【解説・配点付き】2023年九州大学物理の解答・解説
2023年の九州大学・物理の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの配点付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
2023年九州大学物理
第1問 解答・解説
この記事の小問ごとの配点は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は力学の問題です。
テーマは「直線上の等加速度運動と、曲線ABC(サイクロイド)上の単振動。周期が振幅にも質量にもよらないことを使う2物体の衝突(合体)」。
問題


問題文をテキストで読む
点Oを原点とする2次元 $xy$ 座標系があり、 $xy$ 平面内での物体の運動を考える。物体は、大きさが無視できる質点とみなせるとし、 $y$ 軸の負の向きを鉛直下向きとする重力を受ける。重力加速度の大きさを $g$ とし、摩擦や空気の抵抗は無視できるものとする。また、円周率を $\pi$ と表す。以下の問いに答えよ。
問1. まず、図1に示すように、質量 $m$ の物体が点 $\mathrm{A}(0,\ 2L)$ および点 $\mathrm{B}(\pi L,\ 0)$ $(L>0)$ を通る直線AB上を運動する。点Aを基準とし、A→Bの向きを正として、直線ABに沿った物体の変位を $s$ とする。物体の変位が $s$ であるとき、直線ABの方向は $s$ が増える向き(A→B)を正とし、直線ABの方向が鉛直下向きとなす角度を $\theta$ とする。時刻 $t=0$ で、物体は点A $(s=0)$ にあり、初速度は0(ゼロ)であった。
(1) 時刻 $t$ のとき、物体は、変位 $s$ の位置にあり、直線ABの方向の加速度 $\alpha$ をもつとする。物体の直線ABの方向の運動方程式を書け。ここで、解答に角度 $\theta$ を用いてよい。
(2) 物体が点Bに到達する時刻を求めよ。ただし、解答は、加速度 $\alpha$ と角度 $\theta$ を用いずに表せ。
問2. 次に、図2に示すように、質量 $m$ の物体が点 $\mathrm{A}(0,\ 2L)$、点 $\mathrm{B}(\pi L,\ 0)$ および点 $\mathrm{C}(2\pi L,\ 2L)$ $(L>0)$ を通る滑らかな曲線ABCに沿って運動する。点Aを基準とし、A→B→Cの向きを正として、曲線ABCに沿った物体の変位を $s$ とする。物体の変位が $s$ であるとき、その位置での曲線ABCの接線の方向は $s$ が増える向き(A→B→C)を正とし、接線方向が鉛直下向きとなす角度を $\theta\ (0\leqq\theta\leqq\pi)$ とする。この曲線ABC上で、変位 $s$ と角度 $\theta$ の間には次の関係式が成り立つ。
$$s=4L(1-\cos\theta)\qquad\cdots①$$
時刻 $t=0$ で、物体は点A $(s=0)$ にあり、初速度は0(ゼロ)であった。物体は曲線ABC上で、点Bを中心とする往復運動をした。
(1) 時刻 $t$ のとき、物体は、変位 $s$ の位置にあり、曲線ABCの接線方向の加速度 $\beta$ をもつとする。物体の曲線ABCの接線方向の運動方程式を書け。ここで、解答に角度 $\theta$ を用いてよい。
(2) 式①を用いて、問2(1) で求めた運動方程式における、物体が受ける力を変位 $s$ で表せ。
(3) 物体の往復運動の周期を求めよ。
(4) 物体が点Aから点Bに曲線ABCに沿って運動する時間は、問1のように点Aから点Bに直線運動する場合の時間と比べて何倍かを求めよ。
(5) 物体が点Bに初めて到達するときの速さを求めよ。
問3. 次に、図3に示すように、図2と同じ曲線ABC上の二つの物体の運動を考える。時刻 $t=0$ で、質量 $m$ の物体は点 $\mathrm{A}(0,\ 2L)$ $(L>0)$ に、質量 $2m$ の物体は曲線BC上で $y=L$ の位置にあり、二つの物体はともに初速度0(ゼロ)で同時に運動を始めた。二つの物体は、ある時刻で完全非弾性衝突し、衝突後に合体して一つの物体となった。
(1) 二つの物体が衝突する時刻を求めよ。
(2) 衝突後に一つに合体した物体が到達する最高点の $y$ 座標を求めよ。
解答の方針
【問1の方針】
直線ABはなめらかなので、物体にはたらく力は重力 $mg$ と垂直抗力 $N$ だけ。 $N$ は直線に垂直なので、直線方向の力は重力の成分だけになる。注意するのは角 $\theta$ の測り方で、いつもの斜面のように水平から測った角ではなく、鉛直下向きから測った角になっている。そのため、直線方向の重力の成分は $mg\sin\theta$ ではなく $mg\cos\theta$ になる(90° ずれると sin と cos が入れかわる)。 $\theta$ は直線上のどこでも同じなので、加速度は一定。あとは初速度0の等加速度運動で、距離と時間の関係を使う。


- 物体にはたらく力を重力 → 垂直抗力の順に書き、A→B を正の向きとして、直線方向の重力の成分 $mg\cos\theta$ から運動方程式を立てる。
- 三平方の定理で $\mathrm{AB}=\sqrt{\pi^2+4}\,L$ を求め、AからBまでに下がる高さ $2L$ との比から $\cos\theta=\dfrac{2}{\sqrt{\pi^2+4}}$ を求める。
- 加速度 $\alpha=g\cos\theta$ が一定なので、初速度0の等加速度運動の式 $\mathrm{AB}=\dfrac12\alpha t^2$ からBに着く時刻を求める。
【問2の方針】
曲線の上でも、接線方向に注目すれば問1と同じ。垂直抗力は接線に垂直なので、接線方向の力は重力の成分 $mg\cos\theta$ だけ(問1の直線を、その点での接線に置きかえただけ)。ただし今度は $\theta$ が位置によって変わるので、加速度は一定ではない。


そこで式① $s=4L(1-\cos\theta)$ を $\cos\theta$ について解き、 $\cos\theta=1-\dfrac{s}{4L}$ として力を $s$ だけで表す。すると力は $-\dfrac{mg}{4L}(s-4L)$ と、$s$ の1次式で、前にマイナスがつく形になる。これは「 $s=4L$ からのずれに比例し、ずれと逆向きにはたらく力」なので、点B( $s=4L$)を中心とし、単振動定数 $K=\dfrac{mg}{4L}$ の単振動である。曲線の上の運動でも、 $s$ という1本の座標で見れば、ばねにつながれた物体とまったく同じ式になる。式①はそのために与えられている。
単振動と分かれば、あとは決まった手順で進む。周期は質量と単振動定数から $T=2\pi\sqrt{\dfrac mK}$。物体はA( $s=0$)で速さ0なのでAは振動の端、Bは中心で、端から中心までは $\dfrac14$ 周期。Bでの速さは、垂直抗力が仕事をしないので力学的エネルギー保存で求まる(高さ $2L$ を下りる)。
- A→B→C を正の向きとして、接線方向の重力の成分 $mg\cos\theta$ から運動方程式 $m\beta=mg\cos\theta$ を立てる。
- 式①から $\cos\theta=1-\dfrac{s}{4L}$ を求め、物体が受ける力を $-\dfrac{mg}{4L}(s-4L)$ の形に表す。
- $m\beta=-\dfrac{mg}{4L}(s-4L)$ から、中心 $s=4L$(点B)と単振動定数 $K=\dfrac{mg}{4L}$ を読み、周期 $T=2\pi\sqrt{\dfrac mK}$ を求める。
- Aは速さ0の位置なので振動の端、Bは中心。AからBまでの時間 $\dfrac T4$ を求め、問1の時間で割って何倍かを求める。
- 垂直抗力は運動の向きと垂直で仕事をしないので、力学的エネルギー保存(AとBの高さの差 $2L$)からBでの速さを求める。
【問3の方針】
質量 $2m$ の物体も同じ曲線の上にあるので、運動方程式は問2の $m$ を $2m$ にしただけの $2m\beta=-\dfrac{2mg}{4L}(s-4L)$。単振動定数も2倍になるので、周期 $2\pi\sqrt{\dfrac{2m}{\ \dfrac{2mg}{4L}\ }}=4\pi\sqrt{\dfrac Lg}$ は質量によらず同じ。また、周期の式に振幅は入っていないので、どこから放しても周期は同じ(この曲線の上では、大きく振れても正確に単振動する)。
2つの物体はどちらも初速度0で放されるので、放した位置がそれぞれの振動の端で、中心はどちらも点B。端から中心までは $\dfrac14$ 周期なので、2つの物体は同じ時刻 $\dfrac T4$ に、反対側から点Bに着いて衝突する。
