【解説・採点基準付き】2026年九州大学理系数学の解答・解説
2026年の九州大学・理系数学の、
解答・解説【完全版】です。
方針の立て方・考え方はもちろん
オリジナルの採点基準付き。
このページで過去問演習が完結するので
赤本などは一切不要です。
2026年九州大学理系数学
第1問 解答・解説
この記事の配点・採点基準は九州大学が公表しているものではなく、竜文会が独自に作成したものです。
第1問は空間ベクトル・空間図形の問題です。
テーマは「球を直線OPに垂直な平面で切った円と、その2つの円を底面とする斜めの円柱を平面 $z=0$ で切った切り口」。
問題


問題文をテキストで読む
座標空間内で、原点Oを中心とする半径3の球を $S$ とする。また、点 $\mathrm{P}(1,0,\sqrt3)$ を考え、 $T_1$ と $T_2$ を直線OPと直交する相異なる2つの平面とする。 $T_1$ と $S$ の共通部分を $C_1$、 $T_2$ と $S$ の共通部分を $C_2$ とし、次の2つの条件をみたすとする。
・$C_1$ と $C_2$ はどちらも半径1の円である。
・$C_1$ の中心の $z$ 座標は正で、 $C_2$ の中心の $z$ 座標は負である。
以下の問いに答えよ。
(1) 円 $C_1,C_2$ の中心の座標を求めよ。
(2) 円 $C_1,C_2$ を底面とする円柱の側面を平面 $z=0$ で切る。その切り口の曲線の方程式を求めよ。また、その曲線を図示せよ。
解答の方針
【(1)の方針】
球の中心Oから平面 $T_1$ に下ろした垂線の足が、切り口の円 $C_1$ の中心になる。 $T_1$ は直線OPに垂直なので、その足は直線OP上にある。円の中心を $\mathrm{M_1}$、円周上の点をAとすると、三角形 $\mathrm{OM_1A}$ は $\angle\mathrm{OM_1A}=90^\circ$ の直角三角形で、 $\mathrm{OA}=3$(球の半径)、 $\mathrm{M_1A}=1$(円の半径)。立体を想像しなくても、直線OPを含む平面 $y=0$ で切った断面で考えれば、平面の問題になる。


- 円 $C_1,C_2$ の中心を $\mathrm{M_1},\mathrm{M_2}$ とし、どちらも直線OP上にあることを確かめる。
- 直角三角形 $\mathrm{OM_1A}$ で三平方の定理を使い、 $\mathrm{OM_1}=\mathrm{OM_2}=2\sqrt2$ を求める。
- $\overrightarrow{\mathrm{OM_1}}=k\overrightarrow{\mathrm{OP}}$ とおき、 $|\overrightarrow{\mathrm{OP}}|=2$ から $k=\pm\sqrt2$ を求める。 $T_1\neq T_2$ なので $\mathrm{M_1}$ と $\mathrm{M_2}$ は一方が $k=\sqrt2$、他方が $k=-\sqrt2$。 $z$ 座標の符号で $\mathrm{M_1},\mathrm{M_2}$ を決める。
【(2)の方針】
円柱の軸は、2つの底面の中心 $\mathrm{M_1},\mathrm{M_2}$ を通る直線、つまり直線OP。円柱の側面は「軸までの距離が半径1に等しい点の集まり」と言いかえられる。軸までの距離は、その点から軸に下ろした垂線の長さなので、垂線の足Hを $\overrightarrow{\mathrm{OH}}=k\overrightarrow{\mathrm{OP}}$ と1文字でおき、垂直の条件(内積0)で $k$ を決める。さらに、円柱は無限に続く筒ではなく、底面 $C_1,C_2$ の間だけの立体なので、Hが線分 $\mathrm{M_1M_2}$ 上にあるかを最後に確かめる。


- 円柱の軸が直線OPで、半径が1であることを確かめる。側面上の点は「直線OPに下ろした垂線の足Hが線分 $\mathrm{M_1M_2}$ 上にあり、Hまでの距離が1である点」と言いかえる。
- 切り口上の点を $\mathrm{Q}(X,Y,0)$ とし、 $\overrightarrow{\mathrm{OH}}=k\overrightarrow{\mathrm{OP}}=(k,0,\sqrt3k)$ とおく。 $\overrightarrow{\mathrm{QH}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OP}}=0$ から $k=\dfrac X4$ を求める。
- $\mathrm{QH}=1$ に $k=\dfrac X4$ を代入して、 $X,Y$ の関係式 $\dfrac34X^2+Y^2=1$ を求める。
- この曲線上では $|X|\leqq\dfrac{2}{\sqrt3}$ なので $|k|\leqq\dfrac{1}{2\sqrt3}<\sqrt2$ となり、Hがつねに線分 $\mathrm{M_1M_2}$ 上にあることを確かめる。これで楕円全体が切り口になる。
- 楕円の $x$ 切片 $\pm\dfrac{2}{\sqrt3}$、 $y$ 切片 $\pm1$ を求めて図示する。
解答


解答をテキストで読む
(1) 配点 20点
$C_1$ の中心を $\mathrm{M_1}$、 $C_2$ の中心を $\mathrm{M_2}$ とする。球 $S$ の中心Oから平面 $T_1$ に下ろした垂線の足が $\mathrm{M_1}$ である。 $T_1$ は直線OPに垂直なので、 $\mathrm{M_1}$ は直線OP上にある。 $\mathrm{M_2}$ も同様に直線OP上にある。
$C_1$ 上の点をAとすると、三角形 $\mathrm{OM_1A}$ は $\angle\mathrm{OM_1A}=90^\circ$、 $\mathrm{OA}=3$、 $\mathrm{M_1A}=1$ の直角三角形なので、三平方の定理より
$$\mathrm{OM_1}=\sqrt{3^2-1^2}=2\sqrt2$$
同様に $\mathrm{OM_2}=2\sqrt2$。
$\overrightarrow{\mathrm{OP}}=(1,0,\sqrt3)$、 $|\overrightarrow{\mathrm{OP}}|=2$ なので、 $\overrightarrow{\mathrm{OM_1}}=k\overrightarrow{\mathrm{OP}}$ とおくと $2|k|=2\sqrt2$、すなわち $k=\pm\sqrt2$。 $T_1\neq T_2$ より $\mathrm{M_1}\neq\mathrm{M_2}$ なので、一方は $k=\sqrt2$ の点 $(\sqrt2,0,\sqrt6)$、他方は $k=-\sqrt2$ の点 $(-\sqrt2,0,-\sqrt6)$。 $\mathrm{M_1}$ の $z$ 座標は正、 $\mathrm{M_2}$ の $z$ 座標は負なので
答 $C_1$ の中心 $(\sqrt2,0,\sqrt6)$、 $C_2$ の中心 $(-\sqrt2,0,-\sqrt6)$
(2) 配点 30点
円柱の底面 $C_1,C_2$ は直線OPに垂直な平面上の半径1の円で、中心 $\mathrm{M_1},\mathrm{M_2}$ は直線OP上にある。よってこの円柱は、軸が直線OP(線分 $\mathrm{M_1M_2}$ の部分)、半径が1の円柱である。点Qが側面上にある条件は、Qから直線OPに下ろした垂線の足をHとして
「Hが線分 $\mathrm{M_1M_2}$ 上にあり、かつ $\mathrm{QH}=1$」
である。
切り口上の点を $\mathrm{Q}(X,Y,0)$ とし、 $\overrightarrow{\mathrm{OH}}=k\overrightarrow{\mathrm{OP}}=(k,0,\sqrt3k)$ とおく。 $\overrightarrow{\mathrm{QH}}=(k-X,\ -Y,\ \sqrt3k)$ で、 $\overrightarrow{\mathrm{QH}}\perp\overrightarrow{\mathrm{OP}}$ より
$$\overrightarrow{\mathrm{QH}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OP}}=(k-X)+3k=0\iff k=\frac X4$$
このとき
$$\mathrm{QH}^2=\left(\frac X4-X\right)^2+Y^2+3\left(\frac X4\right)^2=\frac{9}{16}X^2+\frac{3}{16}X^2+Y^2=\frac34X^2+Y^2$$
$\mathrm{QH}=1$ より
$$\frac34X^2+Y^2=1$$
次に、Hが線分 $\mathrm{M_1M_2}$ 上にあるかを確かめる。 $\overrightarrow{\mathrm{OM_1}}=\sqrt2\,\overrightarrow{\mathrm{OP}}$、 $\overrightarrow{\mathrm{OM_2}}=-\sqrt2\,\overrightarrow{\mathrm{OP}}$ なので、Hが線分 $\mathrm{M_1M_2}$ 上にある条件は $-\sqrt2\leqq k\leqq\sqrt2$。曲線 $\dfrac34X^2+Y^2=1$ 上では $\dfrac34X^2\leqq1$ より $|X|\leqq\dfrac{2}{\sqrt3}$ なので
$$|k|=\frac{|X|}{4}\leqq\frac{1}{2\sqrt3}<\sqrt2$$
となり、曲線上のすべての点でHは線分 $\mathrm{M_1M_2}$ 上にある。よって、切り口は楕円 $\dfrac34x^2+y^2=1$ の全体である( $C_1$ 上の点の $z$ 座標は $\sqrt6-\dfrac12$ 以上、 $C_2$ 上の点の $z$ 座標は $-\sqrt6+\dfrac12$ 以下なので、底面が平面 $z=0$ と交わらないことからも分かる)。
答 $\dfrac34x^2+y^2=1$、 $z=0$(下の図の楕円)
出題意図
(1) 球を平面で切った切り口の円の中心は、球の中心から平面に下ろした垂線の足になるという基本が理解できているか
(2) 斜めに置かれた円柱の側面を、「軸までの距離が半径1に等しい点の集まり」と式に直せるか。立体を頭の中で組み立てなくても、垂線の足と内積で処理できるか。
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや難 | |
| 目標得点 | 20点 | 20点 |
| 目標時間 | 10分 | 15分 |
「九大のベクトルは解きやすい」という思い込みを捨て、(1) だけ取って2〜3分で見切る勇気を持てたかが合否を分けた。
難しいと判断できるのも実力のうち。
普段の演習から、解けない問題を見切る練習をしておこう。
(1) は平面 $y=0$ の断面で三平方の定理を使えばすぐに解ける。
確実に取る。
(2) は2〜3分考えて「軸までの距離が1」という方針が立たなければ、すぐに飛ばして第2問・第4問に時間を回す。
(2) は発想に行き着けないと部分点も取りにくい問題で、解けなくても合否には大きく影響しない。
差がつく所・失点しやすい所
- (2) で円柱の側面を「軸までの距離が1の点の集まり」と言いかえるという発想に行き着けるか:ここに行き着けないと、斜めの円柱をどう式にすればよいか方針が立たない。(2) は発想に行き着けるかどうかで0点か満点かに分かれやすく、発想なしで部分点を拾うのは難しい(採点上の部分点は設定されている)。
- 垂線の足を $\overrightarrow{\mathrm{OH}}=k\overrightarrow{\mathrm{OP}}$ と1文字でおくという発想に行き着けるか:Hの座標を3文字でおくと連立方程式が重くなる。直線上の点は1文字で表せる、という空間ベクトルの基本を使えるかが勝負のポイント。
- 範囲の確認を書き落とす:円柱は底面 $C_1,C_2$ の間だけの立体なので、切り口が楕円の全体か一部かを確かめないと減点される。 $|k|\leqq\dfrac{1}{2\sqrt3}<\sqrt2$ を書けば済む。
- (1) で $C_1,C_2$ を取り違える: $z$ 座標が正の方が $C_1$。 $k=\pm\sqrt2$ を求めたあと、どちらがどちらかを必ず書く。
- 答えの検算:平面 $y=0$ の断面((1) の図)で、円柱の断面の帯と $x$ 軸の交点は $x=\pm\dfrac{2}{\sqrt3}$ になり、楕円の $x$ 切片と一致する。 $y$ 切片が $\pm1$(円柱の半径)になることも、図からすぐに確かめられる。
2026年九州大学理系数学
第2問 解答・解説
第2問は複素数平面・積分(数学Ⅲ)の問題です。
テーマは「線分上を動く $z$ に対する $w=z+\dfrac1z$ の軌跡(双曲線の一部)と、虚軸のまわりの回転体の体積」。
問題


