【解説・採点基準付き】2010年九州大学理系数学の解答・解説
2010年の九州大学・理系数学の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの採点基準付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2010年九州大学理系数学
第1問 解答・解説
この記事の配点・採点基準は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は図形と計量・2次方程式の問題です。
テーマは「余弦定理で $\mathrm{CP}^2$ を表し、辺AB上に $\mathrm{CP}=a$ となる点Pがちょうど2つある条件を、角の条件に言いかえる」。
問題


問題文をテキストで読む
三角形ABCの3辺の長さを $a=\mathrm{BC}$、 $b=\mathrm{CA}$、 $c=\mathrm{AB}$ とする。実数 $t\geqq0$ を与えたとき、Aを始点としBを通る半直線上に $\mathrm{AP}=tc$ となるように点Pをとる。次の問いに答えよ。
(1) $\mathrm{CP}^2$ を $a,b,c,t$ を用いて表せ。
(2) 点Pが $\mathrm{CP}=a$ を満たすとき、 $t$ を求めよ。
(3) (2) の条件を満たす点Pが辺AB上にちょうど2つあるとき、 $\angle\mathrm{A}$ と $\angle\mathrm{B}$ に関する条件を求めよ。
解答の方針
【(1)の方針】
余弦定理は「3辺から角の $\cos$ を求める」「2辺とその間の角から残りの辺を求める」の2通りで使う。答えに角Aは残せないので、$\triangle\mathrm{ABC}$ と $\triangle\mathrm{ACP}$ で余弦定理を2回使う。


- $\triangle\mathrm{ABC}$ で、3辺から角の $\cos$ を求める形で余弦定理を使い、 $\cos A=\dfrac{b^2+c^2-a^2}{2bc}$ とする。
- $\triangle\mathrm{ACP}$ で、2辺 $\mathrm{AC}=b$、 $\mathrm{AP}=tc$ とその間の角Aから残りの辺を求める形で余弦定理を使い、 $\mathrm{CP}^2=b^2+(tc)^2-2\cdot b\cdot tc\cos A$ とする。
- 1の $\cos A$ を代入し、 $t$ について整理して答える。
【(2)の方針】
$t=1$ のときPはBに一致し $\mathrm{CP}=a$ となるので、 $t=1$ は必ず解。解が1つ分かれば、 $t-1$ をくくり出して因数分解できる。
- (1) の式を $\mathrm{CP}^2=a^2$ とおき、 $c^2t^2-(b^2+c^2-a^2)t+b^2-a^2=0$ とする。
- $t=1$ のとき $\mathrm{AP}=c=\mathrm{AB}$ でP=B、 $\mathrm{CP}=a$ なので $t=1$ は解であることを確かめ、左辺を $(t-1)\{c^2t-(b^2-a^2)\}$ と因数分解する。
- 解は $t=1$、 $\dfrac{b^2-a^2}{c^2}$。 $t\geqq0$ の条件から、もう1つの解が使えるのは $b\geqq a$ のときだけなので、 $b\geqq a$ と $b<a$ に分けて答える。
【(3)の方針】
「Pが辺AB上にある」は $0\leqq t\leqq1$ と言いかえる。 $t=1$ はいつも条件をみたすので、もう1つの解が $0\leqq t<1$ に入ればよい。問題は角の条件を聞いているので、最後に辺の不等式を角の言葉に言いかえる。
- PはAを始点とする半直線上にあるので、「Pが辺AB上にある」を $0\leqq t\leqq1$ と言いかえる。 $t=1$ (P=B)はいつも条件をみたし、 $t=1$ と重なると点は1つになるので、ちょうど2つになる条件を $0\leqq\dfrac{b^2-a^2}{c^2}<1$ とする。
- 左側の不等式を $a\leqq b$ と直し、辺と角の大小関係から $\angle\mathrm{A}\leqq\angle\mathrm{B}$ とする。
- 右側の不等式を $b^2<c^2+a^2$ と直し、 $\triangle\mathrm{ABC}$ で余弦定理を使って $\cos B>0$、つまり $\angle\mathrm{B}<90^\circ$ とする。
- 2と3を合わせて答える。
解答


