【解説・配点付き】2014年九州大学化学の解答・解説
2014年の九州大学・化学の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2014年九州大学化学
第1問 解答・解説
この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は理論化学(物質の三態・気体の法則)・有機化学の問題です。
テーマは『揮発性の液体の分子量測定』『飽和蒸気圧』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問6に答えよ。ただし、気体はすべて理想気体とする。なお、解答中の数値は有効数字2桁で答えよ。
物質 A は、炭素、水素、酸素からなる純物質で、20 ℃では液体である。この物質 A について次の実験を行った。
操作① 20 ℃において、物質 A の液体(約10 mL)をフラスコに入れ、気体が出入りできる程度の小さな穴が開いたふたをした。ふたをしたフラスコの容積は0.831 L であった。
操作② フラスコ全体を加熱して100 ℃に保つと、液体がすべて蒸発して空気を追い出し、フラスコの中は物質 A の気体で満たされた。
操作③ 加熱を止めて20 ℃に冷却すると、気化していた物質 A の大部分が液体となってフラスコの底にたまり、少量が気体として残った。このとき、底にたまった液体の質量は1.15 g であった。
なお、実験の間、室内の温度は20 ℃、気圧は $1.01\times10^{5}$ Pa であった。
問1. 操作②でフラスコの中を満たした物質 A の気体について、その物質量は何 mol か答えよ。
問2. 操作③でフラスコの底にたまった物質 A の液体は何 mL か答えよ。なお、20 ℃における物質 A の液体の密度は0.789 g/cm$^3$ である。
問3. 操作③で問1の気体の物質量の何%が液体になったか答えよ。ただし、20 ℃における物質 A の蒸気圧を $6.10\times10^{3}$ Pa とする。なお、冷却する間に物質 A はフラスコの外には流出しないものとする。また、液体の体積はフラスコの容積に比べて非常に小さいので無視してよい。
問4. 物質 A の分子量を答えよ。
問5. この実験で物質 A を推定したいが、問4で求めた分子量をもつ炭素、水素、酸素からなる化合物の分子式には、二通りが考えられる。それらを例にならって答えよ。
分子式の記入例:$\ce{C3H8O}$
問6. 物質 A の分子の構造には、二重結合や環状構造は含まれない。物質 A を推定し、例にならって示性式を答えよ。
示性式の記入例:$\ce{CH3OC2H5}$
解答の方針
【問1の方針】
ふたに小さな穴があるので、フラスコの中の圧力は外の大気圧と等しい。100 ℃では、フラスコの中は A の気体だけで満たされている(下の図)。


- A の気体に注目し、100 ℃(373 K)・大気圧・フラスコの容積で状態方程式を立てて物質量を求める。
【問2の方針】
液体の体積は、質量を密度で割れば求まる。1 cm³=1 mL なので、単位はそのまま読みかえられる。
- 底にたまった液体の質量を、20 ℃の液体の密度で割る。
【問3の方針】
20 ℃でも底に液体があるので、A の気体の圧力は飽和蒸気圧で、そのぶんの A は気体のまま残る。A が全て気体と仮定した圧力を求め、飽和蒸気圧と比べて、気体ぶんと液体ぶんに分ける(下の図)。


- A に注目する。物質量と体積が変わらないので、圧力は絶対温度に比例する。100 ℃の大気圧から、20 ℃で全て気体と仮定した圧力 $P_{\mathrm{if}}$ を比で求める。
- $P_{\mathrm{if}}$ を飽和蒸気圧と比べて液体があることを確かめ、気体ぶん=飽和蒸気圧、液体ぶん= $P_{\mathrm{if}}$ から飽和蒸気圧を引いた圧力とする。
- 体積と温度が同じなので、圧力は物質量に比例する。液体ぶんの圧力を $P_{\mathrm{if}}$ で割って割合にする。
【問4の方針】
底にたまった 1.15 g は、問1 で求めた物質量の全部ではなく、液体になったぶんだけ。気体で残ったぶんを除いた物質量で質量を割る。
- 液体ぶんの圧力を、20 ℃(293 K)・フラスコの容積でそのまま状態方程式に入れ、液体の物質量を求める。
- 液体の質量をその物質量で割って、分子量を求める。
【問5の方針】
分子量が46と小さいので、O の数で場合分けすれば候補はすぐに出つくす。C と H の組み合わせは、H の数が上限(C の数×2+2)をこえないものだけが分子として成り立つ。
- O を1個・2個とし、分子量から O のぶんを引いた残りを C と H に分ける。
- O が3個では O だけで分子量をこえるので、候補は2つで終わる。
【問6の方針】
二重結合も環も無い分子は、H の数が上限どおりになる。同じ分子式のアルコールとエーテルは、水素結合をつくるかどうかで、室温で液体か気体かが分かれる(下の図)。


- 問5 の2つの分子式のうち、H が上限より少なく、二重結合か環が必要なものを外す。
- 残った分子式の異性体(アルコールとエーテル)を挙げ、20 ℃で液体であることから A を決める。
- 記入例にならって示性式で書く。
解答


解答をテキストで読む
問1
ふたに小さな穴があるので、フラスコの中の圧力は外の大気圧 $1.01\times10^{5}$ Pa と等しい。操作②ではフラスコの中は A の気体だけなので、A に注目して100 ℃(373 K)で状態方程式を立てる(下の図)。
$$n_0=\dfrac{PV}{RT}=\dfrac{1.01\times10^{5}\times0.831}{8.31\times10^{3}\times373}=2.708\times10^{-2}\ \mathrm{mol}$$
答 $2.7\times10^{-2}$ mol(4点)
問2
底にたまった液体 1.15 g を、20 ℃の密度 0.789 g/cm³ で割る。
$$\dfrac{1.15}{0.789}=1.457\ \mathrm{cm^3}$$
1 cm³=1 mL なので、1.457 mL。
答 1.5 mL(3点)
問3
20 ℃に冷やすと A の大部分が液体になる。液体があるので、フラスコに残る A の気体の圧力は20 ℃の飽和蒸気圧 $6.10\times10^{3}$ Pa。残りは小さな穴から入る空気で、全圧は大気圧にもどる(問1 の図)。A はフラスコの外に出ないので、A の物質量の合計は $n_0$ のまま。
A に注目する。物質量と体積は変わらないので、 $PV=nRT$ より圧力は絶対温度に比例する。20 ℃(293 K)で A が全て気体と仮定した圧力 $P_{\mathrm{if}}$ は、100 ℃(373 K)の大気圧に絶対温度の比をかけて求める。
$$P_{\mathrm{if}}=1.01\times10^{5}\times\dfrac{293}{373}=7.934\times10^{4}\ \mathrm{Pa}$$
$P_{\mathrm{if}}$ は飽和蒸気圧 $6.10\times10^{3}$ Pa より大きいので、液体が存在する。気体のまま残るのは飽和蒸気圧のぶんで、液体になったのは残りのぶん(下の図)。
$$7.934\times10^{4}-6.10\times10^{3}=7.324\times10^{4}\ \mathrm{Pa}\quad\text{(液体になったぶん)}$$
体積と温度が同じなので、圧力は物質量に比例する。液体になった割合は
$$\dfrac{7.324\times10^{4}}{7.934\times10^{4}}\times100=92.3\ \%$$
答 92 %(5点)
問4
底にたまった 1.15 g は、液体になったぶんの A。液体ぶんの圧力 $7.324\times10^{4}$ Pa を、20 ℃(293 K)・0.831 L でそのまま状態方程式に入れて物質量にする。
$$n=\dfrac{7.324\times10^{4}\times0.831}{8.31\times10^{3}\times293}=2.500\times10^{-2}\ \mathrm{mol}$$
これは問1 の $n_0$ の92.3 %にあたる。分子量 $M$ は、質量を物質量で割って
$$M=\dfrac{1.15}{2.500\times10^{-2}}=46.0$$
答 46(4点)
問5
O の数で場合分けし、分子量46から O のぶんを引いた残りを C(12.0)と H(1.00)に分ける。H の数は上限(C の数×2+2)以下でなければならない。
・O が1個:残りは $46-16=30$。C 2個(24)と H 6個で $\ce{C2H6O}$(C 1個だと H が18個になり、上限の4をこえる)
・O が2個:残りは $46-32=14$。C 1個(12)と H 2個で $\ce{CH2O2}$
・O が3個:O だけで48になり、46をこえるので無い
(2つは順不同)
答 $\ce{C2H6O}$(2点)
答 $\ce{CH2O2}$(2点)
問6
二重結合も環も無い分子は、H の数が上限(C の数×2+2)どおりになる。
・$\ce{C2H6O}$:上限は $2\times2+2=6$ で、H は6個。二重結合も環も無い形が書ける
・$\ce{CH2O2}$:上限は $2\times1+2=4$ で、H が2個少ない。二重結合か環が1つ必要になる(ギ酸 $\ce{HCOOH}$ は $\ce{C=O}$ をもつ)。条件に合わない
$\ce{C2H6O}$ には、エタノール $\ce{C2H5OH}$ とジメチルエーテル $\ce{CH3OCH3}$ の2つの異性体がある(下の図)。エタノールは分子の間に水素結合をつくるので沸点が高く(約78 ℃)、20 ℃では液体。ジメチルエーテルは水素結合をつくらず、沸点は約−25 ℃で、20 ℃では気体。A は20 ℃で液体なのでエタノール。20 ℃の密度 0.789 g/cm³ もエタノールの値と一致する。
答 $\ce{C2H5OH}$(5点)
別解
問3
気体で残った A の物質量を先に求めて、全体から引く。20 ℃で残った A の気体は飽和蒸気圧 $6.10\times10^{3}$ Pa なので
$$\dfrac{6.10\times10^{3}\times0.831}{8.31\times10^{3}\times293}=2.082\times10^{-3}\ \mathrm{mol}$$
液体になったのは $2.708\times10^{-2}-2.082\times10^{-3}=2.500\times10^{-2}$ mol で、割合は
$$\dfrac{2.500\times10^{-2}}{2.708\times10^{-2}}\times100=92.3\ \%$$
出題意図
問1・問2 小さな穴の開いたフラスコでは中の圧力が大気圧と等しいことから、状態方程式で蒸気の物質量を求め、密度から液体の体積を求められるか
問3・問4 冷やしたあとも飽和蒸気圧のぶんは気体で残ることに気づき、液体になったぶんの物質量だけで分子量を求められるか
問5・問6 分子量から C・H・O の分子式の候補を数え上げ、二重結合・環が無い条件と20 ℃で液体であることから物質を決められるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 20点 | 15点 |
| 目標時間 | 15分 | 15分 |
揮発性の液体の分子量測定は重要問題集の典型問題だが、九大は冷やしたあとも飽和蒸気圧のぶんが気体で残る所まで聞いてくる。
2014年の化学の合否を分けた大問。
「液体があれば飽和蒸気圧」「全て気体と仮定した圧力を飽和蒸気圧と比べる」を徹底していれば、この一点で迷うことはない。
問5 で分子式が二通りになるかどうかで自分の答えを確かめられる作りなので、見落としてもそこで戻って取り切ること。
この型を一度でも練習したことがあるかどうかで差がつく大問だ。
差がつく所・失点しやすい所
- 問3・問4:冷やしたあとも飽和蒸気圧のぶんの A は気体で残る、という発想に行き着けるか。ここを見落として 1.15 g を問1 の物質量で割ると分子量は42になり、問5・問6 まで連鎖して、10点以上を落とす。問5 で分子式が二通りにならないことから気づいて戻れるかも決め手。
- 問6:二重結合・環が無い条件で $\ce{CH2O2}$ を外し、20 ℃で液体であることからエタノールとジメチルエーテルを見分けられるか。
2014年九州大学化学
第2問 解答・解説
第2問は理論化学(化学反応とエネルギー)・無機化学の問題です。
テーマは『塩の加水分解』『燃焼エンタルピー』『アンモニア合成の速度と平衡』。
問題