問題文をテキストで読む
点 $z$ が複素数平面上の線分
$$z=t+ti\quad\left(\frac{-1+\sqrt3}{2}\leqq t\leqq\frac{1+\sqrt3}{2}\right)$$
の上を動くとき、
$$z^2-wz+1=0$$
をみたす複素数 $w$ を表す点が描く軌跡を $C$ とする。ただし、 $i$ は虚数単位である。以下の問いに答えよ。
(1) 軌跡 $C$ を複素数平面上に図示せよ。
(2) $t=\dfrac{1+\sqrt3}{2}$ のときに複素数 $w$ を表す点を $\mathrm{P}_1$ とし、 $t=\dfrac{-1+\sqrt3}{2}$ のときに複素数 $w$ を表す点を $\mathrm{P}_2$ とする。このとき、軌跡 $C$、線分 $\mathrm{OP}_1$、線分 $\mathrm{OP}_2$ で囲まれる領域を虚軸の周りに1回転させてできる立体の体積を求めよ。ただし、Oは複素数平面の原点である。
解答の方針
【(1)の方針】
$z\neq0$ なので、与えられた式は $w=z+\dfrac1z$ と変形できる。 $z=t(1+i)$ なので $\dfrac1z=\dfrac{1-i}{2t}$ がすぐに求められ、 $w$ の実部 $x$ と虚部 $y$ が $t$ の式になる。 $x=t+\dfrac{1}{2t}$、 $y=t-\dfrac{1}{2t}$ は、足すと $2t$、引くと $\dfrac1t$ になるので、掛ければ $t$ が消える。ただし、 $t$ を消去した式 $x^2-y^2=2$ には $t$ の範囲の情報が残っていないので、 $x$ と $y$ の範囲は別に確かめる必要がある。 $x$ は $t=\dfrac{1}{\sqrt2}$ で最小になり、両端ではどちらも $\sqrt3$ で、 $t$ について単調でない。一方 $y$ は $t$ について単調に増加するので、範囲は $y$ の方で押さえる。


- $z\neq0$ を確かめ、両辺を $z$ で割って $w=z+\dfrac1z$ と変形する。
- $w=x+yi$( $x,y$ は実数)とおき、 $\dfrac1z=\dfrac{1-i}{2t}$ から $x=t+\dfrac{1}{2t}$、 $y=t-\dfrac{1}{2t}$ と表す。
- $x+y=2t$ と $x-y=\dfrac1t$ を掛けて $x^2-y^2=2$ を導く。
- $t>0$ から $x>0$ を、 $y$ が $t$ について単調に増加することと両端の値から、 $y$ が $-1$ から $1$ までのすべての値をちょうど1回ずつとることを示す。
- $x=\sqrt{y^2+2}$ より点 $w$ は $y$ で決まるので、 $C$ は双曲線 $x^2-y^2=2$ の $x>0$、 $-1\leqq y\leqq1$ の部分。端点 $(\sqrt3,\pm1)$ と頂点 $(\sqrt2,0)$ を入れて図示する。
【(2)の方針】
回転軸は虚軸( $y$ 軸)なので、虚軸に垂直な平面で切る。(1) で $x=\sqrt{y^2+2}$ と $x$ を $y$ で表してあるので、 $y$ で積分する形がそのまま使える。高さ $s$ で切ると、切り口は、直線 $y=s$ が領域を切る線分ABを虚軸のまわりに回した図形。線分ABは虚軸の右側にあり虚軸と交わらないので、切り口は円環になる。内側の半径は虚軸に近い端Aまでの距離、外側の半径は遠い端Bまでの距離。




- $\mathrm{P}_1(\sqrt3,1)$、 $\mathrm{P}_2(\sqrt3,-1)$ から、線分 $\mathrm{OP}_1$、 $\mathrm{OP}_2$ をまとめて $x=\sqrt3\,|y|$( $-1\leqq y\leqq1$)と表す。
- $-1\leqq y\leqq1$ で $\sqrt3\,|y|\leqq\sqrt{y^2+2}$ を確かめ、領域を $\sqrt3\,|y|\leqq x\leqq\sqrt{y^2+2}$、 $-1\leqq y\leqq1$ と表す。
- 虚軸上の点 $\mathrm{H}(0,s)$ を通り虚軸に垂直な平面で切った切り口が、内側の半径 $\sqrt3\,|s|$、外側の半径 $\sqrt{s^2+2}$ の円環であることを示し、面積 $\pi\left\{(s^2+2)-3s^2\right\}$ を求める。
- $-1\leqq s\leqq1$ で積分して体積を求める。
解答


