【解説・採点基準付き】2009年九州大学理系数学の解答・解説
2009年の九州大学・理系数学の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの採点基準付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2009年九州大学理系数学
第1問 解答・解説
この記事の配点・採点基準は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は平面ベクトル・2次関数の問題です。
テーマは「垂線の足Cと、 $t\geqq0$ で動く点Pの距離 $|\overrightarrow{\mathrm{CP}}|^2$ の最小値」。
問題


問題文をテキストで読む
座標平面に3点 $\mathrm{O}(0,0)$、 $\mathrm{A}(2,6)$、 $\mathrm{B}(3,4)$ をとり、点Oから直線ABに垂線OCを下ろす。また、実数 $s$ と $t$ に対し、点Pを
$$\overrightarrow{\mathrm{OP}}=s\,\overrightarrow{\mathrm{OA}}+t\,\overrightarrow{\mathrm{OB}}$$
で定める。このとき、次の問いに答えよ。
(1) 点Cの座標を求め、 $|\overrightarrow{\mathrm{CP}}|^2$ を $s$ と $t$ を用いて表せ。
(2) $s$ を定数として、 $t$ を $t\geqq0$ の範囲で動かすとき、 $|\overrightarrow{\mathrm{CP}}|^2$ の最小値を求めよ。
解答の方針
【(1)の方針】
Cは直線AB上の点なので、点と点をつなぎ、実数倍を使って 1文字で置ける。その文字は「OCが直線ABに垂直」を 内積=0 に直せば決まる。


- 座標が与えられているので、ベクトルはすべて成分で計算する。 $\overrightarrow{\mathrm{AB}}=(1,-2)$ を求め、 $\overrightarrow{\mathrm{OC}}=\overrightarrow{\mathrm{OA}}+u\overrightarrow{\mathrm{AB}}=(2+u,\ 6-2u)$ とおく。
- $\overrightarrow{\mathrm{OC}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AB}}=0$ から $u$ を求め、Cの座標を求める(Cは線分ABの上ではなく、Bより先の延長上にある)。
- $\overrightarrow{\mathrm{OP}}=s\overrightarrow{\mathrm{OA}}+t\overrightarrow{\mathrm{OB}}$ を成分で書いて $\mathrm{P}(2s+3t,\ 6s+4t)$ とし、 $\overrightarrow{\mathrm{CP}}$ の成分の2乗の和を計算して $|\overrightarrow{\mathrm{CP}}|^2$ を求める。
【(2)の方針】
$s$ を定数とみれば、 $|\overrightarrow{\mathrm{CP}}|^2$ は $t$ の2次関数。最小値の 候補は「軸」と「定義域の端」だけ なので、 軸が $t\geqq0$ に入るかどうか で場合分けすればよい。
- $s$ を定数とみて、 $|\overrightarrow{\mathrm{CP}}|^2$ を $t$ について整理し、係数をくくって $25t^2+20(3s-2)t+20(2s^2-2s+1)$ とする( $t^2$ の係数が正なので下に凸)。
- 平方完成して $25\left(t-\dfrac{4-6s}{5}\right)^2+4(s+1)^2$ とし、軸 $t=\dfrac{4-6s}{5}$ を読む。
- 最小値の候補は、軸( $t\geqq0$ に入るとき)と端 $t=0$。軸が $t\geqq0$ に入る $s\leqq\dfrac23$ のときは、軸で最小値 $4(s+1)^2$ をとる。
- $s>\dfrac23$ のときは軸が $t<0$ にあり、 $t\geqq0$ で増加するので、端 $t=0$ で最小値 $40s^2-40s+20$ をとる。
- 2つの場合に分けて答える。
解答


解答をテキストで読む
(1) 配点 20点
$\overrightarrow{\mathrm{AB}}=(3-2,\ 4-6)=(1,-2)$。Cは直線AB上の点なので、実数 $u$ を用いて
$$\overrightarrow{\mathrm{OC}}=\overrightarrow{\mathrm{OA}}+u\overrightarrow{\mathrm{AB}}=(2+u,\ 6-2u)$$
とおける。OCは直線ABに垂直なので $\overrightarrow{\mathrm{OC}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AB}}=0$ より
$$(2+u)\cdot1+(6-2u)\cdot(-2)=5u-10=0\iff u=2$$
よって $\mathrm{C}(4,\ 2)$ (下の図)。
$\overrightarrow{\mathrm{OP}}=s(2,6)+t(3,4)=(2s+3t,\ 6s+4t)$ なので
$$\overrightarrow{\mathrm{CP}}=(2s+3t-4,\ 6s+4t-2)$$
$$|\overrightarrow{\mathrm{CP}}|^2=(2s+3t-4)^2+(6s+4t-2)^2=40s^2+60st+25t^2-40s-40t+20$$
答 $\mathrm{C}(4,\ 2)$、 $|\overrightarrow{\mathrm{CP}}|^2=40s^2+60st+25t^2-40s-40t+20$
答えの式は、 $s=t=0$ (PがO)のとき $|\overrightarrow{\mathrm{CO}}|^2=4^2+2^2=20$、 $s=0,\ t=1$ (PがB)のとき $|\overrightarrow{\mathrm{CB}}|^2=1^2+2^2=5$ になることで検算できる。
別解(正射影ベクトルでCを求める) $\overrightarrow{\mathrm{AC}}$ は $\overrightarrow{\mathrm{AO}}$ を直線ABの向きに正射影したベクトルなので、 $\overrightarrow{\mathrm{AO}}=(-2,-6)$、 $|\overrightarrow{\mathrm{AB}}|^2=5$ より
$$\overrightarrow{\mathrm{AC}}=\frac{\overrightarrow{\mathrm{AO}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AB}}}{|\overrightarrow{\mathrm{AB}}|^2}\overrightarrow{\mathrm{AB}}=\frac{-2+12}{5}(1,-2)=(2,-4)$$
