【解説・配点付き】2026年九州大学物理の解答・解説
2026年の九州大学・物理の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
※本記事の問題は、九州大学の入学試験問題から引用しています。
解答・解説は九大専門塾・竜文会が独自に作成したもので、九州大学が公表したものではありません。
2026年九州大学物理
第1問 解答・解説
この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は力学の問題です。
テーマは「玩具『カタンコトン』(半円2つと長方形の板Aと、溝の中のおもりB)。斜面で板Aが滑らない条件と溝の中のおもりの等加速度運動、床の上での重心と垂直抗力の作用点(作図)、半円の上での直立の安定と転がり始めの角 $\theta_0$、傾いて自立する角 $\phi$ と転がり続けるために越える位置エネルギーの山」。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問4に答えよ。
図1の①→②→③→④→⑤に示すように、斜面をカタンコトンと半回転ずつ転がりながら下っていく細長い玩具がある。この玩具を、図2に示すような、半円2つと長方形を組み合わせた板Aと、おもりBを組み合わせた物体(以下、カタンコトンと呼ぶ)とみなし、紙面に平行な鉛直平面内の運動を考えよう。
板Aの半円部分の半径は $R$ である。長方形部分の幅は $2R$、長さは $L$ であり、2つの半円の中心を結ぶように、長さ $L$ の細い溝が切ってある。おもりBは、大きさを無視できる小物体で、板Aの溝の中を摩擦なく滑って移動し、板Aから離れることはない。板Aは密度が一様な変形しない物体で、質量は $m$ である。おもりBの質量は $M$ であり、板Aの質量 $m$ より大きい( $M>m$ )。重力加速度の向きは鉛直下向き、大きさは $g$ とし、空気の抵抗は無視できるものとする。
問1. まず、板AやおもりBについて、回転せずに滑る運動を考える。斜面と水平面がなす角を $\theta$ $\left(0<\theta<\dfrac{\pi}{2}\right)$ として、以下の問いに答えよ。
(1) 図3(a)のように、あらい斜面に板Aを置くと、板Aは直線部分を斜面にぴたりと付けて静止した。斜面と板Aの間の静止摩擦係数を $\mu_0$ とする。 $\theta$ を変化させると、ある角度で板Aが斜面上を滑り始めた。板Aが滑り出さないために $\tan\theta\ (>0)$ がとりうる値の範囲を、 $R$、 $L$、 $m$、 $g$、 $\theta$、 $\mu_0$ のうち必要なものを用いて解答欄に不等式で表せ。ただし、 $\dfrac{L}{R}$ は十分大きく、板Aが滑らずに転がる条件は考えなくてよい。また、 $0<\tan\theta$ は記載しなくてよい。
(1)の条件を満たす、ある角度 $\theta$ の斜面上で静止している板Aに対して、溝の右端におもりBを取り付け、そっと手を離すと、板Aは静止したままだったが、おもりBが、図3(b)のように、溝の中を摩擦なく滑る運動を始めた。
(2) おもりBについて、斜面にそって下向きの加速度はいくらか、 $R$、 $L$、 $M$、 $g$、 $\theta$ のうち必要なものを用いて表せ。
(3) 溝の右端で静止していたおもりBが、滑り始めてから溝の左端に到達するまでの時間を答えよ。
問2. 次に、カタンコトンが水平な床の上で静止している状態について考える。おもりBは、図4のように、板Aの溝の左端で静止している。以下の問いに答えよ。
(1) 水平な床の上にカタンコトンが静止しているとき、カタンコトンが床から受ける垂直抗力 $N$ を1点にはたらく力と考え、 $N$ の大きさを答えよ。
(2) 板Aの溝の左端から床に下ろした垂線と、床の表面の交点を、点Oとする。(1)で考えた垂直抗力 $N$ の作用点と、点Oの間の距離を答えよ。
(3) 垂直抗力 $N$ を、解答欄の図中に1本の矢印で示せ。この問題(3)でのみ、おもりBの質量 $M$ は、板Aの質量 $m$ の3倍( $M=3m$ )とする。また、矢印の始点は、(2)で求めた垂直抗力 $N$ の作用点とし、矢印の長さは自由とする。
問3. ここでは、あらい板に置いたカタンコトンが動き始める条件を考える。
(1) あらい板を水平に置き、その上に、カタンコトンを図5のように $\dfrac{1}{4}$ 回転させ、そっと立てたところ、そのまま直立したが、少し傾けると、すぐに倒れてしまった。これは、板から測ったカタンコトンの重心の高さが、安定して直立できる最大の高さ $X$ よりも、常に高くなるからである。この $X$ を、 $R$、 $L$、 $M$、 $m$、 $g$ のうち必要なものを用いて表せ。
(2) カタンコトンを、図6のように、あらい板の上に置き、板を少しずつ傾けていくと、水平面と板のなす角が、ある角度 $\theta_0$ に達したところで、カタンコトンが滑らずに転がり始めた。 $\tan\theta_0$ を、 $R$、 $L$、 $M$、 $m$、 $g$ のうち必要なものを用いて表せ。ただし、カタンコトンが転がり始めたとき、おもりBは、板Aの溝の左端で静止していたものとする。
問4. 最後に、カタンコトンが転がり続ける条件について考えよう。
問1で用いた斜面( $\theta<\theta_0$ )に、カタンコトンを、図7のように、ある特定の角度 $\phi$ だけ傾けて、そっと置くと、そのまま滑らず静止し、半円上の点O′が斜面に接した状態で自立した。
(1) $\cos(\theta+\phi)$ を、 $R$、 $L$、 $M$、 $m$、 $g$、 $\theta$、 $\mu_0$ のうち必要なものを用いて表せ。
斜面に直線部分をぴたりとつけて静止しているカタンコトンに対し、図8(a)のように、おもりBを溝の中で右から左に滑らせると、おもりBが加速して板Aの溝の左端に衝突し、カタンコトンは、滑らずに転がる運動を開始した。
重力がカタンコトンを回転させる向きは、角度 $\phi$ を境に右回りから左回りに変化するので、カタンコトンが転がり続けるには角度 $\phi$ さえ越えられればよい。
(2) おもりBが板Aに与えたエネルギーが十分大きければ、カタンコトンは角度 $\phi$ を越えて転がり続けると考えられる。おもりBが溝の左端に到達した瞬間から、角度 $\phi$ に達したときまでの、カタンコトンの位置エネルギーの変化量を、増加を正として $R$、 $L$、 $M$、 $m$、 $g$、 $\theta$、 $\phi$ のうち必要なものを用いて表せ。
ただし、カタンコトンが転がり始めてから角度 $\phi$ に達する間、おもりBは板Aの溝の左端から動かず一体となって運動し、図8(b)に示すように、斜面に平行に距離 $R\phi$ 移動することを用いてよい。また、 $\cos(\theta+\phi)$ や $\sin(\theta+\phi)$ は、そのまま解答に用いてよい。
解答の方針
【問1の方針】
(1) 板Aは動かずに静止している。静止している間の摩擦力は静止摩擦力で、大きさはつり合いで決まる。滑らない条件は「静止摩擦力が最大摩擦力以下」。(2)(3) まず設定を読む。溝は斜面に平行でなめらかで、板Aは静止したまま。だからおもりBは、斜面を滑る小物体と同じ運動になる。溝にそった方向にはたらく力は重力の成分だけで、加速度は一定。時間を聞かれているので、等加速度運動の式を使う。


- 板Aにはたらく力を「重力 → 触れているもの(垂直抗力・静止摩擦力)」の順に書き、斜面に平行・垂直のつり合いを立てる。
- 滑らない条件 $f\leqq\mu_0N$ に入れて、 $\tan\theta$ の範囲を求める((1))。
- おもりBについて、溝にそった向きの運動方程式を立てて加速度を求める((2))。
- 静止から溝の長さ $L$ だけ進む時間を、等加速度運動の式で求める((3))。
【問2の方針】
板Aとおもりをまとめて1つの剛体と見ると、床から受ける力は垂直抗力 $N$ 1つ。大きさは鉛直のつり合いで決まる。作用点は、全体の重力を1本にまとめた作用線(=全体の重心の真下)の上にくる。重心の位置は設定から決まる。溝は2つの半円の中心を結ぶので、溝の左端にあるおもりBは左の半円の中心にいる。板Aの重心は長方形の中心、つまり溝の真ん中。(2) は点O(Bの真下)からの距離を聞かれているので、Oを基準にすればBの重力のモーメントは消える。


- 全体で鉛直のつり合いを立てる((1))。
- Oを基準点にして、モーメントのつり合い(反時計回り=時計回り)を立て、作用点までの距離を求める((2))。
- (2) の結果に $M=3m$ を入れ、解答紙の方眼の何目盛りか読み取って矢印を書く((3))。
【問3の方針】
(1) 設定の読み取りが決め手。直立したカタンコトンは下の半円で板に接している。少し傾けると半円の上を転がるので、接点はいつも半円の中心(=B)の真下にある。つまり傾けても半円の中心の高さは変わらない。だから、重心が中心より下なら傾けると元に戻り(起き上がりこぼし)、上なら倒れる。境目は、重心の高さが半円の中心の高さと同じとき。(2) 板を傾けていくと、垂直抗力の作用点は重心の真下を保ちながら斜面にそって下へ動いていく。転がり始めるのは、作用点が直線部分の下の端(Bの真下の点P)まで来たとき。そこを越えるとカタンコトンは半円に乗って回り出す。




