【解説・配点付き】2024年九州大学物理の解答・解説
2024年の九州大学・物理の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
2024年九州大学物理
第1問 解答・解説
この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は力学の問題です。
テーマは「摩擦のある斜面をもつレール上の運動( $W=\Delta E$)、上に凸の円弧で浮き上がらずに点Fまで届く条件、浮きに載った小物体の単振動(浮力)」。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問3に答えよ。
図1のように鉛直面内でなめらかにつながった固定されたレールの上を、質量 $m$ の小物体が鉛直下向きの重力の作用を受けて転がることなくすべる運動を考える。小物体の大きさおよび空気抵抗は無視できるものとし、重力加速度の大きさは $g$ とする。以下の問いに答えよ。
問1. まず、水平の基準面からの高さが $h$ の点Aに小物体を置き、静かに離した。小物体はレール上の直線AB、曲線BCDを通過した後、直線DE上を進む。曲線BCDは点Pを中心とする半径 $r$ (ただし、 $2r<h$ )の円弧であり、点Eは基準面からの高さが $2r$ の点である。直線DEには摩擦があり、動摩擦係数は $\mu’$ とする。
(1) 小物体が基準面上の点Cを通過するときの速さ $v_{\mathrm{C}}$、および垂直抗力の大きさ $N_{\mathrm{C}}$ を $m$、 $g$、 $h$、 $r$ の中から必要なものを用いて表せ。
(2) 小物体が直線DE間を移動する間に受ける動摩擦力による仕事の大きさ $W$ を $m$、 $g$、 $h$、 $r$、 $\mu’$ の中から必要なものを用いて表せ。
(3) 小物体は点Eで速さが0(ゼロ)となった。このとき、小物体と直線DEの動摩擦係数 $\mu’$ を $h$ および $r$ を用いて表せ。
問2. 次に、図2のようにレール上の直線DEの摩擦を取り除いた上で、点Eの先に点Qを中心とする半径 $\sqrt{2}\,r$ の円弧である曲線EFを接続した。また、点Fから飛び出した小物体を図のように“浮き”で受け止めることとした。点Rは基準面上の点で、点F、点Qおよび点Rは一直線上にある。小物体を点A′(基準面からの高さ $H$ )に置き直し、静かに離した。レールは点A′から点Fまでなめらかにつながれている。以下の文章中の空欄 $\boxed{\text{①}}$ 〜 $\boxed{\text{④}}$ に当てはまる式または数値を求めよ。
曲線EF上の点Xについて、∠FQXの大きさを $\theta\ (0^\circ\leqq\theta\leqq45^\circ)$ とする。点Xにおいて小物体がレールから受ける垂直抗力の大きさ $N_{\mathrm{X}}$ は $m$、 $g$、 $H$、 $r$ および $\theta$ を用いると、 $N_{\mathrm{X}}=\boxed{\text{①}}$ と表される。 $N_{\mathrm{X}}$ が最小値をとるのは、 $\cos\theta=\boxed{\text{②}}$ のときである。したがって、この小物体が点Fまでレールから浮き上がらずに到達し、点Fで水平方向に飛び出すために $\dfrac{H}{r}$ のとるべき範囲は、 $\boxed{\text{③}}<\dfrac{H}{r}\leqq\boxed{\text{④}}$ である。
問3. 図3は、点Fから落下してきた小物体を浮きで受け止めた後の動きを拡大して表した模式図である。小物体は、浮きの上面に完全非弾性衝突(反発係数 $e=0$ )した後、両者は合体し、浮きの上面が位置Oを中心に鉛直方向に上下運動を繰り返している。浮きは、上面と底面の面積 $S$、高さ $d$、質量 $M$ を持つ直方体で、非吸水性の材料でできており、液体の密度は $\rho$ である。以下では、次のような条件を仮定する。
・液体は浮きに比べて体積が十分に大きく、無限に広がっており、液面位置は変わらない。
・小物体と浮きを合わせた物体系に作用する力は、液体による浮力と重力のみである。
・小物体と浮きの重心は鉛直線上に並んでおり、浮力と重力の作用線にずれはなく、浮きの傾きはない。また、水平方向の運動もない。
(1) 位置Oは、図3(a)に示すように、小物体を浮きに静かに載せてつり合い状態となったときの浮きの上面の位置と等しいと考えることができる。位置Oから液面までの距離 $d_0$ を $m$、 $M$、 $d$、 $S$、 $\rho$ の中から必要なものを用いて表せ。
(2) 上下運動により浮きの上面が位置Oを通過するときの速さは、 $V$ であった。浮きの上面の位置が図3(b)および(c)に示すように位置Oから $y$ だけ変化したときの加速度 $a$ を $m$、 $M$、 $S$、 $\rho$、 $g$、 $y$ の中から必要なものを用いて表せ。ただし、 $y$ および $a$ は鉛直下向きを正とし、浮きの上面は液体中に没することはないものとする。
(3) 上下運動の周期 $T$ と、振幅 $Y$ を求めよ。解答は、 $d$、 $d_0$、 $V$、 $g$ の中から必要なものを用いて表せ。
解答の方針
【問1の方針】
AからDまではなめらかなので、小物体にはたらく力は重力(保存力)と垂直抗力(非保存力)だけ。垂直抗力は進む向きと垂直で仕事をしないので、AからCまでは力学的エネルギー保存。Cは円弧BCDの最下点なので、中心Pの向きの運動方程式を立てれば垂直抗力が求まる。
DEには摩擦があり、動摩擦力が仕事をする。斜面に摩擦があるときは加速度を使わず $W=\Delta E$( $W=E_後-E_前$)で、比べる2点は最初(A)と最後(E)。
唯一の手間はDEの長さ。PDはDEに垂直なので、Pと同じ高さのDE上の点をGとすると、三角形PDGは直角二等辺三角形で $\mathrm{DG}=r$。GからEまでは高さが $r$ 上がる45° の斜面なので $\mathrm{GE}=\sqrt2\,r$。よって $\mathrm{DE}=(1+\sqrt2)r$(下の図)。


- AからCまでの力学的エネルギー保存(基準面を高さの基準)で $v_{\mathrm{C}}$ を求める。
- Cで中心Pの向きを正として円運動の運動方程式 $m\dfrac{v_{\mathrm{C}}^{\,2}}{r}=N_{\mathrm{C}}-mg$ を立て、 $N_{\mathrm{C}}$ を求める。
- 補助線(Pと同じ高さの点G)で $\mathrm{DE}=(1+\sqrt2)r$ を求め、斜面に垂直な方向のつり合いから垂直抗力 $\dfrac{mg}{\sqrt2}$ を求める。動摩擦力 $\mu’\dfrac{mg}{\sqrt2}$ に距離DEをかけて $W$ を求める。
- AとEで $W=\Delta E$( $-W=E_後-E_前$)を立て、(2) の $W$ と等しいとおいて $\mu’$ を求める。
【問2の方針】
鉛直面内の円運動(非等速円運動)なので、力学的エネルギー保存と中心方向の運動方程式の2本だけ。一般の角 $\theta$ の点Xで立式する。
円弧EFは上に凸なので、垂直抗力 $N_{\mathrm{X}}$ は中心Qと逆向き(外向き)。中心向きの力は重力の成分 $mg\cos\theta$ から $N_{\mathrm{X}}$ を引いたもの。Xの高さは、Qの高さ $r$ に $\sqrt2\,r\cos\theta$ を足したもの(下の図)。


$N_{\mathrm{X}}$ の式で $\theta$ によって変わるのは $3mg\cos\theta$ の部分だけになるので、 $\cos\theta$ が最小の点で $N_{\mathrm{X}}$ が最小。 $0^\circ\leqq\theta\leqq45^\circ$ では $\theta=45^\circ$(点E)が最小になる。低い所ほど速く、重力の中心向きの成分も小さいので、いちばん浮きやすいのは円弧の入口E。
「浮き上がらずにFまで届き、水平に飛び出す」には条件が2つある。入口Eで $N_{\mathrm{X}}\geqq0$(浮かない)と、いちばん高いFで速さが0より大きい(届いて飛び出す)。この2つで $H$ を上と下から挟む。
- 基準面を高さの基準として、A′とXの力学的エネルギー保存から $mv^2$ を $\theta$ で表す。
- Qの向きを正として中心方向の運動方程式 $m\dfrac{v^2}{\sqrt2\,r}=mg\cos\theta-N_{\mathrm{X}}$ を立て、 $mv^2$ を代入して $N_{\mathrm{X}}$ を求める(①。 $\theta=0$ で検算)。
- ①で $\theta$ が入っているのは $3\cos\theta$ だけなので、 $\cos\theta$ が最小の $\theta=45^\circ$ で $N_{\mathrm{X}}$ が最小(②)。
- Fでの速さの2乗 $2g\{H-(1+\sqrt2)r\}>0$ から下限(③)、Eで $N_{\mathrm{X}}\geqq0$ から上限(④)を求める。
【問3の方針】
浮きと小物体を合わせた物体にはたらく力は、重力 $(m+M)g$ と浮力だけ。浮力は押しのけた液体の重さで、(液体の密度 $\rho$)×(沈んでいる部分の体積)× $g$。
位置Oは「つり合いの位置」なので、Oが単振動の中心。上面がOから $y$ だけ下がると、沈んでいる部分が $y$ だけ増え、浮力も $\rho Sgy$ だけ増える。重力とつり合っていた分は打ち消し合うので、残るのは増えた浮力 $-\rho Sgy$ だけで、単振動定数は $\rho Sg$(浮力の単振動の定数として覚えておく)。


