【解説・採点基準付き】2016年九州大学理系数学の解答・解説

2016年の九州大学・理系数学の、
解答・解説【完全版】です。

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中原 遼太郎

九大受験に特化した学習塾
『竜文会』代表

『竜文会』開校後、初年度には国立大学医学部や九州大学に合格者を輩出。

2年目には旧帝大医学部にも合格!

九州大学の過去問を20年分以上分析して指導カリキュラムを作成。

九州大学医学部に現役合格した経験を生かして、『学習計画の作成』や『LINEでのいつでも相談』による1人1人のサポート・九州大学に特化したハイレベルな演習で「九大受験生」をサポート。

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目次

2016年九州大学理系数学
第1問 解答・解説

この記事の配点・採点基準は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。

第1問は積分・極限の問題です。
テーマは「$\log x$ と放物線で囲む面積の比の極限」。

問題

2016年九州大学理系数学 第1問 問題
2016年九州大学理系数学 第1問 問題
問題文をテキストで読む

座標平面上の曲線 $C_1,C_2$ をそれぞれ

$$C_1:\ y=\log x\quad(x>0)$$

$$C_2:\ y=(x-1)(x-a)$$

とする。ただし、 $a$ は実数である。 $n$ を自然数とするとき、曲線 $C_1,C_2$ が2点P、Qで交わり、P、Qの $x$ 座標はそれぞれ $1,\ n+1$ となっている。また、曲線 $C_1$ と直線PQで囲まれた領域の面積を $S_n$、曲線 $C_2$ と直線PQで囲まれた領域の面積を $T_n$ とする。このとき、以下の問いに答えよ。

(1) $a$ を $n$ の式で表し、 $a>1$ を示せ。

(2) $S_n$ と $T_n$ をそれぞれ $n$ の式で表せ。

(3) 極限値 $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{S_n}{n\log T_n}$ を求めよ。

解答の方針

【(1)の方針】

着眼点

Q $(n+1,\ \log(n+1))$ が $C_2$ 上にある、という条件だけで $a$ が決まる。 $a=n+1-\dfrac{\log(n+1)}{n}$ となるので、 $a>1$ は $\log(n+1)<n^2$ と同じこと。 $\log$ は多項式よりはるかにゆっくり増えるので成り立つのは明らかだが、答案では根拠が要る。ここで使うのが $e^x>1+x$( $x>0$)。 $y=e^x$ のグラフは下に凸で、 $x=0$ での接線 $y=1+x$ の上にある(下の図)。この不等式は差をとって微分すれば簡単に示せるので、答案では証明まで書く。 $x=n$ を入れて対数をとれば $\log(n+1)<n$ となり、これで $a>1$ が示せる。

2016年九州大学理系数学 第1問 解答の方針の図
2016年九州大学理系数学 第1問 解答の方針の図
  1. Qが $C_2$ 上にある条件 $\log(n+1)=n(n+1-a)$ から $a$ を求める。
  2. $f(x)=e^x-(1+x)$ を微分して、 $x>0$ で $f(x)>0$、すなわち $e^x>1+x$ を示す。
  3. $x=n$ を代入して対数をとり、 $\log(n+1)<n\leqq n^2$ を導く。
  4. $a-1=\dfrac{n^2-\log(n+1)}{n}>0$ から $a>1$ を示す。

【(2)の方針】

着眼点

面積を求めるには、まず上下関係を確かめる。 $C_1$ は上に凸なので、弦PQの上にある。 $C_2$ は下に凸なので、弦PQの下にある。したがって $S_n$ は弦の上の部分、 $T_n$ は弦の下の部分(下の図)。

$S_n$ は「 $\log x$ の下の面積」から、弦PQの下の三角形を引けばよい。 $T_n$ は放物線と直線で囲まれた部分なので、 $\dfrac16$ 公式が使える。放物線( $x^2$ の係数1)と直線の差は、2交点の $x$ 座標 $1,\ n+1$ だけで $(x-1)(x-n-1)$ と決まるので、 $a$ の値は $T_n$ に関係しない。

2016年九州大学理系数学 第1問 解答の方針の図
2016年九州大学理系数学 第1問 解答の方針の図
  1. $C_1$ は上に凸、 $C_2$ は下に凸であることから、 $1<x<n+1$ で $C_1$ が直線PQの上、 $C_2$ が直線PQの下にあることを確かめる。
  2. $\displaystyle\int_1^{n+1}\log x\,dx$ を部分積分で求め、P、Q、 $\mathrm{H}(n+1,0)$ を頂点とする三角形の面積 $\dfrac12n\log(n+1)$ を引いて $S_n$ を求める。
  3. 直線PQの式と $C_2$ の式の差が $-(x-1)(x-n-1)$ になることから、 $\dfrac16$ 公式で $T_n=\dfrac16\{(n+1)-1\}^3$ を求める。

【(3)の方針】

着眼点

$S_n=\dfrac{n+2}{2}\log(n+1)-n$ でいちばん大きく増える項は $\dfrac n2\log n$ の部分。 $\log T_n=3\log n-\log6$ で主役は $3\log n$。分母 $n\log T_n$ の主役は $3n\log n$ なので、 分子・分母を $n\log n$ で割れば、それぞれ一定の値に近づく。残る課題は $\dfrac{\log(n+1)}{\log n}\to1$ の説明で、 $\log(n+1)=\log n+\log\left(1+\dfrac1n\right)$ と分ければよい。

  1. $\log T_n=3\log n-\log6$ と表す。
  2. $n\geqq2$ として、分子・分母を $n\log n$ で割る。
  3. $\log(n+1)=\log n+\log\left(1+\dfrac1n\right)$ と分けて $\dfrac{\log(n+1)}{\log n}\to1$ を示し、 $\dfrac{1}{\log n}\to0$ と合わせて極限値を求める。

解答

2016年九州大学理系数学 第1問 解答・解説
2016年九州大学理系数学 第1問 解答・解説
解答をテキストで読む

(1) 配点 10点

Q $(n+1,\ \log(n+1))$ が $C_2$ 上にあるので

$$\log(n+1)=\{(n+1)-1\}\{(n+1)-a\}=n(n+1-a)$$

$n>0$ より

$$a=n+1-\frac{\log(n+1)}{n}$$

$f(x)=e^x-(1+x)$ とおくと、 $f'(x)=e^x-1$ で、 $x>0$ のとき $f'(x)>0$。よって $f(x)$ は $x\geqq0$ で増加し、 $f(0)=0$ なので、 $x>0$ で $f(x)>0$、すなわち $e^x>1+x$。

$x=n$ とすると $e^n>n+1$。両辺の対数をとって $n>\log(n+1)$。 $n$ は自然数なので $n\leqq n^2$ で、 $\log(n+1)<n^2$。したがって

$$a-1=n-\frac{\log(n+1)}{n}=\frac{n^2-\log(n+1)}{n}>0$$

答 $a=n+1-\dfrac{\log(n+1)}{n}$( $a>1$ は上のとおり)

(補足:同じ不等式から $\dfrac{\log(n+1)}{n}<1$ なので、実は $n<a<n+1$。 $n=1$ のとき $a=2-\log2=1.306\cdots$)

(2) 配点 20点

$y=\log x$ は $y”=-\dfrac{1}{x^2}<0$ より上に凸なので、 $1<x<n+1$ で $C_1$ は直線PQの上にある。直線PQは $y=\dfrac{\log(n+1)}{n}(x-1)$ で、 $1\leqq x\leqq n+1$ で $y\geqq0$。 $\mathrm{H}(n+1,0)$ とすると、 $S_n$ は「 $C_1$、 $x$ 軸、直線 $x=n+1$ で囲まれた部分」から三角形PHQを除いた部分である(下の図)。

$$\int_1^{n+1}\log x\,dx=\Big[x\log x-x\Big]_1^{n+1}=(n+1)\log(n+1)-n$$

三角形PHQの面積は $\dfrac12\cdot n\cdot\log(n+1)$ なので

$$S_n=(n+1)\log(n+1)-n-\frac n2\log(n+1)=\frac{n+2}{2}\log(n+1)-n$$

直線PQと $C_2$ はともにP、Qを通り、 $C_2$ の $x^2$ の係数は1なので

$$\frac{\log(n+1)}{n}(x-1)-(x-1)(x-a)=-(x-1)(x-n-1)$$

と表せる。 $1<x<n+1$ でこれは正なので、 $C_2$ は直線PQの下にある。よって

$$T_n=\int_1^{n+1}\{-(x-1)(x-n-1)\}\,dx=\frac16\{(n+1)-1\}^3=\frac{n^3}{6}$$

答 $S_n=\dfrac{n+2}{2}\log(n+1)-n$、 $T_n=\dfrac{n^3}{6}$

(3) 配点 20点

$\log T_n=3\log n-\log6$。

$n\to\infty$ を考えるので $n\geqq2$ としてよく、 $\log n>0$。分子・分母を $n\log n$ で割ると

$$\frac{S_n}{n\log T_n}=\frac{\ \dfrac{n+2}{2n}\cdot\dfrac{\log(n+1)}{\log n}-\dfrac{1}{\log n}\ }{3-\dfrac{\log6}{\log n}}$$