- 直立した状態の図に、半円の中心Bの高さと重心Gの位置を書く。傾けたときの接点のまわりで、重力のモーメントが戻す向きか倒す向きかを見て、境目の高さを求める((1))。
- 転がり始める直前の図を書く。垂直抗力と摩擦力は点Pにはたらくので、Pを基準点にしてモーメントのつり合いを立てる((2))。
- 全体の重力を斜面に平行な成分と垂直な成分に分け、成分ごとの腕の長さで式を立てて $\tan\theta_0$ を求める((2))。
【問4の方針】
(1) 角 $\phi$ で自立するのは、重心が接点O′の真上にくる不安定なつり合い。O′はBから斜面に下ろした垂線の足。だから、O′とGの水平位置をそろえればよい。ここで $\theta+\phi$ の角が出てくる。(2) 問題文の「角 $\phi$ を境に右回りから左回りに変わる」は、位置エネルギーが山の頂上になる角という意味。角 $\phi$ までの位置エネルギーの増加が山の高さで、おもりBが渡すエネルギーがこれを上回れば、山を越えて転がり続ける。位置エネルギーの変化は、Bの高さの変化と、Bに対する板Aの重心の高さの変化に分けて考える。




- BからO′までと、BからGまでの水平距離を、それぞれ $\theta$ ・ $\theta+\phi$ を使って表す((1))。
- 2つの水平距離が等しいとおいて、 $\cos(\theta+\phi)$ を求める((1))。
- はじめと角 $\phi$ のときを図に並べ、Bの高さの変化と、Bに対する板Aの重心の高さの変化を別々に求める((2))。
- おもりBと板Aの重力による位置エネルギーの変化を足す((2))。
解答






解答をテキストで読む
問1 (1)
板Aは静止しているので、力のつり合いを斜面に平行・垂直に立てる(静止摩擦力を $f$、垂直抗力を $N$ とする)。
$$f=mg\sin\theta,\qquad N=mg\cos\theta$$
滑らない条件は、静止摩擦力が最大摩擦力以下になること(その状態にとどまる条件なので等号あり)。
$$f\leqq\mu_0N\ \Longrightarrow\ mg\sin\theta\leqq\mu_0\,mg\cos\theta$$
答 $\tan\theta\leqq\mu_0$(4点)
問1 (2)
溝は斜面に平行でなめらか。溝にそった方向の力は、おもりBの重力の成分 $Mg\sin\theta$ だけ(溝の壁からの垂直抗力は溝に垂直)。板Aは静止したままなので、斜面の上で考えてよい。加速度を $\alpha$ として運動方程式は
$$M\alpha=Mg\sin\theta$$
答 $g\sin\theta$(4点)
問1 (3)
加速度が一定なので、静止から距離 $L$ 進む時間 $t$ は
$$L=\frac12\alpha t^2=\frac12g\sin\theta\cdot t^2$$
答 $\sqrt{\dfrac{2L}{g\sin\theta}}$(4点)
問2 (1)
板Aとおもりをまとめて1つの物体と見て、鉛直のつり合いを立てる(全体の重力は $(M+m)g$)。
答 $(M+m)g$(4点)
問2 (2)
力を「重力 → 触れているもの」の順に書く。おもりBの重力 $Mg$(Oの真上、Bの位置)、板Aの重力 $mg$(溝の真ん中=Oから右へ $\dfrac L2$)、垂直抗力 $N$(作用点はOから右へ $x$)。Oを基準点にすると、Bの重力は腕が0で式から消える。Oのまわりのモーメントのつり合い(反時計回り=時計回り)は
$$Nx=mg\cdot\frac L2$$
$N=(M+m)g$ を入れて
$$x=\frac{mL}{2(M+m)}$$
この距離を $D=\dfrac{mL}{2(M+m)}$ とおく(以降の小問でも使う)。
答 $\dfrac{mL}{2(M+m)}$(4点)
(確かめ:全体の重心Gは、Bと板Aの重心を質量の逆比 $m:M$ に内分する点で、Bから $\dfrac{m}{M+m}\cdot\dfrac L2$ の所。垂直抗力の作用点は重心の真下なので、同じ値になる)
問2 (3)
$M=3m$ を (2) の答えに入れると $\dfrac{mL}{2\cdot4m}=\dfrac L8$。解答紙の方眼では溝の長さ $L$ が8目盛りなので、 $\dfrac L8$ は1目盛り。Oから右へ1目盛りの床の上の点を始点に、鉛直上向きの矢印を1本書く(長さは自由)。
答 上の図(Oから右へ1目盛りの床の上の点から、鉛直上向きの矢印)(5点)
問3 (1)
直立したカタンコトンは、下の半円で板に接している。おもりBは下の半円の中心にいるので、板から測ったBの高さは $R$。少し傾けると半円の上を転がり、接点はいつもBの真下にくる。Bの高さは傾けても $R$ のまま。
・重心Gが半円の中心より下:傾けるとGは接点の真上から傾きと逆側へずれ、重力のモーメントは元に戻す向き(安定)
・重心Gが半円の中心より上:傾けるとGは傾きと同じ側へずれ、重力のモーメントは倒す向き(不安定)
境目は、重心の高さが半円の中心の高さと同じとき。
答 $X=R$(5点)
(確かめ:このカタンコトンの重心の高さは $R+D$ で、$D>0$ なので $R$ より高い。だから傾けるとすぐ倒れる。傾けた角を $\psi$ とすると重心の高さは $R+D\cos\psi$ で、傾けるほど下がる=位置エネルギーが下がる向きに倒れる)
問3 (2)
板を傾けていくと、垂直抗力の作用点は重心の真下を保ちながら斜面にそって下へ動き、直線部分の下の端(Bの真下の点P)に届く。転がり始める直前は、作用点がPにあって静止している。このとき垂直抗力と摩擦力はPにはたらくので、Pを基準点にするとモーメントは0。
全体の重力 $(M+m)g$ は重心Gにはたらく。Gは、Pから斜面に垂直に $R$、斜面にそって(上向きに) $D$ の位置にある(BからGまで溝にそって $D$ で、これは (2) と同じ $D$)。重力を斜面に平行な成分と垂直な成分に分けると、Pのまわりのモーメントは
・平行成分 $(M+m)g\sin\theta_0$ :腕 $R$ 、転がる向き(反時計回り)
・垂直成分 $(M+m)g\cos\theta_0$ :腕 $D$ 、戻す向き(時計回り)
つり合いは
$$(M+m)g\sin\theta_0\cdot R=(M+m)g\cos\theta_0\cdot D$$
答 $\tan\theta_0=\dfrac{D}{R}=\dfrac{mL}{2R(M+m)}$(5点)
問4 (1)
接点O′は、Bから斜面に下ろした垂線の足。自立しているとき、垂直抗力の作用点O′は重心の真下にある。つまり、GはO′の真上。BからO′までの水平距離とBからGまでの水平距離が等しい。
・BからO′:BO′の長さが $R$ で斜面に垂直なので、水平距離は $R\sin\theta$
・BからG:溝は水平と $\theta+\phi$ の角をなし、BからGまで溝にそって $D$ なので、水平距離は $D\cos(\theta+\phi)$
$$R\sin\theta=D\cos(\theta+\phi)\qquad\therefore\ \cos(\theta+\phi)=\frac{R\sin\theta}{D}$$
答 $\cos(\theta+\phi)=\dfrac{2(M+m)R\sin\theta}{mL}$(5点)
問4 (2)
位置エネルギーの変化だけを求めるので、基準は決めなくてよい(増加を正とする)。
・おもりB:斜面から $R$ の高さを保ったまま、斜面にそって下へ $R\phi$ 動くので、高さの変化は $-R\phi\sin\theta$
・板A:重心はBから溝にそって $\dfrac L2$ の所。Bと一緒に $R\phi\sin\theta$ だけ下がる。さらに、溝の傾きが水平に対して $\theta$ から $\theta+\phi$ になるので、Bに対する重心の高さは $\dfrac L2\sin\theta$ から $\dfrac L2\sin(\theta+\phi)$ に変わる。重心の高さの変化は $-R\phi\sin\theta+\dfrac L2\{\sin(\theta+\phi)-\sin\theta\}$
重力による位置エネルギーの変化は、おもりBが $Mg\times$ (高さの変化)、板Aが $mg\times$ (重心の高さの変化)で
$$\Delta U=-MgR\phi\sin\theta+mg\left[-R\phi\sin\theta+\frac L2\{\sin(\theta+\phi)-\sin\theta\}\right]$$
答 $\dfrac12mgL\{\sin(\theta+\phi)-\sin\theta\}-(M+m)gR\phi\sin\theta$(5点)
($(M+m)g\left[\dfrac{mL}{2(M+m)}\{\sin(\theta+\phi)-\sin\theta\}-R\phi\sin\theta\right]$ の形でも同じ。この値が位置エネルギーの山の高さで、おもりBが板Aに与えるエネルギーがこれより大きければ、カタンコトンは角 $\phi$ を越えて転がり続ける)
別解
問3 (2)
