【解説・配点付き】2020年九州大学化学の解答・解説
2020年の九州大学・化学の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2020年九州大学化学
第1問 解答・解説
この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は理論化学(反応の速さと化学平衡)の問題です。
テーマは『平衡の移動と平衡定数』『アレニウスの式』。
問題


問題文をテキストで読む
※ 旧課程の問題なので、反応熱の表記をエンタルピーに直して載せています。
次の文章を読み、問1〜問4に答えよ。
密閉した反応容器中で、1分子の物質 A(気体)と1分子の物質 B(気体)を反応させると、2分子の物質 C(気体)と3分子の物質 D(固体)が生成すると仮定する。この反応は可逆反応であり、式(Ⅰ)で表せる。
$\mathbf{A}(\text{気})\ +\ \mathbf{B}(\text{気})\ \ce{<=>}\ 2\,\mathbf{C}(\text{気})\ +\ 3\,\mathbf{D}(\text{固})$ …(Ⅰ)
ここで、式(Ⅰ)の正反応および逆反応を、それぞれ式(Ⅱ)および式(Ⅲ)とする。
$\mathbf{A}(\text{気})\ +\ \mathbf{B}(\text{気})\ \ce{->}\ 2\,\mathbf{C}(\text{気})\ +\ 3\,\mathbf{D}(\text{固})$ …(Ⅱ)
$2\,\mathbf{C}(\text{気})\ +\ 3\,\mathbf{D}(\text{固})\ \ce{->}\ \mathbf{A}(\text{気})\ +\ \mathbf{B}(\text{気})$ …(Ⅲ)
問1. 反応(Ⅰ)が平衡状態にあるとき、反応容器の温度と体積をいずれも一定に保ったまま物質 C(気体)を加えると、物質 A(気体)と物質 B(気体)の物質量が $\boxed{\text{ア}}$ する方向へ平衡が移動する。一方、温度を一定に保ったまま反応容器の圧力を下げると、平衡は $\boxed{\text{イ}}$ 。また、反応容器の温度と体積をいずれも一定に保ったまま反応(Ⅰ)に作用する触媒(固体)を加えると、平衡は $\boxed{\text{ウ}}$ 。
文章中の $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{ウ}}$ に入る適切な語句を1つ選んで数字で答えよ。ただし、固体の体積は無視できるものとする。
$\boxed{\text{ア}}$ ① 減少 ② 増加
$\boxed{\text{イ}}$ ① 右方向に移動する ② 左方向に移動する ③ どちらにも移動しない
$\boxed{\text{ウ}}$ ① 右方向に移動する ② 左方向に移動する ③ どちらにも移動しない
問2. 反応容器に物質 A(気体)2.0 mol と物質 B(気体)2.0 mol を入れて一定温度に保つと反応(Ⅰ)が平衡状態となり、物質 C(気体)1.0 mol と物質 D(固体)1.5 mol が生成する。この反応の平衡定数 $K$ は $\boxed{\text{エ}}$ である。
文章中の $\boxed{\text{エ}}$ に入る数字を有効数字2桁で答えよ。
問3. 化学反応が進行するためには、 $\boxed{\text{オ}}$ と呼ばれるエネルギーの高い不安定な中間状態を経由しなければならない。この $\boxed{\text{オ}}$ にある原子の集合体を $\boxed{\text{カ}}$ という。
反応(Ⅲ)は吸熱反応であり、その活性化エネルギーは $E_{\mathrm{a},1}$〔J/mol〕、反応エンタルピーは $\Delta H=Q$〔J/mol〕である。反応容器の温度と体積をいずれも一定に保ったまま、反応(Ⅰ)に作用する触媒(固体)を加える。このとき、反応(Ⅲ)の活性化エネルギーは $E_{\mathrm{a},2}$〔J/mol〕へと変化して反応速度は大きくなり、反応(Ⅱ)の活性化エネルギー $E_{\mathrm{a},3}$〔J/mol〕は $\boxed{\text{キ}}$ へと変化して反応速度は $\boxed{\text{ク}}$ 。
文章中の $\boxed{\text{オ}}$ $\boxed{\text{カ}}$ に入る適切な語句を答えよ。また、 $\boxed{\text{キ}}$ $\boxed{\text{ク}}$ に入る適切な語句を1つ選んで数字で答えよ。ここで、 $E_{\mathrm{a},1}$、 $E_{\mathrm{a},2}$ および $Q$ は正の値( $>0$ )である。また、固体の体積は無視できるものとする。
$\boxed{\text{キ}}$ ① $E_{\mathrm{a},1}$ ② $E_{\mathrm{a},2}$ ③ $E_{\mathrm{a},1}+E_{\mathrm{a},2}$ ④ $E_{\mathrm{a},1}-E_{\mathrm{a},2}$ ⑤ $E_{\mathrm{a},1}+Q$ ⑥ $E_{\mathrm{a},2}+Q$ ⑦ $E_{\mathrm{a},1}-Q$ ⑧ $E_{\mathrm{a},2}-Q$ ⑨ $E_{\mathrm{a},1}+E_{\mathrm{a},2}+Q$ ⑩ $E_{\mathrm{a},1}+E_{\mathrm{a},2}-Q$
$\boxed{\text{ク}}$ ① 小さくなる ② 大きくなる ③ 変化しない
問4. 化学反応の反応速度定数 $k$ は、活性化エネルギー $E_{\mathrm{a}}$〔J/mol〕と絶対温度 $T$〔K〕、気体定数 $R$〔J/(mol·K)〕、比例定数 $A$ を用いて、次のアレニウスの式で表される。
$k=Ae^{-E_{\mathrm{a}}/RT}$
(1) 反応(Ⅱ)に対する300 K および350 K での速度定数 $k$ が表1の通りであるとき、活性化エネルギー $E_{\mathrm{a},4}$ は $\boxed{\text{ケ}}$ $\times10^2$ kJ/mol である。
文章中の $\boxed{\text{ケ}}$ に入る数字を有効数字2桁で答えよ。
表1 反応(Ⅱ)に対する速度定数 $k$ の温度依存性
| 温度 $T$〔K〕 | 速度定数 $k$ |
|---|---|
| 300 | $1.0\times10^{-6}$ |
| 350 | $1.0\times10^{-3}$ |
(2) (1)のように、温度を高くすると反応速度が急激に大きくなる。この理由として、分子の衝突回数の増加Ⓐおよび活性化エネルギーより大きい運動エネルギーをもつ分子の割合の $\boxed{\text{a}}$ Ⓑの2つが主な要因として挙げられるが、 $\boxed{\text{b}}$ の寄与が支配的である。
$\boxed{\text{a}}$ に入る語句と $\boxed{\text{b}}$ に入る記号の正しい組み合わせを、次の①〜④の中から1つ選んで $\boxed{\text{コ}}$ に数字で答えよ。
① $\boxed{\text{a}}$ 減少 $\boxed{\text{b}}$ Ⓐ
② $\boxed{\text{a}}$ 減少 $\boxed{\text{b}}$ Ⓑ
③ $\boxed{\text{a}}$ 増加 $\boxed{\text{b}}$ Ⓐ
④ $\boxed{\text{a}}$ 増加 $\boxed{\text{b}}$ Ⓑ
解答の方針
【問1の方針】
ルシャトリエの原理は、濃度 $C$ と温度 $T$ だけに注目し、圧力は濃度に直して考える。分子数は気体だけを数えるので、両辺の気体はどちらも2分子(下の図)。


- 体積一定で C を加えると C の濃度が上がるので、C を減らす向きへ平衡が移動する。そのとき A・B が増えるか減るかを決める(ア)。
- 圧力を下げると気体の濃度が下がり、平衡は気体の分子数が増える向きへ寄ろうとする。両辺の気体の分子数を比べて、移動するかを決める(イ)。
- 触媒は反応の速さだけを変え、平衡は変えないことから決める(ウ)。
【問2の方針】
生成した C の量から係数比で逆算し、状態遷移図を書く。体積で割って濃度にしてから平衡定数の式に入れ、固体の D は入れない(下の図)。


- C が1.0 mol 生じたことから、係数比で A・B の減少量と D の生成量を求め、状態遷移図を書く。
- 容器の体積を $V$ とおき、気体の A・B・C の物質量を $V$ で割って濃度にする。
- 固体の D を除いた平衡定数の式 $K=\dfrac{[\mathbf{C}]^2}{[\mathbf{A}][\mathbf{B}]}$ に入れて $K$ を求める( $V$ は約分で消える)。
【問3の方針】
活性化エネルギーは、エンタルピー図の山の高さの横線と差の矢印で読む。反応(Ⅲ)は吸熱なので A+B の方が $Q$ だけ高く、触媒は山だけを低くする(下の図)。


- 用語を答える(オ・カ)。
- 下に $2\,\mathbf{C}+3\,\mathbf{D}$ 、そこから $Q$ だけ上に $\mathbf{A}+\mathbf{B}$ を置き、触媒なしと触媒ありの山の高さを横線で書く。
- 触媒ありの山の高さは、下の段から $E_{\mathrm{a},2}$ 。反応(Ⅱ)は上の段から登るので、触媒ありの山までの差を $E_{\mathrm{a},2}$ と $Q$ で表す(キ)。
- 触媒は山そのものを低くし、正反応と逆反応の活性化エネルギーを同じだけ下げることから、反応(Ⅱ)の速さの変化を決める(ク)。
【問4の方針】
アレニウスの式は、とりあえず対数をとる。2つの温度の式を辺々引けば $A$ が消える(下の図)。速くなる主な理由は、活性化エネルギーをこえる分子の割合の増加。