問題文をテキストで読む
※ 旧課程の問題なので、熱化学方程式・反応熱・燃焼熱の表記をエンタルピーに直して載せています。
次の文章を読み、問1〜問4に答えよ。なお、解答中の数値は有効数字3桁で答えよ。
農業では、窒素やリンなどの補給が肥料によって行われている。窒素を補給するための代表的な化学肥料として、硫酸アンモニウムが使われている。この物質はアンモニアと硫酸の中和反応から得られる。
アンモニアの合成には、その原料として水素が必要である。代表的な水素の工業的生産法として、下の式①の反応で表されるような炭化水素と水蒸気を用いた手法がある。
$\ce{CH4}(\text{気})+\ce{H2O}(\text{気})$
$\qquad\ce{->}\ \ce{CO}(\text{気})+3\,\ce{H2}(\text{気})$ $\Delta H_1\ [\mathrm{kJ}]$ ・・・①
水素と窒素を原料とするアンモニアの合成は、下の式②で表される。
$\ce{N2}(\text{気})+3\,\ce{H2}(\text{気})$
$\qquad\ce{->}\ 2\,\ce{NH3}(\text{気})$ $\Delta H=-92.2\ \mathrm{kJ}$ ・・・②
工業的なアンモニアの合成は、反応平衡および反応速度を考慮し、高圧容器内500 ℃程度で、触媒を用いて行われる。
下の式③の中和反応式によって硫酸アンモニウムが生成する。
$2\,\ce{NH3}+\ce{H2SO4}\ \ce{->}\ \ce{(NH4)2SO4}$ ・・・③
生成した硫酸アンモニウムは、水に溶解して電離すると弱 $\boxed{\text{ア}}$ を示す。これは電離した $\boxed{\text{イ}}$ イオンの一部が水に $\boxed{\text{ウ}}$ を与えて、 $\boxed{\text{エ}}$ になろうとする傾向があるためである。
問1. 文中の $\boxed{\text{ア}}$ 、 $\boxed{\text{イ}}$ 、 $\boxed{\text{エ}}$ には適切な語句を、 $\boxed{\text{ウ}}$ には適切なイオン式を、それぞれ答えよ。
問2. 式①の反応エンタルピー $\Delta H_1$ を符号を含めて答えよ。ただし、メタンの燃焼エンタルピーを $-892$ kJ/mol、水素の燃焼エンタルピーを $-286$ kJ/mol、一酸化炭素の燃焼エンタルピーを $-283$ kJ/mol および水の蒸発エンタルピーを $+44.0$ kJ/mol とする。
問3. 下図は、体積と圧力が一定の容器内で、式②にしたがって生成したアンモニアの体積百分率の時間変化を表している。図中の実線は反応温度500 ℃における時間変化を示す。
反応温度400 ℃の時間変化、500 ℃で触媒を使用した場合の時間変化、および反応温度700 ℃の時間変化は、それぞれ図中の破線(i)、(ii)、(iii)のどれに相当するか。最も適切な(i)、(ii)、(iii)の組み合わせを、以下のA〜Fの中から選び答えよ。
| (i) | (ii) | (iii) | |
|---|---|---|---|
| A | 400 ℃ | 700 ℃ | 触媒使用 |
| B | 700 ℃ | 触媒使用 | 400 ℃ |
| C | 触媒使用 | 400 ℃ | 700 ℃ |
| D | 700 ℃ | 400 ℃ | 触媒使用 |
| E | 400 ℃ | 触媒使用 | 700 ℃ |
| F | 触媒使用 | 700 ℃ | 400 ℃ |
問4. 式③の反応によって0.600 mol/L のアンモニア水溶液60.0 mL を中和するのに、0.150 mol/L の硫酸は何 mL 必要か答えよ。また、このとき得られる硫酸アンモニウムの濃度は何 mol/L か答えよ。
解答の方針
【問1の方針】
硫酸アンモニウムは、強酸の硫酸と弱塩基のアンモニアからできた塩。水の中では完全に電離し、弱塩基のイオンであるアンモニウムイオンだけが水と反応して液性を決める(下の図)。


- 硫酸アンモニウムが強酸と弱塩基の塩であることから、水溶液の液性を決める(ア)。
- 水と反応するイオン(イ)が水に渡す粒子をイオン式で書き(ウ)、渡したあとに何になるか(エ)を答える。
【問2の方針】
熱化学はエンタルピー図で解く。燃焼エンタルピーしか無いので、一番下に燃焼後の $\ce{CO2}$ と液体の水を置く。式①の水は気体なので、液体の水との差を蒸発の段で埋める(下の図)。


- 式①をベースとなる式にし、反応前から反応後への矢印を $\Delta H_1$ とおく。燃焼に使う $\ce{O2}$ 2 mol を両辺に足して段をそろえる。
- 一番下に燃焼後の $\ce{CO2 + 3H2O}$(液)を置き、反応前の段は水の蒸発の段と $\ce{CH4}$ の燃焼で、反応後の段は $\ce{CO}$ と $\ce{H2}$ 3 mol の燃焼で繋ぐ。
- 反応前の段から一番下へ行く2通りの矢印の和が等しいとして $\Delta H_1$ を求める。
【問3の方針】
グラフは「立ち上がりの傾き=反応の速さ」と「最後に一定になる高さ=平衡でのアンモニアの割合」の2つに分けて読む。触媒は速さだけを変え、温度は速さと平衡の両方を変える(下の図)。


- 式②が発熱反応( $\Delta H=-92.2$ kJ)であることを確かめる。
- 触媒を使った曲線は、最後の高さが500 ℃の実線と同じで、立ち上がりが速いものを選ぶ。
- 400 ℃は立ち上がりが遅く最後の高さが高いもの、700 ℃は立ち上がりが速く最後の高さが低いものを選び、組み合わせを決める。
【問4の方針】
中和は「酸の出す $\ce{H+}$ の物質量=塩基の出す $\ce{OH-}$ の物質量」の1本で立てる。硫酸は2価、アンモニアは1価(下の図)。中和点では硫酸アンモニウムだけが溶けていて、その体積は2つの水溶液の和。


- 必要な硫酸を $V$ mL とおき、「酸の出す $\ce{H+}$ =塩基の出す $\ce{OH-}$ 」の式から $V$ を求める。
- 式③の係数から硫酸アンモニウムの物質量を求め、混合後の体積( $60.0+V$ mL)で割って濃度を求める。
解答