よって $\overrightarrow{\mathrm{OC}}=\overrightarrow{\mathrm{OA}}+\overrightarrow{\mathrm{AC}}=(4,\ 2)$。答案で公式を使うときは、導き方も書いておく。
(2) 配点 30点
$s$ を定数とみて、 $t$ について整理する。係数をくくっておくと平方完成の計算が軽くなる。
$$|\overrightarrow{\mathrm{CP}}|^2=25t^2+20(3s-2)t+20(2s^2-2s+1)$$
平方完成すると、定数項は $20(2s^2-2s+1)-4(3s-2)^2=4s^2+8s+4=4(s+1)^2$ なので
$$|\overrightarrow{\mathrm{CP}}|^2=25\left(t-\frac{4-6s}{5}\right)^2+4(s+1)^2$$
これは $t$ の2次関数で下に凸、軸は $t=\dfrac{4-6s}{5}$。 $t\geqq0$ での最小値の候補は、軸( $t\geqq0$ に入るとき)と端 $t=0$ である。
$s\leqq\dfrac23$ のとき 軸 $\dfrac{4-6s}{5}\geqq0$ なので、軸は $t\geqq0$ に入る。 $t=\dfrac{4-6s}{5}$ で最小値 $4(s+1)^2$ をとる。
$s>\dfrac23$ のとき 軸 $\dfrac{4-6s}{5}<0$ なので、 $t\geqq0$ では $|\overrightarrow{\mathrm{CP}}|^2$ は増加する。端 $t=0$ で最小値 $40s^2-40s+20$ をとる。
答 $s\leqq\dfrac23$ のとき $4(s+1)^2$、 $s>\dfrac23$ のとき $40s^2-40s+20$
$s=\dfrac23$ では、どちらの式も $\dfrac{100}{9}$ となり一致する。
図で見ると、 $s$ を固定したとき、点Pは $\overrightarrow{\mathrm{OQ}}=s\overrightarrow{\mathrm{OA}}$ で定まる点 $\mathrm{Q}(2s,\ 6s)$ から $\overrightarrow{\mathrm{OB}}$ の向きに伸びる半直線( $t\geqq0$ の部分)の上を動く。Cから半直線を含む直線に下ろした垂線の足をHとすると、Hが半直線上にあるとき(左の図)は $|\overrightarrow{\mathrm{CP}}|$ はP=Hで最小になり、Hが半直線の外にあるとき(右の図)は端のP=Qで最小になる。平方完成の軸 $t=\dfrac{4-6s}{5}$ は、Hに対応する $t$ の値である。
別解(点と直線の距離で求める) 上の図のように、Pは点 $\mathrm{Q}(2s,\ 6s)$ を通り $\overrightarrow{\mathrm{OB}}=(3,4)$ の向きに伸びる半直線上を動く。この半直線を含む直線は、法線ベクトルが $(4,-3)$ でQを通るので
$$4x-3y+10s=0$$
Cからこの直線に下ろした垂線の足Hは $\overrightarrow{\mathrm{OH}}=\overrightarrow{\mathrm{OQ}}+t_0\overrightarrow{\mathrm{OB}}$ と書け、 $\overrightarrow{\mathrm{CH}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OB}}=0$ から $t_0=\dfrac{\overrightarrow{\mathrm{QC}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OB}}}{|\overrightarrow{\mathrm{OB}}|^2}=\dfrac{3(4-2s)+4(2-6s)}{25}=\dfrac{4-6s}{5}$。
$t_0\geqq0$ 、すなわち $s\leqq\dfrac23$ のとき、Hは半直線上にあり、最小値はCと直線の距離の2乗
$$\left(\frac{|4\cdot4-3\cdot2+10s|}{\sqrt{4^2+(-3)^2}}\right)^2=\left(\frac{10|s+1|}{5}\right)^2=4(s+1)^2$$
$s>\dfrac23$ のとき、Hは半直線の外にあり、最小値は端Qとの距離の2乗 $|\overrightarrow{\mathrm{CQ}}|^2=(2s-4)^2+(6s-2)^2=40s^2-40s+20$。
$s=-1$ で最小値が0になるのは、 $\overrightarrow{\mathrm{OC}}=-\overrightarrow{\mathrm{OA}}+2\overrightarrow{\mathrm{OB}}$ でCがこの直線上にある( $t=2$ )からで、答えの検算にもなる。
出題意図
(1) 垂線の足を 「直線上の点を1文字で置く」+「垂直なら内積=0」 で求め、成分で正確に計算できるか
(2) $s$ を定数とみて $|\overrightarrow{\mathrm{CP}}|^2$ を $t$ の2次関数として捉え、 定義域 $t\geqq0$ の中で最小値をとる場所(軸か端か) を正しく決められるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 簡単 | |
| 目標得点 | 50点 | 50点 |
| 目標時間 | 10分 | 15分 |
1対1対応の演習の例題より易しいくらいの典型問題で、誰もが確実に取れるボーナス問題。
平面上の点Pを2つの文字 $s$、 $t$ で表し、定点Cとの距離の2乗を $s$、 $t$ の式で求め、 $s$ を定数とみて $t$ の2次関数として処理するだけ。
唯一の注意点は、 $t\geqq0$ と範囲が決まっているので、最小値を求めるときに軸の位置で場合分けが必要なこと。
数学Ⅰの2次関数の例題レベルなので、ここで差をつけられるようでは九大合格はかなり危ない。
差がつく所・失点しやすい所
- 唯一差がつくとすれば (2): $t$ の範囲が $t\geqq0$ と決まっているので、 $t$ の2次関数の最小値を求めるときに、軸の位置で場合分けが必要になる所。
2009年九州大学理系数学
第2問 解答・解説
第2問は確率・数列の問題です。
テーマは「カードの数の和が偶数になる確率の漸化式」。
問題


問題文をテキストで読む
$k$ は2以上の自然数とする。「1」と書かれたカードが1枚、「2」と書かれたカードが2枚、…、「$k$」と書かれたカードが $k$ 枚ある。そのうちの偶数が書かれたカードの枚数を $M$、奇数が書かれたカードの枚数を $N$ で表す。この $(M+N)$ 枚のカードをよくきって1枚を取り出し、そこに書かれた数を記録してもとに戻すという操作を $n$ 回繰り返す。記録された $n$ 個の数の和が偶数となる確率を $p_n$ とする。次の問いに答えよ。
(1) $p_1$ と $p_2$ を $M,N$ で表せ。
(2) $p_{n+1}$ を $p_n,M,N$ で表せ。
(3) $\dfrac{M-N}{M+N}$ を $k$ で表せ。
(4) $p_n$ を $n$ と $k$ で表せ。
解答の方針
【(1)の方針】
