【解説・配点付き】2014年九州大学物理の解答・解説

2014年の九州大学・物理の、
解答・解説【完全版】です。

方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。

このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。

※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。

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中原 遼太郎

九大受験に特化した学習塾
『竜文会』代表

『竜文会』開校後、初年度には国立大学医学部や九州大学に合格者を輩出。

2年目には旧帝大医学部にも合格!

九州大学の過去問を20年分以上分析して指導カリキュラムを作成。

九州大学医学部に現役合格した経験を生かして、『学習計画の作成』や『LINEでのいつでも相談』による1人1人のサポート・九州大学に特化したハイレベルな演習で「九大受験生」をサポート。

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目次

2014年九州大学物理
第1問 解答・解説

この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。

第1問は力学の問題です。
テーマは「斜面台の上のばねにつないだ板Aと球B。台が動かないときの、つり合いの位置・接触して動く間の運動方程式と接触力・離れる位置と速度・離れたあとの球Bの最高点と板Aの単振動の周期、台を一定の加速度 $\dfrac{g}{\sqrt3}$ で動かしたとき(台の上から見ると斜面方向の重力の成分と慣性力の成分が打ち消し合う)の板A・球Bの単振動と離れる位置・速度、斜面の上端から飛び出した球Bの最高点の高さ」。

問題

2014年九州大学物理 第1問 問題
2014年九州大学物理 第1問 問題
問題文をテキストで読む

以下の問いに答えよ。

図1(a)のように、水平方向に移動できる角度 $30^\circ$ の斜面を持った台の上で、ばね定数 $k$ のばねの一端が斜面上の壁に固定されており、他端に質量 $m$ の板Aが取り付けられている。ばねが自然長のときの板Aの位置を原点Oとして、斜面上向きに $x$ 軸をとる。斜面の上端は $x=L$ の位置にある。また、質量 $M$ の球Bがあり、板Aと球Bは斜面上を摩擦無しで運動するものとし、空気抵抗も無いものとする。板A、球Bの大きさおよびばねの質量は無視でき、重力加速度の大きさを $g$ とする。

はじめ、台は動かないように支えられている。

問1. 斜面上でばねと板Aがつり合っているものとする。つり合いの位置の板Aの $x$ 座標 $x_0$ を求めよ。

球Bを板Aに接触させて、 $x=-d\,(d>0)$ の位置までばねを縮めて静かに離す。ただし、 $(kd>g(m+M))$ の関係にある。

問2. 板Aと球Bが接触している間の運動を考える。板A、球Bの加速度を $a$、板Aと球Bが押し合う力の大きさを $F$ とする。座標 $x$ における板A、球Bの運動方程式を $m$、 $M$、 $k$、 $g$、 $F$、 $a$、 $x$ のうち必要なものを用いて表せ。また、運動方程式より $a$、 $F$ を求めよ。

問3. 板Aと球Bは接触して運動した後に離れる。

(1) 板A、球Bが離れる瞬間の $x$ 座標、およびそのときの $x$ 方向の速度 $v$ を求めよ。

(2) 板A、球Bが離れた後に球Bは斜面上で最高到達点に達して戻ってくる。最高到達点の $x$ 座標を求めよ。

問4. 板A、球Bが離れた後の板Aの運動を考える。

(1) 板Aの加速度を $a_{\mathrm{A}}$ とし、板Aの運動方程式を $m$、 $g$、 $k$、 $a_{\mathrm{A}}$、 $x$ のうち必要なものを用いて表せ。

(2) 問4(1)の運動方程式を、座標 $x$ の代わりに、つり合いの位置からの座標 $z$ を用いて書き直せ。

(3) 板A、球Bが離れた後、板Aが何往復か振動した後に、板Aと斜面から戻ってくる球Bは衝突する。板Aが衝突前に行う単振動の周期 $T$ を求めよ。

次に、球Bを板Aに接触させ、 $x=-d\,(d>0)$ の位置までばねを縮ませた状態で台に力を加え、図1(b)のように台を水平方向左向きに $\alpha=\dfrac{g}{\sqrt3}$ の加速度で動かし、板A、球Bを静かに離す。

問5. 板Aと球Bが接触している間の運動を考える。

(1) 台上の観測者から見たときの板A、球Bの $x$ 方向の加速度を $a’$、板Aと球Bが押し合う力の大きさを $F’$ とする。台上の観測者から見たときの板A、球Bの運動方程式を $m$、 $M$、 $k$、 $F’$、 $g$、 $a’$、 $x$ のうち必要なものを用いて表せ。

(2) 問5(1)で求めた板A、球Bの運動方程式から $F’$ を消去し、板A、球Bを一体とみなしたときの台上の観測者から見たときの運動方程式を $m$、 $M$、 $k$、 $g$、 $a’$、 $x$ のうち必要なものを用いて表せ。

(3) 点Oを通過するときの時刻を $t=0$ とした場合、時刻 $t\,(t\leqq0)$ のときの台上の観測者から見たときの板A、球Bの座標 $x$ と $x$ 方向の速度 $v’$ を求めよ。

問6. 板A、球Bが離れる瞬間の $x$ 座標、および台上の観測者から見たときの $x$ 方向の速度を求めよ。

問7. 球Bが到達する最高点の鉛直方向高さを点Oからの高さで表せ。ただし、球Bは $x=L$ で水平面からの角度 $30^\circ$ で飛び出すものとする。

解答の方針

【問1〜問4の方針】

着眼点

まず運動を想像する。球Bが離れるのは、押し合う力が0になる自然長で、つり合いの位置ではない。離れたあとの板Aは、ばねと重力だけの単振動をする(下の図)。

2014年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
2014年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
  1. 板Aに斜面方向にはたらく力(ばねの力と重力の成分)のつり合いから、つり合いの位置を求める(問1)。
  2. $x$ 軸(斜面上向き)を正として、板Aと球Bの運動方程式を立てる。2式の和で $F$ を消して $a$ を求め、 $a$ を球Bの式にもどして $F$ を求める(問2)。
  3. $F=0$ となる位置が離れる位置(自然長を過ぎるとばねは板Aを引き戻す側にはたらき、球Bにはたらく斜面方向の力は重力の成分だけなので、板Aのほうが先に減速する)。離れる瞬間の速度は、放した位置から離れる位置までの力学的エネルギー保存(ばねの弾性エネルギー・重力の位置エネルギー・運動エネルギー)から求める(問3 (1))。
  4. 離れたあとの球Bは加速度が一定の運動。最高点で速度が0になる位置を求める(問3 (2))。
  5. 離れたあとの板Aの運動方程式を立て、座標を $z=x-x_0$ に書きかえて $ma_{\mathrm{A}}=-kz$ の形にし、周期を求める(問4)。

【問5・問6の方針】

着眼点

どこから見るかが決め手。台の上から見ると慣性力がはたらき、重力との合力(見かけの重力)は斜面に垂直になる。斜面方向の力が打ち消し合い、水平な床の上のばね振り子と同じになる(下の図)。

2014年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
2014年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
  1. 台の上から見た板A・球Bの力を、重力 → 触れているもの(垂直抗力・ばね・押し合う力)→ 慣性力の順にすべて書く。 $\alpha=\dfrac g{\sqrt3}$ のとき慣性力の斜面方向の成分は $m\alpha\cos30^\circ=\dfrac12mg$ で、重力の成分と打ち消し合う。斜面方向の成分を足して、運動方程式を立てる(問5 (1))。
  2. 2式を足して $F’$ を消し、板Aと球Bを一体とみなした運動方程式にする(問5 (2))。
  3. 振動の中心Oと振幅 $d$ を読む。 $t=0$ に中心Oを $+x$ 向きに通るので、 $\sin$ 型で $x$ と $v’$ を書く(問5 (3))。
  4. $F’=0$ になる位置を求め、その位置の速度を問5 (3) の式から読みとる(問6)。

【問7の方針】

着眼点

運動を想像する。離れたあとの球Bは、台の上から見て等速。台は水平にしか動かないので、鉛直方向の速度は床から見ても同じ(下の図)。

2014年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
2014年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
  1. 離れたあとの球Bは、台の上から見て斜面方向の力が0なので、台に対して問6 の速度で等速に斜面を上る。上端 $x=L$ の高さは、Oから $L\sin30^\circ$。
  2. 飛び出すときの鉛直方向の速度を、台に対する速度の斜面方向から求める。
  3. 鉛直方向の運動は、重力だけの鉛直投げ上げ。最高点の高さをOから測った値で表す。