解答をテキストで読む
(1) 配点 15点
$\triangle\mathrm{ABC}$ で余弦定理より
$$\cos A=\frac{b^2+c^2-a^2}{2bc}$$
$\triangle\mathrm{ACP}$ で余弦定理より
$$\mathrm{CP}^2=b^2+(tc)^2-2\cdot b\cdot tc\cos A=b^2+c^2t^2-2btc\cdot\frac{b^2+c^2-a^2}{2bc}=b^2+c^2t^2-(b^2+c^2-a^2)t$$
答 $\mathrm{CP}^2=c^2t^2-(b^2+c^2-a^2)t+b^2$
(検算: $t=0$ のときP=Aで $b^2$、 $t=1$ のときP=Bで $c^2-b^2-c^2+a^2+b^2=a^2$ となり、図と合う)
(2) 配点 15点
$\mathrm{CP}=a$ より $\mathrm{CP}^2=a^2$ なので、(1) から
$$c^2t^2-(b^2+c^2-a^2)t+b^2-a^2=0\quad\cdots\cdots①$$
$t=1$ のときPはBに一致し $\mathrm{CP}=\mathrm{CB}=a$ なので、 $t=1$ は①の解である(実際、左辺に $t=1$ を代入すると $c^2-b^2-c^2+a^2+b^2-a^2=0$ )。よって①の左辺は $t-1$ を因数に持ち
$$(t-1)\{c^2t-(b^2-a^2)\}=0\qquad\therefore\ t=1,\ \frac{b^2-a^2}{c^2}$$
$t\geqq0$ なので、 $\dfrac{b^2-a^2}{c^2}\geqq0$、つまり $b\geqq a$ のときだけ、もう1つの解も条件をみたす。
答 $b\geqq a$ のとき $t=1,\ \dfrac{b^2-a^2}{c^2}$ / $b<a$ のとき $t=1$
( $b=a$ のときは $t=0$ と $t=1$ で、P=AとP=Bの2つ)
(3) 配点 20点
Pは半直線AB上にあり $\mathrm{AP}=tc$ なので、Pが辺AB上にある $\iff0\leqq t\leqq1$。
$t=1$(P=B)はいつも辺AB上にある。よって、(2) の条件をみたす点Pが辺AB上にちょうど2つあるのは、もう1つの解 $\dfrac{b^2-a^2}{c^2}$ が $t=1$ と異なり、 $0\leqq t\leqq1$ に入るとき、つまり
$$0\leqq\frac{b^2-a^2}{c^2}<1\quad\cdots\cdots②$$
のときである(もう1つの点は、下の図のように、Cを中心とする半径 $a$ の円と辺ABの、B以外の交点)。
②の左側は $b^2\geqq a^2$、つまり $b\geqq a$。三角形では大きい辺に向かい合う角が大きい(辺が等しければ角も等しい)ので
$$a\leqq b\iff\angle\mathrm{A}\leqq\angle\mathrm{B}$$
②の右側は $b^2-a^2<c^2$、つまり $c^2+a^2-b^2>0$。 $\triangle\mathrm{ABC}$ で余弦定理より
$$\cos B=\frac{c^2+a^2-b^2}{2ca}>0\iff\angle\mathrm{B}<90^\circ$$
答 $\angle\mathrm{A}\leqq\angle\mathrm{B}<90^\circ$
( $\angle\mathrm{A}=\angle\mathrm{B}$ のときは、もう1つの点がA自身になる)
別解((3) を図で見る:垂線の足の位置で読む) $\mathrm{CP}=a$ をみたす点Pは、Cを中心とする半径 $a$ の円と直線ABの交点である。Cから直線ABに下ろした垂線の足をHとすると、この円はHを中心にBと対称な位置でもう一度直線ABと交わる(上の図のP)。この点が辺AB上にあってBと異なるのは、HがABの中点MとBの間(Mは含み、Bは含まない)にあるとき。
・HがBより手前にある(HがBに一致したり、Bの先に出たりしない) $\iff\angle\mathrm{B}<90^\circ$
・HがMよりB側にある(Mも含む) $\iff\mathrm{HA}\geqq\mathrm{HB}\iff\mathrm{CA}^2=\mathrm{CH}^2+\mathrm{HA}^2\geqq\mathrm{CH}^2+\mathrm{HB}^2=\mathrm{CB}^2\iff b\geqq a\iff\angle\mathrm{A}\leqq\angle\mathrm{B}$
よって $\angle\mathrm{A}\leqq\angle\mathrm{B}<90^\circ$。なお、 $\mathrm{AH}=b\cos A$ なので $\mathrm{AP}=2\mathrm{AH}-c$ となり、 $t=\dfrac{2b\cos A-c}{c}=\dfrac{b^2-a^2}{c^2}$ と (2) の答えにも一致する。
出題意図
(1) 2つの三角形で余弦定理を使い分け、 $\cos A$ を3辺で表してから $\mathrm{CP}$ を求められるか
(2) P=B( $t=1$ )のとき $\mathrm{CP}=\mathrm{CB}=a$ になることを図から捉え、 $t$ の2次方程式を因数分解できるか
(3) 「辺AB上」を $0\leqq t\leqq1$ と読みかえ、 $a\leqq b$、 $b^2<c^2+a^2$ という辺の条件を、角の大小と鋭角の条件に言いかえられるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 簡単 | |
| 目標得点 | 50点 | 50点 |
| 目標時間 | 15分 | 20分 |
余弦定理を使って式を処理できるかを見るだけの、シンプルな数学Ⅰの図形と計量の問題。
チャートのエクササイズの中でも易しい方で、満点を取らないと合格は厳しい。
中身は余弦定理と2次方程式だけで、(2) は P=B、つまり $t=1$ が解だと図から見抜けば因数分解ですぐに終わる。
差がつく所・失点しやすい所
- 特になし:差がつくとすれば計算ミスだけ。このレベルの問題で差をつけられるようでは、九大合格はかなり危ない。
- 失点しやすい所:(2) の $b<a$ のとき $t=1$ だけになる場合分けと、(3) で $t=1$ と重なる場合を除く( $<1$ の等号なし)所。
2010年九州大学理系数学
第2問 解答・解説
第2問は確率・期待値の問題です。
テーマは「サイコロを振り直すかどうかの判断と期待値」。
問題


問題文をテキストで読む
次のような競技を考える。競技者がサイコロを振る。もし、出た目が気に入ればその目を得点とする。そうでなければ、もう1回サイコロを振って、2つの目の合計を得点とすることができる。ただし、合計が7以上になった場合は得点は0点とする。この取り決めによって、2回目を振ると得点が下がることもあることに注意しよう。次の問いに答えよ。
(1) 競技者が常にサイコロを2回振るとすると、得点の期待値はいくらか。
(2) 競技者が最初の目が6のときだけ2回目を振らないとすると、得点の期待値はいくらか。
(3) 得点の期待値を最大にするためには、競技者は最初の目がどの範囲にあるときに2回目を振るとよいか。
解答の方針
(1,2) と (2,1) を区別すれば、36通りはすべて同じ確率で起こる。1回目×2回目の6×6の表に得点を書き込み、表の数を全部足してから $\dfrac{1}{36}$ をかければ期待値になる。(1)〜(3) はすべてこの表で考える。