ここで

$$\frac{\log(n+1)}{\log n}=\frac{\log n+\log\left(1+\dfrac1n\right)}{\log n}=1+\frac{\log\left(1+\dfrac1n\right)}{\log n}\to1+0=1$$

であり、 $\dfrac{n+2}{2n}\to\dfrac12$、 $\dfrac{1}{\log n}\to0$、 $\dfrac{\log6}{\log n}\to0$ なので、分子は $\dfrac12$、分母は $3$ に収束する。

答 $\dfrac16$

出題意図

(1) 交点の条件から $a$ を求め、 $\log$ と多項式の大小を、根拠のある不等式で示せるか

(2) $\log x$ の積分と、放物線と直線で囲まれた部分の面積( $\dfrac16$ 公式)という面積の基本計算を正確にできるか

(3) $\log$ を含む式の極限で、 分子・分母の主役となる項を見抜き、 $n\log n$ で割って処理できるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや簡単
目標得点50点50点
目標時間15分25分

面積と極限の融合問題に見えるが、中身は「 $e^x>1+x$ の証明」「 $\log x$ の積分」「 $\dfrac16$ 公式」「主役の項で割る極限」という教科書レベルの操作の組み合わせにすぎない。
後回しにする理由はなく、ここで完答できなければ合格は厳しい。
不等式は証明まで書く、極限は主役の項で割る、という型を典型問題で反復しておこう。
とくに (3) の $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{\log(n+1)}{\log n}=1$ は典型なので、示し方まで押さえておくこと。
前半で解いて完答する。
(1) で $a>1$ の証明が書けなくても、(2)(3) は $a$ を使わずに解けるので諦めない。
(2) は上下関係を確かめて、 $S_n$ は「 $\log x$ の積分 − 三角形」、 $T_n$ は $\dfrac16$ 公式。
(3) は $n\log n$ で割るだけ。
計算自体は単純なので、確実に計算し、検算してから次の問題へ進む。

差がつく所・失点しやすい所

  • 差がつくのは (3) の $\dfrac{\log(n+1)}{\log n}\to1$ の説明:「 $n+1$ と $n$ はほぼ同じ」で済ませると減点。 $\log n+\log\left(1+\dfrac1n\right)$ と分けて示す。この極限は典型なので、説明の仕方まで押さえておく。なお、この比は $n=10^{12}$ でも $0.158$ 程度で、 $\dfrac16=0.1666\cdots$ にゆっくりとしか近づかない。数値を代入して答えを予想する方法は使えないので、式で処理する。
  • (1) の $a>1$ の証明:「 $\log$ は多項式よりゆっくり増える」は感覚としては当然だが、答案では根拠になる不等式とその証明が要る。 $e^x>1+x$ を差をとって微分して示し、対数をとって $\log(n+1)<n$ に直すという発想に行き着けるか。証明なしで不等式を使うと減点される。

2016年九州大学理系数学
第2問 解答・解説

第2問は平面ベクトル・図形の性質の問題です。
テーマは「三角形の内分点と3直線の交点がつくる三角形の面積」。

問題

2016年九州大学理系数学 第2問 問題
2016年九州大学理系数学 第2問 問題
問題文をテキストで読む

$t$ を $0<t<1$ を満たす実数とする。面積が1である三角形ABCにおいて、辺AB、BC、CAをそれぞれ $2:1$、 $t:1-t$、 $1:3$ に内分する点をD、E、Fとする。また、AEとBF、BFとCD、CDとAEの交点をそれぞれP、Q、Rとする。このとき、以下の問いに答えよ。

(1) 3直線AE、BF、CDが1点で交わるときの $t$ の値 $t_0$ を求めよ。

以下、 $t$ は $0<t<t_0$ を満たすものとする。

(2) $\mathrm{AP}=k\,\mathrm{AE}$、 $\mathrm{CR}=\ell\,\mathrm{CD}$ を満たす実数 $k,\ell$ をそれぞれ求めよ。

(3) 三角形BCQの面積を求めよ。

(4) 三角形PQRの面積を求めよ。

解答の方針

【(1)の方針】

着眼点

3直線が1点で交わる条件はチェバの定理で、比を掛けて1とおくだけで $t$ の方程式になる。1点で交わる場面は下の図のようになり、 $\mathrm{BE}:\mathrm{EC}=3:2$ になる。

2016年九州大学理系数学 第2問 解答の方針の図
2016年九州大学理系数学 第2問 解答の方針の図
  1. チェバの定理 $\dfrac{\mathrm{AD}}{\mathrm{DB}}\cdot\dfrac{\mathrm{BE}}{\mathrm{EC}}\cdot\dfrac{\mathrm{CF}}{\mathrm{FA}}=1$ に比を代入し、 $2\cdot\dfrac{t}{1-t}\cdot\dfrac13=1$ を立てる。
  2. $t$ について解いて $t_0$ を求める。

【(2)の方針】

着眼点

$0<t<t_0$ では3直線が1点で交わらず、P、Q、R は別々の点になって三角形PQRができる(下の図)。交点は「2本の直線のどちらの上にもある点」なので、A を始点に $\vec b=\overrightarrow{\mathrm{AB}}$、 $\vec c=\overrightarrow{\mathrm{AC}}$ の2本で2通りに表して係数比較すれば必ず求まる。 $\vec b$、 $\vec c$ は平行でないので、係数比較が使える。

2016年九州大学理系数学 第2問 解答の方針の図
2016年九州大学理系数学 第2問 解答の方針の図
  1. $\vec b=\overrightarrow{\mathrm{AB}}$、 $\vec c=\overrightarrow{\mathrm{AC}}$ とおき、 $\overrightarrow{\mathrm{AD}}=\dfrac23\vec b$、 $\overrightarrow{\mathrm{AE}}=(1-t)\vec b+t\vec c$、 $\overrightarrow{\mathrm{AF}}=\dfrac34\vec c$ と表す。
  2. P を直線AE上の点として $\overrightarrow{\mathrm{AP}}=k\overrightarrow{\mathrm{AE}}$、直線BF上の点として $\overrightarrow{\mathrm{AP}}=(1-u)\vec b+\dfrac34u\vec c$ と2通りに表し、係数比較で $u$ を消去して $k$ を求める。
  3. R を直線CD上の点として $\overrightarrow{\mathrm{AR}}=\dfrac23\ell\vec b+(1-\ell)\vec c$、直線AE上の点として $\overrightarrow{\mathrm{AR}}=m\overrightarrow{\mathrm{AE}}$ と2通りに表し、係数比較で $m$ を消去して $\ell$ を求める。

【(3)の方針】

着眼点

Q は直線BFと直線CDの交点で、どちらの直線にも $t$ は入っていない。つまり Q は $t$ によらない。 $t$ によらないなら、 $t=t_0$ の図((1) の図で P、Q、R が一致した場面)で比を読んでよい。そのとき Q=R なので、(2) の $\ell$ に $t=t_0$ を代入すれば $\mathrm{CQ}:\mathrm{CD}$ がわかり、 $\ell=\dfrac12$、つまり Q は CD の中点になる。三角形BCQは三角形BCDの半分。

2016年九州大学理系数学 第2問 解答の方針の図
2016年九州大学理系数学 第2問 解答の方針の図
  1. Q を直線BF上の点として $\overrightarrow{\mathrm{AQ}}=(1-u)\vec b+\dfrac34u\vec c$、直線CD上の点として $\overrightarrow{\mathrm{AQ}}=\dfrac23v\vec b+(1-v)\vec c$ と2通りに表し、係数比較で $v=\dfrac12$、すなわち Q が CD の中点であることを示す。
  2. $\triangle\mathrm{BCD}=\dfrac{\mathrm{DB}}{\mathrm{AB}}\triangle\mathrm{ABC}=\dfrac13$ を求める。
  3. $\triangle\mathrm{BCQ}=\dfrac12\triangle\mathrm{BCD}$ として面積を求める。

【(4)の方針】

着眼点

P、R はどちらも直線AE上にある。そこで三角形PQRを底辺PR(直線AE上)・頂点Qと見れば、三角形QAEと高さが共通になり、 $\triangle\mathrm{PQR}=\dfrac{\mathrm{PR}}{\mathrm{AE}}\triangle\mathrm{QAE}$ となる。 $\dfrac{\mathrm{PR}}{\mathrm{AE}}$ は (2) の $k$ と $m$ の差。Q と直線AEの距離は、Q が CD の中点で、C と D が直線AEの反対側にあることから、C と AE の距離と、D と AE の距離の差の半分になる。