問われているのは和の偶奇だけなので、カードは 「偶数」「奇数」の2種類 と見ればよい。2回の和が偶数になるのは「2回とも偶数」か「2回とも奇数」のどちらか。
- 毎回カードを戻すので、何回目でも偶数を引く確率は $\dfrac{M}{M+N}$、奇数を引く確率は $\dfrac{N}{M+N}$ で一定であることを確かめる。
- 1回の和が偶数になるのは偶数を引くときなので、 $p_1=\dfrac{M}{M+N}$ を求める。
- 「2回とも偶数」「2回とも奇数」の確率をそれぞれ求めて足し、 $p_2$ を求める。
【(2)の方針】
確率漸化式は、 $n$ 回目の状況から $n+1$ 回目の状況への 推移図 を書いてから式にする。和の偶奇は2つしかなく、奇数である確率は $1-p_n$ と書けるので、 1文字で立式できる。


- $n$ 回目までの和が偶数である確率を $p_n$、奇数である確率を $1-p_n$ と表す。
- $n$ 回目までの和の偶奇と $n+1$ 回目に引くカードの偶奇から、 $n+1$ 回目までの和の偶奇への推移図を書く(偶数を引くと偶奇はそのまま、奇数を引くと偶奇が入れかわる)。
- $n+1$ 回目までの和が偶数になる2通り(偶数のまま偶数を引く・奇数のところに奇数を引く)の確率を足して、 $p_{n+1}$ を求める。
【(3)の方針】
偶数カード・奇数カードの枚数は、それぞれ 等差数列の和 になる。和がどの項で終わるかは最後の数 $k$ で変わるので、 $k$ の偶奇で場合分け する。
- カードの総数 $M+N=\dfrac{k(k+1)}{2}$ を先に求めておく( $N$ は引き算で求まる)。
- $k=2m$( $m$ は自然数)のとき、偶数カードの枚数 $M=2+4+\cdots+2m$ を等差数列の和(項数 $m$)で求め、 $N$ を引き算で求めて $\dfrac{M-N}{M+N}$ を $k$ で表す。
- $k=2m+1$( $m$ は自然数)のとき、同じように $M=2+4+\cdots+2m$、 $N$ を求めて $\dfrac{M-N}{M+N}$ を $k$ で表す。
- $k$ の偶奇に分けて答える。
【(4)の方針】
(2) の漸化式の $p_n$ の係数が、ちょうど (3) の $\dfrac{M-N}{M+N}$ になる((3) は (4) の公比を求めるための誘導)。定数型の漸化式なので、 等比数列の形に変形 して解く。
- $r=\dfrac{M-N}{M+N}$ とおき、(2) の漸化式を $p_{n+1}=rp_n+\dfrac{N}{M+N}$ と整理する。
- $p_{n+1}+\alpha=r(p_n+\alpha)$ と変形したいので、右辺を展開して係数を比べ、 $\alpha=-\dfrac12$ を求める。
- 数列 $\left\{p_n-\dfrac12\right\}$ が公比 $r$ の等比数列になることと、初項 $p_1-\dfrac12=\dfrac r2$ から $p_n=\dfrac{1+r^n}{2}$ を求める。
- (3) の $r$ を代入し、 $k$ の偶奇に分けて答える。
解答


解答をテキストで読む
(1) 配点 10点
毎回カードを戻すので、何回目でも、偶数を引く確率は $\dfrac{M}{M+N}$、奇数を引く確率は $\dfrac{N}{M+N}$ である。1回の和が偶数になるのは偶数を引くときなので
$$p_1=\dfrac{M}{M+N}$$
2回の和が偶数になるのは、2回とも偶数を引くか、2回とも奇数を引くときなので
$$p_2=\left(\dfrac{M}{M+N}\right)^2+\left(\dfrac{N}{M+N}\right)^2=\dfrac{M^2+N^2}{(M+N)^2}$$
答 $p_1=\dfrac{M}{M+N}$、 $p_2=\dfrac{M^2+N^2}{(M+N)^2}$
(2) 配点 10点
$n$ 回目までの和が奇数である確率は $1-p_n$ である。 $n+1$ 回目までの和が偶数になるのは、次の2つの場合である(下の図の太い矢印)。
・$n$ 回目までの和が偶数で、 $n+1$ 回目に偶数を引く
・$n$ 回目までの和が奇数で、 $n+1$ 回目に奇数を引く
$n+1$ 回目に偶数を引く確率は $\dfrac{M}{M+N}$、奇数を引く確率は $\dfrac{N}{M+N}$ なので
$$p_{n+1}=\dfrac{M}{M+N}p_n+\dfrac{N}{M+N}(1-p_n)$$
( $n=1$ とすると $p_2=\dfrac{M}{M+N}\cdot\dfrac{M}{M+N}+\dfrac{N}{M+N}\cdot\dfrac{N}{M+N}$ となり、(1) と一致する。)
答 $p_{n+1}=\dfrac{M}{M+N}p_n+\dfrac{N}{M+N}(1-p_n)$
(3) 配点 15点
カードの総数は
$$M+N=1+2+\cdots+k=\dfrac{k(k+1)}{2}$$
$k$ が偶数のとき $k=2m$( $m$ は自然数)とおく。偶数カードは「2」「4」…「 $2m$ 」の $m$ 種類で、枚数の和は初項2、末項 $2m$、項数 $m$ の等差数列の和なので
$$M=2+4+\cdots+2m=\dfrac{m(2+2m)}{2}=m(m+1)$$
$M+N=\dfrac{2m(2m+1)}{2}=m(2m+1)$ より $N=m(2m+1)-m(m+1)=m^2$。よって
$$\dfrac{M-N}{M+N}=\dfrac{m}{m(2m+1)}=\dfrac{1}{2m+1}=\dfrac{1}{k+1}$$
$k$ が奇数のとき $k\geqq3$ なので $k=2m+1$( $m$ は自然数)とおく。偶数カードは「2」「4」…「 $2m$ 」なので、上と同じく $M=m(m+1)$。 $M+N=\dfrac{(2m+1)(2m+2)}{2}=(m+1)(2m+1)$ より $N=(m+1)(2m+1)-m(m+1)=(m+1)^2$。よって
$$\dfrac{M-N}{M+N}=\dfrac{-(m+1)}{(m+1)(2m+1)}=-\dfrac{1}{2m+1}=-\dfrac1k$$
答 $k$ が偶数のとき $\dfrac{1}{k+1}$、 $k$ が奇数のとき $-\dfrac1k$
別解(2種類ずつ組にする) カードを「1と2」「3と4」「5と6」…のように、数の小さい方から2種類ずつ組にする。「 $2i-1$ と $2i$ 」の組には奇数カードが $2i-1$ 枚、偶数カードが $2i$ 枚あるので、どの組でも偶数カードが1枚多い。
・$k$ が偶数のとき、組はちょうど $\dfrac k2$ 組できるので $M-N=\dfrac k2$。 $M+N=\dfrac{k(k+1)}{2}$ で割って $\dfrac{M-N}{M+N}=\dfrac{1}{k+1}$
・$k$ が奇数のとき、「1」〜「 $k-1$ 」で $\dfrac{k-1}{2}$ 組でき、奇数「 $k$ 」のカード $k$ 枚が組にならずに残るので $M-N=\dfrac{k-1}{2}-k=-\dfrac{k+1}{2}$。 $M+N$ で割って $\dfrac{M-N}{M+N}=-\dfrac1k$
$M$、 $N$ を別々に求めずに、差 $M-N$ だけを直接求められる。