重心の真下に作用点がくる(問2)ことを使って、図形だけで解く。転がり始める直前は、作用点がPで、GはPの真上。三角形PBGは、Bで直角(PBは斜面に垂直、BGは溝にそっていて斜面に平行)で、PG が鉛直、PB が斜面の垂線なので、角BPGは $\theta_0$ 。よって
$$\tan\theta_0=\frac{BG}{PB}=\frac{D}{R}$$
答は本解と同じ。
問4 (1)
位置エネルギーの山の頂上として求める。角 $\phi’$ まで転がしたときの位置エネルギーの変化は、(2) と同じ形で
$$\Delta U(\phi’)=\frac12mgL\{\sin(\theta+\phi’)-\sin\theta\}-(M+m)gR\phi’\sin\theta$$
重力が回す向きが変わる角 $\phi$ は山の頂上なので、微分して0とおく。
$$\frac{d\Delta U}{d\phi’}=\frac12mgL\cos(\theta+\phi’)-(M+m)gR\sin\theta=0$$
$\phi’=\phi$ を入れると $\cos(\theta+\phi)=\dfrac{2(M+m)R\sin\theta}{mL}$ となり、本解と一致する(微分を使う別解)。
出題意図
問1 斜面で静止する条件(静止摩擦)と、なめらかな溝の中の等加速度運動を、設定どおりに立式できるか
問2 (1)〜(3) おもりと板Aをまとめた重心を求め、垂直抗力の作用点が全体の重心の真下になることを捉えて作図できるか
問3 (1)(2) 半円で接する物体について、重心の高さと半円の中心の高さを比べて安定・不安定を判断し、転がり始める限界を設定から読み取れるか
問4 (1)(2) 傾いて自立した状態(不安定なつり合い)を図形で捉え、転がり続けるために越える位置エネルギーの山を求められるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや難 | |
| 目標得点 | 25点 | 20点 |
| 目標時間 | 25分 | 30分 |
問1・問2 は基本問題で、ここまでの25点は全員が取りたい。
この大問をやや難にしているのは、カタンコトンという初見の玩具だ。
決め手は、溝の端のおもりが半円の中心にいると読み取り、傾けたとき・転がり始めるときにどう動くかを想像できるかどうか。
それが見えれば、使うのは剛体のつり合いと位置エネルギーの基本だけで、難しくない。
差がつく所・失点しやすい所
- 問3 (1):「溝の端のおもり=半円の中心」と設定を読み取り、傾けても半円の中心の高さは変わらないから、重心が中心より上か下かで安定・不安定が決まる、という発想に行き着けるか。ここで設定が読めないと、問3・問4の4問がまとめて崩れる。
- 問3 (2):転がり始める直前に、垂直抗力の作用点が直線部分の端(Bの真下)まで移り、その真上に重心が来る、という運動を想像できるか。
- 問4 (1):傾いて自立した状態を「重心が接点の真上にある不安定なつり合い」と捉え、 $\theta+\phi$ の角を含む図形の処理で水平位置をそろえられるか。
2026年九州大学物理
第2問 解答・解説
第2問は電磁気の問題です。
テーマは「時間変化する磁場の中の正方形回路について、誘導電流と力のグラフを書き、コンデンサーをつないだときの電荷の時間変化(抵抗を変えたとき)と、正弦波の磁場でのコンデンサーの電圧の位相を選ぶ。ブリッジ回路の合成抵抗・キルヒホッフの法則による電流と、抵抗をわずかに変えたときの1次の近似」。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問2に答えよ。
問1. 図1に示すように、紙面上に $xy$ 平面、紙面に垂直に $z$ 軸をとり、紙面の裏から表への向きを $z$ 軸正の向きとする。 $xy$ 平面内に、一辺の長さが $a$ の正方形の回路を形成するように導体線が配置されており、辺 $\mathrm{OA}_1$ の一部に抵抗値 $R$ の抵抗が取り付けられている。導体線の抵抗および太さは無視できるものとする。また、回路を流れる電流が作る磁場の影響は無視できるものとして、以下の問いに答えよ。
図2に示すように、時間 $t$ とともに周期 $T$ で変化する磁束密度 $B$ の一様な磁場を $z$ 軸方向に回路全体に加えた。ここで、 $B>0$ の時、磁場は $z$ 軸正の向きを向いているものとする。
(1) 導体線の辺 $\mathrm{A}_1\mathrm{A}_2$ に流れる電流の最大値 $I_0$ を $a$、 $B_0$、 $R$、 $T$ のうち必要なものを用いて答えよ。
(2) 導体線の辺 $\mathrm{A}_1\mathrm{A}_2$ に流れる電流の時間変化を解答欄のグラフ中に実線で示せ。ただし、辺 $\mathrm{A}_1\mathrm{A}_2$ に流れる電流は $y$ 軸正の向きを正とする。
(3) 導体線の辺 $\mathrm{A}_1\mathrm{A}_2$ に流れる電流が磁場から受ける力の $x$ 方向成分 $F_x$ の時間変化を解答欄のグラフ中に実線で示せ。なお、 $F_x$ の最大値を $F_0$ とする。
次に、充電されていない静電容量 $C$ のコンデンサを図3に示すように回路に取り付け、図2に示す磁束密度 $B$ の一様な磁場を回路全体に加えた。コンデンサの左側電極に蓄えられる電荷 $Q$ は、最大値を $Q_0$ とすると図4に示すように時間変化した。
(4) 回路中の抵抗を抵抗値 $2R$ のものにとりかえた場合、コンデンサの左側電極に蓄えられる電荷 $Q$ の時間変化として最も適当なものを、図5の(a)〜(f)の中から一つ選び、解答欄の記号を〇で囲め。
最後に、図3に示すように抵抗値 $R$ の抵抗と充電されていない静電容量 $C$ のコンデンサを接続した状態で磁束密度 $B=B_1\sin\left(\dfrac{2\pi}{T}t\right)$ の一様な磁場を繰り返し回路全体に加えた。磁場を加え始めてから十分に時間が経過した後、時間 $t=t_1$ から $t=t_1+T$ の間に抵抗に流れる電流 $I$ は、 $x$ 軸正の向きを正とし最大値を $I_1$ とすると、図6に示すように時間変化した。
(5) コンデンサに加わる電圧 $V$ の時間変化として最も適当なものを、図7の(a)〜(f)の中から一つ選び、解答欄の記号を〇で囲め。なお、電圧の最大値を $V_1$ とし、電圧はコンデンサの左側電極が高電位、右側電極が低電位の場合を正とする。
問2. 以下の問いに答えよ。
抵抗値 $r$ および $2r$ の抵抗とスイッチSを使って図8のような回路を考える。導線の抵抗は無視できるものとする。
(1) スイッチSを開いたとき、および閉じたときのbd間の合成抵抗をそれぞれ求めよ。
次に図9のように、スイッチSをとりのぞいて抵抗値 $R$ の抵抗を接続し、ae間に内部抵抗を無視できる起電力 $E$ の電池をつないだ。bからcへ、bからfへ、cからdへ流れる電流をそれぞれ $I_1$、 $I_2$、 $I_3$ とする。
(2) 閉回路abcdeaおよびabfdeaについて、キルヒホッフの第2法則(電圧に関する法則)の式を、 $E$、 $r$、 $R$、 $I_1$、 $I_2$、 $I_3$ の中から必要なものを用いてそれぞれ書け。
(3) (2)の2つの式を用いて $I_2$ と $I_3$ の関係を求めよ。
(4) $I_1$ および $I_2$ を、 $E$、 $r$、 $R$ を用いてそれぞれ表せ。
(5) bd間の合成抵抗を、 $r$ および $R$ を用いて表せ。
(6) 抵抗値 $R$ の抵抗を可変抵抗にとりかえて、可変抵抗の抵抗値を $r$ から $r+\Delta r$ へ微小変化させたときの合成抵抗の変化を考える。 $\left|\dfrac{\Delta r}{r}\right|\ll1$ とすると、可変抵抗の抵抗値が $r+\Delta r$ のときのbd間の合成抵抗は、
$$\alpha r+\beta\Delta r$$
の式で近似できる。 $\alpha$ および $\beta$ を求めよ。ここで、 $|x|\ll1$ の $x$ に対して成り立つ近似式 $\dfrac{1}{1+x}\fallingdotseq1-x$、および $1\pm x^2\fallingdotseq1$ を用いよ。
解答の方針
【問1 (1)(2)(3)の方針】
回路は動かず、変わるのは磁束密度 $B$ だけ。導体棒が動くのではないので、 $vBl$ は使えない。基本のファラデーの電磁誘導の法則 $V=-\dfrac{\Delta\varPhi}{\Delta t}$ に戻る。面積 $a^2$ は一定なので、磁束 $\varPhi=a^2B$ の変化の速さは $B$–$t$ グラフの傾き×面積で決まる。公式で済ませてよいのは、基本の法則から導けるようになってからである。
起電力は、大きさと向きを別々に決める。大きさは図2の傾き。向きはレンツの法則で、 $B$ の正負ではなく、磁束が増えているか減っているかで決まる(下の図)。


(3) の力は $F_x=IaB$ 。電流 $I$ と磁束密度 $B$ はどちらも正負が入れかわる量なので、力の符号は2つの積で決まる。 $B=0$ の瞬間は、電流が流れていても力は0になる。
