【解説・配点付き】2016年九州大学物理の解答・解説
2016年の九州大学・物理の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2016年九州大学物理
第1問 解答・解説
この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は力学の問題です。
テーマは「ばねの発射装置から離れて独立に動く小物体A、B。A はばねにつながれた単振動、B は等速。壁で折り返した B が $x=0$ で A と相対速度 0 でふたたび接する条件(壁の位置 $D_p$ )、質量が等しいときの弾性衝突をはさむ周期運動の条件(壁の位置 $L_p$ )と A の位置–時間グラフ」。
問題


問題文をテキストで読む
大きさが無視できる2つの小物体AとBの運動について、以下の問いに答えよ。小物体A、Bはともに同一の直線上を運動し、すべての摩擦ならびに空気抵抗およびバネの質量は無視できるものとする。また、衝突はすべて弾性衝突とする。
問1. 図1に示すような、小物体の発射装置を考える。図1(a)に示すように、質量 $M_{\mathrm{A}}$ の小物体Aは、一端を壁に固定されたバネ定数 $k$ のバネに取りつけられ、水平な床の上に置かれている。図1に示すように $x$ 軸を選び、バネが自然長のときの小物体Aの位置を $x$ 座標の原点 $x=0$ とする。
次に、質量 $M_{\mathrm{B}}$ の小物体Bを小物体Aに接触させながら $x$ 軸の負の方向に移動させ、図1(b)に示すように、小物体Aの位置が $x=-x_0\ (x_0>0)$ となったときに静止させた。時刻 $t=0$ で小物体Bを静かに離したあとの2つの小物体の運動について、以下の問いに答えよ。ただし、原点 $x=0$ において、小物体Aと小物体Bの間に作用する抗力は0となり、 $x>0$ の領域においては小物体AとBは独立に運動する。解答は、特に指定のない限り $M_{\mathrm{A}}$、 $M_{\mathrm{B}}$、 $k$、 $x_0$、 $t$ の中から必要なものを使って表すこと。
(1) 小物体Aが原点 $x=0$ を初めて通過するときの速さ $v_0$ を求めよ。
(2) 小物体Aが原点 $x=0$ を初めて通過する時刻 $t_0$ を求めよ。
(3) 時刻 $t_0$ 以降の小物体Aの位置を表す関数 $x_{\mathrm{A}}(t)$ の式を示せ。必要であれば、解答に $t_0$ を用いてもよい。
(4) 時刻 $t_0$ 以降の小物体Bの位置を表す関数 $x_{\mathrm{B}}(t)$ の式を示せ。必要であれば、解答に $t_0$ を用いてもよい。
問2. 次に、図2に示すように、 $x>0$ の領域に反射壁を固定し、図1と同じ発射装置から小物体Bを発射して運動を観測した。発射する条件は問1と同一である。
反射壁を固定する位置を、 $x>0$ の領域で図2に示すように発射装置に近い方から徐々に遠い位置に変えて小物体Bを発射した。この過程で、反射壁を $x=D_0$ の位置に固定したときに、以下のような小物体AとBの周期運動が初めて観測された。
小物体AとBは、時刻 $t=0$ で運動を開始した。時刻 $t=t_0$ で小物体Aと離れて独立に運動した小物体Bは、時刻 $t=t_1$ で反射壁と衝突した。反射壁に衝突した小物体Bは再び小物体Aと接触し、一体となった。2つの小物体が一体となるとき、小物体Aに対する小物体Bの相対速度は0であった。この後、小物体Bは小物体Aと一体となって運動し、再び発射されるという周期運動をした。
以下の問いに答えよ。解答は、 $M_{\mathrm{A}}$、 $M_{\mathrm{B}}$、 $k$、 $x_0$、 $t_0$ の中から必要なものを使って表すこと。
(1) 反射壁の位置 $x=D_0$ を求めよ。また、小物体Bが初めて反射壁に衝突した時刻 $t=t_1$ を求めよ。
(2) 反射壁が位置 $x=D_0$ に固定されている場合の周期運動について、小物体Aの位置を表す関数 $x_{\mathrm{A}}(t)$ と小物体Bの位置を表す関数 $x_{\mathrm{B}}(t)$ の概形を、時刻 $t=0$ から始まる1周期についてそれぞれ図示せよ。
このような、1周期内に反射壁と1回衝突する周期運動をもれなく探したところ、反射壁を固定する位置が、 $x=D_0$、 $x=D_1$、 $x=D_2$、…、 $x=D_p$、…のときにだけ生ずることがわかった(ただし、 $D_0<D_1<D_2<\cdots<D_p<\cdots$)。以下の問いに答えよ。解答は、 $M_{\mathrm{A}}$、 $M_{\mathrm{B}}$、 $k$、 $x_0$、 $t_0$ の中から必要なものを使って表すこと。
(3) 小物体AとBが上に述べたような周期運動をするために、反射壁の位置 $x=D_p$ が満たすべき条件を $p$ を含む式で示せ。ただし、 $p=0,\ 1,\ 2,\ \cdots$ である。
問3. 最後に、図3に示すように、質量が等しい2つの小物体 $(M_{\mathrm{A}}=M_{\mathrm{B}}=M)$ を用いて運動を観測した。その他の条件は、問2と同一である。この条件では、問2に記した周期運動に加えて、以下のような周期運動も観測されることがわかった。
小物体AとBは時刻 $t=0$ で運動を開始し、時刻 $t=t_0$ で小物体Aと離れた小物体Bは、 $x=L_p$ の位置に固定した反射壁と1回目の衝突をした。次に、小物体Bは $x=0$ の位置で小物体Aと衝突した。その後、小物体Bは $x=L_p$ の位置に固定した反射壁と2回目の衝突をして、再び小物体Aと接触し、一体となった。2つの小物体が一体となるとき、小物体Aに対する小物体Bの相対速度は0であった。この後、小物体Bは小物体Aと一体となって運動し、再び発射されるという周期運動をした。
このような、1周期内に反射壁と2回衝突する周期運動をもれなく探したところ、反射壁を $x=L_0$、 $x=L_1$、 $x=L_2$、…、 $x=L_p$、…に固定したときにだけ生ずることがわかった(ただし、 $L_0<L_1<L_2<\cdots<L_p<\cdots$)。以下の問いに答えよ。解答は、 $M$、 $k$、 $x_0$、 $t_0$ の中から必要なものを使って表すこと。
(1) 小物体AとBが上に述べた周期運動をするために、反射壁の位置 $x=L_p$ が満たすべき条件を $p$ を含む式で示せ。ただし、 $p=0,\ 1,\ 2,\ \cdots$ である。
(2) 反射壁が $x=L_0$ の位置に固定されている場合の周期運動における小物体Aの位置を表す関数 $x_{\mathrm{A}}(t)$ の概形を図示せよ。時刻 $t=0$ から始まる1周期を描き、 $x_{\mathrm{A}}(t)$ の最大値を与える時刻 $t$ とそのときの最大値を図中に記入せよ。
解答の方針
【問1の方針】
まず運動を想像する。ばねを縮めて放すと、A がばねに押され、A が B を押して、2つは一体で加速する。ばねが自然長にもどる $x=0$ でばねの力が0になり、A は B を押さなくなる。 $x>0$ ではばねが A を引いて減速させるが、B にはもう力がはたらかないので、B は同じ速さで先へ進む。つまり自然長( $x=0$ )で B が A から離れる。離れたあとは別々の運動で、B は等速、A は質量が $M_{\mathrm{A}}$ になった新しい単振動(質量が変わるので、振幅・周期は一体のときとは別物。下の図)。


- 一体の間は質量 $M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}$ 、ばね定数 $k$ の単振動(端 $x=-x_0$ 、中心 $x=0$ )。端と中心の2点でエネルギー保存を立て、 $v_0$ を求める((1))。
- 端から中心までは周期の $\dfrac14$ なので、 $t_0$ を求める((2))。
- 離れたあとの A の単振動を定義し直す。質量 $M_{\mathrm{A}}$ 、中心 $x=0$ 、時刻 $t_0$ に $x=0$ を正の向きに速さ $v_0$ で通る。エネルギー保存で振幅を求め、角振動数と合わせて $x_{\mathrm{A}}(t)$ を式にする((3))。
- B は時刻 $t_0$ に $x=0$ から速さ $v_0$ で等速に進む((4))。
【問2の方針】
B は壁で弾性衝突して速さを変えずに折り返し、 $x=0$ の側へもどってくる。B が A と相対速度 0 で接する(一体になる)には、A の速度も B と同じ向き・同じ速さでなければならない。A 単独の速さは単振動のエネルギー保存から $v_0$ を超えず、 $v_0$ になれるのは $x=0$ を通るときだけ。だから、A が $x=0$ を負の向きに速さ $v_0$ で通る瞬間に、B が $x=0$ にもどってくることが周期運動の条件になる。(1) は最も近い壁(A が $x=0$ を負の向きに通る1回目)、(3) は何回目に合わせるかで壁の位置が決まる(下の図)。(2) のグラフは「一体で単振動 → 離れる → 壁で折り返す → 一体にもどる」の往復で、行きと帰りが $t_1$ について対称になる(時間を逆向きに見ても同じ運動)。


