【解説・配点付き】2012年九州大学物理の解答・解説
2012年の九州大学・物理の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2012年九州大学物理
第1問 解答・解説
この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は力学の問題です。
テーマは「斜面のばね振り子(つり合いの位置を中心とする単振動・なめらかな面からあらい面へのすべり)と、床ではね返りを繰り返す放物運動(はね返るたびに鉛直の速さが $e$ 倍・等比数列の和・失うエネルギー)」。
問題


問題文をテキストで読む
以下の問いに答えよ。
問1. 図1(a)に示すように水平面となす角 $\theta$ の斜面OPQRがある。バネ定数が $k$ で質量の無視できるバネを斜面の上端Oからつるしたところ、バネの下端(自然長の位置)はPであった。PからQ、およびQからRまでの距離はいずれも $\ell$ である。以下では、大きさが無視できる質量 $m$ の小物体の斜面上での運動について考える。重力加速度を $g$ とし、空気抵抗は無視する。斜面のOQ間は摩擦のないなめらかな面であるが、QR間はあらい面であり、小物体に対する動摩擦係数は $\mu$ である。
(1) 小物体をバネの下端に取り付けたところ、バネが $d_1$ だけ伸びて静止した(図1(a))。 $d_1$ を $m$、 $g$、 $\theta$、 $k$ から必要なものを用いて表せ。
(2) 次に小物体をPの位置まで押し上げて静かに手を離したところ、バネに取り付けられた小物体は振動した。振動の振幅 $A$、周期 $T$、および小物体の速さの最大値 $v_{\max}$ を $m$、 $g$、 $\theta$、 $k$ から必要なものを用いて表せ。
(3) その後、小物体はPの位置でバネから離れて、斜面をすべり落ちた。小物体がQを通過する時の速さ $v_{\mathrm{Q}}$ を $m$、 $g$、 $\theta$、 $\ell$、 $k$ から必要なものを用いて表せ。
(4) 小物体はQを通過後、摩擦力を受けて減速し、Qから距離 $d_2$ の斜面上で止まった。Qを通過して減速中の小物体の加速度の大きさ $a$、Qを通過して止まるまでの時間 $t$、および距離 $d_2$ を、 $m$、 $g$、 $\theta$、 $\ell$、 $k$、 $\mu$ から必要なものを用いて表せ。
(5) 次に図1(b)のように小物体をバネに押し当て、バネを自然長の位置Pより $d_3$ だけ縮め、その位置で静かに手を離した。小物体はPでバネから離れて斜面をすべり続け、Rを通過した。Rでの小物体の速さ $v_{\mathrm{R}}$ を $m$、 $g$、 $\theta$、 $\ell$、 $k$、 $\mu$、 $d_3$ から必要なものを用いて表せ。
問2. 図1(c)に示すように、水平面内に $x$ 軸、鉛直上方に $y$ 軸をとり、大きさが無視できる質量 $m$ の小物体を、時刻 $t=0$ に原点から角度 $\alpha$、速さ $v_0$ で投げ上げた。小物体は $xy$ 平面内で放物線を描いて落下し、水平面との衝突をくり返し、最後は水平面上をすべりだした。水平面はなめらかであり、小物体と水平面の反発係数は $e\,(0<e<1)$ である。空気抵抗は無視する。重力加速度を $g$ とする。
$n$ 回目の衝突直後の小物体の速さを $v_n$、速度の $x$、 $y$ 成分を $v_{nx}$、 $v_{ny}$ とする。 $n$ 回目の衝突の時刻を $t_n$、衝突位置の $x$ 座標を $x_n$ とする。さらに、 $(n-1)$ 回目の衝突から $n$ 回目の衝突までにかかる時間を $\Delta t_n=t_n-t_{n-1}$、その時間に進む距離を $\Delta x_n=x_n-x_{n-1}$ とする。ただし $t_0=0$、 $x_0=0$ とする。 $t_n=\Delta t_1+\Delta t_2+\Delta t_3+\cdots+\Delta t_n$、および $x_n=\Delta x_1+\Delta x_2+\Delta x_3+\cdots+\Delta x_n$ の関係がある。
(1) 最初の衝突直後の速度成分 $v_{1x}$、 $v_{1y}$ および次の衝突直後の速度成分 $v_{2x}$、 $v_{2y}$ を $m$、 $\alpha$、 $v_0$、 $e$、 $g$ から必要なものを用いて表せ。
(2) $n$ 回目の衝突直後の速度成分 $v_{nx}$、 $v_{ny}$ を $m$、 $\alpha$、 $v_0$、 $e$、 $n$、 $g$ から必要なものを用いて表せ。
(3) $\Delta t_n$ を $m$、 $\alpha$、 $v_0$、 $e$、 $n$、 $g$ から必要なものを用いて表せ。
(4) $x_n$ を $m$、 $\alpha$、 $v_0$、 $e$、 $n$、 $g$ から必要なものを用いて表せ。ただし、 $1+e^1+e^2+e^3+\cdots+e^n=(1-e^{n+1})/(1-e)$ の関係式を使ってよい。
(5) $n$ が非常に大きくなると $e^n$ は0(ゼロ)に等しくなり、 $v_{ny}$ も0(ゼロ)に等しくなって小物体は水平面上をすべりだす。すべりだした時の $x_n$ の値 $x_{\mathrm{f}}$ を $m$、 $\alpha$、 $v_0$、 $e$、 $g$ から必要なものを用いて表せ。
(6) $n$ 回目の衝突で小物体が失うエネルギー $q_n$ を $m$、 $v_{(n-1)x}$、 $v_{nx}$、 $v_{(n-1)y}$、 $v_{ny}$ から必要なものを用いて表せ。
(7) $n$ 回の衝突で小物体が失うエネルギーを $Q_n=q_1+q_2+q_3+\cdots+q_n$ とする。 $n$ が非常に大きい時の $Q_n$ の値 $Q_{\mathrm{f}}$ を $m$、 $\alpha$、 $v_0$ を用いて表せ。ただし、 $n$ が非常に大きい時は $e^n$ は0(ゼロ)に等しいとして答えよ。
解答の方針
【問1の方針】
斜面でも振動の中心はつり合いの位置、単振動定数は $k$ のまま。P で静かに離したので P は振動の端で、速さ0ですべり出す。(4)(5) は摩擦のある区間(QR 間だけ)を読み分ける(下の図)。


- ばねの力と重力の斜面方向の成分のつり合いから $d_1$ を求める((1))。
- つり合いの位置が中心、P が端なので振幅は $d_1$。周期は質量と $k$ だけで決まり、最大の速さは中心でのエネルギー保存から求める((2))。
- P から Q までは、なめらかな斜面を速さ0からすべる。力学的エネルギー保存で $v_{\mathrm Q}$ を求める((3))。
- QR 間の運動方程式から減速の加速度の大きさ $a$ を求め、 $t=\dfrac{v_{\mathrm Q}}{a}$。止まるまでの距離 $d_2$ は、 $W=\Delta E$ で求める((4))。
- 手を離した位置から R までに、ばねの弾性エネルギーと重力の位置エネルギーが減り、QR 間の摩擦の仕事だけが負の仕事をする。 $W=\Delta E$ を1本立てる((5))。
【問2の方針】
まず運動を想像する。なめらかな床では水平方向の速さは変わらず、鉛直方向の速さだけが $e$ 倍になる。山の高さは $e^2$ 倍、山の幅は $e$ 倍で、山の幅は公比 $e$ の等比数列(下の図)。