(4) 配点 15点
$r=\dfrac{M-N}{M+N}$ とおく。(2) の漸化式を整理すると
$$p_{n+1}=\dfrac{M-N}{M+N}p_n+\dfrac{N}{M+N}=rp_n+\dfrac{N}{M+N}$$
これを $p_{n+1}+\alpha=r(p_n+\alpha)$ の形に変形する。右辺を展開すると $p_{n+1}=rp_n+(r-1)\alpha$ なので、係数を比べて $(r-1)\alpha=\dfrac{N}{M+N}$。 $r-1=-\dfrac{2N}{M+N}$ で、 $N\geqq1$(「1」のカードがある)より $r-1\neq0$ なので $\alpha=-\dfrac12$。よって
$$p_{n+1}-\dfrac12=r\left(p_n-\dfrac12\right)$$
数列 $\left\{p_n-\dfrac12\right\}$ は公比 $r$ の等比数列で、初項は
$$p_1-\dfrac12=\dfrac{M}{M+N}-\dfrac12=\dfrac{M-N}{2(M+N)}=\dfrac r2$$
したがって $p_n-\dfrac12=\dfrac r2\cdot r^{n-1}=\dfrac{r^n}{2}$ より
$$p_n=\dfrac{1+r^n}{2}$$
(3) の $r$ を代入して
答 $k$ が偶数のとき $p_n=\dfrac12\left\{1+\left(\dfrac{1}{k+1}\right)^n\right\}$、 $k$ が奇数のとき $p_n=\dfrac12\left\{1+\left(-\dfrac1k\right)^n\right\}$
補足(0回目までさかのぼる) まだ1回も取り出していないときの和を0(偶数)と考えて $p_0=1$ とすると、(2) の漸化式は $n=0$ でも成り立つ( $p_1=r\cdot1+\dfrac{N}{M+N}=\dfrac{M}{M+N}$ )。これを使うと $p_n-\dfrac12=r^n\left(p_0-\dfrac12\right)=\dfrac{r^n}{2}$ とすぐに求まる。
別解(偶数を $+1$、奇数を $-1$ に置きかえる) 毎回の確率は一定なので、 $n$ 回のうち奇数をちょうど $j$ 回引く確率は、反復試行で ${}_n\mathrm{C}_j\left(\dfrac{M}{M+N}\right)^{n-j}\left(\dfrac{N}{M+N}\right)^j$ である。和が偶数になるのは奇数を引く回数 $j$ が偶数のときなので、 $p_n$ は $j$ が偶数の項の和、 $1-p_n$ は $j$ が奇数の項の和である。そこで、偶数を引く1回を $+1$、奇数を引く1回を $-1$ と見て、各項に $(-1)^j$ をかけて足すと、二項定理より
$$p_n-(1-p_n)=\sum_{j=0}^{n}{}_n\mathrm{C}_j\left(\dfrac{M}{M+N}\right)^{n-j}\left(-\dfrac{N}{M+N}\right)^j=\left(\dfrac{M-N}{M+N}\right)^n=r^n$$
よって $2p_n-1=r^n$、 $p_n=\dfrac{1+r^n}{2}$ が漸化式を使わずに直接求まる。 $r$ が「1回で偶数を引く確率 − 奇数を引く確率」であることも、この式から分かる。
出題意図
和の偶奇だけに注目して、カードを「偶数」「奇数」の2種類と見ることができるか
「 $n+1$ 回目までの和が偶数になるのはどういうときか」を言葉にし、1文字の確率漸化式に立式できるか
(3) 「 $j$ と書かれたカードが $j$ 枚」という設定を正しく数え、 $k$ の偶奇で場合分けして等差数列の和を計算できるか
(4) 定数型の漸化式を等比数列の形に直して解けるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 50点 | 30点 |
| 目標時間 | 25分 | 30分 |
問題としては典型問題そのもの。
(1) の $p_1$、 $p_2$ は実験として求めるだけ。
(2) は推移図を書けば確率漸化式はすぐに立つ。
難易度が上がるのは (3) からで、 $k$ の偶奇の場合分けが必要になる。
(4) の漸化式は係数に $\dfrac{M}{M+N}$ などが入った見慣れない形で、ここで混乱する受験生は多い。
ただ、中身は特性方程式を使う定数型のパターンそのもの。
見慣れない形と、(3)(4) の場合分けに気づきにくい点で標準で、この年の合否を分けた1問。
差がつく所・失点しやすい所
- 2009年の合否を分けた1問。差がつくのは (3)(4) の場合分け: $M$、 $N$ が $k$ の偶奇で変わるので、 $k$ の偶奇で場合分けが必要だと気づけるか。
- (4):係数に $\dfrac{M-N}{M+N}$ などが入った見慣れない形の漸化式に惑わされず、特性方程式を使う定数型のパターンとして解けるか。
2009年九州大学理系数学
第3問 解答・解説
第3問は微分法・極限・積分(数学Ⅲ)の問題です。
テーマは「放物線の2本の法線の交点の極限(曲率中心)と、その軌跡の概形・面積」。
問題


問題文をテキストで読む
曲線 $C_1:\ y=\dfrac{x^2}{2}$ の点 $\mathrm{P}\left(a,\ \dfrac{a^2}{2}\right)$ における法線と点 $\mathrm{Q}\left(b,\ \dfrac{b^2}{2}\right)$ における法線の交点をRとする。ただし、 $b\neq a$ とする。このとき、次の問いに答えよ。
(1) $b$ が $a$ に限りなく近づくとき、Rはある点Aに限りなく近づく。Aの座標を $a$ で表せ。
(2) 点Pが曲線 $C_1$ 上を動くとき、(1) で求めた点Aが描く軌跡を $C_2$ とする。曲線 $C_1$ と軌跡 $C_2$ の概形を描き、 $C_1$ と $C_2$ の交点の座標を求めよ。
(3) 曲線 $C_1$ と軌跡 $C_2$ で囲まれた部分の面積を求めよ。
解答の方針
【(1)の方針】
法線の傾きを $-\dfrac1a$ と書くと $a=0$ で場合分けが要るので、 分母を払った形 $f'(a)\{y-f(a)\}=-(x-a)$ で書く。交点の式は $a-b$ で約分すれば $\dfrac00$ の不定形でなくなり、 $b=a$ を代入するだけになる。


- $y’=x$ から、P、Qにおける法線を分母を払った形で $x+ay=a+\dfrac{a^3}{2}$、 $x+by=b+\dfrac{b^3}{2}$ と書く( $a=0$ も含めて1つの式で扱える)。
- 2式は $x$ の係数がともに1なので、引いて $x$ を消す。 $a^3-b^3$ を因数分解して $a-b$( $\neq0$)で割り、Rの $y$ 座標を求める。それを代入して $x$ 座標も求める。
- Rの座標は $b$ の多項式で不定形ではないので、 $b=a$ を代入してAの座標を答える(QがPに近づくと、RはPの法線上の点Aに近づく)。
【(2)の方針】
Aの座標は $a$ で表されているので、 $a$ を消せば軌跡の式 になる。概形を問われているので 凹凸まで 調べ、 偶関数なので $x\geqq0$ だけ 調べて折り返す。
