【解説・配点付き】2019年九州大学化学の解答・解説
2019年の九州大学・化学の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2019年九州大学化学
第1問 解答・解説
この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は理論化学(溶液)の問題です。
テーマは『浸透圧』『U字管の液面差』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問5に答えよ。なお、温度は300 K で変化しないものとし、水溶液は希薄であり、水および水溶液の密度はいずれも1.00 g/cm³ と見なせるものとする。また、水銀の密度を13.6 g/cm³、1気圧は $1.01\times10^5$ Pa =760 mmHg とし、塩化ナトリウムは水中で完全に電離しているものとする。
水は自由に通すが溶質は全く通さない半透膜を、断面積4.00 cm² の U 字管の中央に固定する。図1のように、この U 字管の A 側には水を100 mL、B 側には分子量 $M$ の不揮発性で非電解質の化合物 X が100 mg 含まれる水溶液を100 mL 入れ、なめらかに動き質量の無視できるピストンを置き、その上におもりをのせたところ A 側と B 側の液面の高さは等しくなった。
問1. 図1の状態における浸透圧は何 Pa か。化合物 X の分子量 $M$ を用いて表せ。解答中の数値は有効数字2桁で記せ。
問2. おもりを外し、しばらく放置すると、図2のように B 側の液面が A 側よりも6.60 cm 高くなった。図1の状態の浸透圧は、図2の状態の液面差によって生じる圧力の何倍か、有効数字2桁で答えよ。
問3. おもりの質量〔g〕および化合物 X の分子量 $M$ を、それぞれ有効数字2桁で答えよ。
問4. 図2の状態に対して、A 側に塩化ナトリウムを加えたところ、再び A 側と B 側の液面の高さは等しくなった。加えた塩化ナトリウムの質量は何 mg か、有効数字1桁で答えよ。ただし、塩化ナトリウムを加えたときの、溶液の密度と体積の変化は無視できるものとする。
問5. 浸透圧以外にも、凝固点降下を用いて分子量を測定することができる。次に示す分子量の異なる2つの物質の溶解について、凝固点降下度を有効数字2桁で答えよ。ただし、いずれの物質も以下の条件において水に完全に溶解するものとし、水のモル凝固点降下を1.85 K·kg/mol とする。
(ア) 化合物 X 1.00 g を100 mL の水に溶かしたときの凝固点降下度
(イ) 塩化ナトリウム1.00 g を100 mL の水に溶かしたときの凝固点降下度
解答の方針
【問1の方針】
水は半透膜を通って水溶液の側へ入ろうとする。図1ではおもりで押し返して液面がそろっているので、おもりの圧力が浸透圧とつりあっている。溶液はまだ水が移る前の100 mL のまま(下の図)。


- 化合物 X の物質量を分子量 $M$ で表す(非電解質なので個数1)。
- 溶液の体積100 mL と、温度300 K をファントホッフの式に入れ、 $\pi_1$ を $M$ で表す。
【問2の方針】
6.60 cm は A 側と B 側の液面の差。断面積は同じなので、片側はその半分ずつ動き、水が移った分だけ溶液の体積が増える。 X の物質量は変わらないので、浸透圧は溶液の体積に反比例する(下の図)。


- A 側が下がった高さと B 側が上がった高さを求め、移った水の体積と図2の溶液の体積を求める。
- 図1と図2の状態でファントホッフの式を2本並べ、比をとって $\dfrac{\pi_1}{\pi_2}$ を求める(図2の浸透圧 $\pi_2$ は液面差の圧力とつりあっている)。
【問3の方針】
重力加速度が与えられていないので、おもりの圧力を「同じ断面積の水柱」に置きかえる。断面積が同じなら、同じ圧力をつくる質量も同じになる(下の図)。分子量は、液面差から求めた図1の浸透圧を問1 の式に入れる。


- 液面差6.60 cm の水溶液の柱の圧力を、水銀柱76 cm との比で求める(これが $\pi_2$)。
- 問2 の比から $\pi_1$ を求める。
- $\pi_1$ に当たる水柱の高さを求め、断面積4.00 cm² の水柱の質量としておもりの質量を求める。
- $\pi_1$ を問1 の式に入れて $M$ を求める。
【問4の方針】
液面がそろうと、両側とも溶液は100 mL で、液面差の圧力もない。このとき両側の浸透圧が等しく、温度も同じなので「濃度×個数」をそろえればよい。塩化ナトリウムは電離して個数2(下の図)。


- B 側の X の濃度(個数1)と、A 側の塩化ナトリウムの濃度(個数2)でファントホッフの式を2本並べる。
- 浸透圧が等しいことから、塩化ナトリウムの物質量を求め、質量〔mg〕に直す。
【問5の方針】
凝固点降下度も「定数×質量モル濃度×個数」。水100 mL は密度1.00 g/cm³ から100 g。分子量の大きい X は物質量が小さく、降下度はとても小さくなる。
- 水の質量を100 g=0.100 kg とする。
- (ア) は問3 の $M$ を使い、個数1で凝固点降下度を求める。
- (イ) は塩化ナトリウムの式量58.5、個数2で凝固点降下度を求める。
解答




解答をテキストで読む
問1
水は半透膜を通って水溶液の側へ入ろうとする。この圧力が浸透圧で、図1ではおもりの圧力とつりあって液面がそろっている(下の図)。水はまだ移っていないので、溶液の体積は100 mL のまま。
化合物 X は100 mg=0.100 g なので $\dfrac{0.100}{M}$ mol。非電解質なので個数は1。ファントホッフの式 $\pi=\left(\dfrac nV\times\text{個数}\right)RT$ を、状態方程式と同じ形で使う。
$$\pi_1\times\dfrac{100}{1000}=\dfrac{0.100}{M}\times1\times8.31\times10^3\times300$$
$$\pi_1=\dfrac{2.49\times10^6}{M}$$
答 $\dfrac{2.5\times10^6}{M}$ Pa(4点)
問2
液面差6.60 cm は、A 側の液面と B 側の液面の差。断面積が同じ管なので、A 側が下がった高さと B 側が上がった高さは等しく、それぞれ3.30 cm(下の図)。
移った水の体積と、図2の溶液の体積は
$$4.00\times3.30=13.2\ \mathrm{cm^3}=13.2\ \mathrm{mL}\quad\text{(A 側から B 側へ移った水)}$$
$$100+13.2=113.2\ \mathrm{mL}\quad\text{(図2の溶液の体積)}$$
半透膜は溶質を通さないので、 X の物質量 $n$ は変わらない。浸透圧の式の $V$ は、そのときの溶液の体積。図2の浸透圧を $\pi_2$ とすると、液面差の圧力とつりあっているので、液面差によって生じる圧力は $\pi_2$ に等しい。2つの状態で式を並べると
$$\pi_1\times\dfrac{100}{1000}=nRT,\qquad \pi_2\times\dfrac{113.2}{1000}=nRT$$
比をとると $n$・ $R$・ $T$ が消えて
$$\dfrac{\pi_1}{\pi_2}=\dfrac{113.2}{100}=1.132$$
ここで求めた比は、問3 のおもりと分子量を通して、問4・問5(ア)まで使われる(下の図)。
答 1.1倍(4点)
問3
図2の液面差6.60 cm の水溶液(密度1.00 g/cm³)の柱の圧力を、水銀柱76 cm(密度13.6 g/cm³)が $1.01\times10^5$ Pa に当たることとの比で求める。これが $\pi_2$。
$$\pi_2=1.01\times10^5\times\dfrac{6.60\times1.00}{76\times13.6}=6.45\times10^2\ \mathrm{Pa}$$
問2 より、図1の浸透圧は
$$\pi_1=1.132\times6.45\times10^2=7.30\times10^2\ \mathrm{Pa}$$
おもりの圧力は $\pi_1$ に等しい。重力加速度が与えられていないので、同じ断面積4.00 cm² の水柱に置きかえる。圧力は(質量×重力加速度)÷断面積なので、断面積が同じなら、同じ圧力をつくる質量も同じになる(下の図)。
液柱の圧力は高さに比例するので、 $\pi_1$ をつくる水柱の高さは、液面差6.60 cm の1.132倍。
$$6.60\times1.132=7.47\ \mathrm{cm}$$
この水柱の質量がおもりの質量になる。
$$4.00\times7.47\times1.00=29.9\ \mathrm{g}$$
答(おもりの質量) 30 g(5点)
分子量は、問1 の式に $\pi_1$ を入れて
$$\dfrac{2.49\times10^6}{M}=7.30\times10^2\qquad\therefore\ M=3.41\times10^3$$
答(分子量) $3.4\times10^3$(4点)
問4
A 側に塩化ナトリウムを加えて液面が再びそろうと、両側とも溶液は100 mL に戻り、液面差の圧力もない。よって両側の浸透圧が等しい(下の図)。塩化ナトリウムはイオン結晶なので、 $\ce{Na+}$ と $\ce{Cl-}$ に電離して個数は2。 X は個数1。
加えた塩化ナトリウムを $x$〔mol〕とし、両側でファントホッフの式を並べる。温度と $R$ は共通なので、「濃度×個数」が等しくなる。
$$\dfrac{x}{0.100}\times2\times RT=\dfrac{0.100/M}{0.100}\times1\times RT$$
$$x=\dfrac{0.100}{2\times3.41\times10^3}=1.47\times10^{-5}\ \mathrm{mol}$$
$$1.47\times10^{-5}\times58.5=8.6\times10^{-4}\ \mathrm g=0.86\ \mathrm{mg}$$
答 0.9 mg(3点)
問5
水100 mL は密度1.00 g/cm³ から100 g=0.100 kg。凝固点降下度=モル凝固点降下×質量モル濃度×個数で求める。
(ア) 化合物 X は問3 の $M=3.41\times10^3$ を使い、非電解質なので個数1。
$$\Delta t=1.85\times\dfrac{1.00}{3.41\times10^3}\times\dfrac{1000}{100}\times1=5.43\times10^{-3}\ \mathrm K$$
答(ア) $5.4\times10^{-3}$ K(2点)
(イ) 塩化ナトリウムは式量58.5、電離して個数2。
$$\Delta t=1.85\times\dfrac{1.00}{58.5}\times\dfrac{1000}{100}\times2=0.632\ \mathrm K$$
答(イ) 0.63 K(3点)
(ア) は (イ) の100分の1にも満たない。分子量の大きい物質は、同じ質量を溶かしても物質量が小さく、凝固点降下度が小さすぎて測りにくい。一方、問3 の浸透圧は6.60 cm の液面差として測れる。分子量の大きい物質の分子量を求めるには、浸透圧の方が向いている。
別解
問3 (おもりの重さを力で考える) 重力加速度を $g=9.8\ \mathrm{m/s^2}$ とすると、おもりの質量 $m$〔kg〕は、圧力×断面積=重さ より
$$m\times9.8=7.30\times10^2\times4.00\times10^{-4}\qquad\therefore\ m=2.98\times10^{-2}\ \mathrm{kg}=29.8\ \mathrm g$$
で、同じく30 g になる。ただし本問では重力加速度が与えられていないので、答えは本解の水柱の置きかえで求める。
出題意図
問1 おもりと液面がつりあった状態の浸透圧を、ファントホッフの式で求めることができるか
問2 液面差から水の移動量と溶液の体積の変化を読み取り、浸透圧が溶液の体積に反比例することを使えるか
問3 液面差の液柱の圧力から浸透圧と分子量を求め、重力加速度が無くてもおもりの質量を求めることができるか
問4 電離による粒子の数まで入れて、両側の浸透圧がそろう条件を立てられるか
問5 凝固点降下度を個数の補正まで入れて求め、分子量の大きい物質では凝固点降下が小さすぎることを捉えることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや難 | |
| 目標得点 | 20点 | 15点 |
| 目標時間 | 15分 | 15分 |
2019年の合否を分けた、やや難の大問。
問1 は代入だけで取れるが、問2 で水が移って溶液の体積が113.2 mL に増えたことに気づけないと、問3 のおもりと分子量から問4・問5(ア)までまとめて崩れる(最大18点)。
浸透圧は「式の V はそのときの溶液の体積」「液面差の圧力とつりあう」の2つで最後まで解ける。
重力加速度が無いおもりも、同じ断面積の水柱に置きかえれば求まる。
U字管の問題は、片側の高さ・移った水の体積・溶液の体積まで図に書き込む流れを、白紙で再現できるまで練習しておこう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2:6.60 cm は両側の差で、溶液は113.2 mL に増えている、という発想に行き着けるか。浸透圧の式の $V$ は「そのときの溶液の体積」。体積の変化を見落として1.0倍とすると、問3 のおもりは26 g、分子量は $3.9\times10^3$ となり、問4・問5(ア)までまとめてずれる。ここだけで最大18点を落とすことになり、この大問で最も差がつく。
- 問3(おもりの質量):重力加速度が無いので、おもりを同じ断面積の水柱に置きかえる、という発想に行き着けるか。圧力×面積から重さを求めようとすると、重力加速度が無いのでここで止まる。
2019年九州大学化学
第2問 解答・解説
第2問は理論化学(反応の速さと化学平衡)の問題です。
テーマは『水性ガス反応』『圧平衡定数』。
問題