- 離れた時刻 $t_0$ から測った時間 $s=t-t_0$ で考える。A が $x=0$ を負の向きに通るのは $s=\dfrac{T_1}{2},\ \dfrac{3T_1}{2},\ \cdots$ ( $T_1$ は A 単独の周期)。B が壁を往復して $x=0$ にもどるまでの時間は $\dfrac{2D}{v_0}$ 。
- 最も近い壁 $D_0$ は、 $\dfrac{2D_0}{v_0}=\dfrac{T_1}{2}$ とおいて求める。 $t_1$ は B が壁に着く時刻 $t_0+\dfrac{D_0}{v_0}$ ((1))。
- グラフは3つの区間「 $0\leqq t\leqq t_0$ (一体)」「離れている間」「一体にもどって $-x_0$ まで」に分ける。A は区間ごとの単振動の式、B は離れている間だけ折れ線((2))。
- $\dfrac{2D_p}{v_0}$ を A の半周期の奇数倍とおく((3))。
【問3の方針】
質量が等しい弾性衝突は、速度が入れかわる。B が1回目に $x=0$ にもどったとき A が $x=0$ を正の向きに通っていれば、向かい合って衝突して速度が入れかわり、A は負の向き、B は正の向きに $x=0$ から出ていく。B はもう一度壁を往復するので、2回目にもどったとき A が $x=0$ を負の向き(B と同じ速度)で通っていれば、相対速度 0 で一体になる(下の図)。A のグラフは衝突の時刻で速度が急に変わるので、なめらかにつながらない。


- 質量を $M$ にそろえて、問1・問2 の $v_0$ 、 $t_0$ 、 $T_1$ を書き直す。
- 1回目の条件:B の往復の時間 $\dfrac{2L}{v_0}$ が、A が $x=0$ を正の向きに通る時刻に合うように置く。
- 衝突後の A は、 $x=0$ を負の向きに速さ $v_0$ で出発する単振動と定義し直す。2回目も往復の時間は同じなので、A は $x=0$ を負の向きに通り、一体になる。
- (2) は区間ごとに A の式を決め、山・谷の値と時刻を書き込む。
解答