【(1)の方針】
常に2回振るので、表のマスの得点がそのまま得点になる。表の和に $\dfrac{1}{36}$ をかければ期待値になる。
- (1,2) と (2,1) を別に数えた36通りを、1回目×2回目の6×6の表にし、2つの目の合計(7以上なら0)を書き込む。
- 行ごとの和を求め、それらを足して表の和を求める。
- 表の和に $\dfrac{1}{36}$ をかけて答える。
【(2)の方針】
(1) と違うのは、最初の目が6のときだけ。このときは振らないので得点は6。表では1回目が6の行を、すべて6に書きかえるだけでよい。


- (1) の表で、1回目が6の行(すべて0)を、すべて6に書きかえる。
- 書きかえた表の和を求め、 $\dfrac{1}{36}$ をかけて答える。
【(3)の方針】
2回目を振るかどうかは最初の目を見てから決めるので、最初の目ごとに「振る」「振らない」を別々に選べる。だから、目ごとに期待値の大きい方を選べば、全体の期待値も最大になる。


- 2回目を振るかどうかは最初の目ごとに別々に選べる(決め方は全部で $2^6=64$ 通り)。全体の期待値は「最初の目が $k$ のときの期待値」に $\dfrac16$ をかけて $k=1,\ 2,\ \cdots,\ 6$ で足したもので、各項はその目での選択だけで決まるので、目ごとに期待値の大きい方を選べば全体の期待値も最大になることを述べる。
- 最初の目 $k$ ごとに、振ったときの期待値 $E_k$ (表の $k$ の行の和を6で割ったもの)と、振らないときの得点 $k$ を比べる。両方を6倍して、表の行の和 $6E_k$ と $6k$ を比べればよい。
- $E_k>k$ となる $k$ の範囲を答える。
解答


解答をテキストで読む
サイコロを2回振るとき、1回目と2回目の目の出方は $6^2=36$ 通りで、どれも同じ確率 $\dfrac{1}{36}$ で起こる。2回振ったときの得点を、1回目×2回目の表にまとめると次のようになる(合計が7以上のマスは0点)。
1回目が $k$ のとき2回目を振った場合の得点の期待値を $E_k$ とすると、2回目の目はそれぞれ確率 $\dfrac16$ で出るので、 $E_k$ は表の $k$ の行の和を6で割ったものである。行の和は順に $20,\ 18,\ 15,\ 11,\ 6,\ 0$ なので
$$E_1=\dfrac{10}{3},\quad E_2=3,\quad E_3=\dfrac52,\quad E_4=\dfrac{11}{6},\quad E_5=1,\quad E_6=0$$
(1) 配点 15点
常に2回振るとき、得点は表のマスの数であり、各マスの確率は $\dfrac{1}{36}$ である。
表の和は
$$20+18+15+11+6+0=70$$
よって、得点の期待値は
$$70\times\dfrac{1}{36}=\dfrac{35}{18}$$
答 $\dfrac{35}{18}$
別解(得点ごとの確率) 表から、得点が2、3、4、5、6になるマスはそれぞれ1、2、3、4、5個、0点のマスは21個なので、期待値は
$$\dfrac{2\cdot1+3\cdot2+4\cdot3+5\cdot4+6\cdot5}{36}=\dfrac{70}{36}=\dfrac{35}{18}$$
(2) 配点 15点
最初の目が6のときは2回目を振らないので、得点は6である。表では、1回目が6の行をすべて6に書きかえればよい(下の図の枠)。
書きかえた行の和は36なので、表の和は $70+36=106$ 。よって、得点の期待値は
$$106\times\dfrac{1}{36}=\dfrac{53}{18}$$
答 $\dfrac{53}{18}$
別解((1) との差) (1) と違うのは最初の目が6のとき(確率 $\dfrac16$ )だけで、得点が0から6に変わる。よって期待値は $\dfrac16\times6=1$ だけ増え、 $\dfrac{35}{18}+1=\dfrac{53}{18}$ 。
(3) 配点 20点
2回目を振るかどうかは最初の目を見てから決めるので、最初の目 $k$ ごとに「振る」「振らない」を別々に選べる。最初の目が $k$ のときの得点の期待値を $F_k$ とすると、振らなければ $F_k=k$ 、振れば $F_k=E_k$ であり、全体の期待値は
$$\dfrac16(F_1+F_2+F_3+F_4+F_5+F_6)$$
である。各 $F_k$ は目 $k$ での選択だけで決まり、ほかの目での選択には左右されないので、すべての $k$ で $F_k$ を大きい方にすれば、全体の期待値は最大になる。
そこで、各 $k$ について $E_k$ と $k$ を比べる。両方を6倍して、表の行の和 $6E_k$ と $6k$ を比べると
・$k=1$ : $6E_1=20>6$ → 振る方が大きい
・$k=2$ : $6E_2=18>12$ → 振る方が大きい
・$k=3$ : $6E_3=15<18$ → 振らない方が大きい
・$k=4,\ 5,\ 6$ : $6E_k=11,\ 6,\ 0$ はそれぞれ $24,\ 30,\ 36$ より小さい → 振らない方が大きい
よって、最初の目が1または2のときだけ2回目を振ればよい。このときの期待値は
$$\dfrac{1}{36}(20+18+18+24+30+36)=\dfrac{146}{36}=\dfrac{73}{18}$$
答 最初の目が1以上2以下(1または2)のとき2回目を振る
補足(「ある目以上は振らない」型だけを比べる解き方) 「 $n$ 以上の目では振らない」という形の決め方だけを $n=1,\ 2,\ \cdots$ と比べても、同じ答えにたどり着く( $n=3$ のとき最大の $\dfrac{73}{18}$ )。ただし、それだけでは「3のときだけ振る」のような飛び飛びの決め方を除く理由にならない。最初の目ごとに独立に選べることを述べておけば、64通りすべての決め方の中で最大であると言い切れる。
出題意図
期待値が「値×確率の和」であるという基本が理解できているか
(3) 2回目を振るかどうかは最初の目を見てから決めるので、最初の目ごとに「振る」「振らない」を別々に選べることを捉えることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 50点 | 40点 |
| 目標時間 | 20分 | 25分 |
(1) は全部数え上げるしかない問題で、6×6の表を書けば足し算だけで終わる。
(2) は1回目が6のときだけ得点が6で確定するので、同じ要領で表を書きかえるだけ。
(3) は、最初の目 $k$ ごとに振ったときの期待値 $E_k$ を一般化して、 $k$ と比べる。
少し解きにくいが、振るかどうかは最初の目ごとに別々に決められるので、目ごとに得な方を選べばよい。
差がつく所・失点しやすい所
- 差がつくのは (3):振るかどうかは最初の目ごとに別々に選べるので、目ごとに得な方を選べば全体の期待値も最大になる、という発想に行き着けるか。境目より上で振らない形だけを比べると、理由の説明で減点されやすい。
- (1)(2) で表を書かずに数える:0点になる21通りの数え漏れで失点しやすい。6×6の表を書けば、0点のマスがひと目で分かる。
2010年九州大学理系数学
第3問 解答・解説
第3問は微分法・極限(数学Ⅲ)・座標の問題です。
テーマは「$y=\dfrac{1}{x^2}$ の接線をくり返し引いてできる三角形の面積の和」。
問題


