【解説・配点付き】2021年九州大学化学の解答・解説
2021年の九州大学・化学の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2021年九州大学化学
第1問 解答・解説
この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は理論化学(反応の速さと化学平衡)の問題です。
テーマは『アンモニア合成の平衡』『圧平衡定数』。
問題


問題文をテキストで読む
※ 旧課程の問題なので、式①・式②の熱化学方程式をエンタルピーの表記に直して載せています。
次の文章(1)と(2)を読み、問1から問6に答えよ。なお、気体は理想気体として扱うものとする。
(1) 以下の式①は窒素と水素からアンモニアを合成する反応の熱化学方程式である。
$$\begin{aligned}&\ce{N2}(\text{気})+3\ce{H2}(\text{気})\\&\ce{->}\ 2\ce{NH3}(\text{気})\\&\Delta H=-92\ \text{kJ}\quad\text{… ①}\end{aligned}$$
この反応は可逆反応であり、アンモニアを生成する反応は $\boxed{\text{ア}}$ 反応で、総物質量が $\boxed{\text{イ}}$ 反応である。したがって、平衡時におけるアンモニアの生成量を多くするには、反応容器内の圧力を $\boxed{\text{ウ}}$ する、あるいは温度を $\boxed{\text{エ}}$ するとよい。
問1. $\boxed{\text{ア}}$ から $\boxed{\text{エ}}$ に入る適切な語句を以下から一つずつ選び、答えよ。同じ語句を何度選んでも良い。
発熱、断熱、吸熱、減少する、変化しない、増加する、低く、一定に、高く
問2. 図1の太い実線 X は、ある一定の温度と圧力において得られたアンモニアの生成量の時間変化を表したものである。次の(i)から(iii)のように反応条件を変えたとき、予想される曲線を図1の A から E より一つずつ選び、記号で答えよ。
(i) 圧力は同じまま、温度を高くする。
(ii) 圧力は同じまま、温度を低くする。
(iii) 圧力と温度は同じまま、触媒を加える。
問3. 窒素ガスと水素ガスの物質量の比が25:75の混合気体を、全圧が $3.0\times10^7$ Pa となるよう体積一定の密閉容器に入れた。その後、式①の反応を開始してある温度に保つと、全圧が $1.8\times10^7$ Pa に減少して平衡状態に達した。この時、反応前の窒素ガスのうちの何%がアンモニアに変換されたか、有効数字2桁で答えよ。
(2) 常温において、 $\ce{N2O4}$ は $\ce{NO2}$ に解離し、両者は平衡状態に達する。この可逆反応の熱化学方程式は式②で表される。
$$\ce{N2O4}(\text{気})\ \ce{->}\ 2\ce{NO2}(\text{気})$$
$$\Delta H=+57\ \text{kJ}\quad\text{… ②}$$
ここで、 $\ce{N2O4}$ と $\ce{NO2}$ の分圧を、それぞれ $p_{\ce{N2O4}}$ と $p_{\ce{NO2}}$ とすると、圧平衡定数 $K_{\mathrm{p}}$ は以下の式③で与えられる。
$K_{\mathrm{p}}=\dfrac{(p_{\ce{NO2}})^2}{p_{\ce{N2O4}}}$ … ③
問4. 大気圧下で、ピストン付きの密閉容器を二つ用意し、一方に $\ce{N2O4}$ と $\ce{NO2}$ の混合気体を、もう一方に混合気体と同じ体積の空気を封入した。この二つの容器を同じ温度まで温めた時に起こる変化として正しいものを、以下の(A)から(E)より一つ選び記号で答えよ。ただし、温度変化の前後で $\ce{N2O4}$ と $\ce{NO2}$ の混合気体は平衡状態にあるとする。
(A) $\ce{N2O4}$ と $\ce{NO2}$ の混合気体の体積は変わらず、空気の体積は増加した。
(B) 体積はどちらも増加し、同じ体積となった。
(C) 体積はどちらも増加し、 $\ce{N2O4}$ と $\ce{NO2}$ の混合気体の体積は空気の体積よりも大きかった。
(D) 体積はどちらも増加し、 $\ce{N2O4}$ と $\ce{NO2}$ の混合気体の体積は空気の体積よりも小さかった。
(E) $\ce{N2O4}$ と $\ce{NO2}$ の混合気体の体積は減少し、空気の体積は増加した。
問5. 体積一定の密閉容器に $\ce{N2O4}$ を1.0 mol 入れ、 $\ce{NO2}$ との平衡状態になるまで待ったところ、 $\ce{N2O4}$ の解離度(加えた $\ce{N2O4}$ のうち $\ce{NO2}$ に解離した割合)が0.20で、全圧が $1.0\times10^5$ Pa となった。この時の圧平衡定数 $K_{\mathrm{p}}$〔Pa〕を、有効数字2桁で答えよ。
問6. ピストン付きの密閉容器に $\ce{N2O4}$ を $n$〔mol〕入れ、 $\ce{NO2}$ との平衡状態になるまで待ったところ、 $\ce{N2O4}$ の解離度は $\alpha$ で、混合気体の体積は $V$〔L〕となった。温度と全圧が一定のもと、容器内にアルゴンガスを加え、新たな平衡状態になるまで待ったところ、体積が $V'$〔L〕まで増加した。体積比を $\beta=\dfrac{V'}{V}$ と表すと、新たな平衡状態における $\ce{N2O4}$ の解離度 $x$ は、以下の式④で求められる。
$x=\boxed{\text{オ}}\times\left\{\alpha\times\sqrt{\boxed{\text{カ}}+\boxed{\text{キ}}}-\boxed{\text{カ}}\right\}$ … ④
$\boxed{\text{オ}}$ から $\boxed{\text{キ}}$ にあてはまる式を以下のAからFより一つずつ選び、記号で答えよ。ただし、アルゴンは反応に関与しないものとする。
A: $n^2$ B: $\alpha^2$ C: $\beta^2$
D: $\dfrac{\beta}{2\times(1-\alpha)}$ E: $\dfrac{\beta}{n+1}$
F: $\dfrac{4\times(1-\alpha)}{\beta}$
解答の方針
【問1の方針】
ルシャトリエの原理は、濃度 $C$ と温度 $T$ の2つだけに注目すれば迷わない。温度は発熱か吸熱かを見るだけ。圧力は、状態方程式で濃度の変化に直してから考える(下の図)。


- 式①の $\Delta H=-92$ kJ から、アンモニアを生成する反応が発熱か吸熱かを決める(ア)。
- 左辺と右辺の気体の分子数を比べ、総物質量が増えるか減るかを決める(イ)。
- 圧力を上げると濃度が上がり、平衡は気体の分子数が減る向きへ寄る。アンモニアが増える右へ寄せる圧力の変え方を決める(ウ)。
- 温度を下げると平衡は発熱の向きへ寄る。右へ寄せる温度の変え方を決める(エ)。
【問2の方針】
条件を変えたときは、「反応の速さ(曲線の立ち上がり)」と「平衡の量(曲線が最後に落ち着く高さ)」を別々に判定する。温度は速さと平衡の両方を変え、触媒は速さだけを変える(下の図)。


- (i)〜(iii) それぞれで、速さが速くなるか遅くなるかを決める(温度を上げる・触媒を加えると速くなる)。
- 平衡の量が増えるか減るか変わらないかを、問1の「発熱反応」から決める。
- 2つの判定に合う曲線を図1から選ぶ。
【問3の方針】
体積も温度も一定なので、状態方程式から圧力は物質量に比例する。物質量に直さず、分圧のまま状態遷移図を書いて反応の量を計算できる(下の図)。


- 全圧 $3.0\times10^7$ Pa を25:75に分け、反応前の窒素と水素の分圧を求める。
- 反応した窒素の分圧を $p$ とおき、反応前・変化量・平衡の分圧と合計を書く。
- 平衡の合計が全圧 $1.8\times10^7$ Pa に等しいことから $p$ を求める。
- 反応した窒素÷反応前の窒素で、アンモニアに変換された割合を求める。
【問4の方針】
温めたときの変化は2段で起こる。まず状態方程式どおりの変化が一気に起こり、そのあとルシャトリエの原理による平衡の移動が徐々に起こる。空気は1段目で止まるが、混合気体は2段目でも体積が変わる(下の図)。


- 大気圧(一定)のピストン付き容器なので、状態方程式から、温めると体積は2つとも同じだけ大きくなる。
- 混合気体だけ、式②の平衡が温度の変化で動く。式②の正反応は吸熱なので、温めると右へ寄る。
- 右へ寄ると気体の分子数が増えるので、混合気体の体積はさらに大きくなる。空気の体積と比べて選択肢を選ぶ。
【問5の方針】
解離度が分かっているので、状態遷移図で平衡の物質量と合計が求まる。全圧が分かっているので、分圧は全圧×モル分率で求まり、体積は使わなくてよい(下の図)。


- 解離度0.20から状態遷移図を書き、平衡の物質量と合計を求める。
- 全圧×モル分率で $\ce{N2O4}$ と $\ce{NO2}$ の分圧を求める。
- 式③に代入して $K_{\mathrm p}$ を求める。
【問6の方針】
アルゴンを加えても温度は同じなので、平衡定数は変わらない。前と後で同じ形の式を2つ書き、違うのは解離度と体積だけ。式の整理は選択肢の形から逆算する(下の図)。


