【解説・配点付き】2021年九州大学物理の解答・解説
2021年の九州大学・物理の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2021年九州大学物理
第1問 解答・解説
この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は力学の問題です。
テーマは「2本のばねにはさまれた2つの小球のつり合いと、手をはなした小球1の衝突(運動量保存則・反発係数)。衝突後の2つの単振動の中心・振幅・周期を決め直し、変位の時間変化をグラフに書く」。
問題


問題文をテキストで読む
図1のように、先端を壁に固定したばね定数 $k_1$、 $k_2$ のばね1、2に、質量 $m_1$、 $m_2$ の小球1、2がそれぞれ取り付けられ、なめらかな水平面上に置かれている。ばね1、2ともに自然の長さで、小球1、2が接した状態で静止している。小球1、2は2つのばねの固定端を結ぶ直線上に置かれ、この直線に沿ってのみ運動できる。小球の大きさ、ばねの質量、空気抵抗は無視できるものとする。小球の変位、速度、加速度はそれぞれ右向きを正として、以下の問いに答えよ。
問1. 図1の状態から、図2のように右側の壁を左に距離 $D$ だけゆっくり移動させたところ、ばね1は $s_1$、ばね2は $s_2$ だけ縮み、小球1、2が静止した。その後、壁を固定した。
(1) 小球1が小球2を押す力の大きさを $s_1$ を使って表せ。
(2) $s_1$ および $s_2$ の大きさを求めよ。
問2. 次に、図2の状態から小球1を手でゆっくりと左に移動させる。小球2も小球1と接した状態で左に移動し、さらに小球1を左に移動させるとやがて小球2は小球1とはなれて停止した。図3のように小球間の距離が $d$ になった状態で静かに手をはなしたところ、小球1は動き出し、小球2に衝突した。このとき、衝突時間はきわめて短く、運動量保存則が成り立つものとする。以下の問いに答えよ。
(1) 手をはなす直前のばね1の縮みを $D$ および $d$ を用いて表せ。
(2) 小球2に衝突する直前の小球1の速度 $V_0$ を求めよ。
(3) $V_0$ および衝突直後の小球1と小球2の速度 $V_1$、 $V_2$ を用いて、衝突前後での運動量保存則を表す式を書け。
(4) 小球1、2の間の反発係数 $e\,(e>0)$ を $V_0$、 $V_1$ および $V_2$ を用いて表せ。
(5) $V_1$ および $V_2$ をそれぞれ $V_0$ を用いて表せ。
(6) 図4のように、衝突後、小球2は小球1とはなれて右側へ運動し始めた。小球2は、小球1と再び衝突する前に、衝突点からの変位 $x_2$ が最大となる位置に達した。この最大変位を $V_2$ を用いて表せ。
(7) 衝突から問2(6)の最大変位に達するまでの時間を求めよ。
(8) $d=2D$、 $m_1=m_2=m_0$、 $k_1=4k_0$、 $k_2=k_0$、 $e=1$ とする。このとき、小球1、2の衝突点からの変位 $x_1$ および $x_2$ の時間変化を、 $x_1$ は実線で、 $x_2$ は破線で図示せよ。ただし、方眼紙の縦軸は変位 $x_1$、 $x_2$ を、横軸は衝突からの時間 $t$ を表す。 $T_0=\pi\sqrt{\dfrac{m_0}{k_0}}$ として、 $0\leqq t\leqq T_0$ の範囲で示せ。
解答の方針
【問1の方針】
2つの小球は静止しているので、小球ごとに力のつり合いを立てる。水平方向の力は、小球1にはばね1の力 $k_1s_1$(右向き)と小球2から押される力 $N$(左向き)、小球2にはばね2の力 $k_2s_2$(左向き)と小球1から押される力 $N$(右向き)。2つの $N$ は作用反作用で同じ大きさ(下の図)。未知数は $s_1$、 $s_2$、 $N$ の3つなので、つり合いの2本にもう1本の式が要る。それが縮みの関係。はじめは2本とも自然の長さで接していた。小球が $s_1$ 左へずれるとばね1は $s_1$ 縮み、壁は $D$ 左へ動くので、ばね2の縮みは $s_2=D-s_1$ 。つまり $s_1+s_2=D$ になる。 2本のばねを直列・並列の合成ばねとして処理できる、よくある型。


- 小球1、2それぞれにはたらく力を、重力 → 触れているもの(床・ばね・もう一方の小球)の順に書く。
- 小球1の水平方向のつり合いから $N=k_1s_1$ を求める((1))。
- 小球2の水平方向のつり合い $N=k_2s_2$ と、縮みの関係 $s_1+s_2=D$ を連立して $s_1$、 $s_2$ を求める((2))。
【問2の方針】
(1) の決め手は、小球2がどこで止まるか。小球1を左へゆっくり動かすと、小球2はばね2に押されてついていく。小球2が小球1を押す力は、小球2のつり合いからばね2の力に等しく、ばね2が自然の長さになると0になる。ばねにつながった物体と接している物体は、ばねが自然の長さの位置で離れる。だから小球2はばね2が自然の長さの位置で止まり、そこが衝突点になる。問1で見たとおり、この位置はばね1の自然の長さの位置より $D$ 左。小球1はそこからさらに $d$ 左にあるので、ばね1の縮みは $D+d$(下の図)。


(2) 手をはなしてから衝突するまで、小球1にはたらく力は重力・床の垂直抗力・ばね1の力。重力と垂直抗力は運動の向きと垂直で仕事をしないので、力学的エネルギーが保存する。衝突点でのばね1の縮みは「 $D+d$ 縮んでいたのが、 $d$ だけ小さくなった」ので $D$。0にはならない。
(3)〜(5) 衝突は運動量保存則と反発係数の式をセットで立てる。衝突の瞬間に2球の間にはたらく力は作用反作用の内力。ばねの力は衝突時間がきわめて短いので力積が無視できる。右向きを正とし、衝突直後の速度も正の向きに置いて、速度で立てる。
(6)(7) 衝突後の小球2は、ばね2につながれて単振動をする。衝突点はばね2の自然の長さの位置で、小球2の振動の中心。だから衝突直後の速さ $V_2$ が最大の速さで、速さが0になる端までの距離が最大変位(振幅)。中心から端までは $\dfrac14$ 周期(下の図)。


(8) は状況が変わったので、小球ごとに単振動を定義し直す(中心・振幅・周期)。
- 小球1:質量が同じで $e=1$ なので速度が入れかわり、衝突直後の速さは0。ところが、ばね1はまだ $D$ 縮んでいるので、止まった衝突点は振動の端。中心はばね1の自然の長さの位置で、衝突点から $D$ 右。振幅 $D$、周期 $2\pi\sqrt{\dfrac{m_0}{4k_0}}=T_0$。
- 小球2:衝突点が中心で、中心を速さ $V_0$ で出発する。振幅 $V_0\sqrt{\dfrac{m_0}{k_0}}=4\sqrt2D$、周期 $2\pi\sqrt{\dfrac{m_0}{k_0}}=2T_0$。
2つの小球が動く範囲を縦の軸に並べ、グラフと高さをそろえて見ると、小球1は0と $2D$ の間を1往復(1周期)、小球2は0から $4\sqrt2D$ まで行って戻る(半周期)。どちらも $t=T_0$ でちょうど衝突点に戻る(下の図)。


- 小球2はばね2が自然の長さの位置で止まるので、そこが衝突点。衝突点はばね1の自然の長さの位置より $D$ 左なので、手をはなす直前のばね1の縮みは $D+d$((1))。
- ばね1の縮みが $D+d$ から $D$ になるまでの力学的エネルギー保存で $V_0$ を求める((2))。
- 右向きを正として、運動量保存則((3))と反発係数の式((4))を立て、連立して $V_1$、 $V_2$ を求める((5))。
- 衝突点は小球2の振動の中心なので、最大変位は振幅。エネルギー保存 $\dfrac12m_2V_2^{\,2}=\dfrac12k_2A_2^{\,2}$ で求める((6))。
- 中心から端までは $\dfrac14$ 周期なので、時間は周期 $2\pi\sqrt{\dfrac{m_2}{k_2}}$ の $\dfrac14$((7))。
- (8) の値を (2)(5) に入れて $V_0$、 $V_1=0$、 $V_2=V_0$ を求める。小球ごとに中心・振幅・周期を決め直し、出発点が端なら cos 型、中心なら sin 型として、 $\dfrac{T_0}{4}$ ごとの値に点を打ってグラフを書く((8))。
解答