- $x=-a^3$ は $a$ と $x$ が1対1に対応し、 $x$ も実数全体を動く。 $a^2=\sqrt[3]{x^2}$ とし、 $y$ 座標に代入して $C_2:\ y=1+\dfrac32\sqrt[3]{x^2}$ を求める。
- 定義域(実数全体)・偶関数・漸近線なしを確かめ、 $x\geqq0$ で $y’>0$、 $y”<0$ から単調に増加し上に凸であることを確かめる(増減表は要らない)。 $x\to+0$ で $y’\to\infty$ から、点 $(0,\ 1)$ でとがることを読む。
- $x\geqq0$ で $u=x^{\frac23}$( $u\geqq0$)とおくと $x^2=u^3$ なので、どちらも $u$ の3次式で比べられる。 $C_2$ の $y$ と $C_1$ の $y$ の差を $-\dfrac12(u-2)(u+1)^2$ と因数分解する。
- 差が0になる $u=2$ から交点 $(\pm2\sqrt2,\ 4)$ を求め、差の符号から上下関係を決めて、 $C_1$ と $C_2$ の概形を書く。
【(3)の方針】
面積は、(2) で書いたグラフの 上下関係をそのまま式に移す だけ。 $C_1$、 $C_2$ はともに $y$ 軸に関して対称 なので、右半分の2倍で求める。
- (2) の上下関係( $-2\sqrt2\leqq x\leqq2\sqrt2$ で $C_2$ が上)から、右半分の2倍として面積を $S=2\displaystyle\int_0^{2\sqrt2}\left\{\left(1+\dfrac32x^{\frac23}\right)-\dfrac{x^2}{2}\right\}dx$ と表す。
- 原始関数 $x+\dfrac{9}{10}x^{\frac53}-\dfrac{x^3}{6}$ を求める。
- $2\sqrt2=2^{\frac32}$ と指数で表して $(2\sqrt2)^{\frac53}$、 $(2\sqrt2)^3$ を先に計算し、代入して答える。
解答




解答をテキストで読む
(1) 配点 20点
$y’=x$ より、点Pにおける接線の傾きは $a$ なので、Pにおける法線は $a\left(y-\dfrac{a^2}{2}\right)=-(x-a)$、すなわち
$$x+ay=a+\frac{a^3}{2}$$
である(この形なら $a=0$ のときの法線 $x=0$ も表している)。同様に、Qにおける法線は
$$x+by=b+\frac{b^3}{2}$$
Pの法線の式からQの法線の式を引くと
$$(a-b)y=(a-b)+\frac{a^3-b^3}{2}=(a-b)\left(1+\frac{a^2+ab+b^2}{2}\right)$$
$a-b\neq0$ なので $y=1+\dfrac{a^2+ab+b^2}{2}$。これをPの法線の式に代入して
$$x=a+\frac{a^3}{2}-a\left(1+\frac{a^2+ab+b^2}{2}\right)=-\frac{ab(a+b)}{2}$$
よって $\mathrm{R}\left(-\dfrac{ab(a+b)}{2},\ 1+\dfrac{a^2+ab+b^2}{2}\right)$。
Rの座標は $b$ の多項式なので、 $b\to a$ の極限は $b=a$ を代入して
$$-\frac{a\cdot a\cdot2a}{2}=-a^3,\qquad 1+\frac{3a^2}{2}$$
答 $\mathrm{A}\left(-a^3,\ 1+\dfrac32a^2\right)$
(2) 配点 15点
Aの座標を $(x,\ y)$ とすると $x=-a^3$、 $y=1+\dfrac32a^2$。 $x=-a^3$ より $a=-\sqrt[3]{x}$ で、 $a$ が実数全体を動くとき $x$ も実数全体を動く。 $a^2=\sqrt[3]{x^2}$ を代入して
$$C_2:\ y=1+\frac32\sqrt[3]{x^2}$$
$C_2$ の式は $x$ を $-x$ にかえても変わらない(偶関数)ので、 $C_2$ は $y$ 軸に関して対称。 $x\geqq0$ を調べる。 $x>0$ では $y=1+\dfrac32x^{\frac23}$ で
$$y’=x^{-\frac13}=\frac{1}{\sqrt[3]{x}}>0,\qquad y”=-\frac13x^{-\frac43}<0$$
よって $x\geqq0$ で単調に増加し、上に凸。
また、 $x\to+0$ のとき $y’\to\infty$ なので、 $C_2$ は点 $(0,\ 1)$ で $y$ 軸に接するように立ち上がる。 $y$ 軸で折り返すと、点 $(0,\ 1)$ でとがった形になる。 $x\to\infty$ のとき $y\to\infty$。
次に交点と上下関係を調べる。 $C_1$、 $C_2$ はともに $y$ 軸に関して対称なので、 $x\geqq0$ で考える。 $u=x^{\frac23}$( $u\geqq0$)とおくと $x^2=u^3$ なので
$$\left(1+\frac32x^{\frac23}\right)-\frac{x^2}{2}=1+\frac32u-\frac{u^3}{2}=-\frac12(u^3-3u-2)=-\frac12(u-2)(u+1)^2$$
$u\geqq0$ より $(u+1)^2>0$ なので、この差が0になるのは $u=2$ のときだけ。 $x^{\frac23}=2$ より $x=2^{\frac32}=2\sqrt2$、このとき $y=\dfrac{(2\sqrt2)^2}{2}=4$。対称性から $x=-2\sqrt2$ でも交わる。
さらに、差の符号は $2-u$ の符号と一致するので、 $0\leqq u<2$( $|x|<2\sqrt2$)では $C_2$ が上、 $u>2$( $|x|>2\sqrt2$)では $C_1$ が上である。以上から概形は下の図のとおり( $C_2$ は点 $(0,\ 1)$ でとがり、上に凸で増加して、点 $(\pm2\sqrt2,\ 4)$ で $C_1$ と交わり、その外側では $C_1$ の下に出る)。
答 概形は上の図、交点 $(2\sqrt2,\ 4)$、 $(-2\sqrt2,\ 4)$
別解(交点) $C_1$ と $C_2$ の交点は、点Aが $C_1$ 上にあるときの点Aである。 $1+\dfrac32a^2=\dfrac{(-a^3)^2}{2}$ より
$$a^6-3a^2-2=0\iff(a^2-2)(a^2+1)^2=0$$
$a^2+1>0$ なので $a^2=2$、 $a=\pm\sqrt2$。このとき $\mathrm{A}(-a^3,\ 1+\dfrac32a^2)=(\mp2\sqrt2,\ 4)$(複号同順)。 $x^{\frac23}$ を置きかえずに求められる。
(3) 配点 15点
(2) より、囲まれた部分は $-2\sqrt2\leqq x\leqq2\sqrt2$ で $C_2$ が上、 $C_1$ が下の部分(下の図の色の部分)。
$C_1$、 $C_2$ はともに $y$ 軸に関して対称なので、求める面積 $S$ は