問題文をテキストで読む
$xy$ 平面上に曲線 $y=\dfrac{1}{x^2}$ を描き、この曲線の第1象限内の部分を $C_1$、第2象限内の部分を $C_2$ と呼ぶ。 $C_1$ 上の点 $\mathrm{P}_1\left(a,\ \dfrac{1}{a^2}\right)$ から $C_2$ に向けて接線を引き、 $C_2$ との接点を $\mathrm{Q}_1$ とする。次に点 $\mathrm{Q}_1$ から $C_1$ に向けて接線を引き、 $C_1$ との接点を $\mathrm{P}_2$ とする。次に点 $\mathrm{P}_2$ から $C_2$ に向けて接線を引き、接点を $\mathrm{Q}_2$ とする。以下同様に続けて、 $C_1$ 上の点列 $\mathrm{P}_n$ と $C_2$ 上の点列 $\mathrm{Q}_n$ を定める。このとき、次の問いに答えよ。
(1) 点 $\mathrm{Q}_1$ の座標を求めよ。
(2) 三角形 $\mathrm{P}_1\mathrm{Q}_1\mathrm{P}_2$ の面積 $S_1$ を求めよ。
(3) 三角形 $\mathrm{P}_n\mathrm{Q}_n\mathrm{P}_{n+1}\ (n=1,2,3,\cdots)$ の面積 $S_n$ を求めよ。
(4) 級数 $\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}S_n$ の和を求めよ。
解答の方針
【(1)の方針】
接線は接点からスタートする。 接点の $x$ 座標 $t$ の方程式は、 $\mathrm{P}_1$ 自身での接線も $\mathrm{P}_1$ を通るので $t=a$ を必ず解に持ち、これを手がかりに因数分解できる。 $x$ 座標を $p$ のまま計算しておけば、(2)(3) にもそのまま使える。
- 曲線上の点 $\left(t,\ \dfrac{1}{t^2}\right)$ における接線の方程式を、接線の公式 $y=f'(t)(x-t)+f(t)$ で作る。
- $\mathrm{P}_1$ の $x$ 座標を $a$ に限らず $p$ ( $p\neq0$)とし、この接線が曲線上の点 $\left(p,\ \dfrac{1}{p^2}\right)$ を通る条件を代入し、分母を払って $t$ の3次方程式にする。
- $t=p$ が解であることを使って因数分解し、 $t=p$ (その点自身での接線)以外の解 $t=-2p$ を求める。
- $p=a$ とし、 $C_2$ 上( $t<0$)の接点として $\mathrm{Q}_1$ の座標を答える。
【(2)の方針】
(1) の計算は $p$ の符号によらないので、$x$ 座標 $p$ の点から反対側に接線を引くと、接点の $x$ 座標は $-2p$。三角形の面積は、1点が原点に来るように平行移動すれば $\dfrac12|x_1y_2-x_2y_1|$ で求められる。


- (1) の計算は $p$ の符号によらないので、その結果を $\mathrm{Q}_1$ の $x$ 座標 $p=-2a$ で使い、 $\mathrm{P}_2$ の $x$ 座標 $4a$ と座標を求める。
- $\mathrm{P}_1$ が原点に来るように平行移動し(平行移動しても面積は変わらない)、 $\mathrm{Q}_1$、 $\mathrm{P}_2$ の移った先( $\overrightarrow{\mathrm{P}_1\mathrm{Q}_1}$、 $\overrightarrow{\mathrm{P}_1\mathrm{P}_2}$ の成分)を求める。
- $\dfrac12|x_1y_2-x_2y_1|$ で $S_1$ を求める。
【(3)の方針】
まず書き出すと、接点の $x$ 座標は $a\to-2a\to4a\to\cdots$ と $-2$ 倍ずつ変わる。点列は座標を2文字でおかず、 $x$ 座標 $p_n$ だけで漸化式を立てる。面積は (2) の $a$ を $p_n$ にかえたものなので、$\dfrac14$ 倍ずつ小さくなる。
- (2) と同じく $\mathrm{P}_n$ から接線を2回引くと考え、(1) の結果(接線を1本引くごとに $x$ 座標が $-2$ 倍)を2回使って $p_{n+1}=4p_n$ を導く。
- $p_1=a$ から $p_n=4^{n-1}a$ を求める。
- (2) の面積の計算は $a>0$ ならどんな値でも同じなので、 $S_1=\dfrac{81}{32a}$ の $a$ を $p_n$ にかえて $S_n=\dfrac{81}{32p_n}$ とし、 $p_n=4^{n-1}a$ を代入して答える。
【(4)の方針】
無限級数は、いきなり無限個を足さず、部分和を数列の問題として求めてから $n\to\infty$ とする。極限をとるときは、まず不定形かどうかを判断する。
- 部分和 $T_n=\displaystyle\sum_{k=1}^{n}S_k$ を等比数列の和の公式で求める。
- 部分和の中で $n$ によって変わるのは $\left(\dfrac14\right)^n$ だけで、 $\left(\dfrac14\right)^n\to0$ より不定形でないことを確かめ、式変形せずに $n\to\infty$ の極限をとって答える。
解答