解答をテキストで読む
問1 (1)
小球1にはたらく力は、重力 $m_1g$、床からの垂直抗力 $R_1$、ばね1からの力( $s_1$ 縮んでいるので右向きに $k_1s_1$)、小球2から押される力(左向きに $N$)(下の図)。小球1は静止しているので、水平方向のつり合いより
$$N=k_1s_1$$
小球1が小球2を押す力は、作用反作用でこの $N$ と同じ大きさ。
答 $k_1s_1$(4点)
問1 (2)
小球2の水平方向のつり合い(ばね2から左向きに $k_2s_2$、小球1から右向きに $N$)より $N=k_2s_2$。(1) と合わせて
$$k_1s_1=k_2s_2$$
小球が $s_1$ 左へずれるとき、ばね1は $s_1$ 縮む。壁は $D$ 左へ動くので、ばね2の長さは $D-s_1$ だけ短くなり、これがばね2の縮み $s_2$ (上の図)。よって
$$s_1+s_2=D$$
2式を連立して
$$s_1=\frac{k_2}{k_1+k_2}D,\qquad s_2=\frac{k_1}{k_1+k_2}D$$
答 $s_1=\dfrac{k_2}{k_1+k_2}D$、 $s_2=\dfrac{k_1}{k_1+k_2}D$(5点)
(ばね定数が小さい方が大きく縮む。 $k_1=k_2$ なら $\dfrac D2$ ずつ)
問2 (1)
小球1を左へゆっくり動かす間、小球2はつり合いを保ちながら動くので、小球2が小球1を押す力はばね2の力に等しい。ばね2が自然の長さになるとこの力は0になり、それより左へは、ばね2が小球2を右へ引き戻す。よって小球2はばね2が自然の長さの位置で小球1から離れて止まる(ばねにつながった物体と接していれば、自然の長さで離れる)。
この位置は、問1で見たとおり、ばね1の自然の長さの位置より $D$ 左。手をはなす直前、小球1はそこからさらに $d$ 左にあるので(下の図)、ばね1の縮みは $D+d$。
答 $D+d$(4点)
問2 (2)
手をはなしてから小球2に当たるまで、小球1にはたらく力は重力・床の垂直抗力・ばね1の力。重力と垂直抗力は運動の向きと垂直で仕事をしないので、力学的エネルギー $E=K+U_k$(運動エネルギー+ばねの弾性エネルギー)が保存する。小球1が $d$ 進んで衝突点に着くと、ばね1の縮みは「 $D+d$ 縮んでいたのが $d$ だけ小さくなった」ので $D$。手をはなす直前と衝突直前で
$$0+\frac12k_1(D+d)^2=\frac12m_1V_0^{\,2}+\frac12k_1D^2$$
$$V_0^{\,2}=\frac{k_1\{(D+d)^2-D^2\}}{m_1}=\frac{k_1d(2D+d)}{m_1}$$
小球1は右向きに動くので $V_0>0$。
答 $V_0=\sqrt{\dfrac{k_1d(2D+d)}{m_1}}$(5点)
問2 (3)
衝突の瞬間、2球の間にはたらく力は作用反作用の内力。ばねの力は衝突時間がきわめて短いので力積が無視でき、2球の運動量の和が保存する。右向きを正とし、衝突直後の速度 $V_1$、 $V_2$ も右向きに置く(下の図。向きは符号で読む)。「後=前」で書いて
答 $m_1V_1+m_2V_2=m_1V_0$(3点)
問2 (4)
反発係数の定義の形 $e=-\dfrac{(\text{衝突後の相対速度})}{(\text{衝突前の相対速度})}$ で書く。小球1から見た小球2の相対速度は、衝突前が $0-V_0=-V_0$、衝突後が $V_2-V_1$ なので
$$e=-\frac{V_2-V_1}{-V_0}$$
答 $e=\dfrac{V_2-V_1}{V_0}$( $-\dfrac{V_1-V_2}{V_0}$ と同じ)(3点)
問2 (5)
(4) より $V_2=V_1+eV_0$。これを (3) に入れて
$$m_1V_1+m_2(V_1+eV_0)=m_1V_0\qquad\therefore\ V_1=\frac{m_1-em_2}{m_1+m_2}V_0$$
$$V_2=V_1+eV_0=\frac{m_1-em_2+e(m_1+m_2)}{m_1+m_2}V_0=\frac{(1+e)m_1}{m_1+m_2}V_0$$
答 $V_1=\dfrac{m_1-em_2}{m_1+m_2}V_0$、 $V_2=\dfrac{(1+e)m_1}{m_1+m_2}V_0$(5点)
問2 (6)
衝突後の小球2には、水平方向にばね2の力だけがはたらく。小球2はばね2の自然の長さの位置(衝突点)を中心とし、質量 $m_2$、単振動定数 $k_2$ の単振動をする。衝突点は振動の中心なので、衝突直後の速さ $V_2$ が最大の速さで、最大変位の位置(端)では速さ0(下の図)。
最大変位を $A_2$ とし、中心と端で単振動のエネルギー保存(中心からの変位で書く)を立てると
$$\frac12m_2V_2^{\,2}+0=0+\frac12k_2A_2^{\,2}\qquad\therefore\ A_2=V_2\sqrt{\frac{m_2}{k_2}}$$
答 $V_2\sqrt{\dfrac{m_2}{k_2}}$(4点)
問2 (7)
小球2の単振動の周期は $2\pi\sqrt{\dfrac{m_2}{k_2}}$。衝突点(中心)から最大変位の位置(端)までは $\dfrac14$ 周期なので
$$\frac14\cdot2\pi\sqrt{\frac{m_2}{k_2}}=\frac{\pi}{2}\sqrt{\frac{m_2}{k_2}}$$
答 $\dfrac{\pi}{2}\sqrt{\dfrac{m_2}{k_2}}$(4点)
問2 (8)
まず衝突直前と直後の速度を求める。(2) に $d=2D$、 $m_1=m_0$、 $k_1=4k_0$ を入れて
$$V_0=\sqrt{\frac{4k_0\cdot2D\cdot(2D+2D)}{m_0}}=\sqrt{\frac{32k_0D^2}{m_0}}=4\sqrt2D\sqrt{\frac{k_0}{m_0}}$$
(5) に $m_1=m_2=m_0$、 $e=1$ を入れて $V_1=0$、 $V_2=V_0$(質量が同じ弾性衝突なので、速度が入れかわる)。
衝突直後から、小球ごとに単振動を定義し直す(下の表。 $x$ は衝突点からの変位)。
| 中心 | 振幅 | 周期 | 出発 | |
|---|---|---|---|---|
| 小球1 | $x_1=D$ | $D$ | $T_0$ | 端(速さ0) |
| 小球2 | $x_2=0$ | $4\sqrt2D$ | $2T_0$ | 中心(右向きに速さ $V_0$) |
小球1 衝突点から $x_1$ 右にいるとき、ばね1の縮みは $D-x_1$ なので、運動方程式は
$$m_0a_1=4k_0(D-x_1)=-4k_0(x_1-D)$$
中心は $x_1=D$(ばね1の自然の長さの位置)、単振動定数は $4k_0$。周期は $2\pi\sqrt{\dfrac{m_0}{4k_0}}=\pi\sqrt{\dfrac{m_0}{k_0}}=T_0$。衝突直後は $x_1=0$ で速さ0なので、ここは振動の端で、振幅は $D$。端から出発するので cos 型で
$$x_1=D-D\cos\frac{2\pi t}{T_0}$$
$t=0,\ \dfrac{T_0}{4},\ \dfrac{T_0}{2},\ \dfrac{3T_0}{4},\ T_0$ で $x_1=0,\ D,\ 2D,\ D,\ 0$。
小球2 中心は衝突点( $x_2=0$ )、振幅は (6) より $V_0\sqrt{\dfrac{m_0}{k_0}}=4\sqrt2D$(約 $5.7D$ )、周期は $2\pi\sqrt{\dfrac{m_0}{k_0}}=2T_0$。中心を右向きに出発するので sin 型で
$$x_2=4\sqrt2D\sin\frac{\pi t}{T_0}$$
$t=0,\ \dfrac{T_0}{4},\ \dfrac{T_0}{2},\ \dfrac{3T_0}{4},\ T_0$ で $x_2=0,\ 4D,\ 4\sqrt2D,\ 4D,\ 0$( $4\sqrt2D\sin\dfrac\pi4=4D$ )。
$0<t<T_0$ では常に $x_2>x_1$ で、2球はぶつからない。 $t=T_0$ で2つとも衝突点に戻り、そこで再び衝突する。
答 下の図(実線が $x_1$、破線が $x_2$ )(8点)
グラフの横に、衝突点からの変位の範囲を並べると、運動とグラフの対応が見やすい(下の図)。
( $t=0$ で、実線は傾き0(速さ0)からゆるやかに立ち上がり、破線は傾き $V_0$ で立ち上がる。実線の頂点は $\left(\dfrac{T_0}{2},\ 2D\right)$ 、破線の頂点は $\left(\dfrac{T_0}{2},\ 4\sqrt2D\right)$ で、 $6D$ より少し下)
別解
問2 (2) (単振動のエネルギー保存で) 衝突までの小球1は、ばね1の自然の長さの位置を中心とする単振動定数 $k_1$ の単振動をしている。手をはなした位置は中心から $D+d$ の端、衝突点は中心から $D$ の位置なので
$$\frac12k_1(D+d)^2=\frac12m_1V_0^{\,2}+\frac12k_1D^2$$
水平な床のばねでは振動の中心が自然の長さの位置と一致するので、本解の力学的エネルギー保存とまったく同じ式になる。
問2 (8) ( $V_1$、 $V_2$ を知識で) 質量が同じで $e=1$ の衝突では速度が入れかわる。(5) に代入しなくても、 $V_1=0$、 $V_2=V_0$ をすぐに書いてよい。
出題意図
問1 2本のばねの縮みを図に書き込み、力のつり合いと「縮みの和=壁が動いた距離」から縮みを求めることができるか
問2 (1)(2) 小球2がばね2の自然の長さの位置で止まることを捉え、ばね1の縮みと衝突直前の速度を力学的エネルギー保存で求めることができるか
問2 (3)〜(5) 衝突を運動量保存則と反発係数の式のセットで表し、衝突直後の速度を求めることができるか
問2 (6)(7) 衝突点が小球2の振動の中心であることを捉え、振幅と「中心から端までは $\dfrac14$ 周期」を使うことができるか
問2 (8) 衝突後の2つの小球それぞれについて単振動の中心・振幅・周期を決め直し、変位の時間変化をグラフに書くことができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 45点 | 37点 |
| 目標時間 | 20分 | 25分 |
問1は、2本のばねを合成ばねとして処理できる、よくある型。
問2は (1) で小球2が止まる位置を決められるかが入り口で、あとは力学的エネルギー保存→運動量保存と反発係数→単振動、と決まった流れで進む。
難しいのは最後の (8) だけで、それ以外はやや簡単なので確実に取りたい。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2 (1):小球2はばね2が自然の長さの位置で止まる、という発想に行き着けるか。ここで衝突点を決められないと (2) 以降が続かない。
- 問2 (8):衝突直後に止まった小球1は、ばね1が $D$ 縮んだままなので振動の端にいる(中心は衝突点から $D$ 右)と捉えられるか。小球1を衝突点を中心に振らせたり、止まったまま動かないとしたりする誤りが起きやすい。
2021年九州大学物理
第2問 解答・解説
第2問は電磁気の問題です。
テーマは「抵抗とコンデンサーの直列回路の充電で、電池の仕事のうち半分がジュール熱になることと電流の時間変化を答え、電場で加速した荷電粒子の磁場中の半円運動から、検出位置が $\dfrac Mq$ でどう変わるかを判断する」。
問題


