【解説・配点付き】2020年九州大学物理の解答・解説
2020年の九州大学・物理の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2020年九州大学物理
第1問 解答・解説
この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は力学の問題です。
テーマは「ばねにつながれた台と、台の上の物体。すべらずに一体で振動する条件(最大の振幅)、すべり出した後の台の単振動(動摩擦力で中心がずれる)と物体の等加速度運動、速度のグラフ、速度がそろって一体になった後の力学的エネルギー保存」。
問題


問題文をテキストで読む
図1に示すように、質量 $M$ の台がばね定数 $k$ のばねで壁につながれ、なめらかな水平面の上に置かれている。台の上には質量 $m$ の物体が置かれ、台と物体の間には静止摩擦係数 $\mu$、動摩擦係数 $\mu’$ の摩擦力がはたらく。台と物体の運動およびばねの伸び縮みは、図中の水平面に沿って左右方向にしかおこらないとする。ばねの自然長からの伸びを $x$ $(x<0$ の場合は縮み$)$ とし、速度、加速度、力は全て右向きを正として、以下の問いに答えよ。ただし、空気抵抗は無視できるとする。また、重力加速度の大きさは $g$ とする。
問1. 台と物体が互いにすべらずに運動する場合を考える。
(1) 台と物体を一体として考え、加速度を $a$ として運動方程式を書け。
以後、解答に $a$ を使わないこと。
(2) この運動は単振動となる。この単振動の周期 $T_0$ はいくらか。
(3) 力の向きと符号に注意して、下記の文章の空欄 $\boxed{\text{ア}}$、 $\boxed{\text{イ}}$ に適切な数式を書け。
問1(1)の運動方程式より加速度 $a$ が求められる。物体が台から受ける摩擦力は、 $ma$ に等しいので $\boxed{\text{ア}}$ と求められる。一方、台が物体から受ける摩擦力は、作用・反作用の法則から $\boxed{\text{イ}}$ と求められる。
(4) 台と物体が常に互いにすべらずに一体となって運動するための最大の振幅はいくらか。
問2. いま、問1(4)で求めた振幅より少し大きな値 $x=A\,(A>0)$ にばねを伸ばして、台と物体を手で静止させた。その後、時刻 $t=0$ で静かに手を離すと台と物体は別々に動き始めた。この運動について考える。ただし、物体が台の上からすべり落ちることはないものとする。
(1) 台と物体の加速度をそれぞれ $a_1$、 $a_2$ として、台と物体の運動方程式をそれぞれ書け。
以後、解答に $a_1$、 $a_2$ を使わないこと。
(2) 時刻 $t$ における物体の速度を求めよ。
(3) 問2(1)の運動方程式にしたがって、台は単振動をする。この単振動の振幅と周期 $T_1$ を求めよ。
以後、解答に $T_1$ を使わないこと。
(4) 台が問2(3)の単振動を続けているとすると、時刻 $t=\dfrac{T_1}{4}$ における台の速度はいくらか。
別々に動いていた台と物体は、時刻 $t=\dfrac{T_1}{4}$ で同じ速度になり、それ以降は常に一体となって運動した。ばねが自然長から $B$ だけ縮んだところで、台と物体は一体のままいったん静止し、その後反対方向へ動き始めた。
(5) 時刻 $t=0$ から $\dfrac{T_1}{4}$ において、台の速度を実線で、物体の速度を破線で解答用紙のグラフにそれぞれ描け。ただし、グラフに目盛の値は記入しなくてよい。
(6) 時刻 $t=\dfrac{T_1}{4}$ で台と物体が同じ速度になることに着目して、 $A$ を求めよ。
(7) 時刻 $t=\dfrac{T_1}{4}$ 以降は力学的エネルギーが保存されることを用いて、 $B$ を求めよ。ただし、解答に $A$ を使わないこと。
解答の方針
【問1の方針】
台と物体はすべらずに一緒に動くので、水平方向は「ばねの力だけを受ける質量 $M+m$ の物体」と同じ。2つの間の摩擦力は内力なので、一体の運動方程式には出てこない。だから、中心は自然長の位置 $x=0$、質量 $M+m$、単振動定数 $k$ の単振動になる。
摩擦力を求めるには、逆に物体だけを取り出す。物体を水平に動かしているのは台からの摩擦力だけなので、「物体の質量×共通の加速度」がそのまま摩擦力になる。向きが分からない力は正の向きに置き、向きは符号で読む(下の図)。


(4) は、この摩擦力が静止摩擦力の最大値 $\mu mg$ をこえなければすべらない、という条件。摩擦力の大きさは $|x|$ に比例するので、いちばん苦しいのは $|x|$ が最大になる振動の端。振動の中心は $x=0$ なので、端での $|x|$ は振幅そのもの。
- 台と物体を一体として、水平方向の運動方程式 $(M+m)a=-kx$ を立てる((1))。
- 質量 $M+m$、単振動定数 $k$ を読んで、周期 $T_0=2\pi\sqrt{\dfrac{M+m}{k}}$ を求める((2))。
- (1) から $a$ を求め、物体の運動方程式 $ma=f$ で物体が受ける摩擦力 $f$ を求める(ア)。台が受ける摩擦力は作用・反作用で $-f$ (イ)。
- 振幅を $A_0$ として、振動の端( $|x|=A_0$ )で摩擦力の大きさ $\le\mu mg$ を立て、 $A_0$ の最大値を求める((4))。
【問2の方針】
(1) の決め手は、物体が台に対してどちらへすべるか。手を離した直後、台はばねに左へ強く引かれる。物体を左へ動かす力は台からの摩擦力しかなく、それには上限 $\mu mg$ がある。問1 (4) より大きく引いたので、物体は台についていけず、台に置いていかれる。台から見ると物体は右へすべるので、物体が受ける動摩擦力は左向き、台が受ける動摩擦力はその反作用で右向き(下の図)。


(3) は、台の運動方程式が「ばねの力 $-kx$ +一定の力 $\mu’mg$ 」の形になることに注目する。一定の力が加わった単振動は、中心がずれるだけで、単振動定数 $k$ は変わらない(摩擦のある床のばね振動と同じ型)。中心はばねの力と動摩擦力がつり合う位置で、これを $x_{\mathrm c}$ と置く。質量は台だけ。手を離した $x=A$ は速さ0なので、振動の端。
(4) は、端から中心までは $\dfrac14$ 周期。 $t=\dfrac{T_1}{4}$ で台はちょうど中心 $x_{\mathrm c}$ を左向きに通り、速さが最大になる。
(5) は、台の速度は端から出発する単振動なので「0から始まり、中心で最大になる」サインの $\dfrac14$ 周期分、物体は一定の加速度 $-\mu’g$ なので直線。2本は終点でそろう(問題文)。台の位置のグラフと高さをそろえて並べると、端=速さ0、中心=速さ最大(加速度0で傾き0)が速度のグラフにそのまま映る(下の図)。


(6)(7) は、振動の中心が2回変わることを1本の $x$ 軸で押さえる。すべる間の台の中心は $x_{\mathrm c}$ 、一体になる瞬間に台がいるのもちょうど $x_{\mathrm c}$ (ばねはまだ伸びている)。一体になった後は問1と同じ運動なので、中心は自然長の位置 $x=0$ に戻る(下の図)。一体になった後は物体と台の間で静止摩擦力がはたらくが、2つが同じ動きをするので、2つの静止摩擦力の仕事は大きさが同じで符号が逆になり、和は0。だから台・物体・ばねをまとめた力学的エネルギーが保存する。


- 物体は台に対して右へすべるので、物体の動摩擦力は左向きに $\mu’mg$ 、台の動摩擦力は右向きに $\mu’mg$ 。物体ごとに運動方程式を立てる((1))。
- 物体の加速度 $a_2=-\mu’g$ は一定なので、速度は $-\mu’gt$ ((2))。
- 台の運動方程式を $Ma_1=-k(x-x_{\mathrm c})$ の形に直し、中心 $x_{\mathrm c}=\dfrac{\mu’mg}{k}$ 、質量 $M$ 、単振動定数 $k$ を読む。振幅は端 $A$ と中心の距離 $A-x_{\mathrm c}$ 、周期は $T_1=2\pi\sqrt{\dfrac Mk}$ ((3))。
- $t=\dfrac{T_1}{4}$ で台は中心を左向きに通る。単振動のエネルギー保存(端と中心)で速さを求め、左向きなので負の符号をつける((4))。
- 台はサインの $\dfrac14$ 周期分(実線)、物体は原点を通る直線(破線)を、同じ終点に着くように書く((5))。
- (2) の速度に $t=\dfrac{T_1}{4}$ を入れたものと (4) を等しいとおき、 $A$ について解く((6))。
- 一体になる瞬間の位置 $x_{\mathrm c}$ と速さを使い、その瞬間と止まる瞬間( $x=-B$ )で力学的エネルギー保存を立てて $B$ を求める((7))。
解答