問題文をテキストで読む
※ 旧課程の問題なので、式①・式②の熱化学方程式を、反応式と反応エンタルピーの表記に直して載せています。
次の文章を読み、問1〜問2に答えよ。
コークス $\ce{C}$(固体)と水蒸気 $\ce{H2O}$(気体)を原料として、これらを高温で接触させることによって $\ce{CO}$ と $\ce{H2}$ の混合気体が生成する反応(水性ガス反応)は、式①に示す反応式と反応エンタルピーで表される。一方、この反応の副反応として、式②に示す反応が同時に進行し、 $\ce{CO}$ および $\ce{H2}$ の生成率に影響を与える。ここでは以下の2つの反応について考える。なお、式①、式②中の $\Delta H_1$、 $\Delta H_2$ は反応エンタルピー〔kJ〕を表す。
$$\begin{aligned}&\ce{C}(\text{固})+\ce{H2O}(\text{気})\\&\ce{->}\ \ce{CO}(\text{気})+\ce{H2}(\text{気})\\&\Delta H_1>0\quad\text{… ①}\end{aligned}$$
$$\begin{aligned}&\ce{CO}(\text{気})+\ce{H2O}(\text{気})\\&\ce{->}\ \ce{CO2}(\text{気})+\ce{H2}(\text{気})\\&\Delta H_2<0\quad\text{… ②}\end{aligned}$$
式①の反応は $\boxed{\text{ア}}$ 、式②の反応は $\boxed{\text{イ}}$ を伴う反応である。主反応である式①の反応が一定温度で平衡状態にあるとき、右向きの反応によって気体分子の総数が $\boxed{\text{ウ}}$ ので、系全体の圧力を $\boxed{\text{エ}}$ すれば $\ce{H2}$ の生成率を大きくすることができる。
問1. 文章中の $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{エ}}$ に入る適切な語句を1つ選んで記号で答えよ。
$\boxed{\text{ア}}$ (a) 発熱 (b) 吸熱
$\boxed{\text{イ}}$ (a) 発熱 (b) 吸熱
$\boxed{\text{ウ}}$ (a) 減少する (b) 変わらない
(c) 増加する
$\boxed{\text{エ}}$ (a) 低く (b) 一定に (c) 高く
問2. 体積 $V$〔L〕の容器中で、圧力が $p$〔Pa〕、温度が $T$〔K〕に保持された状態で、式①および式②で表される2つの反応が平衡状態にあるとき、以下の(1)〜(4)に答えよ。ただし、各気体の分圧は $p_{\mathrm{H_2O}}$、 $p_{\mathrm{CO}}$、 $p_{\mathrm{CO_2}}$ および $p_{\mathrm{H_2}}$ で表すものとし、いずれの気体も理想気体として扱えるものとする。また、コークス $\ce{C}$ の体積は無視できるものとする。
(1) 式①および式②の反応の平衡定数 $K_1$ および $K_2$ を容器内に存在する各気体の分圧 $p_{\mathrm{H_2O}}$、 $p_{\mathrm{CO}}$、 $p_{\mathrm{CO_2}}$、 $p_{\mathrm{H_2}}$、温度 $T$ および気体定数 $R$ を用いてそれぞれ表せ。
(2) 気体がかかわる可逆反応の場合、問2(1)で求めた平衡定数の代わりに、成分気体の分圧を用いた圧平衡定数 $K_{\mathrm{p}}$ が使われる。式①および式②の反応の圧平衡定数 $K_{\mathrm{p1}}$ および $K_{\mathrm{p2}}$ を容器内に存在する各気体の分圧 $p_{\mathrm{H_2O}}$、 $p_{\mathrm{CO}}$、 $p_{\mathrm{CO_2}}$ および $p_{\mathrm{H_2}}$ を用いて表せ。
(3) 得られる $\ce{H2}$ の分圧 $p_{\mathrm{H_2}}$ については、以下の手順で $p_{\mathrm{CO}}$ および圧平衡定数 $K_{\mathrm{p1}}$ および $K_{\mathrm{p2}}$ を用いて表すことができる。また、圧平衡定数 $K_{\mathrm{p1}}$ および $K_{\mathrm{p2}}$ は与えられた温度で一定となり、その比 $K_{\mathrm{p1}}/K_{\mathrm{p2}}$ も一定の値 $\alpha$ となる。したがって、ある温度での $\ce{CO}$ の分圧 $p_{\mathrm{CO}}$ を測定することができれば、 $p_{\mathrm{H_2}}$ を計算することができる。 $\boxed{\text{オ}}$ 〜 $\boxed{\text{ク}}$ に $p_{\mathrm{CO}}$、 $p_{\mathrm{CO_2}}$、 $V$、 $R$、 $T$ および $\alpha$ を用いて適切な式を記入し、次の文章を完成させよ。
《 $p_{\mathrm{H_2}}$ の算出方法》
式①および式②の反応における $\ce{CO}$、 $\ce{CO2}$ の酸素原子と、 $\ce{H2}$ の水素原子は、全て $\ce{H2O}$ に由来することから、酸素と水素の原子数の比は1:2である。これを $p_{\mathrm{H_2}}$、 $p_{\mathrm{CO}}$ および $p_{\mathrm{CO_2}}$ を用いて表すと、
$\boxed{\text{オ}}:\dfrac{2p_{\mathrm{H_2}}\cdot V}{RT}=1:2$
と書ける。よって、
$p_{\mathrm{H_2}}=p_{\mathrm{CO}}+\boxed{\text{カ}}$ …③
を得る。一方、問2(2)で表した圧平衡定数の比をとることによって、
$p_{\mathrm{CO_2}}=\dfrac{\boxed{\text{キ}}}{\alpha}$ …④
を得る。式④を式③に代入することにより、以下のように $p_{\mathrm{H_2}}$ を $p_{\mathrm{CO}}$ および $\alpha$ を用いて書き表せる。
$p_{\mathrm{H_2}}=p_{\mathrm{CO}}+\boxed{\text{ク}}$ …⑤
(4) 実際に容器内の圧力が $1.01\times10^5$ Pa、温度が1273 K に保持されたとき、圧平衡定数の比 $\alpha$ が $7.70\times10^6$ Pa となり、 $\ce{CO}$ ガスセンサーによって測定された $p_{\mathrm{CO}}$ の測定値は $5.00\times10^4$ Pa であった。このとき $p_{\mathrm{H_2}}$ は何 Pa となるか、有効数字3桁で答えよ。
解答の方針
【問1の方針】
$\Delta H$ が正なら吸熱で生成物が上、負なら発熱で生成物が下(下の図)。圧力の条件は、ルシャトリエの原理を濃度 $C$ と温度 $T$ で考え、気体だけを数える。


- $\Delta H_1>0$ から、式①は吸熱と決める(ア)。
- $\Delta H_2<0$ から、式②は発熱と決める(イ)。
- 式①の両辺の気体の分子数を、固体の $\ce{C}$ を除いて比べる(ウ)。
- 圧力を下げると濃度が下がり、平衡は気体の分子数が増える向きへ寄ることから、 $\ce{H2}$ が増える右へ寄せる圧力の変え方を決める(エ)。
【問2 (1)(2)の方針】
平衡定数には濃度を入れる。気体の濃度は分圧を $RT$ で割ったもの。固体の $\ce{C}$ は式に入れない。両辺の気体の数が違う式①だけ $RT$ が残る(下の図)。


