【解説・配点付き】2025年九州大学物理の解答・解説

2025年の九州大学・物理の、
解答・解説【完全版】です。

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中原 遼太郎

九大受験に特化した学習塾
『竜文会』代表

『竜文会』開校後、初年度には国立大学医学部や九州大学に合格者を輩出。

2年目には旧帝大医学部にも合格!

九州大学の過去問を20年分以上分析して指導カリキュラムを作成。

九州大学医学部に現役合格した経験を生かして、『学習計画の作成』や『LINEでのいつでも相談』による1人1人のサポート・九州大学に特化したハイレベルな演習で「九大受験生」をサポート。

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目次

2025年九州大学物理
第1問 解答・解説

この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。

第1問は力学の問題です。
テーマは「振り子で加速した小球の完全非弾性衝突(失われた力学的エネルギー・衝突後に上がる高さ)、振り子の等時性で半周期ごとに最下点でくり返す衝突(運動量の和と相対速度の一般化・極限の速さ)」。

問題

2025年九州大学物理 第1問 問題
2025年九州大学物理 第1問 問題
問題文をテキストで読む

次の文章を読み、問1〜問2に答えよ。

図1のように伸び縮みしない2本の同じ長さ $l$ の軽い糸の一端を天井の同じ点に固定し、糸の他端にいずれも大きさを無視できる質量 $3m$ の小球A、質量 $2m$ の小球Bをそれぞれつるした。重力加速度の大きさを $g$、向きを鉛直下向きとする。小球および糸の運動は同一の鉛直面内に限り、空気抵抗および糸の質量は無視できるものとする。

問1. まず、図1のように小球Aを鉛直方向と糸のなす角度が $\theta_0$ $\left(0<\theta_0<\dfrac{\pi}{2}\right)$ となるまで糸をたるませずに持ち上げた。その後、小球Aを支えている手を静かに離し、静止している小球Bと衝突させた。

(1) 図1のように、小球同士が衝突する前に鉛直方向と糸のなす角度が $\theta$ $(0<\theta<\theta_0)$ となるときの小球Aの速さを求めよ。

小球Aと小球Bは完全非弾性衝突(反発係数は0)をした。

(2) 小球同士が衝突した直後の、小球Aの速さを求めよ。

(3) 小球同士の衝突前後での、小球Aと小球Bの力学的エネルギーの和の減少量を求めよ。

(4) 小球同士が衝突したのち、小球Aが到達できる最高点の、衝突点からの高さを求めよ。

次に、小球A、Bと質量は同じであるが、2球の間の反発係数の異なる質量 $3m$ の小球C、質量 $2m$ の小球Dを用意し、小球A、Bとそれぞれ取り替えた。小球CおよびDの大きさは無視できるものとする。

問2. 図2のように小球Cを糸をたるませずにわずかに持ち上げ、小球Cを支えている手を静かに離し、静止している小球Dと衝突させた。小球同士の衝突は非弾性衝突とし、反発係数を $e$ $(0<e<1)$ とする。また、1回目の衝突直前の小球Cの速さを $v_0$ とする。小球C、Dの運動において、鉛直方向と小球をつるしている糸のなす角度はそれぞれ十分小さい。したがって、それぞれの小球は水平方向のみに運動し、振り子の等時性が成り立つと考えることができる。小球の速度は右向きを正とする。

(1) 1回目に小球同士が衝突した直後の、小球Dに対する小球Cの相対速度を求めよ。

(2) 1回目の小球同士の衝突が起きてから、2回目の小球同士の衝突が起きるまでの時間を求めよ。

(3) $n$ 回目に小球同士が衝突した直後の、小球Cと小球Dの運動量の和を求めよ。ただし、 $n$ は自然数である。

(4) $n$ 回目に小球同士が衝突した直後の、小球Dに対する小球Cの相対速度を求めよ。

小球が衝突を繰り返すと、衝突直後の小球Cの速さは、ある速さ $v’$ に近づく。

(5) $v’$ を求めよ。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

小球Aにはたらく力は、重力 $3mg$ と糸の張力 $T$ だけ。張力は非保存力だが、いつも運動の向き(円の接線)と垂直なので仕事をしない。重力(保存力)だけが仕事をするので、力学的エネルギー保存が使える。角 $\theta_0$ から角 $\theta$ までに下がる高さは、天井からの深さの差 $l\cos\theta-l\cos\theta_0$(下の図)。

2025年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
2025年九州大学物理 第1問 解答の方針の図

衝突は最下点で起こり、そこでは2本の糸はどちらも鉛直。重力・張力はどちらも鉛直なので、水平方向の力は2球の間の内力だけで、水平方向の運動量が保存する。完全非弾性衝突(反発係数0)なので、衝突の直後の2球は同じ速度になる。完全非弾性衝突では力学的エネルギーは保存しないので、失われた量は前後の差 $|E_後-E_前|$ で求める。

衝突の後、2球は同じ速さで動き出し、糸の長さも同じなので、離れずに並んで振れる。Aの最高点の高さは、Aだけの力学的エネルギー保存で求まる。

  1. 最下点を高さの基準として、角 $\theta_0$ と角 $\theta$ の位置で力学的エネルギー保存を立て、Aの速さを求める。 $\theta=0$ とおいて、衝突の直前の速さ $v_{\mathrm{A}}=\sqrt{2gl(1-\cos\theta_0)}$ も求めておく。
  2. 右向きを正として、衝突の前後で水平方向の運動量保存 $(3m+2m)V=3mv_{\mathrm{A}}$ を立て、衝突の直後の速さ $V$ を求める。
  3. 衝突の直前と直後の運動エネルギーの差 $|E_後-E_前|$ を求める。
  4. 衝突点を高さの基準として、Aの力学的エネルギー保存 $\dfrac12\cdot3mV^2=3mgh$ から最高点の高さ $h$ を求める。

【問2の方針】

着眼点

$n$ 回目の衝突の直後のC、Dの速度を $v_n$、 $V_n$ とおく(右向き正)。1回目の衝突は、問1と同じく運動量保存と反発係数の式のセット。聞かれている「Dに対するCの相対速度」 $v_1-V_1$ は、反発係数の式からそのまま求まる。

1回目の衝突の後、C、Dはどちらも右向きに動き、Dの方が速い。振れる角が十分小さいので、2球はどちらも周期 $2\pi\sqrt{\dfrac lg}$ の単振動をする。周期は質量にも振幅にもよらないので、どちらも半周期後に同時に最下点(振動の中心)に戻り、そこで2回目の衝突が起こる(その間はいつもDがCより右にいるので、途中でぶつからない)。中心に戻ったときの速さは出ていったときと同じで、向きだけが逆になる(下の図)。

2025年九州大学物理 第1問 解答の方針の図
2025年九州大学物理 第1問 解答の方針の図

したがって、 $n+1$ 回目の衝突の直前の速度は $-v_n$、 $-V_n$。これを使って、 $n+1$ 回目の衝突の運動量保存と反発係数の式を $n$ 回目の値で表し、1回目の値まで落とす。

  • 運動量の和:衝突ではそのまま、衝突の間の半周期で $-1$ 倍。1回ごとに $-1$ 倍。
  • 相対速度:衝突で $-e$ 倍、衝突の間の半周期で $-1$ 倍。1回ごとに $e$ 倍。

$0<e<1$ なので、衝突をくり返すと相対速度は0に近づき、2球は同じ速度で動くようになる。これは問1の完全非弾性衝突と同じ状態なので、Cの速さは問1 (2) と同じく衝突前の速さの $\dfrac35$ 倍に近づく。

  1. 1回目の衝突の反発係数の式 $v_1-V_1=-e(v_0-0)$ から、Dに対するCの相対速度を求める。
  2. 運動量保存 $3mv_1+2mV_1=3mv_0$ と合わせて $v_1$、 $V_1$ を求め、どちらも正(右向き)で $V_1>v_1$ であることを確かめる。2球は周期 $2\pi\sqrt{\dfrac lg}$ の単振り子で、同時に最下点に戻るまでの半周期が2回目の衝突までの時間。
  3. $n+1$ 回目の衝突の直前の速度が $-v_n$、 $-V_n$ であることを使い、運動量保存 $3mv_{n+1}+2mV_{n+1}=-(3mv_n+2mV_n)$ を1回目まで落として、運動量の和を求める。
  4. 反発係数の式 $v_{n+1}-V_{n+1}=-e\{(-v_n)-(-V_n)\}=e(v_n-V_n)$ を1回目まで落として、相対速度を求める。
  5. $n\to\infty$ で相対速度 $-e^nv_0\to0$。2球の速度が等しくなるので、運動量の和の大きさ $3mv_0$ を全体の質量 $5m$ で割って $v’$ を求める。

解答

2025年九州大学物理 第1問 解答・解説
2025年九州大学物理 第1問 解答・解説
2025年九州大学物理 第1問 解答・解説(続き)
2025年九州大学物理 第1問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

問1 (1)

小球Aにはたらく力は、重力 $3mg$(保存力)と張力 $T$(非保存力)。張力は運動の向きと垂直で仕事をしないので、力学的エネルギーが保存する。最下点を高さの基準にすると、角 $\varphi$ の位置の高さは $l(1-\cos\varphi)$。角 $\theta$ の位置での速さを $v$ として

$$0+3mgl(1-\cos\theta_0)=\frac12\cdot3mv^2+3mgl(1-\cos\theta)\qquad\therefore\ v^2=2gl(\cos\theta-\cos\theta_0)$$

答 $\sqrt{2gl(\cos\theta-\cos\theta_0)}$(4点)

問1 (2)