- $k=Ae^{-E_{\mathrm a}/RT}$ の両辺の自然対数をとり、 $\log_ek=\log_eA-\dfrac{E_{\mathrm a}}{RT}$ とする。
- 300 K と350 K の式を辺々引いて $\log_eA$ を消し、表1の値と $\log_e10=2.3$ を入れて $E_{\mathrm{a},4}$〔J/mol〕を求め、kJ/mol に直す(ケ)。
- 温度を上げると、衝突回数はわずかしか増えないが、活性化エネルギーをこえる分子の割合は急に増えることから、a と b の組み合わせを選ぶ(コ)。
解答


解答をテキストで読む
問1
ルシャトリエの原理は、濃度 $C$ と温度 $T$ に注目する。分子数は気体だけを数え、固体の D は数えない(下の図)。
温度と体積が一定のまま C を加えると、 C の濃度が上がる。平衡は C を減らす向き、つまり左へ移動するので、 A と B の物質量は増加する。
答(ア) ② 増加(2点)
温度一定で圧力を下げると、状態方程式 $P=\dfrac nVRT$ より、気体の濃度 $\dfrac nV$ が下がる。濃度が下がると平衡は気体の分子数が増える向きへ寄ろうとするが、左辺は A・B の気体2分子、右辺の気体は $2\,\mathbf{C}$ の2分子で同じなので、どちらへ移動しても気体の分子数は変わらない。よって平衡は移動しない。
答(イ) ③ どちらにも移動しない(2点)
触媒は正反応と逆反応をどちらも同じように速くするだけで、平衡は変えない。
答(ウ) ③ どちらにも移動しない(2点)
問2
C が1.0 mol 生じたので、係数比 $\mathbf{A}:\mathbf{B}:\mathbf{C}:\mathbf{D}=1:1:2:3$ から、 A と B は0.50 mol ずつ減り、 D は1.5 mol 生じる(下の図)。
平衡の物質量は A 1.5 mol、 B 1.5 mol、 C 1.0 mol。容器の体積を $V$〔L〕とおいて濃度にし、平衡定数の式に入れる。固体の D は濃度が変わらない(気体のように薄まったり濃くなったりしない)ので、平衡定数の式には入れない。
$$K=\dfrac{[\mathbf{C}]^2}{[\mathbf{A}][\mathbf{B}]}=\dfrac{\left(\dfrac{1.0}{V}\right)^2}{\dfrac{1.5}{V}\times\dfrac{1.5}{V}}=\dfrac{1.0}{2.25}=0.444$$
両辺の気体の分子数が同じなので $V$ は約分で消え、単位も付かない。
答(エ) 0.44(3点)
問3
反応が進むとき、反応物はエネルギーの高い不安定な状態を経由する。この状態を遷移状態(活性化状態)といい、その状態にある原子の集合体を活性錯体という。
答(オ) 遷移状態(活性化状態)(2点)
答(カ) 活性錯体(2点)
エンタルピー図に、反応の両端の高さと山の高さを横線で書き、差を矢印で読む。反応(Ⅲ)は吸熱反応で、反応エンタルピーは $\Delta H=+Q$ なので、 A+B は $2\,\mathbf{C}+3\,\mathbf{D}$ より $Q$ だけ高い(下の図)。
触媒なしでは、山の高さは下の段 $2\,\mathbf{C}+3\,\mathbf{D}$ から $E_{\mathrm{a},1}$ 。反応(Ⅱ)は上の段 A+B から同じ山を登るので
$$E_{\mathrm{a},3}=E_{\mathrm{a},1}-Q$$
触媒を加えると、山の高さは下の段から $E_{\mathrm{a},2}$ に下がる。両端の高さは変わらないので、反応(Ⅱ)の活性化エネルギーは
$$E_{\mathrm{a},2}-Q$$
答(キ) ⑧ $E_{\mathrm{a},2}-Q$(3点)
触媒は山そのものを低くするので、反応(Ⅲ)の向きから見ても反応(Ⅱ)の向きから見ても、活性化エネルギーは同じだけ( $E_{\mathrm{a},1}-E_{\mathrm{a},2}$ だけ)下がる。反応(Ⅱ)の活性化エネルギーも小さくなるので、反応(Ⅱ)の速さも大きくなる。
答(ク) ② 大きくなる(2点)
問4 (1)
アレニウスの式は、とりあえず対数をとる。両辺の自然対数をとると
$$\log_ek=\log_eA-\dfrac{E_{\mathrm a}}{RT}$$
活性化エネルギーは温度を変えても変わらないので、300 K と350 K の式を並べて辺々引き、 $\log_eA$ を消す(横軸を温度の逆数、縦軸を $\log_ek$ にとった直線の傾きを求めるのと同じ。下の図)。
$$\log_e\left(1.0\times10^{-3}\right)-\log_e\left(1.0\times10^{-6}\right)=\dfrac{E_{\mathrm{a},4}}{R}\left(\dfrac{1}{300}-\dfrac{1}{350}\right)$$
左辺は $\log_e10^3=3\log_e10=3\times2.3=6.9$ 、右辺のかっこは $\dfrac{350-300}{300\times350}=\dfrac{1}{2100}$ なので
$$E_{\mathrm{a},4}=6.9\times8.3\times2100=1.20\times10^5\ \mathrm{J/mol}=1.20\times10^2\ \mathrm{kJ/mol}$$
アレニウスの式の $E_{\mathrm a}$ は J/mol で入っているので、最後に kJ/mol に直す。
答(ケ) 1.2(4点)
問4 (2)
温度を上げると、分子の運動エネルギーの分布が高い方へ広がり、活性化エネルギーをこえる分子の割合(下の図の塗った部分)が急に増える。一方、衝突回数も増えるが、その増え方はわずかである。
表1でも、50 K 上げただけで速度定数は1000倍になっている。衝突回数の増加ではこれほど大きくならないので、活性化エネルギーより大きい運動エネルギーをもつ分子の割合の増加(Ⓑ)の寄与が支配的である。よって a は「増加」、b は「Ⓑ」。
答(コ) ④(a 増加、b Ⓑ)(3点)
別解
問3 (活性化エネルギーと反応エンタルピーの関係から) 正反応の活性化エネルギーから逆反応の活性化エネルギーを引くと、正反応の反応エンタルピーになる。触媒を加えたあとの反応(Ⅲ)の活性化エネルギーは $E_{\mathrm{a},2}$ 、反応(Ⅲ)の反応エンタルピーは $+Q$ なので、反応(Ⅱ)の活性化エネルギーを $x$ とすると $E_{\mathrm{a},2}-x=Q$ 。よって $x=E_{\mathrm{a},2}-Q$ 。ただし、どちらからどちらを引くかを取り違えやすいので、エンタルピー図を書いて確かめる。
出題意図
問1 気体の分子数と固体の扱いに注意して、ルシャトリエの原理で平衡の移動の向きを判断できるか
問2 生成した量から係数比で状態遷移図を書き、固体を除いた平衡定数を求めることができるか
問3 遷移状態と活性錯体の用語を押さえ、吸熱反応のエンタルピー図から、触媒を加えたときの逆反応の活性化エネルギーを読み取ることができるか
問4 アレニウスの式の対数をとって2つの温度の式から活性化エネルギーを求め、温度を上げると反応が速くなる主な理由を説明できるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 20点 | 20点 |
| 目標時間 | 15分 | 15分 |
前半は「ルシャトリエの原理は濃度と温度に注目し、気体だけを数える」「状態遷移図を書き、濃度にしてから平衡定数に入れる」という決まった流れで全部取れる。
差がつくのは最後のアレニウスの式で、重要問題集の巻末にそのまま載っている問題なので、巻末まで解いていたかで差がついた。
アレニウスの式は「対数をとる→2つの温度で辺々引く→ J を kJ に直す」を白紙で再現できるまで練習しておこう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問4 (1):アレニウスの式の両辺の対数をとり、2つの温度の式を辺々引いて $A$ を消す、という流れに行き着けるか。アレニウスの式を使った計算は練習していない受験生が多い。重要問題集の巻末の問題そのものなので、最後まで解いていたかで差がつく。
- 問3(キ):吸熱反応のエンタルピー図で A+B を上に置き、反応(Ⅱ)の山を上の段から測る、という発想に行き着けるか。図を書かずに考えると $E_{\mathrm{a},2}+Q$ (⑥)を選びやすい。
2020年九州大学化学
第2問 解答・解説
第2問は理論化学(酸化・還元と電池・電気分解)・無機化学の問題です。
テーマは『アルカリマンガン乾電池』『電池の量的計算』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問6に答えよ。
マンガン乾電池では下の式に示す反応により起電力が得られる。
正極: $\ce{MnO2} + w\ce{H2O} + x\ce{e-} \ce{->} \ce{MnO(OH)} + y\ce{OH-}$
負極: $\ce{Zn -> Zn^2+} + z\ce{e-}$
ただし、 $\ce{MnO(OH)}$ および $\ce{MnO2}$ は水に全く溶解せず、 $\ce{MnO(OH)}$ は正極から剥落しないものとする。また、正極、負極および電解液は重量の損失なく完全に分離できるものとする。
一方、電解液に水酸化カリウム水溶液を用いるアルカリマンガン乾電池では、負極で生じる物質が $\boxed{\text{ア}}$ となって溶解するため、負極の電気抵抗を小さく保つことができる。
負極の $\boxed{\text{イ}}$ は水酸化カリウム水溶液と反応し、自発的に $\boxed{\text{ア}}$ と $\boxed{\text{ウ}}$ を生じる。この副反応を防ぐため、アルカリマンガン乾電池では $\boxed{\text{エ}}$ という工夫が施されている。
問1. 正極および負極の半反応式が適切となるように、文章中の $w$、 $x$、 $y$ および $z$ に当てはまる数を答えよ。
問2. 文章中の $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{ウ}}$ に適するものを、以下の(A)〜(J)のなかからそれぞれ一つずつ選んで記号で答えよ。
(A) $\ce{Zn}$ (B) $\ce{ZnO}$ (C) $\ce{ZnCl2}$
(D) $\ce{[Zn(OH)4]^2-}$ (E) $\ce{[Zn(NH3)4]^2+}$ (F) $\ce{O2}$
(G) $\ce{H+}$ (H) $\ce{MnO2}$ (I) $\ce{KCl}$
(J) $\ce{H2}$
問3. 文章中の $\boxed{\text{エ}}$ として最も適切なものを下記より一つ選んで記号で答えよ。
(A) 電解液に塩酸を添加しておく
(B) 負極に $\ce{MnO2}$ を添加しておく
(C) 電解液に塩化亜鉛を十分に溶解させておく
(D) 電池の内部に酸素ガスを封入しておく
(E) 氷晶石を添加しておく
問4. アルカリマンガン乾電池を放電したとき、負極の重量と、電解液の pH はどのように変化するか。それぞれ「増加」、「減少」もしくは「変わらない」のいずれかで答えよ。
問5. アルカリマンガン乾電池を20 mA で16分5秒間放電したときの正極の重量変化を「増加」、「減少」もしくは「変わらない」のいずれかで答えよ。またその変化量〔g〕を有効数字2桁で答えよ。
問6. 268 mA の電流値で1時間放電することのできるアルカリマンガン乾電池を作製するためには、正極と負極の合計の重量は最低で何 g 必要か、有効数字2桁で答えよ。ただし電池は使い切るまで抵抗が変化せず完全に放電できるものとする。
解答の方針
【問1の方針】
初めて見る電池でも、何が何になるかは問題文が与えてくれる。酸化数の変化から電子の数を決め、電荷と原子をそろえる。正極の式には $\ce{OH-}$ があるので、酸性の式で書いてから $\ce{OH-}$ で直す(下の図)。