周期と振幅は、質量 $m+M$ と単振動定数 $\rho Sg$ で決まる。振幅は、Oで速さ $V$(中心で速さ最大)と端で速さ0の単振動のエネルギー保存で求める。答えは $d$、 $d_0$、 $V$、 $g$ で表す指定なので、(1) のつり合いの式を $\dfrac{m+M}{\rho S}=d-d_0$ と読みかえて使う。
- Oでのつり合い $(m+M)g=\rho S(d-d_0)g$ から $d_0$ を求める。
- 鉛直下向きを正として、上面が $y$ の位置での運動方程式 $(m+M)a=(m+M)g-\rho S(d-d_0+y)g$ を立て、(1) で一定の力を打ち消して $a$ を求める。
- 質量 $m+M$ と単振動定数 $\rho Sg$ から周期 $T$ を求め、(1) を使って $d-d_0$ で表す。
- 中心Oと端で単振動のエネルギー保存を立てて振幅 $Y$ を求め、同じく $d-d_0$ で表す。
解答




解答をテキストで読む
問1 (1)
A→B→Cはなめらかで、垂直抗力は進む向きと垂直なので仕事をしない。力学的エネルギーが保存する。基準面を高さの基準にして
$$0+mgh=\frac12mv_{\mathrm{C}}^{\,2}+0\qquad\therefore\ v_{\mathrm{C}}=\sqrt{2gh}$$
Cで小物体が受ける力は、重力 $mg$(下向き)と垂直抗力 $N_{\mathrm{C}}$(上向き=中心Pの向き)(上の図の左)。中心Pの向きを正として、円運動の運動方程式は
$$m\frac{v_{\mathrm{C}}^{\,2}}{r}=N_{\mathrm{C}}-mg\qquad\therefore\ N_{\mathrm{C}}=mg+\frac{m\cdot2gh}{r}=mg\left(1+\frac{2h}{r}\right)$$
答 $v_{\mathrm{C}}=\sqrt{2gh}$、 $N_{\mathrm{C}}=mg\left(1+\dfrac{2h}{r}\right)$(6点)
問1 (2)
PDはDEに垂直。Pと同じ高さのDE上の点をGとすると、DEは水平と45° をなすので、三角形PDGは $\mathrm{PD}=\mathrm{DG}=r$ の直角二等辺三角形。GからEまでは高さが $2r-r=r$ 上がるので $\mathrm{GE}=\sqrt2\,r$。よって
$$\mathrm{DE}=r+\sqrt2\,r=(1+\sqrt2)r$$
斜面DEに垂直な方向は力がつり合うので、垂直抗力の大きさは $N=mg\cos45^\circ=\dfrac{mg}{\sqrt2}$。動摩擦力の大きさは $\mu’N=\dfrac{\mu’mg}{\sqrt2}$ で、DEの間ずっと一定。その仕事の大きさは
$$W=\frac{\mu’mg}{\sqrt2}\times(1+\sqrt2)r=\frac{2+\sqrt2}{2}\mu’mgr$$
答 $W=\dfrac{2+\sqrt2}{2}\mu’mgr$( $\mu’mgr\left(1+\dfrac{1}{\sqrt2}\right)$ と同じ)(5点)
問1 (3)
DEでは動摩擦力が仕事をするので、力学的エネルギーは保存しない。最初(A)と最後(E)で $W=\Delta E$( $W=E_後-E_前$)を立てる。動摩擦力は運動と逆向きなので、その仕事は $-W$。Eで速さ0、Eの高さは $2r$ なので
$$-W=(0+mg\cdot2r)-(0+mgh)\qquad\therefore\ W=mg(h-2r)$$
これが (2) の $W$ に等しいので
$$\frac{2+\sqrt2}{2}\mu’mgr=mg(h-2r)\qquad\therefore\ \mu’=\frac{2}{2+\sqrt2}\left(\frac hr-2\right)=(2-\sqrt2)\left(\frac hr-2\right)$$
( $\dfrac{2}{2+\sqrt2}=\dfrac{2(2-\sqrt2)}{(2+\sqrt2)(2-\sqrt2)}=2-\sqrt2$。 $2r<h$ なので $\mu’>0$ になっている)
答 $\mu’=(2-\sqrt2)\left(\dfrac hr-2\right)$( $\dfrac{\sqrt2}{\sqrt2+1}\left(\dfrac hr-2\right)$ と同じ)(4点)
問2
空欄①〜④
Qは基準面から高さ $r$ なので、点Xの高さは $r+\sqrt2\,r\cos\theta$。レールはA′からFまでなめらかなので、力学的エネルギーが保存する。Xでの速さを $v$ として
$$mgH=\frac12mv^2+mg(r+\sqrt2\,r\cos\theta)\qquad\therefore\ mv^2=2mg(H-r-\sqrt2\,r\cos\theta)$$
円弧EFは上に凸なので、垂直抗力 $N_{\mathrm{X}}$ はQと逆向き。中心Qの向きを正として、円運動の運動方程式は
$$m\frac{v^2}{\sqrt2\,r}=mg\cos\theta-N_{\mathrm{X}}$$
$mv^2$ を代入して
$$N_{\mathrm{X}}=mg\cos\theta-\frac{2mg(H-r-\sqrt2\,r\cos\theta)}{\sqrt2\,r}=mg\cos\theta-\sqrt2\,mg\left(\frac Hr-1\right)+2mg\cos\theta$$
答(①) $mg\left\{3\cos\theta-\sqrt2\left(\dfrac Hr-1\right)\right\}$(6点)
(検算: $\theta=0$(点F)では $N_{\mathrm{X}}=mg\left\{3-\sqrt2\left(\dfrac Hr-1\right)\right\}$。Fでの式 $mg-m\dfrac{v_{\mathrm{F}}^{\,2}}{\sqrt2\,r}$ に $v_{\mathrm{F}}^{\,2}=2g\{H-(1+\sqrt2)r\}$ を入れた値と一致する)
①で $\theta$ が入っているのは $3\cos\theta$ だけで、ほかは $\theta$ によらない。 $0^\circ\leqq\theta\leqq45^\circ$ で $\cos\theta$ は $\dfrac{1}{\sqrt2}\leqq\cos\theta\leqq1$ なので、 $N_{\mathrm{X}}$ が最小になるのは $\cos\theta$ が最小の $\theta=45^\circ$(点E)。
答(②) $\dfrac{1}{\sqrt2}$(3点)
点Fまで届き、Fで水平に飛び出すには、Fでの速さが0より大きければよい。Fの高さは $r+\sqrt2\,r=(1+\sqrt2)r$ なので、力学的エネルギー保存より
$$v_{\mathrm{F}}^{\,2}=2g\{H-(1+\sqrt2)r\}>0\qquad\therefore\ \frac Hr>1+\sqrt2$$
答(③) $1+\sqrt2$(4点)
レールから浮き上がらない条件は、円弧EF上のどこでも $N_{\mathrm{X}}\geqq0$。②より最小になるのは点Eなので、Eで $N_{\mathrm{X}}\geqq0$ ならよい。
$$mg\left\{\frac{3}{\sqrt2}-\sqrt2\left(\frac Hr-1\right)\right\}\geqq0\qquad\therefore\ \frac Hr-1\leqq\frac32\qquad\therefore\ \frac Hr\leqq\frac52$$
(直線DE上では垂直抗力は $\dfrac{mg}{\sqrt2}>0$ で一定、下に凸の円弧BCDでは垂直抗力が中心向きで浮くことはないので、調べるのは円弧EFだけ)
答(④) $\dfrac52$(4点)
問3 (1)
小物体と浮きを合わせた物体(質量 $m+M$)にはたらく力は、重力 $(m+M)g$ と浮力だけ。浮きの上面がOにあるとき、液面より上に出ている高さが $d_0$ なので、沈んでいる部分の高さは $d-d_0$。浮力は押しのけた液体の重さ $\rho S(d-d_0)g$。つり合いより
$$(m+M)g=\rho S(d-d_0)g\qquad\therefore\ d_0=d-\frac{m+M}{\rho S}$$
答 $d_0=d-\dfrac{m+M}{\rho S}$(4点)
問3 (2)
鉛直下向きを正とする。上面が $y$ の位置では、沈んでいる部分の高さが $d-d_0+y$ なので、浮力は $\rho S(d-d_0+y)g$(上向き)。運動方程式は
$$(m+M)a=(m+M)g-\rho S(d-d_0+y)g$$
(1) のつり合いの式 $(m+M)g=\rho S(d-d_0)g$ で一定の力が打ち消し合い
$$(m+M)a=-\rho Sg\,y\qquad\therefore\ a=-\frac{\rho Sg}{m+M}\,y$$
(質量 $m+M$、単振動定数 $\rho Sg$、Oを中心とする単振動)
答 $a=-\dfrac{\rho Sg}{m+M}\,y$(4点)
問3 (3)
(2) より、質量 $m+M$、単振動定数 $\rho Sg$ の単振動なので、周期は
$$T=2\pi\sqrt{\frac{m+M}{\rho Sg}}$$
(1) より $\dfrac{m+M}{\rho S}=d-d_0$ なので