問題文をテキストで読む
問1. 図1のように、起電力 $V$ の電池、抵抗値 $R$ の抵抗、平行板コンデンサー、およびスイッチが、直列につながれている回路を考える。平行板コンデンサーは、面積 $S$ の同じ形の非常に薄い極板①、②を、間隔 $d$ で向かい合わせて作られている。極板間は真空で、誘電率は $\varepsilon_0$ とする。最初、スイッチは開いており、コンデンサーの電気量は0である。極板の端での電場の歪み、電池内部と導線の抵抗、および回路の自己誘導は無視できるものとして、以下の問いに答えよ。
(1) スイッチを時刻 $t=0$ で閉じた直後に、抵抗の両端にかかる電圧を求めよ。
(2) 時刻 $t=0$ から十分に時間が経過した後、極板①に蓄えられている電気量 $Q$、およびコンデンサーに蓄えられている静電エネルギー $U$ を求めよ。
(3) 時刻 $t=0$ から十分に時間が経過するまでに、電池のした仕事 $W$ を求めよ。解答には、問1(2)の電気量 $Q$ を用いてよい。
(4) 問1(2)、(3)より、コンデンサーに蓄えられた静電エネルギー $U$ は電池のした仕事 $W$ よりも小さな値であることがわかる。この理由を、 $W$ と $U$ の差は、回路のどの場所で、どのようなエネルギーとして主に消費されたかがわかるように、25字以内で説明せよ。(解答欄:25マス)
(5) スイッチを閉じた後 $(t>0)$ に抵抗に流れる電流 $I$ の時間変化を、時刻 $t=0$ から十分に時間が経ったときの様子がわかるように図示せよ。
問2. 真空中に置かれた図2の装置における、質量 $M$、電荷 $q\,(q>0)$ をもつ荷電粒子Pの $xy$ 平面内での運動を考える。図1の平行板コンデンサーの極板①、②を、 $x$ 軸に垂直になるように $x=-2d$、 $-d$ にそれぞれ配置し、起電力 $V$ の電池につなぐ。 $x=0$ には、厚みの無視できる無限に広がったスクリーン状検出器が、 $x$ 軸と垂直に置かれている。極板②およびスクリーン状検出器には、 $x$ 軸に沿って荷電粒子Pが通過できる小孔が開いている。領域 $x>0$(図2の灰色の部分)には、磁束密度の大きさ $B$ の一様な磁場が、紙面と垂直にかけられている。
初速度0で座標 $(x,\ y)=\left(-\dfrac32d,\ 0\right)$ の点Aに置かれた荷電粒子Pは、 $x$ 軸に沿って直線運動し、極板②とスクリーン状検出器の小孔を通りぬけて、磁場中に入射した。その後、荷電粒子Pは、図2の破線のように等速円運動を行い、スクリーン状検出器で検出された。荷電粒子Pには、極板間では一様電場から受ける静電気力、領域 $x>0$ では一様磁場から受けるローレンツ力のみがはたらき、極板②とスクリーン状検出器の小孔の影響は無視できるものとする。以下の問いに答えよ。
(1) 荷電粒子Pが原点Oを通過するときの速さ $v$ を求めよ。
(2) 領域 $x>0$ の一様磁場は、紙面の「表から裏」の向き、「裏から表」の向き、いずれの向きにかけられているか。解答欄の選択肢のいずれかに丸をつけよ。
(3) 領域 $x>0$ において、荷電粒子Pが等速円運動を行う理由を30字程度で答えよ。(解答欄:40マス)
(4) 荷電粒子Pが検出される位置の $y$ 座標 $Y$ を求めよ。解答には、問2(1)の速さ $v$ を用いてよい。
(5) 以下の選択肢の中から、スクリーン状検出器上の $y=2Y$ となる位置で検出される荷電粒子をすべて選べ。ただし、選択肢にある荷電粒子はすべて、点Aに初速度0で置かれるものとする。
選択肢
(a) 質量 $2M$、電荷 $q$
(b) 質量 $4M$、電荷 $q$
(c) 質量 $M$、電荷 $2q$
(d) 質量 $2M$、電荷 $2q$
(e) 質量 $4M$、電荷 $2q$
(f) 質量 $8M$、電荷 $2q$
(g) 質量 $2M$、電荷 $4q$
(h) 質量 $4M$、電荷 $4q$
解答の方針
【問1の方針】
抵抗とコンデンサーの直列回路の充電は、「はじめ」と「最後」の状況図を並べて考える(下の図)。閉じた直後はコンデンサーの電気量が0なので極板間の電圧も0で、コンデンサーは導線と同じ(授業では「 $t=0$ でコンデンサーの抵抗は0」と言いかえる)。だから電池の電圧 $V$ はすべて抵抗にかかる。十分に時間がたつと電流が0になり(「抵抗が無限大」)、抵抗で電圧が下がらないので、電圧 $V$ がすべてコンデンサーにかかる。


電池の仕事は「電池を通った電気量×起電力」。最初0だった極板①の電気量が $Q$ になったので、電池を通った電気量は $Q$。コンデンサーの回路は電流が一定でないので、ジュール熱は $RI^2t$ では求められない。エネルギー保存の一般形 $W_外+W_電=\Delta U+H$ を書き、無い項を消して求める。
電流は、はじめの $\dfrac VR$ から、極板に電気がたまるにつれて減り、最後は0に近づく。電流は電気量の時間変化なので、I–t グラフの下の面積が極板①にたまった電気量 $Q$ になる。
- 閉じた直後はコンデンサーの電圧が0なので、抵抗の電圧は $V$((1))。
- 十分後は電流0なので、コンデンサーの電圧は $V$。 $C=\varepsilon_0\dfrac Sd$ から $Q=CV$、 $U=\dfrac12CV^2$ を求める((2))。
- 電池を通った電気量は $Q$ なので $W=QV$((3))。
- 一般形 $W_外+W_電=\Delta U+H$ で $W_外=0$ とし、 $H=W-U$ が抵抗で発生したジュール熱であることを確かめて、理由を25字以内で書く((4))。
- はじめの電流 $\dfrac VR$ を縦軸に書き、そこから下に凸の曲線で減って0に近づくグラフを書く((5))。
【問2の方針】
大前提は「電場の中は一定の力で加速、磁場の中はローレンツ力で円運動」。
(1) は電池の向きから極板①が高電位( $V$ )、極板②が0。一様な電場なので、電位は①から②へ一様に下る斜面で、点Aは極板のちょうど真ん中なので電位は $\dfrac V2$(下の図)。粒子はこの斜面を $\dfrac V2$ だけ下るので、加速はエネルギー保存で一発。電圧 $V$ をそのまま使わないこと。極板②から原点までは電場が無いので、速さは変わらない。