- 衝突の前後で水平成分はそのまま、鉛直成分は大きさを $e$ 倍にして向きを逆にする。最初と次の衝突直後の速度成分を書く((1))。
- (1) の規則を $n$ 回目に広げる((2))。
- $n$ 回目の山の滞空時間は、 $(n-1)$ 回目の衝突直後に上向きに出る鉛直の速さで決まる((3))。
- $\Delta x_n=v_0\cos\alpha\cdot\Delta t_n$ を $n$ まで足して、等比数列の和にする。問題文の公式の番号をずらして使う((4))。
- $n\to\infty$ で $e^n\to0$ とする((5))。
- 衝突の直前の速さは、直前の衝突の直後と同じ。水平成分は変わらないので、鉛直成分だけが残る((6))。
- (6) を $n$ まで足すと途中が消える。 $n\to\infty$ とする((7))。
解答




解答をテキストで読む
問1 (1)
つり合いの位置では、ばねの力(斜面上向き)と重力の斜面方向の成分(斜面下向き)がつり合う。ばねは $d_1$ だけ伸びている。
$$kd_1=mg\sin\theta$$
答 $d_1=\dfrac{mg\sin\theta}{k}$(4点)
問1 (2)
つり合いの位置が振動の中心で、P からの距離は $d_1$。小物体は P で静かに離したので、P は振動の端(速さ0)。端から中心までの距離が振幅なので $A=d_1$。最下点は P から $2d_1$ の位置になる(下の図)。
答 $A=\dfrac{mg\sin\theta}{k}$(2点)
斜面でも単振動定数は $k$ のままなので、周期は $m$ と $k$ だけで決まる($\theta$ は入らない)。
答 $T=2\pi\sqrt{\dfrac mk}$(2点)
最大の速さは中心を通るとき。単振動のエネルギー保存(重力の位置エネルギーは入れない)を、端と中心で書く。
$$\frac12m{v_{\max}}^2=\frac12kA^2\qquad\therefore\ v_{\max}=A\sqrt{\frac km}$$
答 $v_{\max}=g\sin\theta\sqrt{\dfrac mk}$(2点)
問1 (3)
小物体は P(振動の端)で速さ0のままばねから離れ、なめらかな斜面を P から Q まで距離 $\ell$ だけすべる。P を位置エネルギーの基準にして、力学的エネルギー保存を書く。ばねはもう関係しないので、 $k$ は答えに入らない。小物体の質量 $m$ も約分で消える。
$$0=\frac12m{v_{\mathrm Q}}^2-mg\ell\sin\theta$$
答 $v_{\mathrm Q}=\sqrt{2g\ell\sin\theta}$(2点)
問1 (4)
QR 間(下の図)では、斜面に垂直な方向の力のつり合いから $N=mg\cos\theta$、動摩擦力は斜面上向きに $\mu mg\cos\theta$。斜面下向きを正として運動方程式を立てる。
$$ma’=mg\sin\theta-\mu mg\cos\theta$$
$a’$ は負(減速)なので、減速の加速度の大きさは $a=-a’$。
答 $a=g(\mu\cos\theta-\sin\theta)$(2点)
速さが $v_{\mathrm Q}$ から0になるまでの時間は $t=\dfrac{v_{\mathrm Q}}{a}$。
答 $t=\dfrac{1}{\mu\cos\theta-\sin\theta}\sqrt{\dfrac{2\ell\sin\theta}{g}}$(2点)
止まるまでの距離は、Q から止まる位置までの運動に $W=\Delta E$(摩擦の仕事=エネルギーの変化)を使う。Q の位置を位置エネルギーの基準にする。摩擦の仕事は $-\mu mg\cos\theta\cdot d_2$。
$$-\mu mg\cos\theta\cdot d_2=\bigl(-mgd_2\sin\theta\bigr)-\frac12m{v_{\mathrm Q}}^2$$
$$d_2\,g(\mu\cos\theta-\sin\theta)=\frac12{v_{\mathrm Q}}^2=g\ell\sin\theta$$
答 $d_2=\dfrac{\ell\sin\theta}{\mu\cos\theta-\sin\theta}$(2点)
(減速して止まるので $\mu\cos\theta>\sin\theta$ が前提)
問1 (5)
手を離した位置(P から $d_3$ 上、速さ0)から R までに、次の3つがエネルギーを変える。
・ばねの弾性エネルギー $\dfrac12k{d_3}^2$ が、P(自然長)で0になる。
・重力の位置エネルギーは、手を離した位置から R まで、斜面に沿って $d_3+2\ell$ の分だけ減る。
・摩擦がはたらくのは QR 間だけなので、摩擦の仕事は $-\mu mg\cos\theta\cdot\ell$。
手を離した位置を位置エネルギーの基準にして、 $W=\Delta E$(摩擦の仕事=後のエネルギー−前のエネルギー)を書く。
$$-\mu mg\ell\cos\theta=\left\{\frac12m{v_{\mathrm R}}^2-mg(d_3+2\ell)\sin\theta\right\}-\frac12k{d_3}^2$$
$$\frac12m{v_{\mathrm R}}^2=\frac12k{d_3}^2+mg(d_3+2\ell)\sin\theta-\mu mg\ell\cos\theta$$
答 ${\small v_{\mathrm R}=\sqrt{\dfrac{k{d_3}^2}{m}+2g\{(d_3+2\ell)\sin\theta-\mu\ell\cos\theta\}}}$(3点)
問2 (1)
投げ上げた小物体は放物運動をして、同じ高さの床にもどる。放物運動は鉛直方向の運動が上がるときと下りるときで対称なので、最初の衝突の直前の鉛直の速さは投げ上げたときと同じ大きさ(下向きに $v_0\sin\alpha$)。なめらかな床なので、衝突で水平成分は変わらず、鉛直成分は大きさが $e$ 倍で逆向き(上向きが正)になる(下の図)。
答 $v_{1x}=v_0\cos\alpha$(1点)
答 $v_{1y}=ev_0\sin\alpha$(1点)
2回目の衝突の直前の鉛直の速さは、1回目の直後と同じ大きさ $ev_0\sin\alpha$(下向き)。これが $e$ 倍になって上向きになる。
答 $v_{2x}=v_0\cos\alpha$(1点)
答 $v_{2y}=e^2v_0\sin\alpha$(1点)
問2 (2)
衝突のたびに水平成分はそのまま、鉛直成分は $e$ 倍になる。(1) の規則を $n$ 回に広げる。
答 $v_{nx}=v_0\cos\alpha$(1点)
答 $v_{ny}=e^nv_0\sin\alpha$(1点)
問2 (3)
$(n-1)$ 回目の衝突直後に、鉛直上向きに $v_{(n-1)y}=e^{n-1}v_0\sin\alpha$ で上がる。上がって同じ高さにもどる時間は、鉛直方向の運動(初速 $v_{(n-1)y}$ の投げ上げ)で $\dfrac{2v_{(n-1)y}}{g}$。 $n=1$ のときは、投げ上げそのもの($v_{0y}=v_0\sin\alpha$)。
答 $\Delta t_n=\dfrac{2e^{n-1}v_0\sin\alpha}{g}$(3点)
問2 (4)
水平方向は速さ $v_0\cos\alpha$ の等速なので、 $n$ 回目の山の幅は
$$\Delta x_n=v_0\cos\alpha\cdot\Delta t_n=\frac{2{v_0}^2\sin\alpha\cos\alpha}{g}\,e^{n-1}$$
公比 $e$ の等比数列(下の図)。
$x_n=\Delta x_1+\cdots+\Delta x_n$ は、 $1+e+\cdots+e^{n-1}$ の和をとる形。問題文の公式 $1+e+\cdots+e^n=\dfrac{1-e^{n+1}}{1-e}$ は最後が $e^n$ なので、$n$ を $n-1$ に置きかえて使う。
$$x_n=\frac{2{v_0}^2\sin\alpha\cos\alpha}{g}\cdot\frac{1-e^n}{1-e}$$
答 $x_n=\dfrac{2{v_0}^2\sin\alpha\cos\alpha}{g}\cdot\dfrac{1-e^n}{1-e}$(5点)
問2 (5)
$n$ が非常に大きいとき $e^n=0$ とする。
答 $x_{\mathrm f}=\dfrac{2{v_0}^2\sin\alpha\cos\alpha}{g(1-e)}$(3点)
問2 (6)
衝突で失うエネルギーは、衝突の直前と直後の運動エネルギーの差。 $(n-1)$ 回目の衝突直後から $n$ 回目の衝突直前までは重力だけがはたらく放物運動で、同じ高さにもどるので、直前の速さは $(n-1)$ 回目の直後と同じ。だから
$$q_n=\frac12m\bigl({v_{(n-1)x}}^2+{v_{(n-1)y}}^2\bigr)-\frac12m\bigl({v_{nx}}^2+{v_{ny}}^2\bigr)$$
水平成分は変わらない($v_{(n-1)x}=v_{nx}$)ので消える。
答 $q_n=\dfrac12m\left({v_{(n-1)y}}^2-{v_{ny}}^2\right)$(3点)
問2 (7)
(6) を $n=1$ から $n$ まで足すと、隣どうしの項が打ち消し合う。 $v_{0y}=v_0\sin\alpha$ として
$$Q_n=\frac12m\left({v_{0y}}^2-{v_{1y}}^2\right)+\frac12m\left({v_{1y}}^2-{v_{2y}}^2\right)+\cdots=\frac12m\left\{(v_0\sin\alpha)^2-(e^nv_0\sin\alpha)^2\right\}$$
$n$ が非常に大きいとき $e^n=0$。最後は水平方向の速さ $v_0\cos\alpha$ だけで床をすべるので、失ったのは、初めの鉛直成分の運動エネルギーのすべて(下の図)。 $e$ と $g$ は答えに入らない。
答 $Q_{\mathrm f}=\dfrac12m{v_0}^2\sin^2\alpha$(4点)
別解
問1 (4) $d_2$ (等加速度運動の式で) 減速の加速度の大きさ $a$ が分かっているので、 $0-{v_{\mathrm Q}}^2=-2ad_2$ から $d_2=\dfrac{{v_{\mathrm Q}}^2}{2a}=\dfrac{\ell\sin\theta}{\mu\cos\theta-\sin\theta}$。同じ答え。本解は、斜面と摩擦の問題で時間を聞かれていないときにそのまま使える $W=\Delta E$ にした。
問2 (5) (時間の和から) (4) を使わなくても、水平方向は等速なので $x_{\mathrm f}=v_0\cos\alpha\cdot(\Delta t_1+\Delta t_2+\cdots)$。(3) の $\Delta t_n$ を足すと $1+e+e^2+\cdots=\dfrac{1}{1-e}$ から、同じ $\dfrac{2{v_0}^2\sin\alpha\cos\alpha}{g(1-e)}$。
問2 (7) (初めと最後のエネルギーの差で) 最後は水平方向の速さ $v_0\cos\alpha$ だけが残るので
$$Q_{\mathrm f}=\frac12m{v_0}^2-\frac12m(v_0\cos\alpha)^2=\frac12m{v_0}^2\sin^2\alpha$$
和を計算せずに求める速い道。本解は、(6) の誘導どおりに和をとる形にした。
出題意図
問1 (1)〜(3) 斜面のばね振り子を、つり合いの位置を中心とする単振動と捉え、離した位置が端であることから振幅・周期・速さを求めることができるか
問1 (4)(5) なめらかな面とあらい面をまたぐ運動を、運動方程式と仕事とエネルギーの関係で使い分けて求めることができるか
問2 (1)〜(3) はね返りを繰り返す運動を想像し、水平成分は変わらず鉛直成分だけが $e$ 倍になることから、各回の速度と時間を求めることができるか
問2 (4)〜(7) 時間・距離・失うエネルギーを等比数列の和に帰着させ、和をとって(途中が消える形で)求めることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや難 | |
| 目標得点 | 35点 | 25点 |
| 目標時間 | 25分 | 30分 |
この年の合否を分けた大問。
1つの大問に斜面のばね振り子とはね返りの放物運動という別々の問題が2つ入っていて、時間内にはまず終わらない。
どちらも九大力学の標準的な型なので、問1 と問2 を別の問題と割り切り、25分でさばく練習をしておこう。
決め手は、はね返りの軌道を想像できるか。
山の高さが $e^2$ 倍、幅が $e$ 倍と読めれば、あとは等比数列の和。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2 (1)(2):ここを越えないと問2 の全部が続かない小問。はね返りの軌道を想像して、水平成分は不変・鉛直成分は大きさが $e$ 倍で逆向き、と整理できるか。この見方ができれば、(3) 以降は等比数列の計算になる。
- 問2 (4):和が $1+e+\cdots+e^{n-1}$ までなのに、問題文の公式は $e^n$ まで。番号を1つずらして使う発想に行き着けるか(物理よりも式の処理で差がつく)。
- 問1 (5):重力の位置エネルギーが減る距離は $d_3+2\ell$、摩擦がはたらく距離は QR 間の $\ell$ だけと読み分けられるか。
コラム 無限回はね返っても、止まるまでの時間は有限
問2 の小物体は、理論上は無限回はね返る。それでも、床の上をすべり出すまでの時間は有限になる。山の滞空時間 $\Delta t_n$ が公比 $e$ の等比数列だから。


