の頂点の方向を向く。4組すべてに H がつくので、形は正四面体形。 $\ce{NH4+}$ も N のまわりの電子対4組すべてに H がつき、同じ形になる(下の図)。
新しくできた B−H 結合の電子対は $\ce{H-}$ が一方的に出し、B は受け取るだけ。片方の原子だけが電子対を提供する共有結合は配位結合。 $\ce{NH3}$ と $\ce{H+}$ では N が電子対を出す側だったが、 $\ce{BH3}$ と $\ce{H-}$ では B が受け取る側になる(上の電子式の図)。できたあとの4本の B−H 結合は区別できない。 $\ce{BH4-}$ の B は電子対4組で希ガスの電子配置になり、もう電子対を受け取る空きが無いので安定。
答(ケ) 正四面体(2点)
答(コ) 配位(2点)
出題意図
- 空欄ア〜オ:ホウ素の電子配置から、周期表の位置・価電子・原子価(不対電子の数)を答えられるか。
- 空欄カ:電子式を書いて、アンモニアとモノボランの違い(非共有電子対の有無)に気づけるか。
- 空欄キ・ク:初見のジボランでも、価電子の合計を数え直して、結合1本あたりの電子の数を求められるか。
- 空欄ケ・コ:$\ce{BH4-}$ の形と、モノボランが非共有電子対を受け取る配位結合を説明できるか。
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 20点 | 18点 |
| 目標時間 | 8分 | 10分 |
電子式と配位結合の基本だけで大半が埋まる大問。
初見のジボランが出るが、電子式と同じく「電子を数える」だけで解ける。
見慣れない物質が出たときほど、知っている知識に言いかえてから考えること。
重要問題集の電子式と配位結合を、白紙に再現できるまで仕上げておこう。
差がつく所・失点しやすい所
- 空欄キ・ク:差がつくとしたらここ。初見のジボランでも、「結合の数×2」と「価電子の合計」を比べるという発想に行き着けるか。キができればクは残りの電子を4本で分けるだけ。ふつうの単結合のつもりで「2」と書かないこと。
2011年九州大学化学
第2問 解答・解説
第2問は理論化学(酸化・還元と電池・電気分解)・高分子化合物の問題です。
テーマは『燃料電池の電極反応』『電気量の計算』。
問題


問題文をテキストで読む
※ 試験当日に問題の訂正がありました(問1 の「分子式」を「化学式」に)。ここでは訂正後の文で載せています。
次の文章を読み、問1〜問3に答えよ。
物質の化学エネルギーを電気エネルギーとして取り出す装置を電池という。近年、環境にやさしいエネルギーを作り出す目的から、燃料電池が注目を集めている。燃料電池では、水素(燃料)と酸素を反応させて水を作る際に電気エネルギーを取り出している。
問1. 右図は電解質に高分子の膜を用いた場合の発電原理である。以下に示した電子を含むイオン反応式の( )に適当な記号や化学式を記せ。また、正極および負極を合わせた全体での反応式も記せ。
正極:( )+( )+( ) $\ce{->}$ $2\,\ce{H2O}$
負極: $\ce{H2}$ $\ce{->}$ ( )+( )
全体:( )+( ) $\ce{->}$ $2\,\ce{H2O}$
問2. 水素2.0 gを消費した際に流れる電気量[C]を有効数字2桁で求めよ。ただし、酸素は十分に存在しているとする。
問3. 下図に示した高分子化合物のうち、燃料電池の電解質に適するのはどれか。最適なものを解答欄に記号で記せ。ただし、分子式中の $n$ は任意の数字が入る。
解答の方針
【問1の方針】
燃料電池は、負極で水素が電子を放出し、正極で酸素が電子を受け取る電池である。電解質の高分子の膜の中を動くのは水素イオンなので、電極反応は水素イオンを使う酸性の形で書く(下の図)。


- 負極は水素が電子を放出して水素イオンになる反応。原子の数と電荷をそろえて書く。
- 正極は酸素が電子を受け取り、膜を通ってきた水素イオンと結びついて水になる反応。右辺が $2\,\ce{H2O}$ になるように係数を決める。
- 負極の式を2倍して電子の数を正極にそろえ、2本を足して水素イオンと電子を消し、全体の反応式にする。
【問2の方針】
電池の計算は、まず電子の物質量を求める。負極の反応式から、水素1 mol が反応すると電子が2 mol 流れる(下の図)。


- 水素の質量をモル質量で割って、水素の物質量を求める。
- 負極の反応式の係数から、流れた電子の物質量を求める。
- 電子の物質量にファラデー定数をかけて電気量にし、有効数字2桁にする。
【問3の方針】
燃料電池の電解質の役目は、負極でできた水素イオンを正極まで通すこと。だから、水素イオンを出せる強い酸の官能基をもつ高分子を選ぶ。陽イオン交換樹脂と同じスルホ基をもつものだけが当てはまる(下の図)。