解答をテキストで読む
問1
硫酸アンモニウムは、強酸の硫酸と弱塩基のアンモニアの中和でできた塩。水に溶かすと完全に電離する。
$$\ce{(NH4)2SO4 -> 2NH4+ + SO4^2-}$$
強酸のイオンである $\ce{SO4^2-}$ は水と反応しないが、弱塩基のイオンであるアンモニウムイオン $\ce{NH4+}$ は、その一部が水に $\ce{H+}$ を与えてアンモニアに戻ろうとする(塩の加水分解)。
$$\ce{NH4+ + H2O <=> NH3 + H3O+}$$
オキソニウムイオン $\ce{H3O+}$ ができるので、水溶液は弱い酸性を示す。塩の液性は、もとの酸と塩基のどちらが弱いかで決まり、弱い方のイオンが水と反応する(下の図)。
答(ア) 酸性(2点)
答(イ) アンモニウム(2点)
答(ウ) $\ce{H+}$(2点)
答(エ) アンモニア(2点)
問2
ベースとなる式は、求めたい式①。反応前 $\ce{CH4 + H2O}$(気)から反応後 $\ce{CO + 3H2}$ への矢印を $\Delta H_1$ とおく。与えられているのは燃焼エンタルピーだけなので、単体ではなく、燃焼後の $\ce{CO2}$ と液体の水を一番下に置いて繋ぐ。
反応前の $\ce{CH4}$ を燃やすにも( $\ce{CH4 + 2O2 -> CO2 + 2H2O}$ )、反応後の $\ce{CO}$ と $\ce{3H2}$ を燃やすにも( $\dfrac12\ce{O2}$ と $\dfrac32\ce{O2}$ )、 $\ce{O2}$ は2 mol 要る。そこで両辺に $\ce{2O2}$ を足して段をそろえる。水は気体と液体の区別が要るので、水にだけ状態を書く。
・反応前の段 $\ce{CH4 + 2O2 + H2O}$(気)と、1段下の $\ce{CH4 + 2O2 + H2O}$(液):液体から気体への蒸発なので、下から上へ $+44.0$
・$\ce{CH4 + 2O2 + H2O}$(液) → 一番下 $\ce{CO2 + 3H2O}$(液): $\ce{CH4}$ 1 mol の燃焼なので $-892$(もともとあった液体の水1 mol はそのまま)
・反応後の段 $\ce{CO + 3H2 + 2O2}$ → 一番下 $\ce{CO2 + 3H2O}$(液): $\ce{CO}$ 1 mol と $\ce{H2}$ 3 mol の燃焼なので $-283+(-286)\times3$
反応前の段から一番下へ行く2通りの矢印の和は等しい(下の図)。左の道は蒸発の矢印を上から下へ逆向きに読むので、符号を入れ替えて $-44.0$ にする。
$$\Delta H_1+\{-283+(-286)\times3\}=-44.0+(-892)$$
$$\Delta H_1-1141=-936\qquad\therefore\ \Delta H_1=+205\ \mathrm{kJ}$$
正なので、反応後の $\ce{CO + 3H2}$ は反応前の $\ce{CH4 + H2O}$ より上にあり、式①は吸熱反応。
答 $\Delta H_1=+205$ kJ(6点)
問3
式②は $\Delta H=-92.2$ kJ の発熱反応。グラフは、立ち上がりの傾き(反応の速さ)と、最後に一定になる高さ(平衡でのアンモニアの割合)を分けて読む(着眼点の図)。
・触媒を使う:活性化エネルギーの小さい経路ができて速くなるが、平衡は移動しない。最後の高さは500 ℃の実線と同じ約40 %で、それに早く達する曲線は(i)
・400 ℃(温度を下げる):反応は遅くなる。温度を下げると発熱の向き(右)へ平衡が移動し、アンモニアの割合は500 ℃より大きくなる。ゆっくり増えて約52 %で一定になる曲線は(ii)
・700 ℃(温度を上げる):反応は速くなる。温度を上げると吸熱の向き(左)へ平衡が移動し、アンモニアの割合は小さくなる。速く立ち上がって約13 %で一定になる曲線は(iii)
よって(i) 触媒使用、(ii) 400 ℃、(iii) 700 ℃の組み合わせ。
答 C((i) 触媒使用・(ii) 400 ℃・(iii) 700 ℃)(5点)
問4
中和は $\ce{H+}$ と $\ce{OH-}$ の反応なので、「酸の出す $\ce{H+}$ の物質量=塩基の出す $\ce{OH-}$ の物質量」の1本で立てる。硫酸は2価、アンモニアは1価(下の図)。
必要な硫酸を $V$ mL とすると
$$0.150\times\dfrac{V}{1000}\times2=0.600\times\dfrac{60.0}{1000}\times1\qquad\therefore\ V=120$$
有効数字3桁で答える。
答(硫酸の体積) $1.20\times10^{2}$ mL(3点)
式③より、硫酸1 mol から硫酸アンモニウムが1 mol できる。反応した硫酸は
$$0.150\times\dfrac{120}{1000}=1.80\times10^{-2}\ \mathrm{mol}$$
なので、硫酸アンモニウムも $1.80\times10^{-2}$ mol。中和点の水溶液の体積は、混ぜた2つの水溶液の和 $60.0+120=180$ mL とみなす。モル濃度は溶質の mol を溶液の L で割って
$$\dfrac{1.80\times10^{-2}}{0.180}=0.100\ \mathrm{mol/L}$$
答(硫酸アンモニウムの濃度) 0.100 mol/L(3点)
別解
問2 (式の足し引き) エンタルピーの式を4本並べる。
$$\ce{CH4 + 2O2 -> CO2 + 2H2O}\text{(液)}\qquad\Delta H=-892\ \mathrm{kJ}$$
$$\ce{CO + 1/2O2 -> CO2}\qquad\Delta H=-283\ \mathrm{kJ}$$
$$\ce{H2 + 1/2O2 -> H2O}\text{(液)}\qquad\Delta H=-286\ \mathrm{kJ}$$
$$\ce{H2O}\text{(液)}\ce{->}\ce{H2O}\text{(気)}\qquad\Delta H=+44.0\ \mathrm{kJ}$$
1本目から、2本目、3本目の3倍、4本目を引くと、 $\ce{O2}$ ・ $\ce{CO2}$ ・液体の水が消えて式①になる。
$$\Delta H_1=-892-(-283)-(-286)\times3-44.0=+205\ \mathrm{kJ}$$
引き算の向きと水の状態を取り違えやすいので、エンタルピー図で確かめられるようになってから使う。
出題意図
問1 強酸と弱塩基からできた塩の水溶液が酸性になる理由を、アンモニウムイオンの加水分解として説明できるか
問2 燃焼エンタルピーだけでエンタルピー図を組んで、水の状態の違いまで入れて反応エンタルピーを求めることができるか
問3 グラフの立ち上がり(反応の速さ)と最後の高さ(平衡)を分けて読み、触媒と温度の効果を区別できるか
問4 中和の量的関係を価数まで入れて式にし、中和点の塩の濃度を混合後の体積で求めることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 25点 | 25点 |
| 目標時間 | 10分 | 12分 |
塩の加水分解・熱化学・速度と平衡・中和という理論化学の典型問題が4つ並んだ大問で、重要問題集が完璧なら解ける。
どの学部も満点を取りたい。
差がつくとしたら問2 で、燃焼エンタルピーだけで組むエンタルピー図に、水蒸気と液体の水の差(蒸発の段)を入れられるかどうか。
熱化学はエンタルピー図を書けば迷う所はないので、10分で満点を取り切ろう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2:式①の水が気体であることを蒸発エンタルピーの段でエンタルピー図に入れる、という発想に行き着けるか。蒸発エンタルピーを入れ忘れると $\Delta H_1=+249$ 、蒸発の向きを逆にすると $+293$ になり、6点がまとめて落ちる。
2014年九州大学化学
第3問 解答・解説
第3問は無機化学・理論化学の問題です。
テーマは『陽イオンの系統分離』『溶解度積』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問5に答えよ。
$\ce{K+}$、 $\ce{Ag+}$、 $\ce{Ca^2+}$、 $\ce{Cu^2+}$、 $\ce{Al^3+}$、 $\ce{Fe^3+}$ の6種類の金属イオンを含む水溶液 A から、各イオンを分離するため、以下の操作①〜④を行った。なお、操作①〜④のろ過を行う際、沈殿として分離した金属イオンはろ液から完全に取り除かれているとする。
操作① 水溶液 A に希塩酸を加えてろ過し、沈殿 B と、ろ液 C を得た。
操作② ろ液 C に硫化水素を通じてろ過し、沈殿 D と、ろ液 E を得た。
操作③ ろ液 E を煮沸して硫化水素と塩化水素を除いたのち、希硝酸を加えて加熱し、冷却後に塩化アンモニウムを加えた。その後、アンモニア水を加えてろ過し、沈殿 F と、ろ液 G を得た。
【問題訂正(試験当日の紙)】操作③の「希硝酸」は、冊子の印刷では「濃硝酸」。訂正の紙で「希硝酸」に直された。
操作④ ろ液 G に炭酸アンモニウムを加えてろ過し、沈殿 H と、ろ液 I を得た。
問1. 操作①〜④で得られた沈殿 B、D、F および H の化合物の組成式を答えよ。ただし、F には2種類の化合物が含まれているので、その両方を答えよ。
問2. 水酸化ナトリウム水溶液に沈殿 F を加えた。このとき生成する錯イオンのイオン式を答えよ。
問3. 操作③で煮沸して硫化水素を除く理由は、硫化水素と希硝酸の酸化還元反応を避けるためである。この酸化還元反応を表す以下の反応式について、 $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{オ}}$ にあてはまる化合物の組成式を答えよ。
$2\,\boxed{\text{ア}}+3\,\boxed{\text{イ}}\longrightarrow 2\,\boxed{\text{ウ}}+4\,\boxed{\text{エ}}+3\,\boxed{\text{オ}}$
問4. 操作①で生じた沈殿 B の化合物は水に難溶である。実際には、この化合物はごくわずかに水に溶け、その飽和溶液は溶解平衡の状態にある。沈殿 B の飽和溶液中の金属イオン濃度(mol/L)を有効数字2桁で答えよ。ただし、沈殿 B の溶解度積は $2.0\times10^{-10}\,(\mathrm{mol/L})^2$ とする。
問5. ろ液 I に含まれる金属イオンの炎色反応の炎の色を答えよ。
解答の方針
【問1の方針】
系統分離は試薬を加える順番が決まっていて、各操作で沈殿するイオンを順に当てはめるだけ(下の図)。硫化水素は還元剤なので、鉄(Ⅲ)イオンはいったん鉄(Ⅱ)イオンになり、それを希硝酸で戻している。


- 希塩酸で塩化物の沈殿をつくるのは銀イオンだけなので、B を決める。
- 酸性のまま硫化水素を通じて沈殿するのは銅(Ⅱ)イオンだけなので、D を決める。
- 煮沸と希硝酸で鉄を鉄(Ⅲ)イオンに戻してからアンモニア水を加えると、鉄とアルミニウムが水酸化物になるので、F の2つを決める。
- 炭酸アンモニウムで沈殿するのはカルシウムイオンなので、H を決める。
【問2の方針】
水酸化物が過剰の塩基に溶けるかどうかは、加えるのが水酸化ナトリウム水溶液かアンモニア水かで決まる(下の図)。水酸化ナトリウム水溶液に溶けるのは、アルミニウム・亜鉛などの両性元素の水酸化物だけ。