$$T=2\pi\sqrt{\frac{d-d_0}{g}}$$
振幅は、単振動のエネルギー保存( $y$ は中心Oからの変位)で求める。中心Oで速さ $V$、端( $y=\pm Y$)で速さ0なので
$$\frac12(m+M)V^2+0=0+\frac12\rho Sg\,Y^2\qquad\therefore\ Y=V\sqrt{\frac{m+M}{\rho Sg}}=V\sqrt{\frac{d-d_0}{g}}$$
答 $T=2\pi\sqrt{\dfrac{d-d_0}{g}}$、 $Y=V\sqrt{\dfrac{d-d_0}{g}}$(5点)
別解
問2
①の中心方向の式は、小物体に乗って遠心力を入れたつり合いでも立てられる。Xで外向きに遠心力 $m\dfrac{v^2}{\sqrt2\,r}$ を書くと、半径方向のつり合いは
$$N_{\mathrm{X}}+m\frac{v^2}{\sqrt2\,r}=mg\cos\theta$$
で、本解の運動方程式と同じ式になる。
問3 (3)
振幅は $v_{\max}=A\omega$ でも求まる(中心での速さだけを聞かれているとき)。角振動数は $\omega=\sqrt{\dfrac{\rho Sg}{m+M}}=\sqrt{\dfrac{g}{d-d_0}}$ で、中心での速さ $V$ が $Y\omega$ に等しいので $Y=\dfrac V\omega=V\sqrt{\dfrac{d-d_0}{g}}$。
出題意図
問1 (1) 最下点の円運動を、力学的エネルギー保存と中心方向の運動方程式の2本で解けるか
問1 (2)(3) 摩擦のある斜面の運動を、仕事とエネルギーの関係( $W=\Delta E$)で処理できるか
問2 上に凸の円弧での垂直抗力を角 $\theta$ の式で表し、「浮き上がらない」「点Fまで届く」の2つの条件で $H$ の範囲を挟むことができるか
問3 浮きと小物体の上下運動を、つり合いの位置を中心とする単振動と捉えることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 45点 | 40点 |
| 目標時間 | 20分 | 25分 |
力学的エネルギー保存、$W=\Delta E$、円運動の基本の式、浮力の単振動。
どれも良問の風が完璧になっていれば解ける、基本的な知識だけで完答できる大問。
力学は演習量を確保しやすい単元なので、このレベルの問題が出たら全受験生が満点を取ってくる。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2 ①:上に凸の円弧では垂直抗力が中心と逆向きになる、という円運動の式を立てられるか。ここを越えないと②〜④が続かない。
- 問2 ③:「浮かない」の上限だけでなく、「Fまで届いて飛び出す」という下限の条件にも気づけるか。
- 問3 (3):(1) のつり合いを $\dfrac{m+M}{\rho S}=d-d_0$ と読みかえ、答えを指定の文字で表せるか。
2024年九州大学物理
第2問 解答・解説
第2問は電磁気の問題です。
テーマは「ソレノイドの自己インダクタンスを導き、スイッチを切りかえた直後・十分後のコイルを含む回路を読む。透磁率の大きい棒を入れたときのエネルギーの変化と、相互誘導の起電力」。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問3に答えよ。
問1. 真空中に、図1のような断面積 $S$ で長さ $d$ の $N$ 回巻きのコイルAがある。長さ $d$ はコイルAの直径にくらべて十分長く、導線は密に巻いてあり、コイルA内の磁場は一様とする。コイルAの抵抗は無視できるとして、以下の問いに答えよ。なお、真空中の透磁率は $\mu_0$ とする。
(1) 時間 $\Delta t$ の間に、コイルAに流れる電流 $I$ を $\Delta I$ だけ増加させたとき、コイルAの内部における磁束の変化 $\Delta\Phi$ を $S$、 $d$、 $N$、 $\Delta t$、 $I$、 $\Delta I$、 $\mu_0$ の中から必要なものを用いて求めよ。
(2) 時間 $\Delta t$ の間に、コイルAに流れる電流 $I$ を $\Delta I$ だけ増加させたとき、コイルAの両端に発生する誘導起電力 $V_{\mathrm{L}}$ (図1中の点aに対する点bの電位)を $S$、 $d$、 $N$、 $\Delta t$、 $I$、 $\Delta I$、 $\mu_0$ の中から必要なものを用いて求めよ。
問2. 真空中に、図2のように、抵抗が無視できるコイルA、抵抗値 $R$ の3つの抵抗A、B、C、内部抵抗が無視できる起電力 $E$ の電池、およびスイッチで構成される回路がある。この回路について、以下の問いに答えよ。なお、真空中の透磁率は $\mu_0$ とし、真空中でのコイルAの自己インダクタンスを $L$ とする。
(1) 時刻 $t_0$ でスイッチを接点①から接点②に切り替えた。スイッチを切り替えた直後に、コイルAに流れる電流 $I$ の大きさを求めよ。また、時刻 $t_0$ におけるコイルAの誘導起電力 $V_0$ (図2の点aに対する点bの電位)を $R$、 $E$、 $L$、 $\mu_0$ の中から必要なものを用いて求めよ。
(2) 十分に時間が経過後の時刻 $t_1$ においてコイルAに流れる電流 $I$ の大きさ、およびコイルAに蓄えられているエネルギー $U_0$ をそれぞれ $R$、 $E$、 $L$、 $\mu_0$ の中から必要なものを用いて求めよ。
(3) 時刻 $t_1$ より後の時刻 $t_2$ でスイッチを接点①に戻した。時刻 $t_2$ におけるコイルAの誘導起電力 $V_2$ (図2の点aに対する点bの電位)を $R$、 $E$、 $L$、 $\mu_0$ の中から必要なものを用いて求めよ。また、コイルAの誘導起電力 $V_{\mathrm{L}}$ の時間変化を示すグラフとして適切なものを、図3の(a)〜(d)の中から選択して記号で答えよ。
(4) スイッチを再び接点②に切り替えて十分に時間が経過した後、図4のようにコイルAの内部に透磁率 $\mu_1$ の円柱状の金属の棒をゆっくりと挿入した。ここで、棒の透磁率 $\mu_1$ は真空中の透磁率 $\mu_0$ より大きく、棒の断面積はコイルAの断面積 $S$ と等しいとする。棒を挿入すると、コイルAの自己インダクタンスが変化する。変化した後の自己インダクタンス $L_1$ を $L$、 $\mu_0$、 $\mu_1$ の中から必要なものを用いて求めよ。
また、棒を挿入すると、コイルAに蓄えられているエネルギーが変化する。棒を挿入してから十分に時間が経過した後のエネルギーを $U_1$ として、問2の(2)の $U_0$ からの変化量 $\Delta U=U_1-U_0$ を、 $R$、 $E$、 $L$、 $\mu_0$、 $\mu_1$ の中から必要なものを用いて求めよ。また、変化する理由を100字程度で答えよ。(解答欄:120マス。英数字、句読点も1字として数える。)
問3. 図4の回路のスイッチを接点②から接点①に切り替えた後、図5のようにコイルAのとなりにコイルBを巻いた。コイルAとBの相互インダクタンスを $M$ とし、コイルBの抵抗は無視できるとして、以下の問いに答えよ。
(1) スイッチを接点①から接点②に切り替えた。その直後に、コイルBに発生する誘導起電力(図5の点cに対する点dの電位)を $E$、 $L_1$、 $M$、 $\mu_0$、 $\mu_1$ の中から必要なものを用いて求めよ。
(2) スイッチを接点②に切り替えてから十分に時間が経過後、スイッチを接点①に切り替えた。その直後に、コイルBに発生する誘導起電力を $E$、 $L_1$、 $M$、 $\mu_0$、 $\mu_1$ の中から必要なものを用いて求めよ。
(3) 再度、スイッチを接点①から接点②に切り替えてから十分に時間が経過後、スイッチを接点③に切り替えると、コイルAに蓄えられていたエネルギーは3つの抵抗A、B、Cによりジュール熱として失われる。スイッチを接点③に切り替えてからコイルAに流れる電流が0となるまでに、抵抗A、B、Cで発生するジュール熱の合計を $R$、 $E$、 $L_1$、 $\mu_0$、 $\mu_1$ の中から必要なものを用いて求めよ。
解答の方針
【問1の方針】
ソレノイドの磁束は、公式の流れ『 $H=nI$ 』→『 $B=\mu_0H$ 』→『 $\varPhi=BS$ 』を順にたどって求める。 単位長さあたりの巻数は $n=\dfrac Nd$。磁束の式で時間で変わるのは $I$ だけなので、 $I$ だけを $\Delta I$ にする。起電力はファラデーの電磁誘導の法則で、1巻きあたりの起電力に巻数 $N$ をかける(巻数の補正)。


符号は「点aに対する点bの電位」。図1の矢印より電流は a からコイルに入る。電流が増えると、その変化を妨げる向きに起電力が生じるので、コイルは電流の向き(a→b)に電位が下がる。つまり b の方が低く、 $V_{\mathrm L}$ は負。(2) で求めた式を『 $V=-L\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ 』と比べると $L=\dfrac{\mu_0N^2S}{d}$ が読み取れ、これが問2 (4) で使われる。
- $n=\dfrac Nd$ として、 $H=nI$、 $B=\mu_0H$、 $\varPhi=BS$ から1巻きを貫く磁束を $I$ で表す。