- (a)〜(d) の側鎖の官能基を確かめる。
- 水素イオンを出せる官能基をもつのはどれかを判定し、1つを選ぶ。
解答


解答をテキストで読む
問1
電解質の高分子の膜の中を動くのは水素イオンなので、電極反応は酸性の形(水素イオンを使う形)で書く。図でも、水と残りの酸素は正極の側から出ていくので、水ができるのは正極である(下の図)。
負極では、水素が電子を放出して水素イオンになる。水素の酸化数は0から +1 に上がるので、電子を放出する酸化。
$$\ce{H2 -> 2H+ + 2e-}$$
正極では、酸素が電子を受け取り、膜を通ってきた水素イオンと結びついて水になる。酸素の酸化数は0から −2 に下がるので、電子を受け取る還元。右辺の $2\,\ce{H2O}$ に合わせると、O が2個、H が4個なので $\ce{4H+}$ 、電荷をそろえるために $\ce{4e-}$ がいる。
$$\ce{O2 + 4H+ + 4e- -> 2H2O}$$
負極で放出された電子は導線を通って正極へ、水素イオンは膜の中を正極へ移動する。全体の反応式は、負極の式を2倍して電子の数を4にそろえ、正極の式と足す。
$$\ce{2H2 -> 4H+ + 4e-}$$
$$\ce{O2 + 4H+ + 4e- -> 2H2O}$$
$\ce{4H+}$ と $\ce{4e-}$ が両辺で消えて、水素の燃焼と同じ反応になる。
(正極の3つ・負極の2つ・全体の2つは、それぞれ順不同)
答(正極) $\ce{O2 + 4H+ + 4e- -> 2H2O}$(4点)
答(負極) $\ce{H2 -> 2H+ + 2e-}$(2点)
答(全体) $\ce{2H2 + O2 -> 2H2O}$(2点)
問2
酸素は十分にあるので、消費した水素はすべて負極で反応する。まず水素の物質量を求める。水素 $\ce{H2}$ のモル質量は2.0 g/mol。
$$\dfrac{2.0\ \mathrm{g}}{2.0\ \mathrm{g/mol}}=1.0\ \mathrm{mol}$$
負極の反応式 $\ce{H2 -> 2H+ + 2e-}$ より、水素1 mol あたり電子は2 mol 流れる(下の図)。
$$1.0\times2=2.0\ \mathrm{mol}\quad\text{(流れた電子)}$$
電気量は電子の物質量×ファラデー定数なので
$$2.0\times9.65\times10^4=1.93\times10^5\ \mathrm{C}$$
答 $1.9\times10^5$ C(6点)
問3
燃料電池の電解質は、負極でできた水素イオンを正極まで運ぶ通り道である。そのため、膜の中に水素イオンを出せる強い酸の官能基が並んでいる高分子が適する。
(c) の側鎖の先にはスルホ基 $\ce{-SO3H}$ がある。スルホ基は強い酸で、水を含むと $\ce{-SO3^-}$ と $\ce{H+}$ に分かれ、水素イオンは $\ce{-SO3^-}$ の間を渡り歩くように膜の中を移動できる。陽イオン交換樹脂がスルホ基で陽イオンを交換するのと同じ働きである。主鎖の水素がすべてフッ素に置きかわっているので、燃料電池の中でも分解されにくい。実際の燃料電池の電解質膜(ペルフルオロスルホン酸の膜)は、この型の高分子である。
ほかの3つは水素イオンを出さない(下の図)。
・(a)・(d):ヒドロキシ基 $\ce{-OH}$ はアルコールと同じで、水に溶かしても水素イオンを出さない。(d) はポリビニルアルコールで水に溶けやすく、水ができる燃料電池の中では膜として使えない
・(b):エステル結合とエーテル結合だけで、酸の性質をもつ官能基が無い
答 (c) スルホ基をもつ高分子(6点)
出題意図
問1 電解質の膜の中を水素イオンが動くことから、燃料電池の正極・負極の反応を酸性の形で書き、全体の反応式にまとめることができるか
問2 水素の物質量から流れた電子の物質量を求め、ファラデー定数で電気量に直すことができるか
問3 初めて見る高分子の構造式から、水素イオンを出せる官能基(スルホ基)をもつものを選び、電解質の働きと結びつけることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 14点 | 14点 |
| 目標時間 | 8分 | 8分 |
燃料電池は、電解質の中を動くイオンで電極反応の形が決まる。
膜の中を水素イオンが動くこの問題は酸性の形で、重要問題集の燃料電池と同じ式を書けばよい。
問3 は初めて見る構造式から電解質を選ぶので少し難しいが、水素イオンを出せるのはスルホ基だけと見抜ければ決まる。
問1・問2 は短い時間で確実に取りたい。
差がつく所・失点しやすい所
- 問3:差がつくとしたら、電解質の膜の中を水素イオンが動くことと、陽イオン交換樹脂のスルホ基を結びつける発想に行き着けるか。初めて見る構造式が4つ並ぶので、フッ素の多い主鎖や (a) の $\ce{-OH}$ に目を取られると迷う。
2011年九州大学化学
第3問 解答・解説
第3問は理論化学(溶液)の問題です。
テーマは『浸透圧の計算』『会合度と塩析』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問4に答えよ。必要であれば、気体定数には $R$ を用いよ。
図1のように、溶媒分子のみが透過できる膜(半透膜)を、内径が一定なU字型のガラス管の中央に取り付け、A側には分子量 $M_1$ の非電解質の分子1を $W_1$ [g]溶かした希薄水溶液を、B側には分子量 $M_2$ の非電解質の分子2を $W_2$ [g]溶かした希薄水溶液をそれぞれ入れた。水溶液をU字管に入れた直後は、A側の方がB側に比べ液面が高かった。
問1. 一定の温度 $T_1$ においてしばらく放置した後、A、B両側の液面を見ると、高さが等しくなっていた(図2)。この状態を“状態Ⅰ”とする。このときに、 $M_1$、 $M_2$、 $W_1$、 $W_2$ の間に成り立つ関係式を示せ。
問2. 状態Ⅰから温度を $T_2$ へ低下させたところ、A側で分子1の一部が $N$ 量体( $N$ 個の分子1が集合(会合)したコロイド粒子)を形成し、単量体と $N$ 量体の間で平衡が成り立った。この状態を“状態Ⅱ”とする。このとき、A側における $N$ 量体の物質量、および単量体と $N$ 量体とを合わせた総物質量を $M_1$、 $W_1$、 $\alpha$、 $N$ を用いて表せ。ただし、会合前の分子1の分子数に対する $N$ 量体を形成した分子1の分子数の比を会合度 $\alpha\,(0<\alpha<1)$ とする。
$$\text{会合度}\ \alpha=\dfrac{N\,\text{量体を形成した分子1の分子数}}{\text{会合前の分子1の分子数}}$$
また、温度の変化による水溶液の体積の変化は無視できるとする。
問3. 状態Ⅱにおいて、A側あるいはB側のいずれか一方に圧力を加え、両側の水面の高さを等しくした。このときに加えた圧力を求めよ。ただし、A、B両側の水溶液の体積はともに $V$ であるとする。
問4. U字管中のコロイド粒子は、少量の電解質を加えても沈殿しなかったが、多量の電解質の添加により沈殿を生じた。このような現象を何と呼ぶか答えよ。またこの現象に最も関係しているものを次の内から選び、記号で答えよ。
(a) コロイド粒子の大きさ
(b) コロイド粒子の数
(c) 浸透圧 (d) 水和 (e) 分子量
解答の方針
【問1の方針】
最初の液面差は気にせず、液面がそろった状態Ⅰだけを見る。液面差の圧力がないので、両側の浸透圧は等しい。内径が一定で液面の高さが同じなら、両側の体積も同じ(下の図)。