- アルゴンを加える前の平衡で、状態遷移図から物質量を書き、体積 $V$ で割って濃度平衡定数を $n$・ $\alpha$・ $V$ で表す。
- アルゴンを加えたあとの平衡も同じように、解離度 $x$・体積 $\beta V$ で表す。
- 温度が同じなので2つの平衡定数を等しいとおき、 $x$ の2次方程式にする。
- 解の公式で $x>0$ の解を求める。
- 分母に $2(1-\alpha)$ があることから D をオに置き、残りをくくって式④の形にそろえ、カ・キを決める。
解答




解答をテキストで読む
問1
式①の $\Delta H=-92$ kJ は負なので、アンモニアを生成する反応は発熱反応(ア)。左辺は $\ce{N2}$ 1分子と $\ce{H2}$ 3分子で気体4分子、右辺は $\ce{NH3}$ 2分子で気体2分子。右へ進むと総物質量は減る(イ)。
ルシャトリエの原理は、濃度 $C$ と温度 $T$ に注目する(下の図)。
状態方程式 $PV=nRT$ を $P=\dfrac nV RT$ と変形すると、温度が同じなら、圧力を上げることは濃度 $\dfrac nV$ を上げることになる。濃度が上がると、平衡は気体の分子数が減る向き、つまり右へ寄る(ウ)。
温度を下げると、平衡は発熱の向きへ寄る。正反応が発熱なので、温度を下げると右へ寄り、アンモニアが増える(エ)。
答(ア) 発熱(2点)
答(イ) 減少する(2点)
答(ウ) 高く(2点)
答(エ) 低く(2点)
問2
反応の速さと平衡の量を、2列に分けて判定する。反応の速さは温度と触媒で変わり、温度を上げる・触媒を加えると速くなる。平衡の量は、正反応が発熱なので、温度を上げると左へ(アンモニアが減る)、下げると右へ(アンモニアが増える)寄る。触媒は平衡を変えない(下の図)。
(i) 温度を高くする:速くなる( X より早く立ち上がる)が、平衡は左へ寄るので、 X より低い所で一定になる。
答(i) A(2点)
(ii) 温度を低くする:遅くなる( X よりゆっくり立ち上がる)が、平衡は右へ寄るので、 X より高い所に近づく。
答(ii) C(2点)
(iii) 触媒を加える:速くなるが平衡は変わらないので、 X と同じ高さで、より早く一定になる。
答(iii) E(2点)
問3
体積も温度も一定なので、 $PV=nRT$ より圧力 $P$ は物質量 $n$ に比例する。そこで、物質量の代わりに分圧でモル計算をする。
反応前の分圧は、全圧を25:75に分けて
$$\begin{aligned}p_{\ce{N2}}&=3.0\times10^7\times\dfrac{25}{100}\\&=0.75\times10^7\ \mathrm{Pa}\end{aligned}$$
$$\begin{aligned}p_{\ce{H2}}&=3.0\times10^7\times\dfrac{75}{100}\\&=2.25\times10^7\ \mathrm{Pa}\end{aligned}$$
反応した $\ce{N2}$ の分圧を $p\times10^7$ Pa とおくと、 $\ce{H2}$ は $3p$ 減り、 $\ce{NH3}$ は $2p$ 増える(下の図)。
平衡の合計が全圧 $1.8\times10^7$ Pa なので
$$3.0-2p=1.8\qquad\therefore\ p=0.60$$
反応前の $\ce{N2}$ $0.75\times10^7$ Pa のうち $0.60\times10^7$ Pa が反応したので、アンモニアに変換された割合は
$$\dfrac{0.60}{0.75}\times100=80\ \%$$
答 80 %(3点)
問4
温めたときの変化を2段に分けて考える(下の図)。
① 状態方程式による変化(一気に起こる):大気圧のもとのピストン付き容器なので、圧力は一定。 $PV=nRT$ より $V=\dfrac{nRT}{P}$ で、温度 $T$ が上がると体積はすぐに大きくなる。初めの体積と物質量は2つの容器で同じなので、この段階では空気も混合気体も同じだけ大きくなる。空気の変化はここで終わる。
② ルシャトリエの原理による変化(徐々に起こる):混合気体では式②の平衡が動く。式②の正反応は吸熱( $\Delta H=+57$ kJ)なので、温度を上げると平衡は右へ寄り、 $\ce{N2O4}$ 1分子が $\ce{NO2}$ 2分子になる。圧力一定で物質量が増えるので、混合気体の体積はさらに大きくなる。
よって、体積はどちらも増加し、混合気体の方が空気より大きくなる。
答 (C) 体積はどちらも増加し、混合気体の体積は空気の体積よりも大きかった(5点)
問5
解離度が0.20なので、 $\ce{N2O4}$ は $1.0\times0.20=0.20$ mol 解離し、 $\ce{NO2}$ は $0.40$ mol できる(下の図)。
平衡の物質量は $\ce{N2O4}$ 0.80 mol、 $\ce{NO2}$ 0.40 mol、合計1.20 mol。同じ容器の中なので分圧の比は物質量の比で2:1。分圧は全圧×モル分率なので
$$\begin{aligned}p_{\ce{N2O4}}&=1.0\times10^5\times\dfrac{0.80}{1.20}\\&=\dfrac23\times10^5\ \mathrm{Pa}\end{aligned}$$
$$\begin{aligned}p_{\ce{NO2}}&=1.0\times10^5\times\dfrac{0.40}{1.20}\\&=\dfrac13\times10^5\ \mathrm{Pa}\end{aligned}$$
式③に代入して
$$\begin{aligned}K_{\mathrm p}&=\dfrac{(p_{\ce{NO2}})^2}{p_{\ce{N2O4}}}=\dfrac{\left(\dfrac13\times10^5\right)^2}{\dfrac23\times10^5}\\&=\dfrac16\times10^5=1.67\times10^4\ \mathrm{Pa}\end{aligned}$$
答 $1.7\times10^4$ Pa(3点)
問6
アルゴンを加える前と後で、温度は同じなので平衡定数は同じ。違うのは解離度( $\alpha$ と $x$ )と体積( $V$ と $\beta V$ )だけなので、同じ形の式を2つ書く(下の図)。
加える前:平衡の物質量は $\ce{N2O4}$ $n(1-\alpha)$ mol、 $\ce{NO2}$ $2n\alpha$ mol。体積 $V$ で割って濃度にし、濃度平衡定数に入れると
$$K_{\mathrm c}=\dfrac{\left(\dfrac{2n\alpha}{V}\right)^2}{\dfrac{n(1-\alpha)}{V}}=\dfrac{4n\alpha^2}{(1-\alpha)V}$$
加えたあと:平衡の物質量は $\ce{N2O4}$ $n(1-x)$ mol、 $\ce{NO2}$ $2nx$ mol。体積は $V'=\beta V$ なので
$$K_{\mathrm c}=\dfrac{\left(\dfrac{2nx}{\beta V}\right)^2}{\dfrac{n(1-x)}{\beta V}}=\dfrac{4nx^2}{(1-x)\beta V}$$
2つが等しいので、 $4n$ と $V$ を約分して
$$\dfrac{\alpha^2}{1-\alpha}=\dfrac{x^2}{\beta(1-x)}$$
分母を払って整理すると、 $x$ の2次方程式になる。
$$(1-\alpha)x^2+\alpha^2\beta x-\alpha^2\beta=0$$
解の公式で、 $x>0$ の解をとる。
$$x=\dfrac{-\alpha^2\beta+\sqrt{\alpha^4\beta^2+4(1-\alpha)\alpha^2\beta}}{2(1-\alpha)}$$
ここから式④の形にそろえる。選択肢を見ると、分母の $2(1-\alpha)$ を含むのは D だけで、カ・キは根号の中と後ろにあるので、D が入るのはオしかない。そこで $\dfrac{\beta}{2(1-\alpha)}$ でくくる。根号の中の $\alpha^2\beta^2$ を外にくくると
$$\sqrt{\alpha^4\beta^2+4(1-\alpha)\alpha^2\beta}=\alpha\beta\sqrt{\alpha^2+\dfrac{4(1-\alpha)}{\beta}}$$
なので
$$\begin{aligned}x&=\dfrac{\beta}{2(1-\alpha)}\\&\quad\times\left\{\alpha\times\sqrt{\alpha^2+\dfrac{4(1-\alpha)}{\beta}}-\alpha^2\right\}\end{aligned}$$
式④と比べて、オ=D、カ= $\alpha^2$ 、キ= $\dfrac{4(1-\alpha)}{\beta}$ 。
アルゴンを加えて体積が大きくなる( $\beta>1$ )と濃度が薄まり、平衡は分子数が増える右へ寄るので、解離度は $x>\alpha$ になる。
答(オ) D( $\dfrac{\beta}{2\times(1-\alpha)}$ )(2点)
答(カ) B( $\alpha^2$ )(2点)
答(キ) F( $\dfrac{4\times(1-\alpha)}{\beta}$ )(1点)
別解
問3 (物質量で状態遷移図を書く) 容器の体積を $V$ 、温度を $T$ とし、反応前の全物質量を $n_0$ とすると、 $n_0=\dfrac{3.0\times10^7\,V}{RT}$ 。 $\ce{N2}$ は $0.25n_0$ 、 $\ce{H2}$ は $0.75n_0$ 。反応した $\ce{N2}$ を $y$ mol とすると、平衡の合計は $n_0-2y$ で、これが $\dfrac{1.8\times10^7\,V}{RT}$ に等しい。
$$n_0-2y=\dfrac{1.8}{3.0}\,n_0\qquad\therefore\ y=0.20\,n_0$$
変換された割合は $\dfrac{0.20\,n_0}{0.25\,n_0}\times100=80\ \%$ 。 $V$ ・ $R$ ・ $T$ は最後に消えるので、最初から圧力で計算した方が速い。
問5 (定義どおり、分圧の比から) 分圧の比が2:1で合計 $1.0\times10^5$ Pa なので、すぐに $p_{\ce{N2O4}}=\dfrac23\times10^5$ Pa、 $p_{\ce{NO2}}=\dfrac13\times10^5$ Pa と分けられる。 $K_{\mathrm p}=\dfrac{4\alpha^2}{1-\alpha^2}\,P$ ( $P$ は全圧)の形を覚えていれば、 $\dfrac{4\times0.040}{0.96}\times1.0\times10^5=1.67\times10^4$ Pa とすぐに求まる。
出題意図
問1 発熱・吸熱と気体の分子数の増減から、平衡を右に寄せる圧力と温度の条件を、ルシャトリエの原理で判断できるか
問2 温度・触媒を変えたときの変化を、反応の速さと平衡の量に分けて判定し、生成量の曲線を選ぶことができるか
問3 体積と温度が一定なら圧力が物質量に比例することに気づき、全圧の減少から反応した窒素の量を求めることができるか
問4 温めたときの体積の変化を、状態方程式による変化とルシャトリエの原理による変化の2段に分けて考えることができるか
問5・問6 解離度を使って状態遷移図を書き、圧平衡定数を求めることと、温度が同じなら平衡定数が同じことを使って新しい平衡の解離度を式で表すことができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 25点 | 20点 |
| 目標時間 | 15分 | 18分 |
前半は重要問題集を仕上げていれば全部取れる典型問題で、ここで1つも落とさないことが前提。
差がつくのは問4 の2段の変化と問6 の文字の計算。
化学平衡は「ルシャトリエの原理は濃度と温度だけを見る」「条件を変えたら速度と平衡を分けて判定する」「体積や温度を変えた瞬間は状態方程式、平衡の移動はそのあと」という決まった流れで解けば迷わない。
問6 は、平衡定数が温度だけで決まることを使って式を立て、選択肢の形から逆算して整えること。
差がつく所・失点しやすい所
- 問6:アルゴンを加えても温度が同じなので平衡定数は同じ、という発想に行き着けるか。式を立てたあと、解の公式の結果をそのまま整理しようとすると式④の形にならない。分母の $2(1-\alpha)$ から D をオに決め、選択肢の形から逆算してくくれたかで差がつく。文字の計算が重く、この5点は医学科の受験生でも落としやすい。
- 問4:温めた瞬間に状態方程式どおり体積が大きくなり、そのあと平衡の移動でさらに大きくなる、という2段の変化に行き着けるか。ルシャトリエの原理だけを考えると (A)、状態方程式だけを考えると (B) を選んでしまう。
コラム ハーバー・ボッシュ法 ― なぜアンモニアは低温で作らないのか
問1 で見たとおり、アンモニアの生成は発熱反応で、気体の分子数が減る反応なので、平衡だけを考えれば「高圧・低温」ほどアンモニアが多くなる。ところが実際の工場では、温度をあえて400〜500℃程度の高温にしている。その理由は、問2 の「速さと平衡は別」にある。