解答をテキストで読む
問1 (1)
A と B が一体の間、水平方向にはたらく力はばねの力と A が B を押す力だけで、A が B を押す力は、A と B にそれぞれ大きさが同じで符号が逆の仕事をするので、仕事の和は 0。だから、ばねと A、B をまとめた力学的エネルギーが保存する。 $x=-x_0$ (速さ 0)と $x=0$ (ばねの力 0、速さ $v_0$ )で
$$\frac12kx_0^{\,2}=\frac12(M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}})v_0^{\,2}$$
(離れる理由:一体の加速度は $a=-\dfrac{kx}{M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}}$ で、B にはたらく力は A からの抗力 $N$ だけ。 $N=M_{\mathrm{B}}a=-\dfrac{M_{\mathrm{B}}k}{M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}}x$ は $x=0$ で 0 になり、 $x>0$ では負になれない。押すだけの力なので $x=0$ で離れる。問題文は「原点で抗力が 0 になる」と最初から与えている)
答 $v_0=x_0\sqrt{\dfrac{k}{M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}}}$(4点)
問1 (2)
一体の間は質量 $M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}$ 、ばね定数 $k$ の単振動で、周期は $T_0=2\pi\sqrt{\dfrac{M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}}{k}}$ 。時刻 0 に端 $x=-x_0$ (速さ 0)から出発し、はじめて中心 $x=0$ を通るのは、端から中心までなので周期の $\dfrac14$ 。
答 $t_0=\dfrac{\pi}{2}\sqrt{\dfrac{M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}}{k}}$(4点)
問1 (3)
$x=0$ を過ぎると B は離れるので、A は質量 $M_{\mathrm{A}}$ 、ばね定数 $k$ のばねだけの単振動になる。中心は自然長の $x=0$ 、角振動数は $\omega_1=\sqrt{\dfrac{k}{M_{\mathrm{A}}}}$ (周期 $T_1=2\pi\sqrt{\dfrac{M_{\mathrm{A}}}{k}}$ )。時刻 $t_0$ に中心を正の向きに速さ $v_0$ で通るので、 $x_{\mathrm{A}}=A_1\sin\omega_1(t-t_0)$ の形。中心の速さが最大なので、振幅 $A_1$ は A だけのエネルギー保存から
$$\frac12M_{\mathrm{A}}v_0^{\,2}=\frac12kA_1^{\,2}\qquad\therefore\ A_1=v_0\sqrt{\frac{M_{\mathrm{A}}}{k}}=x_0\sqrt{\frac{M_{\mathrm{A}}}{M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}}}$$
A は質量が小さくなったぶん振幅が $x_0$ より小さくなる(下の図)。
答 $x_{\mathrm{A}}(t)=x_0\sqrt{\dfrac{M_{\mathrm{A}}}{M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}}}\,\sin\left\{\sqrt{\dfrac{k}{M_{\mathrm{A}}}}\,(t-t_0)\right\}$(5点)
問1 (4)
$x>0$ の B にはたらく力は 0 なので、B は時刻 $t_0$ に $x=0$ を速さ $v_0$ で通ったまま等速。位置は $t_0$ からの時間 $t-t_0$ に比例する。
答 $x_{\mathrm{B}}(t)=x_0\sqrt{\dfrac{k}{M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}}}\,(t-t_0)$(5点)
( $=v_0(t-t_0)$ 。 $t_0$ では、B の直線の傾き $v_0$ と A の曲線の傾き $A_1\omega_1=v_0$ が同じ。そのあとは A が減速するので、B が前に出ていく)
問2 (1)
時間を $s=t-t_0$ とする。B は壁( $x=D$ )で弾性衝突して速さ $v_0$ のまま折り返し、 $s=\dfrac{2D}{v_0}$ に $x=0$ へもどってくる(速度は負の向きに $v_0$ )。一体になる条件は相対速度 0 で、A も負の向きに速さ $v_0$ でなければならない。A の単振動のエネルギー保存 $\dfrac12M_{\mathrm{A}}v^2+\dfrac12kx^2=\dfrac12M_{\mathrm{A}}v_0^{\,2}$ より、A の速さが $v_0$ になれるのは $x=0$ を通るときだけ。A が $x=0$ を負の向きに通るのは $s=\dfrac{T_1}{2},\ \dfrac{3T_1}{2},\ \cdots$ で、いちばん近い壁は1回目に合わせたとき。
$$\frac{2D_0}{v_0}=\frac{T_1}{2}\qquad\therefore\ D_0=\frac{v_0T_1}{4}=x_0\sqrt{\frac{k}{M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}}}\cdot\frac{\pi}{2}\sqrt{\frac{M_{\mathrm{A}}}{k}}$$
B が壁に着く時刻は $t_1=t_0+\dfrac{D_0}{v_0}=t_0+\dfrac{T_1}{4}$ 。このとき A は振幅の端( $x=A_1$ )にいる(下の図)。
答( $D_0$ ) $D_0=\dfrac{\pi x_0}{2}\sqrt{\dfrac{M_{\mathrm{A}}}{M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}}}$(4点)
答( $t_1$ ) $t_1=t_0+\dfrac{\pi}{2}\sqrt{\dfrac{M_{\mathrm{A}}}{k}}$(3点)
( $t_0$ だけで書けば $t_1=t_0\left(1+\sqrt{\dfrac{M_{\mathrm{A}}}{M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}}}\right)$ 。 $t_0=\dfrac{\pi}{2}\sqrt{\dfrac{M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}}{k}}$ を使うと同じ)
問2 (2)
運動を3つの区間に分けて、下の図の順に書く。 $\omega_0=\sqrt{\dfrac{k}{M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}}}=\dfrac{\pi}{2t_0}$ 、 $\omega_1=\sqrt{\dfrac{k}{M_{\mathrm{A}}}}$ とおく。
・$0\leqq t\leqq t_0$ (A、B が一体): $x_{\mathrm{A}}=x_{\mathrm{B}}=-x_0\cos\omega_0t$ 。 $-x_0$ から出発して、 $t_0$ に $0$ を通る
・$t_0\leqq t\leqq 2t_1-t_0$ (離れている間): $x_{\mathrm{A}}=A_1\sin\omega_1(t-t_0)$ で、 $t_1$ に最大値 $A_1=x_0\sqrt{\dfrac{M_{\mathrm{A}}}{M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}}}$ 、 $2t_1-t_0$ に $0$ にもどる。 $x_{\mathrm{B}}$ は $t_0$ から $t_1$ まで傾き $v_0$ の直線で $D_0$ まで上がり、 $t_1$ から $2t_1-t_0$ まで傾き $-v_0$ の直線で $0$ までもどる
・$2t_1-t_0\leqq t\leqq 2t_1$ (A、B が一体): $x=0$ を速さ $v_0$ で負の向きに通り、 $-x_0$ まで進んで止まる(最初と同じ状態。 $x_{\mathrm{A}}=x_{\mathrm{B}}=-x_0\sin\omega_0(t-2t_1+t_0)$ )
どちらのグラフも $t=t_1$ について左右対称で、1周期は $2t_1=2t_0+\pi\sqrt{\dfrac{M_{\mathrm{A}}}{k}}$ 。B の直線は $t_0$ で A の曲線と同じ傾き $v_0$ で(なめらかに)つながり、 $2t_1-t_0$ で A と同じ傾き $-v_0$ で $0$ に着く。B は $D_0>A_1$ まで進むので、離れている間は B の方がいつも上にある。
(図は $M_{\mathrm{B}}=3M_{\mathrm{A}}$ の場合の形。 $t_1$ の位置などは質量の比で変わる)
答 上の図( $x_{\mathrm{A}}$ : $-x_0$ → $0$ ( $t_0$ )→ 最大 $A_1$ ( $t_1$ )→ $0$ ( $2t_1-t_0$ )→ $-x_0$ ( $2t_1$ )、 $x_{\mathrm{B}}$ : $t_0$ から $t_1$ で $D_0$ まで上がり $2t_1-t_0$ で $0$ にもどる折れ線)(5点)
問2 (3)
$D_p$ は、B の往復の時間 $\dfrac{2D_p}{v_0}$ を、A が $x=0$ を負の向きに通る $(p+1)$ 回目の時刻 $s=\left(p+\dfrac12\right)T_1$ に合わせたもの( $p=0$ が (1))。
$$\frac{2D_p}{v_0}=\left(p+\frac12\right)T_1\qquad\therefore\ D_p=\left(p+\frac12\right)\frac{v_0T_1}{2}=(2p+1)D_0$$
(確かめ:帰り道で B が $x=0$ の手前で A にぶつからないこと。B が $x=0$ に着く $u$ 秒前の B の位置は $v_0u$ 、A の位置は $A_1\sin\omega_1u$ 。 $\sin\theta\leqq\theta$ と $v_0=A_1\omega_1$ より $A_1\sin\omega_1u\leqq v_0u$ で、B はいつも A より右にいる。行きも同じ理由で B が A より右)
答 $D_p=\dfrac{(2p+1)\pi x_0}{2}\sqrt{\dfrac{M_{\mathrm{A}}}{M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}}}$(5点)
問3 (1)
質量を $M$ にそろえると、 $A_1=\dfrac{x_0}{\sqrt2}$ 、 $T_1=2\pi\sqrt{\dfrac{M}{k}}$ 、 $t_0=\dfrac{\pi}{2}\sqrt{\dfrac{2M}{k}}$ 。B が壁を往復して $x=0$ にもどる時間は $\dfrac{2L}{v_0}$ 。
・1回目:もどった B(負の向きに $v_0$ )が A と向かい合って衝突するには、A が $x=0$ を正の向きに通っていること。A が $t_0$ に $x=0$ を正の向きに出たあと、もう一度 $x=0$ を正の向きに通るのは $s=T_1,\ 2T_1,\ \cdots$ 。弾性衝突で質量が等しいので速度が入れかわり(運動量保存と反発係数の式を連立しても同じ)、A は負の向き、B は正の向きに速さ $v_0$ で $x=0$ から出る
・2回目:A は $x=0$ から負の向きに出発する新しい単振動で、B は同じ $\dfrac{2L}{v_0}$ で往復する。A が $x=0$ を負の向きに通るのは出発から $T_1$ の整数倍なので、1回目の条件 $\dfrac{2L}{v_0}=(\text{整数})T_1$ のままで、B と A はともに負の向きに $v_0$ で $x=0$ に着き、相対速度 0 で一体になる
以上より、条件は1本。
$$\frac{2L_p}{v_0}=(p+1)T_1\qquad\therefore\ L_p=(p+1)\frac{v_0T_1}{2}$$
$v_0\cdot\dfrac{T_1}{2}=x_0\sqrt{\dfrac{k}{2M}}\cdot\pi\sqrt{\dfrac{M}{k}}=\dfrac{\pi x_0}{\sqrt2}$ なので
答 $L_p=\dfrac{(p+1)\pi x_0}{\sqrt2}$(5点)
( $D_p$ と並べると、質量が等しいとき $D_p=\dfrac{(2p+1)\pi x_0}{2\sqrt2}$ と $L_p=\dfrac{(2p+2)\pi x_0}{2\sqrt2}$ が交互に並ぶ。下のコラム)
問3 (2)
$L_0$ の場合は $\dfrac{2L_0}{v_0}=T_1$ 。 $T_1=2\sqrt2\,t_0$ 、 $A_1=\dfrac{x_0}{\sqrt2}$ を使い、4つの区間に分ける。
・$0\leqq t\leqq t_0$ : $-x_0$ から出発して $t_0$ に $0$ (一体)
・$t_0\leqq t\leqq t_0+T_1$ : $x_{\mathrm{A}}=A_1\sin\omega_1(t-t_0)$ 。山(最大 $\dfrac{x_0}{\sqrt2}$ 、時刻 $t_0+\dfrac{T_1}{4}=\left(1+\dfrac{\sqrt2}{2}\right)t_0$ )→ 谷 → $t_0+T_1$ に $0$ にもどる
・$t_0+T_1$ に衝突して速度が $+v_0$ から $-v_0$ に急に変わるので、グラフはとがる。 $t_0+T_1\leqq t\leqq t_0+2T_1$ : $x_{\mathrm{A}}=-A_1\sin\omega_1(t-t_0-T_1)$ 。谷 → 山(最大 $\dfrac{x_0}{\sqrt2}$ 、時刻 $t_0+\dfrac{7T_1}{4}=\left(1+\dfrac{7\sqrt2}{2}\right)t_0$ )→ $t_0+2T_1$ に $0$
・$t_0+2T_1\leqq t\leqq 2t_0+2T_1$ (一体): $0$ から $-x_0$ まで。1周期は $2t_0+2T_1=(2+4\sqrt2)\,t_0$
全体が真ん中の時刻 $t_0+T_1$ について左右対称(山が2つ、谷が2つ)。
答 上の図( 最大値 $\dfrac{x_0}{\sqrt2}$ を与える時刻は $\left(1+\dfrac{\sqrt2}{2}\right)t_0$ と $\left(1+\dfrac{7\sqrt2}{2}\right)t_0$ の2つ)(5点)
別解
問1 (1) (単振動の最大の速さで) 一体の単振動の振幅は $x_0$ 、角振動数は $\omega_0=\sqrt{\dfrac{k}{M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}}}$ 。中心の速さが最大で、その値は $v_0=x_0\omega_0$ 。
$$v_0=x_0\sqrt{\frac{k}{M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}}}$$
中心の速さだけを聞かれたときの速い道。本解は、 $x=0$ 以外の位置の速さにも使える形(エネルギー保存)にした。
問1 (3) (振幅を $v_0=A_1\omega_1$ から) A の単振動は、中心の速さ $v_0$ と角振動数 $\omega_1$ から $A_1=\dfrac{v_0}{\omega_1}$ 。これを (1) の $v_0$ に入れても同じ $A_1=x_0\sqrt{\dfrac{M_{\mathrm{A}}}{M_{\mathrm{A}}+M_{\mathrm{B}}}}$ 。
出題意図
問1 (1)〜(4) 自然長で離れる2物体のその後の運動を、B は等速、A は質量が変わった新しい単振動と捉えて、エネルギー保存と周期で表すことができるか
問2 (1)(3) B が壁で折り返して A と相対速度 0 で接する条件を、A の単振動と B の往復の時間の関係に読みかえることができるか
問2 (2) A と B の運動を、時間の流れに沿って位置–時間のグラフに表すことができるか
問3 (1)(2) 質量が等しい弾性衝突(速度の入れかわり)をはさんだ周期運動の条件を求め、グラフに表すことができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや難 | |
| 目標得点 | 35点 | 25点 |
| 目標時間 | 25分 | 25分 |
この年の差がついた大問。
決め手は、設定を読み取って運動を想像できるかどうか。
A と B がどう往復し、どこで出会い、なぜ周期運動になるのかを、時間軸の上に並べて書けるかが問われる。
九大の力学は単振動が頻出で、基本の単振動が解けるだけでは後半は取れない。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2 (1):ここを越えないと問2・問3 が続かない小問。B と A が相対速度 0 で接するのは、A が $x=0$ を負の向きに速さ $v_0$ で通る瞬間だけ(A の速さは $v_0$ が最大)と気づけるか。気づけば、B の往復の時間と A の半周期を等しくおく1本の式になる。(1) を間違えると (2)(3) と問3 まで道連れ。
- 問3 (1):運動を想像できるか。質量が等しい弾性衝突は速度が入れかわる、という知識を周期運動の条件に組みこみ、「1回目は A が $x=0$ を正の向き、2回目は負の向きに通る」と読める発想に行き着けるか。竜文会の傾向記事でも、ここ(問3)が基本問題だけで練習した受験生の壁になると見ている。
- 問3 (2):グラフの真ん中がとがること(衝突で速度が $+v_0$ から $-v_0$ に急に変わる)と、最大値を与える時刻が2つあることまで書き切れるか。
コラム 壁の位置は「A の半周期の何倍か」で決まる
問2 の $D_p$ と問3 の $L_p$ は、別々の問題に見えて同じ考え方でつながっている。B が壁を往復して $x=0$ にもどる時間 $\dfrac{2d}{v_0}$ を、A の周期 $T_1$ で測ると、何が起きるかが決まる。
| B の往復の時間 | B がもどったときの A | 起こること |
|—|—|—|
| $T_1$ の半分の奇数倍 | $x=0$ を負の向きに速さ $v_0$ で通る | 相対速度 0 で一体になる(問2。壁は $D_p$ ) |
| $T_1$ の整数倍 | $x=0$ を正の向きに速さ $v_0$ で通る | 向かい合って衝突。質量が等しければ速度が入れかわり、2回目で一体になる(問3。壁は $L_p$ ) |
| それ以外 | B が A に当たる位置・速さが合わない | 相対速度が 0 にならず、衝突をくり返して周期運動にならない |
- 質量が等しいとき、壁の位置は $\dfrac{v_0T_1}{4}$ を単位にして、奇数倍が $D_p$ 、偶数倍が $L_p$ と交互に並ぶ。「周期運動になる条件は、時間の条件を1本立てるだけ」と見抜けば、式の数は少なくて済む。
2016年九州大学物理
第2問 解答・解説
第2問は電磁気の問題です。
テーマは「導体中の自由電子が電場から受ける力と、速さに比例する抵抗力とがつりあうモデルから、電流・抵抗・抵抗率を導き、温度による抵抗の変化(温度係数)を求める。後半は、その導体に磁場をかけたときのホール効果で、ローレンツ力と電場の力のつりあいから、ホール電圧と自由電子の数密度の関係を導く」。
問題