(2)〜(4) は、原点で $+x$ 向きに進む正電荷が、図2の破線のように左回りに曲がるので、原点で受ける力は $+y$ 向き。フレミングの左手の法則で磁場の向きが決まる。ローレンツ力は速度にいつも垂直なので仕事をせず、速さが変わらない。だから力の大きさ $qvB$ も一定で、これが向心力になって等速円運動になる。検出位置は円の直径 $2r$。
(5) は、検出位置 $Y$ を「粒子によって変わる量( $M$・ $q$ )」だけで表して、何に比例するかに直す。 $Y=\dfrac{2Mv}{qB}$ の形だけを見ると $\dfrac Mq$ に比例しているように見えるが、 $v$ も $M$・ $q$ で変わるので、(1) の $v$ を代入してから比べる。
- 点Aの電位 $\dfrac V2$ を読み取り、エネルギー保存 $q\cdot\dfrac V2=\dfrac12Mv^2$ から $v$ を求める((1))。
- 原点で力が $+y$ 向きになる磁場の向きを、フレミングの左手の法則で決める((2))。
- ローレンツ力が速度に垂直で仕事をしないこと、大きさが一定で向心力になることを30字程度で書く((3))。
- 円運動の運動方程式 $M\dfrac{v^2}{r}=qvB$ で半径を求め、 $Y=2r$((4))。
- (1) の $v$ を (4) に代入して $Y\propto\sqrt{\dfrac Mq}$ とし、 $Y$ が2倍になる $\dfrac Mq$ が4倍の粒子を選ぶ((5))。
解答




解答をテキストで読む
問1 (1)
閉じた直後、コンデンサーの電気量は0なので極板間の電圧も0。コンデンサーは導線と同じとみなせる(下の図の左)。電池から電流をたどって回路を1周すると、電池で $V$ 上がり、抵抗で下がって元に戻るので、抵抗の電圧は $V$ (このとき電流は $\dfrac VR$ )。
答 $V$(3点)
問1 (2)
十分に時間がたつと電流は0になる(上の図の右)。抵抗では電圧が下がらないので、電池の電圧 $V$ がすべてコンデンサーにかかる。電池の正極(長い方の極板)は抵抗を通して極板①につながっているので、極板①が正。
平行板コンデンサーの電気容量は、極板間の電場 $E=\dfrac{Q}{\varepsilon_0S}$、 $V=Ed=\dfrac{Qd}{\varepsilon_0S}$ を『 $Q=CV$ 』と比べて『 $C=\varepsilon_0\dfrac Sd$ 』。よって
$$Q=CV=\frac{\varepsilon_0SV}{d}$$
答( $Q$ ) $\dfrac{\varepsilon_0SV}{d}$(3点)
電圧 $V$ と容量 $C$ が分かっているので、静電エネルギーは $\dfrac12CV^2$ の形で
$$U=\frac12CV^2=\frac{\varepsilon_0SV^2}{2d}$$
答( $U$ ) $\dfrac{\varepsilon_0SV^2}{2d}$(3点)
問1 (3)
電池がした仕事は「電池を通った電気量×起電力」。極板①の電気量は0から $Q$ になったので、電池を通った電気量は $Q$ 。電池の電圧は充電の間ずっと $V$ なので
$$W=Q\times V$$
答 $W=QV\left(=\dfrac{\varepsilon_0SV^2}{d}\right)$(3点)
問1 (4)
エネルギー保存の一般形『 $W_外+W_電=\Delta U+H$ 』( $H$ は抵抗で発生するジュール熱)で、外力は無いので $W_外=0$。 $W_電=W=QV$、 $\Delta U=U-0=\dfrac12QV$ なので
$$QV=\frac12QV+H\qquad\therefore\ H=\frac12QV$$
電池の仕事 $QV$ のうち、半分の $\dfrac12QV$ だけが静電エネルギーとしてたまり、残りの半分は電流が抵抗を流れる間にジュール熱として出ていく(下の図。長方形全体が $W$ 、直線の下の三角形が $U$ 、上の三角形が $H$ )。導線と電池の内部の抵抗は無視できるので、熱が出る場所は抵抗だけ。
答 解答例「差は主に抵抗でジュール熱として消費されたから。」(23字)(4点)
(入れる2点は「場所=抵抗」と「エネルギー=ジュール熱」。 $H=W-U=\dfrac{\varepsilon_0SV^2}{2d}$ で、 $U$ と同じ大きさ)
問1 (5)
電流は、(1) の閉じた直後に最大の $\dfrac VR$ 。極板①に電気がたまるにつれてコンデンサーの電圧が上がり、抵抗の電圧(=電池の電圧−コンデンサーの電圧)が下がるので、電流は減っていく。減り方は、電流が大きいはじめほど速く、電流が小さくなるとゆるやかになるので、下に凸の曲線。十分に時間がたつと(2) のとおり電流は0に近づく(0にはならず、横軸に近づいていく)。
電流は電気量の時間変化 $I=\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}$ なので、グラフの下の面積が極板①にたまった電気量 $Q=\dfrac{\varepsilon_0SV}{d}$ になる(下の図)。
答 図の曲線(縦軸に $\dfrac VR$ を書き、そこから下に凸の曲線で減って、十分に時間がたつと0に近づく)(5点)
(式は求められていないが、 $I=\dfrac VRe^{-\frac{t}{RC}}$ 、 $C=\dfrac{\varepsilon_0S}{d}$ )
問2 (1)
電池の正極(長い方の極板)は極板①につながっているので、極板①の電位が $V$ 、極板②の電位が0。極板間の電場は一様で $+x$ 向き(大きさ $\dfrac Vd$ )なので、電位は①から②へ一様に下る斜面になる。点A( $x=-\dfrac32d$ )は極板のちょうど真ん中なので、電位は $\dfrac V2$ (着眼点の図)。
粒子は電位 $\dfrac V2$ の点Aから電位0の極板②まで静電気力だけを受けて動き、極板②から原点までは力を受けない。エネルギー保存(電気量×その点の電位を位置エネルギーとする)より
$$0+q\cdot\frac V2=\frac12Mv^2+q\cdot0\qquad\therefore\ v=\sqrt{\frac{qV}{M}}$$
答 $v=\sqrt{\dfrac{qV}{M}}$(4点)
問2 (2)
図2の破線では、粒子は原点から $+x$ 向きに入り、左回り(反時計回り)に半円を回って $y>0$ の側で検出器に戻る。円運動の力は中心向きなので、原点で受けるローレンツ力は $+y$ 向き(下の図)。正電荷なので電流の向きは速度と同じ $+x$ 向き。フレミングの左手の法則で、電流 $+x$ ・力 $+y$ になる磁場は紙面の表から裏の向き。
答 「表から裏」(3点)
問2 (3)
ローレンツ力は速度にいつも垂直なので、粒子に仕事をしない。よって運動エネルギーが変わらず、速さ $v$ は一定。速さが一定なので力の大きさ $qvB$ も一定で、速度に垂直な一定の大きさの力が向心力となるので、等速円運動になる。
答 解答例「速度に垂直なローレンツ力は仕事をせず、大きさ一定の向心力としてはたらくから。」(38字)(4点)
(入れる2点は「速度に垂直=仕事をしない(速さ一定)」と「大きさ一定の力が向心力」)
問2 (4)
ローレンツ力 $qvB$ が向心力なので、円運動の運動方程式は
$$M\frac{v^2}{r}=qvB\qquad\therefore\ r=\frac{Mv}{qB}$$
粒子は原点から半円を回って検出器に戻るので、検出位置は原点から直径 $2r$ の所((2) の図)。
答 $Y=\dfrac{2Mv}{qB}$(3点)
問2 (5)
(4) の $Y$ に (1) の $v$ を代入して、粒子によって変わる量( $M$・ $q$ )だけで表すと
$$Y=\frac{2M}{qB}\sqrt{\frac{qV}{M}}=\frac2B\sqrt{\frac{MV}{q}}\qquad\therefore\ Y\propto\sqrt{\frac Mq}$$
$y=2Y$ で検出されるには $\sqrt{\dfrac Mq}$ が2倍、つまり $\dfrac Mq$ が4倍になればよい。選択肢の $\dfrac Mq$ を並べると
| 選択肢 | 質量 | 電荷 | $\dfrac Mq$ は何倍か |
|---|---|---|---|
| (a) | $2M$ | $q$ | 2 |
| (b) | $4M$ | $q$ | 4 |
| (c) | $M$ | $2q$ | $\dfrac12$ |
| (d) | $2M$ | $2q$ | 1 |
| (e) | $4M$ | $2q$ | 2 |
| (f) | $8M$ | $2q$ | 4 |
| (g) | $2M$ | $4q$ | $\dfrac12$ |
| (h) | $4M$ | $4q$ | 1 |
答 (b)、(f)(5点)
( $\dfrac Mq$ が大きい粒子ほど、加速されたあとの速さは小さいが、それ以上に磁場で曲がりにくいので、遠くで検出される)
別解
問2 (1) (電場の力の仕事から) 極板間の電場の大きさは $\dfrac Vd$ 。粒子は点Aから極板②まで、電場と同じ向きに $\dfrac d2$ 動くので、静電気力のした仕事は $q\cdot\dfrac Vd\cdot\dfrac d2=\dfrac{qV}{2}$ 。これが運動エネルギーになるので $\dfrac12Mv^2=\dfrac{qV}{2}$、 $v=\sqrt{\dfrac{qV}{M}}$。
出題意図
問1 (1)(2) スイッチを閉じた直後と十分に時間がたった後のコンデンサーの状態を捉え、電圧・電気量・静電エネルギーを求めることができるか
問1 (3)(4) 電池の仕事が「電池を通った電気量×起電力」であることを理解し、静電エネルギーとの差が抵抗のジュール熱になることを説明できるか
問1 (5) 充電の電流が $\dfrac VR$ から始まって0に近づくことを、グラフで正しく表せるか
問2 (1) 極板間の電位の分布から点Aの電位を読み取り、加速された粒子の速さを求めることができるか
問2 (2)〜(4) ローレンツ力が向心力となる等速円運動を捉え、磁場の向き・円運動の理由・検出位置を求めることができるか
問2 (5) 検出位置が質量と電荷の比 $\dfrac Mq$ に比例する形を導き、条件に合う粒子を選ぶことができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 35点 | 30点 |
| 目標時間 | 15分 | 20分 |
前半のコンデンサーは簡単。
スイッチを閉じた直後のコンデンサーは導線(抵抗0)とみなせる、十分に時間がたつと電流が流れず抵抗で電圧が下がらない、電池のした仕事は $QV$、その仕事が静電エネルギーとジュール熱に分かれる( $W=\Delta U+$ ジュール熱)。
電流の時間変化のグラフは形ごと覚えておく。
後半の荷電粒子は、電場での加速は力学的エネルギー保存、磁場の中は円運動の式を立てるだけ。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2 (3):なぜ荷電粒子が円運動をするのか(ローレンツ力が速度に垂直で、速さを変えずに向きだけ変える)を言葉で説明できるか。ここは落としてもよいが、こうした記述はたまに出るので書けるようにしておきたい。
- 問2 (5):円運動の半径が何で決まるか( $Y\propto\sqrt{\dfrac Mq}$)を捉え、 $\dfrac Mq$ の比で選べるか。
コラム 電池で充電すると、半分は必ず熱になる
問1 (4) で、電池の仕事 $W=QV$ のうち、コンデンサーにたまったのは $U=\dfrac12QV$ で、ちょうど半分が抵抗のジュール熱になった。これは偶然ではなく、一定の電圧の電池でコンデンサーを空から充電すると、抵抗の大きさによらず、必ず半分が熱になるという型。