解答

2014年九州大学物理 第1問 解答・解説
2014年九州大学物理 第1問 解答・解説
2014年九州大学物理 第1問 解答・解説(続き)
2014年九州大学物理 第1問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

問1

つり合いの位置では、板Aに斜面方向にはたらく力がつり合う。 $x$ 軸は斜面上向きが正。ばねの力は $-kx_0$ (縮んでいれば上向き)、重力の斜面方向の成分は $-mg\sin30^\circ=-\dfrac12mg$ (下向き)。

$$0=-kx_0-\frac12mg$$

答 $x_0=-\dfrac{mg}{2k}$(3点)

(負なので、自然長Oより斜面の下側。ばねが縮んでいる)

問2

板Aと球Bが接している間、加速度は同じ $a$。力は、板Aが「重力の成分・ばねの力・Bから受ける押し合う力 $F$」、球Bが「重力の成分・Aから受ける押し合う力 $F$」(下の図)。垂直抗力は斜面に垂直で、斜面方向の式には入らない。 $x$ 軸方向(斜面上向き)の運動方程式を立てる。

答 板A:$ma=-kx-F-\dfrac12mg$(2点)

答 球B:$Ma=F-\dfrac12Mg$(2点)

2式を足すと $F$ が消える(2物体を一体とみなした式)。

$$(m+M)a=-kx-\frac12(m+M)g$$

答 $a=-\dfrac{k}{m+M}x-\dfrac g2$(2点)

これを球Bの式 $F=Ma+\dfrac12Mg$ に入れると

答 $F=-\dfrac{Mk}{m+M}x$(2点)

($x<0$ では $F>0$ で、板Aは球Bを押している)

問3 (1)

離れる瞬間は、押し合う力が0になるとき。 $F=-\dfrac{Mk}{m+M}x=0$ より $x=0$。 $x<0$ の間は $F>0$ で押し合い、 $x>0$ になると $F<0$ になる(押し合えない)ので、自然長で離れる。つり合いの位置 $x_0$ ではない。球Bには重力の成分だけがはたらくので加速度は $-\dfrac g2$ のまま変わらず、ばねが伸び始めた板Aのほうが大きく減速するから離れる。

答(位置) $x=0$(2点)

離れる瞬間の速度は、放した位置 $x=-d$ (速さ0)から $x=0$ までの力学的エネルギー保存で求める。板Aと球Bは一体で動き、高さは斜面に沿って $d$ 進んだので $d\sin30^\circ=\dfrac d2$ だけ上がる。

$$\frac12kd^2=\frac12(m+M)v^2+(m+M)g\cdot\frac d2$$

$$v^2=\frac{kd^2}{m+M}-gd$$

$kd>g(m+M)$ より右辺は正。 $x$ 方向の速度なので、上向きで正。

答(速度) $v=\sqrt{\dfrac{kd^2}{m+M}-gd}$(3点)

問3 (2)

離れたあとの球Bは、加速度 $-\dfrac g2$ の等加速度運動。 $x=0$ から速度 $v$ で出て、速度が0になる所が最高点。最高点の座標を $x_{\max}$ として

$$0-v^2=2\left(-\frac g2\right)x_{\max}\qquad\therefore\ x_{\max}=\frac{v^2}{g}$$

答 $\dfrac{kd^2}{(m+M)g}-d$(3点)

(力学的エネルギー保存 $\dfrac12Mv^2=Mg\cdot\dfrac{x_{\max}}2$ と同じ。最高点が $x=L$ より下にあることは、問題文が前提にしている)

問4 (1)

離れたあとの板Aには、ばねの力と重力の成分だけがはたらく。

答 $ma_{\mathrm{A}}=-kx-\dfrac12mg$(2点)

問4 (2)

$x=z+x_0=z-\dfrac{mg}{2k}$ を入れる。 $-kx-\dfrac12mg=-kz+\dfrac12mg-\dfrac12mg=-kz$ より

答 $ma_{\mathrm{A}}=-kz$(2点)

($z=x-x_0$ はつり合いの位置からの座標。板Aはつり合いの位置を中心に、ばね定数 $k$ の単振動をする)

問4 (3)

$ma_{\mathrm{A}}=-kz$ は、質量 $m$・ばね定数 $k$ の単振動。周期は振幅によらない。

答 $T=2\pi\sqrt{\dfrac mk}$(2点)

(周期は振幅によらないので、板Aが何往復したあとでも同じ。問題文の「何往復かした後」は、このことが前提になっている)

問5 (1)

台の上から見る。台は左向きに $\alpha=\dfrac g{\sqrt3}$ で加速しているので、慣性力は逆向きの右向きで、板Aには $m\alpha$ 、球Bには $M\alpha$ (下の図)。

斜面方向($+x$ 向き)の成分は、重力が $-\dfrac12mg$ 、慣性力が $m\alpha\cos30^\circ=m\cdot\dfrac g{\sqrt3}\cdot\dfrac{\sqrt3}2=\dfrac12mg$ 。この2つは大きさが同じで逆向きなので打ち消し合う。球Bも同じ($M$ をかけただけ)。垂直抗力は斜面に垂直な方向の力で、重力も慣性力も斜面に押しつける向きなので、斜面からは浮かない。

答 板A:$ma’=-kx-F’$(2点)

答 球B:$Ma’=F’$(2点)

(台の上では、重力と慣性力の合力が斜面に垂直になる。ばねの力と押し合う力だけで動く、水平な床の上の問題と同じ)

問5 (2)

2式を足して $F’$ を消す。

答 $(m+M)a’=-kx$(2点)

問5 (3)

台の上から見ると、板Aと球Bは一体で、 $(m+M)a’=-kx$ の単振動をする。つり合いの位置(振動の中心)は自然長O($x=0$)。放した位置は $x=-d$ で速さ0なので、振幅は $d$ 、 $-d$ から $d$ の間を往復する。角振動数は

$$\omega=\sqrt{\frac{k}{m+M}}$$

$t=0$ に中心Oを $+x$ 向きに通るので、 $\sin$ 型。 $x=-d$ は $t=-\dfrac{\pi}{2\omega}$ (周期の $\dfrac14$ だけ前)。下の図は、 $x$ と $t$ の対応を表したもの。

答 $x=d\sin\left(\sqrt{\dfrac{k}{m+M}}\,t\right)$(3点)

速度は $x$ を時間で微分した形($\sin$ の次は $\cos$)。

答 $v’=d\sqrt{\dfrac{k}{m+M}}\cos\left(\sqrt{\dfrac{k}{m+M}}\,t\right)$(2点)

(式が使えるのは、放した時刻 $t=-\dfrac{\pi}{2}\sqrt{\dfrac{m+M}{k}}$ から $t=0$ まで)

問6

離れるのは $F’=0$ のとき。問5 (1) の球Bの式より $F’=Ma’=-\dfrac{Mk}{m+M}x$ なので、 $x=0$ (問3 (1) と同じ考え方)。

答(位置) $x=0$(2点)

そのときの速度は、問5 (3) の式の $t=0$ の値。振動の中心を通るので、速さ最大。

答(速度) $v’=d\sqrt{\dfrac{k}{m+M}}$($+x$ 向き)(2点)

問7

離れたあと、台の上から見て斜面方向の力は0なので、球Bは台に対して速さ $v’=d\sqrt{\dfrac{k}{m+M}}$ の等速で斜面を上る。 $x=L$ では、台に対して斜面の向き(水平から $30^\circ$)に飛び出す。Oから $x=L$ までの高さは $\dfrac L2$ 。

飛び出す瞬間の鉛直方向の速度は、台に対する速度の鉛直成分 $v’\sin30^\circ=\dfrac{v’}2$ 。台は水平にしか動かないので、鉛直方向の速度は台の上から見ても床から見ても同じ。飛び出したあとの鉛直方向にはたらく力は重力だけなので、上がる高さ $h$ は

$$h=\frac{(v’/2)^2}{2g}=\frac{v’^2}{8g}=\frac{kd^2}{8(m+M)g}$$

最高点のOからの高さは、 $\dfrac L2$ にこれを足す。

答 $\dfrac L2+\dfrac{kd^2}{8(m+M)g}$(5点)

