【解説・配点付き】2009年九州大学物理の解答・解説

2009年の九州大学・物理の、
解答・解説【完全版】です。

方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。

このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。

※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。

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中原 遼太郎

九大受験に特化した学習塾
『竜文会』代表

『竜文会』開校後、初年度には国立大学医学部や九州大学に合格者を輩出。

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九州大学医学部に現役合格した経験を生かして、『学習計画の作成』や『LINEでのいつでも相談』による1人1人のサポート・九州大学に特化したハイレベルな演習で「九大受験生」をサポート。

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目次

2009年九州大学物理
第1問 解答・解説

この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。

第1問は力学の問題です。
テーマは「一定の力で衝突する2物体で、作用・反作用・運動量の和の保存・力積を確かめる(空欄補充)。斜面を滑り降りたCが静止したDに弾性衝突したあと、Dは動摩擦力で等速になり、止まったCが再び加速して追いつく(v-t グラフと追いつく距離)」。

問題

2009年九州大学物理 第1問 問題
2009年九州大学物理 第1問 問題
問題文をテキストで読む

以下の問いに答えよ。

問1. 文中の空欄にあてはまる語句または数式を答えよ。ただし、 $\boxed{\text{ア}}$ などの一重欄には数式、 $\boxed{\boxed{\text{ウ}}}$ などの二重欄には語句、また、同じ記号の欄には同じものが入る。

図1のように、なめらかな水平面上に置かれた質量 $m$ の物体Aと質量 $M$ の物体Bの運動を考える。物体AとBは同一直線上を運動するものとし、速度や力などのベクトル量は、その直線方向の成分のみを持ち、図で右向きを正とする。

いま、物体Aが速度 $V$ で右に向かって運動し、静止している物体Bと衝突したとする。その際、物体Aと物体Bは時間 $T$ の間接触し、その間に物体Aは物体Bに一定の力 $F_0$ を及ぼしたものとする。2つの物体が接触している間の物体Bの加速度は $\boxed{\text{ア}}$ であり、2つの物体が離れた後(衝突後)の物体Bの速度は $\boxed{\text{イ}}$ となる。それに対して、物体Aが物体Bから受ける力は、 $\boxed{\boxed{\text{ウ}}}$ の法則より $\boxed{\text{エ}}$ であるから、衝突後の物体Aの速度は $\boxed{\text{オ}}$ となる。これらの結果より、衝突の際に働く力に関わらず、衝突の前後で2つの物体の $\boxed{\boxed{\text{カ}}}$ の和が変化しないことが分かる。

衝突のように短い時間に大きな力を及ぼし合う場合の運動は、力積を用いると記述しやすい。力積の単位は基本単位( $\mathrm{kg}$、 $\mathrm{m}$、 $\mathrm{s}$ )で表すと $\boxed{\text{キ}}$ である。いま考えている衝突の場合、物体Aが物体Bに及ぼした力積は $\boxed{\text{ク}}$ である。

また、衝突前後の物体の $\boxed{\boxed{\text{カ}}}$ の変化から衝突の際に働いた力積を求めることもできる。この関係から、物体Aが物体Bに及ぼした力積が最も小さくなるのは、反発係数(はねかえり係数)が $\boxed{\text{ケ}}$ の場合で、その時の力積は $\boxed{\text{コ}}$ となることが分かる。

問2. 図2に示すように、勾配 $\theta\ [\mathrm{rad}]$ が $\tan\theta=0.3$ で与えられる斜面上での、質量 $m$ の2つの物体CおよびDの運動を考える。斜面と物体Cとの間には摩擦はないが、斜面と物体Dの間には摩擦力が働くものとする。

最初、物体Dは静止摩擦で斜面上に静止している。時刻 $t=0$ に物体Cが物体Dから距離 $X$ 離れたところから初速ゼロで滑り始め、時刻 $t=t_1$ に静止状態の物体Dと弾性衝突(完全弾性衝突)した。その後、2つの物体はいったん離れ、時刻 $t=t_2$ に再び斜面の途中で衝突した。

衝突している時間は極めて短く、衝突に対する静止摩擦の影響も無視できるものとする。また、斜面と物体Dとの動摩擦係数を $\mu’=0.3$ とし、重力加速度の大きさを $g$、速度は斜面に沿って下向きを正とする。

以下の問いに答えよ。ただし、(1)、(2)および(5)については答えだけではなく、導出過程も記すこと。

(1) 最初の衝突直前の物体Cの速度 $V_0$、および衝突の時刻 $t_1$ を求めよ。ただし、勾配は $\theta$ と記してよい。

(2) 最初の衝突直後の、物体Cの速度 $V_{\mathrm{C}}$ および物体Dの速度 $V_{\mathrm{D}}$ を求めよ。ただし、物体Cの衝突直前の速度として $V_0$ を用いてよい。

(3) 最初の衝突後に物体Dに作用する力をすべて、解答用紙の図中に矢印で記入せよ。さらに、それぞれの力の名称およびその大きさを書け。ただし、矢印の向きと長さは力の向きと大きさに対応させること。

(4) 時刻 $t=0$ から再び衝突する時刻 $t=t_2$ までの物体CおよびDの速度の時間変化を、それぞれ破線および実線で、解答用紙のグラフに示せ。ただし、グラフの軸の目盛は $V_0$ と $t_1$ を基準とすること。

(5) 物体CとDが再び衝突するまでに物体Dが移動する距離 $Y$ を、 $X$ を用いて表せ。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

力が一定なので加速度も一定。A が受ける力は作用・反作用で、B が受ける力と大きさが同じで向きが逆。ケ・コは、力積を B の運動量の変化と読みかえるのがかなめ(下の図)。

2009年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
2009年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
  1. 右向きを正とし、B にはたらく水平方向の力 $F_0$ から運動方程式を立てて加速度を求める(ア)。時間 $T$ の等加速度運動で、衝突後の速度を求める(イ)。
  2. A が B から受ける力を、作用・反作用の法則から求める(ウ・エ)。A の運動方程式から加速度を求め、衝突後の A の速度を求める(オ)。
  3. 衝突後の A と B の運動量の和を作り、 $F_0$ と $T$ が消えることを確かめる(カ)。
  4. 力積の単位を、 $\mathrm{N\cdot s}$ から基本単位に直す(キ)。力積=力×時間を求める(ク)。
  5. 力積を「B の運動量の変化」とおく(力が一定でない一般の衝突でも使える読みかえ)。衝突後の速度を、運動量保存と反発係数の式をセットにして反発係数 $e$ で表す。B の速度が小さいほど力積も小さいので、力積が最小になる $e$ を求める(ケ・コ)。

【問2の方針】

着眼点

まず運動を想像する。 $\tan\theta=\mu’$ とそろえてあるのは、D の斜面に沿った力がつり合う設定。D は等速で進み、C が追いつくのは、v-t グラフの面積(変位)が等しいとき(下の図)。

2009年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
2009年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
  1. 斜面に沿って下向きを正とする。C にはたらく力を「重力 → 垂直抗力」の順に書き、斜面に沿った運動方程式から加速度を求める。等加速度運動の式で、衝突直前の速度 $V_0$ と時刻 $t_1$ を求める((1))。
  2. 衝突の前後で、運動量保存と反発係数の式をセットで立てて、衝突直後の速度を求める。同じ質量の弾性衝突では速度が入れかわる((2))。
  3. D にはたらく力を「重力 → 垂直抗力 → 動摩擦力」の順にすべて書く。 $\tan\theta=0.3$ から直角三角形で $\cos\theta$・$\sin\theta$ を求め、垂直抗力・動摩擦力の大きさと矢印の長さの比を求める((3))。動摩擦力と重力の斜面成分を比べると同じ大きさなので、D は等速で進む。
  4. 衝突後の C は 0 から同じ加速度で再び加速し、D は一定の速度で進む。再び衝突するのは変位が等しいときなので、衝突後の経過時間を $\tau$ として C と D の変位の式を等しいとおき、 $\tau$ を求める。 $t_2$ と C の最後の速度を、 $t_1$ と $V_0$ を基準にした目盛りで表し、グラフを書く((4))。
  5. D の変位 $Y$ を、 $t_1$ から $t_2$ までの D の変位として求める。最初の C の変位 $X$ は、v-t グラフの三角形の面積。 $X$ と $Y$ を $V_0$ と $t_1$ で表して比べる((5))。