2016年九州大学理系数学 第2問 解答の方針の図
2016年九州大学理系数学 第2問 解答の方針の図
  1. (2) で求めた $m$( $\mathrm{AR}=m\,\mathrm{AE}$)と $k$ から、 $\mathrm{PR}=(k-m)\mathrm{AE}$ と表し、 $k-m>0$ を確かめる。
  2. $\triangle\mathrm{PQR}=(k-m)\triangle\mathrm{QAE}$ と表す。
  3. $\triangle\mathrm{CAE}=1-t$、 $\triangle\mathrm{DAE}=\dfrac23t$ を求め、Q が CD の中点であることから $\triangle\mathrm{QAE}=\dfrac12(\triangle\mathrm{CAE}-\triangle\mathrm{DAE})$ と表す。
  4. 2と3から三角形PQRの面積を求め、 $t=t_0$ を代入して0になることで検算する。

解答

2016年九州大学理系数学 第2問 解答・解説
2016年九州大学理系数学 第2問 解答・解説
2016年九州大学理系数学 第2問 解答・解説(続き)
2016年九州大学理系数学 第2問 解答・解説(続き)
解答をテキストで読む

$\vec b=\overrightarrow{\mathrm{AB}}$、 $\vec c=\overrightarrow{\mathrm{AC}}$ とおく。 $\vec b$、 $\vec c$ は $\vec0$ でなく、平行でない。

$$\overrightarrow{\mathrm{AD}}=\frac23\vec b,\qquad\overrightarrow{\mathrm{AE}}=(1-t)\vec b+t\vec c,\qquad\overrightarrow{\mathrm{AF}}=\frac34\vec c$$

(1) 配点 10点

3直線AE、BF、CDが1点で交わるとき、チェバの定理より

$$\frac{\mathrm{AD}}{\mathrm{DB}}\cdot\frac{\mathrm{BE}}{\mathrm{EC}}\cdot\frac{\mathrm{CF}}{\mathrm{FA}}=\frac21\cdot\frac{t}{1-t}\cdot\frac13=1$$

よって $2t=3(1-t)$、 $t=\dfrac35$。逆に $t=\dfrac35$ のとき、チェバの定理の逆より3直線は1点で交わる。

答 $t_0=\dfrac35$

(2) 配点 15点

P は直線BF上にあるので、実数 $u$ を用いて

$$\overrightarrow{\mathrm{AP}}=(1-u)\overrightarrow{\mathrm{AB}}+u\overrightarrow{\mathrm{AF}}=(1-u)\vec b+\frac34u\vec c$$

P は直線AE上にもあり $\overrightarrow{\mathrm{AP}}=k\overrightarrow{\mathrm{AE}}=k(1-t)\vec b+kt\vec c$。 $\vec b$、 $\vec c$ の係数を比べて

$$k(1-t)=1-u,\qquad kt=\frac34u$$

2つ目の式から $u=\dfrac43kt$。1つ目の式に代入して $k(1-t)=1-\dfrac43kt$、すなわち $k\left(1+\dfrac t3\right)=1$。

答 $k=\dfrac{3}{3+t}$

R は直線CD上にあるので

$$\overrightarrow{\mathrm{AR}}=\overrightarrow{\mathrm{AC}}+\ell\overrightarrow{\mathrm{CD}}=(1-\ell)\vec c+\ell\cdot\frac23\vec b=\frac23\ell\vec b+(1-\ell)\vec c$$

R は直線AE上にもあり、実数 $m$ を用いて $\overrightarrow{\mathrm{AR}}=m\overrightarrow{\mathrm{AE}}=m(1-t)\vec b+mt\vec c$。係数を比べて

$$\frac23\ell=m(1-t),\qquad1-\ell=mt$$

2つ目の式から $m=\dfrac{1-\ell}{t}$。1つ目の式に代入して $2\ell t=3(1-\ell)(1-t)$、すなわち $\ell(3-t)=3(1-t)$。

答 $\ell=\dfrac{3(1-t)}{3-t}$

(検算: $t=t_0=\dfrac35$ のとき P と R は一致するはずで、実際 $k=\dfrac56$、 $m=\dfrac{1-\ell}{t}=\dfrac56$ と一致する)

別解(メネラウスの定理) 三角形AECと直線BFにメネラウスの定理を使うと

$$\frac{\mathrm{AP}}{\mathrm{PE}}\cdot\frac{\mathrm{EB}}{\mathrm{BC}}\cdot\frac{\mathrm{CF}}{\mathrm{FA}}=\frac{\mathrm{AP}}{\mathrm{PE}}\cdot\frac{t}{1}\cdot\frac13=1$$

より $\mathrm{AP}:\mathrm{PE}=3:t$ なので $k=\dfrac{3}{3+t}$。三角形CDBと直線AEにメネラウスの定理を使うと

$$\frac{\mathrm{CR}}{\mathrm{RD}}\cdot\frac{\mathrm{DA}}{\mathrm{AB}}\cdot\frac{\mathrm{BE}}{\mathrm{EC}}=\frac{\mathrm{CR}}{\mathrm{RD}}\cdot\frac23\cdot\frac{t}{1-t}=1$$

より $\mathrm{CR}:\mathrm{RD}=3(1-t):2t$ なので $\ell=\dfrac{3(1-t)}{3(1-t)+2t}=\dfrac{3(1-t)}{3-t}$。

(3) 配点 10点

Q は直線BF上にも直線CD上にもあるので、実数 $u$、 $v$ を用いて

$$\overrightarrow{\mathrm{AQ}}=(1-u)\vec b+\frac34u\vec c=\frac23v\vec b+(1-v)\vec c$$

係数を比べて $1-u=\dfrac23v$、 $\dfrac34u=1-v$。1つ目の式から $u=1-\dfrac23v$ を2つ目の式に代入して $\dfrac34-\dfrac12v=1-v$、よって $v=\dfrac12$。

したがって $\overrightarrow{\mathrm{AQ}}=\dfrac13\vec b+\dfrac12\vec c=\dfrac12\left(\overrightarrow{\mathrm{AD}}+\overrightarrow{\mathrm{AC}}\right)$ となり、Q は線分CDの中点である( $t$ によらない)。

$\triangle\mathrm{BCD}=\dfrac{\mathrm{DB}}{\mathrm{AB}}\triangle\mathrm{ABC}=\dfrac13$ で、Q は CD の中点なので $\triangle\mathrm{BCQ}=\dfrac12\triangle\mathrm{BCD}$。

答 $\dfrac16$

補足( $t=t_0$ の図で比を読む) Q は直線BFと直線CDだけで決まり、どちらにも $t$ は入っていないので、 $t$ を変えても動かない。そこで $t=t_0$ の場面を考えると、3直線が1点で交わり Q=R となる。(2) の $\ell$ に $t=\dfrac35$ を代入すると $\ell=\dfrac{3\left(1-\dfrac35\right)}{3-\dfrac35}=\dfrac{\ \dfrac65\ }{\dfrac{12}{5}}=\dfrac12$ なので $\mathrm{CQ}=\dfrac12\mathrm{CD}$。どの $t$ でも Q は CD の中点である。

別解(メネラウスの定理) 三角形ADCと直線BFにメネラウスの定理を使うと、 $\dfrac{\mathrm{AB}}{\mathrm{BD}}\cdot\dfrac{\mathrm{DQ}}{\mathrm{QC}}\cdot\dfrac{\mathrm{CF}}{\mathrm{FA}}=3\cdot\dfrac{\mathrm{DQ}}{\mathrm{QC}}\cdot\dfrac13=1$ より $\mathrm{DQ}=\mathrm{QC}$。

(4) 配点 15点

(2) より $\mathrm{AR}=m\,\mathrm{AE}$、 $m=\dfrac{1-\ell}{t}=\dfrac{2}{3-t}$。P、R はどちらも線分AE上にあり

$$k-m=\frac{3}{3+t}-\frac{2}{3-t}=\frac{3(3-t)-2(3+t)}{9-t^2}=\frac{3-5t}{9-t^2}$$

$0<t<\dfrac35$ より $3-5t>0$ なので $k>m$ で、A に近い方から R、P の順に並び

$$\mathrm{PR}=(k-m)\mathrm{AE}=\frac{3-5t}{9-t^2}\mathrm{AE}$$

三角形PQRと三角形QAEは、底辺がどちらも直線AE上にあり、頂点Qが共通なので高さが等しい。よって

$$\triangle\mathrm{PQR}=\frac{\mathrm{PR}}{\mathrm{AE}}\triangle\mathrm{QAE}=\frac{3-5t}{9-t^2}\triangle\mathrm{QAE}$$

次に $\triangle\mathrm{QAE}$ を求める。

$$\triangle\mathrm{CAE}=\frac{\mathrm{EC}}{\mathrm{BC}}\triangle\mathrm{ABC}=1-t,\qquad\triangle\mathrm{DAE}=\frac{\mathrm{AD}}{\mathrm{AB}}\triangle\mathrm{ABE}=\frac23\cdot t=\frac23t$$

