【解説・配点付き】2005年九州大学物理の解答・解説
2005年の九州大学・物理の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2005年九州大学物理
第1問 解答・解説
この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は力学の問題です。
テーマは「飛行機から落としたボールの水平投射、なめらかな床での1回のはね返り、等加速度で加速して追いかける自動車、キャッチの瞬間の運動量保存をつないだ大問」。
問題


問題文をテキストで読む
地上から高さ $H\ [\mathrm{m}]$ の場所を水平に速さ $V\ [\mathrm{m/s}]$ で移動している飛行機がある。飛行機につながれているボールをそっと切り離して落とし、飛行機よりも遅い速さ $v\ [\mathrm{m/s}]$ で同じ向きへ走行している自動車でキャッチしようと考えた。自動車とボールの質量はそれぞれ $M\ [\mathrm{kg}]$ と $m\ [\mathrm{kg}]$ である。飛行機と自動車は同一鉛直面内を移動し、水平方向は右向きを正、鉛直方向は上向きを正とする。重力加速度の大きさは $g\ [\mathrm{m/s^2}]$ とし、空気の抵抗と自動車の長さと高さは無視できるとする。以下の問いに答えよ。
問1. 次の文章中の $\boxed{\text{ア}}$ から $\boxed{\text{オ}}$ の空欄を適当な数式で埋めよ。
図1のように、A地点の上空で飛行機がボールを落とした瞬間にB地点を走行中の自動車が加減速することなしにC地点でボールをキャッチしようと考えた。落とされた瞬間のボールの速度は、地面から見て水平方向は $\boxed{\text{ア}}$ で鉛直方向は $\boxed{\text{イ}}$ である。よって、ボールが地面に落ちるまでの時間は $\boxed{\text{ウ}}$ となり、ボールの水平方向の移動を考えるとAC間の距離は $\boxed{\text{エ}}$ となる。したがって、自動車がC地点でうまくボールをキャッチできるためにはAB間の距離は $\boxed{\text{オ}}$ でなくてはならない。つまり、飛行機と自動車の速さの差が大きいほどAB間の距離を大きくとらなくてはならないということがわかる。
問2. これを実際に行おうとしたところ、図2のように、飛行機がボールを落とした瞬間に自動車はまだその真下のA地点を通過中であった。これにすぐ気づいた自動車はボールが落とされた瞬間から加速して追いかけたが、ボールはその前方C地点で地面と衝突してはねかえった。そして、ボールがD地点に2回目に落ちてきたところで、自動車はちょうどこのボールに追いついてキャッチすることができた。ただし、AD間での自動車の加速度は一定であり、衝突に関して地面は十分になめらかとみなしてよく、ボールと地面の間の反発係数(はねかえり係数)は0.5とする。
(1) C地点で地面と衝突する直前のボールの鉛直方向の速度を求めよ。
(2) CD間の距離を求めよ。
(3) AD間での自動車の加速度を求めよ。
(4) 自動車の出せる最大の速さが $v_{\mathrm{M}}\ [\mathrm{m/s}]$ であったとすると、D地点で自動車がボールに追いつくために飛行機の速さ $V\ [\mathrm{m/s}]$ が満たすべき条件式を求めよ。
(5) 自動車はD地点でボールをキャッチする直前に加速をやめたという。この場合に、ボールをキャッチした直後の自動車の速度を求めよ。ただし、ボールをキャッチする際に自動車と地面の間に摩擦ははたらかないとする。
解答の方針
【問1の方針】
落とされた瞬間、ボールは飛行機と同じ水平の速さをもつ。落ちる時間は鉛直方向だけで決まり、進む距離は水平方向だけで決まる。ボールも自動車も同じ時間 $\tau$ で C に着く(下の図)。


- ボールは飛行機から切り離されたので、落とされた瞬間は飛行機と同じ速度。その後は重力だけを受けるので、水平方向は等速、鉛直方向は自由落下。落とした瞬間の速度を、水平方向と鉛直方向に分けて書く(ア・イ)。
- 鉛直方向の自由落下の式から、落ちる時間 $\tau$ を求める(ウ)。
- 水平方向の等速の運動から、AC を求める(エ)。
- 自動車は加減速しないので等速で、同じ時間 $\tau$ に BC だけ進む。AB=AC−BC として求める(オ)。
【問2の方針】
はね返りで変わるのは床に垂直な鉛直成分だけ。A→C と C→D は、かかる時間も水平の距離も同じ(下の2つの図)。




自動車は同じ時間に同じ距離を進むので、平均の速さはボールの水平の速さ $V$ に等しい(下の図)。


- はね返る直前の鉛直方向の速度を、自由落下の速度から求める((1))。
- 床はなめらかなので、はね返りで変わるのは床に垂直な鉛直成分だけで、水平成分は変わらない。直後の鉛直成分を、反発係数 0.5 から求める。上がって降りる時間を、投げ上げの対称性から求め、水平の速さ $V$ をかけて CD を求める。反発係数が 0.5 だから、この時間は最初に落ちた時間 $\tau$ と同じになり、A→C と C→D は、かかる時間も水平の距離も同じ((2))。
- 自動車は、A から D まで、ボールと同じ時間 $2\tau$ のあいだに、ボールと同じ距離 AD を進む。AD を求めて、自動車の平均の速さがボールの水平の速さ $V$ に等しいことを使う。加速度一定の運動の平均の速さは、最初と最後の速さのまん中なので、D での自動車の速さが決まる(v-t グラフで見ると、$V$ の水平線と自動車の直線が時刻 $\tau$ で交わり、2つの三角形の面積が等しい)。加速度を、速さの変化÷時間として求める((3))。
- 加速度は一定なので、自動車の速さは D でいちばん大きい。その速さが $v_{\mathrm M}$ 以下という条件を式にする((4))。
- キャッチは自動車とボールが一体になる現象。地面から受ける力は鉛直方向だけ(摩擦はない)なので、水平方向には外力がなく、水平方向だけ運動量が保存する。キャッチの前後で、水平方向の運動量保存を立てる((5))。
解答