- A側・B側それぞれでファントホッフの式を立てる(どちらも非電解質なので個数1、温度は $T_1$、体積は同じ $V_1$ とおく)。
- 浸透圧が等しく、 $R$・$T_1$・$V_1$ が共通なので、両側の物質量が等しいとおく。
【問2の方針】
$N$ 個の分子1が集まった $N$ 量体は、溶液の中では1個の粒子として動く。会合度は「$N$ 量体になった分子1の割合」なので、反応前・変化量・反応後の表で物質量を追う(下の図)。


- 会合前の分子1の物質量を $\dfrac{W_1}{M_1}$ とし、 $N$ 量体をつくる反応の式の下に反応前・変化量・反応後を書く。
- 反応後の $N$ 量体の物質量を読む。
- 単量体と $N$ 量体の物質量を足して総物質量にする。
【問3の方針】
A側では粒子の数が減るので浸透圧が下がり、水が A側から B側へ移って B側の液面が上がる。液面をもとにそろえるには B側を押す。両側とも溶液なので、加える圧力は両側の浸透圧の差(下の図)。


- 液面がそろったとき両側の体積は $V$、温度は $T_2$。A側は問2 の総物質量、B側は $\dfrac{W_2}{M_2}$ でファントホッフの式を立てる。
- 加える圧力=B側の浸透圧−A側の浸透圧とおく。
- 問1 の $\dfrac{W_2}{M_2}=\dfrac{W_1}{M_1}$ で $W_2$・$M_2$ を消して整理する。
【問4の方針】
少量の電解質で沈殿するのは疎水コロイド(凝析)。少量では沈殿せず、多量で初めて沈殿するのは、水分子に囲まれて安定している親水コロイド(下の図)。