解答

2009年九州大学物理 第1問 解答・解説
2009年九州大学物理 第1問 解答・解説
2009年九州大学物理 第1問 解答・解説(続き)
2009年九州大学物理 第1問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

空欄ア〜コ

接触している間、B が水平方向に受ける力は A から受ける $F_0$ だけ(鉛直方向は重力と垂直抗力がつり合い、水平面はなめらか)。右向きを正とする。

B の運動方程式を立てる。力が一定なので、加速度も一定。

$$Ma_{\mathrm B}=F_0$$

答(ア) $\dfrac{F_0}{M}$(2点)

B は最初静止(速度0)で、加速度 $a_{\mathrm B}$ の等加速度運動を時間 $T$ だけ続ける。離れたあとは水平方向に力がはたらかないので、速度は変わらない。

$$v_{\mathrm B}=0+a_{\mathrm B}T=\frac{F_0T}{M}$$

答(イ) $\dfrac{F_0T}{M}$(2点)

A が B から受ける力は、作用・反作用の法則により、B が A から受ける力と大きさが同じで向きが逆。B が受ける力は右向きの $F_0$ なので、A が受ける力は左向きで、右向きが正の成分で書くと $-F_0$。

答(ウ) 作用・反作用(2点)

答(エ) $-F_0$(2点)

A の運動方程式を立てる。

$$ma_{\mathrm A}=-F_0\qquad\therefore\ a_{\mathrm A}=-\frac{F_0}{m}$$

A は最初の速度 $V$ から、この加速度で時間 $T$ だけ運動する。

$$v_{\mathrm A}=V+a_{\mathrm A}T=V-\frac{F_0T}{m}$$

答(オ) $V-\dfrac{F_0T}{m}$(2点)

衝突後の A と B の運動量の和を作ると、 $F_0$ と $T$ が消える。

$$m\left(V-\frac{F_0T}{m}\right)+M\cdot\frac{F_0T}{M}=mV$$

これは衝突前の和 $mV+M\cdot0=mV$ と同じ。衝突の際にはたらく力($F_0$)や時間($T$)によらず、2つの物体の運動量の和は変わらない。

答(カ) 運動量(2点)

力積は「力×時間」なので、単位は $\mathrm{N\cdot s}$。 $1\ \mathrm N=1\ \mathrm{kg\cdot m/s^2}$ なので

$$\mathrm{N\cdot s}=\mathrm{kg\cdot m/s^2}\cdot\mathrm s=\mathrm{kg\cdot m/s}$$

運動量(質量×速度)の単位と同じになる。

答(キ) $\mathrm{kg\cdot m/s}$(2点)

A が B に及ぼした力は、一定の $F_0$ で時間 $T$ だけはたらいた。

答(ク) $F_0T$(2点)

(確かめ:B の運動量の変化は $M\cdot\dfrac{F_0T}{M}-0=F_0T$ で、力積と同じ。力積=運動量の変化)

力積は B の運動量の変化に等しい(ク と同じ値)。一般の衝突では、衝突後の A・B の速度(右向き正)を $u_{\mathrm A}$、 $u_{\mathrm B}$ として、運動量保存と反発係数の式をセットで立てる。

$$mV=mu_{\mathrm A}+Mu_{\mathrm B},\qquad e=-\frac{u_{\mathrm A}-u_{\mathrm B}}{V-0}\ \ \therefore\ u_{\mathrm B}-u_{\mathrm A}=eV$$

$u_{\mathrm A}=u_{\mathrm B}-eV$ を保存の式に入れて、 $u_{\mathrm B}$ を求める。

$$(m+M)u_{\mathrm B}=(1+e)mV\qquad\therefore\ u_{\mathrm B}=\frac{(1+e)m}{m+M}V$$

A が B に及ぼした力積 $I$ は、B の運動量の変化なので

$$I=Mu_{\mathrm B}-0=\frac{(1+e)mM}{m+M}V$$

反発係数は $0\leqq e\leqq1$。 $e$ が小さいほど $I$ は小さくなるので、最小になるのは $e=0$(A と B が一体になる衝突)。

答(ケ) $0$(2点)

答(コ) $\dfrac{mM}{m+M}V$(2点)

問2 (1)

C にはたらく力は、重力 $mg$(鉛直下向き)と垂直抗力 $N$(斜面に垂直)の2つ。斜面はなめらかなので摩擦力はない(下の図)。

斜面に沿って下向きが正。重力を斜面に沿った成分と垂直な成分に分けると、斜面に沿った方向の力は $mg\sin\theta$ だけ。運動方程式は

$$ma=mg\sin\theta\qquad\therefore\ a=g\sin\theta$$

加速度は一定なので、等加速度運動の式が使える。時間が分かっていないので、距離 $X$ を滑るあいだの速度は、時間を介さない公式(速度の2乗の差=2×加速度×距離)に初速0を入れて求める。

$$V_0{}^2-0^2=2aX=2g\sin\theta\cdot X\qquad\therefore\ V_0=\sqrt{2gX\sin\theta}$$

時刻 $t_1$ は、速度の式 $V_0=at_1$ から

$$t_1=\frac{V_0}{g\sin\theta}=\sqrt{\frac{2X}{g\sin\theta}}$$

答 $V_0=\sqrt{2gX\sin\theta}$、 $t_1=\sqrt{\dfrac{2X}{g\sin\theta}}$(5点)

問2 (2)

衝突は極めて短い時間で終わるので、衝突のあいだの重力の斜面成分や静止摩擦力の力積は無視できる。C と D のあいだにはたらく力は作用・反作用(内力)だけなので、運動量が保存する。斜面に沿って下向きを正とし、衝突直後の速度を $V_{\mathrm C}$、 $V_{\mathrm D}$ とする(下の図)。

$$mV_0+0=mV_{\mathrm C}+mV_{\mathrm D}$$

弾性衝突なので反発係数は $e=1$。

$$1=-\frac{V_{\mathrm C}-V_{\mathrm D}}{V_0-0}\qquad\therefore\ V_{\mathrm D}-V_{\mathrm C}=V_0$$

$V_{\mathrm D}=V_0+V_{\mathrm C}$ を保存の式に入れると $V_0=V_{\mathrm C}+V_0+V_{\mathrm C}$ なので、 $V_{\mathrm C}=0$。このとき $V_{\mathrm D}=V_0$。

答 $V_{\mathrm C}=0$、 $V_{\mathrm D}=V_0$(5点)

(同じ質量の弾性衝突では速度が入れかわる。基本の法則から導けるようにしてから、結果を覚えて使う)

問2 (3)

D にはたらく力を「重力 → 触れているもの」の順に書く。重力 $mg$(鉛直下向き)、斜面から受ける垂直抗力 $N$(斜面に垂直で上向き)、動摩擦力 $f$。D は斜面に沿って下向きに動くので、動摩擦力は逆向き(斜面に沿って上向き)。力は3つだけ。

斜面に垂直な方向は動かないので、力がつり合う。垂直抗力を $mg$ と決めつけず、この式で求める。

$$N=mg\cos\theta$$

動摩擦力は $f=\mu’N=\mu’mg\cos\theta$。 $\tan\theta=0.3=\dfrac{3}{10}$ なので、高さ3・底辺10の直角三角形で考える。斜辺は $\sqrt{3^2+10^2}=\sqrt{109}$(下の図)。

$$\cos\theta=\frac{10}{\sqrt{109}},\qquad\sin\theta=\frac{3}{\sqrt{109}}$$

$$N=\frac{10}{\sqrt{109}}mg\ \left(\fallingdotseq0.96\,mg\right),\qquad f=0.3\times\frac{10}{\sqrt{109}}mg=\frac{3}{\sqrt{109}}mg\ \left(\fallingdotseq0.29\,mg\right)$$