衝突の直前(最下点、 $\theta=0$)のAの速さは、(1) で $\theta=0$ として

$$v_{\mathrm{A}}=\sqrt{2gl(1-\cos\theta_0)}$$

右向きを正とする。最下点では2本の糸は鉛直で、衝突の瞬間に2球が受ける外力(重力・張力)はどちらも鉛直。水平方向の力は2球の間の内力だけなので、水平方向の運動量が保存する。完全非弾性衝突(反発係数0)なので、衝突の直後の2球の速度は等しい。それを $V$ とすると

$$3mV+2mV=3mv_{\mathrm{A}}\qquad\therefore\ V=\frac35v_{\mathrm{A}}=\frac35\sqrt{2gl(1-\cos\theta_0)}$$

答 $\dfrac35\sqrt{2gl(1-\cos\theta_0)}$(5点)

問1 (3)

反発係数が1でない衝突では、力学的エネルギーは保存しない。衝突の直前と直後で位置エネルギーは同じなので、運動エネルギーの差を「後−前」の順に求めて絶対値をとる。

$$|E_後-E_前|=\left|\frac12\cdot5m\left(\frac35v_{\mathrm{A}}\right)^2-\frac12\cdot3mv_{\mathrm{A}}^{\,2}\right|=\left|\frac{9}{10}mv_{\mathrm{A}}^{\,2}-\frac32mv_{\mathrm{A}}^{\,2}\right|=\frac35mv_{\mathrm{A}}^{\,2}$$

$v_{\mathrm{A}}^{\,2}=2gl(1-\cos\theta_0)$ を代入して

答 $\dfrac65mgl(1-\cos\theta_0)$(5点)

問1 (4)

衝突の直後、2球は同じ速さ $V$ で動き出し、糸の長さも同じなので、離れずに並んで振れる。Aにはたらく力は重力と張力だけで、張力は仕事をしないので、Aの力学的エネルギーが保存する。衝突点を高さの基準とし、最高点(速さ0)の高さを $h$ とすると

$$\frac12\cdot3mV^2+0=0+3mgh\qquad\therefore\ h=\frac{V^2}{2g}=\frac{9}{25}\cdot\frac{v_{\mathrm{A}}^{\,2}}{2g}$$

( $\dfrac{v_{\mathrm{A}}^{\,2}}{2g}=l(1-\cos\theta_0)$ は、Aを放した高さそのもの。速さが $\dfrac35$ 倍なので、上がる高さは $\left(\dfrac35\right)^2=\dfrac{9}{25}$ 倍)

答 $\dfrac{9}{25}l(1-\cos\theta_0)$(5点)

問2 (1)

$n$ 回目の衝突の直後のC、Dの速度を $v_n$、 $V_n$ とする(右向き正)。1回目の衝突の直前はCが $v_0$、Dが0。衝突の瞬間の外力は鉛直なので、水平方向の運動量保存と反発係数の式をセットで立てる。

$$\begin{cases}3mv_1+2mV_1=3mv_0\\[2pt] v_1-V_1=-e(v_0-0)\end{cases}$$

Dに対するCの相対速度は $v_1-V_1$ なので、反発係数の式から

答 $-ev_0$(4点)

問2 (2)

連立すると

$$v_1=\frac{3-2e}{5}v_0,\qquad V_1=\frac{3(1+e)}{5}v_0$$

$0<e<1$ なので、どちらも正(右向き)で、 $V_1-v_1=ev_0>0$(Dの方が速い)。

振れる角が十分小さいので、C、Dはどちらも単振り子として、最下点を中心とする単振動をする。単振動定数はCが $\dfrac{3mg}{l}$、Dが $\dfrac{2mg}{l}$ で、周期はどちらも

$$2\pi\sqrt{\frac{3m}{\ \dfrac{3mg}{l}\ }}=2\pi\sqrt{\frac{2m}{\ \dfrac{2mg}{l}\ }}=2\pi\sqrt{\frac lg}$$

と、質量にも振幅にもよらない。2球はどちらも振動の中心(最下点)から動き出すので、最下点の右側に振れて、半周期後に同時に最下点に戻る。その間の位置は、角振動数を $\omega=\sqrt{\dfrac gl}$ として $x_{\mathrm{C}}=\dfrac{v_1}{\omega}\sin\omega t$、 $x_{\mathrm{D}}=\dfrac{V_1}{\omega}\sin\omega t$ で、 $x_{\mathrm{D}}-x_{\mathrm{C}}=\dfrac{V_1-v_1}{\omega}\sin\omega t$ は $0<\omega t<\pi$ の間ずっと正。いつもDがCより右にいるので途中ではぶつからず、2回目の衝突は最下点で起こる(着眼点の図)。

答 $\pi\sqrt{\dfrac lg}$(5点)

問2 (3)

最下点(振動の中心)に戻ったときの速さは出ていったときと同じで、向きが逆になる。よって、 $n+1$ 回目の衝突の直前の速度は、Cが $-v_n$、Dが $-V_n$。 $n+1$ 回目の衝突の運動量保存は

$$3mv_{n+1}+2mV_{n+1}=3m(-v_n)+2m(-V_n)=-(3mv_n+2mV_n)$$

運動量の和は1回ごとに $-1$ 倍になる。1回目の値まで落とすと

$$3mv_n+2mV_n=(-1)^{n-1}(3mv_1+2mV_1)=(-1)^{n-1}\cdot3mv_0$$

答 $(-1)^{n-1}\cdot3mv_0$(6点)

問2 (4)

$n+1$ 回目の衝突の反発係数の式は、直前の速度 $-v_n$、 $-V_n$ を使って

$$v_{n+1}-V_{n+1}=-e\{(-v_n)-(-V_n)\}=e(v_n-V_n)$$

相対速度は、衝突で $-e$ 倍、衝突の間の半周期で $-1$ 倍になるので、1回ごとに $e$ 倍。1回目の値まで落とすと、 (1) より

$$v_n-V_n=e^{n-1}(v_1-V_1)=e^{n-1}\cdot(-ev_0)=-e^nv_0$$

( $n=1$ で (1) の $-ev_0$ に一致する)

答 $-e^nv_0$(6点)

問2 (5)

$0<e<1$ なので、 $n\to\infty$ で $e^n\to0$。相対速度 $v_n-V_n=-e^nv_0$ は0に近づき、衝突の直後の2球の速度は等しくなっていく。その速度を $u_n$ とすると、(3) より

$$3mu_n+2mu_n=(-1)^{n-1}\cdot3mv_0\qquad\therefore\ |u_n|=\frac35v_0$$

衝突の直後のCの速さは $\dfrac35v_0$ に近づく。反発係数が1より小さければ、衝突をくり返すうちに2球は一体のように動き、問1 (2) の完全非弾性衝突と同じ $\dfrac35$ 倍の速さになる。

答 $v’=\dfrac35v_0$(5点)

別解

問1 (4)

2球を1つの物体(質量 $5m$)として、衝突点を基準に力学的エネルギー保存を立ててもよい。 $\dfrac12\cdot5mV^2=5mgh$ で、質量が消えて $h=\dfrac{V^2}{2g}$ と同じ式になる。

問2 (5)

(3)(4) の2式を連立して $v_n$ を求めてから極限をとる。 $V_n=v_n+e^nv_0$ を運動量の和の式に入れると

$$5mv_n+2me^nv_0=(-1)^{n-1}\cdot3mv_0\qquad\therefore\ v_n=\frac{(-1)^{n-1}\cdot3-2e^n}{5}v_0$$

$n\to\infty$ で $e^n\to0$ なので、Cの速さ $|v_n|$ は $\dfrac35v_0$ に近づく(速度の向きは1回ごとに入れかわる)。

出題意図

問1 (1) 振り子の運動で、張力が仕事をしないことから力学的エネルギー保存を使えるか

問1 (2)〜(4) 衝突の前後を運動量保存でつなぎ、衝突で失われる力学的エネルギーと、衝突後に上がる高さを求めることができるか

問2 (1)(2) 反発係数の式と、振り子の周期が質量にも振幅にもよらないこと(振り子の等時性)が理解できているか

問2 (3)〜(5) 衝突の間に2球の速度がどちらも逆向きになることを捉え、くり返し衝突を $n$ 回目まで一般化できるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや簡単
目標得点45点35点
目標時間15分20分

問1は力学的エネルギー保存と運動量保存だけで解ける、ごく簡単な小問。
問2で気をつけるのは、運動をイメージすることだけ。
振り子で上がっていった物体は、同じ速さで逆向きに戻ってくる。
だから $n$ 回目の衝突の直後から $n+1$ 回目の衝突の直前までに、速度にはマイナスが付く。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問2 (3)(4):次の衝突の直前は2球とも速度が逆向きになる、という発想に行き着けるか。運動量の和は1回ごとに $-1$ 倍、相対速度は $e$ 倍になる。ここを越えないと (5) も続かない。
  • 問2 (2):振幅も質量も違う2つの振り子が、半周期後に同時に最下点に戻ると気づけるか。

2025年九州大学物理
第2問 解答・解説

第2問は電磁気の問題です。
テーマは「電場と磁場のつり合いで直進する荷電粒子、左右の磁場の半円と電場での加速を組み合わせた軌道、磁場に斜めに打ち出したらせん運動。位置で強さが変わる磁場の中を一定の速さで動くコイルの起電力・外力・仕事」。

問題

2025年九州大学物理 第2問 問題
2025年九州大学物理 第2問 問題
問題文をテキストで読む

次の文章を読み、問1〜問2に答えよ。

問1. 図1のように、紙面上に $xy$ 平面、紙面に垂直に $z$ 軸をとり、紙面の裏から表への向きを $z$ 軸正の向きとする。 $x>x_1$ の範囲を領域Vとし、領域Vには $y$ 軸負の向きで大きさ $E$ の一様電場と、 $z$ 軸負の向きで磁束密度の大きさ $B$ の一様磁場がかかっている。 $(x,\ y,\ z)=(x_1,\ 0,\ 0)$ の位置から電気量 $q\ (q>0)$、質量 $m$ の荷電粒子を、 $x$ 軸正の向きに速さ $v$ で $xy$ 平面上に射出する。このとき、荷電粒子は電場と磁場による力を受けて $x$ 軸上を移動した。荷電粒子は真空中を運動するものとし、領域Vの外では電場および磁場はゼロである。また、重力の影響は無視する。以下の問いに答えよ。