解答をテキストで読む
(1) 配点 25点
$z=t+ti$ で $t\geqq\dfrac{-1+\sqrt3}{2}>0$ なので $z\neq0$。 $z^2-wz+1=0$ の両辺を $z$ で割って
$$w=z+\frac1z$$
$\dfrac1z=\dfrac{1}{t(1+i)}=\dfrac{1-i}{2t}$ なので、 $w=x+yi$( $x,y$ は実数)とおくと
$$x=t+\frac{1}{2t},\qquad y=t-\frac{1}{2t}$$
これより $x+y=2t$、 $x-y=\dfrac1t$ で、辺々を掛けて
$$x^2-y^2=2$$
範囲を調べる。 $t>0$ より $x>0$。また、 $t>0$ で $t$ も $-\dfrac{1}{2t}$ も増加するので、 $y$ は $t$ について単調に増加し、連続である。両端では
・$t=\dfrac{-1+\sqrt3}{2}$ のとき $x+y=2t=\sqrt3-1$、 $x-y=\dfrac1t=\dfrac{2}{\sqrt3-1}=\sqrt3+1$ より $(x,y)=(\sqrt3,-1)$
・$t=\dfrac{1+\sqrt3}{2}$ のとき $x+y=2t=\sqrt3+1$、 $x-y=\dfrac1t=\dfrac{2}{\sqrt3+1}=\sqrt3-1$ より $(x,y)=(\sqrt3,1)$
よって $y$ は $-1$ から $1$ までのすべての値をちょうど1回ずつとる。 $x>0$ と $x^2=y^2+2$ より $x=\sqrt{y^2+2}$ なので、点 $w$ は $y$ の値だけで決まる。したがって $C$ は
$$x^2-y^2=2\quad(x>0,\ -1\leqq y\leqq1)$$
$y=0$ となるのは $t=\dfrac{1}{\sqrt2}$ のときで、このとき $x=\sqrt2$。端点 $(\sqrt3,\pm1)$ は $(\sqrt3)^2-(\pm1)^2=2$ をみたしている(検算)。
答 双曲線 $x^2-y^2=2$ のうち $x>0$、 $-1\leqq y\leqq1$ の部分(上の図の太線。端点 $\sqrt3+i$、 $\sqrt3-i$ を含む)
(2) 配点 25点
(1) より $\mathrm{P}_1(\sqrt3,1)$、 $\mathrm{P}_2(\sqrt3,-1)$。線分 $\mathrm{OP}_1$ は $x=\sqrt3y$( $0\leqq y\leqq1$)、線分 $\mathrm{OP}_2$ は $x=-\sqrt3y$( $-1\leqq y\leqq0$)で、まとめて $x=\sqrt3\,|y|$。 $-1\leqq y\leqq1$ では
$$(y^2+2)-3y^2=2(1-y^2)\geqq0$$
なので $\sqrt3\,|y|\leqq\sqrt{y^2+2}$ で、等号は $y=\pm1$( $\mathrm{P}_1$、 $\mathrm{P}_2$)のときだけ。よって、囲まれる領域を $D$ とすると
$$D:\ \sqrt3\,|y|\leqq x\leqq\sqrt{y^2+2},\quad-1\leqq y\leqq1$$
$-1\leqq s\leqq1$ とし、回転体を、虚軸上の点 $\mathrm{H}(0,s)$ を通り虚軸に垂直な平面で切る。切り口は、直線 $y=s$ が $D$ を切る線分AB( $\mathrm{A}(\sqrt3\,|s|,\ s)$、 $\mathrm{B}(\sqrt{s^2+2},\ s)$)を、Hのまわりに1回転させた図形である。線分AB上の点とHの距離は $\mathrm{HA}=\sqrt3\,|s|$ から $\mathrm{HB}=\sqrt{s^2+2}$ までのすべての値をとるので、切り口は外側の半径 $\mathrm{HB}$、内側の半径 $\mathrm{HA}$ の円環。
断面積は
$$\pi\left(\mathrm{HB}^2-\mathrm{HA}^2\right)=\pi\left\{(s^2+2)-3s^2\right\}=2\pi(1-s^2)$$
求める体積を $V$ とすると
$$V=\int_{-1}^{1}2\pi(1-s^2)\,ds=4\pi\int_0^1(1-s^2)\,ds=4\pi\cdot\frac23=\frac83\pi$$
答 $\dfrac83\pi$
別解(円錐を引く) $D$ は、「 $0\leqq x\leqq\sqrt{y^2+2}$、 $-1\leqq y\leqq1$ の部分」から、「 $0\leqq x<\sqrt3\,|y|$ の2つの三角形」を除いた図形。前者を回すと体積は $\pi\displaystyle\int_{-1}^{1}(y^2+2)\,dy=\dfrac{14}{3}\pi$。後者はそれぞれ底面の半径 $\sqrt3$、高さ1の円錐になり、体積は $\dfrac13\pi(\sqrt3)^2\cdot1=\pi$ ずつ。よって $V=\dfrac{14}{3}\pi-2\pi=\dfrac83\pi$。
出題意図
(1) $w=x+yi$ とおいて媒介変数 $t$ を消去し、 $x$ と $y$ の範囲まで正確に軌跡を求められるか。やや難しめの問題集では典型問題だが、標準レベルの問題集では見かけない形。
(2) (1) の曲線と線分で囲まれた領域の回転体の体積を、回転軸(虚軸)に垂直な平面で切った断面の面積を積分して求められるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準 | |
| 目標得点 | 50点 | 40点 |
| 目標時間 | 25分 | 30分 |
複素数平面の軌跡で、 $x+yi$ の形から媒介変数を消して $y$ と $x$ の関係を導く典型問題。
ただし、やや難しめの問題集では典型問題でも標準レベルの問題集では見かけないので、標準レベルの演習しか積んでいない受験生には厳しかった。
医学科ならこの問題の完答はマスト。
他学部でも、複素数平面の演習を徹底的に積んで確保したい。
(1) は $w=z+\dfrac1z$ に直し、 $x$、 $y$ を $t$ で表せば方針が立つ。
$t$ を消去したら必ず $x$ と $y$ の範囲を確かめ、端点を代入して検算してから (2) に進む。
(2) は (1) の曲線が分からないと領域が決まらないので、(1) で止まったら飛ばしてよい。
(1) が解ければ (2) は断面の円環の面積を積分するだけなので、確実に完答する。
第1問を早めに見切り、この問題と第4問で点を確保する。
差がつく所・失点しやすい所
- (1) で $t$ を消去したあとに $x$ と $y$ の範囲を確かめるという発想に行き着けるか: $x^2-y^2=2$ だけを答えて双曲線全体(左側の枝も含む)を図示すると、(1) の大半の点を失い、(2) の領域も決まらない。また、 $x$ の範囲を $t$ の両端の値だけで決めると「 $x=\sqrt3$」となって誤る。 $x$ は $t$ について単調でないので、単調な $y$ の方で範囲を押さえる。
- (2) で切り口を円環と捉えるという発想に行き着けるか:断面を「半径 $\sqrt{s^2+2}$ の円」としてしまうと、線分 $\mathrm{OP}_1$、 $\mathrm{OP}_2$ の内側を引き忘れ、答えが $\dfrac{14}{3}\pi$ になる。切り口の線分ABが虚軸から離れていることを図で確かめる。
- (1) の出来がそのまま (2) の得点に直結する:(1) が合わなければ (2) は領域が決まらず、50点がまるごと消える。逆に (1) が解ければ (2) はチャートレベルの計算で自動的に取れるので、(1) だけで大きく差がつく。端点を $x^2-y^2=2$ に代入する検算を必ず入れる。
2026年九州大学理系数学
第3問 解答・解説
第3問は確率・漸化式の問題です。
テーマは「硬貨の表で白玉2つ、裏で黒玉1つを並べるときの、連続する3つの玉がすべて黒になる確率の漸化式」。
問題


問題文をテキストで読む
$0<r<1$ とする。表が出る確率が $r$、裏が出る確率が $1-r$ の硬貨を投げ、表が出た場合は白玉を2つ横並びに置き、裏が出た場合は黒玉を1つ置く。この要領で硬貨を繰り返し投げ、左から右に1列になるように白玉と黒玉を順に並べていく。
例えば、3回硬貨を投げ、結果が順に「裏、表、表」であれば、左から順に「黒、白、白、白、白」と5つの玉が並ぶ。
$n$ を自然数とする。 $n+2$ 回硬貨を投げたとき、左から $n$、 $n+1$、 $n+2$ 番目の玉がすべて黒である確率を $p_n$ とする。以下の問いに答えよ。
(1) $p_1,p_2$ を求めよ。
(2) $n\geqq2$ とする。 $n+2$ 回硬貨を投げたとき、左から $1$、 $n$、 $n+1$、 $n+2$ 番目の玉がすべて黒である確率を $p_{n-1}$ を用いて表せ。
(3) $n\geqq3$ のとき、 $p_n$ を $p_{n-2}$、 $p_{n-1}$ を用いて表せ。
(4) $p_n$ を求めよ。
解答の方針
【(1)の方針】
表が出ると白玉が2つ続けて置かれるので、ある番目の玉が黒になるには、その位置に白玉の組がかからないことが必要。 $p_2$ では、1回目が表だと1番目と2番目が白になり、2番目が黒にならない。問題文の例のように実際に並べて確かめる。