(問題文の「水平面から $30^\circ$」は、台に対する向き。床から見ると台の速度が加わるので $30^\circ$ にはならないが、鉛直方向の速度は同じなので答えは変わらない)

別解

問3 (1) 速度 (単振動のエネルギー保存で) 接して動く間は質量 $m+M$・ばね定数 $k$ の単振動。中心(つり合いの位置)は $x=-\dfrac{(m+M)g}{2k}$ 。この中心からの変位は、 $x=-d$ で $d-\dfrac{(m+M)g}{2k}$ 、 $x=0$ で $\dfrac{(m+M)g}{2k}$ 。重力の位置エネルギーを入れずに、

$$\frac12k\left\{d-\frac{(m+M)g}{2k}\right\}^2=\frac12(m+M)v^2+\frac12k\left\{\frac{(m+M)g}{2k}\right\}^2$$

を整理すると $v^2=\dfrac{kd^2}{m+M}-gd$ で同じ答え。本解は、中心を求める手間のない力学的エネルギー保存にした。

出題意図

問1〜問4 接して動く2物体の運動方程式から接触力を求め、接触力が0になる自然長で離れることと、離れたあとの板Aの単振動を捉えることができるか

問5・問6 加速する台の上から見て慣性力を入れ、斜面方向の力が打ち消し合うことに気づき、2物体を一体の単振動として扱うことができるか

問7 台の上では等速で斜面を上ること、台は水平にしか動かないので鉛直の速度は床から見ても同じことを使い、最高点の高さを求めることができるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度標準
目標得点40点35点
目標時間25分25分

ひたすら状況をきちんと把握できるかが問われる大問。
決め手は、どこから見るかを決められるかどうか。
台が加速している間は、台の上に乗って見ると慣性力を考える。
$\alpha=\dfrac g{\sqrt3}$ は重力と慣性力の合力が斜面にちょうど垂直になる値で、台の上は水平でなめらかな床と同じになり、問5 以降は単純なばね振り子の問題になる。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問5 (1)(2):ここを越えないと問5 (3)・問6・問7 が続かない小問。台が加速しているので台の上から見て慣性力を入れ、 $\alpha=\dfrac g{\sqrt3}$ のとき斜面方向の重力の成分と慣性力の成分が打ち消し合う(台の上は水平な床と同じ)と気づけるか。気づけば、問5 の運動方程式は $-kx$ だけの単純な形になる。
  • 問3 (1):運動を想像して、球Bが離れるのはつり合いの位置ではなく、押し合う力が0になる自然長だと気づけるか。ここを間違えると、離れる速度と最高点(問3 (2))がすべて誤りになる。
  • 問7:「台の上では等速」「鉛直方向の速度は床から見ても同じ」の2点に、運動を想像して行き着けるか。台に対して $30^\circ$ に飛び出す向きと、床から見た向きを混ぜると立式できない。

コラム 加速する乗り物の中では「見かけの水平」が傾く

問5 の $\alpha=\dfrac g{\sqrt3}$ は、台の上の「見かけの水平」がちょうど斜面と同じ向きになるように選ばれている。身近なものでいえば、加速する電車の中でつるした小球や、容器の水面の傾きと同じ考え方。

2014年九州大学物理 第1問 コラムの図
2014年九州大学物理 第1問 コラムの図
  • 何が起きるか:加速する乗り物の中では、重力に慣性力を足した合力(見かけの重力)の向きが、その中の「下向き」になる。静止した水面や、つるした小球の糸は、この向きに合わせて傾く。
  • 傾く角:加速度の大きさを $a$ とすると、見かけの重力は鉛直から $\theta$ だけ傾き、 $\tan\theta=\dfrac ag$ 。問5 は $a=\dfrac g{\sqrt3}$ なので $\theta=30^\circ$ 、斜面の傾きと一致する。
  • 2014年の問題とのつながり:台の上の斜面は、見かけの重力に対して垂直な面になる。斜面方向には力がはたらかず、ばねの力だけが残る。問5 の運動方程式が $-kx$ の形になり、問7 で離れたあとの球Bが等速になる理由も同じ。

乗り物に乗って見る、見かけの重力を作る。この順で考えれば、加速する台の問題は水平な床の問題に変えられる。

2014年九州大学物理
第2問 解答・解説

第2問は電磁気の問題です。
テーマは「内部抵抗のある電池でコンデンサーを充電したときの電流の時間変化と充電の速さを答え、誘電体を入れてコンデンサーをつないだときの電圧・電気量を求め、コイルをつないだ電気振動の波形・周波数・最大電流と、抵抗を入れたあとの減衰振動を答える」。

問題

2014年九州大学物理 第2問 問題
2014年九州大学物理 第2問 問題
問題文をテキストで読む

図2(a)に示すように、直流電源に一つのコイル、二つのコンデンサー、三つのスイッチが接続された電気回路がある。最初、コンデンサーAとコンデンサーBの極板間は真空で、静電容量はそれぞれ $C_1\,[\mathrm{F}]$、 $C_2\,[\mathrm{F}]$ であり、コイルの自己インダクタンスは $L\,[\mathrm{H}]$ である。直流電源の電圧(起電力)は $E\,[\mathrm{V}]$ でその内部抵抗の値は $r\,[\Omega]$ である。ここで、導線の抵抗は無視できるものとする。

最初、二つのコンデンサーには電荷がたくわえられておらず、三つのスイッチは全て開いているものとして、以下の問いに答えよ。

問1. 時刻 $t=t_1\,[\mathrm{s}]$ においてスイッチ1を閉じたところ、コンデンサーAの極板間電圧 $V_{\mathrm{C}}\,[\mathrm{V}]$ が図2(b)に示すように変化し、電流 $I_{\mathrm{C}}\,[\mathrm{A}]$ がコンデンサーAに流れた(ただし、図2(a)における $I_{\mathrm{C}}$ の矢印を電流の正の向きとする)。

電流 $I_{\mathrm{C}}$ は、スイッチ1を閉じた直後に最大となり、その値 $I_{\mathrm{CM}}\,[\mathrm{A}]$ は $\boxed{\text{ア}}\,[\mathrm{A}]$ と表される。また、スイッチ1を閉じた後、コンデンサーAに電流 $I_{\mathrm{C}}$ が流れている時、コンデンサーAにたくわえられる電気量は $\boxed{\text{イ}}\,[\mathrm{C}]$ と表される。

上の文中の四角に入る数式を答えよ。ただし、数式は $I_{\mathrm{C}}$、 $C_1$、 $C_2$、 $E$、 $r$、 $L$ のうち必要なものを用いて表せ。

問2. 問1の操作を行った際、コンデンサーAに流れる電流 $I_{\mathrm{C}}\,[\mathrm{A}]$ はどのように時間変化するか。解答紙にその概形を描け。

問3. 直流電源の内部抵抗の値 $r\,[\Omega]$ が高い場合と低い場合とでは、コンデンサーAの極板間電圧 $V_{\mathrm{C}}\,[\mathrm{V}]$ が電源電圧 $E\,[\mathrm{V}]$ の半分の値(すなわち $0.5E\,[\mathrm{V}]$)に等しくなるまでに要する時間が長くなるのはどちらか。解答紙に記載されている選択肢から正解を選び、その記号に○印をつけよ。またその理由を150字以内で述べよ(句読点は一文字と数える)。

問4. スイッチ1を閉じてコンデンサーAの極板間電圧 $V_{\mathrm{C}}\,[\mathrm{V}]$ が電源電圧 $E\,[\mathrm{V}]$ に等しくなった後にスイッチ1を開き、コンデンサーAの極板間に比誘電率 $\varepsilon_{\mathrm{r}}$ の誘電体を挿入した。その結果、コンデンサーAの静電容量は $\boxed{\text{ウ}}$ 倍、極板間電圧は $\boxed{\text{エ}}$ 倍、静電エネルギーは $\boxed{\text{オ}}$ 倍になる。