- 正極: $\ce{MnO2}$ から $\ce{MnO(OH)}$ への $\ce{Mn}$ の酸化数の変化から、 $x$ を決める。
- 電荷を $\ce{H+}$ 、原子を $\ce{H2O}$ でそろえた酸性の式を書き、両辺に $\ce{OH-}$ を足して $w$ ・ $y$ を決める。
- 負極: $\ce{Zn}$ の酸化数の変化から、 $z$ を決める。
【問2の方針】
亜鉛は両性元素なので、強塩基の水酸化カリウム水溶液の中では $\ce{OH-}$ 4個と錯イオンをつくって溶ける。両性元素の単体が塩基に溶けるときは、水素が発生する(下の図)。


- 負極で生じた $\ce{Zn^2+}$ が強塩基の中でとる形を、両性元素の錯イオンから決める(ア)。
- 負極の物質(イ)が水酸化カリウム水溶液と自発的に反応するときに出る気体を、両性元素の単体と塩基の反応から決める(ウ)。
【問3の方針】
副反応は、負極の亜鉛が電解液に溶けて錯イオンと水素になる反応。この反応でできるものをはじめから電解液に溶かしておけば、亜鉛が溶け出す向きに進みにくくなる(下の図)。


- 副反応を、問2 の亜鉛と水酸化カリウム水溶液の反応と確かめる。
- 選択肢のうち、電解液を酸にするもの・亜鉛を酸化する物質を加えるもの・電池と関係のないものを除く。
- 残った、亜鉛の錯イオンをはじめから溶かしておく工夫を選ぶ。
【問4の方針】
電池全体の変化は、正極と負極の式を電子の数をそろえて足した1本の式で読む。負極の亜鉛は錯イオンになって溶け出し、 $\ce{OH-}$ は負極で使われる数と正極でできる数の差で増減が決まる(下の図)。


- 負極の反応を、問1 の負極の式の両辺に $\ce{OH-}$ を足して、錯イオンの形で書く。
- 正極の式を2倍して電子をそろえ、2本を足して全体の式にする。
- 全体の式から、負極の亜鉛が溶け出すこと(重量)と、電解液の $\ce{OH-}$ が減ること(pH)を読む。
【問5の方針】
電池の計算は、まず流れた電子の物質量を求める。正極は $\ce{MnO2}$ が $\ce{MnO(OH)}$ に変わって極板に残るので、電子1個につき水素原子1個分だけ重くなる(下の図)。


- 時間を秒に直し、電流×時間÷ファラデー定数で電子の物質量を求める。
- 正極の式から、電子1 mol あたりの正極の重量の変化を求める。
- 電子の物質量をかけて、変化量を求める。
【問6の方針】
必要な重量は、電子を流しきるのに足りるだけの活物質の量。正極の $\ce{MnO2}$ も負極の $\ce{Zn}$ も、流れる電子の物質量で必要な量が決まる。亜鉛は1個で電子2個を放出するので、電子の半分の物質量でよい(下の図)。


- 1時間を秒に直し、流れる電子の物質量を求める。
- 正極の式から必要な $\ce{MnO2}$ の物質量(電子と同じ)、負極の式から必要な $\ce{Zn}$ の物質量(電子の半分)を求める。
- それぞれ質量に直して足す。
解答