- なぜ半分なのか:電池は充電の間ずっと電圧 $V$ で電気を送るので、仕事は「電気量×電圧」の長方形 $QV$ 。一方、コンデンサーの電圧は0から $V$ まで電気量に比例して上がっていくので、たまるエネルギーは直線の下の三角形 $\dfrac12QV$ 。長方形と三角形の差、つまりもう半分が熱になる。
- 抵抗を小さくしても減らない:抵抗を小さくすると、はじめの電流 $\dfrac VR$ は大きくなるが、充電が終わるまでの時間は短くなる。ジュール熱の合計は $W-U=\dfrac12QV$ のままで、 $R$ が入っていない。エネルギー保存の一般形から求めたので、 $R$ によらないことがすぐに分かる。
- 減らす方法はある:電圧を一気に $V$ にせず、まず $\dfrac V2$ の電池で充電してから $V$ の電池に切りかえると、1回目と2回目で失う熱はそれぞれ $\dfrac18QV$ で、合計 $\dfrac14QV$ に減る。段階を細かくするほど、失う熱は小さくなる( $N$ 段階なら $\dfrac{QV}{2N}$ )。
コンデンサーのジュール熱は、電流が一定でないので $RI^2t$ では求められない。いつでもエネルギー保存の一般形 $W_外+W_電=\Delta U+H$ から求める。これがコンデンサーの回路の決まった解き方。
2021年九州大学物理
第3問 解答・解説
第3問は熱力学の問題です。
テーマは「断熱2本と定圧2本のサイクル(ガスタービンのサイクル)で、各状態の温度・熱・仕事を圧力の比 $G$ で表し、T-V グラフに書き直し、熱効率 $1-G^{-\frac25}$ と、放出する熱を再利用して熱効率を上げる仕組みを確かめる」。
問題


問題文をテキストで読む
1 molの単原子分子理想気体の圧力 $p$ と体積 $V$ を、図1のように、A→B→C→D→A→…と繰り返し変化させる熱機関のサイクルを考える。気体は、過程A→Bでは断熱圧縮され、過程B→Cでは一定の圧力 $p_{\mathrm{B}}$ を保ちながら膨張し、過程C→Dでは断熱膨張し、過程D→Aでは一定の圧力 $p_{\mathrm{A}}\,(p_{\mathrm{A}}<p_{\mathrm{B}})$ を保ちながら圧縮される。状態AとCの気体の体積は等しい。
ここで、状態A、B、C、Dの温度を、それぞれ $T_{\mathrm{A}}$、 $T_{\mathrm{B}}$、 $T_{\mathrm{C}}$、 $T_{\mathrm{D}}$ とし、 $p_{\mathrm{B}}$ と $p_{\mathrm{A}}$ の比を $G=\dfrac{p_{\mathrm{B}}}{p_{\mathrm{A}}}$ と定義する。気体定数を $R$ とすると、この気体の定積モル比熱は $\dfrac32R$、定圧モル比熱は $\dfrac52R$ である。断熱変化では、圧力 $p$ と温度 $T$ の間に、 $Tp^{-\frac25}=$ 一定 の関係が成り立つものとして、以下の問いに答えよ。
(1) $T_{\mathrm{B}}$、 $T_{\mathrm{C}}$、 $T_{\mathrm{D}}$ と $T_{\mathrm{A}}$ の比 $\dfrac{T_{\mathrm{B}}}{T_{\mathrm{A}}}$、 $\dfrac{T_{\mathrm{C}}}{T_{\mathrm{A}}}$、 $\dfrac{T_{\mathrm{D}}}{T_{\mathrm{A}}}$ を、 $G$ を用いて表せ。
(2) 過程B→Cにおいて、気体が外部から吸収した熱量 $Q_{\mathrm{BC}}\,(Q_{\mathrm{BC}}>0)$ と $RT_{\mathrm{A}}$ の比 $\dfrac{Q_{\mathrm{BC}}}{RT_{\mathrm{A}}}$ を、 $G$ を用いて表せ。
(3) 過程C→Dにおいて、気体が外部にした仕事 $W_{\mathrm{CD}}\,(W_{\mathrm{CD}}>0)$ と $RT_{\mathrm{A}}$ の比 $\dfrac{W_{\mathrm{CD}}}{RT_{\mathrm{A}}}$ を、 $G$ を用いて表せ。
(4) 過程D→Aにおいて、気体が外部に放出した熱量 $Q_{\mathrm{DA}}\,(Q_{\mathrm{DA}}>0)$ と $RT_{\mathrm{A}}$ の比 $\dfrac{Q_{\mathrm{DA}}}{RT_{\mathrm{A}}}$ を、 $G$ を用いて表せ。
(5) 図1に示した気体の状態変化を、気体の温度 $T$ と体積 $V$ の関係で表すとき、A→B、B→C、C→D、D→Aの各過程を、解答紙に図示せよ。なお、各過程の変化が、直線の場合は破線で、曲線の場合は実線で結び、上下どちらに凸であるかを、はっきりとわかるように描け。
(6) 本サイクルの熱効率に関する以下の文章中の $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{エ}}$ に適切な式を、 $\boxed{\text{a}}$、 $\boxed{\text{b}}$ に適切な数値を記入せよ。
1サイクルの間に気体が外部から吸収した熱量のうち、外部にした仕事に変換された割合を熱効率という。したがって、本サイクルの熱効率 $e_1$ は、 $Q_{\mathrm{BC}}$ と $Q_{\mathrm{DA}}$ を用いて
$$e_1=1-\boxed{\text{ア}}$$
で与えられるが、 $T_{\mathrm{A}}$、 $T_{\mathrm{B}}$、 $T_{\mathrm{C}}$、 $T_{\mathrm{D}}$ を用いれば
$$e_1=1-\frac{\boxed{\text{イ}}}{\boxed{\text{ウ}}}$$
と表される。さらに、 $e_1$ を $G$ を用いて表すと
$$e_1=1-G^{\boxed{\text{a}}}$$
となり、圧力の比のみに依存することがわかる。
次に、本サイクルで気体が外部に放出した熱を利用して、熱効率を改善する新たなサイクルを考える。図2のように、状態Dから圧力を保ちながら状態D′へ変化させる間に気体が外部に放出した熱 $Q_{\mathrm{R}}$ を用いて状態Bの気体を加熱し、圧力を保ちながら状態B′へ変化させた。このとき、過程B→B′→Cにおいて、気体が外部から吸収した熱量は $Q_{\mathrm{BC}}-Q_{\mathrm{R}}$ と減少し、状態D′とB′の温度は、ともに $\dfrac12(T_{\mathrm{D}}+T_{\mathrm{B}})$ と等しくなった。
したがって、新たなサイクルの熱効率 $e_2$ は、 $T_{\mathrm{A}}$、 $T_{\mathrm{B}}$、 $T_{\mathrm{C}}$、 $T_{\mathrm{D}}$ を用いて
$$e_2=1-\frac{\boxed{\text{イ}}+\boxed{\text{エ}}}{\boxed{\text{ウ}}+T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{D}}}$$
で与えられる。熱効率の差は
$$e_2-e_1=\frac{T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{D}}}{\boxed{\text{ウ}}+T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{D}}}\left(G^{\boxed{\text{a}}}-\frac{\boxed{\text{エ}}}{T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{D}}}\right)$$
となるが、ここで、 $\dfrac{\boxed{\text{エ}}}{T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{D}}}$ を $G$ を用いて表すと
$$\frac{\boxed{\text{エ}}}{T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{D}}}=G^{\boxed{\text{b}}}$$
である。すなわち、 $G^{\boxed{\text{b}}}<G^{\boxed{\text{a}}}$ であるから、熱効率の差 $e_2-e_1$ は正となり、熱効率が改善できたことがわかる。
解答の方針
【(1)〜(4)の方針】
熱力学は「何変化か」を決めて、その変化の特徴を先に式に入れる。A→B と C→D は断熱、B→C と D→A は定圧(下の図)。
断熱の2本には、問題文が温度と圧力の形のポアソンの式 $Tp^{-\frac25}=$ 一定を与えている。聞かれているのは温度で、両端の圧力は $p_{\mathrm{A}}$ と $p_{\mathrm{B}}$ と分かっているので、この形をそのまま使えばすぐに温度が求まる(使う文字で式の形を選ぶ)。A→B で $T_{\mathrm{B}}$ が求まる。
$T_{\mathrm{C}}$ は断熱でつながっていないので、ポアソンの式では求まらない。ここで効くのが「状態AとCの体積は等しい」という条件。状態方程式で $V$ と $R$ が一定なら $T\propto p$ なので、C の温度は A の $G$ 倍。そのあと C→D の断熱で $T_{\mathrm{D}}$。