上の文中の四角に入る数式を答えよ。ただし、数式は $C_1$、 $C_2$、 $E$、 $\varepsilon_{\mathrm{r}}$、 $r$、 $L$ のうち必要なものを用いて表せ。

問5. 問4の操作の後でスイッチ2を閉じた。この操作の後でコンデンサーA、Bの極板間電圧はそれぞれ $\boxed{\text{カ}}\,[\mathrm{V}]$、 $\boxed{\text{キ}}\,[\mathrm{V}]$、コンデンサーA、Bにたくわえられる電気量はそれぞれ $\boxed{\text{ク}}\,[\mathrm{C}]$、 $\boxed{\text{ケ}}\,[\mathrm{C}]$ と表される。

上の文中の四角に入る数式を答えよ。ただし、数式は $C_1$、 $C_2$、 $E$、 $\varepsilon_{\mathrm{r}}$、 $r$、 $L$ のうち必要なものを用いて表せ。

問6. 問5の操作の後で時刻 $t=t_2\,[\mathrm{s}]$ においてスイッチ3を閉じたところ、コイルに一定周期で振動する電流 $I_{\mathrm{L}}\,[\mathrm{A}]$ が流れた。その波形として最も適するものを、解答紙に記載された(a)から(d)の中から選び、その記号に○印をつけよ。ただし、これらの図では、時刻 $t=t_2\,[\mathrm{s}]$ から三周期経過した時刻 $t=t_3\,[\mathrm{s}]$ までの波形を描いてあり、図2(a)における $I_{\mathrm{L}}$ の矢印を電流の正の向きとする。

問7. 問6で選択した電流波形の周波数は $\boxed{\text{コ}}\,[\mathrm{Hz}]$、最大値は $\boxed{\text{サ}}\,[\mathrm{A}]$ と表される。

上の文中の四角に入る数式を答えよ。ただし、数式は $C_1$、 $C_2$、 $E$、 $\varepsilon_{\mathrm{r}}$、 $r$、 $L$ のうち必要なものを用いて表せ。

問8. 問6の操作の後で、時刻 $t=t_3\,[\mathrm{s}]$ においてコイルに抵抗を直列に接続したところ、電流振動の様子が変化した。問6で選択した波形に時刻 $t=t_3\,[\mathrm{s}]$ 以降の変化の概形を三周期分続けて描け。

解答の方針

【問1〜問3の方針】

着眼点

充電は「はじめ」と「最後」の状況図を並べる(下の図)。

2014年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2014年九州大学物理 第2問 解答の方針の図

途中は回路を1周する式で、電流は電池とコンデンサーの電圧の差に比例する(下の図)。

2014年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2014年九州大学物理 第2問 解答の方針の図

問3は、電流が電気量の増える速さであることに注目(下の図)。

2014年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2014年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
  1. 内部抵抗は電池と直列につながった抵抗とみなす。閉じた直後はコンデンサーの電圧が0で導線と同じなので、内部抵抗にかかる電圧は $E$ 。オームの法則で $I_{\mathrm{CM}}$ を求める(ア)。
  2. 途中の時刻で回路を1周する式を立て、 $V_{\mathrm{C}}$ を $I_{\mathrm{C}}$ で表して、電気量 $C_1V_{\mathrm{C}}$ を求める(イ)。
  3. 回路を1周する式から $I_{\mathrm{C}}$ を $E$ と $V_{\mathrm{C}}$ で表し、 $t=t_1$ からはじまり図2(b) を上下にひっくり返した形で0に近づくグラフを書く(問2)。
  4. 同じ $V_{\mathrm{C}}$ のときの電流を、内部抵抗が高い場合と低い場合で比べ、 $V_{\mathrm{C}}$ の増える速さの違いから、 $0.5E$ に達するまでに時間がかかる方を選ぶ。理由を150字以内にまとめる(問3)。

【問4・問5の方針】

着眼点

まず「何が一定か」を決める。問4は、スイッチ1を開いてから誘電体を入れるので電気量が一定。問5は、つないだ2枚の極板が電気の逃げ場がない島になり、電気量の合計が保存される(下の図)。

2014年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2014年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
  1. 誘電体を入れる前の電圧と電気量を求め、電気量が一定のまま、容量が $\varepsilon_{\mathrm{r}}$ 倍になったときの電圧 $V=\dfrac QC$ と静電エネルギー $U=\dfrac{Q^2}{2C}$ の倍率を求める(ウ〜オ)。
  2. スイッチ2を閉じたあとはAとBが並列なので、電圧が共通。その電圧を $V’$ とおく。
  3. 島の電気量の合計(AとBの電気量の和)がつなぐ前の合計に等しいとして $V’$ を求める(カ・キ)。
  4. $V’$ に各コンデンサーの容量をかけて、電気量を求める(ク・ケ)。

【問6〜問8の方針】

着眼点

問6は、振幅一定で (a)(c) を消し、残りは放電の向きで決める。電池の長い線が+極で、電流は+の極板から出る(下の図)。

2014年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2014年九州大学物理 第2問 解答の方針の図

問7は、リアクタンスが等しいとして周期、エネルギー保存で最大電流を決める。

  1. 抵抗が無いのでエネルギーが保存して振幅は一定。 (a)(c) を消す(問6)。
  2. 電池の向きから左の極板が+と決め、放電の電流がコイルを左から右へ流れることを確かめて、 (b) を消す。残った (d) を選ぶ(問6)。
  3. AとBは並列なので合成容量を求める。コイルとコンデンサーは電圧が等しく電流が共通なので、リアクタンスが等しい条件から周波数を求める(コ)。
  4. 電流が最大になるのは電気量が0になる瞬間で、静電エネルギーがすべてコイルのエネルギーに変わる。電気量の合計と合成容量から静電エネルギーを求め、コイルのエネルギーと等しいとして最大電流を求める(サ)。
  5. 抵抗でジュール熱が出てエネルギーが減るので、 $t_3$ から (d) と同じ向きにはじまり振幅だけが小さくなっていく波形を3周期分書く(問8)。

解答

2014年九州大学物理 第2問 解答・解説
2014年九州大学物理 第2問 解答・解説
2014年九州大学物理 第2問 解答・解説(続き)
2014年九州大学物理 第2問 解答・解説(続き)
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問1 空欄ア・イ

閉じた直後は、コンデンサーの電気量が0なので電圧も0。コンデンサーは導線と同じとみなせる(下の図の「スイッチ1を閉じた直後」)。電池から回路を1周すると、電池で $E$ 上がり、コンデンサーでは下がらないので、内部抵抗の電圧がちょうど $E$ 。オームの法則で

$$I_{\mathrm{CM}}=\frac{E}{r}$$

答(ア) $\dfrac{E}{r}$(2点)

閉じたあとの途中では、電流 $I_{\mathrm{C}}$ が内部抵抗を流れていて、回路を1周する式は

$$E=rI_{\mathrm{C}}+V_{\mathrm{C}}\qquad\therefore\ V_{\mathrm{C}}=E-rI_{\mathrm{C}}$$

電気量は「容量×電圧」。使ってよい文字に $V_{\mathrm{C}}$ が無いので、 $I_{\mathrm{C}}$ で表す。

答(イ) $C_1(E-rI_{\mathrm{C}})$(3点)

問2

問1の回路を1周する式より、電流は

$$I_{\mathrm{C}}=\frac{E-V_{\mathrm{C}}}{r}$$

$E-V_{\mathrm{C}}$ は、電池の電圧とコンデンサーの電圧の差。 $V_{\mathrm{C}}$ が0から $E$ に近づくにつれて、 $E-V_{\mathrm{C}}$ は $E$ から0に近づく。だから $I_{\mathrm{C}}$ は、図2(b) の $V_{\mathrm{C}}$ の曲線を上下にひっくり返した形になる(下の図で、矢印の長さが同じ)。

・$t<t_1$ :スイッチが開いているので、電流は0

・$t=t_1$ :電圧0なので、 $I_{\mathrm{C}}=\dfrac{E}{r}=I_{\mathrm{CM}}$ に跳ね上がる(縦軸の $I_{\mathrm{CM}}$ の高さ)

・$t>t_1$ :電圧の上がり方がゆるやかになるにつれて電流も減り方がゆるやかになり、0に近づく(0にぴったり着かず、横軸に近づく下に凸の曲線)