- 状態方程式から、各気体の濃度を $\dfrac{p}{RT}$ の形で表す。
- 固体の $\ce{C}$ を除いた平衡定数の式に代入し、 $K_1$ ・ $K_2$ を整理する((1))。
- 圧平衡定数は、同じ形の式に分圧をそのまま入れる((2))。
【問2 (3)(4)の方針】
O と H は、どちらも原料の水蒸気から来る。 $\ce{CO2}$ は1分子に O を2個もつ(下の図)。2つの圧平衡定数の比をとれば、 $p_{\mathrm{H_2}}$ と $p_{\mathrm{H_2O}}$ が消える。


- 状態方程式で各気体の物質量を $\dfrac{pV}{RT}$ で表し、O 原子の物質量を $\ce{CO}$ と $\ce{CO2}$ から数える(オ)。
- O:H=1:2 の比の式を解いて $p_{\mathrm{H_2}}$ を表す(カ)。
- $\dfrac{K_{\mathrm{p1}}}{K_{\mathrm{p2}}}=\alpha$ を計算し、 $p_{\mathrm{CO_2}}$ を $p_{\mathrm{CO}}$ と $\alpha$ で表す(キ)。
- 式④を式③に代入する(ク)。
- 式⑤に $p_{\mathrm{CO}}$ と $\alpha$ の値を入れて $p_{\mathrm{H_2}}$ を求める((4))。
解答


解答をテキストで読む
問1
式①は $\Delta H_1>0$ 。生成物の $\ce{CO + H2}$ の方がエンタルピーが高く、周りから熱を吸収する(下の図の左)。
答(ア) (b) 吸熱(2点)
式②は $\Delta H_2<0$ 。生成物の $\ce{CO2 + H2}$ の方が低く、熱を放出する(上の図の右)。
答(イ) (a) 発熱(2点)
ルシャトリエの原理は、濃度 $C$ と温度 $T$ に注目し、気体だけを数える。式①の左辺は固体の $\ce{C}$ を除くと $\ce{H2O}$ の気体1分子、右辺は $\ce{CO}$ と $\ce{H2}$ の気体2分子なので、右へ進むと気体の分子数は増える(下の図)。
答(ウ) (c) 増加する(2点)
温度一定で圧力を下げると、状態方程式 $P=\dfrac nVRT$ より気体の濃度 $\dfrac nV$ が下がる。濃度が下がると、平衡は気体の分子数が増える向き、つまり右へ寄り、 $\ce{H2}$ が増える。
答(エ) (a) 低く(2点)
問2 (1)
平衡定数には濃度を入れる。状態方程式 $p_{\mathrm X}V=n_{\mathrm X}RT$ より、気体 X の濃度は
$$[\mathrm X]=\dfrac{n_{\mathrm X}}{V}=\dfrac{p_{\mathrm X}}{RT}$$
固体の $\ce{C}$ は濃度が変わらない(気体のように薄まったり濃くなったりしない)ので、平衡定数の式には入れない。式①は
$$\begin{aligned}K_1&=\dfrac{[\ce{CO}][\ce{H2}]}{[\ce{H2O}]}=\dfrac{\dfrac{p_{\mathrm{CO}}}{RT}\times\dfrac{p_{\mathrm{H_2}}}{RT}}{\dfrac{p_{\mathrm{H_2O}}}{RT}}\\&=\dfrac{p_{\mathrm{CO}}\,p_{\mathrm{H_2}}}{p_{\mathrm{H_2O}}\,RT}\end{aligned}$$
左辺の気体は1つ、右辺の気体は2つなので、分母に $RT$ が1つ残る(下の図)。
答 $K_1=\dfrac{p_{\mathrm{CO}}\,p_{\mathrm{H_2}}}{p_{\mathrm{H_2O}}\,RT}$(2点)
式②は両辺の気体がどちらも2つなので、 $RT$ は約分で消える。
$$\begin{aligned}K_2&=\dfrac{[\ce{CO2}][\ce{H2}]}{[\ce{CO}][\ce{H2O}]}=\dfrac{\dfrac{p_{\mathrm{CO_2}}}{RT}\times\dfrac{p_{\mathrm{H_2}}}{RT}}{\dfrac{p_{\mathrm{CO}}}{RT}\times\dfrac{p_{\mathrm{H_2O}}}{RT}}\\&=\dfrac{p_{\mathrm{CO_2}}\,p_{\mathrm{H_2}}}{p_{\mathrm{CO}}\,p_{\mathrm{H_2O}}}\end{aligned}$$
答 $K_2=\dfrac{p_{\mathrm{CO_2}}\,p_{\mathrm{H_2}}}{p_{\mathrm{CO}}\,p_{\mathrm{H_2O}}}$(2点)
問2 (2)
圧平衡定数は、平衡定数の式の濃度を分圧に置きかえたもの。固体の $\ce{C}$ はここでも入れない。
答 $K_{\mathrm{p1}}=\dfrac{p_{\mathrm{CO}}\,p_{\mathrm{H_2}}}{p_{\mathrm{H_2O}}}$(1点)
答 $K_{\mathrm{p2}}=\dfrac{p_{\mathrm{CO_2}}\,p_{\mathrm{H_2}}}{p_{\mathrm{CO}}\,p_{\mathrm{H_2O}}}$(1点)
問2 (3)
O 原子も H 原子も、すべて原料の水蒸気から来る。 $\ce{CO}$ は1分子に O を1個、 $\ce{CO2}$ は1分子に O を2個、 $\ce{H2}$ は1分子に H を2個もつ(下の図)。
各気体の物質量は、状態方程式より $n=\dfrac{pV}{RT}$ 。よって O 原子の物質量は
$$\dfrac{p_{\mathrm{CO}}V}{RT}+2\times\dfrac{p_{\mathrm{CO_2}}V}{RT}=\dfrac{(p_{\mathrm{CO}}+2p_{\mathrm{CO_2}})V}{RT}$$
H 原子の物質量は $2\times\dfrac{p_{\mathrm{H_2}}V}{RT}$ で、問題文の式の右辺と一致する。
外側どうし・内側どうしをかけて
$$2\times\dfrac{(p_{\mathrm{CO}}+2p_{\mathrm{CO_2}})V}{RT}=\dfrac{2p_{\mathrm{H_2}}V}{RT}$$
$$\therefore\ p_{\mathrm{H_2}}=p_{\mathrm{CO}}+2p_{\mathrm{CO_2}}$$
(2) の2つの圧平衡定数の比をとると、 $p_{\mathrm{H_2}}$ と $p_{\mathrm{H_2O}}$ が約分で消える。
$$\begin{aligned}\alpha&=\dfrac{K_{\mathrm{p1}}}{K_{\mathrm{p2}}}=\dfrac{p_{\mathrm{CO}}\,p_{\mathrm{H_2}}}{p_{\mathrm{H_2O}}}\times\dfrac{p_{\mathrm{CO}}\,p_{\mathrm{H_2O}}}{p_{\mathrm{CO_2}}\,p_{\mathrm{H_2}}}\\&=\dfrac{p_{\mathrm{CO}}^{\,2}}{p_{\mathrm{CO_2}}}\end{aligned}$$
$$\therefore\ p_{\mathrm{CO_2}}=\dfrac{p_{\mathrm{CO}}^{\,2}}{\alpha}$$
式④を式③に代入すると
$$p_{\mathrm{H_2}}=p_{\mathrm{CO}}+2\times\dfrac{p_{\mathrm{CO}}^{\,2}}{\alpha}$$
答(オ) $\dfrac{(p_{\mathrm{CO}}+2p_{\mathrm{CO_2}})V}{RT}$(2点)
答(カ) $2p_{\mathrm{CO_2}}$(2点)
答(キ) $p_{\mathrm{CO}}^{\,2}$(2点)
答(ク) $\dfrac{2p_{\mathrm{CO}}^{\,2}}{\alpha}$(2点)
問2 (4)
式⑤に $p_{\mathrm{CO}}=5.00\times10^4$ Pa、 $\alpha=7.70\times10^6$ Pa を入れる。式⑤は $p_{\mathrm{CO}}$ と $\alpha$ だけで書けているので、全圧 $1.01\times10^5$ Pa は使わない。
$$p_{\mathrm{CO_2}}=\dfrac{(5.00\times10^4)^2}{7.70\times10^6}=3.247\times10^2\ \mathrm{Pa}$$
$$p_{\mathrm{H_2}}=5.00\times10^4+2\times3.247\times10^2=5.0649\times10^4\ \mathrm{Pa}$$
残りの水蒸気の分圧は、全圧から引いて約26 Pa。 $\ce{CO2}$ と水蒸気はごくわずかで、 $\ce{H2}$ と $\ce{CO}$ がほぼ半分ずつになっている(下の図)。
答 $5.06\times10^4$ Pa(3点)
出題意図
問1 反応エンタルピーの符号から発熱・吸熱を判断し、固体を数えずに気体の分子数を比べて、ルシャトリエの原理で $\ce{H2}$ を増やす圧力の条件を判断できるか
問2 (1)・(2) 濃度を分圧と $RT$ で表して平衡定数を書き直し、固体を除いた平衡定数と圧平衡定数を書き分けることができるか
問2 (3)・(4) 原子の数の保存を分圧で表し、2つの圧平衡定数の比から $\ce{CO}$ の分圧だけで $\ce{H2}$ の分圧を求めることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや難 | |
| 目標得点 | 20点 | 15点 |
| 目標時間 | 15分 | 15分 |
前半は「ΔH の符号で吸熱・発熱を決める」「ルシャトリエの原理は気体だけを数える」「平衡定数には濃度=分圧÷RT を入れる」という基本で全部取れる。
差がつくのは (3) の原子の数の比で、二酸化炭素の O を2個と数えられるかどうか。
誘導が丁寧なので、問題文の《算出方法》に乗り、式③〜⑤の形から逆算して確かめれば最後まで一気に進める。
初見の誘導でも、式の形を手がかりに進める練習をしておこう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2 (3)・(4):O と H がどちらも水蒸気から来ることを、分圧を使った物質量の比で書く、という発想に行き着けるか。 $\ce{CO2}$ の O を2個と数えるのが決め手で、ここを1個と数えるとオ・カ・ク・(4) がまとめて落ち、9点を失う。誘導が丁寧なので、式③〜⑤の形から逆算して確かめれば防げる。
- 問2 (1):平衡定数に濃度= $\dfrac{p}{RT}$ を入れて、 $K_1$ だけ $RT$ が残る、という発想に行き着けるか。圧平衡定数と同じ形を書いてしまいやすい。
コラム 水性ガスから水素を取り出す ― なぜ温度を2段に分けるのか
第2問の式①・式②は、工業的に水素をつくる流れそのものである。問1 で見たとおり、式①は吸熱、式②は発熱で、ちょうど逆の性質をもつ。そのため、実際には温度を変えて2段で反応させる(下の図)。