矢印の長さは大きさに比例させる。重力:垂直抗力:動摩擦力=1:0.96:0.29。

答 重力 $mg$(鉛直下向き)、垂直抗力 $\dfrac{10}{\sqrt{109}}mg$(斜面に垂直に上向き)、動摩擦力 $\dfrac{3}{\sqrt{109}}mg$(斜面に沿って上向き)(5点)

(確かめ:動摩擦力 $\dfrac{3}{\sqrt{109}}mg$ は、重力の斜面に沿った成分 $mg\sin\theta=\dfrac{3}{\sqrt{109}}mg$ と同じ大きさ。斜面に沿った方向の力がつり合うので、 $a=0$ = D は等速で進む)

問2 (4)

D の運動。衝突前は静止摩擦で静止している(速度0)。衝突のあとは、(3) の確かめより斜面に沿った方向の力がつり合う。運動方程式 $ma_{\mathrm D}=mg\sin\theta-\mu’mg\cos\theta=0$ より $a_{\mathrm D}=0$。D は $t=t_1$ から、速度 $V_0$ の等速運動。

C の運動。衝突まで加速度 $g\sin\theta$ で、(1) より $V_0=g\sin\theta\cdot t_1$ なので、加速度は $g\sin\theta=\dfrac{V_0}{t_1}$。衝突の瞬間に速度は $V_0$ から 0 になる。衝突のあとも斜面はなめらかなので、C は 0 から同じ加速度 $\dfrac{V_0}{t_1}$ で再び加速する。

再び衝突するのは、C と D の変位が等しいとき。衝突後の経過時間を $\tau$ とおくと

$$\frac12\cdot\frac{V_0}{t_1}\tau^2=V_0\tau\qquad\therefore\ \tau=2t_1$$

$t_2=t_1+\tau$ なので $t_2=3t_1$。そのときの C の速度は $\dfrac{V_0}{t_1}\cdot2t_1=2V_0$。

v-t グラフでは、D の長方形(底辺 $\tau$・高さ $V_0$)と C の三角形(底辺 $\tau$・高さは再び衝突するときの C の速度 $v_{\mathrm C}$)の面積が等しい。三角形の面積は底辺×高さ÷2 なので、 $v_{\mathrm C}$ は D の速度の2倍の $2V_0$。傾きが $\dfrac{V_0}{t_1}$ なので、0 から $2V_0$ までに $2t_1$ かかる。

目盛りは $V_0$ と $t_1$ が基準。 $t_2$ は $3t_1$、C の最後の速度は $2V_0$ と書く。C は破線、D は実線。衝突の瞬間、C は $V_0$ から 0 に、D は 0 から $V_0$ に飛ぶ。

答 上のグラフ(C は破線、D は実線。 $t_2=3t_1$、C の最後の速度は $2V_0$)(5点)

問2 (5)

$Y$ は、D が衝突後に移動する距離。v-t グラフでは、 $t_1$ から $t_2$ までの D の長方形の面積(底辺 $2t_1$・高さ $V_0$)。

$$Y=V_0\cdot(t_2-t_1)=2V_0t_1$$

$X$ は、最初に C が滑った距離。 $0\leqq t\leqq t_1$ の三角形の面積。

$$X=\frac12V_0t_1\qquad\therefore\ V_0t_1=2X$$

よって $Y=2V_0t_1=2\cdot2X$。

答 $Y=4X$(5点)

(図の見方:衝突後の C の三角形は、最初の三角形の底辺2倍・高さ2倍の相似形なので、面積は4倍で $4X$。この面積が C の変位で、追いついたときの D の変位 $Y$ と等しい)

別解

問2 (1) (力学的エネルギー保存で $V_0$ だけ求める) なめらかな斜面では力学的エネルギーが保存する。距離 $X$ 滑ると高さは $X\sin\theta$ 下がる。

$$mgX\sin\theta=\frac12m{V_0}^2\qquad\therefore\ V_0=\sqrt{2gX\sin\theta}$$

同じ答え。本解は、時刻 $t_1$ も同じ加速度から求める流れなので、運動方程式から始めた。

問2 (5) (位置の式だけで) (4) のグラフを使わず、衝突後の位置の式で求める。C の加速度 $g\sin\theta$ で

$$\frac12g\sin\theta\cdot\tau^2=V_0\tau\qquad\therefore\ \tau=\frac{2V_0}{g\sin\theta}$$

$$Y=V_0\tau=\frac{2{V_0}^2}{g\sin\theta}=\frac{2\cdot2gX\sin\theta}{g\sin\theta}=4X$$

同じ答え。(4) のグラフが書けなくても、(5) はこの方法で取れる。

出題意図

問1 ア〜キ 一定の力がはたらく衝突を例に、作用・反作用の法則と、運動量の和が変わらないことを結びつけて理解できているか

問1 ク〜コ 力積を運動量の変化として扱い、運動量保存と反発係数の式から、力積が最小になる場合を求めることができるか

問2 (1)(2) 摩擦のない斜面での等加速度運動と、同じ質量の弾性衝突を、導出過程を示して扱うことができるか

問2 (3) 斜面上の物体にはたらく力をすべて図示し、動摩擦力と重力の斜面方向の成分が同じ大きさになることを捉えることができるか

問2 (4)(5) 2つの物体の運動を v-t グラフに表し、面積(変位)の関係から再び衝突する時刻と距離を求めることができるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度標準
目標得点40点30点
目標時間20分25分

難しくはないが計算が面倒で、後半が難しい。
力積と運動量、斜面での衝突という、九大力学で頻出の典型の積み重ねで、問1 は誘導なしでも解けるところまで仕上げておきたい。
問2 の決め手は運動を想像できるかどうかで、C は止まって再び加速し、D は等速で進み、C が追いかける。
$\tan\theta=\mu’$ と数がそろえてあることに気づけば、「追いつく=変位が等しい=v-t グラフの面積が等しい」という決まった型で解ける。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問2 (3):$\tan\theta=\mu’$ と数がそろえてあることに気づき、動摩擦力が重力の斜面成分と同じ大きさで、D は等速になると捉えられるか。ここに気づけないと (4)(5) が進まない。
  • 問2 (4):衝突後、C は止まってから同じ加速度で再び加速し、D は一定の速度で進む、という運動を想像して、指定の目盛り($V_0$ と $t_1$ が基準)でグラフを書けるか。
  • 問1 ケ・コ:力積を B の運動量の変化と読みかえ、衝突後の B の速度が最小になる反発係数($e=0$)に行き着けるか。

2009年九州大学物理
第2問 解答・解説

第2問は電磁気の問題です。
テーマは「ばねで支えた極板のコンデンサー。電池を切り離すと電気量 $Q$ が一定になり、極板間の引力は位置によらず一定の力になる。その引力で極板が上へ引き上げられ、重力と同じ『一定の力』が加わった単振動をする(中心がずれるだけで、最上点は中心の2倍)。最初の静電エネルギーは、ばねの弾性エネルギー・重力の位置エネルギーに移り、最後は抵抗で熱になる」。

問題

2009年九州大学物理 第2問 問題
2009年九州大学物理 第2問 問題
問題文をテキストで読む

以下の問いに答えよ。

図3のように、真空中に二枚の平板電極1、2を水平に配置し、平行板コンデンサーを構成する。電極1は天井の絶縁壁に固定されており、電極2はバネ定数 $k$ のバネを介して、床の絶縁壁に固定されている。電極1、2はともに一辺が $L$ の正方形である。はじめに、バネが自然長となる位置に周囲と絶縁されたストッパーを用いて電極2を固定したところ、電極1と電極2の距離は $d$ であった。この状態を初期状態とする。鉛直方向に $x$ 軸をとり、初期状態の電極2の位置を原点とする。