問題文をテキストで読む
以下の問いに答えよ。
図1に示すように、辺 $a$、 $b\,[\mathrm{m}]$ の長方形の断面をもった長さ $l\,[\mathrm{m}]$ の一様な導体中に電気量 $-e\,[\mathrm{C}]\ (e>0)$ をもつ自由電子が、数密度 $n\,[\text{個}/\mathrm{m}^3]$ で分布しているとする。 $l$ は $a$、 $b$ に比べ十分に大きいとする。導体の両端に電圧 $V\,[\mathrm{V}]$ を印加すると自由電子は導体内の電場から力を受け、加速されて進む。自由電子は金属イオン等との衝突により抵抗力を受け、やがて抵抗力が電場から受ける力とつりあって、一定の速さで移動するようになる。この抵抗力の大きさが自由電子の速さ $v\,[\mathrm{m/s}]$ に比例し、 $kv$( $k$ は比例定数)で表されるものとする。 $v$ が一定になった時点で流れる電流の大きさを $I\,[\mathrm{A}]$ とする。
問1. 導体に流れる電流の大きさ $I\,[\mathrm{A}]$ を $e$、 $n$、 $a$、 $b$、 $l$、 $v$、 $V$、 $k$ の中から必要な記号を用いて表せ。
問2. 自由電子が電場から受ける力と抵抗力とがつりあうときの電子の速さ $v\,[\mathrm{m/s}]$ を $e$、 $n$、 $a$、 $b$、 $l$、 $V$、 $k$ の中から必要なものを用いて表せ。
問3. 電気抵抗 $R\,[\Omega]$ と抵抗率 $\rho\,[\Omega\cdot\mathrm{m}]$ を $e$、 $n$、 $a$、 $b$、 $l$、 $k$ の中から必要なものを用いて表せ。
問4. 長さ $l=10.0\ \mathrm{m}$、辺の長さ $a=b=4.00\times10^{-4}\ \mathrm{m}$ の導体があり、その抵抗率が温度 $20.0\ ℃$ で $1.60\times10^{-8}\ \Omega\cdot\mathrm{m}$ である。抵抗率の温度係数 $\beta$ を $4.30\times10^{-3}\,[1/℃]$ とする。なお温度 $0.00\ ℃$ における抵抗率を $\rho_0$ とすると、温度 $t\,[℃]$ における抵抗率は $\rho_0(1+\beta t)\,[\Omega\cdot\mathrm{m}]$ と与えられる。
(1) 温度 $20.0\ ℃$ におけるこの導体の抵抗値を求めよ。
(2) この導体の両端に電圧 $3.00\ \mathrm{V}$ を印加した。このときに流れる電流の大きさと $1.00$ 時間あたりに発生するジュール熱を求めよ。このとき導体の温度は $20.0\ ℃$ に保たれているものとする。
(3) この導体の温度 $100\ ℃$ における抵抗値を求めよ。
(4) 導体の温度を上げると、その抵抗値が増加する理由を60字以内で説明せよ。
次にホール効果について考察する。電流の担い手(キャリア)が自由電子である場合を考える。図2のように辺の長さが各々 $a$、 $b$、 $c\,[\mathrm{m}]$ であるような直方体の試料に、 $y$ 軸の正方向に大きさが $I\,[\mathrm{A}]$ の一定の電流を流し、磁束密度の大きさが $B\,[\mathrm{T}]$ の一様な磁場を $z$ 軸の正の向きに加える。試料の自由電子の数密度は $n\,[\text{個}/\mathrm{m}^3]$ であるとする。
問5. 試料中を速さ $v\,[\mathrm{m/s}]$ で $y$ 軸に平行に動く電子1個にはたらくローレンツ力の大きさ $f_M\,[\mathrm{N}]$ と向きを求めよ。大きさは $e$、 $n$、 $a$、 $b$、 $c$、 $I$、 $B$、 $v$ の中から必要なものを用いて表せ。
問6. ローレンツ力によって自由電子の分布に偏りが生じ、これによって試料の平行な2面の間に大きさ $E\,[\mathrm{V/m}]$ の電場が発生する。このローレンツ力によって発生する電場から電子1個が受ける力の大きさ $f_E\,[\mathrm{N}]$ と向きを求めよ。大きさは $e$、 $n$、 $a$、 $b$、 $c$、 $I$、 $B$、 $v$、 $E$ の中から必要なものを用いて表せ。
問7. 一定時間ののち問5の大きさが $f_M\,[\mathrm{N}]$ のローレンツ力と問6の電場による大きさ $f_E\,[\mathrm{N}]$ の力とがつりあう。このとき、磁束密度の大きさ $B\,[\mathrm{T}]$ とローレンツ力により発生した電場の大きさ $E\,[\mathrm{V/m}]$ との間に成り立つ関係式を記せ。
問8. 試料に加えられた磁場の磁束密度の大きさ $B\,[\mathrm{T}]$、流れている電流の大きさ $I\,[\mathrm{A}]$、およびローレンツ力により発生した電場に垂直な試料の2面の間の電位差 $V_H\,[\mathrm{V}]$ を測定することによって、試料中の自由電子の数密度 $n\,[\text{個}/\mathrm{m}^3]$ を求めることができる。数密度 $n$ を $e$、 $a$、 $b$、 $c$、 $I$、 $B$、 $V_H$ の中から必要なものを用いて表せ。
解答の方針
【問1〜問4の方針】
電流は「1秒間に断面を通る電気量」。電子は1秒間に $v$ だけ進むので、断面を底面とする長さ $v$ の柱の中の電子が、ちょうど1秒間に断面を通る。電子は負の電荷なので、動く向きは電流と逆。電子が一定の速さで動くのは、電場から受ける力と、速さに比例する抵抗力がつりあっているときで、この「電子1個」の力の図が出発点になる(下の図)。


$R$ と $\rho$ は、電圧 $V$ と電流 $I$ の関係を $V=(\cdots)I$ の形にすれば $R$ が読め、 $R=\rho\dfrac{l}{ab}$ と比べれば $\rho$ が読める。
問4は、同じ導体の抵抗は抵抗率に比例するので、抵抗の比は抵抗率の比で決まる。温度係数の式 $\rho_0(1+\beta t)$ は、問題文のとおり基準が $0\ ℃$ で、問題に与えられた $20.0\ ℃$ の値は基準ではない。論述は、問3で抵抗率が抵抗力の比例定数 $k$ で決まることを求めたので、温度が上がると $k$ がなぜ大きくなるかを、金属の中の様子で説明する。
- 長さ $v$ の柱(断面積 $ab$)の中の電子の数に電気量 $e$ をかけて、 $I$ を求める(問1)。
- 導体内の電場の強さ $\dfrac Vl$ から電子が受ける力 $eE$ を求め、抵抗力 $kv$ とつりあわせて $v$ を求める(問2)。
- 問1の $I$ に問2の $v$ を入れて $V=(\cdots)I$ の形にし、 $R$ を読む。 $R=\rho\dfrac{l}{ab}$ と比べて $\rho$ を求める(問3)。
- $R=\rho\dfrac{l}{ab}$ に数値を入れる(問4 (1))。 $I=\dfrac VR$、ジュール熱は電力×時間(秒)で求める(問4 (2))。
- $20.0\ ℃$ の抵抗に、 $\dfrac{1+\beta\times100}{1+\beta\times20.0}$ をかける(問4 (3))。
- 陽イオンの熱振動 → 自由電子との衝突 → $k$、の順に言葉にする(問4 (4))。
【問5〜問8の方針】
ホール効果は、電子1個の力のつりあいで導く。電流は $y$ 軸の正の向きなので、電子は電流と逆の $y$ 軸の負の向きに動く。磁場から力を受けて電子が一方の面に偏ると、その面が負・反対の面が正になり、電場が生じて電子に逆向きの力がはたらく。2つの力がつりあうと、電子は偏らなくなる(定常状態)。
向きは、立体の図のままでは読みにくいので、$z$ 軸の正の側から見た図に書き直して決める(下の図)。


ホール電圧は「電場×電場の向きに向かい合う2面の間の距離」。この距離が3辺 $a$、 $b$、 $c$ のどれかを、図で確かめる。
- 上から見た図を書き、電子の動く向き(電流と逆)を書き込む(問5の準備)。
- ローレンツ力 $evB$ の向きを、正の電荷として左手の法則で決め、電子は負なので逆にする(問5)。
- 電子がたまる面と電場の向きを図で決め、電場から電子が受ける力 $eE$ の向きを決める(問6)。
- $evB=eE$ から、 $E$ と $B$ の関係を求める(問7)。
- $V_H=E\times$(距離)と、問1と同じ数え方の $I=enabv$ から $v$ を消して、 $n$ を求める(問8)。
解答