- 式①は高温で行う:式①は吸熱なので、平衡は高温ほど右へ寄る(実際の反応エンタルピーはおよそ $+131$ kJ)。問題の1273 K(約1000℃)のような高温では、水蒸気はほとんど反応しきる。(4) で残りの水蒸気の分圧が約26 Pa しかないのも、高温で式①が大きく右へ寄っている様子を表している。ただし吸熱なのでコークスがどんどん冷え、昔は水蒸気と空気を交互に吹き込み、コークスの一部を燃やして温め直していた。
- 式②は冷やしてから行う:式②は発熱なので(およそ $-41$ kJ)、高温では平衡が左へ寄り、一酸化炭素が多く残ってしまう。そこで、できた気体を冷やし、触媒を使って200〜450℃で式②を進め、一酸化炭素も水素に変える。温度を下げると反応が遅くなるので、触媒が欠かせない。
- 最後に二酸化炭素を除く:式②でできた $\ce{CO2}$ を取り除けば、水素が得られる。こうしてつくった水素は、アンモニアの合成などに使われる。
吸熱の反応は高温、発熱の反応は低温が平衡に有利で、低温で遅くなる分は触媒で補う。ルシャトリエの原理と反応の速さの両方を考えて条件を決める、という見方はハーバー・ボッシュ法と同じである。
2019年九州大学化学
第3問 解答・解説
第3問は無機化学・理論化学の問題です。
テーマは『溶融塩電解』『限界半径比』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問7に答えよ。
一般にイオン化傾向の大きな金属の単体は、そのイオンを含む水溶液の電気分解では得ることができないので、これらの塩化物、水酸化物、あるいは酸化物などを高温で融解した液体に対して溶融塩電解(融解塩電解)を行うことによって単体を得ている。
塩化ナトリウムを原料とする溶融塩電解では陽極の炭素電極に気体 $\boxed{\text{ア}}$ が発生する一方、陰極にはナトリウムの単体が生じる。ただし工業的には、塩化ナトリウムの融点を下げるために $\boxed{\text{イ}}$ を加えて溶融塩電解を行い、純度の高いナトリウムを得ている。
アルミニウムの単体を得るには酸化アルミニウムを原料とする。ただしその融点は2000 ℃以上と高いため、氷晶石を加熱・融解し、これに少しずつ酸化アルミニウムを溶解させて約1000 ℃で溶融塩電解を行う。このとき、陽極の炭素電極には気体 $\boxed{\text{ウ}}$ と気体 $\boxed{\text{エ}}$ が発生する一方、陰極にはアルミニウムの単体が生じる。アルミニウムが主成分の合金は軽くて比較的強く、私たちの日常生活に広く利用されている。
赤鉄鉱や磁鉄鉱などの酸化物を多く含む鉄鉱石を気体 $\boxed{\text{ウ}}$ と反応させることによって炭素を約4%含む $\boxed{\text{オ}}$ が得られる。 $\boxed{\text{オ}}$ は融点が低い特徴を生かして鋳物などに用いられる。融解した $\boxed{\text{オ}}$ に酸素を吹き込むと炭素を0.02〜2%に減らすことができる。こうして得られるのが鉄骨やレールなどに用いられる $\boxed{\text{カ}}$ である。
問1. 文章中の $\boxed{\text{ア}}$ $\boxed{\text{ウ}}$ $\boxed{\text{エ}}$ に適合する物質の化学式を記入せよ。
問2. 文章中の $\boxed{\text{イ}}$ に適合する物質を以下の(1)〜(3)のなかから1つ選んで番号を記入し、その理由として最もふさわしい文章を以下の(a)〜(c)のなかから1つ選んで記号を記入せよ。
(1) 塩化マグネシウム
(2) 塩化カルシウム
(3) 塩化亜鉛
(a) イオン化傾向がナトリウムより大きい金属元素の塩化物であるため。
(b) イオン半径がナトリウムに最も近い金属元素の塩化物であるため。
(c) 融点がナトリウムと最も異なる金属元素の塩化物であるため。
問3. 文章中の $\boxed{\text{オ}}$ $\boxed{\text{カ}}$ に入る適切な物質の名称を答えよ。
問4. 塩化ナトリウムは組成式 $\ce{NaCl}$ で表され、その結晶の単位格子は下図のように描かれる。単位格子中に含まれる $\ce{Na+}$ と $\ce{Cl-}$ の数を答えよ。
問5. 実際の塩化ナトリウムの結晶格子は $\ce{Na+}$ と $\ce{Cl-}$ が接し、 $\ce{Cl-}$ どうしは離れていると見なすことができる。塩化ナトリウム型の結晶において、仮想的に陽イオンを小さくしていくと、あるところで陰イオンどうしが接する。このときの陰イオンの半径を1とした場合、陽イオンの半径を小数点以下3桁の数字で答えよ。
問6. ナトリウムについて正しい記述に○を、誤った記述に×を記入せよ。
(1) 空気中の酸素や水と容易に反応するため石油(灯油)中で保存するが、密度が石油(灯油)よりも小さいため浮く。
(2) エタノールと反応して水素を発生する。
(3) 水と反応させたのちにブロモチモールブルー(BTB)溶液を滴下すると黄色に呈色する。
問7. 下線部について実際に酸化アルミニウムの溶融塩電解を行うとアルミニウムの単体が5.4 g 得られた。このとき生じる気体が $\boxed{\text{エ}}$ のみとした場合に標準状態で何 L の $\boxed{\text{エ}}$ が発生したのか、有効数字2桁で答えよ。ただし気体 $\boxed{\text{エ}}$ は理想気体として扱えるものとする。
解答の方針
【問1の方針】
陽極で何が反応するかは「板 → ハロゲン → 水」の順に見る。塩化ナトリウムは炭素の板が反応しないので塩化物イオンが反応する。酸化アルミニウムだけは、陽極の炭素自体が酸化物イオンと反応する例外(下の図)。


- 塩化ナトリウムの溶融塩電解の陽極で、塩化物イオンが電子を渡して生じる気体を書く。
- 酸化アルミニウムの溶融塩電解の陽極で、炭素が酸化物イオンと反応して生じる2つの気体を書く。
- 鉄鉱石を還元する気体がウなので、ウとエのどちらが一酸化炭素かを決める。
【問2の方針】
陰極では、イオン化傾向の小さい金属のイオンから先に電子を受け取る。ナトリウムだけを取り出すには、加える塩の金属のイオン化傾向がナトリウムより大きくなければならない(下の図)。


- マグネシウム・カルシウム・亜鉛のイオン化傾向を、ナトリウムと比べる。
- ナトリウムより先に還元されて陰極に混ざる金属を除き、加える塩を選ぶ。
- その理由を (a)〜(c) から選ぶ。
【問3の方針】
鉄の製錬は、鉄鉱石を一酸化炭素で還元してできる炭素の多い鉄と、そこに酸素を吹き込んで炭素を減らした鉄の2段階で押さえる。炭素の割合が答えのヒント(下の図)。


- 溶鉱炉で鉄鉱石を還元してできる、炭素約4%の鉄の名称を答える。
- 転炉で酸素を吹き込んで炭素を0.02〜2%に減らした鉄の名称を答える。
【問4の方針】
単位格子の中のイオンの数は、頂点・辺・面・内部のどこにあるかで何個分かが決まる。図の大きな球の $\ce{Cl-}$ は頂点と面の中心、小さな球の $\ce{Na+}$ は辺の中点と中心にある(下の図)。


- $\ce{Cl-}$ を、頂点と面の中心で「何個分×数」として数える。
- $\ce{Na+}$ を、辺の中点と中心で「何個分×数」として数える。
【問5の方針】
限界の状態では陰イオンどうしも接する。単位格子を8つに分けた小立方体の面で切ると、陽イオンと陰イオンが接する線と、陰イオンどうしが接する線が両方とも出てくる(下の図)。


- 小立方体の1辺を $a'$ とおき、その面の断面図に、陰イオンどうしも接するように書く。
- 辺の上で陽イオンと陰イオンが接することから、1本目の式を立てる。
- 対角線の上で陰イオンどうしが接することから、2本目の式を立てる。
- 辺々の比を取り、 $r^-=1$ のときの $r^+$ を求める。
【問6の方針】
ナトリウムは酸素とも水とも反応するので灯油の中で保存するが、密度は灯油より大きい。アルカリ金属の密度を並べておけば、浮くか沈むかはすぐ分かる(下の図)。アルコールや水との反応は、どちらも水素が出る酸化還元反応。


- ナトリウムと灯油の密度を比べて、(1) の後半を判定する。
- ナトリウムとエタノールの反応式を書き、(2) を判定する。
- ナトリウムと水の反応でできる物質から水溶液の液性を決め、BTB の色で (3) を判定する。
【問7の方針】
電気分解の量計算は、まず流れた電子の物質量を求める。アルミニウムは電子3個で1個、陽極の二酸化炭素は電子4個で1個できるので、電子を仲立ちにして両極の物質の量を結びつける(下の図)。


- 陰極の反応式から、アルミニウム5.4 g を得るのに流れた電子の物質量を求める。
- 陽極で二酸化炭素だけが生じる反応式から、二酸化炭素の物質量を求める。
- 標準状態の体積に直す。
解答