両者の電極は、導線を介して、図に示す回路に接続されている。 $L$ は電極間距離に比べ十分大きく、電極表面の電荷は均一に分布するものとし、電極端部の影響は無視する。また、バネおよび導線の質量、導線の電気抵抗ならびに電池の内部抵抗は無視できるものとする。最初、スイッチ $\mathrm{S_1}$、 $\mathrm{S_2}$ は共に開いており、電極1、2には電荷は無かった。真空の誘電率を $\varepsilon_0$ とする。

問1. まず、電極2を $x=0$ の位置に固定した状態で、スイッチ $\mathrm{S_1}$ を閉じ起電力 $V$ の電池を用いてコンデンサーを充電した。

(1) 十分に時間が経過した後、電極1に蓄えられた電荷 $Q$ はいくらか。 $L$、 $d$、 $V$、 $\varepsilon_0$、 $k$ の中から必要な記号を用いて答えよ。

(2) また、コンデンサーに蓄えられた静電エネルギー $U_{\mathrm{C}}$ はいくらか。 $L$、 $d$、 $Q$、 $\varepsilon_0$、 $k$ の中から必要な記号を用いて答えよ。

問2. 次に、スイッチ $\mathrm{S_1}$ を開いて電池を切り離した。

(1) 仮に、電極1を水平を保ったまま微小距離 $\Delta x$ だけゆっくりと上昇させたとする。この場合の静電エネルギーの増加 $\Delta U_{\mathrm{C}}$ を答えよ。

(2) 二枚の電極は正負に帯電しているので、引力を及ぼしあっている。電極を動かす時の外力の大きさがこの引力の大きさに等しいとして、電極間に働く引力 $F$ の大きさを答えよ。ただし、電極1の質量は無視する。

問3. さらに、スイッチ $\mathrm{S_1}$ を開いたまま、電極2のストッパーを静かに外したところ、電極2は上昇を始めた。ストッパーを外した瞬間の時刻を0とし、その後の電極2の運動について考察する。ただし、電極2は水平を保って運動するものとし、電極1に触れないものとする。また、電極2の質量を $m$、重力加速度の大きさを $g$ とする。

(1) 時刻0で電極が上昇するために $Q$ が満たすべき条件を答えよ。

(2) 電極2が到達する最上点の座標 $x_{\mathrm{M}}$ はいくらか。 $L$、 $d$、 $Q$、 $\varepsilon_0$、 $k$、 $m$、 $g$ から必要な記号を用いて答えよ。

(3) 電極間の電界の $x$ 成分 $E_x$ の時間変化を表すグラフとして、最も適するものを、次の(a)から(f)の中から選べ。

問4. 最後に、電極2が最上点の位置に来たところで、電極位置を再び固定し、次にスイッチ $\mathrm{S_2}$ を閉じた。スイッチを閉じて十分時間が経つまでに抵抗 $\mathrm{R_2}$ で消費されるエネルギーを $U_{\mathrm{R2}}$ とすると、 $U_{\mathrm{R2}}$ と問1(2)で求めた、最初にコンデンサーに蓄えられた静電エネルギー $U_{\mathrm{C}}$ との差は次式によって与えられる。 $d$、 $Q$、 $\varepsilon_0$、 $k$、 $m$、 $g$ から必要な記号を用いて $\boxed{\quad\quad}$ を埋めよ。

$$U_{\mathrm{C}}-U_{\mathrm{R2}}=\boxed{\quad\quad}\,x_{\mathrm{M}}^2+\boxed{\quad\quad}\,x_{\mathrm{M}}$$

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

電池につながれているので、電極間の電位差は起電力 $V$ のまま。電池の長い線が上なので、電極1 が正、電極2 が負(下の図)。

2009年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2009年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
  1. 問1 (1):極板間の電場を $E=\dfrac{Q}{\varepsilon_0L^2}$ と表し、 $V=Ed$ と合わせて $Q$ を求める。
  2. 問1 (2):使える記号に $V$ が無いので、電気容量 $C=\dfrac{\varepsilon_0L^2}{d}$ を使った $U_{\mathrm C}=\dfrac{Q^2}{2C}$ の形で求める。

【問2の方針】

着眼点

$\mathrm{S_1}$ を開いて電池を切り離すと、電気量 $Q$ が一定になる。電場は $Q$ だけで決まるので、間隔を変えても変わらず、極板間引力も変わらない(下の図)。

2009年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2009年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
  1. 問2 (1): $Q$ 一定のまま間隔が $d+\Delta x$ になったときの静電エネルギーから、もとの静電エネルギーを引く。
  2. 問2 (2):電池が無いので、エネルギー保存の一般形は $W_{外}=\Delta U_{\mathrm C}$ になる。ゆっくり動かすので外力は引力と同じ大きさ。外力 $\times\Delta x$ と (1) を比べて $F$ を求める。

【問3の方針】

着眼点

引力 $F$ は $Q$ 一定なので位置によらず一定で、重力も一定。ばねの単振動は中心がずれるだけで、時刻0 は端なので、最上点は中心の2倍(下の図)。

2009年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2009年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2009年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2009年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
  1. (1) 時刻0 の電極2 にはたらく力(引力・重力。ばねは自然長なので力0)を書き、上へ動き出す条件 $F>mg$ を $Q$ で表す。
  2. (2) 位置 $x$ の電極2 にはたらく力(引力・重力・ばねの力)を書き、運動方程式を $ma=-K(x-x_0)$ の形にして、振動の中心 $x_0$ を求める。
  3. 時刻0 は端なので、最上点は中心から同じ距離だけ上。 $x_{\mathrm M}=2x_0$ として求める。
  4. (3) 電場は $Q$ だけで決まるので、電極が動いても変わらない。電極1 が正であることから $E_x$ の符号を決めて、(a)〜(f) から選ぶ。

【問4の方針】

着眼点

答えに使える記号に $L$ が無いのは、エネルギーの行き先で書く合図。動いている間は静電エネルギーが力学的エネルギーに移り、 $\mathrm{S_2}$ を閉じたあとは全部ジュール熱になる(下の図)。

2009年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2009年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
  1. エネルギー保存の一般形 $W_{外}+W_{電}=\Delta U+H+\Delta E$ を書く。ストッパーを外してから最上点までは、外力・電池・ジュール熱の項が0。静電エネルギーの減少が、力学的エネルギーの増加と等しいことを式にする。
  2. $\mathrm{S_2}$ を閉じてから十分時間が経つまでは、電極は固定、電池は切り離されている。最上点の静電エネルギーが全部 $U_{\mathrm{R2}}$ になることを式にする。
  3. 手順1・2を合わせて $U_{\mathrm C}-U_{\mathrm{R2}}$ を $x_{\mathrm M}$ で表し、$x_{\mathrm M}^2$ と $x_{\mathrm M}$ の係数を読む。

解答

2009年九州大学物理 第2問 解答・解説
2009年九州大学物理 第2問 解答・解説
2009年九州大学物理 第2問 解答・解説(続き)
2009年九州大学物理 第2問 解答・解説(続き)
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問1 (1)

電池につながれて十分時間が経ったので、電極間の電位差は起電力 $V$。電極1 が $+Q$、電極2 が $-Q$ で、極板の面積は $L^2$。電場は「単位面積あたりの電気力線の本数」なので

$$E=\dfrac{Q}{\varepsilon_0L^2}$$

一様な電場の電位差は $V=Ed$ なので、 $V=\dfrac{Qd}{\varepsilon_0L^2}$ 。これを $Q$ について解く( $k$ は使わない)。

答 $Q=\dfrac{\varepsilon_0L^2V}{d}$(5点)

問1 (2)

使える記号は $L$、 $d$、 $Q$、 $\varepsilon_0$、 $k$ で、 $V$ が入っていない。電気量 $Q$ と電気容量 $C$ で書ける形 $U_{\mathrm C}=\dfrac{Q^2}{2C}$ を選ぶ。電気容量は、問1 (1) の $Q=CV$ との比較から $C=\dfrac{\varepsilon_0L^2}{d}$ 。

$$U_{\mathrm C}=\dfrac{Q^2}{2}\cdot\dfrac{d}{\varepsilon_0L^2}$$

答 $U_{\mathrm C}=\dfrac{Q^2d}{2\varepsilon_0L^2}$(5点)