- 少量で沈殿しないことから、親水コロイドと判断する。
- 多量の電解質で沈殿する現象の名前と、その原因(水和の水が奪われる)を選ぶ。
解答


解答をテキストで読む
問1
液面がそろった状態Ⅰでは液面差の圧力がないので、A側とB側の浸透圧は等しい。U字管の内径が一定で液面の高さが同じなので、両側の水溶液の体積も同じ。これを $V_1$ とおく(下の図)。半透膜は溶質を通さないので、水が移っても溶質の物質量は最初のまま。
分子1・分子2はどちらも非電解質なので個数は1。ファントホッフの式 $\pi=\left(\dfrac nV\times\text{個数}\right)RT$ を、状態方程式と同じ形で両側に立てる。
$$\pi_\mathrm{A}V_1=\dfrac{W_1}{M_1}\times1\times RT_1\quad\text{(A側)}$$
$$\pi_\mathrm{B}V_1=\dfrac{W_2}{M_2}\times1\times RT_1\quad\text{(B側)}$$
$\pi_\mathrm{A}=\pi_\mathrm{B}$ で、 $V_1$・$R$・$T_1$ は共通なので、両側の物質量が等しい。
答 $\dfrac{W_1}{M_1}=\dfrac{W_2}{M_2}$(3点)
問2
会合前の分子1の物質量は $\dfrac{W_1}{M_1}$ mol。会合度 $\alpha$ は「$N$ 量体になった分子1の割合」なので、 $N$ 量体になった分子1は $\dfrac{W_1}{M_1}\alpha$ mol。分子1が $N$ 個で $N$ 量体1個になるので、できる $N$ 量体はその $\dfrac1N$。反応の式の下に物質量を書くと
$$\begin{array}{c|cc} & N\,(\text{分子1}) & (\text{分子1})_N\\ \hline \text{反応前} & 1 & 0\\ \text{変化量} & -\alpha & +\dfrac{\alpha}{N}\\ \hline \text{反応後} & 1-\alpha & \dfrac{\alpha}{N} \end{array}\quad\text{(×}\dfrac{W_1}{M_1}\ \text{mol)}$$
$N$ 量体はコロイド粒子だが、溶液の中では1個の粒子として動くので、浸透圧では1個として数える(下の図)。
$N$ 量体の物質量は
$$\dfrac{W_1}{M_1}\times\dfrac{\alpha}{N}=\dfrac{\alpha W_1}{NM_1}$$
単量体と $N$ 量体を合わせた総物質量は
$$\dfrac{W_1}{M_1}\left(1-\alpha+\dfrac{\alpha}{N}\right)=\dfrac{W_1(N-N\alpha+\alpha)}{NM_1}$$
答($N$ 量体) $\dfrac{\alpha W_1}{NM_1}$ mol(3点)
答(総物質量) $\dfrac{W_1(N-N\alpha+\alpha)}{NM_1}$ mol(4点)
問3
$N\geqq2$ なので、問2 の総物質量は $\dfrac{W_1}{M_1}$ より少ない。A側は粒子が減って浸透圧が下がり、B側の方が浸透圧が大きくなる。そのため水が A側から B側へ移り、B側の液面が上がる。液面をそろえるには、B側に圧力を加えて水を押し戻す(下の図)。
液面がそろったとき、両側の体積はともに $V$、温度は $T_2$。両側でファントホッフの式を立てる(どちらも粒子として数える物質量を入れる)。
$$\pi_\mathrm{A}V=\dfrac{W_1(N-N\alpha+\alpha)}{NM_1}RT_2\quad\text{(A側)}$$
$$\pi_\mathrm{B}V=\dfrac{W_2}{M_2}RT_2\quad\text{(B側)}$$
両側とも溶液なので、水を押し戻すのに要る圧力は両側の浸透圧の差。加える圧力を $P$ とすると
$$P=\pi_\mathrm{B}-\pi_\mathrm{A}$$
2本の式から $\pi_\mathrm{A}$・$\pi_\mathrm{B}$ を入れると
$$P=\dfrac{RT_2}{V}\left\{\dfrac{W_2}{M_2}-\dfrac{W_1(N-N\alpha+\alpha)}{NM_1}\right\}$$
問1 より $\dfrac{W_2}{M_2}=\dfrac{W_1}{M_1}$ なので
$$P=\dfrac{W_1RT_2}{M_1V}\left(1-\dfrac{N-N\alpha+\alpha}{N}\right)$$
かっこの中は $\dfrac{N\alpha-\alpha}{N}=\dfrac{\alpha(N-1)}{N}$ なので
$$P=\dfrac{\alpha(N-1)W_1RT_2}{NM_1V}$$
答 B側に $\dfrac{\alpha(N-1)W_1RT_2}{NM_1V}$(8点)
問4
少量の電解質を加えても沈殿しなかったので、このコロイド粒子は疎水コロイドではなく親水コロイド。親水コロイドの粒子は表面に多くの水分子が水和していて、この水の層で互いに近づけない。多量の電解質を加えると、電解質のイオンが水分子を強く引きつけて水和の水を奪うので、粒子が集まって沈殿する(下の図)。これが塩析。少量の電解質で疎水コロイドが沈殿する凝析とは区別する。
答(現象) 塩析(3点)
答(記号) (d) 水和(2点)
出題意図
問1 液面がそろった状態を「両側の浸透圧が等しい」と読み、両側の物質量の関係に結びつけることができるか
問2 会合度の定義から反応前・変化量・反応後の表を書き、 $N$ 量体を1個の粒子として数えて総物質量を求めることができるか
問3 粒子が減った側の浸透圧が下がって水が移ることを捉え、液面をそろえるのに加える圧力を浸透圧の差として求めることができるか
問4 少量の電解質では沈殿せず多量で沈殿するコロイドを親水コロイドと見抜き、塩析と水和に結びつけることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 20点 | 15点 |
| 目標時間 | 15分 | 15分 |
2011年の化学の合否を分けた大問。
浸透圧は「両側とも溶液なら濃度の差で決まる」「液面をそろえるのに加える圧力は浸透圧の差」の2つで最後まで解ける。
差がつくのは、会合で A側の粒子が減ったあと、どちら側をどれだけ押すかを文字だけで追えるかどうか。
U字管と会合度の問題は、状態ごとに図を書いて白紙で再現できるまで練習しておこう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2・問3:$N$ 量体を1個の粒子として数え、粒子が減った A側の浸透圧が下がるので B側を押し、加える圧力を浸透圧の差にする、という発想に行き着けるか。浸透圧は「純水と溶液」の形で練習している受験生が多く、両側とも溶液で文字だけの設定になると立式で迷う。問2 の総物質量(4点)を誤ると問3(8点)も落ち、この2つで12点の差がつく。
- 問4:少量では沈殿しないことから親水コロイドの塩析だと判断できるか。「電解質で沈殿」だけを見て凝析と書かないこと。
2011年九州大学化学
第4問 解答・解説
第4問は理論化学(反応の速さと化学平衡)の問題です。
テーマは『反応速度式』『定常状態の近似』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章(1)および(2)を読み、 $\boxed{\text{ ア }}$ 〜 $\boxed{\text{ キ }}$ にあてはまる語句と記号を答えよ。
(1) 分子間で起こる化学反応は、主に分子の衝突によって起こるので、単位時間当りの衝突の $\boxed{\text{ ア }}$ が多くなるほど、反応速度は大きくなる。そのため、体積と温度が一定で、AとBが反応する場合、AとBの濃度が高いほど、反応速度は大きくなる。この関係から、反応速度をAとBの濃度を使って表すことができる。例えば、Aの濃度を一定にして、Bの濃度を2倍、4倍と高くしたときに、反応速度が2倍、4倍と大きくなり、Bの濃度を一定にして、Aの濃度を2倍、4倍と高くしたときに、反応速度が4倍、16倍と大きくなった場合、反応速度 $v$ は以下のように表すことができる。ただし、体積と温度は一定であるとする。また、 $k$ は反応速度定数であり、A、Bの濃度はおのおの $[\mathrm{A}]$、 $[\mathrm{B}]$ で示すとする。
$$v=k\,\boxed{\text{ イ }}\,\boxed{\text{ ウ }}$$
(2) 下に示すようなXとYからZを生成する化学反応を考える。まず、反応式(a)の右向きの反応で、XとYは反応性の高い $\mathrm{Z}^{\ast}$ を生成する。この反応には、 $\mathrm{Z}^{\ast}$ からXとYに戻る左向きの反応も存在する。次に、反応式(b)に従い、 $\mathrm{Z}^{\ast}$ はすみやかにZを生成する。 $k_1$ 〜 $k_3$ は各反応の反応速度定数である。このとき、Zを生成する反応速度を求めたい。ただし、体積と温度は一定であるとし、X、Y、Z、 $\mathrm{Z}^{\ast}$ の濃度は、おのおの $[\mathrm{X}]$、 $[\mathrm{Y}]$、 $[\mathrm{Z}]$ および $[\mathrm{Z}^{\ast}]$ で示すとする。
$\mathrm{X}+\mathrm{Y}\ \underset{k_2}{\overset{k_1}{\rightleftarrows}}\ \mathrm{Z}^{\ast}$ (a)
$\mathrm{Z}^{\ast}\ \xrightarrow{\ k_3\ }\ \mathrm{Z}$ (b)
ここで、反応式(a)の右向きの反応速度を $v_1$、反応式(a)の左向きの反応速度を $v_2$、反応式(b)の反応速度を $v_3$ とする。このとき、反応速度 $v_1$ 〜 $v_3$ は、以下のように示すことができたとする。
$v_1=k_1[\mathrm{X}][\mathrm{Y}]$
$v_2=k_2[\mathrm{Z}^{\ast}]$
$v_3=k_3[\mathrm{Z}^{\ast}]$
このとき、 $\mathrm{Z}^{\ast}$ の生成と消費を考慮して $\mathrm{Z}^{\ast}$ の生成する反応速度を $v_1$、 $v_2$ および $v_3$ で示すと、
$$\dfrac{\varDelta[\mathrm{Z}^{\ast}]}{\varDelta t}=\boxed{\text{ エ }}$$
となり、これを $[\mathrm{X}]$、 $[\mathrm{Y}]$、 $[\mathrm{Z}^{\ast}]$ および反応速度定数で示すと、
$$\dfrac{\varDelta[\mathrm{Z}^{\ast}]}{\varDelta t}=\boxed{\text{ オ }}$$
となる。
生成した $\mathrm{Z}^{\ast}$ は反応性が高く、すぐに消費されるから、 $\mathrm{Z}^{\ast}$ が生成する反応速度は非常に小さく、見かけ上、
$$\dfrac{\varDelta[\mathrm{Z}^{\ast}]}{\varDelta t}=0$$
と近似できる。この式から、 $[\mathrm{Z}^{\ast}]$ を $[\mathrm{X}]$、 $[\mathrm{Y}]$ および反応速度定数で示すと、
$$[\mathrm{Z}^{\ast}]=\boxed{\text{ カ }}$$
が得られる。また、Zが生成する反応速度は、 $v_3$ で表わすことができるので、 $[\mathrm{X}]$、 $[\mathrm{Y}]$ および反応速度定数を使って、 $\boxed{\text{ キ }}$ と求めることができる。
解答の方針
【空欄ア〜ウの方針】
分子どうしは、ぶつからなければ反応しない。濃度が高いほどぶつかる回数が増えるので速度が上がる。次数は、片方の濃度だけを変えた実験で「濃度が何倍で速度が何倍か」を見れば決まる(下の図)。