曲線上の高さ $y$ を $s$ で表すと $y=\dfrac{(s-4L)^2}{8L}$ になる(別解 問3 (2))。これを使うと、 $2m$ の出発点( $y=L$)は $s=4L+2\sqrt2L$ で、振幅は $m$ が $4L$、 $2m$ が $2\sqrt2L$。振幅は違っても、Bに着く時刻は同じ(下の図)。


衝突の瞬間、点Bでの接線は水平で、2物体が受ける外力(重力・垂直抗力)はどちらも鉛直。水平方向の力は2物体の間の内力だけなので、水平方向の運動量が保存する。衝突の直前の速さは、それぞれの出発点の高さ( $2L$ と $L$)からの力学的エネルギー保存で求まる。合体した後も垂直抗力は仕事をしないので、最高点の高さも力学的エネルギー保存で求まる。
- $2m$ の物体も中心B・周期 $4\pi\sqrt{\dfrac Lg}$ の単振動をすることを示す。2物体とも放した位置が端なので、時刻 $\dfrac T4$ に同時に点Bに着いて衝突する。
- A→B→C を正の向きとして、力学的エネルギー保存から衝突の直前の速度を求める( $m$ は $+2\sqrt{gL}$、 $2m$ は $-\sqrt{2gL}$)。
- 点Bでは外力が鉛直なので、水平方向の運動量保存から合体後の速度 $V$ を求める。
- 合体後の力学的エネルギー保存 $\dfrac12(3m)V^2=3mgy$ から、最高点の $y$ 座標を求める。
解答




解答をテキストで読む
問1 (1)
物体にはたらく力は、重力 $mg$(鉛直下向き)と、直線ABからの垂直抗力 $N$(直線に垂直)だけ。 $\theta$ は直線の向きが鉛直下向きとなす角なので、重力の直線方向(A→B を正)の成分は $mg\cos\theta$。 $N$ は直線方向の成分をもたない。よって直線方向の運動方程式は
答 $m\alpha=mg\cos\theta$(4点)
問1 (2)
三平方の定理より
$$\mathrm{AB}=\sqrt{(\pi L)^2+(2L)^2}=\sqrt{\pi^2+4}\,L$$
AからBまでに高さが $2L$ 下がるので
$$\cos\theta=\frac{2L}{\mathrm{AB}}=\frac{2}{\sqrt{\pi^2+4}}$$
(1) より $\alpha=g\cos\theta$ は一定なので、物体は初速度0の等加速度運動をする。時間と距離の関係 $s=\dfrac12\alpha t^2$ を使い、Bに着く時刻を $t_1$ とすると
$$\sqrt{\pi^2+4}\,L=\frac12\cdot\frac{2g}{\sqrt{\pi^2+4}}\,t_1^{\,2}\qquad\therefore\ t_1^{\,2}=\frac{(\pi^2+4)L}{g}$$
答 $\sqrt{\dfrac{(\pi^2+4)L}{g}}$(6点)
問2 (1)
曲線はなめらかなので、垂直抗力は接線に垂直。接線方向(A→B→C を正)の力は重力の成分 $mg\cos\theta$ だけで(問1と同じ)、接線方向の運動方程式は
答 $m\beta=mg\cos\theta$(4点)
問2 (2)
式① $s=4L(1-\cos\theta)$ より $\cos\theta=1-\dfrac{s}{4L}$。これを (1) の右辺に代入して
$$mg\cos\theta=mg\left(1-\frac{s}{4L}\right)=-\frac{mg}{4L}(s-4L)$$
答 $-\dfrac{mg}{4L}(s-4L)$( $mg\left(1-\dfrac{s}{4L}\right)$ と同じ)(5点)
問2 (3)
(2) より、運動方程式は
$$m\beta=-\frac{mg}{4L}(s-4L)$$
これは「(質量)×(加速度)= $-K(s-s_0)$」の形なので、物体は $s=4L$(点B)を中心とし、単振動定数 $K=\dfrac{mg}{4L}$ の単振動をする。周期は
$$T=2\pi\sqrt{\frac mK}=2\pi\sqrt{\frac{4L}{g}}=4\pi\sqrt{\frac Lg}$$
答 $4\pi\sqrt{\dfrac Lg}$(5点)
問2 (4)
物体はA( $s=0$)で速さ0なので、Aは振動の端。B( $s=4L$)は振動の中心。端から中心までは $\dfrac14$ 周期なので、AからBまでの時間は
$$\frac T4=\pi\sqrt{\frac Lg}$$
問1の時間 $\sqrt{\dfrac{(\pi^2+4)L}{g}}$ と比べて
$$\frac{\pi\sqrt{\dfrac Lg}}{\sqrt{\dfrac{(\pi^2+4)L}{g}}}=\frac{\pi}{\sqrt{\pi^2+4}}$$
( $\pi^2<\pi^2+4$ なので1より小さい。最初に急な曲線を下りて速さをかせぐ分、直線よりも早くBに着く)
答 $\dfrac{\pi}{\sqrt{\pi^2+4}}$ 倍(5点)
問2 (5)
垂直抗力は運動の向き(接線)と垂直で仕事をしないので、力学的エネルギーが保存する。Bを高さの基準にすると、Aの高さは $2L$。Bに初めて着くときの速さを $v$ とすると
$$0+mg\cdot2L=\frac12mv^2+0\qquad\therefore\ v=2\sqrt{gL}$$
答 $2\sqrt{gL}$(6点)
問3 (1)
質量 $2m$ の物体の接線方向の運動方程式は、問2 (2) と同じようにして
$$2m\beta=-\frac{2mg}{4L}(s-4L)$$
中心は同じ $s=4L$(点B)、単振動定数は $\dfrac{2mg}{4L}$ で、周期は
$$2\pi\sqrt{\frac{2m}{\ \dfrac{2mg}{4L}\ }}=4\pi\sqrt{\frac Lg}=T$$
と、質量 $m$ の物体と同じ(周期は質量にも振幅にもよらない)。2つの物体はどちらも初速度0で放されるので、放した位置がそれぞれの振動の端。端から中心Bまでは $\dfrac T4$ なので、2つの物体は同じ時刻 $\dfrac T4$ に、反対側からBに着く。それまでは $m$ は曲線AB上、 $2m$ は曲線BC上にあって出会わないので、衝突は点Bで起こる。
答 $\pi\sqrt{\dfrac Lg}$(5点)
問3 (2)
A→B→C の向きを正とし、Bを高さの基準にする。衝突の直前の速度は、力学的エネルギー保存より次のとおり。
質量 $m$:高さ $2L$ から下りるので、問2 (5) と同じく $+2\sqrt{gL}$。
質量 $2m$:高さ $L$ から下りるので $\dfrac12(2m)v^2=2mgL$ より速さは $\sqrt{2gL}$。C側からA側へ動くので、速度は $-\sqrt{2gL}$。
点Bでの接線は水平で、衝突の瞬間に2物体が受ける外力(重力・垂直抗力)はどちらも鉛直。水平方向の力は2物体の間の内力だけなので、水平方向の運動量が保存する。完全非弾性衝突で合体した後の速度を $V$ として
$$3mV=m\cdot2\sqrt{gL}+2m\left(-\sqrt{2gL}\right)\qquad\therefore\ V=-\frac{2(\sqrt2-1)}{3}\sqrt{gL}$$
$V<0$ なので、合体した物体はA側へ動く( $2m$ の物体の運動量の方が大きい)。
合体後も垂直抗力は仕事をしないので、力学的エネルギーが保存する。最高点(速さ0)の $y$ 座標を $y_1$ とすると
$$\frac12(3m)V^2=3mgy_1\qquad\therefore\ y_1=\frac{V^2}{2g}=\frac{4(\sqrt2-1)^2gL}{9}\cdot\frac{1}{2g}=\frac{2(\sqrt2-1)^2}{9}L$$
$(\sqrt2-1)^2=3-2\sqrt2$ なので $y_1=\dfrac{2(3-2\sqrt2)}{9}L$(約 $0.038L$)。最高点の高さは $V^2$ だけで決まるので、A側・C側のどちらへ動いても同じになる。
答 $\dfrac{2(3-2\sqrt2)}{9}L$( $\dfrac{2(\sqrt2-1)^2}{9}L$ と同じ)(5点)
別解
問2 (5)
単振動のエネルギー保存で求める(授業で教えている単振動の型)。 $s=4L$ からのずれを使って、 $\dfrac12mv^2+\dfrac12K(s-4L)^2$ が一定。A( $s=0$、速さ0)とB( $s=4L$)で
$$\frac12K(4L)^2=\frac12mv^2\qquad\therefore\ v=4L\sqrt{\frac Km}=4L\sqrt{\frac{g}{4L}}=2\sqrt{gL}$$