解答をテキストで読む
問1
正極では、酸化ラダーより $\ce{Mn}$ の酸化数が +4( $\ce{MnO2}$ )から +3( $\ce{MnO(OH)}$ )に下がるので、受け取る電子は1個。まず酸性の形で、電荷を $\ce{H+}$ でそろえると、原子もそろう。
$$\ce{MnO2 + H+ + e- -> MnO(OH)}$$
電解液は $\ce{H+}$ ではなく $\ce{OH-}$ が多いので、両辺に $\ce{OH-}$ を1個足し、左辺の $\ce{H+}$ と $\ce{OH-}$ を $\ce{H2O}$ にする。
$$\ce{MnO2 + H2O + e- -> MnO(OH) + OH-}$$
負極では、 $\ce{Zn}$ の酸化数が 0 から +2 に上がるので、放出する電子は2個(下の図)。
$$\ce{Zn -> Zn^2+ + 2e-}$$
答 $w=1$(1点)
答 $x=1$(1点)
答 $y=1$(1点)
答 $z=2$(1点)
問2
アルカリマンガン乾電池では、負極で生じた $\ce{Zn^2+}$ が、強塩基の電解液の中で $\ce{OH-}$ 4個と結びついてテトラヒドロキシド亜鉛(Ⅱ)酸イオンになり、溶ける。負極の表面に固体がたまらないので、電気抵抗が小さく保たれる。
$$\ce{Zn^2+ + 4OH- -> [Zn(OH)4]^2-}$$
負極の亜鉛は両性元素の単体なので、電池として使わなくても水酸化カリウム水溶液に溶け、水素を発生する。
$$\ce{Zn + 2KOH + 2H2O -> K2[Zn(OH)4] + H2}$$
両性元素は4つとも、強塩基の中では $\ce{OH-}$ 4個の錯イオンになる(下の図)。単体が塩基に溶けるときだけ水素が出て、酸化物・水酸化物が溶けるときは出ない。亜鉛はアンモニア水にも溶けるが、そのときは $\ce{[Zn(NH3)4]^2+}$ (選択肢の (E))になる。ここは水酸化カリウム水溶液なので (D)。
答(ア) (D) $\ce{[Zn(OH)4]^2-}$(2点)
答(イ) (A) $\ce{Zn}$(2点)
答(ウ) (J) $\ce{H2}$(2点)
問3
副反応は、問2 の亜鉛と水酸化カリウム水溶液の反応。亜鉛が放電に使われないまま溶けて減り、発生した水素で電池がふくらんだり液がもれたりする原因になる。
本来の正解は「電解液に酸化亜鉛を十分に溶解させておく」。酸化亜鉛は両性酸化物なので、水酸化カリウム水溶液に錯イオンとして溶ける。
$$\ce{ZnO + 2KOH + H2O -> K2[Zn(OH)4]}$$
副反応でできる $\ce{[Zn(OH)4]^2-}$ がはじめから電解液に多く溶けていると、亜鉛が溶け出す向きの反応が進みにくくなる(下の図)。実際のアルカリマンガン乾電池でも、電解液の水酸化カリウム水溶液に酸化亜鉛を数%加えている。
ほかの選択肢は使えない。
・(A) 塩酸は水酸化カリウムを中和してしまう。酸性になれば、亜鉛はかえって溶けて水素を出す
・(B) $\ce{MnO2}$ は正極で電子を受け取る酸化剤。負極に混ぜると、亜鉛がその場で酸化されてしまう
・(D) 酸素も酸化剤で、亜鉛を酸化してしまう
・(E) 氷晶石は、アルミニウムの溶融塩電解で酸化アルミニウムを低い温度で溶かすためのもの。電池とは関係がない
冊子の (C) では「酸化亜鉛」が「塩化亜鉛」と誤って書かれていた(塩化亜鉛は、マンガン乾電池の電解液に使われる物質)。大学は出題ミスとして、この小問を受験者全員の正解とした。
答 出題ミスのため全員正解(本来の正解は「電解液に酸化亜鉛を十分に溶解させておく」)(3点)
問4
アルカリマンガン乾電池の負極では、亜鉛が $\ce{Zn^2+}$ になったあと、 $\ce{OH-}$ 4個と錯イオンをつくって溶ける。問1 の負極の式の両辺に $\ce{4OH-}$ を足して1本にする。
$$\ce{Zn + 4OH- -> [Zn(OH)4]^2- + 2e-}$$
正極は問1 の式。電子を2個にそろえるため2倍する。
$$\ce{2MnO2 + 2H2O + 2e- -> 2MnO(OH) + 2OH-}$$
2本を足すと全体の式になる(電子2個が流れる)。
$$\ce{Zn + 2MnO2 + 2H2O + 2OH- -> [Zn(OH)4]^2- + 2MnO(OH)}$$
負極の亜鉛は錯イオンになって電解液に溶け出すので、負極の重量は減少する。
$\ce{OH-}$ は負極で4個使われ、正極では2個しかできないので、電子2個あたり差し引き2個減る。水も2個減るが、溶液の中では水のほうが $\ce{OH-}$ よりはるかに多い(水そのものの濃度は約55 mol/L)。水が減って濃くなる効果より $\ce{OH-}$ が減る効果のほうが大きいので、 $\ce{OH-}$ の濃度は下がり、電解液の pH は減少する。
答(負極の重量) 減少(2点)
答(電解液の pH) 減少(2点)
問5
16分5秒は $16\times60+5=965$ 秒。流れた電子の物質量は
$$\dfrac{20\times10^{-3}\times965}{9.65\times10^4}=2.0\times10^{-4}\ \mathrm{mol}\quad\text{(流れた電子の物質量)}$$
正極の反応は $\ce{MnO2 + H2O + e- -> MnO(OH) + OH-}$ 。 $\ce{MnO(OH)}$ は水に溶けず、正極から剥がれ落ちないので、電子1 mol が流れるたびに式量86.9の $\ce{MnO2}$ 1 mol が式量87.9の $\ce{MnO(OH)}$ 1 mol に変わり、水素原子1 mol 分の1.00 g だけ重くなる(下の図)。
$$2.0\times10^{-4}\times1.00=2.0\times10^{-4}\ \mathrm{g}\quad\text{(正極の重量の増加)}$$
答(正極の重量) 増加(1点)
答(変化量) $2.0\times10^{-4}$ g(2点)
問6
1時間は3600秒。流れる電子の物質量は
$$\dfrac{268\times10^{-3}\times3600}{9.65\times10^4}=9.998\times10^{-3}\ \mathrm{mol}\quad\text{(流れる電子の物質量)}$$
正極の式より、電子1 mol で $\ce{MnO2}$ が1 mol 反応する。負極の式より、電子2 mol で $\ce{Zn}$ が1 mol 反応するので、亜鉛は電子の半分の物質量でよい(下の図)。
正極の $\ce{MnO2}$ (式量86.9)は電子と同じ物質量が必要なので
$$9.998\times10^{-3}\times86.9=0.8688\ \mathrm{g}\quad\text{(正極に必要な重量)}$$
負極の $\ce{Zn}$ (原子量65.4)は電子の半分の物質量なので
$$9.998\times10^{-3}\times\dfrac12\times65.4=0.3269\ \mathrm{g}\quad\text{(負極に必要な重量)}$$
合計は
$$0.8688+0.3269=1.1957\fallingdotseq1.2\ \mathrm{g}$$
正極の反応では電解液の水も使われるが、問いは正極と負極の合計の重量だけを聞いている。
答 1.2 g(5点)
別解
問6 (電子1 mol あたりの重量を先に求める)電子1 mol を流すのに必要なのは、 $\ce{MnO2}$ 1 mol の86.9 g と $\ce{Zn}$ $\dfrac12$ mol の32.7 g で、合わせて119.6 g。流れる電子は $9.998\times10^{-3}$ mol なので、 $9.998\times10^{-3}\times119.6=1.196\fallingdotseq1.2$ g で本解と同じ。
出題意図
問1 初めて見る電池の半反応式を、酸化数の変化と塩基性の電解液に合わせて完成させることができるか
問2・問3 両性元素の亜鉛が強塩基の中で錯イオンになって溶けることと、それが電池の工夫にどう関わるかを理解できているか
問4 正極と負極の式を足した全体の式から、負極の重量と電解液の pH の変化を読み取れるか
問5・問6 流れた電子の物質量から、正極の重量の変化と、両極に必要な活物質の量を求めることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 25点 | 20点 |
| 目標時間 | 15分 | 15分 |
初めて見る形の電池だが、中身は標準の大問。
電池は、正極と負極の反応式を書き、足して全体の式にし、まず電子の物質量を求める、という決まった流れで解けば、pH も電極の重量も必要な活物質の量も読める。
重要問題集の電池の問題を、反応式から白紙に再現できるまで練習しておくこと。
亜鉛が強塩基で錯イオンになる知識は、両性元素4つの系列で押さえておけば計算せずに書ける。
差がつく所・失点しやすい所
- 問4:正極で $\ce{OH-}$ ができるのを見て pH を「増加」とせず、正極と負極を足した全体の式1本で $\ce{OH-}$ の増減を読めるか。負極の式を錯イオンの形で書けないと全体の式が立たず、負極の重量と pH をまとめて4点を落とす。
- 問6:正極の $\ce{MnO2}$ と負極の $\ce{Zn}$ の両方を、流れる電子の物質量から求められるか。亜鉛を電子と同じ物質量にすると1.5 g、片方の極だけだと0.87 g・0.33 g になり、5点を落とす。
2020年九州大学化学
第3問 解答・解説
第3問は無機化学・理論化学の問題です。
テーマは『ハロゲンの性質』『分子結晶の密度』。
問題


問題文をテキストで読む
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素に関する以下の問1〜問5に答えよ。
問1. 以下の文章を読み、問いに答えよ。
ハロゲンは $\boxed{\text{ア}}$ 族の原子であり、 $\boxed{\text{イ}}$ 個の価電子をもつことから $\boxed{\text{ウ}}$ 価の陰イオンになりやすい。また、ハロゲンの単体の酸化力は $\boxed{\text{エ}}$ が最も弱く、 $\boxed{\text{オ}}$ が最も強い。
ハロゲン単体を水素と反応させて得られるハロゲンの化合物は、水によく溶け、それら水溶液の酸の強さは $\boxed{\text{カ}}$ が最も弱く、 $\boxed{\text{キ}}$ が最も強い。また、ハロゲン単体を水素と反応させて得られるハロゲンの化合物の中で沸点が最も高いものは $\boxed{\text{ク}}$ 、沸点が最も低いものは $\boxed{\text{ケ}}$ である。これは、 $\boxed{\text{ク}}$ には $\boxed{\text{コ}}$ 結合が働いているためである。
(i) $\boxed{\text{ア}}$ $\boxed{\text{イ}}$ $\boxed{\text{ウ}}$ に適切な数字を記入せよ。
(ii) $\boxed{\text{エ}}$ 〜 $\boxed{\text{ケ}}$ に適切な物質の分子式を記入せよ。
(iii) $\boxed{\text{コ}}$ に適切な語句を以下の(A)〜(D)の中から選び記号で答えよ。
(A) 共有 (B) イオン (C) 金属 (D) 水素
問2. 以下の文章中の $\boxed{\text{サ}}$ 〜 $\boxed{\text{セ}}$ に当てはまるハロゲン化物の分子式を記入し、融点が変化する理由を以下の(A)〜(D)の中から選び記号で答えよ。
ハロゲン単体をナトリウムと反応させて得られるハロゲン化物の融点は $\boxed{\text{サ}}$ が最も低く、 $\boxed{\text{シ}}$ 、 $\boxed{\text{ス}}$ 、 $\boxed{\text{セ}}$ の順に高くなる。
(A) 陰イオンのイオン半径が大きくなるほど、結晶の密度が小さくなり融点が変化する。
(B) 陰イオンのイオン半径が大きくなるほど、陽イオンと陰イオンとの間にはたらく静電的な引力が減少し融点が変化する。
(C) 陰イオンのイオン半径が大きくなるほど、配位数が増え融点が変化する。
(D) 陰イオンのイオン半径が大きくなるほど、充填率が小さくなり融点が変化する。
問3. ヨウ素単体は室温で分子結晶である。以下の物質の中から、分子結晶となりうる物質をすべて選び、それらの分子式を記入せよ。
ドライアイス 硫化亜鉛 炭酸カルシウム ナフタレン 氷 二酸化ケイ素 斜方硫黄
問4. 常温常圧下におけるヨウ素結晶の単位格子が下図で与えられると仮定し、ヨウ素結晶の密度を有効数字2桁で求めよ。ヨウ素分子は、直方体の頂点と面の中央に位置している。
問5. 問4で示したヨウ素結晶に64 GPa の高圧をかけると原子間結合が切断され、ヨウ素原子は面心立方格子の結晶構造をとる。このときの単位格子の一辺の長さを0.42 nm と仮定して、最近接のヨウ素原子間の距離を有効数字2桁で求めよ。また、問4で示した常温常圧下のヨウ素結晶と比較して、64 GPa の高圧下ではヨウ素結晶の密度が何倍に増加したか、有効数字2桁で求めよ。
解答の方針
【問1の方針】
ハロゲンの性質は、単体の酸化力、水素化合物の酸の強さ、水素化合物の沸点の3つの並びで押さえる(下の図)。どれも周期表の上下で順に変わるが、HF だけが水素結合のせいで例外になる。


- 周期表の位置から族・価電子の数を決め、何価の陰イオンになるかを決める。
- 単体の酸化力の並びから、最も弱いものと最も強いものを選ぶ。
- ハロゲン化水素の水溶液の酸の強さの並びから、最も弱いものと最も強いものを選ぶ。
- ハロゲン化水素の沸点の並びから、最も高いものと最も低いものを選び、最も高い理由になる結合を選ぶ。
【問2の方針】
4つとも価数が同じ1価のイオン結晶なので、イオンの大きさで比べる。陰イオンが大きいほど陽イオンとの距離が長く、引き合う力が弱い(下の図)。


- 4つとも価数が同じイオン結晶であることを確かめる。
- 陰イオンの大きさの順を周期表から決め、融点の低い順に並べる。
- 選択肢 (A)〜(D) を、融点がイオン間の引力で決まるかどうかで判定する。
【問3の方針】
結晶の種類は構成する元素で決まる。非金属元素どうしは分子結晶、金属元素を含めばイオン結晶。共有結合の結晶は代表の4つだけ(下の図)。