解答をテキストで読む
空欄ア〜オ
ボールは飛行機から切り離されたので、落とされた瞬間は飛行機と同じ速度をもつ。水平は右向きが正、鉛直は上向きが正なので
答(ア) $V$(2点)
答(イ) $0$(2点)
その後ボールには重力だけがはたらく。鉛直方向は初速度0の自由落下なので、地面に落ちるまでの時間を $\tau$ とすると(下の図)
$$H=\frac12g\tau^2\qquad\therefore\ \tau=\sqrt{\frac{2H}{g}}$$
答(ウ) $\sqrt{\dfrac{2H}{g}}$(4点)
水平方向は力を受けないので等速 $V$。AC は、ボールが $\tau$ のあいだに水平に進んだ距離。
答(エ) $V\sqrt{\dfrac{2H}{g}}$(4点)
自動車は加減速しないので、同じ時間 $\tau$ に等速 $v$ で BC $=v\tau$ だけ進む。AB は AC と BC の差。
$$\mathrm{AB}=\mathrm{AC}-\mathrm{BC}=V\tau-v\tau=(V-v)\tau$$
答(オ) $(V-v)\sqrt{\dfrac{2H}{g}}$(5点)
問2 (1)
C に落ちる直前のボールの鉛直方向は、初速度0の自由落下を $\tau$ だけ続けた速度。上が正なので負。
$$v_y=-g\tau=-g\sqrt{\frac{2H}{g}}$$
答 $-\sqrt{2gH}$(4点)
問2 (2)
床はなめらかなので、はね返るとき変わるのは床に垂直な鉛直成分だけ。水平成分 $V$ は変わらない(下の図)。反発係数は 0.5 なので、直後の鉛直成分は逆向き(上向き)で大きさが 0.5 倍。
$$v_y’=0.5\sqrt{2gH}\quad(\text{上向き})$$
C から D まで、ボールは上がって同じ高さの床にもどる。C から D までの時間を $t_2$ とする。同じ高さにもどるときの速度は、大きさが同じで逆向きなので
$$-v_y’=v_y’-gt_2\qquad\therefore\ t_2=\frac{2v_y’}{g}=\frac{\sqrt{2gH}}{g}=\sqrt{\frac{2H}{g}}=\tau$$
はね返ったあとの空中の時間は、最初に落ちた時間と同じ(反発係数が 0.5 だから)。この間、水平方向は速さ $V$ の等速。
$$\mathrm{CD}=V\tau$$
答 $V\sqrt{\dfrac{2H}{g}}$(6点)
(AC と CD は同じ長さで、A→C と C→D はどちらも時間 $\tau$)
問2 (3)
自動車は、A から D まで、ボールと同じ時間 $2\tau$ のあいだに、ボールと同じ距離を進む。AD は AC と CD の和。
$$\mathrm{AD}=V\tau+V\tau=2V\tau$$
自動車の平均の速さは、距離÷時間で
$$\frac{2V\tau}{2\tau}=V$$
加速度が一定の運動の平均の速さは、最初の速さと最後の速さのまん中。D での自動車の速さを $v_{\mathrm D}$ とすると(下の図。v-t グラフで、$V$ の水平線と自動車の直線が時刻 $\tau$ で交わり、2つの三角形の面積が等しい)
$$\frac{v+v_{\mathrm D}}{2}=V\qquad\therefore\ v_{\mathrm D}=2V-v$$
加速度は、速さの変化÷時間。
$$\alpha=\frac{v_{\mathrm D}-v}{2\tau}=\frac{(2V-v)-v}{2\tau}=\frac{V-v}{\tau}$$
答 $(V-v)\sqrt{\dfrac{g}{2H}}$(7点)
問2 (4)
自動車の加速度は一定で、A から D までずっと速さがふえつづける。なので、自動車の速さは D でいちばん大きく、(3) の結果から $2V-v$。これが自動車の出せる最大の速さ $v_{\mathrm M}$ 以下であればよい。
$$2V-v\leqq v_{\mathrm M}$$
答 $V\leqq\dfrac{v+v_{\mathrm M}}{2}$(6点)
(問題の前提 $v<V$ とあわせて、$v<V\leqq\dfrac{v+v_{\mathrm M}}{2}$ となる)
問2 (5)
キャッチの直前と直後で、自動車とボールにはたらく力を調べる。加速をやめているので、自動車に水平方向の力はない。キャッチで自動車とボールが及ぼし合う力は、作用反作用の内力。自動車とボールが地面から受ける力は、摩擦がないので鉛直方向だけ(外力)。なので水平方向には外力がなく、水平方向だけ運動量が保存する。鉛直方向は、地面から受ける力のため、運動量は保存しない(下の図)。
キャッチの直前の水平の速度は、自動車が $2V-v$、ボールが $V$。直後の速度を $u$ とする(右向きが正)。
$$M(2V-v)+mV=(M+m)u$$
$$u=\frac{M(2V-v)+mV}{M+m}$$
答 $\dfrac{(2M+m)V-Mv}{M+m}$ [5点](右向き)
別解
問1 オ (相対速度で) 自動車から見ると、ボールは水平に相対速度 $V-v$ で近づいてくる(相手引く自分)。時間 $\tau$ で近づく距離がそのまま AB。
$$\mathrm{AB}=(V-v)\tau=(V-v)\sqrt{\frac{2H}{g}}$$
同じ答え。本解は AC−BC で、ボールと自動車それぞれの移動を見る形にした。
問2 (3) (位置の式で) 自動車は初速度 $v$、加速度 $\alpha$ の等加速度運動。時間 $2\tau$ で AD $=2V\tau$ だけ進むので、何から何を求めるかで、位置の式を選ぶ。
$$2V\tau=v\cdot2\tau+\frac12\alpha(2\tau)^2\qquad\therefore\ \alpha=\frac{V-v}{\tau}=(V-v)\sqrt{\frac{g}{2H}}$$
同じ答え。D での速さは $v+\alpha\cdot2\tau=2V-v$ と求まる。本解は「平均の速さ=$V$」の見通しで、式を立てずに v-t グラフの面積で決める形にした。
出題意図
問1 水平投射を鉛直と水平に分け、ボールと自動車が同じ時刻にCに着く条件を式にできるか
問2 (1)(2) なめらかな床でのはね返りを、鉛直成分だけが変わるものとして捉え、はね返ったあとの空中の時間を求めることができるか
問2 (3)(4) ボールと自動車が同じ時間に同じ距離を進むことから、自動車の加速度と最後の速さを求めることができるか
問2 (5) キャッチで保存する方向を、外力の向きから判断することができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 40点 | 35点 |
| 目標時間 | 20分 | 25分 |
水平投射・床でのはね返り・追いかける自動車・キャッチの運動量保存と、力学の典型を1本の運動でつないだ大問。
決め手は運動を想像できるかどうかで、はね返ったあとの空中の時間が落ちた時間と同じと分かれば、自動車は同じ時間に同じ距離を進むので平均の速さが $V$ と決まり、問2 (3) は一瞬で終わる。
良問の風が再現できれば解けるので、医学科は満点−5点を目標に、できれば満点を取りたい。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2 (2):はね返ったあとの空中の時間が、最初に落ちた時間と同じ(反発係数が 0.5 だから)と運動を想像できるか。ここで AD と時間 $2\tau$ が決まらないと、(3)(4)(5) が続かない。
- 問2 (3):「同じ時間に同じ距離を進む」ので、自動車の平均の速さがボールの水平の速さ $V$ に等しい、という発想に行き着けるか。これに気づけば、v-t グラフで最後の速さ $2V-v$ もすぐ求まる。
- 問2 (5):自動車とボールが一体になる現象で、保存する方向を水平方向だけに限れるか。鉛直方向まで入れると答えが崩れる。
コラム はね返ったあとの時間は、反発係数が 0.5 のときだけ「落ちた時間と同じ」
問2 (2) では、はね返ったあとの空中の時間が、最初に落ちた時間 $\tau$ とちょうど同じになった。これは反発係数が 0.5 だからで、一般の反発係数 $e$ では次のようになる。