問2 (1)

$\mathrm{S_1}$ を開いたので、電極に蓄えられた電気量 $Q$ はそのまま(電池も、どこにも電気の行き場が無い)。電極1 を $\Delta x$ 上げると、間隔は $d+\Delta x$ になり、電気容量は $C’=\dfrac{\varepsilon_0L^2}{d+\Delta x}$ に変わる。 $Q$ が一定なので、静電エネルギーは $\dfrac{Q^2}{2C’}$ の形で書く。後から前を引く。

$$\Delta U_{\mathrm C}=\dfrac{Q^2}{2C’}-\dfrac{Q^2}{2C}=\dfrac{Q^2(d+\Delta x)}{2\varepsilon_0L^2}-\dfrac{Q^2d}{2\varepsilon_0L^2}$$

答 $\Delta U_{\mathrm C}=\dfrac{Q^2}{2\varepsilon_0L^2}\Delta x$(5点)

問2 (2)

電極1 をゆっくり動かすとき、外力は引力とつりあっている(外力が引力より大きければ、電極1 は加速してしまう)。電池は切り離されていて、電流も流れないので、外力の仕事がそのまま静電エネルギーの増加になる(エネルギー保存の一般形で、 $W_{電}=0$、 $H=0$、 $\Delta E=0$ の項を消す)。

$$W_{外}=\Delta U_{\mathrm C}\qquad F\,\Delta x=\dfrac{Q^2}{2\varepsilon_0L^2}\Delta x$$

$\Delta x$ の係数を読む。 $Q$ 一定なら、引力は間隔によらず一定(下の図の左は外力と引力のつりあい)。

答 $F=\dfrac{Q^2}{2\varepsilon_0L^2}$(5点)

問3 (1)

時刻0 の電極2 は $x=0$ にあり、ばねは自然長なので、ばねの力は0。力は、上向きの引力 $F$ と、下向きの重力 $mg$ の2つ(図の左)。上へ動き出すには、上向きの力の方が大きい。問2 (2) の $F$ を使うと

$$F>mg\qquad \dfrac{Q^2}{2\varepsilon_0L^2}>mg$$

$Q^2>2\varepsilon_0L^2mg$ で $Q>0$ なので、 $Q>L\sqrt{2\varepsilon_0mg}$ 。

答 $Q>L\sqrt{2\varepsilon_0mg}$(5点)

問3 (2)

位置 $x$ にいる電極2 には、上向きに引力 $F$、下向きに重力 $mg$ とばねの力 $kx$ がはたらく(ばねは自然長から $x$ 伸びている。図の右)。引力 $F$ は $Q$ 一定なので $x$ によらず一定。上向きを正として運動方程式を立てる。

$$ma=F-mg-kx=-k\left(x-\dfrac{F-mg}{k}\right)$$

$-K(x-x_0)$ の形なので、振動の中心は $x_0=\dfrac{F-mg}{k}$ (つり合いの位置)。単振動定数は $k$ のまま。時刻0 は静かに外した直後なので、速さ0 で $x=0$ にいる。つまり $x=0$ は振動の端で、振幅は $x_0$。最上点は中心から振幅だけ上なので $x_{\mathrm M}=x_0+x_0=2x_0$(下の図)。

$$x_{\mathrm M}=\dfrac{2(F-mg)}{k}=\dfrac2k\left(\dfrac{Q^2}{2\varepsilon_0L^2}-mg\right)$$

答 $x_{\mathrm M}=\dfrac{2}{k}\left(\dfrac{Q^2}{2\varepsilon_0L^2}-mg\right)$(5点)

(問3 (1) の条件から $F>mg$ なので $x_{\mathrm M}>0$。問題文のとおり $x_{\mathrm M}<d$ で、電極1 には触れない。)

問3 (3)

電場は $E=\dfrac{Q}{\varepsilon_0L^2}$ で、電気量だけで決まる。 $\mathrm{S_1}$ が開いているので $Q$ は一定。電極2 が上下に動いても、電場の大きさは変わらない(変わるのは電位差 $V=E\,(d-x)$ の方。下の図)。向きは、正の電極1 から負の電極2 へ向かう下向きなので、$x$ 軸(上向き)の成分は負。よって、負の一定値のグラフ。

答 (c)(5点)

問4

エネルギー保存の一般形 $W_{外}+W_{電}=\Delta U+H+\Delta E$ を、2つの段階に分けて使う。

最初の状態( $x=0$ 、速さ0)から最上点(速さ0)まで。外力は無く、電池もつながっていないので $W_{外}=W_{電}=0$。抵抗に電流は流れないので $H=0$。静電エネルギーの変化と、力学的エネルギーの変化だけが残る。最上点の静電エネルギーを $U_{\mathrm M}$ とおく。ばねは $x_{\mathrm M}$ 伸び、電極2 は $x_{\mathrm M}$ だけ上がり、速さは0。

$$0=(U_{\mathrm M}-U_{\mathrm C})+\left(\dfrac k2x_{\mathrm M}^2+mg\,x_{\mathrm M}\right)\qquad\therefore\ U_{\mathrm C}-U_{\mathrm M}=\dfrac k2x_{\mathrm M}^2+mg\,x_{\mathrm M}$$

次に、最上点で電極を固定して $\mathrm{S_2}$ を閉じる。 $\mathrm{S_1}$ は開いたままなので電池は関係しない。抵抗 $\mathrm{R_2}$ を通って、電極に蓄えられていた電気量が全部放電される。たまっていた静電エネルギー $U_{\mathrm M}$ が、そのまま全部ジュール熱になる。

$$U_{\mathrm{R2}}=U_{\mathrm M}$$

2つを合わせると、求める差は

$$U_{\mathrm C}-U_{\mathrm{R2}}=U_{\mathrm C}-U_{\mathrm M}=\dfrac k2x_{\mathrm M}^2+mg\,x_{\mathrm M}$$

答( $x_{\mathrm M}^2$ の前) $\dfrac k2$(3点)

答( $x_{\mathrm M}$ の前) $mg$(2点)

別解

問2 (2) 相手の極板がつくる電場から

電極1 の電荷 $Q$ が受ける力を考える。電極間の電場 $E=\dfrac{Q}{\varepsilon_0L^2}$ は、電極1 がつくる電場 $E_+$ と、電極2 がつくる電場 $E_-$ の和。2つの電極は同じ大きさの電気量なので $E_+=E_-=\dfrac12E$。電極1 は、自分がつくる電場からは力を受けないので、受ける力は電極2 がつくる電場 $E_-$ からだけ(前の図の右)。

$$F=QE_-=\dfrac12QE=\dfrac12Q\cdot\dfrac{Q}{\varepsilon_0L^2}=\dfrac{Q^2}{2\varepsilon_0L^2}$$

本解と同じ。極板間引力の導き方は2通りとも、できるようにしておく。

問3 (2) エネルギー保存から

最初( $x=0$ 、速さ0)と最上点(速さ0)で、引力 $F$ がした仕事 $Fx_{\mathrm M}$ が、ばねの弾性エネルギーと重力の位置エネルギーの増加になる。

$$Fx_{\mathrm M}=\dfrac k2x_{\mathrm M}^2+mg\,x_{\mathrm M}\qquad\therefore\ x_{\mathrm M}=\dfrac{2(F-mg)}{k}$$

$x_{\mathrm M}\ne0$ で割った。本解と同じ。

問4 引力のした仕事で

最上点の静電エネルギーは $U_{\mathrm M}=\dfrac{Q^2(d-x_{\mathrm M})}{2\varepsilon_0L^2}$ なので

$$U_{\mathrm C}-U_{\mathrm{R2}}=\dfrac{Q^2d}{2\varepsilon_0L^2}-\dfrac{Q^2(d-x_{\mathrm M})}{2\varepsilon_0L^2}=\dfrac{Q^2}{2\varepsilon_0L^2}x_{\mathrm M}=F\,x_{\mathrm M}$$