- 7つの物質の化学式を書き、金属元素を含むかどうかを見る。
- 金属元素を含むものをイオン結晶として除く。
- 非金属元素どうしのうち、共有結合の結晶の代表に当たるものを除く。
- 残った物質を分子結晶として、分子式で書く。
【問4の方針】
頂点と面の中心にあるのは原子ではなく $\ce{I2}$ 分子なので、分子を1つの粒として数える。あとは密度の定義どおり、1個あたりの質量×個数を単位格子の体積で割るだけ(下の図)。


- 単位格子の中の $\ce{I2}$ 分子の数を、頂点と面の中心で数え、ヨウ素原子の数に直す。
- ヨウ素原子1個の質量を、原子量とアボガドロ定数で表す。
- 単位格子の体積を nm³ から cm³ に直す。
- 密度の定義に入れて計算する。
【問5の方針】
面心立方格子は、手前の面で切ると原子どうしが接している面が出てくる(下の図)。この断面図の対角線から1辺と半径の関係が決まり、最近接の原子間の距離は半径2つ分。密度は問4 と同じ定義で求めて比べる。


- 面心立方格子を手前の面で切った断面図で、対角線の長さを半径で表し、1辺と半径の関係を求める。
- 最近接の原子間の距離 $2r$ を、1辺 $a$ で表して計算する。
- 単位格子の中のヨウ素原子の数を数え、高圧下の密度を求める。
- 問4 の密度で割って、何倍になったかを求める。
解答




解答をテキストで読む
問1
(i) ハロゲンは周期表の17族の元素で、価電子を7個もつ。電子を1個受け取ると希ガス(18族)と同じ電子配置になるので、1価の陰イオン( $\ce{F-}$ ・ $\ce{Cl-}$ ・ $\ce{Br-}$ ・ $\ce{I-}$ )になりやすい。
答(ア) 17(1点)
答(イ) 7(1点)
答(ウ) 1(1点)
(ii) ハロゲンの単体は電子を受け取る酸化剤として働く( $\ce{X2 + 2e- -> 2X-}$ )。周期表の上の元素ほど原子が小さく、電気陰性度が大きいので、電子を受け取る力が強い。よって酸化力は
$$\ce{F2}>\ce{Cl2}>\ce{Br2}>\ce{I2}$$
で、最も弱いのは $\ce{I2}$ 、最も強いのは $\ce{F2}$ 。酸化力が強い方だけが酸化剤になれるので、臭化カリウム水溶液に塩素を通じると $\ce{Cl2 + 2KBr -> 2KCl + Br2}$ が起こるが、逆の反応は起こらない。
ハロゲン単体を水素と反応させて得られる化合物は、ハロゲン化水素 HF・HCl・HBr・HI。水溶液の酸の強さは
$$\ce{HF}<\ce{HCl}<\ce{HBr}<\ce{HI}$$
HCl・HBr・HI は強酸で、ハロゲンの原子が大きいほど H との結合が弱く、水素イオンに電離しやすいので HI が最も強い。HF だけは弱酸で、入試では「HF 分子どうしが水素結合で会合しているため、水素イオンが電離しにくい」と答える。
沸点は下のグラフの形で押さえる。HF は20 ℃で突出して高く、HCl で−85 ℃と一気に下がって最も低くなり、そこから HBr・HI と分子量とともに上がっていく。HF が突出しているのは分子間に水素結合がはたらくから、HCl<HBr<HI はファンデルワールス力が分子量とともに大きくなるから、と理由を2つに分けておく。
同じ形の突出は、16族の $\ce{H2O}$ と15族の $\ce{NH3}$ にもある。水素結合をつくるのは、F・O・N と結合した H だけである。
なお、単体の沸点・融点は分子量の大きい $\ce{I2}$ ほど高く( $\ce{F2}$ ・ $\ce{Cl2}$ は気体、 $\ce{Br2}$ は液体、 $\ce{I2}$ は固体)、酸化力とは逆向きに並ぶ。「分子量」と「電気陰性度」の2つの軸を混ぜない。
答(エ) $\ce{I2}$(1点)
答(オ) $\ce{F2}$(1点)
答(カ) $\ce{HF}$(1点)
答(キ) $\ce{HI}$(1点)
答(ク) $\ce{HF}$(1点)
答(ケ) $\ce{HCl}$(1点)
(iii) HF の沸点が最も高いのは、分子間に水素結合がはたらくから。
答(コ) (D) 水素(1点)
問2
ハロゲン単体をナトリウムと反応させると、 $\ce{NaF}$ ・ $\ce{NaCl}$ ・ $\ce{NaBr}$ ・ $\ce{NaI}$ ができる。どれもイオン結晶で、イオン結晶の融点は、まず価数、価数が同じなら次にイオンの大きさで比べる。4つとも $\ce{Na+}$ と1価の陰イオンなので、価数では決まらない。陰イオンは周期表の下ほど大きく( $\ce{F-}<\ce{Cl-}<\ce{Br-}<\ce{I-}$ )、陽イオンと陰イオンの中心の距離が長くなるので、静電的な引力(クーロン力)が弱くなり、融点が低くなる(下の図)。
選択肢を判定する。
・(A) 誤り。融点を決めるのはイオンの間にはたらく引力の強さで、結晶の密度ではない
・(B) 正しい。陰イオンが大きいほどイオン間の距離が長く、静電的な引力が弱くなって融点が下がる
・(C) 誤り。4つとも $\ce{NaCl}$ 型の結晶で、配位数はどれも6のまま変わらない
・(D) 誤り。融点を決めるのは引力の強さで、充填率ではない
価数がちがうときは価数の影響の方が大きく、2価どうしの $\ce{MgO}$ ・ $\ce{CaO}$ は $\ce{NaCl}$ よりはるかに融点が高い。
答(サ) $\ce{NaI}$(1点)
答(シ) $\ce{NaBr}$(1点)
答(ス) $\ce{NaCl}$(1点)
答(セ) $\ce{NaF}$(1点)
答(理由) (B)(1点)
問3
結晶の種類は、構成する元素で決まる(下の図)。
・ドライアイス $\ce{CO2}$ :C と O の非金属元素どうしなので分子結晶
・硫化亜鉛 $\ce{ZnS}$ :金属元素の亜鉛を含むのでイオン結晶
・炭酸カルシウム $\ce{CaCO3}$ : $\ce{Ca^2+}$ と $\ce{CO3^2-}$ からなるイオン結晶
・ナフタレン $\ce{C10H8}$ :C と H の非金属元素どうしなので分子結晶
・氷 $\ce{H2O}$ :H と O の非金属元素どうしなので分子結晶(分子どうしは水素結合でつながっている)
・二酸化ケイ素 $\ce{SiO2}$ :非金属元素どうしだが、共有結合の結晶の代表の4つ(ダイヤモンド・ケイ素・二酸化ケイ素・炭化ケイ素)の1つなので共有結合の結晶
・斜方硫黄 $\ce{S8}$ :S 原子8個が環になった $\ce{S8}$ 分子が集まった分子結晶
分子結晶は分子間力が弱いので融点が低く、ヨウ素・ドライアイス・ナフタレンは常温で昇華する。問われているのは分子式なので、斜方硫黄は S ではなく $\ce{S8}$ と書く。
答 $\ce{CO2}$ ・ $\ce{C10H8}$ ・ $\ce{H2O}$ ・ $\ce{S8}$(3点)
問4
この問題は、分子結晶の密度を求める問題。単位格子の頂点と面の中心にあるのはヨウ素原子ではなく $\ce{I2}$ 分子なので、分子を1つの粒として数える(下の図)。
$$\dfrac18\times8+\dfrac12\times6=4\quad\text{(単位格子の中のヨウ素分子の数)}$$
$\ce{I2}$ 分子1個はヨウ素原子2個なので、ヨウ素原子は $4\times2=8$ 個。ヨウ素原子1個の質量は、原子量をアボガドロ定数で割って
$$\dfrac{127}{6.0\times10^{23}}\ \mathrm{g}\quad\text{(ヨウ素原子1個の質量)}$$
体積は $1\ \mathrm{nm}=10^{-7}\ \mathrm{cm}$ より $1\ \mathrm{nm^3}=10^{-21}\ \mathrm{cm^3}$ なので
$$0.74\times0.50\times1.0=0.370\ \mathrm{nm^3}=3.70\times10^{-22}\ \mathrm{cm^3}$$
密度は「1個あたりの質量×個数」を単位格子の体積で割る。
$$\dfrac{\dfrac{127}{6.0\times10^{23}}\times8}{3.70\times10^{-22}}=\dfrac{1016}{222}\fallingdotseq4.58\ \mathrm{g/cm^3}$$
密度はたいてい1桁の値になるので、桁が大きくずれたら単位の直し方を見直す。
答 4.6 g/cm³(3点)
問5
原子間の結合が切れたので、今度は頂点と面の中心にヨウ素原子が1個ずつある面心立方格子。手前の面で切ると、正方形の対角線の上で、隅の原子と面の中心の原子が接している(下の図)。
対角線の長さは半径4つ分なので、1辺を $a$ 、原子の半径を $r$ とすると
$$\sqrt2a=4r$$
最近接の原子間の距離は、隅の原子と面の中心の原子の中心どうしの距離で、 $2r$ にあたる。表紙の $\sqrt2=1.4$ を使って
$$2r=\dfrac{\sqrt2}{2}a=\dfrac{1.4\times0.42}{2}=0.294\ \mathrm{nm}$$
次に密度。単位格子の中のヨウ素原子は
$$\dfrac18\times8+\dfrac12\times6=4\quad\text{(単位格子の中のヨウ素原子の数)}$$
体積は $(0.42\times10^{-7})^3\fallingdotseq7.41\times10^{-23}\ \mathrm{cm^3}$ なので、密度は
$$\dfrac{\dfrac{127}{6.0\times10^{23}}\times4}{7.41\times10^{-23}}\fallingdotseq11.4\ \mathrm{g/cm^3}$$
問4 の常温常圧の密度4.58 g/cm³ と比べると
$$\dfrac{11.4}{4.58}\fallingdotseq2.49$$
で、2.5倍。ヨウ素原子どうしが共有結合でつながった分子が、分子間力で集まっていた結晶から、原子が密に詰まった面心立方格子に変わったので、密度が大きく増えた。
答(最近接の原子間の距離) 0.29 nm(2点)
答(密度) 2.5倍(2点)
別解
問4 (分子のまとまりで数える)$\ce{I2}$ の分子量 $127\times2=254$ を使い、分子1個の質量×分子4個として
$$\dfrac{\dfrac{254}{6.0\times10^{23}}\times4}{3.70\times10^{-22}}\fallingdotseq4.58\ \mathrm{g/cm^3}$$
本解と同じ4.6 g/cm³。
問5 (原子の数の密度で比べる)2つの結晶はどちらもヨウ素原子だけでできているので、原子1個の質量は共通。密度の比は「体積あたりのヨウ素原子の数」の比になる。常温常圧は0.370 nm³ に8個、高圧下は $0.42^3\fallingdotseq0.0741$ nm³ に4個なので
$$\dfrac{\dfrac{4}{0.0741}}{\dfrac{8}{0.370}}=\dfrac{0.370}{2\times0.0741}\fallingdotseq2.50$$
で2.5倍。アボガドロ定数も原子量も使わずに済む。
出題意図
問1 ハロゲンの単体の酸化力と、ハロゲン化水素の酸の強さ・沸点を系列で押さえ、HF だけが例外になる理由まで整理できているか
問2 価数が同じイオン結晶の融点が、陰イオンの大きさ(イオン間の距離)で決まることを説明できるか
問3 構成する元素から結晶の種類を見分け、分子結晶になる物質を分子式で書けるか
問4 単位格子の頂点と面の中心にあるのがヨウ素分子であると読み取り、密度の定義から密度を求められるか
問5 面心立方格子の切り口から最近接の原子間の距離を求め、2つの結晶の密度を比べられるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 25点 | 25点 |
| 目標時間 | 10分 | 10分 |
ハロゲンの知識と結晶格子の典型計算だけでできた大問で、どの学部も満点を取りたい。
ハロゲンは「酸化力」「酸の強さ」「沸点」を系列で覚え、HF だけが水素結合で例外になると押さえておけば、問1 は迷わない。
結晶格子は、重要問題集の結晶格子を白紙に再現できるまで仕上げておけば、分子を1つの粒として数えることも面心立方格子の切り口もすぐに出てくる。
知識で埋められる所は計算せずに書き、浮いた時間を重い大問に回すこと。
差がつく所・失点しやすい所
- 問1:差がつくとしたら、ハロゲン化水素の酸の強さと沸点で、HF だけが例外(弱酸・沸点が最も高い)になり、沸点が最も低いのは HCl だと系列で押さえているか。分子量の順だけで考えると、カ・キ・ク・ケ をまとめて落とす。
2020年九州大学化学
第4問 解答・解説
第4問は有機化学の問題です。
テーマは『構造決定』『立体異性体とエステル交換』。
問題