解答をテキストで読む
問1
電子は1秒間に $v$ だけ進む。よって、断面を1秒間に通る電子は、断面(面積 $ab$)を底面とする長さ $v$ の柱(体積 $abv$)の中の電子。電子の数は $nabv$ 個で、1個の電気量の大きさは $e$。電流は「1秒間に断面を通る電気量」なので
$$I=e\times nabv$$
答 $I=enabv$(4点)
問2
導体の両端の電圧が $V$、長さが $l$ なので、導体の中の電場の強さは $E=\dfrac Vl$。電子は負の電荷なので、電場と逆向き(動く向き)に大きさ $eE=\dfrac{eV}{l}$ の力を受ける。抵抗力 $kv$ は動く向きと逆。電子が一定の速さで動くとき、2つの力はつりあうので
$$\frac{eV}{l}=kv$$
答 $v=\dfrac{eV}{kl}$(3点)
問3
問1の $I$ に問2の $v$ を入れて、 $V=(\cdots)I$ の形にする。
$$I=enab\cdot\frac{eV}{kl}=\frac{e^2nab}{kl}V\qquad\therefore\ V=\frac{kl}{e^2nab}\,I$$
$V=RI$ と比べて
答($R$) $R=\dfrac{kl}{e^2nab}$(3点)
$R=\rho\dfrac{l}{ab}$ と比べると、 $\dfrac{kl}{e^2nab}=\rho\dfrac{l}{ab}$ より
答($\rho$) $\rho=\dfrac{k}{e^2n}$(3点)
($\rho$ は、 $l$ や $ab$ によらず、導体の材質($k$・$n$)だけで決まる)
問4 (1)
$$R=\rho\frac{l}{ab}=1.60\times10^{-8}\times\frac{10.0}{(4.00\times10^{-4})^2}=1.60\times10^{-8}\times\frac{10.0}{1.60\times10^{-7}}$$
答 $1.00\ \Omega$(2点)
問4 (2)
電流は、オームの法則より
$$I=\frac{V}{R}=\frac{3.00}{1.00}=3.00\ \mathrm{A}$$
答(電流の大きさ) $3.00\ \mathrm{A}$(2点)
電力は $VI=3.00\times3.00=9.00\ \mathrm{W}$。 $1.00$ 時間は $3600\ \mathrm{s}$ なので、ジュール熱は
$$9.00\times3600=3.24\times10^{4}\ \mathrm{J}$$
答(ジュール熱) $3.24\times10^{4}\ \mathrm{J}$(2点)
問4 (3)
同じ導体なので、長さ $l$ と断面積 $ab$ は変わらず、抵抗は抵抗率に比例する。問題文の式 $\rho_0(1+\beta t)$ は基準が $0\ ℃$ で、 $20.0\ ℃$ の値は $\rho_0(1+\beta\times20.0)$、 $100\ ℃$ の値は $\rho_0(1+\beta\times100)$。 $\rho_0$ が共通なので、 $20.0\ ℃$ の抵抗 $1.00\ \Omega$(問4 (1))に比をかけて
$$R_{100}=1.00\times\frac{1+4.30\times10^{-3}\times100}{1+4.30\times10^{-3}\times20.0}=1.00\times\frac{1.430}{1.086}=1.316\cdots$$
答 $1.32\ \Omega$(5点)
($1.00\times(1+4.30\times10^{-3}\times80.0)=1.34\ \Omega$ は誤り。 $20.0\ ℃$ の値は基準 $\rho_0$ ではないので、そこから $80.0\ ℃$ 分を足してはいけない)
問4 (4)
抵抗は、自由電子が受ける抵抗力の大きさで決まる(問3:$R=\dfrac{kl}{e^2nab}$ で $k$ が大きいほど $R$ が大きい)。温度が上がると、陽イオンの熱振動が激しくなり、動く自由電子が陽イオンにぶつかる回数が増える。つまり電子の動きが妨げられ、 $k$ が大きくなるので、抵抗が増える(下の図)。
答 温度が上がると陽イオンの熱振動が激しくなり、自由電子が陽イオンと衝突する回数が増えて動きが妨げられるため。(53字)(5点)
問5
電子は電流($y$ 軸の正の向き)と逆の、$y$ 軸の負の向きに速さ $v$ で動く。磁場は $z$ 軸の正の向きで、電子の速度と垂直なので、ローレンツ力の大きさは電気量の大きさ×速さ×磁束密度。
$$f_M=evB$$
向きは、正の電荷なら速度 $-y$ 向き、磁場 $+z$ 向きのとき、フレミングの左手の法則で $x$ 軸の負の向きに力を受ける。電子は負なので、その逆の $x$ 軸の正の向き(下の図)。
答(大きさ) $f_M=evB$(2点)
答(向き) $x$ 軸の正の向き(1点)
問6
電子は $x$ 軸の正の向きに力を受けるので、 $x$ 軸の正の側の面に電子がたまって負に帯電し、反対側($x$ 軸の負の側)の面は電子が減って正に帯電する。電場は正から負へ向かうので、$x$ 軸の正の向き(上から見た図の下向き)。電子は負の電荷なので、電場から受ける力は電場と逆の $x$ 軸の負の向きで、ローレンツ力と逆向き。
$$f_E=eE$$
答(大きさ) $f_E=eE$(2点)
答(向き) $x$ 軸の負の向き(1点)
問7
電子が $x$ 方向に動かなくなる(定常状態)のは、 $f_M$ と $f_E$ がつりあうとき。
$$evB=eE$$
答 $E=vB$(2点)
問8
ホール電圧 $V_H$ は電場の向き($x$ 方向)に向かい合う2面の間の電位差。その距離は図2の $b$($c$ ではない)なので
$$V_H=Eb=vBb$$
電流 $I$ は、電流に垂直な断面($x$ 方向の辺 $b$ と $z$ 方向の辺 $a$ の長方形、面積 $ab$)を通る。問1と同じ数え方で $I=enabv$ なので $v=\dfrac{I}{enab}$。これを入れると、 $b$ が約分されて消える。
$$V_H=\frac{I}{enab}\cdot Bb=\frac{IB}{ena}$$
$n$ について解いて
答 $n=\dfrac{IB}{eaV_H}$(3点)
(電流・磁場・ホール電圧を測れば、自由電子の数密度が求まる。 $c$ は答えに入らない)
別解
問4 (3) ($0\ ℃$ の抵抗率を先に求める解き方) $20.0\ ℃$ の抵抗率 $1.60\times10^{-8}\ \Omega\cdot\mathrm m$ は $\rho_0(1+\beta\times20.0)$ に等しいので
$$\rho_0=\frac{1.60\times10^{-8}}{1+4.30\times10^{-3}\times20.0}=1.473\cdots\times10^{-8}\ \Omega\cdot\mathrm m$$
$100\ ℃$ の抵抗率は $\rho_{100}=\rho_0\times(1+4.30\times10^{-3}\times100)=2.106\cdots\times10^{-8}\ \Omega\cdot\mathrm m$。抵抗は $R_{100}=\rho_{100}\dfrac{l}{ab}=2.106\times10^{-8}\times\dfrac{10.0}{1.60\times10^{-7}}=1.316\cdots\ \Omega$。同じ $1.32\ \Omega$。途中の数値が増えるので、本解は比で解いた。
問5 (電流の向きで決める) 電子が $-y$ 向きに動くことは、電流が $+y$ 向きに流れていることと同じ。電流 $+y$ 向き、磁場 $+z$ 向きでフレミングの左手の法則を使うと、力は $x$ 軸の正の向き。負の電荷が逆向きに動くので、ローレンツ力の向きは「正の電荷が電流の向きに動くとき」と同じになる。
出題意図
問1〜問3 自由電子のモデルから、電流 → 抵抗 → 抵抗率を導くことができるか
問4 (1)〜(3) 抵抗率の式に数値を入れ、温度係数の式の基準が $0\ ℃$ であることを踏まえて $100\ ℃$ の抵抗を求めることができるか
問4 (4) 温度による抵抗の変化を、陽イオンの熱振動と自由電子の衝突で説明できるか
問5〜問7 負の電荷である電子について、ローレンツ力と電場の力の向きを決め、つりあいを立てることができるか
問8 ホール電圧と電流の式を組み合わせ、自由電子の数密度を求めることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 40点 | 40点 |
| 目標時間 | 20分 | 20分 |
誘導なしでも解けるレベルまで持っていきたい基本問題で、どの学部も満点を取りたい。
自由電子のモデルとホール効果は、どちらも「電子1個に注目して力のつりあいを立てる」大問で、良問の風・名問の森の基本問題が白紙に再現できれば満点を狙える。
この年は第1問が難しいので、この大問は全受験生が満点を取ってくる気合いで確実に取る。
差がつく所・失点しやすい所
- 問4 (3):温度係数の式の基準が $0\ ℃$ であることに気づけるか。 $20.0\ ℃$ の値から $80.0\ ℃$ 分を足すと $1.34\ \Omega$ になり、誤りになる。この大問でいちばん差がつく。
- 問5・問6:電子が負の電荷であることを、向きまで落とし込めるか。電子は電流と逆向きに動く → ローレンツ力は $x$ 軸の正の向き → $+x$ 側の面が負 → 電場の力は $x$ 軸の負の向き、と図を書いて順に追う。
- 問8:ホール電圧に使う距離が $b$ であることに行き着けるか。電場の向きに向かい合う2面の間隔を図で確かめる。 $c$ を使うと誤りになる。
コラム ホール素子(磁気センサー)
問8は、ホール電圧 $V_H$ から自由電子の数密度 $n$ を求める問題だった。式 $V_H=\dfrac{IB}{ena}$ を $B$ について解くと $B=\dfrac{enaV_H}{I}$ で、$n$ と $a$ が分かっている板に電流 $I$ を流してホール電圧を測れば、磁束密度 $B$ が分かる。これが、磁場を電圧に変えて測るホール素子(磁気センサー)の原理。