$$S=2\int_0^{2\sqrt2}\left\{\left(1+\frac32x^{\frac23}\right)-\frac{x^2}{2}\right\}dx=2\left[x+\frac{9}{10}x^{\frac53}-\frac{x^3}{6}\right]_0^{2\sqrt2}$$
$2\sqrt2=2^{\frac32}$ なので
$$(2\sqrt2)^{\frac53}=2^{\frac52}=4\sqrt2,\qquad(2\sqrt2)^3=2^{\frac92}=16\sqrt2$$
よって
$$S=2\left(2\sqrt2+\frac{9}{10}\cdot4\sqrt2-\frac{16\sqrt2}{6}\right)=2\left(2\sqrt2+\frac{18\sqrt2}{5}-\frac{8\sqrt2}{3}\right)=2\cdot\frac{(30+54-40)\sqrt2}{15}=\frac{88\sqrt2}{15}$$
答 $\dfrac{88\sqrt2}{15}$
出題意図
(1) 法線の方程式を立てて2本の交点を求め、その交点の極限を求められるか(Aは放物線のPでの曲率中心)
(2) 媒介変数 $a$ を消して軌跡を $y=f(x)$ の形に直し、凹凸と端の様子まで調べて、2曲線の概形と上下関係を正しく捉えることができるか
(3) (2) のグラフをそのまま定積分の式に移し、 $x^{\frac23}$ を含む積分を最後まで計算できるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 50点 | 50点 |
| 目標時間 | 20分 | 25分 |
(1) は2本の法線の交点を求めて代入するだけで楽。
法線は分母を払った形で書けば場合分けも要らない。
(2) は $C_2$ の式を作り、単調に増加し上に凸で、点 $(0,\ 1)$ でとがることが分かれば増減表は要らない。
計算が少し面倒なだけで、難しい所はない。
差がつくのは (2) で $C_2$ の概形を描けるかと、交点の座標を正しく計算できるかどうかぐらい。
それ以外に難しい所はないので、全学部で50点を取りたい。
差がつく所・失点しやすい所
- 差がつくのは (2): $C_2$ の概形(点 $(0,\ 1)$ でとがり、上に凸で増加し、 $|x|>2\sqrt2$ では $C_1$ の下に出る)を描けるか。
- (2) の交点:交点の座標を正しく計算できるか。
2009年九州大学理系数学
第5問 解答・解説
第5問は微分法(数学Ⅲ)・速度と加速度の問題です。
テーマは「$y=e^x$ 上を速さ1で動く点の加速度の大きさの最大値」。
問題


問題文をテキストで読む
曲線 $y=e^x$ 上を動く点Pの時刻 $t$ における座標を $(x(t),\ y(t))$ と表し、Pの速度ベクトルと加速度ベクトルをそれぞれ $\vec v=\left(\dfrac{dx}{dt},\ \dfrac{dy}{dt}\right)$ と $\vec\alpha=\left(\dfrac{d^2x}{dt^2},\ \dfrac{d^2y}{dt^2}\right)$ とする。すべての時刻 $t$ で $|\vec v|=1$ かつ $\dfrac{dx}{dt}>0$ であるとして、次の問いに答えよ。
(1) Pが点 $(s,\ e^s)$ を通過する時刻における速度ベクトル $\vec v$ を $s$ を用いて表せ。
(2) Pが点 $(s,\ e^s)$ を通過する時刻における加速度ベクトル $\vec\alpha$ を $s$ を用いて表せ。
(3) Pが曲線全体を動くとき、 $|\vec\alpha|$ の最大値を求めよ。
解答の方針
【(1)の方針】
Pは常に $y=e^x$ 上にあるので、 この式を $t$ で微分 すれば $\vec v$ は 接線の向き $(1,\ e^x)$ の定数倍 と分かる。残る $\dfrac{dx}{dt}$ は $|\vec v|=1$ と $\dfrac{dx}{dt}>0$ で決まる。
- $y=e^x$ の両辺を $t$ で微分し( $\dfrac{d}{dt}=\dfrac{dx}{dt}\cdot\dfrac{d}{dx}$ )、 $\dfrac{dy}{dt}=e^x\dfrac{dx}{dt}$ を求める。
- $|\vec v|^2=1$ に代入し、 $\dfrac{dx}{dt}>0$ から $\dfrac{dx}{dt}=\dfrac{1}{\sqrt{1+e^{2x}}}$ を求める。
- $x=s$ として $\vec v$ を答える。
【(2)の方針】
何の文字で微分しているかを意識する。 $\vec v$ は $x$ の式なので $t$ では直接微分できない。 $d$ を分数のように扱って $\dfrac{d}{dt}=\dfrac{dx}{dt}\cdot\dfrac{d}{dx}$ とし、 $x$ で微分してから $\dfrac{dx}{dt}$ をかける。
- $\vec v$ を $x$ の式で表す。ルートは指数の形に直して $\left((1+e^{2x})^{-\frac12},\ e^x(1+e^{2x})^{-\frac12}\right)$ とする。
- $\dfrac{d}{dt}=\dfrac{dx}{dt}\cdot\dfrac{d}{dx}$ より $\vec\alpha=\dfrac{dx}{dt}\cdot\dfrac{d\vec v}{dx}$ とする。
- $\vec v$ の各成分を $x$ で微分する(合成関数の微分)。
- (1) の $\dfrac{dx}{dt}=(1+e^{2x})^{-\frac12}$ をかけ、 $x=s$ として $\vec\alpha$ を答える。
- 速さが一定なので $\vec v\cdot\vec\alpha=0$ となるはずであることを使って検算する。
【(3)の方針】
$|\vec\alpha|^2$ では $e^s$ が $e^{2s}$ の形でしか出てこない。 2乗で考え、 $u=e^{2s}$ とおけば $u>0$ での分数関数の最大値の問題になる。なお、 $s$ のまま微分しても解ける(別解)。
- $|\vec\alpha|>0$ より「 $|\vec\alpha|$ が最大 $\iff$ $|\vec\alpha|^2$ が最大」と2乗で考え、(2) の答えから $|\vec\alpha|^2=\dfrac{e^{2s}}{(1+e^{2s})^3}$ と整理する。
- $u=e^{2s}$ とおく。 $s$ は実数全体を動くので $u>0$。 $g(u)=\dfrac{u}{(1+u)^3}$ を $u>0$ で最大にする問題に言いかえる。
- $g'(u)=\dfrac{1-2u}{(1+u)^4}$ の分母は正なので、符号は $1-2u$ で決まる。増減表から $u=\dfrac12$ で最大値 $\dfrac{4}{27}$ をとる。
- $|\vec\alpha|$ の最大値 $\sqrt{\dfrac{4}{27}}=\dfrac{2\sqrt3}{9}$ と、そのときの $s=-\dfrac12\log2$ を答える。
解答




解答をテキストで読む
(1) 配点 15点