(1) 領域V内で荷電粒子が電場から受ける力の大きさを、 $q$、 $m$、 $v$、 $x_1$、 $E$ のうち必要なものを用いて求めよ。

(2) 領域V内の磁束密度の大きさ $B$ を、 $q$、 $m$、 $v$、 $x_1$、 $E$ のうち必要なものを用いて求めよ。

図2のように、 $x<-x_1$ の範囲を領域W、 $-x_1\leqq x\leqq x_1$ の範囲を領域Pとする。領域Vの一様磁場は $z$ 軸負の向きで磁束密度の大きさ $B_{\mathrm{V}}$ に変更し、電場をゼロにした。領域Wには $z$ 軸負の向きで磁束密度の大きさ $B_{\mathrm{W}}$ の一様磁場をかけ、領域Pには $x$ 軸負の向きで大きさ $E_{\mathrm{P}}$ の一様電場をかけた。荷電粒子を $(x,\ y,\ z)=(x_1,\ 0,\ 0)$ の位置から $x$ 軸正の向きに速さ $v$ で $xy$ 平面上に射出すると、荷電粒子は図2に太線で示されている軌跡を描いて射出点に戻った。以下の問いに答えよ。

(3) 領域Vを出てから領域Wに入るまでの間に、領域Pで電場が荷電粒子にした仕事を、 $q$、 $m$、 $v$、 $x_1$、 $E_{\mathrm{P}}$ のうち必要なものを用いて求めよ。

(4) 一様電場の大きさ $E_{\mathrm{P}}$ を、 $q$、 $m$、 $v$、 $x_1$、 $B_{\mathrm{V}}$、 $B_{\mathrm{W}}$ のうち必要なものを用いて表せ。

(5) 領域V、P、Wにあるすべての磁場と電場をゼロにしたのち、図3(a)のように領域Vにのみ $x$ 軸正の向きで磁束密度の大きさ $B’$ の一様磁場をかけた。荷電粒子を $(x,\ y,\ z)=(x_1,\ 0,\ 0)$ の位置から $x$ 軸正の向きとなす角 $\theta$ $\left(0<\theta<\dfrac{\pi}{2}\right)$ の方向へ速さ $w$ で $xy$ 平面上に射出したところ、荷電粒子の $y$ 座標は時刻 $t$ に対して図3(b)のようになった。図3(b)の振幅 $A$ と周期 $T$ として適切なものを、以下の(a)〜(h)からそれぞれ選べ。なお、荷電粒子が射出された時刻を $t=0$ とする。

(a) $\dfrac{mw\cos\theta}{qB’}$ (b) $\dfrac{2mw\cos\theta}{qB’}$ (c) $\dfrac{mw\sin\theta}{qB’}$ (d) $\dfrac{2mw\sin\theta}{qB’}$

(e) $\dfrac{\pi m}{2qB’}$ (f) $\dfrac{\pi m}{qB’}$ (g) $\dfrac{2\pi m}{qB’}$ (h) $\dfrac{4\pi m}{qB’}$

問2. 図4(a)のように、紙面上に $xy$ 平面、紙面に垂直に $z$ 軸をとり、紙面の裏から表への向きを $z$ 軸正の向きとする。 $z$ 軸負の向きに磁束密度の大きさ $B_1$ の磁場がかかっている。 $B_1$ は $y$ 座標によらず一定で、 $x$ 座標(ただし $x\leqq B_0/K$)に対しては図4(b)のように $B_1=B_0-Kx$( $B_0$ と $K$ は正の定数)で与えられる。この磁場中に巻き数1の長方形のコイルABCDを置き、 $x$ 軸正の向きに $xy$ 平面上を一定の速さ $v_1$ で動かす。時刻 $t=0$ でコイルの辺ADは $y$ 軸上にあり、時刻 $t=t_0$ で辺BCは磁場がゼロになる $x=\dfrac{B_0}{K}$ に到達する。コイルの辺ADの長さは $a$、辺ABの長さは $b$、全体の抵抗は $R$ である。ただし、コイルは変形することなく真空中を運動するものとし、コイルの導線の太さ、質量、および自己インダクタンスは無視する。以下の問いに答えよ。

(1) 時刻 $t=0$ から時間 $\Delta t$ $(0<\Delta t<t_0)$ が経過する間に、コイルを貫く磁束の大きさは $Kv_1ab\Delta t$ だけ減少する。時刻 $t$ が $0<t<t_0$ の範囲にあるとき、コイルに生じる電流 $I$ の大きさを $K$、 $a$、 $b$、 $R$、 $v_1$、 $t$ のうち必要なものを用いて求めよ。

以下、コイルに流れる電流を $I$ として問いに答えよ。

(2) 時刻 $t$ が $0<t<t_0$ の範囲にあるとき、コイルを一定の速さ $v_1$ で動かすために必要な力の大きさを、 $I$、 $K$、 $a$、 $b$、 $R$、 $t$ のうち必要なものを用いて表せ。

(3) 時刻 $t=0$ から $t=t_0$ の間にコイルになされる仕事を、 $I$、 $K$、 $R$、 $t_0$ のうち必要なものを用いて表せ。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

大前提は「電場の中では一定の力 $qE$、磁場の中ではローレンツ力 $qvB$ で円運動」。

(1)(2) は、荷電粒子が $x$ 軸上をまっすぐ進んでいることに注目する。電場から受ける力は $y$ 軸負の向きに $qE$。 $x$ 軸正の向きに動く正の電荷が $z$ 軸負の向きの磁場から受けるローレンツ力は、フレミングの左手の法則で $y$ 軸正の向きに $qvB$。直進する=この2つの力がつり合っている(下の図)。

2025年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2025年九州大学物理 第2問 解答の方針の図

(3)(4) は図2の軌跡を読む。ローレンツ力は速度と垂直なので仕事をせず、領域V・Wでは速さが変わらない。速さが変わるのは電場がある領域Pだけで、電場は一定の力なので、仕事は「力×動いた距離」。上の直線では、粒子は $x$ 軸負の向きに $2x_1$ 動き、力も $x$ 軸負の向きなので、電場は正の仕事をして粒子は速くなる。下の直線では逆向きに動くので減速して、射出点で速さ $v$ に戻る。

(4) の決め手は、図2で左右の半円の高さがそろっていること。上の直線は領域Pでまっすぐなので、領域Vの半円の直径と領域Wの半円の直径は等しい。磁場中の円運動の半径 $r=\dfrac{mv}{qB}$(答えごと覚えておく)を使えば、左右の速さの比が磁束密度の比で決まり、運動エネルギーの変化=電場の仕事 から $E_{\mathrm P}$ が求まる。

(5) は磁場が $x$ 軸の向きになり、速度は磁場に斜め。速度を磁場に平行な成分 $w\cos\theta$ と垂直な成分 $w\sin\theta$ に分ける。平行な成分はローレンツ力を受けないので $x$ 方向は等速、垂直な成分は $yz$ 面内の円運動(らせん運動)。 $y$ 座標の動きは $yz$ 面の円の見え方で決まるので、磁場の向き( $x$ 軸の正の側)から見た図を書く。

2025年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2025年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
  1. 電場から受ける力の大きさ $qE$ を求める((1))。
  2. ローレンツ力 $qvB$ と電場の力 $qE$ のつり合いから $B$ を求める((2))。
  3. 領域Pで電場が粒子にする仕事を「力×動いた距離」で求める((3))。
  4. 図2から $2r_{\mathrm V}=2r_{\mathrm W}$ とし、 $r=\dfrac{mv}{qB}$ から領域Wでの速さ $v’$ を $v$ で表す。運動エネルギーの変化=(3) の仕事 から $E_{\mathrm P}$ を求める((4))。
  5. 速度を磁場に平行・垂直に分け、 $x$ 軸の正の側から見た $yz$ 面の円運動で、円の中心の位置から $y$ の振幅を、円運動の周期から $T$ を求める((5))。

【問2の方針】

着眼点

磁場はどこでも $z$ 軸負の向き(紙面の表から裏)で、強さは $x$ が大きいほど小さい。コイルは磁場の中にすっぽり入ったまま動くので、一様な磁場なら磁束は変わらないが、今回は磁場が場所で弱くなるので、右へ動くと磁束が減る。これが起電力の原因。

磁束の減り方は問題文に $Kv_1ab\Delta t$ と書いてあり、時刻によらない。 $B_1$ のグラフの傾きが一定なので、コイルがどこにあっても、辺ADの位置と辺BCの位置の磁束密度の差は $Kb$ のまま(下の図)。だから起電力も電流も一定になる。

2025年九州大学物理 第2問 解答の方針の図
2025年九州大学物理 第2問 解答の方針の図

向きは、紙面の表から裏への磁束が減るので、それを補う向き(表から裏)の磁束をつくるように電流が流れ、右ねじの法則で A→B→C→D(紙面の表から見て時計回り)。

力は4つの辺すべてに書く。辺ABと辺CDの力は打ち消し合い、辺ADと辺BCは磁束密度が違うので打ち消し合わない。一定の速さなので、残った力とつり合う外力が「動かすために必要な力」。(3) は電池もコンデンサーもなく運動エネルギーも変わらないので、外力の仕事がすべてジュール熱になる。

  1. ファラデーの電磁誘導の法則 $V=\left|\dfrac{\Delta\varPhi}{\Delta t}\right|$ で起電力を求め、 $R$ で割って $I$ を求める((1))。
  2. 各辺に $IBl$ を書き、辺AB・CDの力が打ち消し合うことを確かめてから、辺ADと辺BCの力の差を求める。一定の速さなので外力はこの差とつり合う((2))。
  3. エネルギー保存の一般形 $W_外+W_電=\Delta U+H+\Delta K$( $\Delta K$ は運動エネルギーの変化)で無い項を消して $W_外=H$ とし、電流が一定なので $H=RI^2t_0$ を求める((3))。