- 時間の和:$\Delta t_1+\Delta t_2+\cdots=\dfrac{2v_0\sin\alpha}{g}(1+e+e^2+\cdots)=\dfrac{2v_0\sin\alpha}{g(1-e)}$。これが、すべり出すまでの時間。
- 距離の和:水平方向は等速なので、これに $v_0\cos\alpha$ をかけたものが問2 (5) の $x_{\mathrm f}$。
- 数値の例:$v_0=7\ \mathrm{m/s}$、 $\alpha=50^\circ$、 $e=0.6$、 $g=9.8\ \mathrm{m/s^2}$ では、時間 $2.74\ \mathrm{s}$、距離 $12.3\ \mathrm m$。
「回数は無限でも、足した結果は有限になる」のは、毎回の量が等比数列で小さくなっているから。問2 (4)(5)(7) は、どれもこの見方でつながっている。
2012年九州大学物理
第2問 解答・解説
第2問は電磁気の問題です。
テーマは「磁場の中の導体棒の中で何が起きているか(電流とローレンツ力・誘導起電力の導出)を確かめたうえで、コンデンサーとコイルをつないだ鉛直レールを落ちる棒の運動を調べる。コンデンサーの電流は加速度に、コイルの電流は位置に比例するので、運動方程式が単振動の形になる」。
問題


