【解説・配点付き】2026年九州大学化学の解答・解説

2026年の九州大学・化学の、
解答・解説【完全版】です。

方針の立て方・考え方はもちろん
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このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。

※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。

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中原 遼太郎

九大受験に特化した学習塾
『竜文会』代表

『竜文会』開校後、初年度には国立大学医学部や九州大学に合格者を輩出。

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目次

2026年九州大学化学
第1問 解答・解説

この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。

第1問は理論化学(物質の三態・気体の法則)の問題です。
テーマは『水の状態図』『蒸気圧の計算』。

問題

2026年九州大学化学 第1問 問題
2026年九州大学化学 第1問 問題
問題文をテキストで読む

次の文章(1)〜(3)を読み、問1〜問7に答えよ。ただし、図に示したグラフの縦軸、横軸の間隔は一定ではない。

(1) $1.0\times10^5$ Pa における水の沸点は100℃、ベンゼンの沸点は80℃、ヘキサンの沸点は69℃である。水は分子量が小さいにもかかわらず、沸点が他の液体に比べ高い。その理由は分子間に $\boxed{\text{ア}}$ が存在するためである。図1は水の状態図である。3本の曲線の交点Mは $\boxed{\text{イ}}$ である。N点は $\boxed{\text{ウ}}$ であり、それより温度と圧力を高くしていくと液体と気体の区別がつかなくなる。水に塩化ナトリウムを溶かすと図1中の固体と液体、および、液体と気体の状態を分ける曲線は図Xのように変化する(a)。

乾燥野菜などのインスタント食品製造時には、水の蒸発にともなう食品の劣化を避けるために凍結乾燥を行うことがある。工業的な凍結乾燥では、まず食品全体を凍らせ、圧力を $\boxed{\text{エ}}$ した後、熱を加えながら食品の水分を $\boxed{\text{オ}}$ させる。

問1. $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{ウ}}$ に入る最も適切な語句を以下の(A)〜(I)のなかからひとつずつ選んで記号で答えよ。

(A) 軟化点 (B) 三重点 (C) 融点 (D) 沸点 (E) 凝固点 (F) 臨界点 (G) ファンデルワールス力 (H) 水素結合 (I) 共有結合

問2. 下線部(a)の図Xとして最も適切なものを以下の(A)〜(D)のなかからひとつ選んで記号で答えよ。水の状態図(実線)に、塩化ナトリウム水溶液の固体と液体、および、液体と気体の状態を分ける曲線を点線で追加している。

問3. $\boxed{\text{エ}}$ に当てはまる最も適切な語句を以下の(A)〜(E)のなかからひとつ選んで記号で答えよ。ただし、水以外の物質の影響は無視できるとする。

(A) $2.2\times10^7$ Pa より高く

(B) $1.0\times10^5$ Pa より高く

(C) $1.0\times10^5$ Pa より低く

(D) $6.1\times10^2$ Pa より高く

(E) $6.1\times10^2$ Pa より低く

問4. $\boxed{\text{オ}}$ に入る適切な状態変化について正しいものを以下の(A)〜(E)のなかからひとつ選んで記号で答えよ。

(A) 蒸発 (B) 融解 (C) 昇華 (D) 凝華 (E) 凝固

(2) 図2のように容積が10 Lの密閉容器Ⅰ、Ⅱを用意した。容器Ⅰには $1.0\times10^{-2}$ mol の水を入れたビーカーが置いてある。容器Ⅱには水溶液P(1.0 mol の水に不揮発性の物質 Z を $8.0\times10^{-2}$ mol 溶かしたもの)と水溶液Q(1.0 mol の水に Z を $2.0\times10^{-2}$ mol 溶かしたもの)を入れたビーカーが置いてある。容器Ⅰ、Ⅱの温度を27℃に保ち、圧力が一定の状態になるまで放置した。

ただし、気体は理想気体として扱えるものとする。また、容器内には上記の物質のみが存在し、液体およびビーカーの体積は無視できるものとする。

問5. 容器Ⅰ内の圧力〔Pa〕を求め、有効数字2桁で答えよ。

問6. 容器Ⅱではビーカー間で水が移動し、気液平衡の状態となった。容器Ⅱ内の圧力〔Pa〕を求め、有効数字2桁で答えよ。ただし、物質 Z は電離せず、水溶液の蒸気圧は溶媒のモル分率に比例するとし(ラウールの法則)、気体の水の物質量は液体の水の物質量に比べて十分小さいものとする。

(3) 図3に示す密閉容器Ⅲを用意した。容器Ⅲにはコックとポンプが接続されている。容器Ⅲに27℃の水を入れたビーカーを置き、容器内の圧力が $1.0\times10^5$ Pa になるまで貴ガスを追加した。時刻0にコックを開けて容器をポンプでゆっくり排気した。時刻 $t_1$ に水の一部が沸騰し始めた。さらに排気すると時刻 $t_2$ に水の一部が氷となり、時刻 $t_3$ に水はすべて氷となった。その後も排気を続けると、時刻 $t_4$ に容器の圧力は $4.0\times10^2$ Pa になり、ビーカーには氷が残った。

容器Ⅲ、ビーカーと外部の間に熱のやりとりはないとし、貴ガスは水に溶けず、水の過冷却は起こらないとする。なお、圧力および温度の変化は緩やかでそれにともなう水の状態変化は状態図にしたがうものとする。

問7. 時刻0から $t_4$ までにおける圧力計の値 $P$ の変化を表すグラフの概形として最も適切なものを以下の(A)〜(E)のなかから、温度計の値 $T$ の変化を表すグラフの概形として最も適切なものを以下の(F)〜(J)のなかから、それぞれひとつ選んで記号で答えよ。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

水は分子量が小さいのに沸点が高い。ファンデルワールス力では説明できないので、水分子の間の特別に強い分子間力に目を向ける。状態図は、3本の曲線が集まる点と蒸気圧曲線が途切れる点を押さえる(下の図)。

2026年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
  1. (ア) 分子量の小さい水だけ沸点が高い理由を、分子間力の強さで決める。
  2. (イ) 固体・液体・気体を分ける3本の曲線の交点 M の名前を答える。
  3. (ウ) 蒸気圧曲線の端の N の名前を答える(それより高温・高圧では液体と気体の区別がつかない)。

【問2の方針】

着眼点

不揮発性の物質を溶かすと、まず蒸気圧が下がり(蒸気圧降下)、その結果として沸点が上がる。凝固点は下がる。凍るのは純粋な水だけなので、氷の昇華圧曲線は変わらない(下の図)。

2026年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
  1. 液体と気体を分ける曲線(蒸気圧曲線)は、蒸気圧降下で下へずれる。
  2. 固体と液体を分ける曲線(融解曲線)は、凝固点降下で左へずれる。
  3. 2本の点線が、もとの昇華圧曲線の上の M より低い点で交わっている図を選ぶ。

【問3・問4の方針】

着眼点

食品を傷めるのは液体の水。水の状態図で液体が存在できるのは三重点 M の圧力より上だけなので、それより低い圧力なら氷は液体を通らずに直接気体になる(問1の図の矢印)。

  1. (エ) 三重点 M の圧力(図1の $6.1\times10^2$ Pa)より低くすれば、温度を上げても液体を通らない。
  2. (オ) 固体が液体を通らずに直接気体になる状態変化の名前を答える。

【問5の方針】

着眼点

水が全部蒸発するか、一部が液体で残るかは、問題文だけでは決まらない。まず全部が気体だと仮定した圧力を求め、27℃の飽和蒸気圧と比べて状態を決める(下の図)。

2026年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
  1. 単位と温度をそろえる(10 L、27℃=300 K)。
  2. 水 $1.0\times10^{-2}$ mol がすべて気体と仮定した圧力 $P_{\mathrm{if}}$ を、状態方程式で求める。
  3. $P_{\mathrm{if}}$ を27℃の飽和蒸気圧(図1の $3.6\times10^3$ Pa)と比べる。小さければ全部気体で、圧力は $P_{\mathrm{if}}$。

【問6の方針】

着眼点

濃さが違う2つの水溶液は蒸気圧も違うので、水は蒸気圧の高い薄い Q から、低い濃い P へ移る。移動が止まるのは2つの蒸気圧、つまり水のモル分率が等しくなったとき(下の図)。

2026年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
  1. はじめの蒸気圧を、ラウールの法則(蒸気圧=純水の蒸気圧×水のモル分率)で比べ、水が Q から P へ移ると決める(逆に仮定しても、移動量が負で求まるだけ)。
  2. Q から P へ移った水を $x$ mol と置き、P と Q の水のモル分率が等しいという式から $x$ を求める。
  3. そのときの水のモル分率を27℃の飽和蒸気圧にかけて、容器Ⅱの圧力を求める。

【問7の方針】

着眼点

容器に水がある間、水蒸気の圧力は状態図の曲線の上の値になる。外から熱が入らないので、水は蒸発・昇華のたびに熱を奪われて冷える。この2つから、水の状態が状態図の上をどう動くかを追う(下の図)。

2026年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第1問 解答の方針の図
  1. 0〜$t_1$:貴ガスを排気して全圧が下がる。水は27℃のまま飽和蒸気圧 $3.6\times10^3$ Pa を保つ。
  2. $t_1$:全圧が水の蒸気圧 $3.6\times10^3$ Pa まで下がり、沸騰が始まる。
  3. $t_1$〜$t_2$:沸騰で熱を奪われて冷え、圧力と温度は蒸気圧曲線にそって三重点($6.1\times10^2$ Pa、0℃)まで下がる。
  4. $t_2$〜$t_3$:三重点で固体・液体・気体が共存するので、圧力も温度も一定。
  5. $t_3$〜$t_4$:全部氷になり、昇華で冷えながら、昇華圧曲線にそって $4.0\times10^2$ Pa(0℃より低い温度)まで下がる。
  6. この動きに合う $P$ のグラフと $T$ のグラフを選ぶ。

解答

2026年九州大学化学 第1問 解答・解説
2026年九州大学化学 第1問 解答・解説
2026年九州大学化学 第1問 解答・解説(続き)
2026年九州大学化学 第1問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

問1

水は分子量が18と小さいのに、ベンゼン(78)・ヘキサン(86)より沸点が高い。分子量が大きいほど強くなるファンデルワールス力では説明できず、水分子の間には水素結合がはたらくからである。

図1の M は固体・液体・気体の3つの状態を分ける3本の曲線の交点で、3つの状態が共存する三重点。N は蒸気圧曲線の端で、それより高温・高圧では液体と気体の区別がつかなくなる臨界点(下の図)。

答(ア) (H) 水素結合(1点)

答(イ) (B) 三重点(1点)

答(ウ) (F) 臨界点(1点)

問2

塩化ナトリウムを溶かすと、蒸気圧をつくる水分子の割合が減るので、同じ温度での蒸気圧が下がる(蒸気圧降下)。蒸気圧曲線は下へずれ、その結果、沸点が上がる(沸点上昇)。また、凝固点は下がる(凝固点降下)ので、融解曲線は左(低温側)へずれる。

凍るときに固体になるのは純粋な水だけなので、氷の昇華圧曲線は変わらない。新しい融解曲線と蒸気圧曲線は、もとの昇華圧曲線の上の M より低い点で交わる(下の図)。

(A) は融解曲線が右(凝固点が上がる)、(C) は蒸気圧曲線が上(蒸気圧が上がる)、(D) は融解曲線は左だが蒸気圧曲線が上なので、どれも誤り。

答 (B)(3点)

問3

食品の劣化を避けるには、液体の水を通らずに氷を水蒸気にしたい。水の状態図で液体が存在できるのは、三重点 M の圧力 $6.1\times10^2$ Pa より高い圧力だけ。これより低い圧力で熱を加えると、固体は液体を通らずに直接気体になる(下の図の矢印)。

$1.0\times10^5$ Pa より低くするだけでは、三重点より上の圧力なら加熱の途中で液体になってしまう。

答 (E)(2点)

問4

固体が液体を通らずに直接気体になる状態変化は昇華。凝華は逆向き(気体→固体)。

答 (C)(2点)