解答をテキストで読む
問1 (1)
台と物体をまとめて1つの物体とみると、水平方向にはたらく力はばねの力 $-kx$ だけ(台と物体の間の摩擦力は内力で打ち消し合う)。質量は $M+m$ なので
答 $(M+m)a=-kx$(3点)
問1 (2)
(1) は「(質量)×(加速度)= $-$(定数)×(変位)」の形なので、台と物体は $x=0$ (自然長の位置)を中心とする単振動をする。質量 $M+m$ 、単振動定数 $k$ より
答 $T_0=2\pi\sqrt{\dfrac{M+m}{k}}$(3点)
問1 (3)
物体にはたらく力は、重力 $mg$ 、台からの垂直抗力 $N$ 、台からの摩擦力 $f$ (正の向きに置く)(下の図)。水平方向に物体を動かしているのは $f$ だけなので、物体の運動方程式は
$$ma=f$$
(1) より $a=-\dfrac{k}{M+m}x$ 。よって
答(ア) $-\dfrac{mk}{M+m}x$(3点)
台が物体から受ける摩擦力は、作用・反作用の法則で同じ大きさ・逆向き。
答(イ) $\dfrac{mk}{M+m}x$(3点)
( $x>0$ のときアは負=物体は左向きの摩擦力を受け、台は右向きの摩擦力を受ける)
問1 (4)
物体は鉛直方向にはつり合っているので $N=mg$ 。すべらない条件は、摩擦力の大きさが最大摩擦力以下であること:
$$\frac{mk}{M+m}|x|\leqq\mu mg$$
振動の中心は $x=0$ なので、振幅を $A_0$ とすると $|x|$ の最大は $A_0$ (振動の端)。端でこの条件が成り立てば、振動のどこでも成り立つ。
$$\frac{mk}{M+m}A_0\leqq\mu mg\qquad\therefore\ A_0\leqq\frac{\mu(M+m)g}{k}$$
答 $\dfrac{\mu(M+m)g}{k}$(3点)
問2 (1)
$x=A$ で手を離した直後、もし一体で動くとすると、物体に必要な摩擦力の大きさは $\dfrac{mk}{M+m}A$ 。 $A$ は問1 (4) より大きいので、これは最大摩擦力 $\mu mg$ をこえる。よって物体は台の上をすべる。
台はばねに左へ引かれて左へ加速するが、物体を左へ動かすのは摩擦力だけなので、物体は台に置いていかれ、台に対して右へすべる。動摩擦力は台に対する動きと逆向きなので、物体が受ける動摩擦力は左向きに $\mu’mg$ (垂直抗力は $mg$ )、台が受ける動摩擦力は作用・反作用で右向きに $\mu’mg$ (下の図)。
台にはたらく水平方向の力はばねの力 $-kx$ と動摩擦力 $+\mu’mg$ 、物体には動摩擦力 $-\mu’mg$ だけ。
答 台:$Ma_1=-kx+\mu’mg$、物体:$ma_2=-\mu’mg$(5点)
問2 (2)
(1) より $a_2=-\mu’g$ (一定)。物体は $t=0$ で静止していたので、等加速度運動の速度の式より
答 $-\mu’gt$(3点)
問2 (3)
台の運動方程式を、ばねの力と一定の力をまとめて変形すると
$$Ma_1=-k\left(x-\frac{\mu’mg}{k}\right)$$
$-K(x-x_0)$ の形なので、台は $x_{\mathrm c}=\dfrac{\mu’mg}{k}$ (ばねの力と動摩擦力がつり合う位置)を中心とし、質量 $M$ 、単振動定数 $k$ の単振動をする。手を離した $x=A$ は速さ0なので振動の端で、振幅は中心からの距離(下の図)。
答 振幅 $A-\dfrac{\mu’mg}{k}$、周期 $T_1=2\pi\sqrt{\dfrac Mk}$(5点)
問2 (4)
台は端 $x=A$ から出発し、中心 $x_{\mathrm c}$ まで $\dfrac14$ 周期かかる。よって $t=\dfrac{T_1}{4}$ で台は中心を左向きに通り、速さは最大。端と中心で単振動のエネルギー保存(中心からの変位で書く)を立てると、速さを $V$ として
$$0+\frac12k\left(A-\frac{\mu’mg}{k}\right)^2=\frac12MV^2+0\qquad\therefore\ V=\left(A-\frac{\mu’mg}{k}\right)\sqrt{\frac kM}$$
台は左向きに動いているので、速度は負。
答 $-\left(A-\dfrac{\mu’mg}{k}\right)\sqrt{\dfrac kM}$(4点)
問2 (5)
・台:端から出発する単振動なので、速度は0から始まり、中心を通る $t=\dfrac{T_1}{4}$ で負の最小値(速さ最大)になる。角振動数を $\omega=\sqrt{\dfrac kM}$ とすると $v_1=-\left(A-\dfrac{\mu’mg}{k}\right)\omega\sin\omega t$ で、サインの $\dfrac14$ 周期分。中心では加速度0なので、終点で傾き0になる
・物体:(2) より $v_2=-\mu’gt$ で、原点を通る右下がりの直線
・2本は $t=\dfrac{T_1}{4}$ で同じ値に着く(問題文)。途中は、台の方が左向きに速い(物体は台に対して右へすべっている)ので、実線が常に破線より下
答 下の図(実線が台、破線が物体)(3点)
台の位置のグラフと高さをそろえて並べると、端で速さ0、中心で速さ最大(傾き0)の対応が見える(下の図)。
( $t=0$ での傾き(加速度)は、台が $\dfrac{-kA+\mu’mg}{M}$ 、物体が $-\mu’g$ 。(6) の $A$ を入れると台は物体の $\dfrac{\pi}{2}$ 倍になり、実線は破線より急に下がり始める)
問2 (6)
$t=\dfrac{T_1}{4}$ で台と物体の速度がそろう。(2) で $t=\dfrac{T_1}{4}=\dfrac{\pi}{2}\sqrt{\dfrac Mk}$ とした物体の速度と、(4) の台の速度を等しいとおくと
$$-\mu’g\cdot\frac{\pi}{2}\sqrt{\frac Mk}=-\left(A-\frac{\mu’mg}{k}\right)\sqrt{\frac kM}$$
$$A-\frac{\mu’mg}{k}=\frac{\pi\mu’Mg}{2k}\qquad\therefore\ A=\frac{\mu’mg}{k}+\frac{\pi\mu’Mg}{2k}$$
答 $A=\dfrac{\mu’g(2m+\pi M)}{2k}$(5点)
( $\dfrac{\mu’mg}{k}\left(1+\dfrac{\pi M}{2m}\right)$ と同じ)
問2 (7)
一体になる瞬間( $t=\dfrac{T_1}{4}$ )、台と物体は台の振動の中心 $x=x_{\mathrm c}=\dfrac{\mu’mg}{k}$ にいて(ばねはまだ $x_{\mathrm c}$ だけ伸びている)、共通の速さは (6) の物体の速さ
$$u=\mu’g\cdot\frac{\pi}{2}\sqrt{\frac Mk}$$
状況が変わったので単振動を定義し直す。一体になった後は問1と同じく、中心は $x=0$ 、質量 $M+m$ 、単振動定数 $k$ (上の図)。
一体の後に台と物体の間ではたらく静止摩擦力は、2つが同じ動きをするので仕事の和が0。床はなめらかで、重力と垂直抗力は仕事をしない。よって力学的エネルギー $E=K+U_k$ (運動エネルギー+ばねの弾性エネルギー)が保存する。一体になった瞬間と、ばねが $B$ 縮んで一体のまま静止した瞬間で
$$\frac12(M+m)u^2+\frac12k\left(\frac{\mu’mg}{k}\right)^2=0+\frac12kB^2$$
$u^2=\dfrac{\pi^2\mu’^2g^2M}{4k}$ を入れて
$$B^2=\frac{M+m}{k}\cdot\frac{\pi^2\mu’^2g^2M}{4k}+\frac{\mu’^2m^2g^2}{k^2}=\frac{\mu’^2g^2}{4k^2}\left\{4m^2+\pi^2M(M+m)\right\}$$
答 $B=\dfrac{\mu’g}{2k}\sqrt{4m^2+\pi^2M(M+m)}$(5点)
( $\dfrac{\mu’mg}{k}\sqrt{\dfrac{\pi^2}{4}\cdot\dfrac{M(M+m)}{m^2}+1}$ と同じ。 $A$ を使わないので、(6) の途中の $u$ で書く)
別解
問2 (4) ( $A\omega$ で) 中心を通るときの速さは「振幅×角振動数」なので、 $\left(A-\dfrac{\mu’mg}{k}\right)\sqrt{\dfrac kM}$ をすぐに書いてよい。中心の速さしか求まらないので、本解は単振動のエネルギー保存にした。
問2 (7) (単振動のエネルギー保存で) 一体の後は中心 $x=0$ 、単振動定数 $k$ の単振動。中心からの変位 $x_{\mathrm c}$ で速さ $u$ の点と、端 $x=-B$ で $\dfrac12(M+m)u^2+\dfrac12kx_{\mathrm c}^{\,2}=\dfrac12kB^2$ 。水平なばねでは中心が自然長の位置と一致するので、本解とまったく同じ式になる。
出題意図
問1 (1)(2) 台と物体を一体とみて運動方程式を立て、単振動の周期を求めることができるか
問1 (3)(4) 物体の運動方程式から摩擦力を符号つきで求め、静止摩擦力が最大摩擦力をこえない条件から最大の振幅を求めることができるか
問2 (1)(2) 物体が台に対してどちらへすべるかを判断して動摩擦力の向きを決め、台と物体の運動方程式を書き分けることができるか
問2 (3)〜(5) 動摩擦力で振動の中心がずれた台の単振動を捉え、振幅・周期・中心を通るときの速度を求め、物体の等加速度運動と合わせて速度のグラフに書くことができるか
問2 (6)(7) 速度がそろう条件と、一体になった後の力学的エネルギー保存から、振幅とばねの最大の縮みを求めることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 40点 | 35点 |
| 目標時間 | 20分 | 25分 |
決め手は、台と物体がどう動くかを想像できるかどうか。
運動が想像できれば難しくない標準問題。
九大頻出の単振動に、台の上の物体の摩擦を組み合わせた典型問題。
問1は一体の単振動と $f\leqq\mu N$ 、問2は「物体は台に置いていかれる」と運動をイメージして摩擦力の向きを決められれば、あとは中心のずれた単振動を「中心と単振動定数を読む→周期→振幅はエネルギー保存」の決まった流れで解くだけ。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2 (1):運動を想像できるか。手を離すと台はばねに強く引かれ、物体は台に置いていかれて台に対して右へすべる、という発想に行き着けるか。動摩擦力の向きを逆にすると、(2)〜(7) がすべて崩れる。
- 問2 (7):一体になる位置が自然長ではなく台の振動の中心 $x_{\mathrm c}$ で、一体の後は中心が $x=0$ に戻る、と捉えられるか。ばねの弾性エネルギー $\dfrac12k{x_{\mathrm c}}^2$ を落とす誤りが起きやすい。
コラム 中心がずれる単振動の型
この大問の問2 (3) は「ばねの力 $-kx$ に一定の力が加わると、単振動の中心がずれるだけで、周期は変わらない」という型。九大の単振動で何度も使う見方なので、ここでまとめておく。