- 最初に落ちた時間:高さ $H$ から落ちる時間は $\tau=\sqrt{\dfrac{2H}{g}}$。
- はね返ったあとの空中の時間:直後の鉛直成分は $e\sqrt{2gH}$ なので、上がって降りる時間は $\dfrac{2e\sqrt{2gH}}{g}=2e\tau$。$e=0.5$ のときだけ $\tau$ になる。
- そのあと:はね返るたびに、空中の時間は $e$ 倍、最高点は $e^2$ 倍になる(反発係数が 0.5 なら、時間は半分、最高点は $\dfrac14$)。
反発係数は、衝突で変わる鉛直成分だけにかかる倍率。「何が何倍になるか」を成分ごとに分けて言えるようにしておくと、床・壁のはね返りはどれも同じ形で解ける。
2005年九州大学物理
第2問 解答・解説
第2問は電磁気の問題です。
テーマは「電流が磁場から受ける力の公式とキルヒホッフの法則(空欄補充)。磁束のグラフから誘導起電力のグラフとジュール熱を求める。はしご型の回路が一定の速さで磁場の領域に入っていくとき、磁場の中にある辺を電池に置きかえて各辺の電流を求める」。
問題


問題文をテキストで読む
以下の問いに答えよ。ただし、導線の抵抗と電池の内部抵抗は無視できるものとする。
問1. 次の文章中の $\boxed{\text{ア}}$ と $\boxed{\text{イ}}$ の空欄に最も適当な語句または数式を記入し、 $\boxed{\text{ウ}}$ と $\boxed{\text{エ}}$ の空欄には図3中の記号を用いた数式を記入せよ。
(1) 磁場の向きに対して角度 $\theta\ [\mathrm{rad}]$ の向きに張った導線に $I\ [\mathrm{A}]$ の電流を流すとき、導線の長さ $L\ [\mathrm{m}]$ の部分が受ける力の大きさ $F\ [\mathrm{N}]$ は、磁束密度を $B\ [\mathrm{T}]$ とすると、
$$F=\boxed{\text{ア}}$$
と表すことができる。
(2) 図3のように、起電力 $E_1\ [\mathrm{V}]$、 $E_2\ [\mathrm{V}]$、 $E_3\ [\mathrm{V}]$ の電池と、抵抗値 $R_1\ [\Omega]$、 $R_2\ [\Omega]$、 $R_3\ [\Omega]$ の電気抵抗とで構成される直流回路がある。電気抵抗 $R_1$、 $R_2$、 $R_3$ を流れる電流を $I_1\ [\mathrm{A}]$、 $I_2\ [\mathrm{A}]$、 $I_3\ [\mathrm{A}]$ とし、それぞれ図3中の矢印の向きを正とする。電流 $I_1$、 $I_2$、 $I_3$ を求めるには、次の2つの法則を用いればよい。
① $\boxed{\text{イ}}$ の第一法則 図3の接続点bについてこの法則は $I_1=\boxed{\text{ウ}}$ と書ける。
② $\boxed{\text{イ}}$ の第二法則 図3の閉回路abcdefについてこの法則は $E_1=\boxed{\text{エ}}$ と書ける。
問2. 図4のように、閉回路abcdが磁場中に置かれている。辺adおよびbcには、それぞれ抵抗値 $3\ \Omega$ の電気抵抗が接続されている。いま、図5のように、この回路を貫く磁束 $\phi\ [\mathrm{Wb}]$ を $0\ \mathrm{Wb}$ から $2\ \mathrm{Wb}$ の範囲で変化させる。ただし、回路を流れる電流が作る磁場は無視できるものとする。
(1) 時刻 $t\ [\mathrm{s}]$ が $0\ \mathrm{s}$ から $5\ \mathrm{s}$ までの間に回路全体に生じる誘導起電力を図示せよ。ただし、誘導起電力は、a→b→c→dの向きに誘導電流を流す向きを正とする。
(2) 時刻 $t\ [\mathrm{s}]$ が $0\ \mathrm{s}$ から $5\ \mathrm{s}$ までの間に回路全体から発生するジュール熱の総量を求めよ。
問3. 図6のように、一辺の長さ $L\ [\mathrm{m}]$ の正方形を2つ用いて構成されるはしご型の回路abcdefを紙面と平行に置いた。辺af、be、cdには抵抗値 $R\ [\Omega]$ の電気抵抗が接続されている。いま、辺afと垂直に $x$ 軸をとり、 $x$ 軸の正の向きに速度 $v\ [\mathrm{m/s}]$ でこの回路を移動させる。 $x>3L$ の領域には紙面に垂直に裏から表に向かう磁束密度 $B\ [\mathrm{T}]$ の一様な磁場があるとする。時刻 $t=0\ [\mathrm{s}]$ での辺afの位置を $x=0\ [\mathrm{m}]$ として、次の問いに答えよ。ただし、移動中に回路は変形しないものとし、図6のように、電流はa→fおよびc→dの向きを正とする。
(1) 時刻 $t\ [\mathrm{s}]$ が $\dfrac{L}{v}<t<\dfrac{2L}{v}$ の範囲において、辺afに流れる電流 $I_1\ [\mathrm{A}]$ および辺cdに流れる電流 $I_2\ [\mathrm{A}]$ を求めよ。
(2) 時刻 $t\ [\mathrm{s}]$ が $\dfrac{2L}{v}<t<\dfrac{3L}{v}$ の範囲において、辺afに流れる電流 $I_1\ [\mathrm{A}]$ および辺cdに流れる電流 $I_2\ [\mathrm{A}]$ を求めよ。
解答の方針
【問1の方針】
(1) 力を生むのは、磁場のうち導線に垂直な成分だけ。(2) 電流の矢印は3本とも接続点 b に流れこむ向き。第一法則は接続点で、第二法則は閉じた道で書く。