問5

水 $1.0\times10^{-2}$ mol がすべて気体と仮定した圧力 $P_{\mathrm{if}}$ を、状態方程式で求める(10 L、27℃=300 K)。

$$P_{\mathrm{if}}=\dfrac{nRT}{V}=\dfrac{1.0\times10^{-2}\times8.3\times10^3\times300}{10}=2.49\times10^3\ \mathrm{Pa}$$

27℃の水の飽和蒸気圧は、図1より $3.6\times10^3$ Pa。 $P_{\mathrm{if}}<3.6\times10^3$ Pa なので、仮定どおり水はすべて気体で、液体は残らない。容器Ⅰ内の圧力は $P_{\mathrm{if}}$ そのもの(下の図)。

答 $2.5\times10^3$ Pa(5点)

問6

物質 $\mathrm{Z}$ は電離しないので、個数は1。ラウールの法則より、水溶液の蒸気圧は「純水の蒸気圧×水のモル分率」。27℃の純水の蒸気圧 $3.6\times10^3$ Pa を使って、はじめの蒸気圧を比べる。

$$\text{Pの蒸気圧}=3.6\times10^3\times\dfrac{1.0}{1.0+0.080\times1}=3.33\times10^3\ \mathrm{Pa},\qquad \text{Qの蒸気圧}=3.6\times10^3\times\dfrac{1.0}{1.0+0.020\times1}=3.53\times10^3\ \mathrm{Pa}$$

蒸気圧の高い Q で水が蒸発し、蒸気圧の低い P で凝縮するので、水は Q から P へ移る。移った水を $x$ mol と置く(P の水は $1.0+x$、Q の水は $1.0-x$。 $\mathrm{Z}$ は移らない)。

水の移動が止まるのは、2つの蒸気圧が等しくなったとき。純水の蒸気圧は共通なので、水のモル分率が等しくなったとき。モル分率が等しいことは、水1 mol あたりの $\mathrm{Z}$ の物質量が等しいことと同じなので

$$\dfrac{0.080\times1}{1.0+x}=\dfrac{0.020\times1}{1.0-x}\qquad\therefore\ 0.080(1.0-x)=0.020(1.0+x),\quad x=0.60\ \mathrm{mol}$$

P の水は $1.6$ mol、Q の水は $0.40$ mol になる(下の図)。このときの水のモル分率は

$$\dfrac{1.6}{1.6+0.080\times1}=\dfrac{1.6}{1.68}=0.952$$

液体が残っているので、容器Ⅱの圧力は水溶液の蒸気圧。容器Ⅱには水以外の気体はないので

$$P=3.6\times10^3\times0.952=3.43\times10^3\ \mathrm{Pa}$$

答 $3.4\times10^3$ Pa(5点)

問7

外から熱が入らないことと、容器に水がある間は水蒸気の圧力が状態図の曲線の上の値になることから、状態を順に追う(下の図)。

・0〜$t_1$:排気で貴ガスが抜け、全圧(貴ガスの分圧+水の飽和蒸気圧)が下がる。水は液体のまま、水蒸気の圧力は27℃の飽和蒸気圧 $3.6\times10^3$ Pa。排気された分だけ水が少し蒸発するので、温度はわずかに下がる

・$t_1$:全圧が水の蒸気圧 $3.6\times10^3$ Pa まで下がる。外の圧力と蒸気圧が等しくなったので沸騰が始まる

・$t_1$〜$t_2$:沸騰で蒸発する水に熱を奪われ、外から熱が入らないので水は冷える。液体がある間は、圧力はその温度の飽和蒸気圧なので、圧力と温度は蒸気圧曲線にそって下がり、三重点($6.1\times10^2$ Pa、0℃)に達する

・$t_2$〜$t_3$:三重点で水が凍り始める。凝固で放出される熱が、蒸発で奪われる熱をまかなうので、固体・液体・気体が共存したまま、圧力も温度も一定($6.1\times10^2$ Pa、0℃)

・$t_3$〜$t_4$:全部が氷になると、氷の昇華で熱を奪われて冷え、圧力と温度は昇華圧曲線にそって下がる。 $4.0\times10^2$ Pa は三重点の圧力より低いので、このときの温度は0℃より低い

この動きをグラフにすると下の図になる。

圧力:(B) は $1.0\times10^5$ → $t_1$ で $3.6\times10^3$ → $t_2$〜$t_3$ で $3.6\times10^3$ と $4.0\times10^2$ の間($6.1\times10^2$)で一定 → $4.0\times10^2$ で、すべて合う。(A)(E) は排気しても全圧が $1.0\times10^5$ Pa のまま、(C)(D) は沸騰の間に圧力が $3.6\times10^3$ Pa で一定(温度が27℃に保たれることになり、熱が入らない容器ではありえない)なので誤り。

温度:(H) は27℃からわずかに下がり、 $t_1$〜$t_2$ で0℃まで下がり、 $t_2$〜$t_3$ で0℃一定、その後0℃より下がるので、すべて合う。(F) は $t_2$〜$t_3$ で下がり続けて最後が一定(逆)、(G)(I) は $t_1$ で0℃(沸騰が始まる前に0℃まで冷えることはない)、(J) は $t_2$ まで27℃のままなので誤り。

答(圧力計の値 $P$) (B)(3点)

答(温度計の値 $T$) (H)(2点)

別解

問6 (最後は全体のモル分率で求める) 水の移動が止まったとき、P と Q の水のモル分率は等しい。つまり、どちらのビーカーでも「水:$\mathrm{Z}$」の物質量の比が同じになっている。比が同じ2つの溶液は、1つに混ぜても同じ比なので、最後の水のモル分率は2つを合わせた全体の値と同じ。

$$\dfrac{1.0+1.0}{(1.0+1.0)+(0.080+0.020)\times1}=\dfrac{2.0}{2.1}=0.952,\qquad P=3.6\times10^3\times\dfrac{2.0}{2.1}=3.43\times10^3\ \mathrm{Pa}$$

移動量を求めずに圧力だけが求まるので速い。ただし、問題が移動した水の量を聞いてきたときは本解の手順が要る。

出題意図

問1〜問4 水の状態図の外形(三重点・臨界点・3本の曲線)と、溶質を溶かしたときの曲線のずれ方、三重点より低い圧力での昇華を、状態図の上で説明できるか

問5 水が全部蒸発するか、液体が残るかを、すべて気体と仮定した圧力と飽和蒸気圧の比較で判定できるか

問6 2つの水溶液の間の水の移動を、蒸気圧(水のモル分率)がそろうまで続く現象として捉え、ラウールの法則で圧力を求められるか

問7 排気と断熱の条件から、水の状態が状態図の上をどう動くか(蒸気圧曲線→三重点→昇華圧曲線)を推論し、圧力と温度の変化に読みかえられるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや難
目標得点20点15点
目標時間15分15分

2026年の5題で一番難しい大問。
問1〜問4 は状態図の知識で解けるが、差がつくのは問5 以降。

すべて気体と仮定して飽和蒸気圧と比べる判定、ラウールの法則の計算、排気していく容器の状態の移り変わりは、どれも落としがちな所。
温度や圧力が変わる問題は、必ず状態図の上の点の動きで追う癖をつけること。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問7:外から熱が入らない容器で排気すると、水は沸騰・昇華のたびに冷え、状態図の上を蒸気圧曲線→三重点→昇華圧曲線と動く、という発想に行き着けるか。三重点で圧力も温度も止まることが決め手。
  • 問6:水は蒸気圧の高い薄い溶液から濃い溶液へ移り、水のモル分率がそろったところで止まる、という発想に行き着けるか。
  • 問5:問題文に液体が残るとは書いていないので、すべて気体と仮定した圧力を飽和蒸気圧と比べてから状態を決める、という手順を踏めるか。

コラム 凍結乾燥 ― 三重点より下で氷を直接水蒸気にする

問3・問4 の凍結乾燥(フリーズドライ)は、インスタントのみそ汁や乾燥野菜、インスタントコーヒーのほか、熱に弱い医薬品の乾燥にも使われている技術。

2026年九州大学化学 第1問 コラムの図
2026年九州大学化学 第1問 コラムの図
  • なぜ凍らせてから減圧するのか:食品の水を液体のまま加熱して蒸発させると、高い温度で長く液体の水にさらされ、色・香り・栄養が傷む。先に凍らせ、三重点の圧力($6.1\times10^2$ Pa)より低くすると、水は状態図の上で液体の領域を通らなくなり、氷から直接水蒸気になる(昇華)。
  • なぜ熱を加えるのか:昇華は熱を奪う変化。問7 の $t_3$〜$t_4$ と同じで、熱を加えなければ氷は昇華しながら冷え、昇華圧がどんどん小さくなって乾燥が進まなくなる。だから工業的な凍結乾燥では、低い圧力を保ったまま、氷が融けない範囲で熱を加え続ける。
  • できあがりの特徴:氷が抜けたあとがすき間として残るので、できた食品はすき間の多い軽い形になり、お湯を注ぐとすぐに水がしみこんで元に戻る。

九大の化学は、このように身近な技術を状態図の言葉で説明させる。三重点・昇華・蒸気圧曲線の意味を、用語の暗記ではなく「状態図の上でどこからどこへ動くか」で説明できるようにしておけば、初めて見る題材でも解ける。

2026年九州大学化学
第2問 解答・解説

第2問は理論化学(電離平衡)の問題です。
テーマは『反応エンタルピーの計算』『電離平衡の計算』。

問題

2026年九州大学化学 第2問 問題
2026年九州大学化学 第2問 問題
問題文をテキストで読む

次の文章(1)と(2)を読み、問1〜問5に答えよ。

(1) 固体のヨウ素は昇華性を有し、大気圧下で加熱すると紫色の気体となる。固体のヨウ素1 mol が気体に変化するときのエンタルピー変化であるヨウ素の昇華エンタルピーは $+62.4$ kJ/mol である。気体となったヨウ素を水素と混合して加熱すると、以下の式①の反応によりヨウ化水素が生じる。

$\ce{H2}$(気) + $\ce{I2}$(気) $\ce{<=>}$ $\ce{2HI}$(気)  ①

問1. ヨウ化水素の生成エンタルピーは、ヨウ化水素1 mol が気体の水素と固体のヨウ素から生じる式②の反応から定義され、その値は $+26.5$ kJ/mol である。

$\dfrac12\ce{H2}$(気) + $\dfrac12\ce{I2}$(固) $\ce{<=>}$ $\ce{HI}$(気)  ②

このとき、式①の正反応の反応エンタルピー〔kJ/mol〕の値を正負の記号とともに有効数字2桁で答えよ。

問2. 式①の反応には、固体の白金が触媒として作用する。これに関連した記述として、以下の(A)〜(E)から正しいものをすべて選んで記号で答えよ。

(A) 白金の存在により、反応エンタルピーがより小さい経路で式①の反応が進むようになる。

(B) 白金の存在により、大きな運動エネルギーを持つ気体分子の割合が増え、衝突する分子が遷移状態になりやすくなる。

(C) 白金は式①の反応に対して不均一系触媒(不均一触媒)として作用する。

(D) 白金の存在により、式①の反応が平衡状態に到達するまでの時間が短くなる。

(E) 白金の存在により、より多くの気体分子が反応するようになり、平衡状態でのヨウ化水素の濃度が増加する。

(2) 1価の弱酸 $\ce{HA}$ の水溶液を、 $\ce{NaOH}$ 水溶液で中和滴定する実験を考える。 $\ce{NaOH}$ によって $\ce{HA}$ が中和されて徐々に $\ce{NaA}$ に置き換わることから、中和点より滴下量が少ない場合、 $\ce{HA}$ と $\ce{NaA}$ が混合した緩衝液となる。 $\ce{HA}$ および $\ce{NaA}$ はそれぞれ以下の式のように電離する。