問題文をテキストで読む
次の(1)から(9)の文章を読み、問1〜問5に答えよ。構造式を答える際には記入例にならって答えよ。
構造式の記入例
(1) 炭素と水素だけからなる化合物 A を20.5 mg 量りとり、完全に燃焼させたところ、二酸化炭素66.0 mg と水22.5 mg が生じた。また、化合物 A の分子量は150以下である。
(2) 化合物 A に対して白金を触媒として水素を反応させると、化合物 A と等モル量の水素と反応し、飽和炭化水素化合物 B が得られた。
(3) 化合物 A を酸性の過マンガン酸カリウム溶液と反応させると、炭素骨格が直鎖状の化合物 C が得られた。
(4) 化合物 C の0.05 mol/L 水溶液を20 mL 量りとり、0.10 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液で滴定したところ、20 mL を加えたときに中和点に達し、溶液はアルカリ性を示した。
(5) 化合物 C をアンモニア性硝酸銀水溶液とともに加熱したが、銀鏡反応を示さなかった。
(6) 化合物 A を塩基性条件下で過マンガン酸カリウムと反応させると化合物 D が得られた。化合物 D は1,2-ジオール(隣り合う二つの炭素上にヒドロキシ基を有する化合物)で、化合物 A よりも分子量が34大きかった。また、上記と異なる方法によって、1,2-ジオール化合物の立体異性体を作ることができる。そこで、化合物 A をいくつかの方法で反応させ、1,2-ジオール化合物 D のすべての立体異性体を合成した。
(7) 単体のナトリウムとは反応しない適切な溶媒で化合物 D を溶解させたのち、単体のナトリウムを加えて反応させると水素が発生した。
(8) 化合物 D のすべての立体異性体は、塩基の存在下に無水酢酸と反応させると、モノエステル化合物 E を経由して、ジエステル化合物 F に変換された。
(9) 化合物 F に過剰量の $\ce{CH3^{18}OH}$(メタノールの酸素を同位体 $\ce{^{18}O}$ で置き換えた化合物)を加えて溶解させ、酸触媒存在下に加熱還流したところ、低沸点の化合物 G が生じた。
問1. 化合物 A の分子式および構造式を答えよ。
問2. 化合物 C の構造式を答えよ。
問3. 0.10 mol の化合物 D を過剰量の単体のナトリウムと反応させたときに発生する水素の体積(0 ℃、 $1.01\times10^5$ Pa)を有効数字2桁で答えよ。
問4. 化合物 D と E の考えられる立体異性体の数をそれぞれ答えよ。
問5. 化合物 G の構造式を答えよ。なお、化合物 G に同位体 $\ce{^{18}O}$ が含まれる場合は $\ce{^{18}O}$ と明記せよ。
解答の方針
【問1の方針】
水素が1分子しか付かないのに不飽和度が2なら、残りの1つは環。酸化で炭素骨格が直鎖になるのは、環の中の二重結合が切れて環が開いたとき(下の図)。


- 二酸化炭素と水の質量から C と H の質量を求め、物質量の比から組成式を求める。
- H の数が偶数で、分子量150以下になる分子式を選ぶ。
- 不飽和度と (2) の水素の付加の数から、二重結合1つと環1つと決める。
- (4) の中和で C を2価の酸と決め、(5) でホルミル基がないことを確かめる。
- 環の二重結合が切れて、直鎖の2価のカルボン酸になる形として A を決め、構造式を書く。
【問2の方針】
A の二重結合の2つの炭素が、酸化でどちらもカルボキシ基になる(問1 の図)。
- A の二重結合を切り、両側の炭素をカルボキシ基にして構造式を書く。
【問3の方針】
D は A の二重結合の2つの炭素に OH が1つずつ付いた1,2-ジオール。ナトリウムと反応するのは OH の H で、OH 2つから水素が1分子できる(下の図)。


- D の構造を決め、ナトリウムとの反応式を書く。
- 反応式の係数から、水素の物質量を求める。
- 1 molあたりの体積をかけて、水素の体積を求める。
【問4の方針】
D の2つの不斉炭素には同じ組の基が付くので、2つの OH が環の同じ側にあるシス形は対称面をもつメソ体になる。OH の片方だけをエステルにした E では左右が違うので、対称面はなくなる(下の図)。


- D の不斉炭素の数を数える。
- D をシス形(対称面があるメソ体)とトランス形(鏡像異性体の組)に分けて数える。
- E は左右の置換基が違うので、シス形・トランス形のそれぞれが鏡像異性体の組になるとして数える。
【問5の方針】
エステル交換はエステル化と同じく、アセチル基 $\ce{CH3CO}$ とアルコール側の O の間で切れ、新しいアルコールの O にアセチル基が付く(下の図)。


- F の2つのエステル結合で、アセチル基と環の側の O の間が切れるとする。
- 切れたアセチル基をメタノールの $\ce{^{18}O}$ に付けて、G を酢酸メチルと決める。
- $\ce{^{18}O}$ を単結合の O の位置に明記して、構造式を書く。
解答