- 時間で変わるのは $I$ だけなので、 $I$ を $\Delta I$ にして $\Delta\varPhi$ を求める((1))。
- コイル全体の起電力の大きさ $N\left|\dfrac{\Delta\varPhi}{\Delta t}\right|$ を求め、電流が増えるときは b が a より低いことから符号をつけて $V_{\mathrm L}$ を求める((2))。
- 『 $V=-L\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ 』と比べて $L=\dfrac{\mu_0N^2S}{d}$ を読み取っておく。
【問2の方針】
回路を書き直すと、電池から抵抗Aを通った電流が、抵抗A・B・Cがつながる点(点Pとする)で、抵抗Cの枝と、抵抗BとコイルAの枝に分かれ、bに戻る(下の図)。接点①では電池と抵抗Aの枝が切れ、接点③では電池の代わりに導線がつながる。


コイルの読みかえは次の3つだけ。
- 切りかえた直後:コイルの電流は直前の値のまま(コイルは電流を急に変化させない)。②に切り替えた直後は電流0なので、コイルは切れた導線と同じ。
- 十分に時間がたった後:電流が一定で $\dfrac{\Delta I}{\Delta t}=0$ なので、コイルの電圧は0。ただの導線と同じ。
- ①に戻した直後:コイルは直前の電流 $\dfrac{E}{3R}$ をそのまま流し、残った輪(抵抗B→コイル→抵抗C)を回る。
状況ごとに回路を書き直して電流の道を決め、bを電位の基準0にして、電流の向きに $RI$ ずつ電位が下がることから a の電位を求める。
(4) は、問1 で読み取った $L=\dfrac{\mu_0N^2S}{d}$ の $\mu_0$ が $\mu_1$ に変わるだけ。十分に時間がたった後の電流は電池と抵抗だけで決まり $L$ によらないので、エネルギー $\dfrac12LI^2$ は $L$ に比例して増える。
- ②に切り替えた直後はコイルの電流が0なので、抵抗Bにも電流が流れず、a と点Pは同じ電位。抵抗AとCの直列から点Pの電位を求め、 $V_0$ を求める((1))。
- 十分に時間がたった後はコイルを導線とみる。抵抗BとCにかかる電圧が等しいので電流も等しく $I$ とおき、電池→抵抗A→抵抗Cの道でキルヒホッフの法則を立てて $I$ を求め、 $U_0=\dfrac12LI^2$ を求める((2))。
- ①に戻した直後は、コイルの電流 $\dfrac{E}{3R}$ が抵抗B・Cを通って回る。b から電流の向きにたどると $RI$ ずつ電位が下がることから a の電位を求め、 $V_2$ を求める。 $V_0$、 $V_2$ の符号と大きさからグラフを選ぶ((3))。
- $L$ の式の $\mu_0$ を $\mu_1$ にして $L_1$ を求める。十分に時間がたった後の電流は (2) と同じ $\dfrac{E}{3R}$ なので、 $\Delta U=\dfrac12(L_1-L)\left(\dfrac{E}{3R}\right)^2$ を求め、理由を書く((4))。
【問3の方針】
コイルBはコイルAと同じ棒に、同じ向きに巻いてある(図5。c・d の並びも a・b と同じ)。Aがつくる磁束がそのままBを通るので、Aの電流が変わると、Bにも起電力が生じる(相互誘導)。定義の式は
- コイルA:『 $V_{\mathrm L}=-L_1\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ 』。
- コイルB:『 $V_{\mathrm B}=-M\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ 』( $V_{\mathrm B}$ はcに対するdの電位)。
で、 $\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ が共通。


コイルBの端子は開いていて電流が流れないので、コイルAの回路には影響しない。スイッチを切り替えた直後のコイルAの起電力は問2 (1)(3) と同じ(直後の起電力は電流と抵抗で決まり、 $L$ によらない)。そこから $\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ を求め、Bの定義の式に入れればよい。(3) は電池が切り離され、コイルAにたまっていたエネルギーが全部ジュール熱になる。
- ②に切り替えた直後のコイルAの起電力は $-\dfrac E2$。『 $V_{\mathrm L}=-L_1\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ 』から $\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ を求め、『 $V_{\mathrm B}=-M\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ 』に入れる((1))。
- 十分に時間がたった後の電流は $\dfrac{E}{3R}$ で、①に切り替えた直後のコイルAの起電力は $\dfrac{2E}{3}$。(1) と同じようにして $V_{\mathrm B}$ を求める((2))。
- ③に切り替えると電池が切り離され、外から仕事をするものもないので、コイルAにたまっていた $\dfrac12L_1\left(\dfrac{E}{3R}\right)^2$ が全部ジュール熱になる((3))。
解答




解答をテキストで読む
問1 (1)
単位長さあたりの巻数は $n=\dfrac Nd$。『 $H=nI$ 』『 $B=\mu_0H$ 』より、コイルA内の磁束密度は
$$B=\mu_0\cdot\frac NdI=\frac{\mu_0NI}{d}$$
『 $\varPhi=BS$ 』より、コイルA内(1巻き)を貫く磁束は
$$\varPhi=\frac{\mu_0NS}{d}I$$
時間で変わるのは $I$ だけなので、 $I$ を $\Delta I$ にして
答 $\Delta\varPhi=\dfrac{\mu_0NS}{d}\Delta I$(3点)
問1 (2)
ファラデーの電磁誘導の法則より、1巻きあたりの起電力の大きさは $\left|\dfrac{\Delta\varPhi}{\Delta t}\right|$。コイル全体ではこの $N$ 倍(巻数の補正)で
$$N\left|\frac{\Delta\varPhi}{\Delta t}\right|=\frac{\mu_0N^2S}{d}\cdot\frac{\Delta I}{\Delta t}$$
向き:図1より電流 $I$ は a からコイルに入る。 $I$ が増えるとコイル内の磁束が増えるので、その増加を打ち消す向き(電流を妨げる向き)に起電力が生じ、コイルは電流の向き(a→b)に電位が下がる。点aに対する点bの電位は負なので
答 $V_{\mathrm L}=-\dfrac{\mu_0N^2S}{d}\cdot\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$(4点)
(これを『 $V=-L\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ 』と比べると、コイルAの自己インダクタンスは $L=\dfrac{\mu_0N^2S}{d}$)
問2 (1)
コイルは電流を急に変化させないので、切り替えた直後のコイルの電流は直前と同じ0。
答 $I=0$(2点)
コイルAにも抵抗Bにも電流が流れないので、電流は電池→抵抗A→点P→抵抗C→電池と流れる。抵抗AとCの直列なので、電流は $\dfrac{E}{2R}$。
bを電位の基準0にする(bと抵抗Cの下端・電池の負極は導線でつながっている)。点Pの電位は抵抗Cの電圧 $R\cdot\dfrac{E}{2R}=\dfrac E2$。抵抗Bには電流が流れないので、a も点Pと同じ $\dfrac E2$。
よって、点aに対する点bの電位は $0-\dfrac E2$ で
答 $V_0=-\dfrac E2$(3点)
問2 (2)
十分に時間がたつと電流が一定になり $\dfrac{\Delta I}{\Delta t}=0$ なので、コイルの電圧は0(ただの導線と同じ)。抵抗Bと抵抗Cは、どちらも点Pとbの間につながっているので電圧が等しく、抵抗も等しいので電流も等しい。この電流を $I$ とおくと、抵抗Aの電流は $2I$。電池→抵抗A→抵抗C→電池の道でキルヒホッフの法則より
$$E-R\cdot2I-RI=0\qquad\therefore\ I=\frac{E}{3R}$$
コイルAの電流は抵抗Bの電流と同じなので
答 $I=\dfrac{E}{3R}$(2点)
コイルAに蓄えられているエネルギーは
$$U_0=\frac12LI^2=\frac12L\left(\frac{E}{3R}\right)^2$$
答 $U_0=\dfrac{LE^2}{18R^2}$(3点)
問2 (3)
接点①に戻すと、電池と抵抗Aの枝が切れる。コイルは直前の電流 $\dfrac{E}{3R}$ をそのまま a→b の向きに流し、この電流は b→抵抗C(下から上へ)→点P→抵抗B→a と回る。
bを電位の基準0にする。抵抗Cでは電流が b 側から点P側へ流れるので、点Pは b より $R\cdot\dfrac{E}{3R}=\dfrac E3$ 低く、点Pの電位は $-\dfrac E3$。抵抗Bでは電流が点Pから a へ流れるので、a はさらに $\dfrac E3$ 低く、a の電位は $-\dfrac{2E}{3}$。