解答をテキストで読む
問1
イオン化傾向の大きいナトリウムやアルミニウムは、水溶液を電気分解しても、金属のイオンより先に水が還元されて水素が出るだけなので、水を含まない融解した塩を電気分解する(下の図)。
塩化ナトリウムの溶融塩電解では、陽極が炭素なので板は反応しない。次に見るのはハロゲン化物イオンで、塩化物イオンが電子を渡して塩素になる。陰極ではナトリウムイオンが電子を受け取る。
$$\text{陽極}\quad\ce{2Cl- -> Cl2 + 2e-}$$
$$\text{陰極}\quad\ce{Na+ + e- -> Na}$$
酸化アルミニウムの溶融塩電解(ホール・エルー法)では、陽極の炭素電極そのものが、融解液の中の酸化物イオンと結びついて一酸化炭素と二酸化炭素になる。炭素電極自体が酸化されるのは、高校化学ではこの反応だけの例外で、陽極は電気分解とともに消耗していく。
$$\text{陽極}\quad\ce{C + O^2- -> CO + 2e-}$$
$$\text{陽極}\quad\ce{C + 2O^2- -> CO2 + 4e-}$$
$$\text{陰極}\quad\ce{Al^3+ + 3e- -> Al}$$
ウとエのどちらが一酸化炭素かは、次の段落で決まる。鉄鉱石を還元するのは一酸化炭素( $\ce{Fe2O3 + 3CO -> 2Fe + 3CO2}$ )なので、ウが一酸化炭素、エが二酸化炭素。
答(ア) $\ce{Cl2}$(1点)
答(ウ) $\ce{CO}$(1点)
答(エ) $\ce{CO2}$(1点)
問2
陰極では、イオン化傾向の小さい金属のイオンから先に電子を受け取って析出する。イオン化傾向の並びは
$$\ce{K}>\ce{Ca}>\ce{Na}>\ce{Mg}>\ce{Al}>\ce{Zn}>\ce{Fe}$$
・(1) 塩化マグネシウム:マグネシウムはナトリウムよりイオン化傾向が小さいので、 $\ce{Mg^2+}$ がナトリウムより先に還元され、陰極のナトリウムにマグネシウムが混ざってしまう
・(2) 塩化カルシウム:カルシウムはナトリウムよりイオン化傾向が大きいので、 $\ce{Ca^2+}$ は還元されにくく、陰極には純度の高いナトリウムが析出する
・(3) 塩化亜鉛:亜鉛はナトリウムよりイオン化傾向がずっと小さいので、亜鉛が先に析出して混ざる
融点を下げるために加える塩は、ナトリウムより還元されにくい金属の塩化物でなければならない。(b) のイオン半径、(c) の融点の違いは、陰極で何が析出するかとは関係がない。実際の工業的な製法(ダウンズ法)でも、塩化ナトリウムに塩化カルシウムを混ぜて、融点を約800 ℃から約600 ℃に下げて電気分解している。
答(物質) (2) 塩化カルシウム(2点)
答(理由) (a)(2点)
問3
鉄鉱石の酸化鉄は、溶鉱炉でコークスの燃焼によって生じた一酸化炭素で還元される(下の図)。溶鉱炉から出てくる鉄は炭素を約4%含む銑鉄で、硬いがもろいので、融点が低いことを生かして鋳物に使う。銑鉄を転炉に移して酸素を吹き込むと、炭素が二酸化炭素になって抜け、炭素が0.02〜2%の鋼になる。鋼は硬くて強く、鉄骨やレールなどの構造材料に使う。
答(オ) 銑鉄(1点)
答(カ) 鋼(1点)
問4
単位格子の中のイオンの数は、位置ごとに「何個分×数」を足す(頂点 $\dfrac18$ ・辺 $\dfrac14$ ・面 $\dfrac12$ ・内部1)。図の大きな球が $\ce{Cl-}$ 、小さな球が $\ce{Na+}$ (下の図)。
$\ce{Cl-}$ は頂点と面の中心にある。
$$\dfrac18\times8+\dfrac12\times6=4\quad\text{(単位格子の中の塩化物イオンの数)}$$
$\ce{Na+}$ は12本の辺の中点と、立方体の中心にある。
$$\dfrac14\times12+1=4\quad\text{(単位格子の中のナトリウムイオンの数)}$$
$\ce{Na+}$ 1個のまわりには上下・左右・前後の6個の $\ce{Cl-}$ が接していて、配位数は6。
答($\ce{Na+}$) 4個(1点)
答($\ce{Cl-}$) 4個(1点)
問5
単位格子を8つの小立方体に分け、その1つの面(1辺 $a'$ )で切る。この断面図には、隅に陰イオンと陽イオンが交互に並ぶ。限界の状態なので、陽イオンと陰イオンが接しているのに加えて、陰イオンどうしも接するように書く(下の図)。
辺の上では陽イオンと陰イオンが接しているので
$$r^++r^-=a'$$
対角線の上では陰イオンどうしが接しているので
$$2r^-=\sqrt2a'$$
辺々の比を取ると
$$\dfrac{r^++r^-}{2r^-}=\dfrac{1}{\sqrt2}\qquad\dfrac{r^+}{r^-}=\sqrt2-1$$
陰イオンの半径 $r^-=1$ なので、表紙の $\sqrt2=1.414$ を使って
$$r^+=\sqrt2-1=1.414-1=0.414$$
陽イオンがこれより小さくなると、陰イオンどうしがぶつかって陽イオンと陰イオンが離れてしまい、安定でなくなる。そのときは、配位数の小さい $\ce{ZnS}$ 型(配位数4)に変わる。半径比が大きくなる方は、0.732( $\sqrt3-1$ )を超えると配位数8の $\ce{CsCl}$ 型になる。 $\ce{ZnS}$ 型・ $\ce{NaCl}$ 型・ $\ce{CsCl}$ 型の限界半径比は、0.225・0.414・0.732 の3つをセットで押さえておく。
答 0.414(4点)
問6
アルカリ金属の密度を並べると、灯油(約0.8 g/cm³)との大小がすぐ分かる(下の図)。
・(1) 誤り。ナトリウムは酸素とも水とも常温で反応するので、灯油の中で保存する。ここまでは正しい。しかしナトリウムの密度は0.97 g/cm³ で灯油より大きいので、灯油の中では沈む。リチウム(0.53 g/cm³)は灯油より軽いので、浮かないように流動パラフィンにつけるなどの工夫がいる。リチウム・ナトリウム・カリウムは、どれも水(1.00 g/cm³)より軽い
・(2) 正しい。ナトリウムはエタノールのヒドロキシ基と反応して、水素を発生する。 $\ce{2C2H5OH + 2Na -> 2C2H5ONa + H2}$ 。水との反応よりおだやかに進む。ヒドロキシ基をもつ化合物(アルコール)の検出に使う
・(3) 誤り。ナトリウムは水と激しく反応して、水酸化ナトリウムと水素になる。 $\ce{2Na + 2H2O -> 2NaOH + H2}$ 。水溶液は塩基性なので、BTB は青色。黄色は酸性、緑色は中性
答(1) ×(2点)
答(2) ○(2点)
答(3) ×(2点)
問7
まず、流れた電子の物質量を求める。陰極ではアルミニウムイオンが電子を3個受け取ってアルミニウム1個になる。
$$\ce{Al^3+ + 3e- -> Al}$$
アルミニウム5.4 g は $\dfrac{5.4}{27.0}=0.200$ mol なので、流れた電子は
$$0.200\times3=0.600\ \mathrm{mol}\quad\text{(流れた電子の物質量)}$$
陽極では二酸化炭素だけが生じるとしているので、炭素が電子4個を渡して二酸化炭素1個になる。
$$\ce{C + 2O^2- -> CO2 + 4e-}$$
電子4 mol で二酸化炭素1 mol なので(下の図)
$$\dfrac{0.600}{4}=0.150\ \mathrm{mol}\quad\text{(発生した二酸化炭素の物質量)}$$
標準状態(0 ℃・ $1.013\times10^5$ Pa)の1 mol の体積22.4 L をかけて
$$0.150\times22.4=3.36\ \mathrm{L}$$
全体では $\ce{2Al2O3 + 3C -> 4Al + 3CO2}$ で、アルミニウムと二酸化炭素の物質量の比は4:3。
答 3.4 L(4点)
別解
問5 (単位格子の1辺 $a$ のまま立てる)単位格子の手前の面(1辺 $a$ )で考えると、辺の上では陰イオン・陽イオン・陰イオンが一列に接するので $2(r^++r^-)=a$ 、面の対角線の上では陰イオン・陰イオン・陰イオンが一列に接するので $4r^-=\sqrt2a$ 。辺々の比を取ると $\dfrac{r^++r^-}{2r^-}=\dfrac{1}{\sqrt2}$ で、本解と同じ式になり、 $r^+=\sqrt2-1=0.414$ 。小立方体の1辺 $a'$ は $a$ の半分なので、どちらで立てても同じ。
出題意図
問1 溶融塩電解で陽極に生じる気体を、陽極の炭素が反応しない塩化ナトリウムと、炭素自体が反応する酸化アルミニウムとで区別できるか
問2 陰極ではイオン化傾向の小さい金属のイオンから還元されることから、ナトリウムに混ぜてよい塩を選べるか
問3 鉄の製錬で得られる銑鉄と、炭素を減らした鋼を、炭素の割合と用途で区別できるか
問4 単位格子の中のイオンの数を、位置ごとに何個分かを決めて数えられるか
問5 塩化ナトリウム型の断面図に、陰イオンどうしも接する限界の状態を書き、半径の比を求められるか
問6 ナトリウムの密度・保存法と、アルコールや水との反応で生じる物質を判定できるか
問7 陽極で二酸化炭素が1個できるときに流れる電子の数から、アルミニウムと二酸化炭素の量的関係を求められるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 25点 | 25点 |
| 目標時間 | 10分 | 10分 |
溶融塩電解と鉄の製錬を題材にした、無機の知識と定番の計算だけの大問で、どの学部も10分で満点を取りたい。
陽極は「板 → ハロゲン → 水」で決まり、ホール・エルー法だけは炭素自体が反応する例外、陰極はイオン化傾向の小さい方から、と電気分解の型を言い切れれば、問1・問2・問7 は迷わない。
限界半径比は0.225・0.414・0.732 の3つを、断面図から白紙で導けるまで練習しておくこと。
差がつく所・失点しやすい所
- 問5:塩化ナトリウム型の小立方体の面で、陰イオンどうしも接する断面図を書けるか。限界半径比は苦手な受験生が多く、「0.41」とだけ覚えていると小数点以下3桁の0.414を書けない、または $\ce{CsCl}$ 型の0.732と取り違える。
- 問7:陽極で炭素自体が反応して二酸化炭素1個に電子4個が流れることに気づけるか。陽極の炭素は反応しないという一般則に引きずられると、式が立たない。
2019年九州大学化学
第4問 解答・解説
第4問は有機化学の問題です。
テーマは『構造決定』『三分子重合』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問6に答えよ。ただし、反応はすべて完全に進行し、複数の化合物が生成する場合、等モル生成するものとする。構造式の記入ならびに不斉炭素原子(C*)の表示を求められた場合は、記入例にならって答えよ。
構造式の記入例
化合物 A はベンゼン環を1つ持ち、炭素原子、水素原子のみからなる化合物で、その分子量は116である。化合物 A 58.0 mg を完全燃焼させると二酸化炭素198 mg、水36.0 mg が得られた。化合物 A に硫酸水銀(Ⅱ)を触媒として水を付加すると、2種類のカルボニル化合物 B および C が生成した(1)。また、触媒を用いて化合物 A を等モルの水素と反応させると、互いに幾何異性体の関係にある化合物 D および E が生成した。
化合物 D および E を臭素と反応させたところ、どちらの場合も不斉炭素原子を2個含む化合物 F が生成した。また、化合物 D および E をオゾンで酸化したのち、亜鉛で処理すると、どちらの場合もカルボニル化合物 G および H が生成した。化合物 G および H を $\boxed{\text{ア}}$ と加熱したところ、赤色の沈殿が生じた。化合物 G は空気中で徐々に $\boxed{\text{イ}}$ へと酸化された。 $\boxed{\text{イ}}$ は室温で固体であり、冷水には溶けにくかった。
炭化カルシウムと水から発生する気体を赤熱した鉄に触れさせると、3分子が重合してベンゼンが得られる。同様の形式の反応を行うと、化合物 A からは互いに構造異性体の関係にある化合物 I および J が得られた。(2)
問1. 化合物 A の分子式および構造式を答えよ。
問2. 下線部(1)に関して、化合物 B と化合物 C を区別するのに最も適した方法を以下の(a)〜(c)より1つ選び、その記号を答えよ。また、化合物 C の構造式を答えよ。
(a) 塩化鉄(Ⅲ)水溶液を加えたところ、化合物 C のみ呈色した。
(b) ヨウ素と水酸化ナトリウム水溶液を反応させたところ、化合物 C のみ黄色の沈殿を生じた。
(c) ナトリウムを加えると、化合物 C のみ水素を生じた。
問3. 化合物 D および E の構造式を、置換基の配置の違いがわかるように答えよ。
問4. 化合物 F の構造式を答えよ。ただし、不斉炭素原子に*印を付記して、他の炭素原子と区別すること。
問5. 文章中の $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{イ}}$ に入る適切な名称あるいは化合物名を答えよ。
問6. 下線部(2)の反応で得られた化合物 I および J の構造式を答えよ。
解答の方針
【問1の方針】
不飽和度6のうち4はベンゼン環なので、残りは三重結合1つ。水の付加で2種類のカルボニル化合物ができ、水素の付加で幾何異性体ができるのは、三重結合が鎖の内側にあるときだけ(下の図)。