$\ce{HA <=> A- + H+}$  ③

$\ce{NaA -> A- + Na+}$  ④

ここで式④のように $\ce{NaA}$ はほぼ完全に電離するため、緩衝液中には $\ce{A-}$ が大量に存在する。従って、緩衝液中では式③の平衡は左に偏っており、電離している $\ce{HA}$ はわずかである。つまり $\ce{HA}$ が $C_{\mathrm{a}}$〔mol/L〕、 $\ce{NaA}$ が $C_{\mathrm{s}}$〔mol/L〕となるように混合した緩衝液については、 $[\ce{HA}]\fallingdotseq C_{\mathrm{a}}$、 $[\ce{A-}]\fallingdotseq C_{\mathrm{s}}$ と近似できる。

上記をふまえ、0.10 mol/L の $\ce{HA}$ 水溶液100 mL を0.20 mol/L の $\ce{NaOH}$ 水溶液で滴定する実験を行った。ただし、 $\ce{HA}$ の電離定数 $K_{\mathrm{a}}=1.0\times10^{-5}$ mol/L、水のイオン積 $K_{\mathrm{w}}=1.0\times10^{-14}\ \mathrm{mol^2/L^2}$ とする。

問3. 滴定を開始する前の $\ce{HA}$ 水溶液の pH を有効数字2桁で答えよ。

問4. $\ce{NaOH}$ 水溶液を30 mL 滴下した後の水溶液の pH を有効数字2桁で答えよ。

問5. $\ce{NaOH}$ 水溶液を50 mL 滴下した後の水溶液の pH を有効数字2桁で答えよ。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

熱化学はエンタルピー図で解く。ベースとなる式は式①。生成エンタルピーは単体(固体のヨウ素)から考えるので、式①の気体のヨウ素とは昇華エンタルピーの分だけ高さがずれる(下の図)。

2026年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
  1. 式①をベースとなる式にし、反応前の $\ce{H2}$(気)+ $\ce{I2}$(気) から反応後の $\ce{2HI}$(気) への矢印を $X$ とおく。
  2. 単体 $\ce{H2}$(気)+ $\ce{I2}$(固) の段を置き、$\ce{2HI}$ の段とは HI の生成エンタルピーの2倍で、反応前の段とはヨウ素の昇華エンタルピーで繋ぐ。
  3. 単体から $\ce{2HI}$ へ行く2通りの矢印の和が等しいとして、 $X$ を求める。

【問2の方針】

着眼点

触媒は、活性化エネルギーの小さい別の経路をつくって反応を速くするだけである。反応前と反応後の高さ(反応エンタルピー)も、平衡の位置も変えない。速度と平衡は分けて考える(下の図)。

2026年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
  1. 触媒が変えるもの(活性化エネルギー・正反応と逆反応の速さ・平衡に着くまでの時間)と、変えないもの(反応エンタルピー・平衡での濃度・分子の運動エネルギーの分布)に分けて、(A)〜(E) を1つずつ判定する。
  2. (C) は、反応物(気体)と触媒(固体)の状態が違うかどうかで判定する。

【問3〜問5の方針】

着眼点

電離平衡の計算は、まず「弱酸の電離」「緩衝液」「塩の加水分解」のどれかを見分ける。滴定前は $\ce{HA}$ だけ、途中は $\ce{HA}$ と $\ce{A-}$ の緩衝液、中和点は $\ce{A-}$ だけになる(下の図)。

2026年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第2問 解答の方針の図
  1. 滴定前は弱酸 $\ce{HA}$ だけ。 $[\ce{H+}]=\sqrt{CK_{\mathrm a}}$ で求め、 $\alpha=\dfrac{[\ce{H+}]}{C}$ で近似を確かめて pH を求める(問3)。
  2. 30 mL 滴下では、 $\ce{HA}$ と $\ce{OH-}$ の反応を物質量の表で追う。反応後に $\ce{HA}$ と $\ce{A-}$ が両方残るので緩衝液。同じ溶液なので物質量の比のまま電離定数の式に入れて $[\ce{H+}]$ 、pH を求める(問4)。
  3. 50 mL 滴下では $\ce{NaOH}$ と $\ce{HA}$ の物質量が等しく、中和点ちょうど。 $\ce{NaA}$ だけの水溶液なので塩の加水分解。体積150 mL で $\ce{A-}$ の濃度 $C$ を求め、 $K_{\mathrm h}=\dfrac{K_{\mathrm w}}{K_{\mathrm a}}$ をつくって $[\ce{OH-}]=\sqrt{CK_{\mathrm h}}$ 、α を確かめて pOH から pH を求める(問5)。

解答

2026年九州大学化学 第2問 解答・解説
2026年九州大学化学 第2問 解答・解説
2026年九州大学化学 第2問 解答・解説(続き)
2026年九州大学化学 第2問 解答・解説(続き)
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問1

求めたいのは式①の反応エンタルピーなので、ベースとなる式は式①(生成エンタルピーの式ではない)。反応前 $\ce{H2}$(気)+ $\ce{I2}$(気) から反応後 $\ce{2HI}$(気) への矢印を $X$〔kJ〕とおく。

生成エンタルピーで繋ぐので、単体の段を置く。ヨウ素の単体は固体なので、単体の段は $\ce{H2}$(気)+ $\ce{I2}$(固)。状態の区別が要るのはヨウ素だけなので、ヨウ素にだけ状態を書く。

・単体 → $\ce{2HI}$(気):HI の生成エンタルピーは HI 1 mol あたり $+26.5$ kJ なので、2 mol では $+26.5\times2=+53.0$ kJ(上向き)

・単体 → $\ce{H2}$(気)+ $\ce{I2}$(気):昇華エンタルピーは固体のヨウ素1 mol が気体になるときの値なので $+62.4$ kJ(上向き)

どちらも正の値なので、単体の段が一番下になる(下の図)。単体から $\ce{2HI}$ へ行く2通りの矢印の和は等しいので

$$62.4+X=26.5\times2\qquad\therefore\ X=53.0-62.4=-9.4$$

負なので、反応後の $\ce{2HI}$ は反応前より下にあり、式①の正反応は発熱反応。

答 $-9.4$ kJ/mol(5点)

問2

触媒は、活性化エネルギーの小さい別の経路で反応を進める。反応前と反応後の高さは変わらない(着眼点の図)。

・(A) 誤り。小さくなるのは活性化エネルギー。反応前と反応後の高さは変わらないので、反応エンタルピーは変わらない。

・(B) 誤り。大きな運動エネルギーをもつ分子の割合が増えるのは、温度を上げたとき。触媒は分子のエネルギーの分布を変えず、越えなければならない山(活性化エネルギー)を低くする。

・(C) 正しい。反応物は気体、白金は固体で、状態が違う。反応物と触媒の状態が違うものを不均一触媒という(反応物と同じ溶液に溶けて働くものは均一触媒)。

・(D) 正しい。活性化エネルギーは正反応・逆反応とも同じだけ下がるので、どちらも速くなり、平衡に早く着く。

・(E) 誤り。触媒は平衡を移動させない。平衡でのヨウ化水素の濃度は触媒があってもなくても同じ。

答 (C)、(D)(5点)

問3

滴定前は弱酸 $\ce{HA}$ だけなので、弱酸の電離の問題。 $C=0.10$ mol/L、 $K_{\mathrm a}=1.0\times10^{-5}$ mol/L から

$$[\ce{H+}]=\sqrt{CK_{\mathrm a}}=\sqrt{0.10\times1.0\times10^{-5}}=1.0\times10^{-3}\ \mathrm{mol/L}$$

$\alpha=\dfrac{[\ce{H+}]}{C}=\dfrac{1.0\times10^{-3}}{0.10}=1.0\times10^{-2}$ で、 $\alpha$ は1よりはるかに小さいので、 $1-\alpha\fallingdotseq1$ の近似は成り立つ。

$$\mathrm{pH}=-\log_{10}(1.0\times10^{-3})=3.0$$

答 3.0(5点)

問4

中和の途中なので、反応前・変化量・反応後を物質量で書く。 $\ce{HA}$ は $0.10\times\dfrac{100}{1000}=1.0\times10^{-2}$ mol、 $\ce{NaOH}$ は $0.20\times\dfrac{30}{1000}=6.0\times10^{-3}$ mol。 $\ce{HA + OH- -> A- + H2O}$ で1:1に反応する(下の図の上)。

反応後は $\ce{HA}$ が $4.0\times10^{-3}$ mol、 $\ce{A-}$ が $6.0\times10^{-3}$ mol で、両方あるので緩衝液。 $\ce{A-}$ が多量にあるので $\ce{HA}$ の電離はほとんど進まず、残った $\ce{HA}$ の量・できた $\ce{A-}$ の量をそのまま使える(問題文の $[\ce{HA}]\fallingdotseq C_{\mathrm a}$、 $[\ce{A-}]\fallingdotseq C_{\mathrm s}$ )。

電離定数の式を $[\ce{H+}]$ について直すと $[\ce{H+}]=K_{\mathrm a}\times\dfrac{[\ce{HA}]}{[\ce{A-}]}$ 。溶液の量は同じなので、濃度でなく物質量の比を入れてよい。

$$[\ce{H+}]=1.0\times10^{-5}\times\frac{4.0\times10^{-3}}{6.0\times10^{-3}}=\frac23\times10^{-5}\ \mathrm{mol/L}$$

$$\mathrm{pH}=5-\log_{10}\frac23=5-0.30+0.48=5.18$$

答 5.2(5点)

問5

$\ce{NaOH}$ は $0.20\times\dfrac{50}{1000}=1.0\times10^{-2}$ mol で、 $\ce{HA}$ の $1.0\times10^{-2}$ mol とちょうど等しい。50 mL は中和点ちょうどで、 $\ce{HA}$ も $\ce{OH-}$ も残らず、 $\ce{NaA}$ だけの水溶液になる(問4 の図の下の表)。よって塩の加水分解の問題。

$\ce{NaA}$ は完全に電離し、 $\ce{A-}$ の一部が水と反応して $\ce{OH-}$ をつくるので塩基性。

$$\ce{A- + H2O <=> HA + OH-}$$

水は大量にあるので式に入れず、 $K_{\mathrm h}=\dfrac{[\ce{HA}][\ce{OH-}]}{[\ce{A-}]}$ 。 $K_{\mathrm h}$ は与えられていないので、分母と分子に $[\ce{H+}]$ をかけてつくる。

$$K_{\mathrm h}=\frac{[\ce{HA}]}{[\ce{A-}][\ce{H+}]}\times[\ce{OH-}][\ce{H+}]=\frac{K_{\mathrm w}}{K_{\mathrm a}}=\frac{1.0\times10^{-14}}{1.0\times10^{-5}}=1.0\times10^{-9}\ \mathrm{mol/L}$$

体積は $100+50=150$ mL なので、 $\ce{A-}$ の濃度は $C=\dfrac{1.0\times10^{-2}}{0.150}=\dfrac{1}{15}$ mol/L。

$$[\ce{OH-}]=\sqrt{CK_{\mathrm h}}=\sqrt{\frac{1}{15}\times1.0\times10^{-9}}=\sqrt{\frac23\times10^{-10}}\ \mathrm{mol/L}$$

$\alpha=\dfrac{[\ce{OH-}]}{C}\fallingdotseq1.2\times10^{-4}$ で、1よりはるかに小さいので近似は成り立つ。

$$\mathrm{pOH}=5-\frac12\log_{10}\frac23=5+\frac12(0.48-0.30)=5.09$$

$$\mathrm{pH}=14-5.09=8.91$$

3つの pH を滴定曲線にのせると、下の図のようになる。

答 8.9(5点)

別解

問1 (式の足し引き) 式②を2倍すると $\ce{H2}$(気)+ $\ce{I2}$(固) → $\ce{2HI}$(気) $\Delta H=+53.0$ kJ。昇華は $\ce{I2}$(固) → $\ce{I2}$(気) $\Delta H=+62.4$ kJ。1本目から2本目を引くと $\ce{I2}$(固) が消えて $\ce{H2}$(気)+ $\ce{I2}$(気) → $\ce{2HI}$(気) となり、 $\Delta H=53.0-62.4=-9.4$ kJ。