- 沈殿 F の水酸化鉄(Ⅲ)と水酸化アルミニウムのうち、両性水酸化物はどちらかを見分ける。
- 水酸化アルミニウムが $\ce{OH-}$ と結びついてできる錯イオンを、配位数4で書く。
【問3の方針】
酸化剤は希硝酸、還元剤は硫化水素。何が何になるかは酸化ラダーで決まり、希硝酸は2段下がって一酸化窒素に、硫化水素は硫黄になる(下の図)。係数は問題に書いてある。


- 酸化ラダーより、希硝酸は $\ce{NO}$ に、硫化水素は $\ce{S}$ になると決める。
- 酸化剤と還元剤の半反応式を、 $\ce{e-}$ で酸化数 → $\ce{H+}$ で電荷 → $\ce{H2O}$ で原子の順に書く。
- 受け取る $\ce{e-}$ と与える $\ce{e-}$ の数をそろえて2本を足し、係数2・3・2・4・3 と合うことを確かめてア〜オに入れる。
【問4の方針】
飽和溶液では、溶けた塩化銀1個から銀イオンと塩化物イオンが1個ずつ出るので、2つの濃度は等しい(下の図)。溶解度積はこの2つの濃度の積なので、平方根をとれば銀イオンの濃度になる。


- 溶解平衡の式と溶解度積の式を書く。
- $[\ce{Ag+}]=[\ce{Cl-}]=x$ とおいて、 $x^2$ が溶解度積に等しいという式を立てる。
- $\sqrt2=1.41$ を使って $x$ を求め、有効数字2桁で答える。
【問5の方針】
アルカリ金属のイオンはどの試薬を加えても沈殿しないので、最後のろ液に残り、炎色反応で確かめる(下の図)。


- 操作①〜④で沈殿しないで、ろ液 I に残る金属イオンがカリウムイオンだと確かめる。
- カリウムの炎色反応の色を答える。
解答




解答をテキストで読む
問1
6種類のイオンを、試薬の順番どおりに分けていく(下の図)。
・操作①:希塩酸の $\ce{Cl-}$ と沈殿するのは $\ce{Ag+}$ だけ( $\ce{Pb^2+}$ があれば $\ce{PbCl2}$ も沈殿する)。 $\ce{Ag+ + Cl- -> AgCl}$ で白色沈殿
・操作②:塩酸で酸性のまま硫化水素を通じると、 $\ce{S^2-}$ が少ないので、硫化物になりやすいイオン化傾向の小さい $\ce{Cu^2+}$ だけが沈殿する。 $\ce{Cu^2+ + S^2- -> CuS}$ で黒色沈殿。このとき硫化水素は還元剤として働き、 $\ce{Fe^3+}$ を $\ce{Fe^2+}$ に変える
$$\ce{2Fe^3+ + H2S -> 2Fe^2+ + S + 2H+}$$
・操作③:煮沸して硫化水素を追い出してから希硝酸を加え、鉄(Ⅱ)イオンを酸化して鉄(Ⅲ)イオンに戻す。水酸化鉄(Ⅲ)の方が水酸化鉄(Ⅱ)より溶けにくく、水酸化物として分けやすいから。アンモニア水を加えると $\ce{Fe(OH)3}$(赤褐色)と $\ce{Al(OH)3}$(白色)が沈殿する。 $\ce{Ca^2+}$ と $\ce{K+}$ はアンモニア水では沈殿しない
・操作④:炭酸アンモニウムの $\ce{CO3^2-}$ と $\ce{Ca^2+}$ が結びつき、 $\ce{Ca^2+ + CO3^2- -> CaCO3}$ で白色沈殿。ろ液 I には $\ce{K+}$ だけが残る
答 $\mathbf{B}=\ce{AgCl}$(2点)
答 $\mathbf{D}=\ce{CuS}$(2点)
(F の2つは順不同)
答 $\mathbf{F}=\ce{Fe(OH)3}$、 $\ce{Al(OH)3}$(4点)
答 $\mathbf{H}=\ce{CaCO3}$(2点)
問2
沈殿 F のうち、水酸化アルミニウムは両性水酸化物で、過剰の $\ce{OH-}$ と錯イオンをつくって溶ける。水酸化鉄(Ⅲ)は溶けずに残るので、この操作で鉄とアルミニウムを分けられる。
$$\ce{Al(OH)3 + OH- -> [Al(OH)4]-}$$
できるのはテトラヒドロキシドアルミン酸イオン(配位数4)。水酸化ナトリウム水溶液とアンモニア水で、水酸化物の溶け方は次のように分かれる(下の図)。
・水酸化アルミニウムは、アンモニア水をいくら加えても溶けない。アンモニアは弱塩基で $\ce{OH-}$ の濃度が大きくならず、アルミニウムはアンモニアと錯イオンをつくらないから
・水酸化亜鉛は両性水酸化物で、しかもアンモニアと錯イオンをつくるので、どちらにも溶ける
・水酸化銅(Ⅱ)は両性ではないので水酸化ナトリウム水溶液には溶けず、アンモニア水にはテトラアンミン銅(Ⅱ)イオンになって溶ける
答 $\ce{[Al(OH)4]-}$(3点)
問3
酸化剤は希硝酸、還元剤は硫化水素。酸化ラダーより、硝酸は濃硝酸なら1段下がって二酸化窒素、希硝酸なら2段下がって一酸化窒素になる。硫化水素は硫黄になる(下の図)。
半反応式は、 $\ce{e-}$ で酸化数(+5→+2 で3個、−2→0 で2個)→ $\ce{H+}$ で電荷 → $\ce{H2O}$ で原子の順に合わせる。
$$\ce{HNO3 + 3H+ + 3e- -> NO + 2H2O}$$
$$\ce{H2S -> S + 2H+ + 2e-}$$
酸化剤の受け取る $\ce{e-}$ =還元剤の与える $\ce{e-}$ になるように、硝酸の半反応式を2倍、硫化水素の半反応式を3倍して $\ce{e-}$ を6個にそろえて足す。 $\ce{H+}$ は両辺の6個が消える。
$$\ce{2HNO3 + 3H2S -> 2NO + 4H2O + 3S}$$
係数が問題の $2\,\boxed{\text{ア}}+3\,\boxed{\text{イ}}\longrightarrow 2\,\boxed{\text{ウ}}+4\,\boxed{\text{エ}}+3\,\boxed{\text{オ}}$ と一致する。煮沸しないで希硝酸を加えると、希硝酸がこの反応で硫化水素の酸化に使われてしまい、鉄(Ⅱ)イオンを鉄(Ⅲ)イオンに戻すという目的が果たせない。だから操作③では先に煮沸して硫化水素を追い出す。
答(ア) $\ce{HNO3}$(1点)
答(イ) $\ce{H2S}$(1点)
答(ウ) $\ce{NO}$(1点)
答(エ) $\ce{H2O}$(1点)
答(オ) $\ce{S}$(1点)
問4
沈殿 B の塩化銀は、ごくわずかに溶けて溶解平衡になる(下の図)。
$$\ce{AgCl}\ (\text{固})\ \ce{<=> Ag+ + Cl-}$$
溶けた塩化銀1個から $\ce{Ag+}$ と $\ce{Cl-}$ が1個ずつ出るので、 $[\ce{Ag+}]=[\ce{Cl-}]=x$ mol/L とおける。溶解度積は2つのイオンの濃度の積なので
$$K_{\mathrm{sp}}=[\ce{Ag+}][\ce{Cl-}]=x^2=2.0\times10^{-10}$$
$$x=\sqrt{2.0}\times10^{-5}=1.41\times10^{-5}\ \mathrm{mol/L}$$
水溶液中のイオンの濃度の積が溶解度積を超えると沈殿ができ、溶解度積と等しいところが飽和溶液。飽和溶液1 L に溶けている塩化銀は $1.4\times10^{-5}$ mol(塩化銀の式量143.5 で約2 mg)しかないので、系統分離では「沈殿として完全に取り除かれた」と見なしてよい。問題文の「ろ液から完全に取り除かれているとする」はこの約束。
答 $1.4\times10^{-5}$ mol/L(4点)
問5
ろ液 I に残るのはカリウムイオン。カリウムイオンは塩化物・硫化物・水酸化物・炭酸塩のどれも水に溶けるので、沈殿では確かめられず、炎色反応を使う(下の図)。塩酸で洗った白金線の先に溶液をつけ、バーナーの炎に入れると、カリウムは赤紫色の炎になる。
ナトリウムの黄色、カルシウムの橙赤色、銅の青緑色も、系統分離のあとの確かめでよく問われる。
答 赤紫色(3点)
別解
問3 (酸化数の変化だけで係数を決める)窒素は +5 → +2 で1個あたり3、硫黄は −2 → 0 で1個あたり2変わる。変化の合計をそろえると $3\times2=2\times3$ なので、硝酸と硫化水素は $2:3$ で反応し、 $\ce{NO}$ が2個・ $\ce{S}$ が3個できる。残った H と O から水が4個。本解と同じ式になる。ただし水の数まで決めるには原子の数を数え直す必要があるので、ふだんは本解の半反応式で書く。
出題意図
問1 6種類の金属イオンの系統分離で、どの操作でどのイオンが何の沈殿になるかを、試薬の順番どおりに当てはめられるか
問2 沈殿 F の2つのうち、両性水酸化物の水酸化アルミニウムだけが水酸化ナトリウム水溶液に溶けて錯イオンになることを答えられるか
問3 煮沸しないと残った硫化水素が希硝酸と反応することを、酸化ラダーと半反応式から反応式で表せるか
問4 飽和溶液では銀イオンと塩化物イオンの濃度が等しいことから、溶解度積で銀イオンの濃度を求められるか
問5 沈殿しないで最後まで残るアルカリ金属のイオンを、炎色反応の色で答えられるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 25点 | 20点 |
| 目標時間 | 10分 | 10分 |
6種類の陽イオンの系統分離そのものを問う、無機の典型問題。
系統分離の流れを試薬の順番ごと白紙に書けるまで仕上げていれば、問1・問2・問5 は計算せずに書ける。
差がつくのは問3 の反応式で、硫化水素と希硝酸の反応を覚えていなくても、酸化ラダーから半反応式を2本立てれば必ず作れる。
反応式は覚えるものではなく、その場で作るものだと割り切って練習しておくこと。
差がつく所・失点しやすい所
- 問1:系統分離の流れ(試薬の順番と、各操作で沈殿するイオン)を白紙に書けるか。問2・問4・問5 はどれも問1 の沈殿とろ液をもとにしているので、ここで取り違えると10点以上がまとめて落ちる。
- 問3:硫化水素と希硝酸の反応式を、酸化ラダーから半反応式を2本立てて組み立てるという発想に行き着けるか。反応式そのものを覚えている受験生は少なく、希硝酸が何になるかを決められないと空欄5つ(5点)が落ちる。
2014年九州大学化学
第4問 解答・解説
第4問は有機化学・高分子化合物の問題です。
テーマは『芳香族アルコールの構造決定』『アルコールの級』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問6に答えよ。構造式を記入するときは、記入例にならって記せ。なお、構造式を記入するときは、光学異性体は区別しなくてよい。
分子式 $\ce{C9H12O}$ で表される4種類の化合物 A、B、C、D がある。これらの化合物はいずれもベンゼン環を1個もち、化合物 B 以外は不斉炭素原子をもつ。
これら4種類の化合物は、いずれも金属ナトリウムと反応し水素を発生したが、塩化鉄(Ⅲ)水溶液による呈色反応は示さなかった。
化合物 A にヨウ素と水酸化ナトリウム水溶液を反応させると、化合物 E が得られた。化合物 E を過マンガン酸カリウムで酸化すると分子式 $\ce{C8H6O4}$ の化合物 F が生じた。化合物 F を $\boxed{\text{ア}}$ と反応させるとポリエチレンテレフタラートが得られた。
化合物 B、C、D を二クロム酸カリウムで酸化したところ、化合物 B は反応しなかったが、化合物 C および D は、それぞれ分子式 $\ce{C9H10O}$ の化合物 G および H へ変化した。また、化合物 G は還元性を示し、銀鏡反応により酸性を示す化合物 I へ変化したが、化合物 H は還元性を示さず、銀鏡反応も起こさなかった。
問1. 化合物 A の構造式を答えよ。
問2. 化合物 E の構造式を答えよ。
問3. $\boxed{\text{ア}}$ に適した化合物名を答えよ。
問4. 化合物 B の構造式を答えよ。
問5. 化合物 C の構造式を答えよ。
問6. 化合物 D として考えられるすべての構造異性体の数を答えよ。ただし、化合物 A は含めない。また、光学異性体は区別しなくてよい。
解答の方針
【問1の方針】
不飽和度4はベンゼン環だけで使い切るので、側鎖は飽和で、O はアルコールの OH。ヨードホルム反応は $\ce{CH3-CH(OH)-{}}$ の目印で、F が PET の原料のテレフタル酸なら、側鎖はパラ位に2つ(下の図)。