- なぜ中心だけがずれるのか:一定の力 $F$ が加わると、運動方程式は $ma=-kx+F=-k\left(x-\dfrac Fk\right)$ 。中心から見た変位 $x-\dfrac Fk$ について、もとの単振動と同じ形になる。中心は「ばねの力と一定の力がつり合う位置」 $\dfrac Fk$ で、単振動定数 $k$ も周期も変わらない。
- 同じ型の例:鉛直につるしたばね振り子(一定の力=重力。中心はつり合いの位置)、粗い床の上のばね振動(一定の力=動摩擦力。動く向きが変わるたびに中心が入れかわる)、この大問の台(一定の力=物体からの動摩擦力)。
- 状況が変わったら中心を決め直す:この大問では、すべる間は中心 $x_{\mathrm c}$ 、一体になった後は台と物体をひとまとめに見ると摩擦力が内力になり、一定の力が残らないので中心は $0$ に戻った。何の力が一定で加わっているかを見れば、中心はすぐに求まる。
単振動は「中心と単振動定数を読む→周期→振幅はエネルギー保存」の順で解く。中心のずれに気づければ、見た目が複雑な問題でもこの流れに乗せられる。
2020年九州大学物理
第2問 解答・解説
第2問は電磁気の問題です。
テーマは「電池につないだまま誘電体を入れたときの電場・電位の分布とエネルギーの収支を求め、スイッチを開いて誘電体を横にずらしたときの静電エネルギーの増加から誘電体を引き戻す力を求め、外力を外したあとの誘電体の往復運動のグラフを選ぶ」。
問題


問題文をテキストで読む
図1のように、長方形の極板Aおよび極板Bからなる平行平板コンデンサーが、閉じたスイッチSと起電力 $V_0$ の電池に接続されている。極板Bは接地されており、電位は0とする。このコンデンサーの極板の間隔は $d$、電気容量は $C$ であり、その内部は比誘電率1の空気で満たされている。コンデンサーの端での電場の歪み、および電池の内部抵抗の影響は無視して、以下の問いに答えよ。
(1) 極板Aに蓄えられている電気量を求めよ。
(2) コンデンサーに蓄えられている静電エネルギーを求めよ。
次に、図1の状態から、外力をかけて誘電体をコンデンサー内にゆっくりと挿入し、図2のように極板Bに完全に重なるようにした。誘電体は極板と同形の底面をもつ厚さ $\dfrac{d}{2}$ の直方体で、その比誘電率は2とする。
(3) 図2の状態で極板Aに蓄えられている電気量を求めよ。
(4) 2つの極板の間の電場と電位を、極板Bからの距離の関数としてグラフに描け。また、距離 $\dfrac{d}{2}$ および距離 $d$ におけるそれぞれの値を縦軸の横に記入せよ。ただし、電場は上向きを正とする。
(5) 図1の状態から図2の状態へ移行するときの、静電エネルギーの増加量、電池のした仕事、および外力のした仕事を求めよ。
さらに、図2の状態から極板Aを下に動かして誘電体と接触する位置で固定し、その後、スイッチSを開放した(図3)。
(6) 図3の状態で極板Aに蓄えられている電気量、およびコンデンサーに蓄えられている静電エネルギー $U_3$ を求めよ。
$x$ 軸を図3に示すように定義する。いま、極板および誘電体は $0\leqq x\leqq L$ の領域にある。この状態から、誘電体に外力をかけ、 $x$ 軸と平行に $\Delta x\,(0<\Delta x<L)$ だけゆっくりと動かし、図4の状態にした。誘電体に働く摩擦は無視できるとする。
(7) 図4の状態でコンデンサーに蓄えられている静電エネルギー $U_4$ を求めよ。
(8) 図3の状態から図4の状態へ移行するときの静電エネルギーの増加量 $\Delta U=U_4-U_3$ は、
$$\Delta U=\left(\frac{U_4}{U_3}-1\right)U_3=\left(\frac{1}{1-\alpha}-1\right)U_3$$
のように表される。 $\alpha$ を求めよ。
以下では、誘電体の変位 $\Delta x$ が $L$ より十分小さい場合を考える。すると $\Delta U$ は、 $\alpha$ が1より十分小さいときに成り立つ近似式 $\dfrac{1}{1-\alpha}\fallingdotseq1+\alpha$ を用いて、 $\Delta U\fallingdotseq\alpha U_3$ と表される。
(9) 誘電体にはたらく静電気力に抗して外力がした仕事は、静電エネルギーの増加量に等しい。このことより、図4で誘電体にはたらく静電気力の大きさと向きを求めよ。向きは、 $x$ 軸の正の向きか、負の向きか、解答欄の正・負のいずれかに丸をつけよ。
図4の状態から外力を0にすると、誘電体は運動を始めた。外力を0にした時刻を $t=0$ とし、この瞬間の誘電体の速度は0とする。
(10) 誘電体の左端の位置の時間変化 $x(t)$ を示したグラフとして最も適切なものを次ページの図5の①〜⑧の中から選べ。ただし、重力、空気抵抗、および誘電体中での熱の発生は無視できるとする。
※図中の黒丸は、異なる関数がつながる点を示す。
解答の方針
【(1)〜(5)の方針】
スイッチが閉じている間は、両極板の電位差は電池の起電力 $V_0$ のまま。変わるのは電気量で、それを決めるのが極板の間の電場。誘電体を極板に平行に重ねたときは、容量を合成するより電場で見る:誘電体(比誘電率2)の中の電場は空気の層の $\dfrac12$ で、区間ごとの「電場×幅」の和が $V_0$ になる(下の図)。空気の層の電場は極板の電気量に比例する(電気力線の本数)ので、電場が分かれば電気量は比で分かる。
(4) は、この電場をそのまま区間ごとの横線にすればよい。電場は極板Aから極板Bへ下向きで、上向きが正なので負。電位は接地した極板Bの0から「電場×距離」を積み上げる折れ線で、傾きがその区間の電場の大きさ。