図2(b) と時間の目盛りをそろえ、 $t_1$ の位置を合わせて書く。

答 図( $t_1$ で0から $I_{\mathrm{CM}}$ に跳ね上がり、そこから下に凸の曲線で減って0に近づく)(4点)

(式は求められていないが、 $I_{\mathrm{C}}=\dfrac{E}{r}e^{-(t-t_1)/(rC_1)}$ 。指数関数は高校の範囲外なので、形だけ書ければよい)

問3

充電の電流は、問2の $I_{\mathrm{C}}=\dfrac{E-V_{\mathrm{C}}}{r}$ 。電流は単位時間に運ばれる電気量なので、これが大きいほどコンデンサーの電気量 $C_1V_{\mathrm{C}}$ は速く増え、電圧 $V_{\mathrm{C}}$ も速く上がる。同じ $V_{\mathrm{C}}$ のときの電流を比べると、内部抵抗 $r$ が高いほど小さい。だから $V_{\mathrm{C}}$ の増え方は遅く、 $0.5E$ に達するまでの時間は長い(下の図)。

答(選択) 内部抵抗の値が高い場合(2点)

答(理由) 解答例「充電中の電流は、電源電圧と極板間電圧の差を内部抵抗で割った値である。同じ極板間電圧で比べると、内部抵抗が高いほど電流は小さく、単位時間に運ばれる電気量が少ない。よって極板間電圧の増え方が遅く、0.5Eに達するまでの時間は長い。」(113字)(3点)

(入れる2点は「同じ極板間電圧なら内部抵抗が高いほど電流が小さい」と「電流が小さいので、電気量・極板間電圧の増え方が遅い」。参考:$0.5E$ になる時刻は $t_1+rC_1\log 2$ で、 $r$ に比例して遅くなる。範囲外)

問4 空欄ウ・エ・オ

スイッチ1を閉じてコンデンサーAの電圧が $E$ になったので、電気量は $C_1E$ 。スイッチ1を開くと電池から切り離されるので、この電気量 $C_1E$ は変わらない(着眼点の図の「充電後」→「誘電体を入れる」)。誘電体を入れると、容量は $\varepsilon_{\mathrm{r}}$ 倍の $\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1$ 。

答(ウ) $\varepsilon_{\mathrm{r}}$(2点)

電気量が一定なので、電圧は容量に反比例して

$$V=\frac{Q}{C}=\frac{C_1E}{\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1}=\frac{E}{\varepsilon_{\mathrm{r}}}$$

答(エ) $\dfrac{1}{\varepsilon_{\mathrm{r}}}$(2点)

電気量 $Q$ と容量 $C$ が分かっているので、静電エネルギーは $\dfrac{Q^2}{2C}$ の形で

$$U=\frac{(C_1E)^2}{2\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1}=\frac{1}{\varepsilon_{\mathrm{r}}}\cdot\frac{1}{2}C_1E^2$$

答(オ) $\dfrac{1}{\varepsilon_{\mathrm{r}}}$(2点)

(スイッチ1を閉じたまま誘電体を入れるなら、電圧が $E$ で一定になり、電気量とエネルギーが $\varepsilon_{\mathrm{r}}$ 倍になる。この問題は「開いてから」入れるので、エネルギーは小さくなる)

問5 空欄カ〜ケ

スイッチ2を閉じたあと、AとBは並列なので、電圧が共通。これを $V’$ とおく。Aの電気量は $\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1V’$ 、Bの電気量は $C_2V’$ 。

スイッチ1が開いているので、AとBの左の極板は電池につながらない島になる(下の図の「スイッチ2を閉じる」)。島の電気量の合計は、つなぐ前の合計 $C_1E+0$ のまま保存されるので

$$\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1V’+C_2V’=C_1E\qquad\therefore\ V’=\frac{C_1E}{\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1+C_2}$$

答(カ) $\dfrac{C_1E}{\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1+C_2}$(2点)

答(キ) $\dfrac{C_1E}{\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1+C_2}$(2点)

電気量は、容量に電圧 $V’$ をかけて

答(ク) $\dfrac{\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1^2E}{\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1+C_2}$(2点)

答(ケ) $\dfrac{C_1C_2E}{\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1+C_2}$(2点)

(確かめ:AとBの電気量の和は $C_1E$ にもどる)

問6

スイッチ3を閉じた直後は、コイルの自己誘導で電流は0から少しずつ増える。だから (a)〜(d) はどれも0からはじまる。ここから2段階で絞る。

1段階目は振幅。回路に抵抗が無いのでジュール熱が出ず、エネルギーが保存する。電流の最大値は変わらないので、振幅が減る (a) と、増える (c) は×。

2段階目ははじめの向き。(b) は負、(d) は正ではじまる。電池の記号の長い線が+極で、その+極は内部抵抗を通して左の導線につながっているので、コンデンサーの左の極板が+。スイッチ3を閉じると、電流は+の極板から出て、左の導線を通ってコイルを左から右へ流れる。これは図2(a) の $I_{\mathrm{L}}$ の矢印と同じ向きなので、はじめは正(下の図)。

答 (d)(3点)

問7 空欄コ・サ

コンデンサーAとBは並列なので、1つの合成容量 $C=\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1+C_2$ のコンデンサーとして扱える。コンデンサーとコイルは輪になってつながっているので、電圧が等しく、電流が共通。このとき、コンデンサーとコイルのリアクタンスが等しいので

$$\omega L=\frac{1}{\omega C}\qquad\therefore\ \omega=\frac{1}{\sqrt{LC}}$$

周波数は $f=\dfrac{\omega}{2\pi}$ なので

答(コ) $\dfrac{1}{2\pi\sqrt{L(\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1+C_2)}}$(3点)

電流が最大になるのは、コンデンサーの電気量が0になる瞬間で、このとき静電エネルギーはすべてコイルのエネルギーに変わっている。電気量は、スイッチ3を閉じる直前にAとBの左の極板にたまっていた合計 $C_1E$ 。合成容量 $C$ のコンデンサーに電気量 $C_1E$ がたまっていたと考えて、エネルギー保存より

$$\frac{(C_1E)^2}{2(\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1+C_2)}=\frac{1}{2}LI_{\max}^{\,2}\qquad\therefore\ I_{\max}=\frac{C_1E}{\sqrt{L(\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1+C_2)}}$$

答(サ) $\dfrac{C_1E}{\sqrt{L(\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1+C_2)}}$(4点)

問8

$t_3$ に、コイルに抵抗を直列につなぐ。 $t_3$ は問6の波形の3周期後で、電流は0、コンデンサーには最大の電気量がたまっている(左の極板が+)。つまり $t_2$ のときと同じ状態から、電流が0から正の向きに増えはじめる。

ただし、電流が流れるたびに抵抗でジュール熱が出て、回路のエネルギーが減っていく。エネルギーが減れば電流の最大値も小さくなるので、振幅がだんだん小さくなる(下の図)。

答 図( $t_3$ から0より正の向きに振れはじめ、振幅がだんだん小さくなる振動を3周期分)(2点)

(減っていく速さは抵抗の値で決まるが、値は与えられていないので、「減っていく」ことが分かるように書ければよい。周期はわずかに長くなるが範囲外なので、ほぼ同じに書いてよい)

別解

問7 サ (コンデンサーの電圧から) 問5の電圧 $V’$ が、合成容量 $\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1+C_2$ のコンデンサーにかかっている。電気量0になる瞬間のエネルギー保存より

$$\frac{1}{2}(\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1+C_2)V’^{\,2}=\frac{1}{2}LI_{\max}^{\,2}\qquad\therefore\ I_{\max}=V’\sqrt{\frac{\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1+C_2}{L}}=\frac{C_1E}{\sqrt{L(\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1+C_2)}}$$

本解は、問5で保存を確かめた電気量 $C_1E$ から求めた。式が短く、分母の根号に $\varepsilon_{\mathrm{r}}C_1+C_2$ がそのまま残る。