- 不飽和度を求め、ベンゼン環のほかに二重結合・環がないと決める。
- ナトリウムと反応して水素が出て、塩化鉄(Ⅲ)で呈色しないので、4つとも側鎖に OH をもつアルコールと決める。
- ヨードホルム反応から、A は $\ce{CH3-CH(OH)-{}}$ をもつと決める。
- F は $\ce{C8H6O4}$ でポリエチレンテレフタラートの原料なのでテレフタル酸。ベンゼン環のパラ位に炭素の側鎖が2つあると決める。
- 炭素の数を $6+2+1=9$ に合わせ、パラ位に $\ce{CH3}$ と $\ce{CH(OH)CH3}$ を付けて A を書く。
【問2の方針】
ヨードホルム反応では $\ce{CH3-CH(OH)-{}}$ の端の $\ce{CH3}$ がヨードホルム $\ce{CHI3}$ として外れ、残りはカルボン酸になる。反応液は水酸化ナトリウムで塩基性なので、カルボン酸はナトリウム塩として得られる。
- A の $\ce{CH(OH)CH3}$ を $\ce{COONa}$ に置きかえて E を書く。
- E を酸化すると、環のメチル基も $\ce{COOH}$ になってテレフタル酸( $\ce{C8H6O4}$ )になることを確かめる。
【問3の方針】
ポリエチレンテレフタラートは、テレフタル酸の $\ce{COOH}$ と2価のアルコールの $\ce{OH}$ から水がとれてエステル結合がつながったポリエステル(下の図)。


- PET の名前の「エチレン」「テレフタラート」から、テレフタル酸と縮合重合する2価のアルコールを答える。
【問4の方針】
二クロム酸カリウムでの酸化のされ方で、アルコールの級が分かる(下の図)。酸化されない B は第三級で、OH の付いた炭素に炭素が3つ付く。


- 二クロム酸カリウムで酸化されないので、B は第三級アルコールと決める。
- OH の付いた炭素にベンゼン環と炭素2つが付く形にすると、炭素の数が $6+1+2=9$ でちょうど合う。
- OH の付いた炭素に $\ce{CH3}$ が2つ付くので不斉炭素がなく、問題文の「B 以外は不斉炭素原子をもつ」と合うことを確かめる。
【問5の方針】
G は還元性を示して銀鏡反応でカルボン酸になるのでアルデヒドで、C は第一級アルコール。不斉炭素には4つの違う基が付くので、側鎖の炭素3つの使い方は1通りに決まる(下の図)。


- G が還元性を示し、銀鏡反応で酸性の I になるので、G はアルデヒド、C は $\ce{-CH2OH}$ をもつ第一級アルコールと決める。
- 不斉炭素を1つもつには、1つの炭素にベンゼン環・H・ $\ce{CH3}$ ・ $\ce{CH2OH}$ が付けばよく、炭素の数が9で合う。
- ほかの第一級アルコール(直鎖の $\ce{-CH2CH2CH2OH}$ や、環にメチル基・エチル基が付いたもの)には不斉炭素がないことを確かめ、C を書く。
【問6の方針】
化合物 H は還元性を示さないのでケトンで、D は第二級アルコール。OH の付いた CH の両側に炭素が付く形を、側鎖の炭素3つの分け方(1本に3つ/2つと1つ)ごとに書き出す(下の図)。


- H が還元性を示さず銀鏡反応も起こさないので、H はケトン、D は第二級アルコールと決める。
- 側鎖が炭素3つの1本のとき、OH を1番目の炭素に付けたものと2番目の炭素に付けたものの2つ。
- 側鎖が炭素2つと1つの2本のとき、第二級になるのは $\ce{CH(OH)CH3}$ と $\ce{CH3}$ の組だけで、オルト・メタ・パラの3つ。
- 合計5つから、パラ位の A を除く。
- 4つとも OH の付いた炭素が不斉炭素になり、「不斉炭素原子をもつ」と合うことを確かめる。
解答