- 反応は衝突で起こるので、単位時間あたりの衝突の回数が多いほど速い(ア)。
- 反応速度式を $v=k[\mathrm{A}]^x[\mathrm{B}]^y$ とおく。B の濃度が一定の組で、A の濃度の倍率と速度の倍率を比べて $x$ を決める。
- A の濃度が一定の組で、同じように $y$ を決め、反応速度式を書く(イ・ウ)。
【空欄エ・オの方針】
$\mathrm{Z}^{\ast}$ に入る道は(a)の右向きの1本、出ていく道は(a)の左向きと(b)の2本ある(下の図)。濃度の変化の速さは「生成の速さ−消費の速さ」で、消費は2本の和になる。


- $\mathrm{Z}^{\ast}$ が生成する速さ $v_1$ から、消費される2つの速さ $v_2$・ $v_3$ を引く(エ)。
- 与えられた $v_1$〜 $v_3$ の式を代入する(オ)。
【空欄カ・キの方針】
$\mathrm{Z}^{\ast}$ はできるとすぐ消費されるので、濃度は小さく、その変化もゆっくりである(下の図)。生成と消費がつり合うとおけば、測れない $[\mathrm{Z}^{\ast}]$ を、測れる $[\mathrm{X}]$・ $[\mathrm{Y}]$ で表せる。


- オの式を0とおき、 $[\mathrm{Z}^{\ast}]$ について解く(カ)。
- Z が生成する速さ $v_3=k_3[\mathrm{Z}^{\ast}]$ にカを代入する(キ)。
解答


解答をテキストで読む
空欄ア〜ウ
分子どうしの反応は、分子が衝突して起こる。濃度が高いほど単位時間あたりの衝突の回数が多くなり、反応速度が大きくなる。
反応速度式を $v=k[\mathrm{A}]^x[\mathrm{B}]^y$ とおき、片方の濃度だけを変えた実験で、濃度の倍率と速度の倍率を比べる(下の図)。
B の濃度を一定にして A の濃度を2倍、4倍にすると、速度は4倍、16倍になる。 $4=2^2$、 $16=4^2$ なので、速度は $[\mathrm{A}]$ の2乗に比例し、 $x=2$ である。A の濃度を一定にして B の濃度を2倍、4倍にすると、速度も2倍、4倍になるので、速度は $[\mathrm{B}]$ の1乗に比例し、 $y=1$ である。
$$v=k[\mathrm{A}]^2[\mathrm{B}]$$
答(ア) 回数(2点)
答(イ) $[\mathrm{A}]^2$(2点)
答(ウ) $[\mathrm{B}]$(2点)
空欄エ・オ
$\mathrm{Z}^{\ast}$ は(a)の右向きの反応で生成し、(a)の左向きの反応と(b)の反応の2つで消費される(下の図)。 $\mathrm{Z}^{\ast}$ の濃度の変化の速さは、生成の速さから、消費される2つの速さの和を引いたものになる。
$$\dfrac{\varDelta[\mathrm{Z}^{\ast}]}{\varDelta t}=v_1-(v_2+v_3)$$
これに、問題文で与えられた $v_1=k_1[\mathrm{X}][\mathrm{Y}]$、 $v_2=k_2[\mathrm{Z}^{\ast}]$、 $v_3=k_3[\mathrm{Z}^{\ast}]$ を代入する。
答(エ) $v_1-v_2-v_3$(3点)
答(オ) $k_1[\mathrm{X}][\mathrm{Y}]-k_2[\mathrm{Z}^{\ast}]-k_3[\mathrm{Z}^{\ast}]$(3点)
空欄カ・キ
$\mathrm{Z}^{\ast}$ は反応性が高く、できるとすぐに消費されるので、濃度は小さく、その変化もゆっくりである(下の図)。 $\mathrm{Z}^{\ast}$ の生成と消費の速さに比べて、濃度の変化の速さは非常に小さいので、これを0とおく。これは、生成の速さ $v_1$ と消費の速さ $v_2+v_3$ がつり合っている、ということである。
$$\dfrac{\varDelta[\mathrm{Z}^{\ast}]}{\varDelta t}=v_1-v_2-v_3=0$$
$$k_1[\mathrm{X}][\mathrm{Y}]-(k_2+k_3)[\mathrm{Z}^{\ast}]=0$$
$[\mathrm{Z}^{\ast}]$ について解く。
Z が生成するのは(b)の反応だけなので、Z の生成速度は $v_3=k_3[\mathrm{Z}^{\ast}]$ である。ここにカの $[\mathrm{Z}^{\ast}]$ を代入して、測れない $[\mathrm{Z}^{\ast}]$ を消す。
$$v_3=k_3\times\dfrac{k_1[\mathrm{X}][\mathrm{Y}]}{k_2+k_3}$$
答(カ) $\dfrac{k_1[\mathrm{X}][\mathrm{Y}]}{k_2+k_3}$(4点)
答(キ) $\dfrac{k_1k_3[\mathrm{X}][\mathrm{Y}]}{k_2+k_3}$(4点)
出題意図
- 空欄ア〜ウ:反応が分子の衝突で起こることを理解し、濃度の倍率と速度の倍率から反応速度式の次数を決めることができるか。
- 空欄エ・オ:中間体 $\mathrm{Z}^{\ast}$ が生成する道と消費される道をすべて数え、濃度の変化の速さを表すことができるか。
- 空欄カ・キ:生成と消費がつり合うとおいて中間体の濃度を消し、Z の生成速度を X と Y の濃度で表すことができるか。
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 20点 | 20点 |
| 目標時間 | 10分 | 12分 |
中間体を経る反応は「入る道と出る道を全部数え、生成=消費とおいて中間体の濃度を消す」の一本道。
この大問は速度式がすべて与えられているので、代入するだけで解ける。
2016年の第2問も同じ考え方で、九大はこの型を出してくる。
重要問題集の反応次数と酵素反応の問題を仕上げて、満点を取りに行こう。
差がつく所・失点しやすい所
- エ:$\mathrm{Z}^{\ast}$ が消える道は(b)だけでなく、(a)の左向きもある、という発想に行き着けるか。差がつくとしたらここだけで、 $v_2$ を落としたり符号を+にしたりすると、エ〜キ の14点がまとめて落ちる。
2011年九州大学化学
第5問 解答・解説
第5問は有機化学の問題です。
テーマは『アルケンの構造決定』『アルコールの沸点』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問4に答えよ。
分子式が $\ce{C4H8}$ となる化合物A、B、CおよびDがある。これらは下に示すような、化合物(あ)〜(え)であることがわかっている。これらの化合物を識別するために以下の実験を行った。
実験1:化合物A、B、CおよびDを臭素水に吹き込んだ。臭素水は赤褐色を呈しているが、化合物A、BおよびCを十分に吹き込むことによって、その色が消失した。
実験2:化合物A、B、およびCを希硫酸水溶液に吹き込んで、十分に加熱した。反応溶液を水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、蒸留することによって、生成物を分離した。化合物AからはEとF、化合物BからはF、化合物CからはGとHが得られた。
実験3:実験2で得られた化合物E、F、GおよびHについて沸点を調べたところ、E>G>F>Hとなった。
問1. 化合物A〜Dを(あ)〜(え)の中から選び、記号で答えよ。
問2. 化合物EとFを(あ)〜(え)の表記にならって記せ。
問3. 化合物Bの幾何異性体を(あ)〜(え)の表記にならって記せ。
問4. 化合物Fには不斉炭素があり、( )異性体が存在する。この異性体どうしでは、融点や沸点は全く同じである。( )にあてはまる語句を答えよ。
解答の方針
【問1の方針】
臭素水の色が消えるのは二重結合に臭素が付くから。水の付加では二重結合のどちらかの炭素に OH が付くので、二重結合の左右が同じ形なら生成物は1種類、違う形なら2種類になる(下の図)。