E は辺BC上にあるので、直線AEに関して B と C は反対側にあり、D は辺AB上なので B と同じ側にある。よって C と D は直線AEの反対側にある。C、D から直線AEまでの距離をそれぞれ $h_C$、 $h_D$ とすると、Q は CD の中点なので、Q から直線AEまでの距離は $\dfrac{h_C-h_D}{2}$( $h_C>h_D$ は下の計算で $3-5t>0$ からわかる)。底辺AEが共通なので

$$\triangle\mathrm{QAE}=\frac12\left(\triangle\mathrm{CAE}-\triangle\mathrm{DAE}\right)=\frac12\left\{(1-t)-\frac23t\right\}=\frac{3-5t}{6}$$

したがって

$$\triangle\mathrm{PQR}=\frac{3-5t}{9-t^2}\cdot\frac{3-5t}{6}=\frac{(3-5t)^2}{6(9-t^2)}$$

答 $\dfrac{(3-5t)^2}{6(9-t^2)}$

(検算: $t=t_0=\dfrac35$ を代入すると0になり、3直線が1点で交わって三角形がつぶれることと合う)

別解(全体から3つの三角形を引く) 三角形ABCは、三角形ABP、BCQ、CAR、PQRの4つに分かれる。

$$\triangle\mathrm{ABP}=k\triangle\mathrm{ABE}=\frac{3t}{3+t},\qquad\triangle\mathrm{CAR}=\ell\triangle\mathrm{CAD}=\frac23\ell=\frac{2(1-t)}{3-t},\qquad\triangle\mathrm{BCQ}=\frac16$$

なので

$$\triangle\mathrm{PQR}=1-\frac{3t}{3+t}-\frac{2(1-t)}{3-t}-\frac16=\frac{(3-5t)^2}{6(9-t^2)}$$

(通分の計算が重いので、本解の方が計算ミスが起きにくい)

出題意図

(1)(2) 2直線の交点を位置ベクトルで2通りに表し、係数比較で求めるという平面ベクトルの基本が理解できているか

(3)(4) 求めた線分の比を、面積比に正しく変換できるか。点と文字が多い中で、最後まで計算を合わせ切ることができるか。

講評

医学部医学科その他の学部
難易度簡単
目標得点50点50点
目標時間20分25分

交点を2通りに表して係数比較、という型は平面ベクトルの基本中の基本。
ベクトルで簡単に解けるし、最悪チェバの定理・メネラウスの定理でも解き切れる。
ただ、こうした基本問題で点数を落とす九大受験生は多い。
理由は、1か所の計算ミスが最後の答えに影響するから。
係数比較の計算を何も見ずに書けるまで反復し、答えが出たら特別な値を代入して検算する習慣をつけて、確実に50点を取ろう。
(1) はチェバの定理ですぐに求まる。
(2)(3) は (1) が解けなくても解けるので、(1) で止まっても諦めない。
(2)(3) は交点を2通りに表して係数比較するだけなので、ここまでは必ず完答する。
(4) は (2)(3) の結果を使い、底辺PR・頂点Qと見て面積を求める。
計算量が多いので、確実に計算し、(2) は $t=t_0$ で $k=m$、 (4) は $t=t_0$ で0になることを検算してから次の問題へ進む。

差がつく所・失点しやすい所

  • (4):点と文字が多い中で、三角形PQRを「底辺PR・頂点Q」と見て、(2)(3) の結果だけで面積を求める発想に行き着けるか。座標を置いたり全体から引いたりしても求まるが、計算量が増えてミスが起きやすい。
  • (4) の答えに $t=t_0$ を代入して0になるかで検算できるか:1か所の計算ミスが (4) まで連鎖する問題なので、この検算で失点を防げる。(2) も $t=t_0$ で P=R( $k=m=\dfrac56$)になるかで確かめられる。
  • (3) で Q が $t$ によらないことに気づけるか:気づけば $t=t_0$ の図で比が読め、(2) の $\ell$ に $t_0$ を代入するだけで CD の中点とわかる。
  • (4) で C と D が直線AEの反対側にあることを落とすミス:距離の和にしてしまうと $\triangle\mathrm{QAE}$ が合わない。

2016年九州大学理系数学
第3問 解答・解説

第3問は確率の問題です。
テーマは「正六角形の頂点を動くコインの確率」。

問題

2016年九州大学理系数学 第3問 問題
2016年九州大学理系数学 第3問 問題
問題文をテキストで読む

座標平面上で円 $x^2+y^2=1$ に内接する正六角形で、点 $\mathrm{P}_0(1,0)$ を1つの頂点とするものを考える。この正六角形の頂点を $\mathrm{P}_0$ から反時計まわりに順に $\mathrm{P}_1,\mathrm{P}_2,\mathrm{P}_3,\mathrm{P}_4,\mathrm{P}_5$ とする。ある頂点に置かれている1枚のコインに対し、1つのサイコロを1回投げ、出た目に応じてコインを次の規則にしたがって頂点上を動かす。

(規則)(i) 1から5までの目が出た場合は、出た目の数だけコインを反時計まわりに動かす。例えば、コインが $\mathrm{P}_4$ にあるときに4の目が出た場合は $\mathrm{P}_2$ まで動かす。

(ii) 6の目が出た場合は、 $x$ 軸に関して対称な位置にコインを動かす。ただし、コインが $x$ 軸上にあるときは動かさない。例えば、コインが $\mathrm{P}_5$ にあるときに6の目が出た場合は $\mathrm{P}_1$ に動かす。

はじめにコインを1枚だけ $\mathrm{P}_0$ に置き、1つのサイコロを続けて何回か投げて、1回投げるごとに上の規則にしたがってコインを動かしていくゲームを考える。以下の問いに答えよ。

(1) 2回サイコロを投げた後に、コインが $\mathrm{P}_0$ の位置にある確率を求めよ。

(2) 3回サイコロを投げた後に、コインが $\mathrm{P}_0$ の位置にある確率を求めよ。

(3) $n$ を自然数とする。 $n$ 回サイコロを投げた後に、コインが $\mathrm{P}_0$ の位置にある確率を求めよ。

解答の方針

【(1)(2)の方針】

着眼点

まず規則を図にする。1〜5の目は反時計まわりに出た目の数だけ進み、6の目は $x$ 軸に関して折り返す( $\mathrm{P}_1$ と $\mathrm{P}_5$、 $\mathrm{P}_2$ と $\mathrm{P}_4$ が入れかわり、 $x$ 軸上の $\mathrm{P}_0$、 $\mathrm{P}_3$ は動かない)。

2016年九州大学理系数学 第3問 解答の方針の図
2016年九州大学理系数学 第3問 解答の方針の図

規則が2種類あるので、頭の中だけで追うと読み違える。「今いる頂点」×「出た目」の表に移り先を書き出すと、どの行にも $\mathrm{P}_0$ がちょうど1つずつ現れることが目で分かる。 $\mathrm{P}_k$( $k=1,\cdots,5$)からは $6-k$ の目だけ、 $\mathrm{P}_0$ からは6の目だけが $\mathrm{P}_0$ に移る。

2016年九州大学理系数学 第3問 解答の方針の図
2016年九州大学理系数学 第3問 解答の方針の図

つまり、最後の1回の目は、直前の位置がどこであっても $\mathrm{P}_0$ に移るものが1つに決まる。だから (1) は2回の出方 $6^2$ 通りのうち $6$ 通り、(2) は3回の出方 $6^3$ 通りのうち $6^2$ 通り。

  1. 規則から「今いる頂点」×「出た目」の移り先の表を作る。
  2. 表から、どの頂点にいても $\mathrm{P}_0$ に移る目がちょうど1つであることを確かめる( $\mathrm{P}_0$ からは6の目、 $\mathrm{P}_k$ からは $6-k$ の目。6の目では $\mathrm{P}_k$ は $\mathrm{P}_{6-k}$ に移るので $\mathrm{P}_0$ には行かない)。
  3. (1):2回の目の出方 $36$ 通りのうち、1回目の目それぞれに対して2回目の目が1つに決まるので6通り。確率 $\dfrac{6}{36}$ を求める。
  4. (2):3回の出方 $216$ 通りのうち、最初の2回の出方 $36$ 通りそれぞれに対して3回目の目が1つに決まるので36通り。確率 $\dfrac{36}{216}$ を求める。

【(3)の方針】

着眼点

$n$ 回後に $\mathrm{P}_0$ にある確率を $p_n$ とおき、 $n$ 回後に $\mathrm{P}_0$ にいるか、 $\mathrm{P}_0$ 以外にいるかで分ける。(1) の表から、 $\mathrm{P}_0$ にいるときは6の目、 $\mathrm{P}_0$ 以外のどの頂点にいるときもちょうど1つの目で $\mathrm{P}_0$ に移るので、どちらの場合も次の1回で $\mathrm{P}_0$ に移る確率は $\dfrac16$。 $\mathrm{P}_0$ 以外の5つの頂点はまとめて $1-p_n$ と扱えるので、複数の文字を設定する必要はなく、1文字で確率漸化式が立つ。