中心での速さだけなら $v_{\max}=A\omega$(振幅 $A=4L$、角振動数 $\omega=\sqrt{\dfrac Km}=\dfrac12\sqrt{\dfrac gL}$)でも同じ値になる。本解は、Aからの高さ $2L$ が問題文からすぐ読めるので、力学的エネルギー保存の方が計算が短い。
問3 (2)
高さ $y$ を $s$ で表してから、単振動で衝突の直前の速さを求める。
曲線上の運動では、力学的エネルギー保存 $\dfrac12mv^2+mgy=$ 一定 と、単振動のエネルギー保存 $\dfrac12mv^2+\dfrac12K(s-4L)^2=$ 一定 が両方とも成り立つ。2式を引くと $mgy-\dfrac12K(s-4L)^2$ が一定で、B( $y=0$、 $s=4L$)では0なので
$$mgy=\frac12\cdot\frac{mg}{4L}(s-4L)^2\qquad\therefore\ y=\frac{(s-4L)^2}{8L}$$
$2m$ の物体の出発点は $y=L$ で曲線BC上なので、 $(s-4L)^2=8L^2$、 $s=4L+2\sqrt2L$。振幅は $2\sqrt2L$ で、中心Bでの速さは
$$2\sqrt2L\cdot\omega=2\sqrt2L\cdot\frac12\sqrt{\frac gL}=\sqrt{2gL}$$
となり、本解と同じ。あとは本解と同じく運動量保存と力学的エネルギー保存で $y_1=\dfrac{2(3-2\sqrt2)}{9}L$。
( $y=\dfrac{(s-4L)^2}{8L}$ は「重力の位置エネルギー $mgy$ が、ばねの弾性エネルギーと同じく中心からのずれの2乗に比例する」ことを表している。これが、この曲線の上で正確に単振動する理由)
出題意図
問1 鉛直下向きから測った角 $\theta$ で重力を分解し、直線に沿った等加速度運動として到達時刻を求めることができるか
問2 (1)〜(3) 与えられた式①で $\cos\theta$ を $s$ に置きかえ、力が $-\dfrac{mg}{4L}(s-4L)$ の形になる=点Bを中心とする単振動だと捉えることができるか
問2 (4)(5) 「端から中心までは $\dfrac14$ 周期」「中心で速さが最大」という単振動の基本が理解できているか
問3 単振動の周期が振幅にも質量にもよらないことから2物体が同時に点Bに着くと見抜き、衝突の前後を運動量保存と力学的エネルギー保存でつなぐことができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 35点 | 30点 |
| 目標時間 | 20分 | 25分 |
見たことのない曲線に見えても、やっていることは単振動の基本だけ。
式①で力が $s$ の1次式になった瞬間に、ばねの単振動と同じ問題になる。
受験生が苦手にしやすい単元だからこそ、「中心と周期を読む」「端から中心は $\dfrac14$ 周期」「周期は振幅によらない」を反射的に使えるまで演習を積もう。
差がつく所・失点しやすい所
- 問2 (2):力が $-\dfrac{mg}{4L}(s-4L)$ になった所で「曲線の上を単振動する」と気づけるか。ここを越えないと後がすべて続かない。
- 問3 (1):周期は質量にも振幅にもよらないので、2物体は同時にBに着くと気づけるか。
- 問1 (1):角が鉛直から測られているので $mg\cos\theta$( $\sin$ と取り違えやすい)。
2023年九州大学物理
第2問 解答・解説
第2問は電磁気の問題です。
テーマは「可変コンデンサーとコイルのリアクタンスを自分で導き、RLC直列回路の共振を読む」。
問題


問題文をテキストで読む
以下の問いに答えよ。
問1. 2枚の極板A、Bを用い、極板間距離 $d$ を調節可能にすることで電気容量が可変な平行板コンデンサーを作製した。 $d$ は十分に小さいとし、電気容量を $d$ の関数として $C(d)$ と表す。
(1) $C(d)$ のふるまいとして最もふさわしいものを次の①〜④の中から選べ。
① $C(d)$ は $d$ に比例する。 ② $C(d)$ は $d^2$ に比例する。
③ $C(d)$ は $d$ に反比例する。 ④ $C(d)$ は $d^2$ に反比例する。
図1(a) のように、この可変コンデンサーに角周波数 $\omega$ の交流電圧を加え、十分に時間がたったのちに回路に流れる電流 $I$ を測定したところ、図1(b) のようになった。 $I$ の符号は極板Aに流れ込む向きを正とし、交流電流の振幅を $I_0$ とする。ここで、 $d$ は固定しているとする。
(2) 十分に短い時間 $\Delta t$ の間に電流 $I$ が極板Aに流れ込むとき、極板Aに蓄えられる電気量は $\Delta Q=I\Delta t$ だけ増加する。極板Aに蓄えられる電気量が最大となる時刻 $t_1$、およびそのときの電気量 $Q_1$ を求めよ。ただし、 $0<t_1\leqq\dfrac{2\pi}{\omega}$ とする。
(3) 時刻 $t_1$ において極板Bからみた極板Aの電圧 $V_1$ を $C(d)$、 $I_0$、 $\omega$ のうち必要なものを用いて表せ。
問2. 次に導線を用いてコイルを作製した。
(1) コイルに関する下記の説明のうち、空欄 $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{エ}}$ に入る式を文章中の $N$、 $a$、 $S$、 $I$、 $\Delta I$、 $\Delta t$、および真空の透磁率 $\mu_0$ のうち必要なものを用いて表せ。
「導線が $N$ 回巻かれた円筒形のコイルを考える。導線の1巻きが囲む円の面積を $S$ とし、コイルの長さは $a$ で十分に長いものとする。このコイルに電流 $I$ を流したとき、コイル内部には $\boxed{\text{ア}}$ の大きさの一様な磁束密度ができ、コイルの導線1巻きを垂直に貫く磁束の大きさは $\boxed{\text{イ}}$ となる。十分に短い時間 $\Delta t$ の間に $\Delta I\,(>0)$ だけ電流の大きさが変化したとすると、コイルの導線1巻きあたり $\boxed{\text{ウ}}\,(>0)$ の大きさの誘導起電力が生じる。コイル全体ではこの $N$ 倍の誘導起電力が生じるから、コイルの自己インダクタンスは $\boxed{\text{エ}}$ と表すことができる。」
(2) コイルの自己インダクタンスを $L$ で表す。角周波数 $\omega$ の交流電圧をコイルに加え、振幅 $I_0$ の交流電流が流れたとする。このとき、コイルの両端にかかる交流電圧の振幅を $L$、 $I_0$、 $\omega$ のうち必要なものを用いて表せ。
問3. 問1の静電容量(電気容量) $C(d)$ の可変コンデンサーおよび問2の自己インダクタンス $L$ のコイルを用いて、図2(a) のような共振回路を作製した。この共振回路には電気抵抗 $R$ の抵抗がつながれており、角周波数 $\omega$ を変えることのできる交流電圧が加わっている。回路の導線の電気抵抗は無視できるものとする。はじめ、可変コンデンサーの電極間距離(極板間距離)を $d_1$ に設定した。交流電圧の振幅を一定に保ったまま $\omega$ を変化させ、回路に流れる交流電流 $I$ の振幅 $I_0$ を測定したところ、図2(b) のようになった。このとき最大の $I_0$ が得られた角周波数を $\omega_1$ とする。 $I$ の符号は図2(a) の矢印の向きに電流が流れるときを正とし、各素子(可変コンデンサー、コイル、抵抗)の両端にかかる電圧の符号は $I$ の正の向きに電位が降下するときを正とする。
(1) 角周波数が $\omega_1$ であるとき、コイルの両端にかかる電圧 $V_L$ を測定したところ、図3の一点鎖線のような波形になった。それと同時に可変コンデンサーの両端にかかる電圧 $V_C$ を測定したときの波形を解答紙のグラフ上に実線で描け。
(2) $I_0$ が最大となる角周波数 $\omega_1$ を $C(d_1)$、 $L$、 $R$ のうち必要なものを用いて表せ。
(3) 角周波数 $\omega_1$ とは異なる角周波数 $\omega_2$ において $I_0$ が最大となるようにするには可変コンデンサーの電極間距離を $d_2$ に変える必要がある。 $d_2$ を $d_1$、 $\omega_1$、 $\omega_2$ を用いて表せ。
(4) 交流電圧の振幅を一定に保ったまま $I_0$ の最大値をさらに大きくしたい。そのためには、図2(a) の素子のいずれかを変更する必要がある。何をどのように変更すればよいか10字程度で簡潔に述べよ。ただし、句読点も1字として数える。
解答の方針
【問1の方針】