問3 ( $C$ と $\alpha$ の表から)  $\ce{HA <=> A- + H+}$ で、反応前 $C$ ・ $0$ ・ $0$ 、変化量 $-C\alpha$ ・ $+C\alpha$ ・ $+C\alpha$ 、反応後 $C(1-\alpha)$ ・ $C\alpha$ ・ $C\alpha$ 。 $K_{\mathrm a}=\dfrac{C\alpha^2}{1-\alpha}\fallingdotseq C\alpha^2$ より $\alpha=\sqrt{\dfrac{K_{\mathrm a}}{C}}=1.0\times10^{-2}$ 、 $[\ce{H+}]=C\alpha=1.0\times10^{-3}$ mol/L。

問4 (濃度で入れる) 体積は130 mL なので $[\ce{HA}]=\dfrac{4.0\times10^{-3}}{0.130}$ mol/L、 $[\ce{A-}]=\dfrac{6.0\times10^{-3}}{0.130}$ mol/L。比をとると0.130 が約分で消え、物質量の比と同じ $\dfrac{4.0}{6.0}$ になる。

問5 ( $[\ce{H+}]$ から)  $[\ce{H+}]=\dfrac{K_{\mathrm w}}{[\ce{OH-}]}=\sqrt{\dfrac{K_{\mathrm a}K_{\mathrm w}}{C}}=\sqrt{15\times10^{-19}}=\sqrt{1.5}\times10^{-9}$ mol/L。 $\mathrm{pH}=9-\dfrac12\log_{10}\dfrac32=9-\dfrac12(0.48-0.30)=8.91$ 。

出題意図

問1 生成エンタルピーの定義(単体=固体のヨウ素から)と、式①の気体のヨウ素の違いを、昇華エンタルピーで埋めて反応エンタルピーを求めることができるか

問2 触媒が変えるもの(活性化エネルギー・反応の速さ)と変えないもの(反応エンタルピー・平衡)を区別できるか

問3〜問5 滴定の各段階が弱酸の電離・緩衝液・塩の加水分解のどれに当たるかを見分け、それぞれの pH を求めることができるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度標準
目標得点25点20点
目標時間15分15分

2026年の化学の合否を分けたのは、第2問の問3〜問5。
弱酸の電離・緩衝液・塩の加水分解はどれも重要問題集に載っている典型問題で、滴定のどの段階かを見分ければ解き方は決まっている。

電離平衡は苦手な受験生が多い単元なので、典型問題が3つ並ぶだけで大きく差がつく。
$\sqrt{CK_{\mathrm a}}$ ・比・ $\sqrt{CK_{\mathrm h}}$ を白紙から導けるまで練習しておこう。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問3〜問5:滴定の各段階が弱酸の電離・緩衝液・塩の加水分解のどれに当たるかを、その時点の物質量から見分けられるか。電離平衡は苦手な受験生が多い単元で、この3問を正確に解けたかで合否が分かれた。とくに問5 は、50 mL が中和点ちょうどだと物質量で確かめて加水分解に切りかえ、 $\ce{A-}$ の濃度を体積150 mL で求められるかが決め手。

2026年九州大学化学
第3問 解答・解説

第3問は無機化学・理論化学の問題です。
テーマは『2族の性質』『結晶格子の密度』。

問題

2026年九州大学化学 第3問 問題
2026年九州大学化学 第3問 問題
問題文をテキストで読む

次の文章(1)〜(3)を読み、問1〜問4に答えよ。

(1) アルカリ土類金属は2族に属する価電子数2の元素である。代表的なアルカリ土類金属であるマグネシウムやカルシウムの化合物は、薬剤や生体材料等、身近に利用されている。

問1. アルカリ土類金属およびその化合物に関する記述として正しいものを、以下の(A)〜(D)のなかからすべて選んで記号で答えよ。

(A) マグネシウムを空気中で強熱すると激しく燃焼し、酸化物となる。

(B) 酸化カルシウムは、室温では水と反応しない。

(C) 硫酸バリウムは水に溶けにくく、X線造影剤に利用される安定な物質である。

(D) ストロンチウムはカルシウムより反応性が低く、灯油中で保存する安定な物質である。

(2) 陽イオンと陰イオンのイオン結合によってできる結晶をイオン結晶という。代表的なイオン結晶の結晶構造は $\ce{NaCl}$ 型、 $\ce{CsCl}$ 型である。塩化アンモニウムは184℃以上で $\ce{NaCl}$ 型構造、室温で $\ce{CsCl}$ 型構造として存在する化合物であり、肥料や工業薬品など、幅広い分野で利用されている。

問2. 塩化アンモニウムが $\ce{NaCl}$ 型構造と $\ce{CsCl}$ 型構造で存在する際の密度〔g/cm³〕を示す計算式を、以下の(A)〜(K)のなかからそれぞれひとつ選んで記号で答えよ。ただし、アンモニウムイオンは球として取り扱う。また、 $\ce{NaCl}$ 型構造と $\ce{CsCl}$ 型構造それぞれにおける単位格子の体積は0.278 nm³ と0.0577 nm³ とし、アボガドロ定数は $N_{\mathrm{A}}$ とする。

(A) $\dfrac{3.57\times10^{24}}{N_{\mathrm{A}}}$ (B) $\dfrac{9.10\times10^{23}}{N_{\mathrm{A}}}$

(C) $\dfrac{7.70\times10^{23}}{N_{\mathrm{A}}}$ (D) $\dfrac{7.41\times10^{23}}{N_{\mathrm{A}}}$

(E) $\dfrac{1.85\times10^{23}}{N_{\mathrm{A}}}$ (F) $\dfrac{3.64\times10^{24}}{N_{\mathrm{A}}}$

(G) $\dfrac{3.71\times10^{24}}{N_{\mathrm{A}}}$ (H) $\dfrac{9.27\times10^{23}}{N_{\mathrm{A}}}$

(I) $\dfrac{1.89\times10^{23}}{N_{\mathrm{A}}}$ (J) $\dfrac{7.55\times10^{23}}{N_{\mathrm{A}}}$

(K) $\dfrac{8.93\times10^{23}}{N_{\mathrm{A}}}$

(3) ハロゲンは17族に属する価電子数7の元素である。ハロゲンの化合物は医療、産業などの分野で利用されている。例えばヨウ素化合物(a)は、消毒液やうがい薬などの医薬品として我々の生活を支えている。またフッ化水素はフッ素の化合物であり、その水溶液であるフッ化水素酸(b)は半導体製造に不可欠なエッチング剤として利用されている。

問3. 下線部(a)に関して、湿ったヨウ化カリウムデンプン紙にオゾンを接触させると、青紫色(青色)に変色する。この現象を利用することによりオゾンの検出が可能である。このときに起こる変化の一部は、以下の化学反応式により表される。この化学反応式における空欄 $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{ウ}}$ に入る化学式を、係数を含めてそれぞれ順不同で答えよ。なお係数が1の場合は省略せよ。

$\ce{2KI + O3 + H2O ->}$ $\boxed{\text{ア}}$ + $\boxed{\text{イ}}$ + $\boxed{\text{ウ}}$

問4. 下線部(b)に関して、フッ化水素酸は石英( $\ce{SiO2}$ )を溶かしてヘキサフルオロケイ酸を生成することが知られている。ここでフッ化カルシウムと濃硫酸を反応させてフッ化水素を発生させた。さらに得られたフッ化水素の水溶液と石英を反応させたところ、36.0 g の水が生成した。このとき、反応に使われたフッ化カルシウムの質量〔g〕を、小数点以下を四捨五入し整数で答えよ。ただし、フッ化カルシウムおよび発生したフッ化水素はすべて反応したとする。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

2族は、上の2つ(Be・Mg)と下の3つ(Ca・Sr・Ba)で性質が分かれ、下の元素ほど反応が激しい。この2つの軸の図を頭に置けば、4つの記述はどれも図の1マスを聞いているだけ(下の図)。

2026年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
  1. (A) マグネシウムと酸素の反応を、2族の酸素との反応の並びで確かめる。
  2. (B) 酸化カルシウムが常温の水と反応する塩基性酸化物であることを確かめる。
  3. (C) 2族の硫酸塩の溶けやすさの並びと、硫酸バリウムの用途を確かめる。
  4. (D) 2族の単体の反応性の並び(下ほど激しい)と、石油(灯油)の中に保存する理由を確かめる。
  5. 正しい記述をすべて選ぶ。

【問2の方針】

着眼点

密度は「1組あたりの質量×組の数」を単位格子の体積で割って立てる。 $\ce{NH4+}$ を球として $\ce{NH4Cl}$ をまとまりで数えれば、2つの構造で変わるのは組の数と体積だけ(下の図)。

2026年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
  1. $\ce{NH4Cl}$ の式量を求め、1組あたりの質量を $N_{\mathrm A}$ で表す。
  2. $\ce{NaCl}$ 型・$\ce{CsCl}$ 型の単位格子の中の $\ce{Cl-}$ と $\ce{NH4+}$ を位置ごとに数え、組の数を求める。
  3. 単位格子の体積を nm³ から cm³ に直す。
  4. 密度の定義に入れて計算し、選択肢と比べる。

【問3の方針】

着眼点

オゾンは酸化剤、ヨウ化物イオンは還元剤(下の図)。湿らせただけの紙には酸を加えていないので、酸性の形で書いた半反応式を $\ce{OH-}$ で直す発想が要る。

2026年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
  1. 酸化剤 $\ce{O3}$ の半反応式(酸性の形)と、還元剤 $\ce{I-}$ の半反応式を書く。
  2. 電子の数をそろえて足し、イオン反応式にする。
  3. 酸を加えていないので、両辺に $\ce{OH-}$ を足して $\ce{H+}$ を消す。
  4. $\ce{I-}$ はヨウ化カリウム由来なので、両辺に $\ce{K+}$ を足して化学反応式にし、ア〜ウを読み取る。

【問4の方針】

着眼点

2本の反応はフッ化水素でつながっている。分かっているのは最後にできた水の量なので、係数の比を2本目、1本目の順に逆にたどる(下の図)。

2026年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第3問 解答の方針の図
  1. フッ化水素の製法と、フッ化水素酸と石英の反応の化学反応式を書く。
  2. 生じた水の質量を物質量に直す。
  3. 石英の反応の係数の比から、使われたフッ化水素の物質量を求める。
  4. フッ化水素の製法の係数の比から、フッ化カルシウムの物質量を求め、質量に直す。

解答

2026年九州大学化学 第3問 解答・解説
2026年九州大学化学 第3問 解答・解説
2026年九州大学化学 第3問 解答・解説(続き)
2026年九州大学化学 第3問 解答・解説(続き)
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問1

2族の元素を、周期表の上の2つ(Be・Mg)と下の3つ(Ca・Sr・Ba)に分けて並べると下の図になる。選択肢はどれも、この図のどこか1マスを聞いている。

・(A) 正しい。マグネシウムは空気中で強熱すると、強い白色光を放って激しく燃え、酸化マグネシウムになる(花火に使われる)。 $\ce{2Mg + O2 -> 2MgO}$ 。酸素との反応を2族で並べると、Be は高温で徐々に、Mg は強熱で燃焼、Ca・Sr・Ba は常温でも速やかに酸化される。Mg は二酸化炭素の中でも燃える( $\ce{2Mg + CO2 -> 2MgO + C}$ )

・(B) 誤り。酸化カルシウム(生石灰)は室温でも水と激しく反応し、多量の熱を放出して水酸化カルシウム(消石灰)になる。 $\ce{CaO + H2O -> Ca(OH)2}$ 。常温で水と反応する金属の酸化物は、アルカリ金属とアルカリ土類金属の酸化物(塩基性酸化物)だけで、本質は $\ce{O^2- + H2O -> 2OH-}$ の1本。 $\ce{CuO}$ ・ $\ce{Fe2O3}$ は水と反応しない。この発熱は加熱式の弁当に、水を吸う性質は塩基性の乾燥剤に使われている