このままでは $L$ が残り、使える記号に合わない。問3 (2) の $x_{\mathrm M}=\dfrac{2(F-mg)}{k}$ から $F=\dfrac k2x_{\mathrm M}+mg$ と書き直して代入すると、本解と同じ式になる。

出題意図

問1 電池につながれたコンデンサーの電気量と静電エネルギーを、指定された記号だけで表すことができるか

問2 (1)(2) 電池を切り離すと電気量が一定になることと、外力の仕事が静電エネルギーの増加になることから、極板間引力を求めることができるか

問3 (1)〜(3) 引力が位置によらず一定であることに気づき、重力と同じ一定の力が加わった単振動として、極板の運動と電場を捉えることができるか

問4 静電エネルギーが、ばねの弾性エネルギー・重力の位置エネルギー・ジュール熱へと移り変わる流れを、エネルギー保存で追うことができるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度標準
目標得点35点30点
目標時間20分25分

後半が難しく、単振動も絡んでくる標準的な大問。
極板間引力( $F=\dfrac12QE$ )の典型に、鉛直ばねの単振動をのせた形で、良問の風・名問の森が仕上がっていれば初見でも解ける。
決め手は、電池を切り離すと $Q$ が一定になり、引力が位置によらず一定の力になると気づくこと。
引力が一定なら重力と同じ扱いで、中心がずれるだけの単振動になる。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問2 (2):電池を切り離すと $Q$ が一定になることから、外力の仕事=静電エネルギーの増加(または $F=\dfrac12QE$)で引力を求められるか。ここを落とすと、$F$ を使う問3 (1)(2) と問4 まで続けて落ちる。
  • 問3 (2):引力が位置によらず一定だと気づき、重力と同じ扱いで中心だけがずれた単振動と見て、最上点を「中心の2倍」と求められるか。
  • 問4:使える記号に $L$ が無いことから、最初の静電エネルギーが最上点でどこへ移ったかをエネルギー保存で追えるか。

コラム 極板を動かす問題は「Q一定か V一定か」で決まる

問2 は $\mathrm{S_1}$ を開いた( $Q$ 一定)場合。もし $\mathrm{S_1}$ を閉じたまま( $V$ 一定)で同じことをしたら、答えはまったく別の形になる。コンデンサーの極板を動かす問題は、スイッチが開いているか閉じているかを見て、一定のものを決めるところから始まる。極板の間隔を2倍にしたときの変化は次のとおり。

2009年九州大学物理 第2問 コラムの図
2009年九州大学物理 第2問 コラムの図
量スイッチを開く( $Q$ 一定)スイッチを閉じたまま( $V$ 一定)
電場 $E$変わらない$\dfrac12$ 倍
極板間引力 $F$変わらない$\dfrac14$ 倍
静電エネルギー $U$2倍$\dfrac12$ 倍
  • $Q$ 一定:電場は電気量で決まる( $E=\dfrac{Q}{\varepsilon_0S}$ )ので変わらない。引力 $F=\dfrac12QE$ も変わらない。だから、第2問の極板は、位置によらず一定の引力を受ける。
  • $V$ 一定:電場は $E=\dfrac Vd$ なので間隔に反比例し、引力は $F=\dfrac12QE=\dfrac{\varepsilon_0SV^2}{2d^2}$ で間隔の2乗に反比例する。
  • 同じ型は、良問の風・名問の森の極板間引力の問題でも扱われる。

2009年九州大学物理
第3問 解答・解説

第3問は力学・波動の問題です。
テーマは「時計回りの等速円運動の位置・速度・加速度を成分で表し、次に、ばねでつながれた多数の物体が単振動しながら正弦波をつくる設定で、隣の物体との位相のずれと運動方程式から $\omega$ と $\lambda$ の関係を求める」。

問題

2009年九州大学物理 第3問 問題
2009年九州大学物理 第3問 問題
問題文をテキストで読む

文中の空欄 $\boxed{\text{ア}}$ から $\boxed{\text{ソ}}$ にあてはまる数式を答えよ。ただし、角度および角速度の単位は、それぞれ $\mathrm{rad}$ および $\mathrm{rad/s}$ とし、円周率は $\pi$ とする。必要があれば、三角関数の公式

$$\sin(\alpha\pm\beta)=\sin\alpha\cos\beta\pm\cos\alpha\sin\beta$$

$$\cos(\alpha\pm\beta)=\cos\alpha\cos\beta\mp\sin\alpha\sin\beta$$

を用いてよい。また、 $\theta$ の大きさが十分小さいときには、 $\sin\theta=\theta$、 $\cos\theta=1$ とせよ。

問1. 図4のように、 $xy$ 平面上で時計回りに角速度の大きさが $\omega$ で等速円運動をする物体を考える。 $xy$ 座標の原点を円の中心とし、時刻 $t$ での物体の位置 $\vec{r}(t)$ を $\vec{r}(t)=(x(t),\ y(t))$ と表す。ただし、円の半径を $r$ とし、時刻0では $\vec{r}(0)=(0,\ r)$ とする。同様に、速度 $\vec{v}(t)$ を $\vec{v}(t)=(v_x(t),\ v_y(t))$、加速度 $\vec{a}(t)$ を $\vec{a}(t)=(a_x(t),\ a_y(t))$ と表す。答えは、 $r$、 $\omega$、 $t$ の中から必要な記号を用いて表せ。

時刻 $t$ での物体の位置については、 $x(t)=\boxed{\text{ア}}$、 $y(t)=\boxed{\text{イ}}$ である。時刻0から $\Delta t$ までの位置の変化 $\vec{r}(\Delta t)-\vec{r}(0)$ は、 $\Delta t$ が十分小さいときには $\vec{v}(0)\Delta t$ に等しいので、 $v_x(0)=\boxed{\text{ウ}}$、 $v_y(0)=\boxed{\text{エ}}$ である。 $\vec{v}(0)$ と $\vec{v}(t)$ のなす角は $\omega t$ であるから、 $v_x(t)=\boxed{\text{オ}}$、 $v_y(t)=\boxed{\text{カ}}$ となる。同様に、速度の変化 $\vec{v}(\Delta t)-\vec{v}(0)$ は $\vec{a}(0)\Delta t$ に等しいので、 $a_x(0)=\boxed{\text{キ}}$、 $a_y(0)=\boxed{\text{ク}}$ である。 $\vec{a}(0)$ と $\vec{a}(t)$ のなす角は $\omega t$ であるから、 $a_x(t)=\boxed{\text{ケ}}$、 $a_y(t)=\boxed{\text{コ}}$ となる。

問2. 図5のように、質量 $m$ の多数の物体を、質量が無視できるバネ定数 $k$ の同じバネでつなぎ、なめらかな水平面上の直線( $x$ 軸)に沿って静止させる。このとき、各物体の間隔は $d$ であり、左端から $n$ 番目の物体の位置 $x_n$ を $x_n=nd$ とする。次に、それぞれの物体を振幅 $r$、角振動数 $\omega$ で $x$ 方向に単振動させる。時刻 $t$ において、 $n$ 番目の物体がはじめに静止していた位置 $x_n$ からの変位を $u_n(t)$ とする。以下では、すべての物体の変位が図6に示すように波長 $\lambda$ の正弦波上にあり、時間の経過にしたがって、この正弦波が $x$ 軸の正の向きに進む場合を考える。このとき、 $\lambda$ は $d$ にくらべて十分に大きく、物体に作用する力はバネによるもののみとする。答えは、 $r$、 $\omega$、 $t$、 $d$、 $\lambda$、 $m$、 $k$ の中から必要な記号を用いて表せ。