出題意図

問1 電池の内部抵抗を直列の抵抗とみて、閉じた直後の電流と、充電の途中の電気量を求めることができるか

問2 充電の電流が「電池の電圧とコンデンサーの電圧の差」に比例することを捉え、電流の時間変化のグラフを書けるか

問3 電流が電気量の増える速さであることから、内部抵抗と充電の速さの関係を言葉で説明できるか

問4 スイッチを開いたあとは電気量が一定であることを捉え、誘電体を入れたコンデンサーの容量・電圧・静電エネルギーの変化を求めることができるか

問5 コンデンサーをつないだとき、電圧が共通になることと、電気量の合計が保存されることから、電圧と電気量を求めることができるか

問6 電気振動の波形を、エネルギー保存と放電の電流の向きから選ぶことができるか

問7 並列の合成容量を使って、電気振動の周波数と最大電流を求めることができるか

問8 抵抗でエネルギーが失われると電気振動が減衰することを、波形で表せるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度標準
目標得点35点30点
目標時間25分25分

この年の合否を分けた大問。
交流(電気振動)が苦手な受験生が多く、交流をきちんと勉強しているかで差がついた。
コンデンサーの問題は最初に「何が一定か」を決め(スイッチを開いたら電気量、つないだままなら電圧)、電気振動は電流の向きをコンデンサーの+の極板から決める。
良問の風が完璧なら全部解けるので、電気振動を後回しにせず、電磁気は全範囲で標準レベルを完答しに行こう。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問5:スイッチ2を閉じたあとの電圧は、つなぐ前の電圧 $\dfrac{E}{\varepsilon_{\mathrm{r}}}$ のままではない。「左の極板の電気量の合計 $C_1E$ が保存される」と「並列なので電圧が共通」の2点に行き着けるか。ここを誤ると、問5の4つの空欄と、問7のサまで続けて落とす。
  • 問6:(a)(c) をエネルギー保存で消したあと、 (b) と (d) を電池の記号(長い線が+極)から決められるか。振幅一定だけでは (b)(d) の二択が残り、向きの判断を落とすと問8の波形もずれる。この大問の決め手。
  • 問3:電流が電気量の増える速さであることから、内部抵抗が高いほど増え方が遅いと、150字以内で説明できるか。

コラム ラジオの選局は、電気振動の周波数合わせ

問7で求めた電気振動の周波数 $f=\dfrac{1}{2\pi\sqrt{LC}}$ は、ラジオで放送局を選ぶしくみそのもの。

理科の教材のラジオでは、コイルと可変コンデンサー(バリコン)をつないだ回路が、選局に使われている。つまみを回すと、コンデンサーの容量 $C$ が変わる。 $C$ が変わると、この回路が最も強く反応する周波数が変わる。アンテナには多くの放送局の電波が届くが、回路の周波数に合った局の電波だけが強く反応して取り出される。これを共振という。

2014年九州大学物理 第2問 コラムの図
2014年九州大学物理 第2問 コラムの図
  • $f\propto\dfrac{1}{\sqrt{C}}$ なので、容量を4倍にすると周波数は半分になる。問7の式は、「つまみでCを変えると、選ぶ周波数が変わる」ことを表している。
  • ただし、この問題の電気振動は、電源の無い回路が自分の周波数で振動する自由な電気振動。ラジオは、外から来る電波に揺さぶられて強く反応する共振で、現象は少し違う。周波数の式は同じなので、式の意味は問7のまま使える。

2014年九州大学物理
第3問 解答・解説

第3問は熱力学の問題です。
テーマは「1 mol の単原子分子理想気体を、状態Oから定圧(A)・定積(B)・断熱(C)に変化させたときの温度・仕事・熱・内部エネルギーの変化を求め、3つの変化を T-V 図に書き直し、O→A→C→O のサイクルの熱効率を求める」。

問題

2014年九州大学物理 第3問 問題
2014年九州大学物理 第3問 問題
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次の文章を読み、以下の問いに答えよ。

1モルの単原子分子理想気体が、気密を保ちながら、なめらかに動くピストンをもつシリンダー内に閉じ込められている。この気体の圧力 $p$ と体積 $V$ の関係を図3に示す。状態Oの気体の圧力は $p_0$、体積は $V_0$ であり、その温度を $T_0$ とする。気体定数は $R$ で表す。この気体の定積モル比熱は $\dfrac32R$、定圧モル比熱は $\dfrac52R$ である。なお気体がした仕事は、気体が外部に対して仕事をした場合を正とし、気体が得た熱量は、気体が外部から熱を与えられた場合を正とする。

最初、気体を状態Oから圧力を $p_0$ に保ったまま、体積を $2V_0$ までゆっくりと変化させた。この状態を状態Aとする。

問1. 状態Aの温度 $T_{\mathrm{A}}$ を $T_0$ を用いて表せ。

問2. 状態O→状態Aの定圧変化の間に気体がした仕事 $W_{\mathrm{OA}}$ と、気体が得た熱量 $Q_{\mathrm{OA}}$ をそれぞれ $R$ と $T_0$ を用いて表せ。

次に、気体を一度状態Oに戻した。そして、状態Oから体積を $V_0$ に保ったまま、圧力を $0.5p_0$ までゆっくりと変化させた。この状態を状態Bとする。

問3. 状態Bの温度 $T_{\mathrm{B}}$ を $T_0$ を用いて表せ。

問4. 状態O→状態Bの定積変化の間に生じた気体の内部エネルギーの変化 $\Delta U_{\mathrm{OB}}$ を $R$ と $T_0$ を用いて表せ。

その後、再び気体を状態Oに戻した。そして、今度は状態Oから断熱状態を保ったまま、体積をゆっくりと $2V_0$ まで変化させた。この状態を状態Cとする。単原子分子理想気体の断熱変化では、 $pV^{5/3}=$ 一定 の関係が成立する。以下の問いでは数値は小数第2位まで求めよ。必要であれば $2^{-5/3}=0.315$ を用いてよい。

問5. 状態Cの圧力 $p_{\mathrm{C}}$ を $p_0$ を用いて表せ。

問6. 状態Cの温度 $T_{\mathrm{C}}$ を $T_0$ を用いて表せ。

問7. 状態O→状態Cの断熱変化の間に生じた気体の内部エネルギーの変化 $\Delta U_{\mathrm{OC}}$ と、気体がした仕事 $W_{\mathrm{OC}}$ をそれぞれ $R$ と $T_0$ を用いて表せ。

問8. 気体の温度 $T$ を縦軸に、気体の体積 $V$ を横軸にとって状態変化を描いた図を $T-V$ 図という。上に述べた状態O→状態Aの定圧変化、状態O→状態Bの定積変化、状態O→状態Cの断熱変化を解答紙の $T-V$ 図に描け。状態A、状態B、状態Cを図中に状態Oのように黒丸で記入し、状態Oからそれぞれの状態までの変化が直線の場合は実線で、曲線の場合は破線で示せ。曲線の場合は正確な関数形を描く必要はないが、上に凸の変化であるか、下に凸の変化であるかをはっきりと示すこと。

最後に、気体を状態O→状態A→状態C→状態Oとゆっくり変化させるサイクルを考える。ここで、状態O→状態Aは定圧変化、状態A→状態Cは定積変化、状態C→状態Oは断熱変化である。

問9. 状態A→状態Cの定積変化の間に気体が得た熱量 $Q_{\mathrm{AC}}$ を $R$ と $T_0$ を用いて表せ。

問10. このサイクルの熱効率 $e$ を求めよ。

解答の方針

【問1〜問4の方針】

着眼点

熱力学は「何変化か」を決めてから式を立てる。O→A は定圧、O→B は定積で、温度は比だけで決まる(下の図)。

2014年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
2014年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
  1. 1 mol なので $p_0V_0=RT_0$ が基準。O→A は定圧なので $V\propto T$ で、体積の倍率から $T_{\mathrm{A}}$ を求める(問1)。
  2. 定圧の仕事 $W_{\mathrm{OA}}=p_0\Delta V$ を $RT_0$ で表す。定圧の熱は $nC_p\Delta T$ で一発。 $Q_{\mathrm{OA}}=\dfrac52R(T_{\mathrm{A}}-T_0)$ (問2)。
  3. O→B は定積なので $p\propto T$ 。圧力の倍率から $T_{\mathrm{B}}$ を求める(問3)。
  4. 定積は $W=0$ なので $Q=\Delta U$ 。 $\Delta U_{\mathrm{OB}}=\dfrac32R(T_{\mathrm{B}}-T_0)$ (問4)。