解答をテキストで読む
(1) 配点 10点
$y=\dfrac{1}{x^2}$ より $y’=-\dfrac{2}{x^3}$ なので、曲線上の点 $\left(t,\ \dfrac{1}{t^2}\right)$ ( $t\neq0$)における接線は
$$y=-\frac{2}{t^3}(x-t)+\frac{1}{t^2}\iff y=-\frac{2}{t^3}x+\frac{3}{t^2}$$
これが曲線上の点 $\left(p,\ \dfrac{1}{p^2}\right)$ ( $p\neq0$)を通るとき
$$\frac{1}{p^2}=-\frac{2p}{t^3}+\frac{3}{t^2}$$
両辺に $p^2t^3$ をかけて整理すると
$$t^3-3p^2t+2p^3=0$$
点 $\left(p,\ \dfrac{1}{p^2}\right)$ 自身での接線はこの点を通るので、 $t=p$ はこの式をみたす。よって左辺は $t-p$ を因数にもち
$$(t-p)^2(t+2p)=0\qquad\therefore\ t=p,\ -2p$$
$t=p$ はその点自身での接線なので、反対側の部分( $t$ の符号が $p$ と逆)に引いた接線の接点は $t=-2p$ のただ1つである。まとめると
$x$ 座標 $p$ の点から反対側の部分に引いた接線の接点の $x$ 座標は $-2p$ …(★)
$\mathrm{P}_1$ は第1象限の点なので $a>0$ である。(★)で $p=a$ とすると、 $C_2$ との接点の $x$ 座標は $-2a$ ( $<0$)。
答 $\mathrm{Q}_1\left(-2a,\ \dfrac{1}{4a^2}\right)$
(2) 配点 15点
(★)で $p=-2a$ とすると、 $\mathrm{Q}_1$ から $C_1$ に引いた接線の接点 $\mathrm{P}_2$ の $x$ 座標は $(-2)\times(-2a)=4a$ なので
$$\mathrm{P}_2\left(4a,\ \frac{1}{16a^2}\right)$$
$\mathrm{P}_1$ が原点に来るように平行移動しても面積は変わらない。このとき $\mathrm{Q}_1$、 $\mathrm{P}_2$ は次の成分の点に移る(下の図の塗った三角形が $\triangle\mathrm{P}_1\mathrm{Q}_1\mathrm{P}_2$)。
$$\overrightarrow{\mathrm{P}_1\mathrm{Q}_1}=\left(-3a,\ \frac{1}{4a^2}-\frac{1}{a^2}\right)=\left(-3a,\ -\frac{3}{4a^2}\right)$$
$$\overrightarrow{\mathrm{P}_1\mathrm{P}_2}=\left(3a,\ \frac{1}{16a^2}-\frac{1}{a^2}\right)=\left(3a,\ -\frac{15}{16a^2}\right)$$
よって
$$S_1=\frac12\left|(-3a)\cdot\left(-\frac{15}{16a^2}\right)-\left(-\frac{3}{4a^2}\right)\cdot3a\right|=\frac12\left(\frac{45}{16a}+\frac{36}{16a}\right)=\frac{81}{32a}$$
答 $S_1=\dfrac{81}{32a}$
(3) 配点 15点
$\mathrm{P}_n$ の $x$ 座標を $p_n$ とする( $p_1=a>0$)。(★)より $\mathrm{Q}_n$ の $x$ 座標は $-2p_n$ で、もう一度(★)を使うと $\mathrm{P}_{n+1}$ の $x$ 座標は $(-2)\times(-2p_n)=4p_n$。よって
$$p_{n+1}=4p_n\qquad\therefore\ p_n=4^{n-1}a$$
(2) の計算は $a>0$ のどの値でも成り立つので、 $a$ を $p_n$ にかえると、 $\triangle\mathrm{P}_n\mathrm{Q}_n\mathrm{P}_{n+1}$ の面積は
$$S_n=\frac{81}{32p_n}=\frac{81}{32\cdot4^{n-1}a}$$
答 $S_n=\dfrac{81}{32a}\left(\dfrac14\right)^{n-1}$
別解(拡大・縮小で見る) 点 $(x,\ y)$ を点 $\left(4x,\ \dfrac{y}{16}\right)$ に移す変換を考える。 $y=\dfrac{1}{x^2}$ 上の点は $\dfrac{y}{16}=\dfrac{1}{(4x)^2}$ をみたすので、曲線は自分自身に移り( $C_1$ は $C_1$ に、 $C_2$ は $C_2$ に移る)、直線は直線に移る。点 $\left(t,\ \dfrac{1}{t^2}\right)$ での接線(傾き $-\dfrac{2}{t^3}$)は、傾きが $\dfrac{1}{16}\div4=\dfrac{1}{64}$ 倍の $-\dfrac{2}{64t^3}=-\dfrac{2}{(4t)^3}$ で点 $\left(4t,\ \dfrac{1}{16t^2}\right)$ を通る直線、つまり点 $\left(4t,\ \dfrac{1}{(4t)^2}\right)$ での接線に移る。よって $\mathrm{P}_n,\ \mathrm{Q}_n,\ \mathrm{P}_{n+1}$ は $\mathrm{P}_{n+1},\ \mathrm{Q}_{n+1},\ \mathrm{P}_{n+2}$ に移る。この変換で $\dfrac12|x_1y_2-x_2y_1|$ は $4\times\dfrac{1}{16}=\dfrac14$ 倍になるので $S_{n+1}=\dfrac14S_n$ で
$$S_n=S_1\left(\frac14\right)^{n-1}=\frac{81}{32a}\left(\frac14\right)^{n-1}$$
面積の計算をくり返さなくても、公比 $\dfrac14$ が分かる。
(4) 配点 10点
(3) より $\{S_n\}$ は初項 $\dfrac{81}{32a}$、公比 $\dfrac14$ の等比数列なので、部分和 $T_n=\displaystyle\sum_{k=1}^{n}S_k$ は
$$T_n=\frac{81}{32a}\cdot\frac{1-\left(\dfrac14\right)^n}{1-\dfrac14}=\frac{27}{8a}\left\{1-\left(\frac14\right)^n\right\}$$
$0<\dfrac14<1$ より $n\to\infty$ のとき $\left(\dfrac14\right)^n\to0$ なので、不定形ではなく
$$\sum_{n=1}^{\infty}S_n=\lim_{n\to\infty}T_n=\frac{27}{8a}(1-0)=\frac{27}{8a}$$
答 $\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}S_n=\dfrac{27}{8a}$
出題意図
(1) 曲線上の点から曲線の別の部分に引いた接線を、接点を文字でおいて求められるか
(2) (1) の計算が「反対側に引いた接線の接点の $x$ 座標は $-2$ 倍」という一般の規則になっていると捉え、座標平面上の三角形の面積を求められるか
(3)(4) 点列の規則を $x$ 座標だけで捉え、面積が一定の割合で小さくなることから、無限級数の和を求められるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 50点 | 50点 |
| 目標時間 | 20分 | 25分 |
接線の問題は接点スタート。
$\mathrm{P}_n$、 $\mathrm{Q}_n$、 $\mathrm{P}_{n+1}$ の座標の関係を1点ずつ丁寧に追えば、接線の3ステップ、三角形の面積、無限級数の部分和をつなぐだけの問題になる。
毎回やることは同じなので、(1) を一般の点で計算しておき、同じ計算を2回しないこと。
誘導も丁寧なので、全学部で満点を取りたい。
差がつく所・失点しやすい所
- 差がつくのは (1):接点を文字でおき、 $\mathrm{P}_1$ 自身での接線( $t=a$)が解であることから3次方程式を因数分解する、という発想に行き着けるか。(1) ができないと (2) 以降に進めない。
- (3):点列を $x$ 座標だけで捉え、面積を $\mathrm{P}_n$ の $x$ 座標の式にする、という発想に行き着けるか。座標を $n$ の式で書いて面積を計算し直すと時間がかかる。
- (2) の面積の計算で失点しやすい。こうした基本問題で点数を落とす九大受験生は多い。理由は、1か所の計算ミスが最後の答えに影響するから。
2010年九州大学理系数学
第4問 解答・解説
第4問は積分(数学Ⅲ)の問題です。
テーマは「サイクロイドの媒介変数表示と、その面積・長さ」。
問題