- 磁束 $\varPhi=a^2B$ のうち、時間で変わる $B$ だけを $\Delta B$ にして、 $V=a^2\left|\dfrac{\Delta B}{\Delta t}\right|$ と図2の傾きから起電力を求め、 $I_0=\dfrac VR$ とする((1))。
- 前半・後半それぞれで磁束が増えるか減るかを見て、レンツの法則と右ねじの法則で電流の向きを決める。辺 $\mathrm{A_1A_2}$ で $y$ 軸正の向きなら正として、電流のグラフを書く((2))。
- 力 $F_x=IaB$ の $I$ と $B$ の符号を区間ごとに追い、 $F_0=I_0aB_0$ を最大値としてグラフを書く((3))。
【問1 (4)(5)の方針】
どちらも、抵抗とコンデンサーが直列につながり、起電力が加わる回路。(4) は、図4(抵抗 $R$ のとき)を基準に、抵抗を変えると何が変わり何が変わらないかを整理する。充電が終わって電流が0になれば、コンデンサーの電圧は起電力と等しい。変わるのは電流の流れる勢い、つまり充電の速さ。充電が始まる瞬間は、電荷0のコンデンサーが導線と同じなので、電流は抵抗だけで決まる。
(5) は電流とコンデンサーの電荷の関係に注目する。抵抗を $+x$ 向きに流れた電流は左の極板にたまるので、電流は電荷の変化の割合で、電圧のグラフの傾きは電流に比例する。電流が0になる瞬間は、電圧のグラフが山か谷になる。
- 最後にたまる電荷は起電力で決まり、抵抗によらないので $Q_0$ のまま。これで (a)(c)(e) を除く。 $t=0$ の電流は起電力÷抵抗なので、抵抗が2倍なら初めの傾きは半分。図4と見比べて、(b)(d) を除き (f) を選ぶ((4))。
- $I=\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}$ ・ $V=\dfrac QC$ から、 $V$ の傾きが $I$ に比例する。図6の $t_1$ は $I$ が最小なので、傾きが最も負の選択肢を選ぶ((5))。
【問2の方針】
(1) は、導線でつながった点は同電位の1点とみなせる。スイッチを閉じると c と f が1点になり、回路の形が変わる。
(2)〜(5) は、抵抗 $R$ があるとブリッジは並列・直列だけでは合成できないので、電流を置いてキルヒホッフの法則を立てる。電流は節点の電流の保存で $I_1$ ・ $I_2$ ・ $I_3$ から表す。閉回路は、答えに使ってよい文字から逆算して選ぶ(下の図)。


(3) は、回路を $180^\circ$ 回すと同じ形になる対称性が背景にある。(6) は、変化がわずかなので、 $\dfrac{\Delta r}{r}$ の形を作って1次の項だけを残す。
- スイッチを開いたときは、3つの並びが2本の並列。閉じたときは c と f を1点とみて、並列2組の直列にする((1))。
- 節点 c ・ f の電流の保存で、 $R$ を流れる電流を $I_1-I_3$ 、 f から d へ流れる電流を $I_1+I_2-I_3$ とする。 $R$ を通らない2つの閉回路 abcdea・abfdea でキルヒホッフの第2法則を立てる((2))。
- 2式の差から $I_2$ と $I_3$ の関係を求める((3))。
- 閉回路 b→c→f→b の式を足し、 $I_3=I_2$ を入れて $I_1$ ・ $I_2$ を求める((4))。
- 電池の電圧 $E$ を全電流 $I_1+I_2$ で割って合成抵抗を求める((5))。
- $R=r+\Delta r$ を (5) の式に入れ、分子・分母を $r$ でくくって $(1+x)$ の形にし、2次の微小量を落とす((6))。
解答






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問1 (1)
回路は動かず磁束密度だけが時間で変わるので、 $vBl$ は使えない。ファラデーの電磁誘導の法則に戻る。面積 $a^2$ は一定なので、磁束 $\varPhi=a^2B$ のうち時間で変わる $B$ だけを $\Delta B$ にして
$$V=\left|\frac{\Delta\varPhi}{\Delta t}\right|=a^2\left|\frac{\Delta B}{\Delta t}\right|$$
(面積×図2の傾き)。図2は、前半の $\dfrac T2$ の間に $B_0$ から $-B_0$ へ直線で変わるので傾きの大きさは $\dfrac{2B_0}{T/2}=\dfrac{4B_0}{T}$ 、後半は逆向きで同じ大きさ。起電力の大きさは前半も後半も $\dfrac{4a^2B_0}{T}$ で一定。回路の抵抗は $R$ だけなので、電流は $I=\dfrac VR$ 。
答 $I_0=\dfrac{4a^2B_0}{RT}$(4点)
(辺 $\mathrm{A_1A_2}$ にも回路を一周する同じ電流が流れる。電流の大きさは前半・後半とも同じなので、これが最大値)
問1 (2)
向きは大きさとは別に、レンツの法則で決める(着眼点の図)。
・前半( $0\sim\dfrac T2$ ): $B$ が $B_0$ から $-B_0$ へ減るので、 $z$ 軸正の向きの磁束が減る。減るのを補う( $z$ 軸正の向きの磁場をつくる)向きに、右ねじの法則で反時計回り( $\mathrm{O}\to\mathrm{A_1}\to\mathrm{A_2}$ の向き)の電流が流れる。辺 $\mathrm{A_1A_2}$ では $y$ 軸正の向きなので正で、 $+I_0$ 。
・後半( $\dfrac T2\sim T$ ): $B$ が $-B_0$ から $B_0$ へ増えるので、 $z$ 軸正の向きの磁束が増える。打ち消す向きの時計回りで、辺 $\mathrm{A_1A_2}$ では $y$ 軸負の向きなので負で、 $-I_0$ 。
向きを決めるのは $B$ の正負ではなく、増えているか減っているか。 $B=0$ を横切る $\dfrac T4$ では電流は変わらず、傾きの符号が入れかわる $\dfrac T2$ だけで向きが変わる(下の図。上の $B$ のグラフと時間軸をそろえた)。
答 上の図の下(0〜 $\dfrac T2$ で $+I_0$ 、 $\dfrac T2$〜 $T$ で $-I_0$ の横線2本。解答紙の方眼では縦軸の上端が $I_0$ 、下端が $-I_0$ )(3点)
(解答紙の縦軸の文字は、冊子の訂正で「電流 $I$ 」から「電流」に直されている。答えには関係しない)
問1 (3)
辺 $\mathrm{A_1A_2}$ の長さは $a$ 。電流が $y$ 軸正の向き( $I>0$ )、磁場が $z$ 軸正の向き( $B>0$ )のとき、力は $x$ 軸正の向きなので、符号つきで
$$F_x=IaB$$
と書ける。 $I$ も $B$ も正負が入れかわるので、かけ算の符号を区間ごとに追う。
・前半: $I=I_0$ 、 $B=B_0\left(1-\dfrac{4t}{T}\right)$ なので、 $F_x=I_0aB_0\left(1-\dfrac{4t}{T}\right)=F_0\left(1-\dfrac{4t}{T}\right)$ 。 $F_0=I_0aB_0=\dfrac{4a^3B_0^2}{RT}$ 。 $t=0$ で $F_0$ 、 $B=0$ の $\dfrac T4$ で0、 $\dfrac T2$ の直前で $-F_0$ 。
・後半:電流が $-I_0$ に変わるが、 $B$ も $-B_0$ から出発するので $F_x=(-I_0)a(-B_0)=F_0$ に戻り、前半と同じ直線が $\dfrac T2$ から $T$ まで続く。 $\dfrac{3}{4}T$ で0、 $T$ の直前で $-F_0$ 。
$\dfrac T2$ の瞬間は、電流の向きが入れかわるのに合わせて $F_x$ が $-F_0$ から $F_0$ へとぶ(下の図。 $B$ ・ $I$ ・ $F_x$ を時間軸をそろえて並べた)。
答 上の図の下( $t=0$ で $F_0$ から直線で下がり、 $\dfrac T4$ で0、 $\dfrac T2$ の直前で $-F_0$ 。 $\dfrac T2$ で $F_0$ にとび、同じ直線をもう一度書いて $T$ の直前で $-F_0$ )(3点)
問1 (4)
充電が終わって電流が0になると、コンデンサーの電圧は起電力と等しい。起電力 $\dfrac{4a^2B_0}{T}$ は抵抗の値によらないので、最後にたまる電荷は抵抗を $2R$ にしても $Q_0$ のまま。最後の値が $\dfrac{Q_0}{2}$ の (a)(c)(e) はこれで除ける。
残る (b)(d)(f) は充電の速さで決まる。電荷0のコンデンサーは導線と同じなので、充電が始まる瞬間は抵抗だけの回路で、電流は $\dfrac{\text{起電力}}{\text{抵抗}}$ 。抵抗が2倍なら初めの電流は $\dfrac12$ 倍で、 $I=\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}$ より $Q$–$t$ グラフの初めの傾きも $\dfrac12$ 倍(下の図。 $0\sim\dfrac T4$ を拡大)。図4の初めの傾きの接線は約 $\dfrac T{16}$ で $Q_0$ に届き、抵抗が2倍の曲線は約 $\dfrac T8$ で届く。図で $t=\dfrac{T}{32}$ の高さを読むと、図4は約 $0.4Q_0$ 、(f) は約 $0.2Q_0$ 。(b) は図4より速く立ち上がるので、抵抗を小さくした場合。