【問5〜問7の方針】

着眼点

O→C は断熱なので、固有の式は $Q=0$ とポアソンの式。圧力を聞く問5 は $pV^{5/3}=$ 一定、温度を聞く問6 は $TV^{2/3}=$ 一定を使う。仕事は $W=-\Delta U$ 。

  1. O と C でポアソンの式 $p_0V_0^{5/3}=p_{\mathrm{C}}(2V_0)^{5/3}$ を立て、 $2^{-5/3}=0.315$ を使って小数第2位に丸める(問5)。
  2. $pV^{5/3}=$ 一定 を $TV^{2/3}=$ 一定 に直し、O と C で立てる。 $2^{-2/3}=2\times2^{-5/3}$ として $T_{\mathrm{C}}$ を求める(問6)。
  3. 断熱なので $\Delta U_{\mathrm{OC}}=\dfrac32R(T_{\mathrm{C}}-T_0)$ 、 $W_{\mathrm{OC}}=-\Delta U_{\mathrm{OC}}$ (問7)。

【問8の方針】

着眼点

p-V 図は、過程ごとに「何変化か」から T と V の関係式を作って T-V 図に書き直す。体積の軸をそろえて上下に並べると対応が見える(下の図)。

2014年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
2014年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
  1. 定圧 O→A は、状態方程式を $T=\dfrac pRV$ と変形すると $p$ が一定なので、原点を通る直線の一部(実線)。
  2. 定積 O→B は、体積が変わらないので $V=V_0$ の縦の直線(実線)。
  3. 断熱 O→C は、 $TV^{2/3}=$ 一定 より $T=\dfrac{(\text{定数})}{V^{2/3}}$ 。体積が増えると温度が下がり、下がり方がだんだんゆるやかになるので、右下がりで下に凸の曲線(破線)。指示は「直線は実線、曲線は破線」。
  4. 問1・問3・問6 の温度から A・B・C の位置を決めて黒丸を打ち、状態Oからそれぞれ結ぶ。

【問9・問10の方針】

着眼点

サイクルでは、熱を吸収する区間を先に判定する。熱効率の分母は吸収した熱だけで、「1 −(正の数)」の形にそろえる(下の図)。

2014年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
2014年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
  1. O→A は膨張して温度が上がるので吸収、A→C は定積で温度が下がるので放出、C→O は断熱なので熱の出入りがない。A→C は定積なので $W=0$ 、 $Q_{\mathrm{AC}}=\Delta U_{\mathrm{AC}}=\dfrac32R(T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{A}})$ (問9)。
  2. 吸収した熱量は $Q_{in}=Q_{\mathrm{OA}}$ 、放出した熱量の大きさは $Q_{out}=-Q_{\mathrm{AC}}$ 。 $e=1-\dfrac{Q_{out}}{Q_{in}}$ に入れる(問10)。

解答

2014年九州大学物理 第3問 解答・解説
2014年九州大学物理 第3問 解答・解説
2014年九州大学物理 第3問 解答・解説(続き)
2014年九州大学物理 第3問 解答・解説(続き)
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問1

O→A は圧力 $p_0$ のまま体積が $V_0$ から $2V_0$ になる定圧変化。1 mol の状態方程式 $p_0V=RT$ で $p_0$ と $R$ が一定なので $V\propto T$ 。体積が2倍なので温度も2倍。

答 $T_{\mathrm{A}}=2T_0$(3点)

問2

定圧変化の仕事は $W=p\Delta V$ なので

$$W_{\mathrm{OA}}=p_0(2V_0-V_0)=p_0V_0=RT_0$$

定圧の熱は、定圧モル比熱 $\dfrac52R$ を使ってすぐに

$$Q_{\mathrm{OA}}=1\cdot\dfrac52R(T_{\mathrm{A}}-T_0)=\dfrac52RT_0$$

答 $W_{\mathrm{OA}}=RT_0$(3点)

答 $Q_{\mathrm{OA}}=\dfrac52RT_0$(3点)

(確かめ: $\Delta U=\dfrac32R(T_{\mathrm{A}}-T_0)=\dfrac32RT_0$ と $W_{\mathrm{OA}}$ の和でも同じ。定圧は $Q:\Delta U:W=5:3:2$ )

問3

O→B は体積が $V_0$ のまま圧力が $0.5p_0$ になる定積変化。状態方程式 $pV_0=RT$ で $V_0$ と $R$ が一定なので $p\propto T$ 。圧力が $\dfrac12$ 倍なので温度も $\dfrac12$ 倍。

答 $T_{\mathrm{B}}=\dfrac12T_0$(3点)

問4

定積なので $W=0$ 。第一法則 $Q=\Delta U+W$ より $Q=\Delta U$ 。内部エネルギーの変化は「後−前」で

$$\Delta U_{\mathrm{OB}}=\dfrac32R(T_{\mathrm{B}}-T_0)=\dfrac32R\left(\dfrac12T_0-T_0\right)=-\dfrac34RT_0$$

答 $\Delta U_{\mathrm{OB}}=-\dfrac34RT_0$(3点)

(温度が下がるので負。熱を放出して内部エネルギーが減る)

問5

O→C は断熱なので、ポアソンの式 $pV^{5/3}=$ 一定 を O と C で立てる。

$$p_0V_0^{5/3}=p_{\mathrm{C}}(2V_0)^{5/3}\qquad\therefore\ p_{\mathrm{C}}=2^{-5/3}p_0$$

問題が与えた $2^{-5/3}=0.315$ を入れると $p_{\mathrm{C}}=0.315p_0$ 。小数第2位までなので

答 $p_{\mathrm{C}}=0.32p_0$(3点)

(体積が2倍になったのに、圧力は $\dfrac12$ 倍までは下がらず $0.32$ 倍。断熱では温度も下がるので、圧力は等温より大きく下がる)

問6

温度を聞かれているので、ポアソンの式を T と V の形にする。 $p=\dfrac{RT}{V}$ を $pV^{5/3}=$ 一定 に入れると

$$\dfrac{RT}{V}V^{5/3}=RTV^{2/3}\qquad\therefore\ TV^{2/3}=\text{一定}$$

これを O と C で立てて

$$T_0V_0^{2/3}=T_{\mathrm{C}}(2V_0)^{2/3}\qquad\therefore\ T_{\mathrm{C}}=2^{-2/3}T_0$$

与えられた値は $2^{-5/3}$ なので、 $2^{-2/3}=2\times2^{-5/3}=2\times0.315=0.630$ 。

答 $T_{\mathrm{C}}=0.63T_0$(3点)

(体積が増えたので、断熱膨張で温度は下がる。符号と合う)

問7

O→C は断熱なので $Q=0$ 。内部エネルギーの変化は「後−前」で

$$\Delta U_{\mathrm{OC}}=\dfrac32R(T_{\mathrm{C}}-T_0)=\dfrac32R(0.63-1)T_0=-0.555RT_0$$

小数第2位までなので $-0.56RT_0$ 。第一法則 $0=\Delta U+W$ より $W_{\mathrm{OC}}=-\Delta U_{\mathrm{OC}}$ 。

答 $\Delta U_{\mathrm{OC}}=-0.56RT_0$(3点)

答 $W_{\mathrm{OC}}=0.56RT_0$(3点)

(温度が下がって内部エネルギーが減った分だけ、気体は膨張して外に仕事をする)

問8

状態O、A、B、C の温度は、問1・問3・問6 より $T_0$ 、 $2T_0$ 、 $0.5T_0$ 、 $0.63T_0$ 。体積は $V_0$ 、 $2V_0$ 、 $V_0$ 、 $2V_0$ 。求めた温度を p-V 図に書き込むと下の図になる。

・O→A(定圧):$T=\dfrac{p_0}{R}V$ 。原点を通る直線の一部で、O $(V_0,\ T_0)$ から A $(2V_0,\ 2T_0)$ へ(実線)

・O→B(定積):$V=V_0$ の縦の直線で、O から B $(V_0,\ 0.5T_0)$ へ下がる(実線)

・O→C(断熱):$T=T_0\left(\dfrac{V_0}{V}\right)^{2/3}$ 。右下がりで、O から C $(2V_0,\ 0.63T_0)$ へ(破線)