- $p_1$:3回投げて1、2、3番目が黒になるのは、3回とも裏のときだけであることを確かめる。
- $p_2$:4回投げて2、3、4番目が黒になるには、1回目が裏(表だと2番目が白)で、2〜4回目もすべて裏であることを確かめる。
- それぞれ $(1-r)^3$、 $(1-r)^4$ と求める。
【(2)の方針】
1番目の玉が黒 ⟺ 1回目が裏。1回目が裏なら1番目に黒が1つ置かれ、2回目以降は2番目から並べ始めることになる。2番目を1番目と数え直せば、残りの $n+1$ 回は「最初から $n+1$ 回投げる」のと同じ状況で、 $n$、 $n+1$、 $n+2$ 番目は数え直すと $n-1$、 $n$、 $n+1$ 番目。これは $p_{n-1}$ の定義そのもの( $(n-1)+2=n+1$ 回投げる)。


- 1番目が黒になるのは1回目が裏のときだけであることを確かめる(確率 $1-r$)。
- 2番目から番号を数え直し、残りの2回目〜 $(n+2)$ 回目の $n+1$ 回で $n-1$、 $n$、 $n+1$ 番目がすべて黒である確率が $p_{n-1}$ であることを示す。
- 硬貨を投げる各回は独立なので、積 $(1-r)p_{n-1}$ を求める。
【(3)の方針】
最初の1回で場合分けする。最後の1回は、それまでの結果しだいで何番目の玉になるかが決まらないが、最初の1回は必ず1番目から置かれるので、その後を数え直せば同じ形の確率に戻る。
- 1回目が裏:(2) そのもの。
- 1回目が表:1、2番目が白で、3番目から数え直す。 $n$、 $n+1$、 $n+2$ 番目は $n-2$、 $n-1$、 $n$ 番目。ただし残りは2回目〜 $(n+2)$ 回目の $n+1$ 回で、 $p_{n-2}$ の定義( $n$ 回投げる)より1回多い。残り $n+1$ 回のうち最初の $n$ 回だけで少なくとも $n$ 個の玉が並ぶので、最後の $(n+2)$ 回目は数え直した $n$ 番目までの玉に関係しない。


参考(同じ型の問題) 東京大学に、縦2・横 $n$ の長方形の部屋を「2辺の長さが1と2の長方形」と「1辺の長さが2の正方形」のタイルで敷きつめる並べ方の総数 $A_n$ を求める問題がある( $A_1=1$、 $A_2=3$、 $A_3=5$)。これも左端の置き方で場合分けする。縦の長方形1枚なら残りは横 $n-1$、横の長方形2枚か正方形1枚なら残りは横 $n-2$ で、残りは同じ形の部屋になるので $A_n=A_{n-1}+2A_{n-2}$。第3問の「1回目が裏なら $p_{n-1}$、表なら $p_{n-2}$」と全く同じ形の三項間漸化式になる


- 1回目が裏の場合の確率は (2) の $(1-r)p_{n-1}$。
- 1回目が表の場合、3番目から数え直し、残りの2回目〜 $(n+2)$ 回目の $n+1$ 回のうち最後の $(n+2)$ 回目が数え直した $n$ 番目までの玉に関係しないことを示して、確率 $rp_{n-2}$ を求める。
- 2つを足して $p_n=(1-r)p_{n-1}+rp_{n-2}$ と表す。
【(4)の方針】
(3) は三項間漸化式。 $x^2=(1-r)x+r$ を解くと $(x-1)(x+r)=0$ より $x=1,\ -r$。ここから $p_n+rp_{n-1}$ は一定、 $p_n-p_{n-1}$ は公比 $-r$ の等比数列の2本の式が求められる。2式から $p_n$ だけを残す。最後に $n=1,2$ を代入して (1) と一致するかを確かめる。
- (3) を $p_n+rp_{n-1}=p_{n-1}+rp_{n-2}$ と変形し、 $p_n+rp_{n-1}=p_2+rp_1=(1-r)^3$( $n\geqq2$)を求める。
- (3) を $p_n-p_{n-1}=-r(p_{n-1}-p_{n-2})$ と変形し、 $p_n-p_{n-1}=(-r)^{n-2}(p_2-p_1)=(-r)^{n-1}(1-r)^3$( $n\geqq2$)を求める。
- 1つ目の式から2つ目の式を引いて $p_{n-1}$ を求め、 $n$ を1つずらして $p_n$ を求める。
- $n=1,2$ を代入して (1) の値と一致することを確かめる。
解答


解答をテキストで読む
(1) 配点 10点
表が出ると白玉が2つ続けて置かれる。
$p_1$:3回投げて1、2、3番目がすべて黒になるには、1回目が裏(表なら1番目が白)。次の玉は2番目に置かれるので2回目も裏、同様に3回目も裏。逆に3回とも裏なら1、2、3番目は黒。よって $p_1=(1-r)^3$
$p_2$:4回投げて2、3、4番目がすべて黒になる場合を考える。1回目が表だと1、2番目が白になり不適なので、1回目は裏で、1番目が黒。すると2回目の玉は2番目、3回目の玉は3番目、4回目の玉は4番目に置かれるので、2〜4回目もすべて裏。逆に4回とも裏ならよい。
答 $p_1=(1-r)^3$、 $p_2=(1-r)^4$
(2) 配点 10点
1番目の玉は1回目の結果で決まり、1番目が黒 ⟺ 1回目が裏(確率 $1-r$)。
1回目が裏のとき、1番目に黒が置かれ、2回目以降の $n+1$ 回の玉は2番目から順に並ぶ。2番目を改めて1番目と数え直すと、2回目以降の $n+1$ 回は、最初から $n+1$ 回投げるのとまったく同じで、もとの $n$、 $n+1$、 $n+2$ 番目は、数え直した $n-1$、 $n$、 $n+1$ 番目になる。 $n\geqq2$ より $n-1\geqq1$ で、 $(n-1)+2=n+1$ 回投げて $n-1$、 $n$、 $n+1$ 番目がすべて黒である確率は $p_{n-1}$。
各回の結果は独立なので、求める確率は
答 $(1-r)p_{n-1}$
(3) 配点 15点
$n\geqq3$ とし、 $n+2$ 回投げたときの1回目の結果で場合分けする。
1回目が裏のとき 1番目が黒になるので、「1回目が裏かつ $n$、 $n+1$、 $n+2$ 番目がすべて黒」の確率は、(2) の「1、 $n$、 $n+1$、 $n+2$ 番目がすべて黒」の確率に等しく、 $(1-r)p_{n-1}$。
1回目が表のとき 1、2番目が白で、2回目以降の $n+1$ 回の玉は3番目から並ぶ。3番目を1番目と数え直すと、もとの $n$、 $n+1$、 $n+2$ 番目は数え直した $n-2$、 $n-1$、 $n$ 番目( $n\geqq3$ より $n-2\geqq1$)。
残りの2回目〜 $(n+2)$ 回目の $n+1$ 回のうち、2回目〜 $(n+1)$ 回目の $n$ 回で、玉は少なくとも $n$ 個並ぶ。よって数え直した $n$ 番目までの玉の色は最初の $n$ 回だけで決まり、最後の1回の結果には関係しない。したがって、この確率は「 $n$ 回投げて $n-2$、 $n-1$、 $n$ 番目がすべて黒である確率」 $p_{n-2}$ に等しい。1回目が表である確率をかけて $rp_{n-2}$。
2つの場合は重ならないので
答 $p_n=(1-r)p_{n-1}+rp_{n-2}$
(4) 配点 15点
(3) より、 $n\geqq3$ で
$$p_n+rp_{n-1}=p_{n-1}+rp_{n-2}$$
なので、数列 $\{p_n+rp_{n-1}\}$( $n\geqq2$)は一定で
$$p_n+rp_{n-1}=p_2+rp_1=(1-r)^4+r(1-r)^3=(1-r)^3\quad(n\geqq2)\quad\cdots\cdots①$$
また (3) より、 $n\geqq3$ で
$$p_n-p_{n-1}=-r(p_{n-1}-p_{n-2})$$
なので、数列 $\{p_n-p_{n-1}\}$( $n\geqq2$)は公比 $-r$ の等比数列で、 $p_2-p_1=(1-r)^4-(1-r)^3=-r(1-r)^3$ より
$$p_n-p_{n-1}=(-r)^{n-2}\cdot(-r)(1-r)^3=(-r)^{n-1}(1-r)^3\quad(n\geqq2)\quad\cdots\cdots②$$
①$-$②より、 $n\geqq2$ で
$$(1+r)p_{n-1}=(1-r)^3\left\{1-(-r)^{n-1}\right\}$$
$1+r>0$ なので、番号を1つずらすと、すべての自然数 $n$ で
$$p_n=\frac{(1-r)^3\left\{1-(-r)^n\right\}}{1+r}$$
(確かめ: $n=1$ で $\dfrac{(1-r)^3(1+r)}{1+r}=(1-r)^3$、 $n=2$ で $\dfrac{(1-r)^3(1-r^2)}{1+r}=(1-r)^4$ となり (1) と一致)
答 $p_n=\dfrac{(1-r)^3\left\{1-(-r)^n\right\}}{1+r}$
出題意図
(1)(2) 玉の並び方の状況を正しく捉えることができるか。白玉は必ず2つ続きで置かれるので、何番目にどの玉が来るかは、それより前の硬貨の結果すべてで決まる。この仕組みを具体的に並べて読み取れるか。
(3) 最初の1回で場合分けし、残りを「最初からやり直し」と見て漸化式を立てられるか。難関大学における確率漸化式の典型問題。
(4) $r$ を含む三項間漸化式を、基本どおりに解けるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準〜やや難 | |
| 目標得点 | 50点 | 20点 |
| 目標時間 | 25分 | 25分 |
最近は出題されていなかった確率漸化式で、2026年の合否の分かれ目になった問題。
最初の1回で場合分けする型の問題(東京大学のタイルの敷きつめの問題など、(3)の方針の「参考」を参照)を解いて解法を整理できていれば、漸化式はすぐに立つ。
立式さえできれば、あとはチャートレベルの計算。
確率を $\dfrac12$ と勘違いしないよう、確認しながら解こう。
(1)(2) は問題文の例のように実際に玉を並べれば解ける。
必ず取る。
(3) は (2) を「1回目が裏の場合」と読みかえれば、残りは1回目が表の場合だけ。
漸化式が立てば (4) は $r$ を含んでいてもチャートレベルの計算なので、医学科は完答する。
他学部は (1)(2) の20点を確保し、(3) は場合分けの方針まで書いて部分点を拾う。
(3) で漸化式が立たなければ深追いせず次の問題へ。
差がつく所・失点しやすい所
- (3) で最初の1回で場合分けするという発想に行き着けるか:最後の玉から考えると、何回目の硬貨が何番目の玉になるかが決まらず、漸化式が立たない。(1) は解けたが (2) から状況が分からなくなった受験生が多いと思われる。ここで大きく差がつく。
- (2) が (3) の「1回目が裏」の場合だと気づけるか:(2) を単独の問題として解いて終わると、(3) で同じ考えを2回することになり時間がかかる。
- 1回目が表の場合の回数のずれ:残りは2回目〜 $(n+2)$ 回目の $n+1$ 回なのに、 $p_{n-2}$ は $n$ 回投げる確率。「最後の $(n+2)$ 回目は数え直した $n$ 番目までに関係しない」と理由を書かないと減点される。
- 硬貨の確率を $\dfrac12$ と思い込む:表の確率は $r$、裏の確率は $1-r$。確認しながら解く。
- (4) で $n$ の範囲を確認できるか:①②は $n\geqq2$ で成り立つ式。番号をずらしたあと、 $n=1,2$ でも成り立つことを確かめる。
2026年九州大学理系数学
第4問 解答・解説
第4問は数と式・集合と命題・整数・高次方程式の問題です。
テーマは「$\sqrt2+\sqrt3$ を解にもつ有理数係数の方程式(無理数の証明・4次方程式・2次方程式が存在しないことの証明)」。
問題