- ア:磁場を導線に垂直な成分 $B\sin\theta$ と平行な成分 $B\cos\theta$ に分け、力を生む垂直な成分を使って力を求める(斜めに張った導線では、このように分ける)。
- ウ:第一法則は「接続点に流れこむ電流の和は0」。図3 の電流の矢印は3本とも上向きで、接続点 b から見るとどれも b に流れこむ向きなので、第一法則を書く。
- エ:第二法則は「閉じた道を1周すると、電池で上がった分だけ抵抗で下がる」。電池は3つとも長い線(+極)が上で、電流を上向きに押し出す。閉回路 a→b→c→d→e→f→a の向きに1周し、電池・抵抗を通るごとに電位が上がるか下がるかを決めて式を書き、左辺が $E_1$ の形に整える(イは法則の名前)。
【問2の方針】
起電力は磁束の変化の割合なので、図5 の傾きで決まる。向きは、図4 を上から見た図に直して決める(下の図)。


- 図4 を上から見た図に直し、a→b→c→d が時計回りであることと、 $\phi$ が上向きであることを確かめる。
- 図5 の傾きから、0〜1 s・1〜3 s・3〜5 s の区間ごとに $\dfrac{\Delta\phi}{\Delta t}$ を求める。
- 各区間で磁束が増えるか減るかから、起電力が a→b→c→d の向き(正)か逆向き(負)かを決め、起電力のグラフを書く。上から見ると a→b→c→d は時計回りで、$\phi$ は上向き。上向きの磁束が増えるときは、それを打ち消す下向きの磁場をつくる向き(時計回り)に起電力が生じる。
- 抵抗は閉回路に直列に2つあるので、回路全体の抵抗は足し算で $6\ \Omega$。区間ごとの消費電力を求め、時間をかけて足してジュール熱を求める。
【問3の方針】
磁場の中にある辺は、起電力 $vBL$ の電池に置きかえられる。残りは抵抗と電池の直流回路で、問1 と同じキルヒホッフの法則で解ける(下の図)。


- 回路は動くが磁場は一様なので、磁場の中にある辺だけが磁場を横切り、棒が動くときと同じ起電力 $vBL$ が生じる。磁場の中にある辺は区間で変わる。各辺の位置 af:$x=vt$、be:$x=L+vt$、cd:$x=2L+vt$ から、磁場($x>3L$)の中にある辺を区間ごとに決める((1) は cd だけ、(2) は be と cd)。
- 磁場の中にある辺を、起電力 $vBL$ の電池に置きかえる。向きは、正電荷が受ける力の向きで決まる。速度は右向き、磁場は手前向きなので、力は下向きで、下側が+極。
- af・cd の電流 $I_1$・$I_2$ と、be の電流 $I’$ を、すべて上から下を正として置く。
- 上の導線の接続点で第一法則、左右の正方形の閉じた道(a→b→e→f→a と b→c→d→e→b)で第二法則を書く。
- 3本の式を連立して $I_1$、 $I_2$ を求める。
解答