- 式の読み方:電流と磁場が同じなら、ホール電圧は数密度 $n$ に反比例する。つまり $n$ が小さい物質ほど、同じ磁場に対して大きな電圧が出る。ホール素子が半導体を使った素子として作られているのは、この式の読み方と合う。
- 実際の使われ方:旭化成が1983年に、インジウムアンチモン(InSb)の薄膜を使ったホール素子の量産を始めた。ビデオデッキ・フロッピーディスクドライブ・CD-ROM・冷却ファンなどに使われるブラシレスモーターの回転の検出が、おもな用途だった。この業績は2026年にIEEEマイルストーンに認定されている。
- キャリアの種類が分かる:問題の向きで電子(負)ならホール電圧は $x$ 軸の正の側の面が負になる。正の電荷が電流を運んでいる物質(p型半導体)なら、たまる電荷が逆になり、ホール電圧の符号が逆になる。符号を見れば、電流を運んでいるのが電子か正の電荷かを区別できる。
2016年九州大学物理
第3問 解答・解説
第3問は波動の問題です。
テーマは「凸レンズの写像公式を相似から導き、物体とスクリーンを固定してレンズを動かしたときの位置と倍率、虫眼鏡の虚像の作図と位置、2枚のレンズ(顕微鏡)の倍率、対物レンズを焦点距離の短いものに交換したときの物体の移動と倍率を答える」。
問題


問題文をテキストで読む
以下の問いに答えよ。
図1のように、凸レンズLの光軸上に物体AA′がある。点FとF′はレンズLの焦点であり、 $f$ は焦点距離である。点OはレンズLの中心であり、点PはA′Pが光軸に平行となるレンズL中の点である。物体AA′の位置は、レンズLの前方(左側)であり、焦点Fの外側である。
図1は、点A′から出た光の一部が進む経路を破線で示している。レンズLを通過した光は、レンズの後方(右側)で集まり、実像BB′を形成している。物体AA′とレンズLの距離を $a$、実像BB′とレンズLの距離を $b$ とする。なお、レンズの厚さは無視できるものとする。
問1. ( ① )から( ⑤ )に適する記号または数式を $a$、 $b$、 $f$ の中から必要なものを用いて答えよ。
図1より、△AA′Oは△BB′Oに相似であるため、 $\dfrac{\mathrm{AA’}}{\mathrm{BB’}}=\dfrac{(\quad\text{①}\quad)}{(\quad\text{②}\quad)}$ となる。また、△OPF′は△BB′F′に相似であるため、 $\dfrac{\mathrm{OP}}{\mathrm{BB’}}=\dfrac{(\quad\text{③}\quad)}{(\quad\text{④}\quad)}$ である。以上より $a$、 $b$、 $f$ の間にはレンズの式( ⑤ )が成立することがわかる。
$f=16\ \mathrm{cm}$、 $a=20\ \mathrm{cm}$ の場合を考える。このとき、レンズLの後方(右側)に形成される実像の位置にスクリーンを設置し、これを固定した。物体AA′を動かさずに、レンズLを光軸に沿って後方(右側)へ移動させると、ある位置でスクリーン上に再び鮮明な像が現れた。
問2. スクリーン上に再び鮮明な像が現れたときの物体AA′とレンズLの距離を求めよ。また、このときのスクリーン上での像の倍率を求めよ。
次に、虫眼鏡による物体の観察方法を考える。この方法では、物体AA′の位置は、図2のようにレンズLの前方(左側)、焦点Fの内側である。AA′から出た光は、レンズLを通過した後に広がってしまうが、レンズLの後方(右側)から観察すると、観測者はAA′の方向に拡大された虚像(CC′)を肉眼で見ることができる。
問3. 点A′から出て、①点Pへ向かう光が進む経路と②点Oへ向かう光が進む経路をそれぞれ解答図に示せ。さらに、③虚像CC′の位置と大きさを作図により示せ。解答図には①、②、③を明記すること。
問4. $f=16\ \mathrm{cm}$、AA′とLの距離を $12\ \mathrm{cm}$ とするとき、レンズLと虚像CC′の距離を求めよ。
今度は、2枚の凸レンズを組み合わせて、顕微鏡の仕組みを利用して物体の拡大像を得る。図3のように、光軸上に物体AA′、凸レンズ $\mathrm{L_1}$、凸レンズ $\mathrm{L_2}$ を設置した。レンズ $\mathrm{L_1}$ の焦点は点 $\mathrm{F_1}$ と $\mathrm{F_1′}$ であり、焦点距離は $f_1$ である。また、レンズ $\mathrm{L_2}$ の焦点は点 $\mathrm{F_2}$ と $\mathrm{F_2′}$ であり、焦点距離は $f_2$ である。
物体AA′の位置はレンズ $\mathrm{L_1}$ の焦点 $\mathrm{F_1}$ の外側であり、 $\mathrm{L_1}$ によってAA′の実像DD′が形成されている。このとき、点 $\mathrm{F_1′}$ とDD′の距離は $g$ である。また、DD′の位置は、レンズ $\mathrm{L_2}$ の焦点 $\mathrm{F_2}$ の内側である。この条件では、虫眼鏡による観察と同じように、レンズ $\mathrm{L_2}$ の後方(右側)に実像は形成されない。顕微鏡では、観測者はレンズ $\mathrm{L_2}$ の後方(右側)から実像DD′の方向を眺め、拡大された虚像を肉眼で観察する。この虚像をEE′とする。 $\mathrm{L_2}$ からEE′までの距離は $h$ である。
問5. 倍率 $\dfrac{\mathrm{DD’}}{\mathrm{AA’}}$ を $f_1$、 $f_2$、 $g$、 $h$ の中から必要なものを用いて表せ。
問6. 倍率 $\dfrac{\mathrm{EE’}}{\mathrm{AA’}}$ は、レンズ $\mathrm{L_1}$ の倍率と $\mathrm{L_2}$ の倍率の積で表される。 $\dfrac{\mathrm{EE’}}{\mathrm{AA’}}$ を $f_1$、 $f_2$、 $g$、 $h$ の中から必要なものを用いて表せ。
次に、レンズ $\mathrm{L_1}$ を焦点距離が $f_3$ の凸レンズ $\mathrm{L_3}$ に交換した。レンズ $\mathrm{L_3}$ の位置は $\mathrm{L_1}$ と同じであり、また $f_3<f_1$ である。物体AA′を光軸に沿って適切な位置に移動させると、虚像JJ′が虚像EE′と同じ位置に形成された。
問7. 物体AA′はどの方向に移動させたか。また、倍率 $\dfrac{\mathrm{JJ’}}{\mathrm{AA’}}$ と $\dfrac{\mathrm{EE’}}{\mathrm{AA’}}$ はどちらが大きいか。正しい組み合わせを番号で答えよ。
| ① | 物体AA′を右へ移動させた | $\dfrac{\mathrm{EE’}}{\mathrm{AA’}}>\dfrac{\mathrm{JJ’}}{\mathrm{AA’}}$ |
| ② | 物体AA′を右へ移動させた | $\dfrac{\mathrm{EE’}}{\mathrm{AA’}}<\dfrac{\mathrm{JJ’}}{\mathrm{AA’}}$ |
| ③ | 物体AA′を左へ移動させた | $\dfrac{\mathrm{EE’}}{\mathrm{AA’}}>\dfrac{\mathrm{JJ’}}{\mathrm{AA’}}$ |
| ④ | 物体AA′を左へ移動させた | $\dfrac{\mathrm{EE’}}{\mathrm{AA’}}<\dfrac{\mathrm{JJ’}}{\mathrm{AA’}}$ |
問8. 倍率 $\dfrac{\mathrm{JJ’}}{\mathrm{AA’}}$ を $f_1$、 $f_2$、 $f_3$、 $g$、 $h$ の中から必要なものを用いて表せ。
解答の方針
【問1の方針】
図1には相似な三角形が2組ある。1組目は、物体AA′とレンズの中心Oを結ぶ光線(直進する)が作る △AA′O と、実像BB′側の △BB′O。2組目は、A′から光軸に平行に出た光線が焦点F′を通ることで作られる △OPF′ と △BB′F′。1組目は $a$ と $b$ の比、2組目は $f$ と $b-f$ の比を与え、A′P が光軸に平行なので AA′=OP とつなげば、 $a$、 $b$、 $f$ の関係が出る。レンズの式は暗記する式ではなく、この2組の相似で導ける式。


- △AA′O ∽ △BB′O から $\dfrac{\mathrm{AA’}}{\mathrm{BB’}}$ を $a$、 $b$ で表す(①②)。
- △OPF′ ∽ △BB′F′ から $\dfrac{\mathrm{OP}}{\mathrm{BB’}}$ を $f$、 $b-f$ で表す(③④)。
- AA′=OP を使って2つの比を等しいとおき、式を整理してレンズの式にする(⑤)。
【問2の方針】
物体とスクリーンは動かさないので、距離 $a+b$ は一定。レンズの式 $\dfrac1a+\dfrac1b=\dfrac1f$ は $a$ と $b$ を入れかえても変わらない。だから「 $a$ が最初の $b$ に、 $b$ が最初の $a$ になる位置」にレンズを動かせば、もう一度スクリーン上にはっきりした像ができる(下の図)。


- 最初の $b$ をレンズの式で求め、物体とスクリーンの距離 $a+b$ を知る。
- $a$ と $b$ を入れかえた位置にレンズがあると考えて、物体とレンズの距離を求める(距離)。
- 倍率 $\dfrac ba$ を、入れかえたあとの $a$、 $b$ で求める(倍率)。
【問3・問4の方針】
物体が焦点の内側にあるので、レンズを出た光は広がり、後方では交わらない。後方から見ると、光はレンズを出た線を前方へ延ばした交点から来たように見える。これが虚像。作図に使うのは問1と同じ2本、「光軸に平行に進んだ光は F′ を通る」「中心Oを通る光は直進する」で、2本とも前方へ延ばして交点をとる。虚像は物体と同じ側にできるので、レンズの式では $b<0$ になり、作図の結果は式でも確かめられる。