コンデンサーの電流は、電気量の時間変化 $I=\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}$ でしか表せない。 $I>0$ の間は極板Aの電気量が増え、 $I<0$ の間は減る。図1(b) で $I$ の符号が正から負に変わる $t=\dfrac{\pi}{\omega}$ で、電気量は増加から減少に変わるので最大になる。
最大値は、電気量 $Q$ を「時間微分すると $I_0\sin\omega t$ になる式」で表せば求まる。交流電圧は0を中心に振動するので、 $Q=CV$ も0を中心に振動する(下の図)。


問1は全体として「コンデンサーでは電圧が電流より $\dfrac{\pi}{2}$ 遅れ、振幅の比(リアクタンス)は $\dfrac{1}{\omega C}$」という交流の基本を、自分で導かせる誘導になっている。
- 平行板コンデンサーの電気容量 $C=\varepsilon_0\dfrac Sd$ から、 $C(d)$ が $d$ に反比例することを確かめる。
- 図1(b) で $I$ の符号を見て、極板Aの電気量が最大になる時刻 $t_1$ を求める。
- 時間微分すると $I=I_0\sin\omega t$ になる電気量の式 $Q=-\dfrac{I_0}{\omega}\cos\omega t$ を作り(定数の部分は0)、最大値 $Q_1$ を求める。
- $Q=CV$ から $V_1=\dfrac{Q_1}{C(d)}$ を求める。
【問2の方針】
ソレノイドの自己インダクタンスは、公式の流れ『 $H=nI$ 』→『 $B=\mu_0H$ 』→『 $\varPhi=BS$ 』→ファラデーの電磁誘導の法則 を順にたどり、最後に『 $V=L\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ 』と比べて $L$ を読み取る。 単位長さあたりの巻数は $n=\dfrac Na$、起電力は巻数 $N$ をかける(巻数の補正)のを忘れない。磁束の式で時間で変わるのは $I$ だけなので、 $I$ だけを $\Delta I$ にする。


(2) はコイルについて「覚える2点」(電流が電圧より $\dfrac{\pi}{2}$ 遅れる・リアクタンス $\omega L$)のうち、リアクタンスを使うだけ。
- $n=\dfrac Na$ として $H=nI$、 $B=\mu_0H$ から内部の磁束密度を求める(ア)。
- 1巻きを貫く磁束 $\varPhi=BS$ を求める(イ)。
- 時間で変わる $I$ だけを $\Delta I$ にして $\Delta\varPhi$ を求め、1巻きあたりの起電力 $\left|\dfrac{\Delta\varPhi}{\Delta t}\right|$ を求める(ウ)。
- コイル全体の起電力(ウの $N$ 倍)を $L\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ と比べて $L$ を求める(エ)。
- 電圧の振幅=電流の振幅×リアクタンス $\omega L$ で (2) を求める。
【問3の方針】
直列なので、3つの素子に流れる電流は共通。電流を基準にすると、コイルの電圧は $\dfrac{\pi}{2}$ 進み、コンデンサーの電圧は $\dfrac{\pi}{2}$ 遅れる。つまり $V_L$ と $V_C$ はいつも逆向き(位相が $\pi$ ずれる)で、振幅は $\omega LI_0$ と $\dfrac{I_0}{\omega C}$。


3つの電圧を足すと、回路全体の「抵抗」は $\sqrt{R^2+\left(\omega L-\dfrac{1}{\omega C}\right)^2}$ になる。 $R$ は変われないが $\omega L-\dfrac{1}{\omega C}$ は $\omega$ で変われる項なので、この項が0になるとき電流の振幅が最大。このとき $V_L$ と $V_C$ の振幅が等しくなるので、 $V_C$ は $V_L$ をちょうど上下に反転した波形になる。
(3) は $C(d)$ が $d$ に反比例することを比で使い、(4) は共振のときの電流の振幅が(電源電圧の振幅)÷ $R$ で、 $L$ と $C$ によらないことに注目する。
- 電流を $I_0\sin\omega t$ とおき、マックスと位相を別々に考えて $V_R$、 $V_L$、 $V_C$ を求め、足して電源電圧を表す。
- 回路全体の「抵抗」のうち変われる項 $\omega L-\dfrac{1}{\omega C}$ を0として $\omega_1$ を求める((2))。
- $\omega_1$ では $\omega_1L=\dfrac{1}{\omega_1C(d_1)}$ なので $V_C=-V_L$ となることを示し、図3の $V_L$ を上下に反転して $V_C$ を書く((1))。
- $C(d)$ が $d$ に反比例することから $C(d_2)=\dfrac{d_1}{d_2}C(d_1)$ とし、 $\omega_2=\dfrac{1}{\sqrt{LC(d_2)}}$ から $d_2$ を求める((3))。
- 共振のときの電流の振幅が(電源電圧の振幅)÷ $R$ であることから、最大値を大きくする方法を答える((4))。
解答




解答をテキストで読む
問1 (1)
平行板コンデンサーの電気容量は、極板の面積を $S$、真空の誘電率を $\varepsilon_0$ として『 $C=\varepsilon_0\dfrac Sd$ 』(極板間の電場 $E=\dfrac{Q}{\varepsilon_0S}$、 $V=Ed=\dfrac{Qd}{\varepsilon_0S}$ を $Q=CV$ と比べたもの)。よって $C(d)$ は $d$ に反比例する。
答 ③(3点)
問1 (2)
$\Delta Q=I\Delta t$ より、極板Aの電気量は $I>0$ の間は増え、 $I<0$ の間は減る。図1(b) より、 $0<t<\dfrac{\pi}{\omega}$ で $I>0$、 $\dfrac{\pi}{\omega}<t<\dfrac{2\pi}{\omega}$ で $I<0$ なので、電気量は $t=\dfrac{\pi}{\omega}$ で増加から減少に変わり、最大になる。
時間微分すると $I=I_0\sin\omega t$ になる電気量の式を作ると
$$Q=-\frac{I_0}{\omega}\cos\omega t+D$$
( $D$ は定数。この式を時間微分すると $I_0\sin\omega t$ になる)。十分に時間がたったのち、極板間の電圧 $V=\dfrac{Q}{C(d)}$ は交流電圧に等しく0を中心に振動するので、 $Q$ も0を中心に振動し $D=0$。よって
$$Q=-\frac{I_0}{\omega}\cos\omega t$$
で、 $t=\dfrac{\pi}{\omega}$ のとき $Q=\dfrac{I_0}{\omega}$ が最大値。
答 $t_1=\dfrac{\pi}{\omega}$、 $Q_1=\dfrac{I_0}{\omega}$(6点)
問1 (3)
極板Aに $Q_1$( $>0$)、極板Bに $-Q_1$ がたまっているので、極板Bからみた極板Aの電圧は $Q=CV$ より
$$V_1=\frac{Q_1}{C(d)}=\frac{I_0}{\omega C(d)}$$
(電圧の振幅は電流の振幅の $\dfrac{1}{\omega C(d)}$ 倍。電流が0の $t=\dfrac{\pi}{\omega}$ で電圧が最大なので、電圧は電流より $\dfrac{\pi}{2}$ 遅れる。コンデンサーのリアクタンスが $\dfrac{1}{\omega C}$ になることを導いたのと同じ)
答 $V_1=\dfrac{I_0}{\omega C(d)}$(4点)
問2 (1)
空欄ア〜エ
単位長さあたりの巻数は $n=\dfrac Na$。『 $H=nI$ 』『 $B=\mu_0H$ 』より、内部の磁束密度は
$$B=\mu_0\cdot\frac NaI=\frac{\mu_0NI}{a}$$
答(ア) $\dfrac{\mu_0NI}{a}$(2点)
『 $\varPhi=BS$ 』より、1巻きを貫く磁束は
答(イ) $\dfrac{\mu_0NSI}{a}$(2点)
$\varPhi=\dfrac{\mu_0NS}{a}I$ で時間で変わるのは $I$ だけなので、 $\Delta\varPhi=\dfrac{\mu_0NS}{a}\Delta I$。1巻きあたりの誘導起電力の大きさはファラデーの電磁誘導の法則より $\left|\dfrac{\Delta\varPhi}{\Delta t}\right|$ なので