(d) が引っかけ:(d) は最後の値が $Q_0$ で、図4より少しだけゆっくり立ち上がる( $t=\dfrac T{32}$ で約 $0.36Q_0$ )。「抵抗が2倍だからゆっくり」という見た目だけで選ぶと (d) になるが、初めの傾きは図4の約0.9倍で、半分になっていない。抵抗が2倍になった曲線は、最後の値は同じでも、図4よりはっきり遅れる (f) になる。
答 (f)(3点)
問1 (5)
抵抗を $+x$ 向きに流れる電流は、コンデンサーの左の極板に流れこむ。左の極板の電荷を $Q$ とすると、電流は電荷の変化の割合で $I=\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}$ 、電圧は $V=\dfrac QC$ (左が高電位のとき正)。よって
$$\frac{\Delta V}{\Delta t}=\frac{I}{C}$$
で、電圧のグラフの傾きは電流に比例する。図6の $t_1$ は電流が最小( $-I_1$ )なので、電圧のグラフは $t_1$ で傾きが最も負になる。電流が0になる $t_1+\dfrac T4$ では傾きが0で電圧は谷(最小)、電流が最大の $t_1+\dfrac T2$ では傾きが最も正、電流が0になる $t_1+\dfrac34T$ では山(最大)。 $t_1$ で傾きが最も負になっているのは (b) だけ((a)(d) は $t_1$ で傾き0、 (c) は正の傾き、(e)(f) は周期が半分)。
電圧は正弦波で、谷が $t_1+\dfrac T4$ 、山が $t_1+\dfrac34T$ なので、 $t_1$ では0。電圧の谷( $t_1+\dfrac T4$ )は電流の谷( $t_1$ )より $\dfrac T4$ 遅れている。つまり電圧は電流より $\dfrac14$ 周期(位相 $\dfrac\pi2$ )遅れる(下の図)。
答 (b)(2点)
問2 (1)
スイッチを開くと、b から d へ「 $r$ と $2r$ 」と「 $2r$ と $r$ 」の2本の道ができ、どちらも $3r$ 。2本の並列なので
$$\frac1{R_{\mathrm{bd}}}=\frac1{3r}+\frac1{3r}\qquad\therefore\ R_{\mathrm{bd}}=\frac32r$$
答(開いたとき) $\dfrac32r$(2点)
スイッチを閉じると c と f が導線でつながり、同じ電位の1点になる。b から c(f)までは $r$ と $2r$ の並列、c(f)から d までは $2r$ と $r$ の並列で、この2組の直列(下の図)。
$$R_{\mathrm{bd}}=\frac{r\cdot2r}{r+2r}+\frac{2r\cdot r}{2r+r}=\frac23r+\frac23r$$
答(閉じたとき) $\dfrac43r$(2点)
問2 (2)
電池の記号は長い線(正極)が a 側なので、電流は a→b の向きに流れる。節点 c に $I_1$ が入り $I_3$ が出るので、 $R$ を c→f に流れる電流は $I_1-I_3$ 。節点 f には b から $I_2$ 、c から $R$ を通って $I_1-I_3$ が入るので、f→d に流れる電流は $I_2+(I_1-I_3)$ (下の図)。
キルヒホッフの第2法則は、電池で $E$ 上がり、抵抗で電流の向きに下がるとして1周の合計を0にする。答えに使ってよい文字に $R$ はあるが、$R$ を通らない閉回路を選べば式に $R$ は出てこない。
閉回路 abcdea(a→b→c→d→e→a):
答 $E=rI_1+2rI_3$(2点)
閉回路 abfdea:
答 $E=2rI_2+r(I_1+I_2-I_3)$(2点)
(整理すると $E=rI_1+3rI_2-rI_3$ )
問2 (3)
(2) の2つの式を引くと
$$rI_1+2rI_3=rI_1+3rI_2-rI_3\qquad\therefore\ 3rI_3=3rI_2$$
答 $I_2=I_3$(2点)
(回路を $180^\circ$ 回して b と d 、c と f を入れかえ、電池の向きも入れかえると、抵抗の並びが元と同じになる。bf の $2r$ と cd の $2r$ に流れる電流の大きさが等しい、というのが $I_2=I_3$ の意味)
問2 (4)
(2) の2つの式だけでは未知数 $I_1$ ・ $I_2$ ・ $I_3$ に足りないが、(3) で $I_3=I_2$ とそろったので、もう1本の閉回路 b→c→f→b を足す。b→c は電流の向きなので $rI_1$ 下がり、c→f も $R(I_1-I_3)$ 下がり、f→b は $I_2$ と逆向きに通るので $2rI_2$ 上がる。
$$rI_1+R(I_1-I_3)-2rI_2=0$$
$I_3=I_2$ を入れて $(r+R)I_1=(2r+R)I_2$ 、つまり $I_2=\dfrac{r+R}{2r+R}I_1$ 。これを abcdea の式 $E=rI_1+2rI_3=rI_1+2rI_2$ に入れて
$$E=rI_1\cdot\frac{(2r+R)+2(r+R)}{2r+R}=\frac{r(4r+3R)}{2r+R}I_1$$
答 $I_1=\dfrac{(2r+R)E}{r(4r+3R)}$(3点)
答 $I_2=\dfrac{(r+R)E}{r(4r+3R)}$(2点)
問2 (5)
電池の電圧 $E$ が b と d の間にそのままかかり、全電流は $I_1+I_2$ 。
$$R_{\mathrm{bd}}=\frac{E}{I_1+I_2}=\frac{E}{\dfrac{(3r+2R)E}{r(4r+3R)}}$$
答 $\dfrac{r(4r+3R)}{3r+2R}$(5点)
(確かめ: $R\to\infty$ (c-f 間が切れた状態)で $\dfrac{3rR}{2R}=\dfrac32r$ 、 $R\to0$ (c と f が同電位)で $\dfrac{4r^2}{3r}=\dfrac43r$ 。 (1) の2つの値と一致する)
問2 (6)
$R=r+\Delta r$ を (5) に入れ、 $x=\dfrac{\Delta r}{r}$ とおく。分子・分母を $r$ でくくって $(1+x)$ の形にする。
$$\frac{r(7r+3\Delta r)}{5r+2\Delta r}=\frac75r\cdot\frac{1+\dfrac37x}{1+\dfrac25x}$$
分母は $\dfrac{1}{1+\frac25x}\fallingdotseq1-\dfrac25x$ とし、掛け合わせて2次の微小量 $x^2$ を落とす( $1\pm x^2\fallingdotseq1$ )。
$$\frac75r\left(1+\frac37x\right)\left(1-\frac25x\right)=\frac75r\left(1+\frac37x-\frac25x-\frac6{35}x^2\right)\fallingdotseq\frac75r\left(1+\frac1{35}x\right)=\frac75r+\frac1{25}\Delta r$$
答 $\alpha=\dfrac75$(2点)
答 $\beta=\dfrac1{25}$(3点)
別解
問1 (5) (式で確かめ) 電圧を $V=-V_1\sin\left\{\dfrac{2\pi}{T}(t-t_1)\right\}$ とおくと、電流は $I=\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}=C\dfrac{\Delta V}{\Delta t}=-\dfrac{2\pi CV_1}{T}\cos\left\{\dfrac{2\pi}{T}(t-t_1)\right\}$ 。これが図6( $t_1$ で $-I_1$ 、最大値 $I_1=\dfrac{2\pi CV_1}{T}$ )と一致する。電圧の式がマイナスのサイン、電流がマイナスのコサインなので、電圧は電流より $\dfrac14$ 周期遅れる。コンデンサーの電流が電圧より $\dfrac\pi2$ 進む、という基本知識を使っても同じ答えになる。
問2 (6) ((5) の式を先に分けて) $\dfrac{r(4r+3R)}{3r+2R}=\dfrac32r-\dfrac{r^2}{2(3r+2R)}$ と分けると、近似が必要なのは分母だけになる。 $R=r+\Delta r$ で $3r+2R=5r\left(1+\dfrac25x\right)$ なので
$$\frac32r-\frac{r}{10}\left(1+\frac25x\right)^{-1}\fallingdotseq\frac32r-\frac r{10}\left(1-\frac25x\right)=\frac75r+\frac1{25}\Delta r$$
出題意図
問1 (1)〜(3) $vBl$ の公式に頼らず、ファラデーの電磁誘導の法則から、磁束密度が時間変化するときの起電力・電流の向き・電流が受ける力を求めることができるか