それぞれの物体の単振動は、等速円運動を直線上に投影した運動と考えてよい。いま、 $P$ 番目の物体についてみたところ、対応する等速円運動の回転角が $\omega t$ であり、単振動の変位は $u_P(t)=r\sin(\omega t)$ であった。このとき、 $P-1$ 番目と $P+1$ 番目の物体に対応する等速円運動の回転角は、それぞれ $\boxed{\text{サ}}$ と $\boxed{\text{シ}}$ となり、 $u_{P-1}(t)=r\sin\left(\boxed{\text{サ}}\right)$、 $u_{P+1}(t)=r\sin\left(\boxed{\text{シ}}\right)$ となる。時刻 $t$ において、 $P$ 番目の物体の加速度は $\boxed{\text{ス}}$ であり、 $P$ 番目の物体が左右のバネから受ける力の合力は $\boxed{\text{セ}}\times r\sin(\omega t)$ であるので、この物体の運動方程式から、 $\omega$ と $\lambda$ の間には $\omega^2=\boxed{\text{ソ}}$ の関係がある。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

速度も加速度も、はじめの向きと大きさが分かれば、あとは同じ角 $\omega t$ だけ回すだけ。角は $y$ 軸から測るので、位置は $x$ 成分が $\sin$、 $y$ 成分が $\cos$(下の図)。

2009年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
2009年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
  1. 角 $\omega t$ を $y$ 軸から測って、位置の $x$ 成分・ $y$ 成分を求める(ア・イ)。
  2. 微小時間 $\Delta t$ のあいだの位置の変化に $\sin\theta=\theta$、 $\cos\theta=1$ を使い、時刻0 の速度を求める(ウ・エ)。
  3. 時刻0 の速度を時計回りに $\omega t$ 回して、時刻 $t$ の速度の成分を求める(オ・カ)。
  4. 速度の変化に同じ近似を使って時刻0 の加速度を求め(キ・ク)、これを時計回りに $\omega t$ 回して、時刻 $t$ の加速度の成分を求める(ケ・コ)。

【問2の方針】

着眼点

単振動は等速円運動の射影。波が $+x$ 向きなら左の物体ほど位相が進み、ずれは $\lambda\leftrightarrow2\pi$ の比。合力は $1-\cos$ の形で、 $\cos=1$ と置くと0になる(下の図)。

2009年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
2009年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
  1. $u_P=r\sin\omega t$ から、 $P$ 番目の加速度を求める。問1 のケと同じ形になる(ス)。
  2. $P\pm1$ 番目の位相のずれを $\lambda\leftrightarrow2\pi$ の比で求め、進み・遅れの向きは波の進む向きで決める。 $+x$ 向きに進む波なので、左の $P-1$ 番目は位相が進み、 $P+1$ 番目は遅れる(サ・シ)。
  3. 左右のばねの伸びを、隣との変位の差で書き、合力を求める。ばねの力は隣との変位の差で決まるので、合力は $u_{P+1}$、 $u_{P-1}$、 $u_P$ だけで書ける。
  4. 加法定理で $u_{P+1}+u_{P-1}$ を $\sin\omega t$ に比例する形にまとめる。合力は $1-\cos$ の形で現れる。
  5. ここで $\cos=1$ と置くと合力が0になって何も決まらない。 $1-\cos\phi$ を $\sin$ の2乗に直してから、位相のずれが小さいことを使って近似し、セを求める。
  6. 運動方程式「質量×加速度=合力」に、スとセを入れて、 $\omega^2$ を求める(ソ)。

解答

2009年九州大学物理 第3問 解答・解説
2009年九州大学物理 第3問 解答・解説
2009年九州大学物理 第3問 解答・解説(続き)
2009年九州大学物理 第3問 解答・解説(続き)
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空欄ア・イ

物体は時計回りに回るので、時刻 $t$ には、はじめの位置 $(0,\ r)$ から角 $\omega t$ だけ $x$ が増える向きに回っている。角 $\omega t$ は $y$ 軸から測られているので、位置の $x$ 成分は半径 $r$ の $\sin$ 倍、 $y$ 成分は $\cos$ 倍。

答(ア) $r\sin\omega t$(2点)

答(イ) $r\cos\omega t$(2点)

空欄ウ・エ

時刻0 から $\Delta t$ までの位置の変化は

$$\vec{r}(\Delta t)-\vec{r}(0)=\bigl(r\sin\omega\Delta t,\ r\cos\omega\Delta t-r\bigr)$$

$\omega\Delta t$ が十分小さいので $\sin\omega\Delta t=\omega\Delta t$、 $\cos\omega\Delta t=1$ とすると、 $(r\omega\Delta t,\ 0)$。これが $\vec{v}(0)\Delta t$ に等しい。時計回りに出発するので、はじめは $+x$ 向きに動く。

答(ウ) $r\omega$(2点)

答(エ) $0$(2点)

空欄オ・カ

$\vec{v}(t)$ は $\vec{v}(0)$ を時計回りに $\omega t$ 回したもの。大きさは $r\omega$ のまま、向きは $x$ 軸から下向きに角 $\omega t$(下の図の左)。位置 $(r\sin\omega t,\ r\cos\omega t)$ と速度は直交するので、$\sin$ と $\cos$ が入れかわり、下向きの成分には負の符号がつく。

答(オ) $r\omega\cos\omega t$(2点)

答(カ) $-r\omega\sin\omega t$(2点)

空欄キ・ク

時刻0 から $\Delta t$ までの速度の変化は、ウ・エと同じ近似で

$$\vec{v}(\Delta t)-\vec{v}(0)=\bigl(r\omega\cos\omega\Delta t-r\omega,\ -r\omega\sin\omega\Delta t\bigr)=\bigl(0,\ -r\omega^2\Delta t\bigr)$$

これが $\vec{a}(0)\Delta t$ に等しい。時刻0 の物体は円の一番上にいるので、加速度は中心向き(真下)で、大きさは $r\omega^2$。

答(キ) $0$(2点)

答(ク) $-r\omega^2$(2点)

空欄ケ・コ

$\vec{a}(t)$ は $\vec{a}(0)$ を時計回りに $\omega t$ 回したもの(上の図の右)。真下から時計回りに回すと、 $x$ 成分は負、 $y$ 成分も負。

答(ケ) $-r\omega^2\sin\omega t$(2点)

答(コ) $-r\omega^2\cos\omega t$(2点)

(確かめ: $\vec{a}(t)=-\omega^2\,\vec{r}(t)$ になっている。加速度は常に中心向きで、大きさは $r\omega^2$)

空欄サ・シ

各物体は、等速円運動の回転角が $\omega t$ の $P$ 番目と同じ角速度で回っていて、回転角だけがずれる。波は $+x$ 向きに進むので、左の $P-1$ 番目に波が先に来る。 $P-1$ 番目は $P$ 番目より先に同じ動きをしているので、回転角は進み、 $P+1$ 番目は遅れる。ずれの大きさは、間隔 $d$ が波長 $\lambda$(回転角 $2\pi$ に対応)の何分の1かで決まる。

$$d:\lambda=\Delta\phi:2\pi\qquad\therefore\ \Delta\phi=\dfrac{2\pi d}{\lambda}$$

答(サ) $\omega t+\dfrac{2\pi d}{\lambda}$(3点)

答(シ) $\omega t-\dfrac{2\pi d}{\lambda}$(2点)

(確かめ:波が $v=\dfrac{\lambda}{T}$ で進むとき、 $P-1$ 番目の動きは $P$ 番目より $\dfrac dv=\dfrac{dT}{\lambda}$ だけ先なので、回転角は $\omega\cdot\dfrac{dT}{\lambda}=\dfrac{2\pi d}{\lambda}$ だけ進む)

空欄ス

$P$ 番目の単振動は $u_P=r\sin\omega t$。これは問1 の $x(t)$ と同じ形なので、加速度は問1 のケと同じ。

答(ス) $-r\omega^2\sin\omega t$(5点)