問題文をテキストで読む
中心 $(0,a)$、半径 $a$ の円を $xy$ 平面上の $x$ 軸の上を $x$ の正の方向に滑らないように転がす。このとき円上の定点Pが原点 $(0,0)$ を出発するとする。次の問いに答えよ。
(1) 円が角 $t$ だけ回転したとき、点Pの座標を求めよ。
(2) $t$ が0から $2\pi$ まで動いて円が一回転したときの点Pの描く曲線を $C$ とする。曲線 $C$ と $x$ 軸とで囲まれる部分の面積を求めよ。
(3) (2) の曲線 $C$ の長さを求めよ。
解答の方針
【(1)の方針】
Pへは中心Cまで行ってからPへ進むと考える。滑らずに転がるので、転がった距離と、 $x$ 軸に接していた弧の長さが等しい(下の図の太い部分)。 $\overrightarrow{\mathrm{CP}}$ は長さ $a$ なので、$x$ 軸の正の向きから測った角だけ決めればよい。


- $\overrightarrow{\mathrm{OP}}=\overrightarrow{\mathrm{OC}}+\overrightarrow{\mathrm{CP}}$ と分ける。円と $x$ 軸の接点をTとし、滑らないことから線分OTの長さが弧TP(半径 $a$、中心角 $t$)の長さ $at$ に等しいことを使って、中心Cの座標を $(at,\ a)$ と求める。
- はじめPは中心の真下(角 $-\dfrac{\pi}{2}$)にあり、右へ転がる円は時計回りに回るので、角 $t$ だけ回るとPの角は $-\dfrac{\pi}{2}-t$ になる。単位円周上の点は $(\cos\theta,\ \sin\theta)$ なので、 $\overrightarrow{\mathrm{CP}}$ を、長さ $a$、 $x$ 軸の正の向きからの角 $-\dfrac{\pi}{2}-t$ のベクトルとして $a\left(\cos\left(-\dfrac{\pi}{2}-t\right),\ \sin\left(-\dfrac{\pi}{2}-t\right)\right)=(-a\sin t,\ -a\cos t)$ と表す。
- 1と2を足してPの座標を求める。
【(2)の方針】
面積は、グラフを正確に書いてそのまま $\displaystyle\int y\,dx$ の式に落とす。媒介変数で表された曲線は $y$ を $x$ の式に直さず、媒介変数のまま置換して積分する。グラフは $x$ と $y$ の変化を別々に見て合わせる。