答(ウ) $\dfrac{\mu_0NS}{a}\cdot\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$(2点)
コイル全体ではこの $N$ 倍(巻数の補正)で $\dfrac{\mu_0N^2S}{a}\cdot\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$。これを自己誘導の起電力の大きさ『 $V=L\dfrac{\Delta I}{\Delta t}$ 』と比べて
答(エ) $\dfrac{\mu_0N^2S}{a}$(2点)
問2 (2)
コイルのリアクタンスは $\omega L$。マックスどうしでオームの法則と同じ形になるので、電圧の振幅は
$$V_0=\omega L\cdot I_0$$
答 $\omega LI_0$(4点)
問3 (1)
直列なので3つの素子に流れる電流は共通。これを $I=I_0\sin\omega t$ とおく(時刻の原点は図3と違ってよい。調べたいのは $V_L$ と $V_C$ の関係だけ)。各素子の電圧をマックスと位相に分けて求める。電流から電圧を求めるので、コイルは $\dfrac{\pi}{2}$ 進め、コンデンサーは $\dfrac{\pi}{2}$ 戻す。
$$V_R=RI_0\sin\omega t,\qquad V_L=\omega LI_0\sin\left(\omega t+\frac{\pi}{2}\right)=\omega LI_0\cos\omega t$$
$$V_C=\frac{I_0}{\omega C(d_1)}\sin\left(\omega t-\frac{\pi}{2}\right)=-\frac{I_0}{\omega C(d_1)}\cos\omega t$$
電源電圧はこの和で
$$V=V_R+V_L+V_C=I_0\left\{R\sin\omega t+\left(\omega L-\frac{1}{\omega C(d_1)}\right)\cos\omega t\right\}=I_0\sqrt{R^2+\left(\omega L-\frac{1}{\omega C(d_1)}\right)^2}\,\sin(\omega t+\beta)$$
( $\beta$ は位相のずれ)。電源電圧の振幅を $V_0$ とおくと、マックスどうしで
$$I_0=\frac{V_0}{\sqrt{R^2+\left(\omega L-\dfrac{1}{\omega C(d_1)}\right)^2}}$$
$I_0$ が最大になる $\omega_1$ では、変われる項 $\omega_1L-\dfrac{1}{\omega_1C(d_1)}$ が0((2))。よって $\omega_1L=\dfrac{1}{\omega_1C(d_1)}$ で、 $V_L$ と $V_C$ の振幅は等しく、符号が逆なので
$$V_C=-V_L$$
$V_C$ は図3の $V_L$ を上下に反転した波形(振幅は同じ2目盛り)。 $t=0$ で0から負の向きに変化し、 $V_L$ の山の時刻で谷になる。このとき $V_L+V_C=0$ で、電源電圧はすべて抵抗にかかっている。
答 図の実線( $V_L$ と振幅が同じで、上下を反転した波形)(5点)
問3 (2)
(1) より、回路全体の「抵抗」 $\sqrt{R^2+\left(\omega L-\dfrac{1}{\omega C(d_1)}\right)^2}$ のうち、 $R$ は変われないが $\omega L-\dfrac{1}{\omega C(d_1)}$ は $\omega$ で変われる。 $I_0$ が最大になるのはこの項が0のときなので
$$\omega_1L-\frac{1}{\omega_1C(d_1)}=0\qquad\therefore\ \omega_1=\frac{1}{\sqrt{LC(d_1)}}$$
答 $\omega_1=\dfrac{1}{\sqrt{LC(d_1)}}$(3点)
問3 (3)
$C(d)$ は $d$ に反比例するので、 $C(d_2)=\dfrac{d_1}{d_2}C(d_1)$。共振の角周波数が $\omega_2$ になるので、(2) と同様に
$$\omega_2=\frac{1}{\sqrt{LC(d_2)}}=\frac{1}{\sqrt{LC(d_1)}}\sqrt{\frac{d_2}{d_1}}=\omega_1\sqrt{\frac{d_2}{d_1}}$$
よって
答 $d_2=\left(\dfrac{\omega_2}{\omega_1}\right)^2d_1$(4点)
問3 (4)
(1) の式で $\omega L-\dfrac{1}{\omega C}=0$ のとき、 $I_0$ の最大値は
$$I_0=\frac{V_0}{R}$$
で、 $L$ と $C$ によらない( $L$ や $C$ を変えても、共振の角周波数がずれるだけで最大値は変わらない)。交流電圧の振幅 $V_0$ は一定なので、最大値を大きくするには抵抗 $R$ を小さくすればよい。
答 抵抗Rを小さくする。(句点も含めて10字)(3点)
別解
問1 (2) (I–t グラフの面積) $\Delta Q=I\Delta t$ より、I–t グラフの面積が電気量の変化。 $0\leqq t\leqq\dfrac{\pi}{\omega}$ の山1つ分の面積は
$$\int_0^{\frac{\pi}{\omega}}I_0\sin\omega t\,dt=\frac{2I_0}{\omega}$$
電気量は $t=0$ で最小 $-Q_1$、 $t=\dfrac{\pi}{\omega}$ で最大 $Q_1$(0を中心に振動)なので $2Q_1=\dfrac{2I_0}{\omega}$ より $Q_1=\dfrac{I_0}{\omega}$。
問1 (2)(3) (覚える2点から) コンデンサーでは電流が電圧より $\dfrac{\pi}{2}$ 進み、リアクタンスは $\dfrac{1}{\omega C}$。電流から電圧を求めるので $\dfrac{\pi}{2}$ 戻して
$$V=\frac{I_0}{\omega C(d)}\sin\left(\omega t-\frac{\pi}{2}\right)=-\frac{I_0}{\omega C(d)}\cos\omega t,\qquad Q=C(d)V=-\frac{I_0}{\omega}\cos\omega t$$
から $t_1$、 $Q_1$、 $V_1$ がすぐに求まる。ただし問1はこの2つを導かせる誘導なので、答えの確かめに使う。
出題意図
問1 コンデンサーの電流の式から電気量の時間変化を読み取り、リアクタンス $\dfrac{1}{\omega C}$ を自分で導けるか
問2 (1) ソレノイドの磁束密度から自己インダクタンス $\dfrac{\mu_0N^2S}{a}$ を導く、教科書レベルの導出が理解できているか
問2 (2) コイルのリアクタンスが $\omega L$ であることが理解できているか
問3 直列回路では電流が共通であることから各素子の電圧の位相を捉え、共振の条件を求めることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや簡単 | |
| 目標得点 | 40点 | 35点 |
| 目標時間 | 25分 | 25分 |
交流だけで大問が1つ作られると、交流を後回しにしてきた受験生は0点もありうる。
本問は「電圧と電流の位相のずれ」と「リアクタンス」の2点を導出まで理解していれば、誘導に乗るだけで満点が取れる。
この大問からの教訓は、苦手な分野を作らないこと。
差がつく所・失点しやすい所
- 交流を勉強していたかどうか:差がつく小問はほとんどない。交流を避けてきた受験生にはきつく、演習していた受験生には40点のボーナス問題。
2023年九州大学物理
第3問 解答・解説
第3問は熱力学・波動の問題です。
テーマは「動くピストンで気体を圧縮する分子運動論から断熱変化の関係( $\gamma=\dfrac53$)を導き、ピストンの列の単振動として音波の速さを求める」。
問題


問題文をテキストで読む
以下の問いに答えよ。
問1. 図1のように厚さの無視できる断熱性の二つのピストン(左からピストン0、ピストン1と呼ぶ)が付いた断面積 $S$ の円筒状の断熱容器がある。内部には、 $N$ 個の単原子分子理想気体が封入されている。最初、ピストンはともに静止しており、その間隔は $L$ であった。気体分子の運動は各方向に一様で、速度 $\vec{v}$ の2乗の平均が $\overline{v^2}$ であった。この状態から、ピストン1を固定したまま、ピストン0のみを $x$ 軸の正の向きに速さ $v_0\left(\ll\sqrt{\overline{v^2}}\right)$ で距離 $\Delta x\,(\ll L)$ だけ動かす。気体1分子の質量を $m$ として、重力の影響は無視できるとする。ピストンの表面は $x$ 軸に垂直であり、気体分子はピストンや容器の壁と弾性衝突する。以下の空欄 $\boxed{\text{ア}}$ 〜 $\boxed{\text{キ}}$ に適した式または数値を、それぞれの解答欄に記入せよ。なお、 $\boxed{\text{ウ}}$、 $\boxed{\text{エ}}$ については、 $\Delta x\ll L$ で成り立つ以下の近似式を用いて答えよ。