解答

2025年九州大学物理 第2問 解答・解説
2025年九州大学物理 第2問 解答・解説
2025年九州大学物理 第2問 解答・解説(続き)
2025年九州大学物理 第2問 解答・解説(続き)
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問1 (1)

電場の中で電気量 $q$ の粒子が受ける力の大きさは

答 $qE$(3点)

(向きは $y$ 軸負の向き)

問1 (2)

領域Vで粒子は $x$ 軸正の向きに速さ $v$ で動いている。 $z$ 軸負の向きの磁場から受けるローレンツ力は、フレミングの左手の法則で $y$ 軸正の向きに大きさ $qvB$。電場の力 $qE$ は $y$ 軸負の向き(着眼点の図)。粒子は $x$ 軸上をまっすぐ進むので、 $y$ 方向の力がつり合っている。

$$qvB=qE\qquad\therefore\ B=\frac Ev$$

答 $B=\dfrac Ev$(4点)

(電荷 $q$・質量 $m$ によらない。 $v=\dfrac EB$ の速さの粒子だけが直進する、速度選別器のしくみ)

問1 (3)

ローレンツ力は速度と垂直で仕事をしないので、領域Vを出るときの速さは $v$ のまま。粒子は点 $(x_1,\ 2r_{\mathrm V})$ から $x$ 軸負の向きに領域Pに入り、点 $(-x_1,\ 2r_{\mathrm V})$ で領域Wに入る(下の図の上の直線。 $r_{\mathrm V}$ は領域Vの半円の半径)。

領域Pの電場は $x$ 軸負の向きで、 $q>0$ の粒子が受ける力は $x$ 軸負の向きに大きさ $qE_{\mathrm P}$。力は一定で、粒子は力と同じ向きに $2x_1$ 動くので、電場がした仕事は

$$qE_{\mathrm P}\times2x_1$$

答 $2qE_{\mathrm P}x_1$(4点)

(電位で見ても同じ。 $x=x_1$ と $x=-x_1$ の電位差は $E_{\mathrm P}\cdot2x_1$ で、粒子は電位の高い $x_1$ 側から低い $-x_1$ 側へ動く)

問1 (4)

領域Wに入るときの速さを $v’$ とする。磁場中の円運動の運動方程式 $m\dfrac{v^2}{r}=qvB$ より、領域V・Wの半円の半径は

$$r_{\mathrm V}=\frac{mv}{qB_{\mathrm V}},\qquad r_{\mathrm W}=\frac{mv’}{qB_{\mathrm W}}$$

図2では、領域Vの半円で $y=0$ から $y=2r_{\mathrm V}$ まで上がり、領域Pはまっすぐ進み、領域Wの半円で $y=2r_{\mathrm W}$ 下がって射出点の高さ $y=0$ に戻る。よって $2r_{\mathrm V}=2r_{\mathrm W}$ で

$$\frac{mv}{qB_{\mathrm V}}=\frac{mv’}{qB_{\mathrm W}}\qquad\therefore\ v’=\frac{B_{\mathrm W}}{B_{\mathrm V}}v$$

領域Pを右から左へ通る間に、運動エネルギーは (3) の仕事の分だけ増えるので

$$\frac12mv’^2-\frac12mv^2=2qE_{\mathrm P}x_1$$

$v’$ を代入して

$$\frac12mv^2\left(\frac{B_{\mathrm W}^{\,2}}{B_{\mathrm V}^{\,2}}-1\right)=2qE_{\mathrm P}x_1\qquad\therefore\ E_{\mathrm P}=\frac{mv^2}{4qx_1}\cdot\frac{B_{\mathrm W}^{\,2}-B_{\mathrm V}^{\,2}}{B_{\mathrm V}^{\,2}}$$

答 $E_{\mathrm P}=\dfrac{m(B_{\mathrm W}^{\,2}-B_{\mathrm V}^{\,2})v^2}{4qx_1B_{\mathrm V}^{\,2}}$(6点)

( $E_{\mathrm P}>0$ なので $B_{\mathrm W}>B_{\mathrm V}$。速くなった分だけ強い磁場で曲げると、半径がそろう。下の直線では粒子が電場の力と逆向きに $2x_1$ 動くので、同じ仕事の分だけ減速して、射出点で速さ $v$ に戻る)

問1 (5)

速度を磁場( $x$ 軸正の向き)に平行な成分 $w\cos\theta$ と、垂直な成分 $w\sin\theta$( $y$ 軸正の向き)に分ける(着眼点の図)。平行な成分はローレンツ力を受けないので、 $x$ 方向は速さ $w\cos\theta$ の等速運動(粒子はずっと領域Vの中にいる)。垂直な成分は、速さ $w\sin\theta$ の $yz$ 面内の等速円運動。

$x$ 軸の正の側から見た図で考える(下の図)。射出した瞬間、速度は $y$ 軸正の向き、磁場は手前向きなので、ローレンツ力は $z$ 軸負の向き。円の中心は射出点の真下( $y=0$、 $z=-r$)にある。

円運動の運動方程式より、半径は

$$m\frac{(w\sin\theta)^2}{r}=q(w\sin\theta)B’\qquad\therefore\ r=\frac{mw\sin\theta}{qB’}$$

$y$ 座標は、中心 $y=0$ の円の上の点を $y$ 軸に映したもので、 $-r$ から $r$ の間を往復する。 $t=0$ で $y=0$ から増え始めるので、図3(b)と同じ形。

円運動の図を左に90°倒して $y$ を縦にとり、図3(b)のグラフと高さをそろえて横に並べると、円のいちばん上と下がグラフの山と谷にぴったり重なる(下の図)。円運動とグラフがこう対応していると分かれば、振幅は円の半径そのものだとすぐに読める。

よって振幅は

答(振幅 $A$) (c)(3点)

周期は円運動の周期

$$T=\frac{2\pi r}{w\sin\theta}=\frac{2\pi m}{qB’}$$

で、速さ $w$ にも角 $\theta$ にもよらない。

答(周期 $T$) (g)(3点)

問2 (1)

時間 $\Delta t$ の間に磁束の大きさは $Kv_1ab\Delta t$ だけ減るので、ファラデーの電磁誘導の法則より、起電力の大きさは

$$V=\left|\frac{\Delta\varPhi}{\Delta t}\right|=\frac{Kv_1ab\Delta t}{\Delta t}=Kv_1ab$$

で、時刻 $t$ によらない。電流の大きさは

$$I=\frac VR$$

答 $I=\dfrac{Kabv_1}{R}$(5点)

(使ってよい文字に $t$ があるが、答えに $t$ は入らない。向きは、紙面の表から裏への磁束が減るのを補う向きで A→B→C→D)

(確かめ:辺ごとの $vBl$ でも求まる。辺ADの位置 $x=v_1t$ の磁束密度は $B_0-Kv_1t$、辺BCの位置 $x=v_1t+b$ では $B_0-K(v_1t+b)$。コイルを1周する向きで見ると2つの起電力は逆向きなので、残るのは差の $v_1a\{(B_0-Kv_1t)-(B_0-Kv_1t-Kb)\}=Kv_1ab$。着眼点の図の差 $Kb$ がそのまま効いている)

問2 (2)

電流は A→B→C→D の向きに大きさ $I$ で流れる。4つの辺すべてに、磁場から受ける力 $IBl$ を書く(下の図)。

・辺AD( $x=v_1t$、電流は D→A の向き):左向きに $IaB_{\mathrm{AD}}$、 $B_{\mathrm{AD}}=B_0-Kv_1t$

・辺BC( $x=v_1t+b$、電流は B→C の向き):右向きに $IaB_{\mathrm{BC}}$、 $B_{\mathrm{BC}}=B_0-K(v_1t+b)$

・辺ABと辺CD:同じ位置に同じ長さで電流が逆向きなので、上向きと下向きの力が打ち消し合う

辺ADの方が磁場が強いので、磁場から受ける力の合力は左向きに

$$IaB_{\mathrm{AD}}-IaB_{\mathrm{BC}}=Ia\{(B_0-Kv_1t)-(B_0-Kv_1t-Kb)\}=IKab$$

コイルは一定の速さで動くので、力はつり合っている。動かすために必要な力(外力)は右向きに

答 $IKab$(6点)

(使ってよい文字に $v_1$ が無いので、 $I$ を消して $\dfrac{K^2a^2b^2v_1}{R}$ としない)

問2 (3)

エネルギー保存の一般形『 $W_外+W_電=\Delta U+H+\Delta K$ 』( $\Delta K$ は運動エネルギーの変化。重力は考えない)で、電池もコンデンサーもないので $W_電=\Delta U=0$。一定の速さで動くので運動エネルギーは変わらず $\Delta K=0$。よって、コイルを動かす力がした仕事は、すべてジュール熱になる( $W_外=H$)。電流 $I$ は一定なので、時間 $t_0$ の間のジュール熱は

$$H=RI^2\times t_0$$

答 $I^2Rt_0$(6点)

(確かめ:(2) の外力 $IKab$ が距離 $v_1t_0$ だけ動かすので $W_外=IKab\cdot v_1t_0$。 (1) より $Kabv_1=IR$ なので $W_外=I\cdot IR\cdot t_0=I^2Rt_0$ で一致する)

(「コイルになされる仕事」は、コイルを動かす力(外力)がした仕事と読む。磁場からの力の仕事 $-I^2Rt_0$ まで足すと合計は0で、運動エネルギーが変わらないことと合う)

別解

問1 (3) (電位で) 領域Pの電場は $x$ 軸負の向きなので、電位は $x$ が大きいほど高い。 $x=-x_1$ の電位を0とすると $x=x_1$ の電位は $E_{\mathrm P}\cdot2x_1$。電場がした仕事=電位による位置エネルギーの減少で、 $q\cdot2E_{\mathrm P}x_1-q\cdot0=2qE_{\mathrm P}x_1$。