よって、点aに対する点bの電位は $0-\left(-\dfrac{2E}{3}\right)$ で
答 $V_2=\dfrac{2E}{3}$(3点)
グラフ: $t_0$ で $V_{\mathrm L}$ は $V_0=-\dfrac E2$(負)になり、電流が一定に近づくにつれて0に戻る。 $t_2$ で $V_2=\dfrac{2E}{3}$(正)になり、電流が減って0に近づくにつれて0に戻る。 $|V_2|>|V_0|$ なので、正の山の方が大きい。
((a) は $|V_0|>|V_2|$、(c)(d) は正負が逆)
答 (b)(2点)
問2 (4)
問1より $L=\dfrac{\mu_0N^2S}{d}$。透磁率 $\mu_1$ の棒を入れると、コイル内の磁束密度は $B=\mu_1H$ になるので、この式の $\mu_0$ が $\mu_1$ に変わり
$$L_1=\frac{\mu_1N^2S}{d}=\frac{\mu_1}{\mu_0}\cdot\frac{\mu_0N^2S}{d}$$
答 $L_1=\dfrac{\mu_1}{\mu_0}L$(2点)
十分に時間がたった後、コイルはただの導線と同じなので、電流は電池と抵抗だけで決まり、(2) と同じ $\dfrac{E}{3R}$ に戻る(自己インダクタンスによらない)。よって
$$\Delta U=\frac12L_1\left(\frac{E}{3R}\right)^2-\frac12L\left(\frac{E}{3R}\right)^2=\left(\frac{\mu_1}{\mu_0}-1\right)\frac{LE^2}{18R^2}$$
答 $\Delta U=\dfrac{(\mu_1-\mu_0)LE^2}{18\mu_0R^2}$(3点)
( $\mu_1>\mu_0$ なので $\Delta U>0$。エネルギーは増える)
理由は「 $L$ が大きくなる」「電流はもとの値に戻る」「エネルギーは $\dfrac12LI^2$」の3点を入れる。
答(理由の解答例) 透磁率の大きい棒を入れると、同じ電流でもコイル内の磁束が増え、自己インダクタンスが大きくなる。十分に時間がたつと電流は抵抗と電池だけで決まるもとの値 $\dfrac{E}{3R}$ に戻るので、 $\dfrac12LI^2$ で表されるエネルギーは増える。(約100字)(4点)
(棒を入れている途中は、自己インダクタンスが増える分だけ電流を妨げる起電力が生じ、電流はいったん減る。十分に時間がたつと、もとの $\dfrac{E}{3R}$ に戻る)
問3 (1)
コイルBの端子は開いていて電流が流れないので、コイルAの回路は問2と同じ。②に切り替えた直後は、問2 (1) と同じくコイルAの電流は0で、コイルAの起電力(点aに対する点bの電位)は $-\dfrac E2$(直後の起電力は抵抗と電池だけで決まり、自己インダクタンスによらない)。『 $V_{\mathrm L}=-L_1\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ 』より
$$-\frac E2=-L_1\frac{\Delta I}{\Delta t}\qquad\therefore\ \frac{\Delta I}{\Delta t}=\frac{E}{2L_1}$$
コイルBはコイルAと同じ棒に同じ向きに巻いてあり、Aがつくる磁束がそのままBを通る。相互誘導の定義『 $V_{\mathrm B}=-M\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ 』(cに対するdの電位)より
$$V_{\mathrm B}=-M\cdot\frac{E}{2L_1}$$
答 $-\dfrac{ME}{2L_1}$(3点)
問3 (2)
十分に時間がたった後のコイルAの電流は、問2 (2) と同じ $\dfrac{E}{3R}$。①に切り替えた直後のコイルAの起電力は、問2 (3) と同じく $\dfrac{2E}{3}$。『 $V_{\mathrm L}=-L_1\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ 』より
$$\frac{2E}{3}=-L_1\frac{\Delta I}{\Delta t}\qquad\therefore\ \frac{\Delta I}{\Delta t}=-\frac{2E}{3L_1}$$
(電流が減っていくので負)。よって
$$V_{\mathrm B}=-M\frac{\Delta I}{\Delta t}=\frac{2ME}{3L_1}$$
答 $\dfrac{2ME}{3L_1}$(3点)
問3 (3)
③に切り替える直前のコイルAの電流は $\dfrac{E}{3R}$ で、蓄えられているエネルギーは $\dfrac12L_1\left(\dfrac{E}{3R}\right)^2$。③に切り替えると電池が切り離され、外から仕事をするものもない。エネルギー保存の一般形『 $W_外+W_電=\Delta U+H$ 』で $W_外=W_電=0$ なので、電流が0になるまでのジュール熱は $H=-\Delta U$、つまりコイルAにたまっていたエネルギーが全部ジュール熱になる。
$$H=\frac12L_1\left(\frac{E}{3R}\right)^2$$
答 $\dfrac{L_1E^2}{18R^2}$(3点)
別解
問2 (2) (合成抵抗で) 十分に時間がたった後、コイルは導線と同じなので、抵抗BとCの並列の合成抵抗は $\dfrac R2$。抵抗Aと直列で全体の合成抵抗は $\dfrac{3R}{2}$。電池から流れる電流は $\dfrac{E}{\ \dfrac{3R}{2}\ }=\dfrac{2E}{3R}$ で、等しい抵抗BとCに半分ずつ分かれるので、コイルAの電流は $\dfrac{E}{3R}$。
問3 (1)(2) (起電力の比で) $V_{\mathrm L}=-L_1\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$、 $V_{\mathrm B}=-M\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ を辺々割ると $V_{\mathrm B}=\dfrac{M}{L_1}V_{\mathrm L}$。コイルBの起電力は、いつもコイルAの起電力の $\dfrac{M}{L_1}$ 倍なので、問2 (1)(3) の $-\dfrac E2$、 $\dfrac{2E}{3}$ に $\dfrac{M}{L_1}$ をかけて $-\dfrac{ME}{2L_1}$、 $\dfrac{2ME}{3L_1}$。
出題意図
問1 ソレノイドの磁束から自己誘導の起電力を導く、教科書レベルの導出が理解できているか
問2 (1)〜(3) スイッチを切りかえた直後・十分に時間がたった後のコイルを正しく読みかえ、電位の高低まで決めることができるか
問2 (4) 透磁率と自己インダクタンス、コイルのエネルギー $\dfrac12LI^2$ の関係が理解できているか
問3 相互誘導の起電力を、自己誘導の起電力と共通の $\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ でつなぐことができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 40点 | 30点 |
| 目標時間 | 20分 | 25分 |
自己誘導と相互誘導は、導出を含めて覚えておかなければならないのに、分かりにくくて苦手な受験生が多い単元。
本問は、受験生が苦手にして避けがちな単元をピンポイントで突いてきた。
ただ、やっていること自体はシンプルで、難しいのは問3くらい。
きちんと対策していた受験生は簡単に満点が取れ、避けていた受験生は大きく苦戦する。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2 (1)(3):切りかえた直後のコイルを「電流はそのまま」と読みかえ、電位の高低から $V_0<0$、 $V_2>0$ の符号まで決めきれるか。ここで符号を誤ると、グラフの選択と問3 (1)(2) もそろって誤る。
- 問3 (1)(2):コイルBの起電力を、コイルAの起電力から共通の $\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ を通して求める( $\dfrac{M}{L_1}$ 倍)という発想に行き着けるか。
- 問2 (4) の理由:十分に時間がたつと電流はもとの $\dfrac{E}{3R}$ に戻る(自己インダクタンスによらない)という発想に行き着けるか。
2024年九州大学物理
第3問 解答・解説
第3問は波動の問題です。
テーマは「観測者が動く場合と反射板がある場合のドップラー効果を『波の数を数える』方法で導き、流れの中を伝わる超音波の時間差と反射波の振動数の差から流速を測る超音波流速計に応用する」。
問題


問題文をテキストで読む
次の文章を読み、問1〜問2に答えよ。
問1. 振動数 $f_0$〔Hz〕の音波を発する音源と、一定の速さ $w$〔m/s〕で動くことができる台車が、一直線上に置かれている。台車には、音波の受信器あるいは反射板を音源と同じ高さに取り付けることができる。音速を $V$〔m/s〕とし、 $V>w$ とする。