(5) は、電池がつながったまま誘電体を入れているので、電池も仕事をする。コンデンサーのエネルギーは一般形 $W_外+W_電=\Delta U+H$ で整理し、電池の仕事は「電池を通った電気量×起電力」で求める。
- スイッチが閉じているので電位差は $V_0$ 。 $Q=CV_0$ 、 $\dfrac12CV_0^2$ を求める((1)(2))。
- 空気の層の電場を $E$ とおき、誘電体の中を $\dfrac E2$ として $E\cdot\dfrac d2+\dfrac E2\cdot\dfrac d2=V_0$ から $E$ を求める。誘電体を入れる前の電場 $\dfrac{V_0}{d}$ との比で電気量を求める((3))。
- 区間ごとの電場(上向きが正)を横線で、電位を極板Bの0から電場×距離で積み上げた折れ線で書く((4))。
- 静電エネルギーの増加を「後−前」で、電池の仕事を(電気量の増加)× $V_0$ で求め、一般形で $H=0$ として外力の仕事を求める((5))。
(6)〜(10)。
極板Aを動かす間はスイッチが閉じているので、電位差は $V_0$ 。極板の間がすべて誘電体になったコンデンサーの容量は、もとの $C$ との比で決まる。そのあとスイッチを開くので、ここからは電気量が一定。静電エネルギーは電気量で書ける $\dfrac{Q^2}{2C}$ の形を使う。
誘電体を横にずらすと、空気の部分と誘電体の部分が横に並ぶので、2つのコンデンサーの並列とみる(下の図)。


(9) は問題文のとおり、電池が切れていて電流も流れないので、外力の仕事がそのまま静電エネルギーの増加になる。 $\Delta x$ が小さいので外力はほぼ一定とみてよく、静電エネルギーの増加の $\Delta x$ の係数が外力。誘電体をゆっくり動かしたので、静電気力は外力とつり合っている。外力の仕事が正なら、静電気力は動かした向きと逆向き、つまり誘電体を極板の間へ引き戻す向き。
(10) は、この力の大きさが誘電体の位置によらないことが決め手。誘電体が左にはみ出したときも同じ大きさで引き戻されるので、力は $x=0$ で向きだけが入れかわる。一定の力なら等加速度運動で、位置のグラフは放物線。三角関数(単振動)になるのは、力が変位に比例するときだけ。
- 間隔が $\dfrac12$ 倍・比誘電率2なので容量は $4C$ 。電位差 $V_0$ から電気量と $U_3$ を求める((6))。
- 電気量 $4CV_0$ は一定。空気の部分 $2C\cdot\dfrac{\Delta x}{L}$ と誘電体の部分 $4C\cdot\dfrac{L-\Delta x}{L}$ の並列で容量を求め、 $U_4=\dfrac{Q^2}{2C}$ を求める((7))。
- $\dfrac{U_4}{U_3}$ を $\dfrac{1}{1-\alpha}$ の形にして $\alpha$ を求める((8))。
- $\Delta U\fallingdotseq\alpha U_3$ を外力の仕事 $F_外\Delta x$ とおいて外力を求め、静電気力はそれとつり合う逆向きとする((9))。
- 力の大きさが一定で $x=0$ で向きが入れかわる → 等加速度運動の往復 → 放物線をつないだグラフを選ぶ((10))。
解答