問2 (2) (エネルギーから) 一定の速さなので、外力の仕事率は抵抗の消費電力に等しい: $F\cdot v_1=RI^2$。 (1) より $v_1=\dfrac{IR}{Kab}$ なので $F=\dfrac{RI^2}{v_1}=IKab$。

出題意図

問1 (1)(2) 電場の力とローレンツ力のつり合いで、荷電粒子が直進する条件を求めることができるか

問1 (3)(4) 磁場の中の半円の半径を図から読み取り、電場がした仕事と運動エネルギーの変化を結びつけることができるか

問1 (5) 磁場に斜めに打ち出した荷電粒子の運動を、磁場に平行な等速運動と垂直な面内の円運動に分けて捉えることができるか

問2 位置で強さが変わる磁場の中を動くコイルの起電力・外力・仕事を、ファラデーの法則・各辺の力・エネルギー保存で求めることができるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや簡単
目標得点40点30点
目標時間20分25分

問1の前半は荷電粒子の基本問題で、電場の力とローレンツ力を1つずつ考えるだけ。
(5) は円運動とグラフの対応をイメージできるかがポイント。
問2はファラデーの電磁誘導の法則で起電力を求め、4つの辺すべての力を考える基本どおりの問題。
良問の風が完璧になっていれば満点が取れる大問なので、確実に取り切ろう。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問1 (4):図2で左右の半円の高さがそろうことから半径が等しいと読み取り、速さの比 $v’=\dfrac{B_{\mathrm W}}{B_{\mathrm V}}v$ につなげるという発想に行き着けるか。
  • 問1 (5):らせん運動を磁場の向きから見た円で捉え、 $y$ 座標の振幅が直径ではなく半径になると判断できるか。
  • 問2 (2):辺ADと辺BCの両方の力を書き、磁場の強さの差 $Kb$ だけが残るという発想に行き着けるか。

2025年九州大学物理
第3問 解答・解説

第3問は熱力学の問題です。
テーマは「等温2本と断熱2本でできたカルノーサイクルの熱効率 $1-\dfrac{T_{\mathrm{CD}}}{T_{\mathrm{AB}}}$ を自分で導き、過程を置きかえた熱機関の熱効率を p-V 図の面積で比べ、二原子分子に置きかえたサイクルの p-V グラフを選ぶ」。

問題

2025年九州大学物理 第3問 問題
2025年九州大学物理 第3問 問題
問題文をテキストで読む

次の文章を読み、問1〜問3に答えよ。

熱の一部を力学的な仕事に変換する装置を熱機関という。ある状態の気体がいくつかの異なる状態を経てもとの状態に戻る変化はサイクルと呼ばれる。

いま、物質量 $n$ の単原子分子理想気体が状態Aから状態B、状態C、状態Dと変化し、もとの状態Aに戻るサイクルで動作する熱機関Ⅰを考える。図1にこのサイクルの圧力-体積グラフを実線で示す。状態Aから状態B、および状態Cから状態Dの過程は等温過程であり、状態Bから状態C、および状態Dから状態Aの過程は断熱過程である。状態Aにおける圧力を $p_{\mathrm{A}}$、体積を $V_{\mathrm{A}}$、状態Aから状態Bにおける絶対温度を $T_{\mathrm{AB}}$、状態Cから状態Dにおける絶対温度を $T_{\mathrm{CD}}$ とする。気体定数を $R$ とする。

問1. 状態Aから状態Bを経て状態Cに至る過程を考える。状態Bにおける体積を $V_{\mathrm{B}}$、状態Cにおける体積を $V_{\mathrm{C}}$ とする。

(1) 状態Bにおける圧力を $p_{\mathrm{B}}$ とするとき、 $p_{\mathrm{B}}$ を $p_{\mathrm{A}}$、 $V_{\mathrm{A}}$、 $V_{\mathrm{B}}$ を用いて表せ。

(2) 状態Bにおける温度 $T_{\mathrm{AB}}$ と、状態Cにおける温度 $T_{\mathrm{CD}}$ の間の関係について述べた次の文章の(ア)〜(エ)に入る語句や記号の組み合わせとして正しいものを、下表の①〜⑥から選び、番号で答えよ。

「状態Bから状態Cに至る断熱過程では、気体が得る熱量は(ア)であり、気体が外部にする仕事は(イ)であるから、内部エネルギーは(ウ)する。よって $T_{\mathrm{AB}}$ (エ) $T_{\mathrm{CD}}$ となる。」

| | ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ |

|—|—|—|—|—|—|—|

| (ア) | 正 | 正 | 正 | ゼロ | ゼロ | ゼロ |

| (イ) | 正 | 負 | 負 | 正 | 正 | 負 |

| (ウ) | 減少 | 減少 | 増加 | 減少 | 増加 | 増加 |

| (エ) | $>$ | $<$ | $<$ | $>$ | $>$ | $<$ |

(3) この過程(状態A→状態B→状態C)における気体の内部エネルギーの変化量 $\Delta U$ を、 $n$、 $R$、 $T_{\mathrm{AB}}$、 $T_{\mathrm{CD}}$ を用いて表せ。ただし、内部エネルギーが増加する場合、 $\Delta U>0$ であるとする。

(4) 断熱過程では、圧力 $p$ と体積 $V$ との間には、単原子分子理想気体の比熱比を $\dfrac{5}{3}$ として「 $pV^{\frac{5}{3}}=$ 一定」の関係が成り立つ。この関係式を用いて、 $V_{\mathrm{C}}$ の $V_{\mathrm{B}}$ に対する比 $\dfrac{V_{\mathrm{C}}}{V_{\mathrm{B}}}$ を、 $T_{\mathrm{AB}}$、 $T_{\mathrm{CD}}$ を用いて表せ。

問2. 熱機関Ⅰは1サイクルにおいて外部から熱量 $Q_{\mathrm{in}}\ (Q_{\mathrm{in}}>0)$ を得て、外部に熱量 $Q_{\mathrm{out}}\ (Q_{\mathrm{out}}>0)$ を放出し、仕事をする。

(1) 以下の各過程において気体が外部にした仕事 $W$ を、それぞれ、 $n$、 $Q_{\mathrm{in}}$、 $Q_{\mathrm{out}}$、 $R$、 $T_{\mathrm{AB}}$、 $T_{\mathrm{CD}}$ のうち必要なものを用いて表せ。ただし、気体が外部に仕事をした場合は $W>0$、気体が外部から仕事をされた場合は $W<0$ とする。

(ア) 状態Aから状態Bへの過程において気体が外部にした仕事 $W_{\mathrm{AB}}$

(イ) 状態Bから状態Cへの過程において気体が外部にした仕事 $W_{\mathrm{BC}}$

(ウ) 状態Cから状態Dへの過程において気体が外部にした仕事 $W_{\mathrm{CD}}$

(エ) 状態Dから状態Aへの過程において気体が外部にした仕事 $W_{\mathrm{DA}}$

(2) 一般に、状態1から状態2への等温過程で物質量 $n$ の理想気体が外部にする仕事 $W_{12}$ は、状態1における体積 $V_1$、状態2における体積 $V_2$、状態1から状態2における絶対温度 $T_{12}$ を用いて $W_{12}=nRT_{12}\log_e\left(\dfrac{V_2}{V_1}\right)$ と表すことができる。ただし $\log_e$ は自然対数を表す。 $Q_{\mathrm{in}}$ および $Q_{\mathrm{out}}$ を、それぞれ、 $n$、 $R$、 $T_{\mathrm{AB}}$、 $T_{\mathrm{CD}}$、 $V_{\mathrm{A}}$、 $V_{\mathrm{B}}$ のうち必要なものを用いて表せ。ここで、 $V_{\mathrm{C}}$ および状態Dにおける体積 $V_{\mathrm{D}}$ は用いないこと。

(3) 熱機関Ⅰの熱効率を $e_{\mathrm{I}}$ とするとき、 $e_{\mathrm{I}}$ を $T_{\mathrm{AB}}$、 $T_{\mathrm{CD}}$ を用いて表せ。

(4) 図2に示すとおり、熱機関Ⅰにおける状態Bから状態Cへの断熱過程を、状態Bから状態Eへの等温過程と状態Eから状態Cへの定積過程に置きかえた熱機関Ⅱ(そのサイクルは、A→B→E→C→D→A)について考え、その熱効率を $e_{\mathrm{II}}$ とする。さらに、熱機関Ⅱにおける状態Eから状態Cへの定積過程を、状態Eから状態Fへの断熱過程と状態Fから状態Cへの等温過程に置きかえた熱機関Ⅲ(そのサイクルは、A→B→E→F→C→D→A)について考え、その熱効率を $e_{\mathrm{III}}$ とする。 $e_{\mathrm{I}}$、 $e_{\mathrm{II}}$、 $e_{\mathrm{III}}$ の関係として正しいものを次の①〜⑨から選び、番号で答えよ。

① $e_{\mathrm{I}}<e_{\mathrm{II}}<e_{\mathrm{III}}$ ② $e_{\mathrm{I}}<e_{\mathrm{II}}=e_{\mathrm{III}}$ ③ $e_{\mathrm{I}}=e_{\mathrm{II}}<e_{\mathrm{III}}$④ $e_{\mathrm{II}}<e_{\mathrm{III}}<e_{\mathrm{I}}$ ⑤ $e_{\mathrm{II}}<e_{\mathrm{III}}=e_{\mathrm{I}}$ ⑥ $e_{\mathrm{II}}=e_{\mathrm{III}}<e_{\mathrm{I}}$⑦ $e_{\mathrm{III}}<e_{\mathrm{I}}<e_{\mathrm{II}}$ ⑧ $e_{\mathrm{III}}<e_{\mathrm{I}}=e_{\mathrm{II}}$ ⑨ $e_{\mathrm{III}}=e_{\mathrm{I}}<e_{\mathrm{II}}$