- 臭素水を脱色しない D を、二重結合の無い (う) とする。
- (あ)・(い)・(え) に、二重結合の2つの炭素へ OH を1つずつ付けた形を書き、生成物が何種類かを確かめる。
- 生成物が1種類の (い) を B とする。
- B と同じ生成物 F をつくる (あ) を A、残りの (え) を C とする。
【問2の方針】
E〜H はどれも $\ce{C4H10O}$ のアルコールで、水素結合の強さは同じくらい。沸点の差は分子の形で決まり、枝分かれが多く OH が内側の炭素に付くほど沸点が低い(下の図)。


- A(1-ブテン)からできる2つのアルコールを、1-ブタノールと2-ブタノールとする。
- 2-ブタノールは B からもできるので F、残りの1-ブタノールを E とする。
- E・F の構造式を (あ)〜(え) の表記で書く。
【問3の方針】
B の (い) は二重結合の両側に H と $\ce{CH3}$ が1つずつ付いたシス形。片側の H と $\ce{CH3}$ を入れかえればトランス形になる(下の図)。


- (い) の形のまま、二重結合の右側の炭素の H と $\ce{CH3}$ を上下で入れかえる。
- $\ce{CH3}$ どうしが二重結合をはさんで反対側にあることを確かめて、(い) と同じ表記で書く。
【問4の方針】
F(2-ブタノール)の2番目の炭素には H・OH・ $\ce{CH3}$・ $\ce{CH2CH3}$ の4つの違う基が付く。不斉炭素をもつ化合物には、鏡に映した関係の異性体がある(下の図)。