問題文をテキストで読む
以下の問いに答えよ。ただし、 $\sqrt2$、 $\sqrt3$、 $\sqrt6$ が無理数であることは用いてよい。
(1) $\sqrt2+\sqrt3=\sqrt{5+2\sqrt6}$ を示せ。また、 $\sqrt2+\sqrt3$ は無理数であることを示せ。
(2) $\sqrt2+\sqrt3$ を解にもち、係数がすべて有理数の4次方程式を1つ求めよ。また、その4次方程式の解をすべて求めよ。
(3) $\sqrt2+\sqrt3$ を解にもち、係数がすべて有理数の2次方程式は存在しないことを示せ。
解答の方針
【(1)の方針】
前半は、両辺とも正なので2乗して比べればよい。後半は「無理数である」=「有理数でない」なので、有理数と仮定して矛盾を導く(背理法)。仮定した式を2乗すると、問題文で無理数と認められている $\sqrt6$ が有理数で表せてしまう。
- $(\sqrt2+\sqrt3)^2=5+2\sqrt6$ と $\sqrt2+\sqrt3>0$ から等式を示す。
- $\sqrt2+\sqrt3=r$ ( $r$ は有理数)と仮定し、2乗して $\sqrt6=\dfrac{r^2-5}{2}$ と表す。
- 右辺は有理数なので、 $\sqrt6$ が無理数であることに矛盾する。
【(2)の方針】
$x=\sqrt2+\sqrt3$ とおくと、(1) より $x^2=5+2\sqrt6$。根号 $\sqrt6$ だけを片側に寄せて2乗すれば根号が消える。「 $x=1+\sqrt2$ とおいて $x-1=\sqrt2$ を2乗する」という基本と同じ考え方。解と係数の関係で作ろうとすると、組にする相手を選ぶ段階で根号が残り、遠回りになる。解は $x^2$ についての2次方程式とみて求め、二重根号を外す。
- $x=\sqrt2+\sqrt3$ とおき、(1) から $x^2-5=2\sqrt6$ と表す。
- 両辺を2乗して $x^4-10x^2+1=0$ を求める(係数はすべて有理数)。
- $x^2$ についての2次方程式として解き、 $x^2=5\pm2\sqrt6$ を求める。
- $\sqrt{5\pm2\sqrt6}=\sqrt3\pm\sqrt2$ (複号同順)と二重根号を外し、4つの解を求める。
【(3)の方針】
「存在しない」ことを直接示すのは難しいので、存在すると仮定して矛盾を導く(背理法)。2次の係数で割れば $x^2+px+q=0$ ( $p,q$ は有理数)としてよい。 $\sqrt2+\sqrt3$ を代入すると $\sqrt2$、 $\sqrt3$、 $\sqrt6$ の3種類の根号が混ざり、このままでは使える性質がない(問題文で使ってよいのは「 $\sqrt6$ などが無理数」ということだけ)。そこで $\sqrt2$、 $\sqrt3$ を含む項 $p(\sqrt2+\sqrt3)$ を片側に寄せて2乗すると、左辺の $(\sqrt2+\sqrt3)^2$ が $5+2\sqrt6$ になり、根号は $\sqrt6$ だけになる。あとは「 $A+B\sqrt6=0$ ( $A,B$ は有理数)なら $A=B=0$」から $p,q$ の条件を求め、矛盾を導く。
- 有理数係数の2次方程式 $ax^2+bx+c=0$ ( $a\neq0$)が $\sqrt2+\sqrt3$ を解にもつと仮定し、 $a$ で割って $x^2+px+q=0$ ( $p=\dfrac ba$、 $q=\dfrac ca$ は有理数)とする。
- $x=\sqrt2+\sqrt3$ を代入し、(1) の $(\sqrt2+\sqrt3)^2=5+2\sqrt6$ を使って $p(\sqrt2+\sqrt3)=-(q+5)-2\sqrt6$ と表す。
- 両辺を2乗し、 $A+B\sqrt6=0$ ( $A,B$ は $p,q$ の有理数係数の式)の形に整理する。
- $\sqrt6$ が無理数であることから $B=0$、 $A=0$ を示す。
- 2式を連立して $p^2=8$ または $p^2=12$ を求め、 $p$ が有理数であることに矛盾すると結論する。
解答