解答をテキストで読む
問1
$\ce{C9H12O}$ の不飽和度は
$$\dfrac{2\times9+2-12}{2}=4$$
ベンゼン環1個(環1つと二重結合3つ)で4を使い切るので、側鎖に二重結合や環はない。
4つの化合物はどれも金属ナトリウムと反応して水素を発生するので OH をもつ。塩化鉄(Ⅲ)で呈色しないので、OH はベンゼン環に直接付いていない(フェノール類ではない)。よって A〜D はどれも側鎖に OH をもつアルコール。
A はヨウ素と水酸化ナトリウム水溶液で反応する(ヨードホルム反応)ので、 $\ce{CH3-CH(OH)-{}}$ の形をもつ。
E を過マンガン酸カリウムで酸化すると、ベンゼン環に付いた炭素の側鎖は長さによらず $\ce{COOH}$ になる。F( $\ce{C8H6O4}$ )は $\ce{COOH}$ を2つもつベンゼンのジカルボン酸で、ポリエチレンテレフタラートの原料なので、2つの $\ce{COOH}$ がパラ位にあるテレフタル酸。オルト位のフタル酸、メタ位のイソフタル酸も分子式は $\ce{C8H6O4}$ なので、PET の原料であることが位置の決め手になる。
したがって A は、ベンゼン環のパラ位に炭素の側鎖を2つもつ。炭素の数は、ベンゼン環が6、 $\ce{CH(OH)CH3}$ が2で、残りの1つがもう一方の側鎖の $\ce{CH3}$ になる(下の図)。
$\ce{CH(OH)-{}}$ の炭素には、H・OH・ $\ce{CH3}$ ・ $\ce{CH3-C6H4}$ の4つの違う基が付くので不斉炭素で、問題文の条件とも合う。
答 $\mathbf{A}=\ce{CH3-C6H4-CH(OH)-CH3}$(パラ位。1-(4-メチルフェニル)エタノール。構造式は上の図)(4点)
問2
ヨードホルム反応では、 $\ce{CH3-CH(OH)-{}}$ がまず酸化されて $\ce{CH3-CO-{}}$ になり、端の $\ce{CH3}$ の H が I に置きかわったのち、ヨードホルム $\ce{CHI3}$ (黄色の沈殿)として外れる。残りはカルボン酸になるが、反応液は水酸化ナトリウムで塩基性なので、ナトリウム塩として得られる。A では $\ce{R-{}}$ が $\ce{CH3-C6H4-{}}$ で、次のようになる。
$$\ce{R-CH(OH)-CH3 + 4I2}$$
$$\ce{+ 6NaOH -> R-COONa}$$
$$\ce{+ CHI3 + 5NaI + 5H2O}$$
E を過マンガン酸カリウムで酸化すると、ベンゼン環の $\ce{CH3}$ も $\ce{COOH}$ になり、テレフタル酸 F( $\ce{C8H6O4}$ )ができて問題文と合う(問1 の図)。
答 $\mathbf{E}=\ce{CH3-C6H4-COONa}$(パラ位。4-メチル安息香酸ナトリウム。構造式は上の図)(4点)
問3
ポリエチレンテレフタラート(PET)は、テレフタル酸の $\ce{COOH}$ とエチレングリコール( $\ce{HO-CH2-CH2-OH}$ )の $\ce{OH}$ から水がとれてエステル結合ができ、縮合重合でつながったポリエステル(下の図)。
答(ア) エチレングリコール(3点)
問4
二クロム酸カリウムでの酸化のされ方は、アルコールの級(OH の付いた炭素に付く H の数が、第一級は2つ、第二級は1つ、第三級はなし)で決まる(下の図)。
B は酸化されなかったので第三級アルコールで、OH の付いた炭素には炭素が3つ付く。ベンゼン環と炭素2つを付けると、炭素の数は $6+1+2=9$ でちょうど合うので、OH の付いた炭素にベンゼン環と $\ce{CH3}$ 2つが付いた2-フェニル-2-プロパノール。同じ $\ce{CH3}$ が2つ付くので不斉炭素はなく、「B 以外は不斉炭素原子をもつ」と合う。
答 $\mathbf{B}=\ce{C6H5-C(CH3)2-OH}$(2-フェニル-2-プロパノール。構造式は上の図)(4点)
問5
C を酸化してできた G( $\ce{C9H10O}$ )は還元性を示し、銀鏡反応で酸性の I に変わるので、アルデヒド。よって C は $\ce{-CH2-OH}$ をもつ第一級アルコールで、G は $\ce{-CHO}$ 、I は $\ce{-COOH}$ をもつ。
C は不斉炭素をもつ。不斉炭素には4つの違う基が付くので、1つの炭素にベンゼン環・H・ $\ce{CH3}$ ・ $\ce{CH2OH}$ を付けると、炭素の数は $6+1+1+1=9$ でちょうど合う(下の図)。
ほかの第一級アルコールでは、側鎖が直鎖の $\ce{C6H5-CH2-CH2-CH2-OH}$ も、ベンゼン環にメチル基やエチル基が付いた $\ce{CH3-C6H4-CH2-CH2-OH}$ ・ $\ce{C2H5-C6H4-CH2-OH}$ なども、4つの違う基が付く炭素がない。よって C は2-フェニル-1-プロパノール(G は2-フェニルプロパナール、I は2-フェニルプロパン酸)。
答 $\mathbf{C}=\ce{C6H5-CH(CH3)-CH2-OH}$(2-フェニル-1-プロパノール。構造式は上の図)(5点)
問6
D を酸化してできた H( $\ce{C9H10O}$ )は還元性を示さず、銀鏡反応も起こさないので、ケトン。よって D は第二級アルコールで、OH の付いた CH の両側に炭素が付く。側鎖の炭素3つの分け方ごとに書き出すと、次の5つ(下の図)。
・側鎖が炭素3つの1本: $\ce{C6H5-CH(OH)-CH2-CH3}$ (1-フェニル-1-プロパノール)・ $\ce{C6H5-CH2-CH(OH)-CH3}$ (1-フェニル-2-プロパノール)
・側鎖が炭素2つと1つの2本: $\ce{CH(OH)CH3}$ と $\ce{CH3}$ の組のオルト・メタ・パラの3つ
2本でも $\ce{CH2CH2OH}$ と $\ce{CH3}$ 、 $\ce{C2H5}$ と $\ce{CH2OH}$ の組や、側鎖が $\ce{CH3}$ 3本のときは、OH の付いた炭素が $\ce{CH2}$ になって第一級になるので入らない。5つとも OH の付いた炭素に4つの違う基が付いて不斉炭素をもち、「不斉炭素原子をもつ」と合う。このうちパラ位のものは A なので除く。
答 4(5点)
出題意図
問1・問2 ヨードホルム反応と側鎖の酸化の結果から、ベンゼン環に付く側鎖の形と位置を決められるか
問3 ポリエチレンテレフタラートの原料(単量体)を答えられるか
問4・問5 二クロム酸カリウムでの酸化のされ方と不斉炭素の有無から、アルコールの級と骨格を決められるか
問6 第二級アルコールの構造異性体を、側鎖の炭素の分け方ごとに漏れなく数えられるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 25点 | 20点 |
| 目標時間 | 15分 | 15分 |
アルコールの級を酸化の結果で見分ける、九大の有機としてオーソドックスな構造決定だ。
問1〜問5 は教科書の反応(ヨードホルム反応・側鎖の酸化・アルコールの酸化)だけで答えが決まり、ここを落とすと合格は厳しい。
差がつくのは問6 の数え上げで、側鎖の炭素3つを「1本」と「2本」に分けて書き出せば漏れない。
異性体は分け方を決めてから順に書き出す練習を積んでおこう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問1:$\ce{C8H6O4}$ を PET の原料のテレフタル酸と結びつけ、側鎖をパラ位と決めるという発想に行き着けるか。ここで位置を誤ると問1・問2 がまとめて落ちる。
- 問6:D を第二級アルコールと言いかえ、側鎖の炭素3つを「1本に3つ」と「2つと1つ」に分けて書き出す、という発想に行き着けるか。1-フェニル-2-プロパノールを落としたり、A を数えて5にしたりしやすい(5点)。
2014年九州大学化学
第5問 解答・解説
第5問は高分子化合物(アミノ酸・タンパク質)・有機化学の問題です。
テーマは〔5A〕『合成高分子とポリペプチド』/〔5B〕『酵素・糖・油脂』。
問題


問題文をテキストで読む
(選択問題)〔5A〕または〔5B〕のいずれか一つを選択し、解答せよ。
〔5A〕 次の文章を読み、問1〜問5に答えよ。
合成高分子には、$\varepsilon$-カプロラクタムの開環重合によって合成されるナイロンのように、アミド結合で連結した化合物や、ポリエチレンやポリ酢酸ビニルのように、 $\boxed{\text{ア}}$ 重合で得られる化合物がある。合成高分子にはこの他にも、ポリエステルのように、エステル結合で連結した化合物が存在する。
一方、タンパク質は天然高分子の一つであり、多数の $\alpha$-アミノ酸が $\boxed{\text{イ}}$ 重合し、ペプチド結合によってある配列順序で連なった化合物である。この配列順序をタンパク質の $\boxed{\text{ウ}}$ 構造という。タンパク質を構成する $\alpha$-アミノ酸には約20種類が知られている。 $\alpha$-アミノ酸の種類や配列順序、数の違いにより、多くの組み合わせがあり、多種多様なタンパク質が存在する。
問1. 文中の $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{ウ}}$ に適切な語句を答えよ。
問2. $\alpha$-アミノ酸から合成されたあるポリペプチドの繰り返し単位は、文章中下線部のナイロンの繰り返し単位と構造異性体の関係にある。このポリペプチドは、ただ1種類のアミノ酸からできている。このアミノ酸の側鎖には、枝分かれ構造があるが、不斉炭素原子はない。このポリペプチドの構造式を記入例にならって答えよ。なお、構造式を記入するときは、光学異性体は区別しなくてよい。
問3. ポリ酢酸ビニルに含まれるすべてのエステル結合のうちの70 %だけを加水分解した。得られた高分子の質量は、原料のポリ酢酸ビニルの質量に対して何%になるか、有効数字2桁で答えよ。
問4. 20種類の $\alpha$-アミノ酸がランダムな配列順序で、ペプチド結合によって連結できると仮定する。こうして得られる重合度が100の直鎖状のタンパク質には、何通りの配列順序が可能か。累乗を使って $x^y$ のように答えよ。
問5. グリシンとアラニンからなる、重合度10、分子量686のポリペプチドがある。このポリペプチド2.00 mol を完全に加水分解して得られるグリシンの質量(g)を、有効数字3桁で答えよ。
〔5B〕 次の文章を読み、問1〜問6に答えよ。なお、解答中の数値は有効数字3桁で答えよ。
生体内で起こる様々な化学反応は、酵素と呼ばれるタンパク質が触媒として働くことによって、容易に進行する。一般的に、酵素は決まった基質にしか作用しないことが知られており、このことを酵素の $\boxed{\text{ア}}$ という。また、酵素が特定の基質と結合して反応を起こす場所を $\boxed{\text{イ}}$ 部位という。一方、酵素には特定の温度で反応速度が最大になる性質があるが、この温度をその酵素の $\boxed{\text{ウ}}$ という。
例えば、 $\boxed{\text{エ}}$ と呼ばれる酵素は、グルコースが $\beta$-グリコシド結合でつながった高分子化合物であるセルロースを加水分解する。また、リパーゼと呼ばれる酵素は、油脂(トリグリセリド)を加水分解し、3分子の脂肪酸と1分子の $\boxed{\text{オ}}$ を生成する。
問1. 文中の $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{オ}}$ に適切な語句を答えよ。
問2. セルロースを $\boxed{\text{エ}}$ で加水分解した生成物中には、 $\beta$-グルコース2分子が結合した化合物が含まれる。この化合物名を答えよ。
問3. グルコースは水溶液中では、以下のように3種類の異性体( $\alpha$ 型環状構造、鎖状構造、 $\beta$ 型環状構造)が平衡状態で存在している。この中で還元性を示す鎖状構造の構造式を答えよ。
問4. トリグリセリドが強塩基によって加水分解されると、脂肪酸の塩とアルコールが生じる。この反応を何というか答えよ。
問5. 生体内に存在する脂肪酸の中には、二重結合を含む化合物が多数存在する。これらの脂肪酸の総称を答えよ。また、炭素数が18で二重結合を2個含む脂肪酸(リノール酸)と、炭素数が20で二重結合を5個含む脂肪酸(エイコサペンタエン酸)の分子量を答えよ。
問6. 1分子のトリグリセリド A を加水分解すると、リノール酸、エイコサペンタエン酸、ステアリン酸(炭素数18、二重結合0個)が1分子ずつ生成する。11.3 g のトリグリセリド A に水素を完全に付加して得られるトリグリセリド B の分子量と質量(g)を答えよ。
解答の方針
〔5A〕合成高分子とポリペプチド(選択問題)
【問1の方針】
重合は「二重結合を開いてつながる」「水などが取れてつながる」「環を開いてつながる」の3つで覚えておく。ポリエチレン・ポリ酢酸ビニルはビニル系の単量体、タンパク質はアミノ酸どうしから水が取れてできる。
- ア 二重結合を開いてつながる重合の名前を書く。
- イ アミノ酸どうしから水が取れてつながる重合の名前を書く。
- ウ アミノ酸の配列順序をタンパク質の何次構造というかを書く。
【問2の方針】
構造異性体=分子式が同じ。ナイロン6 と $\alpha$-アミノ酸の繰り返し単位を並べると、違うのは $\ce{(CH2)5}$ と「$\ce{CH}$ +側鎖 R」の部分だけなので、ここの原子の数をそろえれば R が決まる(下の図)。