$$\left(1+\frac{\Delta x}{L}\right)^{\alpha}\fallingdotseq1+\alpha\frac{\Delta x}{L}\qquad(\alpha\ \text{は実数})$$
最初、速度の $x$ 成分が $-v_x\ (v_x\gg v_0>0)$ であった気体分子が、移動中のピストン0に衝突したとすると、衝突後の速度の $x$ 成分は $v_x+\boxed{\text{ア}}$ となる。したがって、速度の $x$ 成分の大きさはピストン0に衝突するたびに $\boxed{\text{ア}}$ だけ増加する。気体分子間の衝突が無視できるとし、また、 $\Delta x\ll L$、 $v_0\ll v_x$ であるから、この気体分子が $x$ 方向に容器内を往復する時間は $\dfrac{2L}{v_x}$ で近似できる。ピストン0を動かし終わるまでにこの気体分子はピストン0に $\dfrac{\Delta x\,v_x}{2v_0L}$ 回衝突するため、ピストン0を止めた直後の速度の $x$ 成分の大きさは $\boxed{\text{イ}}\times v_x$ となる。
ピストン0を動かして気体を圧縮する間の気体分子間の衝突を無視すると、 $x$ 軸に垂直で、直交する2方向の気体分子の速度成分の2乗の平均はそれぞれ $\dfrac{\overline{v^2}}{3}$ のままで変化しない。一方、気体分子の速度の $x$ 成分の2乗の平均はピストン0を止めた直後には $\boxed{\text{ウ}}\times\dfrac{\overline{v^2}}{3}$ になる。したがって、容器内部の $N$ 個の気体分子が持つ運動エネルギーは圧縮前と比べて $\boxed{\text{エ}}\times\overline{v^2}$ だけ増加する。
実際には気体分子間の弾性衝突によって運動は各方向に一様となり、以下の関係が成り立つ。
$$(\text{気体の圧力})\times(\text{気体の体積})=\frac23\times(\text{全気体分子の運動エネルギー})\qquad\cdots①$$
圧縮前の気体の圧力を $P$、圧縮後の圧力を $P+\Delta P$ とする。 $\Delta P\times\Delta x$ に比例する項は極めて小さいために無視すると、圧縮の前後での式①の左辺の変化量は、 $S$、 $P$、 $L$ を用いて $\boxed{\text{オ}}\times\Delta P-\boxed{\text{カ}}\times\Delta x$ で与えられる。式①の右辺は圧縮の前後で $\dfrac23\times\boxed{\text{エ}}\times\overline{v^2}$ だけ増加しているから、以下の関係式が得られる。
$$\frac{\Delta P}{P}=\boxed{\text{キ}}\times\frac{\Delta x}{L}\qquad\cdots②$$
問2. 式②を満たすように気体の一部がわずかな断熱圧縮と膨張を繰り返して振動すると、疎密波(縦波)が発生する。これが音波である。その速度を以下の手順で近似的に求めよう。
図2(a) のように、断面積 $S$ で無限に長い円筒の内部に、質量と厚さが無視できる無数のピストンが設置されている。ピストンで区切られたそれぞれの空間には、問1と同じように $N$ 個の単原子分子理想気体(1分子の質量 $m$)が断熱された状態で封入されている。静止状態において各ピストンは間隔 $L$ で並んでおり、このときの気体の圧力を $P$ とする。ピストンは左端から順番にピストン0、ピストン1、…と呼び、ピストン $n$ とピストン $n+1$ で区切られた領域を空間 $n$ $(n=0,\ 1,\ 2,\ \cdots)$ とする。図2(b) のように、右向きを正の方向として、ピストン $n$ の静止位置からの変位を $x_n$ とする。また、空間 $n$ 内における気体の圧力の $P$ からの変化量を $\Delta P_n$ とする。図のようにピストン0を、 $x_0=A\sin(\omega t)$ のように角振動数 $\omega$、振幅 $A\,(\ll L)$ で変位させると、その振動が右側のピストンに次々と伝わる。以下の空欄 $\boxed{\text{ク}}$ 〜 $\boxed{\text{サ}}$ に適した式または数値を、それぞれの解答欄に記入せよ。ただし、気体やピストンの運動に伴う摩擦、および重力による影響は無視し、問1で求めた $\boxed{\text{キ}}$ の値を $\gamma$ として、式②と同様の関係式
$$\frac{\Delta P_n}{P}=-\gamma\,\frac{x_{n+1}-x_n}{L}$$
が成り立つことを用いてよい。
右向きに波長 $\lambda\,(\gg L)$ の波が伝搬する場合を考える。このときピストン $n$ の変位は $x_n=A\sin\left(\omega t-\dfrac{2\pi nL}{\lambda}\right)$ のように表される。ピストン $n\,(\geqq1)$ に加わる力は、 $S$、 $\Delta P_n$、 $\Delta P_{n-1}$ を用いて $\boxed{\text{ク}}$ で与えられる。また、 $L\ll\lambda$ では空間 $n$ 内に存在する $N$ 個の気体分子はピストン $n$ とともに運動するとする。ピストン $n\,(\geqq1)$ の加速度を $a_n$ とすると、ピストン $n$ とともに運動する気体の運動方程式は、 $\gamma$、 $P$、 $S$、 $L$ を用いて、 $Nma_n=\boxed{\text{ケ}}\times(x_{n+1}-2x_n+x_{n-1})$ と書ける。三角関数の公式
$$\sin(\phi\pm\phi_0)=\sin\phi\cos\phi_0\pm\cos\phi\sin\phi_0$$
$$\cos(\phi\pm\phi_0)=\cos\phi\cos\phi_0\mp\sin\phi\sin\phi_0\qquad(\text{複号同順})$$
を用いれば、 $x_{n+1}-2x_n+x_{n-1}=2\times\left\{\cos\left(\boxed{\text{コ}}\right)-1\right\}\times x_n$ と書けるため、ピストン $n$ とともに運動する気体の運動方程式は、
$$Nma_n=-4\times\boxed{\text{ケ}}\times\sin^2\left(\frac{\boxed{\text{コ}}}{2}\right)\times x_n$$
となる。これは単振動を表す。 $\lambda\gg L$ であることから $\sin\left(\dfrac{\pi L}{\lambda}\right)\fallingdotseq\dfrac{\pi L}{\lambda}$ の近似を用いると、この気体中を伝搬する音波の速さは、 $\gamma$、 $P$、 $S$、 $L$、 $N$、 $m$ を用いて $\boxed{\text{サ}}$ と表される。
解答の方針
【問1の方針】
ゴールはキの式②。これは断熱圧縮での圧力と体積の関係(ポアソンの式を微小変化で書いたもの)で、単原子分子なので キは $\dfrac53$ になると先に見当がつく。流れは「1回の衝突で速さがどれだけ増えるか(ア)→ 止めるまでの合計(イ)→ 運動エネルギーの増加(ウ・エ)→ 式①で圧力の変化に直す(オ〜キ)」。
動いている壁との衝突は、 ピストン0に乗って見ると止まった壁との弾性衝突になる。乗った人から見ると、分子は速さ $v_x+v_0$ でぶつかり、同じ速さではね返る。容器から見直すと $v_0$ が加わって $v_x+2v_0$ になる(下の図)。ピストンを引き出す場合も同じ見方で、そのときは速さが減る。


増えるのは速度の $x$ 成分だけで、 $y$・ $z$ 成分は変わらない。だから運動エネルギーの増加は、 $x$ 成分の2乗の平均 $\dfrac{\overline{v^2}}{3}$ の部分だけから生じる。オ〜キでは、 $\overline{v^2}$ が答えに使えない文字になる。これは圧縮前の状態に式①を使った $PSL=\dfrac13Nm\overline{v^2}$ で消せる。