問3. 熱機関Ⅰの単原子分子理想気体を、同じ物質量 $n$ の二原子分子理想気体に置きかえた熱機関Ⅳを考える。熱機関Ⅳにおいて状態Aから状態Bへの過程は熱機関Ⅰと同じであり、状態C’と状態D’を経て、状態Aへと戻る。状態C’と状態D’における温度は、熱機関Ⅰの状態Cと状態Dにおける温度 $T_{\mathrm{CD}}$ と同じである。圧力-体積グラフにおける熱機関Ⅰと熱機関Ⅳのサイクルを比較する。

(1) 状態Bから状態C’の断熱過程において、圧力 $p$ と体積 $V$ との間には、二原子分子理想気体における比熱比を $\dfrac{7}{5}$ として「 $pV^{\frac{7}{5}}=$ 一定」の関係が成り立つ。熱機関Ⅰの状態Cにおける体積を $V_{\mathrm{C}}$、熱機関Ⅳの状態C’における体積を $V_{\mathrm{C’}}$ とするとき、 $V_{\mathrm{C’}}$ の $V_{\mathrm{C}}$ に対する比 $\dfrac{V_{\mathrm{C’}}}{V_{\mathrm{C}}}$ を、 $T_{\mathrm{AB}}$、 $T_{\mathrm{CD}}$ を用いて表せ。

(2) 熱機関Ⅳにおいて、状態Aから、状態B、状態C’、状態D’と変化し、もとの状態Aに戻る圧力-体積グラフとして正しいものを図3の(a)〜(f)から選び、記号で答えよ。なお、図3の破線は熱機関Ⅰのサイクルを示している。

解答の方針

【問1の方針】

着眼点

熱力学は「何変化か」を決めて、その変化の特徴を先に式に入れる。A→B は等温なので、状態方程式 $pV=nRT$ の $nRT_{\mathrm{AB}}$ が一定、 $pV$ が一定(比で処理する)。B→C は断熱なので $Q=0$ で、第一法則は $0=\Delta U+W$。膨張なので $W>0$、したがって $\Delta U<0$ で温度は下がる(断熱線は等温線より急なので、B から断熱で膨張すると温度 $T_{\mathrm{AB}}$ の等温線より下に行く、と図でも分かる)。

(3) の内部エネルギーは温度だけで決まるので、A→B(等温)の0と B→C を合わせて、両端 A と C の温度で求まる。(4) は温度と体積の関係を聞いているので、ポアソンの式を最初から T と V の形 $TV^{\frac23}=$ 一定 にして使う。

  1. A→B は等温なので $pV$ が一定。 $p_{\mathrm{B}}V_{\mathrm{B}}=p_{\mathrm{A}}V_{\mathrm{A}}$ から $p_{\mathrm{B}}$ を求める((1))。
  2. B→C は断熱なので $Q=0$。第一法則 $0=\Delta U+W$ と膨張の $W>0$ から $\Delta U<0$、温度が下がることを導く((2))。
  3. A→B は $\Delta U=0$、B→C は温度が $T_{\mathrm{AB}}$ から $T_{\mathrm{CD}}$ に変わるので、 $\Delta U=\dfrac32nR(T_{\mathrm{CD}}-T_{\mathrm{AB}})$((3))。
  4. $pV^{\frac53}=$ 一定 に状態方程式を入れて $TV^{\frac23}=$ 一定 にし、B と C で立てて $\dfrac{V_{\mathrm{C}}}{V_{\mathrm{B}}}$ を求める((4))。

【問2の方針】

着眼点

ゴールは (3) の熱効率で、答えはカルノーサイクルの熱効率 $1-\dfrac{T_{\mathrm{CD}}}{T_{\mathrm{AB}}}$(2つの温度だけで決まる有名な結果)。区間が4つあるサイクルなので、第一法則を表 $Q\,|\,\Delta U+W$ で整理する。等温の2区間は $\Delta U=0$ で $Q=W$、断熱の2区間は $Q=0$ で $W=-\Delta U$。熱を吸収するのは等温膨張の A→B だけ、放出するのは等温圧縮の C→D だけ(下の図)。だから $Q_{\mathrm{in}}=W_{\mathrm{AB}}$、 $Q_{\mathrm{out}}=-W_{\mathrm{CD}}$。

2025年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
2025年九州大学物理 第3問 解答の方針の図

(2) では $V_{\mathrm{C}}$、 $V_{\mathrm{D}}$ を使えない。 $Q_{\mathrm{out}}$ には $\log_e\dfrac{V_{\mathrm{C}}}{V_{\mathrm{D}}}$ が出てくるので、断熱の2本(B→C と D→A)に $TV^{\frac23}=$ 一定 を立てて割ると、 $\dfrac{V_{\mathrm{C}}}{V_{\mathrm{D}}}=\dfrac{V_{\mathrm{B}}}{V_{\mathrm{A}}}$ にそろう。2本の断熱線は同じ2つの温度 $T_{\mathrm{AB}}$、 $T_{\mathrm{CD}}$ をつないでいるので、体積の比も同じになる。これで (3) の $\log_e$ が約分される。

(4) は計算する前にサイクルの形を見る。熱機関Ⅲは A→E(温度 $T_{\mathrm{AB}}$ の等温)→F(断熱)→C→D(温度 $T_{\mathrm{CD}}$ の等温)→A(断熱)で、等温2本と断熱2本=熱機関Ⅰと同じ2つの温度の間のカルノーサイクル。だから (3) の結果がそのまま使えて $e_{\mathrm{III}}=e_{\mathrm{I}}$。熱機関ⅡとⅢは、吸収する区間がどちらも A→E だけで $Q_{\mathrm{in}}$ が同じ(Ⅱの E→C は定積で温度が下がるので放出)。なので熱効率の大小は、仕事=囲む面積の大小で決まる(下の図)。

2025年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
2025年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
  1. 各区間が何変化かを決め、表 $Q\,|\,\Delta U+W$ に0になる項を先に入れる。
  2. A→B は $W_{\mathrm{AB}}=Q_{\mathrm{in}}$(ア)、C→D は $W_{\mathrm{CD}}=-Q_{\mathrm{out}}$(ウ)。
  3. 断熱は $W=-\Delta U$。B→C は温度が $T_{\mathrm{AB}}$ から $T_{\mathrm{CD}}$ へ、D→A はその逆で、イ・エを求める。
  4. 与えられた等温の仕事の式で $Q_{\mathrm{in}}=W_{\mathrm{AB}}$、 $Q_{\mathrm{out}}=-W_{\mathrm{CD}}$ を表す。断熱2本の $TV^{\frac23}=$ 一定 を辺々割って $\dfrac{V_{\mathrm{C}}}{V_{\mathrm{D}}}=\dfrac{V_{\mathrm{B}}}{V_{\mathrm{A}}}$ にし、 $V_{\mathrm{C}}$、 $V_{\mathrm{D}}$ を消す((2))。
  5. $e_{\mathrm{I}}=\dfrac{W}{Q_{\mathrm{in}}}=1-\dfrac{Q_{\mathrm{out}}}{Q_{\mathrm{in}}}$ に入れて約分する((3))。
  6. 熱機関Ⅲがカルノーサイクルなので $e_{\mathrm{III}}=e_{\mathrm{I}}$。ⅡとⅢは $Q_{\mathrm{in}}$ が同じで、囲む面積はⅢの方が大きいので $e_{\mathrm{II}}<e_{\mathrm{III}}$((4))。

【問3の方針】

着眼点

(1) は問1 (4) と同じ計算を、比熱比 $\dfrac75$( $TV^{\frac25}=$ 一定)でくり返すだけ。

(2) で見ることは2つ。① $\mathrm{C’}$ ・ $\mathrm{D’}$ の温度は $T_{\mathrm{CD}}$ なので、C・D と同じ等温線(熱機関Ⅰの下の曲線)の上にある。② 比熱比が小さいほど断熱線はゆるく、等温線に近づく。だから B から同じ温度 $T_{\mathrm{CD}}$ まで下がるには、二原子分子の方が大きく膨張する。 $\mathrm{C’}$ は C より右、同じく $\mathrm{D’}$ は D より右(下の図)。この2つで選択肢を絞る。

2025年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
2025年九州大学物理 第3問 解答の方針の図
  1. B→ $\mathrm{C’}$ に $TV^{\frac25}=$ 一定 を立てて $\dfrac{V_{\mathrm{C’}}}{V_{\mathrm{B}}}$ を求め、問1 (4) の $\dfrac{V_{\mathrm{C}}}{V_{\mathrm{B}}}$ で割って $\dfrac{V_{\mathrm{C’}}}{V_{\mathrm{C}}}$ を求める((1))。
  2. $\mathrm{C’}$ ・ $\mathrm{D’}$ が C・D と同じ等温線の上にある選択肢に絞る((b) と (e))。
  3. (1) の比が1より大きい( $\mathrm{C’}$ は C より右)ことから (e) を選ぶ。A→ $\mathrm{D’}$ も同じ計算で $\mathrm{D’}$ が D より右にあることを確かめる((2))。

解答

2025年九州大学物理 第3問 解答・解説
2025年九州大学物理 第3問 解答・解説
2025年九州大学物理 第3問 解答・解説(続き)
2025年九州大学物理 第3問 解答・解説(続き)
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問1 (1)

A→B は等温変化なので、状態方程式 $pV=nRT$ の右辺 $nRT_{\mathrm{AB}}$ が一定。 $pV$ が一定(ボイルの法則)なので

$$p_{\mathrm{B}}V_{\mathrm{B}}=p_{\mathrm{A}}V_{\mathrm{A}}\qquad\therefore\ p_{\mathrm{B}}=\frac{V_{\mathrm{A}}}{V_{\mathrm{B}}}p_{\mathrm{A}}$$