解答をテキストで読む
空欄ア〜エ
空欄ア
力を受けるのは、磁場のうち導線に垂直な成分。導線と磁場のなす角が $\theta$ なので、垂直な成分は $B\sin\theta$(平行な成分 $B\cos\theta$ は力を生まない)。垂直なときの力 $IBL$ の $B$ を $B\sin\theta$ に置きかえればよい。
$$F=I\,(B\sin\theta)\,L$$
答(ア) $IBL\sin\theta$(3点)
空欄イ
直流回路の電流と電圧を決める2つの法則は、第一法則(接続点で電流の和が0)・第二法則(閉じた道を1周すると電位は元にもどる)で、キルヒホッフの法則。
答(イ) キルヒホッフ(2点)
空欄ウ
図3 の電流の矢印は、3本とも上向き。接続点 b から見ると、どれも b に流れこむ向き。流れこむ電流の和は0なので
$$I_1+I_2+I_3=0$$
よって $I_1=-I_2-I_3$ 。矢印が3本とも同じ向きなので、 $I_1=I_2+I_3$ とは書けない。
答(ウ) $-I_2-I_3$(3点)
空欄エ
閉回路 abcdef を a→b→c→d→e→f→a の向きに1周する。電池は3つとも上が+極。
・左の枝(f→a と上る):電池を−極から+極へ通るので $+E_1$ 。抵抗は電流 $I_1$(上向き)と同じ向きに通るので $-R_1I_1$ 。
・右の枝(c→d と下る):電流 $I_3$(上向き)と逆向きに抵抗を通るので $+R_3I_3$ 。電池は+極から−極へ通るので $-E_3$ 。
1周して電位は元にもどるので、足して0。
$$E_1-R_1I_1+R_3I_3-E_3=0$$
答(エ) $R_1I_1-R_3I_3+E_3$(4点)
問2 (1)
図4 は見取り図。上から見た図に直すと、a・b が奥、d・c が手前で、a→b→c→d は時計回り。 $\phi$ は上向き。
起電力の大きさは図5 の傾き $\dfrac{\Delta\phi}{\Delta t}$ 。
・$0\sim1\ \mathrm{s}$:$\dfrac{2-0}{1-0}=2\ \mathrm{Wb/s}$ 。上向きの磁束が増えるので、下向きの磁場をつくる向き、つまり上から見て時計回り(a→b→c→d)に起電力が生じる。正で $+2\ \mathrm V$ 。
・$1\sim3\ \mathrm{s}$:磁束は一定で傾き0。起電力は $0$ 。
・$3\sim5\ \mathrm{s}$:$\dfrac{0-2}{5-3}=-1\ \mathrm{Wb/s}$ 。上向きの磁束が減るので、補う向き(上向きの磁場をつくる向き=反時計回り)に起電力が生じる。負で $-1\ \mathrm V$ 。
起電力は、a→b→c→d を正とすると $V=+\dfrac{\Delta\phi}{\Delta t}$ と書ける(上向きの磁束が増えるときに正)。下のグラフは、 $\phi$–$t$ グラフと時間軸をそろえて上下に並べてある。傾きがそのまま起電力の高さになっている。
答 上のグラフ($0\sim1\ \mathrm s$ で $2\ \mathrm V$、 $1\sim3\ \mathrm s$ で $0$、 $3\sim5\ \mathrm s$ で $-1\ \mathrm V$)(7点)
問2 (2)
2つの抵抗は閉回路に直列なので、全体の抵抗は $3+3=6\ \Omega$ 。起電力 $V$ が一定の区間では電流も一定で、消費電力は $\dfrac{V^2}{6}$ 。ジュール熱は、消費電力に時間をかけて区間ごとに足す(符号は2乗で消える)。
$$\dfrac{2^2}{6}\times1+0+\dfrac{(-1)^2}{6}\times2=\dfrac23+\dfrac13=1$$
答 $1\ \mathrm J$(6点)
問3 (1)
時刻 $\dfrac Lv<t<\dfrac{2L}{v}$ では、cd($x=2L+vt$)だけが $x>3L$ の磁場の中に入っている。cd は速さ $v$ で磁場を横切るので起電力 $vBL$ が生じる。正電荷が受ける力は、速度(右)から磁場(手前)へ回す向きで下向きなので、cd は「下側が+極」の電池。af と be は抵抗だけ。電流は $I_1$(af)・$I’$(be)・$I_2$(cd)を、すべて上から下を正とする。
(見方:右の正方形 bcde のうち磁場の中の部分は、1秒間に面積 $vL$ ずつ増える。ファラデーの法則で起電力は $\dfrac{\Delta\varPhi}{\Delta t}=vBL$ で、向きは手前向きの磁束が増えるのを打ち消す時計回り(cd では下向き)。)
・第一法則(上の導線の接続点):$I_1+I’+I_2=0$
・左の閉じた道 a→b→e→f→a:be は電流と同じ向きに下るので $-RI’$、af は電流と逆向きに上るので $+RI_1$ 。 $-RI’+RI_1=0$ より $I’=I_1$
・右の閉じた道 b→c→d→e→b:cd は抵抗を電流と同じ向きに下って $-RI_2$、電池を+極に向かって通るので $+vBL$、be は電流と逆向きに上るので $+RI’$ 。
$$-RI_2+vBL+RI’=0$$
第一法則と $I’=I_1$ から $I_2=-2I_1$ 。右の式に入れると $2RI_1+vBL+RI_1=0$ なので $I_1=-\dfrac{vBL}{3R}$ 。 $I_2=-2I_1$ から $I_2=\dfrac{2vBL}{3R}$ 。 $I_1$ が負なのは、af の電流が下向き(a→f)ではなく上向き(f→a)に流れるから。
答 $I_1=-\dfrac{vBL}{3R}$(5点)
答 $I_2=\dfrac{2vBL}{3R}$(5点)
問3 (2)
時刻 $\dfrac{2L}{v}<t<\dfrac{3L}{v}$ では、be($x=L+vt$)と cd が磁場の中に入る。be と cd がどちらも「下側が+極」の電池 $vBL$ に置きかわる。電流の置き方は (1) と同じ。
・第一法則:$I_1+I’+I_2=0$
・左の閉じた道 a→b→e→f→a:be を電流と同じ向きに下るので、抵抗で $-RI’$、電池で $+vBL$ 。af は上るので $+RI_1$ 。 $-RI’+vBL+RI_1=0$
・右の閉じた道 b→c→d→e→b:cd は下りて $-RI_2+vBL$ 。be は上るので、電池を+極から−極へ通って $-vBL$、抵抗は電流と逆向きで $+RI’$ 。 $-RI_2+vBL-vBL+RI’=0$ より $I’=I_2$
第一法則から $I_1=-2I_2$ 。左の式に入れると $-RI_2+vBL-2RI_2=0$ なので
$$I_2=\dfrac{vBL}{3R},\qquad I_1=-\dfrac{2vBL}{3R}$$
(見方:右の正方形 bcde は全体が磁場の中にあって磁束が変わらず、be と cd の起電力が打ち消し合う。磁束が増えるのは、磁場にかかりはじめた左の正方形 abef だけ。右の正方形が全部磁場の中でも、回路の一部(af)がまだ外なので、電流は0にならない。)
答 $I_1=-\dfrac{2vBL}{3R}$(3点)
答 $I_2=\dfrac{vBL}{3R}$(2点)
別解
問3 ループごとにファラデーの法則で(磁束の見方)
(1) 手前向きの磁束が増えるのは右の正方形 bcde だけで、起電力 $vBL$(時計回り)。左の正方形 abef には起電力がない。左右の正方形に時計回りの電流 $i_1$・$i_2$ を置くと、be は両方の電流が逆向きに通る(左は下向き、右は上向き)ので、 $i_1-i_2$ が下向きに流れる。
・左:$0=Ri_1+R(i_1-i_2)$
・右:$vBL=Ri_2+R(i_2-i_1)$
これを解いて $i_2=\dfrac{2vBL}{3R}$、 $i_1=\dfrac{vBL}{3R}$ 。cd の電流は時計回りで下向きなので $I_2=i_2$、af の電流は時計回りで上向きなので $I_1=-i_1$ 。本解と同じ。
(2) 磁束が増えるのは左の正方形 abef だけで、右の正方形は磁束が変わらない。
・左:$vBL=Ri_1+R(i_1-i_2)$
・右:$0=Ri_2+R(i_2-i_1)$
右から $i_1=2i_2$ 。左に入れると $vBL=3Ri_2$ なので $i_2=\dfrac{vBL}{3R}$、 $i_1=\dfrac{2vBL}{3R}$ 。 $I_2=i_2$、 $I_1=-i_1$ で、本解と同じ。辺ごとに電池を置く本解の方が、各辺の向きを間違えにくい。
出題意図
問1 電流が磁場から受ける力の公式を知っているか、図の矢印と電池の向きを読んでキルヒホッフの法則を正しく式にできるか
問2 (1)(2) 磁束のグラフの傾きから誘導起電力の大きさと向きを決め、ジュール熱まで求められるか
問3 (1)(2) 磁場に入っていくはしご型の回路を、磁場の中にある辺を電池に置きかえた直流回路として解けるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 35点 | 30点 |
| 目標時間 | 20分 | 25分 |
公式と法則の確認(問1)、磁束のグラフ(問2)、磁場に入る回路(問3)と、電磁誘導の決まった流れを順に追う大問。
この年の合否を分けた大問。
起電力は磁束のグラフの傾きと結びつけ、動く辺の $vBL$ はファラデーの法則で導けるようになってから使う。
問3 は回路が磁場に入っていく様子を区間ごとに想像できれば、辺を電池に置きかえるだけで、符号を決める所が多いので1つずつ確かめたい。
良問の風・名問の森の電磁誘導が仕上がっていれば、医学科は満点−5点を目標に、できれば満点を取りに行きたい。
差がつく所・失点しやすい所
- 問3:磁場の中にある辺を「起電力 $vBL$ の電池」に置きかえ、向きまで決めたうえで、(2) の電池が2つの回路を連立できるか。電流の向きの符号($I_1$ が負)まで合わせられるかで差がつく。
- 問2 (1):図4 が見取り図なので、上から見た図に直して a→b→c→d が時計回りと読み、 $+2\ \mathrm V$ と $-1\ \mathrm V$ の符号を決められるか。ここで符号を逆にすると、グラフが上下逆になる。
- 問1 ウ・エ:図3 の矢印(3本とも上向き)と電池の向き(上が+極)を正確に読み、 $I_1=I_2+I_3$ や $E_3$ の符号の取り違えを避けられるか。
2005年九州大学物理
第3問 解答・解説
第3問は熱力学の問題です。
テーマは「水平に置いたシリンダーの単原子分子理想気体1 mol を、定積で加熱(A→B)→ 断熱膨張(B→C)→ 定圧で冷却(C→A)のサイクルで変化させる。空欄ア〜キで各状態の内部エネルギー・仕事・熱を第一法則で求めたあと、 $Q_1$ と $Q_2$ の大小、サイクルの仕事と熱の関係、断熱膨張と等温膨張の体積の大小を答える」。
問題