- ピストン0に乗って見て、相対速度ではね返り係数1の式を立て、衝突後の速度を求める(ア)。
- 1回の衝突で速さが $2v_0$ 増えることと、衝突回数 $\dfrac{\Delta x\,v_x}{2v_0L}$ から、止めた直後の速さを求める(イ)。
- イを2乗して近似式で1次の形にし(ウ)、増えた分 $\dfrac{2\Delta x}{L}\cdot\dfrac{\overline{v^2}}{3}$ に $N\cdot\dfrac12m$ をかけて運動エネルギーの増加を求める(エ)。
- 圧縮後と圧縮前の「圧力×体積」の差 $(P+\Delta P)S(L-\Delta x)-PSL$ を展開し、 $\Delta P\Delta x$ の項を捨てる(オ・カ)。
- 4の結果と右辺の増加 $\dfrac23\times\dfrac{Nm\Delta x}{3L}\overline{v^2}$ を等しいとおき、圧縮前の式① $PSL=\dfrac13Nm\overline{v^2}$ で $\overline{v^2}$ を消して $\dfrac{\Delta P}{P}$ を求める(キ)。
【問2の方針】
「音波の速さ」を聞かれているが、やることは力学。ピストン $n$ と一緒に動く気体(質量 $Nm$)の運動方程式を立てると、右辺が $x_n$ に比例し、 $Nma_n=-Kx_n$ の単振動の形になる(コのあとの式)。単振動と分かれば、質量 $Nm$ と単振動定数 $K$ から角振動数 $\sqrt{\dfrac{K}{Nm}}$ が決まる。一方、 $x_n=A\sin\left(\omega t-\dfrac{2\pi nL}{\lambda}\right)$ の角振動数は $\omega$ そのもの。 この2つが等しいことから $\omega$ と $\lambda$ の関係が求まり、振動数 $\dfrac{\omega}{2\pi}$ と波長 $\lambda$ をかければ速さになる。
見方を変えると、ピストンとピストンの間の気体は「押し縮めると押し返すばね」で、ピストンの列は 質量 $Nm$ の物体がばね定数 $\dfrac{\gamma PS}{L}$ のばねでつながった列(下の図)。音波は、この列を次々に伝わっていく振動である。


ピストン $n$ に触れているのは両側の気体だけなので、力は左右の圧力による2つ。つり合いの圧力 $P$ による分は左右で打ち消し合い、圧力の変化 $\Delta P_{n-1}$、 $\Delta P_n$ の差だけが残る。問題文の $\dfrac{\Delta P_n}{P}=-\gamma\dfrac{x_{n+1}-x_n}{L}$ は「用いてよい」と与えられているので、問1が解けていなくても問2は $\gamma$ のまま最後まで解ける。
- 右向きを正とし、ピストン $n$ が左の気体から受ける右向きの力 $(P+\Delta P_{n-1})S$ と、右の気体から受ける左向きの力 $(P+\Delta P_n)S$ の合力を求める(ク)。
- $\Delta P_n$、 $\Delta P_{n-1}$ に与えられた関係式を代入し、運動方程式の右辺を $x_{n+1}-2x_n+x_{n-1}$ でくくる(ケ)。
- $\phi=\omega t-\dfrac{2\pi nL}{\lambda}$、 $\phi_0=\dfrac{2\pi L}{\lambda}$ とおいて $x_{n\pm1}=A\sin(\phi\mp\phi_0)$ と表し、加法定理で $x_{n+1}+x_{n-1}=2\cos\phi_0\cdot x_n$ を示してコを求める。
- 運動方程式を $Nma_n=-Kx_n$( $K=\dfrac{4\gamma PS}{L}\sin^2\dfrac{\pi L}{\lambda}$)と表し、単振動の角振動数 $\sqrt{\dfrac{K}{Nm}}$ を $\omega$ と等しいとおく。近似 $\sin\dfrac{\pi L}{\lambda}\fallingdotseq\dfrac{\pi L}{\lambda}$ を使って $\omega$ を $\lambda$ で表す。
- 音波の速さ $c=f\lambda=\dfrac{\omega\lambda}{2\pi}$ を求める(サ)。
解答


解答をテキストで読む
空欄ア〜エ
衝突後の速度の $x$ 成分を $v’$ とする(右向きを正)。ピストン0に乗って見ると、分子は止まった壁と弾性衝突する。ピストン0の速度は $v_0$、衝突前の分子の速度は $-v_x$ なので、相対速度ではね返り係数1の式を立てて
$$1=-\frac{v’-v_0}{-v_x-v_0}\qquad\therefore\ v’=v_x+2v_0$$
答(ア) $2v_0$(3点)
1回の衝突で速さが $2v_0$ 増える。問題文の衝突回数 $\dfrac{\Delta x\,v_x}{2v_0L}$ は、ピストン0を動かす時間 $\dfrac{\Delta x}{v_0}$ を1往復の時間 $\dfrac{2L}{v_x}$ で割ったもの。よって止めた直後の速さは
$$v_x+2v_0\times\frac{\Delta x\,v_x}{2v_0L}=\left(1+\frac{\Delta x}{L}\right)v_x$$
答(イ) $1+\dfrac{\Delta x}{L}$(3点)
速度の $x$ 成分の2乗は $\left(1+\dfrac{\Delta x}{L}\right)^2$ 倍になる。この倍率は $v_x$ によらないので、2乗の平均も同じ倍率になる。近似式( $\alpha=2$)より
$$\left(1+\frac{\Delta x}{L}\right)^2\fallingdotseq1+\frac{2\Delta x}{L}\qquad\therefore\ \left(1+\frac{2\Delta x}{L}\right)\times\frac{\overline{v^2}}{3}$$
答(ウ) $1+\dfrac{2\Delta x}{L}$(3点)
$y$・ $z$ 成分の2乗の平均は $\dfrac{\overline{v^2}}{3}$ のままなので、1分子あたりの運動エネルギーの平均は $\dfrac12m\cdot\dfrac{2\Delta x}{L}\cdot\dfrac{\overline{v^2}}{3}$ だけ増える。 $N$ 個では
$$N\cdot\frac12m\cdot\frac{2\Delta x}{L}\cdot\frac{\overline{v^2}}{3}=\frac{Nm\Delta x}{3L}\times\overline{v^2}$$
答(エ) $\dfrac{Nm\Delta x}{3L}$(3点)
空欄オ〜キ
圧縮前は圧力 $P$、体積 $SL$。圧縮後は圧力 $P+\Delta P$、体積 $S(L-\Delta x)$(下の図)。
式①の左辺の変化量は、展開して $\Delta P\times\Delta x$ の項を捨てると
$$(P+\Delta P)S(L-\Delta x)-PSL=SL\Delta P-PS\Delta x-S\Delta P\Delta x\fallingdotseq SL\times\Delta P-PS\times\Delta x$$
答(オ) $SL$(2点)
答(カ) $PS$(2点)
式①の右辺は $\dfrac23\times\dfrac{Nm\Delta x}{3L}\overline{v^2}$ だけ増えるので
$$SL\Delta P-PS\Delta x=\frac{2Nm\overline{v^2}}{9L}\Delta x\qquad\cdots③$$
$\overline{v^2}$ は答えに使えない文字なので、圧縮前の状態の式①で消す。全分子の運動エネルギーは $N\cdot\dfrac12m\overline{v^2}$ なので
$$PSL=\frac23\cdot\frac12Nm\overline{v^2}\qquad\therefore\ Nm\overline{v^2}=3PSL$$
これを③に代入して
$$SL\Delta P-PS\Delta x=\frac{2\cdot3PSL}{9L}\Delta x=\frac23PS\Delta x\qquad\therefore\ SL\Delta P=\frac53PS\Delta x$$
両辺を $PSL$ で割って
$$\frac{\Delta P}{P}=\frac53\times\frac{\Delta x}{L}$$
答(キ) $\dfrac53$(4点)
(確かめ)体積の変化 $\Delta V=-S\Delta x$ で書きかえると $\dfrac{\Delta P}{P}=-\dfrac53\cdot\dfrac{\Delta V}{V}$。これは単原子分子のポアソンの式 $PV^{\frac53}=$ 一定 を微小変化で書いたもので、キ $=\gamma=\dfrac53$ と合う。