2016年九州大学理系数学 第3問 解答の方針の図
2016年九州大学理系数学 第3問 解答の方針の図
  1. $n$ 回後に $\mathrm{P}_0$ にある確率を $p_n$ とおき、 $\mathrm{P}_0$ 以外にある確率を $1-p_n$ と表す。
  2. $n+1$ 回後に $\mathrm{P}_0$ にある場合を、 $n$ 回後に $\mathrm{P}_0$ にいる場合と $\mathrm{P}_0$ 以外にいる場合に分けて、確率漸化式を立てる。
  3. 整理して $p_{n+1}=\dfrac16$ を求め、 $p_1=\dfrac16$ と合わせて答える。

解答

2016年九州大学理系数学 第3問 解答・解説
2016年九州大学理系数学 第3問 解答・解説
解答をテキストで読む

(1) 配点 15点

規則から、コインが今いる頂点と出た目に対して、移り先は次の表のようになる。

・$\mathrm{P}_0$ にいるとき 1〜5の目では $\mathrm{P}_1$〜$\mathrm{P}_5$ に動き、6の目では $x$ 軸上なので動かない。 $\mathrm{P}_0$ に移るのは6の目だけ

・$\mathrm{P}_k$( $1\leqq k\leqq5$)にいるとき $j$ の目( $1\leqq j\leqq5$)では反時計まわりに $j$ 進むので、 $\mathrm{P}_0$ に着くのは $k+j=6$、すなわち $j=6-k$ のときだけ。6の目では $x$ 軸に関して対称な $\mathrm{P}_{6-k}$ に移り( $k=3$ なら $\mathrm{P}_3$ のまま)、 $1\leqq 6-k\leqq5$ なので $\mathrm{P}_0$ ではない。 $\mathrm{P}_0$ に移るのは $6-k$ の目だけ

よって、どの頂点にいても、次の1回で $\mathrm{P}_0$ に移る目はちょうど1つである。

2回の目の出方は $6^2=36$ 通りで、どれも同様に確からしい。1回目にどの目が出ても、2回目に $\mathrm{P}_0$ に移る目は1つに決まるので、 $\mathrm{P}_0$ にある出方は6通り(下の表の○)。

よって求める確率は $\dfrac{6}{36}$。

答 $\dfrac16$

(2) 配点 15点

3回の目の出方は $6^3=216$ 通り。1回目・2回目の目の出方は $6^2=36$ 通りあり、そのそれぞれで2回目の後の位置は決まる。(1) で示したとおり、その位置がどこであっても、3回目に $\mathrm{P}_0$ に移る目はちょうど1つ。

よって $\mathrm{P}_0$ にある出方は36通りで、求める確率は $\dfrac{36}{216}$。

答 $\dfrac16$

(3) 配点 20点

$n$ 回投げた後に $\mathrm{P}_0$ にある確率を $p_n$ とすると、 $\mathrm{P}_0$ 以外にある確率は $1-p_n$ である。

(1) で示したとおり、 $\mathrm{P}_0$ にいるときは6の目、 $\mathrm{P}_0$ 以外のどの頂点にいるときもちょうど1つの目で、次の1回で $\mathrm{P}_0$ に移る(下の図)。どちらの場合も、その確率は $\dfrac16$ である。

よって、 $n+1$ 回後に $\mathrm{P}_0$ にある確率は

$$p_{n+1}=\frac16p_n+\frac16(1-p_n)$$

整理すると $p_{n+1}=\dfrac16\ (n\geqq1)$。また、 $p_1=\dfrac16$( $\mathrm{P}_0$ から6の目)。したがって、すべての自然数 $n$ で $p_n=\dfrac16$。

答 $\dfrac16$

別解(直接数える) $n$ 回の目の出方は $6^n$ 通りで、どれも同様に確からしい。最初の $n-1$ 回の目の出方は $6^{n-1}$ 通りあり( $n=1$ のときは投げる前の $\mathrm{P}_0$ を直前の位置と考えて1通り)、そのそれぞれで直前の位置が1つに決まる。直前の位置がどの頂点であっても、 $n$ 回目に $\mathrm{P}_0$ に移る目はちょうど1つなので、 $\mathrm{P}_0$ にある出方は $6^{n-1}$ 通り。求める確率は $\dfrac{6^{n-1}}{6^n}=\dfrac16$。

補足 表の各列を見ると、どの目についても $\mathrm{P}_0$〜$\mathrm{P}_5$ が1回ずつ現れる(どの目も頂点を並べかえるだけ)。1回目の後はコインが6つの頂点に $\dfrac16$ ずつあり、そのあとも何回投げても、どの頂点にある確率も $\dfrac16$ のまま変わらない。

出題意図

(1)(2) 長い規則を正しく読み取り、「今いる頂点」と「出た目」から移り先を整理できるか。とくに6の目の但し書き( $x$ 軸上の $\mathrm{P}_0$、 $\mathrm{P}_3$ は動かない)を落とさずに扱えるか。

(3) 確率漸化式を立てられるか。 $\mathrm{P}_0$ にいるときと $\mathrm{P}_0$ 以外にいるときに分ければ、複数の文字を設定する必要はなく、1文字で立式できる。

講評

医学部医学科その他の学部
難易度簡単
目標得点50点50点
目標時間15分20分

確率漸化式の超基本問題。
$\mathrm{P}_0$ にいるか、いないかで分ければ、複数の文字を設定する必要もなく、漸化式はすぐに立つ。
完答は容易なので、15分で確実に50点を取る問題。
注意点は、6の目の「 $x$ 軸上にあるときは動かさない」という但し書きを落とさないこと。
移り先を表に整理してから漸化式を立てる、という手順を確率漸化式の典型問題で反復しておこう。
2016年のセットで最初に解く。
規則を読んだら、すぐに「今いる頂点」×「出た目」の表を書き、どの行にも $\mathrm{P}_0$ が1つずつあることを確かめる。
(1)(2) はこの表から数え、(3) は $\mathrm{P}_0$ にいるか、いないかで分けて確率漸化式を立てる。
(2) を216通りの書き出しで数え始めると時間がかかり、数え漏れも起きやすいので、書き出しに入る前に表を見る。
計算自体は単純なので、確実に計算し、検算してから次の問題へ進む。

差がつく所・失点しやすい所

  • (3) で $\mathrm{P}_0$ 以外の頂点を1つにまとめられるか:6つの頂点の確率を別々の文字でおくと漸化式が6本になり、時間を失う。 $\mathrm{P}_0$ にいるか、いないかで分けるという発想に行き着けるか。
  • 6の目の但し書きを正しく扱えるか:「 $x$ 軸上にあるときは動かさない」を落とすと、 $\mathrm{P}_0$ から6の目で $\mathrm{P}_0$ に残る場合を数え忘れ、(1) が $\dfrac{5}{36}$ などにずれる。移り先を表に書き出すという発想に行き着けるかで、読み違いを防げるかが決まる。
  • (2) を216通りの書き出しで数えて数え漏れ:書き出し自体は可能だが、3回分の移動を追うと途中で位置を取り違えやすい。「最初の2回は自由、最後の1回は1つに決まる」という数え方に行き着けるか。

2016年九州大学理系数学
第4問 解答・解説

第4問は整数の問題です。
テーマは「$10^n$ を13で割った余りと13の倍数の決定」。

問題

2016年九州大学理系数学 第4問 問題
2016年九州大学理系数学 第4問 問題
問題文をテキストで読む

自然数 $n$ に対して、 $10^n$ を13で割った余りを $a_n$ とおく。 $a_n$ は0から12までの整数である。以下の問いに答えよ。

(1) $a_{n+1}$ は $10a_n$ を13で割った余りに等しいことを示せ。

(2) $a_1,a_2,\cdots,a_6$ を求めよ。

(3) 以下の3条件を満たす自然数 $N$ をすべて求めよ。

(i) $N$ を十進法で表示したとき6桁となる。

(ii) $N$ を十進法で表示して、最初と最後の桁の数字を取り除くと2016となる。

(iii) $N$ は13で割り切れる。

解答の方針

【(1)の方針】

着眼点

$10^{n+1}$ は $10^n$ の10倍。 $10^n$ を13で割った商と余りの式を10倍すれば、 $10^{n+1}$ の式がすぐに作れる。13の倍数の部分は10倍しても13の倍数のままなので、余りに影響するのは $10a_n$ の部分だけ。