・(C) 正しい。2族の硫酸塩は、Be・Mg は水に溶け、Ca・Sr・Ba は水に溶けにくい。硫酸バリウムは水にも酸にも溶けにくい。 $\ce{Ba^2+}$ そのものは有毒だが、硫酸バリウムは溶けないので体内に吸収されず、X線をよく吸収するので造影剤に使われる

・(D) 誤り。2族の単体は、周期表の下の元素ほど電子を放出しやすく(還元力が強く)、反応が激しい。水との反応は、Be はほとんど反応しない、Mg は熱水と反応、Ca・Sr・Ba は冷水とも反応する。Sr は Ca より反応性が高い。石油(灯油)の中に保存するのは正しいが、理由は「安定だから」ではなく「空気や水とすぐ反応してしまうから」(アルカリ金属と同じ理由)

答 (A)・(C)(4点)

問2

$\ce{NH4Cl}$ の式量は $14.0+1.00\times4+35.5=53.5$ 。1組あたりの質量は、1 mol あたりの質量をアボガドロ定数で割って $\dfrac{53.5}{N_{\mathrm A}}$ g。

単位格子の中の個数を、位置ごとの「何個分×数」で数える(下の図)。

・$\ce{NaCl}$ 型: $\ce{Cl-}$ は頂点と面の中心で $\dfrac18\times8+\dfrac12\times6=4$ 個、 $\ce{NH4+}$ は辺の中点と中心で $\dfrac14\times12+1=4$ 個。よって $\ce{NH4Cl}$ は4組

・$\ce{CsCl}$ 型: $\ce{Cl-}$ は頂点で $\dfrac18\times8=1$ 個、 $\ce{NH4+}$ は中心に1個。よって $\ce{NH4Cl}$ は1組

体積は $1\ \mathrm{nm}=10^{-7}\ \mathrm{cm}$ より $1\ \mathrm{nm^3}=10^{-21}\ \mathrm{cm^3}$ 。密度は「1組あたりの質量×組の数」を単位格子の体積で割る。

$$\ce{NaCl}\ \text{型}\quad\frac{\dfrac{53.5}{N_{\mathrm A}}\times4}{0.278\times10^{-21}}=\frac{214}{0.278\times10^{-21}N_{\mathrm A}}\fallingdotseq\frac{7.70\times10^{23}}{N_{\mathrm A}}\ \mathrm{g/cm^3}$$

$$\ce{CsCl}\ \text{型}\quad\frac{\dfrac{53.5}{N_{\mathrm A}}\times1}{0.0577\times10^{-21}}=\frac{53.5}{0.0577\times10^{-21}N_{\mathrm A}}\fallingdotseq\frac{9.27\times10^{23}}{N_{\mathrm A}}\ \mathrm{g/cm^3}$$

11個の選択肢は、式量(正しい53.5と、数え違えた52.5・51.5)と組の数(4と1の取り違え)の組み合わせで作られている。組の数を取り違えると、すぐ隣に答えのような値が用意されている。

式量$\ce{NaCl}$ 型・4組$\ce{NaCl}$ 型・1組$\ce{CsCl}$ 型・1組$\ce{CsCl}$ 型・4組
53.5(C)―(H)(G)
52.5(J)(I)(B)(F)
51.5(D)(E)(K)(A)

答($\ce{NaCl}$ 型) (C) $\dfrac{7.70\times10^{23}}{N_{\mathrm A}}$(5点)

答($\ce{CsCl}$ 型) (H) $\dfrac{9.27\times10^{23}}{N_{\mathrm A}}$(5点)

問3

酸化剤のオゾンは電子を受け取り、還元剤のヨウ化物イオンは電子を渡す。それぞれの半反応式は次のとおり(オゾンはまず酸性の形で書く)。

$$\ce{O3 + 2H+ + 2e- -> O2 + H2O}\qquad\ce{2I- -> I2 + 2e-}$$

受け取る電子と渡す電子はどちらも2個なので、そのまま足すとイオン反応式になる。

$$\ce{O3 + 2I- + 2H+ -> O2 + I2 + H2O}$$

紙は湿らせただけで酸を加えていないので、両辺に $\ce{2OH-}$ を足して左辺の $\ce{2H+}$ を $\ce{2H2O}$ に変え、両辺の $\ce{H2O}$ を1つずつ消す。

$$\ce{O3 + 2I- + H2O -> O2 + I2 + 2OH-}$$

$\ce{I-}$ はヨウ化カリウム由来なので、両辺に $\ce{2K+}$ を足すと化学反応式になる。

$$\ce{2KI + O3 + H2O -> I2 + O2 + 2KOH}$$

生じたヨウ素がデンプンと反応して青紫色になる(ヨウ素デンプン反応)。ハロゲンの単体の酸化力は $\ce{F2}>\ce{Cl2}>\ce{Br2}>\ce{I2}$ なので、塩素や臭素を当てても同じようにヨウ素ができて青紫色になる( $\ce{Cl2 + 2I- -> 2Cl- + I2}$ )。

(ア〜ウは順不同)

答(ア) $\ce{I2}$(2点)

答(イ) $\ce{O2}$(2点)

答(ウ) $\ce{2KOH}$(2点)

問4

フッ化カルシウム(ホタル石)に濃硫酸を加えて熱すると、揮発性の酸であるフッ化水素が気体として追い出される(揮発性の酸の遊離。塩化ナトリウムと濃硫酸から塩化水素をつくる $\ce{NaCl + H2SO4 -> NaHSO4 + HCl}$ と同じ形)。

$$\ce{CaF2 + H2SO4 -> CaSO4 + 2HF}\quad\text{①}$$

フッ化水素の水溶液(フッ化水素酸)は石英を溶かし、ヘキサフルオロケイ酸になる。

$$\ce{SiO2 + 6HF -> H2SiF6 + 2H2O}\quad\text{②}$$

まず、生じた水を物質量に直す。水1 mol あたり18.0 g なので

$$\frac{36.0}{18.0}=2.00\ \mathrm{mol}\quad(\text{生じた水の物質量})$$

係数の比は物質量の比なので、② から、使われたフッ化水素は水の3倍。

$$2.00\times3=6.00\ \mathrm{mol}\quad(\text{使われたフッ化水素の物質量})$$

① から、フッ化カルシウムはフッ化水素の $\dfrac12$ 倍。

$$6.00\times\frac12=3.00\ \mathrm{mol}\quad(\text{使われたフッ化カルシウムの物質量})$$

$\ce{CaF2}$ の式量は $40.1+19.0\times2=78.1$ なので、質量は $3.00\times78.1=234.3$ g。

石英(ガラス)とフッ化水素の反応は、水溶液か気体かで生成物が変わる。気体のフッ化水素なら $\ce{SiO2 + 4HF -> SiF4 + 2H2O}$ (四フッ化ケイ素)、水溶液なら ② のヘキサフルオロケイ酸。問題文に「ヘキサフルオロケイ酸を生成する」とあるので ② を使う。酸のなかでガラスを溶かすのはフッ化水素酸だけなので、フッ化水素酸はガラスびんに入れず、ポリエチレンの容器に保存する。

答 234 g(5点)

別解

問3 (反応式を覚えている場合)ヨウ化カリウムデンプン紙でオゾンを検出する反応は、入試で何度も問われる反応式なので、 $\ce{2KI + O3 + H2O -> I2 + O2 + 2KOH}$ を覚えていれば、そのまま書けばよい。ただし、覚え違いに気づけるように、本解の「半反応式 → 電子を消す → $\ce{OH-}$ で直す → $\ce{K+}$ を足す」の順で組み立てられるようにしておく。

問4 (フッ素原子に注目する)フッ素原子は $\ce{CaF2}\to\ce{HF}\to\ce{H2SiF6}$ と移り、途中で抜けない。 $\ce{H2SiF6}$ 1個(フッ素原子6個)ができるとき水は2個できるので、フッ素原子6個に水2個が対応する。フッ素原子6個は $\ce{CaF2}$ 3個分なので、 $\ce{CaF2}$ と水の物質量の比は $3:2$ 。よって $\ce{CaF2}$ は $2.00\times\dfrac32=3.00$ mol で、本解と同じ234 g。慣れてきたら、こちらの方が速い。

出題意図

問1 2族の元素を Be・Mg と Ca・Sr・Ba の2つに分けて性質を整理し、周期表の上下の傾向とあわせて、4つの記述をすべて正しく判定できるか

問2 アンモニウムイオンを1つの球とみなして $\ce{NH4Cl}$ をまとまりで数え、 $\ce{NaCl}$ 型・$\ce{CsCl}$ 型の単位格子の中の組の数から密度の式を立てられるか

問3 オゾンとヨウ化物イオンの半反応式を組み合わせ、酸を加えていない条件に合わせて化学反応式を完成できるか

問4 フッ化水素の製法と石英の溶解の2本の反応式をフッ化水素でつなぎ、係数の比を逆にたどって物質量を求められるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度標準
目標得点20点20点
目標時間10分10分

知識と典型計算でできた大問だが、標準の大問。
理由は2つで、1つは $\ce{NaCl}$ 型・ $\ce{CsCl}$ 型の単位格子の構造を知らないと問2 に手が出ないこと、もう1つは問1 が「すべて」選ぶ正誤で、4つとも判定しきらないと点にならないこと。

2つの構造と限界半径比は苦手な受験生が多いので、単位格子は白紙に書けるまで練習しておく。
無機の正誤は○×で覚えず、Be・Mg と Ca・Sr・Ba のように系列で押さえておけば、どの角度で聞かれても迷わない。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問2:$\ce{NaCl}$ 型・$\ce{CsCl}$ 型の単位格子の構造が頭に入っていて、アンモニウムイオンを1つの球として $\ce{NaCl}$ 型は4組・$\ce{CsCl}$ 型は1組と言い切れるか。2つの構造と限界半径比は苦手な受験生が多く、構造がすぐに分かる受験生は少ない。ここで大きく差がつく。
  • 問1:「すべて」選ぶ正誤で、4つすべてを判定しきれないと点にならない。(D) は「灯油の中で保存する」という事実は正しく、「反応性が低く安定」という理由がすり替わっている、と見抜けるか。

コラム フッ化水素酸で半導体を削る ― エッチング

問4 のフッ化水素酸と石英の反応 $\ce{SiO2 + 6HF -> H2SiF6 + 2H2O}$ は、問題文にもあるとおり、半導体の製造に欠かせない。スマートフォンやパソコンの半導体は、ケイ素の結晶の薄い板の表面に、二酸化ケイ素の薄い膜をつくり、そこに必要な形だけを残して削ることをくり返してつくる。この「削る」作業をエッチングという。

2026年九州大学化学 第3問 コラムの図
2026年九州大学化学 第3問 コラムの図
  • 溶かしたい所だけを溶かす:膜の上を、光で模様を付けられる樹脂の膜(レジスト)で覆ってからフッ化水素酸に入れると、覆われていない所の二酸化ケイ素だけが溶ける。フッ化水素酸は二酸化ケイ素をよく溶かすが、下のケイ素はほとんど溶かさないので、酸化膜だけをきれいに取り除ける。
  • 溶ける速さをそろえる:濃いフッ化水素酸のままでは速く溶けすぎて加減が難しく、レジストもはがれやすい。そこでフッ化アンモニウム $\ce{NH4F}$ を混ぜた「緩衝フッ酸」にして、フッ化水素が使われても液の性質が変わりにくく、溶ける速さが一定になるようにしている。第2問で出てきた緩衝液と同じ考え方が、工場の現場で使われている。
  • ガラスびんに入れない理由も同じ:ガラスの主成分も二酸化ケイ素なので、フッ化水素酸はガラスを溶かしてしまう。実験室でフッ化水素酸をポリエチレンの容器に保存するのは、この反応のため。