解答をテキストで読む
問1
燃焼で生じた二酸化炭素の C と水の H は、すべて A から来る。
・C の質量: $66.0\times\dfrac{12.0}{44.0}=18.0$ mg
・H の質量: $22.5\times\dfrac{2.00}{18.0}=2.50$ mg
合計は $18.0+2.50=20.5$ mg で、A の質量と一致する(A は C と H だけでできている)。物質量の比は
$$\mathrm{C}:\mathrm{H}=\dfrac{18.0}{12.0}:\dfrac{2.50}{1.00}=1.50:2.50=3:5$$
組成式は $\ce{C3H5}$(式量41.0)で、分子式は $(\ce{C3H5})_n$。炭化水素の H の数は偶数なので $n$ は偶数で、分子量150以下から $41.0n\leqq150$。よって $n=2$ で、分子式は $\ce{C6H10}$(分子量82.0)。
答(分子式) $\ce{C6H10}$(3点)
$\ce{C6H10}$ の不飽和度は $\dfrac{2\times6+2-10}{2}=2$。(2) で水素は A と等しい物質量しか付かないので、二重結合は1つ。残りの不飽和度1は環で、B は環をもつ飽和炭化水素 $\ce{C6H12}$。
(4) の中和では、酸の出す $\ce{H+}$ と塩基の出す $\ce{OH-}$ の物質量が等しい。
・C: $0.05\times\dfrac{20}{1000}=1.0\times10^{-3}$ mol
・NaOH: $0.10\times\dfrac{20}{1000}=2.0\times10^{-3}$ mol
C 1 mol から $\ce{H+}$ が2 mol 出るので、C は2価の酸。中和点で塩基性を示すので弱酸(カルボン酸)。(5) で銀鏡反応を示さないので、ホルミル基をもたない。
C は炭素骨格が直鎖の2価のカルボン酸。環の中の二重結合が酸化で切れると、環が開いて1本の鎖になり、二重結合の両側の炭素がカルボキシ基になる。
・鎖が枝分かれしないためには、環に枝(メチル基など)がない炭素6個の環でなければならない
・カルボキシ基が2つできるためには、二重結合のどちらの炭素にも H が付いていなければならない。たとえば1-メチルシクロペンテンでは、メチル基の付いた炭素がケトンになり、カルボキシ基は1つ(1価の酸)で (4) と合わない
よって A は、環の炭素6個のうち2個が二重結合でつながったシクロヘキセン(下の図)。
答(構造式) シクロヘキセン(構造式は上の図の左)(4点)
問2
シクロヘキセン A の二重結合が切れて、両側の $\ce{CH}$ がどちらもカルボキシ基になる。炭素6個の直鎖の両端にカルボキシ基をもつアジピン酸( $\ce{C6H10O4}$ )で、C 1 mol にカルボキシ基が2 mol あるので (4) とも合う(下の図)。
答 $\ce{HOOC-CH2-CH2-CH2-CH2-COOH}$(アジピン酸。構造式は上の図)(4点)
問3
(6) の塩基性の過マンガン酸カリウムでは、二重結合は切れずに、2つの炭素に OH が1つずつ付く。D の分子量は A の82.0より34大きい116.0で、OH 2つ分( $\ce{C6H12O2}$ )と合う。D はシクロヘキサン-1,2-ジオール(下の図)。
ナトリウムは OH の H と置きかわり、その H が2つで水素1分子になる。
$$\ce{C6H10(OH)2 + 2Na -> C6H10(ONa)2 + H2}$$
D 1 mol から水素1 mol ができるので、水素は D と同じ0.10 mol。0 ℃、 $1.01\times10^5$ Pa での1 molあたりの体積22.4 L をかけて、
$$0.10\times22.4=2.24\ \mathrm{L}$$
答 2.2 L(4点)
問4
D の2つの炭素(OH の付いた炭素)には、どちらにも H・OH・隣の $\ce{CH(OH)}$ ・環の $\ce{CH2}$ の4つの違う基が付くので、不斉炭素が2つある。ただし2つの不斉炭素に付く基の組が同じなので、鏡像と重なるものがある(下の図)。
・シス形(2つの OH が環の同じ側):分子の中に対称面があり、鏡像と重なるメソ体。1種類
・トランス形(2つの OH が環の反対側):対称面がなく、鏡像と重ならない。鏡像異性体が2種類
D は $1+2=3$ 種類。塩基性の過マンガン酸カリウムでできるのはシス形(メソ体)で、トランス形の2種類は (6) の「異なる方法」で作る。
答(D) 3(2点)
E は、D の2つの OH のうち1つだけがアセチル化された $\ce{-OCOCH3}$ のモノエステル。2つの不斉炭素に付く基が OH と $\ce{-OCOCH3}$ で違うので、シス形でも対称面がなくなり、鏡像異性体が2種類できる。メソ体の D のどちらの OH をアセチル化するかで、この2種類が両方できる。トランス形も鏡像異性体が2種類(下の図)。
E は $2+2=4$ 種類。なお F は2つとも $\ce{-OCOCH3}$ で左右が同じになるので、D と同じ3種類。
答(E) 4(3点)
問5
酸触媒のもとで F にメタノールを加えて加熱すると、エステル交換が起こる。エステル化(カルボン酸の OH とアルコールの H が取れる)と同じく、エステルはアセチル基 $\ce{CH3CO}$ とアルコール側の O の間で切れる。切れたアセチル基は、メタノールの $\ce{^{18}O}$ と結びつく(下の図。R はシクロヘキサン環の部分)。
F の2つのエステル結合でこれが起こり、酢酸メチルとジオール D ができる。メタノールを過剰に加えるのは、平衡を酢酸メチルの側へ移すため。G は、水素結合をつくる OH をもたない小さなエステルで沸点が低い(約57 ℃)。
$\ce{^{18}O}$ はメタノールの O なので、カルボニル炭素とメチル基の間の O(単結合の O)に入る。 $\ce{C=O}$ の O は F のときのまま。
答 $\ce{CH3-CO-^{18}O-CH3}$(酢酸メチル。構造式は上の図)(5点)
出題意図
問1・問2 元素分析で分子式を求め、水素の付加と酸化の結果から、環をもつアルケンと、環が開いてできる2価のカルボン酸を決められるか
問3 1,2-ジオールの OH の数から、発生する水素の物質量を求められるか
問4 同じ置換基をもつ1,2-ジオールのシス形がメソ体になることを捉え、立体異性体を漏れなく数えられるか
問5 エステル交換でどの結合が切れるかを捉え、 $\ce{^{18}O}$ の行き先を決められるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 20点 | 15点 |
| 目標時間 | 15分 | 15分 |
2020年の化学の合否を分けた大問。
A を決めるまでは元素分析と酸化開裂の典型問題で、シクロヘキセンは2022年・2024年の九大でも出ている題材だ。
差がつくのは後半の立体異性体と $\ce{^{18}O}$ で、「同じ置換基のシス形はメソ体」「エステルはアセチル基と O の間で切れる」の2点を言い切れるかで決まる。
前半は5分で終わらせ、残りの時間を立体の図と反応のしくみに回そう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問4:同じ置換基をもつ1,2-ジオールのシス形は対称面をもつメソ体、という発想に行き着けるか。不斉炭素が2つだから4種類と機械的に数えてしまう受験生が多く、さらに E では対称面がなくなって4種類になる、という逆の動きまで追えるかで大きく差がつく(5点)。
- 問5:エステル交換で切れるのはアセチル基と O の間で、 $\ce{^{18}O}$ はメタノールの側に残る、という発想に行き着けるか。反応のしくみ(どの結合が切れるか)を問う出題に慣れていない受験生が多い。
2020年九州大学化学
第5問 解答・解説
第5問は高分子化合物(アミノ酸・タンパク質)の問題です。
テーマは『テトラペプチドの組成』『L型とD型』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問6に答えよ。ただし、問2、問3、問6についてはL型とD型の区別をつける必要はなく、構造式を答える際には記入例にならって答えよ。
構造式の記入例
化合物 A は $\ce{C18H34N4O5}$ の分子式をもつペプチドであり、3個のペプチド結合、1個のアミノ基、1個のカルボキシ基を有する。化合物 A を完全に加水分解したところ、化合物 B とバリンが生成した。これら生成物の構造を調べたところ、化合物 B はL型の $\alpha$-アミノ酸であり、バリンはL型とD型の混合物であることが判明した。またバリンには、D型に比べ2倍量のL型が含まれていた。
問1. 図1にD型のバリンの構造を立体的に示した。ただし、図では不斉炭素の周りのみ立体構造を太線と破線で表した。なお、太線で示す結合は紙面の手前側にあり、破線で示す結合は紙面の向こう側にあることを意味する。D型のバリンの鏡像異性体であるL型のバリンを(A)〜(E)の中からすべて選び、記号で答えよ。
問2. 下に示した $\alpha$-アミノ酸の例のうち、化合物 B に該当するアミノ酸の名称および構造式を答えよ。
セリン アスパラギン酸 グリシン アラニン フェニルアラニン システイン リシン メチオニン チロシン グルタミン酸
問3. 化合物 B と同じ分子式を有するが、不斉炭素をもたないアミノ酸の構造式を一つ答えよ。
問4. 772 mg の化合物 A を完全に加水分解すると、L型のバリンは理論上何 mg 生成するか、有効数字3桁で答えよ。ただし、この加水分解反応では副反応は起こらないものとする。
問5. 化合物 A のアミノ酸配列は、何種類考えられるか答えよ。ただし、L型とD型は区別するものとする。
問6. 問2に示した $\alpha$-アミノ酸の例のうち、不斉炭素をもたない $\alpha$-アミノ酸の名称と構造式を答えよ。
解答の方針
【問1の方針】
不斉炭素に付いた4つの基のうち2つを入れかえると鏡像になり、もう1組入れかえるともとに戻る。図1と同じ位置にある基を比べ、入れかえが1組ならL型だと分かる(下の図)。


- (A)〜(E) の側鎖を見て、バリンの側鎖 $-\ce{CH(CH3)2}$ でない (B)・(E) を外す。
- 残りの (A)・(C)・(D) について、上・左下・奥(破線)・手前(太線)の4つの位置の基を図1と比べ、入れかわった組の数を数える。
- 1組ならL型、2組ならD型のまま。L型の (C)・(D) を選ぶ。
【問2の方針】
A はペプチド結合が3つなので、アミノ酸4分子からなる。L型:D型=2:1 になるのはバリン3分子のときだけ。A に水を足してバリン3分子を引けば B が残る(下の図)。


- A はアミノ酸4分子。バリンの数は3の倍数なので3分子(L型2・D型1)、B は1分子。
- 加水分解では水3分子が加わるので、 $\ce{C18H34N4O5}$ に $\ce{H2O}$ 3分子を足し、バリン $\ce{C5H11NO2}$ 3分子を引いて、B の分子式 $\ce{C3H7NO2}$ を求める。
- 例の中から、分子式が $\ce{C3H7NO2}$(側鎖が $-\ce{CH3}$ )の $\alpha$-アミノ酸を選ぶ。
【問3の方針】
アラニンの不斉炭素は $\alpha$炭素。アミノ基を隣の $\beta$位の炭素に移せば、どちらの炭素も $\ce{CH2}$ になって不斉炭素がなくなる。
- 分子式 $\ce{C3H7NO2}$ のまま、アミノ基を $\alpha$位から $\beta$位の炭素に移した構造式を書く。
【問4の方針】
「D型に比べ2倍量のL型」は、A 1分子の中に L型のバリンが2個、D型のバリンが1個あるということ。L型のバリンの物質量は A の2倍。
- A の分子量386から A の物質量を求め、その2倍を L型のバリンの物質量とし、バリンの分子量117をかける。
【問5の方針】
配列は、N末端から並べた4つの席に、アラニンと D型のバリンの席を選べば決まる(下の図)。