- 二酸化炭素と水の質量から C と H の質量を求める。
- 物質量の比から組成式を求め、分子量116から分子式を決める。
- 不飽和度から、ベンゼン環のほかに三重結合が1つあると決める。
- ベンゼン環と三重結合をもつ候補を書き出し、水の付加で2種類・水素の付加で幾何異性体の2つに合う形を選ぶ。
【問2の方針】
三重結合の両側の基が違うので、OH がどちらの炭素に付くかで2通りのケトンができる。違いは $\ce{CH3-CO}{-}$ の形をもつかどうかで、これを見分けるのがヨードホルム反応(下の図)。


- A の三重結合の2つの炭素のどちらかに OH を付け、OH の付いた C=C をカルボニル化合物に直して、2つのケトンを書く。
- (a)〜(c) の試薬がそれぞれ何をもつ化合物と反応するかを確かめ、片方だけが反応する (b) を選ぶ。
- $\ce{CH3-CO}{-}$ をもつ方を C として構造式を書く。
【問3の方針】
三重結合に水素を1分子だけ付けると二重結合が残る。二重結合のどちらの炭素にも違う2つの基( $\ce{C6H5}$ と H、 $\ce{CH3}$ と H)が付くので、シス形とトランス形ができる(下の図)。


- A の三重結合に水素を1分子付けて、二重結合を1つもつ化合物にする。
- 二重結合のそれぞれの炭素に付いた2つの基が違うことを確かめる。
- $\ce{C6H5}$ と $\ce{CH3}$ が二重結合の同じ側にあるシス形と、反対側にあるトランス形を書く。
【問4の方針】
臭素は二重結合の2つの炭素に1つずつ付く。どちらの炭素にも H・Br と、左右で違う2つの基が付くので、2つとも不斉炭素になる(下の図)。


- D・E の二重結合の2つの炭素に Br を1つずつ付けて F を書く。
- それぞれの炭素に付いた4つの基がすべて違うことを確かめ、2つの炭素に*を付ける。
【問5の方針】
オゾン分解では二重結合が切れて、両側の炭素がカルボニル基の炭素になる。D・E の二重結合の両側はどちらも H をもつ CH なので、できるのは2つのアルデヒド(下の図)。


- D・E の二重結合を切り、両側の炭素に =O を付けて、2つのアルデヒドを書く。
- アルデヒドと加熱して赤色の沈殿ができる試薬をアとして答える。
- 2つのアルデヒドのうち、酸化されてできるカルボン酸が室温で固体・冷水に溶けにくい方を G と決め、そのカルボン酸をイとして答える。
【問6の方針】
アセチレン3分子からベンゼンができるとき、三重結合の2つの炭素は環の隣どうしの炭素になる。A は三重結合の両端の基が違うので、3分子の向きの組み合わせで並び方が決まる(下の図)。


- ベンゼン環の1つおきの辺に、A 3分子の三重結合を置く。
- 3つの辺のそれぞれで $\ce{C6H5}$ と $\ce{CH3}$ のどちらが先に来るか、向きの組み合わせ $2\times2\times2=8$ 通りを考える。
- 環を回したり裏返したりして同じになるものをまとめ、「3つとも同じ向き」と「1つだけ逆向き」の2つに絞る。
- 2つの構造式を書く。
解答