問1 (4)(5) コンデンサーと抵抗をつないだ回路で、充電の速さと、電流と電圧の位相のずれを捉えることができるか
問2 (1)〜(5) キルヒホッフの法則でブリッジ回路の電流と合成抵抗を求めることができるか
問2 (6) 抵抗をわずかに変えたときの変化を、1次の近似で表すことができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 30点 | 25点 |
| 目標時間 | 25分 | 25分 |
この大問は、磁場の時間変化による電磁誘導、RC回路と位相、ブリッジ回路のキルヒホッフという電磁気の典型を1題に並べたセット。
電磁誘導の決まった流れ(磁束→ファラデーの電磁誘導の法則で起電力(向きと大きさは別々に)→電流→力)を、公式 $vBl$ ではなくファラデーの法則とグラフを結びつけて踏めるか(傾き $\dfrac{\Delta B}{\Delta t}$ ×面積が $\dfrac{\Delta\varPhi}{\Delta t}$ )が分かれ目で、かなり差がついた大問。
その癖がついていればそれほど難しくない。
問2 はキルヒホッフで立式するだけだが計算が重く、(6) の近似では時間を使う。
差がつく所・失点しやすい所
- 問1 (1)〜(3):コイルが動かないので $vBl$ は使えない。ファラデーの電磁誘導の法則とグラフを結びつけ、「 $B$–$t$ グラフの傾き $\dfrac{\Delta B}{\Delta t}$ に面積 $S$ をかけたものが $\dfrac{\Delta\varPhi}{\Delta t}$ 」と読めるか。この癖がついていればそれほど難しくないが、大きく差がついた。
- 問2 (6):(5) の答えを $r$ でくくって $(1+x)$ の形にし、 $(1+x)^{-1}$ を $1-x$ に直して2次の微小量を落とす、という近似の発想に行き着けるか。計算が重く、時間を使う。
- 問1 (4):最後の電荷は抵抗によらないこと、初めの傾きが半分になることから、(d) と (f) を見分けられるか。
2026年九州大学物理
第3問 解答・解説
第3問は波動の問題です。
テーマは「スリットから直接届く光と平面鏡で反射して届く光の干渉(ロイド鏡)で、縞が出る範囲・経路差・明線の位置を求め、条件を変えたときの縞の間隔と範囲の変化を選び、最後に全反射の臨界角と反射光が当たる位置を図形で求める」。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問3に答えよ。
図1のように、真空中で点Oと点O′の2点を含む水平面上に平面鏡を置き、点Oの位置に、細いスリットSがある板を、点Oから距離 $L$ 離れた点O′の位置に十分な高さをもつスクリーンを、水平面に対してそれぞれ垂直に立てた。板とスクリーンは平行であり、点Oと点O′を結ぶ線と垂直である。また、平面鏡は板とスクリーンの間にあるものとする。スリットの左側に光源を設置し、光源から出た光をスリットSに通すと、光が回折によって十分広がり、スクリーンに映った。スリットSから水平面までの距離を $d$、点Oから平面鏡の左端までの距離を $a$、平面鏡の幅を $b$ とし、スクリーン上にある点Pは、点O′から鉛直上方の高さ $x$ にあるものとする。板は十分に薄く厚さは無視でき、光が平面鏡で反射するとき、反射光の位相は $\pi$ だけ変化するものとする。また、 $d$ と $x$ は $L$ に比べて十分に小さく、 $|\alpha|\ll1$ のとき、以下の近似式を用いるものとする。
$$\sqrt{1+\alpha}\fallingdotseq1+\frac{1}{2}\alpha$$
問1. 光源から位相のそろった波長 $\lambda$ の単色光が出ると、スクリーン上に明暗の縞模様が現れる。これは、スリットからスクリーンに直接到達する光と、平面鏡で反射して到達する光が干渉して形成される干渉縞である。以下の問いに答えよ。
(1) スクリーンに映る干渉縞は、スクリーン面の一部にのみ現れる。干渉縞が現れる鉛直方向の範囲を、解答欄のスクリーンを示す四角枠内に斜線で塗りつぶして示せ。なお、この問題(1)でのみ、スリット、平面鏡、スクリーンの配置は解答欄のとおりとする。必要に応じて、光が進む経路を作図してもよい。
(2) スクリーン上で干渉縞が現れる $x$ の範囲を、 $\lambda$、 $L$、 $d$、 $a$、 $b$ のうち必要なものを用いて表せ。
(3) スリットからスクリーンに直接到達する光の道のりを $L_1$、平面鏡で反射して到達する光の道のりを $L_2$ とする。与えられた近似式を用いて、 $L_2-L_1$ を、 $\lambda$、 $L$、 $d$、 $x$、 $a$、 $b$ のうち必要なものを用いて表せ。
(4) $\lambda=5.0\times10^{-7}\ \mathrm{m}$、 $d=5.0\times10^{-4}\ \mathrm{m}$、 $L=2.0\ \mathrm{m}$、 $a=0.15\ \mathrm{m}$、 $b=0.25\ \mathrm{m}$ とするとき、スクリーン上に形成される干渉縞のうち、点O′に最も近い明線の位置 $x$〔m〕を有効数字2桁で求めよ。
問2. 次の文中の空欄 $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{ウ}}$ に入る正しい文章を、下記の選択肢(a)〜(i)の中からそれぞれ一つ選び、解答欄の記号を○で囲め。なお、同じ記号を複数回選んでもよい。
「図1で、光源から出る単色光を赤色から青色へ変えた場合、スクリーン上に形成される $\boxed{\text{ア}}$ 。」
「図2に示すように、平面鏡をスクリーン方向へ平行に移動した場合、スクリーン上に形成される $\boxed{\text{イ}}$ 。」
「平面鏡を図1の位置に戻し、図3に示すように、スリットSと光源を点Oから離れる方向へ、スクリーンの高さを越えない範囲で水平面に垂直に移動した場合、スクリーン上に形成される $\boxed{\text{ウ}}$ 。」
選択肢
(a) 隣り合う明線の間隔は「増加し」、干渉縞が現れる領域は「増加した」
(b) 隣り合う明線の間隔は「増加し」、干渉縞が現れる領域は「減少した」
(c) 隣り合う明線の間隔は「増加し」、干渉縞が現れる領域は「変化しなかった」
(d) 隣り合う明線の間隔は「減少し」、干渉縞が現れる領域は「増加した」
(e) 隣り合う明線の間隔は「減少し」、干渉縞が現れる領域は「減少した」
(f) 隣り合う明線の間隔は「減少し」、干渉縞が現れる領域は「変化しなかった」
(g) 隣り合う明線の間隔は「変化せず」、干渉縞が現れる領域は「増加した」
(h) 隣り合う明線の間隔は「変化せず」、干渉縞が現れる領域は「減少した」
(i) 隣り合う明線の間隔は「変化せず」、干渉縞が現れる領域は「変化しなかった」
問3. 図4のように、水平面上の点Oから水平方向に距離 $L’$ 離れた点O″の位置にスクリーンを、水平面に対して垂直に立てた。水平面より上には絶対屈折率 $n_1$ の透明な物質1を、水平面より下には絶対屈折率 $n_2$ の透明な物質2を挿入した。点Oの上方には、レーザー光を発生する装置を設置した。スクリーン上にある点P′は、点O″から鉛直上方の高さ $2h$ にあるものとする。レーザー光は、点Oの鉛直上方の高さ $h$ の位置から、点O、点O″、点P′の3点を含む平面内を進むものとする。以下の問いに答えよ。
(1) レーザー光が物質1と物質2の境界面へ入射する場合を考える。入射角がある角度 $\theta$ をこえると、レーザー光はすべて反射される。この現象を全反射といい、このときの入射角 $\theta$ を臨界角という。屈折の法則を用いて、臨界角 $\theta$ と絶対屈折率 $n_1$、 $n_2$ の関係式を求めよ。
(2) レーザー光が臨界角 $\theta$ で物質1と物質2の境界面に入射したとき、境界面で反射した光が点P′に現れた。このとき、点Oから点O″までの距離 $L’$ を、 $h$、 $n_1$、 $n_2$ のうち必要なものを用いて表せ。
解答の方針
【問1の方針】
鏡で反射した光は、鏡に関してスリット $\mathrm{S}$ と対称な位置にある像 $\mathrm{S’}$ からまっすぐ来た光と、道のりが同じ。つまり、直接届く光と反射して届く光の干渉は、 $\mathrm{S}$ と $\mathrm{S’}$ の2つのスリット(間隔 $2d$)によるヤングの実験と同じ形になる。ただし、反射では位相が $\pi$ ずれるので、ヤングの実験と明線・暗線の条件が入れかわる。縞が出るのは、直接の光と反射した光が重なる所だけ。反射した光は、 $\mathrm{S’}$ から鏡の両端を通る2本の直線にはさまれた範囲にしか届かない(下の図)。


- (1) 方眼に $\mathrm{S’}$ をとり、 $\mathrm{S’}$ から鏡の左端・右端を通る2本の直線をスクリーンまで延ばす。スクリーン上で2本の直線にはさまれた部分を斜線で塗る。
- (2) (1) の2本の直線について、 $\mathrm{S’}$ と鏡の端でつくる直角三角形と、鏡の端とスクリーンでつくる直角三角形の相似から、範囲の上端・下端の $x$ を求める。
- (3) $L_1$、 $L_2$ を三平方の定理で書き、ルートの中を $L^2$ でくくって与えられた近似を使い、差をとる。