問題文をテキストで読む
図7のように、1モルの単原子分子理想気体が断面積 $S\ [\mathrm{m^2}]$ のシリンダー内に、滑らかに動くピストンで閉じこめられている。シリンダーには温度調節器が取り付けてあり、シリンダー内の気体を加熱したり冷却したりできる。ただし、温度調節器の体積と熱容量は無視でき、シリンダーとピストンは断熱材でできており、それらを通した熱の出入りは考えなくてよい。以下の文章を読んで各問いに答えよ。
図8(a)のように、この装置を水平に置きシリンダー内の理想気体の圧力を外の大気圧 $P\ [\mathrm{N/m^2}]$ と等しくすると、シリンダー底面からピストンまでの距離は $L\ [\mathrm{m}]$ となった。この状態を状態Aとする。内部エネルギーは温度に $\dfrac32R$ (ただし、 $R$ は気体定数)を掛け合わせることで与えられることから、状態Aの内部エネルギー $U_{\mathrm{A}}\ [\mathrm{J}]$ は $\boxed{\text{ア}}$ である。次に、状態Aにおいて温度調節器のスイッチを入れ、ピストンの位置を一定に保ちながら気体を加熱して圧力を2倍にした。これを状態Bとする(図8(b))。状態Aから状態Bへの変化(過程A→B)で気体に加えた熱量 $Q_1\ [\mathrm{J}]$ は $\boxed{\text{イ}}$ である。ここで、温度調節器のスイッチを切り、状態Bから気体をゆっくりと断熱膨張させると、ピストンはシリンダー底面から $L_{\mathrm{C}}\ [\mathrm{m}]$ の距離で静止した。これを状態Cとする(図8(c))。状態B、Cにおける内部エネルギーをそれぞれ $U_{\mathrm{B}}\ [\mathrm{J}]$、 $U_{\mathrm{C}}\ [\mathrm{J}]$ とすると、過程B→Cにおける内部エネルギーの変化 $(U_{\mathrm{C}}-U_{\mathrm{B}})\ [\mathrm{J}]$ は $\boxed{\text{ウ}}$ であり、この過程で気体がした仕事 $W_1\ [\mathrm{J}]$ は $\boxed{\text{エ}}$ である。最後に、状態Cで再び温度調節器のスイッチを入れ、気体を冷却して状態Aに戻した。過程C→Aにおける内部エネルギーの変化 $(U_{\mathrm{A}}-U_{\mathrm{C}})\ [\mathrm{J}]$ は $\boxed{\text{オ}}$ であり、気体がした仕事 $W_2\ [\mathrm{J}]$ は $\boxed{\text{カ}}$ である。したがって、過程C→Aで気体から奪った熱量 $Q_2\ [\mathrm{J}]$ は $\boxed{\text{キ}}$ である。
問1. $\boxed{\text{ア}}$ から $\boxed{\text{キ}}$ の空欄に入るべき数式を、 $S$、 $P$、 $L$、 $L_{\mathrm{C}}$ を用いて表せ。
問2. 気体に加えた熱量 $Q_1$ と気体から奪った熱量 $Q_2$ の関係を次の中から選び、番号で答えよ。
① $Q_1>Q_2$ ② $Q_1=Q_2$ ③ $Q_1<Q_2$
問3. 気体のした仕事 $W_1$、 $W_2$ と熱量 $Q_1$、 $Q_2$ との間に成り立つ関係式を書け。
問4. 状態Bにおいて、温度調節器のスイッチを入れたまま、状態Cと同じ圧力になるまで気体を等温的に膨張させた。その状態を $\mathrm{C^*}$ とする。このときのシリンダー底面からピストンまでの距離を $L_{\mathrm{C^*}}$ とすると、 $L_{\mathrm{C}}$ と $L_{\mathrm{C^*}}$ との間に成り立つ関係を次の中から選び、番号で答えよ。
① $L_{\mathrm{C}}>L_{\mathrm{C^*}}$ ② $L_{\mathrm{C}}=L_{\mathrm{C^*}}$ ③ $L_{\mathrm{C}}<L_{\mathrm{C^*}}$
解答の方針
【問1の方針】
水平のシリンダーで自由に動くピストンは、中の圧力が大気圧 $P$ とつり合う。状態 A・C と C→A は圧力 $P$ で、B だけ $2P$(下の図)。