答 $p_{\mathrm{B}}=\dfrac{V_{\mathrm{A}}}{V_{\mathrm{B}}}p_{\mathrm{A}}$(3点)

問1 (2)

B→C は断熱なので、気体が得る熱量は $Q=0$(ア:ゼロ)。体積が増える(膨張する)ので、気体が外部にする仕事は $W>0$(イ:正)。第一法則 $Q=\Delta U+W$ より

$$0=\Delta U+W\qquad\therefore\ \Delta U=-W<0$$

内部エネルギーは減少する(ウ)。内部エネルギー $\dfrac32nRT$ は温度だけで決まるので、温度も下がり $T_{\mathrm{AB}}>T_{\mathrm{CD}}$(エ)。

答 ④(3点)

問1 (3)

A→B は等温なので $\Delta U_{\mathrm{AB}}=0$。内部エネルギーは温度だけで決まるので、A→B→C 全体の変化は、両端の A(温度 $T_{\mathrm{AB}}$)と C(温度 $T_{\mathrm{CD}}$)の温度で決まる。「後−前」で

$$\Delta U=\frac32nRT_{\mathrm{CD}}-\frac32nRT_{\mathrm{AB}}=\frac32nR(T_{\mathrm{CD}}-T_{\mathrm{AB}})$$

答 $\Delta U=\dfrac32nR(T_{\mathrm{CD}}-T_{\mathrm{AB}})$(3点)

((2) より $T_{\mathrm{CD}}<T_{\mathrm{AB}}$ なので $\Delta U<0$。断熱膨張で内部エネルギーが減ることと合う)

問1 (4)

温度と体積の関係を聞かれているので、ポアソンの式を T と V の形にする。 $pV^{\frac53}=$ 一定 に状態方程式 $p=\dfrac{nRT}{V}$ を入れると $nRTV^{\frac23}=$ 一定、つまり $TV^{\frac23}=$ 一定。B(温度 $T_{\mathrm{AB}}$)と C(温度 $T_{\mathrm{CD}}$)で

$$T_{\mathrm{AB}}V_{\mathrm{B}}^{\frac23}=T_{\mathrm{CD}}V_{\mathrm{C}}^{\frac23}\qquad\therefore\ \left(\frac{V_{\mathrm{C}}}{V_{\mathrm{B}}}\right)^{\frac23}=\frac{T_{\mathrm{AB}}}{T_{\mathrm{CD}}}$$

両辺を $\dfrac32$ 乗して

答 $\dfrac{V_{\mathrm{C}}}{V_{\mathrm{B}}}=\left(\dfrac{T_{\mathrm{AB}}}{T_{\mathrm{CD}}}\right)^{\frac32}$(3点)

( $T_{\mathrm{AB}}>T_{\mathrm{CD}}$ なので比は1より大きい。膨張なので合う)

問2 (1)

4つの区間を、第一法則 $Q=\Delta U+W$( $Q$ は吸収した熱量、 $W$ は気体がした仕事。どちらも符号つき)の表で整理する。等温は $\Delta U=0$、断熱は $Q=0$ を先に入れる。

| 区間 | 変化 | $Q$ | $\Delta U$ | $W$ |

|—|—|—|—|—|

| A→B | 等温 | $Q_{\mathrm{in}}$ | 0 | $Q_{\mathrm{in}}$ |

| B→C | 断熱 | 0 | $\dfrac32nR(T_{\mathrm{CD}}-T_{\mathrm{AB}})$ | $-\Delta U$ |

| C→D | 等温 | $-Q_{\mathrm{out}}$ | 0 | $-Q_{\mathrm{out}}$ |

| D→A | 断熱 | 0 | $\dfrac32nR(T_{\mathrm{AB}}-T_{\mathrm{CD}})$ | $-\Delta U$ |

熱を吸収するのは A→B だけ(等温で膨張するので $Q=W>0$)、放出するのは C→D だけ(等温で圧縮するので $Q=W<0$)。断熱の2区間は熱のやりとりがない。だから1サイクルで吸収した熱量 $Q_{\mathrm{in}}$ は A→B の熱、放出した熱量の大きさ $Q_{\mathrm{out}}$ は C→D の熱の大きさ。A→B は $\Delta U=0$ で $Q=W$ なので

答(ア) $W_{\mathrm{AB}}=Q_{\mathrm{in}}$(2点)

B→C は $Q=0$ なので $W_{\mathrm{BC}}=-\Delta U_{\mathrm{BC}}$。温度は $T_{\mathrm{AB}}$ から $T_{\mathrm{CD}}$ に下がるので

答(イ) $W_{\mathrm{BC}}=\dfrac32nR(T_{\mathrm{AB}}-T_{\mathrm{CD}})$(2点)

C→D は $\Delta U=0$ で $W=Q$。気体は熱を $Q_{\mathrm{out}}$ だけ放出する(吸収した熱量は $-Q_{\mathrm{out}}$)ので

答(ウ) $W_{\mathrm{CD}}=-Q_{\mathrm{out}}$(2点)

D→A も $Q=0$ で $W_{\mathrm{DA}}=-\Delta U_{\mathrm{DA}}$。温度は $T_{\mathrm{CD}}$ から $T_{\mathrm{AB}}$ に上がるので

答(エ) $W_{\mathrm{DA}}=-\dfrac32nR(T_{\mathrm{AB}}-T_{\mathrm{CD}})$(2点)

(断熱の2区間の仕事は打ち消し合うので、1サイクルの仕事は $W=Q_{\mathrm{in}}-Q_{\mathrm{out}}$)

問2 (2)

A→B の仕事は、与えられた等温の仕事の式で

$$Q_{\mathrm{in}}=W_{\mathrm{AB}}=nRT_{\mathrm{AB}}\log_e\frac{V_{\mathrm{B}}}{V_{\mathrm{A}}}$$

C→D の仕事は

$$W_{\mathrm{CD}}=nRT_{\mathrm{CD}}\log_e\frac{V_{\mathrm{D}}}{V_{\mathrm{C}}}\qquad\therefore\ Q_{\mathrm{out}}=-W_{\mathrm{CD}}=nRT_{\mathrm{CD}}\log_e\frac{V_{\mathrm{C}}}{V_{\mathrm{D}}}$$

$V_{\mathrm{C}}$、 $V_{\mathrm{D}}$ は使えないので、断熱の2本で体積の比を書きかえる。問1 (4) と同じ $TV^{\frac23}=$ 一定 を B→C と D→A に立てると

$$T_{\mathrm{AB}}V_{\mathrm{B}}^{\frac23}=T_{\mathrm{CD}}V_{\mathrm{C}}^{\frac23},\qquad T_{\mathrm{AB}}V_{\mathrm{A}}^{\frac23}=T_{\mathrm{CD}}V_{\mathrm{D}}^{\frac23}$$

辺々割ると

$$\left(\frac{V_{\mathrm{B}}}{V_{\mathrm{A}}}\right)^{\frac23}=\left(\frac{V_{\mathrm{C}}}{V_{\mathrm{D}}}\right)^{\frac23}\qquad\therefore\ \frac{V_{\mathrm{C}}}{V_{\mathrm{D}}}=\frac{V_{\mathrm{B}}}{V_{\mathrm{A}}}$$

(2本の断熱線は同じ2つの温度をつないでいるので、体積の比がそろう)

よって $Q_{\mathrm{out}}=nRT_{\mathrm{CD}}\log_e\dfrac{V_{\mathrm{B}}}{V_{\mathrm{A}}}$。

答 $Q_{\mathrm{in}}=nRT_{\mathrm{AB}}\log_e\dfrac{V_{\mathrm{B}}}{V_{\mathrm{A}}}$、 $Q_{\mathrm{out}}=nRT_{\mathrm{CD}}\log_e\dfrac{V_{\mathrm{B}}}{V_{\mathrm{A}}}$(5点)

問2 (3)

1サイクルで内部エネルギーはもとに戻る( $\Delta U=0$)ので、1サイクルの仕事は $W=Q_{\mathrm{in}}-Q_{\mathrm{out}}$。熱効率は

$$e_{\mathrm{I}}=\frac{W}{Q_{\mathrm{in}}}=1-\frac{Q_{\mathrm{out}}}{Q_{\mathrm{in}}}=1-\frac{nRT_{\mathrm{CD}}\log_e\dfrac{V_{\mathrm{B}}}{V_{\mathrm{A}}}}{nRT_{\mathrm{AB}}\log_e\dfrac{V_{\mathrm{B}}}{V_{\mathrm{A}}}}=1-\frac{T_{\mathrm{CD}}}{T_{\mathrm{AB}}}$$

答 $e_{\mathrm{I}}=1-\dfrac{T_{\mathrm{CD}}}{T_{\mathrm{AB}}}$(3点)

(熱効率は0と1の間の値なので、「1 −(正の数)」の形で答える。体積によらず2つの温度だけで決まるのが、カルノーサイクルの熱効率)

問2 (4)

熱機関Ⅲは、A→B→E が温度 $T_{\mathrm{AB}}$ の等温、E→F が断熱、F→C→D が温度 $T_{\mathrm{CD}}$ の等温、D→A が断熱。等温2本と断熱2本でできた、熱機関Ⅰと同じ2つの温度 $T_{\mathrm{AB}}$、 $T_{\mathrm{CD}}$ の間のカルノーサイクルなので、(1)〜(3) と同じ計算(体積を $V_{\mathrm{B}}\to V_{\mathrm{E}}$、 $V_{\mathrm{C}}\to V_{\mathrm{F}}$ と読みかえる)で

$$e_{\mathrm{III}}=1-\frac{T_{\mathrm{CD}}}{T_{\mathrm{AB}}}=e_{\mathrm{I}}$$

熱機関Ⅱが吸収するのは、等温膨張の A→B→E だけ。E→C は定積で温度が $T_{\mathrm{AB}}$ から $T_{\mathrm{CD}}$ に下がるので $Q=\Delta U<0$(放出)、C→D は等温圧縮で放出、D→A は断熱。熱機関Ⅲが吸収するのも A→B→E だけ(E→F は断熱、F→C→D は等温圧縮で放出)。だからⅡとⅢの $Q_{\mathrm{in}}$ は同じ。