入試で覚える1本の反応式が、そのまま身近な製品の製造につながっている。無機の反応式は、何に使われているかとセットで押さえておくと忘れにくい。

2026年九州大学化学
第4問 解答・解説

第4問は有機化学の問題です。
テーマは『炭素陽イオンの安定性』『不斉炭素』。

問題

2026年九州大学化学 第4問 問題
2026年九州大学化学 第4問 問題
問題文をテキストで読む

次の文章(1)〜(3)を読み、問1〜問6に答えよ。構造式を答える際には、表紙にある記入例にならって答えよ。

(1) 下図のように、化合物 1 に濃塩酸を作用させたところ、塩化水素が付加した化合物 2 と 3 がそれぞれ生じた。この反応の主生成物は 2 であった。

この反応の機構は以下のように考えられる。まず、化合物 1 のベンゼン環の外にある炭素-炭素二重結合が、濃塩酸に含まれる水素イオン $\ce{H+}$ と反応し、炭素陽イオンを含む中間体①もしくは②が生じる。炭素陽イオンは多くの場合、その炭素に連結する水素原子が少ないほど安定である(a)ため、中間体①は中間体②に比べ安定だと考えられる。この中間体①の炭素陽イオンの位置で塩化物イオンが反応することで、化合物 2 が主生成物として生じる。このような、炭素-炭素二重結合へのハロゲン化水素などの付加の位置に関わる経験則を $\boxed{\text{ア}}$ の法則と呼ぶ。すなわちこの法則は、反応の中間に生じる炭素陽イオンの安定性で説明できる。

問1. 化合物 2 の構造式、および中間体②の塩化物イオン以外の構造式を答えよ。

問2. 文章中の $\boxed{\text{ア}}$ にあてはまる適切な語句を答えよ。

(2) 化合物の安定性は、電子の非局在化によっても説明できる。たとえば、ベンゼンの炭素-炭素二重結合は③のように特定の原子間に固定されておらず、6個の炭素原子間に均等に分布していると考えられている。その構造は下図の④と⑤を重ね合わせたようなものであり、結合を構成する電子が特定の二重結合に局在していない。これを電子の非局在化とよぶ。このように電子が非局在化すると、一般にその構造は安定化する(b)ことが知られている。ここで④、⑤のような構造式を共鳴構造式とよび、両者を矢印(↔)でつなぐものとする。

問3. 下線部(b)に関し、以下の条件(i)、(ii)を用いて、ベンゼンは非局在化によりどの程度安定化したのか、そのエネルギーの絶対値〔kJ/mol〕を整数で答えよ。

(i) ベンゼンに水素を付加させてシクロヘキサンを得る反応の反応エンタルピー $\Delta H$ を $-210$ kJ/mol とする。

(ii) ③の構造式に示す3つの非局在化していない炭素-炭素二重結合のひとつに水素を付加させる反応の反応エンタルピー $\Delta H$ を $-120$ kJ/mol とする。

(3) 文章(2)のような非局在化による安定化は、炭素陽イオンの正電荷についてもなりたつ。たとえば、下図のように中間体①の炭素-炭素二重結合を移動させることで、炭素陽イオンの位置が異なる共鳴構造式⑥、⑦を書くことができる。このことは、炭素陽イオンの正電荷が非局在化しており、中間体①は文章(1)で示した中間体②よりさらに安定化を受けていることを示している。

以上をふまえて、ふたつの二重結合をもつイソプレンの反応を考える。イソプレンと希硫酸の混合物を加熱したところ、異なる二種類のアルコール 4 と 5 が得られた。これらの分子式はいずれも $\ce{C5H10O}$ だが、沸点はアルコール 5 の方が高い。

この反応の機構は以下のように考えられる。まず、希硫酸に含まれる水素イオン $\ce{H+}$ が二重結合と反応すると、炭素陽イオンを含む中間体が生じる。イソプレンには二重結合がふたつあるため、生じうる中間体の構造が複数あるが、文章(1)の下線部(a)にもとづくと、その中で最も安定なものは中間体⑧と考えられる。この中間体に含まれる炭素陽イオンの位置で水と反応することでアルコール 4 が生じる。一方、上記のように、中間体⑧の共鳴構造式として⑨を書くことができる。⑨の炭素陽イオンの位置で水と反応することでアルコール 5 が得られる。

問4. アルコール 4 および 5 の構造式を答えよ。

問5. イソプレンおよびアルコール 4、 5 の説明として誤った記述を次の(A)〜(D)からひとつ選んで記号で答えよ。

(A) 天然ゴムの主成分はポリイソプレンである。このため天然ゴムを乾留することでイソプレンを得ることができる。

(B) アルコール 4 は硫酸酸性の過マンガン酸カリウム水溶液とは反応せず、これらを混合しても元の赤紫色は消失しなかった。

(C) アルコール 5 に臭素水溶液を少量滴下したところ、その赤褐色が消失し、無色の溶液が得られた。

(D) 希硫酸の代わりに濃硫酸を用いて同様の反応を行うと、アルコール 4、 5 はほとんど得られなかった。

問6. 希硫酸に含まれる水素原子がすべて重水素原子Dに置換された試薬を文章(3)と同様にイソプレンと反応させたところ、アルコール 4 の水素原子のうちふたつが重水素原子に置換された化合物が得られた。この化合物の構造式を答えよ。また、この化合物が鏡像異性体を有する場合、以下の例にならって不斉炭素原子を矢印で示せ。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

$\ce{H+}$ が二重結合のどちらの炭素に付くかで、陽イオンになる炭素が決まる。H が少ない炭素ほど陽イオンは安定なので①ができ、②は逆向きに付いた場合(下の図)。

2026年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
  1. 化合物 1 の二重結合 $\ce{C(C6H5)(C2H5)=CH2}$ の2つの炭素を確かめる。
  2. $\ce{H+}$ が端の $\ce{CH2}$ に付くと①(ベンゼン環のついた炭素が陽イオン)、内側の炭素に付くと②(端の $\ce{CH2}$ が陽イオン)。
  3. ①の陽イオンの炭素に $\ce{Cl}$ を付けて化合物 2 を書く。②は陽イオンのまま書く。

【問2の方針】

着眼点

H の多い方の炭素に H が付く、という付加の向きの経験則の名前。

  1. 法則の名前を答える。

【問3の方針】

着眼点

③なら水素を付けると $-120$ の3つ分下がるはずが、実際のベンゼンは $-210$ しか下がらない。この差が非局在化による安定化で、エンタルピー図に3つの段を並べれば見える(下の図)。

2026年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
  1. 一番上に③と水素 $3\ce{H2}$、一番下にシクロヘキサンを書き、その間を $(-120)\times3$ の矢印で繋ぐ。
  2. その間にベンゼンと $3\ce{H2}$ の段を書き、シクロヘキサンへ $-210$ の矢印で繋ぐ。
  3. ③からベンゼンへの矢印を $x$ とし、2つの道筋が等しいとおいて $x$ を求め、絶対値を答える。

【問4の方針】

着眼点

陽イオンの安定さの要素は、H の少なさ(第三級)と、隣の二重結合による共鳴の2つ。両方を満たす⑧と、正電荷が反対の端に移った共鳴構造⑨に、水が付く(下の図)。

2026年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
  1. イソプレン $\ce{CH2=C(CH3)-CH=CH2}$ の端の $\ce{CH2}$ (メチル基の付いた炭素の隣)に $\ce{H+}$ が付くと、メチル基の付いた炭素が陽イオンになる。第三級で、しかも隣に二重結合がある。これが⑧。
  2. ⑧の二重結合を1つ移すと、正電荷が端の $\ce{CH2}$ に移った共鳴構造⑨が書ける。
  3. ⑧の陽イオンの炭素に $\ce{OH}$ を付けて4、⑨の陽イオンの炭素に $\ce{OH}$ を付けて5を書く。
  4. 分子式 $\ce{C5H10O}$ と沸点(第一級の5の方が高い)で確かめる。

【問5の方針】

着眼点

4も5も、イソプレンの二重結合の1つに水が付いただけなので、二重結合が1つ残っている。アルコールとして酸化されるかどうかとは別に、二重結合が過マンガン酸カリウムや臭素と反応する。

  1. 4・5ともに $\ce{C=C}$ が残っていることを確かめる。
  2. (A)〜(D) を1つずつ、ゴムの知識・二重結合の反応・濃硫酸の働きで判断する。
  3. 誤っている1つを選ぶ。

【問6の方針】

着眼点

D は最初に $\ce{D+}$ が付いた炭素と、水( $\ce{D2O}$ )が付いた酸素の2か所に入る。メチル基の片方が $\ce{CH2D}$ になると、中央の炭素の4つの基がすべて異なる(下の図)。

2026年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第4問 解答の方針の図
  1. 問4 の⑧ができるときに $\ce{D+}$ が付く炭素(イソプレンの端の $\ce{CH2}$)を $\ce{CH2D}$ にする。
  2. ⑧の陽イオンの炭素に $\ce{D2O}$ が付き、 $\ce{-OD}$ になる。
  3. 中央の炭素に付いた4つの基( $\ce{CH3}$・ $\ce{CH2D}$・ $\ce{OD}$・ $\ce{CH=CH2}$ )がすべて異なるので、不斉炭素として矢印で示す。

解答

2026年九州大学化学 第4問 解答・解説
2026年九州大学化学 第4問 解答・解説
解答をテキストで読む

問1

化合物 1 は $\ce{C6H5-C(CH2CH3)=CH2}$。 $\ce{H+}$ が端の $\ce{CH2}$ に付くと、ベンゼン環のついた炭素が陽イオンになる(中間体①)。この炭素に付いた H は0個なので、問題文の下線部(a)のとおり安定で、ここに $\ce{Cl-}$ が付いて主生成物 2 になる。

答(化合物 2) $\ce{C6H5-C(CH3)(Cl)-CH2CH3}$(構造式は上の図)(3点)

$\ce{H+}$ が逆に内側の炭素に付くと、端の $\ce{CH2}$ が陽イオンになる(中間体②)。この炭素に付いた H は2個なので、①より不安定。ここに $\ce{Cl-}$ が付いたものが副生成物 3。解答欄には $\ce{Cl-}$ が印刷されているので、陽イオンの部分だけを書く。

答(中間体②) $\ce{C6H5-CH(CH2CH3)-CH2+}$(構造式は上の図)(3点)

問2

二重結合にハロゲン化水素などが付加するとき、H は H の多い方の炭素に付く。この経験則がマルコフニコフの法則で、問1 の陽イオンの安定さで説明できる。

答 マルコフニコフ(2点)

問3

エンタルピー図を書く(下の図)。一番上は③(二重結合が3つ局在した仮想の構造)と $3\ce{H2}$、一番下はシクロヘキサン $\ce{C6H12}$。

・条件(ii) より、③に水素を3つ付けると、二重結合1つにつき $-120$ kJ/mol なので、 $(-120)\times3$ だけ下がる

・条件(i) より、実際のベンゼンに水素を付けると $-210$ kJ/mol だけ下がる

・③からベンゼンへの矢印を $x$ とおく

③からシクロヘキサンへの2つの道筋(直接下りる道と、ベンゼンを通る道)は同じ始点と終点を結ぶので、矢印の和が等しい。

$$x+(-210)=(-120)\times3\qquad\therefore\ x=-150\ \mathrm{kJ/mol}$$

ベンゼンは③より $150$ kJ/mol だけ下にある。この分が、電子の非局在化による安定化。

答 150(4点)

問4

イソプレン $\ce{CH2=C(CH3)-CH=CH2}$ に $\ce{H+}$ が付く場所は、二重結合の4つの炭素。メチル基の付いた炭素の隣の端の $\ce{CH2}$ に付くと、メチル基の付いた炭素が陽イオンになる。この炭素は H が0個(第三級)で、しかも隣に二重結合があるので、正電荷が共鳴で広がる。2つの要素をどちらも満たすので、これが最も安定な中間体⑧ $\ce{(CH3)2C+-CH=CH2}$。

⑧の二重結合を陽イオンの側へ1つ移すと、正電荷が反対の端の $\ce{CH2}$ に移った共鳴構造⑨ $\ce{(CH3)2C=CH-CH2+}$ が書ける(下の図)。