- $x$ と $y$ の変化を別々に調べ( $\dfrac{dx}{dt}=a(1-\cos t)\geqq0$ より $x$ は増加し続け、 $y$ は $t=\pi$ で最大 $2a$ になって0に戻る)、曲線 $C$ が $x$ 軸より上の山の形であることをグラフに書き、左右の端と頂点に $(t=0)$、 $(t=\pi)$、 $(t=2\pi)$ を書き込む。
- 図をそのまま式にして $S=\displaystyle\int_0^{2\pi a}y\,dx$ と立式する。
- $x=a(t-\sin t)$ と置換し、 $dx=a(1-\cos t)\,dt$、積分区間は図に書いた $t$ の値から $t:0\to2\pi$ として $S=a^2\displaystyle\int_0^{2\pi}(1-\cos t)^2\,dt$ と表す。
- 展開し、 $\cos^2t$ は半角の公式で次数を下げて積分する。
【(3)の方針】
曲線の長さは、短い線分 $\sqrt{(\Delta x)^2+(\Delta y)^2}$ を足し合わせたもの。根号の中は 半角の公式で2乗の形にすれば根号が外れる。外すときは $\sqrt{A^2}=|A|$ なので、符号を確かめる。


- 短い線分の長さ $\sqrt{(\Delta x)^2+(\Delta y)^2}=\sqrt{\left(\dfrac{\Delta x}{\Delta t}\right)^2+\left(\dfrac{\Delta y}{\Delta t}\right)^2}\,\Delta t$ を足して $\Delta t\to0$ とした $L=\displaystyle\int_0^{2\pi}\sqrt{\left(\dfrac{dx}{dt}\right)^2+\left(\dfrac{dy}{dt}\right)^2}\,dt$ で立式する。
- $\dfrac{dx}{dt}=a(1-\cos t)$、 $\dfrac{dy}{dt}=a\sin t$ を求め、2乗の和を $2a^2(1-\cos t)$ と整理する。
- 半角の公式 $1-\cos t=2\sin^2\dfrac{t}{2}$ で $2a^2(1-\cos t)=4a^2\sin^2\dfrac{t}{2}$ と2乗の形にする。
- $0\leqq t\leqq2\pi$ では $0\leqq\dfrac{t}{2}\leqq\pi$ より $\sin\dfrac{t}{2}\geqq0$ なので、根号を外して $L=\displaystyle\int_0^{2\pi}2a\sin\dfrac{t}{2}\,dt$ とし、計算する。
解答