- (4) 反射で位相が $\pi$ ずれることから明線の条件を作り、明線の位置を $m$ で表す。(2) の範囲の中で、O′ にいちばん近いものを選ぶ。
【問2の方針】
変えるものは2つある。縞の間隔は、2つの光源($\mathrm{S}$ と $\mathrm{S’}$)の間隔と $L$、 $\lambda$ だけで決まる。縞が出る範囲は、 $\mathrm{S’}$ から鏡の両端を見込む形(長さの比)だけで決まり、光の色には関係しない。「何が何を決めるか」を分けて考えれば、3つの変化は区別がつく(下の図は (イ)(ウ) の範囲の変化)。


- 問1 (4) の明線の位置から、隣り合う明線の間隔を求める(1個ずらして引く)。
- 問1 (2) の上端と下端の差から、縞が出る範囲の幅を求める。
- 変える量($\lambda$、 $a$、 $d$)が、間隔の式・幅の式のどちらに入っているかを見て、増減を決める。
- 選択肢 (a)〜(i) から、間隔と範囲の組が合うものを選ぶ。
【問3の方針】
全反射は、光が屈折率の大きい物質から小さい物質へ進むとき、入射角を大きくしていくと屈折角が $90^\circ$ に達して、光が境界面にそって進む限界。その限界の入射角が臨界角(下の図)。反射光は入射角と同じ角 $\theta$ で戻るので、光は鉛直方向に進んだ高さの分だけ、水平方向にも $\tan\theta$ 倍だけ進む。


- (1) 屈折の法則を一般形 $n_1\sin(\text{入射角})=n_2\sin(\text{屈折角})$ で書き、屈折角に $90^\circ$ を入れる。
- (2) 入射側(高さ $h$)の水平距離と、反射側(高さ $2h$)の水平距離を、それぞれ $\tan\theta$ を使って書き、足して $L’$ にする。
- $\tan\theta$ を (1) の $\sin\theta$ から $n_1$、 $n_2$ で表す。
解答




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問1 (1)
鏡に関して $\mathrm{S}$ と対称な位置に像 $\mathrm{S’}$ をとる。方眼では、 $\mathrm{S’}$ は水平面から $2$ 目盛り下、板から $0$ 目盛りの点。鏡の左端は板から $2$ 目盛り、右端は板から $4$ 目盛り、スクリーンは板から $10$ 目盛り。
・$\mathrm{S’}$ と鏡の左端を結ぶと、横に $2$ 目盛り進んで $2$ 目盛り上がるので傾きは $1$。スクリーンまで横に $10$ 目盛り進むと、高さは $-2+10=8$ 目盛り
・$\mathrm{S’}$ と鏡の右端を結ぶと、横に $4$ 目盛り進んで $2$ 目盛り上がるので傾きは $\dfrac12$。スクリーンでの高さは $-2+\dfrac12\times10=3$ 目盛り
反射した光が届くのは、この2本の直線にはさまれた $3$ 目盛り〜$8$ 目盛りの高さ(下の図)。直接の光はスクリーン全体に届くが、干渉縞が出るのは反射光と重なるこの範囲だけ。
答 水平面から $3$ 目盛り〜$8$ 目盛りの高さを斜線で塗る(図)(5点)
問1 (2)
(1) の2本の直線で相似な三角形を使う。 $\mathrm{S’}$、O、鏡の左端でつくる直角三角形(縦 $d$、横 $a$)と、鏡の左端、O′、スクリーン上の上端でつくる直角三角形(縦 $x_{\text{上}}$、横 $L-a$)は相似なので
$$d:x_{\text{上}}=a:(L-a)\qquad\therefore\ x_{\text{上}}=\frac{(L-a)d}{a}$$
右端でも同じで、 $d:x_{\text{下}}=(a+b):(L-a-b)$ より $x_{\text{下}}=\dfrac{(L-a-b)d}{a+b}$。
答 $\dfrac{(L-a-b)d}{a+b}\leqq x\leqq\dfrac{(L-a)d}{a}$(5点)
問1 (3)
$\mathrm{S}$ は水平面から $d$ の高さ、 $\mathrm{S’}$ は水平面から $d$ だけ下。点Pは O′ から高さ $x$ にあるので、 $\mathrm{S}$ から P までは横に $L$、縦に $x-d$、 $\mathrm{S’}$ から P までは横に $L$、縦に $x+d$ だけ離れている(下の図)。三平方の定理より
$$L_1=\sqrt{L^2+(x-d)^2},\qquad L_2=\sqrt{L^2+(x+d)^2}$$
$d$、 $x$ は $L$ に比べて十分に小さいので、ルートの中を $L^2$ でくくって「$1+$小さい量」の形にし、与えられた近似を使う。
$$L_1=L\sqrt{1+\left(\frac{x-d}{L}\right)^2}\fallingdotseq L+\frac{(x-d)^2}{2L},\qquad L_2\fallingdotseq L+\frac{(x+d)^2}{2L}$$
引くと、 $x^2+d^2$ の部分が消えて
$$L_2-L_1\fallingdotseq\frac{(x+d)^2-(x-d)^2}{2L}=\frac{2dx}{L}$$
答 $L_2-L_1=\dfrac{2dx}{L}$(5点)
問1 (4)
反射で位相が $\pi$ ずれるので、経路差が $0$ になる鏡の面の高さ($x=0$)は、ヤングの実験と違って暗線になる。明線になるのは、2本の光が山と山で重なるとき、つまり経路差が半波長の奇数倍のとき。
$$\frac{2dx}{L}=\left(m+\frac12\right)\lambda\quad(m=0,\ 1,\ 2,\ \dots)\qquad\therefore\ x=\left(m+\frac12\right)\frac{L\lambda}{2d}$$
数値を入れると $\dfrac{L\lambda}{2d}=\dfrac{2.0\times5.0\times10^{-7}}{2\times5.0\times10^{-4}}=1.0\times10^{-3}\ \mathrm m$ なので、明線は $x=0.5,\ 1.5,\ 2.5,\ 3.5,\ \dots$(単位 $10^{-3}\ \mathrm m$)の位置にある。
縞が出る範囲は、(2) に $a=0.15,\ b=0.25$ を入れて
$$x_{\text{下}}=\frac{(2.0-0.15-0.25)\times5.0\times10^{-4}}{0.15+0.25}=2.0\times10^{-3}\ \mathrm m,\qquad x_{\text{上}}=\frac{(2.0-0.15)\times5.0\times10^{-4}}{0.15}\fallingdotseq6.2\times10^{-3}\ \mathrm m$$
範囲の中にある明線のうち、O′ に最も近いものを選ぶ。 $0.5\times10^{-3}$ と $1.5\times10^{-3}$ は範囲の外(直接の光しか届かない所)なので、答えは $2.5\times10^{-3}\ \mathrm m$(下の図)。範囲の下端 $2.0\times10^{-3}\ \mathrm m$ は、経路差がちょうど $2\lambda$ なので暗線で、明線ではない。
答 $2.5\times10^{-3}$ m(5点)
問2
隣り合う明線の間隔は、問1 (4) の $x=\left(m+\dfrac12\right)\dfrac{L\lambda}{2d}$ を1個ずらして引いて
$$x_{m+1}-x_m=\frac{L\lambda}{2d}\qquad(a,\ b\text{ によらない})$$
縞が出る範囲の幅は、問1 (2) の上端と下端の差で
$$\frac{(L-a)d}{a}-\frac{(L-a-b)d}{a+b}=\frac{Lbd}{a(a+b)}\qquad(\lambda\text{ によらない})$$
この2つの式に、変える量が入っているかどうかで、増減を決める。
| 変える量 | 間隔 $\dfrac{L\lambda}{2d}$ | 範囲の幅 $\dfrac{Lbd}{a(a+b)}$ |
|---|---|---|
| (ア) 赤→青($\lambda$ 小) | 減少 | 変化なし |
| (イ) 鏡をスクリーン側へ($a$ 大) | 変化なし | 減少 |
| (ウ) スリットを上へ($d$ 大) | 減少 | 増加 |
(イ) は、鏡が $\mathrm{S’}$ から遠ざかると、鏡の両端と $\mathrm{S’}$ を結ぶ2本の直線の開きが小さくなり、範囲が狭くなる。(ウ) は、 $\mathrm{S}$ と $\mathrm{S’}$ の間隔 $2d$ が広がるので縞は細かくなり、2本の直線の開きは大きくなる。
答(ア) (f)(3点)
答(イ) (h)(3点)
答(ウ) (d)(4点)
問3 (1)
入射角を大きくしていくと、屈折角も大きくなる。屈折角が $90^\circ$ になる(屈折光が境界面にそって進む)ときの入射角が臨界角 $\theta$。屈折の法則 $n_1\sin\theta=n_2\sin90^\circ$ より $\sin\theta=\dfrac{n_2}{n_1}$(下の図)。