問題文をテキストで読む
以下の問いに答えよ。
問1. 磁束密度 $B$ の一様な磁場がある。
(1) 図2(a)のように、磁場に垂直に固定した長さ $\ell$ の導体棒に電流 $I$ を流す。この電流は、導体中に平均的には一様に存在する荷電粒子の運動によって生じる。導体棒中での荷電粒子の電荷を $q$、電流方向の平均の速さを $v$、総数を $N$ として、 $I$ を $N$、 $q$、 $v$、 $\ell$ を用いて表せ。また、各荷電粒子に働くローレンツ力の大きさを $f$ とすると、導体棒が磁場から受ける力の大きさ $F$ は $F=Nf$ である。 $F$ を $I$ とその他必要なものを用いて表せ。
(2) 図2(b)のように、長さ $\ell$ の導体棒を、導体棒の軸と磁場の両方に対して垂直な方向に速さ $v$ で動かす。このとき、導体棒中の荷電粒子はローレンツ力により移動し、導体棒の両端に反対符号の電荷が現れる。これによって導体棒の軸方向に電場が生じ、この電場による力と磁場による力がつり合ったところで荷電粒子の移動が止まる。このときの導体中の電場の強さ $E$ を求めよ。また、導体棒の両端間に発生する電位差(誘導起電力)の大きさ $V$ を求めよ。
問2. 図2(c)のように、電荷の蓄えられていない静電容量 $C$ のコンデンサーと、インダクタンス $L$ のコイルを上下に付けた長方形の回路pqrsを、十分長い辺pqが鉛直に、他の辺psが水平になるように固定した。この回路に、辺psと同じ長さ $\ell$ で質量 $M$ の導体棒XYを接触させた。ここで、導体棒は水平を保ったまま、両方の長辺と接触しながらなめらかに動き、接触点での電気抵抗は無視できるものとする。なお、回路全体には、面pqrsと垂直に紙面の表から裏へ向って、一定で一様な磁束密度 $B$ の磁場が加えられている。
導体棒をこの回路上で静止させ、時刻 $t=0$ で静かに離すと、導体棒は下方に運動を始めた。 $t=0$ での辺pq上のXの位置を原点として、鉛直下向きに $x$ 軸を取り、時刻 $t\,(t>0)$ での、導体棒の座標を $x$、鉛直下向きの速度と加速度を $v$ と $a$、また、重力加速度を $g$ とする。ただし、 $t=0$ では回路や導体棒に電流は流れておらず、また、この回路から漏れる電場や磁場、回路と導体棒の電気抵抗、および空気抵抗は、すべて無視できるものとする。
(1) 導体棒が下方に運動を始めると、誘導起電力が発生し、導体棒に電流が流れ始める。この流れ始めるときの電流の向きについて、XからY、YからX、のどちらか正しい方を答えよ。
以下では、図2(c)にあるように、コンデンサーに流れる電流を $I’$、コイルに流れる電流を $I$ とする。ただし、 $I’$ と $I$ はそれぞれ図の矢印の向きを正とする。
(2) 導体棒とコンデンサーからなる閉じた経路(X→Y→s→p→X)について考える。
(a) 時刻 $t$ でのコンデンサーのs側の電極の電荷を $Q$ とするとき、 $Q$ を導体棒の速度 $v$ とその他必要なものを用いて表せ。
(b) 時刻 $t$ から微小な時間 $\Delta t$ の間に $Q$ と $v$ がそれぞれ $\Delta Q$、 $\Delta v$ だけ変化したとすると、電流 $I’$ は $I’=\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}$ であり、導体棒の加速度は $a=\dfrac{\Delta v}{\Delta t}$ である。 $I’$ を $a$ と $B$ およびその他必要なものを用いて表せ。
(3) 導体棒とコイルからなる閉じた経路(X→Y→r→q→X)について考える。時刻 $t$ から微小な時間 $\Delta t$ の間に $I$ と $x$ がそれぞれ $\Delta I$、 $\Delta x$ だけ変化したとする。導体棒の速度が $v=\dfrac{\Delta x}{\Delta t}$ であること、および、 $t=0$ では $I=0$、 $x=0$ であることを使って、 $I$ を $x$ とその他必要なものを用いて表せ。
(4) 導体棒に働くすべての力を考え、導体棒の運動方程式を $I’$ および $I$ とその他必要なものを用いて表せ。
(5) (4)で求めた運動方程式に(2)と(3)で求めた $I’$ と $I$ の結果を代入すると、導体棒は単振動をすることがわかる。その角振動数 $\omega$ と振動の中心の座標 $x_0$ を $M$、 $g$、 $B$、 $\ell$、 $C$、 $L$ の中から必要なものを用いて表せ。
(6) $I$ のとる最小値と最大値を $M$、 $g$、 $B$、 $\ell$、 $C$、 $L$ の中から必要なものを用いて表せ。
解答の方針
【問1の方針】
どちらも荷電粒子1個に注目すれば解ける、教科書の導出そのままの小問。棒が受ける力はローレンツ力の和、起電力は電場の力とつり合ったところで決まる(下の図)。


- 1秒間に断面を通る荷電粒子の数から電流 $I$ を求める。ローレンツ力 $f$ を $N$ 個ぶん足して、$I$ を使って書き直す((1))。
- 荷電粒子1個にはたらくローレンツ力と電場の力のつり合いから $E$ を求める。電場は一様なので、長さ $\ell$ をかけて $V$ を求める((2))。
【問2 (1)〜(4)の方針】
棒が動くと、棒は起電力 $vB\ell$ の電池になる。抵抗がないので、その起電力がそのままコンデンサーにもコイルにもかかり、棒を流れる電流は2つの経路の電流の和になる(下の図)。


- 棒が下へ動くとき、棒の中の正の電荷が受ける力の向きから、起電力の向きを決める((1))。
- 電流は電気量の時間変化なので、時間で変わる文字( $Q$ と $v$ )にだけ $\Delta$ を付ける。コンデンサーの電圧は $vB\ell$ なので $Q=CV$ から $Q$ を求め、$\Delta Q$ を $\Delta v$ で表して $I’=\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}$ を $a$ で表す((2))。
- 棒とコイルの閉回路で1周のキルヒホッフの法則を立てる。$v=\dfrac{\Delta x}{\Delta t}$ を使って $\Delta t$ を消し、$\Delta$ を外して $I$ と $x$ の関係を求める。積分定数は $t=0$ の値で決める((3))。
- 棒にはたらく力(重力・磁場からの力)を、$x$ 軸の向きに合わせて運動方程式にする((4))。
【問2 (5)(6)の方針】
$I’$ は $a$ に、$I$ は $x$ に比例するので、運動方程式は $ma=-K(x-x_0)$ の形になり、単振動と読める(下の図)。


放した位置は振動の端で、$I$ は $x$ に比例するので、棒の位置の範囲がそのまま電流の範囲になる(下の図)。


- (4) の運動方程式に (2)(3) の $I’$・$I$ を代入し、$a$ の項を左辺にまとめて、$-K(x-x_0)$ の形にする。質量・$K$・中心 $x_0$ を読み、$\omega=\sqrt{\dfrac{K}{m}}$ を求める((5))。
- $x=0$ で静かに放したので、$x=0$ が振動の端。中心 $x_0$ から端までの距離が振幅なので、$x$ の範囲は $0$ から $2x_0$ まで((6))。
- $I$ は $x$ に比例するので、$x$ の最小・最大を代入して電流の最小値・最大値を求める((6))。
解答