- ピストンが自由に動く状態 A・C では、気体の圧力は大気圧 $P$ とつり合う(C→A も同じ圧力 $P$ の定圧)。B だけはピストンを固定して加熱するので $2P$。状態 A・B・C の圧力・体積を図に書き込み、変化の種類(A→B は定積、B→C は断熱、C→A は定圧)を決める。C の体積は $SL_{\mathrm C}$。
- 気体は 1 mol なので状態方程式は $pV=RT$。問題の $U=\dfrac32RT$ は $U=\dfrac32pV$ と読みかえられ、気体定数 $R$ は答えに残らない。各状態の内部エネルギーを $U=\dfrac32pV$ で表す。
- A→B は定積なので仕事 0。吸収した熱量は $U_{\mathrm B}-U_{\mathrm A}$(イ)。
- B→C は断熱なので $Q=0$。仕事は $W_1=-(U_{\mathrm C}-U_{\mathrm B})$(ウ・エ)。
- C→A は定圧。内部エネルギーの変化(オ)、仕事 $W_2=P\Delta V$(カ)を求める。奪った熱量は、定圧の 5:3:2 の比で仕事 $|W_2|$ を 2 として 5 にあたる量(キ)。
【問2・問3の方針】
1周すると内部エネルギーはもとにもどるので、第一法則を足すだけで熱と仕事が結びつく。時計回りのサイクルは、正味の仕事が正(下の図)。


- 1周すると温度がもとにもどるので $\Delta U=0$。第一法則を全部足して、吸収した熱量 $Q_1$ と奪った熱量 $Q_2$、仕事 $W_1$・$W_2$ の関係式を立てる(問3)。
- 熱の収支(吸った熱 $-$ 奪った熱)は、p-V 図で囲む面積に等しい。p-V 図で A→B→C→A の向きを確かめ、時計回りなら正味の仕事は正であることから、囲む面積(正味の仕事)の符号を決めて $Q_1$ と $Q_2$ の大小を決める(問2)。
【問4の方針】
「断熱は等温より急」。同じ圧力 $P$ まで下げると、断熱の方が体積は小さい(下の図)。
- B から圧力を $P$ まで下げる道すじは、断熱膨張なら C、等温膨張なら $\mathrm{C^*}$。同じ圧力 $P$ に着いたときの体積を比べるために、p-V 図に、B を通る等温曲線を書き足す。
- 断熱膨張は、気体が仕事をした分だけ温度が下がるので、等温膨張より圧力が余計に下がる(断熱は等温より急)。圧力 $P$ の水平線とぶつかる点は、断熱(C)の方が左、等温($\mathrm{C^*}$)の方が右になる。
解答