(1) 図1に示すように受信器を台車に取り付け、台車が音源に近づく際に観測される音波の振動数を測定する。時刻 $t_0$ において音源と受信器の距離が $L_0$〔m〕であったとする。ここで時刻 $t_0$ から時間 $t$〔s〕経過後に受信器に到達する音波の振動数について考える。以下の $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{エ}}$ を $V$、 $w$、 $L_0$、 $f_0$、 $t$ の中から必要なものを用いた数式で埋めて、説明文を完成させよ。ただし、 $L_0>wt$ とする。
受信器は速さ $w$ で動いているので、時刻 $t_0$ から時間 $t$ 経過した際の音源と受信器の距離は $\boxed{\text{ア}}$〔m〕となる。一方、時刻 $t_0$ で受信器に到達した音波の波面は時間 $t$ 経過後に、音源から距離 $\boxed{\text{イ}}$〔m〕に到達する。また、受信器に到達した際の音波の波長は $\boxed{\text{ウ}}$〔m〕である。したがって、時間 $t$ の間に受信器に到達する波の数は $\boxed{\text{エ}}\times t$ 個である。すなわち、受信器で測定される音波の振動数 $f_1$ は $\boxed{\text{エ}}$〔Hz〕である。
(2) 次に、図2に示すように反射板を台車に取り付け、受信器は音源と反射板を結ぶ直線上のある位置に固定して、速さ $w$〔m/s〕で近づいてくる反射板で反射された音波(反射波)の振動数を測定する。ある時刻 $t_1$ において反射板と受信器の距離が $L_1$〔m〕であったとする。以下の $\boxed{\text{オ}}$ 〜 $\boxed{\text{ケ}}$ を $V$、 $w$、 $L_1$、 $f_0$、 $f_1$ の中から必要なものを用いた数式で埋めて、説明文を完成させよ。ただし、反射板で反射される際に音波の速さおよび振動数は変化しないものとする。
時刻 $t_1$ において反射された音波が、受信器に到達するまでにかかる時間は $\Delta t=\boxed{\text{オ}}$〔s〕である。一方、 $\Delta t$〔s〕後に反射板は距離 $\boxed{\text{カ}}$〔m〕移動する。したがって、反射板と受信器の間に存在する反射波の波長は、反射波の振動数 $f_1$〔Hz〕を用いて $\boxed{\text{キ}}$〔m〕と表される。これにより、受信器で測定される反射波の振動数 $f_2$ は $f_1$ を用いて $\boxed{\text{ク}}$〔Hz〕と表される。ここで $f_1$ に $\boxed{\text{エ}}$〔Hz〕の振動数を代入すると、 $f_2$ は $f_0$ を用いて $\boxed{\text{ケ}}$〔Hz〕と表される。
問2. 音波はさまざまな計測に利用されている。その1つに超音波流速計がある。これは、送受信器で発生させた超音波を流体中に角度をつけて入射し、その応答を観測することで流体の速さを計測する装置である。以下では、流体中の超音波の速さを $V_L$〔m/s〕、振動数を $F_0$〔Hz〕とし、超音波は送受信器から流体に直接入射され、管内の流れは送受信器の設置により影響を受けないものとする。なお、以下の問いで必要なら次の近似式を用いよ。
$$\frac{1}{1\pm x}\fallingdotseq1\mp x,\quad\frac{x}{1\pm x}\fallingdotseq x\qquad(\text{複号同順。ただし}\ |x|\ll1)$$
(1) 図3に示すように、流体がまっすぐな管の中を一様に速さ $u$〔m/s〕で流れている。このとき、流体の速さ $u$ は、距離 $L$〔m〕離れた2つの送受信器より入射角 $\theta\ (0^\circ<\theta<90^\circ)$ で発射された超音波が、対となる送受信器に到達するまでの時間の差から求めることができる。以下の $\boxed{\text{コ}}$ 〜 $\boxed{\text{シ}}$ を $V_L$、 $u$、 $F_0$、 $L$、 $\theta$ の中から必要なものを用いた数式で埋めて、説明文を完成させよ。なお、 $V_L$ は $u$ に比べて十分大きい( $V_L\gg u$ )ものとする。
送受信器1から発射された超音波が送受信器2に到達する際にかかる時間 $\Delta t_{1\to2}$ は、 $\boxed{\text{コ}}$〔s〕となる。一方、送受信器2から発射された超音波が送受信器1に到達する際にかかる時間 $\Delta t_{2\to1}$ は $\boxed{\text{サ}}$〔s〕となる。したがって、それぞれの経路でかかる時間の差を $\Delta t_d=\Delta t_{1\to2}-\Delta t_{2\to1}$ とすれば、流体の速さは近似的に $u\fallingdotseq\boxed{\text{シ}}\times|\Delta t_d|$ として与えられる。
(2) 図4に示すように、粒子や気泡を含む流体がまっすぐな管の中を一様に速さ $u_p$〔m/s〕で流れている。このとき、送受信器より入射角 $\theta\ (0^\circ<\theta<90^\circ)$ で発射された超音波は粒子や気泡で反射されるため、流体の速さは反射波ともとの超音波の振動数の差から求めることができる。以下の $\boxed{\text{ス}}$ と $\boxed{\text{セ}}$ を $V_L$、 $u_p$、 $F_0$、 $\theta$ の中から必要なものを用いた数式で埋めて、説明文を完成させよ。ただし、粒子や気泡は管の直径に比べて十分に小さく、流体と同じ速さ $u_p$ で運動しており、 $V_L\gg u_p$ とする。
送受信器から発射された超音波は流体中の粒子や気泡に反射され送受信器に返ってくるので、反射波の振動数 $F_R$〔Hz〕は問1 $\boxed{\text{ケ}}$ で求めた解を参考にすれば $F_R=\boxed{\text{ス}}\times F_0$ となる。したがって、超音波の往復によって生じる振動数の差を $\Delta F=F_R-F_0$ とすれば、 $u_p$ は近似的に $u_p\fallingdotseq\boxed{\text{セ}}\times|\Delta F|$ として与えられる。
(3) 一般に超音波流速計の時間や振動数の測定精度には限界がある。(1)、(2)の結果を参考にすると、流体の速さの測定精度を向上させるためには、送受信器を設置する際に超音波の入射角をどのようにすればよいか、理由も含めて答えなさい。
解答の方針
【問1の方針】
問1は、ドップラー効果の公式そのものの導出。導出のポイントは「波長」と「波の個数」の2つだけで、聞く振動数=(出会う範囲の長さ)÷(波長) を、(1) でも (2) でも同じようにくり返す。
(1) は音源が止まっているので、波長は $\dfrac{V}{f_0}$ のまま変わらない(観測者が動いても波長は変わらない)。変わるのは出会う範囲で、時刻 $t_0$ に受信器に届いた波面は時間 $t$ の間に $Vt$ 進み、受信器は逆向きに $wt$ 進む。その間の長さ $(V+w)t$ に並んでいる波が、時間 $t$ の間に受信器に届く波(下の図)。


(2) の反射板は2段階で考える。①反射板が観測者として音を聞く。反射板は (1) の受信器と同じく速さ $w$ で音源に近づくので、聞く振動数は (1) の $f_1$。②反射板が音源として、聞いたのと同じ $f_1$ 個の波を1秒間に発し直す。この音源は受信器に向かって動いているので、今度は波長が縮む。反射波の波長は「反射波が並んでいる区間の長さ÷その中の波の個数」で求め、静止した受信器が聞く振動数は「音速÷波長」。
- 時刻 $t_0+t$ の受信器の位置(ア)と、時刻 $t_0$ に受信器に届いた波面の位置(イ)を、音源からの距離で表す。
- 音源は止まっているので、波長は $\dfrac{V}{f_0}$(ウ)。
- イとアの差 $(V+w)t$ を波長で割って、時間 $t$ の間に受信器に届く波の数を求め、振動数 $f_1$ を求める(エ)。
- 時刻 $t_1$ に反射した波面が受信器に届くまでの時間 $\Delta t=\dfrac{L_1}{V}$(オ)と、その間に反射板が進む距離(カ)を求める。
- 反射板は1秒間に $f_1$ 個の波を反射するので、 $\Delta t$ の間に反射した $f_1\Delta t$ 個の波が、受信器と反射板の間の長さ $L_1-\dfrac{wL_1}{V}$ に並ぶ。これを割って反射波の波長を求める(キ)。
- 静止した受信器が聞く振動数=音速÷波長 でクを求め、 $f_1$ にエを代入してケを求める。
【問2の方針】
装置は初めて見るものでも、やることはドップラー効果と「風」の組み合わせ。流体が流れていると、その中を伝わる超音波は流れに運ばれる。これは風が吹いているときの音と同じで、超音波の速さを $V_L\pm(\text{流れの速さ})$ に置きかえるだけ。ただし流れは超音波の進む直線に対して斜めなので、超音波の進む直線の向きの成分だけを足し引きする。 $\theta$ は管の壁に垂直な線から測った角なので、流れ(管の壁に平行)と超音波の直線のなす角は $90^\circ-\theta$。超音波の進む直線の向きの成分は $u\cos(90^\circ-\theta)=u\sin\theta$ になる(下の図)。


(1) 送受信器1から2へは流れに逆らうので $V_L-u\sin\theta$、2から1へは流れに乗るので $V_L+u\sin\theta$。時間の差はわずかなので、与えられた分母の近似 $\dfrac{1}{1\pm x}\fallingdotseq1\mp x$ でそれぞれを $u$ の1次の形にしてから引く。