解答をテキストで読む
問1 (1)
1秒間に導体棒の断面を通る荷電粒子は、断面から長さ $v$ の範囲にいる粒子。長さ $\ell$ の中に $N$ 個いるので、その数は $N\cdot\dfrac v\ell$ 個。電流は、1秒間に断面を通る電気量なので
$$I=q\cdot\dfrac{Nv}{\ell}$$
答 $I=\dfrac{Nqv}{\ell}$(1点)
荷電粒子1個が受けるローレンツ力は、速度と磁場が垂直なので $f=qvB$。棒が受ける力は、この力が $N$ 個ぶん集まったもの。
$$F=Nf=NqvB=\dfrac{Nqv}{\ell}\cdot B\ell$$
答 $F=IB\ell$(2点)
(電流が磁場から受ける力 $IB\ell$ は、中の荷電粒子のローレンツ力の和、という意味。)
問1 (2)
棒を速さ $v$ で動かすと、棒の中の荷電粒子(正の電荷 $q$ とする)は棒と一緒に動くので、ローレンツ力 $qvB$ を棒の軸方向に受ける。荷電粒子が棒の一端に寄ると、棒の中に電場 $E$ ができ、荷電粒子は電場から逆向きに $qE$ の力を受ける(下の図)。この2つの力がつり合ったところで、移動が止まる。
$$qE=qvB$$
答 $E=vB$(1点)
棒の中の電場は一様なので、長さ $\ell$ の両端の電位差は「電場×距離」。
$$V=E\ell=vB\ell$$
答 $V=vB\ell$(2点)
(電荷が負でも、つり合いの式は同じ。$q$ が消えるので、電荷の種類や大きさに関係なく、棒の起電力は $vB\ell$。)
問2 (1)
棒は下向きに動き、磁場は紙面の表から裏。棒の中の正の電荷には、速度(下向き)と磁場(表から裏)から、右向き、つまり X から Y の向きに力がはたらく(下の図)。
正の電荷が Y 側に寄るので、Y が高電位。棒は Y 側を正極とする電池になり、棒の中の電流は X から Y へ向かう。
(確かめ:棒が下へ動くと、棒より上側の回路の面積が増え、裏向きの磁束が増える。レンツの法則で、表向きの磁束をつくる反時計回りの電流が流れる。棒の中では X から Y。)
答 XからY(3点)
問2 (2)(a)
棒は起電力 $vB\ell$ の電池。経路 X→Y→s→p→X には、棒とコンデンサーしかなく、抵抗もコイルも無い。棒の起電力がそのままコンデンサーにかかる(下の図)。
コンデンサーの電圧は $vB\ell$ なので、$Q=CV$ より
答 $Q=CvB\ell$(3点)
(Y 側が高電位なので、s 側の極板が正。)
問2 (2)(b)
電流は電気量の時間変化。$I’=\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}$ に (a) の $Q$ を入れる。時間で変わるのは $Q$ と $v$ だけ($C$・$B$・$\ell$ は定数)なので、$\Delta$ を付けるのはこの2つだけ。
$$\Delta Q=CB\ell\,\Delta v$$
$$I’=\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}=CB\ell\cdot\dfrac{\Delta v}{\Delta t}=CB\ell\,a$$
答 $I’=CB\ell a$(4点)
問2 (3)
経路 X→Y→r→q→X を1周する。棒は起電力 $vB\ell$ の電池。コイルには、電流が増えるのをじゃまする向きに $L\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ の電圧が生じる。抵抗は無いので、1周でキルヒホッフの法則を立てて
$$vB\ell-L\dfrac{\Delta I}{\Delta t}=0$$
$v=\dfrac{\Delta x}{\Delta t}$ を入れると $\Delta t$ が消える。
$$B\ell\,\Delta x=L\,\Delta I$$
時間で変わる文字に付けた $\Delta$ を外す(時間で積分する)と、積分定数 $D$ が出る。
$$LI=B\ell x+D$$
$t=0$ で $I=0$、$x=0$ なので $D=0$。
答 $I=\dfrac{B\ell x}{L}$(5点)
問2 (4)
棒を X から Y へ流れる電流は、コンデンサーの経路の電流 $I’$ とコイルの経路の電流 $I$ の和 $I’+I$((2)の図)。電流が磁場から受ける力は $(I’+I)B\ell$。向きは、電流(X→Y)と磁場(表から裏)から上向き(動きをさまたげる向き)。力は「重力→磁場から受ける力」の順に書く(下の図)。
鉛直下向き($x$ 軸の正の向き)を正として、運動方程式を立てる。
答 $Ma=Mg-(I’+I)B\ell$(4点)
問2 (5)
(4) に (2)(3) の $I’=CB\ell a$、$I=\dfrac{B\ell x}{L}$ を代入する。
$$Ma=Mg-CB^2\ell^2a-\dfrac{B^2\ell^2}{L}x$$
$a$ の項を左辺にまとめ、右辺を $-K(x-x_0)$ の形にする。
$$(M+CB^2\ell^2)\,a=-\dfrac{B^2\ell^2}{L}\left(x-\dfrac{MgL}{B^2\ell^2}\right)$$
$ma=-K(x-x_0)$ と見比べると、質量 $m=M+CB^2\ell^2$、$K=\dfrac{B^2\ell^2}{L}$、中心 $x_0=\dfrac{MgL}{B^2\ell^2}$。コンデンサーは質量を $CB^2\ell^2$ だけ重くし、コイルはばね定数 $\dfrac{B^2\ell^2}{L}$ のばねになった。中心はばねの力と重力のつり合いで決まるので、$C$ は入らない。角振動数は $\omega=\sqrt{\dfrac{K}{m}}$ より
答 $\omega=\dfrac{B\ell}{\sqrt{L(M+CB^2\ell^2)}}$(5点)
答 $x_0=\dfrac{MgL}{B^2\ell^2}$(5点)
問2 (6)
$t=0$ で棒は静止している($x=0$)。静かに放した位置は振動の端。中心は $x_0$ なので、反対の端は $2x_0$。棒の位置は $0\leqq x\leqq2x_0$ の範囲を行き来する(下の図)。
$I=\dfrac{B\ell}{L}x$ は $x$ に比例するので、$x=0$ で最小、$x=2x_0$ で最大。
$$I_{\max}=\dfrac{B\ell}{L}\cdot2x_0=\dfrac{B\ell}{L}\cdot\dfrac{2MgL}{B^2\ell^2}$$
答(最小値) $0$(2点)
答(最大値) $\dfrac{2Mg}{B\ell}$(3点)
(中心 $x_0$ では $a=0$ で $I’=0$。(4) より $I B\ell=Mg$、つまり電流が受ける力が重力とつり合っている。最下点ではその2倍の電流が流れる。)
別解
問2 (5) 中心 $x_0$
中心は、加速度が0になる、つり合いの位置。$a=0$ なら $I’=CB\ell a=0$ なので、(4) より $Mg=IB\ell$。(3) の $I=\dfrac{B\ell x_0}{L}$ を入れて
$$Mg=\dfrac{B^2\ell^2}{L}x_0\qquad\therefore\ x_0=\dfrac{MgL}{B^2\ell^2}$$
運動方程式を整理しなくても、中心だけは求まる。
問2 (6)
$I$ は $x$ に比例し、$x=0$ で $I=0$。中心の電流は上の $I=\dfrac{Mg}{B\ell}$。最下点は中心から端までの距離が中心までの距離と同じなので、電流は中心の2倍の $\dfrac{2Mg}{B\ell}$。
出題意図
問1 導体棒の中の荷電粒子に注目して、電流・ローレンツ力・誘導起電力を導くことができるか
問2 (1)〜(3) 動く棒の起電力がそのままコンデンサー・コイルにかかることを使って、コンデンサーの電流とコイルの電流を求めることができるか
問2 (4)〜(6) 電流の入った運動方程式を単振動の形にまとめ、振動の中心と範囲から電流の最大値・最小値を求めることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや難 | |
| 目標得点 | 30点 | 25点 |
| 目標時間 | 25分 | 25分 |
電磁誘導の棒は、抵抗がつけば終端速度、コンデンサーがつけば等加速度、コイルがつけば単振動という決まった流れがある。
この大問はコンデンサーとコイルを同時につないだ形だが、コンデンサーは質量を重くし、コイルはばねになる、と見抜ければ、あとは力学。
名問の森の電磁誘導を、白紙に再現できるようにしておこう。
問1 は誘導どおりに全員が取ってくるので、どの学部も満点を取りたい。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2 (3):コイルの式から $\Delta$ を外して(時間で積分して)$I$ を $x$ で表し、積分定数を $t=0$ の値で決める、という発想に行き着けるか。ここで $I$ を求められないと、(4)〜(6) がすべて続かない。
- 問2 (2) (b):電流は電気量の時間変化、という定義に戻り、$\Delta Q$ を $\Delta v$ で表して $I’=CB\ell a$ と求められるか。ここがコンデンサーつきの棒の決まった流れ。
- 問2 (5)・(6):運動方程式を $-K(x-x_0)$ の形にして単振動と読み、放した位置が振動の端だと運動を想像できるか。(6) の最小値を 0 以外にしてしまう、中心を最大値と取り違える、が失点の典型。
2012年九州大学物理
第3問 解答・解説
第3問は熱力学の問題です。
テーマは「1 mol の単原子分子理想気体を、断熱・定積・定圧・等温の5つの変化でめぐらせるサイクルAの温度・熱の出入りを調べ、等温の後に断熱膨張と定圧圧縮を足したサイクルBの熱効率をサイクルAと比べる」。
問題