- 低温にすると、平衡は有利でも反応が遅すぎる:窒素の三重結合は切れにくく、低温では反応がほとんど進まない。問2 の曲線 C のように、最後に落ち着く量は多くても、そこに行き着くまでに時間がかかりすぎる。そこで、鉄を主体にした触媒を入れ、触媒がよく働く400〜500℃程度で反応させる。速さと平衡の量の折り合いをつけた温度になっている。
- 圧力は高いほど有利だが、上げすぎない:圧力を上げると平衡は右へ寄り、濃度が上がるので反応も速くなる。実際の装置は数百気圧(問3 の $3.0\times10^7$ Pa もこの程度)で運転されるが、これ以上の高圧は装置や圧縮の費用が大きくなるので、ここで折り合いをつけている。
- 1回で反応するのは多くても3割程度なので、残りは戻す:合成塔を1回通ってできるアンモニアはわずかなので、出てきた気体を冷やしてアンモニアだけを液体にして取り出し、反応しなかった窒素と水素は合成塔へ戻してもう一度反応させる。こうしてくり返すことで、原料のほとんどをアンモニアにできる。
ルシャトリエの原理だけで考えると「低温がよい」で終わってしまうが、実際には反応の速さも考えないと使える条件にはならない。問1 と問2 は、この工業的な判断の両面をそのまま問題にしたものと言える。
2021年九州大学化学
第2問 解答・解説
第2問は無機化学・理論化学の問題です。
テーマは『炭素とケイ素』『二酸化ケイ素の結晶』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1から問7に答えよ。
炭素の同素体の一つである黒鉛では、隣接する炭素原子どうしが共有結合しており、正六角形を基本単位とする層状の平面構造を形成している。この平面構造どうしは比較的弱い分子間力である $\boxed{\text{ア}}$ 力により結合しているため、黒鉛はこの層に沿って薄くはがれやすく、軟らかい。また黒鉛の層状構造の一層だけの同素体を $\boxed{\text{イ}}$ という。黒鉛はリチウムイオン電池の負極活物質として用いられている。リチウムイオンが黒鉛に取り込まれる充電反応(a)は、以下のように表される。
$\ce{Li+}\ +\ \ce{e-}\ \ce{->}\ \ce{Li}(\text{黒鉛中})$
ケイ素の単体は酸化物を還元してつくる。例えば、二酸化ケイ素を電気炉中で融解し、炭素を用いて還元する。このとき、無色無臭の有毒な気体が発生する(b)。ケイ素の単体はダイヤモンドと同じ結晶構造をもつ。二酸化ケイ素の結晶構造の一つでは、単体のケイ素の結晶構造中の隣接するケイ素原子間の中間に酸素原子が入り込んだ構造をしている(c)。
二酸化ケイ素を約2000℃で融解したのち凝固させると石英ガラスと呼ばれる非晶質(d)になる。この固体はフッ化水素酸に溶ける(e)。また、水酸化ナトリウムと反応し、ケイ酸ナトリウムを生じる。無色透明で粘性の大きな液体である $\boxed{\text{ウ}}$ はケイ酸ナトリウムに水を加えて加熱すると生じる。 $\boxed{\text{ウ}}$ の水溶液に塩酸を加えると、ケイ酸の白色ゲル状沈殿が生成する。さらにケイ酸を加熱し脱水すると、 $\boxed{\text{エ}}$ になる。
問1. $\boxed{\text{ア}}$ から $\boxed{\text{エ}}$ に入る適切な語句を答えよ。
問2. 下線部a)の充電反応のあと、リチウムイオンを取り込んだ負極活物質の質量が、充電前と比べて3.82 g 増加していた。この充電反応において流れた電子の物質量は何 mol か、有効数字2桁で答えよ。
問3. 下線部b)において起こっている反応の化学反応式を答えよ。その反応によりケイ素の単体が2.81 g 生成したとき、同時に発生する無色無臭の有毒な気体の体積は標準状態(0℃、 $1.01\times10^5$ Pa)で何 L か、有効数字2桁で答えよ。ただし、この気体は理想気体として扱えるものとする。
問4. 下線部c)について、この二酸化ケイ素の結晶構造の単位格子に含まれるすべての原子の数を答えよ。なお、図1はケイ素の単体の単位格子の模式図である。ただし、図1内の薄い色の球(◎)は完全に単位格子中に含まれたケイ素原子を示しており、単位格子を八分割した立方体の互い違いの位置に存在する。
問5. 下線部d)の「非晶質」に関する次の(A)から(D)の文章について、それぞれ正しいものには○、誤ったものには×を記せ。
(A) すべてのガラスは無色透明である。
(B) 非晶質では常に、原子やイオンなどの粒子が規則的に配列している。
(C) すべてのガラスは一定の融点を示さず、ある温度の幅で軟化する。
(D) すべての非晶質は電気を流さない。
問6. 下線部e)について、石英ガラスがフッ化水素酸に溶ける反応の化学反応式を答えよ。
問7. 炭素やケイ素と同じ14族元素であるスズと鉛に関する次の(A)から(D)の文章について正しいものをすべて選び、記号で答えよ。
(A) 塩化スズ(Ⅱ)は強い酸化剤である。
(B) ブリキの表面はスズで覆われている。
(C) 鉛(Ⅱ)イオンを含む水溶液は、硫化物イオンと反応し白色沈殿を生成する。
(D) スズと鉛はいずれも両性金属である。
解答の方針
【問1の方針】
黒鉛は、共有結合の網目の層が弱い分子間力で重なったもの(下の図)。ウ・エは、二酸化ケイ素からシリカゲルまでの4段階の流れの途中の物質(2つ目の図)。




- (ア) 黒鉛の層と層の間ではたらく弱い分子間力の名前を答える。
- (イ) 黒鉛の層1枚だけからなる同素体の名前を答える。
- (ウ)(エ) 二酸化ケイ素 → ケイ酸ナトリウム → 水ガラス → ケイ酸 → シリカゲルの流れに当てはめて、名前を答える。
【問2の方針】
充電では、電解液のリチウムイオンが黒鉛の層の間に入り、外部から流れこんだ電子を受け取る(下の図)。負極の増えた質量は、取り込まれたリチウムの質量そのもの。反応式の係数から、リチウムと電子は1:1。


- 増えた質量3.82 g を、取り込まれたリチウムの物質量に直す。
- 反応式 $\ce{Li+ + e- -> Li}$ の係数の比から、流れた電子の物質量を求める。
【問3の方針】
炭素は二酸化ケイ素から酸素を奪う還元剤。高温で炭素が多いと、できる気体は二酸化炭素ではなく一酸化炭素になる。「無色無臭の有毒な気体」は一酸化炭素を指している(下の図)。