(2) 粒子は送受信器から見ると、超音波の直線の向きに速さ $u_p\sin\theta$ で近づいてくる反射板。問1 (2) の「止まった音源・受信器に反射板が速さ $w$ で近づく」と同じ形なので、ケを読み替えればよい(問題文の「ケで求めた解を参考にすれば」がそのヒント)。
(3) は、シ・セで求めた「流速=係数×測定した量」の係数を見る。係数の分母に $\sin\theta$ があるので、 $\theta$ が大きいほど同じ流速でも測定する量(時間の差・振動数の差)が大きくなる。
- 流れの速度を、超音波の進む直線の向きの成分 $u\sin\theta$ と、それに垂直な成分に分ける。
- 1→2 は超音波の速さ $V_L-u\sin\theta$、2→1 は $V_L+u\sin\theta$ として、距離 $L$ を割ってコ・サを求める。
- $x=\dfrac{u\sin\theta}{V_L}$ とおいて分母の近似をし、 $\Delta t_d$ を $u$ の1次式で表して $u$ について解く(シ)。
- ケの $V\to V_L$、 $w\to u_p\sin\theta$、 $f_0\to F_0$ と読み替えてスを求める。
- $\Delta F=F_R-F_0$ を $\dfrac{x}{1-x}$ の形にして近似し、 $u_p$ について解く(セ)。
- $|\Delta t_d|$ と $|\Delta F|$ がどちらも $\sin\theta$ に比例することから、入射角 $\theta$ をどうすればよいかを答える((3))。
解答




解答をテキストで読む
問1 (1)
受信器は音源に向かって速さ $w$ で動くので、時間 $t$ の間に $wt$ だけ音源に近づく。
答(ア) $L_0-wt$(2点)
時刻 $t_0$ に受信器に届いた波面は、そのとき音源から $L_0$ の所にあり、そこから速さ $V$ で時間 $t$ 進むので
答(イ) $L_0+Vt$(2点)
音源は止まっているので、音源が1秒間に発した $f_0$ 個の波は長さ $V$ に並ぶ。波長は「距離÷波の個数」で
答(ウ) $\dfrac{V}{f_0}$(2点)
(受信器が動いても波長は変わらない。変わるのは受信器が出会う範囲)
時刻 $t_0$ から時間 $t$ の間に受信器に届く波は、時刻 $t_0+t$ の受信器と、時刻 $t_0$ に受信器に届いた波面との間に並んでいる波(上の着眼点の図)。その長さは
$$(L_0+Vt)-(L_0-wt)=(V+w)t$$
なので、波の数は
$$\frac{(V+w)t}{\ \dfrac{V}{f_0}\ }=\frac{V+w}{V}f_0\times t$$
1秒間に届く波の数が振動数なので
答(エ) $\dfrac{V+w}{V}f_0$(3点)
(観測者が速さ $w$ で音源に近づくときのドップラー効果の公式と同じ形)
問1 (2)
時刻 $t_1$ に反射された波面は、静止した受信器まで距離 $L_1$ を速さ $V$ で進むので
答(オ) $\dfrac{L_1}{V}$(2点)
反射板は速さ $w$ で受信器に近づくので、 $\Delta t$ の間に進む距離は
答(カ) $\dfrac{wL_1}{V}$(2点)
反射板は2段階で考える。①反射板は (1) の受信器と同じく速さ $w$ で音源に近づくので、振動数 $f_1$ の音を聞き、1秒間に $f_1$ 個の波を反射する。②反射板が音源となって、聞いた波をそのまま発し直す。
時刻 $t_1+\Delta t$ には、時刻 $t_1$ に反射した波面がちょうど受信器に届き、反射板は受信器から $L_1-\dfrac{wL_1}{V}$ の所にある。この間に並んでいるのは、 $\Delta t$ の間に反射した $f_1\Delta t$ 個の波(下の図)。
波長は「区間の長さ÷波の個数」なので、 $\Delta t=\dfrac{L_1}{V}$ を使って
$$\frac{L_1-\dfrac{wL_1}{V}}{f_1\Delta t}=\frac{\dfrac{(V-w)L_1}{V}}{\ \dfrac{f_1L_1}{V}\ }=\frac{V-w}{f_1}$$
答(キ) $\dfrac{V-w}{f_1}$(3点)
(反射板が音源として受信器に近づくので、波長は $\dfrac{V}{f_1}$ より縮む)
受信器は静止しているので、1秒間に長さ $V$ の範囲の反射波と出会う。振動数=音速÷波長 より
$$f_2=\frac{V}{\ \dfrac{V-w}{f_1}\ }=\frac{V}{V-w}f_1$$
答(ク) $\dfrac{V}{V-w}f_1$(2点)
$f_1=\dfrac{V+w}{V}f_0$(エ)を代入して
$$f_2=\frac{V}{V-w}\cdot\frac{V+w}{V}f_0=\frac{V+w}{V-w}f_0$$
答(ケ) $\dfrac{V+w}{V-w}f_0$(3点)
(反射板が近づくので $f_2>f_0$。式の形からも分子>分母で合う)
問2 (1)
流れの速度 $u$ は管の壁に平行で、超音波の進む直線は壁に垂直な線から角 $\theta$ 傾いているので、両者のなす角は $90^\circ-\theta$。流れの速度の、超音波の進む直線の向きの成分は $u\cos(90^\circ-\theta)=u\sin\theta$(着眼点の図)。超音波は流れに運ばれるので、風が吹いているときの音と同じく、超音波の速さをこの成分だけ置きかえればよい。送受信器1から2へは流れに逆らうので速さ $V_L-u\sin\theta$、2から1へは流れに乗るので速さ $V_L+u\sin\theta$(下の図)。
距離はどちらも $L$ なので
答(コ) $\dfrac{L}{V_L-u\sin\theta}$(2点)
答(サ) $\dfrac{L}{V_L+u\sin\theta}$(2点)
$x=\dfrac{u\sin\theta}{V_L}$ とおくと、 $V_L\gg u$ より $|x|\ll1$。分母の近似 $\dfrac{1}{1\pm x}\fallingdotseq1\mp x$ を使うために、分母を $V_L$ でくくって
$$\Delta t_{1\to2}=\frac{L}{V_L}\cdot\frac{1}{1-x}\fallingdotseq\frac{L}{V_L}(1+x),\qquad \Delta t_{2\to1}=\frac{L}{V_L}\cdot\frac{1}{1+x}\fallingdotseq\frac{L}{V_L}(1-x)$$
差をとると
$$\Delta t_d=\Delta t_{1\to2}-\Delta t_{2\to1}\fallingdotseq\frac{2L}{V_L}x=\frac{2Lu\sin\theta}{V_L^{\,2}}$$
$\Delta t_d>0$ なので $|\Delta t_d|=\dfrac{2Lu\sin\theta}{V_L^{\,2}}$。 $u$ について解いて
$$u\fallingdotseq\frac{V_L^{\,2}}{2L\sin\theta}\times|\Delta t_d|$$
答(シ) $\dfrac{V_L^{\,2}}{2L\sin\theta}$(4点)
問2 (2)
超音波の進む直線を横に寝かせて見ると、粒子は静止した送受信器に向かって、直線の向きの成分 $u_p\sin\theta$ で近づいてくる(流れの速度の向きと超音波の直線の関係は (1) と同じ)。これは問1 (2) の「止まった音源・受信器に、反射板が速さ $w$ で近づく」と同じ形(下の図)。
ケ $f_2=\dfrac{V+w}{V-w}f_0$ で、 $V\to V_L$、 $w\to u_p\sin\theta$、 $f_0\to F_0$ と読み替えて
$$F_R=\frac{V_L+u_p\sin\theta}{V_L-u_p\sin\theta}F_0$$
答(ス) $\dfrac{V_L+u_p\sin\theta}{V_L-u_p\sin\theta}$(3点)
(流体そのものが流れていることまで考えて、超音波の速さを (1) と同じように $V_L\mp u_p\sin\theta$ に置きかえて2段階で求めても、同じ式になる。別解)
$x=\dfrac{u_p\sin\theta}{V_L}$ とおくと $|x|\ll1$ で
$$\Delta F=F_R-F_0=\frac{(V_L+u_p\sin\theta)-(V_L-u_p\sin\theta)}{V_L-u_p\sin\theta}F_0=2F_0\cdot\frac{x}{1-x}\fallingdotseq2F_0x=\frac{2F_0u_p\sin\theta}{V_L}$$
$\Delta F>0$ なので $|\Delta F|=\dfrac{2F_0u_p\sin\theta}{V_L}$。 $u_p$ について解いて
$$u_p\fallingdotseq\frac{V_L}{2F_0\sin\theta}\times|\Delta F|$$
答(セ) $\dfrac{V_L}{2F_0\sin\theta}$(4点)
問2 (3)
(1)(2) の結果を、測定する量について書き直すと
$$|\Delta t_d|\fallingdotseq\frac{2L\sin\theta}{V_L^{\,2}}\times u,\qquad |\Delta F|\fallingdotseq\frac{2F_0\sin\theta}{V_L}\times u_p$$