問題文をテキストで読む
以下の問いに答えよ。
1モルの単原子分子理想気体が、気密を保ちながら、なめらかに動くピストンを持つシリンダー内に閉じ込められている。この気体の圧力を $p$、体積を $V$ と表す。この気体を図3(a)に示したように、状態1→状態2→状態3→状態4→状態5→状態1とゆっくり変化させるサイクルを考え、これをサイクルAとする。状態1→状態2は断熱変化、状態2→状態3は定積変化、状態3→状態4は定圧変化、状態4→状態5は等温変化、状態5→状態1は定積変化である。状態1の圧力は $p_1$、体積は $V_1$ であり、気体定数を $R$ とする。また、この気体の定積モル比熱は $\dfrac32R$ である。この問題で、熱量と仕事は正またはゼロの量とする。
問1. 状態1→状態2の断熱変化で気体は外部から $W_{12}\,(0\leqq W_{12})$ の仕事をされた。状態2の絶対温度 $T_2$ を $p_1$、 $V_1$、 $R$、 $W_{12}$ を用いて表せ。
問2. 状態2→状態3の定積変化で気体は熱量 $Q_{23}\,(0\leqq Q_{23})$ を吸収した。状態3と状態2の絶対温度の差 $T_3-T_2$ を $R$、 $Q_{23}$ を用いて表せ。
問3. 状態3→状態4の定圧変化で熱量 $Q_{34}\,(0\leqq Q_{34})$ の移動があった。正しいものを選び番号で答えよ。
① $Q_{34}$ は気体が吸収した熱量である。
② $Q_{34}=0$ である。
③ $Q_{34}$ は気体が放出した熱量である。
問4. 状態1、状態2、状態3、状態4、状態5の絶対温度をそれぞれ $T_1$、 $T_2$、 $T_3$、 $T_4$、 $T_5$ とするとき、それらの関係を表す不等式として正しいものを選び番号で答えよ。
① $T_2<T_1<T_3<T_4=T_5$ ② $T_1<T_2<T_4=T_5<T_3$③ $T_3<T_4=T_5<T_1<T_2$ ④ $T_1<T_2<T_3<T_4=T_5$⑤ $T_2<T_1<T_4=T_5<T_3$ ⑥ $T_3<T_4=T_5<T_2<T_1$
次に、サイクルAにおける状態5から、断熱変化で新たな状態6に変化させ、状態6から状態1に定圧変化で戻す、別のサイクルを考える。すなわち、状態1→状態2→状態3→状態4→状態5→状態6→状態1と変化させるサイクルを考え、これをサイクルBとする。
問5. 状態6を図3(b)中のX、Y、Zから選べ。なお、図中の状態5とYを結んでいる線は等温変化の線である。
問6. サイクルBにおいて、状態5→状態6の断熱変化で気体は外部へ $W_{56}$ の仕事をし、状態6→状態1の定圧変化で熱量 $Q_{61}$ の移動があった。また、サイクルAにおいて状態5→状態1の定積変化で気体が放出した熱量を $Q_{51}$ とするとき、 $Q_{51}$ を $W_{56}$ と $Q_{61}$ を用いて表せ。ただし、 $W_{56}$、 $Q_{51}$、 $Q_{61}$ は、いずれも正またはゼロの量である。
問7. 状態6→状態1の定圧変化において、気体は外部から $W_{61}\,(0\leqq W_{61})$ の仕事をされた。 $W_{61}$ を $Q_{61}$ で表せ。
問8. これらのサイクルを熱機関のサイクルと考えた場合、サイクルAの熱効率 $e_{\mathrm{A}}\,(0<e_{\mathrm{A}}<1)$ とサイクルBの熱効率 $e_{\mathrm{B}}\,(0<e_{\mathrm{B}}<1)$ を、 $Q_{23}$、 $Q_{34}$、 $Q_{45}$、 $Q_{51}$、 $Q_{61}$ の中から必要なものを用いて、それぞれ表せ。ただし、 $Q_{45}\,(0\leqq Q_{45})$ は、状態4→状態5の等温変化で気体が吸収した熱量である。
問9. $Q_{51}-Q_{61}$ を $W_{56}$ と $W_{61}$ を用いて表せ。
問10. $W_{56}$ と $W_{61}$ の関係で正しいものを選び番号で答えよ。
① $W_{56}>W_{61}$ ② $W_{56}=W_{61}$ ③ $W_{56}<W_{61}$
問11. $e_{\mathrm{A}}$ と $e_{\mathrm{B}}$ の関係で正しいものを選び番号で答えよ。
① $e_{\mathrm{A}}>e_{\mathrm{B}}$ ② $e_{\mathrm{A}}=e_{\mathrm{B}}$ ③ $e_{\mathrm{A}}<e_{\mathrm{B}}$
解答の方針
【問1〜問4の方針】
熱力学は「何変化か」を決め、その変化の特徴を先に式に入れる。断熱は $Q=0$、定積は $W=0$。内部エネルギーは温度だけで決まるので、熱や仕事から温度の変化が分かる(下の図)。


- 状態1の状態方程式 $p_1V_1=RT_1$ と、断熱( $Q=0$ )の第一法則から $T_2$ を求める(問1)。
- 2→3 は定積なので $W=0$。 $Q_{23}=\Delta U=\dfrac32R(T_3-T_2)$ から $T_3-T_2$ を求める(問2)。
- 3→4 は定圧で膨張。 $\Delta U$ と $W$ の符号から $Q_{34}$ が吸収か放出かを決める(問3)。
- 各変化で温度が上がるか下がるかを決め、4→5 の等温( $T_4=T_5$ )とあわせて並べ、選択肢を選ぶ(問4)。
【問5〜問7の方針】
問5 は、断熱膨張は温度が下がるので、p–V 図で断熱線は等温線より急(下の図)。