- 発生する気体を一酸化炭素と決め、二酸化ケイ素と炭素からケイ素と一酸化炭素ができる化学反応式を書く。
- 生成したケイ素2.81 g を物質量に直す。
- 反応式の係数の比から一酸化炭素の物質量を求め、1 mol あたりの体積22.4 L をかけて体積にする。
【問4の方針】
「隣接するケイ素原子間の中間に酸素原子」なので、酸素原子の数はケイ素原子どうしの結合の数と同じ。結合はすべて図1の◎から4本ずつ出ている(下の図)。


- ケイ素原子を、頂点・面の中心・内部の位置ごとに数える。
- 内部のケイ素原子1個から出る結合の数から、単位格子の中の結合の数を求め、それを酸素原子の数とする。
- ケイ素原子と酸素原子の数を足す。
【問5の方針】
粒子が規則的に並んだ固体が結晶、並び方に規則性がない固体が非晶質(下の図)。非晶質は一定の融点を示さない。「すべて」「常に」と言い切る記述は、例外が1つでもあれば誤りなので、例外を思い浮かべて判定する。


- (A) 色のついたガラスがあるかを確かめる。
- (B) 結晶と非晶質の定義に照らす。
- (C) 非晶質の融け方(軟化)に照らす。
- (D) 電気を通す非晶質があるかを確かめる。
【問6の方針】
石英ガラスの主成分は二酸化ケイ素。フッ化水素酸(水溶液)と反応すると、ヘキサフルオロケイ酸ができて溶ける。気体のフッ化水素とは生成物が違う。
- 生成物をヘキサフルオロケイ酸と水と決める。
- ケイ素・フッ素・水素・酸素の数をそろえて化学反応式を書く。
【問7の方針】
スズと鉛は14族の下の2つで、金属性が強く両性を示す。4つの記述は、それぞれの系列の1マスを聞いている(下の図)。「すべて」選ぶので、1つずつ理由を付けて判定する。


- (A) スズ(Ⅱ)イオンが電子を放出するか受け取るかから、酸化剤か還元剤かを決める。
- (B) ブリキとトタンのめっきの金属を確かめる。
- (C) 鉛(Ⅱ)イオンの沈殿の色を、相手の陰イオンごとに確かめる。
- (D) 両性元素4つにスズと鉛が入っているかを確かめる。
- 正しい記述をすべて選ぶ。
解答




解答をテキストで読む
問1
黒鉛では、各炭素原子が3個の炭素原子と共有結合して正六角形の網目の層をつくり、層と層の間は弱いファンデルワールス力で引き合っている。そのため層に沿ってはがれやすく軟らかい(下の図)。残った1個の価電子が層の中を動けるので、黒鉛は電気を通す。層1枚だけを取り出したものがグラフェン。
炭素の同素体はまとめて押さえておく。ダイヤモンド(立体の網目の共有結合の結晶・非常に硬い・電気を通さない)、黒鉛(層状・軟らかい・電気を通す)、グラフェン(黒鉛の1層)、カーボンナノチューブ(グラフェンを筒状に巻いた形)、フラーレン $\ce{C60}$ (球状の分子・分子結晶)。
二酸化ケイ素は、水酸化ナトリウムと加熱して融解するとケイ酸ナトリウムになる。
$$\ce{SiO2 + 2NaOH -> Na2SiO3 + H2O}$$
ケイ酸ナトリウムに水を加えて加熱すると、無色透明で粘性の大きな液体の水ガラスになる。水ガラスに塩酸を加えると、弱酸の遊離でケイ酸の白色ゲル状沈殿ができる。
$$\ce{Na2SiO3 + 2HCl -> H2SiO3 + 2NaCl}$$
ケイ酸を加熱して脱水すると、多孔質のシリカゲルになる(下の図)。すき間の $-\mathrm{OH}$ が水分子を水素結合で引きつけるので、乾燥剤に使われる。
答(ア) ファンデルワールス(2点)
答(イ) グラフェン(2点)
答(ウ) 水ガラス(2点)
答(エ) シリカゲル(2点)
問2
充電では、外部電源から負極の黒鉛に電子が流れこみ、電解液のリチウムイオンが黒鉛の層の間に入って電子を受け取る(下の図)。負極の質量が増えたのは、リチウムが取り込まれたから。
増えた3.82 g を、リチウム1 mol あたりの質量6.94 g で割る。
$$\dfrac{3.82}{6.94}=0.5504\ \mathrm{mol}\quad\text{(取り込まれたリチウムの物質量)}$$
係数の比は物質量の比なので、 $\ce{Li+ + e- -> Li}$ からリチウムと電子は1:1。流れた電子も0.5504 mol で、有効数字2桁で0.55 mol。
答 0.55 mol(3点)
問3
炭素は二酸化ケイ素から酸素を奪ってケイ素を遊離させる。高温で炭素(コークス)が多いと、 $\ce{C + CO2 -> 2CO}$ も進むので、できる気体は一酸化炭素になる。一酸化炭素は無色無臭で有毒、二酸化炭素は無色無臭だが有毒ではないので、「無色無臭の有毒な気体」は一酸化炭素(下の図)。
答(化学反応式) $\ce{SiO2 + 2C -> Si + 2CO}$(2点)
生成したケイ素を、1 mol あたりの質量28.1 g で割って物質量に直す。
$$\dfrac{2.81}{28.1}=0.100\ \mathrm{mol}\quad\text{(生成したケイ素の物質量)}$$
係数の比は物質量の比なので、一酸化炭素はケイ素の2倍。
$$0.100\times2=0.200\ \mathrm{mol}\quad\text{(発生した一酸化炭素の物質量)}$$
標準状態で1 mol あたりの体積は22.4 L なので
$$0.200\times22.4=4.48\fallingdotseq4.5\ \mathrm{L}$$
答(体積) 4.5 L(3点)
問4
まず、ケイ素の単位格子の中のケイ素原子を位置ごとに数える。
$$\dfrac18\times8+\dfrac12\times6+1\times4=8\quad\text{(単位格子の中のケイ素原子の数)}$$
酸素原子は、隣り合うケイ素原子を結ぶ結合1本の真ん中に1個ずつある。ダイヤモンド型の単位格子では、結合はすべて内部のケイ素原子(図1の◎)から出ていて、◎1個から4本ずつ出る。どの結合も単位格子の中に収まり、ほかの◎の結合と重複しない(下の図)。
$$4\times4=16\quad\text{(単位格子の中の結合の数=酸素原子の数)}$$
真ん中の酸素原子はどれも単位格子の内部にあるので、1個として数える。よって単位格子に含まれる原子は
$$8+16=24$$
答 24 個(5点)
問5
結晶は粒子が規則的に並んだ固体、非晶質(アモルファス)は粒子の並び方に規則性がない固体(下の図)。
・(A) 誤り。ふつうのガラスは無色透明だが、金属の化合物を加えた着色ガラスがある
・(B) 誤り。粒子が規則的に配列しているのは結晶。非晶質は規則性がない。定義を逆にした記述
・(C) 正しい。非晶質は粒子の並び方がそろっていないので、一定の融点を示さず、加熱すると温度の幅をもって徐々に軟らかくなる。「すべて」と言い切っているが、これは非晶質の性質そのものなので正しい
・(D) 誤り。アモルファスシリコン(太陽電池に使われる半導体)や、金属を急冷してつくるアモルファス金属(金属ガラス)は電気を通す
答(A) ×(1点)
答(B) ×(1点)
答(C) ○(1点)
答(D) ×(1点)
問6
二酸化ケイ素は反応性に乏しい共有結合の結晶だが、フッ化水素酸には溶けて、ヘキサフルオロケイ酸 $\ce{H2SiF6}$ になる。ケイ素1個にフッ素6個が結びつくので、 $\ce{HF}$ は6個必要。残った水素と酸素は水になる。
気体のフッ化水素なら、四フッ化ケイ素ができる別の反応 $\ce{SiO2 + 4HF -> SiF4 + 2H2O}$ になる。問いは「フッ化水素酸」(水溶液)なので、ヘキサフルオロケイ酸の式を書く。酸のなかでガラスを溶かすのはフッ化水素酸だけで、塩酸や硫酸では溶けない。そのためフッ化水素酸はガラスびんに入れず、ポリエチレンの容器に保存する。
答 $\ce{SiO2 + 6HF -> H2SiF6 + 2H2O}$(2点)
問7
14族は、上から C(非金属)、Si・Ge(半導体)、Sn・Pb(金属)と、周期表の下ほど金属性が強くなる。4つの記述は下の図のどこか1マスを聞いている。
・(A) 誤り。スズ(Ⅱ)イオンは電子を放出してスズ(Ⅳ)イオンになりやすいので、塩化スズ(Ⅱ)は還元剤。 $\ce{Sn^2+ -> Sn^4+ + 2e-}$
・(B) 正しい。ブリキは鉄の表面をスズでめっきしたもの、トタンは鉄の表面を亜鉛でめっきしたもの。イオン化傾向は $\ce{Zn}>\ce{Fe}>\ce{Sn}$ なので、傷がつくと、ブリキは鉄が先にさびるが、トタンは亜鉛が先に溶けて鉄を守る
・(C) 誤り。鉛(Ⅱ)イオンと硫化物イオンからできる硫化鉛(Ⅱ) $\ce{PbS}$ は黒色。鉛(Ⅱ)イオンの沈殿は、相手が $\ce{Cl-}$ ・ $\ce{SO4^2-}$ なら白色、 $\ce{CrO4^2-}$ なら黄色、 $\ce{S^2-}$ なら黒色と、相手の陰イオンで色が変わる
・(D) 正しい。スズと鉛は、単体・酸化物・水酸化物が酸とも強塩基とも反応する両性金属。両性元素は Al・Zn・Sn・Pb の4つ
答 (B)・(D)(3点)
出題意図
問1 黒鉛の層の中と層の間の結合の違い、炭素の同素体、ケイ酸ナトリウムから水ガラス・シリカゲルができる流れを理解できているか
問2 充電で増えた負極の質量を取り込まれたリチウムの物質量に直し、与えられた反応式の係数から電子の物質量を求められるか
問3 二酸化ケイ素を炭素で還元するときに発生する気体を一酸化炭素と決め、反応式の係数から体積を求められるか
問4 ダイヤモンド型の単位格子を思い浮かべ、酸素原子の数をケイ素原子どうしの結合の数に読みかえて数えられるか
問5 結晶と非晶質の違いをもとに、全称の言い切りを含む記述の正誤を1つずつ判定できるか
問6 フッ化水素酸が二酸化ケイ素を溶かしてヘキサフルオロケイ酸を生じる反応式を書けるか
問7 スズと鉛の化合物の性質・用途・沈殿の色を正しく押さえ、4つの記述をすべて判定できるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 25点 | 25点 |
| 目標時間 | 15分 | 15分 |
14族の知識が中心の、やや簡単寄りの標準の大問。
差がつくのは、ダイヤモンド型の構造を正確に思い浮かべられないと解けない問4 と、「すべて」選ぶ正誤の問7。
ダイヤモンド型の単位格子は、原子の数だけでなく結合の数まで白紙に書けるようにしておく。
無機は○×で覚えず、沈殿の色・両性元素・ブリキとトタンのように系列で押さえておけば、どの角度で聞かれても迷わない。
差がつく所・失点しやすい所
- 問4:「ケイ素原子間の中間に酸素原子」から、酸素原子の数を結合の数に読みかえ、ダイヤモンド型の単位格子の中の結合を16本と数えられるか。単位格子の構造を正確に思い浮かべられないと解けず、ここで大きく差がつく(5点)。
- 問3:「無色無臭の有毒な気体」を一酸化炭素と決められるか。二酸化炭素と書くと、反応式も体積もまとめて落とす。
- 問7:「すべて」選ぶ正誤で、4つすべてを判定しきれないと点にならない。(A) のスズ(Ⅱ)が還元剤であること、(C) の $\ce{PbS}$ が黒色であることを、系列で押さえているか。
2021年九州大学化学
第3問 解答・解説
第3問は高分子化合物(合成高分子)の問題です。
テーマは『合成高分子』『生分解性樹脂』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1から問5に答えよ。
合成繊維には、ポリエチレンテレフタラートに代表されるポリエステル、ならびにナイロン66に代表される $\boxed{\text{ア}}$ などがあり、これらは $\boxed{\text{イ}}$ 重合で合成される。また、ポリエチレンテレフタラートの主原料となる2価カルボン酸と $p$-フェニレンジアミンの $\boxed{\text{イ}}$ 重合によって得られる $\boxed{\text{ア}}$ は、特に、 $\boxed{\text{ウ}}$ 繊維と呼ばれている。一方、ポリエチレンやポリ塩化ビニルなどは、 $\boxed{\text{エ}}$ 重合で合成される高分子であり、これらは加熱により軟化・流動する性質のため、 $\boxed{\text{オ}}$ 樹脂と呼ばれている。
合成樹脂は自然界では分解されにくい。そこで、自然界の微生物によって比較的容易に分解される合成樹脂が開発され、実用化されている。このような樹脂を $\boxed{\text{カ}}$ 樹脂という。たとえば、トウモロコシなどのデンプンから得られる乳酸を原料としてポリ乳酸が合成され、食品トレイや包装用フィルムなどに用いられている。ポリ乳酸は、土壌微生物によって分解され、二酸化炭素と水になるが、われわれの生体内でも代謝され、数ヶ月で加水分解されて生体外へと排出される。
乳酸の $\boxed{\text{イ}}$ 重合では低分子量のポリ乳酸しか得ることができない。そこで、低分子量のポリ乳酸から、乳酸2分子が脱水縮合した環状ジエステルである化合物 A をつくり、これを $\boxed{\text{キ}}$ 重合させて高分子量のポリ乳酸を合成している。また、乳酸と同様に次ページの構造式で表されるグリコール酸の環状ジエステルである化合物 B を $\boxed{\text{キ}}$ 重合させることで高分子量のポリグリコール酸がつくられる。乳酸とグリコール酸を $\boxed{\text{イ}}$ 重合させて得られる高分子素材は、外科手術用の吸収性縫合糸として用いられている。このように、2種類以上の単量体を混合して行う重合を $\boxed{\text{ク}}$ 重合という。
グリコール酸の構造式
問1. $\boxed{\text{ア}}$ から $\boxed{\text{ク}}$ に入る適切な語句を答えよ。
問2. 化合物 A および B の構造式を答えよ。構造式は記入例にならって答えよ。なお、光学異性体は区別しなくて良い。
構造式の記入例
問3. 2価アルコールである化合物 C は、ポリエチレンテレフタラートの主原料である。化合物 C を酸化すると、炭素数が同じで還元性を示す2価カルボン酸である化合物 D が生じた。化合物 D の記述について、最も適切なものを下記の(A)から(D)より一つ選んで記号で答えよ。
(A) 無色で刺激臭をもち、アセテート繊維の原料となる。
(B) 白色の固体で、その水和物は中和滴定の標準試薬として用いられている。
(C) 水によく溶け、融点が低いため、自動車用不凍液に用いられている。
(D) ヘキサメチレンジアミンと反応させると、ナイロン66が得られる。
問4. 問3で述べた化合物 C と2,6-ナフタレンジカルボン酸(分子式 $\ce{C12H8O4}$)を反応させたところ、平均分子量 $8.47\times10^4$ のポリエステル E が得られた。このポリエステルには1分子あたり平均何個のエステル結合が含まれるか、有効数字2桁で答えよ。
問5. 下記の(A)から(E)の記述の中から、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルについて、最も適切なものをそれぞれ一つ選んで記号で答えよ。
(A) 無触媒の高圧下で合成されたものは、非結晶部分が多く、比較的軟らかくて透明度が高い。
(B) 難燃性であり、黒くなるまで焼いた銅線の先につけて熱すると、炎の色が青緑色になった。
(C) ソーダ石灰と混合して加熱すると気体が発生した。この気体に濃塩酸を反応させると白煙が生じた。
(D) 希硫酸中で十分に煮沸すると溶解した。この溶液を炭酸ナトリウムで中和したのち、フェーリング液と熱すると赤色沈殿を生じた。
(E) 紫外線を通しにくく、空気中で燃やすと多量の煤(すす)が発生した。
解答の方針
【問1の方針】
合成高分子の穴埋めは、重合の種類ごとに「何が起こるか(何がとれるか)」と代表的な高分子を組で押さえていれば決まる(下の図)。