空欄ク〜コ
右向きを正とする。重力は無視でき、ピストン $n$ に触れているのは両側の気体だけ。左の空間 $n-1$ の気体から右向きに $(P+\Delta P_{n-1})S$、右の空間 $n$ の気体から左向きに $(P+\Delta P_n)S$ の力を受ける(下の図)。
$$(P+\Delta P_{n-1})S-(P+\Delta P_n)S=S(\Delta P_{n-1}-\Delta P_n)$$
答(ク) $S(\Delta P_{n-1}-\Delta P_n)$(4点)
与えられた関係式を空間 $n$ と空間 $n-1$ に使うと
$$\Delta P_n=-\frac{\gamma P}{L}(x_{n+1}-x_n),\qquad\Delta P_{n-1}=-\frac{\gamma P}{L}(x_n-x_{n-1})$$
ピストンの質量は無視できるので、ピストン $n$ と一緒に動く気体(質量 $Nm$)の運動方程式は
$$Nma_n=S(\Delta P_{n-1}-\Delta P_n)=\frac{\gamma PS}{L}\left\{(x_{n+1}-x_n)-(x_n-x_{n-1})\right\}=\frac{\gamma PS}{L}\times(x_{n+1}-2x_n+x_{n-1})$$
答(ケ) $\dfrac{\gamma PS}{L}$(4点)
$\phi=\omega t-\dfrac{2\pi nL}{\lambda}$、 $\phi_0=\dfrac{2\pi L}{\lambda}$ とおくと、 $x_n=A\sin\phi$、 $x_{n+1}=A\sin(\phi-\phi_0)$、 $x_{n-1}=A\sin(\phi+\phi_0)$。加法定理より
$$x_{n+1}+x_{n-1}=A(\sin\phi\cos\phi_0-\cos\phi\sin\phi_0)+A(\sin\phi\cos\phi_0+\cos\phi\sin\phi_0)=2\cos\phi_0\cdot x_n$$
よって
$$x_{n+1}-2x_n+x_{n-1}=2\times\left\{\cos\left(\frac{2\pi L}{\lambda}\right)-1\right\}\times x_n$$
答(コ) $\dfrac{2\pi L}{\lambda}$(4点)
空欄サ
$\cos\phi_0-1=-2\sin^2\dfrac{\phi_0}{2}$ なので、運動方程式は
$$Nma_n=-\frac{4\gamma PS}{L}\sin^2\left(\frac{\pi L}{\lambda}\right)\times x_n$$
$Nma_n=-Kx_n$ の形なので、ピストン $n$(と一緒に動く気体)は質量 $Nm$、単振動定数 $K=\dfrac{4\gamma PS}{L}\sin^2\left(\dfrac{\pi L}{\lambda}\right)$ の単振動をする。その角振動数 $\sqrt{\dfrac{K}{Nm}}$ は、 $x_n=A\sin\left(\omega t-\dfrac{2\pi nL}{\lambda}\right)$ の角振動数 $\omega$ に等しいので
$$\omega=\sqrt{\frac{K}{Nm}}=2\sin\left(\frac{\pi L}{\lambda}\right)\sqrt{\frac{\gamma PS}{NmL}}$$
$\lambda\gg L$ より $\sin\left(\dfrac{\pi L}{\lambda}\right)\fallingdotseq\dfrac{\pi L}{\lambda}$ を使うと
$$\omega=\frac{2\pi L}{\lambda}\sqrt{\frac{\gamma PS}{NmL}}=\frac{2\pi}{\lambda}\sqrt{\frac{\gamma PSL}{Nm}}$$
振動数は $f=\dfrac{\omega}{2\pi}$ なので、音波の速さを $c$ とすると( $v$ は分子の速さに使っているので別の文字にする)
$$c=f\lambda=\frac{\omega\lambda}{2\pi}=\sqrt{\frac{\gamma PSL}{Nm}}$$
答(サ) $\sqrt{\dfrac{\gamma PSL}{Nm}}$(8点)
(確かめ) $\dfrac{Nm}{SL}$ は気体の密度 $\rho$ なので、 $c=\sqrt{\dfrac{\gamma P}{\rho}}$ と書ける。空気( $\gamma\fallingdotseq1.4$、 $P=1.0\times10^5$ Pa、 $\rho=1.3$ kg/m³)を入れると約 $3.3\times10^2$ m/s で、空気中の音速とほぼ合う。
出題意図
問1 ア〜エ 壁(ピストン)が動くときの分子運動論で、衝突のたびに分子の速さが増える仕組みを式にできるか
問1 オ〜キ 式①の両辺の変化を1次近似で比べ、断熱圧縮での圧力と体積の関係(ポアソンの式の微小変化の形)に帰着できるか
問2 ク〜サ ピストンの列の運動方程式を単振動の形にまとめ、その角振動数と波長から音波の速さを求めることができるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや難 | |
| 目標得点 | 30点 | 20点 |
| 目標時間 | 25分 | 25分 |
前半は、壁が動くタイプの分子運動論を白紙に再現できるまで練習を積んでいるか、それだけで決まる。
後半は、名問の森や重要問題集には載っていないが、難関大学の入試問題や標準問題精講クラスの問題集には普通にある型。
時間制限の中で初見で解くのはかなり難しいので、差がつくのは「この問題は知っている」という既視感があるかどうか。
理科を後回しにせず早くから演習を積み、標準問題精講や『難問題の系統とその解き方』まで手を出して、見たことがない問題を減らしておこう。
差がつく所・失点しやすい所
- ア〜エ:「壁が動くタイプの分子運動論」と気づけるか。気づけばすぐに解ける。
- キ:ポアソンの式の誘導と分かれば、計算せずに $\dfrac53$ と書ける。
- サ:単振動の角振動数が波の $\omega$ そのものだと気づけるか。合格者でも解けない受験生が多く、合否への影響は小さい。
2023年九州大学・物理の
講評とまとめ
3問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 標準 | 35点 | 30点 |
| 第2問 | やや簡単 | 40点 | 35点 |
| 第3問 | やや難 | 30点 | 20点 |
| 合計 | 105点 | 85点 |
前の年よりは難しかったものの、取りやすい問題も多い標準的なセットでした。
医学部医学科は105点、ほかの学部でも85点は取りたいところです。
第1問(問2まで)と第2問を完答し、第3問の分子運動論をすぐに解けば100点に届きます。
第3問の後半は合格者でも解けない受験生の方が多く、合否への影響は小さいです。
差がついたのは、苦手な単元(単振動・交流)から逃げずに演習を積んでいたかどうか。
全範囲で標準的なレベルの問題を完答しに行く意識を持ちましょう。
解く流れ
第1問(問1・問2)→ 第2問 → 第3問の前半(コまで)→ 第1問 問3 → 第3問の残り(サ)。
2023年九州大学・物理に
関するよくある質問
2023年の九州大学・物理について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2023年の九州大学・物理は難しかった?
-
標準的な年でした。
第2問はやや簡単、第1問は標準、第3問はやや難です。
前の年(2022年)よりは難しくなりましたが、取りやすい問題も多いセットです。 - 2023年の九州大学・物理は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で105点、その他の学部で85点です(125点満点)。
- 2023年の九州大学・物理はどこで差がつく?
-
合格するために最低限取っておきたいのは、第2問の完答と、第1問の問2までです。そのうえで、特に差がついたのは次の2つです。
- 第1問 問2 (2):力が $s$ の1次式になった所で、曲線の上を単振動すると気づけたか。
- 第3問 ア〜エ:壁が動くタイプの分子運動論だと気づき、すぐに解けたか。
- 2023年の九州大学・物理は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:力学
- 第2問:電磁気
- 第3問:熱力学・波動