熱と仕事は、定圧の熱は $Q=nC_p\Delta T$ で一発、断熱の仕事は $Q=0$ より $W=-\Delta U$。どれも温度差で書けるので、(1) の温度を入れて $RT_{\mathrm{A}}$ でくくればよい。
- A→B(断熱)に $Tp^{-\frac25}=$ 一定 を立てて $\dfrac{T_{\mathrm{B}}}{T_{\mathrm{A}}}$ を求める。
- A と C は体積が同じなので、状態方程式 $pV=RT$ で $V$ と $R$ が一定、よって $T\propto p$。 $\dfrac{T_{\mathrm{C}}}{T_{\mathrm{A}}}=\dfrac{p_{\mathrm{B}}}{p_{\mathrm{A}}}=G$ 。
- C→D(断熱)に $Tp^{-\frac25}=$ 一定 を立てて $\dfrac{T_{\mathrm{D}}}{T_{\mathrm{A}}}$ を求める((1))。
- B→C は定圧なので $Q_{\mathrm{BC}}=\dfrac52R(T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{B}})$ ((2))。
- C→D は断熱なので $W_{\mathrm{CD}}=-\Delta U_{\mathrm{CD}}=\dfrac32R(T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{D}})$ ((3))。
- D→A は定圧で温度が下がるので、吸収した熱量は負。放出した熱量はその大きさで $Q_{\mathrm{DA}}=\dfrac52R(T_{\mathrm{D}}-T_{\mathrm{A}})$ ((4))。
【(5)の方針】
T-V グラフに書き直すときは、過程ごとに「何変化か」から T と V の関係式を作るだけ。
- 定圧:状態方程式を $T=\dfrac{p}{R}V$ と変形すると、 $p$ が一定なので原点を通る直線。傾き $\dfrac pR$ は圧力に比例するので、B→C( $p_{\mathrm{B}}$)の方が D→A( $p_{\mathrm{A}}$)より急。
- 断熱:ポアソンの式を体積と温度の形にすると $TV^{\frac23}=$ 一定、つまり $T=\dfrac{(\text{定数})}{V^{\frac23}}$ 。体積が増えると温度が下がる、下に凸の曲線。
指示は「直線は破線、曲線は実線」。p-V グラフと T-V グラフを、体積の軸をそろえて上下に並べると対応が見える(下の図)。A と C は同じ体積なので T-V グラフでも縦に並ぶ。B は A より左、D は A より右。


- 定圧の2本は $T=\dfrac pRV$ より原点を通る直線(破線)。B→C の方が傾きが大きい。
- 断熱の2本は $TV^{\frac23}=$ 一定より、体積が増えると温度が下がる下に凸の曲線(実線)。
- 解答欄の4点を、A→B(実線)・B→C(破線)・C→D(実線)・D→A(破線)で結ぶ。
【(6)の方針】
前半はサイクルの熱効率の定義どおり。熱を吸収するのは定圧で膨張する B→C だけ、放出するのは定圧で圧縮する D→A だけ(断熱の2本は熱のやりとりがない)。1サイクルの仕事は $W=Q_{\mathrm{BC}}-Q_{\mathrm{DA}}$ なので、 $e_1=\dfrac{W}{Q_{\mathrm{BC}}}=1-\dfrac{Q_{\mathrm{DA}}}{Q_{\mathrm{BC}}}$ 。熱はどちらも定圧で $\dfrac52R\times$(温度差)なので、共通の $\dfrac52R$ が約分されて温度だけの式になる。さらに (1) を入れると $G^{\frac25}$ でくくれて、圧力の比だけの式になる。
後半の再生は、次の2つに注目する。
① $\mathrm{D’}$ と $\mathrm{B’}$ の温度が $\dfrac12(T_{\mathrm{D}}+T_{\mathrm{B}})$ になる理由:D→ $\mathrm{D’}$ で放出した熱 $Q_{\mathrm{R}}$ が、そのまま B→ $\mathrm{B’}$ の加熱に使われる。どちらも同じ 1 mol・同じ定圧モル比熱なので、下がる温度と上がる温度が同じ。だから温度は $T_{\mathrm{B}}$ と $T_{\mathrm{D}}$ のちょうど真ん中でそろう(同じ量の水を混ぜると真ん中の温度になるのと同じ)。
② 再生しても、サイクルの形(A→B→C→D→A)は変わらないので、1サイクルの仕事 $W$ は同じ。変わるのは、外から吸収する熱が $Q_{\mathrm{BC}}-Q_{\mathrm{R}}$ に減ることだけ。 $e=\dfrac{W}{Q_{in}}$ の分子が同じで分母が小さくなるので、計算するまでもなく $e_2>e_1$(2025年第3問のコラム「熱効率の比べ方」の「仕事が同じなら、吸収した熱量が小さい方が熱効率は大きい」と同じ見方)。