- ア・イ:ナイロン66 の結合の種類から高分子の呼び名を、ポリエステルとナイロン66 に共通する重合の種類を書く。
- ウ:PET の主原料の2価カルボン酸(テレフタル酸)と $p$-フェニレンジアミンでできる、ベンゼン環をもつポリアミドの呼び名を書く。
- エ・オ:ポリエチレン・ポリ塩化ビニルの重合の種類と、加熱で軟らかくなる樹脂の呼び名を書く。
- カ〜ク:微生物で分解される樹脂の呼び名、環状の化合物 A が環を開いてつながる重合、2種類以上の単量体を混ぜる重合の呼び名を書く。
【問2の方針】
乳酸は1分子にヒドロキシ基とカルボキシ基を1つずつもつ。2分子を互い違いに向かい合わせると、ヒドロキシ基とカルボキシ基が2組向き合い、2か所でエステル結合ができて環になる(下の図)。


- 乳酸2分子を互い違いに置き、2組の $-\ce{OH}$ と $-\ce{COOH}$ から水を1分子ずつとって、2か所をエステル結合でつなぐ。
- 環をつくる原子を数え、O・C(=O)・C の組が2つの6員環になることを確かめて、A を記入例の形で書く。
- グリコール酸は乳酸の $\ce{CH3}$ が H になったものなので、同じ形の環で B を書く。
【問3の方針】
PET の主原料の2価アルコールはエチレングリコール。両端の $\ce{CH2-OH}$ がどちらもカルボキシ基まで酸化されると、炭素数2の2価カルボン酸、つまりシュウ酸になる(下の図)。


- 化合物 C をエチレングリコール、それを酸化した化合物 D をシュウ酸と決める。
- シュウ酸の性質(白色の固体・二水和物が中和滴定の標準試薬)に当たる選択肢を選ぶ。ほかの選択肢がどの物質の説明かも確かめる。
【問4の方針】
1分子のエステル結合の数は「繰り返し単位がいくつあるか」と「1単位にエステル結合がいくつあるか」のかけ算で決まる。繰り返し単位の式量は、縮合重合でとれた水を引いて求める(下の図)。


- 繰り返し単位の式量を、2,6-ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールの分子量の和から、水2分子分を引いて求める。
- 平均分子量を繰り返し単位の式量で割って、繰り返し単位の数 $n$ を求める。
- 1単位にエステル結合が2つあるので、エステル結合の数は $2n$。有効数字2桁で答える。
【問5の方針】
3つの高分子は、構造の違い(枝分かれの多さ・塩素・ベンゼン環)がそのまま性質の違いに出る。選択肢の決め手の言葉を、どの構造から来るのかに結びつける(下の図)。