Pは曲線 $y=e^x$ 上にあるので、常に $y=e^x$ である。両辺を $t$ で微分すると、右辺は $x$ の式なので $\dfrac{d}{dt}=\dfrac{dx}{dt}\cdot\dfrac{d}{dx}$ より
$$\frac{dy}{dt}=\frac{dx}{dt}\cdot\frac{d}{dx}e^x=e^x\frac{dx}{dt}$$
$|\vec v|=1$ より
$$\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2=\left(\frac{dx}{dt}\right)^2(1+e^{2x})=1$$
$\dfrac{dx}{dt}>0$ なので
$$\frac{dx}{dt}=\frac{1}{\sqrt{1+e^{2x}}},\qquad\frac{dy}{dt}=\frac{e^x}{\sqrt{1+e^{2x}}}$$
Pが点 $(s,\ e^s)$ を通過する時刻では $x=s$ なので
答 $\vec v=\left(\dfrac{1}{\sqrt{1+e^{2s}}},\ \dfrac{e^s}{\sqrt{1+e^{2s}}}\right)$
(2) 配点 20点
(1) より、Pの $x$ 座標が $x$ のとき
$$\vec v=\left((1+e^{2x})^{-\frac12},\ e^x(1+e^{2x})^{-\frac12}\right)$$
である。 $\vec v$ は $x$ の式なので、時刻 $t$ で微分するために $\dfrac{d}{dt}=\dfrac{dx}{dt}\cdot\dfrac{d}{dx}$ とすると
$$\vec\alpha=\frac{d\vec v}{dt}=\frac{dx}{dt}\cdot\frac{d\vec v}{dx}$$
各成分を $x$ で微分する。
$$\frac{d}{dx}(1+e^{2x})^{-\frac12}=-\frac12(1+e^{2x})^{-\frac32}\cdot2e^{2x}=-e^{2x}(1+e^{2x})^{-\frac32}$$
$$\frac{d}{dx}\left\{e^x(1+e^{2x})^{-\frac12}\right\}=e^x(1+e^{2x})^{-\frac12}-e^x\cdot e^{2x}(1+e^{2x})^{-\frac32}=e^x(1+e^{2x})^{-\frac32}\left\{(1+e^{2x})-e^{2x}\right\}=e^x(1+e^{2x})^{-\frac32}$$
これらに $\dfrac{dx}{dt}=(1+e^{2x})^{-\frac12}$ をかけて
$$\frac{d^2x}{dt^2}=-\frac{e^{2x}}{(1+e^{2x})^2},\qquad\frac{d^2y}{dt^2}=\frac{e^x}{(1+e^{2x})^2}$$
$x=s$ として
答 $\vec\alpha=\left(-\dfrac{e^{2s}}{(1+e^{2s})^2},\ \dfrac{e^s}{(1+e^{2s})^2}\right)$
(検算)速さが一定なので、 $|\vec v|^2=1$ の両辺を $t$ で微分すると $2\vec v\cdot\vec\alpha=0$ となり、 $\vec\alpha$ は $\vec v$ に垂直になるはずである。実際
$$\vec v\cdot\vec\alpha=\frac{1\cdot(-e^{2s})+e^s\cdot e^s}{(1+e^{2s})^{\frac52}}=0$$
となり、答えと合う。
点Pでの $\vec v$ は接線の向きの長さ1のベクトルで、 $\vec\alpha$ は $\vec v$ に垂直で曲線の内側(左上)を向く。図では見やすくするため、 $\vec\alpha$ の長さを3倍にして書いている。
別解(接線の角 $\theta$ で微分する) 点Pでの接線が $x$ 軸の正の向きとなす角を $\theta$ $\left(0<\theta<\dfrac{\pi}{2}\right)$ とすると、接線の傾きより $\tan\theta=e^x$ である。 $\vec v$ は接線の向きで $|\vec v|=1$、 $\dfrac{dx}{dt}>0$ なので $\vec v=(\cos\theta,\ \sin\theta)$ と表せる。 $\theta$ は $t$ とともに変わるので、 $\dfrac{d}{dt}=\dfrac{d\theta}{dt}\cdot\dfrac{d}{d\theta}$ より
$$\vec\alpha=\frac{d\theta}{dt}(-\sin\theta,\ \cos\theta)$$
$\tan\theta=e^x$ の両辺を $x$ で微分すると $\dfrac{1}{\cos^2\theta}\cdot\dfrac{d\theta}{dx}=e^x$ で、 $\cos^2\theta=\dfrac{1}{1+\tan^2\theta}=\dfrac{1}{1+e^{2x}}$ なので $\dfrac{d\theta}{dx}=\dfrac{e^x}{1+e^{2x}}$ 。また $\dfrac{dx}{dt}=\cos\theta=\dfrac{1}{\sqrt{1+e^{2x}}}$ なので
$$\frac{d\theta}{dt}=\frac{dx}{dt}\cdot\frac{d\theta}{dx}=\frac{e^x}{(1+e^{2x})^{\frac32}}$$
$\sin\theta=\dfrac{e^x}{\sqrt{1+e^{2x}}}$ 、 $\cos\theta=\dfrac{1}{\sqrt{1+e^{2x}}}$ を代入して $x=s$ とすると、上と同じ $\vec\alpha$ が得られる。さらに $(-\sin\theta,\ \cos\theta)$ は長さ1なので、 $|\vec\alpha|=\dfrac{d\theta}{dt}=\dfrac{e^s}{(1+e^{2s})^{\frac32}}$ がすぐに求まり、(3) の式がそのまま得られる。
(3) 配点 15点
(2) より
$$|\vec\alpha|^2=\frac{e^{4s}+e^{2s}}{(1+e^{2s})^4}=\frac{e^{2s}(e^{2s}+1)}{(1+e^{2s})^4}=\frac{e^{2s}}{(1+e^{2s})^3}$$
$|\vec\alpha|>0$ なので、 $|\vec\alpha|$ が最大になるのは $|\vec\alpha|^2$ が最大になるときである。 $u=e^{2s}$ とおくと、Pが曲線全体を動くとき $s$ は実数全体を動くので、 $u$ は $u>0$ の範囲全体を動く。
$$|\vec\alpha|^2=\frac{u}{(1+u)^3}=g(u)\quad(u>0)$$
$$g'(u)=\frac{(1+u)^3-u\cdot3(1+u)^2}{(1+u)^6}=\frac{(1+u)-3u}{(1+u)^4}=\frac{1-2u}{(1+u)^4}$$
$(1+u)^4>0$ なので、 $g'(u)$ の符号は $1-2u$ の符号と一致する。よって、増減は次のようになる。
| $u$ | $\cdots$ | $\dfrac12$ | $\cdots$ |