- F の炭素1つずつに付いた4つの基を確かめ、2番目の炭素が不斉炭素であることを確かめる。
- 鏡に映した関係の異性体(光学異性体)と答える。
解答


解答をテキストで読む
問1
実験1 で臭素水の色が消えるのは、二重結合に臭素が付加するから。(う) のシクロブタンは二重結合をもたないので臭素水を脱色しない。よって D は (う)。
実験2 では、希硫酸を触媒にして二重結合に水が付加し、アルコールができる。二重結合の2つの炭素のどちらに OH が付くかで生成物が変わる(下の図)。
・(あ) 1-ブテン:端の炭素に OH が付くと1-ブタノール、2番目の炭素に付くと2-ブタノール(主生成物)。2種類
・(い) 2-ブテン:二重結合の左右が同じ形なので、どちらに付いても2-ブタノール。1種類
・(え) 2-メチルプロペン:枝分かれの炭素に付くと2-メチル-2-プロパノール(主生成物)、端の炭素に付くと2-メチル-1-プロパノール。2種類
生成物が F の1種類だけの B は (い)。F(2-ブタノール)を B と共通にもつ A は (あ)、残りの C は (え)。
答 $\mathbf{A}=$ (あ)(2点)
答 $\mathbf{B}=$ (い)(2点)
答 $\mathbf{C}=$ (え)(2点)
答 $\mathbf{D}=$ (う)(2点)
問2
A(1-ブテン)からできる E・F は1-ブタノールと2-ブタノール。B からもできる F が2-ブタノールなので、E は1-ブタノール。
沸点で確かめる。E〜H はどれも $\ce{C4H10O}$ のアルコールで、OH による水素結合は同じようにはたらく。分子が枝分かれして球形に近づくほど分子どうしの接する面が小さくなり、ファンデルワールス力が弱まって沸点が低くなる。OH が端に付いた直鎖の第一級(1-ブタノール)が最も高く、枝分かれの多い第三級(2-メチル-2-プロパノール)が最も低い(下の図)。
E>G>F>H の順と合うので、E は1-ブタノール、G は2-メチル-1-プロパノール、F は2-ブタノール、H は2-メチル-2-プロパノール。構造式は (あ) の表記にならって書く(下の図)。
答 $\mathbf{E}=\ce{CH3CH2CH2CH2OH}$(2点)
答 $\mathbf{F}=\ce{CH3CH(OH)CH2CH3}$(2点)
問3
B の (い) は2つの $\ce{CH3}$ が二重結合をはさんで同じ側にあるシス-2-ブテン。二重結合は回転できないので、右側の炭素の H と $\ce{CH3}$ を入れかえた形は別の化合物(幾何異性体)になる。これがトランス-2-ブテンで、(い) と同じ表記で書く(下の図)。
答 トランス-2-ブテン(構造式は上の図)(4点)
問4
F(2-ブタノール)の2番目の炭素には H・OH・ $\ce{CH3}$・ $\ce{CH2CH3}$ の4つの違う基が付くので不斉炭素(下の図の*)。不斉炭素をもつ化合物には、実物と鏡に映した像の関係にあり重ね合わせられない2つの異性体がある。これを光学異性体(鏡像異性体)といい、融点・沸点などの性質は同じで、偏光面を回転させる向きだけが逆になる。
答 光学(「鏡像」でもよい)(4点)
出題意図
問1 臭素水の脱色と、水の付加でできるアルコールの種類の数から、$\ce{C4H8}$ の4つの異性体を見分けられるか
問2 アルコールの沸点の順から、同じ $\ce{C4H10O}$ のアルコールを第一級・第二級・第三級と枝分かれで見分けられるか
問3 シス形とトランス形の関係を、与えられた表記どおりの構造式で書けるか
問4 不斉炭素をもつ化合物に光学異性体があり、その物理的性質が同じであることを知っているか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 20点 | 20点 |
| 目標時間 | 12分 | 12分 |
臭素水の脱色と水の付加という教科書の反応だけで4つの異性体が決まる、九大の有機としては解きやすい構造決定。
決め手は「二重結合の左右が同じ形なら、水を付けた生成物は1種類」の一点。
アルコールの沸点・シス形とトランス形・光学異性体は知識で即答できる所なので、ここで時間を使わず満点を取り切ろう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問1:水の付加でできるアルコールが「二重結合の左右が同じ形なら1種類」という発想に行き着けるか。ここで B を取り違えると A・C・F・問3・問4 までまとめて落ちる。
- 問2:(あ)〜(え) の表記にならって構造式を書けるか。E と F を沸点の順で確かめずに書くと、記号を入れかえて2つとも失う。
2011年九州大学化学
第6問 解答・解説
第6問は高分子化合物(糖類)の問題です。
テーマは『栄養素と酵素の検出』『セルロースの量的計算』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問3に答えよ。
人の健康な生活に必須の食物成分として、炭水化物、タンパク質、油脂の三大栄養素がある。これらは生体内の酵素により分解され、生命活動のためのエネルギーや体の組織となる。さらに、無機塩類やビタミン類も生命機能の調節に不可欠であり、あわせて五大栄養素と呼ばれる。おのおのの栄養素および酵素の一例として、下記の水溶液あるいは水懸濁液(以下、両方とも溶液とする)を調製した。以下の問に答えよ。解答が複数ある場合は、すべて記せ。
A デンプン B 卵白
C サラダ油 D ビタミンC
E 食塩 F アミラーゼ
G プロテアーゼ H リパーゼ
問1. 高濃度のニンヒドリン水溶液を加えて加熱すると、青紫〜赤紫色に変化する溶液を選び、記号で答えよ。
問2. 各溶液に溶液Fを加え、Fの最適温度、最適pHで十分に反応させた。フェーリング液を加えて加熱すると、赤色に変化する溶液を選び、記号で答えよ。
問3. 五大栄養素に加えて、食物繊維として腸内環境を整える働きのある炭水化物にセルロースがある。以下の問に答えよ。
① セルロース1.62 gに希硫酸を加えて長時間加熱すると、1.80 gの生成物Iが得られた。これは水によく溶け、1 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えたメチレンブルー溶液を青色から無色に変化させた。メチレンブルーとの反応後の生成物Iの構造式を記せ。
② セルロース1.62 gに無水酢酸と硫酸触媒を加えて加熱すると、2.67 gの生成物Jが得られた。生成物Jには、もとのセルロース中の水酸基が約何%残っているか。有効数字2桁で答えよ。
解答の方針
【問1の方針】
8つの溶液を「中身が何の仲間か」で分けてから判定する。ニンヒドリン反応はアミノ基を調べる反応で、「〜アーゼ」の酵素もタンパク質(下の図)。


- A〜H を、中身が何の仲間かで分ける。
- アミノ基をもつタンパク質(卵白と酵素3つ)を選ぶ。
【問2の方針】
フェーリング液は、還元するものなら糖でなくても赤くなる。アミラーゼで新しくできる糖と、もともと還元剤のものの両方を探す(上の図)。
- アミラーゼ F で分解されて還元性の糖ができるもの(デンプン→マルトース)を選ぶ。
- F と関係なく、もともと還元剤のもの(ビタミンC)を選ぶ。
【問3①の方針】
質量の比が、セルロースの単位とグルコースの式量の比と同じなので、生成物 I はグルコースと決まる。メチレンブルーを無色にしたのはグルコースの還元性で、そのときグルコース自身は酸化されている(下の図)。


- セルロース1.62 g を単位 $\ce{C6H10O5}$ の物質量にし、同じ物質量のグルコースの質量が1.80 g になることを確かめて、I をグルコースと決める。
- 還元性のもとは鎖状構造のホルミル基 $-\ce{CHO}$ 。これが酸化されてカルボキシ基になり、水酸化ナトリウム水溶液の中なのでナトリウム塩 $-\ce{COONa}$ になる。
- 鎖状のグルコースの $-\ce{CHO}$ を $-\ce{COONa}$ に書きかえた構造式を書く。
【問3②の方針】
アセチル化では OH の H がアセチル基に置きかわるだけで、単位の数は変わらない。質量の増えた分を「OH 1個あたりの増え方」で割れば、置換された OH の数が分かる(下の図)。


- セルロースの単位の物質量を求め、OH の物質量をその3倍とする。
- OH 1個がアセチル化されると、式量が $\ce{COCH3}$ と H の差の42だけ増える。
- 質量の増加を42で割って置換された OH の物質量を求め、残った OH の割合を求める。
解答