- ナイロン6 の繰り返し単位 $\ce{-NH-(CH2)5-CO-{}}$ の分子式を求める。
- $\alpha$-アミノ酸の繰り返し単位 $\ce{-NH-CH(R)-CO-{}}$ と分子式が同じになるように、側鎖 R の組成を決める。
- その組成の炭化水素基を書き出し、「枝分かれがある」「側鎖に不斉炭素がない」の2つで1つに絞る。
- そのアミノ酸のポリペプチドを、記入例の形で書く。
【問3の方針】
けん化(加水分解)しても、繰り返し単位の数は変わらない。単位ごとに $\ce{-OCOCH3}$ が $\ce{-OH}$ に変わるだけなので、100単位あたりで質量を比べればよい(下の図)。


- ポリ酢酸ビニルの繰り返し単位の式量(86.0)と、加水分解された単位の式量(44.0)を求める。
- 70 %の単位が44.0、30 %の単位が86.0 のままとして、加水分解後の質量を単位あたりで求め、86.0 との比を百分率にする。
【問4の方針】
直鎖のタンパク質は、N 末端から C 末端へと向きのある並びなので、100個の位置のそれぞれに20種類のどれを置くかを数えればよい。
- 100か所それぞれに20通りの選び方があるので、積の法則で掛け合わせる。
【問5の方針】
直鎖で10個つながると、ペプチド結合は9か所で、取れる水は9分子(下の図)。グリシンの数を文字でおけば、分子量686 から1本の式で個数が決まる。


- グリシン(分子量75.0)を $x$ 個、アラニン(89.0)を $10-x$ 個とし、水9分子を引いた分子量を686 とおいて $x$ を求める。
- ポリペプチド2.00 mol から得られるグリシンの物質量を求め、質量にする。
〔5B〕酵素・糖・油脂(選択問題)
【問1の方針】
酵素は「基質特異性」「活性部位」「最適温度(と最適 pH)」の組で覚えておく。油脂は、脂肪酸3分子と3価のアルコールのエステル。
- ア〜ウ 酵素の性質の名前(決まった基質だけに働く性質・基質と結合する場所・反応速度が最大になる温度)を書く。
- エ セルロースを加水分解する酵素の名前を書く。
- オ 油脂のもとになる3価のアルコールの名前を書く。
【問2の方針】
セルロースの加水分解は、デンプン(アミラーゼ→マルトース)と並べて「セルラーゼ→セロビオース」と言えるようにしておく。
- $\beta$-グルコース2分子が $\beta$-1,4 結合でつながった二糖の名前を書く。
【問3の方針】
鎖状構造は、環状構造の1位の C と環の O の結合が切れたもの。1位はアルデヒド基になり、環の O は5位の C に OH として残る。ほかの位置の H と OH の向きは環のときのまま(下の図)。


- $\alpha$ 型の図の1位の C と環の O の結合を切る。
- 1位を $\ce{-CHO}$(C に H と $\ce{=O}$)にし、5位の C に OH を付ける。
- 2〜4位の H・OH と、5位の $\ce{CH2OH}$・H は環の図と同じ向きのまま書く。
【問4の方針】
エステルを強塩基で加水分解すると、カルボン酸の塩とアルコールができる。油脂ならセッケンとグリセリン。
- エステルを強塩基で加水分解する反応の名前を書く。
【問5の方針】
飽和脂肪酸 $\ce{C_{n}H_{2n+1}COOH}$ から、二重結合が1つ増えるごとに H が2個減る。
- 炭素数18・二重結合2個、炭素数20・二重結合5個の脂肪酸の分子式を、飽和脂肪酸から H を引いて求め、分子量にする。
【問6の方針】
油脂はグリセリン1分子と脂肪酸3分子がエステル結合3つでつながり、水3分子が取れたもの。水素は二重結合1つに $\ce{H2}$ 1分子が付く(下の図)。


- グリセリンと3つの脂肪酸の分子量の和から水3分子を引いて A の分子量を求める。
- 二重結合は全部で $2+5+0=7$ 個なので、$\ce{H2}$ 7分子分を足して B の分子量を求める。
- A の物質量を求め、B も同じ物質量なので B の質量を求める。
解答