問6 は、内部エネルギーは状態だけで決まるので、5→1 を 5→6→1 の道で計算でき、定圧は $Q:\Delta U:W=5:3:2$(下の図)。


- 同じ圧力 $p_1$ で断熱膨張と等温膨張の体積を比べ、状態6を選ぶ(問5)。
- 5→1 の内部エネルギーの変化を、サイクルAの道(定積)とサイクルBの道(断熱→定圧)で別々に表し、等しいとおく(問6)。
- 定圧 6→1 の仕事 $W_{61}$ と熱 $Q_{61}$ の比(5:3:2 の 2:5)から $W_{61}$ を求める(問7)。
【問8〜問11の方針】
先に熱を吸収する区間と放出する区間を決める。サイクルAとBは吸収する区間が同じなので $Q_{in}$ は同じで、違うのは放出の熱だけ。熱効率の大小は放出する熱の大小で決まる(下の図)。


- 吸収は 2→3・3→4・4→5、放出はAが 5→1、Bが 6→1。断熱の区間は熱の出入りが無い。熱効率を「1 −(正の数)」で表す(問8)。
- 問6 の式に問7 の結果を入れて、 $Q_{51}-Q_{61}$ を $W_{56}$ と $W_{61}$ で表す(問9)。
- $W_{56}$ は断熱線の下の面積、 $W_{61}$ は圧力 $p_1$ の線の下の長方形。面積を比べる(問10)。
- 問9・問10 から $Q_{51}$ と $Q_{61}$ の大小を決め、 $Q_{in}$ が同じことから熱効率を比べる(問11)。
解答




解答をテキストで読む
問1
1 mol なので状態1の状態方程式は $p_1V_1=RT_1$ より $T_1=\dfrac{p_1V_1}{R}$。1→2 は断熱なので $Q=0$。気体がされた仕事が $W_{12}$ なので、気体がした仕事は $-W_{12}$。第一法則 $Q=\Delta U+W$ より
$$0=\Delta U_{12}+(-W_{12})\qquad\therefore\ \Delta U_{12}=W_{12}$$
単原子分子の内部エネルギーの変化は $\Delta U_{12}=\dfrac32R(T_2-T_1)$ なので
$$\dfrac32R(T_2-T_1)=W_{12}\qquad\therefore\ T_2=T_1+\dfrac{2W_{12}}{3R}$$
答 $T_2=\dfrac{p_1V_1}{R}+\dfrac{2W_{12}}{3R}$(4点)
問2
2→3 は定積なので $W=0$。第一法則 $Q=\Delta U+W$ より $Q_{23}=\Delta U_{23}=\dfrac32R(T_3-T_2)$。
答 $T_3-T_2=\dfrac{2Q_{23}}{3R}$(3点)
問3
3→4 は定圧で体積が増える(膨張する)ので、気体がする仕事は $W_{34}>0$。状態方程式 $pV=RT$ で $p$ が一定なので $V\propto T$。体積が増えると温度も上がり、 $\Delta U_{34}>0$。第一法則 $Q_{34}=\Delta U_{34}+W_{34}$ より、どちらも正なので $Q_{34}>0$。気体は熱を吸収する。
答 ①(3点)
問4
各変化で温度の上下を決める。
・1→2:断熱圧縮。問1 より $\Delta U_{12}=W_{12}\geqq0$ で $T_1<T_2$
・2→3:定積で熱を吸収。問2 より $T_3-T_2=\dfrac{2Q_{23}}{3R}\geqq0$ で $T_2<T_3$
・3→4:定圧膨張。問3 のとおり温度が上がり $T_3<T_4$
・4→5:等温なので $T_4=T_5$
まとめると $T_1<T_2<T_3<T_4=T_5$(下の図)。
答 ④(3点)
問5
状態5から圧力 $p_1$ まで下がる3本の変化のうち、Y は問題文のとおり等温(温度 $T_5$ のまま)。断熱膨張は $Q=0$ で気体が仕事をする( $W>0$ )ので、第一法則 $0=\Delta U+W$ より $\Delta U=-W<0$。温度が下がるので $T_6<T_5$。圧力 $p_1$ で状態方程式 $V=\dfrac{RT}{p_1}$ を見ると、温度が低い状態6の体積 $V_6$ は、温度 $T_5$ の Y の体積より小さい。つまり状態6は Y より左。Z は Y より右(温度が $T_5$ より高い)なので、膨張しながら温度が下がる断熱変化では行けない。
答 X(3点)
問6
サイクルAの 5→1 は定積で $W=0$。熱 $Q_{51}$ を放出するので、第一法則より $\Delta U_{51}=-Q_{51}$。
サイクルBでは、5→6 は断熱で $Q=0$。気体が外へする仕事が $W_{56}$ なので $\Delta U_{56}=-W_{56}$。6→1 は定圧圧縮で、熱 $Q_{61}$ を放出する。定圧の 5:3:2( $Q:\Delta U:W=5:3:2$ )より、内部エネルギーの減少は $Q_{61}$ の $\dfrac35$ で $\Delta U_{61}=-\dfrac35Q_{61}$。
内部エネルギーは状態だけで決まるので、状態5から状態1までの変化 $\Delta U_{51}$ は、どちらの道を通っても同じ。
$$\Delta U_{51}=\Delta U_{56}+\Delta U_{61}\qquad\therefore\ -Q_{51}=-W_{56}-\dfrac35Q_{61}$$
答 $Q_{51}=W_{56}+\dfrac35Q_{61}$(5点)
問7
定圧 6→1 でされた仕事は $W_{61}=p_1(V_6-V_1)=R(T_6-T_1)$。放出した熱は定圧モル比熱 $\dfrac52R$ を使って $Q_{61}=\dfrac52R(T_6-T_1)$。2つの比をとると 2:5 なので
答 $W_{61}=\dfrac25Q_{61}$(3点)
(5:3:2 の「2」が仕事、「5」が熱。圧縮なので、仕事は「された」仕事、熱は「放出した」熱の大きさで比は同じ)
問8
サイクルを区間ごとに、吸収した熱量(放出は負)で整理する。
| 区間 | 変化 | 熱 | 吸収・放出 |
|---|---|---|---|
| 1→2 | 断熱 | 0 | 出入りなし |
| 2→3 | 定積 | $Q_{23}$ | 吸収 |
| 3→4 | 定圧 | $Q_{34}$ | 吸収(問3) |
| 4→5 | 等温 | $Q_{45}$ | 吸収( $\Delta U=0$ で $Q=W>0$ ) |
| 5→1 | 定積 | $Q_{51}$ | 放出(サイクルA) |
| 5→6 | 断熱 | 0 | 出入りなし(サイクルB) |
| 6→1 | 定圧 | $Q_{61}$ | 放出(サイクルB) |
吸収した熱量は、AもBも $Q_{in}=Q_{23}+Q_{34}+Q_{45}$。放出した熱量は、Aが $Q_{out}=Q_{51}$、Bが $Q_{out}=Q_{61}$。1サイクルで内部エネルギーはもとに戻る( $\Delta U=0$ )ので、1サイクルの仕事は $W=Q_{in}-Q_{out}$。熱効率は $e=\dfrac{W}{Q_{in}}=1-\dfrac{Q_{out}}{Q_{in}}$ なので
答 $e_{\mathrm{A}}=1-\dfrac{Q_{51}}{Q_{23}+Q_{34}+Q_{45}}$(4点)
答 $e_{\mathrm{B}}=1-\dfrac{Q_{61}}{Q_{23}+Q_{34}+Q_{45}}$(4点)
問9
問6 の式から $Q_{51}-Q_{61}=W_{56}-\dfrac25Q_{61}$。問7 より $\dfrac25Q_{61}=W_{61}$ なので
答 $Q_{51}-Q_{61}=W_{56}-W_{61}$(3点)
問10
$W_{56}$ は、断熱線 5→6 の下の面積(体積 $V_1$ から $V_6$ まで)。 $W_{61}$ は、圧力 $p_1$ の線 6→1 の下の長方形の面積(高さ $p_1$、幅 $V_6-V_1$)。体積が $V_1$ から $V_6$ の間、断熱線は圧力 $p_1$ の線より上を通る(膨張で圧力が下がり、 $V_6$ で $p_1$ に届く)。だから
$$W_{56}-W_{61}=\text{(5→6→1→5 で囲まれた面積)}>0$$
答 ①(3点)
問11
問9・問10 より $Q_{51}-Q_{61}=W_{56}-W_{61}>0$、つまり $Q_{51}>Q_{61}$。吸収した熱量 $Q_{in}$ は同じなので、問8 より
$$e_{\mathrm{A}}=1-\dfrac{Q_{51}}{Q_{in}}<1-\dfrac{Q_{61}}{Q_{in}}=e_{\mathrm{B}}$$
答 ③(2点)
(サイクルBは、サイクルAに「5→6→1→5」の正の仕事のサイクルを足したもの。吸収する熱は同じまま仕事が増えるので、熱効率が上がる。下のコラム)
別解
問5 (ポアソンの式で計算する) 定積モル比熱 $\dfrac32R$ の単原子分子なので比熱比は $\dfrac53$。5→6 は $pV^{5/3}=$ 一定 より、 $V_6=V_1\left(\dfrac{p_5}{p_1}\right)^{3/5}$。等温の Y は $p_5V_1=p_1V_Y$ より $V_Y=V_1\dfrac{p_5}{p_1}$。 $\dfrac{p_5}{p_1}>1$ なので、指数が $\dfrac35<1$ の $V_6$ の方が小さく、 $V_6<V_Y$。状態6は X。式を書かなくても決まるので、本番では「断熱は等温より急」で選ぶ。
問9 (5→6→1→5 の1周に第一法則を立てる) 1→5 は 5→1 の逆向きの定積変化で、気体は熱 $Q_{51}$ を吸収する( $W=0$ )。5→6 は断熱で熱は0、6→1 は熱 $Q_{61}$ を放出する。1周で $\Delta U=0$ なので、1周の仕事は吸収した熱と放出した熱の差。
$$Q_{51}-Q_{61}=W_{56}-W_{61}$$
(1周の仕事は、5→6 でした仕事 $W_{56}$ と、6→1 でされた仕事 $W_{61}$ の差)。問6 を使わずに問9 に行けるので、問6 を落としたときの保険になる。
出題意図
問1〜問4 何変化かを決め、第一法則から各状態の温度の上下と熱の出入りを捉えることができるか
問5 断熱膨張は等温膨張より温度が下がる(p–V 図で断熱線は等温線より急)ことから、状態6の位置を選べるか
問6・問7 内部エネルギーが状態だけで決まることを使い、定積の放熱 $Q_{51}$ を断熱と定圧の道で表せるか
問8 吸収する区間・放出する区間を決め、熱効率を「1 −(正の数)」の形で表せるか
問9〜問11 吸収した熱が同じ2つのサイクルの熱効率を、放出した熱と p–V 図の面積で比べることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 35点 | 30点 |
| 目標時間 | 15分 | 20分 |
状態方程式と熱力学第一法則、それに「何変化か」を決める習慣があれば全部取れる、熱サイクルの典型問題。
熱サイクルは、まず吸収する区間と放出する区間を決め、熱効率は「1 −(正の数)」の形にそろえる、という決まった流れで解く。
差がつくのは、内部エネルギーが状態だけで決まることを使う問6 と、熱効率を直接計算せず面積と放出の熱で比べる問10・問11。
この型を、白紙に再現できるかどうかがすべて。
差がつく所・失点しやすい所
- 問6:内部エネルギーが状態だけで決まることを使い、5→1 の変化を 5→6→1 の道で計算する、という発想に行き着けるか(ここで止まると問9〜問11 が続かない。ただし問9 は別解の1周の第一法則で救える)。
- 問10:仕事を p–V 図の面積で表し、断熱線が圧力 $p_1$ の線より上を通ることから大小を決められるか。
- 問11:熱効率を直接計算せず、吸収した熱が同じなので放出の少ない方が効率が大きい、と比べられるか(下のコラム)。
コラム 膨張を長くして効率を上げるエンジン
- この大問のサイクルBは、実際のエンジンの工夫と同じ考え方をしている。普通のガソリンエンジンは、圧縮する長さと膨張する長さが同じ。膨張が終わった(ピストンが下がりきった)時点でも、気体にはまだ高い圧力と熱が残っていて、それをそのまま排気で捨てている。サイクルAの 5→1 がこれで、体積 $V_1$ で膨張を止めて、圧力の高い気体を熱として捨てる。
- そこで、膨張を圧縮より長くとり、捨てるはずだった分も仕事として取り出す。これがサイクルBの 5→6 で、 $V_6$ まで膨張を続けてから捨てる。取り出せる仕事は「5→6→1→5 で囲まれた面積」だけ増え、吸収する熱は変わらないので、熱効率が上がる(問11)。ハイブリッド車で使われるアトキンソンサイクルやミラーサイクルが、この考え方。そのかわり、同じ大きさのエンジンで吸い込める空気が減るので、出力は下がる。