⑧の陽イオンの炭素に水が付くとアルコール4、⑨の陽イオンの炭素に水が付くとアルコール5。

答(アルコール 4) $\ce{CH2=CH-C(CH3)2-OH}$(構造式は上の図)(2点)

答(アルコール 5) $\ce{(CH3)2C=CH-CH2-OH}$(構造式は上の図)(3点)

どちらも $\ce{C5H8}$ に $\ce{H2O}$ が付いた $\ce{C5H10O}$。4は第三級アルコールで $\ce{OH}$ が枝分かれの中にあり、5は第一級アルコールで $\ce{OH}$ が鎖の端に出ている。5の方が分子どうしが水素結合しやすく、沸点が高い。問題文の「5の方が沸点が高い」と合う。

問5

4・5はどちらも、イソプレンの2つの二重結合のうち1つに水が付いたもので、二重結合が1つ残っている。

・(A) 正しい。天然ゴムの主成分はポリイソプレンで、乾留(空気を断って加熱)するとイソプレンが得られる

・(B) 誤り。4は第三級アルコールなので、 $\ce{OH}$ の付いた炭素は酸化されない。しかし $\ce{C=C}$ をもつので、硫酸酸性の過マンガン酸カリウムと反応し、赤紫色は消える

・(C) 正しい。5は $\ce{C=C}$ をもつので臭素が付加し、臭素水の赤褐色が消える

・(D) 正しい。濃硫酸では脱水の働きが強く、アルコールはできても脱水されてしまうので、4・5はほとんど得られない

答 (B)(3点)

問6

試薬の H がすべて D なので、 $\ce{H+}$ は $\ce{D+}$、水は $\ce{D2O}$ になる。

・問4 の⑧ができるとき、 $\ce{D+}$ はイソプレンの端の $\ce{CH2}$ に付くので、その炭素は $\ce{CH2D}$ になる

・⑧の陽イオンの炭素に $\ce{D2O}$ が付くので、 $\ce{OH}$ ではなく $\ce{OD}$ になる

D は2つで、問題文の「ふたつが重水素原子に置換された」と合う。中央の炭素に付いた4つの基は $\ce{CH3}$・ $\ce{CH2D}$・ $\ce{OD}$・ $\ce{CH=CH2}$ ですべて異なるので、この炭素は不斉炭素になり、鏡像異性体がある。ふつうの4では $\ce{CH3}$ が2つあるので不斉炭素ではない。

答 $\ce{CH2D-C(CH3)(OD)-CH=CH2}$(構造式は上の図。不斉炭素は $\ce{OD}$ の付いた炭素で、矢印で示す)(5点)

出題意図

問1・問2 炭素陽イオンの安定性(H が少ない炭素ほど安定)から、付加の向き(マルコフニコフ則)を説明できるか

問3 「二重結合が局在した仮想の構造」と実際のベンゼンの差を、エンタルピー図で捉えることができるか

問4・問5 陽イオンの安定性の2つの要素(H の少なさと共鳴)をイソプレンに当てはめ、できるアルコールの構造と性質を判断できるか

問6 H がどこから来たかを反応の機構から追い、同位体で不斉炭素が生まれることに気づけるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度標準
目標得点20点15点
目標時間15分15分

構造決定ではなく、文章で与えられた考え方を当てはめる有機の問題。
陽イオンの安定さは「H の少なさ」と「共鳴」の2つで決まる、と読み取れれば、前半は教科書の発展レベルで取り切れる。

差がつくのは、共鳴で正電荷が端へ移るアルコール5と、重水素で生まれる不斉炭素。
初見の用語に戸惑わず、問題文の図(①と⑥⑦)をまねて自分で⑧⑨を書けるようにしておこう。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問4:⑧の共鳴構造⑨で正電荷が鎖の反対の端に移る、という発想に行き着けるか。ここを越えないとアルコール5が書けず、問6 も⑧の形があいまいなままになる。
  • 問6:D が $\ce{D+}$ の付いた炭素と水の酸素の2か所に入り、同位体で2つのメチル基が区別されて不斉炭素が生まれる、という発想に行き着けるか。
  • 問5:第三級アルコールは酸化されないが、二重結合が残っているので過マンガン酸カリウムは脱色される、と2つの反応を分けて考えられるか。

2026年九州大学化学
第5問 解答・解説

第5問は高分子化合物(アミノ酸・タンパク質)の問題です。
テーマは『アミノ酸の性質』『ビニロンの量的関係』。

問題

2026年九州大学化学 第5問 問題
2026年九州大学化学 第5問 問題
問題文をテキストで読む

以下の文章(1)と(2)を読み、問1〜問7に答えよ。構造式を答える際には、表紙にある記入例にならって答えよ。

(1) アミノ酸は分子内に $\boxed{\text{ア}}$ 基と $\boxed{\text{イ}}$ 基を両方もつ化合物である。 $\boxed{\text{ア}}$ 基と $\boxed{\text{イ}}$ 基が同一の炭素原子に結合したものを $\alpha$-アミノ酸という。タンパク質を構成する $\alpha$-アミノ酸は約20種類存在する。そのなかで、ヒトが体内で合成できない、または合成しにくいために外部から摂取する必要のある $\alpha$-アミノ酸は、 $\boxed{\text{ウ}}$ と呼ばれている。

問1. 空欄 $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{ウ}}$ に適切な語句を答えよ。なお、 $\boxed{\text{ア}}$ と $\boxed{\text{イ}}$ の解答は順不同とする。

問2. アミノ酸には $\alpha$-アミノ酸以外にも $\beta$-アミノ酸が存在する。 $\beta$-アミノ酸の例として、 $\beta$-アラニンの構造式を答えよ。ただし、ここではイオン化は考慮しない。

問3. 2分子のグリシンがジペプチドを形成するときに減少する分子量を、小数点以下第1位まで答えよ。

問4. グリシンの等電点は約6.0である。pH 1.0の水溶液に溶解させたとき最も多く存在するグリシンの構造を、イオン化を考慮した構造式を用いて答えよ。

問5. システインを含むタンパク質の水溶液に、水酸化ナトリウムを加えて熱し、酢酸鉛(Ⅱ)を加えると黒色沈殿を生じた。その黒色沈殿の化合物名を答えよ。

(2) タンパク質やペプチドの精製には様々なクロマトグラフィーが用いられている。イオン交換クロマトグラフィーはイオン交換樹脂を円筒容器(カラム)に充填し、その中に試料を入れたのち、適切な溶媒を流すことで目的成分を分離する方法である。イオン交換樹脂として最もよく用いられているものは $\boxed{\text{エ}}$ と $\boxed{\text{オ}}$ の共重合体を母体として作られた合成高分子である。

合成高分子には他にもビニロンがある。ビニロンを合成する際には、まず $\boxed{\text{カ}}$ (分子量86.0)の付加重合によって $\boxed{\text{キ}}$ (繰り返し単位の式量86.0)を合成する。これを水酸化ナトリウムなどの塩基を用いてけん化することにより $\boxed{\text{ク}}$ (繰り返し単位の式量44.0)を合成する。これを紡糸、乾燥後ホルムアルデヒド(分子量30.0)を用いてアセタール化することによってビニロンは合成される。

問6. 空欄 $\boxed{\text{エ}}$ 〜 $\boxed{\text{ク}}$ に適切な語句を答えよ。なお、 $\boxed{\text{エ}}$ と $\boxed{\text{オ}}$ の解答は順不同とする。

問7. ビニロンの合成において $\boxed{\text{キ}}$ を十分量の水酸化ナトリウムを用いて完全にけん化させたのち、アセタール化を行ったところヒドロキシ基の35%がアセタール化されたビニロン50.0 g を得た。合成に用いた $\boxed{\text{キ}}$ の質量〔g〕を小数点以下第1位まで求めよ。なお、ビニロンのアセタール化された繰り返し単位の式量は100.0である。

解答の方針

【問1・問2の方針】

着眼点

カルボキシ基が結合した炭素を $\alpha$位とし、1つ離れるごとに $\beta$位、 $\gamma$位と呼ぶ。 $\beta$-アミノ酸はアミノ基が $\beta$位にある(下の図)。

2026年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
  1. 問1 アミノ酸の定義(アミノ基とカルボキシ基を両方もつ)と、体内で合成できないアミノ酸の呼び名を書く。
  2. 問2 カルボキシ基の炭素の隣を $\alpha$位、その隣を $\beta$位とし、 $\beta$位の炭素にアミノ基を付ける。イオン化は考えないので $-\ce{NH2}$ と $-\ce{COOH}$ のまま、記入例の形(炭素は C、水素は $\ce{H2}$ のようにまとめる)で書く。

【問3の方針】

着眼点

ペプチド結合は、一方のアミノ酸のカルボキシ基の OH と、もう一方のアミノ基の H が水として取れてできる。ペプチド結合が1つできるごとに、水1分子の分だけ分子量が減る(下の図)。

2026年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
  1. ジペプチドはアミノ酸2分子が1か所でつながったもので、ペプチド結合は1つ。
  2. 減る分子量は $\ce{H2O}$ 1分子分の分子量。

【問4の方針】

着眼点

どの形のグリシンが多いかは、pH と等電点の大小で決まる。pH が等電点より小さい( $\ce{H+}$ が多い)ほど、 $\ce{H+}$ を受け取った陽イオンが多くなる(下の図)。

2026年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
  1. pH 1.0 と等電点 6.0 を比べる。pH の方がずっと小さいので、陽イオンが最も多い。
  2. 陽イオンの形( $-\ce{NH3+}$ と $-\ce{COOH}$ )を、記入例の形で書く。

【問5の方針】

着眼点

タンパク質の検出反応は「何を検出するか」と「何色か」を組で覚えておく。硫黄を含むアミノ酸(システイン)の硫黄は、水酸化ナトリウムと加熱すると硫化物イオンになり、鉛(Ⅱ)イオンと黒色の沈殿をつくる。

  1. 加熱でシステインの硫黄が $\ce{S^2-}$ になり、加えた $\ce{Pb^2+}$ と結びついてできる黒色の沈殿の名前を書く。

【問6の方針】

着眼点

イオン交換樹脂は、鎖と鎖を橋かけした立体網目の共重合体が母体。ビニロンは、ビニルアルコールを直接重合できないので、酢酸ビニルを重合してからけん化する回り道をとる(下の図)。

2026年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
  1. エ・オ:イオン交換樹脂の母体をつくる2つの単量体を書く。
  2. カ〜ク:酢酸ビニル(分子量86.0)→付加重合→ポリ酢酸ビニル(単位の式量86.0)→けん化→ポリビニルアルコール(単位の式量44.0)の流れに当てはめる。

【問7の方針】

着眼点

けん化してもアセタール化しても、繰り返し単位の物質量は変わらない。アセタール化された OH 1個あたりで式量がいくら増えるかが分かれば、式は1本で立つ(下の図)。

2026年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
2026年九州大学化学 第5問 解答の方針の図
  1. ポリ酢酸ビニルの繰り返し単位を $n$ mol とおく。けん化してもポリビニルアルコールの単位は $n$ mol( $44.0n$ g)で、OH も $n$ mol。
  2. 2単位( $44.0\times2=88.0$ )がホルムアルデヒド(30.0)と反応して水(18.0)が取れると100.0 になる。OH 2個で12増えるので、OH 1個あたり6増える。
  3. アセタール化された OH は $0.35n$ mol なので、ビニロンの質量は $44.0n+6\times0.35n$。これを50.0 g とおいて $n$ を求める。
  4. ポリ酢酸ビニルの質量 $86.0n$ を求める。

解答

2026年九州大学化学 第5問 解答・解説
2026年九州大学化学 第5問 解答・解説
2026年九州大学化学 第5問 解答・解説(続き)
2026年九州大学化学 第5問 解答・解説(続き)
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問1

アミノ酸は、分子内にアミノ基 $-\ce{NH2}$ とカルボキシ基 $-\ce{COOH}$ を両方もつ化合物。2つが同じ炭素原子に結合したものが $\alpha$-アミノ酸。ヒトの体内で合成できない、または合成しにくく、食物からとる必要のある $\alpha$-アミノ酸を必須アミノ酸という(バリン・ロイシン・リシンなど9種類)。