解答をテキストで読む
(1) 配点 10点
$(\sqrt2+\sqrt3)^2=2+2\sqrt6+3=5+2\sqrt6$ で、 $\sqrt2+\sqrt3>0$ なので
$$\sqrt2+\sqrt3=\sqrt{5+2\sqrt6}$$
次に、 $\sqrt2+\sqrt3$ が有理数であると仮定し、 $\sqrt2+\sqrt3=r$ ( $r$ は有理数)とおく。両辺を2乗すると $5+2\sqrt6=r^2$ より
$$\sqrt6=\dfrac{r^2-5}{2}$$
$r$ は有理数なので右辺は有理数となり、 $\sqrt6$ が無理数であることに矛盾する。よって $\sqrt2+\sqrt3$ は無理数である。
(2) 配点 15点
$x=\sqrt2+\sqrt3$ とおく。(1) より $x^2=5+2\sqrt6$ なので
$$x^2-5=2\sqrt6$$
両辺を2乗すると $x^4-10x^2+25=24$、すなわち
$$x^4-10x^2+1=0$$
これは $\sqrt2+\sqrt3$ を解にもち、係数はすべて有理数である。
答 $x^4-10x^2+1=0$
この方程式を $x^2$ についての2次方程式とみて解くと
$$x^2=5\pm2\sqrt6$$
$5\pm2\sqrt6=(\sqrt3\pm\sqrt2)^2$ (複号同順)で、 $\sqrt3\pm\sqrt2>0$ なので $\sqrt{5\pm2\sqrt6}=\sqrt3\pm\sqrt2$。よって
$$x=\pm(\sqrt3+\sqrt2),\ \pm(\sqrt3-\sqrt2)$$
答 $x=\sqrt2+\sqrt3,\ -\sqrt2-\sqrt3,\ \sqrt2-\sqrt3,\ -\sqrt2+\sqrt3$( $\pm\sqrt2\pm\sqrt3$、複号任意)
別解( $\sqrt2$ を片側に寄せる) $x-\sqrt2=\sqrt3$ を2乗して $x^2-1=2\sqrt2x$、さらに2乗して $x^4-2x^2+1=8x^2$ となり、同じ方程式 $x^4-10x^2+1=0$ が得られる。チャートの「 $x=1+\sqrt2$ とおいて2乗する」と全く同じ手順。
(3) 配点 25点
$\sqrt2+\sqrt3$ を解にもち、係数がすべて有理数の2次方程式 $ax^2+bx+c=0$ ( $a\neq0$)が存在すると仮定する。両辺を $a$ で割ると
$$x^2+px+q=0\quad\left(p=\dfrac ba,\ q=\dfrac ca\right)$$
となり、 $p,q$ は有理数である。
$x=\sqrt2+\sqrt3$ を代入すると、(1) より $(\sqrt2+\sqrt3)^2=5+2\sqrt6$ なので
$$5+2\sqrt6+p(\sqrt2+\sqrt3)+q=0$$
$\sqrt2$、 $\sqrt3$ を含む項を左辺に残すと
$$p(\sqrt2+\sqrt3)=-(q+5)-2\sqrt6$$
両辺を2乗すると
$$p^2(5+2\sqrt6)=(q+5)^2+4(q+5)\sqrt6+24$$
整理して
$$\{5p^2-(q+5)^2-24\}+\{2p^2-4(q+5)\}\sqrt6=0$$
$A=5p^2-(q+5)^2-24$、 $B=2p^2-4(q+5)$ とおくと、 $A,B$ は有理数で $A+B\sqrt6=0$。
$B\neq0$ とすると $\sqrt6=-\dfrac AB$ となり、右辺は有理数なので $\sqrt6$ が無理数であることに矛盾する。よって $B=0$ で、このとき $A=0$ である。
$B=0$ より $p^2=2(q+5)$。これを $A=0$ に代入して $s=q+5$ とおくと
$$10s-s^2-24=0\iff s^2-10s+24=0\iff (s-4)(s-6)=0$$
よって $s=4$ または $s=6$ で、 $p^2=2s=8$ または $p^2=12$。すなわち $p=\pm2\sqrt2$ または $p=\pm2\sqrt3$ となり、 $p$ は無理数である。これは $p$ が有理数であることに矛盾する。
したがって、 $\sqrt2+\sqrt3$ を解にもち、係数がすべて有理数の2次方程式は存在しない。
別解((1)(2) の結果を使う) $f(x)=x^4-10x^2+1$ を $x^2+px+q$ で割った商を $Q(x)$、余りを $kx+l$ とすると、割る式の $x^2$ の係数が1で係数がすべて有理数なので、 $Q(x)$ の係数と $k,l$ も有理数である。 $f(x)=(x^2+px+q)Q(x)+kx+l$ に $x=\sqrt2+\sqrt3$ を代入すると、(2) と仮定から左辺も $x^2+px+q$ も0なので $k(\sqrt2+\sqrt3)+l=0$。 $k\neq0$ なら $\sqrt2+\sqrt3=-\dfrac lk$ が有理数となり (1) に矛盾するので $k=0$、このとき $l=0$。よって $x^2+px+q=0$ の2つの解は $f(x)=0$ の解 $\pm\sqrt2\pm\sqrt3$ のうち、 $\sqrt2+\sqrt3$ と残り3つのどれか1つである。
・相手が $-\sqrt2+\sqrt3$ のとき 解の和 $2\sqrt3$ が $-p$ と等しく、 $p$ が無理数
・相手が $\sqrt2-\sqrt3$ のとき 解の和 $2\sqrt2$ が $-p$ と等しく、 $p$ が無理数
・相手が $-\sqrt2-\sqrt3$ のとき 解の積 $-(5+2\sqrt6)$ が $q$ と等しく、 $q$ が無理数
いずれも $p,q$ が有理数であることに矛盾する。
(補足:(2) の $x^4-10x^2+1=0$ は、 $\sqrt2+\sqrt3$ を解にもつ有理数係数の方程式のうち次数が最も小さいもの(最小多項式)である。(3) はその「最も小さい」ことの一部を示させている)
出題意図
(1) 「無理数であること」の証明を背理法で書けるか。教科書レベルの証明を、答案として正確に書けるか。
(2) 根号を含む数を解にもつ有理数係数の方程式を、根号を片側に寄せて2乗する方法で作れるか。「 $1+\sqrt2$ を解にもつ2次方程式を求めよ」というチャートの基本問題を完璧に身につけているか。
(3) 「存在しないこと」を背理法で示し、最後は「 $\sqrt6$ が無理数」という1点に帰着できるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | 標準〜やや難 | |
| 目標得点 | 45点 | 35点 |
| 目標時間 | 25分 | 30分 |
2026年では一番完答しやすい問題。
この大問を解き切り、他の大問の (1) を確実に取れば、理科と英語次第で十分合格できる。
ただし簡単ではなく、明暗を分けたのは (2)。
チャートの基本問題を完璧に身につけているかが、そのまま点数に表れる。
(1) は5分以内に取る。
(2) は (1) の $x^2=5+2\sqrt6$ から $\sqrt6$ を片側に寄せてすぐに求め、解は二重根号を外して4つとも書く。
(3) は (1)(2) が解けなくても、背理法で仮定して代入すれば進められるので必ず手をつける。
$\sqrt2$、 $\sqrt3$ の項を寄せて2乗し、 $A+B\sqrt6=0$ の形まで書けば部分点が入る。
第1問を早めに見切り、この問題と第2問で点を確保する。
差がつく所・失点しやすい所
- 難易度の見方が分かれる理由:竜文会は「2026年で一番完答しやすい」と判断する。(1) は教科書レベルの証明、(2) はチャートの基本問題、(3) も「存在しない」から背理法はすぐに思いつき、最後は $\sqrt6$ の無理数性という (1) と同じ所に帰着する。どの段階もチャートの基本の組み合わせで、初見の発想は要らない。一方で、本セットで最も難しいと評価する解説もある。そう見える理由は2つ。1つは、(3) で代入したあと $\sqrt6$ だけを残す変形が、同じ形の問題を解いたことがなければ思いつきにくいこと。もう1つは、論証をどこまで書けば満点になるか、答案の書き方に迷うこと。つまり「解き方は基本、答案を書き切るのが難しい」問題。完答には近いが、50点満点は簡単ではない。
- (2) で根号を片側に寄せて2乗するという発想に行き着けるか:ここが明暗を分けた。「 $1+\sqrt2$ を解にもつ2次方程式」を解と係数の関係( $1\pm\sqrt2$ を組にする)だけで覚えている受験生は、 $\sqrt2+\sqrt3$ の相手を何にすればよいか分からず、根号が残って方程式が作れない。 $x=1+\sqrt2$ とおいて $x-1=\sqrt2$ を2乗する解き方が身についているかで大きく差がつく。
- (2) の解をすべて求める所:2乗した式から戻すときに $\sqrt2+\sqrt3$ だけを答える、または $\pm\sqrt{5\pm2\sqrt6}$ のまま二重根号を外さないと減点される。
- (3) で $\sqrt2$、 $\sqrt3$ を含む項を寄せて2乗し、 $\sqrt6$ だけが残る形にするという発想に行き着けるか:代入した直後の $5+2\sqrt6+p(\sqrt2+\sqrt3)+q=0$ は根号が3種類あり、「有理数部分と無理数部分を比べる」ができない。ここで方針が立たない受験生が多いと思われる。寄せ方を間違えて $2\sqrt6$ を片側に寄せて2乗すると、今度は $\sqrt2$、 $\sqrt3$ の項が残って根号が消えない。
- (3) の「 $\sqrt6$ が無理数だから係数は0」の論証:「係数を比較して」とだけ書くと理由が抜ける。「 $B\neq0$ なら $\sqrt6=-\dfrac AB$ が有理数」まで書いて初めて論証になる。また「 $a+b\sqrt2+c\sqrt3+d\sqrt6=0$ ならすべて0」を断りなく使うのは、問題文で認められていない性質を使ったことになり減点される。
- (3) の始め方:2次の係数が1とは限らないので、 $a\neq0$ で割ってよい(有理数を有理数で割っても有理数)ことを書かずに $x^2+px+q=0$ と置くと減点の対象になる。
- (3) の最後: $p^2=8$ から「 $p=\pm2\sqrt2$ は無理数なので矛盾」まで書き切る。2つの場合の片方だけを調べて終わると論証が不十分。
2026年九州大学理系数学
第5問 解答・解説
第5問は微分法・積分・極限の問題です。
テーマは「定積分で定義された関数 $f(x)=\displaystyle\int_x^{x+1}\log(4t^2+1)\,dt$ の極値と極限」。
問題