解答をテキストで読む
(1)
スイッチが閉じているので、極板Aと極板Bの電位差は電池の起電力 $V_0$ 。電池の長い方の極板(正極)が極板Aにつながっているので、極板Aが正。
$$Q=CV_0$$
答 $CV_0$(3点)
(2)
電気容量 $C$ と電圧 $V_0$ が分かっているので、静電エネルギーは $\dfrac12CV^2$ の形で
答 $\dfrac12CV_0^2$(3点)
(3)
スイッチは閉じたままなので、電位差は $V_0$ のまま。極板の間の空気の層の電場の大きさを $E$ とすると、比誘電率2の誘電体の中の電場は $\dfrac E2$ (着眼点の図)。両極板の電位差は、区間ごとの「電場×幅」の和なので
$$E\cdot\frac d2+\frac E2\cdot\frac d2=V_0\qquad\therefore\ E=\frac{4V_0}{3d}$$
空気の層の電場は、極板Aの電気量がつくる電気力線の本数で決まるので、電気量に比例する。誘電体を入れる前の電場は $\dfrac{V_0}{d}$ で、電気量は $CV_0$ 。電場が $\dfrac{4V_0}{3d}\div\dfrac{V_0}{d}=\dfrac43$ 倍になったので、電気量も $\dfrac43$ 倍。
答 $\dfrac43CV_0$(4点)
(容量は $\dfrac{Q}{V_0}=\dfrac43C$ 。誘電体を入れると容量が増え、電池から電気量が流れこむ)
(4)
極板Bからの距離を $y$ とする。電場は電位の高い極板A( $V_0$ )から低い極板B(0)へ向かう下向きなので、上向きを正とすると負。(3) より
・$0<y<\dfrac d2$(誘電体):電場 $-\dfrac E2=-\dfrac{2V_0}{3d}$
・$\dfrac d2<y<d$(空気):電場 $-E=-\dfrac{4V_0}{3d}$
電場は区間ごとに一定なので、グラフは横線2本。 $y=\dfrac d2$ では誘電体の表面に分極による電荷が現れるので、電場は不連続になる( $\dfrac d2$ の値は2つとも縦軸の横に書く)。
電位は、接地した極板Bの0から「電場の大きさ×距離」を積み上げる。V–y グラフの傾きはその区間の電場の大きさなので、誘電体の中はゆるく、空気の層は急な折れ線。
$$y=\frac d2:\ \frac{2V_0}{3d}\cdot\frac d2=\frac{V_0}{3},\qquad y=d:\ \frac{V_0}{3}+\frac{4V_0}{3d}\cdot\frac d2=V_0$$
( $y=d$ で極板Aの電位 $V_0$ にもどることが確かめになる)
解答欄の方眼(横2マス・上下4マス)では、電場は $-\dfrac{2V_0}{3d}$ を下2マス、 $-\dfrac{4V_0}{3d}$ を下4マス、電位は $\dfrac{V_0}{3}$ を上1マス、 $V_0$ を上3マスに置くと、値の比がマス目にちょうど乗る(下の図。上の帯は誘電体と空気の範囲)。
答(電場) 上の図の左( $0\sim\dfrac d2$ で $-\dfrac{2V_0}{3d}$ 、 $\dfrac d2\sim d$ で $-\dfrac{4V_0}{3d}$ の横線)(3点)
答(電位) 上の図の右( $y=\dfrac d2$ で $\dfrac{V_0}{3}$ 、 $y=d$ で $V_0$ になる、原点から始まる折れ線)(2点)
(5)
電圧 $V_0$ と容量が分かっているので、静電エネルギーは $\dfrac12CV^2$ の形。図2の容量は $\dfrac43C$ なので、増加量は「後−前」で
$$\Delta U=\frac12\cdot\frac43C\cdot V_0^2-\frac12CV_0^2=\frac16CV_0^2$$
答(静電エネルギーの増加量) $\dfrac16CV_0^2$(2点)
電池がした仕事は「電池を通った電気量×起電力」。極板Aの電気量が $CV_0$ から $\dfrac43CV_0$ に増えたので、電池を通った電気量は $\dfrac13CV_0$ 。
$$W_電=\frac13CV_0\times V_0$$
答(電池のした仕事) $\dfrac13CV_0^2$(2点)
エネルギー保存の一般形『 $W_外+W_電=\Delta U+H$ 』で、抵抗は無く、誘電体はゆっくり入れたので $H=0$ 。よって
$$W_外=\Delta U-W_電=\frac16CV_0^2-\frac13CV_0^2=-\frac16CV_0^2$$
答(外力のした仕事) $-\dfrac16CV_0^2$(2点)
外力の仕事が負なので、外力は誘電体を動かした向き(極板の間へ入れる向き)と逆向き。誘電体は極板の間へ引き込まれようとしていて、それを支えながらゆっくり入れた。電池がした仕事 $\dfrac13CV_0^2$ のうち、半分が静電エネルギーとしてたまり、残りの半分は誘電体を支える手の側へ出ていった(下の図)。
(6)
極板Aを動かす間はスイッチが閉じているので、電位差は $V_0$ のまま。極板の間隔が $\dfrac d2$ ( $\dfrac12$ 倍)で、間がすべて比誘電率2の誘電体なので、容量はもとの $C$ の $2\times2=4$ 倍の $4C$ 。
$$Q=4C\cdot V_0$$
答(電気量) $4CV_0$(2点)
$$U_3=\frac12\cdot4C\cdot V_0^2=2CV_0^2$$
答( $U_3$ ) $2CV_0^2$(2点)
(このあとスイッチを開くので、極板Aの電気量は $4CV_0$ のまま変わらない)
(7)
スイッチは開いているので、電気量 $Q=4CV_0$ は一定。図4は、空気の部分(長さ $\Delta x$ )と誘電体の部分(長さ $L-\Delta x$ )が横に並んだ並列のコンデンサー(下の図)。極板の長さ全体で間隔 $\dfrac d2$ の空気なら容量は $2C$ 、全体が誘電体なら $4C$ なので、長さの割合をかけて
$$C_4=2C\cdot\frac{\Delta x}{L}+4C\cdot\frac{L-\Delta x}{L}=4C\left(1-\frac{\Delta x}{2L}\right)$$
電気量が一定なので、静電エネルギーは $\dfrac{Q^2}{2C}$ の形で
$$U_4=\frac{(4CV_0)^2}{2\cdot4C\left(1-\dfrac{\Delta x}{2L}\right)}=\frac{2CV_0^2}{1-\dfrac{\Delta x}{2L}}$$
答 $U_4=\dfrac{4L}{2L-\Delta x}CV_0^2$(5点)
(8)
(6)(7) より
$$\frac{U_4}{U_3}=\frac{1}{1-\dfrac{\Delta x}{2L}}$$
これを $\dfrac{1}{1-\alpha}$ と比べて
答 $\alpha=\dfrac{\Delta x}{2L}$(2点)
(9)
$\Delta x\ll L$ なので、問題文の近似より
$$\Delta U\fallingdotseq\alpha U_3=\frac{\Delta x}{2L}\cdot2CV_0^2=\frac{CV_0^2}{L}\,\Delta x$$
エネルギー保存の一般形『 $W_外+W_電=\Delta U+H$ 』で、スイッチが開いていて電池を電気量が通らないので $W_電=0$ 、電流が流れないので $H=0$ 。よって $W_外=\Delta U$ 。
変位 $\Delta x$ は小さいので、その間の外力はほぼ一定の $F_外$ とみてよく、 $W_外=F_外\Delta x$ 。 $\Delta x$ の係数を読んで
$$F_外\,\Delta x=\frac{CV_0^2}{L}\,\Delta x\qquad\therefore\ F_外=\frac{CV_0^2}{L}$$
外力の仕事は正で、誘電体は $x$ 軸の正の向きに動いたので、外力は正の向き。誘電体はゆっくり動かしたので、静電気力は外力とつり合い、大きさが同じで負の向き(着眼点の図の $F$ )。
答(大きさ) $\dfrac{CV_0^2}{L}$(2点)
答(向き) 負(2点)
(静電気力は、誘電体を極板の間へ引き戻す向きにはたらく。(5) で誘電体が引き込まれようとしていたのと同じ。厳密には力の大きさは位置で少し変わるが、問題の近似のとおり $\Delta x\ll L$ で一定とみなす)
(10)
(9) より、誘電体が右にずれている間( $x>0$ )は、負の向きに大きさ $\dfrac{CV_0^2}{L}$ の静電気力がはたらく。左にずれている間( $x<0$ )は、右側に空気の部分ができて同じように極板の間へ引き戻されるので、正の向きに同じ大きさの力がはたらく。力の大きさは位置によらず一定で、 $x=0$ で向きだけが入れかわる(下の図の左)。
よって、誘電体は $x>0$ でも $x<0$ でも加速度の大きさが一定の等加速度運動をし、 $x(t)$ は区間ごとに二次関数。 $t=0$ で速度0の $x=\Delta x$ から引き戻されて $x=0$ を最大の速さで通りすぎ、逆向きの力で減速して $x=-\Delta x$ で止まり、また引き戻される。摩擦も熱の発生も無いので、エネルギーは失われず、 $\Delta x$ と $-\Delta x$ の間の往復をくり返す。関数が切りかわるのは力の向きが変わる $x=0$ の点(下の図の右の黒丸)。
答 ②(4点)
(③の三角関数は単振動で、力が変位に比例するときのグラフ。ここでは力の大きさが変位によらないので③ではない。①は力0の等速運動、④〜⑥は減衰する運動、⑦⑧は極板の外へ出ていく運動で、どれも当てはまらない)
別解
(3) (直列の合成容量で) 誘電体の上面で上下に分けると、空気の層(間隔 $\dfrac d2$ )の容量は $2C$ 、誘電体の層(間隔 $\dfrac d2$ ・比誘電率2)の容量は $4C$ 。この2つの直列なので、合成容量 $C’$ は $\dfrac{1}{C’}=\dfrac{1}{2C}+\dfrac{1}{4C}$ より $C’=\dfrac43C$ 。よって $Q=C’V_0=\dfrac43CV_0$ 。(4) の電場・電位の分布まで求めるので、本解は電場で解いた。
出題意図
(1)(2) 電池につないだコンデンサーの電気量と静電エネルギーを求めることができるか
(3)(4) 誘電体の中の電場が空気の層の半分になることを捉え、電気量と、極板間の電場・電位の分布を求めることができるか
(5) 電池の仕事まで含めたエネルギー保存で、外力の仕事が負になることを導けるか
(6)〜(8):スイッチを開いたあとは電気量が一定であることを捉え、誘電体をずらしたコンデンサーを並列とみて静電エネルギーを求めることができるか。
(9)(10):外力の仕事と静電エネルギーの増加から誘電体にはたらく静電気力を求め、その力による誘電体の運動を判断できるか。
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 30点 | 25点 |
| 目標時間 | 25分 | 25分 |
コンデンサーの問題は決まった流れで解ける。
何が一定かをスイッチで決め(閉じていれば電位差、開いていれば電気量)、誘電体は電場で見て、エネルギーは一般形 $W_外+W_電=\Delta U+H$ から無い項を消し、力は外力の仕事の $\Delta x$ の係数から求める。
この大問はその流れを前半と後半で2回くり返しているだけ。
最後の (10) は、誘電体が引き込まれて行きすぎ、反対側からまた引き戻される往復をイメージできれば、一定の力の放物線をつないだ②だとすぐに分かる。
やっていることは「静電エネルギーの増加と電池の仕事から外力を求める」という超典型だが、(8)(9) で分母の形を $-1$ 乗の近似で直す所が難しく、この年の合否を最も分けた大問。
差がつく所・失点しやすい所
- (8)(9):この年の合否を分けた所。 $\dfrac{U_4}{U_3}$ を $\dfrac{1}{1-\alpha}$ の形に合わせ、分母にある $(1-\alpha)^{-1}$ を近似 $1+\alpha$ に直して、 $\Delta U$ を $\Delta x$ の1次式にできるか。そこまで行けば、あとは $\Delta x$ の係数が外力、という決まった流れ。
- (10):力の大きさが位置によらない → 等加速度 → 二次関数の繰り返し(②)と判断できるか。「元にもどる力」という見た目から単振動(③)を選ぶ受験生が多いと思われる。
- (5):電池がつながったままなので電池も仕事をし、外力の仕事は $\Delta U-W_電$ で負になる、という発想に行き着けるか。
2020年九州大学物理
第3問 解答・解説
第3問は波動の問題です。
テーマは「実験ノートとレポートを読み、暗線の間隔の平均の求め方(3つ離れた差をとる逐差法)とその精度、暗線の条件、測定値からの波長の計算(有効数字3桁)、単スリットを動かしたときの干渉縞の移動を答える」。
問題