(ア・イは順不同)

答(ア) アミノ(1点)

答(イ) カルボキシ(1点)

答(ウ) 必須アミノ酸(1点)

問2

カルボキシ基が結合した炭素が $\alpha$位、その隣の炭素が $\beta$位。 $\beta$-アラニンはアミノ基が $\beta$位にあるので、カルボキシ基の炭素から数えて2つ目の炭素にアミノ基が付く。分子式はアラニン( $\ce{CH3-CH(NH2)-COOH}$ )と同じ $\ce{C3H7NO2}$ で、アミノ基の位置だけが違う。イオン化は考えないので、アミノ基は $-\ce{NH2}$、カルボキシ基は $-\ce{COOH}$ のまま書く。

答 $\ce{H2N-CH2-CH2-COOH}$(上の図)(3点)

問3

一方のグリシンの $-\ce{COOH}$ の OH と、もう一方の $-\ce{NH2}$ の H が水として取れて、ペプチド結合が1つできる(下の図)。

$$\ce{2H2N-CH2-COOH}$$

$$\ce{-> H2N-CH2-CO-NH-CH2-COOH + H2O}$$

減る分子量は $\ce{H2O}$ 1分子分で $2\times1.00+16.0=18.0$。グリシン2分子( $75.0\times2=150.0$ )がジペプチド(132.0)になる。2分子が2か所でつながった環状のジペプチドなら、水2分子が取れて36.0 減る。

答 18.0(環状のジペプチドなら36.0)(2点)

問4

pH 1.0 は等電点 6.0 よりずっと小さく、水溶液中の $\ce{H+}$ がとても多い。このとき、カルボキシ基は $\ce{H+}$ を受け取って $-\ce{COOH}$、アミノ基は $-\ce{NH3+}$ になっていて、全体の電荷が正の陽イオンが最も多い(双性イオンが最も多いのは等電点の付近)。

答 $\ce{H3N+-CH2-COOH}$(上の図)(3点)

問5

システインの側鎖 $-\ce{CH2-SH}$ の硫黄は、水酸化ナトリウムを加えて熱すると $\ce{S^2-}$ になる。酢酸鉛(Ⅱ)を加えると、$\ce{Pb^2+}$ と結びついて黒色の硫化鉛(Ⅱ)が沈殿する。

$$\ce{Pb^2+ + S^2- -> PbS v}$$

タンパク質の検出反応は、次の4つを組で押さえておく。

・ニンヒドリン反応:アミノ基を検出、紫色

・ビウレット反応:ペプチド結合2つ以上(トリペプチド以上)を検出、赤紫色

・キサントプロテイン反応:ベンゼン環を検出、黄色(アンモニア水で橙黄色)

・硫黄の検出反応:硫黄を含むアミノ酸を検出、黒色の沈殿( $\ce{PbS}$ )

答 硫化鉛(Ⅱ)(2点)

問6

イオン交換樹脂の母体は、スチレンと p-ジビニルベンゼンの共重合体。p-ジビニルベンゼンは $\ce{C=C}$ を2つもつので、2本の鎖を橋かけして立体網目にする(下の図)。母体のベンゼン環にスルホ基 $-\ce{SO3H}$ を入れると陽イオン交換樹脂になる。

(エ・オは順不同)

答(エ) スチレン(1点)

答(オ) p-ジビニルベンゼン(1点)

ビニロンは、酢酸ビニル( $\ce{CH2=CH-OCOCH3}$、分子量86.0)を付加重合してポリ酢酸ビニル(単位の式量86.0)とし、水酸化ナトリウムでけん化してポリビニルアルコール(単位 $-\ce{CH2-CH(OH)}-$ の式量44.0)にする。これを紡糸してから、ホルムアルデヒドで一部をアセタール化したものがビニロン(下の図)。

答(カ) 酢酸ビニル(1点)

答(キ) ポリ酢酸ビニル(1点)

答(ク) ポリビニルアルコール(1点)

問7

ポリ酢酸ビニルの繰り返し単位を $n$ mol とする。けん化では $-\ce{OCOCH3}$ が $-\ce{OH}$ に変わるだけなので、ポリビニルアルコールの単位も $n$ mol( $44.0n$ g)で、OH も $n$ mol。

アセタール化では、となり合う2単位の OH 2個とホルムアルデヒド1分子が反応し、水1分子が取れる。2単位分の式量は

$$44.0\times2+30.0-18.0=100.0$$

で、問題文の値と一致する。もとの88.0 から12増えるので、アセタール化された OH 1個あたり式量は6増える。

アセタール化された OH は $0.35n$ mol なので、ビニロンの質量は

$$44.0n+6\times0.35n=46.1n=50.0\qquad\therefore\ n=\dfrac{50.0}{46.1}\fallingdotseq1.085$$

ポリ酢酸ビニルの質量は

$$86.0n=86.0\times\dfrac{50.0}{46.1}\fallingdotseq93.3\ \mathrm{g}$$

答 93.3 g(7点)

別解

問7 (アセタール化された単位の組の数で数える) アセタール化された OH は $0.35n$ mol で、2個で1組になるので、式量100.0 の組は $\dfrac{0.35n}{2}=0.175n$ mol。アセタール化されなかった単位 $0.65n$ mol は式量44.0 のまま。

$$100.0\times0.175n+44.0\times0.65n=17.5n+28.6n=46.1n=50.0$$

本解と同じ式になる。問題文が式量100.0 を与えているので、この形で立ててもよい。

出題意図

問1〜問5 アミノ酸とタンパク質の基本の知識(定義・$\alpha$位と $\beta$位・ペプチド結合・pH とイオンの形・硫黄の検出)を、構造式と結びつけて答えられるか

問6 イオン交換樹脂の原料と、ビニロンの合成の流れを正しく言えるか

問7 「ヒドロキシ基の35%がアセタール化」を OH の数の割合として読み、繰り返し単位の物質量で質量の関係を立てられるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや簡単
目標得点25点25点
目標時間10分10分

2026年でいちばん易しい大問で、どの学部も満点を取りたい。
問1〜問6 は高分子の基本の知識だけで解けるので、教科書と重要問題集の知識が身についていれば計算せずに書ける。

問7 のビニロンも「繰り返し単位の物質量は最後まで変わらない」「アセタール化された OH 1個あたり式量は6増える」と言い切れれば、式は1本で終わる。
この年の合否を分けたのは第2問の電離平衡なので、高分子は短時間で取り切って、そこに時間を回すこと。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問7:「ヒドロキシ基の35%がアセタール化」を、OH 2個が1組になって式量が増える割合として扱う、という発想に行き着けるか。単位の35%がそのまま式量100.0 になると読むと 67.6 g になる。
  • 問2:$\beta$位を「カルボキシ基が結合した炭素の、隣の炭素」と読みかえて構造式にできるか。カルボキシ基の炭素そのものを $\alpha$位と数えると、アミノ基の位置が1つずれる。

コラム アミノ酸を1種類ずつ分ける ― イオン交換クロマトグラフィー

問題文(2) のイオン交換クロマトグラフィーは、問4 の「pH によってアミノ酸の電荷が変わる」ことと、問6 のイオン交換樹脂を組み合わせた分離の方法。アミノ酸の混合物を、1種類ずつ分けて取り出すことができる。

2026年九州大学化学 第5問 コラムの図
2026年九州大学化学 第5問 コラムの図
  • 吸着させる:スルホ基を入れた陽イオン交換樹脂をカラムに詰め、強い酸性(問4 の pH 1.0 のように、等電点よりずっと小さい pH)でアミノ酸の混合物を流す。アミノ酸はどれも陽イオンになっているので、樹脂の $-\ce{SO3-}$ に引きつけられて、すべてカラムの中にとどまる。
  • 順に流し出す:pH を少しずつ上げた緩衝液を流していくと、pH が等電点をこえたアミノ酸から陽イオンでなくなり、樹脂から離れて流れ出る。等電点の小さい酸性アミノ酸(アスパラギン酸 2.8)→中性アミノ酸(グリシン 6.0)→塩基性アミノ酸(リシン 9.7)の順になる。
  • 量を測る:流れ出た液をニンヒドリン反応で発色させれば、どのアミノ酸がどれだけ含まれるかが分かる。1950年代に、アメリカのロックフェラー研究所のムーアとスタインがこの流れを自動化した「アミノ酸自動分析計」を作り、タンパク質のアミノ酸の組成を調べる研究が大きく進んだ。2人は酵素リボヌクレアーゼの研究で、1972年にノーベル化学賞を受けている(アンフィンセンとの共同受賞)。

九大の高分子は、こうした実際の分析の方法を題材にしても、問われるのは「pH と電荷」「樹脂の原料」といった基本の知識。知識を「装置の中で何が起きているか」と結びつけて覚えておくと、初めて見る題材でも落ち着いて解ける。

2026年九州大学・化学の
講評とまとめ

5問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。

大問難易度医学部医学科その他の学部
第1問やや難20点15点
第2問標準25点20点
第3問標準20点20点
第4問標準20点15点
第5問やや簡単25点25点
全体標準105点85点

大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で105点、その他の学部で85点)にはなりません。

全体的に難易度は標準的な年。

この年の合否を分けたのは第2問の後半で、弱酸の電離・緩衝液・塩の加水分解という電離平衡の典型問題が3つ並んだだけで大きく差がつきました。

電離平衡は苦手な受験生が多いですが、滴定のどの段階かを見分ければ解き方は決まっているので、重要問題集の典型問題を白紙から再現できるまで練習しておけば確実に取れます。

第1問は状態図と蒸気圧を扱う重い大問で、後半の水の移動と排気による状態変化は、状態図の上で何が起きているかを想像できるかで決まります。

第3問は、2つの結晶構造( $\ce{NaCl}$ 型・ $\ce{CsCl}$ 型)が頭に入っているかで差がつきます。

第4問は、文章で与えられた考え方(陽イオンの安定さ)を当てはめる有機の問題で、前半は確実に取り、アルコール5と不斉炭素で差がつきます。

第5問は高分子の基本なので、計算せずに書ける所は書いて時間を回し、どの学部も満点を取りたい大問です。

九大の化学は大問5題を75分で解くので、1つの大問に15分以上かけず、知識の大問を短く終えて計算の大問に時間を残す時間の使い方が大事です。

解く流れ

第3問 → 第5問 → 残りの大問。

2026年九州大学・化学に
関するよくある質問

2026年の九州大学・化学について、よく聞かれる質問にお答えします。

2026年の九州大学・化学は難しかった?

標準の年でした。
第1問はやや難、第2問・第3問・第4問は標準、第5問はやや簡単です。
第1問の状態図と蒸気圧は重く、第5問の高分子は基本だけでした。
知識の大問を短く終えて、計算の大問に時間を回せたかで差がつきました。

2026年の九州大学・化学は何点取れば合格できる?

目標点は、医学部医学科で105点、その他の学部で85点です(125点満点)。

2026年の九州大学・化学はどこで差がつく?

この年の合否を分けたのは第2問の後半で、差がついたのは次の3つでした。

  • 第2問 問3〜問5:滴定前・30 mL 滴下・50 mL 滴下が、弱酸の電離・緩衝液・塩の加水分解のどれに当たるかを物質量から見分け、pH を求められたか。
  • 第1問 問5〜問7:すべて気体と仮定して飽和蒸気圧と比べる判定、ラウールの法則の計算、排気していく容器の状態の移り変わりを、状態図の上で追えたか。
  • 第3問 問2: $\ce{NaCl}$ 型・ $\ce{CsCl}$ 型の単位格子の構造が頭に入っていて、組の数(4組と1組)から密度の式を立てられたか。
2026年の九州大学・化学は何が出題された?

大問ごとの単元は、次のとおりです。

  • 第1問:理論化学(物質の三態・気体の法則)
  • 第2問:理論化学(電離平衡)
  • 第3問:無機化学・理論化学
  • 第4問:有機化学
  • 第5問:高分子化合物(アミノ酸・タンパク質)

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