断熱の曲線が下に凸なのは、 $T\propto V^{-2/3}$ の傾きの大きさ $\dfrac23V^{-5/3}$ が、体積が増えるほど小さくなる(だんだんゆるやかになる)から。確かめると、 $V=1.5V_0$ での温度は $1.5^{-2/3}T_0\fallingdotseq0.76T_0$ で、O と C を結ぶ直線の中点の高さ $\dfrac{1+0.63}{2}T_0\fallingdotseq0.82T_0$ より下を通る。 $0.63T_0$ は、目盛りの $0.6T_0$ と $0.7T_0$ の間に打つ。

答 下の図(O→A・O→B は直線=実線、O→C は下に凸の曲線=破線、A・B・C に黒丸)(5点)

問9

A→C は体積が $2V_0$ のままの定積変化なので $W=0$ 、 $Q=\Delta U$ 。温度は $T_{\mathrm{A}}=2T_0$ から $T_{\mathrm{C}}=0.63T_0$ に下がる。

$$Q_{\mathrm{AC}}=\Delta U_{\mathrm{AC}}=\dfrac32R(0.63T_0-2T_0)=-2.055RT_0$$

答 $Q_{\mathrm{AC}}=-2.06RT_0$(3点)

(「得た熱量」を聞かれているので負のまま答える。負は、熱を放出したということ)

問10

熱の出入りを区間ごとに表で整理する( $Q$ は吸収した熱量、 $W$ は気体がした仕事で、値は $RT_0$ を単位とし、途中の値は丸めない)。

区間$Q$$\Delta U$$W$
O→A(定圧)$\dfrac52$$\dfrac32$$1$
A→C(定積)$-2.055$$-2.055$$0$
C→O(断熱)$0$$0.555$$-0.555$
1サイクル$0.445$$0$$0.445$

熱を吸収するのは O→A だけなので $Q_{in}=Q_{\mathrm{OA}}=\dfrac52RT_0$ 、放出した熱量の大きさは $Q_{out}=-Q_{\mathrm{AC}}=2.055RT_0$ 。熱効率は「1 −(正の数)」の形で

$$e=1-\dfrac{Q_{out}}{Q_{in}}=1-\dfrac{2.055}{2.5}=0.178$$

答 $e=0.18$(5点)

(表の1サイクルの行から $e=\dfrac{W}{Q_{in}}=\dfrac{0.445}{2.5}=0.178$ でも同じ。1サイクルでもとの状態に戻るので $\Delta U$ の合計は0)

別解

問6 (状態方程式の比) 問5 の圧力を使う、問題の誘導どおりの解き方。 $T\propto pV$ なので

$$\dfrac{T_{\mathrm{C}}}{T_0}=\dfrac{p_{\mathrm{C}}\cdot2V_0}{p_0V_0}=2\times0.315=0.63$$

丸めた $0.32$ ではなく、問5 の途中の値 $0.315$ を使う( $2\times0.32=0.64$ になってしまう)。

問10 (仕事から) 1サイクルの仕事は、O→A の仕事 $RT_0$ と C→O の仕事 $-0.555RT_0$ の和で $0.445RT_0$ 。吸収した熱量 $Q_{in}=\dfrac52RT_0$ で割って

$$e=\dfrac{W}{Q_{in}}=\dfrac{0.445}{2.5}=0.178\fallingdotseq0.18$$

出題意図

問1〜問4 何変化かを捉え、状態方程式と熱力学第一法則から、温度・仕事・熱・内部エネルギーの変化を求めることができるか

問5〜問7 与えられたポアソンの式から断熱変化後の圧力・温度を求め、断熱では $W=-\Delta U$ と使い分けることができるか

問8 p-V 図の3つの変化を、T-V 図(原点を通る直線・縦の直線・下に凸の曲線)に書き直すことができるか

問9・問10 サイクルで熱を吸収する区間を見抜き、熱効率を求めることができるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや簡単
目標得点40点40点
目標時間25分25分

状態方程式と熱力学第一法則、それに「何変化か」を決める習慣があれば全部取れる、熱サイクルの典型問題。
定圧は $nC_p\Delta T$ 、定積は $Q=\Delta U$ 、断熱は $W=-\Delta U$ という型を、白紙に再現できるかどうかがすべて。
どの学部も満点を取りたい大問で、差がつくとしたら問8 だけなので、直線は実線・曲線は破線という指示まで含めて、自分の手で書ける状態にしておこう。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問8:差がつくとしたらここだけ。断熱の曲線が右下がりで下に凸になることを、 $TV^{2/3}=$ 一定 の式から自分で判断できるか。定圧が原点を通る直線になることも、状態方程式から導けるようにしておく。
  • 問10:熱を吸収する区間が O→A だけだと見抜けるか。A→C の熱を分母に足したり、符号を取りちがえたりしない。

コラム p-V 図を T-V 図に書き直す型

九大の熱力学は、p-V 図で与えられたサイクルを T-V 図に書き直させる問題が頻出で、2014年(問8)と2021年(第3問 (5))が出ている。書き直しは、変化ごとに「何変化か」から T と V の関係式を作れば、次の4つの型で済む。単原子分子理想気体で、状態方程式 $pV=RT$ (1 mol)から作る。

変化T と V の関係T-V 図の形
定積$V=$ 一定縦の直線
定圧$T=\dfrac pRV$ ( $p$ が一定)原点を通る直線。傾き $\dfrac pR$ は圧力が大きいほど急
等温$T=$ 一定横(水平)の直線
断熱$TV^{2/3}=$ 一定右下がりで、下に凸の曲線
  • 断熱の式は、ポアソンの式 $pV^{5/3}=$ 一定 に $p=\dfrac{RT}{V}$ を入れて作る。問題文が圧力と体積の形で与えていても、T-V 図に直すときは T と V の形に変える。
  • 断熱は等温(水平)より急に下がる。 $T\propto V^{-2/3}$ の傾きの大きさ $\dfrac23V^{-5/3}$ は、体積が増えるほど小さくなるので、下に凸になる。
  • 線の種類の指示は年によって違う。2014年は「直線は実線、曲線は破線」、2021年は「直線は破線、曲線は実線」。答案を書く前に、問題文の指示を確かめる。

2014年九州大学・物理の
講評とまとめ

3問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。

大問難易度医学部医学科その他の学部
第1問標準40点35点
第2問標準35点30点
第3問やや簡単40点40点
全体標準105点90点

大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で105点、その他の学部で90点)にはなりません。

標準的な年で、この年の合否を分けたのは第2問です。
第1問は、ひたすら状況をきちんと把握できるかが問われる大問です。
第2問は、前半のコンデンサーは典型ですが、交流(電気振動)が苦手な受験生が多く、交流をきちんと勉強しているかで差がつきました。
第3問はやや簡単で、どの学部も満点を取りたい大問です。

解く流れ

第3問 → 第2問 → 第1問。

2014年九州大学・物理に
関するよくある質問

2014年の九州大学・物理について、よく聞かれる質問にお答えします。

2014年の九州大学・物理は難しかった?

標準的な年でした。
第1問と第2問は標準、第3問はやや簡単です。
第2問は交流(電気振動)が苦手な受験生が多く、この年の合否を分けた大問でした。

2014年の九州大学・物理は何点取れば合格できる?

目標点は、医学部医学科で105点、その他の学部で90点です(125点満点)。

2014年の九州大学・物理はどこで差がつく?

第3問は典型の流れで取り切れる大問で、差がつくのは第1問の後半と第2問の次の3つでした。

  • 第1問 問5 (1)(2):台が加速しているので台の上から見て慣性力を入れ、斜面方向の重力の成分と慣性力の成分が打ち消し合うと気づけたか。
  • 第2問 問5:スイッチ2を閉じたあとは、「左の極板の電気量の合計が保存される」と「並列なので電圧が共通」の2点に行き着けたか。
  • 第2問 問6:振幅一定で (a)(c) を消したあと、(b) と (d) を電池の記号(長い線が+極)から決められたか。
2014年の九州大学・物理は何が出題された?

大問ごとの単元は、次のとおりです。

  • 第1問:力学
  • 第2問:電磁気
  • 第3問:熱力学

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