どちらも $\sin\theta$ に比例する。 $0^\circ<\theta<90^\circ$ では $\theta$ が大きいほど $\sin\theta$ は大きいので、同じ流速でも、測定する時間の差・振動数の差が大きくなる。測定の誤差の大きさが決まっているなら、測定する量が大きいほど、誤差が流速の値に与える影響は小さくなる(シ・セの係数 $\dfrac{1}{\sin\theta}$ が小さくなる、と言っても同じ)。
答 入射角 $\theta$ を大きくする( $90^\circ$ に近づける)。時間の差 $|\Delta t_d|$ も振動数の差 $|\Delta F|$ も $\sin\theta$ に比例して大きくなるので、同じ流速でも測定する量が大きくなり、時間や振動数の測定誤差が流速の値に与える影響が小さくなるから。(4点)
(管の直径 $D$ を決めて送受信器を置くなら $L=\dfrac{D}{\cos\theta}$ で、 $|\Delta t_d|$ は $\tan\theta$ に比例する。この場合も $\theta$ を大きくするほど時間の差は大きくなる)
別解
問1 エ・ケ (公式で確かめる) 観測者が速さ $w$ で近づくときの公式 $\dfrac{V+w}{V}f_0$ がそのままエ。反射板は「観測者として $\dfrac{V+w}{V}f_0$ を聞く → 音源として速さ $w$ で近づきながら発する」の2段階で、音源が速さ $w$ で近づくときの公式(振動数 $f$ の音源なら $\dfrac{V}{V-w}f$)を続けて使えば
$$f_2=\frac{V}{V-w}\cdot\frac{V+w}{V}f_0=\frac{V+w}{V-w}f_0$$
となり、ケと合う。ただし問1は公式の導出そのものを空欄で問うているので、公式は答えの確かめに使う。
問2 (2) ス (流れを風として2段階で求める) 流体が流れているので、地面(管)から見た超音波の速さは、送受信器から粒子へ向かうときは流れに逆らって $V_L-u_p\sin\theta$、粒子から送受信器へ戻るときは流れに乗って $V_L+u_p\sin\theta$。
①粒子が観測者:粒子は速さ $u_p\sin\theta$ で超音波に向かって進むので、1秒間に出会う範囲は $(V_L-u_p\sin\theta)+u_p\sin\theta=V_L$。波長は $\dfrac{V_L-u_p\sin\theta}{F_0}$ なので、粒子が聞く振動数は
$$F’=\frac{V_L}{V_L-u_p\sin\theta}F_0$$
②粒子が音源:送受信器に向かって速さ $u_p\sin\theta$ で動きながら $F’$ の波を発するので、反射波の波長は $\dfrac{(V_L+u_p\sin\theta)-u_p\sin\theta}{F’}=\dfrac{V_L}{F’}$。静止した送受信器は1秒間に長さ $V_L+u_p\sin\theta$ の範囲の波と出会うので
$$F_R=\frac{V_L+u_p\sin\theta}{V_L}F’=\frac{V_L+u_p\sin\theta}{V_L-u_p\sin\theta}F_0$$
となり、本解(ケの読み替え)と同じ式になる。
出題意図
問1 (1) ア〜エ 観測者が動くドップラー効果を、波長と「出会う範囲」から導くことができるか
問1 (2) オ〜ケ 反射板を「音を聞く観測者」と「音を発する音源」の2段階で捉え、反射波の波長と振動数を導くことができるか
問2 (1) コ〜シ 流れの速度の、超音波の進む向きの成分を超音波の速さに足し引きし、近似式で流速を測る式にできるか
問2 (2) ス・セ 問1の反射板の結果を、流れの中の粒子に読み替えることができるか
問2 (3) (1)(2) の式から、測定精度を上げる入射角の条件を理由とともに説明できるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 20点 | 20点 |
| 目標時間 | 20分 | 25分 |
前半はドップラー効果の基本的な導出問題。
公式を覚えているだけでなく、「波長はいくらか」「1秒間にどの範囲の波と出会うか」から公式を白紙で作れるまで練習していれば、ア〜ケは完答できる。
後半は斜め方向のドップラー効果で、ヒントは出ているものの、何をやっているか分からなかった受験生が多かったと思われる。
ここは取れなくても合否には響かない。
差がつく所・失点しやすい所
- キ:反射板が音源になると波長が縮み、「区間の長さ÷波の個数」で求めるという発想に行き着けるか。公式を覚えているだけでは書けず、ここを越えないとク・ケが続かない(問2 (2) もケを使う)。
- コ・サ:流れを風と同じに見て、超音波の進む直線の向きの成分 $u\sin\theta$ だけを足し引きするという発想に行き着けるか。 $\theta$ が壁に垂直な線から測った角なので、 $u\cos\theta$ と取り違えやすい。
- 問2 (3):シ・セの係数の分母に $\sin\theta$ があることから、「 $\theta$ を大きくする」という結論と理由を書き切れるか。
コラム 超音波で血流を測る
この問題の超音波流速計は、実は医療の現場で毎日のように使われている。病院のエコー検査で、血管の中の血流を赤や青の色で表示する「カラードップラー」がそれ。原理は、この大問でやったことそのもの。


- 何に当てているのか:体の表面に当てたプローブ(送受信器)から、数MHzの超音波を血管に向けて出す。超音波は血液の中を流れる赤血球に当たってはね返り、プローブに戻ってくる。問2 (2) の「粒子・気泡」が、体の中では赤血球になる。
- なぜ速さが分かるのか:赤血球は動いているので、はね返った超音波の振動数はずれる。問1 (2) の反射板と同じで、赤血球は「聞く」ときにも「発し直す」ときにもドップラー効果を起こすので、ずれは2回分になる。ずれは赤血球の速さに比例するので、振動数のずれを測れば血流の速さが分かる(問2 (2) のス・セ)。
- 角度が大事:ずれに効くのは、超音波の進む直線の向きの速度成分だけ。この問題では角 $\theta$ を壁に垂直な線から測っているので $u\sin\theta$ になったが、医療では超音波の向きと血流の向きのなす角(図の $\varphi$)で測るので、同じ成分を $u\cos\varphi$ と書く。超音波を血流に垂直に当てるとずれは0になり、速さは測れない。だから検査では、超音波をできるだけ血流に沿う向きに当てる。これは問2 (3) の結論( $\theta$ を大きくして、超音波の向きを流れに近づける)と同じ。
- 2つの方式:工業用の超音波流量計には、問2 (1) のように上流向きと下流向きの伝わる時間の差を測る方式(伝搬時間差方式)と、問2 (2) のように粒子からの反射波の振動数のずれを測る方式(ドップラー方式)がある。きれいな水には前者、粒子や気泡を含む液体には後者が向いている。この大問は、その2つの方式を両方とも扱っている。
- パルスオキシメーターとは別物:指先に挟んで血液中の酸素飽和度を測るパルスオキシメーターは、超音波ではなく光を使う。赤い光と赤外線を当て、酸素と結びついたヘモグロビンと結びついていないヘモグロビンで光の吸収のされ方が違うことを利用している。ドップラー効果は使っていない。
九大の物理は、こうした身近な装置を題材にすることがある。物理を身近な現象に紐づける癖を持つことも、九大合格には大事。
2024年九州大学・物理の
講評とまとめ
3問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | やや簡単 | 45点 | 40点 |
| 第2問 | やや簡単 | 40点 | 30点 |
| 第3問 | 標準 | 20点 | 20点 |
| 合計 | 105点 | 90点 |
易しいセットでした。
第1問は力学の基本的な知識だけで完答でき、第2問は受験生が避けがちな自己誘導・相互誘導を突いてきましたが、対策していれば満点が取れます。
第3問は前半のドップラー効果の導出を取り切れば、後半の斜め方向のドップラー効果は取れなくてもかまいません。
医学部医学科は105点、ほかの学部でも90点は取りたいところです。
苦手な単元を作らず、典型問題の導出を白紙に再現できるまで練習しておきましょう。
解く流れ
第1問 → 第2問 → 第3問。
2024年九州大学・物理に
関するよくある質問
2024年の九州大学・物理について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2024年の九州大学・物理は難しかった?
-
やや簡単な年でした。
第1問・第2問はやや簡単、第3問は標準(前半はやや簡単・後半はやや難)です。
前の年(2023年)より易しく、3題とも典型問題の組み合わせです。 - 2024年の九州大学・物理は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で105点、その他の学部で90点です(125点満点)。
- 2024年の九州大学・物理はどこで差がつく?
-
第1問・第2問の完答と、第3問の問1(ア〜ケ)は取っておきたいところです。そのうえで、特に差がついたのは次の3つです。
- 第1問 問2 ③:「浮かない」の上限だけでなく、「Fまで届いて飛び出す」という下限の条件にも気づけたか。
- 第2問 問2 (1)(3):切りかえた直後のコイルを「電流はそのまま」と読みかえ、電位の符号まで決めきれたか。
- 第3問 キ:反射板が音源になると波長が縮み、公式でなく導出で求められたか。
- 2024年の九州大学・物理は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:力学
- 第2問:電磁気
- 第3問:波動