- (A) の「高圧・無触媒」から、枝分かれの多い低密度のポリエチレンと決める。
- (B) の「銅線で青緑色の炎」から、塩素を含むポリ塩化ビニルと決める。
- (E) の「すすが多い・紫外線を通しにくい」から、ベンゼン環をもつポリエチレンテレフタラートと決める。
- (C)(窒素を含む)と (D)(多糖)は3つのどれにも当てはまらないことを確かめる。
解答


解答をテキストで読む
問1
ナイロン66 は、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンがアミド結合 $-\ce{CO-NH}-$ でつながったポリアミド(ア)。ポリエステルもポリアミドも、単量体どうしの間で水がとれながらつながる縮合重合でつくる(イ)。
PET の主原料の2価カルボン酸はテレフタル酸。テレフタル酸と $p$-フェニレンジアミンを縮合重合させると、ベンゼン環どうしがアミド結合でつながった芳香族のポリアミドができる。これをアラミド繊維といい、ナイロンより強度が高く、防弾チョッキなどに使われる(ウ)。
ポリエチレン( $\ce{CH2=CH2}$ から)やポリ塩化ビニル( $\ce{CH2=CHCl}$ から)は、二重結合が開いてつながる付加重合でつくる(エ)。鎖状の高分子なので、加熱すると分子の熱運動が激しくなって分子間力を断ち切り、軟らかくなって流れる。このような樹脂を熱可塑性樹脂という(オ)。
微生物によって二酸化炭素と水にまで分解される樹脂を生分解性樹脂という(カ)。ポリ乳酸やポリグリコール酸がその例。
環状ジエステルの化合物 A は、環のエステル結合が開きながらつながって長い鎖になる。これを開環重合という(キ)。開環重合では水はとれない。乳酸とグリコール酸のように、2種類以上の単量体を混ぜて行う重合が共重合(ク)。重合の種類と代表的な高分子は、下の図のように組で押さえておく。
答(ア) ポリアミド(2点)
答(イ) 縮合(2点)
答(ウ) アラミド(2点)
答(エ) 付加(2点)
答(オ) 熱可塑性(2点)
答(カ) 生分解性(2点)
答(キ) 開環(2点)
答(ク) 共(2点)
問2
乳酸 $\ce{CH3-CH(OH)-COOH}$ の2分子を互い違いに向かい合わせると、一方の $-\ce{OH}$ と他方の $-\ce{COOH}$ が2組向き合う。それぞれで水が1分子ずつとれてエステル結合が2つでき、環が閉じる(下の図)。
環は O・C(=O)・C の組が2つで6員環。分子式は乳酸2分子から水2分子を引いた $\ce{C6H8O4}$(分子量144)。
答 $\mathbf{A}=$ ラクチド(構造式は上の図)(3点)
グリコール酸 $\ce{HO-CH2-COOH}$ は、乳酸の $\ce{CH3}$ が H になったもの。2分子が同じように2か所でエステル結合をつくると、同じ形の6員環ができる(下の図)。分子式は $\ce{C4H4O4}$(分子量116)。
答 $\mathbf{B}=$ グリコリド(構造式は上の図)(3点)
問3
PET はテレフタル酸とエチレングリコールの縮合重合でつくるので、2価アルコールの化合物 C はエチレングリコール $\ce{HO-CH2-CH2-OH}$。両端の $\ce{CH2-OH}$ が酸化されてカルボキシ基になると、炭素数2の2価カルボン酸のシュウ酸 $\ce{(COOH)2}$ になる(下の図)。
シュウ酸は還元剤としてはたらき、自身は酸化されて二酸化炭素になる。
$$\ce{(COOH)2 -> 2CO2 + 2H+ + 2e-}$$
シュウ酸は白色の固体で、二水和物 $\ce{(COOH)2*2H2O}$ は空気中で安定で正確に量り取れるので、中和滴定の標準溶液をつくる標準試薬に使われる。ほかの選択肢は、(A) 無水酢酸、(C) エチレングリコール(化合物 C そのもの)、(D) アジピン酸の説明。
答 (B)(2点)
問4
2,6-ナフタレンジカルボン酸( $\ce{C12H8O4}$、分子量216)とエチレングリコール( $\ce{C2H6O2}$、分子量62)が、両端で水を1分子ずつとってつながる。繰り返し単位は $\ce{C14H10O4}$ で、式量は
$$216+62-18\times2=242$$
繰り返し単位の数を $n$ とすると
$$n=\dfrac{8.47\times10^4}{242}=350$$
繰り返し単位1つにエステル結合は2つ(下の図)あるので、1分子のエステル結合の数は
$$2n=2\times350=700$$
両端の分を考えると $2n-1=699$ だが、有効数字2桁では同じ。
答 $7.0\times10^2$ 個(3点)
問5
(A):無触媒で高圧のもとで付加重合させると、枝分かれの多いポリエチレンができる。分子が規則的に並びにくいので結晶部分が少なく、密度が小さく、軟らかくて透明になる(低密度ポリエチレン)。
(B):焼いた銅線に塩素を含む物質をつけて熱すると、塩化銅ができて炎が青緑色になる。塩素を含み燃えにくいのはポリ塩化ビニル。
(E):ベンゼン環をもつ高分子は紫外線を吸収しやすく、炭素の割合が大きいので燃やすとすすが多く出る。3つのうちベンゼン環をもつのはポリエチレンテレフタラート。
(C) はソーダ石灰と加熱してアンモニアが出る(濃塩酸で白煙の塩化アンモニウム)ので窒素を含む高分子(ナイロンなど)、(D) は加水分解で還元糖のグルコースができるので多糖(デンプンなど)。どちらも3つには当てはまらない(下の図)。
答(ポリエチレンテレフタラート) (E)(1点)
答(ポリエチレン) (A)(1点)
答(ポリ塩化ビニル) (B)(1点)
出題意図
問1 合成繊維・合成樹脂・生分解性樹脂を、重合の種類(付加・縮合・開環・共重合)と性質に結びつけて答えられるか
問2 乳酸2分子が2か所でエステル結合をつくる様子を思い浮かべ、6員環の環状ジエステルを構造式で書くことができるか
問3 PET(ポリエチレンテレフタラート)の原料のエチレングリコールを酸化するとシュウ酸になることと、シュウ酸の性質を結びつけられるか
問4 繰り返し単位の式量と、1単位に含まれるエステル結合の数から、1分子のエステル結合の数を求めることができるか
問5 3つの高分子の構造の違い(枝分かれ・塩素・ベンゼン環)を、性質や検出の結果と結びつけられるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 30点 | 30点 |
| 目標時間 | 12分 | 15分 |
ほとんどが知識で解ける大問で、どの学部も満点を取りたい。
重合の種類と代表的な高分子を組で覚え、構造(枝分かれ・塩素・ベンゼン環)と性質を結びつけておけば、問1・問3・問5 は迷わない。
問2 の環状ジエステルは「2分子が2か所でつながると環になる」と考えれば、知らなくても構造式から組み立てられる。
合成高分子は暗記だけで取り切れる分野なので、短時間で満点を取り、重い大問に時間を回すこと。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2:乳酸2分子が「2か所」でエステル結合をつくって環になる、という発想に行き着けるか。1か所だけつないだ鎖状のエステルを書くと6点がまるごと落ちる。環状ジエステルは教科書で大きく扱われないので、書いた経験がないと手が止まる。
- 問5:「高圧・無触媒」「青緑色の炎」「すす」の3つを、枝分かれ・塩素・ベンゼン環に結びつけられるか。低密度ポリエチレンの製法と、銅線で塩素を確かめる方法は細かい知識で、ここの暗記の精度で差がつく。
コラム 体の中で消える糸 ― 吸収性縫合糸
問題文の最後にある「外科手術用の吸収性縫合糸」は、問1・問2 で扱ったポリ乳酸とポリグリコール酸が実際に使われている例。体の中を縫ったあと、抜糸しなくても自然に分解されて消える糸である。