空欄セ・ソ

$P$ 番目の物体が受ける力は、両隣のばねの力だけ。右のばねは $u_{P+1}-u_P$ だけ伸び、右向きに $k(u_{P+1}-u_P)$ の力。左のばねは $u_P-u_{P-1}$ だけ伸び、左向きに $k(u_P-u_{P-1})$ の力(下の図)。右向きを正とした合力は

$$F=k(u_{P+1}-u_P)-k(u_P-u_{P-1})=k(u_{P+1}+u_{P-1}-2u_P)$$

位相のずれを $\phi=\dfrac{2\pi d}{\lambda}$ とおくと、サ・シより $u_{P-1}=r\sin(\omega t+\phi)$、 $u_{P+1}=r\sin(\omega t-\phi)$。与えられた加法定理で

$$u_{P+1}+u_{P-1}=r\bigl\{\sin(\omega t-\phi)+\sin(\omega t+\phi)\bigr\}=2r\sin\omega t\cos\phi$$

$$F=k\cdot2r\sin\omega t\cos\phi-2kr\sin\omega t=-2k(1-\cos\phi)\,r\sin\omega t$$

ここまでは近似を使っていない。 $\lambda\gg d$ なので $\phi$ は小さいが、$\cos\phi=1$ と置くと $F=0$ になってしまう。そこで $1-\cos\phi$ を、 $\cos\phi=\cos\dfrac\phi2\cos\dfrac\phi2-\sin\dfrac\phi2\sin\dfrac\phi2$ と $\sin^2+\cos^2=1$ から

$$1-\cos\phi=2\sin^2\dfrac\phi2$$

に直してから、小さい角 $\dfrac\phi2$ に $\sin\theta=\theta$ を使う。

$$1-\cos\phi\fallingdotseq2\left(\dfrac\phi2\right)^2=\dfrac{\phi^2}{2}\qquad\therefore\ F\fallingdotseq-k\phi^2\,r\sin\omega t=-k\left(\dfrac{2\pi d}{\lambda}\right)^2r\sin\omega t$$

答(セ) $-\dfrac{4\pi^2kd^2}{\lambda^2}$(5点)

(近似する前の形 $-2k\left(1-\cos\dfrac{2\pi d}{\lambda}\right)$ も式として正しく、値は $\lambda\gg d$ で一致する。近似した形の方が、次の ソ で $\omega$ と $\lambda$ の関係が見えやすい)

運動方程式「質量×加速度=合力」に、スとセを入れる。

$$m\cdot(-r\omega^2\sin\omega t)=-\dfrac{4\pi^2kd^2}{\lambda^2}\,r\sin\omega t\qquad\therefore\ \omega^2=\dfrac{4\pi^2kd^2}{m\lambda^2}$$

答(ソ) $\dfrac{4\pi^2kd^2}{m\lambda^2}$(5点)

(近似する前の形なら $\omega^2=\dfrac{2k}{m}\left(1-\cos\dfrac{2\pi d}{\lambda}\right)$。 $\omega=\dfrac{2\pi d}{\lambda}\sqrt{\dfrac km}$ なので、波の速さは $\dfrac{\omega\lambda}{2\pi}=d\sqrt{\dfrac km}$ で、波長 $\lambda$ によらない)

別解

問1 空欄ア〜コ (微分) 位置 $x=r\sin\omega t$、 $y=r\cos\omega t$ を時間で微分すると、速度は $(r\omega\cos\omega t,\ -r\omega\sin\omega t)$、さらに微分すると加速度は $(-r\omega^2\sin\omega t,\ -r\omega^2\cos\omega t)$。時刻0 の値は $t=0$ を入れて、ウ $r\omega$、エ $0$、キ $0$、ク $-r\omega^2$。本解と同じ結果になる。ただし微分は数学Ⅲの内容なので、本解は問題文の誘導どおり回転で書いた。微分は検算に使える。

問2 空欄サ・シ (波の式) $P$ 番目の位置を $x_P$ とすると、位置 $x$ の物体の変位は $u(x,\ t)=r\sin\left\{\omega t-\dfrac{2\pi(x-x_P)}{\lambda}\right\}$( $+x$ 向きに進む波)。 $x=x_P\mp d$ を入れると、 $P-1$ 番目は $\omega t+\dfrac{2\pi d}{\lambda}$、 $P+1$ 番目は $\omega t-\dfrac{2\pi d}{\lambda}$ で、本解と一致する。

出題意図

問1 時計回りの等速円運動の位置・速度・加速度を、円の回転(角 $\omega t$)と成分の分解から求められるか

問2 サ〜ス 波が $+x$ 向きに進むことから、隣の物体の位相のずれの符号をつかみ、単振動の加速度に結べるか

問2 セ・ソ 両隣のばねの合力を加法定理でまとめ、 $\lambda\gg d$ の近似を失敗せずに $\omega$ と $\lambda$ の関係まで求められるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや難
目標得点25点20点
目標時間20分25分

この年の合否を分けた大問。
前半(問1)は円運動の基本的な証明なので素早く取り、サ・シのあたりからの後半が勝負になる。
ばねでつながった物体の列は初見の設定だが、「単振動=等速円運動の射影」「位相のずれ=距離の比で求める」「両隣のばねの合力は変位の差」の3つを順に使うだけ。
近似で $\cos=1$ と置くと合力が0になるので、小さな量の差は残して近似することだけ気をつけたい。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問2 セ・ソ:「 $\cos\phi=1$ とすると合力が0になる」ことに気づき、「 $1-\cos\phi$ 」を $2\sin^2\dfrac\phi2$ に直してから近似する、という発想に行き着けるか。ここを越えないと、セもソもまとめて落ちる。
  • 問2 サ・シ:波が $+x$ 向きに進むとき、左の物体の位相が進むと決められるか。符号を逆にしても、セの加法定理の和は同じ形になるので、セ・ソは救われるが、サ・シの2点は落ちる。

2009年九州大学・物理の
講評とまとめ

3問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。

大問難易度医学部医学科その他の学部
第1問標準40点30点
第2問標準35点30点
第3問やや難25点20点
全体標準100点75点

大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で100点、その他の学部で75点)にはなりません。

3題とも後半が難しく、第3問に初見の設定が入る標準的な年でした。

この年の合否を分けたのは第3問で、前半は円運動の基本的な証明なので素早く取り、サ・シのあたりからの後半で差がつきました。

第1問は等速になる条件( $\tan\theta=\mu’$ )を見抜き、追いつきを v-t グラフの面積で考えれば迷いません。

第2問は電気量が一定なら極板間の引力が一定になることに気づけば、ばね振り子に重力が加わったのと同じ単振動として解けます。

第3問の後半は、円運動の射影と、位相のずれを波長との比で出す波の基本の組み合わせですが、ばねでつながる物体の列という設定は問題集にありません。

セ・ソは近似の順番を誤ると合力が0になるので、近似は「差をとってから」行います。

後半まで取りに行くなら、名問の森や重要問題集のレベルではなく、標準問題精講のような初見性の高い問題での練習が要ります。

解く流れ

第1問 → 第2問 → 第3問。

2009年九州大学・物理に
関するよくある質問

2009年の九州大学・物理について、よく聞かれる質問にお答えします。

2009年の九州大学・物理は難しかった?

標準の年でした。
第1問・第2問は標準、第3問はやや難です。
第1問は計算が面倒で後半が難しく、第2問は後半が難しいうえに単振動も絡みます。
第3問は初見の設定が入り、この年の合否を分けた大問でした。

2009年の九州大学・物理は何点取れば合格できる?

目標点は、医学部医学科で100点、その他の学部で75点です(125点満点)。

2009年の九州大学・物理はどこで差がつく?

この年の合否を分けたのは第3問で、差がついたのは次の3つでした。

  • 第3問 問2 セ・ソ:$\cos\phi=1$ と置くと合力が0になることに気づき、 $1-\cos\phi$ を $2\sin^2\dfrac{\phi}{2}$ に直してから近似できたか。
  • 第2問 問2 (2):電池を切り離すと電気量 $Q$ が一定になることから、外力の仕事=静電エネルギーの増加で極板間の引力を求められたか。
  • 第1問 問2 (3):$\tan\theta=\mu’$ に気づき、動摩擦力が重力の斜面成分と同じ大きさで、D は等速になると捉えられたか。
2009年の九州大学・物理は何が出題された?

大問ごとの単元は、次のとおりです。

  • 第1問:力学
  • 第2問:電磁気
  • 第3問:力学・波動

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