解答をテキストで読む
問1
燃焼で生じた二酸化炭素の C と水の H は、すべて A から来る。
・C の質量: $198\times\dfrac{12.0}{44.0}=54.0$ mg
・H の質量: $36.0\times\dfrac{2.00}{18.0}=4.00$ mg
物質量の比は
$$\mathrm{C}:\mathrm{H}=\dfrac{54.0}{12.0}:\dfrac{4.00}{1.00}=4.50:4.00=9:8$$
組成式は $\ce{C9H8}$(式量116.0)で、分子量116と一致するので、分子式も $\ce{C9H8}$。
答(分子式) $\ce{C9H8}$(2点)
$\ce{C9H8}$ の不飽和度は $\dfrac{2\times9+2-8}{2}=6$。ベンゼン環1つで4(環1つと二重結合3つ)なので、残りは2。硫酸水銀(Ⅱ)を触媒とする水の付加はアルキンの反応なので、ベンゼン環の外に三重結合が1つある。ベンゼン環を1つと三重結合を1つもつ $\ce{C9H8}$ は、次の3つの形(下の図)。
・$\ce{C6H5-C#C-CH3}$:三重結合が鎖の内側
・$\ce{C6H5-CH2-C#CH}$:三重結合が鎖の端
・$\ce{CH3-C6H4-C#CH}$:三重結合が鎖の端(ベンゼン環の上の位置で、オルト・メタ・パラの3つ)
三重結合が端にあると、水は決まった向き(端の炭素に H、内側の炭素に OH)に付くので、できるカルボニル化合物は1種類。また水素を1分子付けると端が $\ce{=CH2}$ になり、同じ炭素に H が2つ付くので幾何異性体はない。水の付加で2種類(B・C)ができ、水素の付加で幾何異性体(D・E)ができるのは、三重結合が内側の $\ce{C6H5-C#C-CH3}$ だけ。A は1-フェニルプロピン(下の図)。
答(構造式) $\ce{C6H5-C#C-CH3}$(1-フェニルプロピン。構造式は上の図)(2点)
問2
硫酸水銀(Ⅱ)を触媒として三重結合に水を付けると、まず二重結合の炭素に OH が付いた化合物ができ、すぐにカルボニル化合物に変わる(アセチレンからビニルアルコールを経てアセトアルデヒドができるのと同じ)。A の三重結合の両側は $\ce{C6H5}$ と $\ce{CH3}$ で違うので、OH の付く炭素で2通りのケトンができる(下の図)。
・ベンゼン環の側の炭素に OH が付く: $\ce{C6H5-CO-CH2-CH3}$
・メチル基の側の炭素に OH が付く: $\ce{C6H5-CH2-CO-CH3}$
(a)〜(c) で見分けられるかを1つずつ確かめる。
・(a) 塩化鉄(Ⅲ)水溶液で呈色するのは、ベンゼン環に OH が直接付いたフェノール類。どちらのケトンももたない
・(b) ヨウ素と水酸化ナトリウム水溶液で黄色の沈殿(ヨードホルム $\ce{CHI3}$ )ができるのは、 $\ce{CH3-CO}{-}$(または $\ce{CH3-CH(OH)}{-}$ )の形をもつ化合物。 $\ce{C6H5-CH2-CO-CH3}$ だけがもつ( $\ce{C6H5-CO-CH2-CH3}$ はカルボニル基の隣が $\ce{CH2-CH3}$ )
・(c) ナトリウムと反応して水素が出るのは OH をもつ化合物。どちらのケトンももたない
片方だけが反応するのは (b)。「C のみ黄色の沈殿」なので、C が $\ce{C6H5-CH2-CO-CH3}$、B が $\ce{C6H5-CO-CH2-CH3}$。
答(記号) (b)(2点)
答 $\mathbf{C}=\ce{C6H5-CH2-CO-CH3}$(構造式は上の図)(3点)
問3
A の三重結合に水素を1分子付けると、二重結合を1つもつ $\ce{C6H5-CH=CH-CH3}$(1-フェニルプロペン)になる。二重結合の左の炭素には $\ce{C6H5}$ と H、右の炭素には $\ce{CH3}$ と H が付き、どちらの炭素でも2つの基が違うので、シス形とトランス形ができる(下の図)。
D と E のどちらがシス形かは、問題文の条件からは決まらない(D からも E からも同じ F と同じ G・H ができる)。
(D・E は順不同)
答 シス形の $\ce{C6H5-CH=CH-CH3}$(構造式は上の図の左)(2点)
答 トランス形の $\ce{C6H5-CH=CH-CH3}$(構造式は上の図の右)(2点)
問4
D・E の二重結合の2つの炭素に、臭素の Br が1つずつ付く(下の図)。
・左の炭素:H・Br・ $\ce{C6H5}$・ $\ce{CHBr-CH3}$ の4つ
・右の炭素:H・Br・ $\ce{CH3}$・ $\ce{CHBr-C6H5}$ の4つ
どちらの炭素も4つの基がすべて違うので、不斉炭素が2つ。問題文の「不斉炭素原子を2個含む」と合う。
答 $\ce{C6H5-C^{*}HBr-C^{*}HBr-CH3}$(構造式は上の図)(3点)
問5
D・E をオゾン分解すると、二重結合が切れて両側の炭素がカルボニル基の炭素になる。両側とも H をもつ CH なので、ベンズアルデヒド $\ce{C6H5-CHO}$ とアセトアルデヒド $\ce{CH3-CHO}$ の2つのアルデヒドができる(下の図)。
アルデヒドは還元性をもち、フェーリング液の $\ce{Cu^2+}$ を還元して、酸化銅(Ⅰ) $\ce{Cu2O}$ の赤色の沈殿をつくる(アンモニア性硝酸銀水溶液なら赤色ではなく銀が析出する)。よってアはフェーリング液。
ベンズアルデヒドは空気中でゆっくり酸化されて安息香酸 $\ce{C6H5-COOH}$ になる。安息香酸は室温で固体(融点約122 ℃)で、冷水には溶けにくい。アセトアルデヒドが酸化されてできる酢酸は室温で液体で、水によく溶けるので合わない。よって G がベンズアルデヒド、H がアセトアルデヒドで、イは安息香酸。
なお、ベンズアルデヒドのような芳香族のアルデヒドはフェーリング液を還元しにくいとされる。問題文は G と H をまとめて扱っていて、少なくとも H(アセトアルデヒド)が赤色の沈殿をつくるので、アはフェーリング液でよい。
答(ア) フェーリング液(2点)
答(イ) 安息香酸(2点)
問6
炭化カルシウムと水から発生する気体はアセチレン $\ce{CH#CH}$。赤熱した鉄に触れさせると3分子が重合してベンゼンになる。このとき、3分子のそれぞれの三重結合の2つの炭素が、ベンゼン環の隣どうしの炭素になり、分子と分子の間に新しい結合ができる。
A でも同じ形式で3分子が重合し、ベンゼン環に $\ce{C6H5}$ が3つと $\ce{CH3}$ が3つ付いた化合物( $\ce{C27H24}$ 、分子量 $116\times3=348$ )ができる。A の三重結合の両端は $\ce{C6H5}$ と $\ce{CH3}$ なので、ベンゼン環の1つおきの辺に置いた3分子の向きの組み合わせは $2\times2\times2=8$ 通り。環を回したり裏返したりして同じになるものをまとめると、次の2つになる(下の図)。
・3つとも同じ向き(2通り):環のまわりに $\ce{C6H5}$ と $\ce{CH3}$ が交互に並ぶ
・1つだけ逆向き(6通り): $\ce{C6H5}$ が2つ隣り合い、 $\ce{CH3}$ も2つ隣り合う。2つだけ逆向きのものは、1つだけ逆向きのものを反対まわりに見たものと同じ
どちらも分子式は同じで、置換基の並び方が違うので、互いに構造異性体。これが I と J。
(I・J は順不同)
答 上の図の2つ(左: $\ce{C6H5}$ と $\ce{CH3}$ が交互に並ぶもの/右:1つだけ逆向きに並ぶもの)(5点)
出題意図
問1 元素分析で分子式を求め、水の付加と水素の付加の結果から、三重結合が鎖のどこにあるかを決められるか
問2 内側の三重結合への水の付加で2種類のケトンができることを捉え、ヨードホルム反応で見分けられるか
問3・問4 アルケンの幾何異性体と、臭素の付加でできる不斉炭素を判断できるか
問5 オゾン分解の生成物から、アルデヒドの検出反応とその酸化生成物を答えられるか
問6 アセチレンの三分子重合を置換基のあるアルキンに当てはめ、できる異性体を漏れなく書けるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 20点 | 15点 |
| 目標時間 | 15分 | 15分 |
元素分析で分子式を決め、付加反応とオゾン分解を順に当てはめる、九大の有機としてオーソドックスな構造決定。
問5 まではアルキンとアルケンの基本の反応で迷う所はなく、ここを落とすと合格は厳しい。
差がつくのは問6 の三分子重合で、「三重結合の2つの炭素が環の隣どうしになる」と言い切れれば、向きの組み合わせを数えるだけで2つに決まる。
教科書の反応を、置換基の付いた分子に当てはめて考える練習を積んでおこう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問1:水の付加で2種類・水素の付加で幾何異性体の2つから、三重結合が鎖の内側にある1-フェニルプロピンと決められるか。ここで $\ce{C6H5-CH2-C#CH}$ などを選ぶと、問2〜問6 がまとめて落ちる。
- 問6:アセチレンの三分子重合を A に当てはめ、三重結合の向きの組み合わせから並び方が2通りに決まる、という発想に行き着けるか。置換基の付いたアルキンの重合は初見の受験生が多く、3つ以上書いたり、 $\ce{C6H5}$ が3つ連続して並ぶ(できない)形を書いたりしやすい(5点)。
2019年九州大学化学
第5問 解答・解説
第5問は高分子化合物(糖類)の問題です。
テーマは『糖類』『再生繊維と半合成繊維』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章(1)と(2)を読み、問1〜問6に答えよ。
(1) 糖類(炭水化物)は、連結した糖の数に応じて単糖・二糖・多糖に分類することができる。単糖のグルコースとフルクトースは同じ分子式で表される構造異性体であり、両化合物はそれぞれの環状構造と鎖状構造の平衡混合物として存在する。鎖状グルコースは環状グルコースにあるヘミアセタール構造が変化して生じ、鎖状フルクトースは環状フルクトースにあるヘミアセタール構造が変化して生じる。また、グルコースの立体異性体であるガラクトースは、鎖状構造にホルミル(アルデヒド)基を持つ単糖の1つである。鎖状グルコースと鎖状ガラクトースを比較すると、4位の炭素原子に結合するヒドロキシ基の立体配置が異なるだけである。単糖が脱水縮合した構造を持つ二糖や多糖は、希硫酸を加えて加熱したり、適切な酵素で処理したりすると、加水分解されて単糖になる。
問1. グルコースの分子式を答えよ。
問2. 鎖状グルコースと鎖状フルクトースにある不斉炭素原子の数をそれぞれ答えよ。
問3. 下に示す図の空欄①〜⑧にあてはまる原子または官能基を答え、 $\beta$-ガラクトースの環状構造を完成させよ。
問4. 下線部に関して、下の枠内に記載された二糖および多糖のうち、完全に加水分解するとグルコース以外の単糖が生じるものを全て答えよ。
| スクロース | トレハロース | マルトース | セロビオース |
| ラクトース | アミロース | アミロペクチン | セルロース |
(2) 植物の細胞壁成分であるセルロースは、衣類や紙類の原料として幅広く利用されている。木材パルプはセルロースを主成分とするが、繊維としては短いため、様々な処理を施して長い繊維を製造している。セルロースに水酸化ナトリウムと二硫化炭素を反応させると、粘性のある $\boxed{\text{ア}}$ とよばれる溶液が得られる。これを希硫酸中に押し出して繊維にしたものが $\boxed{\text{イ}}$ とよばれる $\boxed{\text{ウ}}$ 繊維の一種である。また、セルロースに無水酢酸、酢酸および濃硫酸を作用させると、トリアセチルセルロースが得られる。トリアセチルセルロースにあるエステル結合の一部を穏やかな条件で加水分解し、アセトンなどの溶媒に可溶な高分子にして紡糸した繊維を $\boxed{\text{エ}}$ という。 $\boxed{\text{エ}}$ のように、天然繊維の官能基の一部を化学的に変化させてつくった化学繊維を $\boxed{\text{オ}}$ 繊維という。
問5. 上の文章にある空欄 $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{オ}}$ にあてはまる最も適切な語句を下の枠内から選んで、(A)〜(L)の記号で答えよ。
(A) ビニロン (B) セロハン
(C) キュプラ (D) ビスコースレーヨン
(E) ビスコース (F) アセテート
(G) セルロイド (H) アクリル
(I) 半合成 (J) 合成
(K) 再生 (L) ポリアミド系
問6. 十分に分子量の大きいセルロース162 g を原料としてトリアセチルセルロースにした後、穏やかな加水分解処理を施すことで、セルロースのヒドロキシ基が部分的にアセチル化された259 g の高分子 P が得られた。この高分子 P は、原料に用いたセルロースにあったヒドロキシ基の何%が置換されているか、有効数字2桁で答えよ。
解答の方針
【問1・問2の方針】
不斉炭素は、鎖状構造を書いて1つずつ確かめる。グルコースは1位が $\ce{CHO}$ 、フルクトースは2位が $\ce{C=O}$ で、この違いが不斉炭素の数の違いになる(下の図)。


- 問1 単糖のグルコースの分子式を書く。
- 問2 鎖状グルコースを書き、両端の1位( $\ce{CHO}$ )と6位( $\ce{CH2OH}$ )を除いた2〜5位が不斉炭素かを確かめる。
- 鎖状フルクトースを書き、1位( $\ce{CH2OH}$ )・2位( $\ce{C=O}$ )・6位を除いた3〜5位を数える。
【問3の方針】
ガラクトースはグルコースと4位の OH の向きだけが違う。だから、まず $\beta$-グルコースのハース式を正しく書き、4位の OH と H の上下だけを入れかえればよい(下の図)。