- 図2の方眼から、 $f$ ・物体の位置・物体の高さが方眼で何マス分かを読む。
- A′から、光軸に平行に点Pへ向かい、レンズを出て F′ を通る光①を引く(問3)。
- A′から、Oへ向かい、そのまま直進する光②を引く(問3)。
- ①②のレンズの後方の線を前方へ延ばし、交点C′を求める。C′から光軸に下ろした足がC。CC′が虚像③(問3)。
- 虚像は物体と同じ側なので $b<0$ としてレンズの式を立て、 $|b|$ を求める(問4)。
【問5・問6の方針】
顕微鏡は2段構え。 $\mathrm{L_1}$ が物体の実像DD′を作り、そのDD′を $\mathrm{L_2}$ の物体として、虫眼鏡のように拡大した虚像EE′を見る。全体の倍率は各段の倍率の積。1段目は、DD′の位置が「レンズから」でなく「焦点 $\mathrm{F_1′}$ から」の距離 $g$ で与えられているので、焦点を通る光線が作る相似な三角形(△$\mathrm{O_1PF_1′}$ と △$\mathrm{DD’F_1′}$)から、 $g$ と $f_1$ の比がそのまま倍率になる。2段目は DD′ が焦点の内側なので、問3・問4と同じ虚像の倍率。 $\mathrm{L_2}$ から DD′ までの距離は与えられていないが、虚像までの距離 $h$ が与えられているので、レンズの式で消せる。


- 1段目:△$\mathrm{O_1PF_1′}$ ∽ △$\mathrm{DD’F_1′}$ と $\mathrm{O_1P}=\mathrm{AA’}$ から、 $\dfrac{\mathrm{DD’}}{\mathrm{AA’}}$ を $f_1$、 $g$ で表す(問5)。
- 2段目:DD′と $\mathrm{L_2}$ の距離を $d$ とおき、虚像なので像の距離を $-h$ として $\mathrm{L_2}$ のレンズの式を立てる。
- 2段目の倍率 $\dfrac hd$ から、レンズの式を使って $d$ を消し、 $f_2$、 $h$ で表す。
- 1段目と2段目の倍率を掛け合わせる(問6)。
【問7・問8の方針】
$\mathrm{L_2}$ はそのままで、虚像も同じ位置にできる。 $\mathrm{L_2}$ にとっての物体(実像DD′)の位置も虚像の位置も変わっていないので、DD′は同じ位置にできている。 $\mathrm{L_1}$ と $\mathrm{L_3}$ は同じ位置にあるので、レンズからDD′までの距離 $f_1+g$ も変わらない。変わったのは焦点距離だけ。2段目の倍率も変わらない。


- DD′とレンズの距離は $f_1+g$ のまま。この距離を像の距離として、 $\mathrm{L_1}$ と $\mathrm{L_3}$ のそれぞれで物体とレンズの距離を求めて比べ、物体が動いた向きを決める(問7の前半)。
- 1段目の倍率 $\dfrac ba$ を、レンズの式を使って $b$ と $f$ だけの式に直し、 $f_3<f_1$ から大小を比べる。2段目の倍率は同じなので、全体の大小もこれで決まる(問7の後半)。
- 問6の式の $f_1$ を $f_3$ に、 $g$ を「 $\mathrm{F_3′}$ からDD′までの距離」に置きかえる(問8)。
解答




解答をテキストで読む
問1 空欄①〜⑤
物体AA′とレンズの中心Oを通る光線は直進する。AA′ ∥ BB′ なので △AA′O ∽ △BB′O で、対応する辺の比は
$$\frac{\mathrm{AA’}}{\mathrm{BB’}}=\frac{\mathrm{AO}}{\mathrm{BO}}=\frac ab$$
答(①) $a$(1点)
答(②) $b$(1点)
次に、A′から光軸に平行に進んだ光は点Pでレンズを出て、焦点F′を通る。OP ∥ BB′ なので △OPF′ ∽ △BB′F′ で、 $\mathrm{OF’}=f$、 $\mathrm{BF’}=b-f$ より
$$\frac{\mathrm{OP}}{\mathrm{BB’}}=\frac{\mathrm{OF’}}{\mathrm{BF’}}=\frac f{b-f}$$
答(③) $f$(1点)
答(④) $b-f$(1点)
A′P は光軸に平行なので AA′=OP。2つの比は等しいので
$$\frac ab=\frac f{b-f}\qquad\therefore\ a(b-f)=bf\qquad\therefore\ ab=af+bf$$
両辺を $abf$ で割ると
$$\frac1f=\frac1b+\frac1a$$
答(⑤) $\dfrac1a+\dfrac1b=\dfrac1f$(3点)
問2
最初の像の位置は、レンズの式に $f=16\ \mathrm{cm}$、 $a=20\ \mathrm{cm}$ を入れて
$$\frac1b=\frac1{16}-\frac1{20}=\frac{5-4}{80}=\frac1{80}\qquad\therefore\ b=80\ \mathrm{cm}$$
物体とスクリーンの距離は $a+b=100\ \mathrm{cm}$。レンズの式は $a$ と $b$ を入れかえても同じ式なので、 $a=80\ \mathrm{cm}$、 $b=20\ \mathrm{cm}$ になる位置にレンズを動かせば(物体とスクリーンの距離は $100\ \mathrm{cm}$ のまま)、もう一度スクリーン上にはっきりした像ができる。レンズを後方へ $60\ \mathrm{cm}$ 動かした位置にあたる。
倍率は
$$\frac ba=\frac{20}{80}=\frac14$$
(最初は $\dfrac{80}{20}=4$ 倍。 $a$ と $b$ が入れかわるので、倍率は逆数になる)
答(距離) $80\ \mathrm{cm}$(3点)
答(倍率) $\dfrac14$(2点)
問3
解答図は図2と同じ方眼。方眼から読むと、 $f$ は太い線で1.6マス分。問4の $f=16\ \mathrm{cm}$ と合わせて、太い1マスが $10\ \mathrm{cm}$。物体はOの前方1.2マス( $12\ \mathrm{cm}$ )、高さ0.6マス( $6\ \mathrm{cm}$ )で、点Pも同じ高さ。
① A′から光軸に平行に点Pへ進み、レンズを出て F′ を通る。
② A′から点Oへ進み、そのまま直進する。
レンズを出た①②は広がっていくので、後方では交わらない。そこで2本を前方へ延ばす(破線)。②の線は、Oから前方へ1マス進むごとに0.5マス高くなる直線なので、Oの前方4.8マスで高さ2.4マス。①の線は、PからF′へ向かう線の傾きが $0.6\div1.6$ なので、Pから前方へ4.8マス延ばすと $0.6+\dfrac{0.6}{1.6}\times4.8=2.4$ マスの高さ。2本は、Oの前方4.8マス・高さ2.4マスの点C′で交わる。C′から光軸に下ろした足がCで、CC′が虚像③(下の図)。
答 ①②③は上の図。虚像CC′はOの前方4.8マス( $48\ \mathrm{cm}$ )にある、高さ2.4マス(物体の4倍)の正立の虚像(6点)
問4
虚像は物体と同じ側にできるので $b<0$。レンズの式に $f=16\ \mathrm{cm}$、 $a=12\ \mathrm{cm}$ を入れて
$$\frac1b=\frac1{16}-\frac1{12}=\frac{3-4}{48}=-\frac1{48}\qquad\therefore\ b=-48\ \mathrm{cm}$$
$b<0$ は虚像で、レンズからの距離は $|b|=48\ \mathrm{cm}$。問3の図の4.8マス( $48\ \mathrm{cm}$ )と一致する(倍率も $\dfrac{48}{12}=4$ で、図の4倍と一致)。
答 $48\ \mathrm{cm}$(4点)
問5
A′から光軸に平行に出た光線は $\mathrm{L_1}$ の点Pを通り、焦点 $\mathrm{F_1′}$ を通って D′ に達する。 $\mathrm{O_1P}$ ∥ DD′ なので △$\mathrm{O_1PF_1′}$ ∽ △$\mathrm{DD’F_1′}$ で、 $\mathrm{O_1F_1′}=f_1$、 $\mathrm{F_1’D}=g$ より
$$\frac{\mathrm{DD’}}{\mathrm{O_1P}}=\frac{\mathrm{F_1’D}}{\mathrm{O_1F_1′}}=\frac g{f_1}$$
$\mathrm{O_1P}=\mathrm{AA’}$ なので
答 $\dfrac{\mathrm{DD’}}{\mathrm{AA’}}=\dfrac g{f_1}$(3点)
問6
DD′ は $\mathrm{L_2}$ の焦点の内側にあるので、 $\mathrm{L_2}$ から見ると虫眼鏡と同じ。DD′ と $\mathrm{L_2}$ の距離を $d$ とおく。虚像EE′は $\mathrm{L_2}$ の前方 $h$ の所にできるので、像の距離は $-h$。 $\mathrm{L_2}$ のレンズの式は
$$\frac1d-\frac1h=\frac1{f_2}\qquad\therefore\ \frac1d=\frac1{f_2}+\frac1h$$
$\mathrm{L_2}$ の倍率は
$$\frac{\mathrm{EE’}}{\mathrm{DD’}}=\frac hd=h\left(\frac1{f_2}+\frac1h\right)=\frac h{f_2}+1=\frac{f_2+h}{f_2}$$
全体の倍率は、 $\mathrm{L_1}$ の倍率(問5)と $\mathrm{L_2}$ の倍率の積
$$\frac{\mathrm{EE’}}{\mathrm{AA’}}=\frac{\mathrm{DD’}}{\mathrm{AA’}}\times\frac{\mathrm{EE’}}{\mathrm{DD’}}=\frac g{f_1}\times\frac{f_2+h}{f_2}$$
答 $\dfrac{\mathrm{EE’}}{\mathrm{AA’}}=\dfrac{g(f_2+h)}{f_1f_2}$(5点)
問7
$\mathrm{L_2}$ は動かさず、虚像も同じ位置にできるので、 $\mathrm{L_2}$ にとっての物体DD′も同じ位置にできる。 $\mathrm{L_1}$ と $\mathrm{L_3}$ は同じ位置にあるので、レンズからDD′までの距離は $b=f_1+g$ のまま変わらない(下の図)。
物体の位置:レンズの式 $\dfrac1a=\dfrac1f-\dfrac1b$ で、 $b$ は一定。 $f_3<f_1$ だと $\dfrac1f$ が大きくなるので $\dfrac1a$ も大きくなり、 $a$ は小さくなる。物体はレンズに近づくので、右へ移動させた。
倍率:1段目の倍率は
$$\frac ba=b\left(\frac1f-\frac1b\right)=\frac bf-1$$
$b$ が一定で $f$ が小さいほど大きい。2段目の倍率は(DD′と虚像の位置が同じなので)変わらない。よって $\dfrac{\mathrm{JJ’}}{\mathrm{AA’}}>\dfrac{\mathrm{EE’}}{\mathrm{AA’}}$。
答 ②(5点)
問8
$\mathrm{L_3}$ の焦点 $\mathrm{F_3′}$ から DD′ までの距離は、 $\mathrm{L_3}$ からDD′までが $f_1+g$ なので $f_1+g-f_3$。問5と同じ相似で、1段目の倍率は
$$\frac{f_1+g-f_3}{f_3}$$
2段目の倍率は問6と同じ $\dfrac{f_2+h}{f_2}$。掛け合わせて
$$\frac{\mathrm{JJ’}}{\mathrm{AA’}}=\frac{f_1+g-f_3}{f_3}\times\frac{f_2+h}{f_2}$$
(問6の式の $f_1$ を $f_3$ に、 $g$ を $f_1+g-f_3$ に置きかえた形。問7の確認:$\dfrac{f_1+g-f_3}{f_3}=\dfrac{f_1+g}{f_3}-1$ は、 $f_3<f_1$ なら $\dfrac{f_1+g}{f_1}-1=\dfrac g{f_1}$ より大きい)
答 $\dfrac{\mathrm{JJ’}}{\mathrm{AA’}}=\dfrac{(f_1+g-f_3)(f_2+h)}{f_3f_2}$(5点)
別解
問2 (レンズを動かした距離を方程式で) レンズを後方へ $x$ だけ動かすと、物体とレンズの距離は $20+x$、レンズとスクリーンの距離は $80-x$。
$$\frac1{20+x}+\frac1{80-x}=\frac1{16}$$
$a’=20+x$ とおくと $\dfrac{100}{a'(100-a’)}=\dfrac1{16}$ なので $a’^2-100a’+1600=0$、 $(a’-20)(a’-80)=0$。 $a’=20$ は最初の位置で、 $a’=80$ が答え( $x=60$ )。倍率は $\dfrac{20}{80}=\dfrac14$。本解の「 $a$ と $b$ の入れかえ」なら、この方程式を解かずに答えが求まる。
問5 (レンズの式から) $\mathrm{L_1}$ からDD′までの距離を $b$ とおくと、 $b=f_1+g$。倍率は $\dfrac ba$ で、レンズの式 $\dfrac1a=\dfrac1{f_1}-\dfrac1b$ を使うと
$$\frac ba=b\left(\frac1{f_1}-\frac1b\right)=\frac b{f_1}-1=\frac{f_1+g}{f_1}-1=\frac g{f_1}$$
本解と同じ。この形は問7の「倍率を $b$ と $f$ だけで書く」と同じ式変形。
出題意図
問1 図の2組の相似から、レンズの式を導くことができるか
問2 レンズの式が $a$ と $b$ について対称であることを使って、レンズの位置と倍率を求めることができるか
問3・問4 焦点の内側にある物体の虚像を作図し、レンズの式( $b<0$ )で位置を確かめることができるか
問5・問6 1枚目のレンズの像を2枚目のレンズの物体として、段ごとの倍率を求めて掛け合わせることができるか
問7・問8 2枚目のレンズと虚像の位置が同じなら、中間の実像の位置も同じ、と捉えて倍率を求めることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 30点 | 25点 |
| 目標時間 | 25分 | 25分 |
レンズの決まった流れは、公式を相似2組で導く → 焦点の内側と外側で実像・虚像を作図する → 2枚のレンズは1枚目の像を2枚目の物体にする、の3段階。
この大問はその流れをそのままなぞっている。
前半の問1〜問6は教科書レベルなので全部取りたい。
差がつくのは、「虚像が同じ位置なら中間の実像も同じ位置」と気づけるかどうかの問7・問8だけ。
差がつく所・失点しやすい所
- 差がつく所は後半の2か所
- 問5:倍率を、レンズからの距離でなく焦点からの距離 $g$ で表せる、という発想に行き着けるか。ここを越えないと問6・問8が続かない。
- 問7・問8:「 $\mathrm{L_2}$ はそのままで虚像が同じ位置 → 中間の実像DD′も同じ位置」という発想に行き着けるか。気づけば問8は置きかえだけ。
コラム 顕微鏡の倍率は「掛け算」・虫眼鏡の倍率は「25÷焦点距離」
この大問の顕微鏡は、実際の顕微鏡の仕組みをそのまま2枚のレンズに単純化した模型。