解答をテキストで読む
〔5A〕
問1
ポリエチレン(エチレン $\ce{CH2=CH2}$)・ポリ酢酸ビニル(酢酸ビニル $\ce{CH2=CH-OCOCH3}$)は、単量体の二重結合が開いてつながる付加重合でできる。何も取れないので、重合体の繰り返し単位の式量は単量体の分子量と同じ。
タンパク質は、アミノ酸のカルボキシ基の OH と別のアミノ酸のアミノ基の H が水として取れてペプチド結合をつくる、縮合重合でできる。アミノ酸の配列順序を一次構造という。
重合の種類は、次の3つで押さえておく。
・付加重合:二重結合が開いてつながる(ポリエチレン・ポリ酢酸ビニル・ポリスチレンなど)
・縮合重合:水などの小さな分子が取れてつながる(タンパク質・ナイロン66・ポリエチレンテレフタラートなど)
・開環重合:環が開いてつながる。水は取れない($\varepsilon$-カプロラクタムからナイロン6)
答(ア) 付加(2点)
答(イ) 縮合(2点)
答(ウ) 一次(2点)
問2
下線部のナイロンはナイロン6 で、繰り返し単位は $\ce{-NH-(CH2)5-CO-{}}$。分子式は $\ce{C6H11NO}$。
$\alpha$-アミノ酸の繰り返し単位は $\ce{-NH-CH(R)-CO-{}}$ で、R 以外の部分は $\ce{C2H2NO}$。構造異性体の関係にある=分子式が同じなので、側鎖 R は
$$\ce{C6H11NO}-\ce{C2H2NO}=\ce{C4H9}$$
$\ce{C4H9}$ の炭化水素基は次の4つ(下の図)。
・直鎖の $\ce{-CH2-CH2-CH2-CH3}$:枝分かれがないので条件に合わない
・$\ce{-CH2-CH(CH3)-CH3}$:枝分かれがあり、側鎖の $\ce{CH}$ には $\ce{CH3}$ が2つ、$\ce{CH2}$ には H が2つ結合しているので、側鎖に不斉炭素がない。これがロイシン
・$\ce{-CH(CH3)-CH2-CH3}$:枝分かれはあるが、$\alpha$ 位の C の隣の C が H・$\ce{CH3}$・$\ce{C2H5}$・$\alpha$ 位の C の4つの異なる原子・原子団と結合した不斉炭素。これはイソロイシンなので条件に合わない
・$\ce{-C(CH3)3}$:条件は満たすが、tert-ロイシンはタンパク質をつくる約20種類の $\alpha$-アミノ酸に入らない
よって、このアミノ酸はロイシン $\ce{(CH3)2CH-CH2-CH(NH2)-COOH}$。記入例のアラニンの $\ce{CH3}$ を、ロイシンの側鎖 $\ce{CH2-CH(CH3)-CH3}$ に置きかえて書く(下の図)。$\alpha$ 位の C は不斉炭素だが、光学異性体は区別しなくてよい。
答 ロイシンのポリペプチド $\left[\ce{NH-CH(CH2-CH(CH3)2)-CO}\right]_{n}$(上の図)(5点)
問3
ポリ酢酸ビニルの繰り返し単位 $\ce{-CH2-CH(OCOCH3)-{}}$ の式量は $\ce{C4H6O2}=86.0$。エステル結合が加水分解された単位 $\ce{-CH2-CH(OH)-{}}$ の式量は $\ce{C2H4O}=44.0$。加水分解しても単位の数は変わらないので、単位1つあたりの平均の式量で比べる。
70 %の単位が44.0、残りの30 %の単位が86.0 のままなので
$$\dfrac{86.0\times0.30+44.0\times0.70}{86.0}\times100=\dfrac{25.8+30.8}{86.0}\times100=\dfrac{56.6}{86.0}\times100\fallingdotseq65.8$$
答 66 %(5点)
問4
直鎖のタンパク質は一方の端が N 末端、もう一方の端が C 末端で、並びに向きがある。100か所のどの位置にも20種類のどれでも置けるので、配列順序は
$$\underbrace{20\times20\times\cdots\times20}_{100\ \text{個}}=20^{100}$$
答 $20^{100}$ 通り(4点)
問5
グリシン $\ce{H2N-CH2-COOH}$ の分子量は75.0、アラニン $\ce{H2N-CH(CH3)-COOH}$ の分子量は89.0。重合度10の直鎖のポリペプチドは、ペプチド結合が9か所で、水9分子が取れている。グリシンを $x$ 個とすると、アラニンは $10-x$ 個なので
$$75.0x+89.0(10-x)-18.0\times9=686\qquad\therefore\ x=3$$
ポリペプチド1分子からグリシンが3分子できるので、2.00 mol からは $2.00\times3=6.00$ mol。その質量は
$$6.00\times75.0=450\ \mathrm{g}$$
答 450 g(5点)
〔5B〕
問1
酵素は、決まった基質にしか作用しない(基質特異性)。これは、基質が酵素の活性部位にぴったり合う形のときだけ結合して反応が起こるから。酵素はタンパク質なので、温度を上げると反応は速くなるが、高温では変性して働かなくなる。反応速度が最大になる温度が最適温度で、多くの酵素は35〜40 ℃くらい。
答(ア) 基質特異性(2点)
答(イ) 活性(2点)
答(ウ) 最適温度(2点)
セルロースを加水分解する酵素はセルラーゼ。リパーゼは油脂のエステル結合を加水分解し、脂肪酸3分子とグリセリン $\ce{C3H5(OH)3}$ 1分子にする。
答(エ) セルラーゼ(2点)
答(オ) グリセリン(2点)
問2
セルロースは $\beta$-グルコースが $\beta$-1,4 結合で直鎖状につながったもの。セルラーゼで加水分解すると、$\beta$-グルコース2分子が $\beta$-1,4 結合した二糖のセロビオースができる(さらにセロビアーゼでグルコースになる)。
多糖の加水分解は、次の組で押さえておく。
・デンプン →(アミラーゼ)→ マルトース →(マルターゼ)→ グルコース
・セルロース →(セルラーゼ)→ セロビオース →(セロビアーゼ)→ グルコース
答 セロビオース(2点)
問3
グルコースの還元性は、鎖状構造のアルデヒド基によるもの。鎖状構造は、環状構造の1位の C と環の O の結合が切れた形で、1位が $\ce{-CHO}$ になり、環の O は5位の C に OH として残る。2〜4位の H・OH の向きは環状構造と同じまま書く(下の図)。
答 $\ce{HOCH2-CH(OH)-CH(OH)-CH(OH)-CH(OH)-CHO}$(上の図)(4点)
問4
油脂(エステル)を水酸化ナトリウムなどの強塩基で加水分解すると、脂肪酸のナトリウム塩(セッケン)とグリセリンができる。
$$\ce{C3H5(OCOR)3 + 3NaOH -> C3H5(OH)3 + 3RCOONa}$$
答 けん化(2点)
問5
二重結合をもつ脂肪酸を不飽和脂肪酸という。
炭素数18の飽和脂肪酸はステアリン酸 $\ce{C17H35COOH}$($\ce{C18H36O2}$)。二重結合が1つ増えるごとに H が2個減るので、二重結合2個のリノール酸は $\ce{C17H31COOH}$($\ce{C18H32O2}$)で
$$12.0\times18+1.00\times32+16.0\times2=280$$
炭素数20の飽和脂肪酸は $\ce{C19H39COOH}$($\ce{C20H40O2}$)。二重結合5個のエイコサペンタエン酸は H が10個減って $\ce{C19H29COOH}$($\ce{C20H30O2}$)で
$$12.0\times20+1.00\times30+16.0\times2=302$$
答(総称) 不飽和脂肪酸(1点)
答(リノール酸) 280(1点)
答(エイコサペンタエン酸) 302(1点)
問6
ステアリン酸 $\ce{C17H35COOH}$ の分子量は284、グリセリン $\ce{C3H5(OH)3}$ の分子量は92.0。A はグリセリン1分子と3つの脂肪酸がエステル結合3つでつながり、水3分子が取れたもの(下の図。どの脂肪酸がどの位置に付いても分子量は同じ)。
$$92.0+280+302+284-18.0\times3=904$$
二重結合は全部で $2+5+0=7$ 個なので、A 1分子に $\ce{H2}$ が7分子付いて B になる。
$$904+2.00\times7=918$$
A の物質量は
$$\dfrac{11.3}{904}=1.25\times10^{-2}\ \mathrm{mol}$$
B も同じ物質量できるので、B の質量は
$$1.25\times10^{-2}\times918=11.475\fallingdotseq11.5\ \mathrm{g}$$
答(B の分子量) 918(2点)
答(B の質量) 11.5 g(2点)
出題意図
問1・問4(〔5A〕) 重合の種類とタンパク質の一次構造を正しく言え、配列順序の数を場合の数として数えられるか
問2(〔5A〕) 「構造異性体」を分子式が同じと読みかえ、ナイロン6 の単位との差から側鎖を決め、枝分かれと不斉炭素の条件でロイシンまで絞り込めるか
問3・問5(〔5A〕) 繰り返し単位の数(物質量)を基準にして、けん化や加水分解の前後の質量を比べられるか
問1・問2・問4(〔5B〕) 酵素の性質と、セルロース・油脂の加水分解でできる物質の名前を正確に言えるか
問3(〔5B〕) 環状構造の1位と環の O の結合が切れた形として、グルコースの鎖状構造を書けるか
問5・問6(〔5B〕) 脂肪酸の示性式を二重結合の数から組み立て、油脂の分子量と水素付加の量的関係を求められるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 25点 | 25点 |
| 目標時間 | 15分 | 15分 |
〔5A〕〔5B〕から1つを選ぶ選択問題で、上の表は〔5B〕を選んだときの値。
〔5A〕は標準で、目標得点は医学部医学科・その他の学部とも20点。
選ぶなら〔5B〕で、用語と油脂の定番の計算だけで25点を取り切れる。
〔5A〕は問2 でアミノ酸の側鎖を知らないと5点がまとめて落ちるので、ロイシン・イソロイシン・バリンの側鎖まで書ける受験生以外は選ばない方がよい。
どちらを選んでも、「繰り返し単位の数は変わらない」「エステル結合1つで水1分子」の量的関係が身についていれば15分で終わる。
差がつく所・失点しやすい所
- 〔5A〕問2:「構造異性体の関係」を分子式が同じと読みかえて、ナイロン6 の単位との差から側鎖 $\ce{C4H9}$ を求め、ロイシンまで絞り込むという発想に行き着けるか。アミノ酸の側鎖を覚えていないと4つの候補から選べず、この5点で大きく差がつく。
- 〔5B〕問3:環の1位の C と O の結合を切った形として、鎖状構造を書けるか。5位の OH を書き忘れる・1位を $\ce{-CH2OH}$ にするなどの誤りで落としやすい。
- 〔5B〕問6:A の分子量で、エステル結合3つ分の水3分子を引けるか。引き忘れると A が958 になり、分子量と質量の両方を落とす。
2014年九州大学・化学の
講評とまとめ
5問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 標準 | 20点 | 15点 |
| 第2問 | やや簡単 | 25点 | 25点 |
| 第3問 | やや簡単 | 25点 | 20点 |
| 第4問 | 標準 | 25点 | 20点 |
| 第5問 | やや簡単 | 25点 | 25点 |
| 全体 | やや簡単 | 105点 | 85点 |
大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で105点、その他の学部で85点)にはなりません。
第5問は〔5A〕〔5B〕から1つを選ぶ選択問題です。
表の第5問は、おすすめの〔5B〕を選んだときの難易度と目標得点です(〔5A〕は標準で、目標得点は医学部医学科・その他の学部とも20点)。
全体的に難易度はやや簡単な年。
「やや難」の大問は無く、第2問・第3問・第5問(〔5B〕)がやや簡単、第1問・第4問が標準でした。
第2問は重要問題集の典型問題が4つ並び、第3問は系統分離の流れ、〔5B〕は用語と油脂の計算だけで、ここは満点を取りたいところです。
合否を分けたのは第1問で、冷やしたあとも飽和蒸気圧のぶんは気体で残る、つまり「液体があれば飽和蒸気圧」を徹底できるかがすべてです。
第4問はアルコールの級を酸化で見分けるオーソドックスな構造決定で、問6 の数え上げだけ差が出ます。
第5問は問いを1分で見比べて〔5B〕を選ぶのが安全です。
1つの大問に15分以上かけないことが大事です。
解く流れ
第1問 → 第2問 → 第3問 → 第4問 → 第5問(〔5B〕を選ぶ)。
2014年九州大学・化学に
関するよくある質問
2014年の九州大学・化学について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2014年の九州大学・化学は難しかった?
-
全体的に難易度はやや簡単な年でした。
第2問・第3問・第5問(〔5B〕)はやや簡単、第1問・第4問は標準です。
第5問は〔5A〕〔5B〕の選択問題で、〔5A〕は標準です。 - 2014年の九州大学・化学は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で105点、その他の学部で85点です(125点満点)。
- 2014年の九州大学・化学はどこで差がつく?
-
この年の合否を分けたのは第1問で、差がついたのは次の3つでした。
- 第1問 問3・問4:冷やしたあとも飽和蒸気圧のぶんは気体で残ると気づき、液体になったぶんの物質量だけで分子量を求められたか。
- 第3問 問3:硫化水素と希硝酸の反応式を、酸化ラダーと半反応式から組み立てられたか。
- 第4問 問6:第二級アルコールを、側鎖の炭素の分け方ごとに漏れなく数えられたか。
- 2014年の九州大学・化学は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:理論化学(物質の三態・気体の法則)・有機化学
- 第2問:理論化学(化学反応とエネルギー)・無機化学
- 第3問:無機化学・理論化学
- 第4問:有機化学・高分子化合物
- 第5問:高分子化合物(アミノ酸・タンパク質)・有機化学