- 問題の図の環の炭素が何位かを決める(環の O の右が1位、そこから手前を回って2位・3位、左が4位、奥の左が5位)。
- 6位の $\ce{CH2OH}$ が上なので、 $\beta$ 型は1位の OH が上。 $\beta$-グルコースの2位は OH が下、3位は OH が上、4位は OH が下。
- 4位だけ OH と H の上下を入れかえて、①〜⑧に当てはめる。
【問4の方針】
二糖・多糖は「何と何がどの結合でつながっているか」を組で覚えておく。問われているのは構成する単糖の種類だけなので、グルコース以外の単糖を含むものを選べばよい。
- 枠内の8つを、加水分解で生じる単糖に分ける。
- グルコース以外の単糖(フルクトース・ガラクトース)を生じるものを全部選ぶ。
【問5の方針】
セルロースからつくる繊維は、OH がもとのまま残る再生繊維と、OH の一部を化学的に変える半合成繊維の2つに分かれる。文章の流れをこの2本に当てはめる(下の図)。


- 水酸化ナトリウムと二硫化炭素で溶かした溶液がビスコース、それを希硫酸中に押し出したものがビスコースレーヨン(再生繊維)。
- トリアセチルセルロースの一部を加水分解して紡糸したものがアセテートで、官能基の一部を変えているので半合成繊維。
【問6の方針】
アセチル化では OH の H が $\ce{COCH3}$ に置きかわるだけで、単位の数は変わらない。質量の増えた分を「OH 1個あたりの増え方」で割れば、置換された OH の数が分かる(下の図)。


- セルロースの単位 $\ce{C6H10O5}$(162)の物質量を求め、OH の物質量をその3倍とする。
- OH 1個がアセチル化されると、式量が $\ce{COCH3}$ と H の差だけ増える。
- 質量の増加を1個あたりの増え方で割って、置換された OH の物質量を求め、全体の OH に対する割合を求める。
解答


解答をテキストで読む
問1
グルコースは単糖で、フルクトース・ガラクトースと同じ分子式をもつ。
答 $\ce{C6H12O6}$(1点)
問2
鎖状グルコースは、1位がホルミル基 $\ce{CHO}$、2〜5位が $\ce{CH(OH)}$、6位が $\ce{CH2OH}$。6位の炭素は H を2つもち、1位の炭素は $\ce{C=O}$ の二重結合をもつので不斉炭素ではなく、2〜5位の4つの炭素が不斉炭素(下の図)。
鎖状フルクトースは、2位が $\ce{C=O}$ で1位と6位が $\ce{CH2OH}$。2位は $\ce{C=O}$ の二重結合をもち、1位と6位は H を2つもつので不斉炭素ではなく、不斉炭素は3〜5位の3つ。
答(グルコース) 4個(1点)
答(フルクトース) 3個(2点)
問3
問題の図の環は、環の O の右の炭素が1位で、手前の右が2位、手前の左が3位、左が4位、奥の左が5位。6位の $\ce{CH2OH}$ が環の上にあるので、 $\beta$ 型は1位の OH も上になる。
$\beta$-グルコースは、1位 OH 上・2位 OH 下・3位 OH 上・4位 OH 下。ガラクトースは4位の OH の向きだけが逆なので、4位は OH が上で H が下(下の図)。
答(①) $\ce{OH}$(1点)
答(②) $\ce{OH}$(1点)
答(③) $\ce{H}$(1点)
答(④) $\ce{OH}$(1点)
答(⑤) $\ce{H}$(1点)
答(⑥) $\ce{H}$(1点)
答(⑦) $\ce{OH}$(1点)
答(⑧) $\ce{H}$(1点)
問4
枠内の二糖・多糖を、加水分解で生じる単糖で分ける。
・スクロース:グルコース+フルクトース
・ラクトース:ガラクトース+グルコース
・トレハロース・マルトース・セロビオース:グルコースだけ(結合のしかたが α-1,1・α-1,4・β-1,4 と違う)
・アミロース・アミロペクチン・セルロース:グルコースだけ(デンプンは α-グルコース、セルロースは β-グルコース)
答 スクロース、ラクトース(3点)
問5
セルロースを水酸化ナトリウムと二硫化炭素で処理して水酸化ナトリウム水溶液に溶かすと、粘りのあるビスコースになる。これを希硫酸中に押し出すとセルロースが繊維として再生し、ビスコースレーヨンになる。OH の構造はもとのセルロースのままなので再生繊維(同じビスコースを膜にしたものがセロハン)。
一方、トリアセチルセルロースはアセトンに溶けないので、エステル結合の一部を加水分解してアセトンに溶けるジアセチルセルロースにしてから紡糸する。これがアセテートで、OH の一部をエステルに変えているので半合成繊維(下の図)。
答(ア) (E) ビスコース(1点)
答(イ) (D) ビスコースレーヨン(1点)
答(ウ) (K) 再生(1点)
答(エ) (F) アセテート(1点)
答(オ) (I) 半合成(1点)
問6
セルロースの単位 $\ce{C6H10O5}$ の式量は162なので、162 g のセルロースの単位は
$$\dfrac{162}{162}=1.00\ \mathrm{mol}$$
単位1つに OH が3個あるので、OH は3.00 mol。十分に分子量が大きいので、両端の分は考えなくてよい。
OH 1個がアセチル化されると、 $-\ce{OH}$ の H が $-\ce{COCH3}$ に置きかわる(下の図)。増える式量は
$$43.0-1.0=42.0$$
アセチル化しても単位の数は変わらないので、質量の増加 $259-162=97$ g はすべてアセチル化による。置換された OH の物質量は
$$\dfrac{97}{42.0}\fallingdotseq2.31\ \mathrm{mol}$$
もとの OH 3.00 mol に対する割合は
$$\dfrac{2.31}{3.00}\times100\fallingdotseq77\ \%$$
答 77 %(5点)
別解
問6 (全部アセチル化したときと比べる) OH 3.00 mol が全部アセチル化されてトリアセチルセルロースになれば、質量は $42.0\times3.00=126$ g 増える。実際の増加は97 g なので、割合は
$$\dfrac{97}{126}\times100\fallingdotseq77\ \%$$
本解と同じ式になる。トリアセチルセルロースの単位 $\ce{C6H7O2(OCOCH3)3}$ の式量288 を覚えていれば、すぐに立てられる。
出題意図
問1・問2 グルコースとフルクトースの鎖状構造を書き、不斉炭素を正確に数えることができるか
問3 $\beta$-グルコースのハース式を白紙に書け、ガラクトースとの違い(4位)を構造の上で捉えることができるか
問4 二糖・多糖がどの単糖からできているかを、系列で正しく言えるか
問5・問6 セルロースからつくる再生繊維と半合成繊維の流れを理解し、アセチル化で式量がどう変わるかを捉えることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 20点 | 20点 |
| 目標時間 | 12分 | 15分 |
使う知識はすべて教科書と重要問題集の範囲で、どの学部も20点は取りたい得点源の大問。
差がつくのは問3 のハース式の精度で、β-グルコースを白紙に書け、ガラクトースは4位だけ逆と言えれば8つの空欄で迷わない。
問6 の計算も「OH 1個あたり42増える」と言い切れれば式は1本で終わる。
糖は「鎖状構造を書いて数える」「環状構造を白紙に書く」の2つを手で覚えておくこと。
差がつく所・失点しやすい所
- 問3: $\beta$-グルコースのハース式を正確に再現し、4位だけを入れかえるという発想に行き着けるか。 $\beta$ の1位の向きと、グルコースの2〜4位の OH の上下のどちらかがあいまいだと、8つの空欄(8点)がまとめてずれる。
- 問6:アセチル化で増えるのは「 $\ce{COCH3}$ から H を引いた分」の42だと捉えられるか。酢酸の60や $\ce{COCH3}$ の43をそのまま足すと答えがずれる。
- 問2:フルクトースも鎖状構造を実際に書いて数えられるか。グルコースと同じ4個と答える受験生は多い。
2019年九州大学・化学の
講評とまとめ
5問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | やや難 | 20点 | 15点 |
| 第2問 | やや難 | 20点 | 15点 |
| 第3問 | やや簡単 | 25点 | 25点 |
| 第4問 | 標準 | 20点 | 15点 |
| 第5問 | 標準 | 20点 | 20点 |
| 全体 | やや難 | 100点 | 75点 |
大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で100点、その他の学部で75点)にはなりません。
全体的に難易度はやや難の年。
やや難の大問が第1問と第2問の2題あり、高い点は取りにくい年でした。
この年の合否を分けたのは、第1問の浸透圧でした。
液面差6.60 cm が両側の差で、水が移って溶液の体積が113.2 mL に増えていることに気づけるかで、問3〜問5(ア)までまとめて決まります。
第2問も前半は基本ですが、(3) の初見の誘導で原子の数の比を式にする所が重い大問です。
一方、第3問は無機の知識と定番の計算だけで満点が取れ、第4問・第5問も基本の反応と糖の構造を正確に押さえていれば得点源になります。
第1問は U字管の図に片側の高さ・移った水・溶液の体積を書き込んでから計算し、知識で取れる大問は短い時間で確実に取り切ることが大事です。
解く流れ
第1問 → 第2問 → 第3問 → 第4問 → 第5問。
2019年九州大学・化学に
関するよくある質問
2019年の九州大学・化学について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2019年の九州大学・化学は難しかった?
-
全体的に難易度はやや難の年でした。
第1問・第2問はやや難、第4問・第5問は標準、第3問はやや簡単です。
やや難の大問が2題あり、高い点は取りにくい年でした。 - 2019年の九州大学・化学は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で100点、その他の学部で75点です(125点満点)。
- 2019年の九州大学・化学はどこで差がつく?
-
この年の合否を分けたのは第1問の浸透圧で、差がついたのは次の3つでした。
- 第1問 問2:液面差6.60 cm が両側の差で、水が移って溶液の体積が113.2 mL に増えていると気づけたか。
- 第2問 (3):O と H がすべて水蒸気から来ることを分圧で書き、二酸化炭素の O を2個と数えられたか。
- 第5問 問3:β-グルコースのハース式を正確に書き、4位だけを入れかえて β-ガラクトースを完成できたか。
- 2019年の九州大学・化学は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:理論化学(溶液)
- 第2問:理論化学(反応の速さと化学平衡)
- 第3問:無機化学・理論化学
- 第4問:有機化学
- 第5問:高分子化合物(糖類)