エは問題の式の形(分母の「ウ $+T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{D}}$」)に合わせて変形する。 $Q_{\mathrm{R}}=\dfrac54R(T_{\mathrm{D}}-T_{\mathrm{B}})$ と表し、分母・分子を $\dfrac54R$ でくくると、イ・ウと同じ温度差が現れる。
- $e_1=1-\dfrac{Q_{\mathrm{DA}}}{Q_{\mathrm{BC}}}$(ア)。定圧の熱 $\dfrac52R\times$(温度差)を入れて約分する(イ・ウ)。
- (1) の温度を入れて $G^{\frac25}$ でくくり、 $e_1=1-G^{-\frac25}$(a)。
- $\mathrm{D’}$ の温度 $\dfrac12(T_{\mathrm{D}}+T_{\mathrm{B}})$ から $Q_{\mathrm{R}}=\dfrac52R\left\{T_{\mathrm{D}}-\dfrac12(T_{\mathrm{D}}+T_{\mathrm{B}})\right\}=\dfrac54R(T_{\mathrm{D}}-T_{\mathrm{B}})$ 。
- 外に放出する熱 $Q_{\mathrm{DA}}-Q_{\mathrm{R}}$ ・外から吸収する熱 $Q_{\mathrm{BC}}-Q_{\mathrm{R}}$ を $\dfrac54R$ でくくり、問題の式の形に合わせてエを求める。
- (1) の温度を入れて $\dfrac{T_{\mathrm{B}}-T_{\mathrm{A}}}{T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{D}}}$ を $G$ で表す(b)。
解答




解答をテキストで読む
(1)
A→B・C→D は断熱、B→C・D→A は定圧。求めた温度を各点に書き込むと下の図になる。
A→B は断熱なので、与えられたポアソンの式 $Tp^{-\frac25}=$ 一定 を A と B で立てて
$$T_{\mathrm{A}}p_{\mathrm{A}}^{-\frac25}=T_{\mathrm{B}}p_{\mathrm{B}}^{-\frac25}\qquad\therefore\ \frac{T_{\mathrm{B}}}{T_{\mathrm{A}}}=\left(\frac{p_{\mathrm{B}}}{p_{\mathrm{A}}}\right)^{\frac25}=G^{\frac25}$$
A と C は体積が同じ。状態方程式 $pV=RT$(1 mol)で $V$ と $R$ が一定なので、 $T\propto p$。C の圧力は A の $G$ 倍なので、温度も $G$ 倍で
$$\frac{T_{\mathrm{C}}}{T_{\mathrm{A}}}=\frac{p_{\mathrm{B}}}{p_{\mathrm{A}}}=G$$
C→D は断熱なので、同じくポアソンの式を C と D で立てて
$$T_{\mathrm{C}}p_{\mathrm{B}}^{-\frac25}=T_{\mathrm{D}}p_{\mathrm{A}}^{-\frac25}\qquad\therefore\ T_{\mathrm{D}}=\left(\frac{p_{\mathrm{A}}}{p_{\mathrm{B}}}\right)^{\frac25}T_{\mathrm{C}}=G^{-\frac25}\cdot GT_{\mathrm{A}}=G^{\frac35}T_{\mathrm{A}}$$
答 $\dfrac{T_{\mathrm{B}}}{T_{\mathrm{A}}}=G^{\frac25}$、 $\dfrac{T_{\mathrm{C}}}{T_{\mathrm{A}}}=G$、 $\dfrac{T_{\mathrm{D}}}{T_{\mathrm{A}}}=G^{\frac35}$(6点)
( $G>1$ なので $T_{\mathrm{A}}<T_{\mathrm{B}}<T_{\mathrm{D}}<T_{\mathrm{C}}$。断熱圧縮の A→B で温度が上がり、断熱膨張の C→D で下がることと合う)
(2)
B→C は定圧で膨張する。定圧の熱は、定圧モル比熱 $\dfrac52R$ を使って一発で
$$Q_{\mathrm{BC}}=1\cdot\frac52R(T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{B}})=\frac52R\left(GT_{\mathrm{A}}-G^{\frac25}T_{\mathrm{A}}\right)$$
答 $\dfrac{Q_{\mathrm{BC}}}{RT_{\mathrm{A}}}=\dfrac52\left(G-G^{\frac25}\right)$(4点)
(3)
C→D は断熱なので $Q=0$。第一法則 $Q=\Delta U+W$ より $W_{\mathrm{CD}}=-\Delta U_{\mathrm{CD}}$。内部エネルギーの変化は「後−前」で $\Delta U_{\mathrm{CD}}=\dfrac32R(T_{\mathrm{D}}-T_{\mathrm{C}})$ なので
$$W_{\mathrm{CD}}=\frac32R(T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{D}})=\frac32R\left(GT_{\mathrm{A}}-G^{\frac35}T_{\mathrm{A}}\right)$$
答 $\dfrac{W_{\mathrm{CD}}}{RT_{\mathrm{A}}}=\dfrac32\left(G-G^{\frac35}\right)$(4点)
( $G>G^{\frac35}$ なので正。断熱膨張で外に仕事をすることと合う)
(4)
D→A は定圧で圧縮され、温度は $T_{\mathrm{D}}$ から $T_{\mathrm{A}}$ に下がる。吸収した熱量は $\dfrac52R(T_{\mathrm{A}}-T_{\mathrm{D}})<0$ で、放出した熱量はその大きさなので
$$Q_{\mathrm{DA}}=\frac52R(T_{\mathrm{D}}-T_{\mathrm{A}})=\frac52R\left(G^{\frac35}T_{\mathrm{A}}-T_{\mathrm{A}}\right)$$
答 $\dfrac{Q_{\mathrm{DA}}}{RT_{\mathrm{A}}}=\dfrac52\left(G^{\frac35}-1\right)$(4点)
(5)
定圧の B→C・D→A:状態方程式 $pV=RT$ より
$$T=\frac pR\,V$$
$p$ が一定なので原点を通る直線(破線)。傾き $\dfrac pR$ は B→C( $p_{\mathrm{B}}$)の方が D→A( $p_{\mathrm{A}}$)より大きい。
断熱の A→B・C→D:ポアソンの式 $Tp^{-\frac25}=$ 一定 に $p=\dfrac{RT}{V}$ を入れると $T^{\frac35}V^{\frac25}=$ 一定、両辺を $\dfrac53$ 乗して
$$TV^{\frac23}=\text{一定}\qquad\therefore\ T=\frac{(\text{定数})}{V^{\frac23}}$$
体積が増えると温度が下がり、下に凸の曲線(実線)。A→B は A から左上の B へ、C→D は C から右下の D へ進む。
(参考:各点の体積は、B→C の定圧で $V\propto T$ から $V_{\mathrm{B}}=\dfrac{T_{\mathrm{B}}}{T_{\mathrm{C}}}V_{\mathrm{A}}=G^{-\frac35}V_{\mathrm{A}}$ 、D→A の定圧で $V_{\mathrm{D}}=\dfrac{T_{\mathrm{D}}}{T_{\mathrm{A}}}V_{\mathrm{A}}=G^{\frac35}V_{\mathrm{A}}$ 。解答欄の4点はこの位置に印刷されている)
答 下の図(A→B・C→D は下に凸の曲線=実線、B→C・D→A は延ばすと原点を通る直線=破線)(6点)
(6)
1サイクルで内部エネルギーはもとに戻るので、仕事は $W=Q_{\mathrm{BC}}-Q_{\mathrm{DA}}$。吸収した熱量は $Q_{\mathrm{BC}}$ だけなので
$$e_1=\frac{W}{Q_{\mathrm{BC}}}=1-\frac{Q_{\mathrm{DA}}}{Q_{\mathrm{BC}}}$$
答(ア) $\dfrac{Q_{\mathrm{DA}}}{Q_{\mathrm{BC}}}$(2点)
(2)(4) の $Q_{\mathrm{BC}}=\dfrac52R(T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{B}})$、 $Q_{\mathrm{DA}}=\dfrac52R(T_{\mathrm{D}}-T_{\mathrm{A}})$ を入れると、 $\dfrac52R$ が約分されて
$$e_1=1-\frac{T_{\mathrm{D}}-T_{\mathrm{A}}}{T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{B}}}$$
答(イ) $T_{\mathrm{D}}-T_{\mathrm{A}}$(2点)
答(ウ) $T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{B}}$(2点)
(1) の温度を入れると
$$e_1=1-\frac{\left(G^{\frac35}-1\right)T_{\mathrm{A}}}{\left(G-G^{\frac25}\right)T_{\mathrm{A}}}=1-\frac{G^{\frac35}-1}{G^{\frac25}\left(G^{\frac35}-1\right)}=1-G^{-\frac25}$$
答(a) $-\dfrac25$(3点)
次に再生。 $\mathrm{D’}$ の温度は $\dfrac12(T_{\mathrm{D}}+T_{\mathrm{B}})$ なので、D→ $\mathrm{D’}$(定圧)で放出した熱は
$$Q_{\mathrm{R}}=\frac52R\left\{T_{\mathrm{D}}-\frac12(T_{\mathrm{D}}+T_{\mathrm{B}})\right\}=\frac54R(T_{\mathrm{D}}-T_{\mathrm{B}})$$
(B→ $\mathrm{B’}$ で吸収する熱 $\dfrac52R\left\{\dfrac12(T_{\mathrm{D}}+T_{\mathrm{B}})-T_{\mathrm{B}}\right\}$ も同じ値。同じ 1 mol・同じ定圧モル比熱なので、下がる温度と上がる温度が等しく、真ん中でそろう。下の図)
外から吸収する熱は $Q_{\mathrm{BC}}-Q_{\mathrm{R}}$、外へ放出する熱は $Q_{\mathrm{DA}}-Q_{\mathrm{R}}$。どちらも $\dfrac54R$ でくくると
$$Q_{\mathrm{BC}}-Q_{\mathrm{R}}=\frac54R\left\{2(T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{B}})-(T_{\mathrm{D}}-T_{\mathrm{B}})\right\}=\frac54R\left\{(T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{B}})+(T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{D}})\right\}$$
$$Q_{\mathrm{DA}}-Q_{\mathrm{R}}=\frac54R\left\{2(T_{\mathrm{D}}-T_{\mathrm{A}})-(T_{\mathrm{D}}-T_{\mathrm{B}})\right\}=\frac54R\left\{(T_{\mathrm{D}}-T_{\mathrm{A}})+(T_{\mathrm{B}}-T_{\mathrm{A}})\right\}$$
よって
$$e_2=1-\frac{Q_{\mathrm{DA}}-Q_{\mathrm{R}}}{Q_{\mathrm{BC}}-Q_{\mathrm{R}}}=1-\frac{(T_{\mathrm{D}}-T_{\mathrm{A}})+(T_{\mathrm{B}}-T_{\mathrm{A}})}{(T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{B}})+T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{D}}}$$
で、問題の式の形と一致する。
答(エ) $T_{\mathrm{B}}-T_{\mathrm{A}}$(4点)
(1) の温度を入れると
$$\frac{T_{\mathrm{B}}-T_{\mathrm{A}}}{T_{\mathrm{C}}-T_{\mathrm{D}}}=\frac{G^{\frac25}-1}{G-G^{\frac35}}=\frac{G^{\frac25}-1}{G^{\frac35}\left(G^{\frac25}-1\right)}=G^{-\frac35}$$
答(b) $-\dfrac35$(3点)
( $G>1$ なので $G^{-\frac35}<G^{-\frac25}$ で、 $e_2-e_1>0$。サイクルの形は変わらず仕事 $W$ は同じで、外から吸収する熱だけが $Q_{\mathrm{R}}$ 減ったので、熱効率が上がるのは当然。式の結論と合う)
別解
(6) の $e_2>e_1$ の確かめ (計算せずに) 再生しても A→B→C→D→A の形は同じなので、1サイクルの仕事 $W=Q_{\mathrm{BC}}-Q_{\mathrm{DA}}$ は変わらない( $(Q_{\mathrm{BC}}-Q_{\mathrm{R}})-(Q_{\mathrm{DA}}-Q_{\mathrm{R}})$ でも同じ)。外から吸収する熱だけが $Q_{\mathrm{BC}}$ から $Q_{\mathrm{BC}}-Q_{\mathrm{R}}$ に減るので
$$e_1=\frac{W}{Q_{\mathrm{BC}}}<\frac{W}{Q_{\mathrm{BC}}-Q_{\mathrm{R}}}=e_2$$
問題の $e_2-e_1$ の式は、この結論を温度で確かめたもの。
出題意図
(1) 各過程が何変化かを捉え、与えられたポアソンの式と「体積が同じなら温度は圧力に比例」から、各状態の温度を圧力の比 $G$ で表すことができるか
(2)〜(4):定圧変化の熱と断熱変化の仕事を、第一法則の決まった形から求めることができるか。
(5) 定圧は原点を通る直線、断熱は $TV^{\frac23}=$ 一定の下に凸の曲線と捉え、p-V グラフを T-V グラフに書き直すことができるか
(6) 熱効率の定義から、サイクルの熱効率が圧力の比だけで決まることと、放出する熱を再利用すると熱効率が上がることを式で確かめることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 35点 | 30点 |
| 目標時間 | 25分 | 25分 |
断熱と定圧を組み合わせた熱サイクルの王道。
(1) は断熱なのでポアソンの式、(3) の断熱の仕事は吸収した熱量が0なので $-\Delta U$、(4) は「放出した熱量」なので第一法則で求めるなら $-Q_{\mathrm{DA}}$ として扱う。
p-V グラフを T-V グラフに直す (5) は、必ずできるようにしておきたい。
(6) は熱効率 $1-\dfrac{Q_{\text{out}}}{Q_{\text{in}}}$ の $Q_{\text{out}}$ が大きさ(絶対値)だと分かっていれば途中まで取れる。
差がつく所・失点しやすい所
- (6) の最後(エ・b):本当に差がつくのはここだけ。再生した熱を使う熱効率を、問題の式の形に合わせて変形できるか。落としてもしかたがない。
- (5):p-V グラフを T-V グラフに直せるか(定圧は原点を通る直線、断熱は下に凸)。必ずできるようにしておきたい。
コラム 捨てる熱を使い回す(ガスタービンの再生器)
この大問のサイクル(断熱圧縮 → 定圧で加熱 → 断熱膨張 → 定圧で冷える)は、ガスタービンやジェットエンジンが動く仕組みを理想化したもの(ブレイトンサイクルと呼ばれる)。空気を圧縮機で押し縮め(A→B)、燃料を燃やして加熱し(B→C)、高温高圧のガスでタービンを回し(C→D)、排気が大気中で冷える(D→A)。