問題文をテキストで読む
関数
$$f(x)=\int_x^{x+1}\log(4t^2+1)\,dt$$
に関して、以下の問いに答えよ。
(1) $f(x)$ が極値をとるときの $x$ の値を求めよ。また、そのときの極値を求めよ。
(2) 極限 $\displaystyle\lim_{x\to\infty}x\{f(x)-f(x-1)\}$ を求めよ。
解答の方針
【(1)の方針】
被積分関数を $g(t)=\log(4t^2+1)$ とおくと、 $f(x)$ は曲線 $y=g(t)$ の下で、幅1の区間 $[x,\ x+1]$ の部分の面積。 $g(t)$ の原始関数の1つを $G(t)$ とすれば $f(x)=G(x+1)-G(x)$ なので、微分すると右端の高さから左端の高さを引いた $g(x+1)-g(x)$ になる。区間を右へずらすと、右端で増え左端で減る、と図で見ても同じ。 $g(t)$ は偶関数で $t\geqq0$ で増加するので、左右の端の高さが等しくなる区間 $\left[-\dfrac12,\ \dfrac12\right]$ のときに面積が最小になると見当がつく。符号は、 $\log$ の差を1つの $\log$ にまとめて真数と1の大小で調べる。極値の積分は、積分区間が原点について対称なので偶関数の性質で $0$ から $\dfrac12$ までの2倍にし、 $\log(4t^2+1)=1\cdot\log(4t^2+1)$ と見て部分積分、残った分数式は分子を分母で割り、 $\dfrac{1}{4t^2+1}$ は $2t=\tan\theta$ と置換する。


- $f(x)=G(x+1)-G(x)$ と表して微分し、 $f'(x)=\log\{4(x+1)^2+1\}-\log(4x^2+1)$ を求める。
- $f'(x)=\log\dfrac{4x^2+8x+5}{4x^2+1}$ とまとめ、真数と1の大小( $8x+4$ の符号)から増減表を書き、 $x=-\dfrac12$ で極小になることを示す。
- 極小値 $f\left(-\dfrac12\right)=\displaystyle\int_{-\frac12}^{\frac12}\log(4t^2+1)\,dt$ を、偶関数なので $2\displaystyle\int_0^{\frac12}\log(4t^2+1)\,dt$ と表す。
- 部分積分で $\left[t\log(4t^2+1)\right]_0^{\frac12}-\displaystyle\int_0^{\frac12}\dfrac{8t^2}{4t^2+1}\,dt$ とし、分数式を $2-\dfrac{2}{4t^2+1}$ に直す。
- $\displaystyle\int_0^{\frac12}\dfrac{2}{4t^2+1}\,dt$ を $2t=\tan\theta$ とおいて求め、極小値を求める。
【(2)の方針】
極限の計算は、次の3つの選択肢から選ぶ。
- 不定形を直接解消する: $f(x)$ は原始関数で具体的に書けるが、 $f(x)-f(x-1)$ は $x\log$ の項と置換積分から来る角度の項が3つずつ入り混じった式になり、これに $x$ をかけた極限を直接計算するのは本番では現実的でない。
- 導関数の定義: $f(x)-f(x-1)$ は幅1での $f$ の変化量で、幅が0に近づくわけではないので、そのままでは使えない。
- はさみうちの原理:残るのはこれ。ただし不等式は問題文に無いので自分で作るしかない。
不等式を作る方法として思い出すべきなのが平均値の定理。 $f(x)-f(x-1)=\dfrac{f(x)-f(x-1)}{x-(x-1)}$ は区間 $[x-1,\ x]$ での平均変化率なので、 $f'(c)$( $x-1<c<x$)に置きかえられる。しかも $f’$ は (1) ですでに求めてある。 $c$ は値が分からない数だが、 $x-1<c<x$ ではさまれているので、 $x\to\infty$ のとき $c\to\infty$、 $\dfrac{x}{c}\to1$ がはさみうちで言える。あとは $\log(1+h)$ を $h$ で割った形( $e$ の定義)を作れば極限が求まる。


- 平均値の定理で、 $f(x)-f(x-1)=f'(c)$、 $x-1<c<x$ をみたす $c$ をとる。
- $f'(c)=\log\left(1+h(c)\right)$、 $h(c)=\dfrac{8c+4}{4c^2+1}$ と表す。
- $x\{f(x)-f(x-1)\}=\dfrac{x}{c}\cdot ch(c)\cdot\dfrac{\log(1+h(c))}{h(c)}$ と3つの積に分ける。
- $x-1<c<x$ から、はさみうちの原理で $\dfrac{x}{c}\to1$ を示す。
- $ch(c)\to2$、 $h(c)\to0$ と $\displaystyle\lim_{h\to0}\dfrac{\log(1+h)}{h}=1$ を使って、極限を求める。
解答