- つくり方:乳酸を縮合重合させるだけでは、水がとれる反応が平衡になって重合度が上がらず、低分子量のポリ乳酸しかできない。そこでいったん環状ジエステル(問2 の A・B)にしてから開環重合させる。開環重合では水がとれないので、長い鎖をつくることができる。
- 混ぜて性質を調節する:最初に実用化された合成の吸収性縫合糸はポリグリコール酸の糸。いまよく使われる糸の1つは、グリコール酸の単位が約9割、乳酸の単位が約1割の共重合体(問1 のク)。乳酸は $\ce{CH3}$ をもつぶん水になじみにくく、割合を変えると分解の速さが変わる。
- 消えるしくみ:体の中では、主鎖のエステル結合が水で少しずつ加水分解され、乳酸やグリコール酸に戻る。これらは体の中で代謝され、最後は二酸化炭素と水になる。この共重合体の糸は、およそ2か月(56〜70日)でほぼ吸収される。
九大の高分子は、こうした身近な製品を題材にしても、問われるのは「縮合重合と開環重合の違い」「エステル結合が加水分解される」といった基本の知識。教科書の言葉を、製品の中で何が起きているかと結びつけて覚えておくと、初めて見る題材でも落ち着いて解ける。
2021年九州大学化学
第4問 解答・解説
第4問は有機化学の問題です。
テーマは『オゾン分解と構造決定』『鏡像異性体』。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章(1)から(6)を読み、問1から問6に答えよ。なお、反応はすべて完全に進行し、副反応は起こらないものとする。オゾン分解で図1に示した反応以外は起こらないものとする。構造式を答える際には記入例にならって答えよ。
構造式の記入例
(1) 化合物 A、B、C はいずれも同じ分子式をもち、 $\ce{CH2}$ の組成式をもつ炭化水素化合物である。
(2) 化合物 A および B それぞれに対して白金を触媒として水素を付加させると、いずれの化合物からも $\ce{C3H7}$ の組成式をもつ同一の化合物 D が生成した。
(3) アルケンを低温でオゾンと反応させた後、亜鉛などの還元剤で処理すると、二重結合が開裂してカルボニル化合物が生成する(図1)。この一連の反応はオゾン分解とよばれる。化合物 A に対してオゾン分解を行うと、反応生成物として得られたカルボニル化合物は1種類(化合物 E)であった。
(4) 化合物 A に適切な条件下で塩化水素を付加させたとき、互いに鏡像異性体の関係にある2種類の化合物が生成した(a)。
(5) 化合物 B に対してオゾン分解を行うと、2種類のカルボニル化合物(化合物 F および G)が生成した。化合物 F および G にそれぞれフェーリング液を加えて加熱すると、いずれの反応液にも赤色の沈殿が観察された(b)。また、化合物 F および G をそれぞれ塩基性条件下でヨウ素と反応させたところ、化合物 F の反応液でのみヨードホルムの沈殿が観察された。
(6) 化合物 C に対してオゾン分解を行うと、反応生成物として得られたカルボニル化合物は1種類(化合物 H)であった。化合物 H を塩基性条件下でヨウ素と反応させたところ、ヨードホルムの沈殿が観察された。
問1. 化合物 A、B、C の構造式を答えよ。なお、幾何異性体を含む複数の化合物の構造式が考えられる場合には、すべての構造式を答えよ。幾何異性体の構造式を答える際には、置換基の配置の違いがわかるように答えよ。
問2. 化合物 D、F、H の名称を答えよ。
問3. 下線部a)で示した2種類の化合物の立体構造を下の式で表したとき、 $\mathrm{R^a}$ から $\mathrm{R^c}$ に当てはまるアルキル基の構造を記入例にならって答えよ。なお、 $\mathrm{R^d}$ に当てはまるアルキル基は解答しなくてよい。 $\mathrm{R^a}$ の炭素数は $\mathrm{R^b}$ の炭素数よりも少ないものとする。太線で示す結合は紙面の手前側にあり、破線で示す結合は紙面の向こう側にあることを意味する。
アルキル基の構造の記入例
問4. 化合物 E について下線部b)の反応を行った場合の反応式を下に示した。化合物 E および反応生成物 X の構造式を答えよ。
$$\begin{aligned}&\boxed{\text{化合物}\ \mathbf{E}}\ +\ \ce{2Cu^2+}\ +\ \ce{5OH-}\\&\ce{->}\ \boxed{\text{反応生成物}\ \mathbf{X}}\ +\ \ce{Cu2O}\ +\ \ce{3H2O}\end{aligned}$$
問5. 同じ質量の化合物 E、F、G、H を完全燃焼したときに生成する二酸化炭素の質量が最も少ないのはどの化合物か、E、F、G、H から一つ選び記号で答えよ。またその化合物10 mg を完全燃焼したときに生成する二酸化炭素の質量は何 mg か、有効数字2桁で答えよ。
問6. 21.0 mg の化合物 C をオゾン分解した後、生成した化合物 H を反応液から損失なく分離した。分離した化合物 H に十分な量の水酸化ナトリウム溶液とヨウ素を加えた後、ヨードホルム反応が完全に進行するまで温めたとき、何 mg のヨードホルムが生成するか、有効数字3桁で答えよ。
解答の方針
【問1の方針】
A・B に水素を付けると同じ D になるので、先に A を決めて D を確定させれば、B の炭素骨格が D と同じ直鎖に決まる。オゾン分解の生成物が1種類なら、二重結合の左右が同じ形(下の図)。


- D の組成式 $\ce{C3H7}$ から D の分子式を求め、A・B・C の分子式を $\ce{C6H12}$ と決める。
- A のオゾン分解で E が1種類、E がフェーリング反応を示すことから A を決め、D をヘキサンと確定させる。
- B は水素を付けると D になるので直鎖。オゾン分解で F・G の2種類ができ、F だけがヨードホルム反応を示すことから B を決める。
- C のオゾン分解で H が1種類、H がヨードホルム反応を示すことから C を決める。
- 幾何異性体がある A・B は、シス形とトランス形の両方の構造式を書く。
【問2の方針】
問1 で A・B・C が決まれば、D・F・H はその水素の付加とオゾン分解の生成物(問1 の模範解答の図)。
- D(A に水素を付けた飽和炭化水素)、F(B のオゾン分解の生成物のうち炭素の少ない方)、H(C のオゾン分解の生成物)の名称を答える。
【問3の方針】
Cl の付いた炭素には4つの違う基が付く(下の図)。左の図を回して右の図と向きをそろえ、残りの基を比べる。2つの基を入れかえた形が鏡像異性体。


- A に塩化水素を付けた生成物を書き、不斉炭素に付いた4つの基を挙げる。
- 炭素数の条件から $\mathrm{R^a}$ と $\mathrm{R^b}$ を決める。
- 左の図を縦の結合を軸に回して H を左に置き、右の図と並べる。
- 回しただけで同じものにならないように $\mathrm{R^c}$ を決める。
【問4の方針】
E はアルデヒドなので、フェーリング液で酸化されてカルボン酸になる。塩基性の液の中なので、答えはカルボン酸の陰イオン(下の図)。


- E を問1 で決めたプロパナールとして構造式を書く。
- 反応式の左右で C・H・O の数と電荷を合わせて X を求め、構造式を書く。
【問5の方針】
燃焼で生じる二酸化炭素の C は、すべて化合物の C から来る。同じ質量なら、炭素の質量の割合が小さいほど二酸化炭素は少ない。
- E・F・G・H の分子式と分子量を書く。
- 炭素の質量の割合を比べて、最も小さい化合物を選ぶ。
- その化合物10 mg の物質量から、二酸化炭素の質量を求める。
【問6の方針】
C は二重結合の左右が同じ形なので、C 1分子からアセトン H が2分子できる。アセトン1分子からはヨードホルムが1分子できる(下の図)。