- 熱効率は圧力の比で決まる:(6) で求めたとおり $e_1=1-G^{-\frac25}$ 。圧縮機で圧力を何倍にするか(圧力比)を大きくするほど熱効率は上がる。
- 再生器:タービンを出た排気(D)はまだ熱い。この熱を熱交換器(再生器)で、圧縮機を出た空気(B)の予熱に回すのが (6) の後半。燃焼器で外から加える熱が減るので、同じ仕事をするのに使う燃料が減る。
- なぜ熱効率が上がるのか:再生してもサイクルの形は同じなので、1サイクルの仕事は変わらない。変わるのは外から吸収する熱だけで、それが減るので熱効率 $e=\dfrac{W}{Q_{in}}$ は上がる。これは2025年第3問のコラム「熱効率の比べ方」の「仕事が同じなら、吸収した熱量が小さい方が熱効率は大きい」そのもの。
- いつでも使えるわけではない:熱は高温から低温にしか流れないので、再生できるのは排気の温度 $T_{\mathrm{D}}$ が圧縮後の温度 $T_{\mathrm{B}}$ より高いときだけ。この大問では $\dfrac{T_{\mathrm{D}}}{T_{\mathrm{B}}}=G^{\frac15}>1$ なので必ず成り立つ。実際のガスタービンでは、圧力比を大きくすると圧縮後の空気が熱くなって排気との温度差が小さくなるので、再生器が役に立つのは圧力比が低めの装置になる。
熱効率の比較は、計算する前に「何が同じで、何が変わったか」を見る。この見方は2025年の熱機関Ⅱ・Ⅲの比較でも、2021年の再生でも同じように使える。九大の物理は、こうした身近な装置を題材にすることがある。物理を身近な現象に紐づける癖を持つことも、九大合格には大事。
2021年九州大学・物理の
講評とまとめ
3問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 標準 | 45点 | 37点 |
| 第2問 | やや簡単 | 35点 | 30点 |
| 第3問 | 標準 | 35点 | 30点 |
| 全体 | やや簡単 | 110点 | 100点 |
大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で110点、その他の学部で100点)にはなりません。
やや簡単なセットでした。
2021年・2022年は九大物理の中でもかなり解きやすい年で、物理をきちんと勉強してきた受験生は高得点を取ってきます。
こういう年で大事なのは、確実に合格ラインを取るために、どの大問でも点を落とさないこと。
(1) を間違えると後の小問がなだれのように落ちるので、最初の小問ほど慎重に解きましょう。
解く流れ
第2問 → 第1問 → 第3問。
2021年九州大学・物理に
関するよくある質問
2021年の九州大学・物理について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2021年の九州大学・物理は難しかった?
-
やや簡単な年でした。
第1問・第3問は標準、第2問はやや簡単です。
第1問は問2 (8) のグラフ以外はやや簡単で、全体としては解きやすいセットでした。 - 2021年の九州大学・物理は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で110点、その他の学部で100点です(125点満点)。
- 2021年の九州大学・物理はどこで差がつく?
-
全学部で高得点を狙う年です。そのうえで、差がつくとしたら次の3つです。
- 第1問 問2 (8):衝突で止まった小球1が、ばねの端から振動し直すことをつかみ、グラフに書けたか。
- 第2問 問2 (3):荷電粒子が円運動をする理由を、ローレンツ力が速度に垂直なことから言葉で書けたか。
- 第3問 (5):p-V グラフを T-V グラフに直せたか(定圧は原点を通る直線、断熱は下に凸)。
- 2021年の九州大学・物理は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:力学
- 第2問:電磁気
- 第3問:熱力学