答 $\sin\theta=\dfrac{n_2}{n_1}$(5点)
($n_1>n_2$ のときだけ全反射が起こる)
問3 (2)
レーザー光は点Oの真上の高さ $h$ から臨界角 $\theta$ で境界面に入射するので、入射点までの水平距離は $h\tan\theta$。反射光も角 $\theta$ で進み、高さ $2h$ の P′ に届くまでに水平に $2h\tan\theta$ 進む(下の図)。
$$L’=h\tan\theta+2h\tan\theta=3h\tan\theta$$
(1) の $\sin\theta=\dfrac{n_2}{n_1}$ から $\cos\theta=\sqrt{1-\dfrac{n_2^{\,2}}{n_1^{\,2}}}=\dfrac{\sqrt{n_1^{\,2}-n_2^{\,2}}}{n_1}$ なので $\tan\theta=\dfrac{n_2}{\sqrt{n_1^{\,2}-n_2^{\,2}}}$。
答 $L’=\dfrac{3n_2h}{\sqrt{n_1^{\,2}-n_2^{\,2}}}$(5点)
別解
問1 (3) (因数分解で導く) $L_2^2-L_1^2=(x+d)^2-(x-d)^2=4dx$ を、和と差の積に分ける。
$$(L_2-L_1)(L_2+L_1)=4dx$$
$L_2+L_1\fallingdotseq2L$($d$、 $x$ が $L$ に比べて十分に小さいので)を入れると $L_2-L_1\fallingdotseq\dfrac{2dx}{L}$。本解と同じ結果が、近似の公式を使わずに求まる。本問は近似の公式が与えられているので、本解は誘導どおりにした。
問1 (3) (ヤングの実験の経路差の式を置きかえる) ヤングの実験の経路差は、2つの光源の間隔を $d$ として $\dfrac{dx}{L}$。ここでは $\mathrm{S}$ と $\mathrm{S’}$ の間隔が $2d$ なので、 $d\to2d$ と置きかえて $\dfrac{2dx}{L}$。導出を求められていないときは、この置きかえで時間を節約できる。
問3 (2) (像を使って一直線にする) 境界面に関して P′ と対称な点 $\mathrm{P”}$(境界面の下 $2h$)をとると、反射光は $\mathrm{P”}$ に向かってまっすぐ進んだ光と同じ道のりになる。レーザー光の位置(高さ $h$)と $\mathrm{P”}$ を結ぶ直線が境界面を横切る所が入射点で、高さの比 $h:2h$ から、入射点までの水平距離は $L’$ の $\dfrac13$。これが $h\tan\theta$ に等しいので $L’=3h\tan\theta$。本解と同じ式になる(問1 の「像に置きかえる」考え方と同じ)。
出題意図
問1 鏡で反射した光を、鏡に映ったスリットの像 $\mathrm{S’}$ から来た光に置きかえ、反射で位相が $\pi$ ずれることまで含めて、ヤングの実験と同じ流れ(経路差 → 条件 → 位置)で干渉縞を求められるか
問2 ア〜ウ 縞の間隔を決める量と、縞が出る範囲を決める量を分けて考えられるか
問3 臨界角を屈折の法則から求め、反射光が届く位置を図形で求められるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 40点 | 35点 |
| 目標時間 | 15分 | 20分 |
2026年の合否を分けた大問。
ヤングの実験のオーソドックスな問題なので、これが解けないと厳しい。
力学が重い年なので、医学科は15分、ほかの学部も20分で満点を取りたい。
ロイド鏡も像 $\mathrm{S’}$ を作れば間隔 $2d$ のヤングの実験になり、違いは、反射で位相が $\pi$ ずれて明線と暗線の条件が入れかわる点だけ。
差がつく所・失点しやすい所
- 問1 (1)(2):反射した光が届く範囲は、像 $\mathrm{S’}$ から鏡の両端を通る直線で決まる、という発想に行き着けるか。ここを越えないと、(4) で範囲の中から明線を選べない。
- 問1 (4):反射で位相が $\pi$ ずれるので、鏡の面が暗線になり、明線は経路差が半波長の奇数倍になる、という発想に行き着けるか。位相のずれを忘れると $1.0\times10^{-3}\ \mathrm m$ の倍数になり、範囲を考えないと $5.0\times10^{-4}\ \mathrm m$ と答えてしまう。
- 問2 ウ:スリットを上へ動かすと、間隔は減るのに範囲は広がる、と逆向きの変化を2つとも式で確かめられるか。
コラム 海面に映した電波星 ― ロイドの鏡の電波版
問1 の「鏡で反射した光と直接届いた光の干渉」は、光を鏡に当てる実験(ロイドの鏡。1830年代にアイルランドの物理学者ロイドが、光が波であることの証拠として行った)として知られる。実験では、鏡に近い縞が明るくならず暗くなる。これは、鏡での反射で位相が $\pi$ ずれることの確かめになる。
この仕組みは、電波で星を調べる天文学にも使われた。1940年代後半、オーストラリアのシドニー近郊の海岸の崖の上にアンテナを置き、電波星から直接届く電波と、海面で反射して届く電波の干渉を観測した。海面を鏡として使うので「海面干渉計」と呼ばれる。


- 確かめの計算:星の電波が仰角 $\alpha$ で来るとき、海面に対して対称な位置にアンテナの像を考えると、反射した電波は像に向かってまっすぐ来た電波と同じ道のりになる。海面からアンテナまでの高さを $h$ とすると、経路差は $2h\sin\alpha$。問1 (3) の $\dfrac{2dx}{L}$ と同じ形で、 $d\to h$、 $\dfrac xL\to\sin\alpha$ と置きかえた形になっている。
- 星が昇ると強弱をくり返す:星が昇るにつれて $\alpha$ が大きくなり、経路差が変わるので、受信する電波の強さが強まったり弱まったりをくり返す。条件を立てるときは、問1 (4) と同じく、反射での位相のずれを確かめる。
- 縞から分かること:この強弱の様子から、電波星の方向や広がり(大きさ)を調べた。白鳥座の強い電波源(白鳥座A)の観測でも使われた。
九大の物理は、このように身近でない装置でも、「像に置きかえて、経路差から条件を立てる」という入試の基本の流れに落とせば解ける。光でも電波でも、波の干渉は同じ手順で考える。
2026年九州大学・物理の
講評とまとめ
3問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | やや難 | 25点 | 20点 |
| 第2問 | 標準 | 30点 | 25点 |
| 第3問 | 標準 | 40点 | 35点 |
| 全体 | やや難 | 100点 | 80点 |
大問ごとの目標得点は、それぞれの大問を単体で解いたときの理想の点です。そのため、総合の目標点(医学部医学科で100点、その他の学部で80点)にはなりません。
全体がやや難の年でした。
第1問の力学が重く、問3 以降は設定が読み取れず、何をしているか分からなかった受験生が多かったと思われます。
第2問は問題自体が難しめで、ファラデーの法則とグラフを結びつける癖がついているかと、後半の重い計算でかなり差がつきました。
この年の合否を分けたのは第3問です。
ヤングの実験のオーソドックスな問題なので、これが解けないと厳しくなります。
力学が重い年だからこそ、第3問は短い時間で満点を取りたいところです。
九大の理科はタイムマネジメントの要素が強く、1問は4〜5点で、後半ほど配点が高いわけではありません。
大問の後半の難問に5分も10分もかけず、1〜2分で「解けない」と判断して次へ進み、総合点を高める意識が大事です。
力学だけを得点源にする作戦は、この年のように力学で点が取りにくいと崩れます。
解く流れ
第3問 → 第2問 → 第1問。
2026年九州大学・物理に
関するよくある質問
2026年の九州大学・物理について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2026年の九州大学・物理は難しかった?
-
やや難の年でした。
第1問はやや難、第2問は標準(やや難寄り)、第3問は標準です。
第1問の力学が重く、第2問の電磁気も差がつく内容で、受験生にとって解きにくい年でした。 - 2026年の九州大学・物理は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で100点、その他の学部で80点です(125点満点)。
- 2026年の九州大学・物理はどこで差がつく?
-
力学で点が取りにくい年に、電磁気と波動でどれだけ取れたかで差がつきました。特に差がついたのは次の3つです。
- 第1問 問3 (1):溝の端のおもりが半円の中心にいると設定を読み取り、重心が中心より上か下かで安定・不安定が決まると気づけたか。
- 第2問 問1 (1)〜(3):コイルが動かないので $vBl$ は使えず、$B$–$t$ グラフの傾きに面積をかけたものが磁束の変化の割合になると読めたか。
- 第3問 問1 (4):反射で位相が $\pi$ ずれるので鏡の面が暗線になり、明線は経路差が半波長の奇数倍になると気づけたか。
- 2026年の九州大学・物理は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:力学
- 第2問:電磁気
- 第3問:波動