  1. $10^n=13q+a_n$( $q$ は整数)とおき、両辺を10倍して $10^{n+1}=13\cdot10q+10a_n$ と表す。
  2. $10a_n$ を13で割った商を $r$、余りを $b$( $0\leqq b\leqq12$)とおき、 $10^{n+1}=13(10q+r)+b$ と表す。
  3. $0\leqq b\leqq12$ なので、 $b$ が $10^{n+1}$ を13で割った余り $a_{n+1}$ であると結論する。

【(2)の方針】

着眼点

(1) は $a_n$ から $a_{n+1}$ を作る規則。 $10^6=1000000$ を実際に13で割らなくても、「10倍して13で割った余り」を $a_1$ から順にくり返せば、2桁の数の割り算だけで求められる。

  1. $a_1=10$ から始める。
  2. (1) の規則「 $10a_n$ を13で割った余り」で $a_2,a_3,\cdots,a_6$ を順に求める。

【(3)の方針】

着眼点

$N$ の最初の桁を $d$、最後の桁を $e$ とおくと、 $N=d\cdot10^5+2\cdot10^4+0\cdot10^3+1\cdot10^2+6\cdot10+e$ と位ごとの和に分けられる。13で割り切れるかどうかは13で割った余りだけで決まり、各位の $10^k$ を13で割った余りは (2) で求めた $a_k$ そのもの。下の図のように位ごとに余りを当てはめれば、 $N$ の条件は $d$ と $e$ の1次の合同式になる。 $d$ は1から9の9通りしかないので、あとは表で全部調べればよい。

2016年九州大学理系数学 第4問 解答の方針の図
2016年九州大学理系数学 第4問 解答の方針の図
  1. $N=d\cdot10^5+2\cdot10^4+0\cdot10^3+1\cdot10^2+6\cdot10+e$( $1\leqq d\leqq9$、 $0\leqq e\leqq9$)と表す。
  2. (2) の $a_5=4$、 $a_4=3$、 $a_3=12$、 $a_2=9$、 $a_1=10$ を位ごとに当てはめ、 $N\equiv4d+e+10\pmod{13}$ と表す。
  3. $N$ が13で割り切れる条件を $4d+e\equiv3\pmod{13}$ に言いかえる。
  4. $d=1,2,\cdots,9$ のそれぞれについて $e$ を13で割った余りを求め、 $0\leqq e\leqq9$ をみたすものだけを残して $N$ をすべて答える。

解答

2016年九州大学理系数学 第4問 解答・解説
2016年九州大学理系数学 第4問 解答・解説
解答をテキストで読む

(1) 配点 10点

$10^n$ を13で割った商を $q$ とすると $10^n=13q+a_n$。両辺を10倍して

$$10^{n+1}=13\cdot10q+10a_n$$

$10a_n$ を13で割った商を $r$、余りを $b$( $0\leqq b\leqq12$)とすると、 $10a_n=13r+b$ なので

$$10^{n+1}=13(10q+r)+b$$

$10q+r$ は整数で $0\leqq b\leqq12$ だから、 $b$ は $10^{n+1}$ を13で割った余り、すなわち $b=a_{n+1}$。よって $a_{n+1}$ は $10a_n$ を13で割った余りに等しい。

(2) 配点 15点

$a_1=10$。(1) より、順に

$10a_1=100=13\cdot7+9$ より $a_2=9$。

$10a_2=90=13\cdot6+12$ より $a_3=12$。

$10a_3=120=13\cdot9+3$ より $a_4=3$。

$10a_4=30=13\cdot2+4$ より $a_5=4$。

$10a_5=40=13\cdot3+1$ より $a_6=1$。

答 $a_1=10$、 $a_2=9$、 $a_3=12$、 $a_4=3$、 $a_5=4$、 $a_6=1$

(補足) $a_6=1$ なので $a_7=10a_6$ を13で割った余り $=10=a_1$ となり、以後は同じ6つの値をくり返す(下の図)。 $10^6$ を13で割った余りが1、つまり $10^6\equiv1\pmod{13}$ ということ。(3) で使うのは6桁の数の最上位 $10^5$ の余り $a_5=4$ で、 $a_6$ ではない。

(3) 配点 25点

$N$ の最初の桁の数字を $d$( $1\leqq d\leqq9$)、最後の桁の数字を $e$( $0\leqq e\leqq9$)とすると、(i)(ii) より

$$N=d\cdot10^5+2\cdot10^4+0\cdot10^3+1\cdot10^2+6\cdot10+e$$

$10^k$ を13で割った余りは $a_k$ なので、(2) より以下合同式はすべて13を法として

$$N\equiv4d+2\cdot3+0\cdot12+1\cdot9+6\cdot10+e=4d+e+75\equiv4d+e+10$$

よって (iii) は $4d+e+10\equiv0$、すなわち

$$4d+e\equiv-10\equiv3\pmod{13}$$

$d=1,2,\cdots,9$ について $4d$ を13で割った余りを求め、 $e\equiv3-4d$ を13で割った余り(0以上12以下)で表すと、下の表のようになる。 $e$ は0以上9以下の数字なので、 $e$ が10以上になる $d=1$( $e\equiv12$)と $d=8$( $e\equiv10$)は不適。それ以外の7通りは $e$ がただ1つに決まる。

答 $N=220168,\ 320164,\ 420160,\ 520169,\ 620165,\ 720161,\ 920166$

(補足) $10^5\equiv a_5=4$ を使い、 $20160=13\cdot1550+10\equiv10$ を直接計算して $N=d\cdot10^5+20160+e\equiv4d+10+e$ としてもよい。位ごとに分ける書き方は、 $a_1$ から $a_5$ がすべて (3) に使われることが見えるので、誘導に乗っていることが答案から伝わる。

別解((3) の後半:表を書かずに $4d+e$ の値を絞る)

$1\leqq d\leqq9$、 $0\leqq e\leqq9$ より $4\leqq4d+e\leqq45$。この範囲で13で割って3余る数は $16,\ 29,\ 42$ の3つだけなので

・$4d+e=16$: $(d,e)=(2,8),(3,4),(4,0)$( $d=1$ は $e=12$ で不適)

・$4d+e=29$: $(d,e)=(5,9),(6,5),(7,1)$

・$4d+e=42$: $(d,e)=(9,6)$( $d=8$ は $e=10$ で不適)

合同式を等式に直してから数えるので、余りの表を作るより短く、答えの7個も同じになる。 $e$ は $d$ を1増やすごとに4ずつ減るので、各場合の組はすぐに書き並べられる。

別解((3) の前半:$1001=7\cdot11\cdot13$ を使う)

$1001=7\cdot11\cdot13$ なので $10^3=1001-1\equiv-1\pmod{13}$。 $N$ を下3桁と上3桁に分けると $N=1000(100d+20)+(160+e)$ なので

$$N\equiv-(100d+20)+160+e=140-100d+e\pmod{13}$$

$140=13\cdot10+10$、 $100=13\cdot8-4$ より $N\equiv10+4d+e$ となり、本解と同じ $4d+e\equiv3\pmod{13}$ が求まる。(2) の誘導を使わずに済むが、本番では誘導どおり $a_5=4$ を使う本解の方が考えることが少ない。

出題意図

(1)(2) 大きな数を13で割った余りは、余りだけを追いかければ求められるという整数の基本が理解できているか

(3) 6桁の数を位ごとの和に分け、13で割り切れるという条件を (2) の余りを使って1次の合同式に言いかえられるか。そのうえで、残った2つの数字の組を漏れなく数えきれるか。

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや簡単
目標得点50点50点
目標時間15分20分

余りの問題で大きな数を実際に割る必要はない。
余りだけを追いかければ、(2) は2桁の割り算を6回するだけ、(3) は位ごとに余りを当てはめて $d$ を9通り調べるだけで終わる。
竜文会ブログでも書いているとおり、余りに着目する整数問題は難しくなりがちだが、本問は形こそ少し見慣れないが、誘導が丁寧で、誘導どおりに処理するだけで解ける易しい部類。
合同式で余りを計算する練習を積み、20分以内に確実に完答できるようにしておこう。
2016年のセットで最初の方に解く問題。
(1) は商と余りの式を10倍するだけ、(2) は (1) を6回くり返すだけなので、5分以内に確実に取る。
(3) は $N$ を位ごとの和に分け、(2) の余りを当てはめて $4d+e\equiv3\pmod{13}$ にする。
あとは $d=1$ から9までの表を書いて $e$ が1桁になるものを残すだけ。
計算自体は単純なので、確実に計算し、求めた7個のうち1つ(たとえば $420160=13\cdot32320$)を実際に13で割って検算してから次の問題へ進む。