問題文をテキストで読む
千春さんは、実験中に記録した実験ノート(資料1)をもとに、レポート(資料2)を作成している。これらの資料に関して、以下の問いに答えよ。
問1. 資料1の空欄 $\boxed{\text{(ア)}}$ に入る人名を答えよ。
問2. 資料1の波線部(イ)は、干渉縞の暗線の間隔 $s$ の平均を計算する方法について述べている。千春さんが $s$ を求める際にその3倍である $3s$ を利用した理由を、表1に示すクラスメートの浩介さんの計算方法と比較しながら考えよう。
(1) 資料1の表Cにおいて、千春さんが求めた $s$ の平均を表す式を、暗線の位置を示す記号 $x_0$、 $x_1$、 $x_2$、 $x_3$、 $x_4$、 $x_5$ を用いて書き表せ。
(2) 一方、浩介さんは右の表1のように、隣り合う暗線の間隔の計算値を利用して、 $s$ の平均を求めた。浩介さんが求めた $s$ の平均を表す式を、(1)と同様に、暗線の位置を示す記号を用いて書き表せ。
表1:浩介さんの計算方法
| $x_1-x_0$ | 3.9 mm |
| $x_2-x_1$ | 4.1 mm |
| $x_3-x_2$ | 3.9 mm |
| $x_4-x_3$ | 4.1 mm |
| $x_5-x_4$ | 4.0 mm |
| $s$ の平均 | 4.00 mm |
(3) 2人が求めた $s$ の平均は同じ値でその有効数字は3桁となったが、千春さんの計算方法の方が精度は高い。その理由を述べよ。
問3. 資料2の空欄 $\boxed{\text{(エ)}}$ は、スクリーン上の点Qで暗線が観察される条件を記す部分である。文章と数式を用いて適切な説明を書き加え、この部分を完成させよ。
問4. 資料1の表Aと表Cに示す数値を用いて、この実験で使用した単色光源から出ている光の波長 $\lambda$ を計算せよ。有効数字と単位に注意して記すこと。
問5. 資料1の波線部(ウ)を考察するため、図1に示す状況を考えよう。千春さんは実験の途中で、点Pに置かれていた単スリットを、光軸POと垂直である黒い矢印の向きに距離 $X_0$ だけはなれた点 $\mathrm{P’}$ へ動かした。 $X_0$ は単スリットと複スリットの間の距離 $L_0$ に比べて十分小さいとする。
(1) 資料2と同様の計算を用いて、経路 $\mathrm{P’AQ}$ と経路 $\mathrm{P’BQ}$ の長さの差(経路差 $\Delta L’=\mathrm{P’BQ}-\mathrm{P’AQ}$)を求め、点Qが干渉縞の明線の位置となる条件、および点Qが干渉縞の暗線の位置となる条件を示せ。
(2) 上の結果を考慮して、単スリットを点Pから点 $\mathrm{P’}$ に動かしたときに干渉縞の明線が移動する方向(図1の向きa、向きbのいずれであるか)、および明線の移動距離を答えよ。
資料1 千春さんの実験ノート
複スリットを用いた光の干渉
実験の目的:
複スリットの間隔、干渉縞の間隔、複スリットとスクリーンの距離を測定し、それらと光の波長の関係を考察する。
事前に調べたこと:
この実験は $\boxed{\text{(ア)}}$ の実験と呼ばれている。1800年頃に $\boxed{\text{(ア)}}$ はこのような実験をして、光の波動性を証明した。
実験の方法:
① 図Aのように、単色光源、単スリット、複スリット、スクリーンを配置し、単スリットと複スリットの距離 $L_0$、複スリットとスクリーンの距離 $L$、複スリットの間隔 $d$ を測定した。
② スクリーン上に干渉縞ができることを確認した。
③ 干渉縞の間隔を測定するため、暗線の一つを基準線に選んだ。その位置 $x_0$ と、そこから数えて $n$ 本目の暗線の位置 $x_n\,(n=1\sim5)$ をものさしで測定した。
測定の結果:
表A:測定した結果
| $L_0$:単スリットと複スリットの間の距離 | 0.102 m |
| $L$:複スリットとスクリーンの間の距離 | 0.700 m |
| $d$:複スリットの間隔 | 0.105 mm |
表B:暗線の位置
| $x_0$ | 27.1 mm |
| $x_1$ | 31.0 mm |
| $x_2$ | 35.1 mm |
| $x_3$ | 39.0 mm |
| $x_4$ | 43.1 mm |
| $x_5$ | 47.1 mm |
以下の手順により、表Bの測定値を用いて、隣接する暗線の間隔 $s$ の平均を表Cの通り計算した。
(イ) ① 暗線の間隔の3倍($3s$)を求めた。
② $3s$ の平均を計算し、この値から $s$ の平均4.00 mm(有効数字3桁)を得た。
表C:間隔 $s$ の平均の計算
| $x_3-x_0$ | 11.9 mm |
| $x_4-x_1$ | 12.1 mm |
| $x_5-x_2$ | 12.0 mm |
| $3s$ の平均 | 12.0 mm |
| $s$ の平均 | 4.00 mm |
実験中に気付いたこと:
(ウ) 単スリットを光軸と垂直な方向(図Aに記した黒い矢印の方向)へわずかに動かすと、干渉縞はその間隔を保ったままスクリーン上を移動した。
(実験日:令和2年2月3日 共同実験者:浩介)
資料2 千春さんのレポート(一部抜粋)
◎干渉縞の位置はどのような物理量と関係しているか
上図のように、単スリットの位置Pで回折された光が複スリットのAまたはBを通り、スクリーン上の点Qに到達したとする。単スリットと複スリットの開口幅は十分に狭い。Aを通る経路PAQとBを通る経路PBQで、それぞれの長さは
$$\mathrm{PAQ}=\mathrm{PA}+\mathrm{AQ}=\sqrt{{L_0}^2+\left(\frac{d}{2}\right)^2}+\sqrt{L^2+\left(x-\frac{d}{2}\right)^2}$$
$$\mathrm{PBQ}=\mathrm{PB}+\mathrm{BQ}=\sqrt{{L_0}^2+\left(\frac{d}{2}\right)^2}+\sqrt{L^2+\left(x+\frac{d}{2}\right)^2}$$
となる。点Qが中心Oよりも下にあるときには、 $x<0$ とすれば上式はそのまま成り立つ。
ゆえに、経路差 $\Delta L=\mathrm{PBQ}-\mathrm{PAQ}$ は、
$$\begin{aligned}\Delta L&=\sqrt{L^2+\left(x+\frac{d}{2}\right)^2}-\sqrt{L^2+\left(x-\frac{d}{2}\right)^2}\\&=L\left\{\sqrt{1+\left(\frac{x}{L}+\frac{d}{2L}\right)^2}-\sqrt{1+\left(\frac{x}{L}-\frac{d}{2L}\right)^2}\right\}\\&\fallingdotseq\frac{xd}{L}\end{aligned}$$
最後の変形には、 $|\alpha|\ll1$ のときの近似式 $\sqrt{1+\alpha}\fallingdotseq1+\dfrac{\alpha}{2}$ を用いた。
点Qで明線がみられるとき、Aを通った光とBを通った光の位相がそろっているから、経路差 $\Delta L$ がちょうど波長 $\lambda$ の整数倍に等しくなる。つまり、
$$\frac{xd}{L}=m\lambda\qquad(m=0,\ \pm1,\ \pm2,\ \cdots)$$
である。
一方、点Qで暗線がみられるとき、Aを通った光とBを通った光の位相が$\boxed{\text{(エ)}}$
解答の方針
【問2の方針】
平均をとる目的は、1つ1つの測定のずれ(誤差)を打ち消し合わせて小さくすること。だから精度を比べるときは、最後の式に測定値がいくつ残っているかに注目する。浩介さんのように隣どうしの差を5つ足すと、途中の $x_1$〜 $x_4$ が打ち消し合い、両端の $x_0$ と $x_5$ しか残らない。千春さんのように3つ離れた差( $3s$ )を3つとると、6つの測定値がすべて1回ずつ式に入る(下の図)。


- 表Cの3つの差の平均が $3s$ の平均。それを3で割って $s$ の平均を式にする((1))。
- 表1の5つの差を足して5で割る。足すと途中の測定値が打ち消し合うので、式を整理する((2))。
- (1)(2) の式に残っている測定値の数を比べ、精度が高い理由を書く((3))。
【問3・問4の方針】
光の干渉は、どの問題も「どの光とどの光が干渉するか → 経路差 → 条件 → 位置 → 1個ずらして引く」の決まった流れ。干渉するのは、Aを通った光とBを通った光の2本で、経路差はレポートに $\Delta L\fallingdotseq\dfrac{xd}{L}$ と出ている。
暗線は2本の光が逆位相(山と谷が重なる)の所。ずれが半波長なので、経路差は半波長の奇数倍(下の図の上)。
表Bの $x_0$〜 $x_5$ は暗線の位置なので、 $s$ は暗線の間隔(下の図の下)。暗線の位置を $m$ で表して1個ずらして引けば間隔の式が求まり、それを $\lambda$ について解けばよい。この間隔の式には、単スリットと複スリットの距離 $L_0$ は入らない。 $L_0$ の区間は2本の光に共通で、経路差を生まないから。