熱効率を比べるときの見方は、「吸収した熱が同じなら、仕事が大きい方が熱効率は大きい」の一点。2025年第3問のコラム(熱効率の比べ方)と同じ型で、熱効率の比較は計算ではなく「何が共通で、何が違うか」を見抜く問題になる。
2012年九州大学・物理の
講評とまとめ
3問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | やや難 | 35点 | 25点 |
| 第2問 | やや難 | 30点 | 25点 |
| 第3問 | 標準 | 35点 | 30点 |
| 全体 | やや難 | 95点 | 75点 |
大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で95点、その他の学部で75点)にはなりません。
全体がやや難の年で、何より時間が足りない年でした。
第1問は1つの大問の中に2問分が入っていて、時間内にはまず終わりません。
この年の合否を分けたのは第1問で、どれだけ時間をかけずに解けたかで決まりました。
第2問は電磁誘導とコイルのよくある型ですが、やや難寄りです。
第3問は後半が難しいものの、この年はここで点を取り切るしかありません。
解く流れ
第3問 → 第1問 → 第2問。
2012年九州大学・物理に
関するよくある質問
2012年の九州大学・物理について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2012年の九州大学・物理は難しかった?
-
やや難の年でした。
第1問と第2問はやや難、第3問は標準です。
特に第1問は1つの大問に2問分が入っていて、時間が足りない年でした。 - 2012年の九州大学・物理は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で95点、その他の学部で75点です(125点満点)。
- 2012年の九州大学・物理はどこで差がつく?
-
この年の合否を分けたのは第1問で、差がついたのは次の3つでした。
- 第1問 問2:はね返りの軌道を想像し、水平成分は不変・鉛直成分は $e$ 倍と整理して、時間をかけずに等比数列の和まで解き切れたか。
- 第2問 問2 (5)(6):コンデンサーは質量を重くし、コイルはばねになると読んで運動方程式を単振動の形にまとめ、放した位置が端だと想像できたか。
- 第3問 問6:内部エネルギーが状態だけで決まることを使い、5→1 の変化を 5→6→1 の道で計算できたか。
- 2012年の九州大学・物理は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:力学
- 第2問:電磁気
- 第3問:熱力学