差がつく所・失点しやすい所

  • この年でいちばん差がつくのは (3):6桁の数 $N$ を、位ごとの和 $d\cdot10^5+2\cdot10^4+\cdots+e$ に分けて (2) の余りを当てはめるという発想に行き着けるか。ここで $N$ を数として割り算しようとすると、(1)(2) の誘導を使えず、方針が立たないまま時間を失う。(1)(2) は (1) の規則をくり返すだけで差はつかない。
  • (3) で $d,e$ の範囲を確かめきれるか: $e\equiv3-4d$ から求めた余りが10以上になる $d=1$( $e\equiv12$)と $d=8$( $e\equiv10$)は、1桁の数字にならないので答えから除く。表を書いて9通りを全部並べれば、除き忘れも数え漏れも防げる。
  • (3) で最上位の余りを取り違える:6桁の数の最上位は $10^5$ なので、使うのは $a_5=4$。桁数と指数を1つずらして $10^5$ に $a_6=1$ を当てはめると、合同式そのものが変わり、答えがずれる。「6桁の最上位は $10^5$」を確かめてから当てはめる。

2016年九州大学理系数学
第5問 解答・解説

第5問は複素数平面・三角関数の問題です。
テーマは「ド・モアブルの定理で三角関数を $z^n$ で表し、三角方程式と三角関数の和に使う」。

問題

2016年九州大学理系数学 第5問 問題
2016年九州大学理系数学 第5問 問題
問題文をテキストで読む

以下の問いに答えよ。

(1) $\theta$ を $0\leqq\theta<2\pi$ を満たす実数、 $i$ を虚数単位とし、 $z$ を $z=\cos\theta+i\sin\theta$ で表される複素数とする。このとき、整数 $n$ に対して次の式を証明せよ。

$$\cos n\theta=\frac12\left(z^n+\frac{1}{z^n}\right),\qquad \sin n\theta=-\frac{i}{2}\left(z^n-\frac{1}{z^n}\right)$$

(2) 次の方程式を満たす実数 $x\ (0\leqq x<2\pi)$ を求めよ。

$$\cos x+\cos2x-\cos3x=1$$

(3) 次の式を証明せよ。

$$\sin^220^\circ+\sin^240^\circ+\sin^260^\circ+\sin^280^\circ=\frac94$$

解答の方針

【(1)の方針】

着眼点

ド・モアブルの定理は整数 $n$ で成り立つので、 $z^n$ も $z^{-n}=\dfrac{1}{z^n}$ も極形式ですぐに表せる。図で見ると、 $|z^n|=1$ なので $z^n$ は単位円上の偏角 $n\theta$ の点で、 $\dfrac{1}{z^n}=\overline{z^n}$ はそれと実軸に関して対称な点。2点の中点は実軸上の $\cos n\theta$、2点の差は虚軸の向きで長さ $2\sin n\theta$ になる。示す2式は、この「中点」と「差」を式にしたもの。

2016年九州大学理系数学 第5問 解答の方針の図
2016年九州大学理系数学 第5問 解答の方針の図
  1. ド・モアブルの定理で $z^n=\cos n\theta+i\sin n\theta$ と表す。
  2. 同じ定理を $-n$ に使い、 $\dfrac{1}{z^n}=z^{-n}=\cos n\theta-i\sin n\theta$ と表す。
  3. 2式を足して2で割ると $\cos n\theta$ の式、引いてから $-\dfrac{i}{2}$ をかけると $\sin n\theta$ の式になり、示せたと結論する。

【(2)の方針】

着眼点

$z=\cos x+i\sin x$ とおくと、(1) から $\cos x$、 $\cos2x$、 $\cos3x$ はすべて $z^n+\dfrac{1}{z^n}$ の形になる。これは $z$ と $\dfrac1z$ の対称式なので、 $t=z+\dfrac1z$ とおけば $t$ の3次方程式になる。 $t$ は $z$ と $\dfrac1z$ の中点の2倍なので $t=2\cos x$(実数)。誘導に乗ると、3倍角の公式を覚えていなくても $z^3+\dfrac{1}{z^3}=t^3-3t$ から $\cos3x$ が求まる。三角関数の公式で $\cos x$ の3次方程式にしても手間は同じなので、本番では方針が見えた方で解けばよい(別解)。

  1. $z=\cos x+i\sin x$ とおき、(1) で $\cos x$、 $\cos2x$、 $\cos3x$ を $z^n+\dfrac{1}{z^n}\ (n=1,2,3)$ で表す。
  2. $t=z+\dfrac1z$ とおき、 $z^2+\dfrac{1}{z^2}=t^2-2$、 $z^3+\dfrac{1}{z^3}=t^3-3t$ を使って、方程式を $t$ の3次方程式で表す。
  3. 因数分解して $t$ を求め、 $t=2\cos x$ から $\cos x$ の値を求める。
  4. $0\leqq x<2\pi$ で $x$ を求めて答える。

【(3)の方針】

着眼点

$20^\circ$、 $40^\circ$、 $60^\circ$、 $80^\circ$ は $20^\circ$ の1〜4倍。(1) の $\sin$ の式で $\theta=20^\circ$ とすると、すべて $z=\cos20^\circ+i\sin20^\circ$ の累乗で表せる。2乗すると $z^2$ の累乗だけが残るので、 $w=z^2=\cos40^\circ+i\sin40^\circ$ とおく。 $w$ をかけることは単位円上で $40^\circ$ 回転させることで、9回で $360^\circ$ になるので $w^9=1$。 $1,w,\cdots,w^8$ は単位円上の正九角形の頂点で、 全部足すと0( $w$ をかけて $40^\circ$ 回しても全体は変わらないので、和 $S$ は $wS=S$ をみたし、 $w\neq1$ から $S=0$)。さらに $w^n$ と $w^{-n}=w^{9-n}$ は実軸に関して対称な組になっている。

2016年九州大学理系数学 第5問 解答の方針の図
2016年九州大学理系数学 第5問 解答の方針の図
  1. (1) の $\sin$ の式で $\theta=20^\circ$ とし、 $\sin^2(n\cdot20^\circ)=\dfrac12-\dfrac14\left(w^n+w^{-n}\right)\ (n=1,2,3,4)$ と表す。
  2. 4つを足し、左辺を $2-\dfrac14\left(w+w^2+w^3+w^4+w^{-1}+w^{-2}+w^{-3}+w^{-4}\right)$ と表す。
  3. $w^9=1$ から $w^{-n}=w^{9-n}$ とし、かっこの中が $w+w^2+\cdots+w^8$ になることを確かめる。
  4. $w\neq1$ と $w^9=1$ から $1+w+\cdots+w^8=0$ を示し、かっこの中が $-1$ になることから $\dfrac94$ を導く。

解答

2016年九州大学理系数学 第5問 解答・解説
2016年九州大学理系数学 第5問 解答・解説
2016年九州大学理系数学 第5問 解答・解説(続き)
2016年九州大学理系数学 第5問 解答・解説(続き)
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(1) 配点 15点

ド・モアブルの定理は整数 $n$ で成り立つので

$$z^n=\cos n\theta+i\sin n\theta$$

$-n$ も整数なので、同じ定理より

$$\frac{1}{z^n}=z^{-n}=\cos(-n\theta)+i\sin(-n\theta)=\cos n\theta-i\sin n\theta$$

2式を足すと $z^n+\dfrac{1}{z^n}=2\cos n\theta$ なので

$$\cos n\theta=\frac12\left(z^n+\frac{1}{z^n}\right)$$

2式を引くと $z^n-\dfrac{1}{z^n}=2i\sin n\theta$。両辺に $-\dfrac{i}{2}$ をかけると、 $-\dfrac{i}{2}\cdot2i=1$ なので

$$\sin n\theta=-\frac{i}{2}\left(z^n-\frac{1}{z^n}\right)$$

補足 $|z|=1$ なので $z\overline{z}=1$、つまり $\dfrac1z=\overline{z}$。これを使うと $\dfrac{1}{z^n}=\overline{z}^{\,n}=\overline{z^n}=\cos n\theta-i\sin n\theta$ と、負の $n$ を別に扱わずに求められる。図のように、 $z^n$ と $\dfrac{1}{z^n}$ は実軸に関して対称な2点である。

(2) 配点 15点

$z=\cos x+i\sin x$ とおく。 $0\leqq x<2\pi$ なので (1) が使え、 $n=1,2,3$ として

$$\cos x=\frac12\left(z+\frac1z\right),\quad\cos2x=\frac12\left(z^2+\frac{1}{z^2}\right),\quad\cos3x=\frac12\left(z^3+\frac{1}{z^3}\right)$$

$t=z+\dfrac1z$ とおくと

$$z^2+\frac{1}{z^2}=t^2-2,\qquad z^3+\frac{1}{z^3}=\left(z+\frac1z\right)^3-3\left(z+\frac1z\right)=t^3-3t$$

よって方程式は

$$\frac t2+\frac{t^2-2}{2}-\frac{t^3-3t}{2}=1\iff t^3-t^2-4t+4=0\iff(t-1)(t-2)(t+2)=0$$