解答をテキストで読む
空欄ア〜キ
先に状況を整理する。ピストンはなめらかで、外は大気圧 $P$。ピストンが自由に動く状態 A・C では、気体の圧力は大気圧とつり合って $P$(C→A の途中も同じ)。B だけはピストンを固定しているので $2P$。1 mol なので $pV=RT$ より、気体の内部エネルギーは $U=\dfrac32RT=\dfrac32pV$ と書ける($V=Sl$、 $l$ はピストンまでの距離)。
空欄ア
A の圧力は $P$、体積は $SL$。内部エネルギーは圧力と体積の積の $\dfrac32$ 倍。
$$U_{\mathrm A}=\dfrac32\cdot P\cdot SL$$
答(ア) $\dfrac32PSL$(3点)
空欄イ
A→B は体積一定なので、気体がする仕事は 0。第一法則 $Q_{in}=\Delta U+W$ から、加えた熱量はすべて内部エネルギーの増加になる($Q_1=U_{\mathrm B}-U_{\mathrm A}$)。B は圧力 $2P$、体積 $SL$ なので $U_{\mathrm B}=\dfrac32\cdot2P\cdot SL=3PSL$。
$$Q_1=3PSL-\dfrac32PSL=\dfrac32PSL$$
答(イ) $\dfrac32PSL$(4点)
空欄ウ
C は、ピストンが大気圧とつり合って止まった状態なので、圧力 $P$、体積 $SL_{\mathrm C}$。 $U_{\mathrm C}=\dfrac32\cdot P\cdot SL_{\mathrm C}$ なので
$$U_{\mathrm C}-U_{\mathrm B}=\dfrac32PSL_{\mathrm C}-3PSL=-\dfrac32PS(2L-L_{\mathrm C})$$
答(ウ) $-\dfrac32PS(2L-L_{\mathrm C})$(4点)
空欄エ
B→C は断熱なので $Q=0$。第一法則 $0=(U_{\mathrm C}-U_{\mathrm B})+W_1$ より、気体がした仕事は内部エネルギーの減少分に等しい。
$$W_1=-(U_{\mathrm C}-U_{\mathrm B})=\dfrac32PS(2L-L_{\mathrm C})$$
答(エ) $\dfrac32PS(2L-L_{\mathrm C})$(4点)
空欄オ
C→A の内部エネルギーの変化は「後−前」。A は $\dfrac32PSL$、C は $\dfrac32PSL_{\mathrm C}$。
$$U_{\mathrm A}-U_{\mathrm C}=\dfrac32PSL-\dfrac32PSL_{\mathrm C}=-\dfrac32PS(L_{\mathrm C}-L)$$
答(オ) $-\dfrac32PS(L_{\mathrm C}-L)$(4点)
空欄カ
C→A は圧力 $P$ 一定で、体積は $SL_{\mathrm C}$ から $SL$ に減る(圧縮される)。気体がした仕事は圧力×体積の変化(後−前)。
$$W_2=P\left(SL-SL_{\mathrm C}\right)=-PS(L_{\mathrm C}-L)$$
圧縮されるので気体がした仕事は負。
答(カ) $-PS(L_{\mathrm C}-L)$(4点)
空欄キ
C→A は単原子分子の定圧変化なので、 $Q:\Delta U:W=5:3:2$。仕事の大きさ $PS(L_{\mathrm C}-L)$ が「2」にあたるので、熱の大きさは $\dfrac52$ 倍。この熱は気体から奪われる(放出される)向きなので、問われている「奪った熱量」は正の値で書く。
$$Q_2=\dfrac52PS(L_{\mathrm C}-L)$$
答(キ) $\dfrac52PS(L_{\mathrm C}-L)$(5点)
各過程の仕事を p-V 図で見ると下の図。B→C で気体がした仕事 $W_1$ は B→C の下の面積(色をつけた部分)、C→A は左向きに進むので気体がした仕事 $W_2$ は負で、大きさは C→A の下の長方形の面積。
問2
1周すると温度がもとにもどるので、内部エネルギーの変化の合計は 0。第一法則を A→B→C→A の3つの過程で全部足すと、吸収した熱量の合計 $Q_1-Q_2$ が、気体がした仕事の合計 $W_1+W_2$ に等しい(A→B の仕事は 0)。p-V 図で A→B(上へ)→ B→C(右下へ)→ C→A(左へ)は時計回りで、時計回りのサイクルは正味の仕事が正になる。
$$Q_1-Q_2=W_1+W_2>0\qquad\therefore\ Q_1>Q_2$$
答 ①(4点)
問3
問2 の関係式そのもの。
$$W_1+W_2=Q_1-Q_2$$
p-V 図では、サイクルで囲まれた面積がこの仕事の合計 $W_1+W_2$ にあたる(下の図)。
答 $W_1+W_2=Q_1-Q_2$(4点)
問4
B から等温膨張させて圧力を $P$ にした点が $\mathrm{C^*}$。等温ならば $pV$ は一定なので、 $2P\cdot SL=P\cdot SL_{\mathrm{C^*}}$ より $L_{\mathrm{C^*}}=2L$。一方、B→C の断熱膨張では、気体が仕事をした分だけ内部エネルギーが減り、温度が下がる。B を通る等温曲線を書き足すと、断熱曲線は等温曲線より急に下がるので、圧力 $P$ に着いたとき、断熱の C は等温の $\mathrm{C^*}$ より左(体積が小さい)。したがって $L_{\mathrm C}<L_{\mathrm{C^*}}$。
答 ③(4点)
別解
問2(具体的な値で大小を比べる)
断熱膨張はポアソンの式 $pV^{5/3}=$ 一定が使える。B と C で $2P\cdot(SL)^{5/3}=P\cdot(SL_{\mathrm C})^{5/3}$ より $L_{\mathrm C}=2^{3/5}L\fallingdotseq1.52L$。これを使うと $Q_1=\dfrac32PSL$、 $Q_2=\dfrac52PS(L_{\mathrm C}-L)\fallingdotseq1.29PSL$ で $Q_1>Q_2$ と確かめられる。ただし $2^{3/5}$ の値の見当が必要で、問題は $L_{\mathrm C}$ のまま答える指定なので、p-V 図の向きで決める本解の方が速い。
問4(ポアソンの式で数値を比べる)
$L_{\mathrm C}=2^{3/5}L\fallingdotseq1.52L$ と $L_{\mathrm{C^*}}=2L$ を直接比べる。 $2^{3/5}<2$ から $L_{\mathrm C}<L_{\mathrm{C^*}}$。
出題意図
問1 ア〜キ 状態を順に追い、どの変化かを決めて、内部エネルギー・仕事・熱を第一法則で求めることができるか
問2・問3 1サイクルでは内部エネルギーがもとにもどることから、熱と仕事の関係を捉えることができるか
問4 断熱膨張と等温膨張の違いを、p-V 図で比べることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 40点 | 40点 |
| 目標時間 | 15分 | 20分 |
熱サイクルの典型で、どの学部も満点を取りたい大問。
状態を順に追って第一法則を立てるだけで、落とし穴は、水平のシリンダーで自由に動くピストンの圧力は大気圧とつり合うと読む1点だけ。
最後の断熱と等温の比べも、等温曲線を書き足して「断熱は等温より急」と言えば決まる。
良問の風・名問の森の熱サイクルを白紙で再現できるようにして、満点を取りに行きたい。
差がつく所・失点しやすい所
- 問1 ウ〜キ:ピストンは固定されていないので、C と C→A の圧力は大気圧 $P$ とつり合う、と読めるか。「B の圧力 $2P$ のまま」と読み違えると、ウ〜キ が崩れる。
- 問4:B を通る等温曲線を書き足し、「断熱は等温より急」という発想に行き着けるか。式で比べようとすると、 $2^{3/5}$ の値の見当がつかず苦しくなる。
2005年九州大学・物理の
講評とまとめ
3問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | やや簡単 | 40点 | 35点 |
| 第2問 | やや簡単 | 35点 | 30点 |
| 第3問 | やや簡単 | 40点 | 40点 |
| 全体 | やや簡単 | 115点 | 110点 |
大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で115点、その他の学部で110点)にはなりません。
全体としてはやや簡単な年で、3題とも典型の組み合わせでした。
この年の合否を分けたのは第2問で、起電力の向き(符号)を決める小問が3題の中でいちばん多く、符号を1つずつ確かめられるかで差がつきました。
第1問は、はね返ったあとの空中の時間が落ちた時間と同じと想像し、同じ時間に同じ距離を進むので自動車の平均の速さがボールの水平の速さ $V$ に等しい、と見通せるかが決め手です。
第2問は、磁束のグラフの傾きから起電力を決める問2 と、磁場に入っていくはしご型の回路の辺を電池に置きかえる問3 を、順に処理していく大問です。
問3 (2) は電池が2つの回路になるので、電流の符号まで合わせられるかが山です。
第3問は、状態を順に追って第一法則を立てる熱サイクルで、ピストンの圧力が大気圧とつり合うと読み、断熱は等温より急と比べられれば、どの学部も満点を取りたい大問です。
解く流れ
第1問 → 第2問 → 第3問。
2005年九州大学・物理に
関するよくある質問
2005年の九州大学・物理について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2005年の九州大学・物理は難しかった?
-
やや簡単な年でした。
3題ともやや簡単で、第1問は水平投射・はね返り・追いかけの典型、第2問は電磁誘導とキルヒホッフの典型、第3問は熱サイクルの典型です。
難しい問題がなく時間もかからない年ですが、第2問は起電力の向きを決める所が多く、この年の合否を分けた大問でした。 - 2005年の九州大学・物理は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で115点、その他の学部で110点です(125点満点)。
- 2005年の九州大学・物理はどこで差がつく?
-
この年の合否を分けたのは第2問で、差がついたのは次の3つでした。
- 第1問 問2 (2)(3):はね返ったあとの空中の時間が落ちた時間と同じと想像し、同じ時間に同じ距離を進むので自動車の平均の速さが $V$ になると気づけたか。
- 第2問 問2 (1):図4 を上から見た図に直して a→b→c→d が時計回りと読み、 $+2\ \mathrm{V}$ と $-1\ \mathrm{V}$ の符号を決められたか。
- 第2問 問3 (2):磁場の中の2辺を電池 $vBL$ に置きかえ、電池が2つの回路で電流の符号( $I_1$ が負)まで合わせられたか。
- 2005年の九州大学・物理は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:力学
- 第2問:電磁気
- 第3問:熱力学