- C 21.0 mg の物質量を求める。
- H の物質量を C の2倍とする。
- ヨードホルムの物質量を H と同じとして、質量を求める。
解答






解答をテキストで読む
問1
D の組成式は $\ce{C3H7}$ なので、分子式は $(\ce{C3H7})_n$。炭化水素の H の数は偶数で、炭素数 $m$ の炭化水素の H は最大でも $2m+2$ 個。 $n=1$ の $\ce{C3H7}$ は H が奇数で外れ、 $n=2$ の $\ce{C6H14}$ は $2\times6+2=14$ で飽和の炭化水素(アルカン)として成り立つ。 $n\geqq3$ は H が多すぎる。よって D は $\ce{C6H14}$。
A・B に水素を付けると D になるので、A・B の炭素数は6。組成式が $\ce{CH2}$ なので分子式は $\ce{C6H12}$ で、C も同じ分子式。オゾン分解でカルボニル化合物ができるので、A・B・C は二重結合を1つもつ鎖式のアルケン。
A:オゾン分解のカルボニル化合物が1種類(E)なので、二重結合の左右は同じ形で、E は炭素3個。E は問4 の反応(フェーリング反応)を示すのでアルデヒドで、炭素3個のアルデヒドはプロパナール $\ce{CH3-CH2-CHO}$。よって A は3-ヘキセン $\ce{CH3-CH2-CH=CH-CH2-CH3}$(下の図)。A に水素を付けた D は直鎖のヘキサン。
A は二重結合のどちらの炭素にも H とエチル基という違う基が付くので、幾何異性体(シス形・トランス形)がある。問題文の指示どおり、両方を書く。
答 $\mathbf{A}=$ シス形の $\ce{CH3-CH2-CH=CH-CH2-CH3}$(構造式は上の図の左)(2点)
答 $\mathbf{A}=$ トランス形の $\ce{CH3-CH2-CH=CH-CH2-CH3}$(構造式は上の図の右)(2点)
B:水素を付けると A と同じヘキサン D になるので、B は枝分かれのない直鎖のアルケン。直鎖の $\ce{C6H12}$ は1-ヘキセン・2-ヘキセン・3-ヘキセン(A)の3つで、オゾン分解で2種類の生成物ができるのは1-ヘキセンと2-ヘキセン。
・1-ヘキセン:ホルムアルデヒド $\ce{HCHO}$ とペンタナール $\ce{CH3-(CH2)3-CHO}$。どちらもヨードホルム反応を示さないので外れる
・2-ヘキセン:アセトアルデヒド $\ce{CH3-CHO}$ とブタナール $\ce{CH3-CH2-CH2-CHO}$。どちらもアルデヒドでフェーリング反応を示し、ヨードホルム反応を示すのは $\ce{CH3-CO}{-}$ の形をもつアセトアルデヒドだけなので、(5) と合う
よって B は2-ヘキセンで、F はアセトアルデヒド、G はブタナール(下の図)。
オゾン分解の結果だけなら、G を2-メチルプロパナール $\ce{(CH3)2CH-CHO}$ とした4-メチル-2-ペンテンも当てはまる。しかし4-メチル-2-ペンテンに水素を付けると2-メチルペンタンになり、D(ヘキサン)にならないので外れる(下の図)。
B も二重結合のどちらの炭素にも違う基が付くので、シス形とトランス形の両方を書く。
答 $\mathbf{B}=$ シス形の $\ce{CH3-CH=CH-CH2-CH2-CH3}$(構造式は上の図の左)(2点)
答 $\mathbf{B}=$ トランス形の $\ce{CH3-CH=CH-CH2-CH2-CH3}$(構造式は上の図の右)(2点)
C:オゾン分解のカルボニル化合物が1種類(H)なので、二重結合の左右は同じ形で、H は炭素3個。H はヨードホルム反応を示すので $\ce{CH3-CO}{-}$ の形をもち、炭素3個ではアセトン $\ce{CH3-CO-CH3}$。よって C は、二重結合の両方の炭素に $\ce{CH3}$ が2つずつ付いた2,3-ジメチル-2-ブテン(下の図)。
二重結合の同じ炭素に同じ基が2つ付くので、幾何異性体はない。
答 $\mathbf{C}=\ce{(CH3)2C=C(CH3)2}$(構造式は上の図)(3点)
問2
D は A(3-ヘキセン)に水素を付けた直鎖の飽和炭化水素、F は B(2-ヘキセン)のオゾン分解でできる炭素2個のアルデヒド、H は C(2,3-ジメチル-2-ブテン)のオゾン分解でできるケトン。
答 $\mathbf{D}=$ ヘキサン(2点)
答 $\mathbf{F}=$ アセトアルデヒド(2点)
答 $\mathbf{H}=$ アセトン(2点)
問3
A(3-ヘキセン)に塩化水素を付けると、二重結合のどちらの炭素に Cl が付いても同じ3-クロロヘキサン $\ce{CH3-CH2-CHCl-CH2-CH2-CH3}$ になる。Cl の付いた炭素には、H・Cl・エチル基 $\ce{CH3-CH2}{-}$・プロピル基 $\ce{CH3-CH2-CH2}{-}$ の4つの違う基が付くので不斉炭素で、鏡像異性体が2つできる(下の図)。
左の図の $\mathrm{R^a}$ と $\mathrm{R^b}$ はエチル基とプロピル基のどちらか。 $\mathrm{R^a}$ の炭素数が $\mathrm{R^b}$ より少ないので、 $\mathrm{R^a}$ がエチル基、 $\mathrm{R^b}$ がプロピル基。
左の図は、上がエチル基、左がプロピル基、奥(破線)が H、手前(太線)が Cl。これを縦の結合を軸に回して H を左に持ってくると、Cl が奥に、プロピル基が手前に来る。右の図は、左が H、奥が Cl なので、回した形と同じ向き。ここで $\mathrm{R^c}$ がエチル基( $\mathrm{R^d}$ がプロピル基)だと、左の図を回しただけの同じものになってしまう。鏡像異性体は、2つの基を入れかえた形なので、 $\mathrm{R^c}$ はプロピル基( $\mathrm{R^d}$ はエチル基)(下の図)。
答 $\mathrm{R^a}=\ce{CH3-CH2}{-}$(1点)
答 $\mathrm{R^b}=\ce{CH3-CH2-CH2}{-}$(1点)
答 $\mathrm{R^c}=\ce{CH3-CH2-CH2}{-}$(3点)
問4
E は問1 で決めたプロパナール $\ce{CH3-CH2-CHO}$( $\ce{C3H6O}$ )。フェーリング液の $\ce{Cu^2+}$ がアルデヒド基を酸化して、自分は $\ce{Cu2O}$(赤色の沈殿)になる。
反応式の左右で数を合わせる。左辺は $\ce{C3H6O}$ と $\ce{5OH-}$ で、C 3・H 11・O 6、電荷は $(+2)\times2+(-1)\times5=-1$。右辺の $\ce{Cu2O}$ と $\ce{3H2O}$ で H 6・O 4 なので、X は C 3・H 5・O 2 で電荷 $-1$ の $\ce{C2H5COO-}$。塩基性の液の中なので、カルボン酸は陰イオンのまま残る(下の図)。
答 $\mathbf{E}=\ce{CH3-CH2-CHO}$(構造式は上の図の左)(3点)
答 $\mathbf{X}=\ce{CH3-CH2-COO-}$(構造式は上の図の右)(3点)
問5
燃焼で生じる二酸化炭素の C は、すべて化合物の C から来る。同じ質量どうしなら、炭素の質量の割合が小さい化合物ほど二酸化炭素は少ない。
・E(プロパナール $\ce{C3H6O}$ 、分子量58.0): $\dfrac{36.0}{58.0}=0.621$
・F(アセトアルデヒド $\ce{C2H4O}$ 、分子量44.0): $\dfrac{24.0}{44.0}=0.545$
・G(ブタナール $\ce{C4H8O}$ 、分子量72.0): $\dfrac{48.0}{72.0}=0.667$
・H(アセトン $\ce{C3H6O}$ 、分子量58.0): $\dfrac{36.0}{58.0}=0.621$
最も小さいのは F。
答(記号) F(2点)
F 1分子から $\ce{CO2}$ が2分子できる。F 10 mg の物質量は $\dfrac{10}{44.0}$ mmol なので、
$$\dfrac{10}{44.0}\times2\times44.0=20\ \mathrm{mg}$$
答(質量) 20 mg(2点)
問6
C( $\ce{C6H12}$ 、分子量84.0)21.0 mg の物質量は
$$\dfrac{21.0}{84.0}=0.250\ \mathrm{mmol}$$
C は二重結合の左右が同じ形なので、C 1分子からアセトン H が2分子できる。H は $0.250\times2=0.500$ mmol。
アセトンのヨードホルム反応は
$$\ce{CH3COCH3 + 3I2 + 4NaOH -> CHI3 + CH3COONa + 3NaI + 3H2O}$$
で、アセトン1分子からヨードホルム $\ce{CHI3}$(分子量394)が1分子できる。
$$0.500\times394=197\ \mathrm{mg}$$
答 $1.97\times10^2$ mg(3点)
出題意図
問1・問2 組成式から分子式を求め、オゾン分解・フェーリング反応・ヨードホルム反応の結果を組み合わせて、3つのアルケンの構造を決められるか
問3 不斉炭素に付いた4つの基を立体の図に置き、2つの図が鏡像異性体になるように読み取れるか
問4 フェーリング反応でアルデヒドがカルボン酸の陰イオンになることを、反応式の原子と電荷の数から確かめられるか
問5・問6 分子式と反応の係数から、生成物の質量を求められるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 30点 | 25点 |
| 目標時間 | 20分 | 20分 |
オゾン分解・フェーリング反応・ヨードホルム反応を組み合わせる、九大の有機としてオーソドックスな構造決定で、2021年の合否を分けた大問。
差がつくのは B の決め方で、「水素を付けると同じ D」から A を先に決めて直鎖に絞れるかどうか。
立体の図は「回して向きをそろえ、2つの基を入れかえたら鏡像異性体」と手順を決めておけば迷わない。
問1 さえ決めれば残りは計算と名称なので、医学科は30点、ほかの学部は25点を確実に取り切ろう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問1:A を先に決めて D をヘキサンと確定させ、「水素を付けると同じ D」から B を直鎖に絞る、という発想に行き着けるか。B だけを見ると4-メチル-2-ペンテンも当てはまり、ここを越えないと問2・問4〜問6 まで連鎖で崩れる(問1 と問2 だけで17点)。
- 問3:左の図を縦の結合を軸に回して右の図と向きをそろえ、「2つの基を入れかえると鏡像異性体」から $\mathrm{R^c}$ をプロピル基と決められるか。立体の図に慣れていない受験生が多く、「 $\mathrm{R^a}$ と同じエチル基」と書いてしまいやすい。
2021年九州大学・化学の
講評とまとめ
4問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 標準 | 25点 | 20点 |
| 第2問 | 標準 | 25点 | 25点 |
| 第3問 | やや簡単 | 30点 | 30点 |
| 第4問 | 標準 | 30点 | 25点 |
| 全体 | 標準 | 105点 | 85点 |
大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で105点、その他の学部で85点)にはなりません。
全体的に難易度は標準的な年。
大問が4題で1題あたりの配点が大きく、1つの大問の取りこぼしがそのまま響きます。
この年の合否を分けたのは、配点35点の第4問でした。
オゾン分解の定番の構造決定ですが、A を先に決めて B を直鎖に絞れるかで、後ろの小問がまとめて決まります。
第3問は暗記だけで満点が取れる大問で、第1問・第2問も前半は重要問題集の典型問題です。
差がつくのは、第1問 問6 の文字の計算と、第2問 問4 の二酸化ケイ素の単位格子です。
知識で取れる大問を短い時間で確実に取り切り、浮いた時間を第4問に回すことが大事です。
解く流れ
第1問 → 第2問 → 第3問 → 第4問。
2021年九州大学・化学に
関するよくある質問
2021年の九州大学・化学について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2021年の九州大学・化学は難しかった?
-
全体的に難易度は標準的な年でした。
第1問・第2問・第4問は標準、第3問はやや簡単です。
大問は4題で、第4問だけ配点が35点と大きい年でした。 - 2021年の九州大学・化学は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で105点、その他の学部で85点です(125点満点)。
- 2021年の九州大学・化学はどこで差がつく?
-
この年の合否を分けたのは第4問の構造決定で、差がついたのは次の3つでした。
- 第4問 問1:「水素を付けると同じ D」から A を先に決め、B を直鎖に絞れたか。
- 第1問 問6:アルゴンを加えても平衡定数は同じ、という所から解離度の式を立て、選択肢の形から逆算して整えられたか。
- 第2問 問4:酸素原子の数をケイ素原子どうしの結合の数に読みかえ、単位格子の中の結合を16本と数えられたか。
- 2021年の九州大学・化学は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:理論化学(反応の速さと化学平衡)
- 第2問:無機化学・理論化学
- 第3問:高分子化合物(合成高分子)
- 第4問:有機化学