$t=1,\ 2,\ -2$。(1) より $t=z+\dfrac1z=2\cos x$ なので

$$\cos x=\frac12,\ 1,\ -1$$

$0\leqq x<2\pi$ で

答 $x=0,\ \dfrac{\pi}{3},\ \pi,\ \dfrac{5\pi}{3}$

(単位円上の点 $z=\cos x+i\sin x$ のうち、実部が $1$、 $\dfrac12$、 $-1$ の4点が答え)

別解(倍角の公式で $\cos x$ の3次方程式にする) $c=\cos x$ とおくと、 $\cos2x=2c^2-1$、 $\cos3x=4c^3-3c$ より

$$c+(2c^2-1)-(4c^3-3c)=1\iff2c^3-c^2-2c+1=0\iff(2c-1)(c^2-1)=0$$

$c=\dfrac12,\ \pm1$ で、答えは同じ。本解の $t$ は $t=2c$ なので、式は本解と同じものになる。3倍角の公式をすぐに書けるなら、こちらでもよい。

(3) 配点 20点

$20^\circ=\dfrac{\pi}{9}$ は $0\leqq\theta<2\pi$ をみたすので、 $z=\cos20^\circ+i\sin20^\circ$ として (1) を使う。 $n=1,2,3,4$ に対して

$$\sin^2(n\cdot20^\circ)=\left\{-\frac i2\left(z^n-\frac{1}{z^n}\right)\right\}^2=-\frac14\left(z^{2n}-2+\frac{1}{z^{2n}}\right)=\frac12-\frac14\left(w^n+w^{-n}\right)$$

ただし $w=z^2=\cos40^\circ+i\sin40^\circ$ とおいた。

$n=1,2,3,4$ を足して

$$\sin^220^\circ+\sin^240^\circ+\sin^260^\circ+\sin^280^\circ=2-\frac14\left(w+w^2+w^3+w^4+w^{-1}+w^{-2}+w^{-3}+w^{-4}\right)$$

ド・モアブルの定理より $w^9=\cos360^\circ+i\sin360^\circ=1$。よって $w^{-n}=w^{9-n}$ で

$$w^{-1}+w^{-2}+w^{-3}+w^{-4}=w^8+w^7+w^6+w^5$$

となり、かっこの中は $w+w^2+\cdots+w^8$ である。

また $w\neq1$ で

$$(w-1)(1+w+w^2+\cdots+w^8)=w^9-1=0$$

なので $1+w+w^2+\cdots+w^8=0$、すなわち $w+w^2+\cdots+w^8=-1$。

よって

$$\sin^220^\circ+\sin^240^\circ+\sin^260^\circ+\sin^280^\circ=2-\frac14\cdot(-1)=\frac94$$

別解(半角の公式と和積の公式) $\sin^2\alpha=\dfrac{1-\cos2\alpha}{2}$ より、左辺 $=2-\dfrac12\left(\cos40^\circ+\cos80^\circ+\cos120^\circ+\cos160^\circ\right)$。和積の公式より $\cos40^\circ+\cos80^\circ=2\cos60^\circ\cos20^\circ=\cos20^\circ$、また $\cos160^\circ=-\cos20^\circ$ なので、かっこの中は $\cos120^\circ=-\dfrac12$。左辺 $=2+\dfrac14=\dfrac94$。図で見ると、正九角形の頂点の実部の和 $1+2(\cos40^\circ+\cos80^\circ+\cos120^\circ+\cos160^\circ)=0$ と同じことを、三角関数の公式で確かめている。

補足(和積の公式が思いつかないとき) $40^\circ$、 $80^\circ$、 $160^\circ$ は、どれも3倍すると $\cos3\alpha=-\dfrac12$ をみたす。 $c=\cos\alpha$ とすると $4c^3-3c+\dfrac12=0$ で、 $\cos40^\circ$、 $\cos80^\circ$、 $\cos160^\circ$ は互いに異なるので、この3次方程式の3つの解である。 $c^2$ の係数が0なので、解と係数の関係から $\cos40^\circ+\cos80^\circ+\cos160^\circ=0$ となる。

出題意図

(1) ド・モアブルの定理を負の整数まで含めて正しく使えるか。単位円上の点 $z^n$ と $\dfrac{1}{z^n}$ が実軸に関して対称であることを捉えることができるか。

(2) (1) の式で三角関数を $z$ で表し、 $t=z+\dfrac1z$ の方程式に帰着できるか

(3) (1) の $\sin$ の式で $\sin^2$ の和を $w=\cos40^\circ+i\sin40^\circ$ の累乗の和に直し、 $w^9=1$ から $1+w+\cdots+w^8=0$ を導けるか

講評

医学部医学科その他の学部
難易度やや簡単
目標得点50点30点
目標時間20分30分

(1) は $z=\cos\theta+i\sin\theta$ をド・モアブルの定理で $n$ 乗し、連立方程式を解くだけ。
(2) はただの三角関数の問題で、(1) を使っても、使わずに倍角の公式で計算しても解ける。
(3) は $w^9=1$ から $1+w+\cdots+w^8=0$ を導けるかという、複素数平面の典型問題の応用。
単位円上の正九角形の図で捉えておけば、完答は難しくない。
(1) はド・モアブルの定理で5分以内に書き切る。
(2) は (1) の式で $t=z+\dfrac1z$ の3次方程式にしても、倍角の公式で $\cos x$ の3次方程式にしてもよい。
因数分解はすぐにできるので必ず完答する。
(3) は (1) の $\sin$ の式で $w$ の累乗の和に直すか、半角の公式で $\cos$ の和に直す。
片方で5分考えて進まなければ、もう片方に切りかえる。
(1) が解けなくても (2)(3) は三角関数の公式だけで解けるので諦めない。
計算自体は単純なので、確実に計算し、検算してから次の問題へ進む。

差がつく所・失点しやすい所

  • 差がつくのは (3):(1) の $\sin$ の式で $w$ の累乗の和に直し、 $w^9=1$ から $1+w+\cdots+w^8=0$ を導くという発想に行き着けるか。三角関数で解く場合も、半角の公式で $\cos$ の和に直すという発想に行き着けるかで決まる。どちらも見えないと、 $\sin20^\circ$ の値を求めようとして時間を失う。
  • 誘導に乗るか、三角関数の公式で解くかで迷う:(2)(3) はどちらの解き方でも手間は同じ。迷っている時間がいちばん無駄になる。方針が先に見えた方で最後まで解き切れるか。
  • (1) で $\dfrac{1}{z^n}$ の根拠を書けるか:ド・モアブルの定理を負の整数に使うこと、または $|z|=1$ から $\dfrac1z=\overline{z}$ を書かずに「共役」とだけ書くと根拠不足になる。
  • (2) で $x=0$ を落とす:$\cos x=1$ の解 $x=0$ は範囲 $0\leqq x<2\pi$ に入る。 $x=2\pi$ は入らない。

2016年九州大学・理系数学の
講評とまとめ

5問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。

大問難易度医学部医学科その他の学部
第1問やや簡単50点50点
第2問簡単50点50点
第3問簡単50点50点
第4問やや簡単50点50点
第5問やや簡単50点30点

大問ごとの目標得点は、得意・不得意や制限時間を考えずに「このくらいは解いてほしい」という目安です。5問を合わせて入試問題として見たときに、それぞれの大問で目標得点を取れるかは別の話なので、その他の学部は大問の合計(230点)と総合の目標点(220点)が一致しません。

今回は特に誘導が大きく、5題とも発想が必要ありません。
誘導が丁寧で、典型問題を完璧にしていれば満点が狙える、高得点勝負の年になりました。
差がつくと思われるのは第4問(3)のみで、それ以外の問題は典型的な標準問題です。
医学部医学科は250点、それ以外の学部でも220点を狙いたいセットです。

解く流れ

第3問 → 第4問 → 第1問 → 第5問 → 第2問。

2016年九州大学・理系数学に
関するよくある質問

2016年の九州大学・理系数学について、よく聞かれる質問にお答えします。

2016年の九州大学・理系数学は難しかった?

簡単な年でした。
第2問・第3問は簡単、第1問・第4問・第5問はやや簡単です。
5問とも誘導が丁寧で、典型の手順をなぞれば完答できる問題が並ぶ、高得点勝負の年です。

2016年の九州大学・理系数学は何点取れば合格できる?

目標点は、医学部医学科で250点、その他の学部で220点です(250点満点)。

2016年の九州大学・理系数学はどこで差がつく?

合格するために最低限取っておきたいのは、第1問・第2問・第3問の完答です。そのうえで、差がつくとすれば次の1問だけです。

  • 第4問(3):6桁の数を位ごとの和に分けて、(2)の余りを当てはめられたか。
2016年の九州大学・理系数学は何が出題された?

大問ごとの単元は、次のとおりです。

  • 第1問:積分・極限
  • 第2問:平面ベクトル・図形の性質
  • 第3問:確率
  • 第4問:整数
  • 第5問:複素数平面・三角関数

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