解答をテキストで読む
問1
ニンヒドリン反応は、アミノ基 $-\ce{NH2}$ をもつアミノ酸・タンパク質で紫色に呈色する反応。卵白(主成分はアルブミン)はタンパク質。アミラーゼ・プロテアーゼ・リパーゼは酵素で、酵素は触媒作用を示すタンパク質なので、これらも呈色する。デンプン・サラダ油・ビタミンC・食塩はアミノ基をもたない(下の図)。
答 B、F、G、H(5点)
問2
F のアミラーゼはデンプンをマルトースに加水分解する酵素。デンプン(多糖)は還元性を示さないが、できたマルトースは還元性があり、フェーリング液を還元して $\ce{Cu2O}$ の赤色沈殿ができる。
ビタミンC(アスコルビン酸)は糖ではないが強い還元剤(酸化防止剤として食品に加えられる)で、フェーリング液の $\ce{Cu^2+}$ を還元するので、F を加えても加えなくても赤色沈殿ができる。
卵白・サラダ油はアミラーゼでは分解されず(分解する酵素はプロテアーゼ・リパーゼ)、食塩と酵素(タンパク質)も還元性をもたない。
答 A、D(5点)
問3①
セルロースは分子量が大きいので、単位 $\ce{C6H10O5}$(式量162)がつながったものとみる。希硫酸で長時間加熱すると、単位1つがグルコース(分子量180)1分子になる。
$$\dfrac{1.62}{162}=0.0100\ \mathrm{mol}$$
同じ物質量のグルコースの質量は
$$0.0100\times180=1.80\ \mathrm{g}$$
得られた1.80 g と一致するので、生成物 I はグルコース(下の図)。
グルコースは水溶液中で一部が鎖状構造になり、ホルミル基 $-\ce{CHO}$ をもつので還元性を示す。塩基性のメチレンブルー(青)はグルコースに還元されて無色になる。このときグルコースは酸化され、ホルミル基がカルボキシ基 $-\ce{COOH}$ になる(グルコン酸)。水酸化ナトリウム水溶液の中なので、カルボキシ基は中和されてナトリウム塩 $-\ce{COONa}$ になる。ほかの OH はそのまま残る(下の図)。
答 $\ce{HOCH2-(CHOH)4-COONa}$(5点)
問3②
セルロースの単位の物質量は問3① と同じく0.0100 mol。単位1つに OH が3個あるので、もとの OH は
$$0.0100\times3=0.0300\ \mathrm{mol}$$
OH 1個がアセチル化されると、 $-\ce{OH}$ の H が $-\ce{COCH3}$ に置きかわる(下の図)。増える式量は
$$43.0-1.0=42.0$$
アセチル化しても単位の数は変わらないので、質量の増加 $2.67-1.62=1.05$ g はすべてアセチル化による。置換された OH の物質量は
$$\dfrac{1.05}{42.0}=0.0250\ \mathrm{mol}$$
残っている OH は $0.0300-0.0250=0.0050$ mol なので、その割合は
$$\dfrac{0.0050}{0.0300}\times100\fallingdotseq17\ \%$$
答 17 %(5点)
別解
問3② (全部アセチル化したときと比べる) OH 0.0300 mol が全部アセチル化されてトリアセチルセルロースになれば、質量は $42.0\times0.0300=1.26$ g 増える。実際の増加は1.05 g なので、アセチル化された割合は $\dfrac{1.05}{1.26}\times100\fallingdotseq83\ \%$ 。残っている割合は $100-83=17\ \%$ 。トリアセチルセルロースの単位 $\ce{C6H7O2(OCOCH3)3}$ の式量288 を覚えていれば、すぐに立てられる。
出題意図
問1 ニンヒドリン反応がアミノ基の検出であり、酵素もタンパク質であることまで結びつけられるか
問2 アミラーゼで何ができるかを捉え、糖以外の還元剤(ビタミンC)もフェーリング液を還元すると判断できるか
問3① 質量から加水分解の生成物をグルコースと決め、ホルミル基が酸化された形を構造式で書くことができるか
問3② アセチル化で式量がどう変わるかを捉え、質量の増加から置換されたヒドロキシ基の割合を求めることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 18点 | 14点 |
| 目標時間 | 10分 | 12分 |
問1 と問3② は「酵素はタンパク質」「OH 1個あたり42増える」と言い切れれば確実に取れる。
差がつくのはビタミンC とメチレンブルーで、還元性は「糖の性質」ではなく「還元剤かどうか」で判断すればよい。
糖は暗記だけで終わらせず、還元性のもとがホルミル基で、酸化されると何になるかまで構造で説明できるようにしておこう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2〜問3①:ビタミンC が還元剤としてフェーリング液を還元すること、塩基性のメチレンブルーを無色にしたのがグルコースの還元性で、反応後はホルミル基が酸化されたグルコン酸ナトリウムになることに行き着けるか。どちらも教科書の糖類の範囲の少し外側の知識で、5点ずつの計10点が分かれる。
- 問1:酵素もタンパク質だと気づけるか。卵白だけ選ぶと「すべて記せ」なので点にならない。
2011年九州大学・化学の
講評とまとめ
6問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 標準 | 20点 | 18点 |
| 第2問 | やや簡単 | 14点 | 14点 |
| 第3問 | 標準 | 20点 | 15点 |
| 第4問 | やや簡単 | 20点 | 20点 |
| 第5問 | やや簡単 | 20点 | 20点 |
| 第6問 | 標準 | 18点 | 14点 |
| 全体 | やや簡単 | 105点 | 85点 |
大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で105点、その他の学部で85点)にはなりません。
全体的に難易度はやや簡単な年。
大問が6題あるので、1題にかけられる時間が短い年でした。
第2問・第4問・第5問は重要問題集の定番で、短い時間で取り切りたい大問です。
第1問は初見のジボランが出ますが、「電子を数える」に言いかえれば解けます。
この年の合否を分けたのは第3問の U字管で、会合で粒子が減った側を見抜き、液面をそろえる圧力を浸透圧の差として文字だけで追えるかが決め手でした。
第6問は還元性を「還元剤かどうか」で判断できるかで差がつきますが、問1 と問3② は確実に取りたいところです。
解く流れ
第1問 → 第2問 → 第3問 → 第4問 → 第5問 → 第6問。
2011年九州大学・化学に
関するよくある質問
2011年の九州大学・化学について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2011年の九州大学・化学は難しかった?
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全体的に難易度はやや簡単な年でした。
第2問・第4問・第5問はやや簡単、第1問・第3問・第6問は標準です。
大問は6題で、配点は20〜23点と大問ごとに違います。 - 2011年の九州大学・化学は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で105点、その他の学部で85点です(125点満点)。
- 2011年の九州大学・化学はどこで差がつく?
-
この年の合否を分けたのは第3問の浸透圧で、差がついたのは次の3つでした。
- 第3問 問2・問3:会合で粒子が減った A側の浸透圧が下がることから B側を押すと決め、加える圧力を浸透圧の差として文字だけで表せたか。
- 第1問 キ・ク:初見のジボランでも、結合の数×2と価電子の合計を比べて電子を数え直せたか。
- 第6問 問2・問3①:ビタミンC を還元剤と見抜き、メチレンブルーを還元したグルコースが酸化された形(グルコン酸ナトリウム)を書けたか。
- 2011年の九州大学・化学は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:理論化学(化学結合と結晶)
- 第2問:理論化学(酸化・還元と電池・電気分解)・高分子化合物
- 第3問:理論化学(溶液)
- 第4問:理論化学(反応の速さと化学平衡)
- 第5問:有機化学
- 第6問:高分子化合物(糖類)