- 逆位相なので、経路差 $\dfrac{xd}{L}$ が半波長の奇数倍になる条件を書く(問3)。
- 暗線の条件を $x$ について解いて $m$ 番目の暗線の位置を求め、1個ずらして引いて $s=\dfrac{L\lambda}{d}$ を求める。
- $\lambda=\dfrac{sd}{L}$ に、 $s$・ $d$・ $L$ をメートルに直して入れる。
- 測定値の桁数にそろえて、有効数字3桁・単位つきで答える(問4)。
【問5の方針】
単スリットを動かすと、光源( $\mathrm{P’}$ )から A・B までの距離にも差が生まれる。だから経路は光源からスクリーンまで全部書き、光源側の差( $\mathrm{P’B}-\mathrm{P’A}$ )とスクリーン側の差( $\mathrm{BQ}-\mathrm{AQ}$ )に分ける。スクリーン側はレポートの計算そのもの。光源側の三角形も同じ形(下の図)なので、レポートの計算の文字を置きかえるだけで求まる( $L\to L_0$、 $x\to X_0$ )。


あとは明線・暗線の条件を作り、新しい明線の位置を元の位置と比べる。単スリットを上へ動かすと下の経路 $\mathrm{P’B}$ が長くなるので、それを打ち消すように、スクリーン上では下側(向きb)で経路差が0になる。
- 経路差を $\Delta L’=(\mathrm{P’B}+\mathrm{BQ})-(\mathrm{P’A}+\mathrm{AQ})=(\mathrm{P’B}-\mathrm{P’A})+(\mathrm{BQ}-\mathrm{AQ})$ とまとめる。
- スクリーン側はレポートより $\mathrm{BQ}-\mathrm{AQ}\fallingdotseq\dfrac{xd}{L}$。
- 光源側は $\mathrm{P’A}$・ $\mathrm{P’B}$ を三平方の定理で書き、レポートと同じ形なので文字を置きかえて $\mathrm{P’B}-\mathrm{P’A}\fallingdotseq\dfrac{X_0d}{L_0}$。
- 明線は $\Delta L’=m\lambda$、暗線は $\Delta L’=\left(m+\dfrac12\right)\lambda$((1))。
- 明線の条件を $x$ について解き、元の明線の位置 $\dfrac{mL\lambda}{d}$ と比べて、向きと移動距離を求める((2))。
解答




解答をテキストで読む
問1
1800年頃、複スリットによる光の干渉を示して光の波動性を確かめたのはヤング。
答 ヤング(トーマス・ヤング)(3点)
問2 (1)
表Cの3つの差はどれも暗線の間隔3つ分( $3s$ )。その平均を3で割ると $s$ の平均になるので
$$\frac13\times\frac{(x_3-x_0)+(x_4-x_1)+(x_5-x_2)}{3}$$
答 $\dfrac{(x_3-x_0)+(x_4-x_1)+(x_5-x_2)}{9}$(4点)
( $=\dfrac{x_3+x_4+x_5-x_0-x_1-x_2}{9}$ 。表Bの値を入れると $\dfrac{11.9+12.1+12.0}{9}=4.00$ mm で、表Cと一致する)
問2 (2)
表1の5つの差の平均なので
$$\frac{(x_1-x_0)+(x_2-x_1)+(x_3-x_2)+(x_4-x_3)+(x_5-x_4)}{5}$$
足すと $x_1$〜 $x_4$ がすべて打ち消し合い、分子は $x_5-x_0$ だけが残る。
答 $\dfrac{x_5-x_0}{5}$(4点)
(表Bの値で $\dfrac{47.1-27.1}{5}=4.00$ mm。表1と一致する)
問2 (3)
(1)(2) の答えの式に残っている測定値を比べる(下の図)。浩介さんの式には $x_0$ と $x_5$ の2つしかなく、千春さんの式には6つすべてが1回ずつ入っている。
答(解答例) 浩介さんの方法では、5つの差を足すと途中の $x_1$〜 $x_4$ が打ち消し合い、実際には両端の $x_0$ と $x_5$ の2つの測定値しか使っていない。千春さんの方法は6つの測定値をすべて1回ずつ使っているので、1つ1つの測定のずれ(誤差)が平均されて小さくなるから。(6点)
(なぜそう言えるか:1つ1つの測定値は、ものさしの読み取りなどで少しずつずれていて、そのずれの向きはばらばらなので、多くの測定値を使うほど打ち消し合って小さくなる。浩介さんの方法では、 $x_0$ か $x_5$ をたまたま読み違えると、そのずれがそのまま結果に出る)
問3
暗線では、Aを通った光とBを通った光の山と谷が重なって打ち消し合う(逆位相)。位相が逆になるのは、2本の光が半波長ずれているとき。半波長の奇数倍ずれていても同じ(下の図の上)。
答(解答例) 逆になっている(半波長ずれている)。したがって、経路差 $\Delta L$ が半波長の奇数倍に等しくなる。つまり、 $\dfrac{xd}{L}=\left(m+\dfrac12\right)\lambda\qquad(m=0,\ \pm1,\ \pm2,\ \cdots)$ である。(6点)
( $\left(m+\dfrac12\right)\lambda$ は $(2m+1)\dfrac{\lambda}{2}$ と書いても同じ。 $m$ に負の整数も入れるので、中心Oより下の暗線も表せる)
問4
問3の暗線の条件を $x$ について解くと、 $m$ 番目の暗線の位置は
$$x_m=\left(m+\frac12\right)\frac{L\lambda}{d}$$
となる(中央の明線のすぐ上の暗線が $m=0$ )。隣り合う暗線の間隔は、1個ずらして引いて
$$s=x_{m+1}-x_m=\frac{L\lambda}{d}\qquad\therefore\ \lambda=\frac{sd}{L}$$
(明線の間隔と同じ。この式に $L_0$ は入らないので、表Aの $L_0=0.102$ m は使わない)
単位はすべてメートルに直してから入れる。 $s=4.00\ \mathrm{mm}=4.00\times10^{-3}\ \mathrm{m}$、 $d=0.105\ \mathrm{mm}=1.05\times10^{-4}\ \mathrm{m}$、 $L=0.700\ \mathrm{m}$ より
$$\lambda=\frac{(4.00\times10^{-3})\times(1.05\times10^{-4})}{0.700}=6.00\times10^{-7}\ \mathrm{m}$$
掛け算・割り算の答えは、使った測定値のうち桁数がいちばん少ないものにそろえる。 $s=4.00$、 $d=0.105$、 $L=0.700$ はどれも有効数字3桁( $0.105$ の頭の0は位取りなので数えず、 $0.700$ の最後の0は測った桁なので数える)なので、答えも3桁で書く。
答 $6.00\times10^{-7}\ \mathrm{m}$(7点)
( $600$ nm。橙色の光の波長で、可視光の範囲に入っている)
問5 (1)
経路を単スリットからスクリーンまで全部書き、光源側とスクリーン側に分けてまとめる。
$$\Delta L’=(\mathrm{P’B}+\mathrm{BQ})-(\mathrm{P’A}+\mathrm{AQ})=(\mathrm{P’B}-\mathrm{P’A})+(\mathrm{BQ}-\mathrm{AQ})$$
スクリーン側は、資料2の計算そのもので
$$\mathrm{BQ}-\mathrm{AQ}=\sqrt{L^2+\left(x+\frac d2\right)^2}-\sqrt{L^2+\left(x-\frac d2\right)^2}\fallingdotseq\frac{xd}{L}$$
光源側は、 $\mathrm{P’}$ が光軸から上(A側)へ $X_0$ の所にあるので
$$\mathrm{P’B}-\mathrm{P’A}=\sqrt{{L_0}^2+\left(X_0+\frac d2\right)^2}-\sqrt{{L_0}^2+\left(X_0-\frac d2\right)^2}$$
これはスクリーン側の式の $L$ を $L_0$ に、 $x$ を $X_0$ に置きかえた形(三角形が同じ形)。 $X_0$、 $d$ は $L_0$ より十分小さいので、同じ近似で
$$\mathrm{P’B}-\mathrm{P’A}\fallingdotseq\frac{X_0d}{L_0}$$
( $\mathrm{P’}$ がA側へ動いたので $\mathrm{P’B}$ の方が長く、正)。よって
$$\Delta L’\fallingdotseq\frac{X_0d}{L_0}+\frac{xd}{L}$$
明線は2本の光の位相がそろうとき、暗線は逆になるときなので
答 $\Delta L’=\dfrac{X_0d}{L_0}+\dfrac{xd}{L}$。明線:$\dfrac{X_0d}{L_0}+\dfrac{xd}{L}=m\lambda$、暗線:$\dfrac{X_0d}{L_0}+\dfrac{xd}{L}=\left(m+\dfrac12\right)\lambda\qquad(m=0,\ \pm1,\ \pm2,\ \cdots)$(5点)
問5 (2)
明線の条件を $x$ について解くと
$$x=\frac{mL\lambda}{d}-\frac{L}{L_0}X_0$$
単スリットを動かす前( $X_0=0$ )の $m$ 番目の明線の位置は $\dfrac{mL\lambda}{d}$。比べると、どの明線も $\dfrac{L}{L_0}X_0$ だけ $x$ の負の向き(下)にずれる。間隔は $\dfrac{L\lambda}{d}$ のままなので、縞は間隔を保ったまま平行移動する(実験ノートの(ウ)と合う)。
中央の明線( $m=0$ 、経路差0)で見ると、光源側で $\mathrm{P’B}$ が長くなった分を、スクリーン側で $\mathrm{AQ}$ を長くして打ち消す点=Oより下の点 $\mathrm{O’}$ に移る(下の図)。
答 向きb、移動距離 $\dfrac{L}{L_0}X_0$(5点)
( $X_0=0.50$ mm とすると、 $\dfrac{0.700}{0.102}\times0.50\fallingdotseq3.4$ mm。暗線の間隔4.00 mm に近い大きさで動くので、単スリットをわずかに動かすだけで縞がはっきり動いて見える)
別解
問5 (2) (相似な三角形で中央の明線を見つける) 中央の明線は経路差0の点。複スリットの中点をMとすると、経路差0の点は直線 $\mathrm{P’M}$ の延長とスクリーンの交点 $\mathrm{O’}$(上の図)。 $\mathrm{O’}$ では、スクリーン側の差 $\dfrac{(-\mathrm{OO’})\,d}{L}$ が光源側の差 $\dfrac{X_0d}{L_0}$ をちょうど打ち消すので、 $\mathrm{OO’}=\dfrac{L}{L_0}X_0$。これは直線 $\mathrm{P’M}$ が作る2つの相似な直角三角形( $X_0:L_0=\mathrm{OO’}:L$ )の比と同じ。縞の間隔は変わらないので、縞全体が向きbへ $\dfrac{L}{L_0}X_0$ 動く。光源と中央の明線は、複スリットの中点をはさんで一直線に並ぶ、と覚えておくと向きをすぐに確かめられる。
出題意図
問1 ヤングの実験という基本の知識を答えることができるか
問2 (1)〜(3) 測定値の平均の取り方を式にし、どの測定値が結果に残るかから、計算方法による精度の違いを説明できるか
問3 暗線では2つの光が逆位相になり、経路差が半波長の奇数倍になることを、文章と式で書くことができるか
問4 暗線の間隔の式から波長を求め、単位をメートルにそろえて有効数字3桁で答えることができるか
問5 (1)(2) 単スリットを動かしたときの経路差を光源側とスクリーン側に分けて求め、干渉縞がどちらへどれだけ動くかを捉えることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 40点 | 30点 |
| 目標時間 | 25分 | 25分 |
実験ノートの形で長く見えるが、中身はヤングの実験のザ・典型問題で、やや簡単。
差がつくとしたら最初の実験の計算方法の意味だけ。
光の干渉は「どの光とどの光が干渉するか → 経路差 → 条件 → 位置 → 1個ずらして引く」の決まった流れで、単スリットを動かす問5も、経路差を光源側とスクリーン側に分けて文字を置きかえるだけ。
単スリットを上へ動かすと縞は下へ動く、という現象をイメージできていれば、向きは計算の前に分かる。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2:差がつくとしたら、最初の実験の計算方法の違いが何を意味するかをつかめるかだけ。浩介さんの方法では途中の測定値が打ち消し合い、両端の2つしか使っていないことに気づけるか。あとはヤングの実験の典型問題。
コラム 逐差法(ちくさほう):測定値を捨てない平均のとり方
千春さんの計算方法は、物理の実験で逐差法と呼ばれるデータの処理の仕方。等間隔に並ぶ測定値(この大問では暗線の位置 $x_0$〜 $x_5$)から間隔を求めるときに使う。