- 仕組み:物体に近い対物レンズが、物体の拡大した実像(中間像)を作る。目に近い接眼レンズが、その像を虫眼鏡のように拡大して虚像として見せる。問5〜問6の $\mathrm{L_1}$ が対物レンズ、 $\mathrm{L_2}$ が接眼レンズ。
- 倍率は掛け算:顕微鏡の全体の倍率は「対物レンズの倍率 × 接眼レンズの倍率」。問6の「 $\mathrm{L_1}$ の倍率と $\mathrm{L_2}$ の倍率の積」そのもの。たとえば対物レンズ40倍・接眼レンズ10倍なら400倍。
- 高倍率の対物レンズは焦点距離が短い:問5の倍率 $\dfrac g{f_1}$ は、 $f_1$ が小さいほど大きい。問7で $f_3<f_1$ のレンズに交換すると倍率が上がったのも同じ理由。実際の顕微鏡でも、対物レンズの倍率はおよそ「鏡筒の長さ ÷ 対物レンズの焦点距離」で決まるので、焦点距離が短い対物レンズほど高倍率になる。なお、今の顕微鏡の多くは光学系の設計が違うが、焦点距離が短いほど高倍率という関係は同じ。
- 虫眼鏡の倍率の表し方:問4の倍率(虚像の長さ ÷ 物体の長さ=4)とは別に、市販の虫眼鏡の倍率は「肉眼で約 $25\ \mathrm{cm}$ 離して見たときの見かけの大きさの何倍か」で表す。 $25\ \mathrm{cm}$ は、はっきり見える距離の目安。物体を焦点に置くと、見える角度は(物体の長さ)÷ $f$ 、肉眼なら(物体の長さ)÷ $25\ \mathrm{cm}$ なので、倍率は $\dfrac{25}{f}$( $f$ は cm 単位)。 $f=16\ \mathrm{cm}$ なら約1.6倍。像を $25\ \mathrm{cm}$ の位置に作って見る使い方では $\dfrac{25}{f}+1$ と書く資料もあり、どちらで表すかは資料によって違う。
装置の使われ方を知ってから公式を見直すと、 $a$、 $b$、 $f$ や $g$、 $h$ が何を表しているかが頭に入る。九大の物理は、こうした身近な装置を題材にすることがある。
2016年九州大学・物理の
講評とまとめ
3問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | やや難 | 35点 | 25点 |
| 第2問 | やや簡単 | 40点 | 40点 |
| 第3問 | 標準 | 30点 | 25点 |
| 全体 | 標準 | 105点 | 85点 |
大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で105点、その他の学部で85点)にはなりません。
標準的な年で、差がついたのは第1問です。
第1問は、設定を読み取ってAとBの運動を想像できたかどうかで決まる大問で、どういう運動か分かればそれほど難しくはありませんが、後半はかなり難しくなっています。
第2問はホール効果の基本で、誘導なしでも解けるレベルまで仕上げて、どの学部も20分で満点を取りたい大問です。
第3問はレンズの作図や図形的な考察をふだんから練習していれば難しくなく、差がつくのは最後の方です。
解く流れ
第2問 → 第3問 → 第1問。
2016年九州大学・物理に
関するよくある質問
2016年の九州大学・物理について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2016年の九州大学・物理は難しかった?
-
標準的な年でした。
第1問はやや難、第2問はやや簡単、第3問は標準です。
差がついたのは第1問で、後半がかなり難しい大問でした。 - 2016年の九州大学・物理は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で105点、その他の学部で85点です(125点満点)。
- 2016年の九州大学・物理はどこで差がつく?
-
第2問・第3問は決まった流れで取り切れるセットで、差がつくのは第1問の後半と第3問の最後です。次の3つが差のつく所でした。
- 第1問 問2 (1):BがAと相対速度0で接するのは、Aが原点を負の向きに最大の速さで通る瞬間だけだと気づけたか。
- 第1問 問3 (1):質量が等しい弾性衝突は速度が入れかわることを使い、1回目はAが原点を正の向きに、2回目は負の向きに通ると読めたか。
- 第3問 問7・問8:虚像が同じ位置なら、中間の実像も同じ位置にあると気づけたか。
- 2016年の九州大学・物理は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:力学
- 第2問:電磁気
- 第3問:波動