解答をテキストで読む
(1) 配点 25点
$g(t)=\log(4t^2+1)$ とおき、 $g(t)$ の原始関数の1つを $G(t)$ とすると
$$f(x)=\Bigl[G(t)\Bigr]_x^{x+1}=G(x+1)-G(x)$$
両辺を $x$ で微分すると、 $G'(t)=g(t)$ より
$$f'(x)=g(x+1)\cdot(x+1)’-g(x)=\log\{4(x+1)^2+1\}-\log(4x^2+1)=\log\frac{4x^2+8x+5}{4x^2+1}$$
$4x^2+8x+5-(4x^2+1)=8x+4$ なので、 $f'(x)$ の符号は $8x+4$ の符号と一致する。よって $f'(x)<0\ \left(x<-\dfrac12\right)$、 $f’\left(-\dfrac12\right)=0$、 $f'(x)>0\ \left(x>-\dfrac12\right)$ で、増減表は次のとおり。
$$\begin{array}{c|ccc}x&\cdots&-\dfrac12&\cdots\\\hline f'(x)&-&0&+\\\hline f(x)&\searrow&\text{極小}&\nearrow\end{array}$$
$f(x)$ は $x=-\dfrac12$ で極小になり、極大はない。
$g(t)$ は偶関数なので
$$f\left(-\frac12\right)=\int_{-\frac12}^{\frac12}\log(4t^2+1)\,dt=2\int_0^{\frac12}\log(4t^2+1)\,dt$$
部分積分により
$$\int_0^{\frac12}\log(4t^2+1)\,dt=\Bigl[t\log(4t^2+1)\Bigr]_0^{\frac12}-\int_0^{\frac12}t\cdot\frac{8t}{4t^2+1}\,dt=\frac12\log2-\int_0^{\frac12}\left(2-\frac{2}{4t^2+1}\right)dt$$
$$=\frac12\log2-1+\int_0^{\frac12}\frac{2}{4t^2+1}\,dt$$
$2t=\tan\theta$ とおくと、 $dt=\dfrac{1}{2\cos^2\theta}\,d\theta$、 $t:0\to\dfrac12$ のとき $\theta:0\to\dfrac{\pi}{4}$、 $\dfrac{2}{4t^2+1}=\dfrac{2}{1+\tan^2\theta}=2\cos^2\theta$ なので
$$\int_0^{\frac12}\frac{2}{4t^2+1}\,dt=\int_0^{\frac{\pi}{4}}2\cos^2\theta\cdot\frac{1}{2\cos^2\theta}\,d\theta=\frac{\pi}{4}$$
よって
$$f\left(-\frac12\right)=2\left(\frac12\log2-1+\frac{\pi}{4}\right)=\log2-2+\frac{\pi}{2}$$
答 $x=-\dfrac12$ のとき極小値 $\log2-2+\dfrac{\pi}{2}$(極大値はない)
(2) 配点 25点
$g(t)$ は連続なので $f(x)$ はすべての実数で微分可能である。 $x>1$ とする。区間 $[x-1,\ x]$ で平均値の定理を用いると
$$\frac{f(x)-f(x-1)}{x-(x-1)}=f'(c),\qquad x-1<c<x$$
をみたす $c$ が存在する。 $x-(x-1)=1$ なので $f(x)-f(x-1)=f'(c)$。
(1) より
$$f'(c)=\log\frac{4c^2+8c+5}{4c^2+1}=\log\left(1+h(c)\right),\qquad h(c)=\frac{8c+4}{4c^2+1}$$
$c>x-1>0$ より $h(c)>0$ なので
$$x\{f(x)-f(x-1)\}=\frac{x}{c}\cdot ch(c)\cdot\frac{\log\left(1+h(c)\right)}{h(c)}$$
$x-1<c<x$ より $c<x<c+1$ なので
$$1<\frac{x}{c}<1+\frac1c$$
$x\to\infty$ のとき $c>x-1\to\infty$ なので $1+\dfrac1c\to1$。はさみうちの原理より $\displaystyle\lim_{x\to\infty}\dfrac{x}{c}=1$。
また、 $x\to\infty$ のとき $c\to\infty$ なので
$$ch(c)=\frac{8c^2+4c}{4c^2+1}=\frac{8+\dfrac4c}{4+\dfrac{1}{c^2}}\to2,\qquad h(c)=\frac{\dfrac8c+\dfrac{4}{c^2}}{4+\dfrac{1}{c^2}}\to0$$
$h(c)\to0$ より
$$\frac{\log\left(1+h(c)\right)}{h(c)}=\log\left(1+h(c)\right)^{\frac{1}{h(c)}}\to\log e=1$$
以上より
$$\lim_{x\to\infty}x\{f(x)-f(x-1)\}=1\cdot2\cdot1=2$$
答 $2$
別解(積分の評価ではさむ) $f(x)-f(x-1)=\displaystyle\int_{x-1}^{x}f'(t)\,dt$ と見て、 $f'(t)$ を区間の両端の値ではさむ。 $f'(t)=\log\left(1+h(t)\right)$ で
$$h'(t)=\frac{8(4t^2+1)-(8t+4)\cdot8t}{(4t^2+1)^2}=-\frac{8(4t^2+4t-1)}{(4t^2+1)^2}$$
$t\geqq1$ では $4t^2+4t-1>0$ なので $h(t)$ は減少し、 $f'(t)$ も減少する。よって $x\geqq2$ のとき、区間 $[x-1,\ x]$ で $f'(x)\leqq f'(t)\leqq f'(x-1)$(等号は端だけ)で
$$xf'(x)<x\{f(x)-f(x-1)\}<xf'(x-1)$$
本解と同じく $\dfrac{\log(1+h)}{h}\to1$ を使うと
$$xf'(x)=xh(x)\cdot\frac{\log\left(1+h(x)\right)}{h(x)}\to2\cdot1=2,\qquad xf'(x-1)=\frac{x(8x-4)}{4x^2-8x+5}\cdot\frac{\log\left(1+h(x-1)\right)}{h(x-1)}\to2\cdot1=2$$
はさみうちの原理より、極限は $2$。
出題意図
(1) 積分区間に変数を含む関数を、原理(原始関数の差)から正しく微分できるか。極値の計算では、 $\log(4t^2+1)$ の定積分を部分積分とtan置換で求められるかという数Ⅲの総合力が問われている。
(2) 見たことのない極限を前にして、極限の計算の選択肢(不定形を直接解消する・はさみうちの原理・導関数の定義)から方針を選び、自分で不等式を作れるか
講評
| 医学部医学科 | その他の学部 | |
|---|---|---|
| 難易度 | やや難 | |
| 目標得点 | 25点 | 20点 |
| 目標時間 | 20分 | 25分 |
(2) は解けた受験生がほとんどいない問題だが、発想力はいらない。
「極限は直接解消かはさみうちの2択 → 直接は無理なのではさみうち → 不等式は自分で作る → 平均値の定理 → $e$ の形を作る」と、解法の選択肢を順にたどれば解ける。
テクニックを身につけているかどうかがすべて。
(1) は確実に完答する。
正しく微分できれば、増減は真数の大小ですぐに決まり、積分は「部分積分 → 割り算 → tan置換」の典型問題。
(2) は (1) の $f'(x)$ が求まっていても、平均値の定理を思いつかなければ解けない。
医学科でも (2) は飛ばしてよい。
時間が余ったときだけ、平均値の定理で $f'(c)$ に置きかえる所まで書いて部分点を狙う。
差がつく所・失点しやすい所
- (1) で積分区間に変数を含む関数を、原始関数の差として微分するという発想に行き着けるか:今回は区間が $x$ と $x+1$ なので、 $(x+1)’=1$ を意識しなくても正しい式になる。区間が $2x$ などなら $(2x)’=2$ をかけ忘れて失点する。原理から微分しておけば、どんな区間でも間違えない。
- (1) の符号: $\log$ の差を1つにまとめて真数と1を比べれば、 $8x+4$ の符号だけで決まる。 $f'(x)$ を2つの $\log$ のまま比べようとすると計算が面倒。
- (1) の極値の積分:偶関数で $0$ から $\dfrac12$ までにし、「部分積分 → 分子を分母で割る → tan置換」と進めるという発想に行き着けるか。この流れは $\log(t^2+a^2)$ 型の定積分の典型問題で、身についているかどうかで大きく差がつく。
- (2) で平均値の定理を使うという発想に行き着けるか:はさみうちしかないと決めても、不等式の作り方が分からなければ進めない。「差 $f(x)-f(x-1)$ を見たら平均変化率」と読めるかで大きく差がつく。
- (2) の $c$ の扱い: $c$ は $x$ によって決まる値の分からない数。 $x\to\infty$ で $c\to\infty$ になること、 $\dfrac{x}{c}\to1$ をはさみうちで示すことを書き落とすと減点される。
2026年九州大学・理系数学の
講評とまとめ
5問の難易度と目標得点をまとめると、次のとおりです。
| 大問 | 難易度 | 医学部医学科 | その他の学部 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | やや難 | 20点 | 20点 |
| 第2問 | 標準 | 50点 | 40点 |
| 第3問 | 標準〜やや難 | 50点 | 20点 |
| 第4問 | 標準〜やや難 | 45点 | 35点 |
| 第5問 | やや難 | 25点 | 20点 |
大問ごとの目標得点を足した値とはずれがありますが、総合の目標点(医学部医学科で170点、その他の学部で120点)は、制限時間の制約や得意・不得意を考慮して算出したものです。総合の目標としては、こちらを参考にしてください。
高3から付け焼き刃で対策した人や、数学をずっと避けてきた人には無理なセットでした。
これまでの18年間の総決算が九大受験です。
今年の九大突破のポイントは英語と理科ですが、数学が0点や50点では英語・理科の負担が大きすぎます。
数学をある程度のレベルまで完成させたうえで、他の科目の対策が十分にできる時間を確保することが、九大合格の真髄です。
チャート → 1対1対応の演習 → プラチカなどの難しい問題集と、時間が許す限り演習を積みましょう。
解く流れ
第1問(1) → 第2問 → 第4問 → 第3問 → 第5問(1) → 残り。
2026年九州大学・理系数学に
関するよくある質問
2026年の九州大学・理系数学について、よく聞かれる質問にお答えします。
- 2026年の九州大学・理系数学は難しかった?
-
やや難しい年でした。
超基本問題ばかりだった2025年から難化し、典型問題が少なく初見に近い問題が多かったため、受験生の体感難易度はかなり高くなりました。
ただし計算量は多くないので、解法を思いつけるかどうかが勝負です。 - 2026年の九州大学・理系数学は何点取れば合格できる?
-
目標点は、医学部医学科で170点、その他の学部で120点です(250点満点)。
- 2026年の九州大学・理系数学はどこで差がつく?
-
合格に最低限必要なのは、第2問〜第4問のうち1つを完答し、残りの大問の(1)を確実に取ることです。そのうえで、特に差がついたのは次の3つです。
- 第2問(1):$t$ を消去したあとに、$x$ と $y$ の範囲まで確かめられたか。(1)が解ければ(2)も自動的に取れるので、(1)の出来だけで30〜40点の差がつきました。
- 第3問(3):最初の1回で場合分けして、漸化式を立てられたか。2026年の合否の分かれ目になった問題です。
- 第4問(2):根号を片側に寄せて2乗する、というチャートの基本が身についていたか。ここが第4問の明暗を分けました。
- 2026年の九州大学・理系数学は何が出題された?
-
大問ごとの単元は、次のとおりです。
- 第1問:空間ベクトル・空間図形
- 第2問:複素数平面・積分(数学Ⅲ)
- 第3問:確率・漸化式
- 第4問:数と式・集合と命題・整数・高次方程式
- 第5問:微分法・積分・極限