|---|---|---|---|
| $g'(u)$ | $+$ | $0$ | $-$ |
| $g(u)$ | $\nearrow$ | 最大 | $\searrow$ |
$g(u)$ の最大値は
$$g\left(\frac12\right)=\frac{\dfrac12}{\left(\dfrac32\right)^3}=\frac12\cdot\frac{8}{27}=\frac{4}{27}$$
$u=\dfrac12$ のとき $e^{2s}=\dfrac12$ より $s=-\dfrac12\log2$ 。よって $|\vec\alpha|$ の最大値は $\sqrt{\dfrac{4}{27}}=\dfrac{2}{3\sqrt3}=\dfrac{2\sqrt3}{9}$
答 $\dfrac{2\sqrt3}{9}$ ( $s=-\dfrac12\log2$ のとき)
速さが一定なので、加速度は進む向きの変わり方だけを表し、その大きさは曲線の曲がり方の強さを表す。 $y=e^x$ は、左へ行くほど $x$ 軸に近づき、右へ行くほど急になって、どちらの側でも曲がり方は小さくなる。その間の点 $\left(-\dfrac12\log2,\ \dfrac{1}{\sqrt2}\right)$ で曲がり方がいちばん強くなり、 $|\vec\alpha|$ が最大になる。図では見やすくするため、加速度ベクトルの長さを3倍にして書いている。
別解( $s$ のまま微分する) $f(s)=\dfrac{e^s}{(1+e^{2s})^{\frac32}}=e^s(1+e^{2s})^{-\frac32}$ とおくと
$$f'(s)=e^s(1+e^{2s})^{-\frac32}-\frac32e^s(1+e^{2s})^{-\frac52}\cdot2e^{2s}=\frac{e^s\left\{(1+e^{2s})-3e^{2s}\right\}}{(1+e^{2s})^{\frac52}}=\frac{e^s(1-2e^{2s})}{(1+e^{2s})^{\frac52}}$$
$\dfrac{e^s}{(1+e^{2s})^{\frac52}}>0$ なので、 $f'(s)$ の符号は $1-2e^{2s}$ で決まり、 $s<-\dfrac12\log2$ で正、 $s>-\dfrac12\log2$ で負。よって最大値は $f\left(-\dfrac12\log2\right)=\dfrac{\dfrac{1}{\sqrt2}}{\left(\dfrac32\right)^{\frac32}}=\dfrac{2\sqrt3}{9}$
出題意図
(1)(2) 曲線上の点の座標を時刻 $t$ の関数とみて、何の文字で微分しているかを意識しながら合成関数の微分を正確に扱えるか。とくに、 $x$ の式で表された速度ベクトルを、 $\dfrac{d}{dt}=\dfrac{dx}{dt}\cdot\dfrac{d}{dx}$ と言いかえて時刻 $t$ で微分できるか。
(3) 加速度の大きさを整理し、置き換えによって1変数の分数関数の最大値に帰着できるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 50点 | 50点 |
| 目標時間 | 20分 | 30分 |
速度ベクトル・加速度ベクトルの定義も問題文で与えられていて、計算が少し面倒なだけの典型問題。
(2) は「 $t$ で微分する」を「 $x$ で微分して $\dfrac{dx}{dt}$ をかける」と言いかえれば、あとは合成関数の微分の計算だけ。
(3) は $\vec\alpha$ が (2) で求まっているので、 $|\vec\alpha|^2$ を作って $u=e^{2s}$ と置換し、分数関数の最大値を求めるだけ。
差がつく所・失点しやすい所
- 差がつくのは (2): $x$ の式で表された $\vec v$ を時刻 $t$ で微分するために、 $\dfrac{d}{dt}=\dfrac{dx}{dt}\cdot\dfrac{d}{dx}$ と $x$ での微分に言いかえる発想に行き着けるか。ここに気づけないと方針が立たない。
- (2) の成分の微分:合成関数の微分で計算ミスが出やすい。速さが一定なら $\vec v\cdot\vec\alpha=0$ なので、これで答えを検算できる。
2009年九州大学・理系数学の
講評とまとめ
5問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 簡単 | 50点 | 50点 |
| 第2問 | 標準 | 50点 | 30点 |
| 第3問 | やや簡単 | 50点 | 50点 |
| 第4問 | 標準 | 50点 | 40点 |
| 第5問 | やや簡単 | 50点 | 50点 |
| 全体 | やや簡単 | 250点 | 220点 |
第4問は行列の問題です。
行列は現在の高校数学の範囲外なので、この記事では解答・解説を載せていません。
総合の目標点(医学部医学科250点、その他の学部220点)は、第4問も含めた当時の目安です。
全体としてやや簡単なセットです。
どの問題も典型問題で、計算を最後まで正確にやりきれるかで点が決まります。
第5問のような速度・加速度の問題も、対策がおろそかになりがちなので、しっかり勉強しておきましょう。
漸化式の典型パターンは10個ほどしかなく、それ以外は基本的に誘導がつきます。
第2問のように見慣れない形でも、形に惑わされずに典型パターンに持ち込みましょう。
解く流れ
問題の順でよい(第4問の行列は今の受験生は解かなくてよい)。
2009年九州大学・理系数学に
関するよくある質問
2009年の九州大学・理系数学について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2009年の九州大学・理系数学は難しかった?
-
やや簡単な年でした。
第1問は簡単、第3問・第5問はやや簡単、第2問は標準です。
第4問は行列で、現行課程の範囲外です。 - 2009年の九州大学・理系数学は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で250点、その他の学部で220点です(250点満点)。
- 2009年の九州大学・理系数学はどこで差がつく?
-
第1問は誰もが確実に取れるボーナス問題で、第3問・第5問は計算を最後までやりきって完答したい問題です。そのうえで、差がつくとしたら次の3つです。
- 第2問(3)(4):確率漸化式の係数が $k$ の偶奇で変わると気づき、場合分けできたか(2009年の合否を分けた一問)。
- 第2問(4):係数に $\dfrac{M-N}{M+N}$ などが入った見慣れない形の漸化式を、特性方程式の定数型として解けたか。
- 第5問(2):$t$ での微分を、$x$ で微分して $\dfrac{dx}{dt}$ をかける形に言いかえられたか。
- 2009年の九州大学・理系数学は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:平面ベクトル・2次関数
- 第2問:確率・数列
- 第3問:微分法・極限・積分(数学Ⅲ)
- 第4問:行列・平面ベクトル
- 第5問:微分法(数学Ⅲ)・速度と加速度