解答をテキストで読む
(1) 配点 15点
円と $x$ 軸の接点をT、円の中心をCとする。円が角 $t$ だけ回転したとき、円は滑らずに転がるので、線分OTの長さは、それまで $x$ 軸に接していた弧TPの長さに等しい。弧TPは半径 $a$、中心角 $t$ の弧なので
$$\mathrm{OT}=at$$
よって $\mathrm{T}(at,\ 0)$、中心は $\mathrm{C}(at,\ a)$ である。
はじめPは中心の真下にあるので、 $\overrightarrow{\mathrm{CP}}$ が $x$ 軸の正の向きとなす角ははじめ $-\dfrac{\pi}{2}$ である。円は $x$ 軸の正の方向に転がるとき時計回りに回るので、角 $t$ だけ回転したとき、この角は $-\dfrac{\pi}{2}-t$ になる。 $|\overrightarrow{\mathrm{CP}}|=a$ なので
$$\overrightarrow{\mathrm{CP}}=\left(a\cos\left(-\frac{\pi}{2}-t\right),\ a\sin\left(-\frac{\pi}{2}-t\right)\right)=(-a\sin t,\ -a\cos t)$$
$\overrightarrow{\mathrm{OP}}=\overrightarrow{\mathrm{OC}}+\overrightarrow{\mathrm{CP}}=(at-a\sin t,\ a-a\cos t)$ より
答 $\mathrm{P}\left(a(t-\sin t),\ a(1-\cos t)\right)$
別解(複素数平面で回転させる) 中心Cを表す複素数は $at+ai$。はじめ $\overrightarrow{\mathrm{CP}}$ を表す複素数は $-ai$ で、時計回りに $t$ 回転するので $\cos(-t)+i\sin(-t)$ をかけて
$$-ai(\cos t-i\sin t)=-a\sin t-ai\cos t$$
よってPを表す複素数は $a(t-\sin t)+a(1-\cos t)i$ となり、同じ答えが得られる。
(2) 配点 15点
(1) より $x=a(t-\sin t)$、 $y=a(1-\cos t)$ $(0\leqq t\leqq2\pi)$。
$$\frac{dx}{dt}=a(1-\cos t)\geqq0$$
なので $x$ は $t$ とともに増加し、 $t=0$ で $x=0$、 $t=2\pi$ で $x=2\pi a$。また $y=a(1-\cos t)\geqq0$ で、 $t=\pi$ のとき最大値 $2a$ をとる。よって曲線 $C$ は下の図のようになり、求める面積 $S$ は塗った部分の面積である。
図をそのまま式にして
$$S=\int_0^{2\pi a}y\,dx$$
$x=a(t-\sin t)$ と置換すると $dx=a(1-\cos t)\,dt$、積分区間は $x:0\to2\pi a$ のとき $t:0\to2\pi$ なので
$$S=\int_0^{2\pi}a(1-\cos t)\cdot a(1-\cos t)\,dt=a^2\int_0^{2\pi}(1-\cos t)^2\,dt$$
$(1-\cos t)^2=1-2\cos t+\cos^2t$ で、半角の公式より $\cos^2t=\dfrac{1+\cos2t}{2}$ なので
$$S=a^2\int_0^{2\pi}\left(\frac32-2\cos t+\frac12\cos2t\right)dt=a^2\Big[\frac32t-2\sin t+\frac14\sin2t\Big]_0^{2\pi}=a^2\cdot\frac32\cdot2\pi$$
答 $3\pi a^2$
(転がした円の面積 $\pi a^2$ のちょうど3倍になる。答えの確かめに使える)
(3) 配点 20点
$\dfrac{dx}{dt}=a(1-\cos t)$、 $\dfrac{dy}{dt}=a\sin t$ より
$$\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2=a^2\left(1-2\cos t+\cos^2t+\sin^2t\right)=2a^2(1-\cos t)$$
半角の公式 $1-\cos t=2\sin^2\dfrac{t}{2}$ より
$$\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2=4a^2\sin^2\frac{t}{2}$$
$0\leqq t\leqq2\pi$ のとき $0\leqq\dfrac{t}{2}\leqq\pi$ なので $\sin\dfrac{t}{2}\geqq0$。よって、曲線 $C$ の長さ $L$ は
$$L=\int_0^{2\pi}\sqrt{4a^2\sin^2\frac{t}{2}}\,dt=\int_0^{2\pi}2a\sin\frac{t}{2}\,dt$$
$$L=2a\Big[-2\cos\frac{t}{2}\Big]_0^{2\pi}=2a\{2-(-2)\}=8a$$
答 $8a$
(転がした円の直径 $2a$ のちょうど4倍になる。答えの確かめに使える)
出題意図
- 「滑らずに転がる」を転がった距離=円周上の弧の長さと言いかえ、点Pの位置を中心の位置と中心から見たPの向きに分けて表せるか。
- 媒介変数で表された曲線の面積を、 $y$ を $x$ の式に直さずに媒介変数のまま置換して求められるか。
- 曲線の長さの公式を使い、根号の中を半角の公式で2乗の形にして外せるか。
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 簡単 | |
| 目標得点 | 50点 | 50点 |
| 目標時間 | 15分 | 20分 |
教科書に載っているサイクロイドそのものの典型問題。
ポイントは (1) で、中心まで行ってから中心→Pと点と点をつなぎ、 $\overrightarrow{\mathrm{CP}}$ を $x$ 軸の正の向きから測った角で表すこと。
ここさえ処理できれば、(2) は媒介変数で表した曲線を図示して面積を求めるだけ、(3) は曲線の長さの公式を知っていれば解ける。
差がつく所・失点しやすい所
- 差がつくとすれば (1): $\overrightarrow{\mathrm{CP}}$ を、 $x$ 軸の正の向きから測った角で表せるか。(1) さえ求められれば、(2)(3) は難しくない。
2010年九州大学・理系数学の
講評とまとめ
5問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 簡単 | 50点 | 50点 |
| 第2問 | やや簡単 | 50点 | 40点 |
| 第3問 | やや簡単 | 50点 | 50点 |
| 第4問 | 簡単 | 50点 | 50点 |
| 第5問 | 標準 | 50点 | 40点 |
| 全体 | やや簡単 | 250点 | 230点 |
第5問は行列の問題です。
行列は現在の高校数学の範囲外なので、この記事では解答・解説を載せていません。
総合の目標点(医学部医学科250点、その他の学部230点)は、第5問も含めた当時の目安です。
全体としてはやや簡単ですが、行列(第5問)を除けば簡単なセットです。
2010年代の問題は解きやすく、九大のレベルでは簡単めですが、一般的には標準問題レベルです。
こうした解きやすい年の過去問演習では、安定して200点を取れるかどうかが大事な基準になります。
点数に一喜一憂せず、標準問題をしっかり取れるかどうかを勉強の指標にしましょう。
第1問の図形と計量のように、頻出とは言えない単元からも基本問題が出ます。
頻出単元だけでなく、どの範囲から出題されても取れるように、まんべんなく力をつけておきましょう。
解く流れ
第1問 → 第2問 → 第3問 → 第4問(問題の順でよい。
第5問の行列は今の受験生は解かなくてよい)。
2010年九州大学・理系数学に
関するよくある質問
2010年の九州大学・理系数学について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2010年の九州大学・理系数学は難しかった?
-
やや簡単な年でした(行列の第5問を除けば簡単)。
第1問・第4問は簡単、第2問・第3問はやや簡単です。
第5問は行列で、現行課程の範囲外です。 - 2010年の九州大学・理系数学は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で250点、その他の学部で230点です(250点満点)。
- 2010年の九州大学・理系数学はどこで差がつく?
-
満点に近い得点を狙うセットです。そのうえで、差がつくとしたら次の3つです。
- 第2問(3):振るかどうかは最初の目ごとに別々に選べるので、目ごとに得な方を選べば全体も最大になる、と理由まで書けたか。
- 第3問(1):接点を文字でおき、接点自身が解であることから3次方程式を因数分解できたか。
- 第4問(1):サイクロイド上の点の位置を、 $x$ 軸の正の向きから測った角で表せたか。
- 2010年の九州大学・理系数学は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:図形と計量・2次方程式
- 第2問:確率・期待値
- 第3問:微分法・極限(数学Ⅲ)・座標
- 第4問:積分(数学Ⅲ)
- 第5問:行列・恒等式