仕事は囲む面積。Ⅲの面積は、Ⅱの面積に E→F→C で囲む部分を足したものなので $W_{\mathrm{II}}<W_{\mathrm{III}}$(下の図)。

$Q_{\mathrm{in}}$ が同じで仕事はⅡの方が小さいので

$$e_{\mathrm{II}}=\frac{W_{\mathrm{II}}}{Q_{\mathrm{in}}}<\frac{W_{\mathrm{III}}}{Q_{\mathrm{in}}}=e_{\mathrm{III}}=e_{\mathrm{I}}$$

答 ⑤(4点)

問3 (1)

二原子分子でも同じように、 $pV^{\frac75}=$ 一定 に状態方程式を入れると $TV^{\frac25}=$ 一定。B(温度 $T_{\mathrm{AB}}$)と $\mathrm{C’}$(温度 $T_{\mathrm{CD}}$)で

$$T_{\mathrm{AB}}V_{\mathrm{B}}^{\frac25}=T_{\mathrm{CD}}V_{\mathrm{C’}}^{\frac25}\qquad\therefore\ \frac{V_{\mathrm{C’}}}{V_{\mathrm{B}}}=\left(\frac{T_{\mathrm{AB}}}{T_{\mathrm{CD}}}\right)^{\frac52}$$

状態 A→B は熱機関Ⅰと同じなので $V_{\mathrm{B}}$ も同じ。問1 (4) の $\dfrac{V_{\mathrm{C}}}{V_{\mathrm{B}}}=\left(\dfrac{T_{\mathrm{AB}}}{T_{\mathrm{CD}}}\right)^{\frac32}$ で割って

$$\frac{V_{\mathrm{C’}}}{V_{\mathrm{C}}}=\left(\frac{T_{\mathrm{AB}}}{T_{\mathrm{CD}}}\right)^{\frac52-\frac32}=\frac{T_{\mathrm{AB}}}{T_{\mathrm{CD}}}$$

答 $\dfrac{V_{\mathrm{C’}}}{V_{\mathrm{C}}}=\dfrac{T_{\mathrm{AB}}}{T_{\mathrm{CD}}}$(3点)

( $T_{\mathrm{AB}}>T_{\mathrm{CD}}$ なので1より大きい。 $\mathrm{C’}$ は C より右)

問3 (2)

① $\mathrm{C’}$ ・ $\mathrm{D’}$ の温度は $T_{\mathrm{CD}}$ なので、C・D と同じ温度 $T_{\mathrm{CD}}$ の等温線(破線のサイクルの下の曲線)の上にある。この曲線の上に $\mathrm{C’}$ ・ $\mathrm{D’}$ がのっているのは (b) と (e)。

② (1) より $V_{\mathrm{C’}}>V_{\mathrm{C}}$ で、 $\mathrm{C’}$ は C より右。A→ $\mathrm{D’}$ も断熱なので、同じく $TV^{\frac25}=$ 一定 と問2 (2) の $T_{\mathrm{AB}}V_{\mathrm{A}}^{\frac23}=T_{\mathrm{CD}}V_{\mathrm{D}}^{\frac23}$ から $\dfrac{V_{\mathrm{D’}}}{V_{\mathrm{D}}}=\dfrac{T_{\mathrm{AB}}}{T_{\mathrm{CD}}}>1$ で、 $\mathrm{D’}$ も D より右。(b) は $\mathrm{C’}$ が C より左なので違う。

二原子分子の断熱線(B→ $\mathrm{C’}$、 $\mathrm{D’}$ →A)は単原子分子の断熱線よりゆるく、破線の断熱線より上を通る。これも (e) と合う(下の図)。

答 (e)(5点)

別解

問1 (4) (圧力の形のポアソンの式から) $pV^{\frac53}=$ 一定 を B と C で立て、圧力を状態方程式 $p=\dfrac{nRT}{V}$ で温度に直す。

$$\frac{nRT_{\mathrm{AB}}}{V_{\mathrm{B}}}V_{\mathrm{B}}^{\frac53}=\frac{nRT_{\mathrm{CD}}}{V_{\mathrm{C}}}V_{\mathrm{C}}^{\frac53}\qquad\therefore\ T_{\mathrm{AB}}V_{\mathrm{B}}^{\frac23}=T_{\mathrm{CD}}V_{\mathrm{C}}^{\frac23}$$

で、本解と同じ式になる。温度が出てくる問題では、最初から T と V の形を使う方が式が1本少なくて済む。

出題意図

問1 (1)〜(4) 等温・断熱のそれぞれで何が一定で何が0になるかを押さえ、圧力・内部エネルギーの変化・体積比を求めることができるか

問2 (1)〜(3) 各過程の仕事と熱を第一法則で整理し、カルノーサイクルの熱効率が2つの温度だけで決まることを導くことができるか

問2 (4) 過程を置きかえた熱機関の熱効率を、吸収した熱量と囲む面積から比べることができるか

問3 (1)(2) 比熱比が変わると断熱線の傾きがどう変わるかを捉え、正しい p-V グラフを選ぶことができるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや難
目標得点25点20点
目標時間20分25分

問1は、熱サイクルの基本的な解き方が理解できているかだけを問う小問。
この基本で前半は取り切れる。
差がつくのは後半の熱効率の比較と、p–V グラフの再現。
熱効率は直接計算するのではなく、共通する部分に注目して比べる。

差がつく所・失点しやすい所

  • 問2 (4):熱効率を直接計算せず、2つのサイクルで共通する部分(吸収した熱量・囲む面積)に注目して比べる、という発想に行き着けるか(下のコラム)。
  • 問3 (2):等温線・断熱線との位置関係から、p–V グラフを自分で再現できるか。
  • 問2 (2):断熱の2本にポアソンの式を立てて割り、 $\dfrac{V_{\mathrm{C}}}{V_{\mathrm{D}}}=\dfrac{V_{\mathrm{B}}}{V_{\mathrm{A}}}$ にそろえられるか。

コラム 熱効率の比べ方

熱サイクルの問題では、「どちらの熱効率が大きいか」を比べさせる問題がよく出る。このとき、熱効率を1つずつ計算して比べると時間がかかるうえに、計算ミスもしやすい。比べるときは、熱効率の定義

$$e=\frac{W}{Q_{\mathrm{in}}}\qquad(W\ \text{は1サイクルの仕事,}Q_{\mathrm{in}}\ \text{は吸収した熱量})$$

に立ち返り、2つのサイクルで共通している部分を探す。

  • 吸収した熱量が同じなら、仕事(p–V グラフで囲む面積)が大きい方が熱効率は大きい:この大問の問2 (4) がこれ。熱機関Ⅱ・Ⅲはどちらも熱を吸収するのが A→E だけなので $Q_{\mathrm{in}}$ が同じ。あとは囲む面積を比べればよく、Ⅲの方が面積が大きいので $e_{\mathrm{II}}<e_{\mathrm{III}}$。
  • 仕事が同じなら、吸収した熱量が小さい方が熱効率は大きい。
  • 形が違う部分だけを比べる:2つのサイクルが一部の過程を共有しているときは、共通の部分は打ち消して、違う部分の面積や熱だけを比べる。
  • カルノーサイクルに戻っていないかを見る:等温2本と断熱2本でできたサイクル(カルノーサイクル)の熱効率は $1-\dfrac{T_{\text{低}}}{T_{\text{高}}}$ で、2つの温度だけで決まる。置きかえたサイクルがカルノーサイクルになっていれば、計算せずにこの式が使える(問2 (4) の熱機関Ⅲ)。

熱効率の比較は、計算力ではなく「何が共通で、何が違うか」を見抜く力で差がつく。p–V グラフを書いて、共通する部分に印を付けてから比べよう。

2025年九州大学・物理の
講評とまとめ

3問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。

大問難易度医学部医学科その他の学部
第1問やや簡単45点35点
第2問やや簡単40点30点
第3問やや難25点20点
合計110点85点

易しいセットでした。
第1問は運動をイメージして速度の向きに気をつけるだけ、第2問は良問の風レベルの荷電粒子と電磁誘導で、どちらも満点を取りたいところです。
難しいのは第3問の後半の熱効率の比較だけで、熱効率を直接計算せずに、共通する部分に注目して比べる型を持っているかで差がつきます。
医学部医学科は110点、ほかの学部でも85点は取りたいところです。

解く流れ

第1問 → 第2問 → 第3問。

2025年九州大学・物理に
関するよくある質問

2025年の九州大学・物理について、よく聞かれる質問にお答えします。

2025年の九州大学・物理は難しかった?

やや簡単な年でした。
第1問・第2問はやや簡単、第3問はやや難(前半は簡単で、難しいのは後半の熱効率の比較だけ)です。

2025年の九州大学・物理は何点取れば合格できる?

目標点は、医学部医学科で110点、その他の学部で85点です(125点満点)。

2025年の九州大学・物理はどこで差がつく?

第1問・第2問の完答と、第3問の前半は取っておきたいところです。そのうえで、特に差がついたのは次の3つです。

  • 第1問 問2 (3)(4):振り子で戻ってくると、次の衝突の直前は2球とも速度が逆向きになると気づけたか。
  • 第2問 問1 (4):図2で左右の半円の高さがそろうことから、半径が等しいと読み取れたか。
  • 第3問 問2 (4):熱効率を直接計算せず、共通する部分(吸収した熱量・囲む面積)に注目して比べられたか。
2025年の九州大学・物理は何が出題された?

大問ごとの単元は、次のとおりです。

  • 第1問:力学
  • 第2問:電磁気
  • 第3問:熱力学

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