- 何をするのか:測定値を前半( $x_0,\ x_1,\ x_2$ )と後半( $x_3,\ x_4,\ x_5$ )に分け、対応するものどうしの差( $x_3-x_0$、 $x_4-x_1$、 $x_5-x_2$ )をとって平均する。どの差も間隔3つ分なので、平均を3で割れば間隔1つ分になる。
- 隣どうしの差の平均ではだめな理由:隣どうしの差を全部足すと途中の値が打ち消し合い、 $\dfrac{x_5-x_0}{5}$ になる。6つ測っても、実際には両端の2つしか使っていない。途中の4つを測った手間がむだになるうえ、両端のどちらかを読み違えると、そのずれがそのまま結果に出る。
- グラフで見ると:横軸に番号 $n$、縦軸に位置 $x_n$ をとると、測定点はほぼ1本の直線に並び、その傾きが間隔 $s$。逐差法は、3つ離れた点どうしの高さの差を3組とって平均する(上の図)。隣どうしの差の平均は、両端の2点を結んだ直線の傾きと同じ。
- どれだけ良くなるか:6つの測定値に同じくらいのずれがあるとして計算すると、逐差法で求めた $s$ のずれは、隣どうしの差の平均の約0.96倍。6つ程度の測定では差は大きくないが、測った値をすべて結果に反映させる方が必ずよい。測定値の数が多いほど、差は大きくなる。
- 測定値の処理の基本:測った値はできるだけ全部使う/単位をそろえる/答えの桁は測定値の桁にそろえる(問4の有効数字3桁)。九大の物理では、2020年のように実験ノートの形でデータの扱いを問うことがある。教科書の実験の欄や、学校の実験レポートで扱うデータの処理も、読み流さずに理由まで説明できるようにしておきたい。
2020年九州大学・物理の
講評とまとめ
3問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 標準 | 40点 | 35点 |
| 第2問 | 標準 | 30点 | 25点 |
| 第3問 | やや簡単 | 40点 | 30点 |
| 全体 | 標準 | 105点 | 85点 |
大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で105点、その他の学部で85点)にはなりません。
3題とも典型問題が並んだ標準的なセットでした。
第1問は台と物体がどう動くかを想像できれば難しくありません。
第2問は静電エネルギーの増加と電池の仕事から外力を求める超典型の流れですが、分母の形を $-1$ 乗の近似で直す (8)(9) が難しく、この年の合否を最も分けました。
第3問は実験ノートの形で長く見えますが、中身はヤングの実験のザ・典型問題で、差がつくとしたら最初の実験の計算方法の意味だけです。
典型問題を白紙から再現できるまで仕上げたうえで、近似式のような「道具」を使いこなせるかが分かれ目になります。
解く流れ
第3問 → 第1問 → 第2問。
2020年九州大学・物理に
関するよくある質問
2020年の九州大学・物理について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2020年の九州大学・物理は難しかった?
-
標準的な年でした。
第1問・第2問は標準、第3問はやや簡単です。
第2問の (8)(9) の近似は難しく、この年の合否を最も分けました。 - 2020年の九州大学・物理は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で105点、その他の学部で85点です(125点満点)。
- 2020年の九州大学・物理はどこで差がつく?
-
3題とも典型問題で、標準的なセットです。そのうえで、差がつくとしたら次の3つです。
- 第1問 問2 (1):台と物体の運動を想像し、動摩擦力の向きを正しく決められたか。
- 第2問 (8)(9):分母の $(1-\alpha)^{-1}$ を近似して、 $\Delta U$ を $\Delta x$ の1次式にできたか(この年の合否を最も分けた所)。
- 第3問 問2:最初の実験の計算方法の違いが何を意味するかをつかめたか。
- 2020年の九州大学・物理は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:力学
- 第2問:電磁気
- 第3問:波動