- N末端と C末端は区別するので、N末端から C末端へ4つの席を並べる。アラニンの席が4通り、残り3席から D型のバリンの席が3通りで、残りの2席は L型のバリンに決まる。
【問6の方針】
不斉炭素は、4つの違う原子・原子団が結合した炭素原子。 $\alpha$炭素の側鎖が $-\ce{H}$ のアミノ酸だけは H が2つになり、不斉炭素をもたない(下の図)。


- 例の10個のうち、側鎖が $-\ce{H}$ のグリシンを選ぶ。
- 記入例の形で構造式を書く。
解答


解答をテキストで読む
問1
不斉炭素に付いた4つの基のうち2つを入れかえると鏡像になり、2組入れかえるともとの分子に戻る。そこで、図1と同じ位置(上・左下・奥の破線・手前の太線)にある基を比べ、入れかわった組の数を数える。
まず側鎖を確かめる。(B) の側鎖は $-\ce{C(CH3)3}$、(E) の側鎖は $-\ce{C(OH)(CH3)2}$ で、どちらもバリンの側鎖 $-\ce{CH(CH3)2}$ ではない(下の図)。
残りの (A)・(C)・(D) を図1と比べる(下の図)。
・(A):上の側鎖と左下のカルボキシ基、奥の水素原子と手前のアミノ基の2組が入れかわっている。2組の入れかえでもとに戻るので、図1と同じD型
・(C):上の側鎖と奥の水素原子の1組が入れかわっているので、L型
・(D):上の側鎖と手前のアミノ基の1組が入れかわっているので、L型
答 (C)、(D)(5点)
問2
A は3個のペプチド結合をもつので、アミノ酸4分子が縮合したテトラペプチド。アミノ基とカルボキシ基は1個ずつなので、側鎖にはアミノ基もカルボキシ基もない。
加水分解で生じたバリンは、L型が D型の2倍なので、個数は L型2・D型1 のように3の倍数になる。B も含めて4分子なので、バリンは3分子(L型2・D型1)、B は1分子(下の図)。
加水分解では、ペプチド結合1つにつき水1分子が加わる。A に水3分子を足すと $\ce{C18H40N4O8}$ になり、ここからバリン3分子を引いたものが B。
$$\ce{C18H40N4O8}-3\times\ce{C5H11NO2}=\ce{C3H7NO2}$$
分子量で確かめると、A が386、バリンが117なので、 $386+3\times18.0-3\times117=89.0$ が B の分子量。例の中で分子式が $\ce{C3H7NO2}$(側鎖が $-\ce{CH3}$ )なのはアラニンで、不斉炭素をもつので「L型の $\alpha$-アミノ酸」とも合う。
答(名称) アラニン(2点)
答(構造式) $\ce{CH3-CH(NH2)-COOH}$(上の図)(2点)
問3
アラニンは、 $\alpha$位の炭素に $-\ce{H}$・ $-\ce{CH3}$・ $-\ce{NH2}$・ $-\ce{COOH}$ の4つの違う基が付くので不斉炭素。アミノ基を隣の $\beta$位の炭素に移すと、2つの炭素はどちらも H が2つ付いた $\ce{CH2}$ になり、不斉炭素はなくなる。これが $\beta$-アラニンで、分子式はアラニンと同じ $\ce{C3H7NO2}$。
N にメチル基が付いた $\ce{CH3-NH-CH2-COOH}$(N-メチルグリシン)も同じ分子式で不斉炭素をもたないが、アミノ基の位置を変えた $\beta$-アラニンを答えるのが自然。
答 $\ce{H2N-CH2-CH2-COOH}$(上の図)(3点)
問4
A の分子量は
$$12.0\times18+1.00\times34+14.0\times4+16.0\times5=386$$
で、772 mg の A の物質量は
$$\dfrac{772}{386}=2.00\ \mathrm{mmol}$$
A 1分子から L型のバリンは2分子生じるので、L型のバリンは $2\times2.00=4.00$ mmol。バリン $\ce{C5H11NO2}$ の分子量117をかけて
$$4.00\times117=468\ \mathrm{mg}$$
答 468 mg(5点)
問5
L型と D型を区別すると、A をつくる4分子は、L型のアラニン1・L型のバリン2・D型のバリン1。ペプチドは N末端と C末端を区別し、並ぶ順が違えば別の化合物になる。N末端から4つの席に並べると、アラニンの席の選び方が4通り、残りの3席から D型のバリンの席の選び方が3通りで、残りの2席には同じ L型のバリンが入る(下の図)。
$$4\times3=12$$
4個のうち2個が同じものの並べ方 $\dfrac{4!}{2!}=12$ と同じ。
答 12種類(4点)
問6
不斉炭素は、4つの違う原子・原子団が結合した炭素原子。 $\alpha$-アミノ酸の $\alpha$炭素には $-\ce{H}$・ $-\ce{NH2}$・ $-\ce{COOH}$ と側鎖が結合する。例の10個のうち、側鎖が $-\ce{H}$ のグリシンだけは $\alpha$炭素に H が2つ付くので、不斉炭素をもたない。ほかの9個は不斉炭素をもち、L型と D型がある。
答(名称) グリシン(2点)
答(構造式) $\ce{H2N-CH2-COOH}$(上の図)(2点)
出題意図
問1 くさび形の立体の図を図1と比べ、L型のバリンを見分けることができるか
問2・問3 分子式の差し引きからもう1つのアミノ酸を決め、不斉炭素の有無と結びつけることができるか
問4・問5 「D型に比べ2倍量のL型」を A 1分子の中の個数として読み、質量と配列の数を求めることができるか
問6 不斉炭素をもたない $\alpha$-アミノ酸を答えられるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 20点 | 20点 |
| 目標時間 | 12分 | 15分 |
計算は軽く、使う知識は $\alpha$-アミノ酸の一般式・不斉炭素・ペプチド結合の数だけ。
決め手は「L型が D型の2倍」を A 1分子の中の個数として読めるかで、ここが決まれば問2〜問5 は一気に解ける。
立体の図は「2つ入れかえると鏡像」と決めて図1と位置を比べれば、回して考えなくても判定できる。
高分子の大問は、この手順で短時間で取り切ること。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2:「D型に比べ2倍量のL型」から、4分子のうち3分子がバリン(L型2・D型1)だと決める発想に行き着けるか。ここで止まると B の分子式が求まらず、問2〜問5 の16点がまとめて落ちる。
- 問1:くさび形の図を、図1と置換基の位置を比べて入れかえの回数で判定する発想に行き着けるか。頭の中で分子を回して重ねようとすると時間がかかり、(B)・(E) の側鎖の違いも見落としやすい。立体の図に慣れていない受験生が多く、この5点で差がつく。
2020年九州大学・化学の
講評とまとめ
5問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 標準 | 20点 | 20点 |
| 第2問 | 標準 | 25点 | 20点 |
| 第3問 | やや簡単 | 25点 | 25点 |
| 第4問 | 標準 | 20点 | 15点 |
| 第5問 | 標準 | 20点 | 20点 |
| 全体 | 標準 | 105点 | 80点 |
大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で105点、その他の学部で80点)にはなりません。
全体的に難易度は標準的な年。
第3問がやや簡単で、ほかの4題は標準でした。
合否を分けたのは第4問で、シクロヘキセンからアジピン酸までは典型問題ですが、1,2-ジオールのメソ体と ¹⁸O の行き先という「立体」と「反応のしくみ」を言い切れるかで差がつきました。
第1問は前半がルシャトリエの原理と状態遷移図の典型で、最後のアレニウスの式は重要問題集の巻末の問題そのものです。
第3問はハロゲンの知識と結晶格子の典型計算だけで満点が取れます。
第2問は初めて見る電池ですが、全体の式と電子の物質量で解ける標準の大問で、問3 は出題ミスで受験者全員が正解になりました。
1つの大問に15分以上かけないことが大事です。
解く流れ
第1問 → 第2問 → 第3問 → 第4問 → 第5問。
2020年九州大学・化学に
関するよくある質問
2020年の九州大学・化学について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2020年の九州大学・化学は難しかった?
-
全体的に難易度は標準的な年でした。
第3問がやや簡単、第1問・第2問・第4問・第5問は標準です。
第2問の問3 は出題ミスで、受験者全員が正解になりました。 - 2020年の九州大学・化学は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で105点、その他の学部で80点です(125点満点)。
- 2020年の九州大学・化学はどこで差がつく?
-
この年の合否を分けたのは第4問で、差がついたのは次の3つでした。
- 第4問 問4:同じ置換基をもつ1,2-ジオールのシス形はメソ体で、モノエステルにすると対称面がなくなる、と立体異性体を数えられたか。
- 第1問 問4 (1):アレニウスの式の対数をとり、2つの温度の式を辺々引いて活性化エネルギーを求められたか。
- 第5問 問2:「D型に比べ2倍量のL型」から、4分子のうち3分子がバリンだと決められたか。
- 2020年の九州大学・化学は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:理論化学(反応の速さと化学平衡)
- 第2問:理論化学(酸化・還元と電池・電気分解)・無機化学
- 第3問:無機化学・理論化学
- 第4問:有機化学
- 第5問:高分子化合物(アミノ酸・タンパク質)




